イチローズモルト・ダブルディスティラリーズDDを飲む

ダブルディスティラリーズ(Double Distilleries)の名前の通り、イチローズモルト(株式会社ベンチャーウイスキー)の二カ所の蒸留所「秩父蒸留所」「旧羽生蒸留所」のモルトのバッティド、シングルモルトではなくピュアモルトになりますね。
羽生蒸留所(東亜酒造所有)はすでに2000年に閉鎖されて、残されたモルトだけになりますがパンチョン樽の後でシェリー樽熟成。2008年からスタートした秩父蒸留所のモルトはミズナラ樽で短期熟成の様ですね。大血川渓谷水系の軟水と埼玉県産の大麦を使っているそうで、関東のウィスキーです。^^v
IchirosMalt-DoubleDistilleris.jpg

イチローズモルトに強い興味がある訳ではないのですがウィスキー好きの友達が遊びに来ると人気なのと、お安く入手可能だったので年末年始用に一本買おうと思いました。
羽生蒸留所のモルト比率が少し低くなってロットによって味が少し違うそうですが、ロットNo.は46です。

とりあえず比較にMWRで飲んでみましょう。いつもの飲み方ストレートでの印象です。例によってトゥワイスアップもやりませんし、難しい事も書けませんw
IchirosMalt-DDMWR.jpg

[DD]
香りは若葉の様なフレッシュさ。まろやかで切れ味ある、フィニッシュも心地よいシャープさ。
[MWR]
香りは似ているけど濃厚さ。アロマティックで濃いめのフィニッシュ。色も濃いめですね。

DDをもっと若くするとホワイトラベルに近くなる感じです。そう言う意味ではイチローズモルトらしいのかもしれません。DDが一番飲み易い気がしますね。ちょっと美味しいモノを置いて飲むのにも向いているでしょう。

テーマ : ドリンク
ジャンル : グルメ

ヴァレンティン・シルヴェストロフ の Silent Songs を聴く


ウクライナの現代音楽家のヴァレンティン・シルヴェストロフ(Valentin Silvestrov, 1937/9/30 - ) は旧ソビエトの印象が強いですね。個人的には作風が中途半端なイメージがつきまといます。

作風の変化が大きく、前衛から調性感や情感の強い楽風に変化しているのが特徴でしょう。このアルバムを出すとちょっと極端かもしれませんが、まずはこの歌曲集を。前衛からの脱却後です。

キーツ、プーシキン、シェフチェンコ、ら古典の24の詩(曲)を四部にした "Silent Songs" は バリトンとピアノのシンプルな楽曲です。もう一曲このアルバムには入っています。

Silent Songs 静寂の歌 (1974-1975年)
なんともインプレのしずらい内容ですね。タイトル通り静的なごく普通のピアノ伴奏バリトン歌曲集としか聴こえません。不協和音もなければシュプレッヒゲサングでもありません。全篇平坦で暗く美しい楽曲で似ています。
英対訳歌詞付きで、確かに自由や希望の話はありますが特別な事はありません。旧ソ連の弾圧で1974年にソ連作曲家同盟から除名された時期の作品で、あの時代のウクライナや反体制に生きた人でないと曲の持つ意義がわからないかもしれません。
なぜこれらの詩にこの類似したメロディーなのか。残念ながら宗教曲と同じくらい真意を掴めない気がします。(そんな事が必要かは別にして…)
 試しにYouTubeで聴いてみる?
  Shevchenkoの詩によるFarewell, o world, o earthで、5'ほどの曲です。


その意義を鑒みなければ、どこかのお店でBGMに静かに流すと良いのではないかといった風です。ECMレーベルから良く出ているのがわかります。そういう曲が欲しい人にはうってつけ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ジェラール・グリゼー Grisey の「音響空間 Les Espaces Acoustiques」を聴く

このBlogで言う現代音楽で紹介のスペクトル楽派、ジェラール・グリゼー(Gérard Grisey, 1946/6/16 - 1998/11/11)の倍音音響を代表する曲「音響空間 Les Espaces Acoustiques」ですね。今更インプレです…w

基本となるスペクトル ですが。オケの発する一つ(ある瞬間)の音をオシログラフで波形を見るとガタガタですね。それを分解してどんな音の合成かを知るにはフーリエ変換を使うとわかります。時間軸の波形を周波数軸のフラグメント=スペクトルに分解してくれます。(音楽をデジタル化する基本原理で、データであり音にはなりませんから、再度アナログにして聴いている訳です) 逆にいろいろな周波数のスペクトルから合成して音楽にするなら、逆フーリエ変換をすれば良い訳です。倍音はドレミファを作る元の波形であり、合成する様々なソフトが存在できます。単純な倍音なら正確な周期(正弦波)ですからフーリエ級数になりますが、実際にはそうでないので正弦波と仮定して計算するフーリエ変換になります…、って数学の授業を思い出しますねw

