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クールで洒脱なBGM:エレーヌ・グリモー(Hélène Grimaud) の『メモリー Memory』を聴く


エレーヌ・グリモー
(Hélène Grimaud, 1969/11/7 - )
グリモーも今年で50歳になるんですねぇ。前回のアルバム『Water』と同じ様なジャケットを見ると髪を切ってショートにしてさすがに老けたかな。っていうくらいお馴染みの米在住フランス人ピアニストですね。
全集物やその他もあるのですが今ひとつスタイルがわかりづらいというのが個人的印象です。レパートリーがドイツやロシアの大物作曲家というのもあるかもしれません。(ピアノ曲は敬遠気味w)


メモリー
サティにドビュッシー、Waterに続きグリモーらしからぬエモーショナルな曲を並べて来たアルバムです。ピアノソロはこの手の楽曲の方が人気が出るからでしょうか?!w 11月来日公演予定で、もちろん本アルバムのレパートリー(+ラフマニノフも入れてますね、やっぱり)ですね。

アリス=紗良・オットが先日リリースした『ナイトフォール Nightfall』と曲が被ります。印象の違いは最後にインプレしておきましょう。両方ともDGなのでツアーも合わせて販売路線w






シルヴェストロフ:バガテル第1番, 第2番
両曲ともに透明感のある抑揚を殺した静&スローです。曲の持っている穏やかで澄んだ旋律が生きていて素晴らしいですね。


ドビュッシー:アラベスク第1番, レントより遅く, 月の光, 夢想
緩やかなアゴーギクがかかったアラベスクは明るく明瞭さが強いですね。"レントより遅く"と"夢想"はさらにディナーミクも付けて表情があります。"月の光"は美しさとエモーショナルさを緩いアゴーギクとディナーミクで強調して甘美です。


サティ:グノシエンヌ第1番, 第4番, ジムノペディ第1番, 冷たい小品/2.ゆがんだ踊り第1,2曲
グノシエンヌは冷たい音色と緩いアゴーギクのマッチが良く繊細なサティらしさが出ていましたね。ジムノペディではより表情を抑えて実にクールで好きですね。


ショパン:ノクターン第19番, マズルカ第13番(作品17の4), ワルツ第3番
ショパンの選曲は技巧パート強調がない事でしたね。ノクターンとワルツはディナーミクを他の曲より強めに付けて感情表現を入れていました。マズルカでは冷めた流れにディナーミクの波を挟んでいましたね。


ニティン・ソーニー:ブリージング・ライト
Waterの時とは違い普通のピアノ曲で、一番強いタッチの表現でした。



作曲家毎に揺さぶり具合が違うのが興味深いです。ディナーミクやアゴーギクを抑えたシルヴェストロフとサティのクールな情感表現は素晴らしかったですね。ショパンやドビュッシーあたりの色付けが本来のグリモーかもしれませんが、いずれ部屋で静かにかける洒脱なBGMとしてはクールな一枚でおすすめです。

透明感あるピアノの音色は良いのですが、エコーがかかった様な残響音が少し気になります。(ペダリングではありませんね)




《アリス=紗良・オットNightfallと重なる四曲*の印象の違い》
*サティ (グノシエンヌ#1, ジムノペディ#1)、ドビュッシー (夢想、月の光)
オットは揺さぶりを抑えスローで静、淡々としたクールな表現でした。グリモーもクールですが、澄んだ音色の中にアゴーギクとディナーミクを入れて表情を付けていますね。
アルバムとしてはオットNightfallには強音パートで知られるラヴェル"夜のガスパール"が入っているので全曲エモーショナルではありません。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2018年9月28日 カンブルラン/読響 の『ラヴェル/ラ・ヴァルス』at サントリーホール

久しぶりに晴れた東京、残りの任期半年となったカンブルラン(w/読響)を楽しみに六本木まで行ってきました。


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今回はカンブルランが得意とする、このブログでもメインの、近現代音楽が中心ですね。
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前半はポーランド近現代音楽家二人の代表曲、後半はカンブルランが初演した現代音楽と興奮のワルツ "ラ・ヴァルス"という組合せ。素晴らしい配曲で炸裂的な音楽が並びました。





広島の犠牲者に捧げる哀歌
クシシュトフ・ペンデレツキ (Krzysztof Penderecki, 1933 - )

繊細なクラスター混沌と刺激的な特殊奏法の主題、それをカンブルランは殺伐とした風景の中を流れる乾いた風と、怪物の唸りと息遣いの様な対比で見せてくれましたね。
ペンデレツキ初期作品なので前衛性が高くて良かったです。



