ディノ・サルーシの Kuitrum with the Rosamunde Quartett を聴く

ティモテオ・ディノ・サルーシ(Timoteo Dino Saluzzi, 1935/5/30 - ) と言えば、もちろんピアソラを継ぐアルゼンチンのバンドネオン奏者にして作曲家ですね。このアルバムも全曲サルーシによるものです。色合いは異なりますが…

Kuitrum はECMから1982年に出したデビューアルバムが先にあります。
これは1988年に出された Kuitrum with the Rosamunde Quartett になりますね。

クレジットにある通りでバンドネオンと弦楽四重奏の為の音楽ですね。
Jazz傾向の方がメインの畑で、現代音楽風味なのはこれだけなのかもしれません。

ロザムンデ四重奏団(Rosamunde Quartett)は知見がありませんが、現代音楽も演奏するそうです。両者ECMからのリリースがメインみたいですね。

 曲調は統一感がありますが、キリスト教系宗教曲風な底流を感じる美しい楽曲や、フィリップ・グラスの様なミニマル感も僅かに感じる曲もあります。でも神髄はその中に流れている独自の神秘的な和声や切れ味のある弦楽パターンでしょうね。曲は静的な流れと力強い流れの入替えが基本的な構成です。
 タンゴの音色のバンドネオンとそのリズムを持ち込んだ Salon de tango も全体としては弦楽の室内楽曲で微妙な和声とリズムが深遠さをを強く感じます。...y solos - bajo una luna amarilla はチェロの低い響きとバンドネオンのコラボが特徴的で研ぎすまされた静的な暗い音色が素晴らしいですね。後半ではそれに力強さも加わります。切れ味と緊張感の素晴らしい楽曲で、このアルバムの中のベストでしょう。
タンゴのリズムをさりげなく盛込んだ Milonga de los morenos、題名は宗教的な Miserere も一層の調性の薄さが強調されて流れる静と剛の対比が素晴らしいです。ラストは静的展開の美しい Recitativo final ですね。

バンドネオンが主役ではなく弦楽四重奏+αの透明感ある、ECMらしい?、深遠さとシャープさのアルバムでお勧めですね。

誰か遊びに来た時にボリュームを落としてかけておいても洒落た感じかも。なぜかマリピエロを思い浮かべしていまいます。

試しにYouTubeで観てみる?
アルバム曲ではありませんが、チェロAnja Lechner(ロザムンデ四重奏団)とサックスFelix Saluzzi(弟です)との三重奏曲です。この方が本来のサルーシでしょうか。


サルーシは、昨日のペルトと同じく1935年生まれの今年80歳ですね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

アルヴォ・ペルト(ARVO PÄRT) の MUSICA SELECTA

エストニア人現代音楽家 アルヴォ・ペルト(Arvo Part, 1935/9/11 - ) のECMベストアルバムが先日届きました。その名も ARVO PÄRT MUSICA SELECTA A Sequence by Manfred Eicher, 要はマンフレッド・アイヒャーのセレクトです。

ECMはkokotonPAPAが高校生の時代に設立されています。今はManfred"マンフレート"って読むんですね。

Jazzのレーベルとして日本で脚光を浴びたのはキース・ジャレットのおかげでしょう。東京コンサートにも行きましたが、全く相容れない音楽でしたねぇ。ヾ^^;
アート・ランデ(Art Lande)なんかは良かったと思いますけど。

前衛の対極にある現代音楽マニエリスムを代表する一人 ペルトの音楽はどうも自分の波長と合いません。

でも、ベストアルバムが出るなら聴いてみようかなと予約購入…この時点で間違っていたかも。ECMらしいと言い切ってしまえばそれまでですが。
ちなみに全曲最新リマスターされているようです。