ちなみにデジタル化音源の代表"CD"では、離散フーリエ変換が使われてサンプリング周波数(44.1kHz)とサンプル数(量子化ビット数:16bit)が決まっています。
アナログ波形復元可能な音の周波数はナイキスト周波数と言われて、サンプリング周波数の半分までですから約22kHz。人間が聴き分けられる高周波は20kHzくらいですから問題は無いと言う事です。その音の分解能(正確さ)が量子化ビットで16bit=65,536段階分の表現になります。量子化ビット数の6倍が、音の大きさdbですから16bit=96db。人間はダイナミックレンジ120dbまで聴き分けますが難聴になっちゃうでしょうから96dbもあれば充分と言う訳です。
 簡単なイメージ、パラパラ・マンガです。パラパラのタイミングがサンプリング周波数で細かいほどなめらか、一枚一枚の絵の細かさが量子化ビット数で詳細なほどリアル。という感じですね。


閑話休題。

音響空間 Les Espaces Acoustiques
 (1974-1985年)

9年にわたって書かれていて、全6曲構成で全てEをベースにした倍音構成を基本として作られています。一人のビオラから7人、18人、33人、大編成オケ、4人のホルン+大編成オケ、と編成が大きくなります。
全曲共に構成は似ていて、シンプルな音の並び(倍音構成)から入り、挟まれる不協和音とリズムが不安定さを増しながら混沌やノイズになります。後半の曲ほど、単純な倍音の響きが削られていきますね。

楽曲間の切れ目はありません。

ちなみにライナーノートには各楽曲の意図や構成、ハーモニー主体とかメシアンに献呈とかいろいろ書いてありますが、今回は紹介割愛です。

1. Prologue for viola and optional live electronics (1976年)
 ソロのヴィオラとresonator(共振器)を使っています。
2. Périodes for flute, clarinet, trombone, violin, viola, cello, and double bass (1974年)
 ここから楽器数が増え、音響音楽らしさが発揮されて来ます。
3. Partiels for (16 or) 18 musicians (1975年)
 クラスター的な要素が持ち込まれています。
4. Modulations for orchestra 33 musicians (1976/77年)
 パルスから緩やかな反復、ポリフォニー的になります。
5. Transitoires for large orchestra (1980/81年)
 地鳴りの様なトゥッティやクラスターから重なる音のウネリです。
6. Epilogue for 4 solo horns and large orchestra (1985年)
 美しいvnの旋律から入り、共鳴音の渦です。

試しにYouTubeで3.Partielsを聴いてみる?

ノイズ系やポリフォニーと行った技巧?を問わず、当時のポストモダン、現在の空間音響系現代音楽のベースですね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ウディ・アレン演出のプッチーニ 歌劇「ジャンニ・スキッキ」を NHKプレミアムシアターで観る

プッチーニの『三部作』オペラの3番目の作品で、唯一の喜劇「ジャンニ・スキッキ Gianni Schicchi」ですね。「外套」「修道女アンジェリカ」に続く全一幕オペラで、今年10月3日に米L.A.での注目のW.アレン(Woody Allen)の演出です。初演がメトですから、今回放送も米演出・米開催作品と言う事でしょうかw
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原作はダンテの神曲で、遺産の遺言状を書き換えた罪で地獄に落とされる男をモチーフにしているのはご存知の通り。オペラでは男は死にませんが、ストーリーはそのままですね。今回、そこがポイントですが。

舞台と衣装は舞台年代1922年フィレンツェっぽく見える設定です。実際にはその年代より後の衣装でしょうが、違和感はありません。スキッキのピンストライプの黒のスーツはマフィアをイメージしているそうです。そんな時代感です。

演出は喜劇らしく笑いを取れるような仕草を所々に仕込んでありますね。そしていたって標準的で、アヴァンギャルドさは皆無です。古臭いスマートさの演出はウディ・アレンらしい?!
でも、一番の驚きはスキッキが最後にツィータに刺されて死んでしまう事でしょうね。えっ?!って感じです。

配役ではやっぱりスキッキのドミンゴ(bar)でしょうか、遺言を書換えるシーンですね。演出に合った面白さいっぱいの演技でした。太っちょツィータ(オーワディ:m-sop)もいい味出していました。でも他は…
リヌッチョ(クルス:ten)とラウレッタ(チャッチマン:sop)も今ひとつ。
ラウレッタが歌う超有名アリア「私のお父さん」ですが、可もなく不可もなしと言ったところでしょう。声がもうちょっと細い方が好みですね。

