FC2ブログ

ペア・ノアゴー(Per Norgard)の「Singing Secrets」ソプラノと小編成音楽で



ペア・ノアゴー
(Per Nørgård, b. 1932)
今年で89歳になるデンマーク現代音楽家の重鎮ですね。欧エクスペリメンタリズムが停滞する中、注目度が上がる若手デンマーク前衛の源となるキーの音楽家です。(勝手な個人的イメージかもw)

元々はシベリウス, ニールセン, ホルンボー, と言った北欧ロマン派的な音楽で、ホルンボーやパリでブーランジェに師事していました。
前衛への変化は1960年に欧エクスペリメンタリズムのポスト・セリエルの流れを受けて、独自の無限セリー(infinity series)を作り出した事になりますね。その手法を作品に使った'60-'70年代は欧前衛の停滞期と重なります。その後は多様性から調性回帰が強くなり、新古典主義的な楽風になっています。



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧



Singing Secrets
ソプラノと極小編成の室内楽です。それでも1953-2004年の作品が並んで、51年間に渡るノアゴーの楽風の変化が味わえるでしょう。ジャケット裏面にも"some of the distinctive steps of his musical journey"と書いてあります。(他にも楽風変化を味わえるアルバムはありますが…)

ソプラノ独唱、独奏、重奏、そして五重奏と言った編成の楽曲です。メンバーは、Signe Asmussen (sop), Irena Kavčič (fl), Helge Slaatto (vn), Anette Slaatto (va), John Ehde (vc), Erik Kaltoft (pf)
インプレは作曲年代順になっています。(曲No.がCDの並び順です)







1. 五重奏曲 Op.1 "シャガールへのオマージュ" (1952-52)
三楽章形式で"作品番号 1"の初期作品、クインテット(fl, vn, va, vc, pf)です。
 flのソロが冷たく荒涼な景色を奏でてvnが対位的に登場、そしてホモフォニー的に発展します。時折ポリフォニーも覗かせて、展開部(中間部)?では情景が荒れる様なアレグロ風になりますね。この第一楽章がメインで、調性にあって北欧風景的ロマン派音楽です。これが世界初録音とは驚きですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  Kvintet, Op. 1: I. Tempo giusto です



5. フラグメント 5 (1961)
2分を切るvnソロで まさにフラグメント。年代的には無限セリーのはずですが、旋律が明確で1.の様な印象を残します。ダブルストップを上手く使っているのが特徴的ですね。


2. Vintersalme part 1 (1976)
4. Vintersalme part 2
独唱曲ver.です。ここでも北欧ロマン派の様な透明感を聴かせてくれます。ちょっと教会音楽の気配もありますね。part 1, 2 はまるで繋がった一つの曲の様です。


3. 信子のための本 I.ソナタ "秘密の旋律" (1992)
タイトル通り今井信子さんの為に書かれた5パートのヴィオラ独奏曲"Libro per Nobuko"です。本当は今井さんの演奏で聴きたいですね。
 幽玄な旋律を鳴らしながら流れの良い調性楽曲で、ここでもダブルストップを効かせていますね。パート毎の落差は小さめで、タイトルに表現記号はありません。パートIII.では表情を少し厳しく、パートIV.はスケルツォ的です。極端な技巧パートはありませんが、vaらしい低音もしっかり響かせます。V.で中華和声を感じる?!、それが"The Secret Melody"??!!


7. カンティカ (1977, rev.2004)
チェロとピアノの重奏曲です。ここで初めて調性の薄い楽曲の登場です。オリジナルの'77は無限セリーにあったので、その流れを明確に残します。そしてそこにvcの幽玄旋律が被ってくる感じになっていますね。もちろんpfと逆の関係になる流れもあります。表現主義的な変化の厳しさも感じますが、セリエルと新古典主義の合体の様な曲で面白いです。2004年の改訂が生きているのでしょうね。


6. 2つの弦, 1つの声 (2004)
2分半のmezとvnの曲です。vnソロとメゾソプラノのソロを重ねた様な楽曲です。



作品番号1 から21世紀の曲まで、ノアゴーの音楽変遷を垣間見る事ができますね。ただ楽曲の選択に方向性がある感じで、全貌を聴くなら"ピアノ作品集"の方がオススメかも。

