ブライアン・ファーニホウ Ferneyhough の Complete Works for String Quartet & Trio を聴く

ブライアン・ファーニホウ(Brian Ferneyhough, 1943/1/16 - ) の弦楽四重奏曲集ですね。GWはそんなCD3枚組を聴くには最高のタイミングです。
現代音楽「新しい複雑性(New Complexity)」のビッグネイムですしファーニホウについては何回も紹介しているので、ここでは割愛です。(こちら"このブログで言う現代音楽とは"にもどうぞ)

今の時代の現代音楽?!につながる前衛「新しい複雑性」は、超絶技巧性だけでなく極端なパラメーターの分離といった譜面・読譜の難解性がありますから、聴くだけではわからない事もあります。

とは言え、ファーニホウは尖鋭的にして刺激的、難解の典型ですね。鋭い刃物の様な切れ上がる弦楽曲とでもいう様なw。居合抜きの型の様に、動きの中に瞬間的な音のアタック感が強烈です。もちろん旋律など存在しません。
個々の曲にコメントはしません。例えば初期作品の一番(1967年)より二番(1980年)の方が音数が少く…とかは出来るでしょうが、通して聴くとあまり意味があるとは思えませんね。楽譜を読み込むだけの能力も残念ながらありませんし。(汗) やっぱり音に浸る事でしょう。その上で作曲技法・等を確認しましょう。
これじゃ何言ってんだかわんない??!! やっぱり試しに聴いて感じるのが良いですよね、きっと。
試しにYouTubeで観て見る?
なんと2010年ドナウエッシンゲン音楽祭のArditti Quartet によるString Quartet No.6 世界初演です!


以前も紹介した弦楽四重奏曲第四番(1989-90年)は、唯一声楽を含んでやや趣を異にするでしょうか。ソプラノ・パート(Claron McFadden)はシュプレッヒゲサング的で、声楽的特殊技法ではありませんが技巧を必要とする難曲です。弦楽パートは他の弦楽曲と同じく切れ味鋭い演奏ながら、声楽との駆け引きで音をコントロールしています。全体の流れに関しては何ら変わる事はありませんが。
その他、弦楽三重奏曲(1995年)も含まれていますが、これはプログラミングのみで作曲されていて極端なパラメーター展開もあるとの事ですね。

まずはファーニホウの弦楽四重奏曲に浸れる事は間違いありません。前衛に麻痺して初めて興味が湧く??!!かもw
購入は、もちろんアーヴィン・アルディッティ率いるアルディッティ弦楽四重奏団Arditti Quartetです。
このアルバムが素晴らしいのは1967年のSonatas for String Quartet から2010年の 6th String Quartet までが作曲年順に納められている事ですね。年とともに進む楽曲の変化は現代音楽では大切ですよね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

不運の北欧現代音楽家 Arvid Klevenアルヴィド・クレーヴェン の Lotusland・他 を聴く

30歳で夭逝した不運な北欧現代音楽家クレーヴェン(Arvid Kleven 1899/11/29 - 1929/11/23)は、ノルウェーのフルート奏者・作曲家ですね。Philharmonic Society(現オスロ・フィル)のフルート奏者だった時にパリとベルリンに作曲の勉強に訪れています。その楽曲は当時のノルウェーでは受け入れられていない表現主義音楽でセンセーションを、Skogens søvnでは特に、起こしましたね。1920年代、クレーヴェンの死まで、その音楽はノルウェーらしからぬ現代音楽として酷評され黙殺されました。

楽曲順が作曲年代順になっていないのは、アルヴィド・クレーヴェンの批判に晒された作曲家人生と合わせて考えると残念です。いずれも一楽章形式です。

1. 交響的幻想曲 Symfonisk fantasi (Symphonic Fantasy), Op. 15 (1926年):1926年2月15日にPhilharmonic societyで初演されました。フランス印象主義がベースで調性の薄い陰鬱でスローな表情を見せます。そしてその中に衝撃的な音塊が突現します。今の時代に聴けば調性感も残されてコントラストのある面白い楽曲なのですが。コンサートでは良さそうな感じです。
 
2. 眠れる森 Skogens søvn (The Sleeping Forest), Op. 9 (1923年):Philharmonic societyによる初演後に惨憺たる悪評を受けた楽曲です。入りはLotus Landに似た印象主義的な美しい流れですが、半ばから展開は音量が上がり僅かに不安定さが増します。全体としては美しい旋律をもった印象的な楽曲ですね。
適度な不協和音は、今の時代なら何の不釣り合いさも感じさせません。ストラヴィンスキーの春の祭典が、その10年前1913年ですから、これが拒絶される時代の北欧であったと言う事なのでしょう。
「ロータスランドから一変してたアヴァンギャルドさはドイツ表現主義に変化している結果」と評される事があったそうですが、全くそんな感じはありません。

3. 蓮の国 Lotusland, Op. 5 (1921–22年):ドビュッシーの影響を受けていると言われ、フランス印象主義的です。当時のノルウェーでは大きなインパクトを与えたそうですが、今聴けば北欧を感じさせる美しさの楽曲ではないかとさえ感じてしまいます。フルートの調べがドビュッシーらしさを演奏しますが、それは本人がフルート奏者であったからかもしれませんね。いずれ機能和声内の楽曲です。

4. シンフォニア・リベラ Sinfonia Libera in due parte, Op. 16 (1927年):最後の管弦楽曲で、渡独時に書かれたものです。当時のドイツではシェーンベルクが教鞭をとり、ベルクがヴォツェックWozzeckで名声を築いていた時代です。この曲では入りから曲調はドイツ音楽的重厚さです。後期ロマン派と現代音楽の折衷的な様相の楽曲になりますね。それまでの楽曲と比べて印象主義的様相から決別しているのは明白ですが、まだ調性感は強く旋律は存在しています。北欧的では有りませんが、拒絶されるほどの違和感があるとは思えません。ただ約20分の中に変化に乏しい感じはしますね。

現代音楽は作曲家の年代を追って聴くと面白さが増して楽しめますね。このアルバムも3→2→1→4 の順で聴く方が楽しめると思います。

指揮は現代音楽ではお馴染みのスザンナ・マルッキSusanna Mälkki、スタヴァンゲル交響楽団Stavanger SOの演奏になります。
 
1950年代以降、北欧で現代音楽が取り入れられる中、再評価されたのは嬉しい事ですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ヴァレンティーナ・リシッツァの「ショパン Etudes」と「フィリップ・グラス」

