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【追悼】2019-10/22に亡くなられたマエストロ, ハンス・ツェンダー(Hans Zender)を偲んで代表作の『無字の経・他』


ハンス・ツェンダー
(Hans Zender, 1936/11/22 - 2019/10/22)
先週亡くなられた(享年82歳)ドイツ人指揮者・現代音楽家のH.ツェンダー。現代音楽を得意とする指揮者のイメージが大きく、作曲家としての印象は薄めですね。個人的には好きなB.A.ツィンマーマンの作品を振るのでお馴染みですが、マーラーをあまり聴いていないかもしれません。

作品としてはつい先日、ツェンダーによるトランスクリプション版のシューベルト「冬の旅」をインプレしたばかりでした。

R.I.P. Hans Zender


Music to Hear・Litanei・Muji No Kyo・Furin No Kyo
声楽を含む室内楽ですね。シェークスピアや日本のお経と言ったTextをモチーフとしています。
指揮はもちろんご本人ツェンダー、室内楽はクラングフォルム・ウィーンです。






Music to Hear (1998)
超静音から緩いクレシェンドで入って来るフルートx2、もちろん無調で明瞭な旋律はなく、そこにシェイクスピアのTextをシュプレッヒゲザングで入れてきます。刺激と切れ味の欧エクスペリメンタリズム前衛です。シェーンベルクの "月に憑かれたピエロ" を連想しますね。


Litanei (1976)
チェロの三重奏曲です。ピッチカートとボウイングでノイズ系の音色を醸します。暗く澱んだ気配を中心に、静音の空間を意識させますね。空間音響と言ってもいいかもしれませんね。
技巧的には反復や調性旋律、ホモフォニーと言った反セリエルの多様性も織り込まれています。


Muji No Kyo, 無字の経 (1975)
日本語のお経?をシュプレッヒゲザングにしているのですが、室内楽も処々で邦楽和声を使っています。お喋りな旋律や静的な演奏も有って表情豊かですね。後半に現れる短い即興風混沌も上手い処理です。邦楽和声を使った現代音楽はよくありますが、上手く消化していてとても面白いですね。
前曲と同じく'70年代中盤の"前衛の停滞"期作品ですが、はるかに個性的です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Furin No Kyo, 風輪の経 (1988/89)
シュプレッヒゲザングが女性になりますが、"無字の経"と似た楽曲です。室内楽をより研ぎ澄まして先鋭化していますね。強弱のコントラスト付けが明確になった分、どこかで聴いた様な感じを受けるかもしれません。邦楽和声度が下がっているからかもしれませんね。



ダルムシュタットやドナウエッシンゲンで聴き馴染みの欧州実験前衛現代音楽です。特異性はありませんが、ノイズ系がツェンダーらしさを感じさせてくれます。"無字の経" の秀逸さが光りますね。

音数が多い即興的混沌ではなく静音空間的で、20世紀後半の前衛の衰退から現在に至る欧州エクスペリメンタリズムの味わいがあるアルバムだと思います。



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自らの作品の引用とコラージュ:ニルス・フラーム(Nils Frahm) の『SPACES』は美しいBGM?!


ニルス・フラーム
(Nils Frahm, 1982/9/20 - )
前回に続きドイツ人のポスト・クラシカルの現代音楽家でピアニストのフラームですね。紹介はそちらで。

前回は本人演奏によるピアノソロ曲集でした。そして今回は、その2年後のエレクトロニクスになります。


SPACES
ピアノやアナログ時代のシンセサイザー(Roland JUNO 60)、古い電子ピアノ(Fender Rhodes)を使って、テープ録音からのループ等再構築を行なっているそうです。その元になっているのは既に発表している、前回インプレの"FELT"を含む、自らの作品を切り刻んでいる?!との事。(現代音楽でいう"引用・コラージュ"ですね。B.A.ツィンマーマンの傑作 "ユビュ王の晩餐のための音楽" が浮かびますが...)