ロサンゼルス・オペラ芸術監督も務めるドミンゴの人気は凄いですね。現れただけで拍手が起こります。最後に刺されて地獄に落ちる前のオーディエンスに向けてのダンテの行も決まりました。

全体としては中途半端な喜劇感で古臭く、やや退屈。詰め込み過ぎで"間"がない感じもしましたね。1時間と短いせいもあるかもしれませんが、残念。

それとスキッキが刺されるのも違和感がありますよねぇ。そもそも「遺言状を書換えた者と共謀者は片手を切断された後フィレンツェ追放…」と言って犯罪者になる事を口封じにしていたのですから、殺人者出るなんて???
それとも"落ち"の無いストーリにそれを作ったのかな。普通は大団円か誰かの死で終わるのがオペラのお約束ですから。^^;

<主な出演者>
 ジャンニ・スキッキ:プラシド・ドミンゴ
 ラウレッタ (スキッキの娘):アンドリアーナ・チャッチマン
 リヌッチョ (ツィータのおい):アルトゥーロ・チャコン・クルス
 ツィータ:メディス・オーワディ

<管弦楽> ロサンゼルス・オペラ管弦楽団
<指 揮> グラント・ガーション

<美術・衣装> サント・ロクアスト
<照 明> ヨーク・ケネディ
<演 出> ウディ・アレン


収録: 2015年10月3日 ドロシー・チャンドラー・パビリオン(アメリカ・ロサンゼルス)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

Donaueschinger Musiktage 2014 / 今の時代の現代音楽を聴く

毎年購入する音楽祭CDと言うと、5月発売のルガーノと11月発売のドナウエッシンゲンですね。ドナウエッシンゲン音楽祭のアルバムはバリバリのヨーロッパ前衛エクスペリメンタリズム "今"の現代音楽がたっぷり楽しめるのが嬉しいです。

今回のアルバムは4枚中 3枚SACDで、1枚がDVDになりました。DVDは146分の映像付きですから嬉しいです。

IRCAMなどもそうですが、映像等も展開して現代美術のインスタレーションInstallation artに近づいています。日本の現代音楽のコンサートでも映像やパフォーマンスありが増えていますし、もちろん本アルバムでもDVDはその手の楽曲?を取りあげています。これからはヴィジュアルも欠かせなくなるでしょうねェ。

Donaueschinger Musiktage 2014のダイジェストを見ても明白ですね。
試しにYouTubeで観てみる?

全曲 世界初演World premiere ·南西ドイツ放送委託作品Work commissioned by SWRです。(シャリーノのカルナバルNo. 10 Lasciar vibrareを除く)

◆ CD 1
[01] Friedrich Cerha (1926/2/17 - ) Nacht for orchestra (2012 / 2013)
 SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg, Emilio Pomàrico (cond.)
大ベテランのフリードリヒ・チェルハは以前も紹介していますが、新ウィーン楽派の研究者やベルクのルルの補追完成者としても知られるオーストリアを代表する現代音楽家ですね。
前半のポリフォニー的な音の中に煌めきや浮遊、静寂がブーレーズに似ている気がします。打楽器の使い方はヴァレーズやクセナキスの気配が感じられ、なんとなく色々と似ている感じですが曲的には好きです。以前の作品に比べてパートを区切る様な楽風変化はなくなり、全体として混沌の塊になってきていますね

[02] Hanspeter Kyburz (1960/6/8 - ) Ibant obscuri for large orchestra (2014)
 SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg, Emilio Pomàrico (cond.)
ハンスペーター・キブルツはナイジェリア生まれでスイスの現代音楽家です。グラーツ、ベルリンで音楽を学び、フランクフルトではハンス・ツェンダーに師事しています。
パルス的な音の並びを主体として、特殊奏法そしてクラスターの組合せで、その中に時折 旋律が現れます。全体のパルス感や旋律の存在が、何となく前衛の衰退初期の様な音楽に感じます。ちょっと興味が薄いかも…

[03] François Sarhan (1972/9/30 - ) Zentral Park for nine musicians, electronics and video projection [optional] (2014)
 Jugendensemble für Neue Musik des Landesmusikrats NRW (Studio Musikfabrik), François Sarhan (voice), EXPERIMENTALSTUDIO des SWR
フランソワ・サルアンはフランスの現代音楽家で、IRCAM で B.ファーニホウ、J.ハーベイ、M.リンドベルイに学んでいます。
ベンヤミンWalter Benjamin翻訳によるボードレールCharles Baudelaireの詩を使っています。詩(英語で助かります)は語りで、エレクトロニクスが絡みますがホワイトノイズ以外は詳細は不明ですね。またビデオ・プロジェクションも使われている様ですが同様です。(一部上記YouTubeで見られます)
演奏はアンサンブルの音数が少なく 言葉の交錯の様なポリフォニーです。語りは途中で英語早口のオークション口調になります。これが楽曲半ばを占めて、音は添え物的に入るだけです。後半は再び語りに戻ります。
ビデオと音とナレーター、そしてオーディエンスの関係をサルアンは強調しているので、現場に居ないと本当の姿はわからないでしょうねぇ。インスタレーションに近い現代音楽でしょう。興味深いです!

