fc2ブログ

ストラヴィンスキーとグラスの『ヴァイオリン協奏曲』ダーヴィト・ネベルのヴァイオリンで

若きヴァイオリニストと近現代曲を得意とする指揮者によるヴァイオリン協奏曲集ですね。


Stravinsky & Glass Violin Concertos
David Nebel(vn), Kristjan Järvi(cond.)
フィリップ・グラス(Philip Glass, b. 1937)はミニマルで知られる訳ですが、この作品は複雑化される前の作品です。その後グラスは2009年にヴァイオリン協奏曲第二番を書いています。
オケはロンドン響ですね。

イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky, 1882-1971)の協奏曲は今ひとつピンと来ないのですが、唯一のヴァイオリン協奏曲だそうです。サミュエル・ドゥシュキン(vn)のアドバイスにより書かれて、献呈されています。三大バレエ曲の18年後の作品で、ストラヴィンスキー本人指揮の録音も残されていますね。
オケはバルト海フィルです。







1. グラス: ヴァイオリン協奏曲 第一番 (1987)
何処をどう聴いてもミニマルです(笑) グラスらしいオーケストレーションで、ソロvnもその流れから一本の楽器を抜き出した様です。第一楽章はテンポの速い流れで激しさもあります。旋律を装飾音で飾った様な、例えば下降音階の一つ一つの音に速いターン音型を付けている様な、ミニマルです。第二楽章は緩徐楽章ですがミニマルの構成内容は変わりません。変化の薄いこの10'は長く感じます。第三楽章はアレグロ的な楽章で速い反復、ミニマルですから当然ですが、を中心に激しいパートも存在します。まぁ、いかにも米国的な流れです。
この年代だと映画音楽"MISHIMA"をつい思い浮かべてしまいますね。


2. ストラヴィンスキー: ヴァイオリン協奏曲 (1931)
三楽章形式ですが、このCDでは二楽章のアリアと二つの楽章に分けています。第一楽章はカラフルで表情変化の大きいリズミカルさが印象的なスケルツォ的楽章です。その上に激情的なvnが乗ってきますね。第二楽章は調性の薄さを入れた緩徐楽章になっています。それでもリズム変化を交えてバレエ曲の様な表情がありますね。一瞬ですがマーラーの交響曲からの引用を感じます。第三楽章も同じ流れで、いっそうの浮遊的な流れです。第四楽章は一楽章の回帰的で、BPM指示も♪=120で同じです。vn技巧パートも楽しめます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  コパチンスカヤとhr響のLIVEです。いかにも彼女が好きそうな曲です
  明瞭な鳴りの本CDよりもアゴーギクが強くカラフルでvnは先鋭です




聴き間違えのないミニマルのグラス。もちろん聴き処はストラヴィンスキーですね。バレエ曲の様な表情豊かな流れが素晴らしく、多少の不協和音を挟んだり、オケとvnの対比も聴き応えがあります。

ネベルのvnは歯切れ良く元気で、オケの鳴りの明瞭さはK.ヤルヴィらしさを感じますね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





「Aspects of America: Pulitzer Edition」ピューリッツァー賞受賞三作品集:W.ピストン/M.グールド/H.ハンソン



Aspects of America: Pulitzer Edition
Oregon Symphony (Carlos Kalmar, cond.)
前回、ピューリッツァー賞受賞歴のある女性音楽家三人の作品集をインプレしましたが、今回は男性音楽家三人になります。

年代的には活動の中盤から世界的には前衛現代音楽の嵐が吹き荒んだ時代ですが、この顔ぶれは全面否定か多少覗いたくらいでその流れにはありませんね。19世紀末生まれのW.ピストンとH.ハンソンはともかく、M.グールドの一つ年上が米前衛の雄J.ケージ(b. 1912)ですが…








ウォルター・ピストン
(Walter Piston, 1894/1/20 - 1976/11/12)
米ローカルで学んだ後、仏でP.デュカスとN.ブーランジェに習って帰国。ハーヴァードで教鞭をとり、L.バーンスタインやE.カーターらが門下にいます。この時点で時代を感じてしまいますね。技法的にはブーランジェには対位法を、シェーンベルクには十二音技法を習っていて、音楽理論に見識の深かった様です。

