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『マーラー 交響曲 第5番』 «ネット配信» "BBC Proms JAPAN 2019" トーマス・ダウスゴー指揮 / BBCスコティッシュ交響楽団 2019年10月30日


トーマス・ダウスゴー, Thomas Dausgaard
(BBC Scottish Symphony Orchestra)
先月初めての日本公演があったBBCプロムス。その初日のメイン、マーラー5番がBBCradio3のウェブサイトより配信されています。

指揮はお馴染みのT.ダウスゴー、BBCスコティッシュ響は初来日だったそうです。英語紹介ではダウスガードですね。 (当日の日本語パンフレット)

▶️ こちら (配信は2019年12月24日までの様ですね)




マーラー 交響曲 第5番 «ネット配信»
(Live at オーチャード・ホール, 2019年10月30日)

Dausgaard-Mahler5-30oct2019Tokyo.jpg


第一部
ファンファーレのtpが怪しげw 葬送行進曲は重厚さを避けて静的に、第一トリオでは速め適度な激しさでコントラスト付けです。第二トリオも少し速めですね。第二楽章第一主題も速めで荒れ気味の流れ、第二主題は(一楽章#2トリオですが)テンポを落とし優美です。やや切れ味に欠けますがコントラストの良い第一部です

第二部
スケルツォ主題は伸びやかに心地良く、レントラー主題は優美、第三主題もスロー&マイルドと良い流れです。再現部は緩急を付けながらの三主題の緊迫感ある流れを上手く作っていますね。締まりある第二部です

第三部
第四楽章は気持ち速めで表情は濃い目、トリオでは落ち着いた流れにメリハリを付けています。夏の夕暮れ、温泉に浸かりながら夕日を眺める様なアダージェットです。第五楽章の第一・第二主題の絡みは慌てず良い流れ、コデッタも優美に心地良いですね。展開部は山場へ向けて高める上手い流れを作り、再現部は緊張感を保ったまま山場・フィニッシュをビシッと決めました。


緩急・激しさと言ったコントラストの良いマーラー5でしたね。好演なのですが、スカッとした抜けの良さに欠ける感じです。原因はフラットに感じる録音の問題なのでしょうか。(金管が多少怪しいのがあるにしても…)

ダウスゴーのマーラー5は以前 新日本フィルでも聴きましたが、その時はオケの怪しさを感じた覚えがありますね。会場も同じだったと思います。



残念ながらCDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





フィンランドの現代音楽 ヨウニ・カイパイネン(Jouni Kaipainen) は欧州前衛の残像?!


ヨウニ・カイパイネン
(Jouni Kaipainen, 1956/11/24 – 2015/11/23)
ヘルシンキ生まれのフィンランド人現代音楽家です。シベリウス音楽院でお馴染みのサッリネンやへイニネンに習っている北欧現代音楽家のメインストリーマーなのですが、基本は無調で技法的には欧州前衛の十二音技法からポスト・セリエルへと進みました。従って北欧風景の様な楽風ではありませんね。

 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


Meet The Composer: Jouni Kaipainen
フィンランドのレーベル"FINLANDIA"が北欧音楽家を2枚組CDで紹介する"Meet The Composer"シリーズの一枚ですね。
CD2枚に7曲を詰め込む為に年代順にはなっていませんが、せっかくですからインプレは年代順にしようと思います。(作品番号ではなく完成年です)

演奏はE.P.サロネン/BBC-SO、他諸々ですね。






Ladders to Fire (Concerto for Two Pianos), Op. 14 (1979年)
3パートのピアノデュオ曲ですね。無調点描的で音列配置のpfです。1979年の作ですが既に行き詰まったセリエルそのものの気配で、静も動も全てが古いモダニズム色です。


Trois morceaux de l'aube, Op. 15 (1980–81年)
チェロとピアノのデュオ、2パートの楽曲です。pfがvcのグリッサンドを交えた無調の音色に変わり、三度・五度と言った和声や反復が出てくるので聴き易い方向には進んでいる様です。美しさを感じるかもしれません。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Trio I, Op. 21 (1983年)
3パートの室内楽です。相変わらず基本は点描的ですが、トリル・トレモロ・反復変奏と言った表情が現れてきます。調性を感じる様な流れも見えて多様性の現代音楽に踏み込んでいるのかもしれません。


