ラッヘンマン Lachenmann の NUN を聴く

先日 Beat Furrer の Nuunをインプレしたので、師である ヘルムート・ラッヘンマン(Helmut Friedrich Lachenmann, 1935/11/27/ - ) の NUN(1997-1999/2003) を聴いてみます。声楽、フルートとトロンボーンをフィーチャーした管弦楽曲です。まぁ、一般的に言う管弦楽曲と思ったら当然大間違いなわけですが…w

"ヌン"に付いて、ライナーノートの中で SWR TV&Radio の編集者であるHans-Peter Jahn は "helpless"であると語っています。それはイメージや文章で語る事ができず、「マッチ売りの少女 (1990-1996, 2000)」への関連そしてまた 日本の影響、哲学者 西田幾多郎 の "Logic of the Place" を思わせるとあります。

約41分の曲は文字通りラッヘンマンらしい楽曲、独立した個々の音と特殊奏法 そしてポリフォニーにかつ対位的に変化する流れと間、でいっぱいですね。そう言った意味では「マッチ売りの少女」的かもしれませんし、時折現れる強音と"間"の空間に残った音をイメージさせるのもラッヘンマンらしいですね。でも「マッチ売り…」の様な変化球は入れていません。
この時代のラッヘンマンらしく、音数が減ってユニゾン的な展開も増えている分 残響や余韻の印象が強くなっています。基本はパルス的ノイズですが、スペクトル楽派とは異なる 空間音響の音楽だと思いますよね。
10年前のライブですが、今でも現代音楽のトップランナーである事を感じさせてくれる現代音楽ですね。おすすめです。

演奏はドイツ現代音楽演奏集団の雄 Ensemble Modern、指揮はマーラーも振る Markus Stenz になります。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ベアート・フラー Beat Furrer の Nuun/Presto Con Fuoco/still/Poemas を聴く

Beat Furrer (1954/12/6 - ) はスイス生まれのオーストリア人現代音楽家、指揮者です。ラッヘンマンの作風から始まり、反復や穏健な特殊技法を取り入れて 1990年代から調性への試行をもって現在の空間音楽作品へと繋がります。ラッヘンマン直系ポスト構造主義ですね。
各音楽祭や音楽大学での教鞭も多く、作品はKAIROSから定期発行されています。今の時代のエクスペリメンタリズムを代表する現代音楽家の一人でしょう。

Nuun (1996)
 フラーの代表曲"ヌン"ですね。
2台のピアノとオーケストラの楽曲で、即興的なポリフォニーで細かい音の繋がりと絡みで進んで行きます。特にピアノを意識する事無く速いテンポで展開して、全休符後に音数の少ない空間音響音楽になります。そこでは一音の残響を生かした余韻の世界です。
2012年のドナウエッシンゲン音楽祭での作品等、近年の作品に通じるものが感じられます。
指揮は エトヴェシュ(Peter Eotvos) です。
ちなみにNuはブルーターニュ神話の神の名ですが、その話については割愛です。
Presto Con Fuoco (1997)
 フルートとピアノのデュオです。Nuunを単純化した様な、打音的なpfと特殊技法を含めて展開するflが絡みながら対話をする様な退位法的楽曲です。ここでも全休符を挟んでいますね。その後はより混み入った音の絡みになり、pfの音数は激減します。
still (1998)
 管弦楽曲ですね。傾向はNuunと類似性を見せてポリフォニーで小刻みな音、そして楽器の少なさが支配します。そんな音の雑木林の中に、時折見せるクラスター音が強烈な光の様です。
指揮は カンブルラン(Sylvain Cambreling) です。
Poemas (1984)
 7partsからなるメゾソプラノ、ギター、ピアノ、マリンバの楽曲です。
このアルバムの中ではやや古い作品になりますが、ここでも音数は少なく点描的です。点描と言ってももちろん音列配置的ではありません。またポリフォニー的な絡みは無く、Msは呟く様な言葉を発し、時に朗々と歌っています。音の組合せの緊張感が高い楽曲ですね。
試しにYouTubeで観てみる?