国内流通盤ではボーナストラック”Sol”のダウンロードが出来るそうです。






SPACES (2013年)
1.An Aborted Beginning - 2.Says - 3.Said and Done - 4.Went Missing - 5.Familiar - 6.Improvisation for Coughs and a Cell Phone - 7.Hammers - 8.For・Peter・Toilet Brushes・More - 9.Over There, it's Raining - 10.Unter・Tristana・Ambre - 11.Ross's Harmonium
例によって小曲11曲の組合せで ミニマル要素も入り曲別の個性はあるのですが、曲別インプレは必要なさそうです。第一印象は前作のノイズに拘った背面の面白さは消えて、美しいアンビエント旋律をエレクトロニクス処理した作品となっている感じですね。とは言え音色の中心は明確にピアノで、電子音楽的ではありません

ローズらしい音色もあまり感じませんね。(9.などは感じますが)

心地良さは気に入っていますが 個人的にはあまり得意でない方向性、単に美しいフィルム・ミュージック方向、になっているのは少し残念です。

特殊奏法も入り構成感があるLIveの "8.For・Peter・Toilet Brushes・More" だけが一味違って楽しめました。LIveの臨場感も伝わり、ステージではこの方向性の楽しみがあるのかもしれませんね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Officialの Album Teaser になります




美しい旋律のBGMをご希望の方にはオススメですね。音色の主体はピアノの印象です。

コンサートならライヴ・リミックスに出来るかもしれませんね。使われる技法的には前衛現代音楽の流れですが音楽方向性は全く異なりますが。



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多様性のアンビエント・ピアノ:ニルス・フラーム(Nils Frahm) の『FELT』


ニルス・フラーム
(Nils Frahm, 1982/9/20 - )
ドイツ人のポスト・クラシカルの現代音楽家、ピアニストですね。元々はヒップ・ホップやエレクトロニクスをベースとした音楽で、そこからクラシック系?!のピアノや電子音楽と言った現在の方向性へ入っています。細かい曲を組み合わせて一つの作品を作るイメージがありますね。基本はアンビエントやエレクトロニカ、ECM的と言ったらわかりやすいでしょうか。
来日も果たしていますね。


FELT
本人によるピアノ・ソロ曲アルバムです。ピアノの音色と電子音楽の音響に傾倒している時期の作品になりますね。その後はフィルム・ミュージック等 多岐の共演方向になります。
ここではピアノのハンマーに手を加えているそうです。(隣人への配慮からとか?!)






FELT (2011年)
Keep - Less - Familiar - Unter -Old Thought - Snippet - Kind - Pause -More
小曲9曲の組合せですが、まず初めに気になったのはテープのヒスノイズの様な音ですね。"Keep"はそこにミニマル的サウンドが乗ってきます。ピアノなのにマリンバのマレット音の様なサウンドやシロフォンの様な音色も混じります。打たれた鍵盤の反響音がこもった音色を奏でる美しいドローンの様なサウンドもありますし、心地よいフィルム・ミュージックの様な楽曲も。いずれも美しいアンビエント。ノイズは環境音の可能性が感じられます。そうなるとフィールド・レコーディングにもなるかもしれませんね。

基本は心地よい楽曲構成ですが、バックグラウンドにノイズが全曲存在しています。また、多様な音色を繰り出すピアノには手を入れてあるそうなのでプリペアード・ピアノと言えるかもしれませんね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ラストのMoreになります。




ノイズ系のアンビエントでしょう。プリペアード・ピアノ、ノイズといった不協音を上手くアンビエントな美しい音色と旋律に重ねていて面白いですね。(それが無ければ、単に美しいだけ的かも…)

単なるアンビエントではなく、ノイズ系やフィールド・レコーディングといった多様性を生かしているのも今の時代の流れを感じますね。



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北欧の前衛音楽を楽しめる強力な一枚、グンラウグ・ソルヴァルドスドッティル(Gunnlaug Thorvaldsdottir) の『サバイバル・マシーン』


グンラウグ・ソルヴァルドスドッティル
(Gunnlaug Thorvaldsdottir, 1976/04/23 - )
レイキャビク生まれのアイスランドの声楽家・パフォーマー、現代音楽家ですね。子供の頃から特殊な発声をしていたそうで、それをベースにしてラジオやTVでパフォーマンスを披露していたそうです。
イタリアではマルチメディア劇場での活躍や、現代音楽家ジャチント・シェルシと交流のあった声楽家の平山美智子さん、当時すでに87歳、にベルカント唱法を習っていますね。(平山さんは昨年94歳で亡くなられました)


Survival Machines
彼女のファースト・アルバムですね。後にパフォーマンスとしてパリで初演されています。
従ってパフォーマーである声楽は本人で、バックに室内楽??が入りますね。






