パトリシア・コパチンスカヤ の Death & the Maiden SCHUBERT を聴く

何と言っても前回の「TAKE TWO」が楽しかったコパチンスカヤ(Patricia Kopatchinskaja, b. 1977 , vn)、新譜は弾き振りのシューベルトをメインに持ってきましたね。そして全曲"死"をテーマにした曲構成です。

メインの「死と乙女 (Death & the Maiden)」四つ楽章の間に別の曲を挟むというパターン。これは以前紹介したサルヴァトーレ・シャリーノの「Infinito Nero / Le Voci Sottovetro 」と同じです。その中にカルロ・ジェズアルド(Carlo Gesualdo, 1561-1613)が入っているのも同じですね。

Death & the Maiden / Patricia Kopatchinskaja

やっぱりシューベルトは聴いて楽しさが感じられませんでした。それがコパチンスカヤの弾き振りで個性的であってもですね。感性不足の駄耳では太刀打ちできません。
楽曲構成の間に色々とはさみ込むアイディアも、挟まれる曲はさらに古いルネッサンス期のネルミガー、ダウランド、ジェズアルドでペタッとした感じです。
ちなみにジェズアルドは殺人者です。ただ、その6.Madrigal: ‘Moro, Lasso, Al Mio Duolo’ はジェズアルドらしい不思議な調性感があって面白いですが。
このアルバムの個人的なメインはもちろんクルターク(Gyorgy Kurtag, 1926/2/19 - )です。(コンサートでは取り上げる機会があるようです)
8.Ligatura-Message To Frances-Maria は、例によって静的な音から幽幻な音色が暗く演奏されて良い流れです。9.'Ruhelos’ (‘Restless’) From Kafka Fragments は26"しかない「カフカ断章」ですが、シュプレッヒゲザングとギロギロのボウイングw 瞬間芸みたいでコパチンスカヤにぴったり、得意のパターン?!
ラストの「死と乙女 第四楽章」の主題はベートーヴェンのクロイツェルに似てるんですね。疎いので知りませんでした。

試しにYouTubeでPV?を観てみる?



このアルバムちょっと残念でした。コパチンスカヤの奔放性を生かすなら現代曲方向が面白いと思いますが、それはこっちの勝手な思いということでしょう。(汗)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2016年11月25日 ダニエル・ハーディング/パリ管弦楽団のマーラー交響曲第5番 at 東京芸術劇場 ★

昨日の東京は11月の雪で参りましたが、やっと穏やかに晴れましたね。体調は万全とは言いづらいですが、池袋まで行ってきました。
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マーラー5番は今までに150枚のCD聴き比べをしているコンサート・ターゲット曲ですから逃せませんね。
しかし微妙な組合せです。あまり好みの演奏に当たったことがないD.ハーディング(Daniel Harding)と、フランス音楽の方が良いイメージのパリ管(Orchestre de Paris)です。
ハーディングのマーラー5番は2011年6月に新日フィルで聴いていますが、特に頭一つ抜けたものは感じられませんでした。最近で言うなら、今年1月のブリテンの戦争レクイエムは今ひとつ。パリ管音楽監督就任のお披露目ならフランス曲の方が…なんてちょっと思いましたが。
さて結果はいかに…



マーラー/交響曲第5番 嬰ハ短調
 いろいろな意味で予想を超える演奏でした。悪い方は管楽器の揃いの悪さや音の乱れ。興味を惹かれたのはハーディングらしからぬ妙なアゴーギク。
ライヴもCDも数多く聴いている曲ですがコンサートでこれだけ変わったのは初めてでしたね。


 第一楽章のファンファーレはスロー、続く葬送行進曲もスローで不思議なアゴーギクですが重厚ではありません。始めは この辺りがパリ管かなと思う興味深い入りでした。第二主題の展開もいきなりテンポアップでもなく穏やかな変化。
ところが第二楽章。第一主題が速く管楽器の揃いに乱れがあり、第二主題からは妙なアゴーギクと何だか怪しげな管楽器が目立ち、ラスト山場はバタバタ。なんか変だな⁈の第一部です。
実は第三楽章がこの日の白眉w、とにかく妙なアゴーギクを振ります。スケルツォからレントラーへ、そして第2トリオ以降も怪しげで揃いの微妙な管楽器と合わせて目が離せません。近年のマーラー5では一番妙な揺さぶりの第三楽章です。
第四楽章アダージェットは一転極普通。少し音が厚めなくらいでしょうか。こうなると中途半端は面白くありませんw
第五楽章もクセは少なかったのですが演奏は微妙。展開部山場の後の静音パートではまたもや不思議なアゴーギクに怪しげな音。しかし最大の驚きは最後に待っていました。再現部山場からコーダは見事な切れ味大迫力でビシッとまとめ、ラストのアッチェレランドは素晴らしい切れ上がりでフィニッシュしました。
拍手喝采大ブラボーです。この曲はどんなコンサートでもこうなるように出来ていますが、皆さんどう言う意味だったのでしょう。


ちなみに前半のメンデルスゾーンも事前に5CD聴き比べてから行きましたが、普段聴く曲ではないので簡単にw

メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
 ヴァイオリンのジョシュア・ベル(Joshua Bell)の音色の甘さがオケのドイツ風押し出しの良さと不思議なマッチを見せました。穏やかな空気の緩いコンチェルトでしたね。

 第一楽章第一主題は甘い音で驚きました。オケは締りのあるディナーミクなのですが、第二主題もおなじですね。カデンツァはそういうわけでグイグイではありません。
第二楽章主題は緩徐楽章らしさをスローで展開したのでもろに甘美トロトロ。
第三楽章の軽快さは悪くなかったですね。




とにかく摩訶不思議なハーディングのマーラー5番。5年前の同曲演奏とは別人の楽風です。怪しげな管楽器で期待はずれのパリ管ですが、変な演奏で余計面白かったかもw
まともじゃないのは確かですが、楽しんじゃいました。



テーマ : クラシック
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メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲 5CDs聴き比べ:やっぱりハイフェッツ?!

フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn, 1809/2/3 - 1847/11/4) のヴァイオリン協奏曲はもう一曲存在していますが、一般的にこの「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64」(1844年)を指すことはお約束ですね。稀に「第2番」と記されることもありますが、作曲者・題名を知らずとも誰でも一度は聴いたことがある超有名曲。
もっともコンサート以外、ブログで紹介することはないでしょうが。今回も週末25(金)のパリ管/ハーディングの予習で聴き比べしてみましたw



Anne Sophie Mutter(vn) / Karajan(cond.), BPO
 例によって聴く前から想像のできるムター/カラヤンBPOで、ともにヴィルトゥオーゾの勿体ぶった演奏ですね。好みははっきり分かれるでしょうか。濃厚なポタージュです。
 1981年アンネ=ゾフィ・ムター10代の録音です。
第一楽章第一主題は表情豊かなvn、そして重厚派手なBPOです。第二主題も朗々とした音色を響かせます。カデンツァは揺さぶりが強く聴かせに入りますね。コーダは豪華です。
第二楽章は一転緩さを強調する様にオケはまろやかさを見せ、vnも穏やかさと繊細さを鳴らします。第三楽章第一主題・第二主題ともに表情を軽妙さに変えて軽やかに走ります。ラストは当然の豪華さです。
スローな展開、見事な構成と表現はこのセットの真骨頂でしょう。



Anne Sophie Mutter(vn) / Kurt Masur(cond.), Gewandhausorchester Leipzig
 細く切れる様な音色のvn、でしゃばらないオケです。好みの神経質な音色ですが全体としては印象は薄いかもしれません。でもこちらのムターの方がいい感じ。選りすぐられたコンソメです。
 ムターのもう一枚、カラヤンBPO録音の27年後の2008年作品。
第一楽章第一主題を細く切れ上がるように奏で、オケは重厚に対応します。テクニックを見せた後の第二主題も神経質な音色で悪くありません。カデンツァは冷静、コーダはキレキレです。
第二楽章の主題は緩徐な美しい音色ですが、細くシャープな切れ味は十分。第三楽章主題は軽快に飛ばして第二主題も軽やかですね。
ムターのvnはカミソリの刃のような切れ味を感じました。BPOとの録音より全体的に速めです。現代音楽も得意とするムターも今や53歳、昨年見た時はあまりにガリガリで驚きましたが…



Hilary Hahn(vn) / Hugh Wolff(cond.), Oslo Philharmonic Orchestra
 個性は薄いですが、流麗な音色を聴かせるハーンとオケのバランスが良いですね。こう言うクドイ曲には自然体の演奏がしっくりくる気がします。ちょっと淡白かもしれませんが…
 鳴りの良いハーンの第一主題とバランスの良いオケから、流れるようなvnテクニックを見せます。カデンツァでも、これ見よがしではなく落ち着いた演奏ですね。シャープなコーダです。
第二楽章主題は優美さを見せる音色ですがクールです。ただ流れがフラットで飽きますが… 第三楽章の第一主題はハイペースで切れ味があります。スピード感を持ったまま第二主題も進みハーンのvnの見せ場的です。



Chad Hoopes(vn) / Kristjan Järvi(cond.), MDR Leipzig Radio Symphony Orchestra
 オケの個性が強くvnの印象が残りません。それがクリスチャン・ヤルヴィなのかMDRなのかはわかりませんが…
 以前カップリングのJohn Adamsで紹介した若手のチャド・フープスです。
第一楽章第一主題はオケの迫力が強くvnが細く感じてしまいます。美しい音色ですが、テクニックパートでも際立つものはなく淡々と弾きます。第二主題も悪くないのですが、オケが勝ち気味。カデンツァは可も無し不可も無し的でしょうか。コーダは締まっています。
第二楽章はちょっとモッサリ感があります。緩徐楽章ですが引っかかるような落ち着かない感じは、オケの揺さぶりでしょう。何れにしてもこの楽章は難しい感じです。第三楽章、第一主題は流麗さよりトゲトゲしく、第二主題でもクセを感じます。その辺がフープスの個性でしょうか。でもラストはスピードに乗って決めています。



