デヴィッド・ラング(David Lang) の Child を聴く

米現代音楽家デヴィッド・ラング(David Lang, 1957/1/8 - )は、もちろんBang on a Can創設メンバーで代表作の2008年ピューリッツァー賞 音楽部門(Pulitzer Prize for Music) 受賞作『マッチ売りの少女の受難 The Little Match Girl Passion (2007年)』は以前インプレ済みですね。

ここでCDを3枚ほど続けてD.ラングをインプレしてみようと思います。まずは所有の中で一番古い「Child (2003年)」ですね。

五つの楽曲はラングの子供の頃からの思いでを元に、楽器編成の異なる室内楽になっているとの事。演奏はイタリアのアンサンブル:Sentieri Selvaggi* になりますね。
*楽器編成:flute(piccolo), clarinet(bass clarinet), piano, violin(brake drum), viola, cello(brake drum), vibraphpone(percussion), brake drum

Child / David Lang

1. My Very Empty Mouth, for flute, bass clarinet, piano, violin, viola and cello
 フィリップ・グラスを簡素化したような典型的なミニマルです。反復の中に機能話声的な旋律が隠れます。

2. Sweet Air, for flute, clarinet, piano violin and cello
 単純反復のミニマルですね。小音で優しい音色ですが、後半で民族音楽的なモード・リズムがわずかに感じられます。

3. Short Fall, for piccolo, piano, violin and cello
 不規則さを感じる拍子の小楽器編成のミニマルです。

4. Stick Figure, for clarinet, piano, percussion, cello and two non-percussionists
 細い音に打音の絡むミニマルですが、ミニマル感は弱いです。支配するのは細い音色の音階楽器で、これは一風変わったサウンドが感じられますね。とは言え曲を通しての変化が無い、薄いのは他の曲同様です。
 ★試しにYouTubeで観てみる?

5. Little Eye, for cello and four non-percussionists
 チェロ室内楽協奏曲ですが、チェロの反復にピアノの小音ポツリポツリと拍子を刻みます。このアルバムを通して感じる構成感ですが、全体の流れはフラット。悪く言えば退屈さを禁じえません。



ポストミニマル系や多様化したミニマルは面白いですが、これは個人的興味外の変化の無いミニマル音楽です。
全体を通して静的で美しいミニマルで、この美しさがわからないの?!! って言われるかもしれませんがw






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ジャンル : 音楽

今の時代の米現代音楽ならこの一枚, ジュリア・ウルフ(Julia Wolfe) の Anthracite Fields を聴く

好きな米女性現代音楽家ジュリア・ウルフ(Julia Wolfe, 1958/12/18 - )は、もちろんBang on a Can(以降BOAC) の創設メンバーの一人ですね。前衛とは一線を画すニューヨーク・ミニマルで、諸々紹介済みですので割愛です。

このアルバムは2015年末に発売された室内楽と声楽のためのオラトリオで、ペンシルベニア州の炭鉱労働者たちの過酷な環境を歌ったジュリア・ウルフらしい主張性の強い五楽章形式の楽曲になります。
その前年2014年に出たSteel Hammer(アメリカ開拓史伝説のアフリカ系アメリカ人"ジョン・ヘンリー"を歌っています)を思い出しますね。共に米歴史をモチーフとした構成ですね。

ちなみにAnthraciteとは高炭化度の無煙炭の事で米国が最大埋蔵量を誇って
います。良質石炭で当時は花形でしたが、現在の石炭業は微々たる規模です

フィラデルフィアのMendelssohn Clubによる委嘱作品で、2015年度ピューリッツァー賞音楽部門を受賞しています。ジュリア・ウルフは委嘱を受けて、炭鉱夫やその子供達の多くにインタビューを行い、様々な角度から表現したと書いています。(政治的な問題についても直面したそうです)
演奏はもちろんBOAC All-stars、合唱はThe Choir of Trinity Wall Street(cond. Julian Wachner) になります。2014年4月26日初演時の合唱は当然ながらMendelssohn Club Chorusでした。

Anthracite Fields / Julia Wolfe

1. Foundation
 1869-1916年の間の炭鉱夫の事故リストに乗った名前(姓)を歌っています。John名でAからRまでですね。
暗く淀む中に狂気の様な騒音、採掘機?の様な、が時折入ります。ドローンですが、歌詞は途中から詠歌の様に唱えられ声部の厚みを増します。その間も時折機械騒音の様なノイズが割り込み暗い空間音楽ですが、後半は声楽の厚みが宗教曲的に響く様に変化しミニマル的演奏も現れます。20'近い最も長い第一楽章で、素晴らしいです!!