String Quartet No. 3, Op. 25 (1984年)
"弦楽四重奏曲 第三番" です。何処となくアルディッティSQが演奏しそうな刺激的で技巧性の高い楽曲になっています。幽玄さもあり、静と動のコントラストも生きています。グリッサンドと反復、そして切れ味の弦楽奏ですね。ここまででは一番面白いでしょうね。


Symphony No. 1, Op. 20 (1980–85年)
一楽章の交響曲です。年代が広いので作風が交錯している様です。即興的点描の強音パートが散見するのは古い楽風、それ以外は1980年代中期のイメージでしょう。静の中に現れる打楽器含むクラスターや緊張感ある構成はポスト・セリエル時代の趣を感じますね。


Conte, Op. 27 (1985年)
ピアノ・ソロ曲です。音の跳躍が大きく点描的、基本はセリエルを引きずる感じです。旋律感もある事はあるのですが、'85年でこれは古すぎでしょうか。


Antiphona SATB (Super ‘Alta Trinitá Beata’), Op. 40 (1992年)
唯一'90年代の声楽曲です。宗教曲の様な和声で、児童合唱団と男声合唱のantiphonal-choirs構成です。そこにヴォーカリーズでの揺さぶりが掛かっているのが特徴的でしょう。そこはこのアルバム唯一の面白さかもしれません。



1979年の無調点描から調性を取り戻す様に舵を切り、1980年代中盤には類型的な前衛現代音楽の流れになっています。イメージはこの時代の欧州前衛の残照の様な印象を受けますね。

何かオリジナリティ、北欧らしい風向き か全く独自の技法とか、があれば興味をひくのではないかと思います。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ペア・ノアゴー(Per Nørgård) の無限セリーの傑作『交響曲 第3番』と「第7番」を、ダウスゴー/デンマーク国立響で聴く


ペア・ノアゴー
(Per Nørgård, 1932/7/13 - )
昨日の第2・6番に続きノアゴーの交響曲 第3・7番になります。第3番は、第2番に続くノアゴーのオリジナル:無限セリーの注目作ですね。

Nørgård-infinity sequence

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Symphonies 3 and 7
第3番は全面に無限セリーを取り入れたデンマーク国立放送からの委嘱作で、2番を書いた後5年経って完成させています。同じ無限セリー作品ですから続けて聴いて変化を楽しめそうですね。
その委嘱の際、無限セリーを追究する方向についてノアゴー本人が書いた資料が読めますね。無限級数の他、倍音等々にも触れられています。▶️ こちら

第7番は楽風が変化した作品で、世界初録音ですね。
演奏はトマス・ダウスゴー(Thomas Dausgaard)指揮、デンマーク国立交響楽団に合唱が入ります。






交響曲 第3番 (1972-75年)
導入部からノアゴーらしい煌びやかな管楽器とpfが特徴的です。その中に無限級数からのセリーらしき音が転がりますね。調性に近い音列が増えているのも特徴的です。その後もアゴーギクとディナーミクの変化や混沌、暗闇の様な流れを作り出します。

時にポリフォニーに、時にホモフォニーに、表情変化のある楽風は中後期に近いかもしれません。手法はセリーですが、無調混沌では無く調性を薄くした現代音楽ですね。第二楽章では調性感の強い北欧風の流れから大合唱に流れ込み、溢れる音の洪水が素晴らしいです。
アルトはウッラ・ムンク(Ulla Munch)です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


交響曲 第7番 (2004-06年)
約10年後の作品ですね。派手な管楽器とパーカッションの対比が面白く、調性を強く感じさせながらの第一楽章。オルガンを含めた音の厚さの中にテンポ・強弱の出し入れの第二楽章。ふとバーンスタインの曲を思わせる様な第三楽章。そんな中、楽器の音色を上手く活かしているのはノアゴーらしさですね。一つ前の6番より調性回帰が強く新古典主義でしょうね。



