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ユジャ・ワン のピアノ・ソロ Live『ベルリン・リサイタル』を聴く


Yuja Wang
The Berlin Recital
ユジャ・ワンというと技巧的で派手さのステージ向きという印象です。コンサートで観たのは既に6年前のM.T.トーマス/S.F.響と、少々古い印象になってしまっていますね。
その後もドゥダメル/シモン・ボリバルとの共演盤のラフマニノフとプロコフィエフのコンチェルトしか記憶にありません。というわけで評判の良かった北米・欧州ツアーのLiveが出たので久しぶりに聴いてみました。
国内ではゲルギエフ/ミュンヘン管との来日にぶつけたCD発売でもあったわけですが…







セルゲイ・ラフマニノフ
(Sergei Rachmaninov, 1873-1943)
絵画的練習曲《音の絵》は作品番号33と39、それぞれ9曲構成の中から選曲されています。(33/4は欠番)

前奏曲 Op.23/5
 ロシア民族和声の強烈な技巧系有名曲ですが、どちらかというと表情付けを強くした演奏になりますね。これ見よがしに強音のテクをひけらかす事を避けている感じです。余裕を感じる演奏ですね。


絵画的練習曲《音の絵》 Op.39/1, Op.33/3
 "Op.39/1"は超絶技巧曲です。速いアルペジオでディナーミクとアゴーギクを使っていますが、ここでも落ち着きがあって曲に表情を付けている感じです。押し出しの強い前半と後半も抑え気味です。
一方"Op.33/3"は叙情的な緩徐曲で、ここではエモーショナルなスロー側アゴーギクが映える演奏になります。以前のユジャ・ワンとは印象が異なり、この情感が伝わる演奏は悪くありません


前奏曲 Op.32/10
 ここでも澄んだ透明感ある音色を弾きますね。緩徐曲の表現力、バランスの良いアゴーギクとディナーミク、が見事に発揮されているのを感じます。美しい演奏になっています。




アレクサンドル・スクリャービン
(Alexander Scriabin, 1872-1915)
スクリャービンといえばピアノ曲で、このブログでも多くインプレしています。第5番以降の過渡期から無調への時代が好みですが、このピアノ・ソナタ 第10番は「トリルソナタ」と呼ばれてその名の通りの特徴ですね。単一楽章でソナタ形式になっています。

ピアノ・ソナタ 第10番 Op.70
 幽玄さはスクリャービンで、ここでも出し入れをうまく使っています。淡々とではなく、静的透明感ながら表現力は強めでしょう。テンポの揺らぎがうまいですね。トリルが少し硬く感じるパートもありますが…




ジェルジュ・リゲティ
(György Ligeti, 1923-2006)
ハンガリーの現代音楽家G.リゲティの後期を代表するピアノ・エチュードですね。1985-2001年にかけて作られた全18曲から3曲をピックアップしています。リゲティが亡くなって12年とは早いものです。

ピアノのための練習曲集 第3番, 第9番, 第1番
 「妨げられた打鍵:第3番」「眩暈:第9番」「無秩序:第1番」共にもトリル系のミニマル風な速弾きで、ともするとフラットになりがちですが、曲により打鍵の変化を付けています。第3番はエモーショナルに最後の第1番は速く強健的にといった色付けですね。うまい構成感で聴かせてくれます




セルゲイ・プロコフィエフ
(Sergei Prokofiev, 1891-1953)
熟年期に書かれた 通称「戦争ソナタ」の三作目ですね。ユジャ・ワンですと、一つ前の派手な第7番を選ぶかと思いました。

ピアノ・ソナタ 第8番 Op.84
 調性の妖しさを生かす様な幽玄でミステリアスなパートの中に得意の強鍵が交錯する第一楽章、浮遊感のある微妙な調性感の主題をソフトな優しさで奏でる第二楽章、速い流れをユジャ・ワンらしいシャープで歯切れの良さで突き進む第三楽章です。
最後に現れたこの最終楽章の弾きが本来のユジャ・ワンでしょうね、やっぱり。