「1. 五重奏曲」と「7. カンティカ」が聴きどころで、共に世界初録音というのが驚きです。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ステイングリームル・ローロフ(Steingrimur Rohloff)の「Medea-Lysistrata」多岐の技巧表現



ステイングリームル・ローロフ
(Steingrimur Rohloff, b. 1971)
アイスランド生まれのドイツの現代音楽家です。(Nationalityは両国) ケルン音楽大学で作曲を習った後、パリ国立高等音楽院でグリゼーやストロッパらに師事しています。電子音楽についてはIRCAMにも参加しているので造詣は深いでしょうね。

経緯から見るとバリバリの欧エクスペリメンタリズムという感じですが、近年は舞台音楽に傾倒しているそうで、今回の作品もそうですね。



Medea-Lysistrata
(Henrik Vagn Christensen, cond.)
メインとなる"Lysistrata"はデンマークの詩人Peter Laugesen(voiceでも参加)との協調で作られたオペラの抜粋版になります。タイトルロールを初演で演じたTuva Semmingsen(mez)と演奏のEsbjerg Ensembleが同じく対応していますね。
古代ローマの同名戯曲(悲喜劇)を元に作られていて、性を下敷きとして暴力や権力と言った古典的なストーリーです。

"Five songs by Medea"も古代ギリシャのエウリピデスの作品を下に、Peter Laugesenとの協調で作られた"王女メディア(Medea)"の不貞と復讐の物語です。ここでも上記と同じメゾソプラノとアンサンブルを前提に書かれているそうです。

聴く順番は例によって作曲年代順で楽風変化も聴きたいと思います。(曲No.がCDの並び順です)







3. Lysistrata (2015-16)
6パートで全て抜粋です。演奏は深淵で神秘的な深海の様な音色、それがいきなりポップなサウンドに入れ替わり、ジャジーなインプロビゼーション風に変化したりします。和声的には民族音楽的な流れも使われて、それにメゾソプラノがホモフォニー的に入ったり、僅かながら特殊奏法も展開していている様です。
メゾソプラノは語りも多く、時にシュプレッヒゲザングにもなります。その際のBGMも変化して無調的な流れになったりポリフォニーになったり。ラストは聖歌風の流れになって閉じます。
多岐に渡る技巧を配置して単純にして複雑なパッチワークの様な多様性で面白いですねぇ。オリジナルのオペラを観たいと思いました。


2. Five songs by Medea (2019)
5パート構成です。いきなり無調ポリフォニー混沌風で入って来ます。そこから哀愁と浮遊感の調性旋律へと変わるのは、まさにローロフ的な感じですね。ここでも歌い方は様々、前衛色濃い跳躍音階のシュプレッヒゲザングから朗々としたクラシカルさまで次から次へと変化します。反復もあれば変拍子もかなり使って変化を付けて来ます。
再現性なく極端に流れが変化するので焦点を絞りづらい感じもありますが、"また変わるんだろうなぁ"って感じになって慣れて新鮮味が麻痺しますね。


1. Quel prix de mon amour (2020)
機能和声で僅かに不協和音を感じる美しい歌曲ですね。ローロフは美しい旋律を作る事でも評価されて"B.A.ツィンマーマン賞"を受賞しているそうですが、この辺りがそれに当たるのかもしれません。興味の範疇ではありませんが…


 ★試しにYouTubeでちょっと覗いてみる?
  アルバムの公式Teaserです




なんでもありの多岐多様性の万華鏡的サウンドです。調性から無調へ、ホモフォニーからポリフォニーへ、民族音楽とジャジー、そして特殊奏法からシュプレッヒゲザングまで。いろんな顔を見せます。

全方位包括の新しい流れと見るのか、まとまりに欠けると見るのか、微妙なラインではあります。でも、ありそうで無かった新しさは嬉しい限りですね。もう少し聴いてみたいと思います。



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方
   ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
     ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





クラリス・ジェンセン(Clarice Jensen)『The Experience Of Repetition As Death』は単なるアンビエント?!