表情の薄い第2番から第3番の変化が大きいですね。煌びやかで表情のある この第3番の楽風から無限セリーを除いたのが、その後の1900年代のノアゴーの気がします。それも踏まえて素晴らしい北欧前衛の現代音楽ですね。

調性回帰の強い第7番も聴き応えがあり、強くオススメの一枚です。ダウスゴーも見事ですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





デンマークの現代音楽家 ペア・ノアゴー(Per Nørgård) の無限セリーの数式と「交響曲 第2番・第6番」


ペア・ノアゴー
(Per Nørgård, 1932/7/13 - )
デンマークの現代音楽家ノアゴーと言えば、なんと言っても1960年代に構築した無限セリーでしょう。それまでの北欧和声から欧州前衛で猛威を奮っていたセリエルに踏み入り、独自の無限セリーを開発した事ですね。ポスト・セリエルと言うよりも、数学を使ったセリエル技法の一つになるでしょうか。

ただ、その使用は欧前衛の衰退が叫ばれた1970年代までで、以降は使われていませんね。楽風は無調前衛のスタンスを保ちつつ、21世紀に入ると調性回帰が強まり新古典主義的になります。

Nørgård-infinity sequence

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Symphonies 2 & 6
その無限セリーを使った第2番と、中期の第6番のカップリングになります。第6番は本CDのオスロフィル他 北欧3交響楽団からの委嘱作品で、ミレニアム(西暦2000年)を祝って作られていますね。三楽章形式ですが、ここでは"three passages"と表現されています。祝典音楽ですから楽しみですね。CDは2番が後になっていますが、年代順に聴きましょう。

指揮はヨーン・ストルゴーズ(John Storgårds)ですが、NørgårdもStorgårdsも日本語読みが相変わらずいろいろで戸惑いますねw






交響曲 第2番 In One Movement (1970年)
23'の一楽章形式で、ソナタや三部形式の様な構成感はありません。導入部は単音の共鳴の様な音の重なりで、まさに実験音楽風。所謂(いわゆる)交響曲とは縁遠いですね。そこから単純音階の音列配置的な音が重なりますが、弦楽のロングボウと面白いマッチングを見せてくれます。明確な旋律は存在しませんが混沌は少なく、アゴーギクも振ってあるので聴きやすさはありますね。無限セリーの音は解析値の様にターン音形風で反復の色合いが強く、煌びやかなセリエルの残照の様な音楽です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  セーゲルスタム指揮デンマーク国立管の演奏です。



交響曲 第6番 "At the End of the Day" (1999年)
長い第一楽章は無調の煌めく混沌から入ります。基本は無調ポリフォニーですね。弦楽が主になるパートでは暗い印象になり、コントラストも付いて煌びやかです。第二楽章は暗闇の緩徐が面白く、アタッカで繋がる第三楽章は何と"Allegro energico"で変拍子的な派手な流れになります。この最終楽章は実に表情が豊かですね。



カラフルな管楽器とロングトーンの弦楽器が作るノアゴーらしい無調の煌びやかさは時代を超えて美しいと再確認ですね。処々に少し混沌を混えるのも変わりません。

楽風は似ていますが、表情が薄い2番よりも6番の方が面白さは上でしょう。2番には時代の流れを味わえますね。楽しい一枚です



 次回は究極の無限セリー作品である "交響曲 第3番" をインプレしようと思います。

テーマ : クラシック
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フィンランドの現代音楽家 セバスチャン・ファーゲルルンド(Sebastian Fagerlund) の 「isola」 を聴く


セバスチャン・ファーゲルルンド
(Sebastian Fagerlund, 1972/12/6 - )
フィンランドの現代音楽家でポスト・モダンの印象派などと書かれている事があり、前衛ではありません。トゥルク音楽院でヴァイオリンを習い、その後オランダやシベリウス音楽院でも作曲を学んでいます。マスタークラスでミカエル・ジャレルやマグヌス・リンドベルイにも師事していますね。
2016/17シーズンはロイヤルコンセルトヘボウの在籍作曲家を務めていた事からも、注目されているのがわかりますね。

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isola
ファーゲルルンドの出世作となった「クラリネット協奏曲」を含む、オーケストラ作品集になりますね。他にはパーカッションと弦楽奏という興味深い組合せの「パルティータ」、差別隔離諸島の島*を描いた管弦楽「イソラ」の三曲構成です。

