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デンマークの現代音楽:「ゲットストリング, getString」をシレジアン弦楽四重奏団で聴く


getString
Silesian String Quartet
6人のデンマーク現代音楽家の作品集ですね。全10曲ですが、モーテン・リースの小曲5曲(電子音楽)は他の5人の弦楽四重奏曲の間奏曲(とラスト曲)として挟まれています。コンセプトは "String quartet meets electronica - the result is effortless, virtuoso and colourful music" だそうです。

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演奏はポーランドのシレジア弦楽四重奏団になります。以前ヘレナ・トゥルヴェの楽曲でも紹介していますね。








モーテン・リース
(Morten Riis, 1980- )
電子音楽を得意とするデンマークの現代音楽家で、現在はエレクトロニクスとコンピューターの音楽のエレメントをプログラミンング化し実行する為に力を注いでいるそうです。バリバリの電子音楽系ですね。

getString - fromString - useString - toString - quitString
 間奏曲的位置付け5曲ですから、各曲の後にインプレを付けますね。




イェンス・ヴォイト=ルンド
(Jens Voigt-Lund, 1971 - )
残念ながらプロフィールが不明です。

Circuitous, Mountains (1999年)
 特殊奏法構成の前衛です。ノイズ系で"グリグリ・キュルルル〜"で、まさに欧エクスペリメンタリズム標準仕様ですね。面白いのはノイズの中にグリッサンドの旋律感が乗っている処でしょう。欧前衛を聴き慣れていると安心感?がありますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



getString (2009年)
 こちらの電子音楽もノイズです。静的空間に電波ノイズの様な複数の音が静音で反復しています。1'43"。



クリスティアン・ウィンザー・クリステンセン
(Christian Winther Christensen, 1977 - )
デンマーク音楽アカデミーでベント・セアンセンらに習い、その後パリ音楽院でフレデリック・デュリユーにも師事しています。長編のアンサンブル作品や管弦楽を得意としていますね。

String Quartet (2002-03年)
 間奏曲の響きに続く様に静的なノイズ空間を引き継ぎますね。より無音空間を生かします。そしてその中に刺激を与える様に特殊奏法を交えた弦音が混じります。空間に漲らせた緊張感が良いですね



fromString (2009年)
 ノイズですが弦楽器の特殊奏法でも出せそうな音色が密集度高く重なります。音飽和空間的ですね。1'12"。



イェクスパー・ホルメン
(Jexper Holmen, 1971/2/16 - )
ロイヤル・デンマーク音楽院でイブ・ノルホルム(Ib Nørholm)に学んでいます。インスタレーション系を得意としている様ですね。

ntend/Ascend (2000/02年)
 ここでも間奏曲を前奏曲的にして繋がります。と言う事で弦楽音の密集が高いですね。それも単音の反復で同期するリズムで、同期合奏的なモノフォニーです。特殊奏法も使い、旋律(引用かもしれません)を使ったホモフォニー的に変化させたりしますが同期リズムは崩しません。パターン変化の区切れ目は、特殊奏法ノイズを入れるので明確ですね。
強音チックで、ちょっとウストヴォーリスカヤを思い出しますがこれは素晴らしいです



useString (2009年)
 弦楽トリルに旋律が被った様な電子ノイズです。1'21"。



シモン・ステーン=アナセン
(Simon Steen-Andersen, 1976/4/24 - )
本ブログ一押しの前衛現代音楽家の一人で、コペンハーゲンで習った後 デンマーク国内のオケで在籍作曲家として活躍しています。現在ベルリン在住で、2018年からはスイスのベルン芸術大学で作曲の教授職にもついています。2017年の来日に気がつかなかったのは大失敗でした。(汗)

String Quartet (1999年)
 間奏曲とは少し異なり音の重なりは多くなく、ロングトーンと特殊奏法ノイズです。空間系のサウンドでしょう。そしてピチカート・グリッサンド等々で色合い付をして変化を与えます。至る処 緊張感が空間に張り詰めている感じがいいですね。
前回紹介に続き本作品も少々古いのですが、欧州エクスペリメンタリズム王道的な弦楽四重奏曲です。



toString (2009年)
 弦楽器のロングトーンにノイズが絡む様な音。1'33"。



シモン・クリステンセン
(Simon Christensen, 1971 - )
デンマーク音楽アカデミーとパリ音楽院で習っています。デンマーク国立交響楽団や本シレジアン弦楽四重奏団からの委嘱も受けていますね。米映画作品とのコラボも多い様です。

