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丁抹の前衛 "K.A.ラスムセン" と "B.セアンセン" 弦楽四重奏曲集:Arditti String Quartet


String Quartet by Karl Aage Rasmussen & Bent Sørensen
アルディッティ弦楽四重奏団
今、キーになる二人のデンマーク現代音楽家の弦楽四重奏曲ですね。もちろん現役の音楽家ですが、この後の世代を指導したことにも実績・定評があります。その二人が若手の頃の作品集で、タイトル名は韻を踏んでいるかの様です。

1980年代のアルディッティSQは、すでに創設メンバーがアーヴィン・アルディッティ(#1vn)とL.アンドレード(va)だけとなっています。でもこの時代はチェリストのデ・サラムがいますので叙情を排した強引とも思える様なキレキレの演奏が楽しめるでしょうね。








カール・ラスムセン
(Karl Aage Rasmussen, 1947/12/13 - )
デンマークの現代音楽家ですね。オーフス音楽院で教鞭をとっていて、本ブログ注目のセアンセンやステーン=アナセンと言った前衛音楽家も師事しています。

引用やコラージュ、モンタージュ(とも言うそうです)と言った手法を使います。ただダイレクトな引用ではなく、とても短く常に変化を与える方向性になっていますね。その後はフラクタルによる自己相似性も使っています。近年は 'baroque orchestra Concerto Copenhagen' の在籍作曲家を務めた事もあり、古楽器曲やバロック時代のトランスクリプションも手掛けていますね。今回はモンタージュ技法の時代の二曲です。

1. Solos and Shadows (1983)
 不協和音を使った調性と無調の中間色の様な和声です。間と瞬間の様なコントラスト構成で、強音か無音といった流れの中に流れる静美な旋律が印象的です。
四弦はホモフォニーでありポリフォニーであり、時にモノフォニーの様相さえ見せますね。時代背景から行くと多様性で、トリル・トレモロ高速アルペジオの主旋律と変奏を主体とした美しさを感じます。ポスト・セリエルかではないと思いますね。アルディッティSQも繊細キレキレの演奏です。ラスト3'でのスロー化も面白いですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

2. Surrounded By Scales (1985)
 一曲目の延長線上のイメージです。ラストのスローをベースにしながら路線は同じ、緊張感と高速アルペジオからの静的な美しさです。パートI. II.と言った感じでしょうか。



ベント・セアンセン
(Bent Sørensen, 1958/7/18 - )
ラスムセンより約10歳年下で現役バリバリです。最近多くインプレしているので紹介は割愛ですが、今回は弦楽四重奏曲第1-3番で、20代の頃の作品になります。セアンセンと言えばグリッサンドと微分音ですね。

1. String Quartet No.1, Alman (1984)
 繊細なロングボウイングの音色が幽玄に流れると、得意のグリッサンドが微分音を示しながら現れますね。この微妙な浮遊感がセアンセンでしょう。羽虫の飛ぶ様な音色や、時折刺激的な弦音が出現してくるのもこの頃から出来上がっていますね。

2. String Quartet No.2, Adieu (1986)
 グリッサンドと微分音の占める割合が増えてセアンセンらしさが強くなって来ています。同じく対位的に走るトリル・トレモロ旋律もはっきりしていますね。静的な中に幽玄さがありますね。無調混沌が現れるのも効果的です。

3. String Quartet No.3, Angels' Music (1988)
 基本構成は出来上がっている感じですが、前半は繊細な弱音パートになっています。その中にグリッサンドが現れて、オバケが出る様な音楽?!w 中盤から速い強音も入ってきますね。緊迫感が増して、そこにもグリッサンドが多用されています。



緊張感と美しさのラスムセン、微妙な浮遊感と幽玄さのセアンセン。いずれも静と間を生かした流れを感じますね。

調性感を残しながらの無調というのも欧エクスペリメンタリズムとは一線を画した当時の北欧現代音楽になっていると思います。アルディッティSQも繊細さと刺激を奏でていますね。今回は炸裂ではありません。



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インバル/都響 二枚の「マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"」その違いは?!



Conductor | Orchestra
エリアフ・インバル Eliahu Inbal
(東京都交響楽団, Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra)
約6年違いでの同楽団とチクルス完成という不思議なインバル/都響のマーラーですね。マーラー振りの指揮者と、マーラーを得意とするオケの二回の録音の違いはどこにあるでしょうか?!



マーラー 交響曲 第8番


① 2008-4/9 ミューザ川崎シンフォニーホール




第一部
提示部:第一主題「来れ創造主たる精霊よ」は程よく激しく、第二主題のソプラノ(#1)はスローに落ち着いて各独唱の重唱も丁寧に流れます。
展開部:入りの管弦楽奏は暗い中にリズムを与えて、再び重唱になり朗々とした歌唱が聴き応えがありますね。第一主題変奏と合唱は激しく登場しそのまま山場を構築します。
再現部:興奮を落ち着かせる様に重唱群が出現して、コーダは少年合唱団の"Gloria…"が弱い感じですが、ラストは高揚して終わりますね。
このパートらしい緩急出し入れの明確な第一部になっていますね。特別な事はないのですが…


第二部
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
5度下降のピチカートが印象的な主題を陰影強く表現していますね。程よい揺さぶりが聴きやすさを作っています。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
序奏主題からの「合唱とこだま」は表情が薄い感じです。「法悦の神父」はテノール風のバリトンで、「瞑想の神父」は少々弱目ですが、愛を讃歌します。

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
「天使の合唱」もやや弱め、「若い天使たち」も少し弱いですね。「成熟した天使たち」ではvnのソロとアルト(#1)が登場しますが、どうしても合唱の弱さが気になります。「未熟な天使たち」「祝福された少年たち」も同じですね。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールは伸びの良い高音が役柄らしい気配を出して心地良いですね。「かつてのグレートヒェンの告白」(sop2)はやや表情に欠けます、「罪深き女」(sop1)の方が表情がありますね。「サマリアの女」(alto1)鎮めた印象を上手く歌い素晴らしいですね。「エジプトのマリア」(alto2)はやや腰高の印象で、"贖罪の女三人の合唱"は絡みが弱い感じです。
「懺悔する女 (グレートヒェン)」はいっぱいいっぱい。ピークとなる短い「栄光の聖母」は印象に全く残らず残念!

【5. コーダ:神秘の合唱】
「神秘の合唱」を静かに唱えると、ソリストが入るとスローで山場へ向かい大団円を作ります。興奮や高揚は避けた感じでしょうか。


特別な個性は感じられません、第一部は曲なりの良さですが、第二部歌唱パートは気になります。

テノールは良かったですし、サマリアの女のアルトも表現力がありましたが、他のソロや合唱には弱さを感じますね。





② 2014-3/8 東京芸術劇場, 3/9 横浜みなとみらい




第一部
提示部:第一主題「来れ創造主たる精霊よ」はテンポを速く切れ味があります。第二主題のソプラノ(#1)とそこからの重唱群は良い絡みを聴かせてくれていますね。
展開部:入りの管弦楽奏も表情が付いて、重唱はバランス重視、一転第一主題の変奏と合唱は派手派手しく鳴らし歌い上げます。見事な山場で、コントラストが見事ですね。
コーダは少年合唱団で始まる"Gloria…"から山場へは緊迫感を見せて一気に駆け上がり、見事にフィニッシュします。上手い流れです
表情豊かで見晴らしが良くなった第一部です。


第二部
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
5度下降(一楽章第一主題は4度)のピチカートが印象的な主題は適度に、山場は鋭い緊迫感を与えています。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
「法悦の神父」はスロー静から緩急を交えて表現あるバリトンで、「瞑想の神父」のバスもワーグナー風な表現力で、愛を歌います。もう少し声量があれば尚可でしょうね。

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
「天使の合唱」「祝福された少年たち」も明瞭に、速いテンポが生きます。「成熟した天使たち」ではアルト(#1)が合唱に乗ってしっかりと愛の絆を歌っています。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」は児童合唱の勢いの上に現れて、テノールを生かして聖母を讃えます。まぁ役得ではありますが。優しいオケと合唱の流れから「かつてのグレートヒェンの告白」(sop2)は伸びやかに、「罪深き女」(sop1)も優しいソプで、「サマリアの女」(alto1)は低い声で切々と、「エジプトのマリア」(alto2)はシャープに、それぞれ願いを歌います。女性陣のバランスが良いですね。
「懺悔する女 (グレートヒェン)」の願いは澄んだsopでファウストを思う優しさを感じられ、ちょっとグッときます。そして応えるバンダの「栄光の聖母」はハイトーンで包み込む感じ、良いですね。このグレートヒェンから聖母は見事です。

【5. コーダ:神秘の合唱】
「神秘の合唱」で '永遠の女性' を静に讃えると、ソリストが入ってゆっくりと山場へ向かい、大団円はタメを作って炸裂です。お見事!


