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『マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"』«web配信» ネーメ・ヤルヴィ指揮/エストニア国立交響楽団 2023年9月9日


ネーメ・ヤルヴィ | エストニア国立交響楽団
(Neeme Järvi, cond. | Estonian National Symphony Orchestra)
父ヤルヴィことネーメが名誉芸術監督を務めるエストニア国立響を振ったマーラー8、先週の土曜日のLIVEです。
ネーメのマーラーと言えば6番が個性溢れる演奏でしたが86歳(b. 1937)となった今、劇的なこの曲をどの様なアプローチでこなしたのか興味深いですね。エストニアの放送局klassikaraadioからの配信です。

ソリスト8人は以下になります。
Laura Aikin (sop), Forooz Razavi (sop), Elina Nechayeva (sop), Marie Seidler (mez), Kai Rüütel-Pajula (mez), Alec Carlson (ten), Mathias Hausmann (bari), Ain Anger (bas)


▶️ klassikaraadio (配信期間は短いと思われます)





«web配信»
Mahler Symphony No. 8
"Symphony of a Thousand"


ENSO2023-NJmahler8.jpg
[Live at Estonia Concert Hall, 9 Sep 2023]


第一部 『来たれ、創造主たる精霊よ』
提示部:第一部タイトルの第一主題は微妙なアゴーギクで重厚さを、第二主題のソプラノは落ち着きを取り戻して、各独唱の多重唱を絡ませます。
展開部:入りの管弦楽奏を懐疑的にテンポ変化を強調、再びの多重唱は重厚にとコントラストを効かせます。複雑な対位法の第一主題変奏は混沌的に激しく、出し入れとメリハリで怒涛の第一部のメインです。
コーダは少年合唱団で始まる"Gloria…"がソリストや合唱と絡みながら激しさを増し、ラストは渦巻く様に激しくまとめます。これぞパーヴォ!!ですね。


第二部 『"ファウスト"から最終場』
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
ピチカートが印象的な主題を約束通りに神秘的に作りますが、このパートとしてはかなり速めに感じます。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
全体に速いです。それでも「法悦の神父」のバリトンは愛の核心を力感を上手くまとめ、「瞑想の神父」のバスもオケと共に力強さを増して山峡の姿を歌ってコントラスト付けです。ただ、二人の声質が似通っているのが気になりました。

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
「天使の合唱」はリズミカルにファウストの魂を歌い、「祝福された少年たち」「若い天使たち」もそれに続きます。
「成熟した天使たち」のvnソロとアルトはスローに叙情を強め、「未熟な天使たち」「祝福された少年たち」でリズムを取り戻して流れに変化を付けていました。
基本はここでもテンポ速めの設定です。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールはかなり力んだ印象で登場、本来はもっとキラキラとしたトーンでマリアを讃えて欲しいですね。
「かつてのグレートヒェンの告白」は伸びやか繊細なsop、「サマリアの女」は落ち着いたaltで、「エジプトのマリア」は鋭いalt、そして"贖罪の女三人の合唱"は対位的な重なりを生かします。

「懺悔する女 (グレートヒェン)」は繊細なsopでマリアにファウストの新しい生命を伝えます。オケもキラキラ感を作っていますね。
短いながらのこの曲の中心パート「栄光の聖母」は優しさのsopを聴かせてくれますが、やや細すぎかも。
「マリア崇拝の博士」は落ち着いたテノールでそれを受けます。もっと感激的に!! っていう感じでしょうかw

【5. コーダ:神秘の合唱】
「神秘の合唱」は静に緩やかに、ソリストが入るとゆっくりとテンションを上げて"母性"なるものへの賛歌を歌い、ラストのみ大きく広げて怒涛のオケで締め括ります。かなりタメを作っているのがネーメらしさでしょう。
演奏後は静寂、そして拍手大喝采です。


