カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho) の Let The Wind Speak を聴く

このブログでもお馴染みの女性現代音楽家、カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho, 1952/10/14 - )は、フィンランドらしからぬ欧エクスペリメンタリズム系ですね。(過去記事で紹介済みです)

2015年来日時のカリ・クリーク(fl)によるフルート協奏曲は印象深かったですね。フルート現代曲は彼女の得意とする分野であり、このアルバムも1982年コラボから付合いの長いカミラ・ホイテンガ(Camilla Hoitenga, fl)をフィーチャーしたフルート曲集になります。

他演奏者は楽曲により以下のメンバーです。
 アンッシ・カルットゥネン,Anssi Karttunen (cello) - 2, 8, 9, 11
 ダニエル・ベルチャー,Daniel Belcher (bariton) - 4, 5, 6
 エロイーズ・ドトリー,Héloïse Dautry (harp) - 1
 ダ・カメラ・オブ・ヒューストン,Da Camera of Houston - 4, 5, 6

Let The Wind Speak / Kaija Saariaho

01. Tocar (2010年)
ハープとのデュオですね。独特な和声、日本的?、を感じる曲で旋律が存在します。特殊奏法は感じませんが、フルート:主、ハープ:従 の関係が成立ち、フルートは和笛の様に流れてハープはオブリガート的です。

02. Mirrors I (1997年)
パートI, II, III が分割されて収録されているチェロとのデュオです。ここでも近年につながるサーリアホらしさが明確ですね。旋律の存在(フルート)と伴奏(チェロ)、そのせめぎ合いです。ややノイズ風でチェロはグリッサンドを多用します。

03. Couleurs du vent (1998年)
フルートのソロです。旋律は01ほど民族和声ではありませんが、その方向性です。ここでも実は伴奏があり、ホイテンガの吹きながらの呟きが入ります。テクニカルでスピード感と鋭利性が感じられますね。

04-06. Sombre: I - Canto CXVIII, Sombre: II - Canto CXX, Sombre: III - Fragment (2012年)
バリトンとアンサンブル(ダブルベース, ハープ, パーカッション)、そしてバス・フルートの曲で世界初録音。Da Camera Society of Houston 委嘱作品になります。Textは米詩人エズラ・パウンド(Ezra Pound)のCantosからになり、このアルバムでは最近年曲です。
音の響を生かした音響系で今のサーリアホらしい楽曲です。旋律と主従の関係から、空間音響系に推移しています。ドローン音に支配される様な単純な響ではなく、旋律と各楽器の音色や響の組合せで成立させていますね。とても興味深いサウンドです。
奏法や歌詞はこちらから確認する事ができます。(チェスター出版社のサンプルpdfです)

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2013年2月24日の世界初演の様子です。演奏はもちろんDa Camera of Houstonですね。


07. Dolce tormento (2004年)
フルートのソロでここでも呟きが入ります。旋律はより機能調性感が強まります。

08. Mirrors III (1997年)
part II の前に III がきます。基本スタンスは02の I と同じです。

09. Oi Kuu (1990年)
チェロとのデュオです。"Mirrors"との相違は電子処理がある事でしょう。その分音響系音楽であり、面白さは伝わりますね。

10. Laconisme de l'aile (1982年)
フルートのソロで、ここでも呟き語りありです。なにやら特殊奏法が入っていますが、旋律は機能調性的で透明感のある先鋭的幻想美です。

11. Mirrors II (1997年)
Mirrors の II です。同じ曲想になりますね。デュオでライヴ受けしそうな楽曲です。



近年に至るこの年代間のサーリアホの楽風変化、エレクトロニクス - 旋律と主従 - 空閑音響、が味わえますね。そして彼女が得意とするフルートで、メインは2012年の "Sombre I, II, III" でしょう。


このブログのサーリアホ関連投稿記事



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エリオット・シャープ(Elliott Sharp) の Tranzience を聴く

米現代音楽家エリオット・シャープ(Elliott Sharp, 1951/3/1 - )は前衛系で、特に電子音楽に関しては米国でも早くから取り入れていました。Terraplane, Carbon といったアンサンブルを率い、またギターを中心として自らのパフォーマンスも見せてくれますね。
現代音楽の作曲はモートン・フェルドマンらに師事しています。また作品はアンサンブル・モデルンやクロノスQ.にも取り上げられていますね。楽風はノイズでありノー・ウェーブ系(パンクロック・サブカルチャー)です。

