ペーテル・エトヴェシュ Eotvos の kosmos を聴く

ハンガリーの現代音楽家ペーテル・エトヴェシュ(Peter Eötvös, 1944/1/2 - ) は指揮者としての顔の方が日本では知られているかもしれませんね。もちろんこのBlogでも両方を紹介しています。
楽風は出し入れのコントラストが強い電子音楽エクスペリメンタリズムです。

kosmos / Peter Eötvös

1. Sonata per sei (2006年) for 2 pianos, 3 percussionists and sampler keybooard
 バルトークの影響を元に作られた、ピアノとキーボードと管弦楽のための交協奏曲"CAP-KO"をベースにアレンジされた五楽章の曲です。管弦楽を単にパーカッションとサンプラーに置き換えたのではないとの事。
点描的なpfの音とサンプラーの音色に打楽器が絡みます。主役である2台のpfは対位法でありユニゾンでもあります。無調で点描的ですが、旋律的な音展開は速くサンプラー音はフュージョンの様であり聴き応えがありますね。

2. Psalm 151 (1993年) for 4 percussionists
 エトベシュが認めていたミュージシャンの一人フランク・ザッパへの追悼曲で、ザッパの亡くなった1993年に書かれた打楽器曲です。演奏は、7つのTubular Bells, 2つのPlate Bells, そして2つのNipple Gongs が円状に配置されて、その中央に大太鼓が置かれます。
クラスター要素とスピード感はなく、こもった音色の大太鼓と響くベル・ゴングの音色の対比の様な音楽です。音作りに"間"を感じますね。

3. Kosmos (1961, rev.1999年) for 2 pianos
 バルトークの影響から作られた曲で、1961年に3日間で書き上げられたそうです。宇宙の生業をビッグバンから書かれて、このイメージは後に 以前紹介したPsychokosmos (1993)、Psy (1996) として展開されます。そして1999年にkey workとしてKosmosとなりました。
トレモロからの流れで構成されるピアノデュオ曲です。暴れる様な大音響は無く、パルス強音と宇宙空間の様な残響音を主体にして無調の旋律も存在しています。2台のpfはユニゾンと変奏で、ここでも響きと"間"が空間を表現している感じがありますね。
そう言う意味では空間音響系の音楽です。
 ★試しにYouTubeで観てみる?

演奏はピアノがGrauSchumacher Piano Duo、打楽器が Schlagquartett Köln、キーボードは Paulo Álvares になります。

2014年発売ですが、作曲年からいくとそれ程新しくはありません。目新しさは感じられませんが、安定した作品感があります。欧州エクスペリメンタリズム系の前衛音楽を聴くのには良いですね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

六花酒造の たか丸くん と 蔵子、少量サイズを飲む

青森県弘前市の六花酒造と言えば「じょっぱり」ですね。
お友達からいただいて美味しい事は再確認していたので、地元で手に入る面白いものを二つ飲んでみました。

たか丸くんカップ 特別純米酒
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適度な甘口で、どこか落ち着いた締まった感じがします。日本酒度 +1.5、酸度 1.4 が表すほどの軽さではありませんね。カップ酒だからと侮ってはいけません。^^v

中身はじょっぱりの純米酒らしいです。表示上の問題ですが、精米歩合60%で純米吟醸としても可のお酒ですね。
弘前城築城400年祭マスコットキャラクター「たか丸くん」の絵柄が三種類あり、セットもあったようですね。


蔵子 (くらこ) 本醸造原酒  すとれえと 白梅
  sake-kurako-shiraume.jpg

封切りの甘口から適度な良い感じになります。やや琥珀色のalc.18°で濃い目の味わいは、原酒でだからでしょうか。本醸造ですが、吟醸的風合いです。(ちなみに日本酒度 -5.0、酸度 1.5です)

蔵元曰く『六花酒造が創業する以前、その母体となった酒蔵のひとつ「白梅」の時代から製造されていた、歴史と伝統のある逸品です』とあります。オリジナル200mlボトルのこのサイズのみの展開と言うのも面白いですね。


