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サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 の「マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"」



サイモン・ラトル Simon Rattle
(Berliner Philharmoniker, 2011-9/18 Live rec.)
もちろんラトルが主席指揮者で音楽監督時代の録音ですね。

第一部と第二部で全く異なるストーリー、前者は賛歌であり後者は戯曲のラストシーン。楽曲構成も前者はソナタ形式で交響曲的に、後者はカンタータ的な構成になります。(このブログでは後者も交響曲的な構成にみてインプレしています)

【ソリスト】エリカ・ズンネガルト (#1 sop), スーザン・ブーロック (#2 sop), アンナ・プロハスカ (#3 sop), リッリ・パーシキヴィ (#1 alt), ナタリー・シュトゥッツマン (#2 alt), ヨハン・ボータ (ten), デイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン (bar), ジョン・レリエ (bas)





マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"


(BPOの豪華マーラー全集です。右は第8番単独のデジタル配信版です)


第一部 『来たれ、創造主たる精霊よ』
提示部:第一部タイトルの第一主題は予想以上に落ち着いて、徐々にテンションを上げ第二主題で緩やかながら延びあるソプラノ(#1)を聴かせます。多重唱は例によって歌合戦ですが、少し落ち着き強めですね。流れとしてはディナーミク強調になっています。

展開部:入りの管弦楽奏はやや陰鬱に、重唱は暗鬱なポリフォニカル印象を残します。第一主題変奏の合唱は一気に激しく展開して、出し入れのコントラストを強く付けていますね。

再現部:"Veni"が展開部ピークから雪崩崩れる様に落ちて、ゆっくり平穏を作る様に流れます。コーダは少年合唱団の"Gloria…"が明るい光を見せて、合唱団とソリストが激しいピークを構成。まぁ標準仕様の盛り上がりと言う事でしょうか。



第二部 『"ファウスト"から最終場』
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
5度下降ピチカートが印象的な主題をややスローに、でも木管の鳴りは明確に出しています。ここでも約10分の中でディナーミクによる強弱が明確です。


【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
「法悦の神父」が朗々と永遠の愛 "Ewiger Liebe Kern!" を歌い上げ、「瞑想の神父」は力を込めて続きます。ただバス・バリトンが前に出て来ない感じです。


【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
ポイントの「成熟した天使たち」ではvnソロとアルト(#1)が永遠の愛の力を讃えますが抑え気味になっています。「未熟な天使たち」「祝福された少年たち」がそれに続きますが、印象の薄いパートに思えます。


【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」はこの曲のハイライトでのびのびとしたテノール…のはずですが、残念ながら少し弱い感じですね。もっともっと突き抜ける様なテノールが欲しいです。
もう一つの聴き処 "贖罪の女三人の合唱" はソプラノのハイトーンとアルトの力感のコントラストが聴けましたね。
「懺悔する女 (グレートヒェン)」ブーロックはヴァイブレーションを強めにファウスト救済の願いを力を込めて歌い、それに応える「栄光の聖母」はプロハスカらしからぬソフトなハイトーンのソプラノでした。ここがストーリー上のハイライトですね。


【5. コーダ:神秘の合唱】
「神秘の合唱」は静に鎮めてまさに神秘的、ソリストが入ると山場へ向かい"永遠の母性"を歌い上げます。…が、大々的感動の合唱が不足気味。アゴーギクを少し振って合唱を山場に向かわせた方がもっと気分が高揚したのでは。



個々のパートではラトルらしいディナーミクのメリハリでしたが、今ひとつ焦点が定まらないマーラー8の印象でした。

大編成合唱団の効果とソリスト個々の輝きがやや薄く、ラストはオケの派手さにその前の合唱のピークが霞んでしまいました。個人的にはその辺りをガッツリと感動的に聴きたかったですね。ファウストの魂が聖母により"救済"され天に昇る大団円ですから。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard)の オペラ「反キリスト, Antikrist」



デンマークの近現代音楽家ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard, 1893-1952)、三連続インプレの最後は唯一の歌劇『反キリスト, Antikrist』(英:Antichrist, 1921–23 rev.1926–30)です。終末思想の刺激的なタイトルとストーリーで台本も本人作、P.E. Benzonの同題の詩が元になっていて一部引用されています。初稿を王立デンマーク劇場に持ち込みましたが台本の時点で却下されたそうです。