オーケストラは クラングフォールム・ヴィーン(Klangforum Wien) になります。実はベアト・フラー本人が結成した室内管弦楽団で、近年注目が高いですね。先日Blogで紹介したFriedrich Cerha、上記指揮者 Sylvain Cambreling、本人 Beat Furrer が名誉会員になっています。

ラッヘンマンもNUN(1997-1999/2003)を書いていますね。次に紹介予定です。^^v



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ジャチント・シェルシ(Giacinto Scelsi) の Collection Vol.6 (フルート曲集) を聴く

ジャチント・シェルシ(Giacinto Scelsi, 1905/1/8 - 1988/8/9) は、このブログでもお馴染みのイタリアの現代音楽家です。'70年代の倍音の音響を重視した作風が特徴ですね。「共同作業」でのヴィエーリ・トサッティ(Vieri Tosatti)との関係は、日本の佐村河内守 問題の様に全くのゴーストライターでは無かったので展開が違ったのでしょうか。

一般的に有名な「一つの音を聞き込む」構想は '50年代になって倍音と類似周波数の音のうねりとして進化し、その作曲のピークは'70年代に迎えますね。そこには作曲のベースとなった点描的な気配は残されていません。
このアルバムはフルート曲で、1950年代と1976年の作品が集められていますのでとても興味深いです。ちなみにグリゼーやミュライユは'70年代にシェルシの元に師事しています。

Maknongan (1976年) バス・フルートの曲です。法師の吹く法螺貝の響きの様な音色で、強音や即興的な要素はありません。緩く深く流れる様な音の響きはシェルシらしいシンプルさです。

Pwyll (1954年) フルート曲で、やや即興的で動機的なフレーズが挟まれる中で展開して行きます。ドビュッシー、ヴァレーズ、ベリオ、武満、らの音楽との関連が述べられています。

Hyxos (1955年) フルートと打楽器の楽曲です。東洋的、それも日本的な響きを持った曲です。シンプルで深遠な音色と響きでシェルシらしい曲風です。3パートからなる構成です。

Quays (1953年) フルート曲ですが、Hyxos と似た曲調で日本の笛の音色と旋律に近い楽曲です。こちらの方が少しペースが早く旋律変化も見せて、所謂コンテンポラリー的になります。その意味では、Pwyll との中間的な感じですね。ちなみにシェルシのフルート曲の処女作です。

Tetratkys (1959年) 4パートからなるフルート曲です。即興的な色合いが強いです。一つのベース音、キー音?、を元に旋律を作り回帰を繰り替えす2ndパートが特徴的ですが、全体は20世紀コンテンポラリー的で単調さを感じます。やや退屈な…

Maknongan (1976年) 一曲目と同曲のオクトバス・フルートによる演奏です。この曲の持つ不思議な響きは低音の籠った様な鳴りがとても生きて来ます。露骨に倍音の展開も見せますね。

やっぱり'70年代の Maknongan が圧倒的に面白いです。独特な音響音楽で、この曲はチューバ、コントラバス、バスサックス、バスクラ 等、様々な低音域楽器で演奏されていますね。
試しにYouTubeで観てみる?
バスクラver.になります





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2015年7月20日 オペラ「魔笛」二期会 / 読響 / デニス・ラッセル・デイヴィス / 宮本亜門 at 東京文化会館 ★★☆

一昨日は不順な天気の中を池袋・東京芸術劇場へ、そして今日は梅雨の明けた上野・東京文化会館へ行って来ました。
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言わずと知れたモーツァルトのオペラ「魔笛 (Die Zauberflöte)」ですが、今回 個人的には演出の件もあり何と無く際物的なイメージでした。行くのを決めたのはリンツでの評判が高かった事ですね。
えっ、そんな事に支配されるの?! もちろんw

