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現代音楽の古典, ジャン・バラケ(Jean Barraqué) の作品全集「Œuvres complètes」と言うセリエルの形


ジャン・バラケ
(Jean Barraqué, 1928/1/17 - 1973/8/17)
今更のバラケですが、フランスの現代音楽家で前衛の全盛期から停滞期に活動時期があリましたね。ブーレーズ、ノーノ、シュトックハウゼンと言った前衛三羽烏の時代でもあったわけです。ちなみに同じくメシアンに師事した仏現代音楽家ブーレーズの3つ後輩になります。またドビュッシー研究ではフランス国立科学研究センター在籍時に論文も発表しています。

ライナーノートによれば、1948年, 20歳の時に音楽院でメシアンのクラスに入ったのが始まりで、そこでヴェーベルンから始まるセリエルを受講していますね。また「偶然の彼方に(...au delà du hasard)」の初演はブーレーズが指揮をしています。(薬物やSM行為と言った事もあった様ですが…)

当然ながらセリエルの洗礼を受けている訳で、1950年代前半の作品はトータル・セリエルの方向性があると言われていますが、独自の "Proliferating Series"(一つの音列を徐々に変化させる"増殖セリエル" ) への転換を図っているそうです。45歳で逝去するまで残された全作品数は7つでしかありません。(他スコアの存在はある様です。"Symphony in C sharp minor"など聴いてみたいですね)


Complete Works
CD3枚セット「全作品」になります。という訳で、古いCDですがインプレはこのアルバムしかありませんね。(同じく1990年代ECM盤のピアノソナタも持っていますが…)

CDでは3枚に収める為に年代はバラバラですが、インプレは年代順にしています。演奏はクラングフォルム・ウィーン(Klangforum Wien)、指揮はカンブルラン他、ピアノはシュテファン・リトウィン、その他になります。






Piano Sonata (1952年)
ベートーヴェンのソナタにインスパイアされ、セリエルで書かれているそうです。
 聴いた瞬間から'いかにも'的な点描で音の跳躍が大きい無調ですから、十二音技法やセリエルである事はわかりますね。当時の欧エクスペリメンタリズム保守本流でしょう。残念ながら退屈で古さだけが印象に残る代表ですね。(もちろん聴いただけで十二音技法かただの点描無調か、ましてやセリエルかはわかりませんけど)


Etude (1952-53年)
  for three-track tape
所謂(いわゆる)テープ楽曲で、サンプリングの電子音楽です。そのミュジーク・コンクレート(musique concrète)の創始者シェフェールの元で作られた作品です。今ならサンプリングからソフトでの構成となるでしょうね。
 元の音は打楽器系とかpfの特殊奏法でしょうか。旋律的な存在は無く、"音"とノイズです。こちらの方が今の時代にも反映されていそうな前衛性が感じられますね。クセナキスなどにも通じるモノがあります、唯一の異色作品です。


Séquence (1950-55年)
  for voice, percussion and chamber ensemble
Textはニーチェからです。ピアノ・ソナタから3年、単純な音列配置から明らかに変化がありますね。その煌びやかな音色や打楽器使いはブーレーズに良く似ています。そこにシュプレッヒゲザングの様なsopが絡んでいますね。この時代のセリエルに深入りしている事を強く感じますね。相変わらず音の跳躍は大きいです。


...au delà du hasard (1958-59年)
  for four instrumental groups and one vocal group
1960年1月26日の初演ではブーレーズが指揮をしていますね。声楽と4群室内楽で13パート、Textは作家ヘルマン・ブロッホからです。
 前曲'Séquence'の延長線上に感じますね。強弱のコントラスト付けがより強くなり、点描的なpfのテンポ変化も大きいです。スコア上での変化はわかりませんが、どう聴いてもセリエルの本流的な感じですね。4群の室内楽配置は不明で、実際の聞こえ方はわかりません。残念ですが強烈な退屈感です。


Chant après chant (1966年)
  for six percussionists, voice and piano
6人のパーカッションとピアノで、声楽Textはブロッホとバラケ本人です。
 前曲から7年後で、楽器編成を整理してシャープにした感じでしょう。基本は大きく変わっているとは思えません。出し入れの強さがパーカッション編成で強調されている様です。ただ基本の流れが統一されてきて、バラケの言う"Proliferating Series"の方向性が出てきているかも知れませんね。古いセリエル的流れである事に変わりはありませんが、少し面い方向になりますね。