Revisedで大きく書き直されて"反キリスト"は舞台に登場しなくなり、いわゆる筋書きも無くなってソリストは '神秘の精神' や '絶望' と言った象徴・概念になっています。それでも受け入れられず、初演はランゴーが亡くなって28年後の1980年でした。




公式PVです



プロローグと二幕六場、ソリスト10人、約1時間半。デンマーク語ですから、英字幕でもないと厳しいですw (日本語字幕はありません)

地下から現れた"反キリスト"が世界を堕落の終末へ向かわせるが、最後は神に滅ぼされる 』そんな感じです。

■第一幕
【プロローグ】悪魔'ルシファー'が"反キリスト"をこの世に引き出し、'神(の声)'が活動を許可します。
【一場】'神秘の精神'がその時代の精神を歌い、'神秘の精神のエコー'が新しい世の到来を告げます。
【二場】'素晴らしい事を告げる口'が終末論への導きを歌います。
【三場】'絶望'が時代の精神を強調する落胆と無気力を歌います。
■第二幕
【四場】'偉大なる娼婦'と'緋色の野獣'が欲望・快楽・エゴを宣言します。
【五場】'偉大なる娼婦' '嘘' '憎み' が世界の滅びを巡り議論を戦わせます。
【六場】'神秘の声'は"反キリスト"とその行為を呪い、'神(の声)'が滅します。



(左:DVD 右:BD)



1. 音楽
重厚なプロローグのプレリュードは後期ロマン派、それもワーグナーの様な印象ですね。ランゴー得意の弦の跳ねるようなピチカートも登場します。
一場冒頭・他で極僅かに不協和音が入りますが、基本的に機能和声音楽です。得意のオルガンも象徴的に鳴り響き、処々の行進曲風の流れはマーラーが浮かびます。
流れにはスケルツォやアンダンテ、アレグロを明瞭に感じるパートもあって、後期ロマン派の管弦楽ベースになっていますね。


2. 演出
これ以外を見た事がないので、特異性はわかりませんが、前衛的な設定はありません。設定は教会のイメージですね。
外から現れた'ルシファー'が一幕では常時舞台で動作の仕切りを入れます。二幕では'偉大なる娼婦'が十字架に晒されて滅します。そこに'ルシファー'が出現し最後は'神の声'に追われます。
'ルシファー'はrev.で削除された"反キリスト"を、'偉大なる娼婦'は終末思想を現しているのかもしれません。


3. 舞台・衣装
舞台はシンプルで机と椅子が配置されているだけです。壁際には大型モニターの様な鏡、キリスト像も置いてあります。教会のイメージでしょう、衣装も黒をベースとしてシンプルです。四場のみ舞台を赤くライティングしていましたね。


4. 配役
'ルシファー'はバス・バリトンですがテノールの様な軽さで少々イメージが違いました。また通して役割が高かったですね。
'神秘の精神'と'神秘の精神のエコー'は伸びやかに明るく時代が変わる事を互いに歌いますね。重唱にはなりませんが、聴かせてくれました。

'偉大なる娼婦'のニールントは歌唱力・演技力含めこの舞台の主役でした。一人赤い衣装も胸をあらわに終末の様相を歌い上げています。'緋色の野獣'も派手なファーを纏って欲望を熱唱し、一場とこの四場が聴かせ処でしょう。


後期ロマン派の重厚な音楽のオペラが楽しめました。重唱も無ければ明確な役柄の関連性も避けているので、演奏会形式でも楽しめそうですね。

問題はキリスト教ベースで終末論的な内容でしょう。宗教観が明確なので、キリスト教徒でない自分には本質は覗けなかったと思います。残念ですが。



【配役】
 ・ルシファー:ステーン・ビリエル [Sten Byriel] (bas-bar)
 ・神の声:モーテン・スアバレ [Morten Suurballe] (narrator)
 ・神秘の精神:アンネ・マーグレーテ・ダール [Anne Margrethe Dahl] (sop)
 ・神秘の精神のエコー, 神秘の声:ヘレーネ・ギェリス [Helene Gjerris] (mez)
 ・素晴らしい事を告げる口:ポウル・エルミング [Poul Elming] (ten)
 ・絶望:スサネ・レースマーク [Susanne Resmark] (mez)
 ・偉大なる娼婦:カミッラ・ニールント [Camilla Nylund] (sop)
 ・緋色の野獣:ジョン・ケティルソン [Jon Ketilsson] (ten)
 ・嘘:ショニー・ファン・ハル [Johnny van Hal] (ten)
 ・憎み:ヨン・ルンドグレン [John Lundgren] (bar)