Towards Nothingness (2008年)
 無調ですが明確な旋律を持つ四つの弦楽器のポリフォニーです。それぞれは短旋律反復で、ポスト・ミニマル的かもしれません。時折、異なる旋律が飛び込んできますが流れは陶酔的です。後半はグリグリの反復ノイズ系に変貌して終わります。独特の和声さえも感じる面白さがありますね。



quitString (2009年)
 タイトル通り最後の曲は少し長い4'38"です。静的な信号ノイズがクレシェンドし、ポツポツとしてノイズも入ってきます。静的混沌系でピークになってからディミヌエンドします。ふぅ〜ん、って言う感じでしょうか。




前衛弦楽四重奏曲とその間奏曲にノイズ系エレクトロニクスを挟んでいます。その企画はどこかにあった様な気もしますが、前衛らしい素晴らしさを生かして楽しめるアルバムに仕上がっていますね。

特に弦楽四重奏、こりゃヤバイですね。この顔ぶれが今後どんな活躍をするのか目が離せません。強力おすすめの一枚です!!





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





デンマークの現代音楽:デュオ・カポウ!(Duo KAPOW!) の「バースト, Burst」を聴く


Burst
Duo KAPOW!
本アルバムは6人のデンマーク人現代音楽家の作品集です。以前は北欧系の音楽は欧州前衛とは異なるスタンスが多かった気がしますが、今では新しい世界を展開して注目が上がっていますね。

 ▶️ 北欧現代音楽CD(作曲家別)一覧

デュオ・カポウ!は、サックス(saxophone)のクラウス・ウールセン(Claus Olesen)とパーカッションのヘンリク・クナルボリク・ラーセン(Henrik Knarborg Larsen)二人のデンマークDuoですね。ライナーノートには短い紹介しかなく、二人はデンマークの王立音楽アカデミー(Royal Academy of Music)の学生時代から新しい音楽を目指していたそうです。また、ラーセンは現在Royal Academy of Music Aarhus/Aalborgの教職についているそうです。








ニールス・マルティンセン
(Niels Marthinsen, 1963 - )
マルティンセンはデンマークのオーフス王立音楽アカデミー(Royal Academy of Music in Aarhus)でペア・ノアゴー(Per Nørgård)の下学んでいます。

Burst (1990年)
 マルティンセンは楽曲イメージを呼び起こす様なタイトルをよく付けるそうですが、ここではそれほど強烈な印象ではありません。即興的前衛ですが、ズバリ "フリー・ジャズ"です。構成もややフラットに感じますね。演奏者のスクリームもありますが、あまり先端性も感じません。




シモン・ステーン=アナセン
(Simon Steen-Andersen, 1976/4/24 - )
本ブログ一押しの前衛現代音楽家の一人で、コペンハーゲンで習った後 デンマーク国内のオケで在籍作曲家として活躍しています。現在ベルリン在住で、2018年からはスイスのベルン芸術大学で作曲の教授職にもついています。本作品は少々古いですが、現在の楽風は過激なインスタレーション系ですね。

Study for alto saxophone and percussion (1998年)
 "Can percussion and saxophone play in unison - that is, the same note?"と本人が言っている通り、ユニゾンの曲です。途中までは完全にリズム同期させてわかり易いユニゾンを狙っていますが、変拍子やディレイを使い始めるとユニゾンっぽく聴こえません。"どこがユニゾンか?!"などと耳をそばだてて聴く事になるわけですが、そこが面白い!! 一本取られましたね。




イェクスパー・ホルメン
(Jexper Holmen, 1971/2/16 - )
ロイヤル・デンマーク音楽院でイブ・ノルホルム(Ib Nørholm)に学んでいます。インスタレーション系を得意としている様ですね。