* ファーゲルルンドの生まれ故郷 Pargas は、A.ベックリンの絵画 '死の島' で知られるハンセン氏病・精神病 隔離病院のSjälö島が近くにありました。自らの棺の木材集めをする病人の悲惨な生活と、環境だったそうです。ラフマニノフはその絵にインスパアされた同名作品を残していますし、独現代音楽家J.カリツケの "4つの死の島" は本ブログでもインプレしています。

演奏はディーマ・スロボジェニュク指揮、エーテボリ響になります。






Clarinet Concerto (2005–06年)
クラリネットは'RUSK Chamber Music Festival'の共同創設者であるクリストファー・スンドクヴィスト(Christoffer Sundqvist)です。
四楽章構成です。導入部はまるで先達を習うかの様な北欧風の澄んだオケの音色に技巧性の高いclが絡みます。その後もclは特殊奏法は使わずに技巧性の高い音色を奏でて行きます。第二楽章は、澄んだ音色とのドン・シャン的コントラストが効いています。第三楽章は幽玄な音色の緩徐をベースに進み、半ば過ぎに長く神経質なカデンツァが現れ、そのまま最終楽章のオケとの対比に入ります。新古典主義を感じるコンチェルトです。


Partita (2007–09)
  for string orchestra and percussion
当時流行った、S.グバイドゥーリナやJ.マクミランで、新神秘主義作品だとありますね。
幽玄さはフィルム・ミュージック的な印象もあります。そこに激しい打楽器が絡むのは、どうもパターンの様ですね。その後も静と動の対比を付けてきます。そのコントラストがファーゲルルンドかもしれません。幽玄さとキラキラした音色が特徴的ですね。色付けは神秘的ではありますが…


Isola (2007年)
  for symphony orchestra
英名'Islad'、'Korsholm Music Festival'の委嘱作品です。
ポリフォニー的な混沌から入りますが、すぐに反復を主体とした暗い緩徐へと移ります。その後は暗さを残しながら反復を意識した重く停滞した流れを作り、続くパートではテンポアップして緊迫感を与えながら反復・変奏の流れです。執拗な反復・変奏と重さの楽曲で、標題音楽らしいのでしょう。



暗く激しい新古典主義風で、このブログの方向ではない様です。幽玄さとドン・シャン的メリハリがあって米国でも受けそうな感じですね。

機能和声ですが北欧管弦楽の直系でもありません。もっと陰湿に沈めばA.ペッテションでしょうか。
もう少し踏み込んで聴いてみるか、さてどうしましょう?!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アンドリュー・デイヴィス指揮 All英国セットで聴く エドワード・エルガー(Edward Elgar) の「The Music Makers / The Spirit of England」


エドワード・エルガー
(Edward Elgar, 1857/6/2 - 1934/2/23)
イングランドの作曲家エルガーですが、知っているのはエニグマ変奏曲と威風堂々(第一番)くらい。このブログでインプレもチェロ協奏曲だけですね。知っている様で知らない英国人音楽家の一人です。

ブリテンもそうですが、楽風からこのブログの現代音楽家リストに入れていません。年代的には近現代音楽家なのですが。

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The Music Makers / The Spirit of England
前回インプレで派手な合唱曲を聴いたので、ふとこのアルバムがある事を思い出しました。二曲ともに独唱を含めた合唱曲です。

アンドリュー・デイヴィス(Andrew Davis)指揮、BBC Symphony Chorus and Orchestra、そして歌手陣もレーベルも全て英国セットでの演奏です。






The Music Makers, Op. 69 (1912年)
内容は個性的で自曲の引用、分かりませんがw、を多く使っています。Testは詩人オショーネシーの「Ode」、芸術家を称える詩、です。ソプラノはサラ・コノリー(Dame Sarah Connolly)になります。
メロディアスなロマン派的な序奏から入り、合唱曲は聖歌風から情熱のフォルテに、派手な流れを主流にして雰囲気は勇壮な中に暗い印象を受けますね。#6 partでsopが芸術家を緩徐に、そして合唱と合わせて大きく表現します。ここが山場ですね。全体通して大きなロマン派的合唱曲です。