2. Breaker Boys
 炭鉱で働く子供達はBreakerと呼ばれるシュートに運ばれる石炭から不純物を素手て取り除く作業をしていたそうで、それを歌っています。
テンポのあるミニマルで始まり、Mickyのかわいそうな運命から歌詞が進みます。途中ロンドの様に被りながら'Micky'が反復され、宗教曲的な展開やロックの様な様相も見せます。いかにもBOAC、ジュリア・ウルフの音楽と言った感じです。

3. Speech
 アメリカ鉱山合同組合(the United Mine Workers of America)の会長ジョン・L・ルイスのスピーチ原稿だそうです。ルイスは鉱夫の安全や環境改善に務めたという事です。
テープやレコードのノイズの様な音を入れています。重厚な独唱and合唱曲の趣です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  語りはギターのMark Stewartになります


4. Flowers
 一人の女性バーバラ・パウウェルのインタビューにある庭の花、それが互いに助け合える環境の象徴、に基づいているそうです。歌詞はそこにある花の名前を書いています。
美しいフォークソング風のギターの音色に合唱が被ります。ここでも合唱はロンド風になり、演奏も含めミニマル色を濃くしていきます。

5. Appliances
 石炭エネルギーがもたらす光と、その影についてです。詳細はぜひライナーノートの原文と歌詞を参照ください。
合唱に変化はありませんが、演奏もここでは主張しています。BOACらしい楽器編成の音色が生かされていますし、パワー溢れる激しいパートも存在します。そんな混沌の中にミニマルが波打ち迫力満点です。"怒りの日"の様な強烈さを感じますね。凄いです!!


試しにYouTubeで制作ドキュメンタリーを観てみる?



アメリカの歴史的背景から構築されたテーマ、そして今の米現代音楽を代表するBOACらしいサウンド、まさにアメリカの今の音楽です。
米現代音楽、決して前衛ではありません、を聴くときに絶対オススメの一枚です。
オラトリオ構成も素晴らしく、これからもジュリア・ウルフから目が離せません。




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Bang On A Can の Renegade Heaven を聴く

暑い日が続く東京、音楽を聴く気分になりませんねぇ。コンサートも夏の三ヶ月で一件しか入れていません。

この処、欧州現代音楽を中心にインプレしてきたので米現代音楽を少し続けて聴こうと思っています。と言うわけで前回に続きBang On A Can(以下BOAC)ですね。

これも古い、前回のClassics(2002年)の前の2001年リリース盤でBang On A Can All-Starsのメンバーも一緒ですね。例によってメンバー+αの楽曲を集めています。異なるのはproduceで、Evan Ziporyn と Damian LeGassick になっている事でしょう。(演奏もメンバー追加をしていますね)

Renegade Heaven / Bang On A Can

1. Believing - Julia Wolfe
メンバーのジュリア・ウルフの楽曲です。高速ミニマルで基楽器はチェロ、そこに各楽器が絡みます。即興的でカオスで興奮ですね。弦のトリルはエレキギターも含めて強烈です。後半はvoiceを含めて、陶酔的暴力的です。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
  BOAC公式YouTubeですが、CDより少しおとなし目かなw


2. Escalator - Arnold Dreyblatt
 Programmed By [Sample Programming] – Andrew Cotton
ドイツでも活躍するニューヨーク・ミニマル第二世代の現代音楽家アーノルド・ドレイブラットの楽曲です。ニューヨーク・ミニマルでいうとBOACは第三世代という事になる様です。
どこかにモードを感じるミニマルです。打楽器のリズムや反復の和声でしょう。リズムが主役の楽曲で、そこにトリル・トレモロが色合いを付けます。背景に敷かれた強音リズムは印象的ですね。今回はプロデュースに回っているジポリンが好きそうです。(サンプリングの使われ方は不明です)

3. I Buried Paul - Michael Gordon
 Sound Designer, Programmed By [Sample Programming] – Andrew Cotton
本アルバムでのBOACメンバーの楽曲提供は、このマイケル・ゴードンと一曲目のジュリア・ウルフのご夫妻だけですね。
特徴的な電子処理で歪んだ音色が序奏?で始まります。ミニマルですが、前衛を感じますね。ユニゾン風に声部を揃えた様な演奏をクレシェンド・デクレシェンドさせます。暴力的に発展して、ここでも強音が主役です。

