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ペーター・アブリンガー(Peter Ablinger) の「Grisailles (I-100)」というピアノ現代音楽

20世紀末という前衛現代音楽の流れを感じられるエレクトロニクスを使ったピアノ・ソロ曲ですね。


Composer
ペーター・アブリンガー
(Peter Ablinger, 1959/3/15 - )
オーストリア人現代音楽家で、ジャズ・ピアニストと作曲で活動をスタートさせていますね。エレクトロニクスも習っていて、インスタレーションを早くから取り入れています。そういう意味ではCDでは厳しい処もあるのかもしれません。ドナウエッシンゲン音楽祭にも登場していますね。


Album Title | Player
Grisailles (I-100)
ヒルデガルト・クリーブ (Hildegard Kleeb, 1957 -, pf)
三台のピアノの為の曲です。基本構造は24レイヤーで、それぞれが独自の時間と構成を持っている様です。アブリンガーなので普通のピアノ・ソロではつまらないですよね。

演奏者のH.グリーブはスイスの女性ピアニストで、活動を含めてアブリンガーとは接点がある様ですね。前衛・即興を得意としていて、米国時代にフリー・ジャズのアンソニー・バクストンと活動してたそうです。






Grisailles (I-100) (1991-93年)
I.とII.の二部構成になっています。第一印象は、"そこら中でピアノが鳴っている"感じです。溢れかえる程の音数でも無いし、定位の明確な三台に聴こえるのですが。
左・中央・右の三台のピアノ、エレクトロニクス処理(昔ならテープと表現でしょう)、が雨垂れの様な単音反復と背景に曇った打音を残して繰り返されます。打音は特殊奏法でしょう。
part IIで特殊奏法の打音が強くなったり多少の変化は見せますが、基本単純パターンが延々と続きます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  part I. です




方向性は別としても、カイホスルー・ソラブジ的なピアノ長尺現代音楽の流れを感じますね。

異なるのはピアニストに強烈な技巧性を求めてはいない事でしょう。代わりにエレクトロニクスを使って三台のピアノを重ねます。インスタレーション方向で見せていたら一層の面白さがありますね。



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『マーラー 交響曲 第9番』 «ネット配信» ユッカ=ペッカ・サラステ指揮 / ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団 2020年1月31日

サラステはドイツのオケと素晴らしいマーラーを残していますね。今回はノルウェーのオケを振ったマーラー9です。
映像付き配信なのでサラステの生真面目なタクト・スタイルが見られますね。


Conductor | Orchestra
ユッカ=ペッカ・サラステ, Jukka-Pekka Saraste
(Bergen Philharmonic Orchestra)
フィンランド人指揮者のサラステが、今年一月ノルウェーのベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団に客演した北欧セットのマーラー9ですね。

ところでサラステは昨シーズンでケルンWDR交響楽団の首席指揮者を退任していますが、その後はどうしているのでしょう。ご本人のサイトでも特に書かれていませんね。(3-4月は米国・カナダで客演することになっていますが、コロナは大丈夫??)

➡︎ Bergen Phil. (Official) (賞味期限は短いと思われますので、お早めに)





マーラー 交響曲 第9番 «ネット配信»
(Live at Grieghallen, 31 Jan. 2020)

JukkaPekkaSaraste-mahler9.jpg


第一楽章
短い序奏のバランスが気になりましたが、落ち着いた第一主題の静けさから第二主題以降高めて反復へ、第三主題を高らかに歌います。展開部もクセのない安定した流れで、緩-急(劇)-緩の構成を構成していますね。サラステらしいクセのない落ち着いた流れです。

第二楽章
レントラー主題は悠々と、第一トリオでもチェンジペースは緩やかでバランスが保たれます。第二トリオはややスローに適度な優美さを添えます。全体とすると少しフラットに感じるかもしれません。

第三楽章
主要主題は刺激を抑え柔らかめに、続く副主題も同じ流れに乗ってマイルドな軽快さです。中間部をシンプルに奏でるとターン音型を出し、最終楽章第二エピソードを思わせます。

