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アンナ・ネトレプコ『闇に抱かれ, Amata dalle tenebre』微妙なイゾルデ



闇に抱かれ, Amata dalle tenebre
(アンナ・ネトレプコ Anna Netrebko, b.1971: sop)
今年50歳を向えた現在最高のディーヴァの一人アンナ・ネトレプコ。個人的には30代の頃の繊細なsopが意外に好きですが。

5年ぶりのリリースとは驚きで、もっと頻繁に出ていたかと思いましたがやっぱり聴いてみたくなりますね。
演奏はリッカルド・シャイー指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団、曲目は以下の通りです。

1. R.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》「すべてのものが清らかである国がある」
2. ヴェルディ《アイーダ》「勝ちて帰れ!⋯神々よ、憐れみたまえ」
3. ヴェルディ《ドン・カルロ》「世のむなしさを知り給うたあなた」
4. ワーグナー《タンホイザー》「貴き殿堂よ」
5. チレア《アドリアーナ・ルクヴルール》「哀れな花よ」
6. チャイコフスキー《スペードの女王》「もうかれこれ真夜中⋯ああ、心配で疲れ切ってしまった」
7. プッチーニ《蝶々夫人》「ある日、わたしたちは見ることになるのよ」
8. ワーグナー《ローエングリン》「ひとりさびしく悲しみの日々を送り」
9. プッチーニ《マノン・レスコー》「独りぼっちで、破滅して、見捨てられて」
10. パーセル《ディドとエアネス》「ベリンダ、そなたの手を⋯土の中に横たえられし時」(ディドの嘆き)
11. ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》「穏やかに、静かに彼が微笑み」(イゾルデの愛の死)







まずは入りの1. アリアドネは落ち着きを払ってmez風に、そしてヴィブラートを効かせてハイトーンで色付けします。2.のアイーダでは勇壮そのもので今のドラマティコの実力を見せつける様に、3.のエリザベッタも堂々朗々で表現力も濃いです。ヴェルディの重厚さがフィットしていますね。

4.のエリーザベトは伸びやかなsopを利かせ、5.ではアドリアーナを繊細なハイトーンで歌い上げて、6.のリーザはチャイコらしい後期交響曲風の音に乗って鬱美と、様々な表現力を披露して来ます。伸びやかなsopで表現力も十分な7.の蝶々夫人は今回の聴き処でしょう。

8.のエルザは明るく力強くて、もう少し鬱に歌っても良かったかもしれません。9.ではオケと共に哀愁を湛えた音楽に浸りますがネトレプコのマノンですから力感も仕込みます。一転10.ディドは哀愁を切々と歌います。この二曲のコントラストがいいですね。

ラスト11.はオケが前奏曲をかなり濃厚に奏でているのが印象的と言うか、何か違う様な。イゾルデも力強いsopで歌い上げて、演奏も歌も素晴らしいのですが何処か違和感が残ります。




その "イゾルデの愛の死" の映像付きですね
DGなので音は本CDと同じだと思います



どの曲でも同様な完成度があり少々お腹いっぱい感もありますが、ネトレプコらしいsopと表現が楽しめる一枚になっていますね。

良く知られた楽曲が並び、オケも前奏曲等のパートで濃い表現を見せてネトレプコのsopとフィットしていました。個人的には力の抜けた曲はそれなりにバランス良く聴きたかった感じがしますね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





クリスタ・ルートヴィヒ:マーラー歌曲集『亡き児をしのぶ歌、リュッケルトによる5つの歌曲』の名盤



亡き児をしのぶ歌・リュッケルトによる5つの歌
(グスタフ・マーラー, 1860-1911)

クリスタ・ルートヴィヒ(Christa Ludwig, mez), カラヤンBPO
ここへ来て三人(ハルテロス | ガランチャ | 藤村実穂子)の "リュッケルト…" を聴きましたが、その度に本ルートヴィヒ/カラヤン盤の素晴らしさが思い出されました。

この古い録音('74)をアップするのはやめておこうと決めていたのですがカップリングの "亡き児…" も素晴らしいので、やっぱりインプレしておきましょう。

■"リュッケルト…"の最終完成5曲目*のオーケストレーションはマーラーではなく、■曲順は自由。■二曲共にTEXTはフリードリヒ・リュッケルトで、■作られたのは交響曲で言うと第5番と第6番の時代。です。






