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ペレチャツコとフローレスの素晴らしさ:ウィーン国立歌劇場公演 ドニゼッティの歌劇「ランメルモールのルチア」をNHKプレミアムシアターで観る

本年2月のウィーン歌劇場(Wiener Staatsoper)公演からガエターノ・ドニゼッティのオペラ『ランメルモールのルチア (Lucia di Lammermoor)』ですね。



(ウィーン国立歌劇場の公式Trailerです)


今回の演出は、舞台・衣装も手がけるフランス人ビッグネームのロラン・ペリー(Laurent Pelly)ですね。今回も衣装担当もしています。フランス語版もある作品ですが、今回はイタリア語版ですね。

演出
基本的に伝統的な流れを感じます。そこがペリーらしさでしょう。舞台設定に多少の現代風を感じますが、古くからのオペラファンが喜びそうですよね。個人的にはアヴァンギャルド系の方が楽しめますが。

舞台・衣装
シンプルで暗さを生かした舞台、適度な時代背景の現代風衣装、全体モノトーン構成は特徴は薄いですが今の時代に擬えた安定感ある設定でしたね。

配役
女性陣が光りました。タイトルロールのルチア(O.ペレチャツコ)、可愛さと狂気に陥る演技は魅力的でしたね。多用されるコロラトゥーラはそこそこでしたが、注目の見せ場「狂乱の場」では抑えめの狂気に悲しみを感じさせる演技と歌唱を見せてくれました。

そして今回超端役でしたがアリーサ(V.ヴェレーズ)でしたね。しっかり者のイメージで良い感じでした。MezもルチアのSopとバランスが良かったです。ヴェレーズは2018年グラインドボーン音楽祭バーバーの「ヴァネッサ」エリカ役でも良かった記憶があります。

男性陣では当然フアン・ディエゴ・フローレス、個人的には2011年のメト「オリー伯爵」が強烈に印象に残りますね。演じるエドガルド、テノールは例によって高音が朗々と響きました。今回の歌唱の中では最高でしょう。ルチアとの並びも魅せてくれました。
ルチアの兄エンリーコ(G.ペテアン)は歌唱・演技共にボチボチ、婚約者アルトゥーロ(L.モイエーク)は面白かったですがそれ以上でも以下でもありませんでしたね。

音楽
指揮者のピドには知見がないのですが、ベテランの様子。演技や歌唱を生かす、抑え気味の演奏に上手さを感じましたね。


ルチアと恋人エドガルド、この二人の舞台でしたね。友人アリーサが素晴らしかったのも忘れてはいけません。
全体的にはバランスの良さがあって飽きさせない流れで、流石ロラン・ペリーの演出でした。

それよりも妹が卑怯な兄の犠牲になると言うストーリーにいつもながら苛立ちが残ります。舞台上で惨殺されるべきは兄のエンリーコでしょう(笑)



<出 演>
 ・ルチア:オルガ・ペレチャツコ [Olga Peretyatko]
 ・エドガルド卿:フアン・ディエゴ・フローレス [Juan Diego Flórez]
 ・エンリーコ・アシュトン卿:ジョルジュ・ペテアン [George Petean]
 ・ライモンド・ビデベント:パク・ジョンミン [Jongmin Park]
 ・アルトゥーロ:ルカンヨ・モイエーク [Lukhanyo Moyake]
 ・アリーサ:ヴィルジニー・ヴェレーズ [Virginie Verrez]
 ・ノルマンノ:レオナルド・ナヴァーロ [Leonardo Navarro]

<合 唱> ウィーン国立歌劇場合唱団
<管弦楽> ウィーン国立歌劇場管弦楽団
<指 揮> エヴェリーノ・ピド [Evelino Pidò]
<演出・衣装> ロラン・ペリー [Laurent Pelly]
<舞台美術> シャンタル・トマ [Chantal Thomas]


収録:2019年2月12・15日 ウィーン国立歌劇場(オーストリア)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

古き時代の現代音楽を懐古する、ギリシャの現代音楽家 ニコス・スカルコッタス の『Cycle-Concert』


ニコス・スカルコッタス
(Nikos Skalkottas, 1904/3/21 - 1949/9/19)
45歳で早世したギリシャ人現代音楽家スカルコッタスは、26年間の作曲活動で作品を残していますね。亡くなった年代が欧州前衛がエクスペリメンタル全盛に向かうセリエルの時代ですから、シェーンベルクに習って十二音技法からスタートしています。作品数が増える30年代後半から晩年は民族音楽を取り入れてスカルコッタスらしさが味わえる様になりますね。近年はBISレーベルからCD化されていて、本ブログでもインプレ済みですね。