結果は、十分に愉しませてもらいました。
演出はいたって今風で違和感はありませんでしたね。背景のCG採用(PMです)は今に始まった訳でもありませんし、その中に特異性も見当たりませんでしたね。衣装も主役は現代調、夜の女王達はコメディック、ザラストロ達はラムセス時代を彷彿させるパターンと言ったセット。別にネズミが背番号を付けている訳ではありません。パパゲーノの衣装はオリジナルを尊重してグリーンを基調にされていましたね。
プロローグとエピローグで、現代の家庭に置き換えがあったりするのも面白かったです。

出演者で良かったのがパミーナの嘉目真木子さん。演技、ソプラノ共に今回出色の出来でしたね。3人の侍女もかなり好演、良かったです。
役得のパパゲーノ、萩原 潤さんもいい声していました。でもこの役は楽しい演技をもっともっと前面に打ち出して欲しかったかな。(特に前半がちょっとね...)
タミーノの金山京介さんはテノールらしい良い声を出すのですが、それが前面に出ない感じ。
残念ながら夜の女王、髙橋 維さんは今ひとつ。コロラトゥーラというにはキツかったですし、声が出ていませんでした。それにザラストロの大塚博章さん、地声じゃないの?w

舞台上の主役はもちろんパパゲーノで、絶望の首吊りシーンからパパゲーナとのパパパ…まで盛り上がりましたね。それに、ちゃんとグロッケンシュピールが使われいました。再度になりますがパパゲーノは前半でも もっと遊んで欲しかった。役得なんだから。
今回3人の童子はボーイソプラノが採用されていましたね。モノスタトスは、演出でしょうがウロチョロしすぎで鬱陶しいシーンがありました。

デニス・ラッセル・デイヴィス指揮の読響も切れ味良い演奏だったと思います。オペラのオケは普段は悪い時だけ気になるんですけどね。

 ザラストロ:大塚博章
 タミーノ:金山京介
 夜の女王:髙橋 維
 パミーナ:嘉目真木子
 パパゲーノ:萩原 潤
 パパゲーナ:冨平安希子
 モノスタトス:青栁素晴

 装置: ボリス・クドルチカ
 映像: バルテック・マシス
 衣裳: 太田雅公


東京文化会館へ行くのは昨年の天井や音響等の改装後初めてですね。相変わらず見ずらい。ヾ^^;
でも楽しんできました。


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2015年7月18日 ポリャンスキー / ロシア国立響 の チャイコフスキー三大交響曲 第4, 5, 6 番 at 東京芸術劇場 ★★☆

この演目をパンフレットで見つけた時は 何と疲れるコンサートだろうと思いましたね。メインディッシュだけ、それもランプステーキ、フィレステーキ、サーロインステーキ、みたいな…(笑)
でも、このセットで全国14カ所のツアーです。これは味わっておかないと、と言う事で台風一過?にならないイマイチの天気の中を今日は池袋へ行って来ました。
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コンサートでは良く出会うチャイコの三曲ですが、頭の中には明確な音が標準的に存在しています。ムラヴィンスキーの1960年DG盤ですね。今回初来日となるポリャンスキーのチャイコは事前に聴いていません。(所有していませんw)
さて、爆演型とパンフに書かれたヴァレリー・ポリャンスキーとロシア国立交響楽団、ロジェストヴェンスキー絡みの両者はどうだったのでしょうか。

交響曲第4番 ヘ短調 Op.36
 爆演型と言うよりも、強音の切れ味鋭い演奏です。第一楽章はこの楽団の特徴がでていましたね。強音パートや主題は見事に聴かせますが、以外は個性的にフラット。第二楽章はやや厚い緩徐楽章で、もう少し薄いほうが好み。第三楽章は表情豊かでした。最終楽章はもっと はちゃめちゃ でも良かったのでは。でもラストはゾクッとしました。
(実は、はちゃめちゃ じゃないのがこのセットの美しさだったのですが)