(右は交響曲第6番"悲劇的"とのカップリング盤です)


1. 亡き児をしのぶ歌, Kindertotenlieder (1904)
"1. Nun will die Sonn' so hell aufgeh'n (いま太陽は明るく昇る) - 2. Nun seh' ich wohl (いま私には分かるのだ) - 3. Wenn dein Mütterlein (おまえのお母さんが) - 4. Oft denk' ich (よく私は考える) - 5. In diesem Wetter (こんなひどい嵐の日には)"

1.はそれでも日が昇る無情と照らす光とのコントラストを明瞭に歌い、オケも抑えた音色で絡みます。ルートヴィヒはアルト風に感じますね。この曲の核心2.は湛える哀愁を静かに流れるが如く深く。時に溢れる悲しみを歌います。

3.では対位的なオケとアルトの立ち位置を明確に、でも寄り添う様に両者の関係を上手く構成させて聴かせています。カラヤンのタクトが生きている事が伝わりますね。

気分をチェンジする4.は緩いスケルツォ風に陰を付ける様に美しく、5.では "In diesem …" を繰り返しながら激しいアレグロ風に過去の不安を表現。後半を緩やかな心地に鎮めてラストの穏やかさに繋げています。

アルトの表情変化と常に寄り添うオケとの見事なバランスの"亡き児…"です



2. リュッケルトによる5つの歌, Rückert-Lieder (1903)
曲の並びは長いメインの二曲を1. と 5.に配していますね。
"1. Ich bin der Welt abhanden gekommen (私はこの世に捨てられて) - 2. *Liebst du um Schönheit (美しさゆえに愛するのなら) - 3. Blicke mir nicht in die Lieder (私の歌を覗き見しないで) - 4. Ich atmet' einen linden Duft (私は仄かな香りを吸い込んだ) - 5. Um Mitternacht (真夜中に)"

抑えの効いた穏やかで清廉なmezとオケの素晴らしさ、1.だけでこの曲の名盤と言っても良いかもしれません。2.もその流れを広げる様な緩やかなディナーミクの心地良さですね。歌詞の内容を緩く表現しています。

3.はマーラーらしい気配を上手くスケルツォ風に作り上げ、4.では菩提樹の芳香に酔う様な浮遊感をオケが作っています。

ラスト5.は唯一主部動機が明確ですが、それを生かした明瞭な流れを作ります。 "Um Mitternacht" を繰り返し真夜中の不安を朗々と歌うルートヴィヒのmez。それにピッタリ寄り添うカラヤンBPO。ラストはこのパートらしいコラールを大きく作って締めくくります

"1.は優しく、5.は締まり良く"。この曲のメイン二曲を見事に作り上げました



メゾソプラノとオケのフィット完成形の二歌曲ですね。スローと程良いディナーミクで表現するmez。抑えて寄り添うカラヤンBPO。三者が共有するストーリーにブレはありません。

この曲を聴く嬉しさがあってまさに名盤!
カラヤンの考えが見事に結実していますね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





藤村実穂子さんで聴く"ヴェーゼンドンク"と"リュッケルト"『ドイツ歌曲集』



ドイツ歌曲集
藤村実穂子 (Mihoko Fujimura, mez, b. 1966)
前回エリーナ・ガランチャの"ヴェーゼンドンク"と"リュッケルト"をインプレしたので、今更になってしまいますが藤村実穂子さんの同曲録音も残しておこうかと。マイナーver.のピアノ伴奏版(ロジャー・ヴィニョーレス: pf)になりますね。

藤村さんと言えばその表現力の素晴らしさ、そしてワーグナーでありバイロイトであり指輪でしょう。

でも個人的には藤村さんならではの「グレの歌」"山鳩"が好きですね。ヤンソンスとの録音ももちろんですが、2019年の大野和士/都響公演でも素晴らしかったです。

なお、本CDには他にシューベルトやR.シュトラウスもカップリングされていますが、インプレするのはメインとなる上記の2曲です。








ヴェーゼンドンク歌曲集, Wesendonck-Lieder
(Richard Wagner, 1813-1883)
"1. Der Engel (天使) - 2. Stehe still! (止まれ) - 3. Im Treibhaus (温室にて) - 4. Schmerzen (悩み) - 5. Träume (夢)”