Valentina Lisitsa と言えばYouTube、そしてロイヤルアルバートホールでのアルバム。と言った印象が強い "大向こうを唸らせる" 系ですね。
ここへ来て興味のあるアルバムが二枚出たので聴いてみました。とはいえ、Frederic Chopin の Études はこのBlogで紹介するには恥ずかしいほどの超有名曲ですから、詳しい方はパスして下さいw

ショパン: 24の練習曲
 リストをやった(Plays Liszt)ので、もしかしたらと思っていましたね。古今東西のピアニストが弾くエチュードですから所有枚数もそれなりにあり 個人的な好みは、少なからず有りますが、例えば若き日のガヴリーロフ。どちらかというと苦手はマガロフといった系統です。基本的にはクールに速く、です。クールは "冷静に" ではなく "かっこ良く" ですね。ガヴリーロフの速さとクセのある硬派的表情は好みです。マガロフはスクリャービンのエチュードは大好きなのですが…

リシッツァの個々の演奏は書きませんが、思いの外クセが無いのはわかりますね。速いですが爆速系ではなく、かと言って叙情表現系でもありません。アゴーギク、ディナーミクともに薄いですね。
個人的好みから行くと、個々の音の歯切れがもう少し欲しいのと、時折 単音で音を尖らせたりするのは気になりますね。それとリシッツァらしい"聴かせてやろう"な部分が少し足りない様な。

Chopin Etudes を入手すると一番始めに聴くのは Étude Op.10-4 ですね。これをどうやって"速く"、"クール"にやってくれているかが自分の中のSTDです。演奏記号はPrestoですから当然ですね。それからOp.10 - Op.25 を通して聴きますね。リシッツァの Op.10-4 は速さは普通で、表情の付け方も違和感の無い演奏という気がします。もっと変化球や魔球?!を投げているかと思いました。そうなると次はH.J.リムでしょうかw

そう言えばOp.10-4 は海外ではTorrent [感情の迸り、激流]と呼ばれているのに日本では名前が付きません、みなさん好きな楽曲だと思うのですが不思議ですね。
そうそう、書きませんでしたがシューマンの交響的練習曲も入っています。聴いていませんがw



Op.10-4 と言えば究極の速弾きはスヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter)でしょう。どうせやるなら…のひとつですw
試しにYouTubeで見てみますか!?


plays Philip Glass
 フィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - ) のピアノ演奏曲です。マイケル・ナイマンを弾いていますから不思議では有りません。とは言え、あまり得意ではないミニマルベースのマニエリスム系楽曲ですから…w (本人はミニマルではないと語っていますね)
全部同じ曲に聴こえますねぇ。特にグラスの場合は美しい旋律が仇となり、個人的にはです、映画音楽かBGMか といった印象はやっぱり変わりません。最後の一曲、MISHIMAは三島由紀夫の自叙伝を映画化(1985年)した際のサントラです。コッポラとルーカス監督による超話題作品なのですが、日本では三島由紀夫の奥様の了解が取れずに放映されませんでしたね。

興味深いのはCD1の How Now でしょう。この一曲は約30分の大作で、グラスとは言え執拗な短音階の繰り返しと音の透明感が他の曲とは異なります。キンキンする様な音色と合わせて陶酔の世界です。なんて言う事無い本来のミニマルかもしれませんが…
残念なのはMetamorphosis I-Vでしょうか。確かに主題を変態していますが、期待した何かが現れる訳ではありません。

リシッツァのピアノを聴くというよりも、結果的にはグラスの曲をピアノで聴いたら? と言った結果になりました。(汗)



これで当面リシッツァの新譜が出てもスルーかもしれません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー 交響曲 第5番 名盤・珍盤 160CD 聴き比べ [#8/CD:111-125]

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860/7/7 - 1911/5/18)の交響曲第5番(Symphony No.5)の聴き比べも、8回まで来ました。
今回 #8 は15CDsの紹介、計125CD。所有分で3枚以上のアルバムを残した指揮者は紹介してしまいましたので、2枚のCDを出している指揮者をメインに聴いてみました。

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ○:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.5 の聴き較べです (現在 #11回 160CDまで)
 #11:10CD
 #10:10CD
 #9:15CD
 #8:15CD - 本投稿
 #7:10CD
 #6:14CD
 #5:5CD アバド追悼
 #4:20CD
 #3:25 26CD
 #2:20CD
 #1:15CD




サラステ / Finnish Radio SO
[Virgin] 1990-5
 フィンランド人指揮者Jukka-Pekka Sarasteがフィンランド放送交響楽団の首席指揮者を務めていた時代のマーラー5になります。ちなみに サラステはかつて第2ヴァイオリンの一員として同楽団に在籍していましたね。
 メリハリのある葬送行進曲は陰鬱では有りません、適度なペース変更と共に第二主題へ展開します。癖の少ない第一楽章です。第二楽章は山と谷がハッキリした楽章ですが、ややソフトタッチに展開します。第三楽章はゆったりとしたスケルツォで まさに優美なのですが、ともするとやや緩さを感じてしまいます。その微妙さが残念です。
それを受けてかアダージェットも淡々と流れます。最終楽章の入りは冷静に入るのですが、ややテンポが速く微妙なディナーミクが気になりますね。一部演奏もちょっと…でも山場やコーダは豪放で悪くなく、最後は約束通りアッチェレランドで駆け抜けます。

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端正で澄んだマーラー5番ですが処々で流れが落ち着きません。北欧らしい透明感のある演奏に終始して欲しかったかな。



☆ サラステ / WDR Sinfonieorchester Köln
[Profil] 2013-6/15
 これはフィンランド放送響から23年後、ケルンWDR交響楽団の首席指揮者になってからの比較的新しい録音です。ちなみにユッカ=ペッカ・サラステがシベリウス音楽院で指揮を学んだ同期にはサロネン、ヴァンスカがいますね。
 まさに重厚な葬送行進曲の第一楽章の入り、そして生き生きとテンポアップの第二楽章へと見事に繋げて行きます。第二楽章は荒々しい第一主題から緩やかで美しいチェロの第二主題へと流れて、その後もこの楽章らしく表情豊かで見事です。スケルツォは軽やかで優美、第三主題の変奏も深遠で長いこの第三楽章も全く飽きさせませんね。聴きもののホルンの演奏もコーダも決まってます。
アダージェットは実は個性的、緩やかなアゴーギクが効果的に薄く冷たい切迫した空気を作っています。最終楽章はスローに軽やかにスタート、高原の朝の様な爽やかさから第一主題 第二主題を絡ませて清涼的に上げて行きます。最後の山場からコーダは壮大にして雄大、見事なアッチェレランドで締めくくります。

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このライヴの素晴らしさは、暦年のマーラー演奏によるケルンWDR響の実力なのか、はたまた年を経たサラステの境地なのか、まさに王道の響きです。近年発売されたマーラー5番の中では最高でしょう。所有する中でもBest 5に数えますね!



