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ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze) のコントラバス作品集『Works for Double Bass』: ダニエレ・ロッカート


Composer
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ
(Hans Werner Henze, 1926-2012)
ヘンツェが亡くなって8年になるんですね。現代音楽黎明期から全盛期、そして停滞期とその前衛時代を生きたドイツの現代音楽家ですね。

その時代を生きたので十二音技法等を足掛かりにはして無調にはなりますが、実験的前衛ではありません。調性感のある旋律や多様性は今となると時代の流れに合っていたと言う事になるのかもしれません。


Album Title | Player
Works for Double Bass
ダニエレ・ロッカート (Daniele Roccato, b.1969)
ローマを拠点に活躍するコントラバス奏者ダニエレ・ロッカートをフィーチャーしたヘンツェのコントラバス作品集です。ロッカートは現代音楽のコントラバス曲を得意としていて、現代音楽家でコントラバス奏者ステファノ・スコダニッピオ(Stefano Scodanibbio, 1956-2012)の作品集「Alisei」もリリースしています。(インプレしています)
そのスコダニッピオと創設したコントラバス・アンサンブル"Ludus Gravis ensemble"が、今回も「Trauer-Ode」で登場しますね。






San Biagio 9 Agosto ore 12.07 for solo double bass (1977年)
ヘンツェらしい浮遊感の無調旋律のコントラバス・ソロ曲です。反復とその変奏も感じますね。ハーモニクスも使いながらロッカートは陰影付けを強く響かせます。


Concerto per contrabbasso ed orchestra (1966年)
三楽章のコントラバス協奏曲です。幽玄なcbとオケは無調旋律のポリフォニー構成になっていますね。オケの各楽器間もポリフォニーで、山場になるとある程度のホモフォニーの関係を構築しています。各楽章でその比率が異なりますが、その辺を味わうとヘンツェらしい楽曲が楽しめそうですね。一部パートでは新古典主義的な様相も見せます。
コントラバスの超絶技巧性も味わえ、音も良く鳴っていて可能性を感じさせてくれています。古い作品ですが、今の時代に合っているのではないでしょうか。


Serenade version for solo double bass (1949年)
7パートのソロ曲です。陰影の強い暗い無調旋律が基本となっています。ここでもハーモニクスとピチカートが特徴的に使われています。cbが色々な表情を見せてくれますね。


Trauer-Ode version for six double basses (1977, rev. 2010年)
ヘンツェのチェロ曲をロッカートが6人のコントラバス用に編曲したヴァージョンで、Ludus Gravis ensemble(コントラバス・アンサンブル)の出番です。
ポリフォニーとホモフォニーを彷徨う様な微妙な無調の旋律構成です。それがヘンツェですね。そこにソロパートがカデンツァの如く現れて入れ替わって行きます。やや混沌さを見せながらの変化の面白さがあります。同じcbなのですが、高音と低音での落差も印象的ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



ソロも良いのですが、コンチェルトや多編成の曲の方が味わい深くなっていますね。6cbの"Trauer-Ode"の混沌の面白さはロッカートの編曲も一役買っているでしょう。ロッカートのcbも表情があり鳴りの良さを感じます。

同じコントラバス作品集でも、前回インプレした古典-ロマン派のボッテジーニとは一味違います。cb現代音楽の楽しさがありますね。



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ジョヴァンニ・ボッテジーニ(Giovanni Bottesini) のコントラバス曲集『Via Bottesini Concerti E Pezze Concertanti』: ウィース・ド・ブフ


ジョヴァンニ・ボッテジーニ
(Giovanni Bottesini, 1821/12/22 - 1889/7/7)
ロマン派時代のイタリア人の指揮者・コントラバス奏者・作曲家ですね。元はヴァイオリン奏者でしたが、ミラノ音楽院入学時にコントラバスを選択しています。コントラバス奏者として活躍し、イタリアでは"Il Paganini del contrabbasso" (コントラバスのパガニーニ)と言われている様です。