4. Movement Within - Glenn Branca
 Electric Guitar – M. Stewart, Guitar [Harmonics Guitar] – R. Black, Guitar [Mallet Guitar] – S. Schick, Harpsichord – E. Ziporyn, L. Moore, Organ – M. Beiser, Sounds [Samples Created By] – Steve McCallister
グレン・ブランカ(Glenn Branca, 1948/10/6 - )は米前衛現代音楽家でギタリストですね。Guitar Ensembleや100人ギターの交響曲等とても興味深いです。いつかインプレが必要ですね。
G.ブランカですからミニマルではありません。尖った音響系サウンドで、楽器構成に特徴が見られますね。HarmonicsやMalletのギターとサウンドクリエーターのスティーヴ・マッカリスターの処理効果もあるでしょうが、これぞブランカサウンド。まるで教会の鐘の残響音を集めた様でグゥワ〜〜ン〜〜 って感じ。生で聴けたらもっと面白い!!でしょう。
 Harmonics Guitar は一本のネックの両側にボディーが二つ付いた、超変わったギターです。演奏方法でのハーモニクスとは違いますね。

5. Exquisite Corpses - Phil Kline
フィル・クラインは米現代音楽家で、様々な分野の芸術家とバンドを組んだり、上記4.のグレン・ブランカのギター・アンサンブルとツアーにも出ています。Bang On A Can Vol. 2 (1993)にも参加していました。
無機質な感じのミニマルから入ります。そこから変化が激しくなり、ジャズや単音反復、等拍にクラリネット、ポップ&ロック、と言った表情変化を見せて いかにもニューヨークのミニマルって感じで楽しいですね。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
  BOACではありませんせんが、The UNPLAY Festival in Brooklyn でのSRIRACHAの演奏です。




わりと強音のサウンドが支配するアルバムになっていますね。タイトルRenegade Heavenに合わせたのでしょうか。その中でも最後の二曲が面白く、やっぱり生でBOAC All-Starsを観たいと思いました。
エヴァン・ジポリンのプロデュースが冴えましたね。






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Bang On A Can の Classics を聴く

このブログではお馴染みの米現代音楽の雄 Bang On A Can(以下BOAC)のちょっと古いアルバムです。演奏はもちろんBang On A Can All-Starsになりますね。

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と言う訳でmarathonの活動等々割愛ですね。ちなみに当時(2002年リリース)のメンバーは以下、懐かしい顔ぶれです。[ ]内は現行メンバー(2017/7)になります。
・Bass – Robert Black
・Cello – Maya Beiser [Ashley Bathgate]
・Clarinet, Bass Clarinet, Soprano Saxophone – Evan Ziporyn [Ken Thomson]
・Electric Guitar – Mark Stewart
・Percussion – Steven Schick [David Cossin]
・Piano, Keyboards – Lisa Moore [Vicky Chow]

Executive Producer – David Lang, Julia Wolfe, Kenny Savelson, Michael Gordon


Classics / Bang On A Can

1. Cheating, Lying, Stealing – David Lang
 モード系の米現代音楽で、基本はミニマルですね。東南アジアの打楽器の様な音色を生かしてそこに色付けをしています。ミニマル感は打楽器音で強調されています。途中で中間部の様な展開があり、後半は陶酔感が強まりますね。

2. Lick – Julia Wolfe
 一曲目の延長の様な打音から入りますが、パルス的な音楽です。主張性が強く強音パートは即興的ポリフォニーの凶暴さも感じます。ポストミニマルでジュリア・ウルフらしい音楽ですね。惹かれます!!

3. The Manufacture Of Tangled Ivory - Annie Gosfield
 N.Y.で活躍するアニー・ゴスフィールド(Annie Gosfield, 1960/9/11 - )はビデオやダンスも包括するインスタレーション系現代音楽家です。
微分音と特殊奏法のpfを主役にした前衛でミニマル感ない流れから入ります。途中から激しいアフリカン・モード的打楽器連打がミニマルの方向を見せたり引用的な旋律が出ます。二曲目とは激しさつながりの様な展開です。ここでも後半は陶酔系ですね。
 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