ギーレン / Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken
[Altus] 1971-2/11.12
 現代音楽で著名な"冷血"指揮者 Michael Gielen とザールブリュッケン放送響のマーラー5番です。
 第一楽章、独特のアゴーギクを振る葬送行進曲は重厚というよりも透明感、第二主題も極端にスピードは上げません。第二楽章でもシンプルな展開でマーラーの意図よりもややサッパリ系でしょう。
第三楽章のスケルツォも同じ傾向で、クドさは有りませんが軽快と言う訳でもありません。気になるのはオケが今ひとつ、この楽章だけでなく、と言う事でしょうか。ここでも微妙なアゴーギクと解釈を感じますね。
特徴的な軽妙感のある入りのアダージェットはやや速めの演奏です。最終楽章でも一味違う軽さとテンポで登って行きます。やや締まりが無いのが残念ですが、コーダからフィニッシュはアッチェレランドを効かせます。

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独特な解釈は悪くないのですが、管楽器に締まりが欠けて見晴らしが悪いマーラー5です。



ギーレン / SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
[haenssler] 2003-12/9.10
 Altus録音から32年後のミヒャエル・ギーレンが終身客演指揮者を務める、手兵のバーデンバーデン・フライブルクSWR響とのマーラー5番です。最高の現代音楽のユニットですね。
 迫力の響きと独特の揺れを感じる葬送行進曲です。第二主題への変化も自然に入れるほどで、極端な速度変化は与えません。その後も個性的なアゴーギクと重厚さの第一楽章です。続く第二楽章も似た展開ですが個性は押さえ気味、迫力と流れの良い素晴らしい組み立てです。
スケルツォは明確に表現されて、演奏も解釈も洗練されています。処々に現れる独自性も効果的で長い楽章を惹き付けますね。この楽章の一つの完成形かもしれません。
微妙な軽快感と速めのアダージェットは個性的です。最終楽章は揺らぎを感じる演奏で上げて行きますが、緩めでかったるい感じが残るのが残念。中盤の山場もややもっさりですが、ラストはアッチェレランドで逃げ切ります。

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Altus盤からやや牙は抜かれたものの個性的で鳴りの良いマラ5。一二部は最高、三部は…



シュテンツ / Melbourne SO
[ABC] 2002-2
 タングルウッドでバーンスタインや小澤征爾にレクチャーを受けた事のあるドイツ人指揮者Markus Stenzがメルボルン響の首席指揮者を務めた時代のマーラー第5番です。
 スローにしてメリハリのある第一楽章の葬送行進曲は特徴的で陰鬱さは薄いですね。テンポを切り替えて明瞭な第二主題へと展開するのもgoodです。静的な第一楽章からハイテンポでキレの良い第二楽章第一主題です。でもこの第二楽章全体としても印象はやはり静的に感じますね。
スケルツォも第一主題の変奏から第二主題、そして第三主題まで美しく流れて行きます。この展開は飽きそうなのですが、独特の感性で聴かせますね。コーダは強烈です。
アダージェットは感情を抑えた美しさが際立ちます。この展開ならではの甘美さよりも澄んだ凪の様な空気を感じます。一つの完成形のアダージェットですね。最終楽章は以外にも始めからテンポよく進めて行きます。中盤の山場は弱いものの最後の山場からコーダは切れ味ある超ハイスピード、お見事!

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とにかく静的美しさが特徴的なマーラー5です。マーラーの譜面指示に対しては違和感があるものの、個人的にはこの解釈も有りですね。



シュテンツ / Gurzenich-O. Koeln
[OEHMS] 2009-1/26-29
 メルボルン響との録音から7年後、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団(ケルン歌劇場含む)の現音楽監督としてのマルクス・シュテンツの指揮です。
 メルボルン時代に比べ、第一楽章から大きく変化していますね。いかにもドイツ的な葬送と行進の色合いが強い第一主題、約束のペース変化で第二主題と王道の展開です。第二楽章も暴れながら入り、チェロの第二主題できれいにスローを取り戻します。この楽章らしくバランスの良い荒れ方です。面白いのは静音部で、メルボルン時代のシュテンツの様な美しさが顔を出しますね。
スケルツォは微妙な揺さぶりを感じるのと一部でホルンの不安定さが気になりますね。やや長さを感じてしまいます。アダージェットは甘美さは適度にしながら抑揚を感じる演奏です。最終楽章はボリューム感ある流れです。ラストの山場からコーダは速め、期待を裏切らない迫力です。

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ユッカ=ペッカ・サラステの2枚にも感じましたが、ドイツのオケを振るとどうしてもこういった風の演奏になるのでしょうか、不思議ですね。正攻法で悪くはないのですが…



G.シュワルツ / 東京PO
[Fun House] 1994-8/30
 トランペット奏者としても著名な米国の指揮者 Gerard Schwarz が、渋谷文化村オーチャード・ホールで東京フィルを振ったマラ5。ジャケットにBunkamuraと入っています。
 第一楽章は音の粒立ちが明瞭、癖は少く聴き易く安心感があります。第二楽章も同じ様に特殊な解釈は入らず明瞭な音使いで聴かせます。スケルツォはマイルドで、揺さぶりはなくフラット気味です。アダージェットの入りでハープの弾き音が強く気になりますね。夏の落日を望む様なアダージェットで、個人的にはもっと細く切れ味鋭い冷たい美しさが欲しかったですね。最終楽章では一転、揺らし気味のアップテンポで展開されます。このパターンはライブでは盛り上がりますね。
・・・・・
抑揚を押さえたフラット気味な演奏なのに全体のバランスが良いマラ5です。東京フィルも破綻を見せずに好演ですね。



