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ジャン・フランセ(Jean Françaix) の「A Huit・Divertissement・Clarinet Quintet」を聴く


ジャン・フランセ
(Jean Françaix, 1912/5/23 - 1997/9/25)
20世紀のフランス人現代音楽家で、新古典主義だそうです。無調やセリエルの様な前衛とは無縁、若くしてラヴェルから認められた通りプーランクの様な流れを汲んだ多作家です。前向きな明るい楽風はHyperionレーベルから出ている事でもわかりますね。管弦楽法に精通してるそうですが、全くこのブログ的ではありませんw


A Huit・Divertissement・Clarinet Quintet
中期の木管を取り入れた室内楽曲になりますね。以前紹介したのも木管でした。ピアノ曲を得意として最後に一曲ピアノ(pf:Susan Tomes)をフィーチャーしていますが、それ以前の問題も含んでいるのでハードルは高そうです。
演奏はThe Gaudier Ensembleになります。






A Huit (1972年), Octet for clarinet, horn, bassoon, violins, viola, cello & double bass
  I. Moderato. Allegressimo - II. Scherzo - III. Andante. Adagio - IV. Movement de valse
穏やかな主題反復変奏が続き、後半はスケルツォ主題で反復、のpart I. 他2partも同様の単純構成です。心地よいといえばそうなのですが、全てが明確な主題に変奏という構成は退屈過ぎですね。宮廷貴族的?!

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?


Divertissement (1942年), for bassoon & string quintet
  1. Vivace - 2. Lento - 3. Vivo assai - 4. Allegro
"A Huit"の30年前の曲ですが、切り替わったのがわからないほど似た展開です。この30年間は何なのでしょう??!!


Clarinet Quintet (1977年), for clarinet & string quartet
  1. Adagio: Allegro - 2. Scherzando - 3. Grave - 4. Rondo
省略


L' heure du berger (1947年), for flute, oboe, clarinet, horn & piano
  1. Les Vieux Beaux - 2. Pin-Up Girls - 3. Les Petits Nerveux
省略



古典宮廷音楽に近い印象で、全部同じサロンミュージックの様に聴こえます。単純明快な主題を変奏させて続ける構成で、それが全て軽妙さで統一されているわけですからすぐに飽きてしまいますねぇ。感性の低い駄耳では太刀打ちできませんでした。

年代的に現代音楽なので一覧(下記)にリストアップはしておきましょう。以前もアルバムの中の一曲としてインプレしてありますが、リストに入れていないのはそういった理由です。



♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
🎶 北欧現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

アンリ・デュティーユの代表作アルバム「交響曲第2番 "ル・ドゥブル" 、メタボール、他」を聴く


アンリ・デュティユー
(Henri Dutilleux, 1916/1/22 - 2013/5/22)
フランスの現代音楽家で、パリ音楽院(Conservatoire de Paris)で学んでいます。年代的にはメシアン(1908年)とブーレーズ(1925年)の間に挟まれていますが、その二人から今に至る仏前衛系の現代音楽ではありませんね。多様性の現代音楽ともひと味違います。

19世紀末生まれのフランス6人組(オネゲル、ミヨー、プーランク達)の流れを汲んでいる様な美しさや情感を感じます。調性の薄さを生かし より陰的な美しさをベースにした音楽で、機能和声の音楽を調性の枠から解放した楽風の一つですね。
作品は1940年代からになりますが、この当時吹き荒れた十二音技法やトータルセリエルとは当然ながら各別しています。(一部顔を出したりしますが)


Symphonie N° 2・Métaboles・ETC.
初期から中期の管弦楽代表作が並ぶアルバムになりますね。デュティユーというと当初PHILIPS盤で出ていたこのアルバムを思い浮かべる方が多いではないでしょうか。
演奏はセミヨン・ビシュコフ(Semyon Bychkov)指揮、パリ管弦楽団(Orchestre De Paris)になります。






Symphonie N° 2 «Le Double» (1959年)
  1. Animato, Ma Misterioso - 2. Andantino Sostenuto - 3. Allegro Fuocoso
オケの中から12人の編成にした室内楽交響曲とも言えますね。タイトル通りの二重の編成が対比になっています。
幽玄で陰影の強い新古典主義風、そう書くと物議をかもす?、な流れはミヨーや一部ジョリヴェを思わせます。微妙な調ではありますが、基本的には調性域の音楽ですね。二つの編成のポリフォニカルさ、完全なポリフォニーではありません、が特徴的です。中途半端と言われると厳しいところかもしれませんが。


Timbres, Espace, Mouvement Ou «La Nuit Étoilée» (1978年)
  Nébuleuse - Interlude. Constellations
「音色、空間、運動」サブタイトル通りゴッホの絵画"星月夜"の天空が渦巻く様を表現した楽曲です。
スローで調性の薄い旋律を対位法的に並べます。そこから生み出される浮遊感がタイトルのイメージなのでしょう。ゴッホと同じくポスト印象派ということなのかもしれません。主な流れは変奏による反復か連続か、といった感じです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ポール・トルトゥリエ指揮、BBCフィルの演奏です



Métaboles (1964年)
  1. Incantatoire - 2. Linéaire - 3. Obsessionnel - 4. Torpide - 5. Flamboyant
代表作「メタボール」、変奏曲で途中で十二音技法も採用されているそうですが聴いただけではわかりませんね。
3'前後の小曲構成で、六つの変奏曲になっている様です。曲の区切れ目は無く、デュティユー的幽玄さと出し入れで変奏され、二つの表情が入れ替わる一つの曲の様です。



旋律や調性に自由度を与えた音楽で、特徴は二つの顔です。新古典主義的な出し入れの強さ、ポスト印象派印象的な幽玄さ、それがデュティーユでしょう。

聴きやすく好きなのですが、中途半端感と折衷感が気になるのも事実です。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

シェーンベルク『グレの歌』12CD聴き比べ《ブーレーズ, 小澤征爾, インバル, ラトル, シノーポリ, シャイー, アバド, ギーレン, サロネン, ヤンソンス, ストコフスキー》おすすめ・名盤は?!


アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schoenberg, 1874/9/13 - 1951/7/13)
言わずと知れたシェーンベルク、現代音楽の黎明期前衛時代と合わせてちょっとだけおさらいです。[以下、前回紹介文引用です]

後期ロマン派の最終期とも言える時期の傑作から始まり、1910年くらいに前衛の原点"無調作品"を世に送りました。そして"無調"に新しい音楽理論を当てはめた"十二音技法"を確立したのが1920年くらいなわけですね。
ただシェーンベルクは無調ですが調性に近い楽風を保持する様になり、1934年の渡米で更に調性回帰的になっています。
音楽理論的な前衛を推し進めたのは弟子で新ウィーン楽派の一人アントン・ヴェーベルンのトータル・セリエリズムであり、その流れを主流とした「ダルムシュタット夏季現代音楽講習会」をベースにシュトックハウゼン/ノーノ/ブーレーズが時代を支配して1970年代の"前衛の衰退"へまっしぐらに突進した訳ですね。



Gurre-Lieder (1900-1911年)
グレの歌
登場人物5人 語り手1人、400人を超える大編成(オケと合唱団)で、2時間弱という壮大な歌曲の大曲ですね。基本は後期ロマン派の美しいストーリーと楽曲です。(詳細構成等は割愛しますね)

概要 (イェンス・ペーター・ヤコブセン「サボテンの花開く」より)
ヴァルデマル王は侍従の娘トーヴェと狩猟の城グレで愛を育んでいました。それを嫉妬した王妃によりトーヴェは毒殺されてしまいます。(第一部)
ヴァルデマルは悲しみと怒りで神を呪い(第二部)、天罰で死して亡霊となり亡き兵士たちを呼び起こして毎夜百鬼夜行します。死してなおトーヴェを恋い焦がれるヴァルデマル、最後はトーヴェの愛の力で救済を迎えます。(第三部)