交響曲 第7番 (1960)
 交響曲 第3番に並ぶピューリッツァー賞音楽賞受賞(1961)作品で、新古典主義的な重厚さです。第一楽章は派手な音の鳴りが中心的でポリフォニカル。コンプレックス対位法の様な構成は、旋律はポリフォニーですがリズムやテンポでの協調関係があってホモフォニーとの境界が微妙になります。一転して緩徐楽章はホモフォニーですが、濃厚なアダージョ。第三楽章もホモフォニーで派手なアレグロ。フィルム・ミュージックでも通りそうな、今の時代に繋がる典型的な米国管弦楽です

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  Jorge Mester指揮、Louisville Orchestraの演奏です




モートン・グールド
(Morton Gould, 1913/12/10 - 1996/2/21)
クラシックだけでなく、フィルム・ミュージック, テレビ, ジャズ, ミュージカル, と多方面に渡って作曲と指揮の両方で活躍しています。そう言う意味では現在の米音楽家のメインストリーマーの魁なのかもしれません。

Stringmusic (1993)
 1995年ピューリッツァー賞受賞作品で、5パート(1.前奏曲 - 2.タンゴ - 3.葬送 - 4.バラード - 5.爪弾き)の管弦楽です。ここでも機能和声の鳴りの良い、音厚の高い、濃厚な音楽になります。途中でマニエリスムの様な時代回帰的旋律も現れたり、バレエ音楽の様な表情のパートもあり、タイトルにある音楽表現以外にもポイントがありますね。
とは言え、ホモフォニーでパートのタイトル通りの標題音楽、本ブログ的には特別に興味をそそられる楽曲ではありません。



ハワード・ハンソン
(Howard Hanson, 1896/10/28 - 1981/2/26)
三人の中で唯一知っている音楽家・指揮者ですw 個人的な好みは存在しませんが、曲調は徹底した機能和声音楽ですね。指揮者としては米音楽家の作品の初演を数多く手掛けているのが知られています。当然ですが、所謂(いわゆる)現代音楽は絶対否定で手を付ける事はありませんでした。

交響曲 第4番 "レクイエム" (1943)
 1944年ピューリッツァー賞受賞作品で四楽章構成、やはりここでも濃厚なホモフォニーを感じます。似た様な音楽で、特に2歳年上のW.ピストンとの類型性を感じますが一層調性に拘っている感じです。四つの楽章それぞれ変化はありますが、明瞭な調性旋律だけで全てが出来上がっています。色々な曲の主題や動機を並べたらこうなる的、そんな感じです。駄耳なので、聴かせるポイントや構成が掴めずに辛い感じです。新ロマン派と言われる事もありますが、映画音楽家と言った感じです。



現在の米国管弦楽の一つの方向性の先達と言った音楽でしょう。機能和声にあって厚い音で濃厚な流れの明瞭さ、フィルム・ミュージックやドキュメンタリー的でもあります。

前衛方向性は皆無で、ミニマル方向も見せないのが興味深いですね。(ミニマルが華やかになるのは1960年代からではありますが…)



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





パシフィカ四重奏団「Contemporary Voices」米女性現代音楽家3人の作品集



Contemporary Voices
Pacifica Quartet (パシフィカ四重奏団)
ピューリッツァー賞受賞歴のある米国の女性現代音楽家の室内楽を集めたアルバムです。そうなると楽風には関係なく作曲背景が潜んでいて事前確認が必要な気がしますね。ただ三人の作品の作曲年代に随分と開きがあるのが気になるところです。

演奏のパシフィカ・クァルテットも米インディアナのブルーミントンを拠点として活動していて、前衛は殆ど範疇外で、古典から調性基軸とする音楽を得意としています。








シュラミト・ラン
(Shulamit Ran, 1949/10/21 - )
イスラエル生まれの米女性現代音楽家ですね。エリオット・カーターやラルフ・シェイピーに師事していて、シカゴでの活動が多かった様です。楽風は前衛というよりも新古典主義と無調のバランスです。