Survival Machines
I. Evolution - II. System Running - III. Error - IV. Erosion - V. Eruption - VI. Collapse - VII. Radars - VIII. Replicators

つなぎ目の無い8パートの楽曲です。"In The Beginning"から始まる呟き、スクリームの様な叫声、そして"Survival Machines"。サウンドはロックあり、インド風和声あり、ノイズあり、エレクトロニクスあり、カオスあり、引用あり、特殊奏法あり、無調旋律弦楽音あり、微分音あり、調性の美しい曲あり、なんでもありの全部ありです。

そのサウンドの中に声、声楽を越えた声音、そのバリエーションが響き渡ります。声にもエフェクトがかかっているかもしれません。まるで玉手箱を開けたみたいですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

これはライヴ・パフォーマンスで観てみたいですね!!



単なる現代音楽の枠ではありません、強烈な前衛音楽で超オススメの一枚になります。

所謂欧州前衛現代音楽とは一線を画していて、北欧系の前衛音楽は新しい世界を楽しめますね。



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佐渡裕 / トーンキュンストラー管弦楽団 の『マーラー 交響曲 第5番』は、速めでクールな感じですね


佐渡裕 Yutaka Sado
(トーンキュンストラー管弦楽団, Tonkünstler-Orchester)
2015年から佐渡さんが首席指揮者を務める、ウィーンのトーンキュンストラー管を振ったマーラー5番です。佐渡さんのマーラー5はもう一枚、個性が光る2001年のシュツットガルト放送響がありますね。




マーラー 交響曲 第5番
(2019年3月16日 ハンブルク、エルプフィルハーモニー)



第一部
葬送行進曲のテンポはやや速めに、そして切れ味を感じます。第一トリオでは流れに乗って速めに進みますが、コントラストはほどほどですね。第二トリオも速めで哀愁感はクールです。第二楽章第一主題は速いです。第二主題では適度なテンポ設定の哀愁に感じますが気持ち速めでしょうか。キレはありますが速い流れの第一部ですね。

第二部
スケルツォ主題はやや重め、レントラー主題は優しくでも気持ち速め、第三主題も殊更には鎮めませんね。展開部・再現部では"間"をとっていて安心して聴ける良い流れになっていますね。個性は薄いですが。

第三部
アダージェットはやや暖色系で標準的なテンポからスローへ、トリオもクールです。第五楽章第一・第二主題の絡みは速めのテンポで軽快に登り、コデッタも流れに沿っていますね。展開部は興奮を避けながら山場を作り、再現部は切れ味を増して山場からコーダは華やかに鳴らしました。大ブラボーですね。



個々の楽章や各主題はきっちりと仕上げて、全体としてはクールなマーラー5です。やや速めの設定がそう感じさせるのかもしれませんね。

シュツットガルト放送響と比べると個性派からクール派に、といった感じでしょうか。



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ショパンを現代曲でサンドイッチした、有島京さんのピアノ曲集『Works for Solo Piano』


Works for Solo Piano
有島京 (Miyako Arishima, 1992 - )
残念ながらピアニストの有島さんには知見がありません。選曲優先で手にしたアルバムです。
桐朋女子高等学校卒業後にポーランドに留学・活動、2015年のショパン国際ピアノコンクールに出場していらっしゃる様です。2016年からは現代音楽アンサンブル"Sort Hul Ensemble"のメンバーでもあります。
選曲を一眼見て幽玄さを表現してれそうな並びだったので、期待値はそこになりますね。







武満徹
(Toru Takemitsu, 1930-1996)
言わずと知れた武満さんですね。中間部とコーダに"dying away"と注記が会って、消え入る音を聴き込む姿勢がある曲ですね。(この曲を元にした"Rain Tree Sketch II"生涯最後の作品になります)

雨の樹素描 (Rain Tree Sketch) (1982)
 フランス印象派的な流れに無調を合わせていますが、曲の幽玄さが強く調性を感じる素晴らしさですね。それが武満さんかもしれません。pfは強音の後の消えていく静音が美しい音色ですね。ラストの余韻も。とにかく素晴らしいです。



カロル・シマノフスキ
(Karol Szymanowski, 1882-1937)
このブログではピアノ曲、もちろんそれだけではありませんが、でオススメの作曲家です。今回は様々なピアニストでお馴染みの"メトープス"から第三楽章"ナウシカー"、そしてシマノフスキ最後の作品"2つのマズルカ"が取り上げられていますね。

Métopes - "Nausicaa" Op.29 (1915)
 今まで何枚かのCDインプレしている好きな曲(の一部)です。個人的にはもう少しスロー(アゴーギクでも)での幽玄さを表にしてくれると好みかもしれません。切れ味と技巧を主体に表現していて、どちらかと言うと硬い印象ですね。この楽章だけの演奏だからかも?!