緩急出し入れと歌手陣の充実で、見晴らしの良いマーラー8になっています。バランスが良く、全編通して心地よさが感じられますね。

突出した何かはないかもしれませんが、録音も良く、誰でも安心して楽しめる一枚ですね。




緩急ある楽曲構成と歌手陣の充実度で、②の完成度が勝りますね。インバル/都響の二録音は概ねこの傾向にあると思います。

録音も妙に作り込まれた①よりも②の方が臨場感があって好感がもてますね。(個人的嗜好です)
個人的にはインバルはショスタコーヴィチやバルトークの方が素晴らしいと思っていますが。



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ニルス=オーレ・ボー・ヨハンセン(Niels-Ole Bo Johansen) の「Identity Problems」デンマーク現代音楽トロンボーン・ソロ曲集

北欧のトロンボーニストというとスウェーデンの名手クリスチャン・リンドベルイが浮かびますが、デンマークにも素晴らしい奏者がいる様です。


Player
ニルス=オーレ・ボー・ヨハンセン
(Niels-Ole Bo Johansen, tb)
デンマークのトロンボーニストですね。デンマーク・オーフス音楽院の教授を勤めながらÅrhus Sinfoniettaの創設者の一人でもあります。個人的には知見がなかったのですがw


Album Title
Identity Problems
Danish solo works for trombone
今回のアルバムの一番のポイントは同じデンマークの現代音楽家8人の作品を取り上げている事ですね。
デンマーク現代音楽家ビッグネームの二人、ノアゴー(1932)と師事をしたセアンセン(1958)ですね。そしてセアンセンの教育を受けた1970年代後半生まれの世代が今活躍中という年代の流れが素晴らしいですね。(二人の紹介文は割愛しています)







1. Identity ProblemsPer Nørgård (b.1932)
発声しながらのトロンボーンは声なのか音なのか、という面白さを見せてくれますね。他に目新しさはありません。無調でアルペジオ的、跳躍ノコギリ音階、不思議な和声で、セリエル風な感じはしますね。"無限セリー"を作っているノアゴーですから。


2. The Bells of VinetaBent Sørensen (b.1958)
ダブルストップに聴こえますが、tbで出来るのでしょうか?! それとも師に倣っての発声を入れながらのテクなのでしょうか。そこが売りになっている感じです。構成感はノアゴーによく似ています。


3. Liebesbriefe IIThomas Agerfeldt Olesen (b. 1969)
トマス・エーヤフェルト・オレセンは同じデンマークのK.A.ラスムセンやB.セアンセンの他、H.グレツキにも師事していますね。
 voiceが入ります。弦楽も入って、細かい刻みの無調旋律を奏しています。弦楽は特殊奏法?でネコの鳴き声の様な音色やピチカートも刻みます。tbはミュートを使った音出しに徹していますね。そのポリフォニーでいかにも前衛的ですがtbがオマケの様な…w


4. AirJøærgen Plaetner (1930-2002)
イェルゲン・プレトナーはデンマークの初期の電子音楽家ですね。
 牧歌風のtbから入ってきます。調性の反復がベースになっていますね。エレクトロニクス処理はなく、少々退屈ではあります。


5. Muxolydian SaturdayKasper Jarnum (1971-2011)
若くして亡くなったカスパー・ヤルナムは、ラスムッセンやノアゴーに習い、パリでも学んでいます。ジャズや特殊奏法をベースとした前衛ですね。
 プレトナーの曲のテンポを速くした様な感じですね。反復で調性旋律です。tbの面白さが特にあるわけでもないので、これでは…


6. Nuages élégiaquesHans-Henrik Nordstrøm (b. 1947)
ハンス=ヘンリク・ノアストレムはデンマーク音楽アカデミーで習っていますね。デンマークのジーランド島の自然の中を活動拠点としているそうです。北欧的で声楽を取り入れるのも特徴です。
 ヤルナムの曲の続きかと思いましたね。でも途中からダブルストップ的な音色やトーキングの様な旋律となって来て面白みが出てきます。


7. MadrigalBo Gunge (b. 1964)
ボー・グーネはP.ノアゴーやH.アブラハムセンに習っていますね。
 ここでも発声を用いている様ですね。そのダブルストップ(重音)です。それが倍音の様な響きを出しています。


8. Wievs from Plato's caveRené Mogensen (b.1968)
ルネ・モーゲンセンは電子音楽を中心としていますね。現在はバーミンガムで教鞭をとっている様です。ジャズ・即興・ダンスパフォーマンスにも方向性を見出しています。
 電子音とtbの音色、そしてパーカッションが柔らかくロンドやホモフォニーに繋がって反響する様な音を作ります。エレクトロニクスでループやリバーブをかけていますね。complexな空間音響的響きで一番面白いです。ドローン的でもありますね。唇を震わす様な奏法も効果的に感じました。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



8人の作品ですが、面白かったのはソロ以外の二曲 3.と8.でしたね。ソロと銘打ったアルバムなので、微妙ですがw

超絶技巧や尖った前衛性がないので、やっぱり今ひとつソロでの満足度が得られなかったというのが正直な気持ちです。



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ニルス・レンスホルト(Niels Rønsholdt) の『Songs of doubt』という美しい前衛合唱曲

さてどちらの方向を見せてくるのか、そこに興味が沸くレンスホルトです。


Composer
ニルス・レンスホルト
(Niels Rønsholdt, b.1978)
今先端の前衛実験現代音楽を創るデンマーク1970年代生まれの現代音楽家の一人、レンスホルトですね。何回もインプレしているので詳細は割愛ですw

前衛のすっ飛んだ音楽と、美しい楽風の両面を持っているのも特徴的です。前衛実験方向はとにかく音楽の枠組みを広げるので、旧来の音楽のイメージで聴くのでは楽しむのが難しいかもしれませんね。



Album Title
Songs of doubt, Prospect / Retrospect (2015)
ため息などでvoiceを入れるのはレンスホルトの基本楽風ですが、今回はそこにオンドマルトノを入れています。その使い方が気になりますね。

中間ゾーン、'過去と未来' や '前と後' の狭間と言った様な、の話になっている様で、それが本人の言う "疑いの歌" と言う事だそうです。疑いとは両方向を見るからだそうで、背後にあるのは 'sick longing and uncomprehending wisdom' …(笑) ステージはインスタレーションになっている様ですね。

voiceはRoderik Povel, オンドマルトノはNathalie Forget, コーラスはStudium Chorale, 指揮はHans Leendersです。







1.The Night 2.You Said 3.The Lake 4.All I Care About 5.Forest of Light 6.It's Only You 7.Waiting 8.Clouds 9.The Rain 10.The Wind

この曲の全体印象は残念な事にライナーノートに全て書かれてしまっています。

"The soundscape is distinctive, because it is a mixture of classical choir, amplified solo voice and electronic sounds."

その通りで、クラシックの合唱に電子処理されたソロ・ヴォーカル, そして電子音楽の合体した音風景です。調性をベースとした心地良い合唱曲をベースに、電子処理の空間音響サウンド、反復や引用、と言った技法で色付けをしています。決して支離滅裂混沌方向ではありません。

多様性という単純さを超えた方向を感じますね。普通この手の調性軸足の音楽は中途半端さが気になるのですが、素直に聴く事ができます。TEXTもタイトルに絡むシンプルな英文なので聞いて、それなりにわかると思います。

オンドマルトノも極自然にフィットしていて、クセのあるその音も上手く主張させている事ですね。メシアンのトゥーランガリラ以来の印象です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  LIVEです。背景にモニターが配置されてインスタレーションです
  途中でプルトにハプニングが起こりますが、仕込み?!w
  指揮者に隠れているのがオンドマルトノですね




前衛的な手法を使いながらの旧来音楽の踏襲、新しいクラシック合唱曲の可能性を感じますね。これがレンスホルトの一つの方向でしょう。

調性に現代音楽技法と言った垣根を超えた音楽になるのかもしれません。とは言え、バロックや古典の愛好家の方には納得のいく音楽にはならないかもしれませんが…



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オスモ・ヴァンスカ/ミネソタ管弦楽団 の「マーラー 交響曲 第2番 "復活"」穏やかな流れ

そろそろ第七番がリリースされますね。その前に所有盤をインプレしておきましょう。


Conductor | Orchestra
オスモ・ヴァンスカ (Osmo Vänskä)
Minnesota Orchestra, 2017-6
ヴァンスカが長期政権で音楽監督を務めるミネソタ管と進めているマーラー・サイクルからの第2番ですね。
ちなみにヴァンスカの前の首席指揮者が大植英次さんでした。

ソプラノはルビー・ヒューズ(Ruby Hughes)、メゾソプラノはサーシャ・クック(Sasha Cooke)です。





マーラー 交響曲 第2番



第一楽章
第一主題低弦は速く重さ控え目、葬送行進曲は揺さぶりながら、第二主題は穏やかです。コデッタは晴れやかですね。展開部の前半も後半も微妙なアゴーギクで穏やかスローから山場はシャープにあっさりです。スロー&アゴーギクで重厚さは避けた第一楽章になっています。

第二楽章
主要主題はバロック風優しい舞踏、トリオでも少々緩めな流れです。回帰でも殊更には色合いを濃くしませんね。最後の主題回帰はいっそうの穏やかさになっています。

第三楽章
主部『子供の不思議な角笛』, 中間部共に控え目で流れは美しくヴァンスカ象徴的な感じです。コーダも炸裂はオブラートに包まれた感じ!?