本年三回のコンサート機会(下記)が訪れました。レコード時代から大好きで聴き込んでいるこの曲をこのブログで初めてインプレしようと思います。

 2019-3/14:カンブルラン/読響 (カンブルラン首席指揮者退任月)
 2019-4/14:大野和士/都響 (東京春祭2019最終日)
 2019-10/5,6:ノット/東響 (ミューザ川崎シンフォニーホール開館15周年記念)



インプレ結果 12CD ダイジェスト

[①ブーレーズ] 全体バランスの良さ、個人的標準原器です。
[②小澤征爾] 荒れ気味興奮の演奏がお好きな方向きです。
[③インバル] クールで広がりある個性派、おすすめ盤です。
[④ラトル] 全編濃厚、BPOファン御用達盤です。
[⑤シノーポリ] 強音の締まりの良さを感じたい方向きです。
[⑥シャイー] 爆裂疾走の快感、嫌いじゃない一枚です。
[⑦アバド] 名盤か最低か!!、"語り手"の好み一つでどちらかです。
[⑧サロネン] 淡々とした流れとクールさ。気掛かりは歌手陣です。
[⑨ギーレン] 隙のない完成度の高さ。そこが好みを分けるでしょう。
[⑩ヤンソンス] 歌い手とオケの一体感ならこれ。心和みます
[⑪ストコフスキー#1] 一度は聴きたい1932年世界初録音です。
[⑫ストコフスキー#2] 1961年のこれを聴くなら1932年盤かと。




個別インプレ


ピエール・ブーレーズ
(Pierre Boulez)
[1974年]

ブーレーズがBBC交響楽団(BBC Symphony Orchestra)首席指揮者時代(1971-1975)にイヴォンヌ・ミントンを擁して録音した作品ですね。ミントンとは"月に憑かれたピエロ"でも名演を残していますね。
LP時代の馬に乗ったヴァルデマール(国内盤)とは大きく異なるジャケットです。



ヴァルデマル王 (ジェス・トーマス, Jess Thomas)
落ち着いたテノールでシーン別の表情変化も明瞭にして上手い歌い分けです。"馬よ!"や神に対峙する厳しさもオケと一体感がいいですね。第三部の”天にある厳しき…”は演奏と共に白眉です。

トーヴェ (マリタ・ネピア, Marita Napier)
何よりもナピアの歌声から感じる若さがトーヴェにピッタリ!です。ヴァルデマルを想う心を優しさで聴かせてくれますね。強すぎず決して興奮しないネピアのトーヴェこそ好みです。

山鳩 (イヴォンヌ・ミントン, Yvonne Minton)
重心の低いMezで伸びが良く、トーヴェの死の悲しみと怒りを表現しています。溢れる感情を心に秘めての歌いは流石はY.ミントンで、この役一二を争う素晴らしさですね。

農夫 (ジークムント・ニムスゲルン, Siegmund Nimsgern)
曲の流れはやや速めで、緊迫のバス表現が強めです。"Da fährt's…"はかなり早く出ますね。

クラウス (ケネス・ボーエン, Kenneth Bowen)
テノールを生かした洒脱な道化を上手く歌います。洒落た表現は戯け過ぎずに王の姿を表現して好演ですね。

語り手 (ギュンター・ライヒ, Günter Reich)
速めの曲調に乗って厳しさを、緩く落として優しさを。シュプレッヒゲザングも適度な振りで抑揚を生かします。

合唱団
第三部"よくぞ来られた…"を始めとして激しいパートの切れ味を感じます。"見よ, 太陽!"の華やかさも当然ですね。


演奏と流れ
透明感と落ち着いた夕暮黄昏の序奏から第一部の前半、"馬よ!"で聴かせる締まった激しさ、"真夜中のモチーフ"の陰鬱。第二部は大きくアゴーギクを振り、第三部ではヴァルデマル(及び家臣)の神に対する激しさを適度な荒れで前面に出しながら、各パートで表現力を最大限活かします。
全体としては激しさと優しさをバランスよく両立させています。(これ以上激しさを前に出すならマスタリングの問題でしょうね)



的を得た配役陣の個性と演奏、トータル・バランスの高さを誇る一枚ですね。この曲の印象は、頭に擦り込まれたこの演奏があるからかもしれません。特にネピアのトーヴェはまり役で、上回るソプラノは聴いたことがありませんね。(上手い下手ではありません) もう一人は山鳩のミントンでしょう。

ブーレーズはCBS時代とDG時代で再録を多くしてしますが、この曲はしていません。再録していたらどの様になっていたのか興味は尽きませんね。




小澤征爾
(Seiji Ozawa)
[1979年]

言わずと知れた小澤さんと手兵のボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)によるグレ。ポイントは何と言ってもトーヴェ、ビッグネームのジェシー・ノーマンでしょう。J.マックラケンはこの18年前にストコフスキーにも採用されていますね。
ジャケットはレコード時代もこんな感じだったと記憶しています。



ヴァルデマル王 (ジェイムズ・マックラケン, James McCracken)
多少神経質さを感じるヴァルデマル。"馬よ!"ではオケに、"星は歓びの…"ではトーヴェに食われ気味で、負けじと?第一部後半はドラマティコorバリトン気味で力み過ぎです。後半も神と対峙の決意には欠ける様な。

トーヴェ (ジェシー・ノーマン, Jessye Norman)
J.ノーマンを使ったわけですから、堂々としたトーヴェです。"星は歓びの…"では尖っていますね。簡単に毒殺されそうにありませんw

山鳩 (タティアナ・トロヤノス, Tatiana Troyanos)
感情過多ではありませんが、かなり尖った声で表現しますね。好みは内に秘めた感情なのですが…

農夫 (ディヴィッド・アーノルド, David Arnold)
のびのびとした歌いで、"Da fährt's…"は炸裂的ですね。オケは控え目です。

クラウス (キム・スコウン, Kim Scown)
そこそこ道化ています。好みではありませんが、曲全体の濃い流れから行くとこれでマッチしている気もしますね。

語り手 (ヴェルナー・クレンペラー, Werner Klemperer)
シュプレッヒゲザング感はより低く、語り的ですね。前半の自然の激しさは超早口、中盤の"夏の夢"からは一呼吸置き歯切れの良いシュプレッヒゲザングとなっていますね。オケは控え目です。

合唱団
第三部"よくぞ来られた…"では結構暴れて陰影強く、ラストは派手ですね。


演奏と流れ
序奏は少しリズムを強調した感じで少し厚め、"馬よ!"も唐突的な激しさ、概して第一部は弱音パート薄めやや速めフラットな流れです。第二部は切れ味良く、第三部は強音パートの力強さに荒れが味方している感じですね。最後の序奏は半端感が猛烈ですが、ラスト"見よ, 太陽!"は劇的です。



本来好みとはミスマッチの全体的には速め厚め力感のグレです。流れもアゴーギクよりディナーミク強調型。厚めの第一部から 荒れ気味の速め強音パートの第三部への流れとなります。
ヴァルデマルとトーヴェも力感重視、筋肉質なトーヴェはあまり好きになれませんが。というかJ.ノーマンがトーヴェに合っているとは思いづらいです。最後の"語り手"の表現は濃いですが悪くありません。

何とか言いながら、コンサート受けしそうな荒れたパワープレイを聴きたくてかける機会が多かったのも事実ですねw




エリアフ・インバル
(Eliahu Inbal)
[1990年]

インバルが首席指揮者(1974-1990, 現名誉指揮者)を務めたフランクフルト放送交響楽団*(Radio-Sinfonie-Orchester Frankfurt)を振った演奏です。
*一時期hr交響楽団(hr-Sinfonieorchester)と名乗っていましたが、再びフランクフルト放送響(Frankfurt Radio Symphony)にしましたね。