第四楽章
序奏は色濃く、主要主題も濃厚です。今回初めてサラステの感情移入を感じました。第一エピソードも情感の深さを見せる大きな流れを作ります。第二エピソードの導入部は速めに入ってターン音型の鎮まりを避ける構成を感じますね。そこから山場は気持ちがこもる様に盛り上げます。後半ターン音型は導入部とは打って変わって緩やかに鎮めて、コーダの浮遊の沈黙へと導きます。
それまでの三楽章とは全く異なる素晴らしさです。


最終楽章一本に的を絞ったマーラー9です。危険な香りは微塵もなく、全体としてマイルドな味付けの三つの楽章。それに対して溢れる情感の最終楽章。あまりの違いですね。

最終楽章を際立たせるためなのか、はたまた最終楽章しか練習時間がなかったのか… 全楽章が揃えば、きっと聴き応えあるマーラー9になったでしょう。



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セナテット(SCENATET)で聴く, イェペ・ユスト・クリステンセン(Jeppe Just Christensen)の『Songs & Movements』:デンマーク前衛実験音楽

音楽家(作曲家)だけでなく、DACAPOレーベルとセナテット共に気になるオール・デンマークの前衛ですね。


Composer
イェペ・ユスト・クリステンセン
(Jeppe Just Christensen, b.1978)
デンマークの現代音楽家でデンマーク王立音楽アカデミーで習い、今は同学院で教鞭をとっていますね。ベント・ソアンセン(Bent Sørensen)に、またドイツでヴォルフガング・リームにも師事しています。特徴的なのは日常の中からツールを楽器として用いる事で、ジャケットにある様なものですね。そしてエレクトロニクスを導入しています。
楽曲は、Recherche, Klangforum Wien、と言った著名な前衛アンサンブルにも採用されていますね。


Album Title | Player
Songs & Movements
SCENATET w/Jeppe Just Instituttet
"recycling, nostalgia, instruments, and toys" がポイントとなる奇妙な?音楽です。具体的には"エッグスライサー、コーヒーグラインダー、おもちゃのピアノ、メロディカ他自家製のおもちゃ楽器"での演奏という事になりますね。(もちろん通常の楽器も入ります)

演奏は注目のデンマーク前衛アンサンブルの"SCENATET"です。以前も紹介済みのセナテットですが、前衛アンサンブルであると同時にインスタレーション・パフォーマーでもある事が素晴らしく、CDだけではその先進性を感じるのが難しいかもしれません。①のみJ.J.クリステンセン自らのパフォーマンス・ユニット"Jeppe Just Instituttet"がパーカッションで入ります。






Three Songs in 9 Movements (2015)
9の楽章を3-3-3にグループ分けして、メロディーとコードを3グループの各楽章で合わせてあるそうです。使われているのは通常の楽器と家で作った楽器?で、子供時代のノスタルジーだそうです。
一つ目の楽章はvoice入りのバロック風の様な流れ、処々で調性は崩れますが。次は奇妙な楽器の織り成すオモチャのサウンド。三つ目の楽章はそのポリフォニー。それがx3のグループ(サイクル)になっています。楽章とサイクルが進むにつれて破滅的な流れが入り込んだり、入り乱れたりします。特に3つ目の楽章の音と前衛性が楽しいですね。
オモチャのサウンドから前衛混沌へのメタモルフォーゼで、最後は回帰かもしれません。


Movin' (2005)
反復中心のノイズ&リズムで、"ギロ"が中心にいますね。音楽というよりも、何かガタガタ・ゴトゴトと音を立てていると言った感じです。まさに前衛です。オマケの様な短い第二楽章もテンポアップするだけで同じですね。本人によると"反復は全く同じ繰り返しで演奏は出来ない"との事で、信念がありそうですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2012年のダルムシュタット夏季現代音楽講習会、Curious Chamber Players
  の演奏です。(SCENATETの方が面白いかな…)