Cycle-Concert
このアルバムはその時代の作品で得意とした室内楽集です。以前PhillipsからDigital Classicsのシリーズとして出ていた、25年近く古い懐かしいアルバムです。
メンバーが豪華ですね。
・ブルーノ・カニーノ(Bruno Canino):ピアノ
・クラウス・トゥーネマン(Klaus Thunemann):バスーン
・ホーカン・ハーデンベルガー(Håkan Hardenberger):トランペット
・ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger):オーボエ
いずれ名だたる名手で現代音楽の信奉者ですね。(残念ながらトゥーネマンだけは知見がありません)






Quartet No.1 for Piano and Winds (1940–43年)
ピアノと吹奏楽(オーボエ, トランペット, バスーン)の四重奏曲ですね。音列配置を思わせる様なパンクチャリズム風ですが、民族音楽和声旋律が存在していますね。四つの楽器が弾む様なリズムと旋律を絡ませるホモフォニー構成です。リズミカルな民族音楽と言ったスカルコッタス楽風ですね。


Concertino for Oboe and Piano (1939年)
上記と同じ様なリズムで入るのですが、民族和声は薄くなり音の跳躍も存在します。そういう意味ではセリエルにより近いでしょう。でも中間パートで緩徐となって音は跳躍からターン音型の様な近隣音を並べ、pfとobは対位的な関係になっていますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア付きです。


Sonata Concrtante for Bassoon and Piano (1943年)
pfに和音が現れて点描印象がやや薄くなっています。それでもロングトーン旋律は皆無でアルペジオ旋律主役です。fgとpfは民族和声的旋律中心にホモフォニー(主従関係)とポリフォニー(対位)の混成的です。ここでも中間パートでは緩徐にしています。少し退屈かな?! これなら上記オーボエの方が音色の延びもあって面白い気がしますね。


Concertino for Trumpent and Piano (1940–43年)
曲構成は他の曲と似ていて、長いpfパートが点描的に続きます。tpがそれまでの木管から金管の響きになって変化を与えていますね。そんな感じですw


Quartet No.2 for Piano and Winds (1940–43年)
一曲目に続き四重奏曲第2番になり、"Tango"と"Foxtrot"といかにも的なパート・タイトルが付いています。何気にその気配は感じますが屋台骨は何も変わりません。それこそがスカルコッタスですね。



ポスト・セリエルと言えるかは別として、点描音列配置的な印象は明確です。そこに民族和声を取り込んだのがスカルコッタスですから、まさにスカルコッタス作品集でしょうね。似たり寄ったり感を含めてセリエルの行き詰まりもあるかもしれません。

1940年代という古き前衛現代音楽を懐古的に楽しむのも一興かと。



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今の時代のクラシック音楽、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ の『管弦楽集:Heliogabalus Imperator』の楽しさは、国内のコンサートで取り上げられても良いですね。


ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ
(Hans Werner Henze, 1926/7/1 - 2012/10/27)
既に現代音楽の古典となりつつある感もあるドイツの音楽家ヘンツェですね。まさに前衛現代音楽の時代に生き、ノーノ, シュトックハウゼン, ブーレーズといった前衛陣の闊歩する背景と重なりますが、その実験的前衛とは一線を画していました。
初期は政治的志向や十二音技法も取り入れますが、早くから今の時代の現代音楽の主流である多様性に舵を切っていました。そこは先見の明があったのかもしれませんね。(実際には中庸性になるでしょうが…) 現代音楽オペラを得意として、もちろんこのブログでも「バッカスの巫女」他インプレ済みです。


heliogabalus imperator, works for orchestra
交響曲か歌劇といった印象が強いヘンツェですが、ここでは管弦楽集となっています。オケ作品が多いヘンツェなので、1963年から2012年の作品が年代順に並んでいるのも変化が感じられて嬉しいところです。

演奏はオリヴァー・ナッセン(Oliver Knussen)指揮、BBC交響楽団(BBC Symphony Orchestra)になります。






Los Caprichos, Fantasia per orchestra (1963年)
全9パートの楽曲です。時代背景は前衛実験音楽最盛期ですが、既にヘンツェらしさが確立されています。印象はバレエ曲的に感じます。美しい幻想的な旋律が舞台情景を感じさせ、パートの中で強音を生かす様な変化を与えています。構成感が明確なので安心して聴ける幽玄な楽曲と思います。


Heliogabalus Imperator, Allegoria per musica (1971/72, rev. 1986年)
タイトル曲「ヘリオガバルス黄帝」で木管楽器群との協奏曲風でしょうか。木管楽器群が表面に出て来ますね。メシアンを彷彿させる処もありますね。それに合わせて金管楽器群もソロパートを奏します。おしゃべりなポリフォニーとホモフォニーの組み合わせの様な楽曲です。ヘンツェですから旋律が存在するので無調の混沌さはあっても楽しい流れです。そしてもう一つはヘンツェらしい幽玄な透明感ある弦楽です。この組み合わせを基本に構成される大編成管弦楽曲ですが、それを誇示する様な爆音パートは後半に置かれています。
今の時代のクラシック音楽としてコンサートでの演奏機会があっても不思議ではありませんね。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?


