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マーク・アンドレ(Mark Andre) の『Riss 1-3』



マーク・アンドレ
(仏記: Marc André, 1964/5/10 -)
仏出身でドイツを拠点に活動する現代音楽家ですね。仏でグリゼーに習い、活動が本格化するのは独に渡りラッヘンマンに師事してからだそうです。と言うわけで名前をドイツ表記にしている訳ですね。ダルムシュタットでも活躍して、現在は教授として指導の役割も果たしています。

宗教曲から始まり電子音楽、クラスターからラッヘンマンの影響かつファーニホウの"新しい複雑性"の衣(難読記譜)まで被り、特殊奏法による微分音から極端な静音、空間音響まで、まさに今の欧エクスペリメンタリズムの塊の様相です。



Riss (2014-17)
(Ingo Metzmacher cond. Ensemble Modern)
女性神学者のマルガレータ・グルーバー(Margareta Gruber)のエッセイ"Der Vorhang zerreißt (The Curtain Rips)"に触発されて作られたアンサンブル曲だそうです。元々ベースにある宗教的な背景が強く作用している様ですが、直接的に楽曲に反映されている事はありませんね。三つのパートの初演は個別でRiss 2-3-1の順に、通しは本CDの顔ぶれで2019年に行われています。

演奏はそのインゴ・メッツマッハー指揮、アンサンブル・モデルン、お馴染みの顔ぶれですね。



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1. Riss 1
音数が少なく、空間に音が散らばる様な印象で、緊張感が漂っています。もちろん無調ポリフォニーですが音の関係があってホモフォニーとの境界が見え辛いのかもしれません。特殊奏法が現れてノイズ系の様相も見せ、鋭く短い突出音が散出して来るのもパターンの様です。空間音響とノイズの音楽ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  M.ピンチャー指揮、アンサンブル・アンテルコンタンポランの演奏です
  LIVE音源で2017なので初演音源でしょう



2. Riss 2
静空間の印象が 1.よりも強いです。等拍リズムが入ったり、特殊奏法の打音もあったりと拍子の意識も感じますね。途中から強音を出すパートもありますが、特徴的なのは無音に近い静音が居たりして、聴く側の環境を要求しそうなパートが気になります。残響音を延々と引っ張って終わるのは何処かにあった様な感じですが、そればかりで全部作ったらもっと面白い?!


3. Riss 3
ここでも楽器のボディを叩く音の等拍リズムを強調してきます。このパターンはブーレーズを思い出してしまい、目新しさはありませんが…
突出音も登場して、2.と1.の中間色の印象でしょうか。



今までの欧エクスペリメンタリズムを詰め込んだ様な違和感のない前衛現代音楽です。無理矢理言えば、"基軸は静の空間音響系ノイズ"になるでしょうか。特殊奏法もラッヘンマンで出尽くしている感じですよね。

いずれ「どこかで聴いた様な…」を逃れる事が出来ないのは事実でしょう。インスタレーションでもあるのならまた違う味わいがあるかもしれませんね。




テーマ : クラシック
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エンノ・ポッペ(Enno Poppe) のソロ・室内楽集『Stoff』欧エクスペリメンタリズムの今



Stoff
(Enno Poppe, b. 1969)
このブログではオススメの欧前衛現代音楽家・指揮者のエンノ・ポッペ、若手だとばかり思っていたらいつの間にか50代になっていました。写真も随分と老けましたねェw

楽風はノイズや反復から、微分音を中心に電子処理(シンセサイズ)された音楽になります。調性旋律も普通に取り入れる多様性であり、極度に音密度の高いサチュラシオン系の様相も見せますね。そしてインスタレーションにも踏み入れて、まさに今の時代の欧エクスペリメンタリズムの現代音楽です。(過去記事から再利用w)


演奏は、Dirk Rothbrust (drumset, 1)、Hannah Weirich (violin, 4)、Ensemble Musikfabrik (2, 3, 5)、指揮はもちろんポッペ本人です。今回はエレクトロニクスは使われません。



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1. fell, for drumset (2016)
パーカッションではなく、太鼓系ドラムセットで鍵盤打楽器がありませんから音階を表現しません。あえて言うならシンバルやギロと太鼓の音で僅かな音階を感じさせるくらいで、シンプルで難しい曲です。ロックやジャズのドラムソロのヴィルトゥオーソ的なイメージもなく、現代音楽的な印象。何言ってるかわからないですよね。(爆)


