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アルディッティ弦楽四重奏団の "シャリーノ | クセナキス | 細川俊夫 | リゲティ" 作品集



SCIARRINO | XENAKIS | HOSOKAWA | LIGETI
Arditti Quartet
アルディッティ4の新譜は大物現代音楽家の作品を並べました。"シャリーノ | クセナキス | 細川俊夫 | リゲティ"、新鮮味には欠ける様な…

実は昨年(2019)11月の高崎芸術劇場での来日公演からになります。コンサートなら嬉しいチョイスですね。
ポイントは細川俊夫さんの「パッサージュ」、高崎芸術劇場/ケルン・フィルハーモニー共同委嘱作品で世界初演でした。


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1. Codex Purpureus II [サルバトーレ・シャリーノ]
1984年作品ですね。執拗に続く静のトレモロの緊張感、そこにpf強音が一瞬のパルスで飛び込み、弦の刺激音が湧き起こります。殆どは静の空間。この静の空間と一瞬の烈出現がシャリーノですね。後半はやや饒舌になります。


2. AKEA [ヤニス・クセナキス]
後期の1986年作品です。まずは無調混沌の弦楽四重奏にpfがアルペジオで絡んで幽玄な気配を醸します。不協和音旋律は存在して、pfは奇妙な旋律の反復も使われています。中盤からは強音の絡みも出て来てクセナキスらしく音密度が増してポリフォニーとなります。それでもタイミングを合わせた奇妙な反復が現れるのが不思議な感じですね。


3. Passage [細川俊夫]
世界初演(2019)となる新作ですね。静の空間に神経質な弦のトリル・トレモロやグリッサンドが右往左往。少しづつボリュームを上げながら刺激のあるボウイングを入れて来ます。時折パウゼを入れて表情を変化させてますが、主たる細川さんの幽玄神経質な音色の空間は変わりません。
もっとキレキレのアルディッティを聴きたかったですね。細川さんの作品なので幽玄さ重視で良かったのかもしれませんが。


4. Streichqurtett No. 2 [ジェルジ・リゲティ]
1968年作品でアルディッティ4のレパートリーですね。リゲティと言うと聴きやすい曲から実験的な曲までヴァリエーションの広さがありますが、この曲はいかにもアルディッティ4が好きそうな当時の前衛的な無調の弦楽四重奏曲です。基本はトリル・トレモロにポリフォニカルな無調の速い展開、静スローと強ファストの出し入れの強い流れ。本来なら、そのコントラストの強さをアルディッティ4がキレキレで楽しませてくれるのですが、昔を知っているとマイルドに感じてしまいます。(part 4は刺激的で良かったです)

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  LaSalle Quartetですが、繊細です
  切れ味はArditti Quartetの方が良いですね




実績ある現代音楽家の各個性を楽しめました。細川さんを除くと古いのですが、前衛の停滞時期であり多様性に推移した時代。まさに今の現代音楽の源流でしょう。

数年前のコンサートでも感じましたが、やっぱりアルディッティ4がマイルドになった印象が強いですね。昔の様に刺激物の様なキレキレさがありません。深淵になったのかもしれませんが、やっぱり残念な気がします。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アイスランド現代音楽家の作品集「Concurrence」ソルヴァルドスドッティル/トウマソン/シグフスドッティル/パールソン



Concurrence
Iceland Symphony Orchestra (Daníel Bjarnason, cond.)
アイスランド交響楽団と指揮者ダニエル・ビャルナソンが進めるアイスランド現代音楽家シリーズの第二弾『ISO Project vol. 2』です。"vol. 1"にはビャルナソン本人の作品も入っていましたね。

本アルバムにはCDの他にBlu-rayオーディオディスクが付いてmShuttleオーディオ対応です。ネット上からmp3, FLAC, wav, がDL出来ます。


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アンナ・ソルヴァルドスドッティル
(Anna Thorvaldsdóttir, b. 1977)
女性現代音楽家で、今やアイスランドを代表する一人と言って良いでしょうね。楽風は無調前衛です。紹介文は今更ですので割愛です。