その後作曲家としてオペラも書いていますが、主としてコントラバス曲で知られていますね。この時代らしくベッリーニのトランスクリプションでコントラバス幻想曲も多く残しています。指揮者としてはヴェルディからの要請で「アイーダ」の初演を指揮しいるそうです。


Via Bottesini Concerti E Pezze Concertanti
ウィース・ド・ブフ (Wies de Boevé, b.1987)
現バイエルン放送響首席コントラバス奏者のブフがボッテジーニのコントラバス協奏曲を四曲選んだアルバムです。ボッテジーニに倣って3弦のコントラバスを使用しているとの事ですね。(ジャケット写真を見てもその様です)

コントラバス曲となるとついつい聴きたくなってしまいます。ヴァイオリンはヨシフ・イヴァノフ(Yossif Ivanov)、ワイラースタイン指揮、ブリュッセルフィルの演奏です。






Double Bass Concerto in B Minor
「コントラバス協奏曲 第2番」ですね。 ロマン派時代ですが、古典や宮廷音楽的な印象も受けます。コントラバスのチェロ的な鳴りと旋律感が強いですね。全体的に柔らかい印象で、技巧が全面に出てくるわけではありません。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Bottesini Competition 2017 で優勝したときのステージです!



Grande allegro di concerto (alla Mendelssohn)
この曲の方がロマン派の流れが明確ですね。"メンデルスゾーン風に"とありますが、メンデルスゾーンに詳しくないのでわかりません。多分に情感の強いオケとコントラバスの協奏構成にはなっていますね。その意味では個人的にはより聴き易さを感じます。カデンツァもエモーショナルです。


Gran Concerto for Double Bass in F-Sharp Minor
「コントラバス協奏曲 第1番」です。やはり古典的な流れを感じますね。出し入れが強く、第2番よりもオケのパートが多く取られています。三曲続けて聴いてくると残念ながら少々退屈に感じてしまい、コントラバスならではの何かが欲しい気がしてしまいます。


Gran Duo Concertante for Violin and Double Bass
以前エーデン・ラーツのコントラバスでインプレしています。その時も書きましたが、R.シュトラウスの「ドンキホーテ」の様なvnとcbの掛け合いが楽しめます。(もちろんドンキホーテはvaとvcですが)
ここではイヴァノフのvnが切れ味良く、冴えて楽しませてくれます。楽曲的にも演奏的にもこのアルバム一番ですね。



コントラバスの奏でる古典風な優雅な楽曲を楽しむアルバムですね。グリグリのcb超絶技巧を味わう作品ではありません。もちろん技巧性の高いパートも存在して楽しめます。

長い夜にウイスキーのお供で楽しむ…そんな一枚です。

次はH.W.ヘンツェの現代音楽コントラバスのアルバムをインプレ予定です。




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エヴァン・ジポリン(Evan Ziporyn) のソロ・クラリネット『this is not a clarinet』


this is not a clarinet
ジポリンと言えば"Bang On a Can"(以下BOAC)であり、そのマラソン#1から始まりBang On a Can All Starsの創設者(1992年)の一人ですね。残念ながら2012年で退団しています。

そのジポリンがBOAC All Stars時代、同年代の音楽家の曲も含めてソロ・クラリネット曲を並べたアルバムです。もちろんBOACのレーベル"Canteloupe"からのリリースです。







エヴァン・ジポリン
(Evan Ziporyn, b.1959)
シカゴ生まれでマサチューセッツ在住の米現代音楽家、このブログご贔屓の音楽家の一人です。ポストミニマルですが、バリのガムランへの傾倒が印象的です。

Partial Truths
 ジポリン得意のバスクラリネットの楽曲です。フラッタータンギングや重音、オクターブを使ったりvoiceを絡めたりと、バスクラの音色だけでなくテクを使っています。でも根底に流れるのはトリル・トレモロを使った美しい旋律ですね。もちろんクラリネット技巧曲でもあります。

