このブログでは、近代も含めて"
よくわかんないクラシック系の音楽"、
欧州前衛現代音楽をメインとしています。そして、どんな風に楽しんでいるかですね。
(まずは試しに月に憑かれたピエロ on YouTubeで見る)学者でも音楽家でもないので、ちゃんと理解したい方・していらっしゃる方は読んでもムダですねw
最先端の学問、現代音楽→現代音学、が素人にわかるわけがない!というご意見もあるようですから…
(2019-8 見直しあり)
① まずは前衛現代音楽の流れですね
【1】ドレミファの調性から脱出 シェーンベルクら新ウィーン楽派による無調(1910年頃)から始まり十二音技法、トータルセリエリズム(総音列主義)が構築されて一つの時代。
調性から逃れ無調で自由(無法地帯)になった楽譜、そこに技法の約束事で縛りをつけました。結局とても窮屈になるのですが。
(YouTubeで見る) ↓
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不協和音いっぱいばかりの、わかんない音楽ですね。
(機能和声でも平均律や純正律の様に込み入った話が出ますが…)【2】行き詰まりと新技法乱立 続くポストセリエル、行き詰まりを見せるセリ―理論・技法を飛び越えた世界の模索です。偶然性の音楽~米実験的音楽、ミュージック・コンクレート、密集音塊のトーンクラスター、音群作法、微分音*、特殊技法、引用、ワークス・イン・プログレス、等々の技法・理論が百花繚乱犇めき合う1960年代までの前衛の時代。
有名な J.ケージの4'33"
(YouTubeで見る) の様に何もやらない技法とか、雑音(ノイズ技法)とかも現れます。
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この辺から一気にわかんなくなりますね。
聴くよりも音楽や音の理論優先時代です。【3】前衛の停滞 そして1970年代以降(1968年以降とも言われます)が前衛の停滞に入ります。色々な技法・理論、そのごちゃ混ぜの多様性展開されるもブレークスルーするものはなく、停滞しっぱなし?で今まで続くわけですw
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何が新しいのか前衛なのか? それが問題。それこそ前衛?この流れを作ったとも言える「ダルムシュタット夏季現代音楽講習会」の歴代ピアノ曲で
一望出来るアルバムがあります ➡️
こちら*
微分音(microtone)は音程を細かく細分化した音で、数学の微分(differential)ではありませんね。そちらもありそうですけど。② 個人的時代背景と楽しみ
学生時代に現代音楽はピークを迎え、レコードでもコンサートでも花盛りでした。ジャズの雑誌にも時折実験的音楽が紹介されていました。当時はジャズだったので、たまに購入してはみんなで大笑いしていましたね。
音楽として聴いた事はなかったです。とは言え、ジャズでもオーネット・コールマンとかフリー系が好きでしたがw
音楽と前衛、その楽しみ方個人的には、北欧系の現代音楽の様に無調や十二音技法・等を生かして調性感を広げた主題・動機の存在する現代音楽は割と自然に入れる気がします。
調性感のある旋律が存在する事が "
音楽 " かな…と思っていますから。多様性、違う意味でも使われてしまいますが、の音楽になりますね。
前衛、例えばケージの米実験的音楽などは音楽を拒否して音を対象としていますから、個人的には"聴く"というのは難しくなりますね。そうなるとポストセリエル以降でもポイントは同じ、
その音を"理解する"とか"わかる"とかいった観念を捨てると楽しく味わえる?ようになります。どんな技法や理論なのかも味わう…「なるほどね!?」って感じで。
マーラーの交響曲第5番と同じように味わえって
いわれてもそりゃ無理!!っていうものです。(笑)
というわけで、
理論も知ろうとした方が楽しめるかもしれませんね。十二音技法がどういう仕組みだとか、スペクトルや倍音が何だとかは、いろいろ読めば頭に入るでしょう。楽器が弾ければ譜面から より実感がわきます。また特殊奏法はどの様なパターンかはYouTubeなどでもわかります。