劇的ですがやや俗っぽいマーラー8でしょうか。元々が盛り上がる構成のところ、アゴーギクとディナーミクを上書きする様に奮いますから。

逆にラストは抑えに抑えての一発勝負で面白かったです。ソリスト陣がもう少し聴かせてくれたらまた違ったかもしれません。
とは言え賛否の分かれそうなこれがネーメ・ヤルヴィのスタイルで、それが顕在なのが嬉しいですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第9番』«ネット配信» サイモン・ラトル指揮 ロンドン交響楽団 2023年8月27日 プロムス56


London Symphony Orchestra
Simon Rattle
(cond.)
BBCプロムス2023から五日前(日曜)のS.ラトル/LSOのマーラー9 です。ラトルはLSO音楽監督最後のシーズンですね。もちろんBBCの配信になります。


▶️ BBC RADIO 3 (配信期間は一ヶ月です)





«ネット配信»
Mahler Symphony No. 9


Proms2023-RattleLSO-Mahler9.jpg
[Live at Royal Albert Hall, 27 Aug 2023]


第一楽章
序奏から第一主題は緩徐を生かした穏やかさ、第二主題でも変化は控え目に、反復も広がり重視で抑えて第三主題も派手ですがコントロールされます。展開部前半の"暗-明-烈"の流れも抑えの効かせたメリハリです。もちろん鳴らしては来るのですが。
厳しさを見せつつもコントロールされた第一楽章です。

第二楽章
主部主題は音の刻みを強く ちょっと角張ってややスローに、逆に第一トリオはジェントルな響きでいかにもレントラー風です。第二トリオは緩やかにこの曲のベースと言えるターン音型を奏でます。緩いアゴーギクも効果的です。微妙な一手間が造るラトルらしさでしょう。

第三楽章
主部主題はクリーンな厳しさ、第一トリオは軽妙さで繋ぎます。中間部(第二トリオ)はターン音型をやや速めに静に鳴らし、緩やかなアゴーギクで気持ちを添えて来ます。ラストはpiù strettoですがしっかりコントロール。

第四楽章
主部主題は美しい弦楽奏に広げ、fg動機後もあまり音厚を上げず感情を抑え気味。第一エピソードは緩やかに上げますがやや淡白に感じます。ここではもう少しスローのアゴーギクが欲しかったかも。コーダのラストは微妙なアゴーギクを入れています。
最終楽章としてはやや速めのテンポになっているのが残念かもしれません。


ラトルの手の内にあるマーラー9です。王道を基本に巧妙なアゴーギクとリズムでの色合い付けされています。気になるのは感情移入の薄さでしょうか。
激しさや哀愁も全てしっかりコントロールされてこの曲らしい感情の揺さぶりはやや弱いかもしれません。全体(特に最終楽章)が速めと言う事もあるでしょう。

第一楽章の後の全体チューニングはやめて欲しいですねェ。せっかく鎮めて終わった一楽章が台無しです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第5番』«ネット配信» ハンヌ・リントゥ指揮 フィンランド国立歌劇場管 2023年8月22日


Orchestra of the Finnish National Opera
Hannu Lintu
(cond.)
フィンランド国立歌劇場管弦楽団60周年記念コンサートで、日本でもお馴染みのフィンランド人指揮者ハンヌ・リントゥが振ったマーラー5です。個人的にはリントゥのマーラーは印象がありませんが。

昨日インプレのマルッキ/FRSOに続いてフィンランドの指揮者/オケ、そして先週のLIVEです。配信も同じフィンランド国営放送(yle)からになります。


▶️ Yle Areena (配信は2023-11/26までの様です)





«ネット配信»
Mahler Symphony No. 5

OrchestraOfTheFinnishNationalOpera60years-mahler5.jpg
[Live at Helsinki Music Centre, 22 Aug 2023]


第一部
葬送行進曲は重厚さは避けたスロー鬱、第一トリオでは約束通りのテンポアップ、第二トリオも教科書的な穏やかな鬱です。
第二楽章第一主題と第二主題は一楽章のパロディパターンで予想通り。展開部の"烈-暗-明"のコントラストも'ありきたり'な感じです。行進曲は不自然さも。
やや平凡に感じる第一部かも。