4 Impersonations
 4パートの民族音楽和声の楽曲集です。#1"Honshirabe"はタイトル通り尺八音楽風の和声で、音色はclそのものなので不思議な印象です。#2"Pengrangrang Gede"も同様に何らかの民族音楽和声になりますね。ハイチでしょうか、少しエコーがかかっていますね。#3"Thum Nyatiti"はニャティティとあるのでケニアの民族音楽がベースでしょう。ハイテンポのミニマルになっていますね。#4"Bindu Semara"はバリの民族音楽ベースですね。穏やかな流れが印象的です。



マイケル・テンツァー
(Michael Tenzer, b.1957)
N.Y.生まれの現代音楽家で民族音楽の造詣が深いですね。特にバリのガムランに関しては第一人者の一人と言われています。その関係でジポリンやBOAC、そしてCanteloupeとの関係が出来上がっているのでしょうね。

3 Island Duets
 3パート楽曲で2本のclの曲です。2本のclの同拍異音の#1、ハイテンポでホモフォニーの#2、単純反復と反復旋律の対比の#3、という構成です。
いずれもバリ民族音楽和声が下敷きになっている感じですね。基本的にはポスト・ミニマルだと思いますが、さほどの目新しさはありません。



デイヴィッド・ラング
(David Lang, b.1957)
米現代音楽家でBOACの創設者ですね。既に何回も紹介していますので割愛ですw

Press Release
 バスクラ曲です。一本のclで二つの音を出す技巧曲ですね。奏法的には分かりませんが、破裂音的な音との対比がとても面白いですね。下記映像を見るととても興味深いです。もちろんミニマルです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Ashley Smithのバスクラです。映像があると少しわかり易いですね。
  一度観る価値ありの、オススメです




クラリネットの楽しさを味わえる一枚になっていますね。無調混沌の現代音楽ではないので、純粋に楽しめそうです。逆を言えば、少し物足りないと感じてしまうのも仕方ないかもしれませんね。

残念ですがMichael Tenzerの曲が足を引っ張っているでしょうか。その代わりにDavid Langをもう一曲入れたら面白かった気がします。



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ベンジャミン・ブリテンの『春の交響曲』5CD聴き比べ:ブリテン, ガーディナー, ヒコックス, ラトル, プレヴィン


ベンジャミン・ブリテン
(Benjamin Britten, 1913/11/22 - 1976/12/4)
今更のブリテンで、いつも書く事ですが前衛全盛期に生きていますがそこに踏み入れる事はありませんでした。でも調性の微妙さは聴いてわかりますね。前衛と新古典主義の時代ですが、どちらでもない英国音楽で、このブログでも現代音楽家のCDリストには入れていません。



春の交響曲
Spring Symphony, Op. 44 (1949年)
メリハリのあるブリテンらしい曲ですよね。12曲全歌曲で、元はラテン語で書こうとしたらしいので俗語オラトリオ(orカンタータ?)的な四部構成で、4楽章の交響曲になっています。個人的な楽しみ方は次の通りですね。

【第一部】
一番長い"序奏"と続くキャラクター色の濃い3'以下の四つのパートのコントラストですね。聖歌的で後半強い流れの序奏 "1.Shine out" を幽玄さと切れ味で、続く短いパートでは "4.The Driving Boy" の少年少女合唱団の明るさに期待しますね。
【第二部】
緩徐楽章に当たる三曲です。序奏と似た構成の三曲目 "8.Out on the Lawn I lie in Bed" の澄んだ流れがメインですが、その前の二曲を上手く繋げて欲しいです。
【第三部】
スケルツォに当たる楽章になる三曲でしょうか。テンポの良さがあると良いですね。アタッカで繋がる "9.When will my May come" と"10.Fair and Fair" のテノールとソプラノのコントラストが聴き処です。
【第四部】
"12.Finale"の一曲構成です。やっぱり派手に切れ味よくブリテンらしく、ですね。特に後半の"Sumer is icumen in"は明るく。