Glitter, Doom, Shards, Memory String Quartet No. 3 (2012-13)
ホロコーストを題材とした “Glitter and Doom: German Portraits from the 1920s,” というメトロポリタンの展示会作品を元にしているそうです。
 第一楽章はアレグロ的で幽玄で民族和声を感じる流れに不協和音的な強音ソロパートが混ざります。調性の薄い動機的な旋律が存在したますね。第二楽章はスケルツォ的に不協和音リズムを刻み、微妙に調性を外した面白さがあります。第三楽章はハッキリとした主題と変奏になっていて、最も調性感が強いです。第四楽章は緩徐楽章で、反復・変奏が強く幽玄さが一番発揮されていて、フラジョレットの音が特徴的です。不協和音を生かした古典的な構成の弦楽四重奏曲です。流れは幽玄さで、今の時代の一番安定的なクラシック音楽でしょう。



ジェニファー・ヒグドン
(Jennifer Higdon, 1962/12/31 - )
ニューヨーク生まれの米女性現代音楽家でフルーティストです。作曲はペンシルベニア大学でジョージ・クラムに習っているというのがポイントでしょうか。基本的には調性に留まっていて、米オケからの委嘱も多く楽風は予想がつきますね。半音の八音音階を使い、無調の曲も作ります。

Voices (1993)
三楽章、三つの異なるイメージを伝えるそうで、"熱狂的エネルギー / 漠然とした動く影 / 穏やかで優雅" だそうです。
 第一楽章は刺激的な強音と速いボウイングの忙しない音構成で、機能和声の楽曲です。反復と変奏が執拗で強引な印象になります。第二楽章も流れの基本は強引さと反復・変奏で、少し落ち着いた流れが挟まれています。第三楽章は緩徐で強引さは減りますが、強音で構成されているのでクドイです。音圧が常に高いので疲れますが、曲調はポスト・ミニマル?と言っても良いのかもしれません。



エレン・ターフィ・ツウィリッヒ
(Ellen Taaffe Zwilich, 1939/4/30 - )
マイアミ生まれの米女性現代音楽家で、女性作曲家として初めてピューリッツァー賞音楽部門を受賞しています。ちなみに次の受賞者が上記のS.ランですね。作曲はP.ブーレーズに出会ったのが大きかった様です。楽風は前衛から始まって調性になる米国音楽家に多い調性音楽です。

Quintet for Alto Saxophone and String Quartet (2007)
ライナーノートから特別な意図は感じられません。"好奇心旺盛" と言った事くらいでしょうか。
 いかにも米国クラシック音楽ですね。調性にあって表情変化の多い動機・主題の明確設定、そしてホモフォニーで力強さです。弦楽四重奏曲ですが、このままオーケストレーションしたらそのまま米オケの委嘱作品になりそうです。sax(Otis Murphy)はアルトらしい音色が弦の音に混じり込んでいますし、カデンツァもありません。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  演奏者は異なりますがCDよりもエモーショナルな演奏です




機能和声(2, 3)、もしくは不協和音程度の調性の薄さ(1)で、いつもの表現に従うなら今の時代のクラシック音楽と言う事になるでしょうか。

類型性が高い2, 3はいかにも米国クラシック音楽ですね。聴き易いと判断するか、退屈特徴に欠けるとみるかは聴く人の好みに大きく左右されそうです。



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2006年ザルツブルク音楽祭 『ZAIDE・ADAMA, ツァイーデ・アダマ』モーツァルト と チェルノヴィン



ツァイーデ・アダマ  (ZAIDE・ADAMA)
モーツァルト生誕250年を記念にザルツブルク音楽祭で全22作品の上演をDVDにまとめたシリーズ「MOZART 22」の第9弾「ZAIDE・ADAMA」(2006年)です。