ヴァイオリン協奏曲 第1番 Op. 35
カロル・シマノフスキ (Karol Szymanowski, 1882 - 1937)

5CD聴き比べもしている好きな曲。シマノフスキは好きな作曲家の一人、ピアノ曲も含めて陰鬱幽玄が好みです。
元気なオケにブリブリ言わせるvnでは全く方向性が逆でした。パート毎の印象も不要でしょう。
アンコールもこれ見よがし、シマノフスキの後にそれは無いかと、個人的には。諏訪内さんの名前を見た時から推測はしていましたが残念でした。



静物, Natures Mortes
ゲオルク・ハース (Georg Friedrich Haas, 1953 - )

ハースらしい分厚いオケサウンド、モノフォニー的な無調単純動機、執拗なミニマル的反復といった派手な鳴り物です。空間を占拠する様な響きと轟には陶酔的煌めきがありました。そしてコーダは興奮から静へ。煌めきこそがカンブルランでしょう!
ハースの30分近くあるポストミニマル的陶酔サウンドが生で聴けたのは嬉しかったですね。普段のコンサートでは難しでしょう。




ラ・ヴァルス
モーリス・ラヴェル (Maurice Ravel, 1875 - 1937)

序奏は蠢くコントラバスにワルツの断面を乗せて期待値を上げました。緩やかな第一ワルツから優美な第二ワルツ、そして優雅な第三ワルツ、そこには大きくリズムを揺らした流れがありました。
激しい打楽器で色添えしてワルツを変形させ狂気を覗かせましたね。そしてリズムが狂い始める中後半からはまさにカンブルランの思うリズム感が溢れて、ラストは激しく乱れる音に錯乱的な美しさがありました。
CDではクリュイタンスのギクシャク感よりも激しさ美しさのデュトワが好きなのですが、カンブルランはラヴェルが変形させたワルツをグロテスクなまでにデフォルメさせた強烈濃厚なラ・ヴァルスを聴かせてくれましたね。




今日は後半二曲の陶酔郷の様な演奏が素晴らしかったですね。特にラ・ヴァルスの捻じ曲がったかの様な狂気のワルツは強烈。初めて聴く新しいラ・ヴァルスでした

カンブルランが任期最後になって入れた特別演奏会《果てなき音楽の旅》(2019-3/19)も現代音楽四曲(ヴァレーズ、メシアン、シェルシ、グリゼー)の素晴らしい選曲なので楽しみです。日本ではそうは行きませんでしたが、欧州ではカンブルランは現代曲振りですから。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





Phillips Léandre Parker Saitoh の前衛コントラバス『After You Gone』を聴く


バール・フィリップス
(Barre Phillips, 1934/10/27 - )
四人のベーシストの共同名になってはいますが、当然バール・フィリップスを紹介でしょう。エリック・ドルフィーやアーチー・シェップらと共演している米ジャズベーシストですね。この時点でフリー・ジャズとわかると思いますが、ヨーロッパでも活躍して即興前衛音楽(ジャンルを超越した)にも加担していますね。

フリー・ジャズと前衛現代音楽の接点は個人的にも影響は大きく、学生時代にフリー・ジャズから現代音楽に舵を切った自分としてはお馴染みの世界観かもしれません。当時はオーネット・コールマン(欧州時代にバールも共演があります)のクロイドンコンサートなんか大好きでしたね。もちろん電化マイルスは別格ですがw



After You Gone
ダブルベース・クァルテットの即興アルバムです。タイトル『居なくなってから』は2002年に亡くなったベーシストのペーター・コヴァルト(Peter Kowald)への追悼ですね。
カナダの現代音楽国際フェスティバル(Festival International De Musique Actuelle)での2003年ライヴで、当初予定のバリー・ガイ(Barry Guy)に代わり同音楽祭出演予定だった斉藤徹さんが入っています。


B.フィリップス以外の三人。(* )紹介はライナノートの記載です。
ジョエル・レアンドル, Joëlle Léandre
 (*欧州クラシック・現代音楽) フランス人女性現代音楽家でベーシスト、即興音楽で知られていますね。

ウィリアム・パーカー, William Parker
 (*アフロアメリカン・フリー・ジャズ) ニューヨークで活躍するベーシスト、作曲家、即興音楽家ですね。

齋藤 徹, Tetsu Saitoh
 (*伝統音楽・タンゴ・即興) ウィキではドイツ語版しかないというベーシストでw、冨樫雅彦さんとの活動あたりから始まっているようです。後年、欧州での活動でセバスチャン・グラムス(Sebastian Gramss)との共演も果たして今の国内外の前衛・即興ベーシストの立ち位置を確立していますね。