ヴァルデマル王 (ポール・フレイ, Poul Frey)
暗く沈んだ美しい曲の流れに合ったテノール、"馬よ!"も激しさとキレはありますが興奮は避けています。第二部以降も激しさを活かしながらの見晴らしの良さは見事です。

トーヴェ (エリザベート・コネル, Elizabeth Connell)
こちらも曲の印象に合った落ち着いた印象のSop、伸びやかながらも繊細さを際立たせた美しさです。

山鳩 (ヤルド・ヴァン・ネス, Jard van Nes)
今にも溢れそうになるトーヴェの死の悲しみや苦悩を押さえつつ、情感深く歌います。その分ラストの溢れる感情は素晴らしいですね。

農夫 (ウォルトン・グレンロース, Walton Grönroos)
緊迫感ある歌いは堂々とも聞こえますね。"Da fährt's…"は"Holla!"と同期します。

クラウス (フォルカー・フォーゲル, Volker Vogel)
重さや道化感をうまく消化してクールなクラウスで、全体の流れにとてもマッチしています。

語り手 (ハンス・フランツェン, Hans Franzen)
小刻みな演奏と落ち着いたシュプレッヒゲザング、"夏の夢"からは優美な演奏にゆったりと。曲に合っていますね。

合唱団
第三部"よくぞ来られた…"は炸裂するオケに対してコントロールの聴いた大合唱で応えます。"時を告げようと…"ではミサのごとく、ラスト"見よ, 太陽!"は雄大に飾られます。


演奏と流れ
第一部の序奏は静的澄んだ流麗さ、興奮を避けた流れで抑揚を抑えて美しさを奏でます。"馬よ!"も演奏は強音メリハリはありますが客観的で、その後も美しさの第一部です。第二部もスタンスは変わらず "山場"ヴァルデマルの絶望"も素晴らしいです。第三部も特徴である百鬼夜行やヴァルデマルの神への怒りも怒涛の激しさの中にコントロールの効いた見晴らしの良さを感じますね。
基本スローに計算されたアゴーギクとディナーミクのコントロールが見事に決まっています。



見事な統一感、個性際立つ澄んだクールな流れのグレです。強音での激しく締まった演奏も見事に鳴りよく響かせながら、不要な興奮を避けて透明感のある美しい心地良さが素晴らしいです。
歌手軍は歌唱力と全員の個性が曲の流れにぴったりマッチ、トータル感を崩しません。好み一押しのグレと言っていいでしょう。
(ダイナミックレンジの広い録音で、聴く環境を要求するかもしれません)

インバルは『青ひげ公の城』でも同様の素晴らしい録音を残していますね。マーラーは今ひとつ合わないのですが…




サイモン・ラトル
(Simon Rattle)
[2001年]

2002年から昨年(2018年)6月まで首席指揮者・音楽監督を務めたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)との就任前年の録音ですね。BPO色が強そうに感じますが、クドさからいえば似た傾向にある両者ですからねぇ。(あまり聴かない一枚ですw)
ヴァルデマルを得意とするT.モーザーと、山鳩に大物オッターを迎えています。



ヴァルデマル王 (トーマス・モーザー, Thomas Moser)
トーヴェを思うパートは柔らかく甘美、"馬よ!"も暴れません。"時は夜半"での艶やかさは見事です。神との対峙でも過剰な暴力感は避けていますね。

トーヴェ (カリタ・マッティラ, Karita Mattila)
控え目ながら伸びを効かせるsop、濃厚さの流れの中でトーヴェらしさが光ります

山鳩 (アンネ・ゾフィー・フォン・オッター, Anne Sofie von Otter)
濃厚で感情剥き出しの表現です。個人的好みは、そこを心にグッと抑えて悲しみと無念を表現して欲しい処ですが。この先にあるとすれば狂気でしょう。

農夫 (トーマス・クヴァストホフ, Thomas Quasthoff)
精悍ささえ感じるバス・バリトンですね。"Da fährt's…"はかなり遅れて出てきますね。

クラウス (フィリップ・ラングリッジ, Philip Langridge)
演奏ともに表情濃いですが極端に道化てはいませんからいいですね。オケはくどいですがw

語り手 (→ "農夫"と二役)
明瞭な表現のシュプレッヒゲザングです。二役なのでここでも精悍さを感じますが、少し濃厚表現ですね。

合唱団
"よくぞ来られた…"ではオケ共々派手に大きく歌い上げ、"時を告げようと…"では抑え気味に、一息おいたラストはもちろん超ド派手です。


演奏と流れ
第一部序奏は明瞭な明るさを奏でます。本来夜を迎える黄昏で、二人の夜と死で完結する絶対の愛を前にする序奏なのですが。愛のパートは蕩ける様な甘美さ、"馬よ!"も適度な押しながら派手、艶やかな第一部です。山鳩は激唱です。第二部・第三部もパート毎に濃厚で、クラウスのパートなどは演奏との掛け合いのごとくです。オケが主役だと主張していますね。



至る所 濃厚な表現で溢れる満艦飾のグレですね。アゴーギクとディナーミクも細かい揺さぶりではなく、甘美さから激情まで濃厚な表情着けに厭わず振られています。歌唱陣ではオッターの感情をさらけ出すMezがその代表でしょう。オッター以外はバランス良いのですが、オケが前にしゃしゃり出ます。少々聴き疲れですね。

先入観もあってBPO色全開に感じます。ラトル本人も言っていますが基本弦楽四重奏ベースの曲のはずなのにクール・洒脱さは一片も見当たりません。単に好みの問題ですが。(笑)




ジュゼッペ・シノーポリ
(Giuseppe Sinopoli)
[1995年]

学研肌指揮者シノーポリが首席指揮者(1992-2001)を務めた時代のシュターツカペレ・ドレスデン(Staatskapelle Dresden)とのグレ。ヴァルデマル王を上記ラトル/BPOと同じT.モーザー(2005年にサイトウ・キネンフェス松本でも同役を演じています)、トーヴェを得意とするD.ヴォイト(フォイクト?)の起用と配役を固めています。



ヴァルデマル王 (トーマス・モーザー, Thomas Moser)
T.モーザーらしいマイルドなテノール、"馬よ!"でも力感を上手くコントロール、神に向かっても苦悩の濃さは出しますが怒りの熱唱ではありません。いいですね。

トーヴェ (デボラ・ヴォイト, Deborh Voigt)
朗々たる歌声に若さが弱く熟女的印象が強いです。"星は歓びの…"でははしゃぎ気味。最後は絶唱で、ちょっとトーヴェのイメージとは違うかなぁ。

山鳩 (ジェニファー・ラーモア, Jennifer Larmore)
細めのMezで神経質に感じますね。感情表現も強めだからでしょう。

農夫 (ベルント・ヴァイクル, Bernd Weikl)
テノールの伸びを生かして表情豊かに歌います。演奏も力感がありますね。

クラウス (ケネス・リーゲル, Kenneth Riegel)
道化色の濃いテノールになりますね。本来好みではないのですが、全体の流れが濃くないのであまり気にはなりません。

語り手 (クラウス・マリア・ブランダウアー, Klaus Maria Brandauer)
ちょっとクラウスにも似た道化的な表情を見せます、特に前半の速いパートですね。"夏の夢"からはトーンを落としてシュプレッヒゲザングします。

合唱団
"よくぞ来られた…"ではオケと張り合う様な勢いです。"時を告げようと…"では大きく広げてから静めて、"見よ, 太陽!"は盛大に。


演奏と流れ
第一部、序奏は少々ギクシャクぎこちなく、二人の愛のシーンは穏やか、"馬よ!"では心地よいメリハリ感、上手くツボは押さえていますね。第二部は激しさを前面に、第三部はコントラストが明白で強音のパワー炸裂が印象的です。それが全体として締まりの良さを感じるのでしょう。