交響曲第5番 ホ短調 Op.64
 本領発揮でしたね。第4番で示した通りで実は全篇個性的なチャイコです。
第三楽章の様なフラットな楽章ではともすると退屈、しかし最終楽章でこのセットの素晴らしさが全開!
特に管楽器の音揃いの良い素晴らしい切れ味と その流れ。計算された展開は個性的で感激的、ちょっとグッと来ました。今までコンサートで聴いた第5番では最高と言って良いですね。

交響曲第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」
 第一楽章では裏目に出て、この曲の特徴的良さが殺されましたし、第三楽章も独特なマーチが中盤まで押さえられてしまいました。でも、終盤の山場は見事に独特の強音展開が生きましたね。最終楽章も叙情豊かな演奏が生き、ラストはコントラバスが弾き終えても余韻が残りました。
(フラブラが無かったのはオーディエンスもお利口だったw)
 
ロジェヴェンの持っている狂気や極端な世界は感じられませんでしたが、個性的な解釈は受け継がれていたのではないでしょうか。
爆演でも狂演でもありません。それどころか、お行儀の良い演奏です。真面目さとテクの両立した奇を衒わない、でも計算された個性で視線の異なるチャイコでした。

指揮台は無く 開場時にチェロはステージに置いてありましたね。オケはコンマスを先頭に全員揃って登場します。ステージにメンバーが勝手に居るのに慣れていると新鮮⁈
フルートが大柄な美人で音も良かったです ヾ^^;

第5番なら間違いなく★★★でしたね。
ポリャンスキー ロシア国立交響楽団

行って良かったと思わせてくれるコンサートでした。

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ラッヘンマン Lachenmann の 書Schreiben, ドゥーブルDouble を聴く

このBlogの現代音楽ではお馴染みの ヘルムート・ラッヘンマン(Helmut Friedrich Lachenmann, 1935/11/27/ - ) です。と言うか、言わずもがなのビッグネームではありますが。← この書き始めは以前と同じですw (= 詳細省略です)

今年80歳になるんですねぇ、ブーレーズは90歳ですし。時代を感じます。
新作CDですが、新曲ではありませんし最新録音でもありませんね。"書"は初音源化だそうですが。

□ 書 Schreiben (2003年) for orchestra
 ラッヘンマンですねぇ。いきなりの管楽器・打楽器特殊奏法から入ります。ポリフォニー的な混沌ではなく、張りつめた緊張感の中で各楽器がシンプル先鋭な音を重ねる感じです。後半はポリフォニー的な騒音が現れ、ラストは静的な特殊奏法が展開されてそのまま終息します。
ノイズ・騒音系ではありますが、21世紀に入って変化の流れを感じる音楽にも間が感じられますね。もちろんパルス的な音が彩りを作っているのはラッヘンマンですが、年を追う毎に少し聴き易くなっている気がします。ライブエレクトロニクスの効果はライブじゃないと実感出来ないのが残念! この緊張感は通常奏法でのオケで作り上げるのはやっぱり無理でしょうね。
演奏・録音・指揮は以下の通りでバリバリの欧エクスペリメンタリズムです!
・WDR Sinfonieorchester Köln (Baden-Baden und Freiburg)
・2006/3/25 EXPERIMENTALSTUDIO des SWR (sound projection by Michael Acker)
・Sylvain Cambreling

試しにYouTubeで聴いてみる?
Brad Lubman指揮、London Sinfoniettaによる演奏です


□ ドゥーブル Double (グリードII Grido II) (2004年) for string orchestra
 上記"書"の一年後の弦楽曲になりますね。構成は似ていますが、打楽器や管楽器の得意とする強音展開が取り除かれた分だけ薄味に感じます。その分、やや見晴らしが良くなりラッヘンマンの音楽がシンプルに感じられるかもしれません。
ポリフォニー的なパートでは、時折見せる美しさが個人的にはシェーンベルクの浄夜を思わせてくれます。後半ではパルス的な展開から空間音響系の様なロングボウの響きへと変化して、ラストは音数の少ないポリフォニーに強烈なパルスを交えた後 静音で終えます。

2005年9月5日、ルツェルン音楽祭でのライブです。
・Lucerne Festival Academy Ensemble
・Matthias Hermann (cond.)