Jascha Heifetz(vn) / Charles Munch(cond.), Boston Symphony Orchestra
 ダイナミックな中に心地よさを感じる流れの良さが、このセットの一番の魅力でしょうか。安心して楽しめますね。なんでもスロー重厚に演奏する傾向の近年に警鐘を鳴らしているかの様です。
 何回も再発が繰り返される盤、ヤッシャ・ハイフェッツ/ミュンシュBSOです。
第一楽章第一主題、速いのですが切れ味よく揺さぶるvnとオケのバランスは重厚な中に良い流れを感じます。この時点で他のアルバムより良いと思ってしまうくらいです。ハイフェッツの音色は安心感があります。第二主題も美しい音色が優美です。カデンツァはやや平凡かな。
第二楽章主題は緩徐楽章らしさを見せる上品な優美さです。ペースもよく、飽きさせませんね。第三楽章の第一主題はオケと足並み揃えた軽快さが生きています。古臭さを感じなくもないですが、最後まで気持ち良く聴けますね。




心地よい安心感のハイフェッツが一番、切れ味のムター/ゲヴァントハウスがまぁ次? あまり興味の湧く曲ではないので、コンサート当日は前半曲ということもありのんびり聴きましょう。メインはマーラー5番ですね。


テーマ : クラシック
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2016年11月19日 大野和士/都響 の シェーンベルクとフォーレ「ペレアスとメリザンド」、デュティユー「夢の樹」 at サントリーホール ★☆

晩秋の六本木。今朝降っていた雨もなんとか上がり、寒さも弱く助かりました。カラヤン広場はクリスマス🎄
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都響第817回定期B全三曲は、二曲は同題名の作曲者違い、また二曲では美しいフランス楽曲と構成も考えらていますね。好きな曲なので事前に各曲のCD聴き比べもして来ました。

 ・フォーレ「ペレアスとメリザンド」: 3CDs
 ・デュティユー「夢の樹」: 2CDs
 ・シェーンベルク「ペレアスとメリザンド」: 4CDs

フランス人のフォーレとデュティユーは繊細に幽幻に、そしてシェーンベルクはそこに濃厚さをバランスした演奏が好みですね。
さて、期待した演奏が楽しめたでしょうか。



■ フォーレ:組曲《ペレアスとメリザンド》 op.80
 美しい曲ですが、幽玄さではなくドイツ風な重厚さを強く感じました。でも透明感を感じられる流れは良かったですね。
『前奏曲』メリザンドの主題は大きな波の様なディナーミクで重厚、ゴローを表すホルンは控えめでしたね。
『糸を紡ぐ女』は軽妙で、弦の細かいトリルとオーボエのコントラストが効いています。透明感ある美しさでした。
『シシリエンヌ』は泉で指輪を弄ぶメリザンド、甘美を抑えサロン音楽を避けたクールさでした。
『メリザンドの死』は悲しみの美しい葬送 ですが、ここでも大きなディナーミクです。
『メリザンドの歌』がカットされたヴァージョンでしたね。ソプラノの紹介が案内になかったので皆んなわかってたと思います。演奏時間の問題も含めて予想範囲でしょう。


■ デュティユー:ヴァイオリン協奏曲《夢の樹》
 素晴らしいのですが、聴き疲れしましたね。デュティユーというよりヴァレーズ⁈w
4部+3間奏曲ですが、全体を流れる音色はヴィルトゥオーゾでした。vnの庄司紗矢香さんは予想してはいたものの暖色系からキレキレのシャカリキ演奏。ハイテクを見せつけました。例えばデュメイの様に、何気にハイテクがこの曲に合っている様な...
オケは鍵盤打楽器系を揃えてその煌めきを、と思いきやそれが埋もれるほどのメリハリと切れ味の強烈さです。
おおよそ繊細かつ幽幻な美しさとは正反対でしたねぇ。


■ シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》op.5
 全体を通して強音で押し切った感じでした。濃厚さの中にも感じられる神経質な良さはありませんでしたね。
三人のライトモティーフを用いた典型的な標題音楽、原作通りの展開を四部構成で楽しめますね。
『第一部』森に入るゴローの暗さは重厚、メリザンドのテーマも美しいのですが濃い目でゴローのテーマは堂々と鳴ります。運命のモティーフが響き、現れるペレアスのテーマにも明るさは弱いですね。「愛に目覚めたメリザンド」は情熱的で、流れの緩急が薄いです。
『第二部』スケルツォからメリザンドが泉で指輪を遊ぶシーンでも軽快感は薄く、逆にゴローの疑念を表すコントラバスが控え目です。その後の美しいビオラとチェロの短い旋律は濃厚に鳴り「城の塔」の二人のシーンも太め。詰め寄るゴローとペレアスのシーンは当然強いです。
『第三部』の「愛に目覚めたメリザンド」も本来の緩徐的流れは弱く、既にここから二人の感情シーンを濃厚に表しています。訪れるペレアスの死は炸裂的。
『第四部』はメリザンド憔悴とゴローの激情とのコントラストがポイントですが、メリザンドは暑苦しいですね。もっともっと沈んで欲しかったです。メリザンドが死を迎えた後、最後のpart11.Breitがこの曲を総括するように表情変化の富んだ演奏で終わりました。



今日のコンサートではォーレが一番かったでしょうか。
事前の予想では重厚さかと思いましたが、全体に派手で強烈。緩急の緩・閑・間の幽玄さが薄い気がしました。その辺りが好みの分かれ目になりましたね。都響の演奏の良さは味わえたので、ちょっと残念。
それともまたもや駄耳の証明かなw



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デュティユーのヴァイオリン協奏曲「夢の樹」聴き比べ:スターン、カピュソン