強音パートを中心に押さえ処を心得た上手さを感じます。適度に引いては押す様な流れで聴きやすいでしょう。歌手陣では、ヴァルデマルのT.モーザーのクールな良さが流れに合っていますね。女性陣は強いですw

肩肘張らない流れで、強音パートをドッドーンと決めるので気持ちがいいですね。




リッカルド・シャイー
(Riccardo Chailly)
[1985年]

シャイーが首席指揮者(1982-1989)を務めた時代のベルリン・ドイツ交響楽団(Deutsches Symphonie Orchester Berlin)との録音で、ヘルデンテノールの雄S.イェルザレムを起用ですね。イェルザレムは次のアバドにも起用されています。



ヴァルデマル王 (ジークフリート・イェルザレム, Siegfried Jerusalem)
流石はヘルデンテノール、トーヴェとの愛の交歓でも感情表現を表に出し、神との対峙では力漲りますが、クドさは感じません。演奏も力感溢れるので良いバランスでしょう。

トーヴェ (スーザン・ダン, Susan Dunn)
優しさを歌う可憐な歌声がトーヴェらしさを感じさてくれます。トーヴェ最後の"あなたは私に…"はオケが濃厚過ぎで、力が入っちゃてますね。

山鳩 (ブリギッテ・ファスベンダー, Brigitte Fassbaender)
感情が溢れてしまう様な表現です。速め濃いめの歌唱ですが、オケが強いのでこのくらいでいいのかもしれません。

農夫 (ヘルマン・ベヒト, Hermann Becht)
速めの流れで切羽詰まった気配が伝わるうまさですね。"Da fährt's…"は派手な演奏に埋もれています。

クラウス (ピーター・ハーグ, Peter Haage)
道化感はほどほどですが、濃厚な歌いです。とにかく速いのでこれでないと着いていけないかも。

語り手 (ハンス・ホッター, Hans Hotter)
速くて早口になってます。"夏の夢"からスローにはなって表現力を上げますね。オケとのコラボも生かしています。

合唱団
"よくぞ来られた…"は爆唱炸裂から暗く落とすコントラスト、"見よ, 太陽!"はまさに大団円ですね。


演奏と流れ
入りの序奏を色濃く、二人のシーンを優美にサポートして、"馬よ!"では激しさを、流れにメリハリが強い第一部です。山鳩ではオケMez共に押し出し強めです。第二部・第三部もメリハリ重視はそのまま引き継がれます。
出し入れの強い演奏で速さ基調、落とす時はピシッとスローなので胃もたれ感は少ないでしょう。ディナーミクも同様です。



ドン・シャン的濃厚・派手な演奏で速くてパワープレイ主軸。とにかく全体速めで飛ばしアゴーギクの振り方が明確、スローかファストか、です。ディナーミクはもちろん強音軸足です。歌手陣も表現力が強めですが、この演奏に"ごする"には必要でしょう。

好きな一枚で、一度は聴きたいイケイケ爆裂方向の個性的グレです。処々スローで休みますが、とにかく爆走大好きですw




クラウディオ・アバド
(Claudio Abbado)
[1992年]

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(Wiener Philharmoniker)は首席指揮者を置いていませんが、その母体であるウィーン歌劇場(ウィーン国立歌劇場管弦楽団)には音楽監督がいます。アバドが音楽監督(1986-1991)を退任した翌年録音です。
知る人ぞ知る"問題盤"になります。それは"語り手"に映画女優B.スコヴァの起用。女優起用だけなら新目線ですが、そのシュプレッヒゲザングたるや驚き以外にありません。(スコヴァはアバド/BPOとの演奏会、次に紹介する2009年サロネン盤にも起用されています)



ヴァルデマル王 (ジークフリート・イェルザレム, Siegfried Jerusalem)
シャイー盤と比べてオケが落ち着いた分イェルザレムのしっとりとした表現は美しさを増して、"馬よ!"でも力感より伸びの良さを感じます。神への怒りもシャープな歌いで聴かせてくれます。

トーヴェ (シャロン・スウィート, Sharon Sweet)
穏やかながら伸びよく抑えの効いたsop、若々しさを感じられるトーヴェらしさですね。(41歳のSweetですが)

山鳩 (マルヤーナ・リポヴシェク, Marjana Lipovšek)
悲しみと無念を心に秘めながらの深い情感の歌いは、スローで沈んだオケとぴったり来ていますね。

農夫 (ハルトムート・ヴェルカー, Hartmut Welker)
堂々と聴こえる農夫で、"Da fährt's…"はオケと共に炸裂です。キリストへの祈りからは落ち着きが伝わりますね。

クラウス (フィリップ・ラングリッジ, Philip Langridge)
程よい道化色がオケとマッチして、曲の中でスケルツォ的な印象を与えてくれますね。

語り手 (バルバラ・スコヴァ, Barbara Sukowa)
いきなりの軽いノリで素っ頓狂な声をあげるのでビックリ!! えっ, どうしたの, なんで??!!的な印象は今聴いても拭えません。表情豊かというわけでもなく、スローになる"夏の夢"からもアニメのアテレコみたいな。せっかくの女性シュプレッヒゲザングなら、「月にピエロ」的だったら面白かったかもしれません。

合唱団
"よくぞ来られた…"はオケと共にまさに百鬼夜行です。"時を告げようと…"では静かに沈み、"見よ, 太陽!"のラスト1分はクレッシェンドを効かせて大きく納めます。


演奏と流れ
クセのない落ち着いた序奏、二人の愛のシーンは穏やかな美しさを、"馬よ!"では締まり良く、山鳩に繋げる間奏は大きな揺らぎで見事に、大きな構えを感じる第一部です。第二部の"ヴァルデマルの絶望"モチーフも深く大きく、第三部もスローの落ち着きを元に激しさを切れ味よく大音響で鳴らします。



緩やか懐広いパートと、締まりある迫力の強音パートが両立しています。構えの大きな素晴らしい流れですが、唯一最大の違和感 "語り手" が全てを崩してしまいました。
歌手陣とオケの流れとのマッチもとても素晴らしく、素っ頓狂な"語り手"以外ですが、聴き応え十分ですね。何とも残念至極の一枚です。

"語り手"に違和感が無い方には最高の一枚と言っていいと思います。




エサ=ペッカ・サロネン
(Esa-Pekka Salonen)
[2009年]

サロネンが2008年から首席指揮者を務めるフィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)を振ったグレですね。"語り手"が、アバド盤で迷演のバルバラ・スコヴァというハードルがあります。ヴァルデマルは同年録音のヤンソンス盤でも好演のスティー・アナセンなのですが。農夫は次のギーレン盤でも同役のラルフ・ルーカスです。



ヴァルデマル王 (スティー・アナセン・Stig Andersen)
優しさを感じさせるリリコ的なテノールはこの役に合っていますね。トーヴェの優しさを慕うのに汗臭い強面の王様は似合いません。好みのヴァルデマル歌いです。

トーヴェ (ソイレ・イソコスキ・Soile Isokoski)
清楚ながらしっかりのイメージがsopのシャープさに感じられます。もう少し優しさが勝ってもよかった気もします。

山鳩 (モニカ・グロープ・Monica Groop)
朗々と歌います。感情を込めてというよりも歌唱力で勝負的な山鳩でしょうね。

農夫 (ラルフ・ルーカス・Ralf Lukas)
切迫した気配の前半、"Da fährt's…"は2分割で叫びます。後半のキリストへの祈りで落ち着きを見せ変化をつけるうまさを感じます。

クラウス (アンドレアス・コンラッド・Andreas Conrad)
道化感はとても低く、でのびのび朗々と歌います。王の姿を客観的に表現というよりも誰かに訴えているかの様です。