この作品はモーツァルトの未完作品"ZAIDE"に新たに作られた"ADAMA"を入れて再構築しています。

ZAIDE(1780)は「後宮からの逃走 (1782)」の元となった作品でタイトルも見つかっていないので主人公の名前をとっていますね。


2006ZaideAdama.jpg
(映像は演出のClaus Guth氏のwebよりお借りしました)



ハヤ・チェルノヴィン Chaya Czernowin
再構築を担当した前衛女性現代音楽家チェルノヴィンは、ザルツブルク音楽祭の演出家ペーター・ルジツカ(Peter Ru­zicka)から委嘱され、脚本もZAIDEのヨハン・アンドレアス・シャハトナー(Jo­hann An­dreas Schacht­ner)を元にチェルノヴィンが担当しています。ちなみにADAMAとはヘブライ語で地球(earth)の意味だそうです。(基本的にはチェルノヴィンの作品と言っていいでしょう。スコアをリリースしているSCHOTT社も作曲者は分けていますがチェルノヴィン作品としています)


チェルノヴィンは次の様に言っていますね。

"ADAMAはモーツァルトのZAIDEの物語の対位的になっていて、自分がこの新たな作品の完全性に貢献したのは伝統的アリアではなく、フラグメントやピースをZAIDEのエレメントと交互に時折ラップする様にする事です。その意味で、ADAMAはZAIDEの鏡と言えるでしょう"

事実チェルノヴィンの言う通り、全29シーンに細分化されて ツァイーデが15シーン(全曲)、アダマが13シーン、一つの舞台で二つの流れが折り重なって演じられます。(オケも指揮者も出演者もそれぞれ別です)


■ 物語の構成 ■
"ZAIDE"にはZaideとGo­matzの二人の恋人がいて、それは中近東の想像上の過去になります。"ADAMA"にも男女二人の恋人がいて、今日の中近東での宗教的かつ政治的な闘争に巻き込まれています。
時代が異なる恋人の関係を、モーツァルトの政治や文化の衝突で監禁された(Zaide)不運の愛と、イスラエル女性とパレスチナ男性の暴力で引き裂かれた愛で対比しています。ADAMAの配役には名前がありません。女・男・父と言った具合です。
(ちなみにチェルノヴィンはイスラエル出身。また、今回の演出は地域性を見せません)





音楽
ADAMAのシーンはモロに前衛現代音楽で、ノイズ系を含む前衛音楽に無調の旋律を歌います。もちろんZAIDEは古典音楽とアリアがあるので、その対比になっています。

一般的に前衛現代音楽家でもオペラの歌唱は調性+不協和音レベルになるのが殆どですが、チェルノヴィンは違いますね。歌唱自体に難しい無調旋律を与えています。これは素晴らしいですね。

オケ配置はZAIDEサイドはオケピットですが、ADAMAサイドは舞台の右で舞台道具の扉のガラスから見る事が出来ます。


演出
これが初演ですから比較するものはありません。配役の他に、大きな顔の被り物の人物が舞台に存在します。また血を見せるシーンもあって少しアヴァンギャルドですね。ZAIDEとADAMAそれぞれの配役は常に舞台に居てそれぞれ協調する演技設定になっています。二つのストーリーのミラーリフレクションにしていますね。

全体としては心象表現の強い前衛演出でZAIDEが持つロケーション的ストーリーを表現する事はありません


舞台・衣装
舞台は狭いですね、オケがいますから。白い部屋、そこに5倍くらいの大きさの家具が配置されて、人物が小さく見える様になっています。ADAMAでは全面にプロジェクション・マッピングが施されたりします。衣装はシンプル現代的です。


配役
【ZAIDE】Gomatzのレティプーはテノールものびのびと演技も熱がこもっています。Zaideのエルドマンはソプラノもよく声が出て、愛らしさが表現されていました。良い演技とテノールを聴かせてくれたのはSlimanのエインズリーで第二幕を締めましたね。曲があまりにもモーツァルトっぽ過ぎでしたがw