第二部
スケルツォ主題は何やらhrが怪しくまとまりの弱さ、レントラー主題もスローの優美さが生かせません。第三主題主部のオブリガート・ホルンは艶やかさに欠け、変奏パートは変化が弱く弦もフラットです。短い展開部は何とか明るく、再現部も各主題を力感で乗り切り、コーダはパワーで押し切ります。
一体感に欠けるスケルツォ楽章になってしまいました。

第三部
弦楽奏でまとまりやすい第四楽章ですが主部はモヤモヤと、中間部の静美さもただ細い音色にした様な、何処か落ち着かないアダージェットです。
第五楽章第一・二主題は何となくギクシャク、コデッタは優美さを何とか。展開部は始めから荒れた力感で流れに任せて、再現部後半からコーダもグワッと一気に走ります。よくわからないまま大喝采で終演です!!


残念ながら締まりに欠けるマーラー5になってしまいました。指揮者やオケの個性を聴かせる以前、曲をまとめるのが手一杯といった印象です。最後も暴れて終われば良いと言う事もない様な…

フラットで切れ味や一体感が弱いのはオケの技量に一因がありそうで、リントゥの指揮台を踏む靴音が虚しさを響かせます。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第9番』«ネット配信» スザンナ・マルッキ指揮 フィンランド放送交響楽団 2023年8月24日


Finnish Radio Symphony Orchestra
Susanna Mälkki
(cond.)
現代音楽を得意として、アンサンブル・アンテルコンタンポランで指揮者デビューしたフィンランドの女性指揮者マルッキ。現在はヘルシンキ・フィルの主席指揮者(2024からは名誉主席指揮者)を務めます。
もちろん好きな指揮者の一人で、LAフィルとのマーラー5(2019) は名演でした。

今回は先週FRSOに客演したマーラー9で、フィンランド国営放送(yle)からの映像付き配信です。


▶️ Yleisradio (配信期間は短いと思われます)





«ネット配信»
Mahler Symphony No. 9


RadionSinfoniaorkesterinKonsertti-Mahler9-2023.jpg
[Live at Helsinki Music Centre, 24 Aug 2023]


第一楽章
第一主題はスロー静で緩やかに、第二主題でも緊張感は抑えて変化は少なめです。反復から厚く第三主題で始めのピークを鳴らします。展開部前半の鬱は鎮めてシュトラウス引用でも明るさは抑えめに、そして第三主題は華々しく。見事なコントラストで、後半でもこの対比を軸にしています。
静と鬱の美しさを軸にピークとのコントラストを付けた堂々王道の第一楽章でしょう。

第二楽章
レントラー主題は木管の軽妙さに弦の力感のコントラストを明瞭に、第一トリオは切れ味を聴かせて、第二トリオはもちろん穏やかさです。回帰の主題ではテンポアップと狂乱をキッチリ魅せて来ます。
シャキッとした締まりある流れのレントラー楽章です。

第三楽章
主部主題はアレグロらしい力強さでテンポを上げ、第一トリオはテンポをキープしつつ少し軽妙化して進みます。第二トリオは穏やかさにチェンジ、tpのターン音型は最終楽章ラストの雰囲気を構築します。ラストは激走のストレットです!!
ハイテンポのアレグロとターン音型の静美のコントラストの第三楽章です。

第四楽章
主部主題は穏やかスローに哀しみの美しさを広げ、fg動機の後は音厚を程良く上げています。無理やりさが無いのが良いですね。
第一エピソードは静鬱で鎮めて緩やかに、ゆっくりと感情を深めてピークは哀しみが溢れます。その後の静音ターン音型も心に響きます。感情溢れる素晴らしい第一エピソードになりました
第二エピソードは静の流れをそのままキープ、ここでもピークは感情が揺さぶれる音厚を効かせます。コーダは約束通り浮遊感のターン音型を静に鳴らして消え入ります。
近年流行りのラストの照明ダウンや、静寂の余韻を長々と引きずる事はしませんでしたね。