Oil, for alto saxophone and percussion (1996年)
 スローで陰鬱な旋律感のあるサックスとヴィブラフォンのDialogueです。奇妙な和声を感じ、不気味な空間を作ってきます。サックスは時に無調即興的な演奏もし、打楽器は音程のない他の楽器も交えます。独特な音空間で面白いですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




モーテン・ラデホフ
(Morten Ladehoff, 1978 - )
オーフス王立音楽アカデミーでオルガンと作曲を学んでいます。作曲はカール・ラスムセン(Karl Aage Rasmussen)他に師事し、その後シュトゥットガルトでも学んでいます。

Pyr, ami spy, ram isp yra mis (2003年)
 奇妙なタイトルですが、三つの"Pyramis"(ピラミッドのラテン語)を不自然に区切っています。7つの単語の区切りを変えるの同様に、音楽のパラメーターを変えて意味を変化させるといったコンセプトがあるそうです。
それらしい打楽器とサックスは感じますね、解説を聞いているとw 基本的には無調のサックスとティンパニー他太鼓系のデュオです。単純な即興系でも特殊奏法でもなくて、表情を変える様にリズムと音色を変化させています。ステーン=アナセン同様コンセプトを聞いているので、なるほど感はありますが…




ニルス・レンスホルト
(Niels Rønsholdt, 1978 - )
レススホルトもオーフス王立音楽アカデミーでカール・ラスムセンに学んでいますね。その後ベルリンに渡り、前衛現代音楽フェスからの委嘱を受ける様になりました。前衛のオペラやインスタレーションを得意としている様で、声楽のアルバムが出ていますね。

Drink me, make me real (2002年)
 特殊奏法です。やっぱり楽器が単純構成なのでこう言ったテクがある方が楽しめます。と言う訳で当然ながらノイズ系になります。目新しさはありませんが、"これだよねっ!"的な楽しさは味わえますね。




カスパー・ヤルナム
(Kasper Jarnum, 1971/7/14 - 2011/4/5)
ラスムッセンやノアゴーに習い、パリでも学んでいます。ジャズや特殊奏法をベースとした前衛ですね。40歳を前に夭逝しています。

Der Totenschläger und der Rattenfänger (2001年)
 "ハーメルンの笛吹き男"を元にしたタイトルです。ネズミを除去した笛吹き男が、村人に裏切られて子供達を連れて行ってしまう恐ろしい話ですよね。曲はそのストーリーに沿って笛吹き男の変化を表しているそうです。
と言われても、です。打楽器が乱打される背景にサックスが潜んだ前半、後半は逆になります。ラストの静のコーダ?は面白いです。とはいえ両楽器の基本的な音は変化が薄くフラットです。無調前衛ではありますが、それ以上でもそれ以下でもない様な。水○橋あたりの実験音楽系ライヴハウスでも聴けるかも。




面白いのはJ.ホルメンの独特の和声とN.レンスホルトの特殊奏法ですが、突出感は低めです。サックスとパーカッションという制約だからかもしれませんね。
とは言えこれだけのヴァリエーションがデンマークのセットで聴けるのは嬉しいです。

Denise Burtのジャケットも不気味で面白いですねw





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ロト/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 の「マーラー 交響曲 第3番」を聴く


マーラー 交響曲 第三番
六楽章と長いのですが、各楽章の構成はわかり易く出来ていますね。楽章間の関連*を知っておけば、歌曲二曲を中間楽章に見立て三部構成(1,2,3楽章 - 4,5楽章 - 6楽章)で聴く事でよりスッキリと楽しめます、個人的にはw

第3番はブログ右欄の様なCD聴き比べはしませんが、一番好きなマーラーの交響曲です。演奏者によってあまり大きな差がないのもポイントでしょうか。

*実際には最後に書かれた第一楽章が第一部で、以降が第二部の二部構成です。また楽章間の関連性もそれぞれありますね。


フランソワ=グザヴィエ・ロト
ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
ロトについてはストラヴィンスキー"火の鳥"のCDや来日公演で良い印象が根付いています。個人的にはレ・シエクルの様なピリオドには然程興味はなく、あくまでロトのスタンスですね。
今回のケルン・ギュルツェニヒ管は現在ロトが2015年から首席指揮者を務め、CD案内にある通りマーラー本人指揮で同曲初演(1902年, 第5番も1905年に初演)しています。