アンリ・デュティーユ(Henri Dutilleux, 1916/1/22 - 2013/5/22) はフランスの現代音楽家で、以前この曲を含むアルバムで経歴・楽風を紹介しています。前衛ではありませんが、調性感の薄い幽幻さは好きな音楽です。

これも11/19(土)の都響/大野和士のコンサートの予習、第三弾ですw
すでに「ペレアスとメリザンド」のシェーンベルク盤フォーレ盤の聴き比べはアップ済みです。
ヴァイオリン協奏曲「夢の樹 L'arbre des Songes (1985年)」はアイザック・スターン(Isaac Stern)の還暦祝いに作られた楽曲で、4部+3間奏曲(I. Librement - Interlude 1; II. Vif - Interlude 2; III. Lent - Interlude 3; IV. Large et anime)構成です。
この曲を聴く時に、構成を殊更に意識する必要はないと思います。繊細で変化に富んだヴァイオリンと、フランス音楽らしい幽幻さのオケの楽しみですね。

多分この2枚しか所有していないと思うので、当然スターンからです。(記憶にないアルバムや全集にカップリングされているかも…)



Isaac Stern(vn) / Lorin Maazel(cond.) Orchestre National de France
 例によって陰鬱で美しいデュティユーですが、スターンは繊細かつ大胆な彼らしい演奏で答えます。
細く切れそうな繊細な音色から、弾けるピチカート、伸びのある大胆な弦の音まで表情豊かです。特に全体を通して寒色系で、切れ上がる刃物の様な音色は素晴らしいですね。
幽幻な音色を美しく奏でるのは、やはりマゼール指揮フランス国立管弦楽団ならではでしょうか。細かな打楽器による煌びやかさを伴った隠的な美しさが、この曲にはぴったりですね。
 ちなみにこれが世界初録音で、初演もこのメンバーでパリのシャンゼリゼ劇場で1985年11月5日に行われました。
 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Renaud Capuçon(vn) / Myung-Whun Chung(cond.) Orchestre philharmonique de Radio France
 暖色系まろやかなイメージのルノー・カピュソンと正攻法的な印象のミュンフンの組合せですね。vnの音色は朗々と鳴り響きます。オケも堂々たる演奏です。
繊細な幽幻さよりもキレキレ・ドンシャン的演奏ですね。好みの方向とは違います。



静的で幽幻で繊細かつ豪放なvnと オケの幽幻さがマッチするスターン盤が断然素晴らしいですね。それがデュティユーが望んだ音楽なのでしょう。^^v

コンサート当日のvn庄司紗矢香さんだと大胆部分は想像がつくのですが、繊細な細い切れ味の部分がどうか楽しみですね。危険な香りも...w


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グラインドボーン音楽祭2016 歌劇「セビリアの理髪師」を NHKプレミアム・シアターで観る

今年2016年の英国グラインドボーン・オペラ音楽祭(Glyndebourne Festival Opera)から「セビリアの理髪師」ですね。
ロッシーニ(Gioachino Antonio Rossini, 1792/2/29 - 1868/11/13)が書いた全二幕の超定番オペラで、有名な序曲とモーツァルトの「フォガロの結婚」に続くイメージですよね。
フランス人劇作家ボーマルシェの原作のフィガロ三部作ですが、第三部の「罪ある母」はよくわかりませんw

今年の英プロムスでも登場したグラインドボーン祝祭歌劇場の出し物もこの作品(同キャスト)でした。
グラインドボーン音楽祭2016 歌劇 「セビリアの理髪師」 NHKプレミアム・シアター

はグラインドボーンでも過去「ジャンニ・スキッキ」「愛の妙薬」「けちな騎士」を担当したアナベル・アーデンの新演出です。オケ・ピットと舞台の掛け合いも楽しく、役柄を際立たせてオーディエンスを楽しませる気の利いた得意の演出が生きています。
アリアのパートでの入れ替えがあったとの情報もあるようですが、あまり気になりませんでした。

台・はアーデンの演出らしく突飛さはなく、今の標準でしょう。舞台背景等は時代考証的ではなく抽象的、衣装も時代と現代の折衷風です。前衛性はありません。

ではグラインドボーンでも人気のソプラノ、ドゥ・ニースがメゾソプラノで歌うロジーナですでしょう。ハイトーン側は流石の伸びで、当然ですがw、このオペラらしい派手な演技と共に歌姫を演じました。ヴィブラートの強さが少々気になりましたが。
タイトルロールのフィガロのバリトン、ビュルガーも役柄らしい楽しさいっぱいの演技で楽しませてくれましたね。
ステイトン演じるアルマヴィーヴァ伯爵は伸びるテノールですが演技抑え目、そのくらいがこのオペラを生かすでしょう。
でもこの舞台を盛り立てるのはバルトロ役ですね。コルベルリも演技・歌共に名演でしたね。
アリアでは「爺さんは妻を求め」を脇役ベルタが歌うのが気が利いているといつも思います。

では、まず有名な序曲で抑えの効いた中にメリハリがあるマッツォーラLPOも悪くないと思いました。ドンシャン場面では大騒ぎに、でもオブリガートな細かい音でのパートは上品です。