テーマ : 日本酒
ジャンル : グルメ

スコッチ McKendrick's を飲むと考えるアルコール類のコスパ

えぇ〜と、最近ウィスキーは安物ばかり飲んでるのでインプレの印象が悪いかも。^^ゞ

西友 スコッチ マッケンドリックスと言う訳で、西友のスコッチ・マッケンドリックス(McKendrick's 3yo) です。

ウォルマートグループ傘下の英ASDAアズダ社から¥800以下の激安品。3年でこんなに色は付きませんから、当然カラメル効果でしょうw。
細かい事はわかりませんし 追求する様なものでもないですね。

3年熟成でスコッチ要件ギリギリ、後添のカラメルの風合いとグレーンの味が明確ですが全体的に薄味でクセはありませんから拘らずにウィスキーを飲むにはいいですね。これの前にサントリー角の白を飲んだのですが、これの方が安いのに好きかも。¥1,000前後安ウィスキーも飲み比べると面白い?!

個人的好みだと、最近飲んだ安ウヰスキーの中では次の通り
McKendrick's ≧ バランタインFinest > 富士山麓 > サントリー角(白)


ちなみに各お酒の平均的コストを考えると。(価格設定は個人的な通常飲みです。焼酎や第三のビール、また紙パック酒やペットボトルウィスキーは除外です)
 ウィスキー(alc.40%):¥1,000/700ml(1本)x60ml(ダブルでは)=¥86(alc.24ml)
 日本酒(alc.15%):¥1,000/720ml(四合瓶)x180ml(一合では)=¥250(alc.27ml)
 ワイン(alc.15%):¥800/750ml(1本)x100ml(グラスでは)=¥107(alc.15ml)
 ビール(alc.5.5%):¥260/500ml(ロング缶)x500ml(1缶では)=¥260(alc.28ml)

アルコール類コスパ (50mlアルコール摂取時比較) では次の通り。
ウィスキー(¥179) ≫ ワイン(¥357) > 日本酒(¥463) ≒ ビール(¥464)
やっぱりウィスキーだよね。


テーマ : お酒
ジャンル : グルメ

Bang On a Can で聴く Philip Glass の Music in Fifths, Two Pages

ついでに今日も Bang On A Can(BOAC) です。とは言えやっかいなグラスのミニマルです。
個人的にはBOACマターなので作曲家フィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - )については割愛ですw

Music in Fifths, Two Pages / Bang On a Can

この二曲は多少の変奏がありますが、殆ど同じ様な旋律を徹底的に延々と反復するミニマルです。スコアをみると変化と反復の程度が良くわかりますが、単一楽器の演奏ではいつまでも同じ繰り返しが続きます。

しかしBOACでは楽器編成を生かして、表情を微妙に変化させてくれます。音の奥行きも広くなり、25分前後の二曲はより一層の陶酔響(郷)を感じさせてくれますね。もちろんエンディングはフッと音がとまり終了です。

この時のBOACメンバーは以下です
 Robert Black : bass
 David Cossin : marimba
 Lisa Moore : piano
 Mark Stewart : guitar
 Wendy Sutter : cello
 Evan Ziporyn : clarinets

いずれにしてもミニマルですから、この音の波に委ねる事になります。それなら、ある程度大きなボリュームがお勧めです。BOACなら音数が多い渦の中で陶酔感が味わえますね。
とは言え、グラスのミニマルはやっぱりキツイです。
(笑)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

インスタレーションへの流れ Bang On A Can All-Stars の Field Recordings を聴く

このBlogでは超おすすめのBang On a Can(BOAC)です。これは昨年発売の最新盤ですね。もちろん演奏ですから、Bang On A Can All-Stars になります。今更の紹介は省略ですw

Field Recordings / The Bang on a Can All-Stars

ちなみにField Recordingsの意図はジャケットの開きに書いてありますので、一度読んでみて下さい。また、このアルバムはイメージ映像DVD付き(*印の4曲+1曲)です。Liveステージでも流されている様です。