[CD1]
1. Es sang vor langen Jahren
Gidon Kremer(pf) and Susan Bickley(alto) and Vladimir Mendelssohn(va)
 アルバム[Arbos]に入っていた 三人の織り成すSacred Songです。クレーメルがどうの、とか言った曲ではありません。
2. Für Alina
Alexander Malter(pf)
 アルバム[Alina]からだそうです。ペルトのtintinnabulism(ティンティナブリ様式)のessentialを説明するのに彼の妻であるNoraが用いた曲でもあるとか。将に鈴の音の様な透明感のあるピアノの静的でシンプルな高音の並びです。無音よりも静粛さを感じますね。
3. Mein Weg
Tallinn Chamber Orchestra & Tõnu Kaljuste(cond.)
 [Trivium]より。ペルトがミニマリズムである事を物語る一曲です。静粛さやsacredさをベースにした明確なミニマルでラストに向けてクレッシェンドします。
4. Kanon Pokajanen - Ode VI
Estonian Philharmonic Chamber Choir and Tõnu Kaljuste
 [Kanon Pokajanen]に入っていた part.6の曲です。どう聴いても宗教曲です。
5. Silouans Song
Tallin Chamber Orchestra and Tõnu Kaljuste
 アルバム[Te Deum; Silouans Song; Magnificat; Berliner Messe]に入っていた、美しい室内楽ミニマルです。
6. Fratres
Gidon Kremer & Keith Jarrett(pf)
 以前紹介したアルバム[Tabula Rasa]からの楽曲です。インプレッションは同じ、ミニマル + ティンティナブリです。
7. Alleluja Tropus
Sinfonietta Riga and Tõnu Kaljuste and Vox Clamantis
 アルバム[Adam's Lament]からですが、表題通りの宗教曲です。ハレルヤ。
8. Trisagion
Lithuanian Chamber Orchestra and Saulius Sondeckis(cond.)
 [Litany]から。ミニマルを感じさせる美しい室内楽曲です。約束通りに終盤は情感強く盛上げます。
9. Beatus Petronius
Latvian Radio Choir and Sinfonietta Riga and Tõnu Kaljuste
 [Adam's Lament]に入っていたそうで、宗教コーラスです。

[CD2]

お腹いっぱいで2枚目はギブアップ。完全に興味の範疇外ですねぇ、やっぱり。美しい、癒し、宗教的で本来の音楽なんでしょうが好みの問題なのでどうしようもありません。
駄耳で心が荒んでいるkokotonPAPAには、こう言った終始心穏やかで "脳波を乱す刺激が皆無の音楽" は拷問に近いです。(笑)

今年80歳になるペルト、見た目は同い年のラッヘンマン(Helmut Lachenmann, 1935/11/27 - )に似てますよね。好みから行けば180°の違いですがw

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ブレゲンツ音楽祭2015 歌劇「トゥーランドット」をNHK プレミアムシアターで観る

2015 Bregenzer Festspiele, 観客7000人と言うスケールのプッチーニのオペラ「トゥーランドット」ですね。

舞台はブレゲンツらしい屋外の広さを生かしていました。回り舞台や火を使った派手さ、そして舞台前には兵馬俑らしきものも並びましたね。湖上ステージを生かして断頭されるペルシャ王子やトゥーランドットも水上シーンがありました。広い舞台が合いますね。
2015-Bregenzer_Festspiele-Turandot.jpg

マレッリ(Marco Arturo Marelli)の演出が一つの見所ですよね。ピエロやゾンビと言ったアヴァンギャルドと現代的衣装の今的な演出で見栄えがありました。カラフが三つの問いに答える度にトゥーランドットが脱がされて行くのはちょっとエロティックで見た事ありませんが、本来肉感的な欲望がある訳ですからCorrectかも。リューが自害する前にカラフにキスする積極さ?!、あげくにラスト前でトゥーランドットの方からカラフに抱きつくのも違和感ありませんか? 普通、ラストシーンの「名前は"愛"」でトゥーランドットの最後の氷がとけると言うのが一般的?! とは言え、古臭い演出からの脱却感は現代のオペラの流れで歓迎ですね。