緩徐曲の美しさや幽玄さを中心に持ってきたピアノ曲集で、ユジャ・ワンの印象とは一味違ったエモーショナルな表現を魅せてくれるアルバムですね。
とは言え、ベスト・トラックは最後のプロコフィエフの第三楽章の元気さになってしまいます。

そうなると気になるのはスクリャービンとプロコフィエフ(第一楽章)で、幽玄さの中に処々ユジャ・ワン本来の硬く強鍵的な表現に没入するパートがミスマッチ風に感じられる気もします。

ジャケット写真を見ると、ステージ衣装は相変わらず派手ですねw





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アルノルト・シェーンベルク『ヴァイオリン協奏曲』6CD聴き比べ:ハーン, アモイヤル, ザイトリン, バレンボイム, ファウスト, エディンガー


ヴァイオリン協奏曲 Op.36 (1934-1936年)
アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874-1951)
ヴェーベルンに献呈された渡米後の作品で、十二音技法で書かれているそうですが聴いただけではわかりませんねw
好きなヴァイオリン協奏曲の一つで、バリバリの超絶技巧曲。かつ30分以上殆ど弾きっぱなしの様なヴァイオリニストにはタフな楽曲です。曲調は年代からいっても新古典主義的な印象になり、聴きごたえがあって素晴らしいですね。

楽章内の構成は少し端折って印象重視のインプレです。
(第一楽章:アレグロ、第二楽章:アンダンテ、第三楽章:フィナーレ・アレグロ の機能和声時代の基本構成ですね)



全体インプレ (vn/cond.)
① ハーン/サロネン:バランスの良さですね

② アモイヤル/ブーレーズ:研ぎ澄まされた先鋭さです

③ ザイトリン/クーベリック:クールなvn協奏曲です

④ M.バレンボイム/D.バレンボイム:落ち着いた中庸さです

⑤ ファウスト/ハーディング:繊細さの表現力です

⑥ エディンガー/マデルナ:豪快キレキレですね
 ・オススメCDは最後にあります



個別インプレ


ヒラリー・ハーン (Hilary Hahn : vn)
エサ=ペッカ・サロネン(Esa-Pekka Salonen, スウェーデン放送響)




H.ハーンのvnは朗々と鳴って歯切れも良くバランスの良さを感じます。バリバリの技巧感には少々欠けるきらいはあるかもしれませんが、安定性重視の様な流れです。第三楽章は素晴らしく、リズムに乗った流れは聴かせてくれます。
サロネンのオケも同様に響の良さがあって出し入れもあり、重量感や幽玄さではなく交響曲的な印象をうけました。全体の印象は明瞭さ、陰のない明るさのサウンドを響かせてくれましたね。この曲としては何か一つ尖ったものが欲しかった気もします。




ピエール・アモイヤル (Pierre Amoyal : vn)
ピエール・ブーレーズ(Pierre Boulez, ロンドン交響楽団)




アモイヤルのvnは繊細で細い切れ味を感じ、鋭利な刃物の様ですね。細く冷たい音色は好きなvnの音色で、引いた感じの時も鋭いキレを感じます。グリグリとヴィルトゥオーゾを魅せるのではなく、やや引き気味で神経質・繊細・切れ味のvnです。第二楽章の神秘さは光りますね。最後のカデンツァはキレキレです。
全体的には"静"の緊迫感のオケは流石はブーレーズといった感じです。その中にディナーミクの振りで陰影付けがされて幽玄さを感じますね。手を触れたら切れそうな鋭いコンチェルトで好きな一枚です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




ズヴィ・ザイトリン (Zvi Zeitlin : vn)
ラファエル・クーベリック(Rafael Kubelík, バイエルン放送響)




ザイトリンのvnは細からず太からず、キレ過ぎず伸び過ぎず、な印象です。常に落ち着いてクールですね。この演奏だけを聴けばすごくキレキレに感じるでしょうが、それはこの曲の本質ですね。印象的なのは第一・第三楽章終盤のカデンツァと多少緩徐的な第二楽章の落ち着きでしょうか。それがザイトリンらしい美しさを奏でている感じですね。
クーベリックとオケの方が引いては押しといった多少表情のある演奏を繰り広げて、揺さぶりもかけている様な感じです。ただこの曲としては行儀が良く、vnが少しスマート過ぎに感じますね。