既発売の同オケとの「マーラー第5番」インプレは ➡️ こちらです。






第一楽章
序奏の8本Hrの第一主題は悠悠と。そこからスロー静に落とし、行進曲からは緊張感漲らせて第二主題に繋げます。全休符からの第三主題「目ざめるパン(牧神)」は一転して牧歌調の流れですが短く、スロー基本で揺さぶりの緊張感の序奏です。
提示部は第二主題を重厚に、第三主題を低弦で重心を下げ、第四主題で軽妙な牧歌的印象を残します。変化させた牧歌的流れを生かして山場へ登り詰めるのも見事ですね。
展開部はスロー低重心とテンポ変化の動機変奏の流れ良く、再現部は形通り主題回帰を見せてコーダはアッチェレランドを効かせて走り抜けます。

第二楽章
主要主題は表記通りのメヌエットで静的に優美に、トリオは弾けて変拍子を踊る様に見せます。通して抑えを効かせた感じで上手い構成感です。

第三楽章
主部主題は角笛「夏の歌い手交代」をそれらしく表現しつつテンポ変化を加えます。中間部のこの曲を特徴付ける一つポストホルン(コンサートではバンダです)は遠く聴こえる情景を伝えます。

第四楽章
アルトのサラ・ミンガルド(Sara Mingardo)は随分と落ち着いた気配が強くスローのせいもあってか間延び感も感じます。もう少し穏やかさが広がった方が好みです。基本スローが上手く生かせなかった感じでしょうか。

第五楽章
児童合唱の"ビム・バム"はテンポも合って清々しのですが、アルトが少々太く聴こえます。陰と陽が被って表情が見えづらい感じです。

第六楽章
弦楽の緩徐主要主題は広がりある美しさを緩やかに奏でますが抑えすぎでしょうか。第一トリオは管楽器で流れを少し取り戻します。その変奏で徐々に上げて、短い第二トリオ(第一楽章提示部コデッタ)で山場を築きます。最後の主要主題回帰からコーダはこの曲の持つ個性そのもので華飾壮大です。


揺さぶりつつも録音の良さもあってシャープさを感じました。不要な興奮を避けているのはロトらしさでしょう。「角笛三部作」らしい牧歌調も対比させていますね。

スローの落とし処がしっくり来ればより好みのマーラー3です。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





マリス・ヤンソンスの『ブルックナー 交響曲 第9番』あまりに違う2CD同年録音 | バイエルン放送響 vs コンセルトヘボウ管


ブルックナー「交響曲 第9番」
今更のブル9なので紹介は割愛して、個人的な各楽章のインプレのポイントを事前にw

第一楽章:提示部(三主題)に対して、展開部(第一主題)+再現部(第二第三主題)の構築といった流れで、第一主題第七動機がポイントなのはもちろんです。
第二楽章:特徴的なのは重厚な主題を目立たせて、中間部を走らせる事ですね。ここでも細かく組合される動機が気になります。
第三楽章:構成が判りづらく、提示部(G.P.) - その変奏部(G.P.) - コーダとして聴いています。「生との訣別」主題との対比は欲しいですね。ラストの尻切れとんぼ感は避けて欲しいです。

ちなみに原典版採用ですね。年寄りには三楽章で終了するこのパターンが普通に聴けます。


マリス・ヤンソンス
(Mariss Jansons, 1943/1/14 - )
今回は同じ2014年録音の二つのオケでのブルックナー 9ですね。
・2014年1月:バイエルン放送交響楽団 [BRSO]
・2014年3月:ロイヤル・コンセルトヘボウ [RCO]

共にビッグネーム・オケですが、同時期に首席指揮者を務めていたのが凄いです。ドイツのオケとコンセルトヘボウを振ると全く異なる印象になるのは、例えばバーンスタインのマーラー9番などでもわかりますね。(サラステ・他もマーラーではドイツオケで振ると独特の色合いになる事はインプレしています)

ちなみに演奏時間は、
     [BRSO] [RCO]
第一楽章 23:56 → 23:05
第二楽章 11:06 → 10:52
第三楽章 22:08 → 20:44
となり、コンセルトヘボウの方がかなり速くなっていますね。さて、その違いは。





バイエルン放送交響楽団
(首席指揮者:2003年 - 現在[2019])
2014年1月13-17日 rec.