Douglas (2009)
飛行機の中で聴いた奇妙な音を再現しているそうです。楽器はスプリングとパテナイフで作られたハシゴも使われて、犬の吠えるのも真似ているとか…
フリージャズと言えばピッタリの感じです。ライナーノートの"Giant Step"の旋律のモディファイも感じます。ここでも何かを叩く様なオモチャ・パーカッションが印象的ですね。ガタガタ・ボコボコ・ピーィ!!!です。この音を航空機で聞いたとしたら驚きとしか言えませんw



とにかく奇妙な楽器音での構成が顕著で、特殊奏法に対比する様な面白さを感じます。そしてパーカッション、と言うか何かを叩く音、でリズムの色付けですね。

反復とリズムが支配する混沌の世界。そこから①の構成感の強い流れに楽風も変化を見せていて期待値の高いデンマーク前衛実験音楽ですね。



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オルガ・ノイヴィルト(Olga Neuwirth) の「Orchestral Works」は豪華メンバーで楽しめますね

このアルバムのポイントの一つはその魅力的な顔ぶれ、ハーデンベルガー(tp), タメスティ(va), メッツマッハー(cond.), マルッキ(cond.), ハーディング(cond.), ですね。


Composer
オルガ・ノイヴィルト
(Olga Neuwirth, 1968/8/4 - )
今や中堅の安定した女性現代音楽家の一人ですね。オーストリア・グラーツ生まれで若くしてトランペットと作曲を学び、米に渡り作曲理論や映像を習っています。作曲では3人に影響を受けているそうで、A.ヘルツキー、IRCAMでのミュライユ、そして後期のノーノとの出会いでその共産主義的方向性に同調していますね。
楽風はノイズと出し入れの現代音楽ですが、方向性が調性回帰的になって来ています。


Album Title | Player
Orchestral Works
まず三曲の演奏メンバーを紹介しましょう。
 ①:Håkan Hardenberger(tp), Ingo Metzmacher(cond.), Gustav Mahler Jugendorchester
 ②:Antoine Tamestit(va), Susanna Mälkki(cond.), ORF Radio-Symphonieorchester Wien
 ③:Daniel Harding(cond.), Wiener Philharmoniker
人気のソリストと指揮者が並びましたね。曲ごとに異なるのも凄いです。

元はトランペッターのノイヴィルトですから①への思い入れは強そうで、トランペットはマイルス・デイヴィスがお手本だったと語っているのがイイですね。
ライナーノートには各曲楽章の詳細な解説が載っていますが、影響されない様に自分の聴いたインプレにしたいと思います。






...miramondo multiplo..., for trumpet and orchestra (2006)
ハーデンベルガーに献呈された5パートのトランペット協奏曲です。
いきなりのトゥッティ、そしてtpとオケの鳴りの良い協奏になります。多少の調性の薄さはあるのかもしれませんが、機能和声の音楽に聴こえます。各パート、基本的には派手な音を主体としていますね。緩徐のパートII. のtpはマイルスのミュートを感じますね。
明瞭な主題・旋律が存在しない今の時代の新古典主義的音楽ですね。ハーデンベルガーのtpは朗々とした通りの良さを感じます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  コンサートで抜粋ですが、tpはハーデンベルガーです



Remnants of Songs ... An Amphigony, for viola and orchestra (2009)
5パート構成でタメスティのために書かれています。ノイズ系に復帰?!しています。vaのノイズを含めたソロから入り、派手なトゥッティでオケが入って来ます。そこからもタメスティの技巧的な切れ味鋭い弦音がリードしながら、調性感も漂わせる出し入れの強い無調の混沌が心地良いですね。パートIV. の様な強い調性回帰は残念に感じますが、このノイズと出し入れがノイヴィルトですね!! タメスティのvaもキレキレです。