G.シュワルツ / The Colburn O
[YARLUNG] 2011-12/3
  東京フィルとの録音から17年後の Gerard Schwarz、米西海岸のコルバーン管弦楽団(コルバーン・スクールのオケ)との演奏です。
 速い第一楽章第二楽章はドンシャン系でメリハリが強いです。もう少し落ち着いてもいい様な感じですね。スケルツォはちょっと締まりがありません、各楽器が織り成すといった感が欠けるパートが散在しています。特に一部管楽器が... アゴーギクを振ってはいるのですが眠くなります。アダージェットは流れに滑らか不足して身を委ねられず、細切れ窒息みたいなw 演奏は暖色系で暑苦しいアダージェットかな。
最終楽章は落ち着きに欠けますね。もう少し穏やかな流れから上げて欲しいところですが、これは第四楽章からの流れなので仕方ありません。コーダも今ひとつスッキリとは行きませんね。

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音(録音)は悪くありませんが、イマイチ作り込み不足なマーラー5番。速いというよりも せっかち。まぁ、若手楽団ですから速いタクトならこうなる...かな



ヘルビッヒ / Berliner Sonfonie-Orchester
[Berlin Classics] 1983?
 凡庸との評価が強いチェコスロバキア出身のドイツ人指揮者Günther Herbig、東ドイツのベルリン交響楽団との演奏です。凡庸とは思えないのですがねぇ…
 美しさを感じる第一楽章の第一主題は葬送行進曲感はやや薄く 強音パートでは炸裂、第二主題ではいきなりのスピードアップで暴れ気味です。第二楽章もハイスピードで暴れ気味の入りですが第一楽章同様に緩急強く展開されますね。スケルツォはバランスの取れた演奏ですが、それでも強音パートではやや暴れます。この辺りは癖が強いです。
感情移入の少ないアダージェットから最終楽章へ。緩い演奏から徐々に上げて行く王道展開ですが、後半の山場からコーダは爆裂です。

・・・・・
揺さぶりの強いマーラー5番です。特にアゴーギクというよりも強烈なスピード感の変化は個性的です。オケも下手なのか情熱なのか…くせ者盤ですね。嫌いじゃありませんが。(笑)
Berlin Classics盤でデジタル・リマスタードされています。




ヘルビッヒ / BBC PO
[BBC] 1984-3/27
 上記BSOから一年後のBBCフィルハーモニー客演のギュンター・ヘルビッヒになります。
 第一楽章の入りから変な音が…怪しいw 薄味の葬送行進曲かと思いきや強音パートでは叫びます。第二主題の入りでもtpがちょっと変ですが流れは一般的です。第二楽章も第一楽章からの流れを引き継ぐ感じで個性は強くありませんが処々で演奏が怪しいですw
スケルツォは全体的にはフラットで長く感じて飽きますねぇ。それなのにコーダだけ異常に元気!
アダージェットは非感情移入型。弦楽器とハープだけなので展開がどうであれ 美しさは決まるのですが、なぜか中盤の高音部が不安定です。最終楽章は穏やかな入りから癖はなく上がって行きます。やや退屈ですが、コーダからラストは見事な大アッチェレランドです。

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強音パートは元気ですが弱音パートはモッソリ。何だか演奏、特に管楽器(tp)、が怪し気なマーラー5番です。
それにしても この Death in Venice のジャケットは無いですよねぇ。このアダージェットではアッシェンバッハは死を迎えられません…
(汗)



フェドセイエフ / Tchaikovsky SO of Moscow Radio
[RELIEF] 2000-8/30, 9/2,3
 Vladimir Fedoseyev自らが育て上げた手兵、長く音楽監督を務めるモスクワ放送交響楽団とのマーラー第5番です。
 第一楽章は特徴的な解釈を感じない ごく自然な流れ。第二楽章は多少のアゴーギクを感じます。それと乱れも若干気になります。スケルツォは落ち着きが無い感じで各パートがギクシャクしたり、テンポの取り方に癖も感じますね。でもコーダはうまく締めています。
アダージェットはなぜか急いでいる感じで入るのですが、全体としては抑揚の薄い演奏です。第五楽章のテンポも不思議なアゴーギクで進んで行き、いまひとつ煮え切らないままコーダへ。

・・・・・
多少暴れたり 乱れたりと 落ち着かないマラ5ですね。



○ リンキャヴィチウス / Lithuanian State Symphony O
[aurea] 2005/10-1
Gintaras Rinkevičius

 自らが主席指揮者と音楽監督を兼ねるリトアニア国立交響楽団を指揮するGintaras Rinkevičiusのマーラー5番です。
 スローで派手な音の葬送行進曲で始まる第一楽章、元気な第二主題に繋げます。第二楽章第一主題はtpのバランスが変ですね、録音もしくはミキシング時の問題かもしれませんが。それにしても歯切れや一体感に欠ける気がします。元気っぽいのは良いのですが。と、考えていたのは間違っていた事がわかりました。
第三楽章は間が抜けた様なホルンの入りにモッソリしたスケルツォ、変です、そして厭きますw 弦楽器群の鳴りと揃いが悪いアダージェットは珍しいですね。しゃくる様なウネリは何? バランス悪くせっかちに進んで行く最終楽章はメタメタ、コーダはハイスピードでバラバラ。でもブラボー!

・・・・・
とにかく変です! 所有CDの中でも下手でヘンテコなマラ5を代表する一枚。何でも良いけど もう少し練習してからじゃない?!
 