語り手 (バルバラ・スコヴァ・Barbara Sukowa)
アバドとの録音から17年、出だしは僅に落ち着いた様にも感じたのですが結局素っ頓狂。受け入れるのは厳しいシュプレッヒゲザングでした。アバド盤よりは良い気もしますが…

合唱団
"よくぞ来られた…"と"時を告げようと…"は迫力よりも広がりですね。


演奏と流れ
淡々としながらクールな序奏と愛の交歓、"馬よ!"でも過度の緊張を避け、クセのない第一部です。第二部も抑えを効かせたバランスです。第三部でも演奏は興奮を抑えて流れを作ります。



ヴァルデマル(S.アナセン)とサロネンのクールさがマッチした心地良さですね。クセがなく淡々とした中に緩やかで大きなアゴーギクも効果的です。
ただ全体として残念な結果。歌手陣の山鳩とクラウスは好みではありませんし、"語り手"にB.スコヴァがいる時点でかなり厳しくなってしまいます。

アナセンとサロネン以外には聴くポイントが弱い印象です。




ミヒャエル・ギーレン
(Michael Gielen)
[2006年]

ギーレンが首席指揮者(1986-1999)を務めたこともあるバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団(SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg)を振ったグレですね。



ヴァルデマル王 (ロバート・ディーン・スミス・Robert Dean Smith)
若々しいテノールで"馬よ!"も伸びやかに、第二・第三部でも神への呪いを切れ味で歌います。

トーヴェ (メラニー・ディーナー・Melanie Diener)
綺麗に澄んだsopはトーヴェ向きですね。"星は歓びの…"でも感情コントロールが上手く、"あなたは…"ではの伸びは素晴らしいです。

山鳩 (イヴォンヌ・ナエフ・Yvonne Naef)
トーヴェの死の悲しみや憤りを表現力高く歌ってくれますね。Mezの声もぴったり来ています。

農夫 (ラルフ・ルーカス・Ralf Lukas)
切迫の表情を見せるバス、"Da fährt's…"は分割的スクリームです。キリストへの祈りからは落ち着きを見せるうまさですね。

クラウス (ゲアハルト・ジーゲル・Gerhard Siegel)
朗々と歌います。道化感は低めで声は伸びますが淡々と状況を語る感じは悪くありませんね。後半は熱唱も。

語り手 (アンドレアス・シュミット・Andreas Schmidt)
シュプレッヒゲザング感は弱めで、語りなのか歌なのかの微妙さです。その分流れには乗っていますね。

合唱団
"よくぞ来られた…"は切れ味よく、ラストもコントロールの効いた広がりです。


演奏と流れ
各楽器を明確にした序奏、"馬よ!"での激しさもコントロールよく、全体適度な揺さぶり(アゴーギク)で二人のパートを並べる上手さを感じる第一部です。第二部はスロー基本で興奮より重厚です。強音パートを中心に付けられた微妙な揺さぶりはギーレンらしさでしょう。そこも含めたギーレンらしいメリハリの第三部です。全体としては納まりが良すぎる感じですが。



シェーンベルクを得意としたギーレン、見事な完成度ですね。歌手陣のバランスも良く、全体の流れはもちろん熱狂パートでさえギーレンの手の内にある素晴らしさ。情熱の破綻も一切無いまとまりの良さです。ただそれが何回も聴きたいと思わせてくれない理由かもしれません

個人的には、溢れる情熱の様な何かスパイスが欲しい気がします。




マリス・ヤンソンス
(Mariss Jansons)
[2009年] DVD

現在ヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)の60周年記念演奏会の映像付き収録ですね。トーヴェはシノーポリ盤でも演じたD.ヴォイトです。S.アナセンは同年サロネン盤、ギュンター・ノイホルト盤(2012年/未所有)でもヴァルデマルを演じています。農夫・語り手(二役)M.フォレは2017年バイロイト音楽祭「ニュルンベルクのマイスタージンガー」でザックス役を好演したのが記憶にありますね。


(CD未発でDVDになります)


ヴァルデマル王 (スティー・アナセン, Stig Andersen)
優しさのある入り、"馬よ!"も情熱は強いですが伸びやかに、"時は夜半"はこのストーリー全体を表情豊かに歌い上げます。神への怒りパートも力感を伝えますが、過激さは回避します。感情を込めながらも聴かせる素晴らしさですね。

トーヴェ (デボラ・ヴォイト, Deborh Voigt)
シノーポリ盤から15年経っていますが優しさが伝わります。とは言え、尖った感じは残ってしまいますね。

山鳩 (藤村実穂子, Mihoko Fujimura)
抑えの効いた、その中に悲しみと無念を表現するMez。ここで流れが一変するほどの切れ味見事な山鳩です。

農夫 (ミヒャエル・フォレ, Michael Volle)
伸びやかなバス・バリトンで聴かせてくれます。後半のキリストへの祈りも朗々と歌いますね。

クラウス (ヘルヴィヒ・ペコラーロ, Herwig Pecoraro)
弾むような歌い方とテノールが適度な道化感を伝えます。ここでもオケとのバランスの良さを感じますね。

語り手 (→ 農夫と二役)
言葉の流れの良いシュプレッヒゲザングです。"夏の夢"からも表情豊かですね。

合唱団
"よくぞ来られた…"をはじめ少々抑え気味の印象ですが、もちろんラストは盛大です。


演奏と流れ
序奏から二人の愛シーンは優美に、"馬よ!"も激しさはヤンソンスのコントロール下、緩やかな大きな流れで歌手陣を生かす第一部です。第二部も大きく構えて、第三部も激しさの中に歌い手とのうまいマッチングを感じます。しゃしゃり出るオケではありません。



優美で大きな流れ、激しさには走りません。何よりも歌手陣を生かすオケが光ります。オケと歌い手のマッチングが素晴らしい一枚ですね。歌手陣はヴァルデマル王のアナセン、山鳩の藤村さん、この二人素晴らしさは所有盤の中でも一二を争います。第三部ヴァルデマルの歌う"トーヴェの声で森は囁き"では、思わずこちらもグッと来てしまいます。

アプローズではスタンディングオベーション、上記二人に拍手が大きく、客席にはクリスティアン・ティーレマンとケント・ナガノの顔も見えました。

本年(2019年)4月春祭の大野/都響、10月ミューザのノット/東響、二つの『グレの歌』で藤村実穂子さんが山鳩を演じるので楽しみですね。




レオポルド・ストコフスキー [#1]
(Leopold Stokowski)
[1932年]

ストコフスキーが世界初録音を行なった盤で、米国初演になりますね。オケはストコフスキーが首席指揮者(1912-1938)を務めた時代のフィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)です。532人を擁した演奏は、この時代の録音とは思えない良好さで驚きですね。冒頭に本人の解説付き(5'のわかり易い英語です/所有盤)です。


(左:ドビュッシーやラヴェル他4CDset | 右:グレ単独D/L版ですね)


ヴァルデマル王 (ポール・アルトハウス, Paul Althouse)
低重心で押し出しの強い表現です。"馬よ!"は速く急げという表現になっていますね。神に対しても威風堂々とした歌いです。感情が溢れますね。

トーヴェ (ジャネット・ヴリーランド, Jeanette Vreeland)
濃厚に歌いながらテンポ変化で表情表現をつけていますね。厚めの歌いです。

山鳩 (ローズ・バンプトン, Rose Bampton)
表現力が強く、オケのテンポ設定もかなり揺さぶっています。色濃いMezです。

農夫 (アブラーシャ・ロボフスキー, Abrasha Robofsky)
初めて聴くスローさで、歌いはフラット気味です。怯えた感じを出しているのでしょうか。音程も不安気味でなんだか変です。

クラウス (ロバート・ベッツ, Robert Bette)
道化感薄めに伸び伸びとしたテノールで、途中からテンポの揺さぶりが入り表現も濃厚になります。

語り手 (ベンジャミン・デ・ローチェ, Benjamin de Loache)
あまり揺さぶりません。シュプレッヒゲザングというよりも語りに近いでしょうか。抑揚はつけました、といった風です。

合唱団
"よくぞ来られた…"は爆速の激しさですね。ラスト"見よ, 太陽!"は、この時代の録音によく納まったと思える大熱演です。


演奏と流れ
序奏は少し速めで緩やかな揺らぎです。二人の愛のシーンはスローに振って、"馬よ!"と"星は歓びの…"では明確なテンポアップと、パート毎に大きな振り分けの第一部です。第二部は前半穏やかで、後半ヴァルデマルから速く展開します。第三部もスローとファストの振りが大きく、超スローの"棺のふたが…"から爆速"よくぞ来られた…"はすごいです。ラストは大迫力!!