配役では、トゥーランドットのムラーダ・フドレイ(Mlada Khudoley)のソプラノがキレていて役柄にピッタリ! 体型はイマイチですw
カラフのリッカルド・マッシ(Riccardo Massi)のテノールは、ハイトーンに力があってトゥーランドットとの重唱に応えましたね。口ヒゲで"おっさん"カラフになってしまいましたが。
ピン・パン・ポンが残念、あの面白さが今回は生きていませんでした。スーツという衣装も起因していたかもしれません。また大蔵大臣のピン、アンドレ・シュエン(Andrè Schuen)は声が堂々と伸びて見た目も含めてタイトルロール級みたいw
ユ・ガンクン(于冠群)のリューは個人的は"太い!"、もっと線が細いsopの方が好みですね。トゥーランドットと渡り合う様にして堂々と死ぬ、これも変わった演出でしたね。リューは秘めたる愛のはずですが…

でも今の時代的な演出で見られたのは嬉しい事ですね。昔ながらの衣装や演出にこだわるのも良いかもしれませんが、新しい流れを見られるのも楽しいです。

<出 演>
 トゥーランドット:ムラーダ・フドレイ
 皇帝:マニュエル・フォン・ゼンデン
 ティムール:ミカエル・リソフ
 カラフ:リッカルド・マッシ
 リュー:ユ・ガンクン
 ピン:アンドレ・シュエン
 パン:タイラン・ラインハルト
 ポン:コスミン・イフリム
 大官:平野 和

<合唱> プラハ・フィルハーモニー合唱団
     ブレゲンツ音楽祭合唱団
<管弦楽> ウィーン交響楽団 (VSOです、VPOではありません)
<指 揮> パオロ・カリニャーニ
<演 出> マルコ・アルトゥーロ・マレッリ

収録:2015年7月20、22、24日 ボーデン湖・湖上ステージ(オーストリア ブレゲンツ)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

デヴィッド・ローゼンブーム(David Rosenboom) の Naked Curvature を聴く

ニューロフィードバックの米現代音楽家 デヴィッド・ローゼンブーム(David Rosenboom, 1947/9/9 - ) の新作です。ローゼンボーンとも。

以前も紹介済みですが、脳波のコントロールトレーニングである Neurofeedback のアルゴリズムを作曲に使う第一人者ですね。

脳波音楽じゃないですw

ノイズ・クラスター・特殊技法・ポリフォニーと言った今の時代の現代音楽技法を使う電子空間音響(勝手に変な名前付けるなw?!)ですね。

Naked Curvature Four Memories of the Daimon (A Whispered Opera) 2001年
 3人のヴォイスWhisperedと室内楽です。ライナーノートでは、アイルランドの詩人 イェーツ(William Butler Yeats) の "A Vision" による、人間が持っているイメージの可視化機能を 囁きの室内楽オペラにしたと言っています。各楽器には役割が与えられ、電子化されたパーカッションは宿命である肉体と心の主体を、フルートとクラリネット(バスクラも)は仮面・意思の対象を、ヴァイオリンを伴ったチェロは意思そのもの、電子処理されたピアノは想像力を表すそうです。
実際には囁く様な歌に上記楽器類のポリフォニーです。弦楽器と打楽器はノイズ系の音、管楽器はロングトーン、と言った様な構成。また電子処理されたチェロ、無調ですが旋律が存在します、それと機能和声を感じるピアノとのデュオと挟まれる電子音ノイズ。昔ならテープのノイズでしょう。
そう言ったノイズ系の電子処理音とアコースティックとの対比が明確で楽しいです。楽器の組合せと展開パターンは色々とあり幅広いです。ラストはディストーションされたチェロが縦横無尽に展開して終了します。それはバロック時代のコンチェルト=グロッソへのオマージュだそうです。
混沌なのですが、ライナーノートに書かれた作曲意図がこんな風に展開されていると感じられてとてもイイですね。
ついつい続けて何回か聴きなおしてしまいました。もちろん前衛ですが、調性や無調と言った垣根さえ意味を持たない世界です。

Beginning Incarnations 以下の歌詞はライナーノートに入っていますので、見ながら聴くのが良いですね。お薦めの一枚です。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

発売日! キース・リチャーズ(Keith Richards) の Crosseyed Heart を聴く!!