以前、現代音楽家でベーシストのセバスチャン・グラムス(Sebastian Gramss)の「THINKING OF ...」を紹介しています。
そこでも斉藤徹さんやレアンドル、そしてフィリップスの共演が聴けますね。2010年代に入って齋藤さんの尽力でS.グラムス(2014)やB.フィリップス(2012)も来日・共演を果たし、一部CD化もされています。







Ant Warps
ギコギコ・ゴリゴリのノイズ系ポリフォニーですね。リコシェなどありますが、特殊奏法は無い様です。時折現れる旋律は無調、全体は小刻みなリズムを感じる流れが作られています。


Passing Threw
神経質なボウイングによる細い音色を絡ませせた曲です。キィー・キューン・キュルルル みたいなw 静空間に細かな蠢きを感じる様です。


Whoop Yer Tal
コル・レーニョや特殊奏法らしき打音を元にピチカートやアルペジオといった単音が主役、そこにボウイングが絡む様相です。流れはもちろんポリフォニー、当たり前?w、で旋律も現れて音圧も上がりますね。レアンドルのvoiceもあり、反復も感じられて一番熱い演奏です


Teebay Deep
低音ロングボウイングを下敷きにして、太い反復が唸ります。どこかに重音共鳴も感じられて、まさにダブル・ベースならではのフリー演奏です。陶酔感があります。ひどく咳き込んでいるのも音楽?!


Bleu Grek
少しジャズ色を感じる和声のアルペジオ、そのポリフォニーです。おしゃべりなインプロヴィゼーションですね。


p.s.-Te Queremos
アンコールはとても美しい旋律が重なる演奏です。これだけはスコアがあるのではないかと思ってしまいます。不協和音を挟む和声の旋律がミニマル風に流れます。スペイン語タイトルからいってもP.コヴァルトを追悼しているのは明らかですね。




無調混沌のポリフォニー、自由自在ダブルベース・インプロヴィゼーションです。フリー・ジャズなのか前衛現代音楽なのか、音からも顔ぶれからもジャンルに意味がないという証明ですね。

六曲それぞれが異なる顔を見せてくれました。こういう音楽は生、小ライヴでもコンサートでも、で味わいたいですねぇ。




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テーマ : JAZZ
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2018年9月24日 ボンクリ 第2回『"Born Creative" Festival 2018』at 東京芸術劇場


日本を代表する若手?現代音楽家 藤倉大さんがDirecterを務める現代音楽の1Dayフェス。池袋まで行ってきました。


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コンサートホールでの「スペシャル・コンサート」は、メシアン、エトヴェシュ、ヴィヴィエ、と言ったこのブログでお馴染みの音楽家が並んでいます。
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作者不詳/ハナクパチャプ (Hanaq Pachap)
オリヴィエ・メシアン/おお、聖なる饗宴
 (Olivier Messiaen : O Sacrum Convivium)
二曲は連続、ハナクパチャプは合唱団が歌いながら入って来る宗教曲でミサの様です。メシアンもアカペラですが、美しさの中にメシアンらしい和声が響きましたね。


ペーテル・エトヴェシュ/バス・ティンパーノのための「雷鳴」
 (Peter Eötvös : Thunder for one bass timpani)
イサオ・ナカムラさんに献呈されていて、エトヴェシュらしい強音を生かしたバスティンパニのソロです。技巧とあらゆる音色を出して面白かったですね。


アルヴィン・ルシエ/Sizzles
 (Alvin Lucier : Sizzles)
オルガンの超低音がパーカッションを共振させて音を出す。一種のチャンスオペレーションで、タイコの皮が周波数共振で振動してその上の豆が踊るんですね。四つのパーカッションに人が付いて豆が跳ねると手をあげるというパフォーマンスもありました。


クロード・ヴィヴィエ/神々の島
 (Claude Vivier : Pulau Dewata)
演奏者(アンサンブル・ノマド)が使用楽器を選択出来るという偶然性?のミニマルorポストミニマルですね。トイピアノやバンジョー、ガムラン等が使われた13人編成で、東南アジアと中近東を合わせた様な民族音楽和声ミニマルでした。