第一楽章
"ブルックナー開始"から始まる第一主題動機群はクリアーでメリハリがあり見通しの良さを感じます。第7動機では重心の低さを見せ重厚そのもの。第二主題はやや速めな穏やかさでトリオの様に雰囲気を変えます。第三主題のオーボエの絡みは哀愁を奏で、山場を大きく作ります。
展開部の第一主題動機は割とさりげなく、第7動機二回目の山場はその前ポリフォニカルな流れから大きく響かせます。
再現部は第二第三主題を揺さぶりを付けて色付けし、コーダは渦を巻きラストのトゥッティ山場は陶酔的です。


第二楽章
冒頭主題は浮遊感、第一トリオはスローに落として重厚さを全面に押し出し、第二トリオの戯けたオーボエとの強い対比を作ります。中間部トリオは軽快聡明で三者対比が上手く作られて、その後の動機の組合せも見晴らしが良いですね。


第三楽章
冒頭導入部はやや強めの広がりを、そこから静的に沈ませて「生との訣別」主題を大きく華やかに奏でます。その後少々ダレる感もありますが、第二主題の弦と木管は美しい広がりを感じます。G.P.(ゲネラルパウゼ)後はそれまで(提示部?)の動機に緩急付けて流れを作っています。コーダは静的な流れに緊張感を与えてラストは上手く余韻を残します。



緩急のアゴーギクを振りながらも見晴らしの良いブルックナー9です。ヴァントに聴き慣れていると揺らぎが気になるのですが、録音の良さと相まって心地よさを感じますね。

伸し掛かる様な重々しさは回避しています。第二楽章での動機群のメリハリの良さは素晴らしいです。




ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(首席指揮者:2004年 - 2015年)
2014年3月19,21,23日 rec.




第一楽章
第一主題動機群は速めにシャープで緊張感があります。第7動機はその流れに乗った山場を作ります。その後も速めに第二主題も同じテンポでの穏やかさを構築、BRSOにあった中間部的な変化ではありませんね。第三主題のオーボエの絡みもさりげなく繋げてディナーミクを使って山場を大きく作ります。
展開部の第一主題動機はBRSO同様さらりと、第7動機も然程の強調はしていません。山場はかなり速めに強調されています。
再現部の第二第三主題は脚色は無く再現され、コーダはその流れからラストのトゥッティ山場をしっかり鳴らし切ります。


第二楽章
第一トリオは流れに乗った違和感のない重厚さを作り、第二トリオのオーボエとのさりげない対比を見せます。中間部トリオは当然軽快で三者対比は王道的安定感と言って良いでしょう。その後の動機の組合せでは緩急も入れて上手いです。


第三楽章
第一主題冒頭をまさに「トリスタンとイゾルデ」の様にスローに、その気配で鬱に変え「生との訣別」主題は流れに乗った山場感です。第二主題の弦と木管はシンプルですが、ディナーミクでの懐の広さを感じます。全休符後は全体速めの各動機群に対してディナーミク主体に色彩感と緊迫感の流れを作ります。コーダは静に澄んだ流れにして自らの交響曲の引用を使って安定感ある終結です。



速めですが統一感の強い王道的ブルックナー9です。アゴーギクの揺さぶりを避け全体の流れを重視した構成ですね。ディナーミクでの色付けの上手さを感じますね。

速めの設定をどう見るかはありますが、安心感ある堂々の演奏です。




緩急の表情を明確に付け見晴らしの良いバイエルン放送響、速めのテンポ設定で王道を行くコンセルトヘボウ。両者とも十分な聴き応えですね。

それにしても、テンポ設定、アゴーギク設定、あまりに異なる"同一指揮者/同年三ヶ月違い"の二つの演奏です。

これをオケの個性の違いでは片付けられないでしょう、少々違う感じもしますしね。武器を変えれば何でもできるゾ、っていうのがヤンソンスの答えなのでしょうか?!
(ヤンソンスが本当にやりたいブル9は? 気になりますね)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