本日発売でしたね。キースの23年振りの新作アルバム "Crosseyed Heart" です。

中学一年の時に "Jumpin' Jack Flash" のシングル盤を発売日に買いに行って以来、時代の流れとともに続いたkokotonPAPAのアイドル ギタリスト、キース・リチャーズ。久々のアルバムですから今日聴く以外に選択肢などありません!
昔はキース・リチャーって読んでた様な。

自分のギターの1本は当然テレキャスの同色(ハムではなく、シングル)、音の好みに関係なく所有しています。

このアルバムを一通り聴いた感想は「何も変わらない素晴らしさ
何にも媚びないってのは凄いね〜ぇ、今更変われないッてのも凄いw
なんか以前も聴いた様な… それでOK〜!

1. Crosseyed Heart
 いきなりアコースティックギターでのターンアラウンドのブルース。クラプトンがやりそうな曲w でも"しゃがれ声"は一味違います。こういうキースも最高です。
2. Heartstopper
 そしてアタッカ(ロックじゃそんな言い方しないか?!)で繋がる2曲目です。スピード感がライブ受けしそう、似てる曲が今までのアルバムにある?! 
3. Amnesia
 リズム感よく、良い感じの曲ですねぇ。リズムはドラムの切れ味でしょう、重鎮チャーリー・ワッツを思わせますね。ストーンズっぽいご機嫌さです。
4. Robbed Blind
 バラードです。キースのバラードは好きです。ここでもメロウなサウンドで聴かせてくれますね。スライドギターも効いています。これがライヴではどうなるのでしょう、興味津々。
5. Trouble
 何とシングルで先行リリースされましたね。いかにもキースらしいって感じでしょう。ストーンズのコンサートで1曲だけフィーチャーされるキースの歌になる、っていうとイメージ出来るかな。ギターリフもペンタトニックの"臭さ"満載です。
試しにYouTubeで聴いてみる?

6. Love Overdue
 管楽器&バックコーラスの入るレゲエです。やっぱり来たか、レゲエ!
7. Nothing On Me
 出だしを聴いて、一瞬ディランの"Like a Rolling Stone" かと思っちゃいました。そんな感じです。サビを Nothing On Me って歌うと将にね。いかにもテレキャスらしい音もそれっぽい. もちろんバックは The Band じゃなくて XPWですw
8. Suspicious
 キースの低音の声をフィーチャーした曲、バラードなんですよねぇ。ドラムの刻みがちょっと勘違いさせてくれるけど。これもキースっぽさ全開です。ライヴで聴きたい!
このアルバムの中で一押しです。
9. Blues In the Morning
 お約束? Blue Suede Shoes的なロックンロール。なんとなくチャック・ベリーへのオマージュの様な。キースとチャック・ベリーの関係は複雑ですよねぇ。ギターのキレが今ひとつ、なぜ?
10. Something For Nothing
 ドラムの刻むリズムを明確にした、さりげないですがキースのソロ曲定番といった風です。女性バックコーラスとの絡みもご機嫌ですね。
11. Illusion
 ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)とのデュオですねぇ。女性とのデュオとなると、どうしても Make No Mistake に似て来る?! 最高ですからねぇ、仕方ないかw
もしLiveなら、ノラ・ジョーンズに向かっても "You!" って叫ぶんでしょうか。^^;
12. Just a Gift
 これもスローです。ちょっとフラットで微妙かな。でも聴き込むほどに味わいの曲でしょう。まさに Just a Gift!
13. Goodnight Irene
 驚きのスタンダード「グッドナイト・アイリーン(Written by Lead Belly)」です。キースの変な声が思いの外ピッタリ来ます。アメリカン・カントリーフォークの気配が良く出てるのに驚きです。このアルバムの 刺身のつま? 後半はけっこうなマジモードかも。実はこの曲が一番長いんですよね。
14. Substantial Damage
 ちょっとアヴァンギャルドな気配、ギターはカッティングで刻まれてファンクっぽいです。でも、そんなに黒くないですが。オルガンやボトルネック奏法も入って音に厚みがあり特徴的な曲ですね。
15. Lover’s Plea
 ギターのディストーションがミスマッチなくらい優しさが響く曲です。ヴーカルもキース以外なら名曲かも、いやホントに。途中で転調しますが、オーケストレーションでリメイクしても良い曲に思えますね。誰かがカバーするかも… ないかw