Le Temps restitué (1957-68年)
  for soprano, chorus and orchestra
「復元された時間」声楽と管弦楽で、Textはブロッホの"ウェルギリウスの死"からです。
 'Chant après chant'にある出し入れの強さが、ここでも感じられますね。年代的には完成が遅かっただけで、50年代から手を付けている訳ですから。


Concerto (1962-68年)
  for clarinet, vibraphone and 6 groups of 3 instruments
コンパクトですが6群の楽器編成を組むなど、シュトックハウゼンでも見られたこの当時の流れを感じますね。
 ただ楽風は変わり、Textの呪縛からも逃れています。強弱出し入れは減り旋律感が出てきて反復風 "Proliferating Series" の作品となっていますね。その反復の中から徐々に変化を見せながら進むのは今でもありそうな流れでしょう。各楽器の音の作りも今の時代にも通用しそうな感じです。でも当時は前衛の停滞期そのものですから、この多様性は受入られなかった気がします。圧倒的に興味深い作品ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Ensemble Contrechamps他の演奏になります。




十二音技法から続く点描セリエル、そして出し入れの強い表現主義的な流れへ、最後は調性感ある多様性へと、バラケの変遷を楽しめます。

前半は古さと退屈さのセリエルですが、1960年代の "Proliferating Series"作品 'Concerto'では早すぎた多様性の楽しさが見出せます。これが1990年代ならもう少し評価が違ったかもしれませんね。



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向井山朋子さんの「Women Composers」で楽しむ 20世紀の現代音楽ピアノ曲


向井山朋子 (Tomoko Mukaiyama)
アムステルダム在住のピアニストですが、現代アートのパフォーマーの様ですね。他ジャンル芸術家とのコラボも多く、今の時代ならインスタレーション・アーティストと言えるのかもしれません。

このアルバム見たらビッグネームの女性現代音楽家が並んでいるで驚きました。実は20世紀末の録音(とオリジナルリリース)です。まだ存命だったウストヴォリスカヤ、円熟のグバイドゥーリナ、バリバリのヘルツキー、そんな時代を浮かべながらピアノ・ソロを聴いてみましょう。







アドリアーナ・ヘルツキー
(Adriana Hölszky, b.1953)
ドイツ在住のルーマニア人現代音楽家、その楽風は過激なエスクペリメンタリズムですね。このブログでも2つのアルバムをインプレしていますが、好きな現代音楽家です。

Hörfenster für Franz Liszt (1986-87)
 特殊奏法を仕込んだ無調混沌の破滅音ですね。暴力的でパフォーマー向きと言って良いかもしれませんね。2パートになっていて、後半パートでの打楽器の様な特殊奏法と調性音階(に近い)の連打がヘルツキーらしさを感じますね。pfらしい超絶技巧的なパートはありません。所謂(いわゆる)'現代音楽'と言った感じですね。



ヴァネッサ・ラン
(Vanessa Lann, b.1968)
米生まれオランダ在住の現代音楽家です。5歳からピアノと作曲を始めたそうで、現在は委嘱作品が多い様ですね。残念ながら知見がありません。

Inner Piece (1994)
 向井山さんへの献呈曲の様ですね。低い連打音に右の単音が割込む前半、そこから単音は短い旋律?の反復変装となります。連打音も音階変化を見せると右手は速いアルペジオに進んで行きます。技巧性を見せながらテンポアップして唸る様な細かい織物の様な複雑性を見せて行きます。
曲としては1990年代らしい調性にも軸足を置いた多様性の現代音楽になるでしょうね。無理やりポスト・ミニマルと言える気もします。



ガリーナ・ウストヴォリスカヤ
(Galina Ustvolskaya, 1919-2006)
前衛の停滞期になってから日本でも名前が知れる事になったロシアの現代音楽家ですね。このブログでも一押しの個性派の一人です。その音塊の迫力は一度聴いていただきたいですね。

Piano Sonata No. 6 (1988)
 低音側で叩き鳴り響く無調の音色、単純な音階と和音と等拍のリズムがそれを強調します。まさにウストヴォリスカヤですね!! ピアニストに関わらず、強烈な個性が響渡りますね。後半一瞬の静的な美しさも特筆ものです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ピアノはYoungwoo Leeです。こちらも良く鳴らしていますね