MUSICA VIVA 18 | エリオット・カーター「チェロ協奏曲」, ウド・ツィンマーマン「ある島の歌」を聴く


MUSICA VIVA 18
MUSICA VIVAシリーズに関して再記述しておきますね。
『ムジカ・ヴィヴァ・ミュンヘン (Musica Viva München)』シリーズはCol Legnoレーベルのヴルフ・ヴァインマン(Wulf Weinmann, owner and label manager)が、バイエルン放送局主宰の同音楽祭(設立は1945年Karl Amadeus Hartmann)の音源をリリースしたものです。
基本的には欧州エクスペリメンタリズムで、ダルムシュタットやドナウエッシンゲンと同列の音楽祭でお馴染みの顔ぶれとなります。現代音楽ファンには知られたシリーズですね。
MUSICA VIVA 15からはヴァインマンが新たに設立したNEOSレーベルに引き継がれています。


本アルバムは米・欧現代音楽家のチェロ協奏曲集で、チェリストはヤン・フォーグラー(Jan Vogler)、クリスチャン・ヤルヴィ(Kristjan Järvi)指揮/バイエルン放送響(Bavarian Radio SO)の演奏です。







エリオット・カーター
(Elliott Carter, 1908/12/11 - 2012/11/5)
103歳で亡くなるまで作曲活動を活動を続けた米現代音楽家ですね。頭でっかち系なので今までインプレを書いていなかったのかもw 本作品は後期なので中期のピッチクラスセット理論を用いた無調作品よりは聴きやすいでしょうね。初期は新古典主義からの出発で、詳細はまた次の機会(ピアノ協奏曲か"What Next?"インプレ時)に。

チェロ協奏曲 (2001年)
  Cello Concerto
 新古典主義を基本に調性の薄いチェロの独奏が奏でられる流れですね。オケはパルス的な衝撃音を挟み込んできます。チェロは無調であっても旋律的で、オケもホモフォニーの様な同調性を見せます。即興ポリフォニーの様な混沌はないので、聴き易い前衛現代音楽ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  タングルウッドでのボストンSOですね。





ウド・ツィンマーマン
(Udo Zimmermann, 1943/10/6 - )
ドイツ人現代音楽家でドレスデン音楽院で作曲と指揮を習って、後に教鞭もとっています。そして何よりこのMusica Vivaの音楽監督を務めました。ドレスデンを拠点としていて、オペラ関係ににも造詣が深いですね。
オペラ「白いバラ」の本邦初演が昨年(2018)5月に東響の演奏会形式で実施されています。行けなかったのですが、また後悔する時が来るでしょうねぇ。

チェロ協奏曲「ある島の歌」(2009年)
  »Lieder von einer Insel« Concerto Per Violoncello Ed Orchestra
[1]Ich hab im Traum geweinet [2]Reflexion [Come una Cadenza] [3]Versöhnung [quatuor canones et cantus firmus] [4]Aufbruch [5]Erinnerung
 コンチェルト的ではなく歌うというよりも囁く、とライナーノートにはあります。チェロは無調であっても旋律的です。そしてここでもオケがホモフォニー的に協調性を見せて、似た構成です。ツィンマーマンの方がより機能和声に近い旋律を奏でますね。その静的で暗い音色のvcは幽玄で美しく、無調である事を忘れてしまいそうです。




二曲とも似た構成です。旋律を持つチェロに、オケはホモフォニー的に寄り添う形です。違和感は弱く現代のクラシック音楽と言っていいでしょうね。特にU.ツィンマーマンの方は調性範囲のエレジーを感じます。(そう言ったシーンの映画音楽風かも)

個人的にはカーターの作品の方が好みで、K.ヤルヴィの鳴らすオケも切れ味を感じさせてくれましたね。




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マイケル・フィニスィー の「音で辿る写真の歴史 (History of Photography in Sound)」をイアン・ペースのピアノで聴く


マイケル・フィニスィー
(Michael Finnissy, 1946/3/17 - )
フィニシーやフィニッシーとか日本語表記が曖昧ですが、イギリス人でロンドンの王立音楽大学で学んだ"新しい複雑性"の現代音楽家にしてヴィルトゥオーゾ・ピアニストですね。現代音楽の超絶技巧系ピアノ曲作曲家を代表する一人です。