【ADAMA】二人は無調で難しい歌が入ります。心地良い旋律は存在しない訳で、そこは配役の良し悪し外です。演技は常にシリアスな気配が表現されて二つのストーリーの合成に貢献していますね。



ADAMAが完全に前衛現代音楽で出来上がっているのが驚きです。それが出来たのは古典の流れと前衛の流れをタイミング良く入れ替える構成にしたからでしょう。

その素晴らしさを構築したのがチェルノヴィンと言う事になりますね。クラウス・グースの演出も古典ZAIDEを前衛的にして統一感があり、全体として前衛オペラです。

今や前衛演出全盛ですからモーツァルト・ファンの方も違和感は少ないでしょうし、前衛現代音楽ファンとしてはもちろんオススメの作品です!!



【出演者】
[ZAIDE]
 ・Mo­jca Erd­mann, Zaide
 ・Topi Le­htipuu, Go­matz
 ・Jo­han Re­u­ter, Allazim
 ・John Mark Ains­ley, Soli­man
 ・Ren­ato Gir­o­lami, Os­min
[ADAMA]
 ・Noa Fren­kel, Wo­man
 ・Yaron Windmüller, Man
 ・An­dreas Fisc­her, Fath­er
 ・Paul Lorenger, Dan­cer
 ・Bernd Grawert, Act­or

【オケ・指揮者】
[ZAIDE]
 ・Moz­ar­teum Or­ches­tra Salzburg, Ivor Bol­don(con­d.)
[ADAMA]
 ・Aus­tri­an En­semble for New Mu­sic, Jo­hannes Kal­itzke(con­d.)

【演出】
 ・Claus Guth


ザルツブルク音楽祭 2006年8月15-19日

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





セバスチャン・ムラート(Sebastian Mullaert)『Natthall』チューリッヒ・トーンハレ管 "tonhalleLATE - classic meets electronic"



セバスチャン・ムラート (Sebastian Mullaert, b. 1977)
スウェーデンのマルチ・タレントのムラート(マーレイとも)、来日回数もあるエレクトロニクス・ミュージック、DJ、ライヴ・パフォーマンス、プロデューサーですね。その主舞台はもちろんクラシックではありません。ポップの世界からクラシック・クロスオーバーへ、今回は自らの楽曲を携えてチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団との共演という新しいエレクトロニクスの世界へ踏み込みました。


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧



Natthall w/Tonhalle Orchester Zürich
トーンハレ管のプロジェクト"tonhalleLATE - classic meets electronic"として参加・今年リリースされました。クラシック音楽とポップ系エレクトロニクスのクロスオーバーで、無理やり言えばポップ系現代音楽になりますね。ちなみにタイトルはスウェーデンの美しい断崖風景地だそうで、そこにインスパイアされたとの事。

トーンハレ管のメンバーは以下です。
Julia Becker (vn), Alexander Neustroev (vc), Felix-Andreas Genner (cl), Mischa Greull (hr), Sarah Verrue (hp), Peter Solomon (pf)







1. Living Invitation - 2. As The River Pass - 3. No Words For A Beautiful World - 4. Ascending Of A Spotless Bird - 5. Undressing The Sky - 6. Views Of Natthall - 7. Moonwaker - 8. Woods of Admittance - 9. Rest Of The Heron

"1. Living Invitation"はアンビエントですね。ロングトーンは何処までが楽器なのかエレクトロニクスなのかが微妙です。反復打音もあってミニマル傾向も感じます。そこからは、"2. As The River Pass"ではエレクトロニクスらしい重低音ビートが、"4. Ascending Of A Spotless Bird"では弦楽奏を生かして、"8. Woods of Admittance"はピチカートと中華和声?、と言った多少の差異は見られますが、基本的に同じ様なサウンドです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  エフェクト風景映像付き "6. Views Of Natthall" です。
  これがある方がインスタレーション的で面白いかも


いずれも響く重低音とミニマルがベースのトランス系でしょう。何処にもドキッとする様な新しさはありません



ミニマルがベースのエレクトロニカやハウス、トランスと言った音楽を超える何かは感じられませんでした。もっと極端な、もっと新しい、もっとインスピレーション度の高い音楽であって欲しかったです。