1. Reeling / Julia Wolfe
 ジュリア・ウルフは紹介済み、BOAC設立メンバーですね。
東南アジア系のサウンドが展開されます。ヴォーカリーズを含めて和声はそのもの、エバン・ジポリンの影響?!w テンポアップして進行します。Weather Reportを思い出しますね。そんな感じ。

2. An Open Cage / Florent Ghys
 フランス生まれでN.Y.で活躍中のフローレン・ジーズ (Florent Ghys) はベーシストの現代音楽家、ミニマルやポップミュージックを基本としていますね。
語りと同期する様なベース、対位法的な楽器も時折現れます。BOACらしいサウンドの変奏と対位法の流れに後半は歌が被ります。語りは生活を述べている様ですね。ラップのBOAC的展開かも。

3*. Gene Takes a Drink / Michael Gordon
 マイケル・ゴードンも紹介済み、BOACの設立者にしてJulia Wolfeのご主人です。
典型ミニマルですね。BOACの得意とする処で、映像ととてもマッチします。

4. Fade to Slide / Christian Marclay
 クリスチャン・マークレー(Christian Marclay, 1955/1/11 - ) は米国とスイスの両国籍を持つ現代音楽家で、音楽だけでなくビジュアルも含めた総合芸術家ですね。基本はターンテーブリズム(Turntablism)ですが、所謂DJのスクラッチ音楽ではなくコラージュを用います。
ノイズやドローン、電子音そしてミュージック・コンクレートの音楽ですね。主はノイズでポリフォニー、BOACのもう一つの顔 前衛系です。CDではわかりませんが、ノイズは映像からの音も多用されるインスタレーション系ですね。すごく面白いのですが、これは映像がないのは困ります。

5. unused swan / David Lang
 こちらもBOAC創設メンバーの一人デイビット・ラング、紹介済みです。
無調のスロー旋律に同期する楽器とノイズ(騒音)の打楽器のコントラスト。最後は破壊的な騒音のみ。似た音楽が見当たらないかも。ノイズは打楽器特殊奏法だけでなくテープ(PC)も併用している様です。

6. Casino Trem / Tyondai Braxton
 タイオンダイ・ブラクストン(Tyondai Adaien Braxton, 1978/10/26 - ) はアンソニー・ブラクストンを父親に持ち、前衛エキスペリメンタル・ロック グループ バトルス(Battles)のギタリストでもあります。
ポップな電子音楽です。多少の不協和音がポップさを強調し、リズミカル&コミカルさが曲を形作りますね。楽しさいっぱい。一押しです!!

7*. Hz / Jóhann Jóhannsson
 ヨハン・ヨハンソン(Jóhann Jóhannsson, 1969/9/19 - ) はアイスランドの現代音楽家でキーボード奏者です。楽風は映画音楽からミニマル、そしてドローンやエレクトロニカといったポスト・クラシカル(post-classical)ですね。
これはまさにドローンです。気配は美しい陰鬱さで特殊奏法による多少のノイズ系でもあります。
現代音楽の一つの流れ、Max Richterからのポスト・クラシカルについてはまたの機会に紹介する事になると思います。

8. Seven Sundays / Todd Reynolds
 トッド・レイノルズ(Todd Reynolds, ) はN.Y.で活躍する現代音楽家で、バイオリニストとしてBOACやSteve Reich and Musiciansに登用される事もあります。
R&Bベースの様な歌が歪みながらテープ(録音)で流れて、合わせる様に歪んだ音の楽器がミニマル風に続きます。陶酔的なポストミニマルですね。なかなか面白い!