 
フリーマン / Czech National SO
[CARLTON] 1998-1/28
Paul Freeman mahler No5
 既に引退している米国人指揮者 Paul Freeman がチェコ・ナショナル交響楽団の首席指揮者になって2年目の録音になります。
 色合いの薄い葬送行進曲の第一楽章は第二主題もほどほどな感じです。第二楽章も微妙なクセは許容範囲で特質すべくは無いのですが、まぁ安心感はありますね。切れ味は今ひとつですが…
第三楽章は軽快なスケルツォで全体が標準的なのですが、抑揚が薄く長い楽章で眠くなるかもしれません。アダージェットは弦楽器の数が足りない?といった感じ、かつ情感は抑えめで薄味です。最終楽章もゆっくりとしたリズムで上げて行きますが、締まりが無く惹き込まれる何かが足りません。

・・・・・
練習中の様な なんとなく標準的、ダラ〜っと長く感じるマーラー5です。

 

タバコフ / Sofia PO
[Capriccio] 1988-10
CDは見つかりませんが、同じ(ジャケットの)mp3が入手可能の様です。
 ブルガリアの指揮者 Emil Tabakov が首席指揮者を務めたソフィア・フィルを振ったマーラー5です。
 癖の無い第一楽章、安定した葬送行進曲から第二主題は保守本流的風合いで安心して聴けますね。第二楽章も繋がりよく入って緩急、マーラーの指示した荒々しさも再現されています。
ややもたつき気味のホルンですが華やかなスケルツォの第三楽章も飽きさせない厚みのある演奏です。微妙な金管楽器群がちょっと残念ですが。
ここでも前の楽章からの流れが良く心安らぐ入りのアダージェットで、途中から情感は強めで個人的な好みではないのですが全体の流れからは悪く有りません。最終楽章もリズムよくコーダに向かう展開です。うねりを作る様に上げて行き、コーダの盛り上げもフィニッシュのアッチェレランドも決まります。

・・・・・
悪くありません。管楽器がビシッと決まったらかなりの好演のマラ5、ホントもう一息!



ラート / O. Giovanile Italiana
[CAROMAN] 1992-11/2
CD(所有はイタリア盤)は見つかりませんが、このmp3が演奏時間から言っても同じものと思われます。何も詳細記述がありませんが…
 タングルウッドでバーンスタインや小澤征爾に学んだハンガリー人指揮者のジェルジ・ジェリヴァーニ・ラートGyörgy Győriványi Ráthが、1980年創設のイタリアのユース・オーケストラ オルケストラ・ジョヴァニレ・イタリアーナを振ったマーラー5です。ラートはFormer Teachersには入っていませんね…
 あっさりとした葬送行進曲の第一楽章は第二主題もライト級の展開。第二楽章も軽い感じながらディナーミクをうまく使って適度な抑揚を付けていますね。
第三楽章スケルツォも軽快感が伝わり、そして適度な揺らぎと間もありなかなか聴かせます。演奏は若さを見せてしまいますが、この解釈は好みかもしれません。
アダージェットはやや重めの展開でもたれる感じです。最終楽章はリズミックに上げて行きますが、少々乱れ気味。でも後半に近づくにつれて気分の高揚は感じられます。最後の締まりが少々残念ですが。

・・・・・
ユースらしく強音パートでは元気いっぱいですが、やっぱり管楽器と打楽器が弱いですね。ユースだとPMFの最終日などの様に、コーダとフィニッシュは発散された元気さを期待しますね。



まだまだありますが、マーラー5番だけ聴くわけにも行かないのでのでまた次はしばらくしてからですね。コンサートだと次は来年2016年1月27日にダウスゴーNJPのマーラー第5番が注目ですね。^^v

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ラッヘンマンの Kontrakadenz/Klangschatten/Fassade を聴く

このBlogの現代音楽ではお馴染みの ヘルムート・ラッヘンマン(Helmut Friedrich Lachenmann, 1935/11/27/ - ) です。と言うか、言わずもがなのビッグネームではありますが。
1970年代初期の管弦楽曲集になります。生楽器の特殊技法をベースとした組み立ての完成期とでも言った時期で、音の密度は後期に比べると厚みが有りますね。サウンド全体としてはノイズ系で、一般的に難解の代表でしょう。将に現代音楽の"前衛の衰退"そのものの時代ですね。

KAIROSの この時期のデジパックも前衛?! CDの入れ方が変わった挿入式で、力技で出し入れするのですが不安です。確かにキズは付かないのですが…
HelmutLachenmann-KAIROS.jpg

Kontrakadenz(1970/71年)
 以前紹介したWergo盤と同じ録音になりますね。(このアルバムの方が古いのですが…)
コメントは同じです。楽器の疑似音ミュージック・コンクレートでもあります。
試しにYouTubeで聴いてみる?

Klangschatten(1972年)
 年代的にも同系等の楽曲になりますが、演奏時間は10分程度長く27:49です。間の取り方が明確になり、その分 パルス的な強弱の音を際立たせる様になっています。音数は減り、無音と単音パルスの空間音響です。中盤以降は、その中に連続的な音の繋がりを見せる様になり、また特殊技法一色の展開も現れます。無音の空間の中に散らばる音(ノイズ)の世界です。
コンサートで二階席の翼席にいたら、とても楽しそうです。
指揮はKontrakadenzと同じくギーレン(Michael Gielen)で、演奏はNDR-SOになります。

Fassade(1973年 ver.1987年)
 上記Klangschattenの音を単音からオケに移行した様な展開です。パルス的な音の表情が豊かになり空間音響的色合いが濃くなります。より今の時代の現代音楽に近づいた、今の先駆者に対して変な言い方ですが、感じになりますね。ノイズから騒音系に、と言った風です。
指揮は同じくギーレン(Michael Gielen)で、演奏は かのSWR-SO-Baden-Baden & Freiburg になります。

ラッヘンマンの年代変化の一端が垣間見れ、演奏も現代音楽を得意とする独オケの素晴さが楽しめますね。
こういう音を部屋に満たしてゆっくりするのは、本当に素晴らしいと思うのですが…ダメ…ですか?!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2015年4月18日 メッツマッハー / 新日本フィル の R.シュトラウス と ヴァレーズ at すみだトリフォニーホール ★★

久しぶりのインゴ・メッツマッハーと新日本フィルハーモニー。ヴァレーズ! そしてR.シュトラウスを観に、春の東京を錦糸町まで行って来ました。
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メッツマッハーも、今日が Conductor in Residence とし最後のタクトとなります。ラストは、得意とした曲だったのでしょう。CDでもこの二人の曲をカップリングして出ていますね。("アメリカ"と"英雄の生涯")
個人的にはヴァレーズのアメリカがメインですが、アルカナの日本初演というのも楽しみでした。
もちろん事前にヴァレーズの聴き比べはしておきました。

□ 交響詩『ティル=オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』 op.28 (Richard Strauss)
 ドン・キホーテ系?な、いかにも表題音楽らしく楽しい人気曲。
ソフトタッチで演奏しながら、ラストでは強音を響かせて見事でした。演奏に破綻もありません。
ただ、もうちょっとティルらしい楽しい表情が欲しかったでしょうか。