第四楽章
主部アルト「原光」はスロー静に乗って美しい流れを作ります。中間部もその流れに沿った穏やかな美しさになっていますね。

第五楽章
提示部第一主題は刺激的に入り、hrの動機が直ぐに鎮めます。第二主題のコラールも落ち着いた音色で、復活の動機も秘めた意思ですね。
展開部も落ち着いて、"死者の行進"でも極端な刺激はなく爽快感になっていますね。
再現部は緊迫感を持ちながらも穏やかに進み夜鶯の一呼吸から、合唱が静かに現れるとソプラノが浮き上がる様に登場します。スローで静かな世界からアルトは "O glaube, Mein Herz" を朗々と歌いますね。男声合唱が「復活」を高々と歌いますが控え目、sop/alto重唱も刺激は薄いです。合唱が加わって一気に山場を作りますが、全てが落ち着いた山場ですね。


穏やかで美しい流れのマーラー2です。スロー緩やかマイルドな徹した構成で、ラストの大団円も興奮は排除のヴァンスカ・マーラーです。

ラストに待っているこの曲の感動をどう聴くかで、好みは別れるかもしれません。刺激物が苦手な方向きですね。




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エンノ・ポッペ(Enno Poppe) の前衛エレクトロニクス歌曲『Interzone』

作品が少ないのが困りますが、好きな前衛現代音楽家の一人ですね。


Composer
エンノ・ポッペ (Enno Poppe, b.1969)
日本では指揮者の印象の方が強いかもしれませんね。もちろん本ブログでは独現代音楽家としてのインプレです。

楽風はノイズや反復から、微分音を中心に電子処理(シンセサイズ)された音楽になります。調性旋律も普通に取り入れる多様性であり、極度に音密度の高いサチュラシオン系の様相も見せますね。そしてインスタレーションにも踏み入れて、まさに今の時代の欧エクスペリメンタリズムの現代音楽です。



Album Title
Interzone, Lieder und Bilder (2003/04)
Berliner Festspieleの委嘱作品で、voiceと歌入り17パートの楽曲です。サブタイトルにある様に"歌と写真"で構成されたインスレーションになっています。(映像空間担当にAnne Quirynenが入って、ライナーノートを見るとステージには多数のモニターがありますね)

タイトルは"ブレード・ランナー"で知られる米作家のバロウズ(William S. Burroughs)の作品名で、昼と夜の間と言った様な中間ゾーンの意味だそうです。具体的にはモロッコのタンジール地区の事で、そこは帰属する国が様々で不明確であり、変化と存在そしてこれからを表現する意味とか… タイトルだけでも意図が複雑ですw

歌詞として使われているドイツの作家マルセル・バイアー(Marcel Beyer)のTextは自分を見つめ問いかける形而上学的内容となっています。

voiceはOmar Ebrahim、コーラスはNeue Vocalsolisten、演奏はJonathan Stockhammer指揮, ensemble mosaicになります。電子処理のプログラミングはいつもの通りWolfgang Heinigerですね。







1. Like Spain, I am bound to the past - 2. Untroubled, wide awake and calm - 3. Why don’t you have a soda pop - 4. I cannot breathe - 5. I had no lips, no teeth, no vision - 6. He who has words to hear may spell - 7. And Joselito - 8. And the stairs, porches, lawns, driveways - 9. Let the dawn blue as a flame cross the city - 10. It’s Man or Monkey - 11. BROKEN PIECES - 12. I made recordings of the continuous music - 13. Who is the third - 14. Do they ever come back - 15. God grant I never die in a fucking hospital - 16. Word - 17. I can only wait for it to happen

1.は散文詩と言うよりもイントロダクションでストーリーテラー、完全な語りパートです。2.から始まりますが、エレクトロノイズをサンプリングした様なサウンドですね。そこにvoiceが入りますが、シンプルな語りでシュプレッヒゲザングの様な異常性はありません。その替り、コーラスメンバーがシュプレッヒゲザング的に入って管楽器とのポリフォニカルな対位を見せてくれます。サウンドは1970年代のロックの様なポップさも感じさせますね。背景に常駐するパーカッションが効果的です。

"11. BROKEN PIECES"だけがインストルメントでアンサンブルの反復・変奏を主体とした無調ポリフォニーの混沌になっていますね。ラストは近年ほどではありませんが、少しだけサチュラシオン傾向になります。

続く"12. I made recordings of the continuous music" が一番長い18'のメインパートで、電子ノイズのドローンから入り、そこにvoiceとコーラスが載ってきます。静的な空間を作っていて前半のパートと大きく異なりますね。後半はそう言った傾向になっていて"14. Do they ever come back"ではホモフォニー的一体感を作っています。

ちなみにタイトルは各Textの冒頭部分です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  14. Do they ever come back です




前衛エレクトロニクスの歌曲ですね。voiceは語りでコーラスは無調の独唱と重唱、演奏は即興的混沌性は低く対位構成感の無調ポリフォニーです。Text内容と音楽表現の直接的なマッチングは感じられません。

インスタレーション作品なので、ぜひ全写真付きのステージを見てみたいですね。そこが一番のキー(問題?)かもしれません。



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マーラー交響曲第6番 "悲劇的" 名盤珍盤 110CDを聴き比べてみました [#5 : 81-100]


#5回で100CDまで来ました。マーラーの交響曲で実績のあるブーレーズ、ベルティーニ 、インバルをメインに。第6番は曲が好きなのでどうしても☆が増えますね。


Mahler Symphony No.6 -- 110 CDs 

 ★:名盤 (一般的にいわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #0:4CD バルビローリ聴き比べ
バルビローリ[x4]
 #1:16CD
バーンスタイン[x3 ★☆], アバド[x5 ★☆], カラヤン[x3 (★)☆], ゲルギエフ, 小澤征爾, 井上道義[x2], プレートル[㊟]
 #2:20CD
ヴァンスカ, ダーリントン[☆], ラトル[x3 ☆], P.ヤルヴィ[x2], N.ヤルヴィ[x2 ☆], ジークハルト, セーゲルスタム[☆], パッパーノ, ザンダー[x2], ショルティ[☆], ヴィト, シェルヘン[㊟], ズヴェーデン, ノット, J.サイモン, アブラヴァネル, パク・ヨンミン
 #3:20CD
テンシュテット[x4 ☆], シャイー[x2], ヤンソンス[x2], MTトーマス[x2], ハーディング, 朝比奈隆[x2 ㊟], スヴェトラーノフ[x2 ㊟], セル[x2], バルシャイ, 井上喜惟, 山田和樹, クルレンツィス[★]
 #4:20CD
ギーレン[x3 ☆], シノーポリ, メータ, サロネン[☆], サラステ, ヤング, 大植英次[㊟], ボンガルツ[㊟], シュテンツ, ヘンヒェン[x2], アシュケナージ[x2], ヴロンスキー, タバコフ, シュワルツ, マーツァル, ネトピル
 #5:20CD 本投稿
ブーレーズ[x4 ★☆㊟], ベルティーニ[x3 ☆], インバル[x3], ルイージ[x3 ☆], レヴァイン[x2], フェルツ, ツェンダー[㊟], ガッティ, ファーバーマン, ドホナーニ
 #6:10CD
ハイティンク[x5 ★☆], ジンマン[x2], ペトレンコ, ハーヴェイ, ワールト




ピエール・ブーレーズ, Pierre Boulez (4録音)