クラリス・ジェンセン (Clarice Jensen, b. ????)
以下前回インプレ「For This from That Will Be Filled」の案内文転用です。

ジュリアードで習いN.Y.ブルックリンで活動する女性現代音楽家でチェリストですね。このブログでもマックス・リヒターのアルバムでの参加で知りましたが、ヨハン・ヨハンソンとの共演もあって、その時点でポスト・クラシカル系の音楽家とわかりますね。
N.Y.ではACME(American Contemporary Music Ensemble)の芸術監督(artistic director)を努めているそうです。

と書きましたが、単なるヒーリング系ではなくてエクスペリメンタリズムも垣間見る面白さがありましたね。ドローン・アンビエントですが、エフェクトペダルを使ったチェロや多層化したループ、ライヴエレクトロニクス等の電子処理を駆使しています。



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧



The Experience Of Repetition As Death
タイトルは米女性詩人アドリエンヌ・リッチ(Adrienne Rich)の “A Valediction Forbidding Mourning” からの一文だそうです。テーマは人生に存在する"反復, repetition"と言う概念。え〜と…よくわかりませんね。演奏は本人のチェロとエレクトロニクス処理ですね。

音楽では常套手段の"反復"ですが、その主題(theme)は1. 2. 5.で使われているそうです。実際には二三音の構成なので主題や動機には感じません。







1. Daily
長さの異なる5つのループテープのレイヤで、重なりの偶然性を使っているそうです。
ロングトーンのvc音が重なるドローン系サウンドですね。上記の通り5つの演奏が重なっています。そしてそれぞれが反復で出来ていて、音の並びは機能和声の短旋律主題です。技巧的には興味深いですが、聴くだけですとヒーリング音楽です。組み合わせをテンポ変化を含めて極端にランダムにしたら面白そうですね。

2. Day Tonight
ガサガサしたvoiceの様なエフェクトで、短旋律の主題は1.で使われたものです。徹底反復でドローンに流れますが、そこにシンセの様な音が被ってライヴエレクトロニクス的な流れになっていますね。ガサガサのエフェクトは途中で消滅して後半はミニマル風になっています。

3. Metastable
病院で聞かれるビープ音にインスパイアされたそうです。
低音が響く単音の繰り返しグォーン・グォーンの上に細い単音もしくは二音反復が神経質に流れ込んで増幅して行きます。まさに信号音の重なりです。これはこれで面白い効果を見せてくれます。

4. Holy Mother
タイトルはチョモランマ(エベレスト)を指しているそうです。
澄んだ音色の高音反復旋律が静空間に存在、重厚な低音が覆い被さる様に重なります。途中からミニマル的な流れが強まりますが、ヒーリング的なアンビエントでもあります。この流れは平凡に感じるでしょうねェ。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  映像が付いていて一種のインスタレーションでしょうか


5. Final
"1. Daily"と同じループテープを使っていますが、様々な手法で劣化させているとの事。
vcの音色はしっかりと残した入りで、そのまま続きます。特に劣化の印象はありませんね。音質以外に何か劣化("degradation to erode"です)させてるのでしょうか? ピッチであればわからないでしょう、音質やテンポの歪みならわかるかもしれませんが。よくわかりませんね。



短旋律の徹底反復のドローンですね。そう言うとミニマルに思うかもしれませんが、主流はアンビエントです。

技巧的に凝っているのですが、今回は聴こえる範疇にその前衛的な部分が見えないのが残念。解説を調べずに聴いたら単なるアンビエント&ミニマルとしか感じられないのが気になりますね。




テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





素晴らしい『マーラー 交響曲 第5番』 «ネット配信» クラウス・マケラ/パリ管弦楽団 2021年6月16日



クラウス・マケラ | パリ管弦楽団
(Klaus Mäkelä | Orchestre de Paris)
注目の若手指揮者マケラが主席指揮者になったパリ管。半年前にもマーラーの第9番を映像付きで聴かせてくれましたが、今回はレベルを上げての第5番ですね。もちろん "Philharmonie de Paris LIVE" から映像付きの配信です。

前回よりも方向性が明確化していて、マケラ/パリ管のスタンスが見えて来ましたね。


▶️ Philharmonie de Paris LIVE (2021年12月16日まで公開です)





«ネット配信»
マーラー 交響曲 第5番

:mahler5-KlausMakela-jun2021.jpg
[Live at Philharmonie de Paris, 16 Jun 2021]


第一部
スローで僅かに揺さぶりを入れた葬送行進曲からファンファーレ導入句は適度に抑えて。第一トリオは激しさよりも華やかさ、第二トリオは哀愁の中に美しさがありますね。
第二楽章第一主題は速く切れ味で第一楽章第一トリオをとの差別化を、第二主題も哀愁感を強めて同様の意図を作っています。展開部 "烈→静→明"のコントラストもアゴーギクを上手く使って心地良さがありますね。vc動機の美しい落ち着きが印象的です。鳴りが良く見晴らしのきいた第一部です。