□ アメリカ (Edgard Varèse)
 個人的に今回のメインイメージ曲ですね。"一糸乱れず"と言った まとまりで、コントラスト良く大音響曲を演じきりましたね。
弦楽器と管楽器がそれぞれ旋律を奏でるパートがあるのですが、そこが全体に紛れてしまったのは少し残念。大音量のまとまりは見事なのですが、この曲は音量だけでは表せない爆裂感が欲しかったですね。
サイレンの使い方は大きめでした。初めの定拍パルスはハープが打つのですが、あのリズム感が好きですね。

□ アルカナ (Edgard Varèse)
 アメリカに比べると抑揚に欠けるのですが、ヴァレーズらしい爆裂曲。結果的には、言い方は適切ではないかもしれませんが、力強いフラットさ と言った様に感じてしまいました。
どうやらその理由は自分の中に心当たりがありますねぇ。

□ 交響詩『死と変容』 op.24 (Richard Strauss)
 旋律や流れは良いのですが、強音パートと弱音パートの入れ替わりで全体には平板に感じる この曲。そのままでした。実はこの楽曲自体があまり好きではない...んです ^^ゞ

今回は事前にこの四曲を聴き込みすぎたようです。
ヴァレーズは上記聴き比べとは別にブーレーズ旧録音で、シュトラウスはカラヤン新録音で通勤の行き帰り二週間ですから。
演奏に悪さはないにも関わらず、今ひとつしっくり来なかったのはこのせいかもしれません。

ラストタクトのメッツマッハーは相変わらずダンスしてました。
また、今日のオケ配置はコントラバス左翼、ホルン右翼でした。最近この配置が復活してますね。

最後はコンマス崔さんから花束贈呈がありました。また、大きな拍手を受けてメッツマッハーが団員に起立をそくしても 崔さんはメッツマッハー自身が拍手を受ける様にと、立つのを拒否していたのも微笑ましいラストシーンでした。

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何はともあれ、メッツマッハーのラストコンサートと、アルカナの本邦初演が聴けて良かったです。 ^ ^v

PS:メッツマッハーやカンブルランは現代音楽のオペラや最先端の前衛を指揮する事で知られていますが、国内ではそうも行かないのが現実でとても残念です。いつの日か、EUの様な演目が楽しめるのを期待して止みません

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

クラウス・ヒュープラー Klaus Karl Hübler の 5 Stücke für Maria を聴く

ダルムシュタットでもお馴染みのドイツ人現代音楽家 クラウス・ヒュプラー(Klaus Karl Hübler, 1956年 - ) はブライアン・ファーニホウに師事していますね。ポスト・ファーニホウの一人とも言われています。
と言う事は、新しい複雑性の現代音楽家であり、音の強弱や音色と言ったパラメーターの細分化で演奏者はその譜読みが極端に難しくなるのが特徴です。本人自らも"隠れた作曲のヴィルトゥオーソ a hidden compositional virtuosity" と言っていますね。
vnソロ曲でさえ四段となる事も有る様です。新しい複雑性は楽曲自体が超々絶技巧と言う訳ではなく、基本は譜面表現ですね。ファーニホウの攻撃性とは裏腹な、静的・少音の曲風である事がヒュプラーです。
ジャケットも"新しい複雑性"ですねw
クラウス ヒュプラー CD

病魔に冒されて1991-1995年は活動を休止したり、あまりの困難性に 日本でもお馴染みのシルヴァン・カンブルランが指揮を放棄したりと、話題は豊富ですね。

今更の紹介にはなりますが、現在楽曲入手が難しい音楽家の一人かもしれません。
本アルバムは題名の通り 2000年に癌で亡くなった妻Maria Hüblerに捧げられています。

Sonate für Violine (1978)
 バッハの無伴奏ヴァイオリン, パルティータのシャコンヌにインスパイアされて作られた6曲構成の楽曲です。David Alberman(vn)のソロで、52分(CD1枚)に及ぶ長い曲です。細かい反復を基本とした1.Preludio、先鋭的ながら調性感(Bach感?)の強い2.Fuga、ロングボウ中心で幽玄な3.Recitativo、フーガ的な音階変化と反復の4.La partenza、刺激的な即興性の小曲5.Il dolore、長い反復を挟みながら静冷で細く切れ上がるvnが美しい6. Fantasia。特にラストは秀逸です!
ヴィルトゥオーソ系のヴァイオリニストのコンサートは面白そうですね。機会があれば是非行ってみたい楽曲です。
Desunt / Pantagruelisch (für Alt, Violoncello und Klavier) (1999)
 声楽とチェロ、ピアノによる楽曲です。フランソワ・ラブレーの書いた『ガルガンチュワとパンタグリュエル』の話が出来ます。曲は静的で音数が少なく、声楽部も違和感が有りませんね。
□ Chansons sans paroles (für Klarinette in B, Violoncello und Klavier) (1978)
 クラリネットが主役のチェロとピアノ曲です。極端に音数は少なく静的、空間系でもありヴァンデルヴァイザーの気配も漂います。
試しにYouTubeで聴いてみる?

Hörsermon / Klitterung (für Sprecher, Violoncello und Klavier) (1998-99)
 声楽があって、再びラブレーRabelaisとフィッシャートFischartの話が出て来ます。話に近いシュプレッヒゲサングがメインでチェロとピアノが付きます。シェーンベルクの"月に憑かれた…"の様な狂気はありませんが、ヒュープラーらしい静的展開に潜む狂気を感じますね。
□ Lamento, Scherzo ed Arioso (für Viola) (1978)
 ヴィオラのソロ曲です。静的で細かい音の響きのLamento、ピチカートで跳ねる様なScherzo、スローで幽玄なArioso。ヒュプラーらしさが楽しめます。vaってチェロに近い音も出せて本当に良い楽器ですよね。