全体としては、シンプルな中にこのオペラらしい楽しさを存分に盛込んだ演出が生きていました。楽しかったですね。

<出 演>
 フィガロ(理髪師):ビヨルン・ビュルガー [Björn Bürger]
 ロジーナ(バルトロの姪):ダニエル・ドゥ・ニース [Danielle de Niese]
 アルマヴィーヴァ伯爵:テイラー・ステイトン [Taylor Stayton]
  バルトロ(医師、ロジーナの後見人):アレッサンドロ・コルベルリ[Alessandro Corbelli]
  バジリオ(音楽教師):クリストフォロス・スタンボグリス [Christophoros Stamboglis]
  ベルタ(バルトロ家の女中):ジャニス・ケリー [Janis Kelly]
  フィオレッロ(伯爵の召使):フー・モンタギュー・レンドール [Huw Montague Rendall]


<合 唱> グラインドボーン合唱団 [Glyndebourne Chorus]
<管弦楽> ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 [London Philharmonic Orchestra]
<指 揮> エンリケ・マッツォーラ [Enrique Mazzola]

<演 出> アナベル・アーデン [Annabel Arden]


収録:2016年6月17、21日 グラインドボーン音楽祭歌劇場(イギリス)


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フォーレ(Gabriel Faure)の「ペレアスとメリザンド」聴き比べ:小澤征爾、プラッソン、ダーリントン

前回のシェーンベルクに続いてガブリエル・フォーレ(Gabriel Fauré, 1845/5/12 - 1924/11/4) の「ペレアスとメリザンド」も聴き比べておきましょう。もちろん11/19(土)の都響/大野和士のコンサートの予習ですw
個人的にはフォーレというと、どうしても耳馴染みの良いサロン・ミュージックという話がまとわりつきますが…

フォーレ中期の代表作「ペレアスとメリザンド (Pelléas et Mélisande) Op.80 (1898年)」は組曲で演奏される事がほとんどでしょう。従ってシェーンベルクの様に全ストーリーをイメージしながらという聴き方とは違います。そして以下の2〜6分の5小曲構成ですから気楽に楽しめますね。

1. 前奏曲(Prélude) - 2.糸を紡ぐ女(Fileuse) - 3.メリザンドの歌(Chanson de Mélisande) - 4.シシリエンヌ*(Sicilienne) - 5.メリザンドの死(La Mort de Mélisande)

*有名曲のシシリエンヌ(YouTubeで)が入っています



小澤征爾 w/Boston Symphony Orchestra [DG]
 なんとも甘ったるい濃厚さですね。特に前奏曲とシシリエンヌは蕩ける様です。好みの方向性ではありません。
ボストン響と小澤征爾(BSO音楽監督1973-2002) 蜜月時代の1986年録音です。
『前奏曲』メリザンドの主題は後期ロマン派の 蕩ける様な大甘美さ、ゴローを表すホルンは控えめながら良い響きです。『糸を紡ぐ女』は抑え気味ですが情感が大きな波で伝わる様です。『メリザンドの歌』はローレン・ハントが歌う「王の3人の盲目の娘たち(The King's three blind daughters)」がメインですが、美しいソプラノは聴かせてくれますね。有名な『シシリエンヌ』は泉で二人が指輪で遊ぶシーンですが、ここでも甘美な美しさです。『メリザンドの死』は葬送ですが、も美しさが際立ちます。



Michel Plasson w/Orchestre du Capitole de Toulouse [EMI]
 全体を通して透明感のある美しさを感じます。流れはどこか悲しみを感じ、それはペレアスとメリザンドのストーリーの本質を表しているのかもしれません。
フランス人指揮者ミシェル・プラッソン(Michel Plasson)の得意とするフランス楽曲、そしてその中でも代表作の一つでしょう。もちろんプラッソンが育て上げた手兵 トゥールーズ・キャピトル国立管の演奏です。
『前奏曲』メリザンドの主題はやや速めですが流れがあり甘美さより清々しい美しさ、ゴローを表すホルンはオケとの絡みがいい感じです。『糸を紡ぐ女』は軽妙で、弦の細かいトリルとオーボエのコントラストが効いています。繊細な美しさを感じますね。
3曲目は『シシリエンヌ』が先に来ます。ここでも甘美さよりも抑えの効いた美しさです。
『メリザンドの歌』はフリッカことフレデリカ・フォン・シュターデ(Frederica von Stade)のソプラノです。よく伸びる美しいソプラノと、音色が寂しさや悲しみを感じさせるオケがとてもマッチしています。『メリザンドの死』は悲しみの美しい葬送です。



Jonathan Darlington w/Duisburger Philharmoniker [acousence classics]
 大きな流れを作り、その中に情感を配するダーリントンらしい演奏です。清廉な美しさが表現されて素晴らしいですね。
シェーンベルクの聴き比べも書きましたが、オススメの指揮者&オケのセット ジョナサン・ダーリントンw/デュースブルク フィルです。このアルバムには、シェーンベルクとフォーレの「ペレアスとメリザンド」が入っています。
ここではソプラノが入る『メリザンドの歌』は未収録になり、4曲の組曲です。
『前奏曲』は間をとった大きな流れを感じる中にこの曲独特な美しさがうまく配されています。ゴローを表すホルンとオケとの絡みも美しいですね。『糸を紡ぐ女』は軽妙ですが、ここでも大きなディナーミクの流れが生かされています。オーボエの表情が効いていますね。
3曲目は『シシリエンヌ』。ここでも繊細な美しさから、揺れる様な流れを作り出しています。『メリザンドの死』の葬送は、悲しみと溢れる気持ちの両面を感じます。