5CDの全体インプレです

 ① ブリテン本人 :押し出しの強さで、ブリテンらしい?!
 ② ガーディナー:バランスとクールさで、完成度を感じます
 ③ ヒコックス :朗々たる鳴りの良さがあります
 ④ ラトル   :意外にも落ち着いた聴き易さです
 ⑤ プレヴィン :表情ある楽しさはプレヴィンならでは

個人的オススメは最後に。





個別インプレです


①ベンジャミン・ブリテン
 (コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団)



【第一部】序奏は幽玄で濃厚、主張の強さを感じます。続く小曲は明るさの中に陰影付けがあります。"3.Spring…"の鳥の鳴き交わしは、重厚な背景音がすごいですね。
【第二部】少し暖かみを感じる春の足音の様な流れから、"8.Out on…" は広がりを感じる伸びやかさがあります。緩やかな明るさの緩徐楽章ですね。
【第三部】9.10.のテノールとソプラノは演奏共にシャキッとした流れです。"11.Sound…"は弾む様なスケルツォになっています。
【第四部】終始炸裂的な音を使った歯切れの良さが際立ちます。起立整列してビシッとした印象です。"Sumer…"では花咲き乱れる派手な様相からフィニッシュです。

折り目正しい表情で、強音側のディナーミクが印象的です。




②エリオット・ガーディナー (フィルハーモニア管弦楽団)



【第一部】序奏は抑えた透明感のある幽玄さから、後半激しさを盛り上げます。続く小曲は明るさを前面にして、"4.The Driving Boy"は子供達の歌声に心地よさが良いですね。
【第二部】幽玄さと暖かみのバランス良い流れから、"8.Out on…" は静かで明るい日差しの森の中を歩く様に進みます。透明感を感じる緩徐楽章になっています。
【第三部】9.10.のテノールとソプラノは抑えながらもアゴーギクの良さを感じてシャープです。"11.Sound…"の合唱団も素晴らしいですね。
【第四部】ここでもディナーミクで透明感ある入りから、アゴーギクを利かせて切れ味の強い流れです。力技よりも切れ味ですね。後半"Sumer…"は揺さぶりを効かせて明るさを作っています。
全体、オケと合唱団のバランスも優れますね。

アゴーギク/ディナーミクを効かせながらもクールです。




③リチャード・ヒコックス (ロンドン交響楽団)



【第一部】序奏は冷静で落ち着いた流れを作り、後半山場も迫力を付けますが客観的に感じますね。続く小曲は春の訪れを感じる様に、"3.Spring…"は歌唱も鳥の鳴き交わしも色濃く、"4.The Driving Boy"は子供達が元気です。
【第二部】明るさ主体の明瞭さの流れから、"8.Out on…" は聖歌的な印象が強く落ち着かせる様な緩徐を感じますね。
【第三部】9.10.のテノールとソプラノはメリハリが強い演奏と相まって朗々としています。"11.Sound…"は派手さとリズミカルなスケルツォです。
【第四部】落ち着いた入りから晴朗なハリのある歌唱が広がります。後半"Sumer…"は少しスローに狂乱風に鳴らします。

明瞭で朗々とした流れが特徴的ですね。




④サイモン・ラトル (バーミンガム市交響楽団)



【第一部】序奏の入りからアゴーギク/ディナーミクの振りを感じますね。鬱な気配から表情豊かな流れの緊張感、後半山場は意外に冷静です。続く小曲群はバランスの良さを感じますね。"4.The Driving Boy"は思いの外落ち着いた流れです。
【第二部】冷静な表現から、"8.Out on…" は静でスローを基本に緊迫感の流れです。やや暗めの緩徐楽章になっています。
【第三部】9.10.のテノールとソプラノはクールに落ち着いた流れに乗って、"11.Sound…"も興奮を排除して、落ち着いたスケルツォ楽章ですね。
【第四部】基本は冷静さかと思いきや、強音パートでは荒さを上手く見せます。出し入れのバランスが良く、それまでの楽章と一味違いますね。後半"Sumer…"もドンシャン的です。