ソフィア・グバイドゥーリナ
(Sofia Gubaidulina, b.1931)
今更のロシア人現代音楽家(ドイツ在住)のビッグネームですね。現代音楽技法として特殊奏法、電子音楽、数学的アプローチ(フィナボッチ)と欧エクスペリメンタリズムに近い方向性があります。作品数の多い宗教曲は少しハードルが高いですが。

Piano Sonata (1965)
 以前もインプレ済みの三楽章形式のピアノ曲の代表作ですね。初期のグバイドゥーリナらしく、無調ですが旋律が存在しながら厳しい音を並べます。表情変化も強く特殊奏法も混ぜ、表現主義的で技巧的なピアノですね。向井山さんのpfもその楽曲を活かす様な表情付けを感じます。繊細なパートが特にいい感じです。懐かしさを感じるかもしれませんね。



メレディス・モンク
(Meredith Monk, b.1942)
ペルー出身の米現代音楽家、と言うよりもパフォーマーで統合芸術家でしょうね。今までインプレしていなかったとは意外でした。声楽が特徴的で、この曲でも向井山さんが歌っています。

Double Fiesta (1988)
 調性感の強い美しい流れのピアノ曲にvoice(ヴォーカリーズ)が絡みクレシェンドして行きます。voiceが技巧的なので向井山さんは大変だったのではないでしょうか。まぁ、pfの方は完全に反復なので伴奏的な感じかもしれません。それがM.モンクの楽曲ですね。



手にする際にジャケットに違和感を感じるかもしれませんが、20世紀の現代音楽ピアノ曲を楽しめるアルバムですね。

ビッグネーム3人は基本的に強打強鍵で、現代音楽としては古典的な香りがするかもしれません。表現主義的で、パフォーマーである向井山さんに合った選曲ですね。



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M.T.トーマス指揮/サンフランシスコ交響楽団 の2019年再録音『マーラー 交響曲 第6番』18年ぶりの印象は


マイケル・ティルソン・トーマス
(サンフランシスコ交響楽団)
M.T.トーマス(以下MTT)が25年間(1995-2020)首席指揮者・音楽監督を務めたサンフランシスコ交響楽団とのマーラー6、最後のシーズンに18年ぶりの録音が発売されました。2001年と同じく9月12〜15日のLiveからというのも面白いですね。退任後はもちろん桂冠指揮者だそうです。


 ・18年前のマーラー6との聴き比べは ▶️ こちら




マーラー 交響曲 第6番
(2019年9月12-15日)


(配信のみで、現状CD未発売の様です)


第一楽章
18年前よりも重厚さが感じられる第一主題からパッセージでは緩め、アルマの主題を大きく広げます。流れ自体は標準的ですが、アゴーギクが付いて表情があります。展開部も第一主題を切れ味よく、挿入部もスロー静での表情を感じますね。ところが再現部はあっさり、コーダも同様です。前回録音よりも表情は出ていますが、それでも淡白な印象でしょうか。

第二楽章
スケルツォです。主要主題は気持ち速めでシャープに、中間部(第一トリオ)は洒脱なリズムの変化を付けていますね。木管の第二トリオでの変化は薄めです。

第三楽章
主要主題は美しさの流れです。スローだったテンポは標準的になりました。副主題で少しスロー化させて哀愁感を強めて、流れにコントラストが付きましたね。中間部は自然な明るさの広がりになりました。この楽章は以前の録音よりも心地良いアンダンテになりましたね。

第四楽章
序奏はスローで抑え気味、アレグロ・エネルジコから流れ良く提示部へ入って行きます。抑えた感じの第一主題、第二主題も淡白です。展開部の両主題もそれなりのメリハリはありますが、'それなり'的。再現部は第一主題回帰からの騎行が個人的ポイントなのですが、何か一つ吹っ切れません。



標準的でタンパクにまとまった感のマーラー6です。クールと言う感じでもなく、感情を込めると言うのでもなく、'なんとなくほどほど'的印象ですね。MTTという期待値と整合しないだけかもしれませんが。

この曲は炸裂する感情か、もしくは抑えの効いたクールさか、どちらかの方向性が欲しい気がしてしまいます。



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強力な電子現代音楽:エンノ・ポッペ(Enno Poppe)『Rundfunk』の音色


エンノ・ポッペ
(Enno Poppe, 1969/12/30 - )
好きな現代音楽家で指揮者のドイツ人ポッペです。楽風は多様性で電子音楽、一部機能和声を残しながらの反復、そして微分音やサチュラシオンの方向性まで広がりを見せますね。