第二部
スケルツォ主題は穏やか軽やか、レントラー主題も緩やかなアゴーギクで優美さを磨いています。第三主題はオブリガートホルンを引っ張る様に静で鳴らして、弦楽奏の優しさとフィットさせていますね。続く変奏パートも静スローを上手く作って、流れの締めとなる展開部でもスローから入って華やかに落ち着いています。再現部は晴れやかにコーダに繋げ、興奮を避けた華やかさです。軽妙洒脱なフレンチのスケルツォ楽章ですね。

第三部
第四楽章主部はスローの静美で透明感があります。中間部は繊細さと切れ味で、濃淡のコントラストが効いたアダージェットです。
第五楽章は軽妙な序奏を第一主題につなげ、第二主題は力感のvcでコントラストを。気持ちよく絡んでコデッタはもちろん優美です。展開部はテンポアップしながら力感を上げる王道、山場は抑えつつも気持ち良く鳴らします。再現部主題はスローに色付けて、山場からコーダは華やかそのもので快感!! 見事なアッチェレランドで駆け抜けます。個性は低いですがスカッと見晴らし良い最終楽章になりましたね。


鳴り止まない拍手、指揮者の起立指示をオケが拒否してオーディエンスのアプローズを譲り足踏みで称賛します。そして拍手はいつの間にか手拍子に。見事なコンサートで見られる風景がありました。



美しさと心地よさのマーラー5です。力感や興奮を避けてクセのないアゴーギクの色付け、王道演奏に上手く+αの個性付けをしています。その代表が第三楽章(第二部)でしょう。

ハーディング時代のパリ管のマーラーとは違い、見晴らし良く聴かせてくれるのは嬉しい限りです。マケラ/パリ管に注目で、来日機会があれば行きたいですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ターリヴァルディス・ケニンシュ(Tālivaldis Ķeniņš) の『交響曲 第4・6番, カンツォーナ・ソナタ』



ターリヴァルディス・ケニンシュ
(Tālivaldis Ķeniņš, 1919-2008)
先日インプレしたと思ったら新譜が既にリリースされていましたね。以下、前回「交響曲第1番 | 2つの協奏曲」の紹介文を引用です。

ラトビア生まれでカナダで活躍した現代音楽家ですね。父親がソ連占領下で国外追放となりパリに逃れて1945-1951の間パリ音楽院でメシアンに師事していますね。その頃はピアニストで生計をたてていた様で、室内楽でピアノが活躍するのはそう言った経緯もありそうです。

1951年(頃)にはダルムシュタットにはセプテットで登場、その時の指揮者は何とH.シェルヘンだったそうです。同年カナダに移住。翌年にはトロント大で教鞭を取り始めて32年間続け、カナダでは委嘱作品が多い音楽家だったそうです。
経歴から見ると前衛に感じますが全くその方向はありませんw



Symphonies Nos. 4 & 6 | Canzona Sonata
(Latveian National Symphony Orchestra, Guntis Kuzma, cond.)
前回は1959-1990、今回は1972-1986ですから作品年代が狭まって初期の民族音楽和声から中期の新ロマン主義的になる時代の作品になりそうですね。

演奏は前回と同じグンティス・クズマ指揮, ラトビア国立交響楽団になります。ジャケットも酷似していますね。







1. 交響曲 第4番 (1972)
二楽章形式です。静の神秘的な流れで入って、徐々に緊張感を上げて強音パートを迎えると、一転 出し入れの強い流れになります。'ありげ'で違和感はありませんね。神秘渦巻く緩徐とスケルツォを合わせた様な第一楽章です。
第二楽章はアレグロ的に出し入れを強くメリハリを付けていますが、スグに静の幽玄さの緩徐が戻ります。ただ表情変化に乏しく、少し眠くなってしまいました。コーダは少し激しいですが…

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  John Avison (cond.), CBC Vancouver Chamber Orchestra の演奏です
  こちらの方が表情があって面白いです