大友良英/新曲
 (Yoshihide Otomo : tbc)
「あまちゃん」でお馴染みのターンテーブルも操るマルチ・ミュージシャンですが、多様性のバリバリ現代音楽です。
弦楽器の美しい機能和声の動機に管楽器が反復リズムで絡み、そこから混沌ポリフォニーが現れます。この展開は心地いいですね。演奏はノマドにナカムラさんの14人編成です。ご本人、多分、の指揮も一興でした。


坂本龍一/Cantus Omnibus Unus とそのライブ・リミックス
 (Ryuichi Sakamoto : “Cantus Ominibus Unis” and Live Remix by Jan Bang, Erik Honore, Eivind Aarset, Nils Petter Molvaer and Dai)
まずはオリジナルのアカペラ合唱曲ですが、美しい教会音楽の様でした。今回の藤倉選択はそんな感じ。

続く本日期待の同曲ライヴ・リミックス、注目の北欧(ノルウェー)勢アイヴィン・オールセット(g), エレクトロニクスのヤン・バングとエリック・オレノの二人が入ります。今北欧の前衛・即興・フリージャズは最先端の気配ですからね。
ドローンアンビエントですね。主役はちょっとマイルスを思わせるtp(ニルス・ペッター)でしたね。そこに合唱のエレクトロニクスが顔を出し、藤倉さんのシンセが色を付け、ギターがよくわからないw ギターは弾きませんね。右手は常に何かをコントロールしていました。音色もノイズなのかドローンなのか。興味は尽きません。


藤倉大/チェロ協奏曲 [アンサンブル・ヴァージョン/日本初演]
 (Dai Fujikura : Cello Concerto (Ensemble version / Japan Premiere)
今回のvc演奏者であるカティンカ・クラインを前提に書かれた超絶技巧曲。でも繊細でその中に美しさがあるのは藤倉さんの楽曲でしょう。もちろん無調で調性的動機もありません。vcの音色も細く澄んだトーンに終始、素晴らしかったです。アンサンブルも含め特殊奏法が用いられていないのも曲に合っていると感じました。






1Day"音楽祭"というくらいですから、メインのコンサート以外でも東京芸術劇場内の各スペースで現代音楽の出し物がありました。


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諸々都合で今の先端北欧前衛即興 "プンクト"「ノルウェーの部屋」が見られなかったのは残念無念!! とは言え、オールタイムフリーの「電子音楽の部屋」では"アクースモニアム"を使ったエレクトロニクスが、ポリフォニー混沌のフリーサウンドやアンビエントの多様な音をコラージュのごとく流して音の空間に浸れました。(小さな男の子が1人踊ってましたね)
中継ヴィジョンではルシエの電子空間音響が描く"I am sitting in a room"を日本語ver.で。ライヴエレクトロニクス(と言うかハウリング増幅⁈)空間の音世界をレクチャーしながら作っているシーンが流れます。
アトリウムのライヴでは黒田さんの前衛&ライヴエレクトロニクス尺八やイサオ・ナカムラさんのパーカッションの音色が鳴り響く。(黒田さんの一曲目、藤倉大さんの「korokoro」は響きが不思議だったので偶然お隣にいた藤倉さんにエレクトロニクスを使っているか伺った処、空間の音響のみとの事でした)

煌めく音楽のブロックが散らばっていて、なんとも楽しい音空間になっていましたね



音や空間、前衛といった現代音楽の世界を気楽に楽しめる初めてのスペースでした。こんな風に新しい音楽に接する事が出来ると先端音楽も身近に感じられますね。

フリースペースの出し物を増やして自由度を上げたらもっと楽しいかも。今回の大友さんとかも、その方がもっとピッタリくる気がしました。

また来年もやって欲しいですよね。でも、もっとオーディエンスがいてもいいよね〜ぇ、って感じでした。来年は皆んなで行こう‼︎




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





カレヴィ・アホ(Kalevi Aho) の「Wind Quintets 1 & 2」を聴く


カレヴィ・アホ
(Kalevi Aho, 1949/3/9 - )
現代北欧を代表するフィンランドの現代音楽家ですね。楽風は欧前衛ではなく調性を基本にした新古典主義から多様性方向にスタンスを置いた現代音楽になりますね。調性感は薄いですが動機(旋律)は存在して混沌ポリフォニーにはなりません。
気がつけばK.アホのアルバムのインプレも10CDを越しました。

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Wind Quintets 1 & 2
K.アホは交響曲でも管楽器のソロを取り入れてコンチェルト風にする事が多いですね。管楽器を使った曲に楽しさがあるのですが、今回の"管楽五重奏曲"はどうでしょうか。
演奏はBerlin Philharmonic Wind Quintetになります。