あばたもえくぼ、やっぱりキースです。ジャケットも最高!
演奏は当然ながらの The X-Pensive Winos です。名前の由来も最高!
年寄りはこういうのでとっても元気が出ます! \(^_^)/


テーマ : 洋楽ロック
ジャンル : 音楽

ルカ・フランチェスコーニ(Luca Francesconi) の Etymo・Da Capo・A fuoco・Animus を聴く

スウェーデンで活躍するイタリア人現代音楽家ルカ・フランチェスコーニ(Luca Francesconi, 1956 - ) です。シュトックハウゼンに師事し、ベリオのアシスタントを務めていますが、元はジャズ系のキーボード出身だそうです。ダルムシュタットでも活躍し、強烈な展開と視覚操作も取り入れる事がある様です。視覚ヴィジョン系は最近はIRCAMがかなり力を入れていますよね。

このアルバムは、その仏現代音楽とのコラボになりますね。表ジャケットにある様にIRCAMとアンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble intercontemporain)、指揮*はスザンナ・マルッキ(Susanna Mälkki)というバリバリの布陣です。

そしてレーベルはKAIROS、この時点である程度の方向性が見えてしまう気さえします。

*現在の首席指揮者はマティアス・ピンチャー(Matthias Pintscher)です。Mälkkiの読み方は"メルッキ"の方が良い気がしますよね。

Etymo (1994) For soprano, electronics and ensemble
 バーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan)のソプラノは楽器の一部 そして切れるソロを、アンサンブルは即興的なクラスト音、そしてエレクトロニクスはノイズの構成です。音量の大きいハイテンポと静音音響的な音楽です。時折 機能和声を感じるパートもあります。
強音パートは爆裂的、静音パートは狂気的で先鋭です。特に現代音楽は声楽が入ると狂気の切れ味を感じる事が多々ありますね。ハンニガンのsopも悪くありません。
25'強ですが、あっという間に過ぎ去ってしまう感じです。good!
試しにYouTubeで聴いてみる?
なぜか始め1分くらい音が出ません。飛ばして聴いてもいいです。^^;


Da Capo (1985-86) For 9 instruments
 静的なアコースティックで入ります。幻想的でミニマル風のテンポ展開を感じます。テンポは徐々に上がって行き、ハイペースの各楽器間の協奏になります。ポリフォニーではなく、現代的な対位法でしょう。そう言う意味で聴き易く、コンサートでも受けそうです。終盤はスローに戻ります。
A fuoco, 4°studio sulla memoria (1995) For guitar and ensemble
 パブロ・マルケス(Pablo Márquez)のギターをフィーチャーしています。始めはアンサンブルの暗い音色、そして生ギターが被ります。暗いスローな展開には電子音はありません。各楽器が互いの表情を伺うかの様な緊張感が漂います。そして中盤からは強音で速いペースが入って来ます。この辺りはフランチェスコーニの特徴でしょうか。無調ながら機能和声に近い旋律はあり、終始緊張感のある音楽です。
アルゼンチン人ギタリストのマルケスはEnsemble intercontemporainに良く登用されますね。
Animus (1995) For trombone and electronics
 強烈な電子音ノイズからの展開になります。旋律や音階といった音色はありません。トロンボーンの特殊奏法が、渦巻く様な電子音ノイズの中に稲妻の要に走査します。ライヴエレクトロニクス処理もされている様な音ですね。トロンボーンはベニー・スルチン(Benny Sluchin)で、IRCAMの実力発揮?!といった鮮烈的な楽曲です。
このアルバムの中で一押しです。

今の現代音楽の一つ 電子処理を入れた強烈な音響展開、特殊奏法、一方ではアンサンブルの生音を生かした旋律の存在する展開ですね。このバランスが良い感じです。
演奏時間が短く感じられ、あっという間に終わってしまいますね。いけます!