抑え気味のコントラスト付けで聴き易い表現です。




⑤アンドレ・プレヴィン (ロンドン交響楽団)



【第一部】序奏は静的な深淵さで沈んだ流れから中盤で切れ味を見せて、山場もシャープです。続く小曲では表現力ある歌唱と演奏のバランスが良く、"3.Spring…"は演奏も歌唱も鳥の鳴き交わしも華麗、"4.The Driving Boy"は子供達が楽しげです。
【第二部】優しさを感じるプレヴィンらしい流れからの "8.Out on…" は、祈りを感じる様な神聖ささえ感じます。山場は抑え目にしてクールな緩徐楽章です。
【第三部】9.10.のテノールとソプラノはメリハリが付いてオケとのバランスが良く、"11.Sound…"も心地良いリズム感でまさにスケルツォですね。
【第四部】落ち着きから強音へ、小刻みからパワーへと、流れに表情が豊かです。"Sumer…"は締めくくりに相応わしい華々しさです。

表情豊かな歌唱とオケが心地良いです。





オススメCD
⑤プレヴィン:心地よい流れを楽しめますね
 (ブリテンの曲らしい音の張りが欲しいなら①ブリテン本人ですw)



 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  バーンスタインとニューヨークフィル、1963年5月3日のライヴ音源です。



■来月4日都響#897のコンサートを前に予習を兼ねて聴いて見ました。大野和士さんが得意としそうなメリハリがあるので期待できそうですね。
【2020年2月27日 記】新型コロナウィルスの影響で中止となりました。

■来月28日のNHKプレミアムシアターでは、ラトル/ロンドン交響楽団の2018年のライヴ映像が楽しめます。

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2019-20アン・デア・ウィーン劇場公演 モニューシコ 歌劇「ハルカ」をNHKプレミアムシアターで観る

19世紀のポーランドの音楽家 スタニスワフ・モニューシュコ(Stanisław Moniuszko, 1819-1872)のオペラ「ハルカ, Halka」です。男性主役、演出、指揮者、含めてポーランド布陣による公演ですね。演出のM.トレリンスキに知見がありませんので、どの様な舞台になるか楽しみです。


■ 超あらすじ
【第一幕】領主ヤヌシュと名門令嬢ゾフィアの婚礼の会場。そこにヤヌシュに弄ばれた村娘ハルカが現れますが、ヤヌシュに言いくるめられてしまいます。
【第二幕】村の青年ヨンテックがハルカに騙されている事を伝えると、たまらず婚礼会場に向かいます。領主であるヤヌシュはヨンテックにハルカを何とかする様に言います。
【第三幕】正気を失って行くハルカ、ヨンテックはハルカがヤヌシュに遊ばれた事を村人に伝えます。
【第四幕】教会に向かうヤヌシュとゾフィア、それを祝う村人たち。ハルカは火を放とうとしますが止まり、川に身を投げます。教会から出てきた人々は、その事実を知りますが領主の婚礼の祝いはそのまま過ぎていきます。



Halka2019NPC.jpg
(オフィシャルサイトより)



1. 演出
設定を現代のホテルにして、裕福な婚礼客(領主の結婚)と従業員(村人)という構図になっていますね。そして舞台上にはプロジェクションマッピングと、今の時代らしい設定です。ハルカの赤ちゃんのシーンで一瞬グロテスクさが出るかと思いましたが、大丈夫でした。今の時代の演出はその手の危険性が高いですからねw と言う訳でアヴァンギャルドではありません。
前奏曲の際に舞台では事件の検視の様なシーンを持ってきているのはヤヌシュが引きずる背景設定の様ですね。

2. 舞台・衣装
回り舞台に階層の構造物とお金をかけていますね。衣装は現代風(ミニスカートとベルボトムは1970年代風?)です。全体的にモノトーンで合わせてありクールな感じでした。回り舞台は多用されて効果的に見えましたね。