◆ CD 2
[01] Salvatore Sciarrino (1947/4/4/ - ) Carnaval for five voices and ten players (2010–2011)
 Nos. 1–9 Così dice lo scultore di prue(Thus Speaks the Power-Carver), No. 10 Lasciar vibrare(Let Ring)
 Neue Vocalsolisten Stuttgart, Klangforum Wien, Ilan Volkov (cond.)

さてシャリーノですね。5分以下の10小曲からなる楽曲です。主役は5人のvocalで、演奏は必要最低限で、シャリーノらしい音を感じる事も残念ながら少ないです。歌は音響的であり所謂(いわゆる)歌唱でもシュプレッヒゲサングでもありません。
詩はTowitara Buyoyuでシャリーノがアレンジしています。(10はシャリーノ作) 流れは面白いのですが、英語の単純な対訳を読んでも今ひとつピンと来ません。

[02] Chiyoko Szlavnics (1967 - ) Inner Voicings (2014)
 *Klangforum Wien, Ilan Volkov (cond.), EXPERIMENTALSTUDIO des SWR
チヨコ・スラヴニクスはトロント生まれベルリンで活躍する現代音楽家、作曲はJames Tenneyに師事していました。またWalter Zimmermannのセミナー在籍からアシスタントを務めています。
クラングフォラム・ウィーン*(Klangforum Wien:ベアト・フラーが作った現代音楽アンサンブル)の為に書かれた三楽章形式で、子供の頃に母親と行ったコンサートで眼を閉じて聴いた時の心の中の"inner cinema"がベースになっている様です。
瞑想的な空間音響系の楽曲で、弦のグリッサンドを使った長音が主体になり、楽器数の少ない音が支配します。ちょっと静的パートのシャリーノ風かも。ドローンの響きに共鳴も感じますし微分音も使われているかもしれません。特徴的ではありませんが好きなパターンの今の現代音楽です。

[03] Wolfgang Rihm (1952/3/13 - ) Sound As Will for trumpet and ensemble (2011 / 2014)
 Marco Blaauw (tp), Klangforum Wien, Ilan Volkov (cond.)
ビッグネーム、ヴォルフガング・リームですねぇ。tpに対してアンサンブルの楽器が絡むポリフォニーな楽曲です。絡む楽器の数とリズムの変化がこの曲の表情ですね。一度だけ現れる衝撃音がリームらしさを感じさせますが、全体とするとフラットなディナーミクで安定した楽曲です。今となっては?的な感じがしない事もありませんが…

◆ CD 3
[01] Peter Ablinger (1959/3/15 - ) points & views (2014)
 points & views is dedicated to Armin Köhler
 -1. Ink-jet print, 6,40 x 6,40, 16 parts
 -2. Ensemble, 2 pianos, 2 loudspeakers, 16 parts
 Ensemble Modern, Hermann Kretzschmar / Ueli Wiget (pf), Jonathan Stockhammer (cond.)

ペーター・アブリンガー(エイブリンガー?)はオーストリア生まれでベルリンで活躍する現代音楽家です。グラーツで音楽を、その後 電子音響工学・現代美術(サウンド・インスタレーション, Installation art)を学んでいます。インスタレーション展開? するのが特徴の様ですね。ダルムシュタットでもお馴染みです。
まずInk-jet print, 16 partsですが、SPやドーナツ盤のレコード、カセットテープ、等々の写真で、Tile 1-16 のナンバーが付いています。これが現場でどう使われたかについての記述はありません。
それに対して各16のTile No毎にキッチリ 1'45"の16曲が付いています。とりあえず合わせながら聴きましたが関連性は皆無の気がしますw 曲はノイズ系で電子処理されていると思われますが、レコードやテープのヒスノイズやハムノイズ、テープ早回しの声がノイズ音の主役です。それに即興的な pf, ensemble が絡みます。英語・独語・露語・日本語 他、言語毎の単語のやりとりも出て来て変に面白いです。
CD1のFrançois Sarhanとも共通点を感じますね。視覚も動員した一つの流れ、この手のインスタレーション系, と言っていいのか?, ですね。是非ともコンサートで見たい気がします。とても面白く興味がありますね。音楽という範疇を超えて行く気がします。

