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音楽で事実を再構築するドキュメンタリー:ジュリア・ウルフ(Julia Wolfe) の『ファイアー・イン・マイ・マウス, Fire in my mouth』


ジュリア・ウルフ
(Julia Wolfe, 1958/12/18 - )
このブログでは超オススメの米現代音楽機構"Bang on A Can"(以下BOAC)創設メンバーの一人、米女性現代音楽家ですね。(他にマイケル・ゴードン、デイヴィッド・ラングの二人。M.ゴードンはご主人です)

近年のソロ活動はアメリカの歴史的事件や伝説を綿密に調査して楽曲を構築するスタンスになっています。「Anthracite Fields」「Steel Hammer」 はそういった素晴らしい楽曲ですね。好きな現代音楽家の一人で、この二曲もオススメです!!


Fire in my mouth (2018年)
1911年にニューヨークで起きた「トライアングル・シャツウェスト工場火災」をベースにし、縫製工場の移民女性たちの死をオラトリオ形式で表現しています。もちろん詳細な調査により作られていて、"移民 - 工場 - 抗議 - 火災" という四部作になっています。タイトルは活動家のクララ・レムリッチ(Clara Lemlich)の言葉 "Ah, then I had fire in my mouth." から取っているそうです。

演奏はズヴェーデン指揮、ニューヨークフィル(委嘱作品)。合唱はザ・クロッシング(フィラデルフィア)とニューヨーク・ヤング・ピープルズ合唱団です。
本アルバムはDecca Goldレーベルからで、BOACの"cantaloupe"からではありませんね。






I. Immigration
フーガ風の三部形式といった構成でしょうか。"without passport"が印象的に続く美しいコラール風のパートから入り、中間部は変化が大きくミニマル・ベースの曲風も顔を出します。ラストの主題回帰は刺激を増していますね。


II. Factory
織機の音の様なノイズと工場の模倣音から入ります。このパートは重心の低い暗い印象の前衛的響きですね。ベースはあるのはミニマルでしょう。その流れに中盤以降で声楽が帰ってきます。対位的な二部合唱は若干の調性逸脱を感じますね。それが何かの訴求を感じさせ、緊迫感あるパートです。


III. Protest
打楽器の4/4拍子の上に女工たちの"I want you!"が反復で歌われます。等拍的な弦楽ミニマルを敷きながら曲は流れて陶酔的になります。中盤からは基本リズムはそのままに鎮まって、その後はコラール風となり激しさを増します。


IV. Fire
反復する打楽器と"Fire!"コラールの構成です。叫びでしょうね。サイレンの様な音色が中盤で現れると、劇的な音構成となり混沌を呈します。後半はミサの様な和声で構成され、時折刺激音が混じりラストはフェードアウトです。もちろんこの楽章で"then I had fire in my mouth"が入ります。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  公式trailerで、練習ステージの様子も見ることができます。ライヴで観たいですね。



事実を音楽で再構築するドキュメンタリー性の音楽ですね。それが今のジュリア・ウルフの世界だと思います。

音楽的にはミニマル・ベースに女性合唱をコラール風の重ねた多様性の米現代音楽になるでしょう。美しさから混沌まで素晴らしいですね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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