ギャヴィン・ブライアーズの「タイタニック号の沈没 / イエスの血は決して私を見捨てたことはない」を聴く

年末最後の曲にふさわしいのかは疑問かもしれません。でも、一年の最後にこれを聴こうと思いました。
今は現代音楽家として活躍するギャヴィン・ブライアーズ(Gavin Bryars, 1943/1/16 - )の「The Sinking of the Titanic/Jesus's Blood Never Failed Me Yet」アンビエント音楽で、聴く者が自分の心と会話する音楽です。

オリジナルのレコードを購入したのは大学生くらいだったでしょう。当時ロキシーミュージックを去ったブライアン・イーノのレーベル"Obscure Records"から今でいう環境音楽として出され、そのイーノの「Music for Airports」と合わせたイメージが残っています。

The Sinking of the Titanic | Jesus's Blood Never Failed Me Yet / Gavin Bryars

タイタニック号の沈没, The Sinking of the Titanic (1969年)
 1912年に北大西洋に沈んだタイタニック号の甲板で最後まで演奏を続け、脱出する人を励ましたと言われる楽団の演奏を再現するアンビエント音楽ですね。ご存知の方も多い有名曲です。
ミニマルということですが、賛美歌(オータム)をベースにしたポストミニマルで、微分音の様なピッチの音色も挟まれます。現代音楽技法でいうWorks In Progressで、この後2回の録音がされています。LP時代の時間制約回避やその後の資料による改変をしているわけですが、まぁこの曲に音楽的理屈を付ける必要はないと思います…

この曲の気配とその場の状況を今の自分がどう聴くか、という事が全てでしょう。そういう音楽です。
 ★試しにYouTubeで聴いてみてください


イエスの血は決して私を見捨てたことはない, Jesus's Blood Never Failed Me Yet (1971年)
 個人的には、こちらを圧倒的にオススメいたします。以前再録音されたロングver.を紹介済みですので、ぜひそちらをご覧ください。m(_ _)m
 ★試しにYouTubeで是非聴いてみてください


なおブライアーズのその後の現代音楽「A Listening Room」もブログで紹介しています。



どうしても懐かしさが先立ってしまいますが、なんとなく静かに向き合ってみようとするとこれを聴くことがあります。私にとってそういう音楽です。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ(Galina Ustvolskaya) の Sonata, Trio, Duet を聴く

ロシアの女性現代音楽家ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ(Galina Ustvolskaya, 1919/6/17 - 2006/12/22)です。
ショスタコーヴィチに師事していますが、路線の違いからソ連時代は「社会主義リアリズム」から外れ現代音楽の路線を堅持しています。その際「形式主義者」としてジダーノフ批判となっていたのかは不明ですが。ショスタコーヴィチ死後に活動を活発化させてから知られる様になりました。

初期作品はショスタコーヴィチとの類型を指摘されますが、後半は反復やトーンクラスターを駆使したホモフォニーな個性的楽風となりますね。

本アルバムはショスタコーヴィチとの終期と別れてからの中期の作品になります。

Sonata, Trio, Duet / Galina Ustvolskaya

Sonata (1952年) for violin and piano
反復、点描的、十二音技法時代を彷彿させる気配からvnがメロディーラインを奏でます。もちろん調性はありませんが短調的印象です。pfは終始点描音列配置風ですね。流れは静的です。(後半 両者が強音展開しますが、ディナーミクが強くなるだけの話です)
反復・変奏が支配する単純な音の羅列が特徴的で、新ウィーン楽派派生系の様な楽風です。飽きますw

Trio (1949年) for clarinet, violin, and piano
i.Espressivo - ii.Dolce - iii.Energico
ライナーノートにもショスタコーヴィチとの類似性が指摘されています。でも個人的にショスタコーヴィチにさほどの興味がないので類似点よりも、ベースになるpfの点描演奏が気になってしまいます。
vnは元気さがありますし、緩急のある楽曲ではありますが。
単音での強弱を表現するウストヴォーリスカヤの個性は感じられます。

Duet (1964年) for violin and piano
パルスな音でクラスター的、反復と対位法、ホモフォニーも含めてpfとvnの対話が尖鋭な緊張感の中に読み取れますね。強烈なトリルや切れ上がるグリッサンドはコパチンスカヤの得意とする処でしょうし、マルクス・ヒンターホイザーの放つ単音塊の強音ピアノとも息はピッタリでしょう。
30分近い楽曲ですが緩急溢れるやり取りで、あっという間に感じます。これは面白い!ですね。
 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

中期の最後の作品で、この後1971年の「コンポジション」から復活の後期になります。

演奏は以下
Patricia Kopatchinskaja : violin
Markus Hinterhaeuser : piano
Reto Bieri : clarinet