このブログでは現代音楽家の印象の方が強いわけですが、実はマーラーの良い録音を残しているブーレーズですね。



(#1)

BBC Symphony Orchestra
[Enterprise] 1973 mono


Mahler6-Boulez-BBCso1973.jpg

BBC響の首席指揮者(1971-1975)時代のマーラー6ですね。正規盤か微妙なイタリアのレーベルからのリリースです。


【第一楽章】
恐ろしくスローな第一主題の入りです。tpが怪しいですね。テンポを徐々に上げモットーでは標準的に、アルマの主題は鳴りの良い広がりです。提示部反復の第一主題は通常テンポに戻しますね。展開部の第一主題では引っ張る様な奇妙なアゴーギクを振ってからの炸裂です。第二主題は大人しい静的流れで、山場はスローから上げて行きます。ところがピークで奇妙なスローの揺さぶりに。再現部は普通に、コーダの葬送は暗く第二主題は晴れやか派手にです。
アゴーギク変化球の第一楽章です。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題はストレート、テンポと切れ味がスケルツォらしく素晴らしいですね。トリオも速めでシャープな美しさで、優しさではありませんね。木管の動機はスローに落としてコントラストが良いです。回帰するトリオでは少し揺さぶりをかけていますね。
変則パターン無しのキリッとしたスケルツォになっています。

【第三楽章】
主要主題は緩やか穏やかな中に微妙なディナーミクを付けています。第一トリオは哀愁感があって緩いアゴーギク、中間部(第二トリオ)は明確な明るさで変化を付けています。ラスト山場が強烈に速いと言うのが奇妙で珍しいですね。
アゴーギクで変化付けのアンダンテです。

【第四楽章】
序奏から揺さぶりを入れています。アレグロ・エネルジコから提示部第一主題はシャープな行進。切れ味のパッセージは主題と緊張感ある絡みでテンポアップし、第二主題は穏やかながら速いです。快速の提示部ですね。展開部チェロの動機から第二主題は揺らぎを強く現れ、激しい速度で山場へ駆け登ります。行進曲は抑えてクールですね。再現部第一主題は派手派手しく出現し、続く騎行を激烈に飛ばします。暴れ馬の様です!!


奇妙な揺さぶりの変化球と切れ味のストレート, 両面を持つマーラー6です。ハイレベルの曲者アゴーギクですが、パワープレイも堪能できますね。

変化球好きの貴方はぜひ一度打席に立って下さい! 普通にマーラーを聴くなら無用の一枚かもしれません、個人的には手放せませんが…






(#2)
★☆
Wiener Philharmoniker (VPO)
[DG] 1994-5


(右は全集です。ブーレーズのマーラーはオススメですね)

BBC-SOから約20年後、ウィーンフィルを振った良く知られたマーラー6ですね。大きく変貌しています。


【第一楽章】
スローに入る第一主題は重厚、徐々に上げて標準的なテンポに。アルマの主題は華やかです。提示部反復の第一主題は初めから標準テンポですね。展開部第一主題は重々しく、実は厄介な挿入部は各ソロ・パートの上手さとバランスの良さでgoodですね。流石はVPO! 再現部は文字通りの再現ですが、より色合いの濃さを感じます。コーダも同様です。完成度が高い第一楽章です。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は第一楽章の流れを受け継いで重厚で堂々と。若干速めのトリオは繊細な美しいメヌエットですが甘美に落とす事はありません。木管の動機も流れに沿った自然さでナチュラルです。全体を通して第一楽章の延長線上を感じますね。

【第三楽章】
この美しく優しい主題はまさにVPOの個性が発揮されたと思います。第一トリオも優しく哀愁が広がります。緩やかなアゴーギクがとても効果的ですね。中間部は雲が晴れるかの様に広がり、後半第一トリオ回帰の山場は壮大です。
6番最高のアンダンテの一つでしょう。

【第四楽章】
序奏はスローベースに揺さぶりを押さえ、二回目のモットーからアレグロ・エネルジコ達すると提示部第一主題を切れ味良く放ちます。パッセージも落ち着いてhrを朗々と鳴らし、第二主題が軽妙に現れます。展開部チェロの動機は抑えめに、第二主題は広大な音色です。第一主題からの行進曲は抑えながらも堂々ですね。再現部は第一主題回帰を華々しく迎えると騎行は切れ味鋭く駆け抜けます。


威風堂々とした完成度の高いマーラー6です。小細工無用、低重心盤石な構えといった風情ですね。優しく美しいアンダンテが色を加えているのも素晴らしいです。

VPOの鳴りの良さが最大限生かされているのも一つの大きな要因ですね。いつ聴いても間違いの無い一枚と言う感じです。






(#3)
Gustav Mahler Jugendorchester
[En Larmes] 2003-4/13

VPOの9年後、グスタフ・マーラー・ユーゲント管をルツェルンで振った非正規盤のマーラー6です。

ブーレーズは同年同月同オケで来日。マーラー6番は、4/18:大阪ザ・シンフォニーホール、4/21:東京サントリーホールで演奏しています。(実は大阪の録音が存在するのですが…)
東京公演では、シェーンベルクの"ペレアスとメリザンド"の名演を残していますね。


【第一楽章】
重厚な第一主題、途中からテンポを速めモットーから再びスローにします。アルマの主題は少し速めながら華やかですね。展開部第一主題は勇壮に、第二主題挿入部はVPOの様には行かずとも狙いは同じです。再現部はテンポを速めにしています。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は速めながら第一楽章延長線で、トリオはスロー&シンプルにして流れを切り替えます。ここでも速い設定ですね。木管の動機は少しスローにして雰囲気を作っています。

【第三楽章】
アンダンテですね。テンポは少しアップしていますが、主要主題の穏やかさはVPOと似てブーレーズの基本的な方向性は9年間でも変わっていない事を感じます。第一トリオも同じ様な流れで哀愁を作り、中間部は穏やかな明るさ、後半の山場は速く壮麗です。

【第四楽章】
陰鬱渦巻く序奏は割とあっさりとしています。第一主題はシャープに落ち着いてパッセージと共に進んで行き、軽妙な第二主題を迎えます。展開部の第二主題ではテンポをいっそう速めて切れ味を出し、行進曲は軽快なこなしです。再現部スロー静からの第一主題出現は華々しく、パッセージから飛び出して騎行は気持ちが入っているのが良くわかります。ユースオケの楽しさを感じられますね。


速いテンポでスッキリとしたマーラー6です。VPOのテンポ設定を速めて軽量化した感じですね。

ブーレーズの狙いと思われ、ユース・オケの演奏実力が十分発揮されています。この若々しい流れは"あり"ですね。音源も放送用レベルです。






(#4)
Lucerne Festival Academy Orchestra
[Accentus] 2010-8, 9


上記#3の7年後、2010年ルツェルン音楽祭でルツェルン音楽祭アカデミー管を振ったマーラー6です。ユースオケでの聴き比べが出来ますね。


【第一楽章】
スッキリとした第一主題ですね。アルマの主題は適度に優美で、全体的にスタンダードっぽい提示部になっています。なぜか展開部第一主題だけ変わったアゴーギクを振って(1973の様な)、挿入部はスローを強調し音は押さえた感じになりますね。再現部も今ひとつ切れ味が感じられないのが残念です。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題はメリハリがありません。そうなると速めのトリオはそっけない感で、木管の動機も印象が残りません。

【第三楽章】
主要主題は速めの設定になり、この方が自然な流れに感じますね。ユースの場合はテンポ設定が少し速い方が良い感じでしょうか。スローに落とす第一トリオは弱い感じです。中間部はhrとtpの対話が良いですね。でも残念ながら弱々しいアンダンテです。

【第四楽章】
序奏はスロー基本でモヤっとした感じ、第一主題もやや遅めなので走れません。安全運転の提示部から展開部・再現部もどこかスッキリしない感じがしてしまいますね。それでも再現部第一主題回帰以降は元気を見せてくれた気がします。


スカッとしない曇り空の様なマーラー6です。テンポ設定が標準的で全体教科書的、そうなるとユースオケですからフラットになってしまいますね。

速めのテンポが生かされた "Gustav Mahler Jugendorchester" (#3)の様なユースらしい若々しさ見つかりません。ブーレーズ85歳、流石に厳しかったのでしょうか。





ガリー・ベルティーニ, Gary Bertini (3録音)

都響の音楽監督時代のマーラーが思い出されるベルティーニですね。なぜか都響はベルティーニとのマーラー全集を出しませんね。選集はあるのですが…



(#1)

Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
[Weitblick] 1973-4/30


ベルリン・ドイツ交響楽団(DSO)を振ったマーラー6ですね。


【第一楽章】
速くて切れ味のある刺激的な第一主題、モットーからパッセージでスッキリさせるとアルマの主題は派手で華やか若干速めです。提示部の反復はカット!です。展開部の第一主題は激しさを増し、第二主題は低弦が呪いの様なボウイングで唸っています。再現部第一主題は激走、コーダは荒々しく納めます。強烈ハイテンポ切れ味の第一楽章です。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は速く第一楽章の延長線上を感じさせる流れです。締まりが心地良いですね。トリオはブレーキを掛けてスローになっていますが優しいメヌエットには落としませんね。刻むリズムがピシピシ跳ねて印象的です。木管の動機も哀愁はほどほどでそっけないですが、この流れには合っていますね。

【第三楽章】
主要主題は流れを一変させるスローですが、優美さというよりキッチリ固い印象を受けます。第一トリオも同じ流れですが、少し緩やかさを付けていますね。第二トリオ(中間部)は明るい光が燦々と輝きます。ラスト山場は大きく鳴らして来ます。一癖モノのアンダンテになっていますね。

【第四楽章】
序奏からスローベースにディナーミクを振って彫りの深い流れを作り、モットーから走る気配を漲らせて、アレグロ・エネルジコから提示部第一主題は強烈キレキレに疾走します。パッセージで手綱を締め直して走らせると、第二主題もテンポをキープして提示部の流れはシャープです。展開部はチェロの強迫的動機から第二主題は派手な鳴りで大きな山場を作ります。適度なアゴーギクからの行進曲は当然の怒涛爆進です。思わず笑っちゃうほどですね。再現部も一呼吸の前半を超えると第一主題回帰から騎行は狂気の突進になります。爆裂爆走の最終楽章です。


テンポの速い硬派の突撃型マーラー6です。刺激と気合が全面に出た感じですね。また今の時代では聴く事のない、第一楽章提示部の反復カット版です。

決して素直なマーラー6ではありませんが、どうもこういう演奏が好きでになりますねぇ。






(#2)
Kölner Rundfunk Sinfonieorchester
[EMI] 1984-9/21


(右は全集ですね)

かのケルン放送響とのマーラー・サイクルからの一曲で、もちろん首席指揮者時代(1983-1991)の録音です。


【第一楽章】
第一主題は適度なテンポに乗って勇壮に、穏やかなパッセージからアルマの主題は派手で華々しくアゴーギクを効かせていますね。展開部は勇壮な第一主題とスローの第二主題のコントラストを明確に付けてきます。再現部第一主題はテンポアップして激しさ漲らせて、ラスト第二主題変奏もパワフルですね。怒涛で派手な第一楽章です。好きなパターンかもw

【第二楽章】
スケルツォですね。主要主題は一楽章の延長線上ですが、少しクールに納めていますね。中間部は穏やかなメヌエット風にギヤを切り替えて続く木管の動機はほどほどにと、良い流れを作っています。回帰でもう少し色付けをが欲しかった気もします。

【第三楽章】
アンダンテです。主要主題は穏やかマイルドに、第一トリオがそこに哀愁を付け加えて来ます。王道の流れです。第二トリオの中間部は陽光さす明るさを緩やかに表現していますが、全体少し緩さを感じるかもしれません。

【第四楽章】
序奏の揺さぶりは弱めの流れですが、アレグロ・エネルジコから提示部第一主題は歯切れ良い勇壮さです。パッセージも切れ味鋭く現れて第一主題と対位的に絡んでシャープです。第二主題もその流れを崩さずに入って来ますね。展開部は両主題を大きな鳴りで広げます。行進曲は快感の勇壮さ、ディナーミクのコントロールがとても効果的ですね。再現部も騎行パートは超ハイテンポで強烈に突き進みます。見事な締まりの良さです。


変化球なし真っ向勝負のマーラー6です。あまりにストレート過ぎるのが問題でしょうかw 個性あるアゴーギクのスパイスを一振りして欲しかったですね。

勇壮な第一・四楽章が見事なので、二つの中管楽章に締まりがあれば素晴らしかったと思います。






(#3)
Tokyo Metropolitan SO
[fontec] 2002-6/30


音楽監督時代(1998-2005)の都響とのマーラー6ですね。埼玉と横浜で行われたチクルスです。
マーラー6はこの21年前の1981年に東京文化会館の初客演で振っていますね。(#1と似た方向性で面白いのですが、残念ながら最終楽章は演奏が着いて行けませんでした)


【第一楽章】
低弦の弾む様なリズムを強調した第一主題、肩の力が抜けた流れです。アルマの主題は少し速めにマイルドな華やかさですね。展開部、再現部共に安定感抜群の流れを感じますね。手の内に入った演奏とでも言うのでしょうか。18年前のケルンRSOと比べると落ち着いた流れを感じます。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は落ち着いた流れで隙はありません。トリオも程よくテンポダウン、落ち着きは変わりませんね。木管の動機も違和感はありません。回帰でもアゴーギクの揺さぶりを上手く付けて来ます。

【第三楽章】
アンダンテですね。主要主題はややスローで透明感ある落ち着きに、第一トリオでもスローはキープして色合いを哀愁に変えて来ます。中間部は広がりある音色で明るさを見せて、緩やかな流れが全体を支配しています

【第四楽章】
陰影強い序奏を押さえて進み、テンポアップしてモットーへ。第一主題は爽快に、パッセージもhrの鳴りを生かします。第二主題は軽妙ですね。展開部の両主題の交感もほどほどに、行進曲も計算通りの刺激でしょう。ウッドクラッパーの音色が良いですね。再現部は押さえの効いた流れから騎行も落ち着きの中にコントロールされています。


落ち着いて行儀の良いマーラー6です。全パートで程よいテンポ、程よい刺激、全てがコントロールされた成熟した姿でしょうか。

円熟さと引き換えに角(つの)も削られた様な… ベルティーニの声が良く聞こえますね。





エリアフ・インバル, Eliahu Inbal (3録音)

マーラー振りの一人インバルですが、三回のマーラー・サイクルの内二回が都響とですね。それも約5年ほどしか開けていません。なんだか不思議な感じですね。



(#1)
Radio-Sinfonie-Orchester Frankfurt
[DENON] 1986-4/24, 26


フランクフルト放送響(現:hr交響楽団)とのチクルスからのマーラー6ですね。


【第一楽章】
スローな第一主題は途中から徐々にテンポアップで計算を感じますね。重厚さはほどほどです。パッセージを大きく落として、アルマの主題は緩やかな印象です。展開部スローの挿入部を極緩く、後半の山場も興奮を避けるかの様ですが、再現部は締まり良い行進曲で入りますね。コーダの葬送ではスローを強調、全体の流れは緩い印象です。

【第二楽章】
スケルツォですね。主要主題は緩いです。これがインバルの狙いなのでしょうね。トリオはいっそう落とします。木管の動機もドロ〜んとした感じです。残念ながら強烈な間延び感を拭えません

【第三楽章】
アンダンテはスローを避けて適度なテンポ設定ですが、それでも主要主題はのんびり感を醸して ぬるいコーヒーみたいですね。第一トリオは哀愁が漂いますが、主題からディナーミクが極度に弱くベターっとしています。第二トリオ(中間部)で何とか色合いを変えてくれますが、全体ユルユルです。微妙なポルタメントもよく聴こえる様な奇妙さも…

【第四楽章】
序奏は当然スローでアゴーギクは薄め、提示部第一主題からパッセージは程よくテンポアップしますが、アゴーギクが弱く耳と脳が疑っていて快感は伝わりません。展開部からも、処々で標準的なテンポと揺さぶりを見せます。それなら今までの緩いスローは何だったのでしょう??って感じになりますね。この楽章だけ特別コントラストが良いわけでもありませんし。


緩くてもわ〜っとしたマーラー6です。アゴーギクは振っていますが基本はスロー、個人的にはシャキッとして欲しい気分が先に立ちます。特に中間楽章のモワモワ感は強烈です。

クセ物の一枚ですが好みではないのでにはなりませんね。






(#2)
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
[fontec] 2007-12/19


都響のプリンシパル・コンダクターの前、特別客演指揮者以後でのマーラー・サイクルの6番ですね。フランクフルト放送響から21年後になります。


【第一楽章】
第一主題は重厚と言うよりも肩の力を抜く感じ、モットーからパッセージも段階的に落として、アルマの主題はスロー低重心の優美さが珍しいです。展開部は力感の第一主題変奏から、挿入部は表情を感じさせるスローで上手く奏します。再現部は勇壮さを増してテンポも上げて来ますが、第二主題は平凡な回帰です。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は冷静さを感じます。そこへトリオが洒脱な色合いで入ります。ついでにインバルの唸りも着いて来ますがw