本アルバムは2016年発売の室内楽集になります。エリオット・シャープ曰く、数学や科学は宇宙の生データを解析して秩序付けるものであり、自分の創作はそんな中に見る不合理や直感と合理性があるとの事です。

Tranzience / Elliott Sharp

Tranzience (2013年)
[JACK Quartet] Chris Otto, violin; Ari Streisfeld, violin; John Pickford Richards, viola; Kevin McFarland, cello
弦楽器のトリル、トレモロを徹底的に使ったノイズ系の前衛音楽です。もちろん長音もからみながら、アゴーギクを振っています。それに前衛ミニマルとでもいう様な反復が乗ってきます。28分ですが、ポリフォニーも組み込まれたりと表情変化はとても豊かです。

Approaching The Arches of Corti (1997年)
[New Thread Quartet] Geoffrey Landman, Kristen McKeon, Erin Rogers, Zach Herchen, soprano saxophones
ソプラノ・サックス四重奏曲です。ここでは極端な特殊奏法もなく、ミニマル的な反復を長音との組合せを生かしています。反復の中に楽器間の微妙なズレ(ライヒのフェイジングに様な?)も使っていますし、長音では共鳴音もある様です。ミニマル・ポリフォニーなパートもなかなかです。

Homage Leroy Jenkins (2008年)
Joshua Rubin, clarinet; Rachel Golub, violin; Jenny Lin, piano
クラリネット- ヴァイオリン - ピアノ三重奏曲です。旋律が多く感じられる音楽です。もちろん無調ですが、反復もなく旋律がからむパートは調性感さえあります。でも、その後は反復ノイズ系音楽&トリル・トレモロの波がやってきます。後半の民族音楽の様な音色は米現代音楽らしさを感じますね。

Venus & Jupiter (2012年)
[Either/Or] Stephanie Griffin, viola; Margaret Lancaster, alto flute; Chris McIntyre, trombone; Joshua Rubin, bass clarinet; David Shively, marimba; Alex Waterman, cello; Richard Carrick, piano, conductor; w/Elliott Sharp, electroacoustic guitar
こういう楽器編成が個人的には好きな米現代音楽ですね。曲風は同じですが、楽器の音色で表情の広がりがありますね。ポリフォニーでは楽器編成が広がった分の混沌が現れてきます。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
 世界初演のステージです。もちろんEither/Orと本人のE.ギター&指揮です。




様々な楽器編成でエリオット・シャープの反復&トリル・トレモロのノイズ音楽が楽しめますね。その中に旋律が存在するのが米現代音楽と言う感じです。
即興的混沌や微分音の様な極端な不安定感は少なく聴きやすいノイズ音楽?!ですね。
ノイズ系現代音楽を聴いてみるにはおすすめですね。



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2017年4月18日 A.ギルバート/都響 の ジョン・アダムズ「シェヘラザード.2」at 東京オペラシティ ★☆

都響定期Bがサントリーホール改修中のため、初台の東京オペラシティへ。ここは京王線一本で近いですから楽ちんです。
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今更何が話題かは言うまでもないでしょうが、事前にCDインプレしていますので そちらをご笑覧くださいね。
前半はマ・メール・ロア(バレエ音楽版)で、頭の中はデュトア/モントリオール響の澄んだ美しい音色です。



・ラヴェルマ・メール・ロワ《バレエ音楽版》
演奏の素晴らしさとは別にやや好みの演奏とは異なりました。どちらかというとシャープでしょうか。愛おしさを思わせる様な美しい流れがより感じられると個人的な方向ですがw
 都響は丁寧な演奏ですが、好みから行けば管楽器とソロのvnの音色に より優しい美しさを感じられると嬉しかったです。
この曲では上記の様に好みがはっきりしているので仕方ありませんね。もちろんブラボー大喝采で、演奏が素晴らしかったのは事実です。^^;