2 Mazurkas Op.62 (1934)
 シマノフスキらしい美しく幽玄な曲になりますね。CDではショパンの後に入りますが、ショパンから技巧性を引いて調性を薄くした感じも確かにしますね。今回の流れでよくわかった感じです。
pfはここでも音を明瞭にする感じです。好みはもう少しあやふやな?!タッチ・色付け、その方がシマノフスキっぽい様な気がします。



フレデリック・ショパン
(Fryderyk Chopin, 1810-1849)
ポーランドで活躍するからこそのショパンなのか、なぜ現代音楽家三人の中に入っているのか理由を知りたいですね。代表作"舟歌"を含む三曲が選ばれましたが、生涯49番(作品番号なし除く)まで作曲したマズルカ(Op.33)と、スケルツォ最後の第4番も興味深いですね。

舟歌 (Barcarolle) in F sharp major Op.60 (1846)
 美しく柔らかい主題からソフトなタッチで、この有名曲を奏でます。表現的には、よりノクターン的にも感じますね。優しさがありますね。

4 Mazurkas Op.33 (1838)
 22-25番ですね。22-24は2分前後の小曲で、マズルカらしい民族音楽和声を粒立ちのよい音色で聴かせてくれます。適度な揺さぶりも上手い感じです。
25は6'弱ですが最も表情の彫りが深い曲です。それに合わせて感情を深くつける様なアゴーギクとディナーミクを振っていますね。やや濃厚な味付けを感じます。

Scherzo No.4 in E major Op.54 (1842)
 ここでは技巧性を強くしています。ベースは感情表現の強さですが、そのバランスがシックリこない様な… 技巧中心なら淡々とした中に超絶性の方が聴きやすい気がします。



カジミェシュ・セロツキ
(Kazimierz Serocki, 1922-1981)
ポーランドのピアニストにして現代音楽家ですね。作曲はN.ブーランジェに習っています。楽風は新古典主義から十二音技法の欧州前衛にシフト、その後前衛の停滞と共にエレクトロニクスも手掛けている様です。ただ十二音技法もシェーンベルクら新ウィーン楽派の規程通りではなく反復や調性にあるものですね。
今回の"プレリュード組曲"は代表作で、十二音技法で書かれていますが上記の流れ。日本語訳ライナーノートではショパン - 新ショパン主義(英文:post-Chopin シマノフスキだそうです)からの流れと書いてありますね。さらには、この十二音技法が新シェーンベルク主義的(英文:neo-Schönbergian dodecaphony)だと、驚きの解説ですw

Suite of Preludes (1952)
 7パートの楽曲です。例によって聴いただけではわからない十二音技法ですねw 面白いのは単音点描的なセリエルを使ったパートと調性の薄さを生かした幽玄なパートを使い分けている事でしょうか。そこに何か意図があるのかもしれません。後者はシマノフスキに繋がる様な幽玄さです。そこに魅力を感じますね。そのパートのpfは緩やかなタッチで好みです。パート#4がその白眉ですね。ラスト#7は技巧曲です。




結局なぜ現代曲の中にショパンが混ざって、それもサンドイッチされる様に、いるのかはわかりませんでした。pfは表現濃厚の印象でしょうか。

個人的素人的にはメトープスを一つの楽章のみにしたりするくらいなら、シマノフスキをメインに前後を武満/セロツキでバインドした方が良かった気がします。そうなるともっと幽玄なタッチが欲しくなるかも。




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前半二楽章の美しさ、2019年10月16日 小泉和宏/都響 の『ブルックナー 交響曲 第7番』at サントリーホール


ブルックナーの7番を聴きに六本木まで。近年はコンサートでもない限り聴くことは無くなりましたが好きな曲、本日70歳の誕生日を迎えたマエストロがどう振ってくれるか楽しみですね。