繊細さと細やかさの中に悲しみを織り込む美しいプラッソン、そして大きな流れの中に上品な美しさを奏でるダーリントン、いずれも甲乙つけがたい素晴らしさです!!
何れにしてもフランス音楽を重く奏するのはいけません好みではありません。w




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

シェーンベルク(Arnold Schönberg)の「ペレアスとメリザンド」聴き比べ:カラヤン、ブーレーズ、ダーリントン

アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schoenberg, 1874/9/13 - 1951/7/13) の後期ロマン派時代の名曲ですね。今までも紹介済みですが、11/19(土)の都響/大野和士のコンサートを前に聴き比べしてみましょう。

ペレアスとメリザンド(Pelleas und Melisande)はOp.5の初期作品で、唯一の交響詩(Symphonische Dichtung)ですね。技術的には全体を自由なソナタ形式で、四度和音を含む進んだ対位法、といった話もありますが、ポイントは次の事でしょうか。

◆標題音楽で、メーテルランク*の原作「ペレアスとメリザンド」のストーリー通りに音楽ができています。ドビュッシーのオペラでおなじみですから、シーンと照らし合わせると良いですね。
 *最近はメーテルンクではなく、より原語に近いメーテルンクと書くそうです。真似てみました ヾ^^;
◆ライトモティーフが使われて、旋律が人物や状況と関連付けられています。諸にワグナーの影響ですね。
 ・ゴロー:重厚で美しい上昇音階です
 ・メリザンド:可憐で不安な下降音階です
 ・ペレアス:軽妙な流れる様な音階です
 ・運命のモティーフ:短く印象的な音階です
◆一楽章構成ですが、概ね四部構成になっているようです。(くぎれ目はありません)

そのあたりを頭に入れながら、三人の指揮者(ブーレーズは2CD)で聴いてみましょう。



Herbert von Karajan w/Berliner Philharmoniker [DG]
 言わずとしれたカラヤンBPO、計算された オペラの様なストーリー性を感じる演奏ですね。もちろん重厚壮大ですw 各楽器の役割も明確ですね。初めて聴くなら良いかも。
第一部では暗い森からメリザンドのテーマとゴローのテーマを暗く美しく奏でながら「運命のモティーフ」を重厚激情的に演奏します。そしてペレアスのテーマは一転、軽妙に表現しますね。この隙のないドラスティックな変化展開が、このセットの真骨頂でしょうね。
第二部のフルートのスケルツォは軽く優美。暗いゴローの"疑いと嫉妬のテーマ"に続く 有名な「城の塔」のシーンは清廉なる美しさです。緩徐楽章になる第三部は甘美さよりも不安を残すような美しさですね。
そして第四部はメリザンドの死までをゴローの心情とコントラストをつけた表現で表します。



Pierre Boulez w/Chicago SO [ERATO]
 ブーレーズ、CSOとの1991年12月録音盤は、やや速めで重厚さよりも落ち着きを感じる演奏です。ストーリー展開も薄味で、今ひとつ...かな。
第一部はやや速めで重厚さを避けて森は入りながら、ゴローとメリザンドのシーンから運命のモティーフで管楽器が華やさが特徴的です。ペレアスは控えめな軽妙さですね。
第二部のフルートのスケルツォ、そして泉で指輪を弄ぶシーンは重めですね。ゴローの"疑いと嫉妬のテーマ"から「城の塔」へは美しさが透明感強く表現されますね。第三部も延長線上の展開で、殊更の緩徐的展開ではありません。ペレアスの最後も緩い感じで、その分印象が薄くなるかもしれませんね。第四部への繋がりもナチュラルで変化にやや乏しいかもしれません。死を迎えるメリザンドも割とあっさりです。



Pierre Boulez w/Gustav Mahler Jugendorchester [DG]
 ブーレーズがグスタフ・マーラー・ユーゲント管と、2003年4月にサントリーホールで行ったライヴ盤です。ディナーミクとアゴーギクを生かした透明感と煌めく色彩感でストーリー性を味わえる演奏ですね。
感情移入しないで聴きましょうw
 第一部は速めながら色合いや表情を感じる演奏です。ゴローとメリザンドのシーン、そして運命のモティーフからペレアス登場はアゴーギクとディナーミクを振って情感豊かです。第二部のスケルツォから泉の指輪のシーンはリズミカル、ゴローの"疑いと嫉妬のテーマ"は陰鬱激情に、「城の塔」では会話の様にと感情表現を強く奏します。第三部も緩徐的な流れで美しく二人のシーンを感じさせてくれながら、ペレアスの死まで表現豊かです。第四部でも死の淵のメリザンドと嫉妬のゴローのコントラストを強く出します。死を迎える 10.In gehender Bewegung の展開は格別な美しさで、11.Breit のゴローのテーマとの対比が素晴らしいです!