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

デュティユー Henri Dutilleux の チェロ協奏曲&ヴァイオリン協奏曲 他を聴く

アンリ・デュティーユ(Henri Dutilleux, 1916/1/22 - 2013/5/22) は個人的には微妙な立ち位置のフランス現代音楽家です。悪いと言う意味じゃありません。

メシアン(1908年)とブーレーズ(1925年)の間に挟まれていますが、その流れから今に至る前衛系の現代音楽ではありませんね。パリ音楽院(Conservatoire de Paris)で学んでいます。
19世紀末生まれのフランス6人組(オネゲル、ミヨー、プーランク達)の流れを汲んでいる様な美しさや情感を感じますが、調性の薄さなどの技巧を使い より陰的な美しさを磨き上げた音楽です。機能和声の音楽を調性の枠から解放して自由度を生かした聴き易くて好きな楽風の一つですね。
作品は1940年代からになりますが、この当時吹き荒れた十二音技法やセリエルとは当然ながら各別しています。前衛では無いと言う事ですね。

このアルバムではチェロとヴァイオリンの楽曲が年代順に並びます。

チェロ協奏曲「遥かなる遠い国へ」 Tout un monde lointain (1970年)
 1970年の作品ですから現代音楽界では"前衛の衰退"に嵌り込んだ時代の作品ですね。五楽章からなる作品で、透明な陰を感じます。リズムも複雑さはありませんが変化に富み、和声も調性からの離脱により不可思議さを増すような奥行きがありますね。表題がピッタリと合うイメージです。モルクのvcの音色も細く相性が良いと思います。

ザッハーの名による3つのストロフ Trois Strophes sur le nom de SACHER pour violincelle solo (1976年)
 ロストロポーヴィチがパウル・ザッハーの誕生日を記念して委託した三楽章のvc独奏曲ですね。10分弱の短い曲で、デュティーユらしい透明感のある美しいチェロ曲です。静かで暗い森と湖の様な、って 何となくわかりますか?… ^^;
コンサートでマリオ・ブルネロあたりがやってくれませんかねぇ。そんな楽曲です。

ヴァイオリン協奏曲「夢の樹」 L'arbre des Songes (1985年)
 チェロ協奏曲から15年経った作品になりますが、大きく曲風が変改している事もありません。やや異なるとすれば、全体的に暗く沈んだ世界から ややパルス的刺激を醸すオケとvnの協奏という展開も見られる事、それに呼応する打楽器での色合に見える変化でしょう。ディティユーの独特な陰的な美しい世界が味わえる事は同じです。四楽章+三間奏の7曲構成です。vnのカピュソン本来は暖色な音色だと思いますが、ここではそれなりに聴かせます。
 試しにYouTubeで観てみる?
  vnは同じルノーカピュソンでトゥールーズ・キャピトル国立管、指揮はソヒエフです


強烈な個性には欠けるデュティユーですが嫌いじゃありませんね。この手の調性感の薄い和声の楽曲となると北欧系の現代音楽が得意としますね。
でも今の時代、コンサートで取り上げればかなり良いのではないかと思いますが。

チェロはトルルス・モルク(Truls Mørk)、ヴァイオリンはルノー・カピュソン(Renaud Capuçon)、チョン・ミュン-フン指揮、フランス放送 フィルハーモニー管弦楽団(Orchestre philharmonique de Radio France) になります。

再発になるのは嬉しい事です。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2015年9月12日 NHK交響楽団・広上淳一 / ルガンスキー の ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第3番、ドヴォルザーク 交響曲 第8番 at NHKホール ★☆

今朝は震度5弱の揺れで起こされたのですが、久しぶりに蒸し暑さが戻った東京。のんびりと原宿からNHKホールへ行って来ました。
20150912_NHKhall01.jpg 20150912_NHKhall02.jpg

N響 第1814回 定期公演、指揮:広上淳一、ピアノ:ニコライ・ルガンスキーですね。前半のピアノ協奏曲の方が演奏時間が長いという珍しい設定です。コンサート向きの二曲が並びました。
もちろんお目当てはルガンスキー(pf)のラフマニノフです。ひけらかす様な派手さよりもクールにして音の一つ一つが明瞭、そしてエモーショナルさが好きですね。
懸念は指揮者の個人的印象なのですが。

□ ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30
 12年前の録音ですが、ルガンスキーのCDを聴いてから来ました。叙情性+超絶技巧+華やかさ、聴かせ処満載の超有名曲ですね。
ルガンスキーは期待に応えましたね。クールなヴィルトゥオーゾの本領発揮でした。音切れの良さとテクニカルさを殊更身振りで強調する事なくこなしてシャープ。期待通りで満足感がありました。
超絶技巧を魅せるピアノに、それを盛り上げるオケがこの曲。でも曲としては何故かイマイチ不完全燃焼。オケですね…破綻など何もないのですが、この華やかな曲に必要なオケの盛り上がりや情熱が欠け、ピアノと協奏しませんでした。生真面目で几帳面にコントロールされ過ぎている様に感じました。
アタッカでつながる第三楽章の後半で何とか持ち直しましたが。テクニックや楽譜再現だけではない叙情や迫力に欠けたのはとても残念でした。
ルガンスキーのピアノは12年前のCDよりも遥かに良かったです。ルガンスキーは★★☆ですね。

□ ドヴォルザーク 交響曲 第8番 ト長調 Op.88
 ドボルジャークという読み方が最近増えているような気がしますが、交響曲の7, 8, 9番はチャイコの4, 5, 6番と同じ様に明瞭な主題・動機がコンサート向きですよね。
丁寧な演奏で音も綺麗に揃って見事でした。まさに日本のオーケストラ演奏の鏡!
欠点はありません、が やっぱり+αの何かが欠けています。コンサートを生で楽しむなら、CDでは聴けない様な情熱や思入れと言ったモノです。美しく整えられた標本ではなく、生き生きと蝶が舞うのを見たい...的な。

例によって、会場は大ブラボーですからまたもや個人的勘違い、駄耳の証明ですねェ。
いい加減なkokotonPAPAには広上さんの様な隙の無い教科書的展開はキツイですw

外に出たらまだ明るい日差し。まだ夏の空気でした。もう少しで秋ですね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ヘルツキー(Adriana Hölszky) の Tragödia Der Unsichtbare Raum を聴く

ドイツ在住のルーマニア人女性現代音楽家 アドリアーナ・ヘルツキー(Adriana Hölszky、1953/6/30 - )です。以前紹介していますので紹介文はそちらをご覧下さいね。
http:// Adriana Hölszky の Wie ein gläsernes Meer, mit Feuer gemischt…を聴く

ヘルツキーは、グバイドゥーリナ、サーリアホと並んで女性現代音楽家を代表する一人でしょう。
と、勝手に言い切っちゃいます ヾ^^;

前回紹介でも書きましたが、作風は電子音と打楽器群による空間音響で、テープや特殊奏法、近年の演奏の難しさも含めて今の現代音楽の主流的な音の一つ、と言う事になり個人的には馴染みある安心感かもしれません。

今や"テープ"は実際にはエレクトロニクスのミュージックコンクレートでしょうが…

Tragödia(1997) :アンサンブルと電子音楽の A から N までの14曲です。いずれも3〜6分くらいの小曲ですね。表題は Tragedy The Invisible Room (見えない部屋の悲劇) という事で、ボンの Forum of the German National Art Gallery で初演された時には ステージセットだけが置かれて表題のイメージを作ったそうです。元のアイディアはニーチェの「悲劇の誕生」から得たとヘルツキーは言っていますね。

いきなりインパクトのある衝撃音からのスタートです。ピアノを含めたアンサンブルの各楽器からは特殊奏法を駆使した即興的な音が、時に単音的に 時にポリフォニックにと色彩豊かに繰り出されます。基本的にパルス的な音構成でバックにはライヴエレクトロニクス、多分、された音がパーカッションをベースに流れます。演奏者のヴォイスも入っていると思います。
陰でも陽でもノイズでもない攻撃的かつ刺激的な衝撃音空間音響です。楽譜の複雑性を伴っているはずですが、これは聴いただけではわかりません。残念ながらライナーノートには楽譜サンプルはありませんでした。
訳のわからない凶暴な前衛現代音楽を試しに聴きたいと言う貴方に、お薦め。(爆)