電子音楽はサンプリングからプリセットでの微分音までシンセサイザーでの基本技術を駆使し、ソフトはヴォルフガング・ハイニガー(Wolfgang Heiniger)により書かれているそうです。


Rundfunk, für neun Synthesizer (2015-18)
"Rundfunk"はもちろんラジオの事で、ラジオ放送無くして電子音楽はなかったとの事です。サブタイトル"for nine synthesizers"とある通り、シンセ9台で'60-'70年代のMinimoogなどの古い音を再現しているそうです。もっとも昔はシングルトーンだったシンセですが、マルチ化である事は当然の様ですが。

エレクトロニクスのソフトはもちろんハイニガーによるモノで、ポッペが代表・指揮者でもある今回演奏のアンサンブル・モザイク(Ensemble Mosaik)20周年への称賛だそうです。ポッペも演奏者に名を連ねていますね。






Rundfunk I
シンセの単音で音列配置的な散音から入ります。この時点で反復を感じますね。サンプリングと思われる音色が重なりながら音密度が上がり、サウンドとノイズの中間的な音になります。後半は電子ノイズの方向が強まりながら、ポップな感覚も現れます。ラストは音が溢れ返り、ポッペの世界です。


Rundfunk II
低音ハウリングの様な、ドローンノイズの音色から入ります。ノイズ系空間音響の様な流れで音の厚みが増殖して行き、ラストは音を鎮めます。


Rundfunk III
入りから変奏反復が絡み合います。曲調は"I"に近い流れで、弦楽四重奏にしても面白そうです。キョトキョトと執拗な反復変奏で表情を変えながら、ここでも音密度が増幅。ポリフォニー的に混沌度合いが上がって狂気に近くと、例によって唐突に終了します。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  2019年, Ultraschall Festivalのステージだそうです。



まずは完全な電子混沌音楽です。旋律感の低いノイズと音色の中間色的なサウンドでポッペらしい反復からアブストラクトな流れを創造します。

ダルムシュタットで名を馳せた欧エクスペリメンタリズム前衛現代音楽らしい流れでしょうね。ぜひ一度聴いていただきたいアルバムです。




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ミラノ・スカラ座 2019/20開幕公演 プッチーニの歌劇「トスカ」を円熟のA.ネトレプコで。 NHKプレミアムシアター。

先月行われたTeatro alla Scalaシーズン開幕公演が早速登場ですね。今や恒例となり嬉しい時代になりました、生きているもんですね。(笑)

プッチーニの超人気オペラ「トスカ, Tosca」に, 歌姫ネトレプコ, メーリ, シャイーと役者が揃いましたね。今や演出が主役となりかねないのでリーベルモルが気になる処ですが、昨シーズン開幕公演「アッティラ」での印象は舞台設定は派手ですがその他はコンベンショナルだった気がします。



(公式Trailerです)



演出
リーベルモンらしい演出と言って良いですね。重厚舞台に進んだプロジェクション・マッピング、ストーリーには手を付けずに、と今や希少な王道的で安心感がありますね。個人的にはアヴァンギャルドの方が好みではありますが。
(音楽監督シャイーは今回初稿を選んだそうですがよくわかりませんでした…汗 第二幕でカヴァラドッシが囚われた部屋にトスカが現れてしまうのは初稿? それとも演出でしょうか)

舞台・衣装
古典風重厚な道具を配してせり上がりや回り装置を生かしたお金のかかった舞台です。そこに動的なプロジェクション・マッピングを入れるのはリーベルモンらしさでしょうね。衣装も適度に時代考証された風で、全体的に今の時代としてはまさに古典的な印象と言った感じです。

配役
ネトレプコのタイトルロールは何回目でしょう。48歳になり今やドラマティコの様なsopと嫉妬深い熱演は流石でしたね。山場, 第二幕 "歌に生き, 愛に生き" は舞台演出も合わせて魅せてくれました。
・男性陣ではカヴァラドッシのメーリは落ち着いたテノールで、トスカとの対比を作りました。二人のDuoは聴かせ処でしたね。この二人のセットは多い気がしますね。ザルツブルク音楽祭2017「アイーダ」の二人も良かった記憶があります。
・悪徳総監スカルピアのサルシは見栄え・演技・バリトン共に役にピッタリしていました。今まであまり好印象がなかったので期待以上でしたね。第二幕のサルシは光りました。
・脱獄犯アンジェロッティのチーニ、スカルピアの副官スポレッタのボシ、は少し軽い印象でした。