Metacosmos (2017)
 暗幽玄のドローンです。そこに強音、バルトークピチカート?、が飛び込み、弦のトリル・トレモロが加わりますね。流れが混沌として来ると、管楽器が大きな雲の様な音塊を背景に投げかけて弦楽器と対位的に進みます。ゆっくりと静まってノイズが残ると、弦の神秘的な響に変わり、打楽器のパワーが出現して混沌状態がピークを迎えます。ラストは調性のある美しい静的エモーショナルの流れが出現します。
構成感もしっかりと組まれて聴き応えある作品になっていますね。スタンスが多様性の方向に向き始めているのを感じます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  CDと同じメンバーによる2019年のLIVEです!!




ヘイクル・トウマソン
(Haukur Tómasson, b. 1960)
以前フルート協奏曲#2をインプレしているトウマソンは、アイスランド以外の米・独・オランダでも学んでいます。初期はフィボナッチ数を使っていたりしますが、その後本人の言う"spiral technique"と言う技法?とアイスランド民族音楽の方向性に変わって来ています。

Piano Concerto No. 2 (2016)
 単一楽章のピアノ協奏曲で、pfはヴィキンガー・オラフソン(Víkingur Ólafsson)になります。点描的なpfとオケがポリフォニーに絡み合い、pf二声部さえも対位的です。音価の高い音がなかなか現れないので落ち着きのないピョコピョコとした流れが前半を支配しますね。中間部(トリオ)?らしきパートは美鬱な緩徐の流れを調性感薄く入って、激しさと重厚さに。点描ポリフォニーの流れが戻ると激しい混沌を描きます。
無調から調性を行き来して、オリジナリティーの強さを感じる作品ですね。



マリア・フルド・マルカン・シグフスドッティル
(Maria Huld Markan Sigfúsdóttir, b. 1980)
"ISO Project vol. 1"でもフィーチャーされていた女性現代音楽家です。元はヴァイオリニストで弦楽四重奏団でも活躍、作曲は博士号をアイスランド芸術アカデミーで取得していてエレクトロニクスにも明るい様です。

Oceans (2018)
 北欧の森を通り抜ける朝の風の様な美しさを、調性感の強いロングトーンの"音"が折り重なって作り上げていますね。全体で旋律のイメージを作りますが、"音塊"の印象が強く感じます。
いかにも北欧的なサウンドで北欧ロマン主義の流れを感じますね。素晴らしいです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  CDと同じメンバーによる2019年のLIVEです!!




パール・ラグナル・パールソン
(Páll Ragnar Pálsson, b. 1977)
元はプログレッシブ系ロックバンドのギタリスト、その後クラシック現代音楽の作曲家を目指しアイスランド芸術大に入っています。エストニアに渡りエストニア音楽アカデミーでも学んでいて、エストニア音楽界とのリレーションが強いそうです。

Quake (2017)
 チェロ協奏曲で、vcはサイウン・ソルステインスドッティル(Saeunn Thorsteinsdottir)です。無調で刺激の強い濃厚さを感じますね。弦は微分音も入れて来ますし執拗な反復も入って、ソロのvcの他にvnも強烈な激しいボウイングを見せて嵐の様相です。静音パートを挟みながら主流は激烈と緊迫感です。



完成度の高いアイスランド現代音楽を並べましたね。近年作品で、どの曲も聴き応えがあります。演奏者の力量も見事な表現力を感じますね。

多様性の現代音楽になりますが、前衛寄りから調性寄りまで、美から烈まで、表情豊かな曲がバランスよく並んでいて素晴らしいです。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アンティ・アウヴィネン(Antti Auvinen)の「Junker Twist | Himmel Punk | Turbo Aria」強烈なパワープレイ