2. Stoff, for nine players (2015)
9人の弦楽奏曲です。短い弦グリッサンドの反復、clやflの細切れの音、そんな短い音がポリフォニカルに絡みます。基本的に反復・変奏ですね。途中でホモフォニーになって、それを背景音にして各楽器が乗っかります。その後も表情変化は絶やしません。極端な特殊奏法も使わず単純構成にもならない、その構成感は流石ポッペです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Peter Rundel指揮、Ensemble Resonanz の演奏です



3. Brot, for five players (2007/13)
tbとパーカッションの対話から入って来ます。やっぱり反復・変奏が特徴的です。そこにpfが加わって対話の言語が増える感じですね。ここでも細切れ音のポリフォニーが明確で、後半は前衛系ジャズ・インプロビゼーションの印象もあるかも…


4. Haare, for violin solo (2013/14)
vnの独り言の様な音楽です。グリッサンドは言葉みたいで、時に一人二役で何か喋っていますw もちろん基本は反復・変奏ですね。


5. Zug, for seven brass players (2008)
金管の倍音共鳴でポッペとしては珍しいロングトーンの重なりで入って来ます。そこからホモフォニー的な流れを作りますね。面白いのは倍音の鳴りで、金管(brass)の音色が頭の中でクワーンと共鳴します。



この辺りが今の欧エクスペリメンタリズム音楽なのでしょうね。目新しさには欠ける感はありますが、煮詰めた安心感の前衛現代音楽です。

最近では米現代音楽でもC.チェルノヴィンの様にノイズ系前衛から新しい構成に進んだりしていて、いつかは新しい扉が再び開かれるかもしれませんね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





リトアニアの現代音楽家 ジブオクレ・マルティナイティーテ の「Saudade」ポスト・ミニマル



Saudade
(Žibuoklė Martinaitytė, 1973/5/4 - )
ジブオクレ・マルティナイティーテはリトアニア出身の女性現代音楽家で、活動の拠点をニューヨークに置いています。ありげなパターンですね。リトアニアで学び、ダルムシュタットや仏IRCAMでも習っている様で、ソロ・室内楽・管弦楽・声楽と作っていていますね。

管弦楽曲(1, 2, 3: Lithuanian National Symphony Orchestra)とピアノ協奏曲(4: Lithuanian Chamber Orchestra, pf: Gabrielius Alekna)。タイトルは邦題にすると「郷愁」だそうです。

楽風変化がわかり易い様に、年代順に聴いてみたいと思います。(数字が収録順です)







3. Horizons (2013)
調性の管弦楽曲で、今の時代らしい幽玄さを感じます。グリッサンドを使った音の変化やミニマル的トレモロのテンポ変化を使って表用をつけていますが、ベースは弦のトリル・トレモロですね。中間部?の静に渦めく混沌の音色は面白く、よく練られた構成感ある楽曲です。全体的にディナーミクのレンジが広いですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  "University of the Pacific Symphony Orchestra"のLIVEです



4. Chiaroscuro Trilogy, for piano and string orchestra (2017)
弦楽奏とのピアノ協奏曲(三楽章)です。第一印象は上記3.と似た音の構成感ですね。弦のトリル・トレモロの上にpfの同反復的な音色が被ります。ここでもダイナミックレンジは広く、幽玄さよりも混沌陶酔的な反復傾向が強まっているでしょうか。第二楽章は緩徐ですが、構成は似ていて静音化させているだけの印象です。それでも面白さが伝わりますね。第三楽章も高音pfの音色に拘った感じが生きています。


2. Millefleur (2018)
ここでも基本構成は変わりません。静音側への傾倒が強くなっているかもしれません。薄い旋律の中に色々な音が混じって、ある種の陶酔ポリフォニー的印象も感じますね。


1. Saudade (2019)
ここでも基本は同じですが、反復旋律に美しさも出てきた感じです。



陶酔系ポスト・ミニマルで、基本構成が、①弦のトリル・トレモロ、②単純音階反復、③ディナーミクの広レンジ、です。

調性音楽ですし目新しさがあるわけではないのですが、構成感がある流れで飽きさせませんね。



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クロード・ベイカー(Claude Baker) の「Piano Concerto "From Noon to Starry Night"」は強烈な出し入れです



クロード・ベイカー
(Claude Baker, 1948/4/12 - )
ノース・カロライナ生まれの米現代音楽家で、米国内を中心に活動していますね。米国内の大学・音楽院で学位を取得して、米オケを中心とする委嘱を多く受けていて受賞歴も華やかです。