音楽
2017年から音楽監督を務めるシャイーは、程度な陰影付けは感じましたが、演奏に思わず耳を傾ける様な事はしませんでしたね。


古典的で派手な演出の中、メインキャスト三人が楽しませてくれましたね。今やシンプル舞台に前衛演出がメインとなるオペラですが、懐かしささえ感じました。

ネトレプコは益々トスカにピッタリになりましたね。若い頃の細くて美しい彼女が似合った"ラ・ボエーム"のミミとは違う世界になってきました。



<出 演>
トスカ:アンナ・ネトレプコ [Anna Netrebko]
カヴァラドッシ:フランチェスコ・メーリ [Francesco Meli]
スカルピア男爵:ルカ・サルシ [Luca Salsi]
アンジェロッティ:カルロ・チーニ [Carlo Cigni]
スポレッタ:カルロ・ボシ [Carlo Bosi]


<合 唱> ミラノ・スカラ座合唱団
<管弦楽> ミラノ・スカラ座管弦楽団
<指 揮> リッカルド・シャイー [Riccardo Chailly]
<演 出> ダヴィデ・リーベルモル [Davide Livermore]


収録:2019年12月7日 ミラノ・スカラ座(イタリア)

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暗鬱混沌の グロリア・コーツ(Gloria Coates)「交響曲 第1番, 第7番, 第14番」という楽しみ


グロリア・コーツ
Gloria Coates, 1938/10/10 - )
ベテラン米女性現代音楽家で活動拠点は30代からミュンヘンの様ですね。今までに室内楽をインプレしていますが、印象は四分音から微分音、グリッサンド、反復、と言った技法を使う暗く幽玄な音ですね。微分音とグリッサンドは同様の技術から出るのですが、チューニングからも弄っている様ですね。そこがコーツのベースですね。


Symphonies Nos. 1, 7 and 14
コーツは16の交響曲を書いています(多分)が、素直な管弦楽編成が少ないのも特徴です。ここでも基本的な管弦楽構成は第7番だけです。1番は開放弦の為の、14番は弦楽とティンパニの為の曲ですね。(CDは14番が先になっていますが、年代順にインプレしています)

演奏は三曲ともに異なる指揮者とオケになります。ジャケット画はもちろんコーツ自身の"Rainbow Folding in Foliage"(1991)ですね。






Symphony No.1, "Music on Open Strings" (1972-3年)
スコルダトゥーラ(変則調弦)で中華和声にチューンされているそうで、この時点で既に微分音もしくは民族和声ですね。最終楽章では標準的な調弦に戻されています。
 低音弦の暗いスタートの第一楽章は反復とグリッサンドのセットで、緩い中華和声を見せながら陶酔的に昇ります。第二楽章はピチカート主体で反復、打楽器の追従、そしてグリッサンドです。第三楽章は僅かな微分音のロングトーンの絡みで、弾きながらチューンしているかもしれませんね。第四楽章ではグリッサンドの混沌です。とにかく独特の世界ですね!!
J.ロッター指揮、ジーゲンラント管の演奏です。


Symphony No.7 (1990年)
珍しいノーマルの管弦楽編成です。"編成"は, ですがw 低い太鼓と金管から入り音の渦巻く第一楽章はただただ混沌です。第二楽章では反復旋律が現れ、第三楽章は緩いグリッサンドが上下行交錯します。一楽章が強烈ですね。
O.ヘンツォルト指揮、バイエルン放送響の演奏です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  G.シュメーヘ指揮シュトゥットガルト・フィルの演奏です



Symphony No.14, "Symphony in Microtones" (2001-2年)
弦楽とティンパニの協奏曲?風で、初期アメリカへ渡った人へのオマージュだそうです。他の資料では"The Americans"ともありますね。四分音とグリッサンド構成だそうで、もちろんTimp.もペダルで微分音を出します。
 虫が飛んでいる様なグリッサンド音はシャリーノやシェルシを思い出しますね。それが延々と流れる第一楽章です。第二楽章は強いバルトーク・ピッツィカートから入りこれまた虫の羽音ですw 第三楽章は微分音反復旋律が主体です。一二楽章で聖歌風の旋律(初期渡米人への賛歌だそうです)が混ざりますね。
指揮はお馴染みC.ポッペン、ミュンヘン室内管の演奏です。