・ジョン・アダムズシェヘラザード.2《ヴァイオリンと管弦楽のための劇的交響曲》
ちょっと騒々しいこの曲をコンサートで楽しむなら、ライブならではの情熱溢れた熱演でしょう。ジョセフォウィッツのヴァイオリンでそれが堪能できましたね。都響も好演でしたが、もう一つCDを超える何かがあると尚良かったかと。
 CDのインプレでも書きましたが、通して激情的展開で楽章間での変化が乏しいのはやっぱり楽曲の個性でしたね。第二楽章で緩徐パートがありますが、明確な抑揚や変化が欲しい気がしました。
都響は終始乱れのない充実の演奏でしたが、それに少々暴れるくらいの情熱が加われば最高でした。
今回楽しませてくれたのは二人。主役のvn, リーラ・ジョセフォウィッツ(Leila Josefowicz)は、この曲を手の内にした熱演で素晴らしかったです。大喝采でした。
そしてツィンバロン、生頼さんが隠れ熱演で良かったです。情熱でジョセフォウィッツと渡り合っていましたね。




アラン・ギルバート/都響は昨年7月25日のマーラー第5番で見せてくれた情熱ほとばしる見事な演奏とまでは行きませんでした。
期待値が大きかったので少しだけ残念な感が残りましたが、二曲とも充実の演奏で大喝采でした。^^



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2017年4月15日 カンブルラン/読響 の バルトーク「青ひげ公の城」at 東京芸術劇場 ★★☆

春本番、満開の桜もあっと言う間に葉桜になった東京です。そんな中、池袋まで行ってきました。
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シルヴァン・カンブルラン(Sylvain Cambreling)のバルトーク(Bartók Béla, 1881/3/25 - 1945/9/26)「青ひげ公の城(Bluebeard's Castle)」は、やっぱり興味津々ですね。
今回の三曲は今年11月のメシアン「アッシジの聖フランシスコ」に向けたカンブルランの選択とか。一曲目のメシアン「忘れられた捧げもの」は、好演だった1月31日の「彼方の閃光」と似た曲調でもあり期待値は高かったです。



・メシアン忘れられた捧げもの管弦楽のための交響瞑想
弱音パートでの寒色的な美しさが弱い代わりに色彩感の演奏。個人的にはもう少し幻想的な方が好みでした。
 静音パート「十字架 La Croix」では思いの外 音が厚く色彩感がありました。期待の薄かった強音パート「罪 Le péché」が、読響の管楽器の美しさに適度な興奮が加わり良かったですね。続く「聖体 L'Eucharistie」の弦楽静音パートは期待の美しさでしたが、もっと薄くても良かった様な...


・ドビュッシー聖セバスティアンの殉教交響的断章
ここでも同じ傾向でした。 最終楽章では、薄い幽幻さのある美しさがバランスされて素晴らしかったですね。


・バルトーク青ひげ公の城Op.11(演奏会形式/字幕付き)
 ・ユディット[メゾ・ソプラノ]:イリス・フェルミリオン(Iris Vermillion)
 ・青ひげ公[バス]:バリント・ザボ(Balint Szabo)

この曲の印象を大きく変えさせらせる素晴らしい演奏でした。陰鬱な陰の様な世界から、青ひげと城に隠された秘密が彫り深く表現されました。(この曲だけなら★★★です)
 冒頭の吟遊詩人の口上はカットでしたね。まずは、ユディットのフェルミリオンですが良かったです。初めは陰鬱さに欠ける感が強く感じられましたが、聴くうちにオケとマッチした情熱に引き込まれました。
青ひげ公のザボは印象通りの好演。
何より演奏でしたね。カンブルランの描く青ひげの秘密とユディットを見事に表現しました。
ともすれば抑揚の薄い退屈な展開となる曲ですが、カンブルランは出し入れの効いたストーリー展開を見せてくれましたね。ユディットの気持ちの強さといい、バラージュの台本に近いのではないでしょうか。
ポイントの一つは長いパートのホールのシーンと「涙の湖」の部屋のシーンでしょう。ここを中だるみなど全く見せませんでしたし、バンダの入ったパートの迫力も素晴らしかったですね。ラストも綺麗に納めました。
出来れば三人の妻たちの呻き声があればより良かった気がします。




前半二曲はやや好みとの違いが先立ちましたが、後半の青ヒゲは素晴らしい展開でした。大方のオーディエンスの反応もそんな感じだった様な気がします。
結局カンブルランの方針は一貫していましたね。

そして読響の華やかな管楽器生き生きとそれに答える好演でした。このセットの良さを楽しめました。



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ジョン・アダムズ(John Adams)のシェヘラザード2を聴く:都響公演(本邦初演)を前に