1.では艶やかなmezで少しヴィブラートを効かせていますね。苦から天に昇るイメージが浮かびます。2.は力強く鋭く、3.は緩徐パートですが、藤村さんのmezは鋭さで不安を訥々と歌います。pfは抑え気味でコントラストがありますね。

4.は力強さですね。pfとmezが伸び伸びと絡み、痛みと感謝を表現しています。ラスト5.ではpfの穏やかな前奏に繋がる様に穏やかにシャープにmezが登場。複雑な'夢'を歌います。

ヴィブラートを効かせてmezらしい艶やかさのヴェーゼンドンクです。ややpfの方が前に聴こえるのが気になりますが。
個人的にはこの曲はオケver.の方が好みです。


"1.天使"です。演奏(2012)はハイティンクBPOと豪華版です
藤村さんのmezの伸びやかさもオケの広がりとフィットして見事👏
ちなみにCDの録音は2009年ですね




リュッケルト歌曲集, Rückert-Lieder
(Gustav Mahler, 1860-1911)
曲順は指定が無く自由。今回は短めの三曲を始めに、長い二曲は 重厚な "Um Mitternacht" から落ち着きある "Ich bin der…gekommen" で収めると言う流れにしていますね。
"1. Liebst du um Schönheit (美しさゆえに愛するのなら) - 2. Blicke mir nicht in die Lieder (私の歌を覗き見しないで) - 3. Ich atmet' einen linden Duft (私は仄かな香りを吸い込んだ) - 4. Um Mitternacht (真夜中に) - 5. Ich bin der Welt abhanden gekommen (私はこの世に捨てられて)"

1.から感情的に艶やかなmezを聴かせね。pfはちょっとフォローが弱い感じです。2.はpfが技量を見せてmezもそれに負けない様に歌う、そんな感じですね。マーラーらしさは一番強く出ているかもしれませんね。3.はpfがドビュッシーの様な音色を奏でて、mezも抑え気味に菩提樹の香りを歌います。美しいパートになりましたね。この2.から3.の流れが良い感じです

4.の主動機はpfでも違和感が少ないですね。mezはまさに美しく濃く歌われて、真夜中の物思いを表現します。繰り返し出てくる 'Um Mitternach' が印象的です。後半の盛り上がりはオケver.より落ち着きがありますね。
5.は落ち着きが強いパートですが、ピアノ伴奏ですと一層その感が強まります。

表現力を最大限聴かせる艶やかなmezのリュッケルトを味わえます。pfとのフィットもヴェーゼンドンクよりgoodですね。

ただこの曲はルートヴィヒ/カラヤンを超えるのが難しい事を今更ながら感じてしまいます。



艶やかで表現力のmezらしい声域が印象的ですね。ピアノ伴奏なので藤村さんらしいmezが一層強調されたのも確かです。

ただヴェーゼンドンクはオケの鳴りを背景にした方が歌が生きる気がします。このCDがオケver.だったらどう聴けたのか。あくまで個人的な印象ですが、もっと素晴らしかったのではないかなどと思ってしまいます。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





エリーナ・ガランチャ(Elīna Garanča)が歌うワーグナーとマーラー『ライヴ・フロム・ザルツブルク』



Live From Salzburg
エリーナ・ガランチャ (Elīna Garanča, mez, b.1976)
ラトヴィアのディーバ、ガランチャですね。個人的に藤村実穂子さん他と並び好きなmezの一人です。

今年この二曲のカップリングをインプレするのは二回目ですね。前回はハルテロス/ゲルギエフ(ミュンヘンフィル)で切れ味のsopが印象的でした。

今回はクリスティアン・ティーレマン(Christian Thielemann)指揮、ウィーンフィル(VPO)の演奏で、これまた豪華な顔ぶれの一枚です。








ヴェーゼンドンク歌曲集, Wesendonck-Lieder
リヒャルト・ワーグナー (Richard Wagner, 1813-1883)
この曲は『トリスタンとイゾルデ』との関連が思い起こされますね。
"1. Der Engel (天使) - 2. Stehe still! (止まれ) - 3. Im Treibhaus (温室にて) - 4. Schmerzen (悩み) - 5. Träume (夢)”