とにかく強烈なオリジナリティを感じますね。グリッサンド(微分音を含む)と反復の渦巻く暗鬱混沌世界です。ウストヴォーリスカヤに並ぶ個性が際立つ前衛女性現代音楽家ですね。

もちろんポスト・ミニマルでもあるでしょう。一度は聴いて欲しい、オススメの一枚です!!
ネイティブ・アメリカンを制圧した人々を尊重しているのは好めませんが…



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トマーシュ・ネトピル / エッセン・フィル の「マーラー 交響曲 第6番 "悲劇的"」を聴いてみましょう


トマーシュ・ネトピル, Tomáš Netopil
(エッセン・フィルハーモニー管弦楽団, Essener Philharmoniker)
チェコの中堅指揮者ネトピルが同歌劇場の音楽監督を務めるエッセン・フィルを振ったマーラー6ですね。甘口で破綻のなかった9番に続くマーラーですが、どうでしょうか。
エッセン・フィルと言うと、1906年5月27日にマーラー本人の指揮でこの曲が初演された事が必ず出て来ますね。





マーラー 交響曲 第6番
(2019-5/14-17)



第一楽章
第一主題はビシッと勇壮で、パッセージは淑やかにアルマの主題はスローに華やか優美ですね。濃厚な提示部になっています。展開部の第一主題も締まり良く、第二主題回帰の挿入部ではスローでシンプルにしています。再現部を激しさを増して進み、コーダを陰鬱から立ち上げて鳴らします。バランス良く隙のない教科書通りの第一楽章ですね。


第二楽章
スケルツォです。主要主題は締まり良く、トリオはここでもスロー&シンプルです。王道なのか教科書的なのか、きっちりと作り込まれた感じです。


第三楽章
アンダンテです。主要主題は包む様な穏やかさで、第一トリオの副主題がobで哀愁を漂わせます。ほんの僅かにhrが綻びを見せますね。ミキシング修正すれば良かったのに、って言う感じです。中間部ではhr群がのびのびと音色を響かせ、第一トリオ回帰の山場は大きく鳴らします。


第四楽章
序奏はスロー揺さぶりは少なめでhrだけ少し怪しいw、アレグロ・エネルジコから第一主題は快走します。パッセージと上手く絡みながら第二主題は軽快で、王道ですね。展開部・再現部の出し入れもクセ無く安心して聴く事が出来ます。



王道的にキッチリ作り込まれたマーラー6ですね。堂々たる演奏でクセや欠点などありません。(後半楽章hrは少し修正すれば良かった気がします) その代わり情熱や個性の魅力も感じられません。

最近は演奏だけでなく録音技術を駆使して作り込まれた作品が多くなっている気がします。全曲通し一発勝負のLiveでどうなるのかが興味ありますね。



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2020年1月16日 マーティン・ブラビンズ/都響「日本初演マクミラン/トロンボーン協奏曲 | エルガー/エニグマ変奏曲」at サントリーホール


今年の初コンサートです。指揮者にマーティン・ブラビンス(Martyn Brabbins)を招いた都響定期Bに行ってきました。

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メインは何と言っても本邦初演となる英現代音楽家ジェームズ・マクミランの「トロンボーン協奏曲」ですね。トロンボーン奏者は初演(初録音)のヨルゲン・ファン・ライエンというのも嬉しいです。もちろん同CDで予習のインプレもして来ました。▶️ こちら





ラヴェル:クープランの墓

管弦楽版なので4パートですね。頭で鳴っているのはデュトワ/モントリオール響の優しく洒脱な演奏です。

"プレリュード" は少し速く感じましたが、"フォルラーヌ"は上手くまとまりました。"メヌエット"は三部形式の中間部を印象的に、"リゴドン"では唯一金管が活躍する主要主題を鳴りの良さで表現してくれましたね。
とてもきっちりとした演奏で良かったです。肩の力の抜けた洒脱さが欲しかったかも...