[02] Kryštof Mařatka (1972 - ) Mélodictionnaire Concerto for piano and septet (2014)
 Hermann Kretzschmar (pf), Ensemble Modern, Jonathan Stockhammer (cond.)
クシシュトフ・マラツカ (Krystof Maratka)はプラハ生まれ、IRCAMでも学んだパリで活躍する現代音楽家です。ライナーノートの記述がとても短い紹介で印象的です。
奇妙な気配のピアノ室内楽曲です。もちろん無調なのですが、メロディーが存在してリズム変化もあります。機能和声をベースに調性からの解放で音楽の自由度を上げるのは好きですが、これは違います。逆でしょうか?! 
無調の中にメロディとリズムを存在させて自由度を上げている様な…
ありきたりの様で、そうじゃない。そんな感じで面白いです。

[03] Brian Ferneyhough (1943/1/16 - ) Inconjunctions for ensemble (2014)
 Ensemble Modern, Jonathan Stockhammer (cond.)
ブライアン・ファーニホウの新曲が聴けるのは嬉しいですね。この処、久しく聴いていません。
3section構成になっているそうで、first section: 高音域の管楽器, second section: 自然で美しい弦楽器とパーカッション, third section: 3金管楽器と2打楽器の砕かれ傷ついた対話。とあります。
少し角が取れている感じはしますが、やっぱりファーニホウですねぇ先鋭的です。各楽器の構成がsection毎に変わりながらも、難曲の気配が支配していますね。相変わらず作風は「新しい複雑性」に乗っている事を感じました。中盤の静音展開ではやや退屈ですが、今や懐かしい気がします。

◆ DVD ビデオに収録されたのはいずれもインスタレーション系の強いヴィジュアルが不可欠な作品が並びました。楽しいです!

[01] Simon Steen-Andersen (1976 - ) Piano Concerto for piano solo, sampler, video and orchestra (2014)
 Nicolas Hodges (pf), SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg, François-Xavier Roth (cond.)
サイモン・スティーン・アンダーセンはデンマークの現代音楽家、現代美術家(Installation artist)です。
驚きの落下破壊ピアノ協奏曲です。映像にピアノが落下して破壊されるシーンがスローモーションで映され、音楽はそこから始まります。ピアニストは現代音楽ピアノの雄ニコラス・ハッジスです。
ステージ上のピアノにハッジスが現れると同時にピアノの前のもう一つの映像に鍵盤がガタガタに壊れたピアノが映りそこにもハッジスがいます。連弾風になり映像とステージのピアノは異なるパートを演奏します。ステージ上のピアノは譜面台の前にエレピ?が置かれて上下二段の鍵盤配置です。とにかく混乱しますね。
音は反復の強い単音階の旋律が延々と続いたり、オケは特殊奏法や即興的な音を鳴らしパルスやクラスターで破壊的です。技術的には引用もあるようです。音に合わせて破壊されたピアノ映像が踊る様に逆再生されたりとビジュアルに訴えるパートも存在します。最後はコーダ?!で照明が消えて壊れたピアノが回収されるシーンが映ります。
不確定性の現代音楽の進化系?!でありインスタレーション系でもあるでしょう。強烈です。ヴィジュアルがないとこの曲(?)成立しないでしょう。

[02] Ondřej Adámek (1979 - ) Körper und Seele for air machine, choir and orchestra (2014)
 Christoph Grund (air machine), SWR Vokalensemble Stuttgart, SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg, François-Xavier Roth (cond.)
ベルリン在住でチェコ人の現代音楽家 オンドジェイ・アダーメク(Ondrej Adamek)は、パリ音楽学校で作曲と電子音楽を学んだ後、IRCAMにも通っています。
これも変ですw エア・マシーンのホースにカラフルなゴム手袋が繋がれて膨らんだり萎んだり、合唱隊は全員でシャーとかシューとか空気音?を出したり、風船を膨らましたり 水をブクブクさせたりとか特殊技法もやります。舞台映像もあり、手袋がアップで映されたりします。
オケは二構成で正面と左に配置。楽風はリズミカルで独語の歌は英文字幕で go step といった単文展開です。特殊奏法も入りますが、音楽自体はノイズでも混沌でもなく結構面白いです。エア・マシーンのブタが鳴きながら膨らんだり、オーディエンスの笑いも音楽として計算の内でしょう。
単純に音楽だけで成立しているわけではありません。計算された視覚を含めたシチュエーション、そしてユーモアが無いと基本的に存在しないでしょうね。楽しさいっぱいです!