楽風はポスト・セリエル。音の跳躍の大きいセリエルのヴィルトゥオーゾ初期(1960年代)から、静音パートを生かした聴きやすい方向性へと変化していますね。また過去の作曲家作品のトランスクリプションや民族音楽にも方向性を見出しています。教育にも熱心で、ニコラス・ハッジスやイアン・ペイス・他の現代音楽ヴィルトゥオーゾ・ピアニストを見出してもいますね。


音で辿る写真の歴史 (1995-2001年)
History of Photography in Sound
フィニスィーと言えば1972年から2005年にかけて作られた「ヴェルディ編曲集:全36曲 (The 36 Verdi Transcriptions)」になる訳ですが、並ぶ代表曲ですね。

CD5枚set/全11曲/5時間超のピアノ・ソロ曲集で音楽自叙伝です。5年間かけて演奏者のイアン・ペース(Ian Pace)の為に書かれ*、初演(2001年:英国王立音楽院)・初録音(本CD)されています。二人目の全曲演奏者マーク・ヌープ(Mark Knoop, クヌゥプとも)も出てきていますし、ペースの再演もある様です。

*ペースが1996年にフィニスィー50歳の誕生日を祝ってピアノ作品の全曲演奏会を行った事への返礼だった様で、当初は5books9曲だったそうです。






History of Photography in Sound

[CD1] 1. Le Démon De L'Analogie - 2. Le Réveil De L'Intraitable Réalité [CD2] 1. North American Spirituals - 2. My Parents' Generation Thought War Meant Something [CD3] 1. Alkan-Paganini - 2. Seventeen Immortal Homosexual Poets - 3. Eadweard Muybridge - Edvard Munch [CD4] 1. Kapitalisch Realisme [CD5] 1. Wachtend Op De Volgende Uitbarsting Van Repressie En Censuur - 2. Unsere Afrikareise - 3. Etched Bright With Sunlight

CD1-1は流麗な流れではありますが音の跳躍感も感じられ、セリエル的点描で静と強の組合せが明白です。opening-chapterとの事で初期のイメージを取込んでいるのでしょうか、-2では流れの良さが強まります。

CD2-1ではいきなり旋律感のある入りを見せ激しさも表現します。点描的表現は変わりませんが音の跳躍は明らかに減り、調性的コード和音が見られて、タイトル通りにアイヴズを始めとる米現代音楽への関連を見せているのかもしれません。途中で大きく休符を挟んだ演奏になるのも特徴的です。-2では旋律感と反復・変奏が強まりますね。

CD3-1はタイトルの二人を主に、シューマンやリストのフィルターも入れてあるそうです。アルカンの"Trois Grandes Etudes Op.76"を模した、左手・右手・両手の三部構成になります。イメージ以上に静的なセンスが強く、動機と変奏が一層感じられますね。-2では強fas・弱slowの対比が明確に、-3では静美な旋律が主導する新しい展開を感じます。

CD4-1は三部構成で、それぞれが間奏曲で繋がれているそうで3B(Beethoven, Bach and Busoni)のイメージとか。ブゾーニという処がフィニスィーですね。得意とする他音楽家のトランスクリプション(というか再構築)?、冒頭は明らかに"運命"を感じますが、流れはやや点描回帰かもしれません。長くて退屈?!

CD5-1は暗く静かで調性にさらに近づいた和声と音数の少なさで表情を作ります。とは言え耳馴染みの良い旋律は存在しませんし点描表現なのですが。-2も方向性は似ていますが途中で現れる民族音楽的な和声と調性旋律が印象的ですね。-3では点描反復(変奏)のキラメキと民族音楽和声を見せます。



フィニスィーのポスト・セリエル系のピアノ難曲の楽風推移が冒頭の紹介通り伝わります。
言えるのは点描的表現から抜け出さないという事で、それが"前衛の停滞"の証だと感じます。インスタレーションや多様性を中心とした現在の主流から行くと古典的な現代音楽の印象は免れませんね。

この系譜を多様性に至る現在までCD7枚組に大きくまとめたのが「Darmstadt Aural Documents Box 4・Pianists」という事になるでしょう。

英文のみで100ページ近いライナーノートにフィニスィーに関して1/3ページほどの簡易紹介しかありません。殆どがイアン・ペースによるもので、曲の詳細解説さえフィニスィー本人でないという不思議さです。(現役なのに?)