何と言っても最後のDuetが素晴らしいですね。音の塊どうしがぶつかり合う迫力は演奏者の個性とも相まって魅力的です。でもSonataなどは退屈そのもの。やっぱりウストヴォーリスカヤは後期の作品が面白いですね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ベルンハルト・ラング(Bernhard Lang) のオペラ『モーツァルトは嫌いだ (I Hate Mozart)』を観る

このブログでもオススメの現代音楽家の一人、オーストリアのベルンハルト・ラング(Bernhard Lang, 1957/2/24 - ) です。紹介済みなのでキャリアや楽風は割愛です。
このアルバム、実は買ってから何年も経っています。歌劇のストーリーを調べたりとか面倒だったので後回しに…(笑)
でも前回のDonaueschinger Musiktage 2015の "Killing Bach・バッハを殺す"(Francesco Filidei)がとても面白かったので急に鑑賞する気になりました。

刺激的題名が似てますよね。でもモーツァルトを否定した音楽ではありません。(そうなら挑発的で面白かったのですがw)
歌劇のストーリーから出てくる表題になりますね。"Killing Bach"もバッハとどう向き合うか、という事でバッハ殺しの曲ではありませんでしたが。^^;

2006年11月に Viennese Mozart Year 2006 の委嘱作品で、アン・デア・ウィーン劇場(Theater an der Wien)で上演された時のライヴです。

メンバーも興味深いですね。指揮は現代音楽家としても好きなカリツケ、演奏はベアト・フラーが結成した現代音楽室内管弦楽団クラングフォールム・ヴィーン、配役にはラングのDW14+DW9や"月に憑かれたピエロ"でも注目されたサロメ・カンマーが入っています。

本アルバムはCDx2, DVDx1のセットになりますね。オペラですから まずはDVDで楽しんでみましょう。

I Hate Mozart / Bernhard Lang

【脚本】マイケル・スターミンガー(Michael Sturminger)
【指揮】ヨハネス・カリツケ(Johannes Kalitzke)
【演奏】クラングフォールム・ヴィーン(Klangforum Wien)
    ヴォーカル・アンサンブル・ノヴァ(Vokalensemble Nova)
【キャスト】
 ・Florian Boesch (as Adriano Morado):アドリアーノ、指揮者
 ・Dagmar Schellenberger (as Grace Moor):グレース、歌姫ソプラノ歌手
 ・Andrea Lauren Brown (as Simona Chodovska):シモーナ、若手ソプラノ歌手
 ・Salome Kammer (as Franziska Zimmer):フランチェスカ、メゾソプラノ歌手
 ・Mathias Zachariassen (as Johannes Weiner):ヨハネス、テノール歌手
 ・David Pittman-Jennings (as Ludwig Zellinsky):ルードヴィヒ、エージェント
 ・Rupert Bergmann (as Intendant, GM):支配人

BernhardLang-IhateMozart.jpg

あらすじ》2幕21シーン
オーディションシーンから始まるモーツァルトの「魔笛」をめぐる役や指揮者の舞台裏の人間模様を描いています。
指揮者アドリアーノは、パミーナ役を歌姫である妻のグレースの代わりに浮気相手の若手シモーナを推します。エイジェントのルードヴィヒと支配人はグレースを選び、気に入らなければアドリアーノを変える検討もしています。
一方リハーサルではアドリアーノとパミーノ役のテノール,ヨハネスと確執が生まれます。シーン7.NightMare2でヨハネスが“Why do I have to sing Mozart, have to sing Mozart all the time? … I hate Mozart…” と口にしますね。(舞台をめぐる様々なゴタゴタで『モーツァルトが嫌いだ』という話です)
人間関係が錯綜して結局パミーナ役はグレースとなり、次のコベント・ガーデンではシモーナが演じることとなります。
プロローグとエピローグはアドリアーノの悪夢のシーンに帰結したりして、ストーリーはややありきたり感がありますね。

舞台
ごく現代のシンプルな設定で、シーン毎に回転・せり上がりして替わります。衣装も含めて特に凝った事はありませんね。時折配役がフリーズしてモーツァルトの亡霊の様なものが現れたりすのがイレギュラーなくらいです。

音楽
反復、電子音ノイズ、テープ、ジャズ、特殊奏法、といった手法で、混沌やノイズではなく旋律や動機は存在します。モーツァルトの引用もサンプリングとループ処理で出てくるのですがしっくりきません。各シーン毎に楽風の変化を与えているので、音楽として聴くなら映像なしの方が楽しめるでしょう。
また 反復は執拗で、演奏のみならず歌詞を含め反復が徹底されています。vocalで音の飛躍も一部あり現代音楽を感じさせますが、殆どのパートで声域は狭く語り風ですね。シュプレッヒゲザングではありません。