Wind Quintet No. 1 (2006年)
 I. Agitato – Cantando, II. Vivace, leggiero – Allegro marcato, III. Marziale, pesante – Furioso – Tempo I, IV. Andante, con tristezza
陰鬱的な音色の第一楽章、ヴィヴァーチェらしい細かいメロディーの第二楽章、不協和音的な主題が民族音楽的な第三楽章、ゆったりとした鳴りの第四楽章、いずれも不協和音を挟んだ動機の変装と反復、ホモフォニーの協調が印象的です。
強弱のコントラストは低めでフラットですが、中では第三楽章の倍音の様な響が面白いですね。


Wind Quintet No. 2 (2014年)
 I. Ruhig beginnend – Bewegter – Meno mosso…, II. Schnell, wild, III. Ruhig fließend, IV. Lebhaft
ここでも第一楽章は陰鬱さですが動機が明瞭化しています。第二楽章でも動機の調性感とホモフォニー感が強く回帰的な印象ですね。第三楽章は緩徐的美しさで、第四楽章は繊細な調べです。
8年後の作品としては変化が薄い気がしますが動機(旋律)の存在感は強く、陰的な美しさはこちらの方が感じられます。



耳馴染みの良い旋律が無い不協和音構成というだけで、現代のクラシック音楽です。毎回同じ事を書いていますかねw
例によってホモフォニー的協調の下、動機の変奏・反復が主体をなしていますが、後年作の方が機能和声回帰が強く感じられました。陰鬱な空気感は同じです。

ただ全体的にも楽章内的にもフラットさが気になり、何か+αが欲しい気がします。K.アホは大編成楽曲の方が面白いと思いますが、この辺りから現代音楽に入っていくには良いかもしれませんね。




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NEOSレーベル『 MUSICA VIVA 15 』で聴く、P.エトヴェシュ / B.A.ツィンマーマン / M.スモルカ


MUSICA VIVA 15
以前紹介したMUSICA VIVAシリーズについてですが再度記しておきますね。
『ムジカ・ヴィヴァ・ミュンヘン (Musica Viva München)』シリーズはCol Legnoレーベルのヴルフ・ヴァインマン(Wulf Weinmann, owner and label manager)が、バイエルン放送局主宰の同音楽祭(設立は1945年Karl Amadeus Hartmann)の音源をリリースしたものです。

基本的には欧州エクスペリメンタリズムで、ダルムシュタットやドナウエッシンゲンと同列の音楽祭でお馴染みの顔ぶれとなります。現代音楽ファンには知られたシリーズでが、その後ヴァインマンが新たに設立したNEOSレーベルに引き継がれて、この"15"がその第一弾だったと思います。

協奏曲的な二曲(+コーラス曲)で、ペーテル・エトヴェシュ指揮 バイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)の演奏になります。







ペーテル・エトヴェシュ
(Peter Eötvös, 1944年1月2日 - )
指揮者としてもお馴染みのエトヴェシュは今の時代の好きな現代音楽家の一人です。静と烈のコントラスト、特殊奏法とエレクトロニクス、調性も包括する多様性、と今の時代流れの現代音楽でしょう。
このアルバムの指揮も担当していますね。

Cap-ko (2005年)
  Concerto for Acoustic Piano, Keyboard, and Orchestra
二人のpfはPierre-Laurent Aimard (piano), Paul Jeukendrup (electric piano)になります。新古典主義からの流れを感じる様なエトヴェシュらしいメリハリ、ポリフォニーは時にホモフォニーの様に絡みます。pfも強鍵点描的に打たれてクラスターのオケと対峙します。強烈な音の出し入れがエトヴェシュの世界ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




ベルント・アロイス・ツィンマーマン
(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10)
少々古い現代音楽家として個人的に大好きな一人で、年代別の楽風変化等は既にインプレ済みですね。→ こちら

Konzert Für Violine Und Grosses Orchester (1950年)
 ヴァイオリンはマルティン・ムメルター(Martin Mumelter)で、頭から陰鬱で繊細でキレのある音色を響かせます。音量的にオケにやや被りぎみなのはmixingの問題でしょう。曲は民族音楽的旋律を織り交ぜながら派手なオケで飾り立てられています。調性的な旋律は時に対位的でまさにB.A.ツィンマーマンの初期終盤、新古典主義からセリエルへ足を踏み出す時期の作品ならではですね。