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アルナルド・コーエン Cohen(pf) のピアノで聴くリスト「死の舞踏 Totentanz」と ピアノ協奏曲第1番

そもそもピアノ曲が現代音楽の出発点だった事は何回も書いていますね。そしてリスト(Franz Liszt, 1811/10/22 - 1886/7/31)がその元です。個人的にリストで言うと学生時代に聴いたベルマンの超絶技巧練習曲のイメージが強烈に残っています。
そして死の舞踏ではブラジル人ピアニストのアルナルド・コーエン(Arnaldo Cohen)です。と言う事で、今回はコーエンの死の舞踏を2つのCDで聴きますね。

死の舞踏は、グレゴリオ聖歌「怒りの日」のパラフレーズです。他の曲にも用いられている事も含め、この件は以前書いたので割愛ですw

Cohen (pf), John Neschling (cond.), São Paulo SO [BIS]
 本来のコンチェルト形式です。入りの主題「怒りの日」は強烈なオケが印象的で、ピアノが弾く主題はスロー。変奏部は時に主役はオケでピアノは縦横無尽に走り、変奏IVではエモーショナルなソロも聴かせます。小刻みなピアノ展開もあり楽しいです。コーダからフィニッシュは細かく刻まれた変奏部からカデンツァを挟んで重厚なオケと共に豪快に締めます。ヴィルトゥオーゾなピアノですが、ここでの主役はオケですね。

 このアルバムには他にピアノ協奏曲が二曲含まれています。実は Piano Concerto No.1 は今までに二回の聴き比べで9CD紹介しています。
 #1: Lang Lang , Barenboim, Sara Ott, Argerich, Lazar Berman!
 #2: Hough, Zimerman, Arrau, Lise de la Salle
実はこの曲が素晴らしいです。サンパウロ響もネシリングの指揮の元、情感豊かな演奏を聴かせています。アゴーギクが効果的で、ピアノは水を得た魚の如く自由に そして凶暴なタッチを見せてくれます。それだけでなく第二楽章のエモーショナルで美しさも際立ちます。コロコロと鍵盤を走り回るコーエンのピアノも好演で、演奏的にはこちらの方が素晴らしい! 前記9CDと比較してもこれが好みです。オケもピアノも表情豊かなヴィルゥオーゾ系です。コンサートなら総立ち!?




Cohen (pf) [NAXOS]
 コーエンのピアノソロ盤です。上記オケ盤に比べて、こちらのコーエンのピアノは豪放そのものです。オケのパートもピアノですから曲調もやや異なります。
特に入りの「怒りの日」の旋律はそのものズバリです。本来カデンツァに当たる部分も静的に入りながら強音展開の旋律へ戻ります。その後の変奏も、静的に美しいパートも見せながら基本はアゴーギクとディナーミクの効いた超絶技巧的な変奏ですね。実際、ここでのスロー&ビューティーな変奏パートはあまり巧くありません。(笑)
一呼吸置いて、コーダに繋がる変奏を刻む様に弾くと野太い音に変化しつつ強烈なフィニッシュを迎えます。
今は流行らない "大向こうを唸らせる系" のピアノは楽しいです。本来のヴィルトゥオーゾだと思いますね。ベルマンもそうでした。

 このアルバムにはもう一つの死の舞踏(Danse macabre), サン・サーンス(Saint-Saëns)が入っています。主題はもちろん異なりますが、ここでコーエンは激烈な表情を十分見せてくれて楽しめます。
二つの死の舞踏を強烈なピアノソロで楽しめますね。おすすめです。



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シャリーノ Salvatore Sciarrino の String Quartets を聴く

お馴染みサルヴァトーレ・シャリーノ(Salvatore Sciarrino, 1947/4/4 - ) 、今やイタリア現代音楽を代表する巨匠の一人ながら独学で 特別に師事した音楽家がいないのも面白いですね。その分 個性的である事は間違いありません。
今までにも紹介しているので、その辺は割愛ですw