Piano Concerto "From Noon to Starry Night"
(Indianapolis Symphony Orchestra, インディアナポリス交響楽団)
ピアノ協奏曲と管弦楽曲ですね。
1.のピアノ協奏曲はインディアナポリス交響楽団、インディアナ大学ジェイコブズ音楽院 他からの委嘱作品で、初期のキーボード楽曲を拡張したものだそうです。5パートで、米詩人ウォルト・ホイットマン(Walter Whitman)の五つの詩が元になっています。ピアノはお馴染みマルク=アンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)ですね。(アムラン好みの曲とは思えないのですが…)

2.の管弦楽曲は、ノースカロライナ交響楽団の理事会長?の死を悼んで作られたそうです。英タイトルは“Swan Song”で、ハイネの詩を元にしています。







1. Piano Concerto "From Noon to Starry Night" (2010)
新古典主義的な米オケ委嘱音楽です。強音パートが強く、出し入れの強い楽曲ですね。pfも走りまくる印象です。アムランのLIVE演奏なので打鍵の強さが明確ですね。

緩徐パートも幻想的で明確な主題(動機?)が存在しますが、全体が緩徐の楽章は無くいずれ強音パートが挟まれています。超絶的なpf技巧パートなどもあるのですが、強鍵強音パートは無理やり叩かせてpfを鳴らすだけといった不自然さが際立ちます。
構成も同じ様な強弱入れ替わりで退屈楽曲変化が薄いかもしれません。


2. Aus Schwanengesang (2001)
ここでも弦楽や木管を無理やり走らせる、(#1)のpfの様に、不自然さがあります。美しい旋律との対比をしているのかもしれませんが、全く計算されたアンフィットさがありません。調性旋律を崩しながら無調混沌化するパートもあるのですが、そこも然りです。

調性米オケ音楽に無理やり前衛や大強音を押し込んだ不自然な音楽です。打楽器などうるさいだけの様な。


 ★試しにYouTubeで丸ごと聴いてみる?


フィルム・ミュージックの様ないかにも米オケ委嘱音楽をベースにして無理矢理の炸裂強音を混ぜて来ます。年が経つにつれて多少の馴染みは出ますが全く着いて行けません。

あまり聞いた事がない方向性の多様性現代音楽?で、強烈な半端感と"うるささ"が否めず残念です。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





クロノス・クァルテットで聴く ピート・シーガー作品集「Long Time Passing 花はどこへ行った」最後に感動が



Long Time Passing Kronos Quartet and Friends
(Pete Seeger, composer 1919-2014)
米前衛クロノス弦楽四重奏団がピート・シーガーに敬意を評して作られたアルバムですね。ヴォーカルはフレンズと言う形で起用されています。

アルバム・タイトルですが、代表曲の一つ " Where have all the flowers gone?" 邦題「花はどこへ行った」のタイトルに続く歌詞が "Long time passing" で、そこからとっていますね。まさに長い時が過ぎた訳です。

今の若い人たちはピート・シーガーを知っているでしょうか?! 米反戦活動の中で、フラワー・ムーブメントの前にプロテスト・ソングの時代がありました。シーガーの曲はその渦中にあり、ジョーン・バエズやPPM, ザ・バーズと言ったフォーク歌手・グループがこぞって取り上げていた訳です。
最も有名な曲はみんな知っている(よねw) "We shall overcome 勝利を我らに" で、日本でも新宿西口の反戦集会で歌われましたね。

先に結論を言うのも何ですが、米現代音楽家ジュリア・ウルフの様なアメリカ史に残る遺産を再認識するスタンスを感じました。







1. Which Side Are You On? - 2. The President Sang Amazing Grace - 3. Raghupati Raghav Raja Ram - 4. Waist Deep in the Big Muddy - 5. Jarama Valley (Live in Barcelona) - 6. Garbage - 7. Storyteller - 8. Mbube (Wimoweh/The Lion Sleeps Tonight) - 9. If I Had a Hammer - 10. Where Have All the Flowers Gone? - 11. Step By Step - 12. Anda Jaleo (Live in Barcelona) - 13. Kisses Sweeter Than Wine - 14. Turn, Turn, Turn - 15. We Shall Overcome