都響のコマーシャルが飛びまくるジョン・アダムズ(John Coolidge Adams, 1947/2/15 - )の昨年作品「シェヘラザード.2)」を聴いておきましょう。もちろん都響定期公演(A.ギルバート指揮)のチケットを持っている4月18日公演の予習ですね。
とはいえ、定期公演のチケットがなければ楽風から見て行く事は無いでしょう。また、個人的には2005年度武満徹作曲賞とコンポージアム2005を個人的な商業的理由からすっぽかした悪印象から逃れられませんが...(汗)

この作品は日本初演(Japan Premiere)ですね。騒がれていますが、ポイントは以下の様です。
1.今回指揮のアラン・ギルバート指揮による初演で2回の日本公演が45・46回目の話題曲である事 2.ヴァイオリンが主役のコンチェルト風(作品を献呈されたリーラ・ジョセフォウィッツが全ての演奏会でvn独奏) 3.ツィンバロンが使われている事(本ブログでは紹介済み)

シェヘラザードと言えばリムスキー=コルサコフですが、その関係や今の時代のシェヘラザードを描いた事は本人の語りでどうぞ。

Scheherazade.2 / John Adams

第1楽章:若く聡明な女性の物語 - 狂信者たちに追われて / I. Tale of the Wise Young Woman - Pursuit by the True Believers
 いきなりのツィンバロンとvnの音色で始まります。第一印象は現代音楽ではなく、映画音楽風の標題音楽という事ですね。各楽器が役割を持っていて、機能和声での旋律がアラビア風サウンドを奏でます。ツィンバロンの音色も一役買っています。
主役のvnは雄弁で語りの様な旋律です。

第2楽章:はるかなる欲望(愛の場面) / II. A Long Desire (love scene)
 楽章は変わりますが、構成感は変わりません。構成がソナタ形式を採用しているのかも一回目では主題やトリオ(曲調変化はわかりますが)は不明です。

第3楽章:シェヘラザードと髭を蓄えた男たち / III. Scheherazade and the Men with Beards
 ここでも同じです。緩徐楽章を入れてもよかったのではないかと思ってしまいますね。

第4楽章:脱出、飛翔、聖域サンクチュアリ / IV. Escape, Flight, Sanctuary
 最終楽章もアクの強いアゴーギクとディナーミクは変わりません。四楽章通して常時劇的シーンの様な流れは少々疲れる感が拭い切れません。(断片的に緩徐シーンはありますが...)
最後は静的に終了します。
ちなみに、vnのLeila Josefowiczは刺激的な演奏を見せてくれました。そこはコンサートが楽しみですね。



ヴァイオリンがシェヘラザードとなって語る千夜一夜物語音楽「劇的交響曲」ですね。そういう意味ではリムスキー=コルサコフの様な音楽性よりもストーリー性が濃厚です。同じストーリー性で言えばR.シュトラウスの「ドン・キホーテ」の様な後期ロマン派音楽作品というよりも、より出し入れの強い映画音楽風でsolo-vnの出番も多いです。

今の時代のクラシック音楽 ヴァイオリン協奏曲風でしょうか。というよりも、コンサート受けを考えて作られている感じもしますね。オケはドンシャン風、vnもキレキレですからw



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先月発売の アムラン と ブニアティシヴィリ で聴き比べるラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番

ここ近々で発売されたセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov, 1873/4/1 - 1943/3/28)のピアノ協奏曲第三番、注目の二枚を聴き比べてみようと思います。
言わずと知れた人気の超絶技巧ピアノ・コンチェルトですのでラフマニノフと曲の紹介は割愛ですね。
それにしてもジャケットもモノクロでタイトルが赤と似ていますよね。

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かつてハマっていたアムランのCDは10枚以上インプレ済みだと思いますが、近年は来日がありませんね。
マルク=アンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)と書きますが、発音はマルカンドレ・アムラン。そんな事は音楽に関係無いと思いますが、こだわる人もいて日本語化は面倒です。

Medtner Piano Concerto No.2, Rachmaninov Piano Concerto No.3 / Marc-Andre Hamelin

ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
 全体スローです。第一楽章の例のカデンツァ(長くなるのでオリジナルとオッシアの件は割愛w)は切れ味の効いた、これ見よがしの無いシャープさです。アムランらしいですね。第二楽章のエピソードなどもピアノの歯切れの良さは素晴らしいですね。通してピアノパートは派手さを抑えたアムラン・パターン、オケも控えめで落ち着いたコンビネーションです。pfはたとえ強音パートでも興奮より雄大さ。ユロフスキ指揮/ロンドンフィルも寄り添うように必要以上の盛上げを回避しています。全てで音の粒立ちの良さはアムランらしい さりげない超絶テク、まさにクール!
コンサートで熱狂を誘う様なあざとい演奏とは一線を画した、アムランのコンチェルトですね。

□ メトネル・ピアノ協奏曲第2番
 カップリングはメトネル(Nikolai Karlovich Medtner, 1880/1/5 - 1951/11/13)です。と言ってもアムランとイリーナ・メジューエワくらいしか浮かびません。アムランのアルバムで初めて聴いたのが正直なところです。ラフマニノフの7歳上、印象はロシア的ロマン派ですね。
まさにそんな曲ですが、ここでのアムランはラフマニノフよりも饒舌です。表情を強く出す様なディナーミクと見合ったpfの力を見せてくれますね。特別面白い曲でも無いのですが、打鍵の切れ味の良いアムランのpfが最大の魅力です。



見た目の肉感的(失礼!)な様相とは違うエモーショナルさが好きなピアニスト、ブニアティシヴィリ(Khatia Buniatishvili)です。この二曲は不安感でした。大向こうを唸らせる演奏が今のブニアティシヴィリの個性に合ってとは思えない気がするからですね、個人的にですが。

Rachmaninoff Piano Concertos Nos 2&3 / Khatia Buniatishvili

ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
 速めでアゴーギクを振ります。第一楽章のカデンツァは濃い感じがブニアティシヴィリらしく無い気がします。速めな分、pfは技巧を見せつけたくなる展開ですがそこはブニアティシヴィリ、明るいパートやスローなパートでの情感あるエモーショナルさを聴かせます。この曲の持つ美しさを最大限表すブニアティシヴィリの良さですね。ただ、オケ(P.ヤルヴィ/チェコフィル)はもったいぶった陰影を付け過ぎのきらいが感じられます。強音パートでのpfのブニアティシヴィリも今ひとつ、そこでのネガティブ感が強いですね。プロデューサー、グロスの責任?w

□ ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番
 カップリングされたのは第2番、ここでも同じ事が感じられます。確かにこの二曲は重厚壮大さでコンサートでは大受けとなるわけですが、ブニアティシヴィリの良さを生かすのが本当にその王道でP.ヤルヴィ/チェコフィルの様なセットなのかなぁ、って思います。ブニアティシヴィリの感性を生かした解釈で新しいラフマニノフのピアノ協奏曲を作っても良かったのでは。今更リヒテルも無いでしょうし、アルゲリッチから脱却してもいいと思います。その手はラン・ランあたりに任せて、今の時代の新しい演奏が聴きたいですね。

このブログのブニアティシヴィリ関連投稿記事



クールなヴィルトゥオーゾ、アムラン。際立つ超絶技巧を軽々と難なく見せつけるスタイルはやっぱり素晴らしく、買って損なし!!です。メトネルの情熱ある演奏も良いですね。久しぶりのアムランを楽しめました。
 一方ブニアティシヴィリは彼女らしい情感の高さを生かすも、重厚な興奮を求めたくなるパートでその良さが生かせず。もし、そのパートを音楽監督やプロデューサーが新しいオリジナリティを考えていたらもっと違った世界があったかもしれません。良い悪いはわかりませんが、期待したブニアティシヴィリではありませんでした。



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ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ(Galina Ustvolskaya)の ピアノ作品集(Piano Sonatas No.1-6, 12 Preludes)を聴く

超個性的なロシアの女性現代音楽家ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ(Galina Ustvolskaya, 1919/6/17 - 2006/12/22)のピアノ作品集です。ショスタコーヴィチとの師弟関係等は以前に紹介済みです。

何と言っても後期のホモフォニーで単拍子のクラスター音楽は似た世界がありません。このアルバムでは1947年から1988年にかけてのピアノ・ソナタと1953年の12 Preludesが楽しめます。
ピアノはイワン・ソコロフ(Ivan Sokolov)です。ウストヴォーリスカヤのピアノ曲集は多数出ているので、本来ならヒンターホイザー(Markus Hinterhaeuser)らとの聴き比べが必要でしょうが、今回は楽曲のインプレになります。