過去の同曲インプレ(vn:ハンス・マイレ、アレクサンダー・サンダーcond. ベルリン放送交響楽団のCD)と比べると、陰影は強くvnの音色も研ぎ澄まされていているのでより好みですね。




マルティン・スモルカ
(Martin Smolka, 1959/8/11 - )
プラハ生まれチェコの現代音楽家で、本国ではオペラ"Nagano"が有名です。ヴェーベルンやミニマル、米実験音楽の影響を受け、micro-intervals が特徴と言われていますね。楽風は調性回帰的です。

Walden, the Distiller of Celestial Dews (2000年)
  Five Pieces for Mixed Chorus and Percussion
2000年のドナウエッシンゲン音楽祭で初演されている、アカペラのコーラス宗教曲的楽曲です。 米の思想家・作家のヘンリー・デイヴィッド・ソロー(Henry David Thoreau)の書"Walden"を元に作られていて、自然を対象としているそうです。歌詞はライナーノートに載っていません。
曲は美しいコーラス作品です。殆ど出番が不明なパーカッションはWolfram Winkelです。



まず三曲目は美しい機能和声の合唱曲なのでインプレには含みません。

時代背景的には離れる二つの作品ですが、単なる無調混沌よりも多様性や新古典派風な流れに共通性を感じる事になりますね。やっぱりB.A.ツィンマーマンが50年ほど生まれるのが早かったと感じてしまいますね。
演奏は総じてエトヴェシュ色が出たでしょうか。本人作品も含めて明確な音の出し入れとコントラスト、特に強音の色付けですね。




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来日中のアリス=紗良・オット(Alice Sara Ott) の新譜『ナイトフォール (Nightfall) 』:ドビュッシー, サティ, ラヴェル を聴く


アリス=紗良・オット
(Alice-Sara Ott, 1988/8 - )
人気若手、どこまでを若手というかはありますが、のドイツ人ピアニストですがコンサートで観る限りは華奢な見た目と違ってソフトなソロよりも強鍵なコンチェルト向きだと思っています。

現在来日中で、本アルバム曲をメインにツアーを組んでいますね。


Nightfall
夕暮れ、夜の帳が降りる頃、と言ったタイトルですが、今更のドビュッシーとサティとラヴェルです。それも満を持してか超有名曲ばかりで、なぜ今更?といった疑念が頭を過ぎったりします。"夜のガスパール"以外はソフトタッチな曲ですし…
これだけの曲ですから誰でもイメージを持っていらっしゃると思いますが、私の頭にはドビュッシーはバヴゼ、サティは高橋悠治さん、ラヴェル*(夜のガスパールに関して)はアルゲリッチがいますね。

*ピアノ・ソロ曲に関して言えば何と言ってもアリス・アデールですね。




ドビュッシー : 1) 夢想, 2) ベルガマスク組曲全曲
流れる柔らかいパート、"夢想*"や"月の光*"はクールな優しさです。ベルガマスクの前奏曲・メヌエット・パスピエの様なメリハリがある方がオットらしい表情が生きていますね。スロー緩徐なパートより少しでも鍵盤を走らせる曲の方が彼女らしい気がしますがエモーショナルを排したそれがドビュッシーかと言われると…

サティ : 3) グノシエンヌ第1番*, 4) ジムノペディ第1番*, 5) グノシエンヌ第3番
サティの好みは無機質・無表情です。緩やかなディナーミク、ややスローのオットは良い気配を感じます。ジムノペディはもちろん、情感を抑えたグノシエンヌはなかなかですね。

ラヴェル: 6) 夜のガスパール全曲, 7) 亡き王女のためのパヴァーヌ
"夜ガス"はエモーショナルを殺した硬質な音色です。絞首台はクール、技巧性が売りの"スカルボ"も揺さぶりはありますがまとわりつく情感はありません。"パヴァーヌ"も表情を見せないクールさが悪くありませんね。


オットの主の流れはエモーショナルより表情を抑えた表現になっています。甘美さを避けた繊細さの印象は弱く、硬さを感じてそれがフランス印象派のピアノかと言われると微妙かもしれません。

冷めたクールな美しさ新しいフランス印象派表現ですかね? それなら淡々としたサティかラヴェルの"絞首台"や"パヴァーヌ"がいい感じですね。



【後日記*】
この後 9月にエレーヌ・グリモーが「メモリー」をリリースしましたが、四曲*がダブっています。そちらでオットとの違いもインプレしています。



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