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エクサン・プロバンス音楽祭2019 クルト・ヴァイルの歌劇「マハゴニー市の興亡」をNHKプレミアムシアターで観る

ドイツの近現代音楽家クルト・ワイル(Kurt Weill 1900-1950)のオペラ「マハゴニー市の興亡」(1930年, Aufstieg und Fall der Stadt Mahagonny)ですね。

台本はベルトルト・ブレヒトになります。ブレヒトとのコンビでは1928年に"マック・ザ・ナイフ"で有名な「三文オペラ」を大ヒットさせていますね。ヴァイルはナチスから逃れるため1935年に米国に移住してからはミュージカル音楽の世界に踏み入れてジャズやポップにも影響を与えている様です。

演出イヴォ・ヴァン・ホーヴェは尖った演出をする印象があるのですが、今回も危なさがあるのかも興味のポイントですね。(2017年のサロメはグロテスクさに腰が引けました)


■ 超あらすじ
  (ゴールドラッシュ時代のアメリカ)

【第一幕】場所の知れない荒野で指名手配犯3人(ベクビク, ファッティ, モーゼ)の車がストップし身動きが取れなくなります。そこで3人は"マハゴニー"という享楽の町を作り一儲け企みます。そのマハゴニーに4人のアラスカの木こり達(ビル, ジム, ジャック, ジョー)が楽しみを求めてやってきます。歓楽の町でジムは失望しながら売春婦ジェニーに出会い、町の規制を破り棄てます。
【第二幕】欲望に浸る中で、ジャックは食べ過ぎで死に、ジョーはボクシングでモーゼに撲殺されてしまいます。
【第三幕】ジムは様々な容疑と無支払で死刑となります。腐敗し火に落ちる町"マハゴニー"にデモが現れ、残ったビルがジムの棺を担いで行進して幕となります。


Festival_D_Aix2019.jpg
(写真はオフィシャルサイトからお借りしました)



演出
舞台上にカメラマンを配置して、その映像を大型モニターに投影すると言う設定ですね。インスタレーション系に踏み込んでいる感じです。ただ処々で背景に映像を入れる事自体はデフォルトで設定されている様です。
ただ流れ的にはやや寂しく、過食死やボクシング僕殺などはもっと派手なシーンを作っても良かった気がしました。ジェニーとジムの関係もはっきりしませんでしたね。

舞台・衣装
暗くてシンプルな舞台は今風で、上記の大型モニターが置かれます。そこにリアルタイムの映像が映されるのは斬新で、臨場感が上がりますね。衣装は当時の労働者風です。

配役
まず男性陣ですが、モーゼ(ウィラード・ホワイト)、ファッティ(アラン・オーク)は声・演技ともに地味ですね。期待したジム(ニコライ・シュコフ)も声は良いのですが人物設定が不明瞭で男性陣は今ひとつの感じでした。

一方の女性陣、悪役側ベクビクのカリタ・マッティラは、ラトルの"グレの歌"で素晴らしいトーヴェの記憶があります。今回の演技の内容と表情は全く別人ですねw 役作りはピッタリでしたが、sopはトーヴェで聴かせた優しさが感じられてしまいました。
ジェニー役のアンネッテ・ダッシュは、何と言っても2011バイロイトの"ネズミのローエングリン"でエルザ役の印象が残りますね。マッティラと同じく演技と容姿は役に合わせていて、ここでは売春婦的です。声にも伸びと尖ったsopが感じられましたね。

音楽
先ずは語りパートが多い事に気がつきますね。近現代音楽としては旋律感もあって、声楽パートも特異性はないので安心して楽しめます。その分中途半端感と背反ですが。なんとなくガーシュインやバーンスタインの様な音も感じる処もあります。
演奏はサロネン/フィルハーモニア管らしい落ち着いたコントロールとメリハリの管楽器を感じましたね。


原作のキャラクターと人間関係の不明瞭さが一番だと思いますが、イヴォ・ヴァン・ホーヴェの演出の切れ味も弱く、まとまりと山場に欠ける感じでした。

近現代の音楽と享楽のストーリー設定ですから、もっと出し入れの強いアヴァンギャルドな流れを作ってくれたら少しは楽しめた様な…
(現代音楽と前衛演出好きですが、今回は残念でした)


<出 演>
 ・レオカディア・ベクビク:カリタ・マッティラ [Karita Mattila]
 ・支配人ファッティ:アラン・オーク [Alan Oke]
 ・三位一体のモーゼ:ウィラード・ホワイト [Sir Willard White]
 ・ジェニー:アンネッテ・ダッシュ [Annette Dasch]
 ・ジム:ニコライ・シュコフ [Nikolai Schukoff]
 ・ジャック:シーン・パニッカー [Sean Panikkar]
 ・ジョー:ペイジン・チェン [Peixin Chen]
 ・ビル:トーマス・オリーマンズ [Thomas Oliemans]

<合唱指揮> リチャード・ウィルバーフォース
<合 唱> アンサンブル・ピグマリオン
<管弦楽> フィルハーモニア管弦楽団 [Philharmonia Orchestra]
<指 揮> エサ・ペッカ・サロネン [Esa-Pekka Salonen]
<美術・照明> ヤン・ヴァースウェイヴェルド [Jan Versweyveld]
<衣 装> アン・デュハウス [An d’Huys]
<映 像> タル・ヤーデン [Tal Yarden]
<演 出> イヴォ・ヴァン・ホーヴェ [Ivo van Hove]


収録:2019年7月4・11日 プロバンス大劇場(フランス)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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