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テーマ : クラシック
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望月京(Misato Mochizuki) の「エテリック・ブループリント三部作」を聴く


望月 京
(Misato Mochizuki, 1969/1/31 - )
前回に続き望月さんです。東京芸大卒業後にフランスへ渡って学んだ欧州エクスペリメンタリズム系前衛です。前回インプレを参照くださいね。
現在は国内や執筆でも活躍中で、明治学院大学で文学部芸術学科の教授を務めていらっしゃいます。本アルバムには「明治学院大学学術振興基金」のサポートと日本語で明記され、NEOSレーベルでは稀な日本語訳が載っていますね。


Etheric Blueprint
望月さんが影響を受けている邦楽から笙の古曲二曲と、天空の青写真(エテリック・ブループリント)で室内楽作品と言っていいでしょう。タイトル曲は三部作で三曲目はアンサンブルにエレクトロニクスが入ります。

笙の古楽二曲は演奏者である宮田まゆみさん、古楽演奏のみならず現代音楽奏者として世界で活躍、による選曲だそうです。
タイトル曲の演奏は杉山洋一指揮, mdi ensembleの演奏になります。エレクトロニクスはChristophe Mazzellaですが、残念ながらライナーノートを見ても経歴や具体的な使われ方には触れられていませんね。






盤渉調調子, Banshikicho no choshi (笙雅楽:10世紀以前)
"冬・水・北・黒"を象徴する曲だそうです。ロングローンの笙曲で音階変化は少ないです。この時代から空間を意識する曲だったという事ですね。


双調調子, Sojo no choshi (笙雅楽:10世紀以前)
"春・木・東・青"を象徴する曲だそうです。曲調はほぼ変わりません。同じ曲の延長線上、というよりも同じ曲に聴こえますね。アンビエントの楽曲の様です。


エテリック・ブループリント三部作, Etheric Blueprint Trilogy
  ・4D, for 9 players (2003年)
  ・Wise Water, for 9 players (2002年)
  ・Etheric Blueprint, for 9 players and electronics (2005-06年)

1. 4Dは笙の曲の延長線にある音色とトーンで繋がっている様です。ロングトーンと電子音の様な高音、エレクトロニクスは未使用のはず、が空間にちりばめられます。弦楽器の特殊奏法も現れてノイズが加わりますが、楽器間の関係はポリフォニーですね。望月さんらしく途中で曲構成を変化させます。現れる雅楽風和声や等拍も望月さんらしいです。ご本人曰く、見えるもの(3D)と見えないもの(4D)の対比を空間に散在させる、感じです。空間音響系ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

2. Wise Waterは4Dラストと水の滴り音で繋がります。エレクトロニクスだと思いますけどねぇ。ジャジーなベース、それに各楽器が絡みます。新しい展開が見えますね。ここでも構成は変化して、テンポを速めたり、反復性を強めたりします。
"水と波動で異なる結晶ができる"ことや水の状態変化の姿を現すそうで、滴り音は構成の変化点で必ず現れます。

3. Etheric Blueprintは背景にノイズを配したパルスな刺激で始まります。ノイズはエレクトロニクスで、一部は特殊奏法かもしれません。"神の御技とそれを検知させる空気を揺らがせる電波の様な介在"を表現しているのでしょう。もちろんリズムや構成変化を挟んだお約束の手法です。
ラストはバッハ・ブラームス・B.マーリーらの細切れな引用とノイズで構成されています。



"第六感やデジャ・ヴと言った時空や文化を超えた不可思議な謎への取組、科学・数学・天文学・哲学・宗教・芸術の様な学問、を音楽で一つにした総合表現が究極の目標" (意訳)とご本人は言っておられます。その通り科学者や哲学者の執筆からのインスパイア作品も多いですね。壮大な構想で、本三部作の解説だけで辿り着けるものではないでしょう。

望月さんらしい構成変化と対比的流れで、好きな前衛現代音楽です。今の時点で目指す理想の高みを覗くのは凡人には難しいかもしれませんが、この先の作品が楽しみですね。



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