【第三楽章】
主要主題は微妙なアゴーギクを振っていますね。第一トリオは揺さぶりを消して哀愁から穏やかさに変化させて行きます。第二トリオ(中間部)では王道的に明るい光を感じさせてくれますね。

【第四楽章】
長い序奏はスローの緊張感で上手いですね。アレグロ・エネルジコからの提示部第一主題は締まりの良い疾走です。パッセージhrの鳴りが良く、第一主題との絡みも切れ味がいいですね。第二主題は軽快そのものです。展開部も教科書的にピシッとまとまって突き進みます。生真面目な完成度の高さと引き換えにスリルやワクワクする様な楽しさが薄まった感じですが、都響らしさかも。


クセも欠点も少ないお行儀の良いマーラー6です。多少の揺さぶりは付けていますが、コンパクトにあっさりとまとまった印象ですね。

個人的には何か+αが欲しい感じです。コンサートでもそうですが、インバルの唸りがやたらと聞こえますね。






(#3)
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
[Exton] 2013-11/2, 3


プリンシパル・コンダクター(2008-2014)時代、都響と二回目のマーラー・サイクルからの6番。上記(#2)の6年後になります。


【第一楽章】
第一主題は重心を低く力感の流れになっています。モットーからパッセージでも流れ良く鎮めてアルマの主題をスローに大きく広げます。展開部第一主題はビシッと決めて、挿入部スロー静も緊張感がありますね。(インバルが唸るフレーズがうるさいですがw) 再現部は勇壮さを見せながら進み、コーダも沈めた葬送から一気に走り抜けます。見晴らしの良い第一楽章になりました

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は落ち着いていますが切れ味は良いですね。重心を下げて流れを作るとトリオが静粛なイメージを作ります。上手い緊張感を作っていますね。続く木管の動機は殊更に哀愁を見せる事はしませんね。それぞれ回帰では色合いを加えて、表情のあるスケルツォになっています。

【第三楽章】
主要主題は緩やかなアンダンテで少しアゴーギクが振られ、第一トリオは透明感ある哀愁、中間部は力のある広がりです。それにしてもインバルの唸り声は歌い過ぎですね。

【第四楽章】
序奏は音の良さを感じます。提示部第一主題は姿勢正しく、パッセージも正面を見据えた感じです。第二主題は抑えた軽やかさで現れます。展開部は一呼吸入れる感じからチェロの強引な動機から第二主題が目覚める様に出現して大きく鳴らします。1stハンマーの後は行進曲を重心を低く堂々と進んで行きますね。静からの烈、再現部聴かせ処の第一主題回帰からの騎行パートは突撃突進で、素晴らしいです。


落ち着き払った堂々王道のマーラー6です。適度なアゴーギクとディナーミクがマッチして、録音も良く全方位良好です。興奮も排した出来過ぎ感が気になるかもしれませんが、それこそ都響の個性かと。m(_ _)m

マーラー6のインバルならこれでしょう。インバルのヴォーカリーズ(唸り声)で歌付きの6番になっていますがw





ファビオ・ルイージ, Fabio Luisi (3録音)

来日での印象はスラっとしたクールな印象のイタリア人指揮者ルイージ。マーラーの録音を多く残していて、6番も三つの録音があります。実は興味深い3録音で、隠れた名演もありますね。



(#1)

Suisse Romande Orchestra
[Espace] 1997-10/1


首席指揮者(1997-2002)時代のスイス・ロマンド管弦楽団を振ったマーラー6ですね。


【第一楽章】
第一主題は速めで切れ味 締まりよく、コラールのパッセージ後半でスローに鎮めるとアルマの主題は大きく華やかです。良く鳴らす提示部ですね。展開部は第一主題を厳しく、挿入部では静スローの幽玄さへと急変させ、hrのコラールもスローで落ち着いています。再現部の二つの主題は揺さぶりが強くなり、コーダの行進曲は陰鬱に。ラストは第二主題から派手に締めくくります。コントラストの良さが見事ですね。

【第二楽章】
スケルツォです。強烈な主要主題で激しさと速さが印象的です。トリオはスローダウンでシンプルに刻みます。極端にメヌエット風にはしないで変拍子を生かして、主部とのコントラストを作ります。木管動機は色合いを隠してトリオの延長上的ですね。回帰の各部は変化をつけて強烈な揺さぶりとなって、激しさと聴き応えあるスケルツォで前後楽章とのバランスもgood!ですね。

【第三楽章】
主要主題は穏かで肩の力が抜けた美しい哀愁ですね。第一トリオも悲しみを湛える様に良い流れで繋がり、ピークの悲しみからの中間部(第二トリオ)では大きく晴れ間を見せる様な明るさが広がります。後半の溢れる哀しみを大きく表現して、素晴らしい緩徐楽章になりました。

【第四楽章】
序奏から強烈なコントラストと緊張感で鳴らします。アレグロ・エネルジコからの第一主題はシャープにキレ良く、パッセージでスローダウンと珍しい構成を見せながら主題を絡めて進んで行きます。第二主題はその延長にあって優美、上手い流れですね。展開部vc動機から第二主題が現れるとテンポを上げてピークを作り、間を作った流れからの行進曲はリズムを強調して進みます。再現部も第一主題回帰は派手、騎行は劇的に進み快感ですね。コーダの低音金管が怪しいですがw
スローで激しさを上手くコントロールした最終楽章で類型性を回避していますね。

長いアプローズが入っていて、鳴り止まない拍手喝采から手拍子となって声援が湧き上がります。ルイージは何回もステージに現れたと思われ、素晴らしいコンサートであったに違いありませんね。



強烈なコントラストが素晴らしいマーラー6です。各主題・動機のテンポ・強弱設定がベストマッチの流れを作ります。最終楽章提示部パッセージでのスロー化の様な珍しい変化も上手く入れています。

中間楽章"スケルツォ→アンダンテ"の対比は特筆モノで、全楽章の繋がり感と構成の素晴らしさに貢献していますね。ハイコントラスト系6番としてオススメの一枚で、LIVEと言うのも見事です!!






(#2)
MDR Sinfonieorchester
[VKJK] 1998-2/7, 8


ルイージが上記スイス・ロマンド管と同時期に首席指揮者(1996-2007)を務めていたMDR交響楽団とのマーラー6です。スイス・ロマンド管(#1)の翌年の録音となるので興味深いですね。


【第一楽章】
速めの第一主題で切れ味よく、コラールのパッセージ後半スローは変わらずアルマの主題は少し抑え気味になりましたね。反復の方が力感があるかも。展開部第一主題はここでも激しさを見せ、挿入部での静スロー急変も同じですね。再現部二つの主題も激しさ、コーダは少し速くなって?いて陰鬱な行進曲からラストは派手なまとめです。激しいコントラストの(#1)から角が取れた感じですね。テンポ設定は似ています。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題はやはり速くて強烈ですが激しさは減っていますね。トリオのスローダウンはほどほどになって優美さが強まりましたね。バランスよくはなりましたが個性は無くなりました。木管動機は少し揺さぶります。

【第三楽章】
主要主題は優美な流れですが、前楽章とのコントラストが弱まったのは残念ですね。第一トリオも哀しみを感じる良い流れですが、途中で弱音に落としてピークにしますが弱め。中間部(第二トリオ)は見晴らしの良い明るさですね。ややスロー・フラットな流れから、後半の哀しみのピークは大きいですが表情は減っているかもしれません。

【第四楽章】
序奏もコントラストの刺激を削ってバランスは良くなりました。提示部第一主題はテンポアップでシャープですが、個性的なパッセージのスローダウンは弱くなってしまいましたね。第二主題は素直な軽快さを見せます。展開部vc動機からも特徴的なスローのコントロールは影を潜めて、行進曲も刺激はありますが平均的バランスになっています。再現部も同様の流れですね。


緩急の個性を見せつつバランスを崩さないマーラー6です。基本は(#1)と変わりませんが角を落とした感じですね。実はそこがコアの"魅力溢れる刺激"で、大切なものを失ったわけですが…