Junker Twist | Himmel Punk | Turbo Aria
アンティ・アウヴィネン (Antti Auvinen, b. 1974)
若い頃はクラシックギタリストを目指していたフィンランドの現代音楽家で、プラハ音楽アカデミーやアムステルダム音楽院で学んでいます。
楽風は様々な構成のアンサンブル作品を得意としていて、ポリリズムとポリパルスを用いるのが個性的との事です。打楽器を多用する様になってからはより個性がましたそうで、エレクトロニクスも使っていますね。

今回は管弦楽曲集ですね。演奏はハンヌ・リントゥ(Hannu Lintu)と、リントゥが主席指揮者を務めるフィンランド放送交響楽団(The Finnish Radio Symphony Orchestra)です。


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1. Junker Twist (2015)
一瞬、日本のお祭りの音頭かとw 特殊奏法なのか打楽器なのかハイテンポの打楽器群と管と弦。それぞれが小刻みな旋律をホモフォニーとポリフォニーの境界面で疾走します。リズムで言うとポリリズムではありますが統合感はありますね。ホイッスルを使ったり楽器も人も叫んだりして大暴れで面白いですね。


2. Himmel Punk (2016)
打楽器が暴れます。曲調は1.と同じ路線ですがポリフォニー方向が強まっているでしょうか。ほぼ全体が強音パートですが、中間部(トリオ)的な緩徐パートが出現(2回目はラスト)するのが1.と異なる処でしょう。pfもウストヴォーリスカヤの様な打音を奏でて、もちろんホイッスルや人の叫び声も入り、全体が暴力的強引さで構成されています。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


3. Turbo Aria (2017/2018)
一番新しい楽曲で楽風が変化しています。エレクトロニクスが採用されてサンプリングによるエフェクト音の様やノイズ系の音が入ります。それが基調となって強音主張は追従的な関係に変化しています。追従的と言っても主張は強烈ですがw サンプリングではヴォイス・エフェクトやテープのヒスノイズの様な音とヴァーカリーズ・サウンドも出て来たりします。強音連打でもポリフォニカル要素が強くなり、1.や2.から表情がとても豊になって新しい方向性が見えて来ました。



調性軸の多様性現代音楽です。打楽器が主張を強く鳴らしハイテンポ強音の色合い、そこにエレクトロニクスも加わって現代のエドガー・ヴァレーズと言った風合いです。

北欧現代音楽は欧エクスペリメンタリズムと一線を画す印象が強かったのですが、今や前衛・多様性、両方で聴き応えがあります。このパワープレイは好みで、オススメの一枚になりますね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





Musica Viva #36:欧州前衛エンノ・ポッペ(Enno Poppe) の "Fett / Ich kann mich an nichts erinnern"


Fett / Ich kann mich an nichts erinnern
エンノ・ポッペ (Enno Poppe, b.1969)
本ブログではお馴染みのドイツの現代音楽家/指揮者ですね。特徴はエレクトロニクスと微分音になるでしょうが、近年は反復や調性和音を使う多様性の現代音楽に少しづつ変化している感じです。今回は近年作品ですので傾向が見られそうです。

現代音楽ファンにはお馴染み、本ブログでも何回か紹介済みの"Musica Viva"シリーズ#36です。興味のある方はそちらを参照下さいね。

演奏はバイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)と同合唱団、1.の指揮はスザンナ・マルッキ(Susanna Mälkki)、2.はマティアス・ピンチャー(Matthias Pintscher)。現代音楽を得意とする安定感ある顔ぶれです。


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1. Fett (2018-2019)
パーカッションを除いた管弦楽曲です。いきなり微分音で入って来ます。微分音だけではなく、調性感の強い美しいハーモニーとのコラボレーションの様な流れです。ほぼ旋律は無く、ロングトーンが重なる反復で、響きですね。静的ですがどんどんと音が溢れて、それが寄せては返す波の様な抑揚を重ねて行きます。処々でサチュラシオン的な印象になっているかもしれません。聴くとパーカッションを外したのが、なるほどと感じますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  指揮はCDと同じくマルッキ、オケはヘルシンキ・フィルです