マイケル・バレンボイム (Michael Barenboim : vn)
ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim, ウィーンフィル)




マイケル.Bのvnは少し引き気味で落ち着いた感じでしょうか。線が細い感じで、強引な音色は発しません。アレグロでは中庸さが強く突き進む感じやキレは弱いですが、緩徐楽章は伸びやかな音色でエモーショナルさが処々にありますね。第一・第三楽章カデンツァは揺さぶりますが、ややギクシャク感です。
父であるダニエル.BとVPOは緩急を強めながらvnを追い込む様に演じています。とは言え炸裂する様な演奏はしませんね、VPOですから。どちらかと言えばこちらも落ち着いた感じですね。
この曲としては薄味で、vnは切れ味が弱く感じるかもしれません。(録音の問題もあるかもしれませんが)




イザベル・ファウスト (Isabelle Faust : vn)
ダニエル・ハーディング(Daniel Harding, スウェーデン放送響)




ファウストのvnは激情ではなく表現力でしょう。落ち着きながらも先鋭な音色を主体にしていますね。全楽章通して劇的なパートや技巧優先の切れ上がる様な演奏はありません。聴かせどころのカデンツァでも表現力優先ですね。
オケも鳴りよく、出し入れを強く、この曲らしい急変化を上手くコントロールしていてvnを生かしている感じですが、怒涛の盛り上がりは避けていますね。
全体としては劇的・技巧性方向よりもコントロール・繊細な表現の演奏ですね。




クリスティアーネ・エディンガー(Christiane Edinger:vn)
ブルーノ・マデルナ(Bruno Maderna, Saarländischen放送響)



BrunoMaderna-Schoenberg-arkadia.jpg
(ジャケット写真です)

上記CDとは一線を画す強烈な演奏です。エディンガーのvnは表情濃く、彫りの深い演奏です。オケとの録音レベルでもvn主導的になっているのもあるかもしれませんが、第一楽章の導入部からキレキレです。いかにもヴィルトゥオーゾ的で、これ見よがしなスタンスが心地よいですね。カデンツァは揺さぶりが強くキレキレ。このパターンに遠慮は無用でしょう!!
マデルナのオケもまさに協奏的にvnに絡みます。振りの大きなディナーミクとアゴーギクのマッチはまるでDialogue、両者のせめぎ合いの様なやりとりが強烈。素晴らしいですね。

「ペレアスとメリザンド」や「浄夜」を含むマデルナの尖がったシェーンベルク集(2CD)で、所有している全CD中でも個人的名盤。指折りのお気に入り盤で超おすすめ盤になります。現代音楽家としても素晴らしいですが、シェルヘンに師事した指揮者のマデルナは最高です。




おすすめは、②アモイヤル(vn)/ブーレーズ と ⑥エディンガー(vn)/マデルナです。

一枚というなら、圧倒的に素晴らしいエディンガー(vn)/マデルナ盤ですね。問題は入手困難な事ですが…




当初は2019年1月10日のコパチンスカヤ(vn)/大野和士/都響のコンサートを前に予習でした。(同曲CDインプレを追記して比較数が増えました)
 コパチンスカヤの結果は ▶️ こちら



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コリン・カリーとホーカン・ハーデンベルガー の『The Scene of the Crime』を聴く


Colin Currie (perc.)
Håkan Hardenberger (tp)
コリン・カリーと言えば浮かぶのはスティーヴ・ライヒとのパーカッション・マッチアップでしょう。2017年3月の「Steve Reich 80歳記念公演」での好演が浮かびますね。
このアルバムは本人のパーカッションを主体としたレーベル"Colin Currie Records"第二弾です。

ホーカン・ハーデンベルガーはマルメ出身のスウェーデン人トランペット・ヴィルトゥオーゾですね。バロック・古典から現代音楽初演まで数々のバリエーションを残しています。行っていませんがソリスト来日もありますね。

二人のヴィルトゥオーゾによる現代音楽ですが、中堅・ベテラン勢による作品を並べた感じです。







アンドレ・ジョリヴェ (André Jolivet, 1905-1974)
本CDで唯一20世紀に生きたフランス人現代音楽家で、個人的な印象は「赤道コンチェルト」に代表される劇的な展開ですね。