[03] Jennifer Walshe (1974 - ) The Total Mountain (2014)
 Jennifer Walshe (performance)
ジェニファー・ウォルシュはアイルランド出身でベルリン在住のパフォーマー・現代音楽家です。イギリスでJ.マクミランにも学んでいますね。ダルムシュタットでも2002年に続き、この年2014にも出ています。声楽だけでなく室内楽も書く彼女もインスタレーションを学んでおり、それもキーでしょう。
ステージは映像付きで、歯ぎしり・叫び・早口などを主体とした意味不明?!なパフォーマンスがグレードアップです。
ステージだけでなく映像でもウォルシュが変な動きをしたり、動物とか合成画像とか歌詞に合わせてじゃんじゃん変わります。例によって変すぎですが、映像で幅は広がるけど彼女のパフォーマンスが弱く感じる?! そんな事はないですね。彼女が喋り始めると思わず引きずり込まれちゃいます。
パフォーマンスに眼がいきますがコラージュの様な音楽は彼女の作品で、これはこれで実は面白いんですよねぇ。

[04] おまけ
Kämpfer für die Moderne
Armin Köhler und die Donaueschinger Musiktage
 A film by Syrthos J. Dreher
他の作品のダイジェストやディレクターの話などがいっぱい入っているのですが、独語で英字幕がありません。向こうで活躍する日本人現代音楽家 Misato Mochizuki さんの作品ダイジェストもあります。

映像はこれから必須になるでしょう。来年は2CD, 2DVD にして欲しいですね。^^v

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

トーマス・ラルヒャー Thomas Larcher の IXXU を聴く

トーマス・ラルヒャー(Thomas Larcher, 1963/9/16 - ) はオーストリアの現代音楽家ですね。現代音楽ピアニストとしての活躍が著名でしたが、今は作曲家としても知られています。

このアルバムは室内楽曲集ですが、Rosamunde Quartett の曲以外にはラルヒャー本人もピアノで参加しています。そこも注目ですね。


Ixxu (1998-2004年) String Quartet No. 2
 この曲は四曲目のCold Farmerの属曲とでも言う関係の様です。本人もとても密接な関係を持ちながら大きく異なり、細かな点はCold Farmerと共有する…と言っています。
三楽章13分ほどの曲です。反復トリルを中心とした刺激的でスピード感のある展開で、グリッサンドを主体に変化させた緩徐パートが挟まれます。第三楽章では調性感のある美しい旋律も現れます。
微分音も入るのかもしれませんが、全体としてミニマル感のある前衛で聴き易いですねRosamunde Quartett の演奏になります。

My Illness Is the Medicine I Need (2002年) for soprano, violin, violoncello & piano
 歌の入る楽曲です。歌詞はBenettonのColorsマガジン#47 "Madness/Follia" から引用しているそうです。画像とともに参考にどうぞ。
http://www.colorsmagazine.com/magazine/47
ピアノのクラスターからスタートする強音と静音のコントラストの楽曲で、sopはシュプレッヒゲサングの様な歌いではなく音域の広い現代音楽歌唱です。pfは特殊奏法も使われて、弦二部やsopとのユニゾンも構成します。最後の Once they give… が面白い!?
試しにYouTubeで観てみる?

Mumien (2001/02年) for cello & piano
 刺激的ミニマルですね。反復するパルスのピアノとトリルのチェロの交差で、pfは特殊奏法を入れ 全体は強音と弱音、ハイテンポとスローの組合せですね。ラルヒャーの音楽の骨格の様です。

Cold Farmer (1990年) String Quartet No. 1
 弦楽四重奏曲第一番。アルバム中一番古い曲で、基本は同じミニマル ベースです。本人が言うほどの Ixxu との違いは感じません。古い分だけ全体的に緩さは感じますが…
ちなみに2007年には String Quartet No. 3 "Madhares" をリリースしています。

全体的に特徴は明瞭で年が経るにつれて先鋭度が増していますが、格別個性的な前衛感はありませんね。その分 受け入れ易いのは間違いありません。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

イザベル・ファウストで聴く バルトークのヴァイオリン協奏曲第二番

ベーラ・バルトーク(Bartók Béla, 1881/3/25 - 1945/9/26)はハンガリーの音楽家で後年アメリカに移住しています。

初期の現代音楽家にして、調性音楽との境目くらいの印象でしょう。現代音楽嫌いの人もOKとかで、メリハリの強い楽曲はコンサートでも良く使われていますね。
まぁビッグネイム過ぎるのでこれ以上の説明は意味ありませんね。^^ゞ

昨日コパチンスカヤ/エトヴェシュのアルバムで第二番を聴いた時に、ファウスト(Isabelle Faust)の弾くバルトークのヴァイオリン協奏曲集があったのを思い出しました。
指揮ダニエル・ハーディング(Daniel Harding)、スウェーデン放送響(Swedish Radio SO)になります。