String Quartetto no.7「弦楽四重奏曲7番」(1999年)
生まれて間もない子猫の鳴き声、ミャーミャーという様な楽曲。と言うのが一番イメージが近いと思います。四匹のカルテットですね。

String Quartetto no.8「弦楽四重奏曲8番」(2008年)
続けて少し大きくなって身の回りをチョロチョロと動き廻る子猫の様子w 最後は暗闇に紛れ込んだような気配の演奏です。四匹のカルテットは特殊技法も交えながら様々な弦楽の音色を奏でます。また特徴的なのは動機の繰返しです。変奏も含めて短い繰返しが支配しています。シャリーノの作品らしい特徴かもしれません。この楽曲が一番楽しいですね。
試しにYouTubeで聴いてみる?

Sei Quartetti Brevi I-VI「六つの小さな弦楽四重奏」(1967-1992年)
弦楽ノイズ系の六つの小曲からなる楽曲です。静の中に強が顔を出すシャリーノらしい展開ですね。動機的なものはほぼ存在しませんが、無音+静音編成の中に現れる調性的な音の並びが印象的です。好みはベースになる静音ノイズの部分ですね。

いずれシャリーノの作品は個性的で魅かれるものがありますね。



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エトヴェシュ Peter Eötvös の アトランティス atlantis を聴く

ペーテル・エトヴェシュ(Peter Eötvös, 1944/1/2 - ) はハンガリーの現代音楽家にして指揮者として日本でも著名ですね。このBlogでも現代音楽の指揮者としてはお馴染みです。
作曲家としては、音楽祭物のCDでは紹介済みの Eotvos ですが、アルバムの紹介は多分初めてになります。
ブタペスト・ケルンで学び、 ブーレーズの創設したアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督・指揮者を引き継いでいます。ちなみに現在その籍はスザンナ・マルッキが務めていますね。プロムスへのデビュー後はBBC-SOの主席客演指揮者を務めるなど英ロンドンでの活動時期もあります。また、コンセルトヘボウ管やBPOも振り 指揮者としての活躍が目立ちますね。
現代音楽の教授職も務め、技法的には特殊奏法と電子音楽を得意として、声楽にも興味を示しています。日本の能や歌舞伎にも影響を受けていて、山海塾の舞踏家:天児 牛大 演出のオペラも手掛けていますね。
もちろんダルムシュタットやドナウエッシンゲンの常連でもあり、欧州エクスペリメンタリズムの音楽家になります。

Atralntis (1995年) : 1995 live
 オーケストラと声楽の為の楽曲で、ヴェレシュ・シャンドール(Weöres Sándor)の詩『Néma zene』を使っています。スローで美しい流れはトランシルバニアのダンスミュージックが見て取られる(by Thomas Schafer)そうですが、どうでしょう。
3 part からなる空間音響系の楽曲です。声楽は殆どヴォーカリーズに近いですね。ポリフォニーや即興系、もちろん点描的な現代音楽ではありません。長音基本の組合せで強音パートと弱音パートが明確で、その出し入れで構成されます。その中にファンファーレの様な音や、弦のピチカートの響き、電子処理や特殊奏法によるノイズ 等々を挟んであります。
IRCAMにも絡んでいる訳で、スペクトル楽派の作品の様相ですね。38分半あり、コンサートで聴きたいものです。

Psychokosmos (1993年) : 1995 live
 Eotvos本人によると、ガガーリンの宇宙飛行やビッグバン理論を元に1961年に作った Kosmos (ピアノ曲) を32年後に閃きを内なる世界に展開した作品だそうです。それでPsycho-kosmosなんですね。
激しいパートはビッグバン、浮遊感のあるパートは宇宙飛行と捉えるのは単純過ぎでしょうか。簡単に表現すると、クラスター的な強音と音数の少ない静音の空間音響系の楽曲になります。特徴的なのはどちらのパートでも緊張感が伝わる事でしょう。そこがエトベシュらしさでしょう。