87年前の演奏ですが、極端に緩急を入れ替えるのが特徴的です。アゴーギクというよりもパート毎の振り分けですね。速いパートが時代を感じさせるのは事実ですが、それを楽しめるのも良いですね。歌手陣も全体的に今よりも濃厚な表現・味わいでしょう。

歴史的な1932年の世界初録音、米プレミア演奏をこの音質で楽しめるとは素晴らしいですね。(オーディオマニアの方には無縁の世界でしょうw)




レオポルド・ストコフスキー [#2]
(Leopold Stokowski)
[1961年]

フィラデルフィア管から29年後、とはいえ今から58年前、エディンバラ国際フェスティバルでロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra)を振った録音ですね。ヴァルデマルには小澤/ボストン響[1979年]にも登場するJ.マクラッケン採用です。
冒頭にBBCアナウンスと英国国歌斉唱が入っています。



ヴァルデマル王 (ジェイムズ・マクラッケン, James McCracken)
小澤盤との18年前、この時のマクラッケンの方が落ち着き払っている感じで、"馬よ!"でも伸びよく歌い上げます。神との対峙でも感じるのは激しさよりも伸びの良さでしょう。

トーヴェ (グレ・ブロウウェンスティン, Gre Brouwenstijn)
優しさを感じるのですが、sopはやや力が入って濃いめ尖めでしょう。

山鳩 (ネル・ ランキン, Nell Rankin)
演奏の揺さぶりが以前同様見られます。それに乗ったMezで、表情を色付けして上手い表現は本アルバム中出色です。

農夫 (フォーブス・ロビンソン, Forbes Robinson)
ここでもややスローですが、以前ほどではありません。声は重厚ですが、やっぱり表現薄めです。なぜか"Holla!"が聞こえない不思議さです。

クラウス (ジョン・ラニガン, John Lanigan)
ここでも伸びやかテノールです。これはストコフスキーの好みでしょうか。

語り手 (アルバー・リデル, Alvar Lidell)
今ひとつ説得力に欠けるきらいのあるシュプレッヒゲザングです。テンポ設定が、特に前半、速いからかもしれません。

合唱団
"よくぞ来られた…"はテンポは一般化しましたが、とってもクセの強い歌になっています。"時を告げようと…"でも一部でクセを感じますね。


演奏と流れ
序奏は濃厚な優美さ、二人の愛のシーンも以前ほどスローに振っておらず速めに感じるくらいです。"馬よ!"は速くなりますが、スローとの極端な落差は減りましたね。短い第二部も同様で、第三部も個性は残りつつ平均化しているのは間違いありません。



極端なスロー&ファストの展開の影は潜めました。そうなると録音はmonoでダイナミック・レンジは狭いですから、没個性化してしまいますね。('61年録音としては良いレベルなのですがハンディになります)
とは言え、歌手陣はJ.マクラッケンが小澤盤より好演でN.ランキンの山鳩は一聴の価値があります

両録音ともテンポ変化は判断できますが、ディナーミク系は難しいですね。残念ですが想像力では補填できません。






おすすめ盤
あくまで個人的感想ですが。

 ■ まず一枚なら   ➡️  ①ブーレーズ
 ■ クールさ好み   ➡️  ③インバル
 ■ 豪快に聴きたい  ➡️  ⑥シャイー
 ■ 歌曲として楽む  ➡️  ⑩ヤンソンス

というところかと。ヤンソンス盤はDVDなのでコンサート気配も楽しめます。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ミラノ・スカラ座 2018/19シーズン開幕公演 歌劇「アッティラ」をNHKプレミアムシアターで観る

先月上演されたばかりのミラノ・スカラ座 今シーズン開幕、ヴェルディのオペラ「アッティラ」(全3幕) が早くも登場ですね。


TeatroAllaScala_Attila_2018-2019.jpg
(写真はオフィシャルサイトよりお借りしました)

もちろんフン族の王アッティラの話(悲劇)で、D.リーヴェルモルによる新制作です。


演出

今の時代としてはアヴァンギャルド性は低く、衣装を時代考証に合わせれば古典的と言ってもいいかもしれませんね。レオーネがローマ法王本人として出てくるくらいで、ストーリーにも手をつけている様子はありません。特徴的なのは今では少数派?の大仰な舞台設定です。


舞台・衣装

派手なせり上がりや実車を配置した舞台は馬や火まで使われ、背景は複雑なプロジェクション・マッピング、狭い舞台に人と物が溢れかえります。
衣装は一部世紀末的な衣装も含まれて、近現代を基調にしている様で合っていますね。


配役

タイトルロールのアブドラザコフ、エツィオのペテアン共にバス・バリトンなので重厚さ前面と思いきや、そこまでは重くありません。アブドラザコフはスマートな演技も良かったですね。フォレスト役サルトーリはテノールも凡庸で、太り過ぎ以外の印象は残りません。ベルリン国立歌劇場2018公演「マクベス」にも出ていましたが、イマイチでしたね。今回はオダベッラに完全に食われていましたw
女性陣はその紅一点オダベッラのエルナンデスが役柄ぴったりに圧倒するsopを聴かせてくれましたね。
アリアや重唱の後に大きな拍手が少なかった気がしますが、それが全体印象でしょうか。(ポーズを決めて拍手を煽りますが)


演奏

シャイーにしては前に出てくる印象はありませんでした。確かに山場を速めに持って行くのはありましたが。



スマートなタイトルロールと押出しのオダベッラ、そして凝った舞台でした。が、それ以上でもそれ以下でもないといえば、それまでなのですが。



<出 演>
 アッティラ:イルダール・アブドラザコフ [Ildar Abdrazakov]
 エツィオ:ジョルジュ・ペテアン [George Petean]
 オダベッラ:サイオア・エルナンデス [Saioa Hernandez]
 フォレスト:ファビオ・サルトーリ [Fabio Sartori]
 ウルディーノ:フランチェスコ・ピッターリ [Francesco Pittari]
 レオーネ:ジャンルカ・ブラット [Gianluca Buratto]

<合 唱> ミラノ・スカラ座合唱団
<管弦楽> ミラノ・スカラ座管弦楽団
<指 揮> リッカルド・シャイー [Riccardo Chailly]
<演 出> ダヴィデ・リーヴェルモル [Davide Livermore]


収録:2018年12月7日 ミラノ・スカラ座(イタリア)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

アルベルト・ポサダス(Alberto Posadas)の「Glossopoeia・他」を聴く


アルベルト・ポサダス
(Alberto Posadas, 1967 - )
マドリッドの音楽院で習ったスペインの現代音楽家です。二つの方向性があり、一つは数学をベースとしてフラクタル理論やトポロジー変換の様な変移性の技法を用いている事。もう一つはエレクトロアコースティックや空間音響系音楽で、IRCAMでも電子音楽を学んでいます。
この経歴だけで欧州エクスペリメンタリズムと見事にわかりますね。


Oscuro abismo de llanto y de ternura, Nebmaat, Cripsis, Glossopoeia
室内楽集になります。いずれもIRCAM絡みで、演奏もアンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble intercontemporain)とういうのが特徴的でしょうね。一番の問題は実は4曲目です。構成から見て"インスタレーション系"である事に違いありません。さてCDでどこまで味わえるのか…
それ以外は指揮者が存在して、フランソワ=グザヴィエ・ロト(François-Xavier Roth)ですね。興味深いでしょ!!