2. Ich kann mich an nichts erinnern (2005-2015)
ポッペと同世代のドイツの作家・詩人のマルセル・バイアー(Marcel Beyer)のTEXTを元にした、オルガンと合唱と管弦楽の為の9パートのカンタータです。
 合唱は調性的でオケは微分音を含んだ幽玄なサウンドと言った、ポッペらしさですね。ロングトーンの音の重なりは1.と同様ですが、特徴的なのは音の厚みでしょうか。全体としては調性感の強い流れで、テンポ変化は薄く極端に暗くスロー重厚なカンタータになっています。



反復陶酔的な1.と幽玄重厚な2.。どちらもポッペらしさで、両者共にテンポ変化を抑えて音厚で変化を付ける処が特徴ですね。

今の時代の欧エクスペリメンタリズムを味わえる、興味深い一枚です!!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第3番』 «web配信» ロレンツォ・ヴィオッティ指揮/ベルリンフィル 2020年2月29日


COVID-19パンデミック前夜のベルリンフィル「マーラー交響曲第3番」もちろん今回のポイントはガランチャですね。


ロレンツォ・ヴィオッティ指揮
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

(Lorenzo Viotti | Berliner Philharmoniker)
今注目度の高い日本でも活躍するスイス人若手指揮者ヴィオッティのBPOデビュー この時29歳、そしてマーラーです。実は予定されていたヤニック・ネゼ=セガンのキャンセルによる代行ではありますが。

アルトがエリーナ・ガランチャ(Elīna Garanča)と言うのが個人的ポイントです。切れ味鋭いmezが落ち着いた "O Mensch! Gib acht!" にどう入って行くか楽しみですね。ちなみに今回のBPOコンマスは樫本大進さん。
BPOのwebサイト、"デジタル・コンサートホール" からの配信です。


▶️ BPO Digital Concert Hall (会員サイト)





«web配信»
マーラー 交響曲 第3番

29feb2020BPO-Viotti-mahler3.jpg
[Live at Berliner Philharmonie, 29 Feb. 2020]


第一楽章
序奏第一主題の8基のhrは落ち着いて入り直ぐに沈めます。行進曲は陰鬱に重心を下げて、第二主題のhrもその流れに乗ります。第三主題obの"目覚める牧神"は穏やかに。提示部の"暗→明→烈"は抑えたtbが印象的で第三主題で明るさを強調、行進曲は抑え気味から明確さに、ラスト山場は鳴らしますが興奮は避けていますね。
展開部の"鬱→明"のコントラストは落ち着いた流れが主体。tb-Ehrの流れも静が強く、vn独奏-木管と楽器と動機をタッチしながらも淡々と進んで、テンポアップでピークに力感を与えます。印象は地味ですが。
再現部はまさに再現で落ち着いた流れに終始し、行進曲で少し色合いを付けながらピークへ、コーダは激しさ程々に仕上げます。暗く落ち着いた印象が強い第一楽章になっています。この楽章が終わるとガランチャと合唱団が入場しますね。

第二楽章
主要主題は穏やかさと哀愁のバランス良く、トリオは変則変奏的ですが抑えた印象です。主部・トリオ回帰でもテンポアップするくらいで、あまり強めたり変拍子強調をしたりはしませんね。平和なメヌエット強調です。

第三楽章
主部の木管群動機は洒脱、vn動機で華々しく奏でますがやっぱり落ち着き主体ですね。トリオはバンダ(ポストホルンではなくフリューゲルホルンの様でした)が平和を伝え、山場は一気に雰囲気を変えて激しさを見せます。もちろんコントロールされていますが。