1.では伸びやかなmezで晴れやかに天使を歌い、2.はシャープで美しいガランチャらしい声で聴かせ処になりましたね。ちょっとオペラのアリア風ですね。オケもバランスの取れた色合いを鳴らします。

3.はオケが"トリスタン…"らしさを奏でますが、ガランチャが表情濃く表現する複雑微妙な緩徐パート。4.でも軸は色濃い表現で、特にオケは出し入れ強く如何にもワーグナーと言った作り込みになっています。5.は少し抑えを利かせた印象になりますが、それでも極彩色の表現力は感じますね。



リュッケルト歌曲集, Rückert-Lieder
グスタフ・マーラー (Gustav Mahler, 1860-1911)
曲順は指定が無く自由、今回は以下です。
"1. Ich atmet' einen linden Duft (私は仄かな香りを吸い込んだ) - 2. Liebst du um Schönheit (美しさゆえに愛するのなら) - 3. Um Mitternacht (真夜中に)- 4. Blicke mir nicht in die Lieder (私の歌を覗き見しないで) - 5. Ich bin der Welt abhanden gekommen (私はこの世に捨てられて)"

1.から大人のアルト風にmezを聴かせね。オケは個々の鳴りを明確に背景を作っています。2.はオケと共に色濃くアリア風に愛を構成。3.は一番重厚な印象でしょう。ラストの動機も存在感が有って聴かせ処の曲ですが、これを中心の3.に持って来たのは面白いですね。個人的にはラストの印象です。

4.は軽妙なのですがアルト的な低さが短い曲に重厚さを加えましたね。ラスト5.は落ち着いた流れを持ってきましたが、オケもmezも重厚な色付けになっています。このパターンだと最後は静的に鎮めて穏やかさで終了ですね。

全体としてはmezと言うよりもアルトを聴かせるリュッケルトになりましたね。オケも濃い色を表現しています。


"5. Ich bin der…gekommen"です。抜粋ですが



カラフルで表現力の濃い歌曲集になりました。特にオケは出し入れを含めて色彩感ある表現力で、多少一本調子的な感も残るガランチャmezにフィット。総合力を感じました。

リュッケルトではガランチャがアルト的な表現力を見せて面白さがありましたね。ガランチャとティーレマンの個性が協調した歌曲アルバムでしょう。

ただリュッケルトには独特の清廉さの名盤 "ルートヴィヒ/カラヤン" が存在するので、それを凌駕するのはハードルが高いかもしれません。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アニヤ・ハルテロス(Anja Harteros)らしいソプラノが光る歌曲集『ワーグナー | ベルク | マーラー』



Wagner・Berg・Mahler
アニヤ・ハルテロス (Anja Harteros, sop, b.1972)
ドイツのディーバ、ハルテロスですね。個人的には艶やかなソプラノと言うよりも切れ味のあるイメージですね。

近年のハルテロスの印象は、2017ザルツブルク音楽祭「ワルキューレ」の"ジークリンデ"、2018同音楽祭「トスカ」タイトルロール、2018バイロイト「ローエングリン」の"エルザ"、特にザルツブルクの2ステージは素晴らしかったですね。

今回のポイントは3人の作曲家でもちろん個人的メインはマーラー、そしてゲルギエフ率いるミュンヘン・フィルの期待値ですね。








リヒャルト・ワーグナー
(Richard Wagner, 1813-1883)
ワーグナーのこの曲は背景に『トリスタンとイゾルデ』がいる事で知られますね。
"1. Der Engel (天使) - 2. Stehe still! (止まれ) - 3. Im Treibhaus (温室にて) - 4. Schmerzen (悩み) - 5. Träume (夢)”

ヴェーゼンドンク歌曲集
 1.では研ぎ澄まされたSopで天使を歌い、2.も感情を込めてシャープに不安を表現しています。
包み込むオケとハルテロスが対位的な印象で奏でる緩徐パートの3.がヴェーゼンドンクのベスト・トラックになりましたね。