マクミラン:トロンボーン協奏曲

曲はアタッカで繋がっていて単一楽章的ですが、CDでは三楽章になっているのでそれに沿って聴いて来ました。

【第一楽章】静的ポリフォニカルなオケとtbの対話が予想以上にしっかりと流れで、中間部ではtbの低い唸りが先導するとオケは調性色の強さを鳴らしました。
【第二楽章】明るい音色のtbは抑えた音色で入りましたね。その後はオケとの対位的な流れを上手く上げて激しさを見せましたが、ホモフォニーや出し入れはやや固かったでしょうか。
全休符を挟んで激しい中にサイレンも鳴り響きますが、直ぐに静的流れに。後半は調性の薄さを生かした美しい緩徐でしたが少々間延び感だったかもしれませんね。
【第三楽章】トゥッティとサイレンからキレあるリズムに乗ってtbは小刻みに軽快にオケと疾走。再び管楽器トゥッティ風から静音パートとなります。混沌からライエンがオケに振り向くとオケtb3本とのtb絡み合いの見せ場を見事に築きました。(都響tbも負けていませんでした!)
都響は真面目で調性感が伝わり、ライエンのtbも終始几帳面さを感じました。



エルガー:エニグマ変奏曲 Op.36

コンサートでは超お馴染みの曲ですが、久しぶりに4CDでインプレをして自分勝手にポイントを予習して来ました。

主題第一動機でまずはスローで揺さぶりを感じましたね。第7変奏までの[前半]は強音の第4変奏"W.M.B." 第7変奏"Troyte"を派手に、全体揺さぶりの強い流れでした。
メインの[後半]、第9変奏"ニムロッド"の美しさは感動的、第10変奏"ドーラベッラ"は今ひとつでしたが、第11変奏"G.R.S."のDanは派手に大きく駆け回り素晴らしかったですね。第12変奏"B.G.N."のチェロは強烈濃厚な哀愁でした。
ラスト第14変奏"エドゥ"は派手で重厚に聴かせてくれました。
表情豊かでエルガーらしいエニグマが楽しめました。ブラビンズはスコアを開く事もなく、タクト姿も前半とは違う'手の内'感がありましたね。




真面目な前半、表情豊かな後半と二つのスタイルを楽しませてもらいました。前半は都響のキャラ、後半は英人指揮者ならではのお家芸でしょうか⁈

やっぱりエニグマの素晴らしさに一票でしょうね。


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スーパー・チェリストにして現代音楽家ジョヴァンニ・ソッリマ(Giovanni Sollima) の『natural songbook』は超絶的な楽しさです!


ジョヴァンニ・ソッリマ
(Giovanni Sollima, 1962/10/24 - )
このブログでは超オススメのイタリア人チェリストにして現代音楽家ですね。昨年来日の100人チェロのコンサートに行けなかったのは痛恨の極みです。現代のチェリストに影響力のある一人と言って良いのではないでしょうか。歩きながら弾いたり、もぅ自由自在です。Youtubeからポップで名を馳せた"2CELLOS"など、見た瞬間にその影響を感じました。(2012年の来日コンサートに行ってますw)

楽風は民族音楽和声やポスト・ミニマル系で、所謂(いわゆる)欧エクスペリメンタリズム前衛現代音楽とは一線を画しますね。

 ▶️ 現代音楽の楽しみ方


natural songbook
2008年から10年間かけて、コツコツと作ってきた作品だそうです。演奏はソロだけでなく、パーカッションやピアノとのDuoやチェロのアンサンブル、コンチェルトにまで及びます。

全19パート構成で"Natural Songbook"が12パート、その間に"Sonata 2050", "Citarruni", "The N-Ice Cello Concerto", が挟まる形をとっています。"The N-ice Cello…"では、氷で作製されたチェロで演奏されているそうです。






Natural Songbook
得意の中近東和声(I)や、変奏反復超速でのvc技巧曲(II)、バラード(III)と言ったソロパートでの素晴らしさを始めに配置して惹き込みますね。その時点で既に満足度は高調になります。
その後はパーカッションとの激しいDialogue(IV)、表情豊かなチェロ・アンサンブル等々、たっぷりと楽しませてくれます。曲もさる事ながらチェリストとしてのソッリマを堪能できますね。サティの"ジムノペディ#1"vcトランスクリプション(IX)も楽しいですし、テープとノイズ(XIII)の前衛系もあります。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  "natural songbook I" のライヴ映像で、途中で歩き出します。必見です



Sonata 2050 for Cello and Piano
三楽章のチェロソナタですね。ベートーベンやバッハからの流れで作られていて、古典和声をベースにです。第一楽章は古典だけど元気なチェロソナタ、第二楽章は超絶技巧強音と幽玄な調性緩徐の対比、第三楽章は緩いポスト・ミニマルな緩徐楽章です。
聴き応え十分で、続きのチェロソナタを期待してしまいますね。


Citarruni for Viola, 2 Cellos and Percussions
弦楽奏とパーカッションで、中近東和声も現れるハイテンポで反復の強いポスト・ミニマル曲ですね。ソッリマらしさの楽曲と演奏です。