Piano Sonatas No.1-6, 12 Preludes / Galina Ustvolskaya

■ ピアノ・ソナタ第1番 (1947年)
四楽章の音列配置的な楽曲です。第三楽章は緩徐楽章ですが、全楽章で打鍵の強さを感じますね。一つ一つの音が存在感を持つのはこの時代から既に確立されていた感じです。基本的には新ウィーン楽派ピアノ曲からの派生の様相です。

■ ピアノ・ソナタ第2番 (1949年)
二楽章で#1に似ている展開です。一つの音符に明瞭に打たれる強い打鍵音はウストヴォーリスカヤですが、全体としては音列配置風の音楽の域を脱しませんね。ただ、後半楽章で旋律的な展開や反復が見られる様になります。

■ ピアノ・ソナタ第3番 (1952年)
一楽章形式になります。反復が採用され、打鍵音には強弱の変化が大きくなります。基本的にはアルペジオ点描的音列ですが、表情変化が明らかに認められる様になりますね。

■ ピアノ・ソナタ第4番 (1957年)
時代はトータルセリエルからポストセリエルへの時代。四楽章形式に戻りますが、強弱のコントラストと旋律の存在、そして反復が明確になります。和音やトリル展開も入り、それが音列配置の中に何か超える楽風を見せ始めます。

■ ピアノ・ソナタ第5番 (1986年)
何と約30年を隔てて創られた一楽章のソナタです。いきなりの強音展開です。和音でのクラスター音は音塊です。基本に流れるのは反復構成で、緊迫感を増していますね。静音との対比で、それが一層感じられますね。後期のウストヴォーリスカヤらしいパワーが溢れています。

■ ピアノ・ソナタ第6番 (1988年)
一楽章で、よりおどろおどろしい気配が強くなります。執拗な反復と低音域の和音クラスターの組み合わせは単拍子で特徴的、ピアノがゴワ〜ンと共振しているのがわかります。無比のウストヴォーリスカヤのとんでもない素晴らしさです。

試しにYouTubeで聴いてみる?
 楽譜付です。♩=92の速度記号と1/4の拍子記号はありますが小節はありません。単拍子の楽譜が明瞭です。(拍子記号があるのに小節がないのも不思議ですが...)


12の前奏曲 (1953年)
ピアノソナタ第3番の翌年作品です。基本姿勢はpreludeだからと言って変わるはずもなく、ここでは小節はありませんが1/4と1/8の拍子記号はあります。(小節も拍子記号もない事が多い様です)
印象はsonata no.3と同じですね。

試しにYouTubeで聴いてみる?
 同じく楽譜付です。




何と言っても後期、ピアノソナタ第5番・第6番です。それも圧倒的に第6番の凄さで、一時代 人気を博したのがわかりますね。実にオススメです。

このブログのウストヴォーリスカヤの投稿記事



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ペーテル・エトヴェシュ(Peter Eotvos)の Chinese Opera, Shadows, Steine を聴く

個人的ご贔屓のハンガリーの現代音楽家ペーテル・エトヴェシュ(Peter Eötvös, 1944/1/2 - )です。
代表作のatlantisを含めて何回も紹介しているので、そのスタイル等は割愛です。

エトヴェシュは多様性があって楽しいですね。今回は1990年代前後のアンサンブル作品集で、演奏は Peter Eötvös 本人指揮、演奏はスイスの現代音楽家ベアト・フラーが創設した Klangforum Wien です。

Chinese Opera, Shadows, Steine / Peter Eötvös

Chinese Opera (1986年), for ensemble
 1. Erste Szene in E und Gis - 2. Zweite Szene in F und G - 3. Dritte Szene in Fis und C
ブーレーズの後を継いで音楽監督を務めていたアンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain) 10周年に書かれた曲です。エトヴェシュは、自分のイメージの京劇をシーンとシネマ風に表現したと言っていますね。それが自分の得意分野とするオペラだそうです。
 京劇は印象程度しかわかりませんが、ドラや打楽器の音色に確かに舞踊的なサウンドを感じます。その意味で1990年代に入ってからのエトヴェシュらしい空間音響の様な音楽とは一線を画す作品ですね。
無調でポリフォニーとモノフォニー、細かい音色の弦楽器の静音と対峙する様な管楽器の出現、そして特殊奏法や反復。基本的な楽風は変わりませんが、コントラストは弱いですね。