5.と6.でも強目の表現力が印象的で、"悩み", ”夢”の歌詞以上に訴えかける力を感じて心の葛藤が弱く思えてしまいますね。少し表現主義的な印象かもしれません。5.のオケは"トリスタンとイゾルデ"を思わせる感じです。



アルバン・ベルク
(Alban Berg, 1885-1935)
ベルクがこれらの曲を書いたのは初期(1908年)ですが、今回の管弦楽版にまとめたのは1928年ですね。それぞれ異なる詩人のTEXTを用いた7曲です。
"1. Nacht (夜) - 2. Schiflied (葦の歌) -3. Die Nachtigall (夜鳴きうぐいす) - 4. Traumgekrönt (夢に見た栄光) - 5. Im Zimmer (室内にて) - 6. Liebesode (愛の讃歌) - 7. Sommertage (夏の日)"

7つの初期の歌曲
 調性感の低い1.からオケのバランスの良さを感じます。殆どが2分くらいの小曲集ですから個別のインプレは不要でしょうが、その後もベルクらしさはオケに任せて、ハルテロスは自分の世界を構築しています。それがハルテロスのソプラノでしょうね。楽曲的にはこの曲だけが後期ロマン派の半歩先を行っている訳で、それを真ん中に挟んだのはgoodだと思います。



グスタフ・マーラー
(Gustav Mahler, 1860-1911)
良く知られるマーラーの落ち着いた気配の歌曲集ですね。

名盤も多く、印象に残る"ルートヴィヒ/カラヤン"の抑えたMez清廉さ、近年では"カルネウス/マルッキ"Sopの澄んだ美しさが素晴らしかったですね。両者演奏がフィットしています。

曲順は指定が無く自由で今回は以下。上記の二人も異なる並びです。
"1. Ich atmet' einen linden Duft (私は仄かな香りを吸い込んだ) - 2. Liebst du um Schönheit (美しさゆえに愛するのなら) - 3. Blicke mir nicht in die Lieder (私の歌を覗き見しないで) - 4. Ich bin der Welt abhanden gekommen (私はこの世に捨てられて) - 5. Um Mitternacht (真夜中に)"
この並びは1905年にマーラー本人が指揮した4曲の順番に、残り一曲を2番目に挿入していますね。

リュッケルト歌曲集
 1.から繊細で伸びやかなSopを聴かせますね。オケも抑え気味に美しい音色で背景を作っています。2.は愛を色濃くアリア風に歌います。オケも色合いを高めています。1.5分と一番短い3.はこの歌曲集で一番マーラーらしさを表現出来ますが、オケが上手くリズミカルを作りそこに乗ってとてもいい感じに仕上がりました。少し強めSopかもしれませんが。

4.はスローにトーンを抑えて"死"を歌います、ゲルギエフの澄んだ音色もとてもいい感じです。ラストに5.を配して主に捧げる気持ちをハルテロスらしい鋭さで仕上げています。

落ち着いて繊細なSopと抑揚のSopでコントラストをつけた歌曲集になりましたね。全体としてはハルテロスらしいシャープなリュッケルトでしょう。

曲並びも好みでフィットしていました。短く重さのない二曲でスタート、マーラーらしさの"Blicke mir…"をセンターに、最後は少し重めで長い二曲で締め括る流れですね。



予想通りハルテロスのシャープで強めのsop表現力が席巻する歌曲集になりました。リートよりもオペラ・アリア的な表現と言った感じですね。それも悲しみのイゾルデではなくトスカ方向ですw

ゲルギエフ/ミュンヘン・フィルも上手い背景作りでフィット。特にII.のベルクらしい調べは聴かせてくれました。ハルテロスのファンなら考えずに入手のアルバムでしょう。





バーデン・バーデンのオペラ・ガラからトスカの名アリア"歌に生き, 愛に生き"ですね



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





リュドヴィク・テジエ(Ludovic Tézier) のバリトンで聴く『ヴェルディ・アリア集』



VERDI
Ludovic Tézier (リュドヴィク・テジエ, b.1968)
これまでソロアルバムを出していなかったのが不思議なフランス人の人気バリトン、リュドヴィク・テジエですね。53歳と脂の乗ったバリトンは、近年ですと2018ザルツブルク音楽祭の「トスカ」のスカルピア男爵、2019ロイヤル・オペラ「運命の力」のドン・カルロが光りましたね。