全然悪くないのですが、スイス・ロマンド管が頭にあると引き算になってしまいます。






(#3)
Wiener Symphoniker
[Wiener Symphoniker] 2011-1


MDR響の13年後、ウィーン交響楽団(VSO)の首席指揮者(2005-2013)時代のマーラー6ですね。第二楽章をアンダンテに変更です。


【第一楽章】
リズミカルで興奮を避けた第一主題、木管コラール後半スローはルイージらしくアルマの主題は華々しさですが抑えていますね。展開部第一主題の激しさも抑え気味、挿入部のスローも違和感のない自然な流れで、hrコラールもスロー抑えた印象ですね。再現部は第一主題の激しさをバランス良く増して、コーダ行進曲は陰鬱ほどほど、ラスト第二主題も抑えが効いています。興奮を排除したスタンダード色の第一楽章です。

【第二楽章】
アンダンテに変更して来ましたね。静美な主要主題は緩やかに、第一トリオは静の哀しみを強く表現します。ピークも感情は抑えて、中間部(第二トリオ)も緩やかな明るさになりました。淡々とクールに進み、後半の溢れる哀しみは抑えた感情ですがしっかりと。静で哀しみと美しさが染み入る緩徐楽章です。

【第三楽章】
従ってスケルツォですね。主要主題は速いですが激情や興奮は排除されてクール、トリオは穏かなメヌエット風に、木管動機は淡々と流します。主部回帰の激しさは抑えて、最後の一瞬の刺激はgoodスパイスですね。

【第四楽章】
序奏は落ち着いた流れになりましたね。提示部第一主題はキッチリとした行進曲、パッセージも標準的で、絡みやすい流れになりました。第二主題は淡々として表情変化は薄めです。展開部vc動機も力感は避けて第二主題も緩やかに大きく現れ、行進曲もクールに決めて歩みを進めます。再現部は静からの第一主題回帰は晴れかやに大きく入って、コラールから騎行は力感が戻ってシャープに決めます。


スタンダード色ですが端正クールなマーラー6です。10年を超える歳月は流れを大きく変えましたね。(#1)スイス・ロマンド管の激情的流れは何処にもありません。

でも、澄んだ上質な出汁の様な落ち着きが感じられます。このクールさもありかもしれませんね。第二楽章アンダンテ変更も、前後楽章の端正クールさにフィットします。





ジェームズ・レヴァイン, James Levine (2録音)

メトの顔のイメージが強かったレヴァインですが、事件は残念でした。マーラーに関してはRCAから全集(三つのオケで, 2番8番を除く)を出していて、独特の明瞭さがすぐに浮かびますね。この2録音ではスケルツォとアンダンテを入れ替えています。
【後日記】2021年3月9日、亡くなられました。R.I.P. Maestro LEVINE.



(#1)
London Symphony Orchestra
[RCA] 1978-2/7,9,10


(左は所有盤、右は全集です)

レヴァインが首席指揮者(1968-1979)を務めた時代のロンドン交響楽団とのマーラー6です。


【第一楽章】
刻む行進曲のリズムが心地良い第一主題から、アルマの主題は大きく音を広げます。適度なアゴーギクもあって気持ちの良い提示部です。展開部第一主題はキッチリと再現、第二主題からの挿入部は静ですが深淵より明瞭さが勝っていますね。再現部はハイテンポで勢いをつけて、アゴーギクある流れからコーダは第二主題を派手に鳴らします。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は歯切れ良く爽快、トリオも明るく軽妙にリズムを刻みます。木管動機はサラッと流す感じで哀愁感を抑えて、力感の主部回帰です。トリオの回帰は意外に抑えて優美さ主体ですが、最後の主部回帰は迫力です。

【第三楽章】
主要主題は優しさ溢れるアンダンテ、第一トリオも緩やかに哀愁が漂う流れです。大きく哀しみからの中間部(第二トリオ)は明るい光りを燦々と注ぎますね。最後の第一トリオ回帰は強烈に激しいです。凄いコントラストの楽章です!!

【第四楽章】
序奏は各動機のアゴーギクで差別化して、アレグロ・エネルジコから第一主題を締まり良く行進します。パッセージも軽快に現れ主題と絡み、第二主題は軽妙。展開部はvc動機で刺激を与えて第二主題を派手に鳴らして、行進曲はテンポアップ力感で突撃。再現部は緩やかな静から第一主題回帰で勢いを取り戻すと、騎行は快速・激走・爆走です!! とにかく派手な最終楽章です。


スカッと気持ちの良いマーラー6です。5番でもそうでしたがアゴーギクの振り方と明瞭さが特徴的で、これもありかなという感じですね。

この "無双の明快さ" が6番の一つの姿だとすれば、でしょうねぇ。






(#2)
Boston Symphony Orchestra
[BSO Classics] 2008-10/10, 11, 14
(amazonでは見つかりません)

LSOの30年後、小澤さんの跡を継いでボストン交響楽団の音楽監督(2004-2011)になった時代のマーラー6ですね。第二楽章をアンダンテに入替ています。


【第一楽章】
やや速めで勇壮な第一主題、アルマの主題も速めで大きく鳴らします。少しせっかちな提示部です。展開部は第二主題からの挿入部を少し速めに進めて、再現部は色合い濃く主題を鳴らします。コーダは葬送が暗く陰湿スローで、第二主題で一気に派手にとコントラストが強いです。ただアゴーギクが全体に弱まり、音色は濃いのですが淡泊な印象になりました。

【第二楽章】
アンダンテに変更ですね。主要主題はここでも速くなって淡々としていますが、第一トリオは穏やかな哀愁です。哀しみの山場は弱まり、第二トリオの明るさにつなぎます。最後の第一主題回帰ではしっかり鳴らしていますがLSOよりは控えめでしょう。

【第三楽章】
スケルツォですね。主要主題は随分と大人しくなりました。中間部はスローでペタッとした印象、木管動機も淡々としていますね。中間部回帰はアゴーギクを生かしますが、主部回帰は以前より抑えが強いです。

【第四楽章】
序奏はスローに重心を置いた感じなりましたが、提示部第一主題は速めシャキッとです。パッセージとの相性もいい感じで、第二主題は軽快ですね。展開部・再現部は全体的に速めで騎行などは派手ですが、楽章としてはLSOよりややコンパクトになった感じます。コーダで3発目のハンマー?!(微妙な音です)


速めで抑揚が減り(#1)の明快さが弱まったマーラー6です。音をよく鳴らすのは変わらないのですが。

レヴァインの鳴らす流れでは第二楽章もスケルツォの方がフィットする感じですね。





ガブリエル・フェルツ, Gabriel Feltz

Stuttgarter Philharmoniker
[Dreyer Gaido] 2008-2/15


フェルツが首席指揮者時代(2004-2013)のシュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー6です。第5番では極端な二面性を見せて驚かせましたが、第6番はどうでしょうか?!


【第一楽章】
速め軽めから刺激を付ける第一主題、木管コラールで静にしてアルマの主題も速めに淡々としています。展開部は第一主題ピークを派手に、挿入部で静スローに落としてコントラスト付け。再現部の両主題には刺激と感情を与えて、コーダは第二主題で一気にテンポアップしフィニッシュを駆け抜けます。

【第二楽章】
スケルツォ主要主題は一楽章の回帰的で締まり良く、トリオはスロー優美なメヌエットからインパクトのある流れに。木管動機はその延長上です。最後の主部回帰では激しさと揺さぶりのフェルツらしさを覗かせました。

【第三楽章】
主要主題は緩やかな美しさで、第一トリオのコーラングレの哀愁美につなげ、ピークでは緩やかに大きく哀しみを湛えます。中間部(第二トリオ)はそれに対比する様に明るさで応えます。第一トリオ回帰では極静スローに落としてから、山場を大きく鳴らします。見事な構成の美しいアンダンテ、これもフェルツの一つの顔ですね。

【第四楽章】
長い序奏は彫りの深い演奏でここだけでも聴き応えがあります。アレグロ・エネルジコからの提示部第一主題は締まり良い行進曲、パッセージもシャキッとして張りがあり主題と絡んで見事に進むと、第二主題は軽妙優美のコントラスト。展開部は第二主題ピークを華々しく、第一主題からの行進曲はアップテンポからテンポ変化で揺さぶりながらクールな気持ち良さを見せます。再現部も第二主題をしっかり抑え第一主題が華やかに顔を出すと、切れ味の騎行で突き進みます。