Masaot / Clocks without Hands (2013)
演奏オケのウィーン・フィルに献呈された作品です。スタートはノイズからトゥッティのお約束。タイトルのClocksの時計ノイズを入れてポリフォニー混沌、緊迫感、pとfのコントラストといったノイヴィルトらしい構成を見せてくれます。反復とモードも取り入れて、明確な調性のパートは'引用'と思われます。後半になると処々で調性色が強くなるのはガッカリですが、最近の傾向かもしれませんね。



楽風の変化が21世紀になってノイズ系から①の様な調性軸足の新古典主義的になっています。元々の派手でドン・シャン的な響きは聴きやすくなりますが、スリルは無くなり残念な舵の切り方になってしまいますね。

②③の様に本来?のノイヴィルトらしいパートがある楽曲もあるので、今回はそちらを楽しみましょう。何れにしても商業受け的な調性回帰方向は残念です。



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バーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan)の注目作『La Passione』は、指揮も充実の素晴らしさですね

アルファ ・レーベルはインパクトのある作品を出してくれますが、これはハンニガンのソプラノだけでなく指揮者としての活躍も楽しめるアルバムですね。


Soprano & Conductor
バーバラ・ハンニガン (Barbara Hannigan, 1971/5/8 - )
このblogではご贔屓の現代音楽を得意とするカナダ人女性声楽家で指揮者のハンニガンですが、指揮者として2019-20シーズンよりエーテボリ交響楽団(Gothenburg Symphony Orchestra)の首席客演指揮者を務めていますね。

近々の彼女の予定も興味深く、4月にはデンマークの"レオニー・ソニング音楽賞"を受賞します。この賞はストラヴィンスキーやバーンスタインの他にマイルス・デイヴィスも受賞しているのが良いですね。そして5月27,28日にはミュンヘン・フィルに客演してマーラー交響曲第4番の指揮とソプラノです。これは大注目ですね(前半2曲は本アルバムのノーノとハイドンです!! ハンニガンとアルバムの注目度の高さがわかりますね)


Album Title
ラ・パッショーネ, La Passione
今回のアルバムは受難をテーマとして、ハイドンと現代音楽家(と言っても少々古いですが)二人を並べています。もちろんソプラノと指揮で、演奏は"Crazy Girl Crazy"以来繋がりの強いルートヴィヒ管弦楽団(LUDWIG Orchestra)です。

本作は前作"ウィーン世紀末"でピアノを担当し先月2/14に亡くなったレインベルト・デ・レーウ(Reinbert de Leeuw)に捧げられています。







ルイジ・ノーノ
(Luigi Nono, 1924-1990)
政治色の濃かったノーノの中期作品で、アルジェリアの独立運動家"ジャミラ・ブーパシャ (1938-)"を元にしています。フランス当局からの虐待・拷問を訴えた女性活動家です。

ジャミラ・ブーパシャ Djamila Boupacha (1962)
 約5'のソプラノ独唱曲です。ハンニガンが得意とする現代音楽の声楽で、伸びやかなハイトーンで抑揚が強く表情豊かな表現主義的です。抑圧された陰鬱さよりも、"勇気へのオマージュ"と言ったハンニガンの表現がピッタリですね。



ハイドン
(Franz Joseph Haydn, 1732-1809)
残念ながらこのブログの守備範囲外なので、作曲家と作品に関するコメントはありません。

交響曲 第49番「受難」ヘ短調
I. Adagio - II. Allegro di molto - III. Minuet/Trio
各楽章ごとにインプレは出来ませんが、アゴーギクとディナーミクを同期させる強い揺らぎを感じますね。長い緩徐楽章の I. は特に印象的です。II. でもアレグロらしいテンポに強いディナーミクのコントラストを付けていますね。情感深く まるでロマン派の作品を聴いている様なタクト・演奏で、古典曲が得意でない私も楽しめました。