ガラで歌うのも得意としていますが、ブリン・ターフェルの様なエンターテイメント性とは違ってオペラからはみ出す印象は個人的にはありません。アリアを朗々と聴かせてくれる印象が強いです。

CDの日本語紹介文にはカウフマンのアルバムでのビゼーの"真珠採り"「神殿の奥深く」のデュエットが紹介されていますが演奏含めてテンションが低く、この曲のテジエなら2007年の"オペラ・ガラ バーデン・バーデン"でのヴァルガスとのデュオが良いでしょう。

演奏はフレデリック・シャスラン指揮、ボローニャ市立歌劇場管弦楽団。満を持してのヴェルディのアリア集です。







楽曲 1. "運命の力"「死ぬということ…何と恐ろしいことだろう」2. "ドン・カルロス"(仏語版)「私です、カルロス!・・・わが生涯の最高の日」3. "エルナーニ"「偉大な神よ!この墓の大理石の上で奴らは」4.同じく「私と一緒に来ておくれ、バラだけで」5. "ファルスタッフ"「これは夢か? まことか?」6. "トロヴァトーレ"「全く人の気配はない・・・あの人のかすかな微笑みは」7. "椿姫"「プロヴァンスの海と大地」8. "マクベス"「裏切り者め!イングランドと組んで私に刃向かうか」9. "ナブッコ"「ユダの神よ」10. "オテロ"「俺は信じる、俺を造り給うた無慈悲な神を」11. "リゴレット"「廷臣たちよ、下劣で呪われた者どもよ」12. "仮面舞踏会"「あなたに微笑んでいる人生には」13.同じく「立て!お前の息子はあそこだ」14. "ドン・カルロ"(伊語版)「私です、カルロス!・・・わが生涯の最高の日」


1."運命の力"のカルロの様な曲に抑揚があるシーンはテジエらしい艶やかなバリトンが生きますし、4."エルナーニ"のカルロの様なトーンが高いパートはテノールの様な伸びのあるテジエの声質にはピッタリですね。

5."ファルスタッフ"のフォードは激情的で気持ちが入っているのが分かります。6. 7.と落ち着いた曲を並べるのも上手い構成になっているでしょう。8."マクベス"や9."ナブッコ"では表情変化を付けて歌い、10."オテロ"のヤーゴ 11."リゴレット"では力感を見せますね。

2.と14.は同じ"ドン・カルロス"のお馴染みアリア「ロドリーゴの死」ですが、仏語と伊語で歌いわけます。元々は仏語の方が先で、後から伊語版が出来ていますが、当然ながら仏語の方が歌唱がテジエにフィットした感じです。伊語ver.がスローに歌われているのもあるかもしれませんね。このシーンですとスローの方が良いのかもしれませんが…



テジエらしいバリトンと並びの良い楽曲で楽しめる一枚になっています。テジエらしい艶やかでテノールの様な伸びあるハイ・バリトンが素晴らしいですね。

欲を言えばデュオが入っていても良かったかもしれません。(3.ではほんの僅かなDuoがありますが)



 ★試しにYouTubeで観てみる?
  今回は入っていない"カルメン"「闘牛士の歌」です。素晴らしいので是非!!
  (2007年の"オペラ・ガラ バーデン・バーデン"から)
  今ほどの体型でもなく、声質もよりハイです

  参考までにブリン・ターフェルが歌う"闘牛士の歌"もどうぞ
  (アバド指揮で女性陣もフォン・オッターを含めて豪華布陣です)
  試しにターフェルも観てみる?