9. The Cave of Machpelah / Steve Reich
 言わずと知れたビッグネイム、スティーブ・ライヒです。
ドローンですが、ミニマル的な響きがするのは和音(和声)の度数の関係でしょうか。フラットに続くドローンの背景には、音量を絞った打楽器の音色があります。

10*. Maximus to Gloucester, Letter 27 [withheld] / Bryce Dessner
 ブライス・デスナー(Bryce Dessner, 1976/4/23 - ) はN.Y.の現代音楽家でギタリストのミニマリストです。バロックから民族音楽、後期ロマン派から現代音楽、と守備範囲は広いですね。坂本龍一との共演もあります。
ポストミニマルです。単音羅列のミニマルに、映像からヴォイス(語り)が入ります。BOAC委嘱曲です。DVDでは語りのパート以外は真っ黒画面ですが、再生機器の故障ではありませんw

11*. meeting you seemed easy / Mira Calix
 マイラ・カリックス(Mira Calix's real name is Chantal Francesca Passamonte, 1970 - )はイギリスを拠点とする女性現代音楽家。楽風は電子音楽からインスタレーション系へと変化しています。
空港の放送の様なテープ(録音)と映像を背景に、スローな旋律と変奏の無調の楽曲です。テンポが途中で上がり、変奏主体の流れになりますね。再びテープ主体からノイズ風に展開して、スローに回帰します。面白いですね、悪くありません。

12. A Wonderful Day / Anna Clyne
 アンナ・クライン(Anna Clyne, 1980/3/9 - ) はロンドン出身で現在は米国で活躍中ですね。マンハッタン音楽学校(Manhattan School of Music)でジュリア・ウルフに師事しています。室内楽から管弦楽、そしてテープ&電子音楽の両方をこなしますね。
テープ(録音)のアフリカ系の歌を主体として和声が構成されています。歌と同期する楽器、ほぼこの構成のまま平穏シンプルに進みます。挟まれている語りも特徴的です。表題のA Wonderful Dayを感じます。なんだか心に沁みます。

DVDにはCDに入っていない次の一曲が含まれます。
13. Real Beauty Turns / Nick Zammuto
ニック・ザミュート(Nick Zammuto, )はN.Y.のロックバンドZammutoのリーダーでもある音楽家です。
歌の入るポストミニマルです。DVDのクリップとのマッチングはこの曲が一番マッチしています。映像と合わせて観ると、ちょっとコミカルなこの曲の面白さが引立ちますね。映像も笑えます。

今のBang On A Can All-Starsのメンバーは以下ですね。
 Ashley Bathgate - cello
 Robert Black - bass
 Vicky Chow - piano and keyboards
 David Cossin - drums and percussion
 Mark Stewart - guitars
 Ken Thomson - clarinets

試しにYouTubeで観てみる
 なんとField Recordings のLive 12曲を観る事が出来るんですよね。(The Greene Space でのLIVE. 2015年5月13日)
入っていないのが一曲、残念な事に 6. Casino Trem / Tyondai Braxton です。また、演奏はCDの方が俄然良く、このLiveでは各曲の個性と力感に欠ける印象です。


若い世代中心の今の米現代音楽を楽しめて お勧めです。歌や語りが多く入るのも特徴的ですし、DVD収録曲以外でもステージで映像が流される曲があります。ここでもインスタレーション系台頭が伺われますね。イメージDVDがアルバムに付いている事もその象徴ですね。
この春にはロンドンでもField Recordingsコンサートが開かれる様です。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

九嶺 山田錦 純米吟醸 を飲む

春めいて来ましたね。緑も見られる様になりました。雪が恋しい季節ですw
明日から春スキーならぬ春スノーボード行きですが、そこでもお酒がたのしみ。^^v

九嶺 (くれ) 純米吟醸 山田錦 無濾過生原酒
 広島県 呉市 相原酒造
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個人的には九嶺と言えば雄町が浮かぶのですが、本道はやっぱり山田錦の様ですね。
封切りです。純米吟醸らしいまろやかさ、そして甘み、九嶺らしい独特な芳醇な香りが生きていますね。緩い炭酸感の酸味も味わえます。表記されている日本酒度と酸度ほど軽い感じではないですね。
無濾過生原酒、ムロナマゲンなどと略してはいけません、の純米吟醸。まさに今の主流のお酒ですね。そう言う味わいです。

ちなみにザックリ言うとこんか事かな
・無濾過:醪(もろみ)の中の微粒な酒粕などが残る
・生  :二度の火入れ(低温です)殺菌なしで、発酵が進む可能性あり
・原酒 :加水調整なしで、ややアルコール度数が高くて味も薄まらない
本来の味わいが楽しめる!?!