【管弦楽・合唱】Danish National Symphony Orchestra, Danish National Choir
【指揮】トーマス・ダウスゴー [Thomas Dausgaard]
【演出】スタファン・ヴァルデマー・ホルム [Staffan Valdemar Holm]


収録:2002年8月29, 30日, 9月2日


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard) の代表作『天体の音楽、終末の時、深き淵より』再確認する新しさと楽しさ

前回に続きR.ランゴーのインプレです。紹介文は前回のインプレをご覧下さいね。


Music of Spheres (Rued Langgaard, 1893-1952)
Danish National Symphony Orchestra, Thomas Dausgaard: cond.
デンマークの近現代音楽家ルーズ・ランゴーの代表作「天体の音楽」をインプレしておきましょう。かつて聴いた際には前衛ファンとしては特別な印象を持ちませんでした。

このアルバムには背中を押してくれるカップリングがあります。前衛から調性音楽へ回帰した時代の2.と最晩年(Date的には最終作品)の3.も入っていますから、管弦楽を得意としたランゴーを楽しめそうです。ダウスゴーはこの三曲をランゴーのマイルストーンだと言っていますね。

トーマス・ダウスゴー指揮 デンマーク国立交響楽団の演奏で、ソロ陣も合唱もレーベルもオール・デンマークです。


  ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧






1. 天体の音楽 The Music of the Spheres, BVN 128
  for soprano solo, chorus, orchestra and distant orchestra (1916-1918)
"遠くのオケ"やコーラス隊を含む大編成の音楽ですね。リゲティの1961年作品"Atmo-sphères"の予言版だとか、本国では1980年代まで聴けなかった、とか色々ネタは溢れる作品で、この後ランゴーは調性逸脱を目指します。全15パートの楽曲です。

まず気がつくのは静の中からの"音"の出現で、弦のトレモロから打楽器を交えて激しい瞬間音を作ります。そこから少しづつ美しい旋律が登場しますが、いずれも基本は静の中から現れますね。美しい静音の緩徐も挟まれて来たり、打楽器の使われ方も1910年代とは思えずヴァレーズを思わせますね。(ヴァレーズの"アメリカ"は1920年です) 途中で"怒りの日"の引用らしきフレーズも出てきたり、終盤にsopや合唱を入れたり、結尾導入部の強烈トゥッティとか単純でコンプレックスな楽曲構成を感じます。

静の中に烈が出現するのは欧エクスペリメンタリズムでもこの5年後くらいには一つの流れになっています。違いは機能和声で構成するか無調や特殊奏法にするかだけで、その原型があるのは事実ですね。



2. 終末の時 Time of the End, BVN 243
  for mezzo-soprano, tenor, baritone, chorus and orchestra (1939-43)
25年後の作品です。タイトルは聖書からの引用で、本人のオペラ"Antichrist"の抜粋で構成されているそうです。4パート楽曲です。

静空間と華々しい鳴りを感じる構成です。ピチカートの弾むリズム感と陰鬱な旋律の対比の管弦楽のpart I.から、part II. III. IV.の激しく派手なオケとソリスト達/合唱団が聴かせるパートに繋げます。IV.の後半はI.のピチカートと弦楽の幽幻さに回帰して閉じていますね。

魅力的な構成で全編聴かせますね。マーラーの"2番・8番"やシェーンベルクの"グレの歌"の神との対峙の様な厳しい歌唱合唱曲です。



3. 深き淵より From the Abyss, BVN 414
  for chorus with soloists and orchestra (1950-52)
9年後の単一楽章の楽曲です。"怒りの日(Dies Irae)"他のTEXTを使った歌曲で、"From the Deep"と英訳している事もありますね。マーラーやショスタコーヴィチの行進曲を連想させるとあります。