王道的で見晴らしの良いマーラー9です。主題や動機、そして楽章事の性格付けでメリハリをつけた結果でしょう。その全ては王道解釈であり、奇を衒った変則性はありません。

FRSOもマルッキの意図を表現して聴き応えある演奏になっています。特に最終楽章の第一エピソードは見事です👏
マルッキも見られますから、配信中に鑑賞される事をオススメします。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第6番 "悲劇的"』 «ネット配信» ケント・ナガノ指揮/ベルリン・ドイツ交響楽団 2023年6月23日


Deutsches Symphonie Orchester Berlin
Kent Nagano (cond.)
桂冠指揮者を務めるケント・ナガノさんとDSOのマーラー6です。ケント・ナガノさんのマーラーは印象が薄いのですが、落ち着いた流れを作ってくれそうですね。
ドイツの全国放送局 Deutschlandradio Kultur からの配信です。



▶️ Deutschlandradio Kultur (公開期間は短いと思われますのでお早めに)






«ネット配信»
Mahler Symphony No. 6
"Tragic"


DSO-KentNagano-Mahler6.jpg
[Live at Philharmonie Berlin, 23 Jun 2023]


【第一楽章】
第一主題は落ち着いた勇壮さの行進曲に、パッセージで緊張感を込めて鎮め、アルマの主題は緩やか豪奢に奏でます。王道的ですがややコントラスト薄めの提示部です。
展開部の第一主題は再現部のようなパターン、第二主題は約束通りの長閑な流れに作られますが まとまりに欠けるかも。後半も勇壮さに一体感が欲しいですね。再現部は第一主題と第二主題でコントラストを付け、コーダの葬送は少し速めで鬱に鎮めず一気にテンポアップでまとめます。
約束通りですが流れに任せた感の第一楽章になりました。


【第二楽章】
アンダンテですね。主部主題は緩やかで憂いを感じる流れをスローで作り、第一トリオもその流れに鬱な憂いを強調して来ます。演奏に一体感が弱い印象が残ります。ピークでは哀しみを広げ、中間部(第二トリオ)は穏やかな明るさを広げるのですがコントラストが薄いです。
強弱の音もフラットで音のバランスが気になるのは録音の問題でしょうか?


【第三楽章】
従ってスケルツォです。主部主題は勇壮さをしっかりと鳴らし、トリオはスローで微妙にアゴーギクを振ってコントラストを付けています。木管動機もテンポ変化を付けて流れを作り、回帰パートでは色濃くアゴーギクを使って一体感も整いました。ここでやっと表情とまとまりある演奏が登場ですね。


【第四楽章】
この楽章は三つの行進曲をキーにインプレします。マーラーと言えば行進曲ですから。

①提示部:序奏のアレグロ・エネルジコから第一主題の行進曲へは勇壮に。もちろん突撃性は抑えつつです。
②展開部:第一主題からの行進曲はスローの溜め作ってから明るさを打ち出して進みます。力感や重厚さは避けています。
③再現部:聴かせ処の第一主題からの騎行では力感よりも切れ味鋭く突き進みます。

全体としては興奮は避けてまとまりの良さ勝負の最終楽章でしょう。長い静寂の後にアプローズでした。


よそよそしい前半と計算された後半のマーラー6です。前半はディナーミクもアゴーギクもフラットですから感情表現が伝わりません。一転 後半は興奮を避けつつもアゴーギクとディナーミクでフィットさせたマーラー6になっていました。

リハは後半だけ?の印象ですねw 前半は録音にも問題があったかもしれません。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"』 «web配信» インゴ・メッツマッハー指揮/ハノーファー北ドイツ放送フィル 2023年5月21日


Ingo Metzmacher | NDR Radiophilharmonie
独ハノーファー生まれのメッツマッハーが同地に拠点を置くハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー8です。
メッツマッハーは日本ではお馴染みですし、オケは大植英次さんが主席指揮者を務めた時代にマーラーを取り上げていました。(主席指揮者最後の2009年の来日公演のマーラー9はCD化されましたね)