第四楽章
弦の静スローの流れからアルト独唱はシャープに入ります。色濃く歌うと言うよりも淡々とした落ち着きでしょうか。

第五楽章
子供達の"ビム・バム"は少し元気が無いかも。でも女声合唱団が鋭く、アルトが伸びの良い繊細なmezを聴かせてくれました。心地良い楽章になりましたね。

第六楽章
弦楽の主要主題は暗い中にスローの美しさを見せ、第一トリオが木管とhrで寄り添う様に協調すると、一瞬激しい第二トリオを見せます。各動機の回帰ではこの楽章らしい美しい流れを強調して進み、スロー静パートは少し間延び感がありましたが、山場からコーダは感激的な広がりで終結します。それでも少し抑え気味でしょう。


マイルドで穏やかなマーラー3でした。何となくほどほど感の強い印象ではありますが、第五・六楽章は心地よさから美しさを味わう事が出来ました。

力感や高揚を避けている様にも感じましたね。BPOの初ヴィオッティに対する様子見もあったのでしょうか。心なしか樫本さんのvnの鳴りもいつもよりも細い印象でした。スタンディグオベーションでしたが、そこまでとは…



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





藤倉大 オペラ「アルマゲドンの夢」2020年11月18日 at 新国立劇場 under COVID-19


ボンクリで現代音楽を楽しませてくれる藤倉大さんの新作オペラです。そして新国立劇場は昨年の西村朗さんと芸術監督の大野和士さんの「紫苑物語」が素晴らしく、行かない理由が見つかりませんでした。大野さんは昨年 都響との素晴らしい「グレの歌」でも演出力を披露してくれましたね。


18nov2020Armageddon.jpg
"A Dream of Armageddon"


全9場, 1時間40分, インターミッションなし, 英語(日英字幕)上演。コロナ禍の東京、海外メンバーも揃って来日、オーディエンスは40%ほどでした。





音楽
藤倉さんの音楽ですから調性の薄さを生かした洗練ですね。前衛実験系とは距離を置く藤倉さんらしさで、楽曲が心象風景にとても合っている感じです。トリル・トレモロ反復変奏が多かった事、四拍子の行進曲があった事など意外性もありましたね。
やや調性色が強まって エレクトロニクスが無くなったのは少し残念だったかもしれません。(先進性を軸足にライヴエレクトロニクスを入れたら更に面白かった様な)

演奏も大野さん(東京フィル)は予想通りのメリハリ、間違いなくステージを盛り立てましたね。


演出
初演ですから、今の時代のオペラ演出で まず気になる原作からの読み替えや逸脱は当然ありませんね。

グロテスクや理解不能な前衛性は無く、時代設定は現代(20世紀中盤?)になるでしょうか。プロジェクション・マッピング(PM)や暗さを中心とした今の時代らしい設定で、モノトーンからカラフルまで色彩を生かしています。テーマとなる"現実と夢"も、通勤電車の具体風景とPMやミラーといった対比にしていましたね。

素晴らしかったのはラストの少年のアーメン。ややせわしない流れから、最後はミサの様に鎮めてこれでとどめを打った感じでした。神が語られても救済感がないのは不思議?!


舞台・衣装
舞台はシンプルながら巨大な衝立が設定されてスクリーンやミラーとなっていました。全面スクリーンも時折使われて大きなプロジェクションマッピングが印象的でしたね。ついついそちらに目が行ってしまうくらいに使われていましたが邪魔にはなっていませんでした。舞台の奥行き感が生かされた上手さもありましたね。

衣装は前述の近現代風、合唱団メンバーには全身真っ白やファンタジーな非現実的衣装が配されます。これも今の時代らしい設定でしょうか。


配役
【男性陣】テノールのP.タンジッツ(クーパー・ヒードン役)は声も良く出て演技も映えましたが、やや一本調子的な感じがしました。S.カリコ(ロスコー/イーヴシャム)は思いのほか出番が少なかったです。
望月さん(歌手/冷笑者)はなんといっても"柳の歌"での存在感でしたね。間違いなく一つのハイライトシーンでした。女装の歌手はピンときませんでしたがw