試しにYouTubeで観てみる?
 超ダイジェストで画質劣悪ですが、気配はわかるとおもいます。
 DVDは英訳字幕が出せるので安心です。




現代音楽のオペラとしてみるとあまり面白みがありませんね。そもそも映画音楽も含めて現代音楽は使われるので、音楽自体もしくは舞台がもっと極端でないと普通のオペラです。特に現代音楽を意識しないで観たらちょっと尖ったオペラで面白い?! 本邦初演を期待します。
CDで聴いた方がまだ音楽を楽しめますが2時間はちょっと長いですねw
ライナーノートにはセリフと場面設定が英訳で載っているので助かります。(4面開きのデジパックから取れないのは不便ですが…)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

今の時代の現代音楽 ドナウエッシンゲン音楽祭(Donaueschinger Musiktage) 2015年 を聴く

毎年楽しみなドナウエッシンゲン音楽祭(Donaueschinger Musiktage)のアルバムです。今年はCD2枚組になりました。毎年組み方が変わるのが不思議ですね。昨年はDVDx1, CDx3の4枚組でヴィジュアルも見られたのでインスタレーション系も楽しめ最高でしたが…
とはいえ今の時代の欧州エクスペリメンタリズムが楽しめるのは嬉しいです。

一曲目(Oktett für 8 Posaunen)を除きSWR委嘱の世界初演ですね。演奏もSWRに指揮はペーテル・エトヴェシュやフランソワ=グザヴィエ・ロトと良い顔ぶれです。

Donaueschinger Musiktage 2015

Oktett für 8 Posaunen (2015) / Georg Friedrich Haas
 Trombone Unit Hannover (Frederic Belli, Mateusz Dwulecki, Karol Gajda, Lars Karlin, Angelos Kritikos, Tobias Schiessler, Mateusz Sczendzina, Yuval Wolfson)
ゲオルク・フリードリヒ・ハース(1953/8/16 - )はオーストリアの現代音楽家で、フリードリヒ・チェルハに学び、ダルムシュタットやIRCAMで習っています。ミクロポリフォニー(リゲティが使い命名した技法)、ミクロインターバルを使うスペクトル楽派の一人ですね。
 この作品はミクロメロディー?!のために書かれたそうです。とにかくトロンボーンの8重奏曲ですから個性的です。混沌なポリフォニーやノイズではありません。旋律と音の組み合わせ、tbらしいグリッサンドを生かしたロングトーンの面白さ、まさにスペクトル楽派らしい音の鳴りが楽しめます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?


Sérac (2014 / 2015) for orchestra / Johannes Boris Borowski
 SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
 Peter Eötvös, conductor

ドイツ人現代音楽家ヨハネス・ボリス・ボロウスキ(1979 - )はドイツとフランスで学び、その作品はアンサンブル·アンテルコンタンポランやアンサンブル·モデルンといった著名どころに取り上げられています。
 静の間を強調する様な音楽で、時に静音で時にクラスターです。そしてブレーキを踏んで立ち止まって歩き出す。そんな感じ。もちろん無調ですが、旋律や動機が存在します。即興的ポリフォニーではなく、対位法的で構成感がありますね。その楽風は、今の時代の現代音楽の保守的流れかもしれません。

Mirror Box Extensions (2014 / 2015) for ensemble, live electronics & live video / Stefan Prins
 [Scene1] Hybrid spaces #1, [Scene2] WYSI(N)WYG, [Scene3] You will only be allowed to express yourself if you become a hologram, [Scene4] Hybrid spaces #2
 Nadar Ensemble (Elisa Medinilla-piano, Yves Goemaere-piano, Thomas Moore-trombone/stage manager/production, Bertel Schollaert-saxophone, Dries Tack-clarinet, Katrien Gaelens-flute, Marieke Berendsen-violin, Pieter Matthynssens-cello/artistic director, Kobe Van Cauwenberghe-guitar)
 Culture Crew (Vincent Jacobs)-video software, Wannes Gonnissen-sound/electronics, Stefan Prins-artistic director, Rebecca Diependaele-general manager

シュテファン・プリンス(1979/5/20 - )はベルギーの現代音楽家でパフォーマー。ハーグ、アントワープで作曲を学び、ハーバード大で博士号を取得しています。電子音楽技術も会得していますね。ドナウエッシンゲン音楽祭2012年でも紹介しています。
 この楽曲はインスタレーション系でありヴィジュアルも採用されています。従って音だけ聴いても狙いはわかりづらいでしょう。音楽はライヴエレクトロニクスを含めた前衛のノイズ系カオスです。ギリギリギリ…ビビビビ…ガン!! って感じw [Scene4]が面白い