8人のソリスト陣は、Anna Gabler (sop), Manuela Uhl (sop), Tuuli Takala (sop), Anke Vondung (mez), Christina Bock (mez), Michael Schade (ten), Christoph Pohl (bar), David Steffens (bas) です。
そして合唱団も8つ(Bachchchor Hannover, Norddeutscher Figuralchor, Capella St. Crucis Hannover, Collegium Vocale Hannover, Johannes-Brahms-Chor Hannover, Mädchenchor Hannover, Junges Vokalensemble Hannover, Knabenchor Hannover)大編成になっています。



▶️ NDR-Radio & TV (公開期間は短いと思われますのでお早めに)






«web配信»
Mahler Symphony No. 8
"Symphony of a Thousand"


Metzmacher-NDR-Mahler8-2023.jpg
[Live at Kuppelsaal in Hannover, 21 May 2023]


第一部 『来たれ、創造主たる精霊よ』
提示部:タイトルの第一主題はオケに押され気味でやや雑然と、第二主題のソプラノも各独唱の重唱も少し録音バランスが悪いのが気になります。
展開部:第一主題変奏の合唱は激しくパワープレイで、その後も混沌とした合唱とソリストが叫びます。対位法やポリフォニーの構成感を強くしながらピークは怒涛です。
コーダは少年合唱団で始まる"Gloria…"にmezが絡むとソリストと合唱が大きく広げて混沌として進み、フィニッシュはキレキレです。
カオスを強調した荒っぽい迫力の第一部です。



第二部 『"ファウスト"から最終場』
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
5度下降ピチカートの神秘的な主題をここでも不安定に表現する珍しいパターンですね。どこか落ち着きませんがw

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
「合唱とこだま」は木管に隠れる様に静に、「法悦の神父」のバリトンは浮かび上がる様な明確な表現で愛の核心を歌い、「瞑想の神父」はバスで少しトーンを鎮めますが切れ味で神に願いを告げます。バリトン/バス共に切れ味勝負ですね。

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
「天使の合唱」「祝福された少年たち」「若い天使たち」は"舞いながら"と言った表現をオケと合わせて軽妙に作り上げます。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールは「祝福された少年たち」の上にハイトーンに現れますが、突飛感が薄めです。ここは一つの聴かせ処なのでもっと弾け跳ねてマリアを賞賛して欲しい感じです。
「かつてのグレートヒェンの告白」は澄んだソプラノで天空の神に祈り、「罪深き女」はのびやかなソプラノでそれに続きます。
「サマリアの女」のアルトは落ち着いて願いを込め、「エジプトのマリア」のアルトも伸びやかさで対比を作りますね。同じ構成感があります。
"贖罪の女三人の合唱" は3人が小刻みなリズムに乗ってポリフォニカルに絡みますが、切れ味はあっても落ち着きを払った良い流れですね。
「懺悔する女 (グレートヒェン)」はそのリズムに乗ってマリアにすがります。グレートヒェンは重要パートで繊細感が表現されて良いですね。
隠れ主役「栄光の聖母」は極短いのですが神秘的に澄んだ表現でピッタリです。多分二階席とか三階席にいて天上を感じさせるのも約束通りでしょう。
「マリア崇拝の博士」は喜びとマリアへの感謝を興奮を避けて落ち着いた表現です。

【5. コーダ:神秘の合唱】
「神秘の合唱」は厳かに入って"永遠の母性"の賞賛を静かに広げ、ソリスト陣が入ると山場へ向かい大団円は重量級の重厚さで締め括ります。フィニッシュが少し控えめだったかも。



多様表現でやや取り留めないマーラー8に感じました。第一部の荒っぽさは好きなのですがまとまりに欠け、第二部序奏の珍しい不安定感表現もあります。ラストもせっかくの盛り上がりをスルッと締めてしまう感じです。もう少し全体の一体感が伝わると嬉しかったかもしれません。

とはいえ8番や2番は絶対的に盛り上がるわけで、楽しく聴かせてもらえましたね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第2番 "復活"』 «web配信» ラハフ・シャニ指揮/ロッテルダム・フィルハーモニー管 2023年5月14日の素晴らしさ