【女性陣】J.アゾーディ(ベラ・ロッジア役)はテノールのタンジッツのミラーの様な印象でした。加納さんのインスペクターが声量も素晴らしく聴かせてくれましたね。テノールとソプラノがやや変化に乏しい感じがしたので、日本人二人が頑張った印象でした。

新国立劇場合唱団も存在感を見せましたね。いきなりのアカペラに愕きましたし、多メンバーでサークル(兵士)の存在感もよかったです。



【後日記】当日(11/18)のダイジェストです



今の時代のオペラを舞台いっぱいに楽しめました。ディストピア時代への警鐘と言った本オペラの主題・主張、それを表現する音楽・舞台。ストーリーと表現力がフィットして、すぐに惹き込まれてしまいました。

少し残念なのは100分と言う短い中に内容が濃いので慌ただしく感じた事でしょうか。また、ディストピア的な恐ろしさをパロディっぽくしていたのは、最後に神を歌う深慮な文面があったから?!

全体としては大野さんカラーを感じましたね。


近年作で比べると、見栄えする舞台とストーリー性なら「紫苑物語」の方が素晴らしく、訴えかける心象なら細川俊夫さんの「松風」「Stilles Meer 海、静かな海」が心に沁みると思います。方向性が違うと言ってしまえば、それだけの事でしょうが…
コロナとは言えカーテンコールが、あまりにもあっさりと静まってしまったのは驚きでした。



【出 演】
 ・クーパー・ヒードン:ピーター・タンジッツ [Peter Tantsits]
 ・フォートナム・ロスコー/ジョンソン・イーヴシャム:セス・カリコ [Seth Carico]
 ・ベラ・ロッジア:ジェシカ・アゾーディ [Jessica Aszodi]
 ・インスペクター:加納悦子 [Etsuko Kano]
 ・歌手/冷笑者:望月哲也 [Tetsuya Mochizuki]

【台 本】ハリー・ロス [Harry Ross]
【作 曲】藤倉大 [Dai Fujikura]
【芸術監督/指揮】大野和士 [Kazushi Ono]
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 [Tokyo Philharmonic Orchestra]
【合 唱】新国立劇場合唱団
【演 出】リディア・シュタイアー [Lydia Steier]


2020年11月18日 新国立劇場

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





R.シュトラウス『ツァラトゥストラはかく語りき』2020リリース2CD(ウルバンスキ, ダウスゴー)と鉄板カラヤン聴き比べ


Also sprach Zarathustra Op. 30 [1896]
(Richard Strauss, 1864-1949)
リヒャルト・シュトラウスの交響詩ですと個人的にはストリー性が明確な"ドン・キホーテ", "英雄の生涯"の方が好きですね。"ティル"や"ドン・ファン"は短いですし、"死と変容"が本作品の位置づけと似ているかもしれません。最近では"ツァラトゥストラはこう語った"と訳すんですね。

今年(2020)リリースされた2CD、若手指揮者①ウルバンスキ(NDRエルプフィル, 2016 rec.)と、中堅の②ダウスゴー(シアトル響, 2019 rec.)、そして頭で鳴っているマスターピース③カラヤン(BPO, 1983 rec.)も入れて聴き比べしておきましょう。






クシシュトフ・ウルバンスキ
(Krzysztof Urbański)
NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団 (NDR Elbphilharmonie Orchester)


やや弱めの印象の"ツァラトゥストラ"です。力強さと優しさを対比させている感じですが、バランスは優しさになっていますね。

その優しさが弱々しく感じる事、処々で主題・動機が薄いのが気になります。




トーマス・ダウスゴー
(Thomas Dausgaard)
シアトル交響楽団 (Seattle Symphony)