ヴァイオリン協奏曲第1番 Sz(Op.)36 (1908年)
この時代としては微妙な和声でしょう。第一楽章では「青ひげ公の城」を思わせる感じの浮遊感が漂います。第二楽章は民族音楽の流れが明確で、後年の強音パートと弱音パートのメリハリを感じさせてくれます。とは言え、王道的なオケの演奏とファウストのエモーショナルで鳴りの良い音色vnでもそれほど面白いとも思えません。

ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz 112 (1938年)
バルトークのvn協奏曲と言えば、これをさす訳ですね。Zoltán Székelyに献呈され本人が初演を務めています。
近年録音では前回インプレのコパチンスカヤと比べてみましょう。
まずアプローチが全く違います。流麗な流れを作るオケと、繊細さを主体としたキレのあるファウストのvnは、この曲を読み込んでいると感じますね。もちろん強音パートは当然なのですが、そこでもコントロールされて全体の見晴らしの良さを感じます。独特の民族音楽風の旋律も生きています。
ファウストは ベルクのヴァイオリン協奏曲で感じた野性味はなく、繊細な切れ味のある演奏に感じます。

この Faust / Harding 盤はまさにクラシック本流的な完成度です。一方エトヴェシュは本人の楽曲寄りの強烈なメリハリ、ハーディングは全体像の明確な美しい展開で、かなりの違いがあります。vnも凶暴性で人目を引くコパチンスカヤに対して、繊細な切れ味のあるファウスト。
どちらが好きか…
完成度から行けば本アルバムなのですが、出来過ぎで少々退屈かもしれません。コンサート受けなら古いムター/小澤、個人的にはワクワク感のコパチンスカヤ/エトヴェシュです。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コパチンスカヤで聴く Bartók / Eötvös / Ligeti のヴァイオリン協奏曲集


買ったままになっていたパトリシア・コパチンスカヤ(Patricia Kopatchinskaja, 1977/ - )を聴きましょう。本来はエトヴェシュを聴く為に購入した物ですが…
派手な動作と演奏でYouTube的なイメージしかないコパチンスカヤですが、前回クレーメルのアルバムでは個性は見えなかったので ちゃんと聴く?!のは初めてです。

三人の現代音楽家のヴァイオリン協奏曲をエトヴェシュが振る(内一曲は本人作品)となると個人的にはvnが誰であれ、購入しない理由が見当たりませんね。今更の顔ぶれなので三人を個別に記することはしませんw

バルトーク(Bartók Béla, 1881/3/25 - 1945/9/26) / Violin Concerto No.2 (1938年)
以前 Shaham と Mutter のヴァイオリンで聴き比べをしてありますね。
シャハム/ブーレーズの様な"たおやか"さではありませんし、ムター/小澤の様なこれ見よがし的ヴィルトゥオーゾでもありません。
けっこうギコギコ系の尖ったvnですね。エトヴェシュ/フランクフルト放送響もバルトークらしい幽玄なパートはうまく生かしながら緩急刺激の強い演奏で聴き応えがあります。この辺りは流石はEötvösでしょう。刺激的なバルトークのヴァイオリン協奏曲第二番ですね。

ペーテル・エトヴェシュ(Peter Eötvös, 1944/1/2 - ) / Seven (2006年)
いつもながらEotvosの日本語表記は明確じゃありませんねぇ。それは別として演奏がどうのこうの?!というよりも、まずはエトヴェシュの楽曲として聴きましょう。Cadenza1st〜4thとPart2で構成され Cadenzaでの反復要素の強さや vnとオケとの対位的展開は協奏曲ならではでしょうか。長いPart2が緩急強い激情的な本来のエトヴェシュらしさでしょう、好きなパターンです。
コパチンスカヤのvnは表情(音色)豊かに飛び回る感じで、エトヴェシュの現代曲に合っていますね。
試しにYouTubeで観てみる?