Shadows (1996年), for ensemble
 1.Satz - 2.Satz - 3.Satz
三楽章からなるフルートとクラリネットの協奏曲で上記の代表作atlantisにも収録されていました。ライナーノートには弦楽器と管楽器が向かい合う配置や、マイクによる音取り、スピーカー配置が記されています。と言う事でライヴエレクトロニクスの楽曲です。
 二つの楽器のカデンツァの会話がポイントだとあり、その通りですw 曲調はエトヴェシュらしさ、澄んだ静音と現れる強音の対比、が際立ちます。詳細はatlantisで書いた通りで、特にpart1.と3が研ぎ澄まされてイイですね。^^v

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  第一楽章の約3分です


Steine (1985-1990年), for ensemble
エトヴェシュの技法が網羅された室内楽曲ですね。ポリフォニーとモノフォニーで各楽器の奏でるDialogを基本としています。静音にも強音にも感じられる緊張感がありますね。音数が少ない静音パートは素晴らしいです。



前回のSNATCHESではジャズをベースにした楽しさを紹介しましたが、懐の広さから楽しめるのがエトヴェシュだと思います。そろそろオペラ作品を紹介する必要がありそうですね。

本ブログのエトヴェシュの記事



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Ensemble Modern plays Frank Zappa, Greggery Peccary & Other Persuasions を聴く

普通はフランク・ザッパ(Frank Vincent Zappa, 1940/12/21 - 1993/12/4) と言えば政治色の強いロックですよね。もちろん私も学生時代にロック・ギタリストとしてのザッパを知っていました。
現代音楽には1980年代中盤から電子楽器シンクラヴィア(Synclavier)で踏み込むわけですが、現代音楽家としての認知は音楽界でも高いとは言えない気がします。ブーレーズやアンサンブル・モデルンが取り上げても変わらないでしょう。
それには、明確な音楽理論に基づく作曲になっていない、という意見がありますね。現代音楽は自らの音楽理論をどう楽曲にしているか、が一つの大きなポイントです。

このアルバムは現代音楽でのZappaの代表作にして遺作ライヴ録音『The Yellow Shark』(1992年9月)と同じ、独前衛現代音楽アンサンブル「Ensemble Modern」によるザッパ没後10年の作品になります。今回は楽曲がE.M.の意図で再構築されています。

Ensemble Modern plays Frank Zappa, Greggery Peccary & Other Persuasions / Ensemble Modern

1. Moggio:ポップカルチャーのビッグバンド
2. What Will Rumi Do?:一昔前のフュージョン
3. Night School:#2のアップテンポ
4. Revised Music For Low Budget Orchestra:不協和音と変拍子のビッグバンド
5. The Beltway Bandits:ハイテンポな不協和音フュージョン、モチーフ的
6. A Pig With Wings:民族音楽的幻想曲、未完成の構想風
7. Put A Motor In Yourself:リズミカルでコミカルなフュージョン
8. Peaches En Regalia:映画音楽風
9. Naval Aviation In Art?:映画の状況描写の効果音楽みたいな

タイトル通りここ9曲目までは1〜7分半ほどの小曲で、とても心地よいロック&ジャジーなフュージョン曲集です。

10. The Adventures Of Greggery Peccary
メインで21分強の楽曲です。「グレッガリー・ペッカリーの冒険」の通りの、物語を語りと展開効果音楽で構成した映画音楽風標題音楽です。背景にアニメがあれば、ディズニーとかの音楽っぽいです。
主犯意図はアンサンブル・モデルンのサウンド・ダイレクターNorbert Ommerでしょうねぇ、きっとw

試しにYouTubeで聴いてみる?
 なんと全曲試聴できます!




どこをどう弄ったらこうなったのでしょうか?! Todd Yvegaがザッパのシンクラヴィア楽譜からピックアップしてAli N. Askinがアレンジとありますが、これがアンサンブル・モデルンが目指した音楽とは驚きです。好きなポップカルチャー系米現代音楽としても、ただのポップにしか聴こえません。
Transcriptionとある時点でザッパの曲ではなくなって、Ali N. Askinの曲になっているわけですが....

...なるほど、もっと先を行くポップ系をE.M.は狙っていたのですね。^^


本ブログ中の Frank Zappa の投稿記事

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2.マーラー交響曲第5番 160CD
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