Heptade
 ジョリヴェらしい曲調の、実際には曲調の幅は広いのですが個人的に、明瞭なサウンドです。調性の音楽ですが、インパクトがあってtp/perc.のコントラストが良く、独特の和声と鳴りの良い響が特徴的ですね。とても聴きやすいと思います。




ジョー・ダデル (Joe Duddell, 1972- )
マンチェスター生まれの英人音楽家で指揮者、ロックにも精通していますね。歳は上ですが、コリン・カリーの生徒だった様です。

Catch
 マリンバとフリューゲルホーンのミニマルで、アンビエントな楽風になっていますね。反復・変奏の基本となる動機自体がアンビエントになっているので、強音・弱音共に流れを損なう事はありません。美しい楽曲です。




トビアス・ブロシュトレム (Tobias Broström, 1978- )
ヘルシンボリ生まれのスウェーデン現代音楽家で、マルメ音楽院でパーカッションを、作曲をR.マッティンソンとL.フランチェスコーニに師事しています。この曲は二人の奏者に献呈されていますね。

Dream variations
 The Dream - Mirror - Déjà vu の3パート曲です。パーカッションはカウベルやヴィブラフォン等を使っていますが、曲の流れはタイトル通りに幻想的・瞑想的でスロー基本になりますね。




ダニエル・ベルツ (Daniel Börtz, 1943- )
スウェーデンを代表する現代音楽家の一人で、作曲はH.ルーゼンベリ、K-B.ブロムダール、I.リドホルムといった大物に師事しています。

Dialogo 4 - Ricordo
 30"に渡るほぼ無音から細い超静音の音色がクレシェンドしてきます。ミュートtpとヴィブラフォンの音色が絡みながらパーカッションが打音を挟み、曲調は激しさを増してtpとパーカッションDuoになります。無調で先鋭な楽風が楽しめます。強烈なヴィルトゥオーゾ性があればもっと良かった様な。




ブレット・ディーン (Brett Dean, 1961- )
オーストラリア人現代音楽家で、ヴィオラ奏者としてBPOにも在籍していましたね。活動の拠点はオーストラリアです。2017年のマルメ室内音楽祭の委嘱作品で二人に献呈、初演されていますね。

… the scene of the crime …
 無調でスローですが陰湿な暗い流れから入るのがここまでの楽曲との大きな違いです。そこからリズム変化を加えてテンポアップで表情を変化させてきます。静かな中に暗い緊張感が漂う面白い流れで、一番面白いですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?




二人のヴィルトゥオーゾ披露というよりも、作曲家の曲調を生かしたアルバムという感じですね。概ね穏やかで洗練されたBGMとしてもいいかもしれません。

個人的には二人のヴィルトゥオーゾの丁々発止的な競演を味わいたかったのですが、そこが残念な気がしてしまいます。




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2018年12月15日 ジョナサン・ノット/東響 の『アメリカ(ヴァレーズ) | 英雄の生涯(シュトラウス)』at サントリーホール

今年最後のコンサート、晴れて寒い日が続く様になった東京・六本木まで行ってきました。


20181215_SuntoryHall.jpg


ヴァレーズとR.シュトラウスという楽しみな組合せで、J.ノットとなれば聴きに行かない理由がありませんね。前半も一工夫入れて、Wメインの様相です。
事前予習は同二曲構成のCD、メッツマッハーです ➡️ こちら



密度21.5 (無伴奏フルートのための)
アメリカ (1927年改訂版)
・エドガー・ヴァレーズ (Edgard Varèse, 1883-1965)

ノットは異なる印象の曲を序奏の様に置くのが好きですが、今回もシンプルなflソロ小曲を大編成オケ"アメリカ"に繋げました。
まず入りから明白な強音の切れ味に重心を置いた音色が炸裂です。特徴的なハープの等拍リズムとサイレンは間合い良く挟まれて響きましたね。打楽器は繊細さと大胆さを打ち分け、強音の空間の響きはホールを揺るがせました。中盤以降での独特のリズム感も生きていましたね。全体を緊張感で漲らせ、圧倒するパワーゲームはお見事‼︎
強烈な響きと緊張感は静音パートを凌駕して、ヴァレーズらしい鳴りと響きを轟かせてくれました。最高の"アメリカ"の一つだったでしょう‼