 ★是非YouTubeでご覧下さい! ミラーボックスの意味もわかるでしょう。
  for 7 musicians になっています。



„über“ (2015) for clarinet, orchestra and live electronics / Mark Andre
 Jörg Widmann, clarinet
 SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
 François-Xavier Roth, conductor
 EXPERIMENTALSTUDIO des SWR

マーク・アンドレ(仏表記Marc André, 1964/5/10 - )はドイツ在住のフランス人現代音楽家で、パリでグリゼーに、シュトゥットガルトでラッヘンマンに師事しています。強音から静音に、そして微分音へと作風変化は大きく、パラメーター表記の難解さはファーニホウの「新しい複雑性(New Complexity)」と興味深いです。プロテスタントのフランス・ユグノー派に傾倒して、宗教的作品も多いですね。
 この作品は今のアンドレの楽風である超静音(ppppp)ドローンの世界で入ります。そこからイェルク・ヴィトマンのクラリネットが一筋の糸のように、そしてロングトーンで、またトレモロで流れます。後半は等拍パルスや強音パートが現れますが、全体は残響音のような空間音響系です。
音は単純ですが、楽譜は五線譜を使っていない可能性が大きいかもしれません。

Killing Bach (2015) for orchestra / Francesco Filidei
 SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
 François-Xavier Roth, conductor

イタリア人現代音楽家でオルガニストのフランチェスコ・フィリデイ(1973 - )はサルヴァトーレ・シャリーノに師事していますね。2005年のIRCAM委嘱以降、数々の賞を受賞しています。
 題名が穏やかでありませんw 曰く「どうバッハに対応したらいいか? …グロテクスクに、凶暴に…」とあります。
無音の中にクラスター、ミュージック・コンクレート、引用(多分?)、が強烈に発生します。また、コミカルな旋律やパロディが、からかう様に現れたりもします。パンドラの箱を開けた様な音楽?、こういうのは好きですねぇ

Pulsus alternans (2015) for orchestra / Yoav Pasovsky
 SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
 Peter Eötvös / Gregor Mayrhofer, conductors

イスラエル人現代音楽家ヨアフ・パソフスキー(1980 - )は、ダニエル・オットやヴァルター・ツィンマーマンに師事しています。以前もドナウエッシンゲン音楽祭2012年で紹介している電子音響音楽ですね。
 2012年のアンビエントから一転してミニマル系です。速いテンポの単音反復のミニマルで、ディナーミクを強くして陶酔感を感じさせる様です。後半は凶暴で欧的ミニマルです。



なんでもありの様なFrancesco Filideiから、生真面目なJohannes Boris Borowski、そしてインスタレーションのStefan Prinsと今の現代音楽を網羅した感じですね。もちろんノイズや空間音響系、ミニマルも入れてあります。
これがドナウエッシンゲン音楽祭の楽しさでしょう。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ウィーン国立歌劇場公演 フンパーディンクの歌劇「ヘンゼルとグレーテル」をNHKプレミアムシアターで観る

エンゲルベルト・フンパーディンク(Engelbert Humperdinck)と言うと普通はイギリス人の歌手を思い浮かべるでしょうかw
唯一知られる?オペラ「ヘンゼルとグレーテル」、昨年のウィーン国立歌劇場公演ですね。
もちろん原作はグリム童話ですが、一部異なります。母親は義母ではなく、家を追い出されるのではないと言う事で、ストーリー全体を通して暗い部分を明るい展開にしてありますね。
ウィーン国立歌劇場公演 フンパーディンク 歌劇「ヘンゼルとグレーテル」

演出はエイドリアン・ノーブルで、童話らしくメルヘンで所々にコメディを織り込んでいます。
一部プロジェクションマッピングが使われていますが、もちろん前衛的な解釈など入りません。前奏曲でストーリーとは緒結しない家族のシーンを挟んだくらいでしょうか。よく使われるパターンですが。

舞台・衣装は、正確な時代考証はわかりませんが、それらしい衣装とメルヘンチックな舞台背景です。それがこのオペラのお約束でしょう。

配役では、ヘンゼル役のダニエラ・シンドラムはちょっと歳が行き過ぎの感じ。ズボン役でメゾソプラノが演じますね。聴かせどころはグレーテルなのですが、イレアナ・トンカは何か飛び抜けたソプラノという感じもありません。同じソプラノなら眠りの精/露の精のアニカ・ゲルハルツの方が良いかも。
一番良かったのは役得の魔女ミヒャエラ・シュスターだったでしょう。