Jonathan Darlington w/Duisburger Philharmoniker [acousence classics]
 個人的イチオシの指揮者&オケのセット、ジョナサン・ダーリントン/デュースブルク フィルです。ストーリー性に感情移入したような、生き生きとした音楽性を強く感じる演奏です。濃い味ですw
ダーリントンは今までも色々と紹介済みで、本アルバムも単独インプレしてあります。
 第一部、森に入るゴローの暗さはやや強め、各楽器の音色が生きてゴローとメリザンドのテーマも美しく響きます。運命のモティーフが響き渡る様に鳴り、ペレアスのテーマとのコントラストも良いですね。第二部、スケルツォは明るく。メリザンドが泉で指輪を遊ぶシーンでは、落とすまでの中の微妙な心の揺れも感じます。ゴローの疑念を表すコントラバスは色濃く、その後の短いビオラとチェロは美しく、そして「城の塔」の二人のシーンは繊細です。そして地下の洞窟でのゴローとペレアスのシーンも強いです。第三部は「愛に目覚めたメリザンド」の美しく緩徐楽章的流れから激情さへと、二人の感情シーンを表しています。訪れるペレアスの死は炸裂的です。第四部はゴローとメリザンドのコントラストですね。メリザンドの死はややくどいかもしれません。
(本CDはカップリングでフォーレの"ペレアスとメリザンド"も入っています)




ズバリ、③ブーレーズ/グスタフ・マーラー・ユーゲント管盤がCDイチオシですね。コンサートで聴きたいならダーリントン/デュースブルグ フィル④です!!

11/19(土)の都響/大野和士のコンサートでは、予想はカラヤンBPOの方向性ですが どうなるでしょう。楽しみです。^^


【PS】当日演目の他に曲も聴き比べしました
  ・フォーレの「ペレアスとメリザンド」聴き比べ
  ・デュティユーのヴァイオリン協奏曲「夢の樹」聴き比べ




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ジョルジュ・クルターク(György Kurtág) の Portraitkonzert Salzburg 10.8.1993 を聴く

続けてクルターク(Gyorgy Kurtag, 1926/2/19 - )の Portraitkonzert Salzburg(1993-8/10) のライヴですね。残念ながらザルツブルク・ポートレイト音楽祭?を知らないのでどの様な内容のコンサートかはわかりません。でもせっかくですから、お気に入りの一人クルターグの連続紹介です。

楽曲構成については、ライナーノートに "Ein Komponiertes Programm" Werke Aus Den Jahren 1961-1992 とあり、「"構成プログラムは" 1961年から1992年の作品」との事です。従って教授職中の作品メインとなりますね。

Portraitkonzert Salzburg 10.8.1993 / György Kurtág

コンサート用の組み合わせで楽曲が下記のリストになります。殆どは極小曲からなる楽曲ですね。

1. Einführung zu Opus 27
 ・Pracludium und Choral (1961/81年) Für Klavier
 ・Tamàs Blum in memoriam (1992年) Für Viola
 ・Antiphone in fls (1973/76年) Für Klavier
 ・Vier Mikroludlen Op.13/4, 6, 10, 5 (1977-78年) Für Streichquartett
 ・Il pleut sur la ville (1981年) Für Sopran Und Klavier
 ・Lebewohl Op. 26/4 (1986/87年) Für Sopran Und Klavier
 ・Les Adieux Op. 12/7 (1975年) Für Sopran Und Violine
 ・János Pilinszky: Gérard de Nerval (1986年) Für Violoncello
 ・The Answered Unanswered Question Op.31b-Message-Hommage á Frances-Marie Uitti (1989年)

古典的な点描的音列配置を感じるPracludium und Choralは、表現主義傾倒時代の名残でしょう。そこから1992年へのクルターグの音楽変遷が聴けるのが、このコンポジットな曲です。作曲年は前後しますが、静と烈のコントラストになるまでの変化が楽しいですね。1977年あたりに今の楽風への変化ポイントがある様な感じです。

II. Doppelkonzert Op.27 Nr.2 (1989/90年)
 ピアノとチェロと二つのアンサンブルの為のコンチェルトです。神経質なチェロの音色とパルス的なピアノ、そしてアンサンブルがポリフォニーを奏でます。静的な展開と強音展開はクルターグらしいですね。各声部を統合する方向性が垣間見えていますが、やや中途半端的な感じです。

Requiem po drugu (Requiem fur einen Freund) Op.26 (1986/87年)
 -1. O Gott, wie plötzlich diese Stille, -2. Eine grausame Romanze, -3. Es war meine Stärke..., -4. Gott schütze Dich, mein Geliebter...
 ゾルターン・コチシュ(Zoltan Kocsis) のピアノをバックに、エイドリアン・クセンジェリー(Adrienne Csengery) のソプラノのシュプレッヒゲザングです。多分に"月に憑かれたピエロ(Pierrot Lunaire)"の香りを感じますね。要はそんな曲です。煮え切れない気配は否めませんが。

Samuel Beckett: What is the Word Op. 30b (1990/91年)
 いきなりのトゥッティで入り、静かな語りに近い声楽になります。時々に現れるパルス的クラスター、そして狂気の語り。コントラストが強烈です。その辺りが前の曲との面白さの違いでしょう。
そもそもサミュエル・ベケットの演劇からクルターグは影響を受けていますから力作かもしれませんねw 面白いです
歌詞は、言葉とは何だ!, 馬鹿げてる, ... といった徹底的にThe wordを問い詰める内容です。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
  本CDとは落差がありますが、降矢美彌子(Miyako Furiya)指揮&ピアノ、福島コダーイ合唱団(Fukushima Kodaly Choir)による演奏です。前振りが5分半もありますので、飛ばして下さいw
  日本では知られていませんが、ハンガリーではWikipediaにも載っています!!