交響詩「英雄の生涯」Op.40
・リヒャルト・シュトラウス (Richard Strauss, 1864-1949)

[1. 英雄] 主テーマは精悍さをかなり速いテンポで表しました。
[2. 英雄の敵] は敵の揶揄する様な音色が強め。
[3. 英雄の伴侶] 伴侶vnの優しさと励ましが厚めのボウイングで、オケの英雄との会話が図太い伴侶に感じましたね。出来れば薄いボウイングの繊細さで寄り添う伴侶が好みでした。
[4. 英雄の戦場] 敵の管群と英雄のHr+弦が豪快に奏でられ、ノットらしさが見事に生きましたね。
[5. 英雄の業績] 前半は力感を引継ぎましたが、後半の静寂が厚めでコントラストの弱さが気になりました。
[6. 英雄の隠遁と完成] 心の平穏を静かに奏でて欲しい処でしたが、やっぱり音色が厚かった気がします。
概ね厚めにバランスした感じで、英雄と伴侶を中心とする濃淡・強弱のコントラストが弱かった気がしました。
ソロvnと緩徐パートに澄んだ静音があったら素晴らしかったと思います。




なんと言ってもアメリカでしょう。ヴァレーズらしいクラスターの響きが最高レベルで楽しめました。今年最後のコンサートが当たりで良かったです

録音されていたのでCD化されるでしょうね。楽しみが一つ増えました。


ヴァレーズ "アメリカ"は2015-4/18のメッツマッハー/新日フィル以来でした、今回の方が好みですね。


テーマ : クラシック
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インゴ・メッツマッハーで聴く『英雄の生涯:R.シュトラウス | アメリカ:E.ヴァレーズ』& 『アメリカ』はミヒャエル・ギーレンと聴き比べ


インゴ・メッツマッハー (Ingo Metzmacher)
ベルリン・ドイツ交響楽団 (Deutsches Symphonie-Orchester Berlin)
新日フィルの"Conductor in Residence"(2013-2015)も務めて日本でも人気のドイツ人指揮者メッツマッハーですね。その最後のコンサートも行ってきましたが、演目はR.シュトラウスとE.ヴァレーズでした。メッツマッハーが得意としていたのは間違いなく、これは首席指揮者を務めた(2007-2012年)ベルリン・ドイツ交響楽団との録音です。

実は今週末(2018-12/15)のジョナサン・ノット/東響のコンサートがこの組合せなので、予習も兼ねてのインプレですね。







リヒャルト・シュトラウス
(Richard Strauss, 1864-1949)
言わずと知れたR.シュトラウス最後の交響詩ですね。個人的にも好きな後期ロマン派の一曲で、全6パートがアタッカで繋がっています。メッツマッハーは極少数派の第1稿を使っていますのでフィニッシュの盛り上げは無く、その前の静かな終焉になりますね。そこがポイントだったのですが。
「カラヤンのCDx3録音とシュトラウス本人のCDで聴き比べ」をインプレ済みです ➡️ こちら

英雄の生涯, Ein Heldenleben (1898年)
 緩やか優美なテーマ[1.英雄]から入り、嘲笑する敵と沈む心をコントラストを付けた[2. 英雄の敵]、vnの伴侶とオケの英雄が優美に語る緩徐の[3. 英雄の伴侶]はとても表情が豊かで素晴らしいですね。
敵や戦闘シーンを抑え気味にして落ち着きのある[4. 英雄の戦場]、[5. 英雄の業績]も後半の静的な美しさから最後の最終パートへ繋げています。この流れがメッツマッハーの意図した構成なのでしょう。最後[6. 英雄の隠遁と完成]も同じ構成で緩やかで心穏やかな流れを作って死を迎えます。看取るvn音色に心が動かされました。
"英雄"の勇ましさや勇敢さよりも心の表現を重視した流れで、人間としての英雄を描いた新しい"英雄の生涯"像です。