Englische Liebeslieder – Canzoni d’amore inglese
  für Violoncello und Orchester (1984/85年)
全6パートのチェロ協奏曲「イギリスの愛の歌」です。前曲のエンディングと似た入りですね。そこに無調不協和音旋律のチェロが絡んできます。静的に澱んだ流れはポリフォニー・対位的で、無調感が強くなっている気がします。パートに強音を挟んでいるので強弱のコントラストはありますね。チェロは時に技巧的に、時に繊細に奏でられます。
23'弱の楽曲で、これまたコンサート前半に置いても良い様な感じですね。


Ouverture zu einem Theater, für Orchester (2012年)
4'半の短い管弦楽曲で、米管弦楽現代音楽風ですね。ドンシャン的で鳴りの良い音と旋律を組み合わせています。もちろんヘンツェらしい幽玄さを残しながらです。



現代のクラシック音楽ですね。無調を生かした幽玄さのヘンツェの楽風が時代と共に、より自由度を増している感じが伝わりますね。

現代音楽と言っても欧州エクスペリメンタリズム(実験音楽)系ではないので、国内でももっと演奏機会が多くても良いと思います。



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2019年5月24日 ラファエル・パヤーレ指揮 / アルスター管弦楽団『マーラー 交響曲 第5番』«ネット配信»


ラファエル・パヤーレ, Rafael Payare
(アルスター管弦楽団, Ulster Orchestra)
ベネズエラの若手指揮者パヤーレ(39)は、アバドやドゥダメルの助手を務め頭角を表した今注目の一人ですね。ドゥダメルと同じベネズエラ出身で同国エル・システマで学んだのも同じです。実際にはドゥダメルの方が一つ年下ですが。
そのパヤーレが現在首席指揮者を務める英北アイルランドのアルスター管を振ったマーラー5で、BBC Radio 3放送のウェブサイトより配信です。

▶️ こちら (6月29日までの配信です)




マーラー 交響曲 第5番
(2019-5/24 at Ulster Hall)

20190528RafaelPayare-mahler5.jpg


第一部
第一楽章葬送行進曲は静的な流れ重視で重厚さは避けています。第一トリオでは適度な緊迫感を作ってコントラストを上手く付けて来ますね。演奏がややまとまりに欠ける主要主題回帰後の第二トリオの哀愁感もほどほどで 流れとしては自然ですね。第二楽章第一主題は激しさを表にして緊迫感を付け、第二主題(第一楽章第二トリオ)は演奏がやや怪しげですが哀愁にチェンジします。展開部と再現部も主題の変奏を激しさと哀しみのコントラストを上手く付けています。程よい揺さぶりで見晴らしの良い第一部になっていますね。

第二部
スケルツォ主題は明るさを感じ、アゴーギクを使っていますね。レントラー主題では緩めて優美、ここでもスパイスでアゴーギクを振っています。第三主題も上手く揺さぶりをかけて流れを作っています。展開部は速さ中心、再現部は主題の緩急を明確に色付けしていますね。コーダの揺さぶりは個性的です。
残念なのは、演奏の揃いが今ひとつの上オブリガートホルンがかなり酷い!!

第三部
第四楽章は静かな暖色系の印象で入りますが、山場から中間部に揺さぶりをかけて個性的なアダージェットです。第五楽章は序章の入りのhrが躓きます。第一主題と第二主題は疾走して、コデッタ主題も速めですが途中でテンポを変化させますね。展開部も速く、山場を盛り上げて再現部に雪崩れ込みます。コデッタは途中スロー化させつつ緊迫感を保ったまま最後の山場からコーダは派手派手しく、フィニッシュはアッチェレランドをビシッと決めます。当然の拍手大喝采!!


演奏のまとまりが今ひとつですが、流れは個性的で一聴に値するマーラー5です。指揮者の作る上手い緩急(アゴーギク)の良さ、それに着いて行くのがいっぱいいっぱいのオケ、と言った構図になっているかもしれません。#1ホルンは酷いです。(三楽章オブリガートホルン特に)

もう少し技量のあるオケでパヤーレの指揮を聴いてみたいと感じました。



残念ながらCDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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