ジェラール・グリゼー
(Gérard Grisey, 1946-1998)
グリゼーの代表作の一つで、四つの死(天使・文明・声・人類)を世界の文明のTextを元にしていて、死の瞑想になっています。ハンニガンはこの曲を得意としてアンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain)とも共演していますね。

全5パートがノイズで繋がれています。楽曲内容についてはカンブルラン盤でインプレ済みです。

限界を超えるための4つの歌 Quatre chants pour franchir le seuil
I. La mort del'ange - II. La mort de la civilisation - III. La mort de la voix - IV. La mort de l'humanité - Berceuse
[part I] は風の様なノイズから煌めく様な旋律が現れて幽玄な流れを作ると、いきなり緊迫したsopが割り込みます。アサンブルの揺らぎとsopの息がピッタリです。
[part II] では神秘的で緩やかな弦の音色に、緩やかに寄り添うsopの流れ。緩徐楽章の位置付けです。
[part III] はいきなりのオケとsopの叫び。澱んだ流れがアンダンテ風に流れながら、叫びが繰り返されます。
[part IV] は全パート共通のノイズから入りますが、そのまま打楽器の混沌へと雪崩れ込みます。それまでのオケの暗い澱みは緊迫の打音空間へと変化して、管楽器群が割り込んで激しい混沌を作るとsopが乱入 主導権を握ります。sopは狂気を見せてオケを連れ回し、力比べです。見事な聴かせ処を作りましたね。
[part V] は静めて納めます。

微妙に調性感を残した幽玄さと空間音響、ハンニガンはオケを暗く混沌として澱んだ流れを主体に、そこにsopで緊張感を張り渡らせます。自らが歌いアンサンブルをコントロールするメリットが生かされて、そのコントラストと一体感が素晴らしいです。グリゼーの意図よりもsopが表に出ているかもしれませんが。
(ちなみにカンブルラン盤は煌めくオケの流れが主役でsopは抑え目です)



何と言ってもソプラノ・指揮共にグリゼーの曲の素晴らしさですね。この一体感と完成度はハンニガンの表現力・力量を示したと言って良いのではないでしょうか。

ハンニガンの音楽監督的方向性は強い出し入れによる表現主義風ですね。古典のハイドンでも見せた指揮力と、現代音楽表現の才を楽しめるオススメの一枚です。



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今の時代の欧エクスペリメンタリズム音楽『ドナウエッシンゲン音楽祭 Donaueschinger Musiktage 2018』



Album Title
Donaueschinger Musiktage 2018
毎年お馴染みのCDですが、年々その魅力が薄れて来ている感じがしますね。一つには一年遅れでのリリースという事、開催年のステージの一部でさえYouTubeで観られるという事、インスタレーションの場合はステージ映像が必須という事、等々があると思います。

そして今回もCD2枚組でのリリースですね。以前はDVD付きとかCD4枚組とかもう少しNEOSが力を入れた時代もありましたが…
とは言えお約束の欧州前衛実験現代音楽の流れですから、インプレしておきましょう。







CD1
イヴァン・フェデーレ
(Ivan Fedele, b.1953)
イタリアの現代音楽家で、ミラノ音楽院でピアノを習い、サンタ・セシリア・アカデミーでドナトーニに作曲を師事していますね。

Air on Air, for amplified basset horn and orchestra (2018)
I Floating on air… - II Squalls on the water surface... - III Calm... - IV In the eye of the storm... - V The pounding sound of the storm... - VI Crumbled air...
 クラリネットの古楽器バセットホルン(アンプに通しています)の協奏曲です。神経質で繊細な音色、徐々に激しさを増して上昇・下降音階を奏でます。サブタイトル通りの嵐の様相を表現しているのは分かり易いですね。静まって嵐の目に入ります。無調でホモフォニーなアンサンブルなので、あまり尖った曲調ではありません。バセットホルンの技巧的なパートもありますが、反復が強いですね。嵐の荒れたパートなどは即興的なポリフォニーでも良さそうな…いずれにしても、新鮮さは無いかもしれません。