Oscuro abismo de llanto y de ternura (2005) for ensemble
29人という大編成の室内楽曲で、ポサダスとアンテルコンタンポランの初共演作だそうです。空の中に現れるノイズ、時に静的であり時にクラスター的、で無調の混沌です。明らかな特殊奏法は感じられませんが、ストレッチされたロングトーンにトリル・トレモロ、グリッサンドが絡み、打楽器がポリリズムを刻みます。楽器編成が多彩なので表情も多彩なカオスですね。無調混沌の緊張感が空間に蠢く空間音響系のサウンドです。


Nebmaat (2008) for quintet
バスクラ、チェロ、ヴァイオリン、ソプラノサックス、ヴィオラという五重奏曲です。少しテンポ設定が速めで楽器編成が少なくなったのでコンパクトな感じになっています。ロングトーンの共鳴を感じさせる静的パートが印象的で、そこにトリル等の速い流れが時折挟まれています。
エジプトにインスパイアされたそうですが、さて??


Cripsis (2007) for ensemble
15人編成の室内楽で、緊張感が漲ります。それは明確なポリフォニー感が設定されているからでしょう。もちろんロングトーンの静音パートではいつもの空間系ですが、特徴的なのは音の展開を持った楽器同士の無調ポリフォニーですね。これが一番面白いかもしれません。


Glossopoeia (2009) for 3 dancers, 4 musicians, video and electronics
バスクラ、パーカッション、ヴィオラ、チェロの四重奏曲+エレクトロニクスですが、大事な"ダンサー"と"ビデオ"がCDでは味わえません。例によってロングトーンとトリル・トレモロの組合せですが、刺激性が強く感じられます。パルス的な音使いがされているからでしょうか。トリル・トレモロは"ダンス"をイマジネートさせるものもありますが、なにぶん視覚反映はありませんから…
この曲が表情変化は一番大きい事ですが、確実に言えるのは 本来ダンサーとビデオ映像が使われるインスタレーション現代音楽ですからCDでは本当の姿がわからない事でしょう。

 ★試しに動画で観てみますか?
  エレクトロニクスの印象がやや異なり、一部カットがあります。
  振付はRichard Siegalになりますね。




ロングトーンとトリル・トレモロを基調とした無調混沌の空間音響系音楽ですね。今の時代の欧前衛の一つの主流でしょう。

なおかつ約10年前にインスタレーションとしてCD化されていた事実も素晴らしいですね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2019年1月10日 コパチンスカヤ/大野和士/都響 の『シェーンベルク : ヴァイオリン協奏曲』at サントリーホール

本年の初コンサートは待望のパトリツィア・コパチンスカヤの現代コンチェルトを楽しみに六本木まで行ってきました。

20190110SuntoryHall.jpg


この曲がコパチンスカヤにぴったりな事はわかっていましたから、名盤を含む事前の4CD聴き比べもして準備OKですね。もちろんチケットは完売だったそうです。





ヴァイオリン協奏曲 Op. 36
アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874-1951)

第一楽章
第一パートまずは主要主題を幽玄美で入ると主音列を切れ味で繋げました。そこからが十二音技法の展開なのですがわかりませんね。流れに切れ味と幽玄さはあるのですが、コパチンスカヤらしい大胆さが感じられません。小刻みなテンポで変奏を繰り広げる第二パートでも変化は少なめ、技巧的で神経質な音色が響きます。第三パートのカデンツァは静的スローをベースですが、期待した激しい切れ味が今ひとつ出て来ません。
第二楽章
第一楽章の残映の様な楽章になりました。入りのソロの第一楽章の主音列回帰は神経質で鬱な音色、トリオでは流麗に表情変化はあるものの音が前に出て来ません。都響にパワーがあったにしても、です。
第三楽章
流れが変わったのは、ここからでした。旋律感のあるvnの主要主題は明らかに元気が出てキレキレで再現するたびに表情を変化させましたね。音圧も上がり、コパチンスカヤらしさが動きにも現れました。
カデンツァは繊細さも合わせて奏でてくれましたが、遠慮せずに全面キレキレの力感でも良かったかと思いました。ラストはオケもパワープレイで応えてくれましたね。
期待したのは、大胆で奔放な炸裂するvn。そうではありませんでたね。繊細・幽玄に軸足、と言えばいいのでしょうか。第三楽章の元気さが始めから欲しかった、というのが正直な処です。
都響が元気だったので、余計にそう感じたのかもしれませんね。(パワープレイがあれば良いのか?というのも今の大野/都響には感じる事もあるわけですが…)



白のドレスに裸足のコパチンスカヤ、練習不足という事ではないでしょうがコンチェルトなのにスコアを準備していましたね。(事前に置かれたスコアと登場時自ら持ち込んだスコア)
個人的コパチンスカヤの期待値が高過ぎたのでしょう、彼女らしい大胆さが今ひとつ薄味に感じてしまいました。

予習で聴き込んだお気に入りのエディンガー(vn)/マデルナ盤が一番の原因かも⁈w


体調不良をおして行ったため、後半(ブルックナー/交響曲第6番)はエネルギーが持ちませんでした。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

米現代音楽 Bang On A Can の『The Carbon Copy Building』を聴く


Michael Gordon, David Lang, Julia Wolfe
(マイケル・ゴードン、デイヴィッド・ラング、ジュリア・ウルフ)
CDのクレジットは"Bang On A Can"(以下BOAC)ではなく創設メンバー三人になっています。でも、BOACのHPにも載っていますし、レーベルも"Cantaloupe"ですから事実上BOACのアルバムでしょう。
ただ演奏がBOAC All-Starsではないからなのでしょう。演奏はクァルテットで、John Benthal(E-Guitar), David Cossin(perc.), Martin Goldray(Keyboards), Bohdan Hilash(cl)になります。(D.Cossinは唯一BOAC All-Starsメンバーですが)

このブログ一押しの米現代音楽[組織]BOACについては数々インプレしているので、過去記事を参照下さいね ▶️ 例えば 'こちら'

♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧 にも入っています



The Carbon Copy Building (2006年)
米N.Y.のcomic-strip(新聞等掲載の漫画)作家ベン・カッチャー(Ben Katchor)脚本と絵による"コミック・ブック・オペラ (Comic Book Opera)"です。

『1929年に表通りに出来たビル"The Palatine"、それを元に20ブロック離れた路地に建てられたカーボン・コピーのビル"The Palaver"、そこに関わる人達(経営者、ビル管理人、従事する人々、他)の不満や葛藤の話です。69年後、両方のビルは依然として存在していましたが、華やかな"The Palatine"と寂れた"The Palaver"の差は歴然。後者では建物や管理者、テナントの軋轢が増しています。
そんな中、リニュアルを企てるEmetine(The Ichor Foundation社長)は思わぬ訪問客を迎え高級レストランで誕生日の満ち足りた時を過ごしました。デザートのチェリー・チーズケーキは配慮で届けられる事に。その届け先と添えられた言葉は…』

構成は全16シーン15曲になりますね。







①Opening Slide Lecture ②*The Palatine Building ③Early Birds ④Chewing Gum ⑤At Dusk ⑥Where Is That Boy ⑦City Walk ⑧Panel Review ⑨I Blame The Tenants ⑩Emetine And The Palaver Manager ⑪Delivery Boy Biography ⑫August 13th ⑬Cherry Cheesecake ⑭Funeral March Of The Unfinished Desserts ⑮Closing Slide Lecture