テーマ : 日本酒
ジャンル : グルメ

細川俊夫の歌劇「Stilles Meer 海、静かな海」ハンブルク国立歌劇場公演 を NHKプレミアムシアターで観る

待っていたこのオペラを観られて嬉しい限りです。
森鴎外の「舞姫」や 能の「隅田川」からとられた骨格、西洋バレエと能の舞いの違い、彼岸に対する思いや被爆地ヒロシマ生まれの本人のフクシマへの思い。事前に細川さん本人のインタビューを1月に読む事が出来たので心待ちでした。

同時放送されたドキュメンタリー「海、静かな海 フクシマへのレクイエム」でも、出演者達のFukushimaへの思いは単にオペラとしてだけ見るのでなく、それを念頭に置くことが必然と感じさせてくれました。見る前は、あまり意識しないで観ようと思いましたが、それは違いました。
冒頭音楽の変更に対する考え方も含めて、ドキュメンタリー内容も原発事故への取り組みの真剣さが伝わりましたね。

オペラ「Stilles Meer 海、静かな海」1幕5場
 《2011年3月11日の犠牲者に捧げる》
 世界初演:2016年1月24日・27日・30日・2月9日・13日
      ハンブルク州立歌劇場(委嘱作品)
 作曲:細川俊夫
 原作(日本語)・演出:平田オリザ
 ドイツ語翻訳:ドロテア・ガストナー
 台本:ハンナ・デュブゲン
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写真はハンブルク国立歌劇場のウェブサイトから

あらすじ
Fukushimaで日本人の夫と息子マックス(前夫との子)を亡くしたクラウディア。息子はまだ生きていて帰ると信じている。
クラウディアを現実に戻し ドイツに帰すために、前夫のシュテファンと亡き夫の姉ハルコが訪れる。現実を受け入れられないクラウディア。
最後は「隅田川」のラストシーンを思い起こさせて回復を願うが、叶わない。

演出・舞台
円形の原子炉の中、核燃料棒、そして海の青と 山を表すスロープ、というシンプルな一舞台。抑揚の薄い現代音楽に、"間" を重要視したという極端に動きの少ない演出(上記、バレエと能の違い)。徹底したシンプルさ、陰で静な演出です。

衣装・演技
東北地方の縞木綿の生地を使っているとの事で、漁師はそれらしい出で立ち、主役3人は今風の洋服ですね。アヴァンギャルドさはありません。

配役
一人一人の個性を浮き立たせない無表情で動きのない演出ですから、一般的なオペラとしての個別の印象は生まれません。クラウディアの狂気も最低限(発見された遺体のくだり)の表現です。
特徴的なのはクラウディアの前夫シュテファン役のメータがカウンターテナーで、まるで女性の様な声なことでしょう。見ていないと誰が歌っているのか混乱しますね。

音楽
無調の静的で抑揚のないパートと強音の組み合わせですが、歌のパートに処々で能楽の気配を感じます。殆どのパートを支配する静音展開に対して、わずかな強音パート(クラウディアの狂気)が現れます。

危険地域を象徴するロボット「ここは安全です」という後に起こる、突如現れる打楽器の地震、そして津波。そこがリハーサル中に追加された様ですが、音楽としてはそれも無くて徹底的な静での導入の方が好きかもしれません。

全体印象
現代音楽オペラとしてみてもかなり極端な舞台です。確かに細川さんの言う通り能に近く、能的な衣装や 動きをすり足にしたらまさに現代能といった風情です。
そこにこのフクシマの抱える大きな恐ろしさと問題を封じ込めたのでしょうか。歌詞の重要性も見逃せません。(表題の海に関しては、海に帰る魂と海から返してもらえるもの、死んだ海、の対比がひびきます)
ちなみに、このオペラはキリスト教が背景にあるわけではないのでお約束の救済シーンはありません。最後も救いはありません。