20191016SuntoryHall01.jpg 20191016SuntoryHall02.jpg


発売時のインパクトも含めて、この曲の個人的マスターピースはカラヤン最後の録音(w/ VPO)です。w/ BPO盤の厳しい抑揚を削ぎ落として、クールに広がる美しさが光りますね。





ブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 WAB107 (ノヴァーク版)

■ 第一楽章 [三つの主題のソナタ形式]
第一主題はvcを美しく奏で、第二主題のobとclは流れに乗りながら、山場の後の第三主題は表情変化を大きく奏でました。
展開部・再現部は主題をコントラスト良く対比させて、コーダは大きく派手な山場を作りました。
全体としては揺さぶりや重厚さを抑えていましたね。
■ 第二楽章 [A-B-A-B'-A のロンド形式]
主要主題は暗さを軸足に取ったアダージョ、中間部はやや明るさを見せるモデラートでした。
その後の両主題回帰ではもう少し短調の主要主題を生かして欲しかった気がしました。コーダのワーグナーの「葬送音楽」ももっと鎮めた音色でも良かったのでは。
■ 第三楽章 [中間部一回の三部形式]
主要主題はスケルツォらしさよりも勇壮さ主体に、中間部はその流れからの穏やかさでした。
ブルックナーらしい怒涛の流れがありましたね。もう一歩踏み込めば陶酔的だったかも。
■ 第四楽章 [三つの主題のソナタ形式]
テンポ設定が速めでした。第一主題は弾ける響きを強調しながら第二主題は優美に、第三主題は派手派手しく、適度なコントラストと言った感じです。
展開部を細く繋げて、再現部は逆順となる三主題を明確に回帰させました。コーダはもちろん大きく広げて締めました。


前半二つの楽章の美しさを前面にしたブルックナー7でした。そこに怒涛や低重心、揺さぶりといった方向を回避しましたね。個人的には好きな方向ですが、それが好みを分たかもしれません。

コンサートならではの一体感と言った、+αがあればもっと素晴らしかったかな⁈

カーテンコールではマエストロに"happy birthday to you"と花束も出て楽しいコンサートだったと思います。


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アンナ・スミルノワのアビガイッレが光る, 2019年 チューリヒ歌劇場公演 ヴェルディ 歌劇「ナブッコ」NHKプレミアムシアター

本年6月の「Nabucco Oper Zürich 2019」旧約聖書を題材にしたヴェルディの初期オペラ「ナブッコ」ですね。

オペラ・セリアの流れをくむ派手で大向こうを唸らせる印象のナブッコですが、今回のキモ?はやっぱり演出のホモキさんでしょうねぇ。日本でもお馴染みですが、濃い色付けでしょうね。きっと…



(公式Trailerです)



演出
王位を巡るストーリーを家族の物語に展開するホモキの演出だそうです。そう言われてもわかりませんね、まぁ原作も家族と言えばそうなのですが…
ナブッコらしく歌劇団のメンバーも小さな舞台に溢れる様に出てきます。ただ動きがあるので違和感はなく惹き込まれた感じはありましたね。メインキャストも同じ様に表情と動きがある演出でした。メリハリを付けるホモキ演出らしさでしょうか。少しだけいじってあるとすれば、アビガイッレが銃で自殺になっていてその音も入っている事くらいでしょう。

舞台・衣装
舞台は暗くグリーン基調のシンプルそのもの。大きな壁があるのみです。衣装は二世紀くらい前の欧州の様相で、ネイチャーカラーで統一されています。(兵士はブルー系) 大きな壁は分断の象徴だそうです。

配役
男性陣, タイトルロールのミヒャエル・フォレは堂々たる演技とバリトンで楽しませてくれましたね。役柄ピッタリでした。
イズマエーレ役のベルネームは少し印象が薄い感じでした。
ザッカーリアのツェッペンフェルトはいつもの通りのツェッペンフェルトです。(笑) スマートなバス・バリトンと容姿でクールで役を引立てていましたね。ただ声が前に出ていない様な。

女性陣はアビガイッレ役スミルノワは、伸びの良いソプラノを聴かせました。表情・演技も舞台映えしたと思います。見た目の太さに目をつぶれば今回のベスト・キャストでしょうねw
フェナーナのシメオーニはスミルノワに比べると声・演技共に控えめの印象でしょうか。