2. 交響曲 第6番 フーガ交響曲 (1978)
神秘から陰鬱に流れが変化しています。反復とフーガですが出し入れの強いパート以外は変化率は低め、それがついつい退屈さに繋がってしまいます。処々で新ロマン派的な美しさは見せてくれるのですが。


3. カンツォーナ・ソナタ ヴィオラと弦楽オーケストラの (1986)
vaの旋律に珍しく聴いてわかる動機が感じられますね。それがネクラな低弦の上に乗って変奏されて行き、ここでもフーガ的に弦楽奏がその動機を追いかけて行きます。vaの存在感が大きく、そのパートをアルトで歌唱させても面白そうな感じがありますね。
超絶技巧性やカデンツァはありませんが、この曲が一番面白いです。



出し入れの強さと反復、心地良い明確な主旋律が存在は無く、ベースの流れは幽玄さや陰鬱さです。

調性基軸の今の時代のクラシック音楽ですが、"何処かで聴いた様な"グループの仲間入りかも。(既に亡くなられていますが)
とは言え、ヴィオラが生きた3.は面白いですね。



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方
   ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
     ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ドゥダメル指揮/ロサンゼルス・フィルの「マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"」



グスターボ・ドゥダメル Gustavo Dudamel
(Los Angeles Philharmonic, 2019-5/30, 31, 6/2 Live rec.)
ドゥダメルのマーラー第8番と言うとすぐに浮かぶのはシモンボリバル響とロサンゼルスフィルを擁し、ステージを埋め尽くした1400人のパフォーマンス映像が浮かぶ訳ですが、残念ながら未所有。

今回リリースのマーラー8は2009年から首席指揮者を務めているLAフィル100周年シーズン記念のコンサートからですね。

主役の8人のソリストは以下の通りで、注目の藤村さんは#1アルトですから二部のスケルツォパートで"成熟した天使たち"に登場して、フィナーレで"サマリアの女"を歌いますね。

Tamara Wilson(sop), Leah Crocetto(sop), Joélle Harvey(sop), 藤村実穂子(mez), Tamara Mumford(mez), Joseph Kaiser(ten), Ryan McKinny(bar), Morris Robinson(bas)





マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"



第一部
提示部:「来れ創造主たる精霊よ」がいきなりのハイテンションで入って、パッセージも荒々しく流れは速めです。第二主題の#1ソプラノが神経質に登場すると、続く重唱もかなり自由で速く尖った印象です。
展開部:入りの管弦楽奏は暗く怪しさを奏で、再び現れる重唱群は緊張感がありますね。第一主題変奏の合唱は激しさを増しています。
再現部:第一主題を速さと各パートの絡みを強くして大きく歌い、コーダの少年合唱団の"Gloria…"はキレキレの独唱群に飲み込まれる様な勢いになっています。
速いテンポと尖った歌唱群が叫ぶ第一部です。


第二部
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
5度下降のピチカートを暗く光らせる主題、緩やかな流れを作ります。それでもテンションを感じて少し落ち着きが不足気味ですね。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
「合唱とこだま」は序奏の流れをそのままキープ、「法悦の神父」力感を抑え気味に愛の痛みと喜びを歌います。「瞑想の神父」はバスと言うよりもバリトン的に朗々と自然と神を讃えますね。

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
このパートの中核「成熟した天使たち」ではvnのソロと合唱を受けて#1アルトの藤村さんの艶やかな歌いが美しく登場、象徴的で素晴らしく流石は藤村さんですね。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールは約束通りに通ったハイトーンを聴かせます。マリアを讃えるこの声が必須ですね。vc独奏が第一主題を奏でると合唱が加わり、スロー緩徐に一転して「かつてのグレートヒェンの告白」#2ソプラノが合唱に浮かび上がります。
「サマリアの女」で再び藤村さんが登場、落ち着いたアルトを見事に聴かせます。「エジプトのマリア」のアルトは切れ味、そして 慈悲をこう"贖罪の女三人の合唱" での絡みは一つのハイライトでしょう。
「懺悔する女 (グレートヒェン)」が再登場でファウストを導きを伸びやかに歌うと、「栄光の聖母」が美しいソプラノで促します。一瞬の出番しかない聖母マリアはこの曲のキー歌手ですが、暖かさがあってフィットしていますね。一番の聴かせ処です。
「マリア崇拝の博士」が伸びやかなテノールでマリアを讃え、合唱と共にコーダへ。