マーリン・ボング
(Malin Bång, b.1974)
ストックホルム在住のスウェーデンの女性現代音楽家ですね。B.ファーニホウ、G.グリゼー、P.マヌリ、と言ったビッグネームにも師事しています。アンサンブルや管弦楽、エレクトロニクス系の楽曲を得意としていますね。ドイツのオケからの委嘱も多い様です。

splinters of ebullient rebellion, for orchestra (2018)
 溢れる特殊奏法のノイズ、そして即興的混沌、所謂(いわゆる)音楽ではありません。"グリグリギギギイィィィ"、でもこれがドナウエッシンゲンでしょう。少しボリュームを上げて、混沌の音の中に自分を置いてみる。そんな楽しみ方がピッタリ来ますね。師である上記三人よりもラッヘンマンの方向性かと。中間部で現れる手回しオルゴールの静的で美しい旋律が色合いを添えています。全体構成も良く楽しめますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2018年のドナウエッシンゲン音楽祭の映像そのものです!!
  数々の特殊奏法を見る事ができます




マルコ・ストロッパ
(Marco Stroppa, b.1959)
イタリアの現代音楽家でイタリアで学んでいますが、米国でも心理学等 多岐のジャンルを学んでいます。ブーレーズの下でIRCAMでも習い、後にラッヘンマンの後任で教鞭にも立っていますね。

Come Play With Me, for solo electronics and orchestra (2016–2018)
1. Come - 2. Play - 3. With Me - 4. RUN - 5. GUN - 6. STRIKE - 7. SCRATCH
 全7パートの構成が込み入っている楽曲ですね。基本は混沌ですが、特殊奏法やノイズではありません。パートによって無調ポリフォニカルに旋律が交錯する流れや、ホモフォニーの様な構成も作られ、中には調性的なパートも存在しています。音響系パートやクラスターもあり、良く練られた楽曲構成で表情豊かではありますが、統一感は低いかもしれません。ラスト一曲だけの方が締まったかも。エレクトロニクスの使われ方がよくわかりませんね。



CD2
アガタ・ズベル
(Agata Zubel, b.1978)
ポーランドの女性現代音楽家で、スタートは声楽家ですね。作曲は調性音楽から始まって、電子音楽を導入する様に至っている様です。ポーランドの現代音楽祭"ワルシャワの秋"での活躍や、"Elettro Voce"という声楽と電子音楽のユニット活動もありますね。

Chamber Piano Concerto, for piano(s) and ensemble (2018)
 点描的で初期セリエルの名残りの様な、ヴェーベルンを今に引きずり出してきた様な、そんな楽風です。でも、反復や調性感, 即興的カオスが入って古さを感じさせないのがポイントでしょう。多様性になるでしょうが、帰ってきたポスト・セリエル?!的で以外に楽しめます。



ミレラ・イヴィチェヴィチ
(Mirela Ivičević, b.1980)
ウィーン在住のクロアチア女性現代音楽家で、ザグレブとウィーンで習い、グラーツではベアト・フラーに師事していますね。現在はパフォーマーでもある前衛アンサンブル"Black Page Orchestra"の創設者の一人として活躍しています。(インスタレーションでしょうねェ)

 ★ちょっと脱線、Black Page OrchestraをYouTubeで観てみる?
   エレナ・リコワ(Elena Rykova)の"101% mind"、ライヴです。面白いです!!


CASE WHITE, for ensemble (2018)
 "速・遅"と"静・クラスター"、そのコントラストを執拗な反復・変奏で彩る流れです。もちろん無調で旋律感は極薄く、類型の危険性も感じますが今の時代の前衛っぽい楽しさがありますね。



フランチェスコ・フィリデイ
(Francesco Filidei, b.1973)
イタリアの現代音楽家でオルガン奏者です。シャリーノやマンゾーニに学び、IRCAMでも習っているそうです。

BALLATA N. 7, for ensemble (2018)
 ppな音構成は微妙な調性感の美しさを持って流れます。背景の低弦音が少しづつ強まると、テンポも緩やかに上がって、パルス的な強音が挟まれます。後半はその対比が強く、そして混沌となって行きます。"静の中に現れる強音"、それはシャリーノですね! 後半にオーディエンスの笑い声が聞こえます。何でしょう?