チューリヒ歌劇場合唱団には東洋系の男女が多く見られ違和感を感じます。欧州の話ですからねぇ。

音楽
F.ルイージは来日コンサートでは割と激しさを見せたりする印象ですが、まぁオペラだとどうしても舞台を中心に観るので特筆はありませんね。


狭い舞台ながらシンプルな配置と動きのある配役の演出で楽しませてくれたのではないでしょうか。配役ではタイトルロールとアビガイッレの二人が光りました。特にアビガイッレ役のスミルノワは見事に感じましたね。

ストーリーに前衛性を盛り込んでも面白かった気がしましたね。今やストーリー自体にさえ手を加える時代ですから。そうでなければアレーナ・ディ・ヴェローナの様な屋外の大劇場に時代背景の派手な舞台が"ナブッコらしい"気がします。



<出 演>
ナブッコ(バビロニア王):ミヒャエル・フォレ [Michael Volle]
イズマエーレ(エルサレム王のおい):バンジャマン・ベルネーム [Benjamin Bernheim]
ザッカーリア(ヘブライの大祭司):ゲオルク・ツェッペンフェルト [Georg Zeppenfeld]
アビガイッレ(ナブッコが奴隷に産ませた娘):アンナ・スミルノワ [Anna Smirnova]
フェネーナ(ナブッコの娘):ヴェロニカ・シメオーニ [Veronica Simeoni]

<合 唱> チューリヒ歌劇場合唱団
<管弦楽> フィルハーモニア・チューリヒ
<指 揮> ファビオ・ルイージ [Fabio Luisi]
<美 術> ウォルフガング・グスマン [Wolfgang Gussmann]
<衣 装> ウォルフガング・グスマン
ズザーナ・メンドーザ [Susana Mendoza]
<照 明> フランク・エヴァン
<振 付> チャン・キンスン
<演 出> アンドレアス・ホモキ [Andreas Homoki]


収録:2019年6月21・23日 チューリヒ歌劇場(スイス)

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コントラバスの可能性を楽しむ現代音楽:ステファノ・スコダニッビオ(Stefano Scodanibbio) の『Alisei』


ステファノ・スコダニッビオ
(Stefano Scodanibbio, 1956/6/18 - 2012/1/8)
イタリア人のコントラバス奏者で現代音楽家、作曲はサルバトーレ・シャリーノに学んでいたので前衛ですね。Cb奏者としてはシャリーノの他にブライアン・ファーニホウやジェラール・グリゼイ、ジャチント・シェルシと言った錚々たる欧州前衛系の音楽家から楽曲が献呈されている事からも、その存在感がわかります。テリー・ライリーと言った米現代音楽家との親交も深かった様ですね。
56歳の若さで亡くなったのが惜しまれます。


Alisei
ソロ、デュオ、アンサンブル、全曲コントラバスのみの作品集です。残念ながら本人は演奏者に入っていません。
演奏の"Ludus Gravis Ensemble"はスコダニッピオとダニエーレ・ロッカート(Daniele Roccato)の二人が設立した、コントラバス・アンサンブルですね。そのD.ロッカートが今回全ての曲にフィーチャーされています。

何とも興味深いコントラバスのアルバムで、Cb.現代音楽好きとしては手を出すしかありませんね。






Alisei
  (Cb : Daniele Roccato)
特殊奏法も入ってノイズ風の中に薄い旋律が組込まれていますね。その旋律はフラジョレットで調性的です。他の弦はトレモロなので、どうやって弾いているの?!って言う感じですね。(YouTubeを見ればわかります) 途中からノイズの刺激が強くなり旋律が無調化、ラストは回帰的です。ソロ・コントラバスの楽しさいっぱいですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  CDと同じロッカートの素晴らしい演奏です



Ottetto
  (Cb : Alessandro Schillaci, Andrea Passini, Daniele Roccato, Francesco Platoni, Giacomo Piermatti, Paolo Di Gironimo, Simone Masina, Stefano Battaglia)
8人編成コントラバス・アンサンブル曲で、本アルバムのメインでしょうか。ここでも静的ノイズから入り、そこにトリル・トレモロや異音的ボウイングが絡みます。抑えの効いた流れから少しづつ音量と刺激がクレシェンドしていき、奇妙な調性旋律とモノフォニーを奏でたり、空間音響系の様な楽風になったり、昆虫の蠢きになったり、と変化を続けメタモルフォーゼ的多様性です。
30'に渡り怪獣の脳か, 宇宙空間のダークマターの波形を聴く様な楽しさ?!ですw