いきなり1.のヴォーカル・フィーチャーで完全なフォークソング。vcのピチカートはフォークソングのベースみたいです。歌に入る前の短い導入パートに僅かにノイズ系他の前衛的な弦楽を聴く事ができる程度で、一部を除いて3'〜5'のクロノス4が伴奏するピート・シーガーのフォークソングです。

メインの16'を超える"7. Storyteller"だけはシーガーの歌声や演奏, インタビューを貼り合わせた前衛的コラージュ技法になっています。歌声に沿って流れる弦楽四重奏は、カントリーソングのフィドルの様なサウンドになって行きます。途中でシーガーのバンジョー演奏も使われて、インタビューにはフィットする様なサウンドを嵌め込んでいますね。
これはピート・シーガーの主張や生き様にフォーカスしたオリジナル構成でしょう。

唯一歌の入らない"3. Raghupati Raghav Raja Ram"は澄んだ音色の弦音を生かして神秘的な弦楽四重奏になっています。こういった今の時代の弦楽四重奏方向での再構築かと思っていた訳ですが…

"10. Where Have All the Flowers Gone?" "14. Turn, Turn, Turn" と聴き進む内に歌詞(主張)に惹き込まれていました最後に子供たちと歌う "15. We Shall Overcome" は感動的で、すっかり魅了されました。




  カーネギーホールでのLIVEです。"10. Where Have All the Flowers Gone?" と
  ピート・シーガーへの想いが語られています。邦訳付きなので、ぜひ一度どうぞ!!



ただの歌付きフォークソングの焼き直しでは無かったのですね。シーガーが伝えた時代背景と主張に敬意を表したクロノス4の表現だったわけです。

聴き進むに連れ歌詞が心に伝わり、ラスト"We Shall Overcome" の子供達の合唱はグッと来ました。その時代を再確認させる、素晴らしいアルバムになりましたね。



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現代音楽ヴァイオリン&ピアノDuo集『Phantasy of Spring』フェルドマン | B.A.ツィンマーマン | シェーンベルク | クセナキス



Phantasy of Spring
(Carolin Widmann, vn | Simon Lepper, pf)
カロリン・ヴィトマン(vn)が選んだ20世紀のビッグネーム前衛現代音楽家のヴァイオリン・ソナタ集ですね。いずれ紹介無用の四人でしょう。

1.(1978, フェルドマン)と4.(1979, クセナキス)が前衛停滞が明らかになった1970年代、それに挟まれる2.(1950, B.A.ツィンマーマン)と3.(1949, シェーンベルク)が前衛全盛の1950年前後と言う年代対比が作られています。
面白いのは後者は前衛全盛にもかかわらず新古典主義作品、実験的無調や十二音技法, セリエルが選ばれていない事ですね。

C.ヴィトマンは現代音楽家でcl奏者のイェルク・ヴィトマンの妹ですね。2018年のサントリーホール国際作曲家委嘱シリーズで二人揃って来日したのを思い出します。pf伴奏はサイモン・レッパーです。



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1. Spring of Chosroes [Morton Feldman]
特殊奏法を交えた(?)反復・変奏、そして音数少ない静音構成はフェルドマンらしさでしょうね。vnとpfは時に対位的でDialogue的、調性を感じる旋律を基本に不協和音に崩します。


2. Sonata fur Violine und Klavier [B. A. Zimmermann]
I. Sonata - II. Fantasia - III. Rondo
初期の新古典主義的作品で、"I. Sonata"は出し入れのコントラストが強い流れです。主旋律(主)と反復(従)のホモフォニー関係が明確で、vnとpfが役割を入れ替えます。途中で舞踏的な民族音楽和声も登場して面白いですね。
"II. Fantasia"は緩徐楽章で、二つの楽器の関係はここでも主従ですが尖った印象を受けます。
"III. Rondo"は刺激の強い流れが帰って来ます。主従関係は崩れず、ツィンマーマンらしい強コントラストを味わえます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  "I. Sonata"です。演奏はCDの方がレベルが高いですが
  Rachel Koblyakov(vn)、Orlando Bass(pf)です



3. Phantasy, Op.47 [Arnold Schoenberg]
渡米後の晩年の作品 "ヴァイオリンのためのピアノ独奏付き幻想曲" ですね。
一瞬 2.の延長の様な印象ですが、vnとpfの協調性は1.に近い対話の様な形になっています。そしてその流れが2.の様な従が反復のホモフォニーにも変化します。そう言った様相変化がある新古典主義が米でのシェーンベルクでしょう。