演奏はKölnをベースに活躍する現代音楽アンサンブルのEnsemble Musikfabrik。英訳するとMusic Factoryですからかっこいいw
そして大きな役割を果たすライヴエレクトロニクス (兼sound direction)にOtto Kranzler と Melvyn Poore の二人、指揮はJohannes Debusです。

試しにYouTubeで一部を聴いてみる?
 ボリュームを上げて聴いてみて下さいね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コヌソン Guillaume Connesson の Lucifer を聴く

フランス人現代音楽家 ギヨーム・コヌソン(Guillaume Connesson, 1970 - ) はフランス国内の音楽学校で習い、作曲をランドスキ(Marcel Landowski)に師事しています。

本人はクープラン、ドビュッシー、ラヴェル、メシアン、デュティユーの様なフランス人作曲家のみならず、ワグナー、ストラヴィンスキー、米現代音楽 ライヒやアダムズ、果てはファンクのJ.ブラウンにまで影響を受けていると言っていますね。

と言う訳でコヌソンの作品はフランス国立ロワール管弦楽団 (Orchestre National des Pays de la Loire)の他、米国でも演奏機会がある様です。

DGフランスではポスト・ブーレーズの幕開けと評していますが、さて。

Cello Concerto (2008)
 I. Granitique - II. Vif - III. Paradisiaque - IV. Cadence - V. Orgiaque
この曲は演奏者であるジェローム・ペルノー(Jérôme Pernoo, vc)に献呈されていますね。
楽曲は調性の薄さはありますが、その範囲のスタンスですね。I. Granitique などは、もろにストラヴィンスキーを感じます。確かに古典的な機能和声ではありませんが、新ロマン主義といった風でしょうか。もちろん前衛ではありません。
五楽章ですが前半はスピード感溢れる展開で、III. Paradisiaque は緩徐楽章で一番長い楽章になります。ここでの展開は面白さを感じますね。なるほど、メシアンの影響。IV. Cadence はvcのカデンツァですがテクニカルで、このコンチェルトの聴かせ場所ですね。 V. Orgiaque では再びスピード感あるvcとオケの共演パターンに戻ります。展開が明確で楽しいです。

Lucifer (2011) ballet en deux actes sur en livret du compositeur
 No.1: Le couronnement du Porteur de lumiere - No.2: Le voyage de Lucifer - No.3: La Rencontre - No.4: Le Proces - No.5: La Chute - No.6: L'Ailleurs - No.7: Epilogue

題名がルシファー。悪魔、堕天使で2幕のバレー曲だそうです。またもや出だしはストラヴィンスキー。テンポの速い展開の華やかなバレー曲です。調性感の薄さも殆どありません。今は春祭の初演の時代ではありません、確かにリズムは複雑で音の重なりはポリフォニーで不協和音もありますが全く違和感ないでしょう。
ここでも速い展開=緩徐=速い展開という構成です。そして特徴的に良いのはやっぱり長い緩徐の No.3: La Rencontre で、ここではかなり調性の薄さを味わえます。後半は処々でストラヴィンスキーが顔を出しながら派手でアップテンポな展開です。エピローグは静からの雄大さで締めます。計算され過ぎている感じ。

試しにYouTubeでLuciferを観てみる?
Malandain-Ballet -Biarritz による前衛バレーです


どこがポスト・ブーレーズなのか…
でも調性が薄いくらいの現代音楽の方が前衛よりも単純に聴き易い事は違いありません。もう少し作品を聴かないとわかりませんが、安心して聴ける重厚で派手な現代音楽?! 悪くありませんし、聴いていて楽しさもあります。でも、何か腑に落ちないような。
コンサートには向きますね。

指揮は日本でもお馴染みのスピノジ(Jean-Christophe Spinosi)、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団(Orchestre Philharmonique de Monte-Carlo) の演奏になります。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

プロフィール

kokotonPAPA

Author:kokotonPAPA
.
    




・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。





カレンダー
08 | 2015/09 | 10
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -
ようこそ
カテゴリ
ありがとう