B.A.ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann)の「ユビュ王晩餐の音楽」他
"ちょっと古い現代音楽家" 個人的好みトップ3の一人、前衛現代音楽を拒否した前衛現代音楽家ベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10) です。今までに前期から後期までの作品をインプレ済みです。
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でもとりあえず3,4枚ほど続けてインプレしたいと思います。代表作と作風等の紹介は過去記事にありますので、よろしくお願いします。
管弦楽集です。初期の新古典主義2曲、中後期2作で「ユビュ王晩餐の音楽」が入っているのがポイントです。
演奏は、Peter Hirsch / WDR Sinfonieorchester Köln になります。
Bernd Alois Zimmermann
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■ Sinfonie in einem Satz (1951年), für großes Orchester (1. Fassung)
新古典主義時代の一楽章の交響曲です。まだ機能和声ですが、それはそれで面白いです。表情変化があり、バレイ曲か歌劇仕立ての様な曲です。イメージは標題音楽風で基本は派手な展開です。オルガンが使われていて、代表作後期オペラ「兵士たち(Die Soldaten)」が予見されるとライナーノートにあります。
■ Giostra Genovese (1962年), Alte Tänze verschiedener Meister für kleines Orchester
イタリア語題の付いた曲で、16-17世紀音楽バロックの音楽そのものの引用パロディです。
giostraは英語のvortex(渦巻き, 回転)の事でツィンマーマンが引用する詩人で音楽家のエズラ・パウンド(Ezra Pound)を元にしているそうです。これが進化して「ユビュ王晩餐の音楽」の様になると言っています。
■ Konzert für Streichorchester (1948年)
新古典主義時代の弦楽オーケストラのための協奏曲です。一曲目のSinfonie in einem Satzよりも強弱のコントラストは低めで、調性感の薄い不協和音が特徴的です。時代は十二音技法からセリエルで、この後ツィンマーマンもそちらへ舵を切るわけですが。
■ Musique pour les soupers du Roi Ubu (1966年), Ballet noir en sept parties et une entrée
ダダイズム不条理文学のアルフレッド・ジャリ(Alfred Jarry)の1888年のシュルレアリスム演劇の魁、戯曲『ユビュ王』を元に作らた「ユビュ王晩餐の音楽」です。この時点で狂気を感じます。シュトックハウゼン批判で知られる徹底引用(quotation)の曲で、ツィンマーマンを語る時に必ず出てくる逸話の曲でしょう。
徹底した引用で、どこかで聴いた旋律が次から次へと登場します。バロックからワーグナー、自身の「兵士たち(Die Soldaten)」と時と時代のコラージュ。まさにツィンマーマンの世界です。この先にコラージュの傑作「ある若き詩人の為のレクイエム」が来るわけです。
★試しにYouTubeで聴いてみる?
こちらのギーレン盤の方が引用の見せ方がうまいです。一聴の価値ありです。
このアルバムは初期の新古典時代と、最も特徴的な引用コラージュを2曲づつ配したツィンマーマンの両極を楽しめます。
知らずに聴いたら、なんでしょこれって???、と言う感じでしょうw ツィンマーマンを知る手がかりとしておすすめです。