美しいアンダンテと刺激的山場のマーラー6です。第5番の様な異様さはありませんが、ここでもその二面性を見せてくれますね。

特に第三・第四楽章の素晴らしさはハイレベルで、アンダンテは一つの完成形と言っていいと思います。この二つの楽章を聴くだけでも価値があります。





ハンス・ツェンダー, Hans Zender


Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken
[cpo] 1973-4/4-7


ツェンダーが首席指揮者(1972–1984)を努めた時のザールブリュッケン放送交響楽団とのマーラー6です。この時代らしく第一楽章提示部の反復はカットです。


【第一楽章】
重厚さを避けながら速めで切れ味ある第一主題、アルマの主題も速く少しテンポ変化を与えて来ます。提示部繰り返しカットですね。展開部第二主題からの挿入部もやや速めで極端には鎮めず、第二主題回帰からはシャープに。再現部の両主題は激しさ強め、コーダの葬送も鎮めるよりも力を溜めて第二主題の激しさに繋げています。ツェンダーらしい速くて淡々とした中に見せる激しさが快感です。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題はハイテンポで切れ味抜群、第一楽章の連携性を印象付けます。トリオ(中間部)ではテンポを落としますが、それでもこのパートとしては速くてシャキッとしています。本来の緩やかさではありませんが、全然悪くありません。木管の動機でも速めであっさりと流し、トリオ回帰では少し優美さを見せますね。

【第三楽章】
主要主題は優美に、ディナーミクを付けて少しづつテンポを上げて行きます。第一トリオはやや濃い色で哀愁を奏で、ピークで大きく感情を溢れさせると、中間部(第二トリオ)のhpとhrが明るい光を投げかけます。テンポは速めキープです。第一トリオの回帰は大きく鳴らしますが、殊更の哀愁感はありません。繊細な哀愁ではなく濃厚なアンダンテになっています。

【第四楽章】
序奏はモットーから既にテンポアップ、アレグロ・エネルジコから第一主題はキレキレに突進。パッセージも速めで絡んで気持ち良く進むと、第二主題はチェンジペースで軽妙に出現ですね。展開部vc動機後の第二主題を一気に大きく広げて派手に鳴らし、行進曲はもちろん真骨頂で激しくキレキレです。再現部第一主題を爆裂させて、一気に騎行へ突入すると激走です。もう止められません! ツェンダーのマーラー炸裂です!!


速いテンポとキレキレ シャープのマーラー6です。スロー静音での表現は排除、突き進む快感の一方通行です。特に最終楽章は痺れる様な快感があります。

この流れに個性的な極端に速いパートを盛り込んだのが第9番と言う事になりますね。いずれ個性を放つツェンダーのマーラーです





ダニエレ・ガッティ, Daniele Gatti

Orchestre national de France
[DECCA] 2008?


フランス国立管弦楽団の主席指揮者(2008-2016)時代のガッティのマーラー6です。ガッティとレヴァインは不祥事が残念ですね。


【第一楽章】
リズムを刻んで弾みをつける様な特徴ある第一主題、アルマの主題は少しテンポアップで澄んだ音色で広がりを作ります。展開部の"烈(一主題)→暗(挿入部)→明(二主題)"の変化はアゴーギクでのコントラスト付け。再現部の二つの主題は少し刺激を増して、コーダの葬送はスローを避けて第二主題を走らせます。ディナーミクの振り幅が少し不足気味に感じますね。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は速く、一楽章との類型性を否定します。中間部(トリオ)はグッとスローに落として揺さぶりも付けています。メヌエット感はほどほどですね。主部とトリオで大きな緩急付けです。木管動機の表情変化は弱め、最後の主部回帰も激しさは抑えています。

【第三楽章】
主要主題は緩やかで穏やか、少し揺さぶりを掛けるのが気になります。第一トリオでも微妙にテンポ変化を与えています。この揺さぶりはアンダンテには向かないと思うのですが。山場を広げて、第二トリオはほのぼのとした明るさです。第一トリオ回帰からの山場は哀しみを溢れさせます。

【第四楽章】
序奏はメリハリが薄いですね。大きなクシャミが笑えますがw 提示部は第一主題をシャキッと行進曲、パッセージもバランス良く進め、絡みは本流的になっています。第二主題も約束通りの軽妙さで入ってから盛り上げます。展開部のvc動機は厳しく奏で、第二主題のピークを大きく広げます。コラールは派手に鳴らしますが、行進曲はアゴーギクでスローの変化を付けて来るので、気持ち良さに欠けますね。ここは突撃して欲しいパートです。展開部も第一主題は派手ですが、騎行は激しさからスローに落としてしまいます。力感はあるのですが、何か違います


アゴーギクの変化でまとめたマーラー6です。大きなテンポ変化と細かい揺さぶりの両輪ですね。フィット感が今ひとつのパートもありましたが。

ディナーミクが薄めでメリハリが不足気味なのも痛手だったと思います。ガッティは唸り過ぎですね。インバルじゃないんですからw





ハロルド・ファーバーマン, Harold Farberman

London Symphony Orchestra
[VOX] 1980-7/28, 29


米人指揮者のファーバーマンがロンドン交響楽団に客演したマーラー6ですね。最終楽章の演奏時間を見ただけで嫌な予感がしますがw


【第一楽章】
軽快なテンポ設定が心地良い第一主題、アルマの主題は明るく明瞭な鳴りです。展開部もクセはなく、挿入部(第二主題動機変奏のスロー)ではカウベルを利かせ気味と言うくらいでしょう。再現部も第一主題がやや速く 第二主題はややスローの対比ですが、標準仕様的印象。重厚さを避けてスカッと見晴らしの良い楽章ですね。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題はリズムの刻みが第一楽章第一主題的で同じ流れを主張しています。トリオはスローで緩いアゴーギク、個性と言うほどでもないでしょう。木管動機も少々印象が薄めですね。それぞれ回帰しますが、変化量は少ないです。

【第三楽章】
主要主題はスローに優しく、少し哀愁を感じます。第一トリオはコーラングレが哀愁感を濃く歌い、hrが少し明るさを戻します。ピークはスローに抑えて、中間部(第二トリオ)はhrの音色が美しいですね。山場も落ち着いています。

【第四楽章】
この曲の一つのキーである序奏は色合いが薄いです。アレグロ・エネルジコからの第一主題は約束通りに快速です。hrのパッセージもシャキッとして、両動機が軽快に進んで、第二主題はとても軽量です。展開部は第二主題のスローが気になる流れで、モタッとした行進曲も締まりません。再現部も第二主題はスローで幻滅、騎行は気合い良く締まっています。ただ、いたるところに振られたこの楽章のスローは合わないと思いますね。


スローパートの間延び感が強いマーラー6です。それ以外は平凡。唯一違うのはハンマーが三発だと言う事でしょう。

残念ながら、この曲の好みの方向性ではありませんでした。





クリストフ・フォン・ドホナーニ, Christoph von Dohnányi

The Cleveland Orchestra
[DECCA] 1991-5/20


ドホナーニがクリーヴランド管弦楽団の主席指揮者(1984-2002)時代のマーラー6です。その後は桂冠指揮者ですね。


【第一楽章】
堂々とした第一主題は勇壮、コラールを静めてアルマの主題は控えめに美しさを奏でます。個人的にはこの対比が好きです。展開部も主題の回帰はコントラスト良く、スローの挿入部は色合いが美しいですね。再現部は第一・二主題を約束通り派手さを増して、コーダは葬送を鎮めて第二主題を大きく鳴らします。明瞭で気持ち良い流れの第一楽章です。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は肩の力を抜いた切れ味でクールに、トリオは瀟洒なメヌエットにしています。木管動機もその流れの延長上に有って主張は抑えています。最後の主部回帰は一瞬厳しく鳴らしますが、全体としては淡々としているかもしれません。

【第三楽章】
主要主題はリラックスで優美、副主題(第一トリオ)もクールな哀愁で、ピークは抑え気味に。中間部(第二トリオ)で明るさを広げ、山場は大きく鳴らして溢れる哀愁を奏でます。

【第四楽章】
序奏はあまりコントラストを付けませんね。アレグロ・エネルジコからの第一主題は快走して気落ち良さがあります。パッセージは落ち着いていて、第二主題も軽妙ですが変化は弱めでしょう。展開部vc動機はほどほどに第二主題を盛り上げ、行進曲は刻むリズムに気持ち良さがあります。再現部の第一主題回帰は華やかに、騎行はハイテンポでガッツリ走りますが暴れる事はありません


明確に流れをコントロールしたマーラー6です。テンポは僅かに速めで揺さぶりを抑え、興奮を抑えつつも程よくパワーも見せ、と方向性が揃っています。

完成度は高いのですがまとまり過ぎの印象が残り、勢いのついた荒々しさや感情移入が欲しい気がしてしまいます。(最終楽章は少し荒っぽさを見せますが、コントロールは効いています)







聴き始めると一気に聴けるのですが、なかなかその気になるきっかけがないのが問題ですw まだまだあるのですが…


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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