フクシマを風化させないために このオペラが世界で上演されるといいなぁと思います。でもまずは日本初演を。


<出 演>
 クラウディア(ソプラノ):スザンヌ・エルマーク Susanne Elmark
 ハルコ(メゾソプラノ):藤村 実穂子
 シュテファン(カウンターテノール):ベジュン・メータ Bejun Mehta
 ヒロト(テノール):ヴィクトール・ルート Viktor Rud
 漁師サカモトタロウ(バリトン):マレク・ガセツェッキ Marek Gasztecki

<舞台美術> 杉山 至
<衣装> 正金 彩

<合 唱> ヴォーカルゾリステン・ハンブルク
<管弦楽> ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮> ケント・ナガノ


収録:2016年1月24,27日 ハンブルク国立歌劇場(ドイツ)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ツィンマーマン B.A.Zimmermann の Cello Concerto, Impromptu, Antiphonen, Photoptosis を聴く

ここまで来たら、ついでにもう一枚ベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10) を並べましょう。この中期作品集で初期から最後の作品までを、代表作「兵士たち」「ある若き詩人のためのレクイエム」を含めて眺める事になりますね。

Palm, Schloifer, Hans Zender / Bernd Alois Zimmermann


このアルバムは、変換期作品となった「兵士たち」1965年を挟んで中後期の管弦楽曲集になりますね。
演奏は ハンス・ツェンダー(Hans Zender)指揮、ザールブリュッケン放送交響楽団(Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken)です。

1. Cello Concerto en forme de "pas de trois" (1966年) for Cello and Orchestra
 前々回の紹介とダブる この作品は問題となった「ユビュ王晩餐の音楽」「兵士たち」の後に作られています。内容は前々回と同じですが、vcはこちらのパルム(Siegfried Palm)もシフ(Heinrich Schiff)同様悪くありませんし、オケもメリハリは強めで甲乙つけがたい感じですね。演奏に切れ味があります。

2. Antiphonen (1961年) for Viola and 25 Instrumentalists
 これもツィンマーマン得意の協奏曲ですね。前期作品にあったバルトークやストラヴィンスキーの影響から、グリッサンドやトリルといった奏法と音数を減らして来ている時期らしい作品になりますね。シュロイファー(Eckart Schloifer)のvaはシャープで先鋭です。パートIVで突然現れる語りは"カラマーゾフの兄弟"や"ユリシーズ"からのテキストになります。いよいよツィンマーマンらしさが出て来たと言う事ですね。ちなみにカラマーゾフの兄弟は、ツィンマーマン最後の作品でも使われていますし、ユリシーズは「ある若き詩人のためのレクイエム」にも使われています。

3. Impromptu (1958年) for Orchestra
 元はバレエ曲のパートとして作られたそうですが、1958年6月にケルンでツィンマーマン指揮により初演されています。衝撃音の様な打楽器がインパクトを与える、静と強のコントラストがとても強い楽曲です。まだ旋律が残りますから、初期の楽風の名残が感じられます。

4. Photoptosis (1968年) Prelude for Large Orchestra
 各楽器が入れ替わりながら一つの音の長音を響かせ続ける楽曲です。そこに他の楽器が絡みながら、時に激しい強音が現れます。そして中盤からは"ベートーベン"他の引用が聴こえます。強音による錯綜と引用は後期のツィンマーマンの一つの顔でしょうから、象徴的な楽曲だと感じますね。後半は得意のポリフォニーでトゥッティな強音混沌がやって来ます。まさにB.A.ツィンマーマンです。
 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  これがなかなか!! メッツマッハー指揮で最後に拍手…えっw


ツィンマーマンの作品が前衛系の一般的には?聴きづらい時期に入った中後期作品が楽しめます。その分ツィンマーマンの狂気の世界が覗けますね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ツィンマーマン Bernd Alois Zimmermann の オペラ「兵士たち(Die Soldaten)」は 観る? 聴く?!

続けてベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10) の代表作も紹介しちゃいます。
前回・前々回紹介は、初期から中期のコンチェルトを主に並べましたが、それは折衷的音楽時期の作品でコンサートで協奏曲を聴くのに向く感じです。
B.A.ツィンマーマンのお楽しみは、1965年のこの作品以降ですね。コンサートでも取り上げられる1966年の「ユビュ王晩餐の音楽」、1968年の「フォトプトーシス」、そして1969年の傑作「ある若き詩人のためのレクイエム」と進む素晴らしさです。

Die Soldaten / Bernd Alois Zimmermann
 
注:CDはモノラル、DVDはリージョン1 になります


ストーリーは商人の娘マリーが軍人との恋に溺れて、乞食に落ちるまでの話です。明瞭な主題やアリアの存在しないポリフォニーとクラスターと言った強音混沌の現代音楽に、狂気と廃退の舞台、全四幕です。
【第一幕】
 婚約者シュトルツィウスに手紙を書くマリー。片やシュトルツィウスの母親はマリーの手紙を息子に渡しながら不平を言う。軍人デポルト男爵がマリーを誘惑するが父親が断る。デポルトに惹かれるマリー。
【第二幕】
 兵士たちの中でデポルトとマリーの噂が広がり、シュトルツィウスは兵士たちにからかわれる。デポルトの誘惑に負けるマリー、それを見た祖母は嘆きを歌い、マリーからの別れの手紙にシュトルツィウスはデポルトへの復讐を歌う。(シーンは平行して進む)
【第三幕】
 デポルトの友人のマリ大尉とも付き合うマリーを姉シャルロットが叱責する。マリーは若いド・ラ・ロッシュ伯爵の息子とも付き合い、伯爵夫人から注意を受ける。マリーは伯爵夫人の元に預けられる事になる。
【第四幕】
 デポルト男爵はマリーとの縁を切るため猟場管理人に暴漢させる。マリ大尉の部下となっていたシュトルツィウスはデポルト男爵とマリ大尉の食事の際に復讐の毒殺を図り、自らも服毒する。最後は落ちぶれて物乞いをするマリー。出会った父ヴェーゼナーにはそれがマリーとはわからない。
ラストは兵士たちの行進とともに終わる。

個人的楽しみの問題は現代音楽家ツィンマーマンの音を楽しむのか、現代オペラ「兵士たち」を楽しむのかですね。どうしてもオペラよりも音楽になっちゃいますが…
(と言う訳で、映像の配役や演出等に関するインプレは今回ひかえます、また今更新国立劇場の話はしても仕方ないですね)

オペラとして楽しむなら映像(本来は舞台)は当然ですね、一層の狂気を味わえます。演出により多少変わるとしても、この狂気は音楽と演技を合わせた方が迫力です。また字幕(英訳)付きですとストーリーの展開もわかり易いですね。
舞台設定でも三場面同時進行されたり、すでにこの時代からインスタレーション的な展開まで見せます。当初案では12のステージに観客席は回転椅子とツィンマーマンは考えていたそうですが、委嘱元のケルン歌劇場から不可能とされたそうですね。

ツィンマーマンの音楽で言うと、機能和声と無調の折衷的な立場から新たな視線 =引用, コラージュ, ポリフォニー, クラスター, 文章・言葉= への展開はこの曲からですね。
それを楽しむなら、CDの方が映像に邪魔をされない分 有利です。強音パートはまだしも、例えば音列配置的な静音パートなどは映像があると視覚が勝ってBGM的に過ぎてしまいます。
音楽的白眉は、印象的な等拍パルスとポリフォニーの前奏曲と、第四幕ですね。暴漢シーンでの声楽も含めたポリフォニー&クラスターの混沌の大迫力、それと等拍を思わせる軍靴の音を模したコーダからのエンディングは素晴らしいです。^^v

試しにYouTubeで観てみる?
 2014年 5月25日 バイエルン国立歌劇場。アンドレアス・クリーゲンブルク(Andreas Kriegenburg)新制作、字幕無しの低画質ですが全篇 観られます。
主役マリーのバーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan) 、ド・ラ・ロッシュ伯爵婦人のニコラ・ベラー・カーボーン(Nicola Beller Carbone)がいいですね。
以前はバイエルン国立歌劇場の高画質映像配信「staatsopertv.de」で見られましたが、あまりにエロティックな部分もあったのでこの程度の画質でいいかも…w