濃厚な色合いの"ツァラツストゥラ"です。テンポは速め、音厚高く強音強調、と言った方向性を強く感じます。

ラストを繊細な流れにして落ち着かせたのは上手いな、って言う感じです。そんな静美とのコントラストが全体にあれば、もっと素晴らしい"ツァラツストゥラ"になったのではないでしょうか。




ヘルベルト・フォン・カラヤン
(Herbert von Karajan)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (Berliner Philharmoniker)


コントラストと見晴らしが素晴らしい"ツァラトゥストラ "です。緩急・静と烈・繊細さと華やかさ・心地良さと刺激、全てのバランスが揃えられています。

R.シュトラウスと言えばカラヤン、そう言う人も多いのではないでしょうか。私もその一人な訳ですがw




【全体インプレ】
少し弱々しいウルバンスキ、力感に拘るダウスゴー、見晴らしの利いたカラヤン、三者三様ですがやっぱりカラヤンが頭一つ抜きん出ている感じです。

新しい録音を楽しみにしつつ、名盤と言われるカラヤン/BPO(1983)がマスターピースと言う事になるのは仕方ないでしょうか。




パート別インプレ
1. 序奏
① かの「自然の動機」"ド・ソ・ド"はともかく、ティンパニーが弱めですが、続く長和音は大きく鳴らします。
② 「自然の動機」はいじりようがありませんw その後の長和音も同じですね。多少のメリハリ感程度がある感じでしょう。
③ 序奏はほとんど変化のさせ様がないのでコメントは付けよう無しですw あえて言うなら"タメ"の上手さを感じるかもしれません。

2. 後の世の人々について
①「あこがれの動機」は控えめ、ホルンのクレド動機も弱めに出て美しい弦楽はややスローに入ります。エモーショナルさを強めながらクレシェンドしていくのですが、優しさを強く感じます
② 「あこがれの動機」は鬱が強め、ホルンのクレド動機は落ち着いています。そこからの弦楽奏は明瞭な音を少し揺さぶりをかけながら進めています。音は厚めで濃厚さを感じます。
③ ファゴットの「あこがれの動機」は繊細、クレド動機は穏やかさが光ます。その流れに乗って弦楽奏が現れると、緩やかさから切れ味へと美しさを変化させて聴き応えある見事さになっています。

3. 大いなる憧れについて
①「あこがれの動機」と木管による「自然の動機」静で優しく絡みます。「マニフィカト」パッセージからの高揚感は弱めです。
②「あこがれの動機」は速めで明瞭に、木管による「自然の動機」が淡々と入り美しさと緊迫感を対比させます。力感が増してパッセージが出ると激しさの山場へ。
③「あこがれの動機」が美しくテンポ良く出て、木管の「自然の動機」がクールに絡み合います。徐々に上げてオルガンの「マニフィカト」パッセージからは高揚させて良い流れですね。

4. 喜びと情熱について
① 二つの動機を力感付けながら上げて、山場のトロンボーンのV字音階「嫌悪の動機」は表情が薄いですね。
② 新たな二つの動機は深刻な印象を強く鳴らし、激しさを増して行きます。山場でのトロンボーンの「嫌悪の動機」は朗々と鳴らされますね。
③ 表情豊かに切れ味よく動機を作り込んで進めて見晴らしがいいですね。クライマックス付近のトロンボーンが「嫌悪の動機」も力強いです。

5. 墓場の歌
① オーボエの「墓場の歌」弱く、上昇音階の「あこがれの動機」と下降音階の絡みは淡々としています。
② オーボエが奏でる「墓場の歌」は弦楽と絡んで濃い色合いです。「あこがれの動機」と下降音階の絡みは進むにつれて淡々と静まらせています。
③ オーボエの「墓場の歌」は繊細に現れ落ち着いた流れを作っています。中盤からの「あこがれの動機」は少し鬱を見せ下降音階の弦流れとコントラスト良く絡みます。