【5. コーダ:神秘の合唱】
静まって入る「神秘の合唱」では合唱団が厳かに例の"母性的なもの"を歌います。そしてソリストが入るとクレッシェンド的に山場へ向かい、ラストは大きく高みへと広げます。



あっという間に終結で落ち着きに欠けるマーラー8でしょうか。第二部でどこにフォーカスしたのか感じづらく、ラストの感動も薄めなのは痛いですね。第一部の速くて切れ味を全面にした流れは興味深いのですが…

そんな中ですが、表現力の高い藤村実穂子さんがやっぱり見事だったので'良し'としましょうw 藤村さんのマーラーとシェーンベルク「グレの歌」の'山鳩'は本当に素晴らしいですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





バイエルン国立歌劇場公演2019 コルンゴルトの歌劇「死の都」の素晴らしさ:NHKプレミアムシアター



COVID-19前夜の2019年12月のバイエルン国立歌劇場、エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルト(1897-1957)のオペラ「死の都 Die tote Stadt」(1920) ですね。若きコルンゴルト23歳の作品です。

以前に較べCDやコンサートで取り上げられる事が増えているコルンゴルトですが、年代的には後期ロマン派終焉から前衛現代音楽全盛期に生きた微妙な世代ですね。シェーンベルクよりも23歳も若い訳ですから。

今回の注目は二つ。カウフマンとS.ストーンの演出ですね。



(Official Trailerです)


演 出
前衛性はゼロで、狂気的なパウルも設定されていません。ストーリーにも勿論手を付けていませんね。
特筆があるとすればそんなシンプルさの中に光る主人公の個性を際立たせた上手さでしょう。

舞台・衣装
廻り舞台を活かした建築物(部屋)を中心に据えています。室内装飾は現代的になっていますね。ノートPCはMacですしw
そうなると衣装は至って現代のごくシンプルさです。

配 役
【女性陣】マリエッタ/マリーのペーターゼンが素晴らしかったです。ちょっとmezっぽいsopで歌唱で聴かせてくれましたが、それ以上に演技に惹かれましたね。ペーターゼンは明るくやんちゃなマリエッタそのものでした。
出番の少ないブリギッタ役のジョンストンも、半歩引いた役柄をとても上手く出していました。

【男性陣】パウル役のカウフマンのテノールはやっぱり聴かせますね。ハイトーンも伸びやかに、リリコかスピントかと言った感じでしょうか。演技は例によってワンパターンっぽさもありましたが、ラストは流石でしたね。
フランク/フリッツのフィロンチクも、マリエッタに対するブリギッタのミラーリフレクションの様に演技を含めて役柄にフィットしていました。

音 楽
メリハリと音の出し入れが明確ですが、感情移入は少なめの印象。それがペトレンコらしさでしょう。オペラの音楽というよりも管弦楽として演奏した様な。


二人の役が見事にフィットした素晴らしさが光りましたね。シンプルな舞台・衣装・演出もメインキャスト四人が作るストーリー性を引き立てた感じです。

近年のシンプル化する舞台と較べると大物配置でしたし、明確なストリーの置き替えもありませんでしたが、十分な観応えの「死の都」になったのではないでしょうか。


<出 演>
 ・パウル:ヨナス・カウフマン [Jonas Kaufmann]
 ・マリエッタ/マリーの幻影:マルリス・ペーターゼン [Marlis Petersen]
 ・フランク/フリッツ:アンジェイ・フィロンチク [Andrzej Filonczyk]
 ・ブリギッタ:ジェニファー・ジョンストン [Jennifer Johnston]
 ・リュシエンヌ:コリンナ・ショイルレ [Corinna Scheurle]
 ・ヴィクトリン/ガストーネ:マヌエル・ギュンター [Manuel Günther]

<合 唱> バイエルン国立歌劇場合唱団, 同児童合唱団
<管弦楽> バイエルン国立管弦楽団 [Bayerische Staatsorchester]
<指 揮> キリル・ペトレンコ [Kirill Petrenko]
<演 出> サイモン・ストーン [Simon Stone]


収録:2019年12月1・6日 バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)





早くもDVD,BDでリリースされる様ですね


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





プロフィール

kokoton

by kokoton
.

    

カレンダー
05 | 2021/06 | 07
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -
ようこそ
カテゴリ
ありがとうございます