トーンハレ管(一部メンバー)がやった事に意味を見出すくらいが目新しさでしょうか。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ハヤ・チェルノヴィン(Chaya Czernowin)の「冬の歌, Wintersongs」今の時代の前衛現代音楽



Wintersongs (Chaya Czernowin, b. 1957)
前回に続きチェルノヴィンなので、紹介はそちらをご覧下さいね。

voice入りの室内楽集で、"Wintersongs" と "Five Action Sketches" の二つのシリーズものになっています。チェルノヴィン得意のパターンですが、後者は一曲2〜3.5分の小曲です。Wintersongsは前回インプの"Shifting Gravity"にもIII.が入っていました。
面白いのは作品を一気に作る様で、今回も一曲を除き2014年に作られています。(異なる一曲"6.Wintersongs II"は2003年で "III"と同じです)

演奏はICE [International Contemporary Ensemble]、Steven Schick(cond.)、voiceはJeffrey Gavett(baritone 1,2,4,5,7)、Kai Wessel(contra tenor 1,2,4,5,7)です。


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧







1. Wintersongs V: Forgotten Light (2014)
全楽器協奏みたいなロングトーンのトゥッティ、静空間、特殊奏法と打楽器音、弦グリッサンド、いろいろな構成を見せてくれます。基本的に旋律はなくて"音塊"です。voiceはもちろんヴォーカリーズで歌詞は無く人間特殊声法?!です。チェルノヴィンの楽風品評会の様な24'ですが、ノイズ系があまり出て来ませんね。


2. Five Action Sketches I: Breathe (2014)
2'弱のvoiceや各楽器のホモフォニー的対話です。voiceは例によって特殊声法wですね。それが面白いです。


3. Wintersongs IV: Wounds / Mistletoe (2014)
各楽器が旋律の無い音出しを繰り返します。それが静空間の中に散りばめられる感じで、背景音と前音の様な構成もあります。音の会話は進むに連れて濃くなったり、静が強くなったりと変化しますね。最後は大きな塊と化してから鎮まります。
voiceが入らないのでシンプルな構成ですが、入ったらもっと面白かった?!

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア付きです



4. Five Action Sketches II: So Narrow (2014)
読経かドローンの様なvoiceから入って、台詞のない対話が見え隠れします。その時に一瞬ですが機能和声的ハーモニーになるのが面白いですね。voiceグリッサンドも後半出て来ます。


5. Five Action Sketches IV: Sliver (2014)
ロングトーンでノイズも入ったドローンを背景にして、特殊奏法の音が前面に現れます。一回だけ強音がその中に出現します。


6. Wintersongs II: Stones (2003)
この一曲だけ古い2003年作品です。低音音塊が辺りを彷徨う感じで、生き物が蠢く感じなのはチェルノヴィンのこの時代の楽風ですね。魑魅魍魎の暗躍といった気配です。


7. Five Action Sketches V: Sand (2014)
珍しく楽器がハーモニー音を出しますね。もちろん不協和音ですが、そこからグリッサンドで分かれて行くのが面白いです。そしてvoice特殊声法の登場です。



無調混沌ですが、即興的ポリフォニーの様な音のカオスではありません。静の中に旋律の無い音塊がホモフォニー的に出現するのがチェルノヴィンです。

まだノイズ感が低いですが、今(2020)のチェルノヴィンの作品方向になっていますね。特殊声法とも言える肉声が入るとますますその面白さが増すのも特徴的です。個性的で素晴らしいですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ハヤ・チェルノヴィン(Chaya Czernowin)の室内楽集『Shifting Gravity』



ハヤ・チェルノヴィン (Chaya Czernowin, b. 1957)
C.チェルノヴィンはイスラエル出身で米在住の女性現代音楽家ですね。米西海岸UCSDでB.ファーニホウに師事して、その影響が大きいですね。従って欧エクスペリメンタリズムの"新しい複雑性"を標榜しファーニホウの後任としてUCSDで教鞭をとり、今はハーバード大で指導しています。(英出身のファーニホウも今は米ビバリーヒルズ在住でスタンフォード大で教鞭をとっています)