好きなアルバムの一枚です。おすすめ。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

内田光子のピアノで聴く 新ウィーン楽派 シェーンベルク、ヴェーベルン、ベルク

かつてお気に入りで良く聴いた内田光子pfによる新ウィーン楽派の名盤です。今更ですが、訳あって聴きなおしたので…

内田女史のシェーンベルクのピアノソロOp.11, 19は激情的ですね。その表情豊かな演奏はとても聴き易い解釈、悪い事と言っているわけではありません、に変換しています。でも、より素晴らしさはピアノ協奏曲 Op.42におけるブーレーズ/クリーブランド響との熱演だと思います。このセットのpfとオケの鬩ぎ合いはスリリングそのものです。(この曲以外はソロピアノです)
ヴェーベルンはより作曲技法的で、ともすると退屈なほどの点描的音列配置な訳ですが、ここでもそれを逆手にとってディナーミクで表情を作りますね。平凡な点描から強音展開する様な変化は聴いていて飽きません。これがヴェーベルンのピアノのための変奏曲 Op.27? という問題も残る気はしますが、楽曲として聴いたら楽しさは素晴らしいですね。
またベルクのピアノ・ソナタ Op.1は当然シェーンベルクよりいっそう情熱的になり、その中に散見出来る浪漫的旋律が浮き立ちますね。

内田女史が得意とするモーツァルト等、実はオールマイティなのですが、から考えれば当然の帰結かもしれません。ただ、これら新ウィーン楽派の楽曲がそれまでの機能和声からの脱却を図って作られた事を考えると、こういった解釈・演奏がどうかは意見が分かれて然るべきでしょう。
とは言え、名盤と言われるのがわかる一枚に違い有りません。

何か現代音楽をピアノ曲で聴いてみようと考えるのでしたら絶対のお薦め盤です。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

オペラ:ザルツブルグ音楽祭2014 ヴェルディ歌劇「トロヴァトーレ」をNHK BSプレミアムシアターで観る

昨年夏の ザルツブルグ音楽祭2014(Salzburger Festspiele)、ヴェルディ(Giuseppe Verdi)のイル・トロヴァトーレ(Il Trovatore)ですね。
ネトレプコとドミンゴが、あまり面白くないトロヴァトーレをどう見せてくれるのか? と言った感じでしょうか。
ザルツブルグ音楽祭2014 トロヴァトーレ

悪くはないのでしょうが、第四幕だけ良かったのではと言う感じですね。Anna NetrebkoのレオノーラとPlácido Domingo のルーナ伯爵の重唱シーンは今回の白眉ですね。老練なドミンゴと脂の乗り切った、文字通りw、ネトレプコは素晴らしかったですね。ちょっとテノールっぽいドミンゴがネトレプコに食われた感はありますが。^^;
そして第三幕ですが、Francesco Meli 演じるマンリーコのカバレッタ Di quella pira でのハイC…ではありましたが… 本当はここで圧倒して欲しかったです。悪くはなかったのですが。

ヴェルディらしくアリアの後は拍手喝采で間を取りますが、これが本国イタリアでしたら毎回万雷の拍手だったでしょうね。

ヘルマニスの演出は、15世紀の舞台ながら現代の美術館との時代交錯させた演出になっています。衣装が現代と15世紀に早変わりしたり、突飛ではありますがアヴァンギャルドではありませんね。今やこの程度は普通でしょう。古典的に時代考証を見据えた演出の方が違和感を感じるかもしれません。ただ今回の衣装は中途半端感が否めませんが。

と言う事で 良かったのですが、先にも書いた様にトロヴァトーレ自体があまり面白いと思えないので 何となくどこか懐疑的に見てしまいます。復讐のエンディングも尻切れとんぼですしねぇ。

今更わかりきった事とは言え、若かりし頃のプロポーションと美貌は過ぎ去りし…
体型と声量は然程関係ない事は明白ですねw

<出 演>
マンリーコ: フランチェスコ・メーリ
レオノーラ: アンナ・ネトレプコ
ルーナ伯爵: プラシド・ドミンゴ
アズチェーナ: マリー・ニコル・ルミュー

フェランド: リッカルド・ザネッラート
イネス: ディアナ・ハラー
ルイス: ジェラルド・シュナイダー

<演出・美術>アルヴィス・ヘルマニス
<衣 装>エヴァ・デッセカー

<合 唱>ウィーン国立歌劇場合唱団
<管弦楽>ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮>ダニエレ・ガッティ

2014年8月15日 ザルツブルグ祝祭大劇場(オーストリア)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ヴァレーズVarese を ブーレーズとシャイーで聴き比べ

今月18日はメッツマッハー / 新日フィルでヴァレーズの代表的な管弦楽二曲「アメリカAmeriques」「アルカナArcana」のコンサートが有りますね。アルカナが日本初演とは驚きましたが。
そこで手持ちのヴァレーズCD3枚、ピエール・ブーレーズのCBS時代とDG時代の二つの録音とリッカルド・シャイーで聴き比べて見ます。
(実はメッツマッハーのCDも発売されているのですが、未所有ですw )

フランス生まれでアメリカに帰化したエドガー・ヴァレーズ(Edgard Varèse, 1883/12/22 - 1965/11/6) はとても象徴的な現代音楽家ですね。今までも紹介していると思いますが、米現代音楽の礎となった音楽家です。ダルムシュタット夏季現代音楽講習会にももちろん参加していますね。
シェーンベルクの9歳後になりますが、音列配置は採用せずに打楽器を用いた強音音響系で戦後の楽曲では電子音も取り入れています。その楽風は今の時代21世紀の現代音楽にも通じるものを感じますね。

「アメリカ」「アルカナ」は楽曲的にはシャイーが聴き易いですが、頭の中ではCBS時代のブーレーズが鳴っていますw
以下、重複している楽曲には( )作曲年代を記入していません。