ラハフ・シャニ | ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
(Lahav Shani | Rotterdam Philharmonic Orchestra)
今注目のイスラエル人の若手指揮者シャニ(b. 1989)が首席指揮者を務めるロッテルダム・フィルとのマーラー2です。
2018年29歳で同オケの首席指揮者に就任、2020年からはイスラエル・フィルの音楽監督も務めます。

今回は歌姫二人も豪華、ソプラノがチェン・レイス(Chen Reiss)でアルトはアンナ・ラーション(Anna Larsson)ですね。オランダの放送局"NPO Radio 4"からの配信です。


▶️ NPO Radio 4 (公開期間は短いと思われますのでお早めに)





«web配信»
Mahler Symphony No. 2
"Resurrection"


RotterdamPhil-Sahni-Mahler2-2023May.jpg
[Live at De Doelen, Rotterdam, 14 May 2023]


第一楽章
提示部第一主題は低く重く入り葬送行進曲はその上に乗り重厚です。第二主題は低弦に被る様にvnの哀愁を美しく、コデッタも引き締まった流れです。
展開部前半は第二主題の美しさとコデッタの迫力を明確にコントラスト付け。後半は第一主題を緊迫感ある鬱に作り、ここでもコラールの勇壮さと対比をさせる上手さですね。
コーダは葬送を暗鬱に鎮めて緩やかに緊迫度を上げ、全てを払拭するかの様に一気に崩落させます。
大きなアゴーギクとディナーミクで作るコントラスト/緊迫感/迫力が揃った見事な第一楽章になりました。


第二楽章
主要主題は僅かに揺さぶるメヌエットで軽妙ではなく重心は低め、トリオでも緊張感が感じられます。回帰では一層色合いを濃くして来ますね。最後のピチカートの主部回帰では見事な表現力を魅せます。重厚さで聴き応えあるアンダンテ・モデラートです。

第三楽章
主部からトリオまでリズム感を生かした『子供の不思議な角笛』で色彩感と表情がありますね。コーダは大きく広げて激しく鳴らし、ここでもコントラストの良さが鮮明です。

第四楽章
主部アルト「原光」は流石のラーションで落ち着き重心を下げて人間の苦悩を歌います。ややバイブレーションが強めですが素晴らしく、ぜひ歌詞を見ながら聴きたいですね。


第五楽章
提示部第一主題は当然のパワープレイですが炸裂はせず、hrの動機も落ち着いています。第二主題の"復活の動機"を暗鬱に冷静に鳴らし、そこからの動機群では緊張感を高めますが抑えて後半への流れへ集中させています。
展開部のここからが聴き処。コラールを大きく広げて、"死者の行進"は鬱から緊迫と勇壮へ持ち上げます。まさにマーラーでお見事!! (行進曲はマーラーの真髄の一端ですね)
再現部前半のバンダを生かした管弦楽をメリハリ強く仕上げると、合唱が静に厳かに現れ浮かび上がる様にソプラノが登場。約束通りですが完成度が高く、ちょっとグッと来ます
気持ちの入ったアルトが低く切に "O glaube, Mein Herz" と信じる事を歌上げ、繊細なソプラノにバトンタッチ。男声合唱は強弱コントラストを強く、sop/alto重唱はシャープに対峙して"光へ向かおう"と歌います。合唱が入るとそこからは "生きる為に死ぬのだ" と一気にクロプシュトック"Auferstehung"の山場を盛大に作り上げます。エンディングはしっかりとコントロールされて上手いですね。
一呼吸の静寂の後大アプローズ!! 素晴らしい👏👏


ズバリ高完成度で聴き応えあるマーラー2です。頭から尻尾まで何処を取っても緩みない緊張感と低重心で通されます。大きく構えたアゴーギクとディナーミクがそれを構成していますね。
LIVEとは思えないハイレベルな演奏も素晴らしく、女性陣も見事期待に答えています。

録音も素晴らしく見晴らしの良さをカヴァーしていますね。近年聴いた中ではピカイチ! 一聴の価値ある"復活"です。
この上にいるとすれば名盤と言われるバーンスタインとテンシュテットになるでしょう。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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