The Spirit of England, Op. 80 (1915-17年)
第一次大戦中に作られた曲で「イングランドの精神」というのがエルガーらしいと思ってしまうタイトルですね。Textはバイニョンから使っていて勇壮、テノールはアンドリュー・ステープルズ(Andrew Staples)です。
導入部から明るく派手ですね。そしていきなりテノールが入ってきます。歌詞も'栄光の死'などと、それらしい流れです。勇壮ですが、明るく朗々とした印象が強く、テノールの伸びある歌声がピッタリですね。全体的には優しさと緩徐の印象もありバランスが良い合唱曲になっています。



ロマン派的な二曲で、曲の背景は異なるのですがエルガーらしく心地よさがあります。二曲共に大きな合唱曲で、プロムスで聴いたら盛り上がる気がします。個人的には一曲目の方が好みです。

ライナーノートには英文の詩があるので、見ながら聴くのをオススメします。記載は主文だけで、歌には反復があり不明様ではありますがw



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





リッカルド・ムーティ&シカゴ響 の "ショスタコーヴィチ/ミケランジェロの詩による組曲"、"シェーンベルク/コル・ニドライ" という迫力カップリングCD


Kol Nidre
Suite on Verses of Michelangelo Buonarroti
メインは『ミケランジェロの詩による組曲』ですね。実は素晴らしいシェーンベルクの『コル・ニドライ』が一曲目にこっそり置かれています。ムーティならではの見事な選曲でしょうか。







コル・ニドライ, Op. 39 (1938年)
アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874-1951)

シェーンベルク米国亡命後の晩年作品ですね。楽風的には調性回帰や新古典主義風味の時代になり、最晩年に多く手がける事になる合唱曲です。"コル・ニドライ"はユダヤ教の典礼歌(→Wikipedia)を元にしていて、合唱だけでなく語り手(Alberto Mizrahi)が入ります。

幽玄さはバルトーク風、バレエ音楽的な要素はストラヴィンスキー風、そんな印象が初めに浮かびました。そこに"グレの歌"のシュプレッヒゲザングの様な語り手が入ります。合唱が入るとオラトリオの様です。
ショスタコーヴィチのオマケで付けられたのが残念なくらい素晴らしいです。ムーティが得意そうなのも好演の理由でしょうね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ギーレンのLive録音です。これも素晴らしい!!
  なぜか初期作品の"グレの歌"を思わせます。





ミケランジェロの詩による組曲, Op. 145a (1974年)
ドミトリ・ショスタコーヴィチ (Dmitrii Shostakovich, 1906-1975)

ショスタコーヴィチが亡くなる一年前の曲です。第15番(得意とした交響曲と弦楽四重奏曲)は澄んだ印象さえ受けるわけですが、この合唱曲ではどうでしょう。バスはイルダール・アブドラザコフ(Ildar Abdrazakov)です。ちなみに作品番号についている"a"はバス/管弦楽伴奏版ですね。(オリジナルはバス/ピアノ版)

11パートの楽曲です。第一印象は重厚なバスを前面に押し出した、ショスタコーヴィチらしからぬ旋律です。独特のショスタコ節は影を潜め、低音弦の響く#1パートの印象は強烈です。
その後もバスと管弦楽が沈みながら、時に細い光を見つける様に進みます。暗さにおどろおどろしさは無く、研ぎ澄まされた流れに感じますね。今一つその個性が好みにならないショスタコーヴィチですが、晩年のこの迫力は楽しめますね。アブドラザコフのバスも、ムーティ/シカゴ響もピッタリです。



強烈な威圧感の二曲が並びました。どちらも新古典主義的ではありますが個性的です。派手なオラトリオ的なシェーンベルク、重厚リート的なショスタコーヴィチ、両者強力ですね。

ムーティも見事で、合唱・声楽曲が好きな方にはオススメの一枚になります!!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