入りは重厚さを前面に押しだています。激しさと派手さの流れのベースには打楽器の活躍が見えますね。そして緩徐に鎮め、ちょっと1.の静パートを思わせますが、そこに静な合唱が入って来ます。そして徐々に大きく最後は大音響と、ありげですが楽しめる構成感です。



一言で言うなら"聴き直して本当に良かった!!"です。やっぱりランゴーは奥行きのある管弦楽ですね。

『新しい楽曲構成の1. 後期ロマン派大合唱曲の2. 大きな緩急合唱の3.』 斬新な1.が聴きどころですが、2. 3.の派手な合唱曲も魅力満点です。

今聴いても興味深さと快感が楽しめる素晴らしい三曲で、調性音楽ですから現代音楽ファンならずとも一聴をしていただきたい一枚です!!

続けて次回は唯一のオペラ「反キリスト, Antikrist」DVDをインプレしましょう。





公式PVでダウスゴー他の解説(英語)も入っています
曲(2. 3.)の印象と録音ステージの様子もわかりますね



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard) の「Music of the Abyss」で聴く変遷



ルーズ・ランゴー
(Rued Langgaard, 1893-1952)
後期ロマン派から前衛の時代に生きたデンマークの近現代音楽家ですね。オルガン奏者としての道を探しながら作曲活動もしていた様ですね。作曲はルーセンベリやカールセンにも師事しています。

ランゴーの曲を聴く場合は注意が必要ですね。以前交響曲をインプレした際にも書きましたが、一時期前衛を模索しましたが放棄。再び後期ロマン派的な作風に戻っています。(技法的にも特殊奏法等を駆使しています)


 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


Music of the Abyss
(Esbjerg Ensemble, Signe Asmussen: sop.)
本来管弦楽を得意とするランゴーの室内楽作品集ですね。それも1910年代から1920年代の調性から前衛方向へ向かう時代の作品です。

特に最後のタイトルナンバーは終末論的なオペラ"Antichrist"と同じ1920年代の作品で興味深く、オリジナルはピアノ曲ですが室内楽にトランスクリプションされています。
また代表作でコンプレックスな"Music of the Spheres, 天体の音楽 (1916-18)"と同じ時期の作品も含まれていますね。

演奏はエスビェア・アンサンブル、ソプラノ(3.)でシーネ・アスムセンが入ります。







1. Septet, BVN 95 (1915)
  for flute, oboe, 2 clarinets, 2 horns and bassoon
タイトル通り七重奏曲。ホモフォニーとモノフォニーの組合せの様な流れ、もちろん機能和声です。メヌエットの香りがするロマン派的な楽曲です。


2. Augustinusiana (A musical joke), BVN 63 (1914)
  for two violins and cello
1.と似た流れですが、表情はシュトラウスの交響詩的なお喋りの印象です。誰が聴いてもそう聴こえるでしょうね。一般的に言われるこの時期のランゴーの典型なのでしょう。


3. In the flowering time, BVN 136 (1917)
  for soprano and string quartet
2つの賛美歌を使った楽曲です。TEXTはノルウェーの作家Alvilde Prydzによるものだそうです。
 賛美歌ベースで美しい旋律で構成されていますが、楽風的には特徴が薄いですね。美しい弦楽奏を背景にソプラノが歌う、単純にそう聴こえます。


4. Scherzo on the Motifs C A and 'Ach, du lieber Augustin', BVN 62 (1913)
  for two violins and cello
古典の旋律を使ったスケルツォの小曲、それ以上にも以下にも感じられません。自分にそのセンスがないのが残念…(汗)


5. Lenau moods, BVN 138 (1917)
  for mezzo-soprano and string quartet
4パートの楽曲です。Mezが入って3.と良く似た流れです。賛美歌ベースではありませんが美しい弦楽奏ですね。一つ違いが見られるのは、メヌエット風の古典の様な古い旋律からの移行が感じられます。
後期ロマン派的で幽幻さの緩徐の流れというpart Iですね。part IIでも流麗に、III.はアレグロ風、IV.は繊細で美しい弦楽緩徐で賛美歌風にmezが入っていますね。


6. Humoresque, BVN 176 (1922-23)
  for flute, oboe, English horn, clarinet, bassoon and military drum
ユーモレスクですね。それを下敷きに短旋律徹底反復を入れて一気に作風を変化させてきました。和声的には多少の不協和音を交える程度で調性を超えるものはありませんが、技法的表現的には前衛向きになりましたね。やっと面白さが登場です。