4. Tsmindao Ghmerto – Evan Ziporyn
 ジポリンらしくバスクラの技巧的モード旋律から入ります。その旋律をミニマル展開しながら美しい音色を聴かせるのはさすがです。他の曲にある後半盛り上げ型ではありません。この人がBOACから抜けたのは痛いと個人的に思っています。
 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

5. Red Shift – Lois V Vierk
 米女性現代音楽家ロイス・V・バーク(Lois V Vierk, 1951/8/4 - )は紹介済みですね。
電子音ノイズ系音楽な音色のグリッサンド・ドローンです。それこそがバークの音楽ですね。ボワ〜ンとした音世界から打楽器他の楽器が入り混んできてテンポのあるミニマルになり、音の厚みをグイグイ増します。

6. Amalia's Secret – Nick Didkovsky
 現代音楽家のニック・ディドコフスキーは、電子音楽を得意として'Doctor Nerve'のリードギタリストでもあります。
ベースのジャジーな反復にクラが即興系に答えて入り、そのリズムに他の楽器群がストイックに絡みながら前衛ジャズの様な音楽になります。後半は音数の少ないベースとピアノのデュオにエレキギターと打楽器が狂気の様な音で流れ込みます。ベースのテープ(事前録音)も使われている様です。

7. Industry – Michael Gordon
 透明感のある弦の音色が時間をかけてクレシェンドしながら歪み、クライマックスから他楽器が入り等拍パルスからノイズへ、ラストは興奮です。もちろんBOAC創設メンバーの一人でジュリア・ウルフの夫ですね。



今やビッグネームになったBOAC創設メンバーと他3人の米現代音楽家の作品集で、欧州エクスペリメンタリズムとは一線を画す米現代音楽、モードとミニマル、を味わえますね。
後半盛り上げ系の曲が多く見られるのは今と違う時代感を感じるかも知れません。






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ヘンツェ(Hans Werner Henze)のレクイエム(REQUIEM)を聴く

前衛系現代音楽好みとしては少々方向性が異なりますが、ここで何枚か紹介しているハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze, 1926/7/1 - 2012/10/27)のREQUIEMです。

レクイエムとは言え合唱パートは無く、一曲目こそ「入祭唱(Introitus)」ですが曲数は少なく最後は「聖なるかな(Sanctus)」で終わっています。

指揮:メッツマッハー(Ingo Metzmacher)
室内楽:アンサンブル・モデルン(Ensemble Modern)
ピアノ: ウエリ・ヴィゲット(Ueli Wiget), Ensemble ModernメンバーでZappaのYellow Sharkにも参加
トランペット:ホーカン・ヘルデンベルゲル(Håkan Hardenberger), 言わずと知れたソリストですね

1993年Ensemble Modern初演の前に、各楽章は個別初演されていて V, VIII, IXは1992年に東京でN響により初演されていますね。

REQUIEM / Hans Werner Henze

REQUIEM (1993年) Nine Sacred Concertos for Piano Solo, Trumpet Concertante and Chamber Orchestra
 I. Introitus: Requiem - Il. Dies Irae - Ill. Ave Verum - IV. Lux Aeterna - V. Rex Tremendae - Vl. Agnus Dei - Vll. Tuba Mirum- VIll. Lacrimosa - IX. Sanctus
ヘンツェの後期作品らしく静音とクラスターの交錯が主流で、その中に幽玄な旋律が見え隠れする無調の音楽です。(全体の構成も、各パートの構成も)
その中で「2.怒りの日(Dies iræ)」は暴力的なTpと管群、「4.死者ミサの聖体拝領唱(Lux æterna)」から「5.恐るべき御稜威の王(Rex tremendæ)」のpfとtpの切れ上がるスリル、「7.奇しきラッパの響き(Tuba mirum)」それらはいずれも室内楽を超えた迫力が感じられます。それに対して初曲と終曲は静的です。
無調の現代音楽でありながら聴きやすさを感じるのは、混沌ポリフォニーでなく旋律感のあるホモフォニー風(和声構築はないので"主+伴"的)だからでしょう、か。

試しにYouTubeで観てみる?
「2.怒りの日(Dies iræ)」になります




ミサを元にする宗教曲の色合いは、ありません。交響曲第9番の方が宗教傾向を感じましたね。その分、後期ヘンツェの現代音楽として聴かせ処も多く含まれて楽しめます。コンサートで聴くと最高でしょう。
ただ問題は、いつもの事ですが、宗教的に理解できない部分があると思っているので単純に音楽として楽しんでいいのかが難しいです。





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