Shadows (1996年) : 1996 live
 三楽章からなるフルートとクラリネットの協奏曲です。一楽章はそれに打楽器が絡む会話の様な曲で、時折オケが顔を出します。静かな会話だった一楽章からオケの絡みが増えて、パルス的に音が出て刺激が強くなりますね。三楽章ではコントラバスのボウイングが奏でる旋律から入り、オケの弦楽器が表に出て協奏曲的な色合いが強まりますが、その後は一楽章の様なパターンとの組合せです。
楽風は、嵐の前というか、暗闇を手探りで、と言う様などこか不安と緊張感があるEotvosらしいパターンですね。
試しにYouTubeで第一楽章を観てみる?

いずれもライブエレクトロニクス処理されていると思いますので、実際の会場での聴こえ方はかなり異なるのではないかと想像されますが、今の時代の現代音楽の流れです。

エトヴェシェは現代音楽の指揮者としてのイメージが強いと思います。指揮者としてはマーラーも振るそうで、興味津々です。現代音楽家の指揮者でマーラーだとブーレーズを筆頭にマデルナやセーゲルスタム等、特徴的で良いタクトがすぐに思い出されます。
日本でマーラーの第5番を振ってもらいたいですね。もちろん自作曲と合わせて。



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2015年7月1日 ロト / 読響 の ブーレーズ「ノタシオン」と ベルク「ヴァイオリン協奏曲 (ある天使の思い出に)」at サントリーホール ★☆

個人的に記念すべき今日をブーレーズとベルク、二曲の現代音楽のコンサートで迎えられたのは喜ばしい事です。フランソワ=グザヴィエ・ロトの指揮、読売日本交響楽団ですね。
梅雨の最中、雨の上がった六本木サントリーホールへ行って来ました。ちなみに今回はP席(ステージ背面席) でした。
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□ ブーレーズ:「ノタシオン」第I, VII, IV, III, II番
 現代音楽としては一時代前かもしれませんが、ブーレーズの楽曲は大好きです。もちろん事前にブーレーズ指揮アンサンブル・モデルンの演奏を聴いて来ました。今更の耳タコですがw
原曲の話、1, 7, 4, 3, 2, の個々の話は割愛です。
この曲の特徴は I, VII, III のキラキラとしたブーレーズらしい色彩感ですね、それに短い IV, II が動的に展開します。ブーレーズと同じフランス人指揮者ロトですが、少々感じが違いました。
ブーレーズの曲らしいキラメキが伝わらないのが残念。それは、ハッとさせられる様な切れ味、メリハリかもしれません。ただ、ラストの II は良かったですね。ロトも指揮台上で跳ねたりした様に音に躍動感が伝わりました。
何はともあれ、超大なオケ編成のこの曲をライブで聴けたのは嬉しい事です。

□ ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
 事前の聴き比べに対して、今回の若手ヴァイオリニスト 郷古廉さんはどうだったでしょうか。何せ名演並ぶ有名曲ですから。
結果 郷古さんは、ヴィルトゥオーゾでした。演奏後のオケのメンバーの絶賛も凄かったです。個人的には、この曲の好みではありませんが。
もし、オケもそれに応える演奏だったら ムターCSOの様な"大向こう唸らせ系"のパターンになったかもしれません。ただ、オケは今ひとつキレていませでした。それがどうであれ、いずれにしても嗜好性の問題なのでどうしようもありませんが...
メンバーの大喝采からすれば、指揮者の指示も含めて好演だったのは事実でしょう。確かにヴィルトゥオーゾvnとして聴けばgoodでした。

この二曲の様に聴き込んで自分の中に明確なイメージがあると、どうしてもそれと比較してしまいますね。コンサートならではの、それを超える様な情熱とか切れ味とかがないと…

それとも、やっぱり駄耳の証明だったのかな⁉︎

ハイドンは辞退させていただき、帰途に着きました。
六本木は雨上がりで涼しい夕べになっていました。


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kokotonPAPA

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。





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