7. Music of the Abyss (A sonata), BVN 169 (1921-24)
  transcription for the Esbjerg Ensemble’s members (wind quintet, percussion and string quartet 2015/17)
2パートの楽曲です。当然6.の方向性で短旋律反復を基本に不協和音を生かした幽幻旋律が絡みます。跳躍音階も感じられますね。速く細かい旋律は以前から得意としていましたが、ここでも良く使われています。
ただ、6.でもそうでしたが美しい旋律を捨てきれずに随所に現れるのがどっち付かずで残念です。でも、part IIはストラヴィンスキーっぽくて面白い?!
オリジナルのピアノ曲で聴いてみたい感じがしますね。


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  オフィシャルの"album teaser"です



古典的なやや古くさい旋律を基本に作られる1910年代から、1920年代の前衛方向へ舵を切るのがわかります。とは言え、美しい旋律を排除して反復化し不協和音を入れるくらいではありますが。

ただ北欧音楽界としたら年代的にはこの程度が限界か先達なのかもしれません。ストラヴィンスキーが「春の祭典」で物議を醸したのが1913年、シェーンベルクの十二音技法が1920年代ですから。

ランゴーと言えば管弦楽そして歌曲、乗りかかった船ですから続けて"天体の音楽"と"終末の時"を聴いてみようかと。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2021ドレスデン国立歌劇場公演 R.シュトラウス 歌劇「カプリッチョ」をNHKプレミアムシアターで観る


今年5月のドレスデン国立歌劇場 リヒャルト・シュトラウスのオペラ『カプリッチョ, Capriccio』シュトラウスが1942年に完成させた最後のオペラになりますね。(未完のDes Esels Schattenを除きます)
COVID-19下、無観客が残念ですが開催してもらえただけでも嬉しいです

キーとなる演出ですが、残念ながらヘルツォークの演出を知りません。個人的嗜好は前衛の香りがする方が…

指揮はもちろん長くカペルマイスターを務めるティーレマンで、2024年まで続投の様です。タクトはストーリー性の高い印象がありますね。同歌劇場オケである手兵ドレスデン・シュターツカペレを率いた"グレの歌"のCDでもそれが印象的でした。(今回のニールントとマイヤーはそこでも共演しています)



(ティーレマンの解説付きTrailerです。ドイツ語ですがw)


演出
ストーリーの置き替えがありますね。第二次大戦下のドイツを舞台にしているそうです。そこは現代的ですが、それ以外は至って旧来的な演出でした。置き替えもストーリーに対して意外性を与える事もありませんでしたね。

一番盛り上がるが新作披露での入り乱れる討議の多重唱シーンも面白さはボチボチでした。(演奏は見事でしたが)
唯一、冒頭と結尾にマドレーヌの老いた鏡像を登場させた事が意味深な変化球だったでしょうか。(ラストの歌詞に出て来ますね。そして二人を選ぶと言うオペラの結末…)


舞台・衣装
背景を大きな壁でシーンにより廻り舞台で室内・室外にしています。配置されるものはシンプルですが。
衣装はストーリーの置き替えで20世紀中盤の出立ち、現代風と言った感じです。最近ではごく平均的な印象でしょうか。


配役
【女性陣】
C.ニールント(マドレーヌ)は2020ベルリン国立歌劇場のシュトラウス「ばらの騎士」元帥夫人でも流石の技量を披露しています。今回もよく延びるsopでたっぷり聴かせてくれました。もちろん演技フィットさせているのは言うまでもありませんね。ラストの独白シーンは見事でした。
C.マイヤー(女優クレロン)は地味でした。

【男性陣】
C.ポール(伯爵)や、D.べーレ(音楽家フラマン)、N.ボルチェフ(詩人オリヴィエ)はニールントの引き立て役でした。まさにストーリー通り?!
お馴染みG.ツェッペンフェルト(舞台監督or芸術監督ラ・ロッシュ)はバス役ですがバリトンっぽく、音楽家・詩人と三人で歌うと一番歌唱表現がありましたね。