"引用" はいろいろ仕込まれている様ですが、明瞭なのはジャズ(コンボが登場)やバッハ(マタイ受難曲)くらいでしょうか。もっともストリー自体がベルクのヴォツェック*やルル**の引用っぽい?!…よく言われる事ですがw
 *兵士と浮気した"マリー"をヴォツェックが殺害する
 **恋多き女性ルルが最後は娼婦となり死を迎える
引用とは基本的に違いますね。両者からの展開部分があるかも、と言った感です。特に海外サイトではよく指摘されています。

個人的には映像を見てオペラとして楽しみ、音に浸るのはCDというのがお勧めです。やっぱり素晴らしい作品です。
一味違う おどろおどろしい現代音楽オペラ、是非一度楽しんでみてください。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ツィンマーマン B.A.Zimmermann の CONCERTOS を聴く

昨日に続いてのベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10) です。と言う事で、紹介は飛ばします。^^;
協奏曲集で、一曲だけダブっていますね。

CONCERTOS / B.A.Zimmermann

初期から中期の作品が集められています。演奏はミヒャエル・ギーレン(Michael Gielen)指揮、南西ドイツ放送交響楽団(SWF Sinfonieorchester Baden-Baden) という現代音楽演奏としては申し分のないセットですね。

1. Canto di Speranza (1953/57年)
 チェロはハインリヒ・シフ(Heinrich Schiff)です。昨日紹介したアルバムのタイトル曲ですね。こちらの方が出し入れが強くオケの振りも大きいですね。指揮のギーレンとホリガーの違いでしょう。vcもトーマス・デメンガ(Thomas Demenga)に比べて、シフは朗々と鳴らして来ます。
vcは、こちらの方が好みですね。

2. Concerto for Cello and Orchestra (1966年) en forme de "pas de trois"
 二つ目のチェロコンチェルトでvcは同じくシフになりますね。この作品は問題となった「ユビュ王晩餐の音楽」「兵士たち」のすぐ後に作られています。楽風の変化が明確で、やや音数が減りグリッサンドやトリルを強めに入れて来たり、楽章間でのディナーミクの変化を引き立たせたりしています。バルトークやストラヴィンスキーの色合いは減って、ジャズ風味や奇妙な和声、鍵盤楽器では特殊奏法らしい音色も感じますが、楽風の基本は変わりません。技巧的で無調をベースにした旋律を有する楽曲ですね。

3. Concerto For Oboe And Small Orchestra (1952年)
 ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger)のクールなobが聴き処の楽曲です。第一楽章はストラヴィンスキーへのオマージュとされています。機能和声と無調の折衷の様な管弦楽を背景に不思議な和声を感じるobが錯綜します。そう言う意味ではツィンマーマンらしさが強く出ている楽曲でしょう。ホリガー自身が指揮をしたら、オケはもう少しディナーミクを押さえて陰影を強めるかもしれませんね。

4. Concerto For Trumpet And Orchestra (1954年)《Nobody Knows The Trouble I've Seen》
 Miles Davisのミュートtpを思わせる様な入りです。「誰も知らない私の悩み Nobody Knows the Trouble I've Seen」の引用、またジャズイディオムとあり、確かにジャズ系サウンドを取り入れた米現代音楽の管弦楽曲様相ではあります。その分ツィンマーマンらしさは薄い気がしてしまいますね。
トランペットはホーカン・ハーデンベルガー(Håkan Hardenberger)です。
 ★試しにYouTubeで観てみる?

無調ですが旋律はあり、実験的前衛ではありません。いずれも今の時代ならコンサートで聴いても大丈夫だと思いますが、いかがでしょう。そう言った内容です。各楽器のテクニックと現代曲コンチェルトとして聴いて楽しめますね。
えっ、ダメですか?!

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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