音楽は指揮のクリスティアン・ティーレマン。ディナーミクを振り、メリハリの強い演奏です。今やバイロイトに居座る顔役でありウィーン・フィルおよびこのウィーン国立歌劇場でも幅を利かせています。



全体としてはオペラにつきものの死や激情的なものはなく平板です通してメルヘンで、幸せな大団円が待っているを楽しむ作品なのでしょう。魔女だって怖くありませんw
タイトルロールの二人をもっと若手にしても面白かったかもしれません。


<出 演>
 ヘンゼル(兄):ダニエラ・シンドラム [Daniela Sindram]
 グレーテル(妹):イレアナ・トンカ [Ileana Tonca]
 ペーター(ほうき作り):アドリアン・エレート [Adrian Eröd]
 ゲルトルート(その妻):ヤニナ・ベヒレ [Janina Baechle]
 魔女:ミヒャエラ・シュスター [Michaela Schuster]
 眠りの精/露の精:アニカ・ゲルハルツ [Annika Gerhards]

<合 唱>  ウィーン国立歌劇場児童合唱団
<管弦楽>  ウィーン国立歌劇場管弦楽団
<指 揮>  クリスティアン・ティーレマン [Christian Thielemann]

<演 出> エイドリアン・ノーブル [Adrian Noble]


収録:2015年11月22、29日 ウィーン国立歌劇場(オーストリア)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2016年12月14日 ヤクブ・フルシャ/都響のマーラー交響曲第1番「巨人」at サントリーホール ★★☆

いよいよ寒くなってきた六本木へ。どうにか晴れたのは嬉しいですが、寒いですね。
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マーラーというと、このブログでは5番の150CD聴き比べや6,9番と言う事になるのですが、あまり聴かないのが8番と並ぶ1番「巨人 Titan」ですね。(ちなみに好きなのは3番・7番です)
特に好きな演奏(CD)はないので、今回はジンマン/トーンハレ管で数回聴いてきました。

「第821回 定期演奏会Bシリーズ」は指揮者、ソリスト、そして作曲者をチェコ人(生まれ)で揃えましたね。



マーラー:交響曲第1番 ニ長調 《巨人》
 音の厚みと迫力を生かした演奏で楽しませてくれました。薄く暗いパートに欠ける感じがしましたがそれを補ったでしょう。フルシャ(Jakub Hrůša)と都響の息が合った素晴らしい演奏でしたね。

 第一楽章冒頭の下降動機からの序章は穏やかに出ました。チェロからの第一主題、管の似た第二主題は強さを感じる流れ、もう少し牧歌的な感じが欲しかった気もします。展開部では静的暗転の後に明るさが戻り、ラスト山場は華やかさよりも迫力。短い再現部(コーダ?)もその流れからビシッと決まりました。ここで強音パートの良さに気が付きましたね。
 第二楽章は第一楽章引き継ぐような重厚さでスケルツォらしい優美さには欠けるのですが、これもあり。弦のレントラーも同様の美しさがありますね。
 第三楽章、問題の(笑)「グーチョキパーで何作ろう」短調フーガ版です。暗く薄い陰影さは弱く、ティンパニの下降動機の行進曲的印象も薄いです。情感強めのトリオ後の主部回帰も音は厚めで変化を強く掛けました。
 第四楽章、この演奏パターンが生きて激しい序章の後の第一主題は迫力がはまり、続く第二主題は影ある優美さよりも感情こもった展開です。展開部はもちろん激情的、山場は見事。再現部はマーラーらしい各主題や動機が入り乱れる展開ですが、ここがややはっきりしませんでした。見事な終盤の山場から続くコーダ、ここが白眉でした。長いのでダレる事も多々あるのですが、ゾクゾクする様なパワー漲る流れでラストを盛り上げて終了しました。
コンサート向きの曲ですから当然の拍手喝采なのですが、それを上回るモノがありましたね。


ちなみに興味の薄い前半の印象は以下でした。ドヴォルザークの協奏曲だとチェロの印象が強いですよね。
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 op.53 B.108
 ヴァイオリンのヨゼフ・シュパチェク(Josef Špaček)は確かにヴィルトゥオーゾ性を見せましたが特に個性はかんじませんでしたね。
しかし驚いたのはアンコールのイザイでした。繊細さから野性味のある音色まで聴かせました。彼はコンチェルトよりソロ曲向きですね。


残念ながら曲の構成等は理解していないので、内容はインプレしようがありません。眠さをこらえるのが...(汗)