III. Grabstein für Stephan in memoriam Stephan Stein Op. 15c (1989年)
 M7だかm7の様なギターコードから、忍び足の様に潜んでオケが進み絡んできます。そしてクラスターの炸裂。全体を占める陰鬱さと、閃光の様な衝撃音。そのコントラストが大自然を感じさせますね。クルターグらしさを感じられる好きなパターンです。

Játékok (Spiele) - Auswahl (Seit 1973年)
 表現主義の残像、ポストセリエルな、10の小曲からなるピアノ連弾曲です。ここではクルターグ夫妻によるピアノの共演です。小曲の中には奥さんのマルタさんに捧げた曲も入りますが、興味は薄い音楽になりますね。最後にバッハのカンタータNo.106が入るあたりも、余計に音列主義を彷彿??

Drei alte inschriften Op. 25 (1986年) Für Sopran Und Klavier
 -1. Blume, Du sollst wissen, -2. Geschnitzte Szekler Wäschemangel (1792年), -3. Grabkreuz auf dem Friedhof von Mecseknadasd
 再び、Zoltan Kocsis のpf と Adrienne Csengery の無調シュプレッヒゲザングです。似たような感じですが、より短く没個性的です。

...quasi una fantasia... Op. 27 Nr. 1 (1987/88年) Für Klavier
 -1. Introduzione: Largo, -2. Presto minaccioso e lamentoso (Wie ein Traumeswirren): Molto Agitato, -3. Recitativo: Grave, disperato, -4. Aria - Adagio molto: Lontano, calmo, appena sentito
 ピアノの単音がゆっくり静かに下降進行し、小さな鈴の音が続きます。残響が生かされて空間音響系になりますね。そして渦巻く様なポリフォニー展開になり、ヴァレーズの様なクラスターが現れます。
代表作の一つで、空間を埋める静音パートの煌めきと烈のコントラストは この後のクルタークの音楽の礎になっている感じですね。これはいい感じです。

・・・・・

個人的には1990年以降が好きなので、やや古い楽曲が並ぶアルバムです。特に'70年代まではベースが表現主義の音列配置になるので古(いにしえ)の現代音楽に感じますね。
とはいえ、'80後半からの素晴らしい楽曲も入っています。声部を統合する様な楽風はまだ現れていませんね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ジョルジュ・クルターク(Gyorgy Kurtag) の Signs, Games & Messages を聴く

前回に続いてのクルターク(György Kurtág, 1926/2/19 - )です。今回はもう一つのクルターグらしさ、声楽曲です。楽風等は前回の紹介を参照くださいね。

Signs, Games & Messages / György Kurtág

[1-6] Holderlin-Gesange for baritone, Op.35a (1993-97年)
18-19世紀のドイツの詩人・思想家フリードリヒ・ヘルダーリン(Friedrich Hölderlin)をベースにしたバリトン歌曲になります。思想家の歌詞にコメントをつける技量はないので、興味がある方は調べてくださいね。
バリトン・ソロで、ここでも残響を生かして澄んだ幽幻さを聴かせてくれます。この年代の作品らしく、音が跳躍する混沌無調ではなく旋律らしきものは存在します。#3だけはチューバとトロンボーンが入りますが、オブリガートというよりも対位法的です。

[7-25] Signs, Games and Messages for strings (1989年 in progress)
現代音楽手法ワークス・イン・プログレスのスタンスを取っている弦楽曲ですね。この曲の現在の状況はわかりませんが、昨年イザベラ・ファウストのvnでも出ています。
ここでは作曲年代らしく、静的美しさと刺激音の交錯になります。調性はもちろんありませんが、静音パートでは例によって旋律らしきものが存在します。前回紹介の"Officium breve in memoriam"と似た方向性です。一部パートではセリエル的な音列を感じますね。また各楽器(声部)を統一する構成をとる事もあり、転換期のイメージがありますね。さらに一部では教会旋法を感じることさえあります。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
  for viola solo ヴァージョンで、vaはDaniel Palmizioになります


[26-59] … pas a pas - nulle part… Poemes de Samuel Beckett for baritone solo, string trio and percussion, Op.36 (1993-98年)
クルターグはサミュエル・ベケットの演劇から音楽的影響を受けたと言われています。そのベケットの詩「… pas a pas - nulle part…」に、バリトンを主役で置いた曲です。
弦楽三重奏+パーカッションが入り、一曲目のバリトン・ソロに比べると同年代ですが色合い豊かになります。小曲の集合体ですが、そのパターンも様々で表情豊かですね。
各声部の旋律を合わせる重奏が多く採用されてくるのは後年のクルターグの特徴と感じます。

[歌・演奏]
・Kurt Widmer [baritone]
・Orlando Trio
  - Hiromi Kikuchi [violin]
  - Ken Hakii [viola]
  - Stefan Metz [cello]
・Mircea Ardeleanu [percussion]
・Heinrich Huber [trombone] (#3)
・David LeClair [tuba] (#3)


・・・・・

声楽曲、弦楽曲ともにクルターグらしい透明感ある静的パートと刺激の共存が楽しめます。"空"の中の静的パートの微妙な残響は、空間音響系につながるものを感じます。
とても興味深く、引き込まれますね。

せっかくですから、もう一枚続けて紹介しましょう。^^


テーマ : クラシック
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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。





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