■ Boulez / N.Y.P, Ensemble Intercontemporain [CBS]
 ブーレーズはCBS時代と同じ曲をDG時代に再録音していますが、概ねCBS時代の方が先鋭的ですね。ヴァレーズでも同じ様な感じです。
1. Ionisation(1931年):強烈な13の打楽器による楽曲です。そしてサイレン、まさにヴァレーズの象徴です。
2. Ameriques(1920年):米国に渡っての初作にして代表作「アメリカ」、ストコフスキー/フィラデルフィア管により初演されています。ストラヴィンスキーっぽさを感じますが、空間系の音響は新しい時代を感じさせてくれます。強烈な打楽器とサイレンは、これぞヴァレーズの響き、迫力のサウンドです!
3. Density 21.5(1936年):白金フルートの為の楽曲で、題名は白金の密度になっています。ソロ曲で幻想的な小曲です。
4. Offrandes A) Chanson de La-haut, 5. Offrandes B) La Croix du Sud(1921年):ソプラノとオケ、そして室内楽のシャンソンです。一部で定拍を交えたメリハリの強い演奏と時に叫びに近いvoの組合せです。
6. Arcana(1927年):二曲目のアメリカと同く管(弦)楽で音響音楽ですね。ストラヴィンスキーの影響がまだ僅かに感じられますが、それ以上に響き渡る管楽器と打楽器群のコラボが特徴的です。音塊と洪水です!
7.8.9. Octandre(1924年):室内楽で、楽器間での協調性のある楽曲です。打楽器は入らず基本は即興性なのですが、やや点描的でもあり微妙な位置づけの気がするのですが…
10. Integrales(1928年):打楽器を交えた室内楽曲です。変奏のフーガ的な展開やソロ、一部で引用?も見せて色合い豊かな管楽器主体の展開です。響きを重視した空間系現代音楽で、とても楽しいですね。

個人的にはブーレーズのヴァレーズ、紛らわしいw、ならば より音響系の強いこちらCBS盤の方が好みかもしれません。




■ Boulez / Chicago SO [DG]
 上記と同じブーレーズですが、どちらが良いかと言われると困るのがこの選択ですね。楽曲としてはこちらのDG盤の方が熟れているとは思いますが。
1. Ameriques:CBS盤に比べて緩急が強めになり表情が豊かになります。この演奏の方がストラヴィンスキー色を避けている様に感じられまが、空間音響系よりも音(量)の展開重視に思います。サイレンの使い方も印象が違います。もちろん迫力の凄さに劣るものはありません。
初めの方はブーレーズ本人の楽曲Rituelにも似た感じが… 
2. Arcana:楽曲の完成度はより高くなっています。でも その分だけブーレーズの解釈が強くなって、ブーレーズの楽曲に近づいている感じもします。でも、この音量と出し入れは迫力満点ですね。
3. Déserts(1954年):テープを使った打楽器群と管楽器の楽曲で細かい音の表情が今までよりも浮き彫りになる楽曲です。繊細にして大胆。
4. Ionisation:より明瞭な色合いを感じる演奏です。どちらがヴァレーズらしいのかは別にして、この曲はDG盤の方が聴き易い気がしますね。




■ 「Complete Works」Rccardo Chailly / Royal Concertgebouw O, Asko Ensemble
 ヴァレーズ全曲盤の このアルバム。嬉しいのは二次大戦後のヴァレーズの電子音楽が多く聴ける事でしょうね。
ブーレーズよりも演奏全体に余剰の譜読みが無い分だけ聴き易く、インパクトが有ります。
[CD1] /Royal Concertgebouw O
1. Tuning Up(1947年):周文中Chou Wen-chungが1998年が未完補追した作品です。管弦楽とサイレンによる楽曲で、アメリカやアルカナ同様の強音系の音響音楽ですね。vn, tpが短い引用を使っています。演奏は見晴らしがよく、音の延びが感じられます。
2. Amériques:切れ味のある演奏になっています。入りの部分に聴こえる定拍もブーレーズ的な感じがありません。この楽曲のコンサートでの楽しみは打楽器と強音によるホールの響きですから、打楽器の音の入れ方が衝撃音的で強弱のはっきりとした展開は音響効果的にも効果的ですね。サイレンは楽器と呼応する様に鳴らされますね。ブーレーズより楽曲的、音に対して、な演奏です。
3. Poème Electronique(1958年):電子音とテープによる楽曲です。明確な電子音楽で、鐘の音とホワイトノイズの組合せに、和声とテープが織り込まれる空間音響音楽です。それまでの楽曲とは一線を画しますね。ヴァレーズらしさが消えてしまっている感を強く感じてしまうのは私だけ???
4. Arcana:アメリカ同様にブーレーズよりも楽曲としての音楽の流れを意識している感じです。インパクト感は強く重視されていますが、旋律風な色合いが強く 違和感の少ない演奏です。
5. Nocturnal(1961年):1968年に周文中が完結させたver.になります。男声合唱団にソプラノ、そして管弦楽の楽曲です。電子音楽に進んだヴァレーズが最後に残したのは、それまでの強弱の強い管弦楽に声楽を入れたそのものでした。
6. Un grand sommeil noir(1906年):米国帰化前の曲になります。シャイーの委託によりAntony Beaumontがオーケストレーションしたver.になります。やや東洋系和声を感じますね。ソプラノもオペラチックで機能和声の楽曲です。音の響きは特徴的でもあります。
[CD2] /Asko Ensemble
1. Un grand sommeil noir:同オリジナルver.です。ピアノとソプラノのデュオになります。平凡…
2.3. Offrandes:1921年という時代を感じる前衛音楽と言った風が、ブーレーズよりも強い感じです。
4. Hyperprism(1923年):管楽器と打楽器群の作品で、サイレンも入っていますが、アメリカほど面白くはないですね。
5.6.7. Octandre:1920年代の作品ですが、アメリカ以外はやや古さを感じます。この作品はブーレーズCBSの方が先鋭的で良いですね。
8. Intégrales:とは言え、これも1920年代の楽曲ですが 前衛が無調〜十二音技法の時代にあった時に作られたというのは 驚きですね。
9. Ecuatorial(1934年):オルガンが電子音の様に響きbassのヴォイスが入ります。voは前衛性が高くはなく、演奏とのコントラストが面白いです。ヴァレーズにオペラを作って欲しかったと思いますよね。
10. Ionisation:シャイーは淡々とした感じですね。
11. Density 21.5:ヴァレーズらしくない幻想さです。
12-18. Déserts:Columbia University Computer Music Center 提供のオリジナルテープを使用した演奏です。ノイズと電子音の混沌ですね。アメリカに居ながらポストセリエル時代の前衛らしい感じがします。
19. Dance for Burgess(1949年):2分弱の小曲で打楽器と管楽器の組合せですね。短すぎて特徴が不明ですが…



いずれヴァレーズを聴く時にはボリュームを上げて聴ける環境が必要です。この音楽を小さな音で聴いたら魅力は半減以下でしょうから。難しい時はヘッドフォンを使いましょうw

試しにYouTubeでアメリカAmeriquesを見てみる?
なんとMichael Gielen指揮、Baden-Baden SOによる演奏です!


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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