音楽
オケは引き気味の印象を強く感じますが、このオペラ自体の設定ですね。勿論強音パートでは音楽が主導権を握っていました。オペラの内容のごとくw この辺りの作り方がティーレマンらしさでしょうか。
プロローグの弦楽六重奏は落ち着いて淡々とした流れから緊迫感へ繋げる表情を上手く作っていましたし、最後の"月光の曲"は優しく美しくクレシェンドで色付けですね。(舞台のライティイングも合わせていました)


音楽と言葉そしてオペラを題材にしたオペラ?!をシリアスに作り込んだ印象です。そして伯爵夫人マドレーヌのニールントを楽しむ作品になりました。あとはツェッペンフェルトですね。そう言う作品だと思います。

シュトラウスとしては前期のサロメやエレクトラの様な異常性が無いので、然程好みではないのですが後半は魅力的な流れになった感じです。



<出 演>
 ・伯爵夫人マドレーヌ:カミッラ・ニールント [Camilla Nylund]
 ・伯爵 (兄):クリストフ・ポール [Christoph Pohl]
 ・フラマン (音楽家):ダニエル・べーレ [Daniel Behle]
 ・オリヴィエ (詩人):ニコライ・ボルチェフ [Nikolay Borchev]
 ・ラ・ロッシュ (舞台監督):ゲオルク・ツェッペンフェルト [Georg Zeppenfeld]
 ・クレロン (女優):クリスタ・マイヤー [Christa Mayer]

<男声合唱> ドレスデン国立歌劇場合唱団
<管弦楽> ドレスデン・シュターツカペレ
<指 揮> クリスティアン・ティーレマン [Christian Thielemann]
<演 出> イェンス・ダニエル・ヘルツォーク [Jens-Daniel Herzog]


収録:2021年5月4・6・8日 ドレスデン国立歌劇場(ドイツ)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジョヴァンニ・ソッリマ のお父さん エリオドロ・ソッリマ(Eliodoro Sollima)『Chamber Music』で聴くロマン主義から前衛への時代



エリオドロ・ソッリマ
(Eliodoro Sollima, 1926/7/10 - 2000/1/3)
前衛の時代に生きたシチリアの音楽家でパレルモの音楽院で長く作曲を教えていました。ピアニストでもありアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリにも師事していたそうです。
楽風はロマンチックで美しいとありますね。

そして何より人気チェリストで現代音楽家ジョヴァンニ・ソッリマのお父さんだと言う事ですね。(作曲も父エリオドロからバレルモ音楽院で学んでいます)



  ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧



Chamber Music
(Ensemble Kinari, Giovanni Sollima: cello)
室内楽集でピアノ四重奏を基本として編成を崩したデュオやトリオが入っています。最後の一曲はチェロが二挺となってジョヴァンニ・ソリマが参加していますね。作曲年代順で前衛時代と楽風変化が味わえます。

"アンサンブル・きなり"には二人の日本人 大西梓さん(vn), 上山瑞穂さん(va)が入っていますね。







1. Sonata, for cello and piano (1948)
I.のレント-アレグロは濃厚に響くvcが美しい旋律を奏でpfがソフトに従に、アレグロになると速く弾むpfが力を見せます。II.は緩徐ですが、ここでも濃いめの音構成になっています。III.のアレグロは速いアルペジオのvcとpfが走り回り、ヴィルトゥオーゾを聴かせる様に組まれた感じですね。新ロマン主義的な美しい旋律の楽曲です。


2. Studi for violin and Clarinet, Transcribed for violin and viola (1961)
I.のアレグロには調性からの逸脱が僅かな不協和音に感じられます。速いアルペジオでアレグロを構成するのはエリオドロのパターンかもしれません。II.の緩徐にも、III.のプレストにも不協和音の構成が明白ですが、その中に美しさを盛り込むのは変わりません。


3. Tre Movimenti, for piano, violin and cello (1968)
2.の7年後で不協和音はありますが、やや調性寄りに戻っている感じですね。三楽章"速-遅-速"構成はここでも同じながら、美しい流れに寄りかかるパターンからの脱却にもなっていて緊張感や幽幻さが高まっています。


4. Evoluziona No.5, for piano and violin (1976)
静パートが強調される楽風へと変わって、静の中に強音が出現する所謂(いわゆる)前衛的流れです。でも無調混沌とはなりませんから大丈夫?! シャリーノのグリッサンドの様な羽虫が飛ぶ様な流れも入っていますが、特殊奏法は使っていませんね。