作品もさることながら、今や指導者としての注目度が高い音楽家の一人になるでしょうか。楽風は特殊奏法のノイズ系でエレクトロニクスや調性に近い方向性も見せます。"新しい複雑性"ですが、強度な演奏・スコアの難異性ではありませんね。(以上、前回インプレ "Hidden" の紹介文と同じ)


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧



Shifting Gravity
チェルノヴィンの室内楽集になります。"Anea Crystal" と "Winter Songs" は彼女が得意とする連作楽曲の一部でしょう。

演奏はQuatuor Diotima(1,3,5), Ensemble Nikel(2), ascolta(4), ensemble courage(6), IRCAM(6)、指揮者略です。







1. Anea Crystal: Seed I, for string quartet (2008)
奇妙なピチカートから入って来ます。この時点で前衛色満開ですねw すぐにトリル・トレモロが現れ、対位法の様な流れを作り、そこにチェルノヴィンらしい弦のノイズが絡んで来ますね。埋め尽くす様な音では無くて、空間に散りばめた"音"です。猫の鳴き声の様なグリッサンドも出現して、会話的でもあります。後半は強烈なノイズを発生させますね。無調ポリフォニー混沌ではありません。


2. Sahaf, for four instrumentalists (2008)
pf, e-guitar, perc, sax, で、旋律感は薄く"音"の交錯です。楽器構成がセンス抜群で音の広がりが面白いですね。ここでもポリフォニカルでは無くてホモフォニーの様な連携を形作ります。その中にポリフォニカルな密集音も時折発生させますが、全体としては空間と音の印象ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ensemble Hinge によるLIVEです。音作りがよくわかります
  こちらの方がメリハリが強いですね



3. Anea Crystal: Anea, for two string quartet (2008)
1.のver.2で、同じ様にピチカートから入り、直ぐにグリッサンドとの絡みになっています。そこからノイズになるのも同じ流れですね。曲全体としても延長線上に、と言うか同じ流れでしょう。楽器構成が倍になっている感じも薄めですが。


4. Sheva, for seven instrumentalists (2008)
楽器編成が増えて少しポリフォニーの流れが入りますね。ゾウの咆哮の様な管楽器が特徴的で、弦楽器も生き物の雄叫び的に絡みます。音塊が叫ぶサファリ・ツアーみたいな音楽です。pfだけが即興的な音を出しますね。


5. Anea Crystal: Seed II, for string quartet (2008)
1.のver.3ですね。今回の入りはバルトーク・ピチカートとグリッサンドが一緒ですね。グリッサンドが主の流れを作りながらトリル・トレモロが蠢くという感じです。トリル・トレモロはノイズに変化もしています。切れ味鋭い短いボウイングが飛び交うのも面白いですね。


6. Winter Songs III, for ten instruments and electronics (2003-2004)
ここまでの5曲とは少々異なり、無音空間を感じる音の構成です。音があるからこそ空(くう)がある、と言った感じでしょうか。旋律はなく"音塊"で低音主体です。闇夜の魑魅魍魎なのかナイト・サファリなのか、見えないけれど何か居るゾ、みたいなw エレクトロニクスは後半のノイズはわかりますが、それ以外はよくわかりません。



まだ2010年より前の作品なのでノイズ主体にはなっていませんね。旋律感は低く無調の"音塊"によるホモフォニーで、その中にノイズも入る感じです。

これで即興的ポリフォニーにするとB.ファーニホウの方向になってしまいますが、弦のグリッサンドなどはシェルシやシャリーノの方向が見えたりしますね。ラッヘンマンを思わせる特殊奏法ノイズがこの後のチェルノヴィンの方向性になりますね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





プロフィール

kokoton

by kokoton
.

    

カレンダー
09 | 2020/10 | 11
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
ようこそ
カテゴリ
ありがとうございます