スウェーデンの現代音楽家 ダグ・ヴィレーン(Dag Wirén) の「Symphonies 2 & 3, Concert Overtures」を聴く


ダグ・ヴィレーン
(Dag Wirén, 1905/10/15 - 1986/4/19)
スウェーデンに生まれ音楽評論の後、40歳を過ぎてから作曲家となった現代音楽家ですね。パリでL.サバネーエフに学んだ1930年代前半に、ストラヴィンスキーやプロコフィエフ、'フランス6人組'といったその時代の音楽に接しています。

作風はシリアスから映画音楽の様な作品に渡りますが、基本はエンターテイメントやリスナーに喜ばれ寄り添う"モダン"だと本人が言っている様です。従って前衛ではありません。

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交響曲 第2番/第3番・演奏会用序曲 第1番/第2番
初期の管弦楽作品集になりますね。交響曲は第5番まで、Concert Overtureはこの二曲の制作になっています。

演奏はトーマス・ダウスゴー(Thomas Dausgaard)指揮、ノールショーピング交響楽団(Norrköpings Symfoniorkester)になります。






Symphony No. 2 Op.14 (1939年)
三楽章形式です。まず感じるのは北欧的交響曲、後期ロマン派の派生的で緩やかで冷たく美しい広がり、の印象でしょうか。20世紀初頭の北欧系の音楽家に感じられる和声ですね。心地よい北欧の交響曲で、楽章間の変化は少ないです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Symphony No. 3 Op.20 (1943–44年)
第2番と同じ構成です。allegroのテンポ設定が速めになって刺激のスパイスが増え、少し新古典主義的な香りがします。adagioは緩徐楽章となって、楽章間の構成に個性を振られていますね。第2番は同じ様な構成でしたから。


Concert Overture No. 1 Op.2 (1931年)
8’弱の一番古い作品で、パリへ行く前の時代。後期ロマン派と新古典主義の折衷的作品でしょうね。


Concert Overture No. 2 Op.16 (1940年)
約5'の小曲です。新古典主義の色合いが強い上記楽曲の類型ですね。



前衛に足を踏み入れる前の北欧管弦楽と新古典主義の流れですね。どの楽章にしても山場を明確に設定しているのが特徴的ですね。調性からの逸脱はありません。

聴き易い楽風ですが、どこかで聴いた様な… と言った20世紀前半北欧の類型的かもしれません。演奏は広がりがあって素晴らしいですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





テリー・ライリー(Terry Riley) の代表作『In C』、本人演奏 と Bang On a Can で楽しみましょう


In C [1964年]
テリー・ライリー (Terry Riley, 1935/6/24 -)
前回テリー・ライリーの新譜「Sun Rings」をインプレした際に、なんと代表作を忘れていた事に気がつきました。テリー・ライリーについてはそちらをご覧ください。

ミニマルを代表する "In C" は、欧州前衛がトータル・セリエル絶頂期に出現した米現代音楽ですね。全てハ長調(in C)の、拍子指示と小節区分の無い長短53のモジュールを一定等拍のC音を元に楽器編成の制約なく演奏するものです。ライリーは即興演奏でも知られるわけですが、現代音楽技法的には"偶然性"の音楽にもなるでしょう。従って数多のパターンが存在します。

とりあえず所有の2CDをインプレです。
一枚目はレコード時代から所有するライリー本人が演奏者(リーダー&サックス)として参加した1967年の盤です。もう一枚はこのブログではお馴染みのBang On a Can(以下BOAC)による演奏です。BOACについては割愛です。

楽器編成は同じ11編成ですが、同じ楽器はその中で5つですね。(下記*印)



Terry Riley・他 (1967年)



【楽器編成:11】sax*, piano*, oboe, bassoon, trumpet, clarinet*, flute, viola, trombone, vibraphone*, marimba*

管楽器が多い事が特徴的ですね。音が華やかで厚みがあり明瞭感が強いです。等拍単音パートを多く使っている様です。サックスの色付けが個性的に聴こえます。鍵盤打楽器が煌びやかに東南アジア和声の様な印象も与えますね。

・・・・・

金属的印象で刻む様なミニマルです。単音反復を強調して、より単純化(ミニマル?)されています。音色がカラフルです。





Bang On a Can (1998年)



【楽器編成:11】bass, cello, marimba*, clarinet*, electric-guitar, vibraphone*, mandolin, piano*, pipa(琵琶), sop-sax*, violin