ヘルマン・マイヤー
(Hermann Meier, 1906–2002)
スイスの現代音楽家で、このアルバムで唯一21世紀に入って亡くなっていますね。年代から行くとメシアンと同じ、シュトックハウゼンらの前衛世代よりも20年ほど年上、ヴェーベルンよりも約20年くらい年下ですね。それでも十二音技法やセリエルに触れて、独特の前衛実験音楽方向の楽風だった様です。

Stück für großes Orchester und Klavier vierhändig, HMV 62 (1965)
 「大規模オーケストラと四手ピアノの為の作品」1965年ですから時代は前衛の隆盛期でしょう。処々で三度・五度の音色や反復が入って多様的ですが、基本はポスト・セリエルの色合いを濃く感じますね。ブラインドで聴いても、目新しさを感じる事は無いと思います。流れに変化はあって、以外に絶賛したりして…w



今回は女性コンポーザー三人が楽しませてくれましたね。とは言え、アルバム全体としては突出したオリジナリティは味わえず、Younes Baba-Aliの"Tic Nerveux"様なCD化の難しい注目作品が漏れるのは残念な事です。

来年あたりはDVDオンリーで出してくれると嬉しいかも。だったら、YouTubeでいい??!! 難しい時代になりましたね。



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『マーラー 交響曲 第9番』 «ネット配信» ダニエレ・ガッティ指揮 / RAI国立交響楽団 2020年1月9日



Conductor | Orchestra
ダニエレ・ガッティ, Daniele Gatti
(Orchestra Sinfonica Nazionale della Rai)
ガッティがRAI国立響を振ったマーラー9ですね。ガッティというと残念な事件を思い出しますが、現在はローマ歌劇場の音楽監督を努めている様ですね。イタリア放送協会RAI傘下RaiPlayからの映像付きのweb配信になります。

➡︎ RaiPlay (配信期間は短いと思われますので、お早めに)





マーラー 交響曲 第9番 «ネット配信»
(Live at Auditorium RAI Arturo Toscanini, 9. Jan. 2020)

20200109DanieleGatti-mahler9.jpg


第一楽章
緩くスローな第一主題、過度の緊迫感を避けた第二主題、tpからの山場を大きく鳴らして第三主題は華やかです。展開部導入部は第一主題のテンポを生かした暗さからJ.シュトラウスの引用で柔らかな光を見せ山場を築き、第二主題の変奏からは混沌を上手く活かしながら緊迫感のある流れを作ります。緩やかなアゴーギクで見晴らしの良い第一楽章です。

第二楽章
主要主題は落ち着いたレントラーで、第一トリオをスケルツォらしく広げ、第二トリオはやや速めに鎮めます。ここでも大きな揺らぎの様なアゴーギクが感じられますね。

第三楽章
主要主題は軽快に切れ味よく、副主題は少しコミカルに、中間部でもあまり大きな変化は付けませんね。山場も緊迫感を避けていて、流れは統一されている感じです。

第四楽章
主要主題は緩やかに大きく包み込む様に奏でます。ここでも大きなアゴーギクを効かせていますね。第一エピソードは主部の流れに乗っていて、第二エピソードは山場を少し速めに緊迫感を高め その後のターン音型との対比を作ります。ポイントとなる上手い構成ですね。そこからコーダへはアゴーギクを使いながら鎮めて行きます。


大きく振られたアゴーギクが心地よいマーラー9です。重心を低く構えて死を捉えるのとは対角の穏やかな見晴らしの良さの好演です。

RAI国立響の各楽器の柔らかく美しい音色もガッティの狙った流れに合っていますね。



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