The N-Ice Cello Concerto for Ice Cello and Orchestra
美しい三楽章形式の"氷のチェロ"協奏曲です。民族音楽和声を基本にしていますね。澄んで広がる音色の第一楽章、vc技巧と美しい反復動機の第二楽章、前衛技巧を垣間見せるポスト・ミニマルと美的な第三楽章、と言った感じでしょうか。オケとの協奏と言うよりもチェロが前面に出ている感じですね。

 ★驚きの氷のチェロを弾くシーンです!!
  (氷チェロのソロ・ツアーの様子です。インスタレーションですね)




現代音楽家とチェリスト、両方のソッリマを楽しめる超オススメの一枚です!!

無調混沌の前衛とは異なる 美しさと技巧のポスト・ミニマルで、今の時代を代表する多様性現代音楽の一つですね。チェリストとしても超絶技巧を披露してくれています。個人的には'頭でっかち系意味不明の前衛'が好きですが、調性軸足ながらソッリマは楽しめる事請け合いです。



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ピエール・バルトロメー(Pierre Bartholomée) の「Années 1970-1985」、注目のギーレン指揮 "Harmonique"


ピエール・バルトロメー
(Pierre Bartholomée, 1937/8/5 - )
ブリュッセル生まれベルギーの現代音楽家で指揮者としても活動している様で、W.ケンプに師事していますね。楽風はポスト・セリエルになるでしょうか。


Années 1970-1985
タイトル通りバルトロメーの1970年から1985年の古い管弦楽・室内楽の作品集になります。録音年も4(1917年)以外は古く、1(1973年)、2,3(1986年)ですね。
特徴的なのは"1.Harmonique"、バルトロメー初めての管弦楽曲です、を本人指揮の初演後にギーレンが要望して本録音になったそうです。

演奏は以下
1 : ミヒャエル・ギーレン(Michael Gielen)指揮、hr交響楽団
2, 3 : ジョルジュ=エリ・オクトール(Georges-Elie Octors)指揮、アンサンブル・ミュジーク・ヌーベル
4 : Bl!ndman Quartet (saxophone quartet)







1. Harmonique (1970年)
まさに前衛の停滞期の作品になりますね。最も長い19'ほどのポスト・セリエルの楽曲です。音列配置を基本に点描的で無調混沌系です。静の中に、細かな音の並びと、時折のクラスター的強音、いかにもあの時代を思わせますね。フランス系のキラメキを感じます。楽曲の技術的な解説がライナーノートにないのが残念ですね。
ギーレンの好みそうな前衛曲になっています。


2. Trois pôles entrelacés (1985年)
5パートの楽曲で、アンサンブルには奥様でハープ奏者のフランチェット(Francette)が入っていますね。またベルクの'Kammerkonzert'との類似性、vnに対するharpの位置付けと言った、も述べられています。
15年後の作品になって調性感のある旋律と抑えられたディナーミクが明瞭です。もちろん無調ですが。時代の本流が多様性となろうかという背景を考えると納得の流れでしょう。ハープが主役になって反復の弦楽器と対位的に、管楽器も交えてポリフォニカルになって行きます。パートにより暗い幽玄さも現れます。特徴は薄くて眠くなります…


3. Fancy as a Ground (1974年)
奥様のフランチェットに献呈されています。打楽器を生かしたキラメキのある音が印象的です。既に調性旋律と反復がありますね。でも表情が豊で、今の時代でも十分に聴く事ができる感じですね。pfが無調の面白い演奏を聴かせるのもポイントでしょう。キョトキョトしたハイテンポが面白いです!!

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  楽しめますので、一度ぜひ!!



4. Ricercar (1974年?)
一聴して前曲との類似性を感じますね。サックスの鳴りを生かしながら小刻みなリズムの設定が楽しいですね。1970年の'Harmonique'から既に点描的音列の呪縛から逃がれ様としている事が聴き取れますね。三度五度といった機能和声も頻繁に登場します。これも楽しめますね。



ポスト・セリエル時代の欧エクスペリメンタリズムの現代音楽ですね。一二曲目は古いポスト・セリエル, 後半二曲は模索中の様相で、年代は挟んでいるのに好対照です。後半二曲は1970年代当時はともかく、今なら時流に乗った感もあって楽しめますよ。

裏ジャケットの曲の並び順が違っていますよね。(1と3が逆です)



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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。


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