音楽
elec-ギター, パーカッション、キーボード、クラリネット、という楽器構成を生かした"いかにもBOAC"らしい米現代音楽ですね。というわけで、基本はミニマルになります。不安定な不協和音を交えたり、ジャズの風合いにしたり、バラード風と曲ごとの表情変化は豊かです。でも個々の曲は良い意味でフラット、全体としての完成度を高めていますね。
個性を見せるのは②*のポップベース曲のロック、そして特徴的無調のポリフォニーで歌も一連となった⑤、無調歌曲⑩でしょうね。
* ②だけがM. Gordon作との情報もありますが…



まず個性的に聴こえるのは、歌詞の一つ一つの英単語を明瞭に発音している事でしょう。それによって感情表現は完全に抑えられて演奏同様にvoice楽器の様です。一般的なオペラの様に歌手が際立つ主役という感じではありません。
楽曲としては⑤の無調ポリフォニーの歌は斬新さと難しさを感じさせますね。


ステージ
 ★まずはYouTubeで観てみる?
  "シーン9 楽曲⑧"になります ("Scene8"は記述ミスですね)


ステージにはカッチャーの画像がプロジェクション・マッピングされて、動きは最小限、歌い方も抑揚を抑えている事がわかりますね。



抑えた演技に曲も特にオペラらしさはなくBOACサウンド、舞台にはPMでカッチャーの漫画が写さ出されます。オペラですがインスタレーション現代音楽という見方も出来るでしょう。

TheCarbonCopyBuilding.jpg

ジャケットは変則サイズ書籍風で画像にText入り、CD面は漫画だけで何の表記もないとう面白さです。思い出してはページをめくりながら絵と会話を楽しめる おすすめの一枚です。


ストーリーと歌詞がわからないと楽しさは半減以下になってしまいます。中には歌詞などわからなくても音楽だけで十分楽しめるという方もいらっしゃる様ですが、不器用な自分には難しいです。^^;





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

アンナ・ソルヴァルドスドッティル(Anna Thorvaldsdottir) の室内楽「AEQUA」を聴く


アンナ・ソルヴァルドスドッティル
(Anna Thorvaldsdottir, 1977/7/11 - )
このブログではおなじみでおすすめのアイスランド人女性現代音楽家のA.ソルヴァルドスドッティル(Anna Sigríður Þorvaldsdóttir)です。若手と思っていましたが、今や中堅になりましたねぇ。
UCLAサンディエゴ(UCSD)で習い博士号(Ph.D)を取得し、米国(Lincoln Center's Mostly Mozart Festival 等)・欧州(ISCM World Music Days 他)を活躍の場としています。2015年にはNew York Philharmonic's Kravis Emerging Composerにも選ばれていますね。

作風は暗く陰湿なドローンも含む空間音響系で、特殊奏法もその方向で使われています。


AEQUA
室内楽集になりますね。本人曰く、楽曲は自然からのインスパイアであり、構築物全体とその構成パートの対比があるそうです。というわけで?ソロ曲から編成の大きなチャンバー・ミュージックのコントラストが付けられていますね。

演奏は米現代音楽アンサンブルの"インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル(International Contemporary Ensemble)"+α になります。






Scape (2011), for piano
ピアノ・ソロ曲です。特殊奏法も含めて静的空間に音が分散します。低音の単音は残響音を生かしているのも特徴的ですね。暗い海に彷徨う深海魚の様です。ラストは電子ノイズが残ります。


Spectra (2017), for violin, viola & cello
弦楽三重奏曲です。民族和声を微かに感じる調性感の薄い陰湿スローの緩徐曲です。旋律があるので余計に鬱な雰囲気が伝わりますね。中盤ではテンポを上げて特殊奏法も交え無調の音世界に入ります。全体構成はソナタ的で美しさも感じますね。ここでも最後にノイズを残します。


Aequilibria (2014), for large chamber ensemble
上記"Spectra"の気配を残しながら、年代は逆ですが、アンサンブル曲にした様な気配です。スローに渦巻く暗がりの様な空間音響系になり、時折その中に光が差し込みます。宇宙空間の様な曲調で、ドローンになるでしょうか。


Sequences (2016), for bass flute, bass clarinet, baritone saxophone & contrabassoon
管楽アンサンブル作品ですね。特殊奏法を用いた幽玄な楽曲です。基本は暗さですが、低音反復が入って陶酔的な流れを感じますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Illumine (2016), for 3 violins, 2 violas, 2 cellos & 1 double bass
弦楽アンサンブルです。前の"Sequences"に比べると出し入れの表情変化があります。とは言え刺激的な流れではなく、あくまでスローの中に色を添える感じですね。


Reflections (2016), for violin, viola & cello
いかにも的なグリッサンドが使われ、静的空間にチョロチョロと小生物が出現するかの様です。少々古臭さを感じるでしょうか。


Fields (2016), for bass clarinet, percussion, piano, electric guitar, cello & double bass
楽器構成が興味深いアンサンブル曲で、旋律が存在して暗く美しい感情が現れています。それまでの曲にも美しさは顔を覗かせていましたが、ここでは大きくフィーチャーされていますね。調性との多様性は今の現代音楽の主流をなしていますから、一番今の時代らしいと言って良いかもしれませんね。楽器構成も生きています。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



もちろん無調前衛で、全体を通して暗くスロー、刺激を回避した流れです。以前よりも曲調の固定化が強まっている感じがしますね。ラストに特徴付けを残すのも目立ちます。

聴きやすい傾向にあると思いますが、この先A. ソルヴァルドスドッティルがどの様な方向へ向かうのか興味は尽きませんね。



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ジョエル・グラール(Joël Grare) のパーカッションアルバム『雪に隠れた足跡』を聴く


ジョエル・グラール
(Joël Grare, 1961 - )
フランス人のパーカッショニストで現代音楽家のグラール、期待値の高いアルファ・レーベルからソロ第三弾になりますね。
1900年代初頭のフランス音楽や、シルクロード、ロシア民族音楽、そしてハープシコードの古楽といった方向性を持っています。その後世界を眺望する様になり、各民族打楽器を基調とするパーカッション曲を展開する様になりましたね。


Des Pas Sous La Neige
雪に隠れた足跡
今回はその打楽器群を生かすアルバムにになっていて、タイトル曲を含めた本人の15楽曲以外にバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」より第1.2.3番も使われた小曲集になります。

使われている打楽器は以下ですね。
クラヴィクロシュ(鍵盤状の鐘), サンツァ(アフリカの音階を持つ打楽器), カウベル, トゥパン(ブルガリアの太鼓), トロンピキ, チェンバロ, 和太鼓, ポジティヴ・オルガン(小型パイプオルガン)






まずは一曲目のタイトル曲、美しい鐘の音色とその響き・共鳴の音楽です。曲調は静的で反復のミニマル系ですね。そう言われると皆さん頭に浮かぶ音楽があるのではないでしょうか。そうA.ペルトに似ているというのが第一印象です。
とは言え すぐに違いを感じられて、パーカッショニスト作品らしい陶酔的なリズムも太鼓系打楽器で現れたり、フュージョン風サウンドやドローン系も展開されます。
ベースはアンビエント系ミニマルで括れるのではないでしょうか。その中で色々な表情を見せてくれますが、和声は調性から逃れる事が無いのが残念ですね。唯一調性感の薄さを見せたのは11曲目「Cloches Vespérales (À Emmanuel Guibert)」ですね。
 バルトークの三曲もクラヴィクロシュ(第1番), ポジティヴ・オルガン(第2番), チェンバロ(第3番)を使っていますが、バルトークらしい神秘的民族和声がアンビエント色に薄まっている感じです。第3番に良さが残されているでしょうか。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  アルファ・レーベルのオフィシャルPVです




基本はポスト・ミニマルのアンビエント色合いでしょう。表情(曲調)は豊かですが、心地よい打楽器BGMと言った風合いですね。

斬新さは感じられませんが…



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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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