現代音楽はどの様な技法や理論で構成されているかが軸足になるので、個人的にはそこが楽しみです。
③ 技法や理論
今の現代音楽の流れは、前衛の停滞以降になります。停滞以降、現代音楽はそれまでの反動で調性への回帰を目指す勢力(マニエリスム、新しい単純性、新ロマン主義、などと呼ばれています)が台頭し、それに反目するように前衛性は進化して
「エクスペリメンタリズム」の音楽『新しい複雑性』『ポスト構造主義』『スペクトル楽派』といった形態が出てきます。わかりやすい音楽 vs わかんない音楽です。
このブログでいうのは当然ながら後者になりますねw。共通しているのは、頭でっかち度が高かそうな事です。例えば次の様な流れがあります。もう過去の話かもしれませんが、とりあえず。
新しい複雑性(New Complexity) ポストセリエルの"新しい単純性"の音楽の正反対で、複雑な譜面を展開する現代音楽です。代表格が、ブライアン・ファーニホウですね。
(YouTubeで見る) もっとも複雑性は、機能和声時代からの超絶技巧と相通じるものがあると思いますね。演奏技巧の超絶化を目指せば、和声を崩していくことになるのは当時の曲でもわかります。読譜の複雑性は、説明とその楽譜を一部でも良いので見ないと意味不明ですね。(笑)
「新しい複雑性」はこの後もいろいろな意見があり、後述のラッヘンマンはファーニホウが限界で"音楽は死んだ"と言い、クラウス・フーバーは時代の要求で音楽の複雑性は自然だと言っています。
ポスト構造主義(Post-structuralism) 特殊技法をより発展・拡大させた技法ですね。代表する一人が、ヘルムート・ラッヘンマンになりますね。
(YouTubeで見る)フランス思想活動の総称によるこの言葉の音楽定義は、ポストモダンとの区別も含めて良くわかりません。ラッヘンマンの楽曲では特殊技法を駆使した音の組立になります。簡単に言うと楽器を本来の弾き方とは違う方法で弾く技法です。一般的に、この姿と音が現代音楽を象徴している一つのイメージでしょうか。
現在でも主流の流れの一つになりますね。
それにしても名前が厄介難解! 哲学的には現代はポスト構造主義だそうですが…
これらは、
ダルムシュタット夏季現代音楽講習会 (YouTubeで見る) をベースに出来上がってきました。前者をフライブルク楽派、後者をシュツットガルト楽派という事もあります。この流れが現在の欧現代音楽の元になっています。
ダルムシュタットの初期では、ブーレーズ、シュトックハウゼン、ノーノといった顔ぶれがポストセリエルを模索しており、現代音楽の方向性を決めてきた一つの担い手である事は今も同じですね。
今の欧州現代音楽を楽しむなら、
ドナウエッシンゲン音楽祭がいいですね。毎年アルバムが出ています。
米近現代音楽はまた違いますね。
スペクトル楽派(Spectral Music) ブーレーズの設立したイルカム(IRCAM:フランス国立音響音楽研究所)
(YouTubeで見る) を起点として、
音響のスペクトル解析で倍音構築する手法を元とする音楽です。今では現代音楽と電子音の関係性はその基本となり、IRCAM出身の音楽家が世界中の国で独自の展開していますね。
スペクトル楽派ではないエレクトロニクスのアプローチも当然あり、例えばクセナキスはUPICを開発してペンとタブレットでの作曲技法も実現しています。それらやライヴ・エレクトロニクスも含めて空間音響系の元であり、
現状最もベーシックな現代音楽の技法かもしれません。
ヴァンデルヴァイザー楽派(Wandelweiser)・他 音を聴く事に主眼を置いた即興性?に繋がる技法になります。もう音楽ではありません。単純微音化された音を感じるとでもいう様です。CDで聴くならば、そのボリュームをどうするかが問題になりますね。
(YouTubeで見る)『
音響詩(Sound Poetry)』などという意味のない声を唸るのも現代音楽に入るのなら、これまたますます"わかんない"音楽ですね。