マーラー1番の一つの楽しいパターンか明瞭に味わえましたね。フルシャの指揮は、パワー系の楽しさでしょうか。そのパワープレーを支えたのは都響の揃いの良い演奏、特に管楽器、なのは違いありません。
これからフルシャ/都響が楽しみですね。
近年の都響の演奏は充実感がありますね。
^^v


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ベルンハルト・ガンダー(Bernhard Gander) の Bunny Games を聴く

ベルンハルト・ガンダー(Bernhard Gander, 1969/11/29 - )は個人的にオススメの現代音楽家の一人です。電子音楽を主として これまた好きなベアト・フラー(Beat Furrer)に師事しています。
今までも「Monsters and Angels」やドナウエッシンゲン音楽祭で紹介していますので細かい紹介は割愛です。

エクスペリメンタリズム系前衛にしてポップカルチャーをも包括する楽しさはライヴで観たいですね。このアルバムのライナーノートは本人談の記述ですが、とても面白いです。

Bunny Games / Bernhard Gander

Bunny Games (2006年), for ensemble
 Emilio Pomárico(cond.), Klangforum Wien
「誘拐 マドンナ 90-63-92 … アルコール 叫び ダンス」などという単語の羅列で句読点はなく、なんとなく文章風な本人解説。そういう事のようですw
 ポリフォニーの混沌から始まりますが即興的ではなく、主と絡みが感じられますね。その後はバロックの引用が入りそれをベースに電子楽器他の変奏で対位的な流れになり、また弦楽器のグリッサンドのギロギロ音の絡み合い。そんな色々な表現方法の小曲15部編成です。でも全てで明るさと人と人との対話のような音の絡みがありますね。それが心地よさを作っているのでしょうか。
遊び心いっぱいの楽しいサーカスみたいな音楽です。

Fluc ‘n‘ Flex (2007年), for accordion
 Krassimir Sterev(accordion)
「…午後8時、疲れて喉が渇いた。私は部屋から出てバーに向かった…バーのドアを開けると病んだタバコの煙が顔に…ビールと強いビートの音楽で酔い…音楽のパルスに浸ったまま店を後にする」んだそうで、この曲は夜のバーに繰り出す楽しみのために書いたそうです。コンセプト最高!!
 三人の演奏で入りますが、アコーディオンの構成は対位法です。モロに三人のおしゃべりで、時に大声になったりひそひそ声になったり、酔っ払いの戯言でしょうかw
(Klangforum Wienの中にはアコーディオンはSterev一人しかいないようです、多重録音?!)

Ö (2005年), for mixed quintet
 Johannes Kalitzke(cond.), Klangforum Wien
ロックグループMotörheadへのオマージュだそうです。その強烈な音楽に惹き込まれると言っていますね。
 ここでも混沌ポリフォニーですが、互いのリレーション・会話のような関連を感じます。Fluc ‘n‘ Flexの編成を大きくした感じ。これがガンダーの基本ですね。

Peter Parker (2004年), for piano
 Hsin-Huei Huang(piano)
スパイダーマンからインスパイアされた曲だそうで、主人公の名前をとったわけですね。
 どうしても先入観から入ってしまいますね。ピアノソロ曲ですが、ピアノの運指は素早いアルペジオが主役です。なんとなくスパイダーマンが暗躍している気配に思えてしまいます。要はそんな感じなんですよね。生き生きとしたヴィルトゥオーゾ性の曲です。

Fête.Gare (2002年), for ensemble
 Sylvain Cambreling(cond.), Klangforum Wien
Fêteは祝宴(celebration feast)で、それが音楽の基本イメージだそうです。またGareは駅名で、美し眺めとか。
 やや即興性を感じるポリフォニーです。とは言え、バックグラウンドに流れる楽器と主たる楽器の住み分けを感じます。一つの楽器に対するオブリガート的なパートもあり、混沌ではありますが構成感が伝わります。
 ★試しにYouTubeで聴いて見る?

指揮者もヨハネス・カリツケやシルヴァン・カンブルランと良い顔ぶれですね。



刺激的な混沌がメインですが、ノイズや特殊奏法を前面に打ち出したわけではありませんね。どこかにストーリー性を感じるのが楽しさにつながっていると思います。楽しみな今の現代音楽の一つです。^^v


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

アンナ・ソルヴァルドスドッティル(Anna Thorvaldsdottir) の Rhízōma を聴く

以前も紹介しているアイスランドの現代音楽家 Anna Thorvaldsdottir(Anna S. Þorvaldsdóttir, 1977 - ) は、UCLAサンディエゴ(UCSD)で習い博士号(Ph.D)を取得していますね。活動は米(Lincoln Center's Mostly Mozart Festival 等)・欧州(ISCM World Music Days 他)に渡ります。昨年2015年にNew York Philharmonic's Kravis Emerging Composerにも選ばれ、今や注目の女性現代音楽家の一人かもしれません。