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ベートーヴェンへの賛歌『ルートヴィヒを探して | Searching for Ludwig』マリオ・ブルネロ、ギドン・クレーメル


Searching for Ludwig
Gidon Kremer, Mario Brunello, Kremerata Baltica
興味深いアルバム、alphaレーベルらしい?、が出ましたね。

ベートーヴェンは定期コンサートでぶつからない限り 今やほぼ聴かないのですが、二人のチェリスト/現代音楽家マリオ・ブルネロとジョヴァンニ・ソッリマの名前があると視線が向いてしまいます。

そもそもはM.ブルネロとクレメラータ・バルティカがベートーヴェンの生誕250周年を祝うドイツの "Kronberg Festival" 共演で意気投合、南米ツアーを前に1.-3.を録音する事で出来上がったそうです。タイトルも「Searching for Ludwig」で決まり、ラスト一曲はG.クレーメルのチョイスになるベートーヴェン・トリビュートアルバムですね。

ブルネロは1.はチェロですが2. 3.は指揮者、クレーメルは4.でvnの弾き振りです。







1. ‘Muss es sein? Es muss sein!' (レオ・フェレ, 1916-1993)
仏音楽家でシャンソン歌手でもあるフェレの曲で、この曲だけvc, strings, perc. の編成ですね。他は弦楽奏曲(弦楽オーケストラ)です。
 陰鬱で濃厚なブルネロのvcソロから入ります。1'半くらいからフェレの語りが刺激的に加わると打楽器も入って、弦楽奏が音の厚みを加えて進みます。攻撃的なシャンソン、鮮烈さを加えて戦場の様に流れます。フェレの"Ludwig!!"の叫びが印象的です。中間部(トリオ)でvcソロが現れて、最後はフェレの叫びで終わります。


2. 弦楽四重奏曲 第16番 Op. 135 弦楽合奏版 (ベートーヴェン)
アレグロから優美さの流れを作りますね。展開部では切れ味を見せてコントラストは良いです。ヴィヴァーチェも延長線上にあってシャープに、トリオでもあまり流れに変化を付けません。四楽章形式になっていて全体としては古典色の強さが残ります、唯一の楽章を除いては。個人的興味はそのマーラーに影響を与えたとも言われる、第三楽章の緩徐のロマン派の様な流麗さですね。この時代ならメヌエット的でしょうから。ブルネロはその対比を意識していると思います。(近いタイミングでマーラー10の弦楽奏を指揮していますから)


3. Note Sconte (ジョヴァンニ・ソッリマ, 1962-)
唸る様な前衛的弦楽奏を背景にして、ベートーヴェンの動機と思われる旋律が奏でられます。パートにより小編成の古典弦楽奏になり、強弱のメリハリを明確に付けたベートーヴェンらしさを強調するかの様です。現代音楽と古典の邂逅の様な流れであって欲しかったのですが、冒頭パート以外はほぼ古典展開でガッカリ。ベートーヴェンが好きな方は新たな旋律・動機が楽しめるかもしれません。そうなると前衛的な色付けが邪魔?! 要は中途半端感が足を引っ張っているかも…


4. 弦楽四重奏曲 第14番 Op. 131 弦楽合奏版 (ベートーヴェン)
7楽章の名曲ですね。聴き処の一つ、第一楽章を繊細で美しい緩徐表現で入るのはクレーメルらしさでしょうか。第一楽章がアレグロではないのもこの曲の特徴ですね。メインの第四楽章は見事にメヌエットの変奏曲になっていますね。全体的には古典を尊重した軽妙な室内楽に仕上げている感じですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  クレーメルの脳裏に浮かんだというバーンスタイン/VPO(弦楽)の演奏です
  晩年の1981年で濃厚な弦楽奏曲になっていますね。これは一聴に値します!




ベートーヴェンの後期弦楽四重奏二曲は当然のごとく古典ですが、2.の第三楽章のロマン派の先取りの様な美しさが前後楽章や4.から異彩を放っています。

現代音楽二曲では、1.のフェレは尖った流れが魅力的で、3.のソッリマはベートーヴェンへのトリビュート感が強い古典楽風でした。1.以外アルバム全体としてはベートーヴェンで、旧来のクラシック音楽ファンの方に受け入れられ易い感じです。個人的興味は1.だけでしたが…w

クレーメルとブルネロの共演が無いのは寂しいですね。ソッリマは今年(2020)の来日がcovid-19で中止になりましたが、来年2月に一部延期なので来て欲しいです。(チケット所有なのでw)




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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