5. Quartetto No.3 "La leggenda de San Oamiano"
  for piano, violin, viola and cello (1995)
19年後。幽幻さを残しながら調性回帰的な美しさが戻ります。20世紀後半で前衛は完全に停滞を越え多様性を迎えていますから、調性基軸になっているのはまさに時代の流れそのものです。エリオドロの本質である美しさが最大限生きている楽曲だと思います。


6. Aria, for piano, violin, viola and 2 cellos (1945)
最後に一番古い年代の楽曲に逆戻りします。アリアのパートをジョヴァンニのvcで歌わせる3'強の小曲でトリビュートでしょう。スローで美しいこれがコアなのですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  4celloヴァージョンで、もちろんジョヴァンニ・ソッリマです
  冒頭に語りがありますが伊語で意味不明ですw




エリオドロ・ソッリマの楽曲変遷がよくわかります。新ロマン主義的美しさから無調前衛へ、そして調性回帰の構成変化が明確です。前衛方向への舵きりが5-10年遅い印象ではありますが、時代の変遷が感じられるgoodな選曲です。

エリオドロ・ソッリマ本質の美しさが感じられ、大きな前衛の波を時代と合わせて聴く事が出来るオススメの一枚です!!

好みを分けるとすればディナーミク強調でのYouTube的高コントラストの演奏かも。コントラストを落として奥行を聴かせるパターンも'あり'では。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ユルギス・カルナヴィチウス(Jurgis Karnavičius)の「弦楽四重奏曲 第三番・第四番」

後期ロマン派としてインプレした弦楽四重奏曲 第一番・第二番に続いて、調性からの逸脱を強める続編が出ましたね。結果違った訳ですが…


ユルギス・カルナヴィチウス
(Jurgis Karnavičius, 1884/5/5 - 1941/12/22)
リトアニアの音楽家で、ヴィオラ奏者から音楽理論と作曲をロシアで学びペテルブルク音楽院で教鞭もとっています。

リトアニア独立後に戻り同国を代表するオペラ作曲家になっていますね。リトアニアの民族音楽やロシアの古典を軸に、時代背景の後期ロマン派から20世紀初頭のモダニズムを取り入れた楽風だったそうです。
ポリフォニーや楽器類を駆使して調性からの逸脱を図っていると記述がありますが、少なくとも弦楽四重奏曲には感じられませんね。



String Quartets Nos. 3 & 4
(Vilnius String Quartet)
弦楽四重奏曲の第三番・第四番です。時代背景的にはペテルブルク音楽院の時代になりますから、モダニズム的な楽風が取り入れられているか微妙なところですね。弦楽四重奏曲は4曲しか書いておらず、既出の第二番では不協和音を入れて調性を越えようとするスタンスだけは感じました。結果的には調性を越える事は無かった事になる訳ですが…

演奏はリトアニアをベースとするヴィリニュス弦楽四重奏団です。







1. 弦楽四重奏曲 第3番 Op.10 (1922)
I.アンダンテ、美しい主題には僅かな不協和音が仄かに感じられますが、本質は後期ロマン派なのは明らかで、構成もホモフォニーでトリオを挟みます。II.はリズム感を上げてアレグロにした楽章で、古典の印象と後期ロマン派時代のシェーンベルクを思わせますね。III.はLento. Allegro non troppoで遅早が混ざりややもたれ気味。中間楽章に緩徐を置いた方がフィットした印象です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ヴィリニュスのLIVEでIII.楽章です



2. 弦楽四重奏曲 第4番 (1925)
第一印象は第3番と同じ流れで、続けて聴いたら4楽章かと思ってしまいます。残念ながらモダニズムや調性からの脱却は感じられませんね。でも楽曲的には心地良い美しさがあって、それがカルナヴィチウスなのでしょう。
ここでも処々で"浄夜"の印象がふと浮かぶのが不思議です。



美しいメロディ・ラインの主題が印象的な後期ロマン派の弦楽四重奏曲です。その方向性が好きな方にはオススメですね。モダニズム的な操作は隠し味にもならないほどですから、全く心配はありません。

ヴィリニュスの演奏も濃淡をはっきりさせた流れを作って聴き応えがありますね。コンサートで聴いたら楽しめそうです。




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