本アルバムは、2012年にNCMP(Nordic Council Music Prize)を受賞した"Dreaming"が入っています。
楽曲構成は小曲5パートからなるHiddenと、そのパートに挟まれる様に配置された三曲になりますね。

Rhizoma / Anna Thorvaldsdottir

Hrim (2010年) for chamber orchestra
室内楽で弦のトリルとロングトーンの組み合わせのドローン、そして暗く陰湿な空間と時折の強音という組合せです。その中に調性感の薄い旋律が現れます。

Hidden (2009年) for percussionist on grand piano
I. Inwards - II. Our - III. Stay - IV. Rain - V. Past and Present
ピアノを使った特殊奏法(打楽器奏者*)音楽になります。不気味な地響きの様な唸りとピアノ線を使った様々な特殊奏法音で、ここでもドローンと暗い旋律の構成に変わりはありません。静が全体を支配しています。
*鍵盤打楽器(シロフォン等)扱いで弾いているのでしょうか

Dreaming (2008年) for orchestra
管弦楽曲です。ベースとなるノイズの様なドロドロの蠢めく様な低い地鳴りの様な音色には具体的な旋律はなく、ドローンや響といった方が適切でしょう。それがソルヴァルドスドッティルの最大の特徴ですね。その上に不安な色合いの旋律やクラスター的強音が現れますね。ラストは弦楽器の特殊奏法だけのパートです。何とも陰惨な夢(Dreaming)世界です。
 ★試しにYouTubeで聴いて見る?

Streaming Arhythmia (2007年) for chamber orchestra
室内楽で基本は同じですが、構成の中で特徴的なのは管楽器や絃楽器が単音を並べるパルスの組合せ、それに続く打楽器群構成のクラスターでしょうか。



ドローンand特殊奏法ですが、とにかく暗いです。陰湿で凄惨ささえ感じる空間音響系の現代音楽です。以前も書きましたがペッテションの現代版を思い起こさせますね。こう言うのはなぜか惹かれるものを感じてしまいます。すすめですね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

トーマス・ラルヒャー(Thomas Larcher) の What Becomes を聴く

以前も紹介済みのオーストリアの現代音楽家トーマス・ラルヒャー(Thomas Larcher, 1963/9/16 - ) はピアニストとしても活躍していますね。本アルバムでもピアノで参加しています。基本はミニマリストで、声楽を取り入れるのも特徴でしょう。(キャリア等は前回紹介済みです)

前回のアルバムは室内楽曲集でしたが、今回はピアノソロ曲とテノールw/ピアノ曲になります。

What Becomes / Thomas Larcher

Smart Dust (2005年)
I. Very slow - II. Very fast
ここから三曲はピアノ曲(Tamara Stefanovich, pf)です。「長いことピアノのナチュラルな音から逃れたいと思っていた…」と初めにラルヒャーが言う通り、ゴムやテープを使ったプリペアード・ピアノになっています。
演奏はそれに特殊奏法も絡み、音数やテンポを大きく変化させながら即興的に進みます。反復が多用されるのはベースにミニマルがあるからでしょう。ポストミニマルなピアノソロです。

Poems (1975-2010年)
[12 pieces for pianists & other children] I. Sad yellow whale - II. Cantabile - III. Babu Chiri's house - IV. Waking up in Najing - V. (The day) When I lost my funny green dog -VI. A little piece for Ursu - VII. Frida falls asleep - VIII. MUI 1 - IX. One, two, three, four, nine - X. Twelve years old - XI. Don't step on the Regenwurm! - XII. A song from?
「Smart Dustの最後を迎えて、私は同じ方向で進めるのは無理だと思った…」ということで「ピアノのナチュラルな音に戻ることにした…」そうです。極端に変化しました。
子供のためのエチュードみたいな小曲揃いですね。もちろん機能和声で大人が弾くとメランコリックだったり叙情的だったり表現は豊か…ポエムなんですね。オルゴールの様な…退屈ですw

What Becomes (2009年)
I. Wertfrei - II. Parabolic bike - III. Slow - IV. Scherzo - V. Fission - VI. Isaac - VII. Flowing
ピアニストのレイフ・オヴェ・アンスネス(Leif Ove Andsnes)にピアノ・リサイタル曲を依頼された事にインスパイアされたそうです。
I. WertfreiはPoemsの延長線上にありますが、徐々に調性の薄い技巧的な曲も入りますね。いかにもコンサート向きな荒々しい曲もありますが、それでも個性的な何かが感じられません。