エドガー・ヴァレーズ
(Edgard Varèse, 1883-1965)
1915年にフランスから米国に渡ったヴァレーズはその初期作品を一曲のみ残して廃棄していますね。その後の第一作目がストラヴィンスキーの影響を感じるこの"アメリカ"になります。その後はクラスターを中心に空間音響や電子音楽を作り出して現代音楽の流れの一つを築き上げている現代音楽家ですね。
「ブーレーズCDx2録音とシャイーで"ヴァレーズ作品集"の聴き比べ」をしています ➡️ こちら

アメリカ, Amériques (1920年)
 静的パートに重心を置いている様に感じます。強音はもちろん炸裂的で華やかですが、静音の煌めきと落ち着いたスローな流れはストラヴィンスキー感は薄めです。新世界の派手な喧騒クラスターやサイレンは強調された感が薄く、蠢く陰の側にスポットを当てた様に感じますね。




新日フィル最後のコンサートでもそうでしたが、際立たせる迫力よりも感情表現を感じますね。"英雄の生涯"では、自己を見つめる様な流れに新しさを感じて共感できました。この流れですと第1稿がとても合っていますね。
"アメリカ"でも新世界大都市的な派手さよりも、そこに潜むものを表現しているかの様です。ただ、こちらはヴァレーズらしさが薄まっている感は否めません。

今更ですが、メッツマッハー/新日フィル 最後のコンサートは、これを聴いてから行くべきだった気がします。







ギーレン:アメリカ

ミヒャエル・ギーレンと首席指揮者(1986-1999年)を務めたバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団のアメリカを聴き比べてみましょう。



初めの静音パートからテンポがあって明瞭さが強いです。挟まれる等拍パルスも印象的で、現れるクラスターはパルス的で力強さ漲ります。攻撃的で静音パートも彫りが深く先鋭、全体に厚めで緊迫感ある構成、ラストの躍動・混沌も見事です。これぞヴァレーズの響!!
(強音軸足のこの盤か、静的パートに透明感をみせるSony盤ブーレーズがおすすめですね)




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ベルリン国立歌劇場 2018公演 ヴェルディの歌劇「マクベス」を NHKプレミアムシアターで観る

シェークスピア原作、ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)のオペラ「マクベス, Macbeth」(全4幕) です。豪華配役ですが、ポイントはやっぱり83歳になるハリー・クプファーの演出ですね。前衛でならしたクプファーですが今や時代は進み、驚くほどの事もなくなったでしょうか。


BerlinStateOpera2018-Macbeth.jpg
(写真はオフィシャルサイトよりお借りしました)


「醜い容姿、とげとげしい声」と言われるマクベス夫人役をネトレプコが演じるのは興味深いですし、今や本国イタリアよりドイツの方が公演が多い作品というのも面白いですね。(ドイツ語版もありますが、イタリア語公演でした)


演出

近現代風に置き換え単純化された舞台、そこにプロジェクション・マッピング(PM)をとてもうまく使ったのがクプファーらしさでしょうか。亡くなるべき役が生きていると言ったようなストーリーの弄りはありませんね。今や前衛では基本展開さえ変更しますからねぇ。


舞台・衣装

超シンプルな配置にPMを背景に使った舞台で奥行きとリアルさをうまく演出していますね。衣装は軍服と近現代様相になっています。光と影の黒を際立たせるのも今のお約束でしょう。


配役

まずは紅一点マクベス夫人のネトレプコ、圧倒する声量と延びのあるソプラノを魅せてくれましたね。トゲトゲしい歌いも役柄要求通りです。体型も今やお相撲さんもびっくりw
男性陣はタイトルロールのドミンゴですが、やっぱりテノールに感じますよね。でも通りの良い声は聴かせてくれましたね。また心底の悪者でない気配の演技も流石です。
バンコーのグァンチョルはバス・バリトンの良い声でしたが、容姿と声量が少し足りない様な。マクダフのサルトーリ、マルコムのホフマンとともに主役二人の前には端役の感は否めないですね。