また何にでも命名したがる人はいるわけで、今はスペクトル楽派を元に音の飽和(Saturation)と歪みにした音楽?を『
サチュラシオン楽派』と呼ぶ人も出てきています。
他方、エクスペリメンタリズムから距離をとった英現代音楽界には『
マンチェスター楽派』と呼ばれる技巧やポリテンポを展開しながらも、旋律・反復・調性感と言った排他的方向を重視した流れも存在しました。
いずれも古い区分ですが "よくわかんない"のがこれからも前衛現代音楽の流れである事に変わりなく、特徴的な曲でない限り聴いただけでどの理論・技法なのか簡単単純にわかるものではないと思います。十二音技法でさえ聴いただけでただの無調なのかの判断が出来る人は殆どいないでしょうね。今や古典の現代音楽クセナキスでさえ数学楽譜でクラスターでもあり、エレクトロニクス他も使った音楽です。
という事で百花繚乱の
"多様性"の現代音楽になったわけですね。
④ 欧州以外では
米前衛系現代音楽先駆者の一人、ニューヨーク育ちのチャールス・アイヴスはヨーロッパの前衛に先んじて無調やポリリズムの採用をしていますし、フェルドマンによる世界初の図形楽譜や、ミルトン・バビットによるトータル・セリエリズム構築と言った前衛の先進性があるにも関わらず、それら技法が米国ではなくヨーロッパで大きく展開されているのが不思議です。
その始りは東海岸からで、戦後移り住んだヴァレーズからバビットらの"音学"的構想「最先端の音楽は数学と同じく、その世界に関わる者にしか理解はできない」と言った風潮、一部ではコロンビア楽派と呼ばれたようです、が源の様です。今でも東部ではその様な主張を支持する傾向があるそうです。
その後同じ東海岸でもジョン・ケージら「ニューヨーク楽派」の出現で米現代音楽の大きなポイントを見せますね。
J.ケージ「偶然性の音楽」の強烈な影響力です。その影響は絶大で、欧州前衛の拠点ダルムシュタットでも成功を納め、それ機に前衛の広がりを見せる様になりました。
60年代以降の前衛の停滞に入るとアメリカらしいミニマルが認知され前衛の後退が見られたものの、20世紀後期にはそこからの発展系やヨーロッパの前衛系の各流れも普及して現在に至っていますね。
ポストミニマルで民族音楽やポップをベースにした音楽は今の主流の一つでしょうし、もはやクラシック範疇にはとどまらないClassical-Clossoverの存在も興味深いですね。
Bang On a Cans All-Stars, Eighth Blackbird, Paul Dresher Ensemble Electro-Acoustic Band, と言った米前衛系現代音楽らしい演奏集団の活躍もあって、とても楽しいですね。
◇他にも
欧州にあって独自の北欧現代音楽や、ロシア現代音楽、そして日本の現代音楽も面白いですよね。
⑤ そして現在は
インスタレーション音の世界から近代美術『
Installation Art』のに突入、 "よくわかんない" 音楽と "よくわかんない" 映像や空間構造へのコラボレーションの流れがどんどん進んでいます。究極の多様性?!
CDの様な音媒体では表現出来なくなって来て所謂(いわゆる)音楽という壁を超えて "ますますわかんない世界" の扉を開けようとしているのかもしれません。
いずれ新しい流れは留まりませんから、何が見えて来るのか楽しみですね。
◆そんな時代の流れと技法・理論の変遷をを頭に入れながら現代音楽に浸れば自分勝手に"ふ~ん"って思えるかも。
・現代音楽隆盛期のシュトックハウゼンらの年代は作風変化が明確に味わえます
・今の時代の音楽家は誰に師事したか等、その楽風・技法の推測が楽しいです
・そのうちに好きなパターンの現代音楽が見つかり、楽しみが増します
◆わからない・難しいってスルーするよりも、何か味わえればその分美味く得した気分でしょ。^^v
難しい事はわかりませんから、そんな味わい方ですね。
テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