A Padmore Cycle (2010-2011年)
[on poems by Hans Aschenwald & Alois Hotschnig] I. Ich schreibe heute durch - II. Almauftrieb - III. Hart am Herz - IV. Familie Numero drei - V. Hunger nach Heimat, die keine mehr ist - VI. Los los - VII. Ferdl - VIII. Und beim Weggehen schmilzt aus den Augen der Schnee - IX. Lange zögern die Steine - X. Dein Wort mein Blindenhund - XI. Der Körper des Vogels am Weg
ハンス・アッシェンヴァルトとアロイス・ホッシニヒの自然や死を謳う散文詩を元に書かれています。それを現代音楽を得意とするイギリス人テノール、先日もパリ管と来日したマーク・パドモア(Mark Padmore)が歌い、ラルヒャー本人がピアノ伴奏をしています。
全体を静が支配しながら、時折短い烈が現れる歌とピアノです。歌は抑揚薄い展開で一部語りにもなります。ピアノも単純音階でオブリガートというよりも対位法的です。全体がフラットに感じてしまいます。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
  プレミアコンサートのメイキングビデオで本人が自然との関わりを語ります。
  BBC Symphony Orchestraヴァージョンですね。




ピアノ曲はいずれにしろ面白みはありません。新しさも見当たりませんね。声楽曲も同じです。駄耳の私には残念なくらい退屈です。m(_ _)m



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

イェルク・ヴィトマン(Jörg Widmann) の Elegie を聴く

イェルク・ヴィトマン(ヨルグ・ヴィットマン Jorg Widmann, 1973/6/19 - )はドイツの現代音楽家でクラリネット奏者としても活躍していますね。作曲はヘンツェ(Hans Werner Henze)やリーム(Wolfgang Rihm)といったビッグネームにも師事しています。活躍の場としてフライブルクを選んでいるのも、現代音楽の主流派的かもしれません。

ヴィトマンの作品には、ミサやキリエといった宗教性とトッカータやノクターンといった古典的名称の曲が多く見受けられますね。

このアルバムのオケは、Christoph Poppen指揮、Deutsche Radio Philharmonieになります。

Elegie / Jörg Widmann

Messe fur grobes Orchester (2006年)
01-06 Kyrie (Introitus. Monodia - Interludium I - Contrapunctus I - Interludium II - Contrapunctus II - Interludium III), 07-08 Gloria (Antiphon - Contrapunctus III), 09 Crucifixus, 10 Et Resurrexit (Contrapunctus IV)
出始めの荘厳な宗教曲、若干の不協和音はありましたが、には驚きました。これはバッハのマタイ受難曲を元にしているとのこと。しかしその後は音数の少ない、調性はありませんがメロディアスな、澄んだ音色が空間の中に存在する感じです。そして強音パートは荘厳に再現しますが提示部の様な宗教色は薄くなりカオス的に展開します。主は空気の薄い大気圏のストリームの様な透明感のKyrieからGloriaです。
09 Crucifixusではパルス的な音で出し入れの強い展開が現れ、ラスト10 Et Resurrexitでは緩い混沌から荘厳に締めくくられます。
基本となる特別な作曲技法は存在するのでしょうか? 内容は不明ですね。(典礼文のないミサに関しての記述はありますが…)
前衛ではなく今の時代のクラシック音楽で、どこかのオケの委嘱曲であってもいい感じです。

Funf Bruchstucke fur Klarinette und Klavier (1997年)
11-15 Auberst langsam - Presto possibile - Sehr langsam, frei - Energiegeladen, sehr schnell - Notes equal 40
クラリネットとピアノのDuo曲です。ちなみにピアノは、ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger)でピアニストとして初録音とか!! 一部低音側がプリペアードピアノの様です。曲は二人の特殊奏法を含むテクと音のやりとりでのパフォーマンス、即興的で前衛ですね。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
  演奏は Ashley Smith/clarinet, Aura Go/piano です


Elegie fur Klarinette und Orchester (2005年)
クラリネット協奏曲で、流れはミサに近く空間音響系になります。途中で強音カオスが現れるのもヴィトマンのこの流れの特徴でしょう。



二つの顔を持っていますね。空(くう)の中に現れては消える空間音響系の世界と、即興前衛系の音楽。まさに今の時代の現代音楽ですね。インスタレーション系になっているのかは音だけではわかりませんが…


PS:読響の2017-18シーズンを見たら第574回でヴィトマン来日、クラリネット協奏曲「エコー=フラグメンテ」をやるようですね。


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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。

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