ジョルジュ・リゲティ(György Ligeti, 1923/5/28 - 2006/6/12) / Vioin Concerto (1992年)
コパチンスカヤ本人が得意とする楽曲だそうです。György もジェルジュなのかジェルジなのか、はたまたジョルジュなのか…英語表記のGyorgyの方がいいのか…
閑話休題。
実はリゲティ好き。この曲は三楽章から五楽章形式になった 1992ver. なのですが、初演もこのセット Eötvös / Ensemble Modern でした。vn, va の一部チューニングを変えてあったり リゲティらしい前衛の楽曲で、陰影強く強音パートは激情的です。"リゲティ・プロジェクト"の同曲よりもこちらの方が骨太的です。vnもツィンマーマンの繊細さと切れ味に対して、暴れた刺激性でカデンツァも長いです。好みははっきり別れるでしょう。個人的には、この曲なら本アルバムの方が好きですが…
カデンツァはコパチンスカヤ本人ver. を使っているそうですが、本人の声も入っていますね。

エトヴェシュの展開も含めて好きなアルバムです。vnの美しい鳴りと言うよりも刺々しい限界の様な音を響かせるコパチンスカヤの凶器的ヴィルトゥオーゾが、素晴らしいのか ただ面白いだけなのか…もう少し聴かないとわかりません。
パガニーニでもやれば受けるでしょう、みたいな?!
素直に"Take Two"を買う気にはなれませんが、少し聴きたくなりました。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

豊盃 純米しぼりたて 生酒 2015年 を飲む

今年の冬は寒いんだか温かいんだかわかりません。昨日なんて20℃を超えましたからねぇ、考えられません。
とは言え季節は冬ですから、やっぱり新酒を楽しむ頃と言う訳です。^^v

◆ 豊盃 純米しぼりたて 生酒 限定品
 青森県 弘前市 三浦酒造
豊盃 純米しぼりたて 生酒 2015年

kokotonPAPAご贔屓の「豊盃」それも毎年この時期おなじみの限定の逸品です。一晩冷蔵庫に寝かせていただきました!
封切りはまろやかな甘みに締まった味、フィニッシュはさらりと透明。少し時間が経つと、より締まった感じになり喉越しもスッキリです。
酒米は「華吹雪」所謂(いわゆる)酸味や米の旨味を前面に出したお酒ではありませんね。今年も出たばかりの新酒を味わえて最高の一時でした。

なんと豊盃の新酒三本をセットで送っていただくと言う贅沢を…ありがたい事です。m(_ _)m
sake-houhai-shinshu-2015.jpg

後二本は年末と年始に飲も〜ぅ!!


テーマ : 日本酒
ジャンル : グルメ

Giya Kancheli: Chiaroscuro / クレーメルとコパチンスカヤ を聴く

ギア・カンチェリ(Giya Kancheli, 1935/8/10 - ) は好きな現代音楽家ですね。このBlogでも度々出ています。楽風からペルトなどと比べられますが、個人的にはなぜ?!って思います。明らかに違いますよねぇ。冷的幽玄、衝撃と静の組合せと言った様な展開をし、宗教曲的風合いを感じないので心酔できるのも嬉しいです。

今回はヴァイオリン曲二曲です。カンチェリを得意とするクレーメル(Gidon Kremer, 1947/2/27 - )のアルバムに注目の若手コパチンスカヤ(Patricia Kopatchinskaja, 1977/ - )が一曲はいります。

コパチンスカヤは動きの激しい演奏スタイルが先行している印象からあまり興味を持っていませんでした。でもこれを購入したのは好きなクレーメルのカンチェリに彼女が入っていたからですね。

カンチェリ80歳。1935年生まれ80歳はラッヘンマン、ペルトと同じですね。

□ キアロスクーロ Chiaroscuro (2010年)
タイトルはルネサンス、バロック時代の絵画技法の事だそうです。いかにもカンチェリらしい幽玄で空気感の伝わる静の支配する空間、そこに挟まれる強音パートです。時折見せる美しい旋律も効果的で、静寂と嵐と平穏の揺らぐ世界ですね。
不協和音はあるものの前衛ではありませんから技法を聴き出す様な事も必要ありません。音に浸る、そういう音楽ですね。ラストは寝息の様にフェードアウトします。
試しにYouTubeで観てみる?
Julian Rachlinによる世界初演です。ちょっと荒々しいかな。


□ トワイライト Twilight (2004年)
2台の独奏ヴァイオリンと室内弦楽奏で、コパチンスカヤが入ります。楽想はカンチェリの世界ですが、二台のvnが絡む様に展開するスリルを味わえます。透明に、瞑想的に、そして激情に、一台では出せない緊張感は特に激情的なパートで感じますね。

室内弦楽は当然ながらKremerata Balticaになります。このアルバムはカンチェリの個性が強烈で、特にコパチンスカヤがどうの?!と言った感じは存在しません。どれを聴いても似ているカンチェリという話も聴きますが、そこが好きか嫌いかの分かれ目の一つでしょう。個人的にはこの音楽を時折かけたくなります。

【後日追記】その後コパチンスカヤはいろいろ聴きましたが、やっぱり「Take Two」でしょうね。


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1.このblogで言う現代音楽

2.マーラー交響曲第5番 160CD
 (名盤・珍盤 聴き比べ)

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