弦楽器が多いのが特徴的です。その分、全体的に雲の様な塊の音に聴こえますね。鍵盤打楽器の音色が少し薄く感じます。等拍単音パートよりも旋律パートが表面に出る感じです。エレクトリック・ギターの音色もBOACらしさを感じさせてくれますね。

・・・・・

ポリフォニカルなミニマルです。ベースに単音反復を敷いて、その上に旋律を載せている感じですね。旋律がカラフルです。




ミニマル陶酔感はもちろん同じです。楽器編成とパート区分
で異なるサウンド
のミニマルになっていますね。

キラキラの前者と前衛の香りの後者、どちらも個性的で楽しめます。特にラスト10'での対比は面白いですね。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Baylor Percussion Group・他による演奏です。マイルドな味付けですね。



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クロノス・クァルテットで聴く テリー・ライリー(Terry Riley) の『Sun Rings』というNASAミュージック


テリー・ライリー
(Terry Riley, 1935/6/24 -)
今更ですが、シュトックハウゼンから始まりラ・モンテ・ヤングからミニマルに、そしてインド音楽とクロノスSQとの関係と進んで来ましたね。即興とミニマルで知られますが、テープやマイクロトーナル、そして映像コラボのインスタレーションと先進性も見せる米ビッグネームとしては珍しいマルチ現代音楽家です。

米現代音楽ミニマル界ではスティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラスと並ぶ大御所ですね。ライヒがフェイズシフティングなら、ライリーはモジュールの即興(偶然性?!)という技法を元にしますね。

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Sun Rings (2001-2002年)
クロノス弦楽四重奏団 (Kronos Quartet)
10の小曲(spacescapes)からなる楽曲です。キーになっているのは"NASA Art Program"の一環で、そのボイジャー等によるスペースサウンドを使って Willie Williamによる映像も含めたインスタレーションになる様です。そこに弦楽(ライヴ)と合唱(録音)を加えて作られていますね。(クロノスのHPから様子が写真で見られます)

演奏は米のクロノスSQで、欧のアルディッティSQと対比する現代音楽を専門とするString Quartetですね。違いはミニマルも得意とする男女のクァルテットという事でしょうか。クロノスもちゃんと書いておかないといけませんねェ。






1.Sun Rings Overture - 2.Hero Danger - 3.Beebopterismo - 4.Planet Elf Sindoori - 5.Earth Whistlers - 6.Earth/Jupiter Kiss - 7.The Electron Cyclotron Frequency Parlour - 8.Prayer Central - 9.Venus Upstream - 10.One Earth, One People, One Love

まず"Overture"で耳に入るのはノイズですね。中には通信会話と思しきものや解説も入っている様です。というわけで楽曲は二曲目"Hero Danger"からです。ライリー得意のインド和声から無調まで入り、そこにノイズが紛れ込みます。はっきりと、多分ですがw、スペースノイズ的な物が入っています。それを生かした無調弦楽も盛り込まれてノイズの現代音楽と言ってもおかしくありません。ノイズは少ないですが、ラスト "One Earth, One People, One Love" は素晴らしいですね。

ただ "Earth/Jupiter Kiss" の様な、ノイズと無調系音楽がマッチしているパートは多くありません。ライリーは相変わらず調性・無調・インド和声と様々な音色を紡ぎますが…
宗教曲風の合唱パートが印象的なので、一層のことスペース・カンタータにしても良かったかも。

どのノイズがスペースサウンドなのか、はたまた特殊奏法なのか、ステージを見ないとわかりませんね。

 ★試しにYouTubeで覗いてみる?
  "Beebopterismo"のオフィシャル・ビデオで、映像を見る事ができます。




楽器の特殊奏法やコンピューターによるノイズではなく、スペースノイズのノイズ系現代音楽ですね。そこにライヒ音楽が出現する新しいと言えば新しい音楽(技法)?! その二つが混じり合ってマッチしているパートが少なく、そこが微妙な感じですね。

来年(2020)の9-10月に、クロノスSQが本作品で来日するそうです。ステージを観に行ってみましょうか。



テーマ : クラシック
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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。


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