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ハヤ・チェルノヴィン(Chaya Czernowin) の「Heart Chamber」ノイズ系前衛音楽オペラの最先端


今注目の現代音楽家C.チェルノヴィン、初演情報から長く待ったオペラ作品がいよいよリリースされました。ベルリン・ドイツ・オペラの委嘱作品で世界初演の「ハート・チェンバー」です。


Heart Chamber, ハート・チェンバー
ハヤ・チェルノヴィン (Chaya Czernowin, b.1957)
イスラエル人の女性現代音楽家ですが、現在は米在住でハーバード大で教鞭をとっていて 今の若手米現代音楽家の指導者としての顔も大きいですね。作曲も指導も注目の現代音楽家の一人でしょう。楽風は空間音響系からノイズへとシフトして来ている感じです。

チェルノヴィンと言えば 2006年ザルツブルク音楽祭 『ZAIDE・ADAMA』でモーツァルトの未完オペラの"ツァイーデ"に自らの"アダマ"を組み合わせる再構築で新しい世界を作ったわけですが、今回もその延長上の様な表現になっている様です。演出も同じクラウス・グート(Claus Guth)ですね。

本作品は台本もC.チェルノヴィン、指揮のJ.カリツケは好きな現代音楽家の一人でもありますが 今回の指揮者はぴったりですね。オケ、室内楽、エレクトロニクスを含めた演奏です。



(左: DVD, 右: BD, 日本語字幕付きです)


■ 物語の構成 ■
メインロールは '男女' とその '心の声' の四人、一役が二人で表現されます。
街の階段での出会い、そこから二人の愛の 許容と拒否、欲望と拒絶、信頼と反目、そして別れと孤独を表現します。所謂(いわゆる)ストーリー性はありません。

最後は冒頭の出会いのシーンに回帰しますが、同じ接触にはなりません。エピローグは互いに惹かれる二人のシーンで、彼女と内なる彼女が揃って "I love you" と彼に発して終わります。


Official trailer です





音楽
完全に前衛実験音楽です。従って主題の様な明瞭な旋律や、心地よいアリアと言った旧来のオペラらしさは存在しません

基本はノイズ系前衛音楽で、そこに空間音響系の流れが加わります。風呂場のコケのシーンでは"彼女"が意味不明のvoiceを出し、クラスター, トゥッティの様な大音響が空間を埋め尽くすと言った変化も混じえてきます。他にも冒頭で目を引くコントラバス・ソロをフィーチャーし、特殊奏法も含めて個性を与えているのも面白いですね。映像なしの音楽だけで聴いても素晴らしいでしょう。

歌唱はトーキングを交えて主として鬱な表現しています。解説にある様なシュプレッヒゲザング、例えば"月に憑かれたピエロ"の様な、ではありませんね。流石に歌は前衛性は低く、ノイズの様な特殊声法?や微分音の様な難易性はありません。

演出
音楽が前衛で、TEXTも抽象性が高いので、演出はシンプルです。特徴的なのはプロジェクション・マッピングが大きく使われて、そこに抽象的な映像が流される事で言葉に表現出来ない二人の心象を表すようになっている事でしょう。
細かい処では四人のメイン以外はスローモーション的な動きになっていたり、動きが巻き戻されてループの様に表現されるのも混沌とした虚いを表現していますね。

舞台・衣装
舞台は大きく二つのパターン。一つは二人が舞台の左右に配されて心象を、もう一つは階段を中心とした舞台で時間的な動きを存在させるパターンですね。
衣装は今の時代のシンプルさ。'内なる声'の二人は黒の衣装ですね。

配役
アリアや重唱と言った聴かせ処がある訳ではなく、愛や嫉妬を強く表現する事もないので、特に誰がどうのはありません。役も特別の表現はありませんね。
ただ、"voice"と言う語りのsop.が居たり、"彼の内なる声"がカウンターテナーだったりと混乱しそうです。


前衛現代音楽の最先端のオペラですね。現代音楽オペラは数々ありますが、どうしても不協和音の展開の様な前衛とまでは言えない作品が多くなります。本作品はノイズ系前衛現代音楽にあって新鮮な作品になりました。

構成としては、二つの共存(今回は本人と内なる心)を "同一舞台に二人配置" で表現する「ZAIDE・ADAMA」の延長上です。C.チェルノヴィンのオペラ・スタイル進化形ですね。



<配 役>
 ・彼女:パトリツィア・チョーフィ [Patrizia Ciofi, sop.]
 ・彼女の内なる声:ノア・フレンケル [Noa Frenkel, mez.]
 ・彼:ディートリヒ・ヘンシェル [Dietrich Henschel, baritone]
 ・彼の内なる声:テリー・ウェイ [Terry Wey, countertenor]
 ・声:フラウケ・アウルベルト [Frauke Aulbert, sop.]


<指 揮> ヨハネス・カリツケ [Johannes Kalitzke]
<管弦楽> ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
<室内楽> アンサンブル・ニケル [Ensemble Nikel]
<ソロ・コントラバス> ウーリ・フッセネッガー [Uli Fussenegger]
<エレクトロニクス> SWR エクスペリメンタルスタジオ・フライブルク

<演 出> クラウス・グート [Claus Guth]


収録:2019年11月13, 26, 30日

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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