3. 配役
男性陣では、ヨンテックのベチャワは太りましたねぇ。でも流石のテノールを聴かせてくれました。もちろん演技もビシッと決まっていました。
ヤヌシュ役のコニェチュニも良かったですね。バス・バリトンもさる事ながら、演技も好感が持てました。悪いヤツに見えないのが弱点といえばそうだったかもしれませんね。そう言えば2018バイロイトのローエングリンでもベチャワと一緒でしたね。その時のテルラムントでも悪さが足りない気がしたのを思い出しましたw

女性陣、タイトルロールのコリーン・ウィンターズはspoは朗々として、態度も堂々、本来のストーリー上のイメージとは少々印象が違いました。
ゾフィアは、シックな上流階級のお嬢様というよりも活発元気な女性の設定です。カヴァウェクは見た目も含めてピッタリでしたね。

4. 音楽
演奏は控えめに感じました。録音の問題もあるかもしれませんが、もう少し前に出てきても良かった気がしました。いかがでしょう。


女性陣二人の設定がイメージと違ったのは、現代の設定にした演出なのでしょう。男性陣は楽しませてくれましたね。

全体的に演出の上手さを感じました。意外ですが舞台と衣装の統一感も印象的で、クールに引き立てていましたね。



<出 演>
 ・ハルカ:コリーン・ウィンターズ [Corinne Winters]
 ・ヨンテック:ピョートル・ベチャワ [Piotr Beczała]
 ・ヤヌシュ:トマシュ・コニェチュニ [Tomasz Konieczny]
 ・ゾフィア:ナタリア・カヴァウェク [Natalia Kawałek]

<合唱指揮> エルヴィン・オルトナー
<合 唱> アルノルト・シェーンベルク合唱団
<管弦楽> ウィーン放送交響楽団
<指 揮> ウカシュ・ボロヴィチ [Łukasz Borowicz]
<美 術> ボリス・クドリチカ [Boris Kudlička]
<衣 装> ドロタ・ロケプロ [Dorothée Roqueplo]
<照 明> マルク・ハインツ [Marc Heinz]
<映 像> バルテク・マシアス [Bartek Macias]
<演 出> マリウシュ・トレリンスキ [Mariusz Treliński]


収録:2019年12月15・17日 アン・デア・ウィーン劇場(オーストリア)

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ルーラ・ロメロ(Lula Romero) の繰り出すライヴエレクトロニクス「Ins Offene / Die Wanderung / Entmündigung」


ルーラ・ロメロ
(Lula Romero, 1976 - )
スペイン(マヨルカ島)生まれの女性現代音楽家です。セビリア、ハーグ、グラーツで学び、現在はベルリンを拠点に活躍中です。楽風は電子音楽、特にライヴエレクトロニクスで知られていますね。

以前は"テープ"と表現されていましたが現在はもちろんソフトによるプログラム構成です。プログラムと言っても直接言語を構築する訳ではなくモジュールの操作になりますね。今の時代で言う"プログラム"です。彼女はサンプリングデータのミリ秒単位での細分化等も導入して先端のエレクトロニクスを楽しめます。


Deutscher Musikrat "ZeitgenössischeMusik"
Wergoレーベルのシリーズ「ドイツ音楽評議会 "現代音楽"」がキュレーターとなった作曲家紹介での一枚です。

ロメロが得意とするエレクトロニクスが全面に扱われていますね。プレイヤーによる電子音処理選択や様々な音がエフェクト処理されているそうです。元の音源がなんであるかが不明になる音響処理ですね。その一部の音はフィールド的で、ミュージックコンクレートにもなっていそうです。






Ins Offene, for 10 instruments and live electronics (2012/13)
アンサンブルとライヴエレクトロニクスです。細かい旋律とグリッサンドのポリフォニー・ポリリズムで打楽器のインパクトが大きいです。反復も強調されている感じで、数分すると流れに統一性があるのがわかります。その流れは変化して、主題の様に楽曲を構成している様ですね。それがノイズ系になったりもします。そこでは明らかにエレクトロニクスとわかるパートがありますね。
調性感の強い流れから入り、無調混沌、ノイズと表情変化も大きく、最後は調性感が回帰します。いかにも前衛的な感じです。