音楽

バレンボイムは、このドン・シャン的な音楽を鳴りよく奏で、演奏が際立つシーンも多々感じました。少し元気がなさそうに見えるのが気になりましたが。


テノールのドミンゴもバリトン役での登場、細くて美貌のネトレプオも今や… クプファーの演出も尖った前衛とは言えず、時代は変わるという事ですね。

とは言え圧倒するネトレプコとドミンゴの二人舞台で、歌唱も演技も楽しませてくれました。公演はドイツですが、二人のアリアの後には盛大な拍手が起こるのはイタリア・オペラですね。

クプファーの演出も今の時代らしさに加えて広がりの大きな舞台作りを味わえました。でも、舞台はスコットランド。第一幕一場の合唱団の女性陣(魔女)に東洋系が多く並ぶのはやっぱり違和感が拭えません。お蝶夫人を白人女性が演じるのと同様に。



<出 演>
 マクベス:プラシド・ドミンゴ [Plácido Domingo]
 マクベス夫人:アンナ・ネトレプコ [Anna Netrebko]
 バンクォー:ヨン・グァンチョル [Kwangchul Youn]
 マクダフ:ファビオ・サルトーリ [Fabio Sartori]
 マルコム:フロリアン・ホフマン [Florian Hoffmann]

<合 唱> ベルリン国立歌劇場合唱団
<管弦楽> ベルリン国立歌劇場管弦楽団
<指 揮> ダニエル・バレンボイム [Daniel Barenboim]
<演 出> ハリー・クプファー [Harry Kupfer]


収録:2018年6月17・21日 ベルリン国立歌劇場(ドイツ)


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2018年12月10日 アラン・ギルバート/都響 の『春の祭典』at サントリーホール

11月はコンサートを入れていなかったので久しぶりのサントリーホール、都響定期第868回です。

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12月なのにテーマは"春"。"フィンガル"と"春祭"はコンサートでおなじみですが、シューマンは今や聴く事が殆どないのでバーンスタイン盤だけでなく古典色濃いガーディナー盤も聴いて来ました。(別の曲みたいですね)
聴く事が多い"春祭"は、今回G.ヒメノ盤とV.ペトレンコ盤で聴き比べインプレ実施ですね。➡️ こちら





序曲 フィンガルの洞窟 Op.26
メンデルスゾーン (Felix Mendelssohn, 1809-1847)

頭で鳴っているのがバーンスタインというのがありますが、ここではアゴーギクを押さえてやや速めでしたね。ディナーミクもスコアを超えるようなスリルはなく、この曲としてはさっぱりとした感じでした。


交響曲第1番 "春" 変ロ長調 Op.38
シューマン (Robert Schumann, 1810-1856)

第一楽章は軽快さがある宮廷祭典音楽風、第二楽章の緩徐は重心を低くして第三楽章スケルツォよりも重厚で、第四楽章には特徴を感じられませんでした。
ソナタ提示部の反復や、主題間の変化の薄さ等 本来古典の色合いが強くて厳しい楽曲ですが、ギルバートのタクトは今ひとつ全体像が掴みづらかった感じです。


春の祭典
ストラヴィンスキー (Igor Stravinsky, 1882-1971)

第一部"序奏"は静かなる変拍子とポリフォニーを生かして欲しかったのですが、速めで音の厚さが気になりました。続く"乙女達の踊り"は激しいリズム感に一体感が感じられません。"春の輪舞"は静音が厚くて鬱な優美さが弱く、後半の激しいコントラストに繋げられません。良かったのは第一部後半の一体感ある炸裂の素晴らしさ、聴かせてくれましたね。
第二部前半も神秘的な静寂の流れを作れません。どうしても静音パートに弱さを感じました。"祖先の儀式"から"生贄の踊り"は本来なら一番の聴かせ処ですが、静音とのコントラストがしっくり来ませんでした。

この曲ならではの煌めく色彩感は弱かったのですが、終わってみれば拍手喝采👏、都響メンバーも大満足な様子。またもや駄耳の証明になってしまいました。
第一部ラストが素晴らしかったので良しと言う事ですね。



出し入れの強い三曲が並びましたが、A.ギルバートの印象は流れは速めでアゴーギクは弱め、弱音を強調しない感じでしょうか。
個人的には弱音パートの幽玄さや神秘感、コントラストが薄い感じです。

2016年のマーラー5番は素晴らしかったのですが、2017年の都響では今回と同じ様な印象でしたね。




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