6. 学問について
①「暗鬱なフーガ」は弱々しい印象で、木管が加わると色合いが出ます。「舞踏の動機」でテンポを上げて軽妙な明るさに、「自然の動機」「嫌悪の動機」の木管パッセージが木管楽器は緩やかさで、最後はなんとか締めます。
②「暗鬱なフーガ」は静鬱なクールさで、木管が入ると力感を少し増します。「舞踏の動機」は少しテンポアップでの美しさにしていますね。tpが出るとパッセージの木管楽器を落ち着いて絡ませ、最後は力感を上げます。
③ コントラバスとチェロの「暗鬱なフーガ」を静暗スローに鎮め、木管が加わると少し光を感じます。幸福感ある「舞踏の動機」はvnの繊細な美しさと木管の明るさの対比が見事ですね。カデンツァ的流れを静に、最後は大きく盛り上げます。コントラストが見事なパートです。

7. 病より癒えゆくもの
① トロンボーン動機は揺さぶり気味に進んで、山場はテンポアップで怒涛に鳴らします。管楽器の「暗鬱なフーガ」は鬱ですがしっかりと鳴らして来ます。トランペットの信号音が出てテンポを上げると「嫌悪の動機」と表情強く絡みながら安定的な流れにして行きます。この楽章は切れ味とメリハリの良さを感じます。
② トロンボーン動機は速めで鋭く好戦的に上げて、山場は激しくキレキレです。ゼネラルパウゼを大きく取って「暗鬱なフーガ」は暗い影を強め、鋭いトランペットの信号音が「嫌悪の動機」と速く切れ味よく絡み、最後は明るい色合いで華やかにしています。派手なパートになりました。
③ トロンボーン動機は落ち着いて入ってテンポを上げつつ派手さを増します。ド派手なピークの後のゼネラルパウゼは短め。「暗鬱なフーガ」を陰鬱に進め、トランペットの信号音が砕けて登場すると「嫌悪の動機」と変則的に絡み合いながら、明るく楽しげに力強く変化させて行きます。

8. 舞踏の歌
① ソロ・ヴァイオリンによるウィーン舞踏風動機は繊細弱め、絡む木管もですが、そこから穏やかに優美さを増して行きます。ホルンの動機が優しく出ると澄んだ音色で動機群を奏で、華やかな音色を強くしながらラストの山場は大きく作ります。
② 明るい「自然の動機」から入り、ソロ・ヴァイオリンによるウィーン舞踏風動機は鋭く出て来ます。その流れが優美さになって濃くなると、ホルン動機からは主題群がシンプルに溶け合いながら濃厚さを増してラスト山場は派手に。
③ ソロ・ヴァイオリンのウィーン舞踏風動機はスロー&シャープ、静な流れから色合いを強めて大きな舞踏曲する上手くて安心感ある構成で見事です。中盤でホルンが出ると流れはシンプルになってから華やかさを増して山場を派手に鳴らします。

9. 夜のさすさい人の歌
① 深夜を告げる鐘が弱いですね。鎮まってロ長調で表情は安定、「あこがれの動機」と「舞踏の動機」は穏やかです。最後の高音長和音と低弦C音の対比は静的です。
② 山場が徐々に鎮まってロ長調が顔を出すと、「あこがれの動機」と「舞踏の動機」を緩やかに上手く落ち着かせています。ハープ上昇音階からはシンプルになって、ラストの高音長和音と低弦C音は繊細さを表現する良い流れです。
③ 深夜を告げる鐘はハッキリと打たれて、徐々に鎮まります。やっぱりこのパターンでないと… ロ長調に変わると流れは落ち着いて「あこがれの動機」と「舞踏の動機」が繊細さと穏やかを満たします。ハープが顔を出すと静を強めて、ラストは低弦C音が困惑の表情を見せて終わります。



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