Due Pezzi Brillanti
  (Cb : Daniele Roccato)
ソロですね。単旋律反復と変奏をベースとしているコントラバス技巧曲です。音色と響も良く 2パート合わせて10'弱ですから、ソロ・コンサートだったら受ける事間違いなしですね。


Da Una Certa Nebbia
  (Cb : Daniele Roccato, Giacomo Piermatti)
デュオ曲です。フレジョレットと単音ボウイング&ピチカートの二挺の絡みは音数少なく呼吸の様に静的に、その後もゆったり二人のDialogueの様です。素晴らしい流れを感じますね。



前衛現代音楽のコントラバスが楽しめますね。無調や調性と言った括りかを超える今の時代の多様性前衛でしょう。もちろん無調基本ですが。

コントラバスの可能性も含めて、この楽しさを是非味わっていただきたいですね。オススメの一枚です。



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音楽で事実を再構築するドキュメンタリー:ジュリア・ウルフ(Julia Wolfe) の『ファイアー・イン・マイ・マウス, Fire in my mouth』


ジュリア・ウルフ
(Julia Wolfe, 1958/12/18 - )
このブログでは超オススメの米現代音楽機構"Bang on A Can"(以下BOAC)創設メンバーの一人、米女性現代音楽家ですね。(他にマイケル・ゴードン、デイヴィッド・ラングの二人。M.ゴードンはご主人です)

近年のソロ活動はアメリカの歴史的事件や伝説を綿密に調査して楽曲を構築するスタンスになっています。「Anthracite Fields」「Steel Hammer」 はそういった素晴らしい楽曲ですね。好きな現代音楽家の一人で、この二曲もオススメです!!


Fire in my mouth (2018年)
1911年にニューヨークで起きた「トライアングル・シャツウェスト工場火災」をベースにし、縫製工場の移民女性たちの死をオラトリオ形式で表現しています。もちろん詳細な調査により作られていて、"移民 - 工場 - 抗議 - 火災" という四部作になっています。タイトルは活動家のクララ・レムリッチ(Clara Lemlich)の言葉 "Ah, then I had fire in my mouth." から取っているそうです。

演奏はズヴェーデン指揮、ニューヨークフィル(委嘱作品)。合唱はザ・クロッシング(フィラデルフィア)とニューヨーク・ヤング・ピープルズ合唱団です。
本アルバムはDecca Goldレーベルからで、BOACの"cantaloupe"からではありませんね。






I. Immigration
フーガ風の三部形式といった構成でしょうか。"without passport"が印象的に続く美しいコラール風のパートから入り、中間部は変化が大きくミニマル・ベースの曲風も顔を出します。ラストの主題回帰は刺激を増していますね。


II. Factory
織機の音の様なノイズと工場の模倣音から入ります。このパートは重心の低い暗い印象の前衛的響きですね。ベースはあるのはミニマルでしょう。その流れに中盤以降で声楽が帰ってきます。対位的な二部合唱は若干の調性逸脱を感じますね。それが何かの訴求を感じさせ、緊迫感あるパートです。


III. Protest
打楽器の4/4拍子の上に女工たちの"I want you!"が反復で歌われます。等拍的な弦楽ミニマルを敷きながら曲は流れて陶酔的になります。中盤からは基本リズムはそのままに鎮まって、その後はコラール風となり激しさを増します。


IV. Fire
反復する打楽器と"Fire!"コラールの構成です。叫びでしょうね。サイレンの様な音色が中盤で現れると、劇的な音構成となり混沌を呈します。後半はミサの様な和声で構成され、時折刺激音が混じりラストはフェードアウトです。もちろんこの楽章で"then I had fire in my mouth"が入ります。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  公式trailerで、練習ステージの様子も見ることができます。ライヴで観たいですね。



事実を音楽で再構築するドキュメンタリー性の音楽ですね。それが今のジュリア・ウルフの世界だと思います。

音楽的にはミニマル・ベースに女性合唱をコラール風の重ねた多様性の米現代音楽になるでしょう。美しさから混沌まで素晴らしいですね。



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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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