Die Wanderung, for solo instruments and live electronics (2016/17)
6パートの楽曲で、ソロはfl, sax, accordion, hp, vcですね。緊張感のある空間にソロ楽器と明らかな電子音が混じっているのがわかります。それ以上の電子処理はCDで聴き分けるのは難しそうですね。楽曲としてはポリフォニカルな混沌になりますね。クラッタリングの様な特殊奏法も入っている様です。静的流れのパートが多いですが、今の時代の欧エクスペリメンタリズムの印象ですね。#2パートのsaxなどは前衛Jazzの色合いも感じます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  "Die Wanderung II" ですね



Entmündigung, for two sopranos, alto and live electronics (2015/16)
2人のsop, 1人のaltoとライブエレクトロニクスです。Textはなくヴォーカリーズですね。肉声が強張れば電子音も強張り、肉声が叫べば電子音もそうなります。肉声に触発される電子雲の中に居る様な空間になります。上記2楽曲とはまた異なり面白いです。



基本的流れは刺激と緊張の無調混沌空間です。ステージでないとエレクトロニクスがどの程度使われているのかは微妙ですが、楽曲の中に消化されている感じですね。

強弱や調性に近い流れもあって、今の多様性欧州エクスペリメンタリズム現代音楽を楽しめる一枚でしょう。



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デンマーク前衛実験現代音楽 シモン・クリステンセン(Simon Christensen) の「マニュフェスト, Manifest 」


シモン・クリステンセン
(Simon Christensen, 1971 - )
デンマークの現代音楽家で、デンマーク王立音楽アカデミーで習った後、仏に渡りパリ音楽院で学んでいますね。楽曲の流れ以上にスコアは複雑との話もあって、そういう意味では"新しい複雑性"の範疇になるかもしれません。また、以前インプレでも感じましたがポリフォニー (基本音階も変化させている様です) の傾向が強いですね。ポリリズムでもあるという記事もありました。今回は違いますが…

ミュージシャンとしてはロックバンドNew Paragraphsのドラマーでもあり、その他Duo活動もある様です。でも楽風にはその傾向は感じられませんね。そう言った経歴も含めて今の時代の多様性の現代音楽家という事になるでしょうか。


Manifest (But There's No Need to Shout)
1曲1楽章構成(約72分)の弦楽四重奏曲です。以前紹介した"Towards Nothingness"も弦楽四重奏曲でしたね。
その印象ではポリフォニー, ポスト・ミニマル, ノイズ, と言った方向性でしたが、今回は "音楽の中でかつてないほど美しい曲" だそうです… 普通の"音楽"じゃありませんが

演奏は、Birgitte Baerentzen Pihl (vn), Signe Madsen (vn), Mina Fred (va), Sofia Olsson (vc), です。






Music for string quartet (2013年)
ただの弦楽器の単音のボウイングの音色です。全休符が入って区切りを付けながら、多少の色合いを変化させ延々と続きます。特殊奏法などもなく、四つの弦楽器は基本は調性の和音となっていますね。それだけです。異常性や突出した物は何もありません、それ自体が異常なだけです。似てはいませんが、なんとなく読経を思い浮かべてしまいました。

途中で何か仕込まれていないか気になって最後まで聴いてしまいました。そんな感じです。2008年の"Towards Nothingness"よりも症状は確実に悪化していますねw

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  デンマーク前衛実験音楽の一端を味わってみますか




延々と単純な72'で、類型がありそうな実験音楽ですね。72'というのはCD化前提の様な気もします。スコアがないので反復パートがあるのかよく分かりませんが、どうせなら徹底的に720'で全休符120'があってとかの方が面白い気がしますね。

作り出される和音が機能和声というのも今ひとつ感です。倍音の様なうねりとか、突飛な音とか一捻り何か尖ったものが欲しい気がします。でも、それだと当たり前の現代音楽という事で排除しているのでしょうね、きっと。



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