4. Dikhthas [Iannis Xenakis]
いきなりpfの左右手ポリフォニカルで激奏(走?)で驚きます。調性基軸ですがvnもpfも鳴らしまくってクセナキスらしさ全開、楽器は二つですが時にポリフォニーにさえ聴こえます。神経質な響も持ち合わせて表情変化も大きく 楽しめますね。



作曲者の個性が明確な素晴らしい四曲と演奏でオススメの一枚です。調性ベースの多様性と新古典主義で安心感?もありますねw

興味深いのは2.3.の新古典主義作品で、B.A.ツィンマーマンは初期でシェーンベルクは晩年。実は二人の作風を代表する年代ではありません。あまり味わえないこの時代の素晴らしさが聴けるのも嬉しいですね。
(ツィンマーマンはコラージュの後期、シェーンベルクは後期ロマン派から十二音技法への渡米前がメイン)




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ミルトン・バビット(Milton Babbitt) の「Piano Works」で聴く20世紀前衛音楽の限界



ミルトン・バビット
(Milton Babbitt, 1916–2011)
個人的には興味が湧かない古い前衛現代音楽家の一人、M.バビットです。今更にはなりますが。
年代的にはジョン・ケージ(b. 1912)と同じ1910年代生まれです。欧エクスペリメンタリズム前衛で吹き荒れたセリエルの源流と言われる米現代音楽家で、その欧三羽烏(シュトックハウゼン, ブーレーズ, ノーノ)は1920年代生まれになりますね。要は前衛全盛期の音楽家と言う事になります。

元々数学に素養を持っていて、"time-point technique"と言ったセリエル技巧を駆使する頭デッカチ前衛の代表ですね。新しい音色を探してエレクトロニクス(シンセ)を目指した時期もありました。



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Piano Works
(Robert Taub, pf)
M.バビットの作品変化を聴ける年代別のピアノ曲集です。

【第一期: 1935-】新ウィーン楽派の影響から十二音技法やセリエルを構築しつつ、同時に数学研究も並行して進めています。

【第二期: 1961-】電子音楽に興味を持ち "RCA Mark II Synthesizer" を駆使する様になります。目的は刻むリズムの正確さよりも音色にあったそうです。そして、アコースティックとエレクトロニクスを協調させる方向に向かいます。時代はポスト・セリエルが叫ばれる様になりますね。

【第三期: 1980-】エレクトロニクスから十二音技法・無調へ回帰しますが、そこには調性との融合が図られているそうです。時代は既にセリエル終焉、調性との多様性になっています。

ピアノはバビットの技巧を弾きこなした事で知られるロバート・タウブです。







1.【第一期: 1935-】
1. Three Compositions (1947) - 2. Duet (1956) - 3. Semi-Simple Variations (1956) - 4. Partitions (1957)
無調のピアノ曲です。1.では"速・遅・速"の3パートでディナーミクとアゴーギクの設定が明確、調性音楽からの音の崩しを感じます。

2. 3. 4.は2分以下の習作的小曲ですが、点描・跳躍音階が明確になって十二音技法かセリエルかと言った音楽に一気に変化しています。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  "3. Semi-Simple Variations"、スコア付きです



2.【第二期: 1961-】
5. Post-Partitions (1966) - 6. Tableaux (1972) - 7. Reflections (1975)
5. 6.は点描音列配置的で、習作的な4.の作品化のイメージ。7.はpfとテープ(シンセ)の曲で、pfは従来と変わりませんが、シンセは金属系ノイズの様な音色で対位的(装飾的?)に並べて来ます。コラボ的な構成で唯一面白さがあるのが7.ですね。


3.【第三期: 1980-】
8. Canonical Form (1983) - 9. Lagniappe (1985)
8. 9.では機能和声の旋律が僅かに感じられます。ただ音の並びが点描・跳躍的で古い十二音技法・セリエルの印象しか残りません。そうなるとこの時代のポスト・セリエルの代表である "調性を含んだ多様性" には聴こえません。



面白みがあるのは調性崩しの1.とシンセとのコラボの7.ですね。それ以外は十二音技法やセリエル特有な点描表現なのでどれも同じ曲に聴こえてしまいます。

1980年代の調性との多様性になっても同じなので、結局は"十二音技法 → セリエル → 行き止り" を再確認するだけ になってしまいますね。

とは言え、バビットの全貌が見渡せますのでそこに興味がある方にはピアニストを含めて貴重な一枚に違いありません。




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