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『チャイコフスキー 交響曲 第5番』2020パーヴォ・ヤルヴィを1960ムラヴィンスキーで聴き比べ


チャイコフスキー 交響曲 第5番
今更の曲をなぜ? それも2020年リリースのP.ヤルヴィを1960年のムラヴィンスキーで聴き比べ??

■週末1/30(土)の原田慶太楼さんと読響のコンサートの予習です
■この曲は個人的に1960ムラヴィンスキーが鉄板!!
■せっかくですから新しい録音(P.ヤルヴィ rec.2019)も合わせて

という事で…w




パーヴォ・ヤルヴィ
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団



第一楽章
序奏「運命の主題」はスローのアゴーギク。第一主題はテンポを取り戻してディナーミク強調、第二主題第一動機はアゴーギク強調、第二動機もスローの揺さぶりからパッセージは気持ち良く鳴らします。展開部の第一主題変奏は波の様な出し入れですね。再現部はスロー化して抑え気味、コーダもその流れにあります。揺さぶり強調ですが感情移入は薄めですね。

第二楽章
美しい弦のコラールから主部主題のhrも静美に、ob動機は繊細さです。第一トリオはvcと管楽器の対話を色濃い美しさで、山場はテンポアップから迎えます。中間部のclとfgはアゴーギクを振られていて、山場の"運命の主題"は空を覆う黒雲の様です。主部回帰では伴奏の色付けを美しく生かして心地良い山場を。突然の"運命の主題"も唐突性は抑えてラストの美しさが光ります。美しさのアンダンテ・カンタービレです。

第三楽章
主部の第一・第二ワルツは軽妙に、第三ワルツでスロー化ですね。中間部は16連音符を軽妙さを利かせて、主部回帰の三つのワルツも優しさ穏やかさです。コーダのソフトな"運命の主題"の後の強音は広がりです。重さ控えめでワルツらしさ強調です

第四楽章
序奏の"運命の主題"は優しい美しさ、厳しい弦の第一主題は切れ味から重厚さへ。第二主題は流麗な木管、金管の"運命の主題"は華やかです。展開部は勇壮さで弦の響きが印象的ですね。再現部はテンポアップしますが落ち着いて、"運命の主題"からスロー化して山場をシャキッと締めます。コーダは落ち着いて晴々とした行進曲からラストはアッチェランドの様なテンポアップで締め括ります。力感よりもスッキリ感の楽章ですね。


スッキリと心地良い第5番ですね。重厚さや爆裂の対角にいる流れです。

それを証明しているのが中間楽章の二つでしょう。アンダンテ・カンタービレとワルツ、そのものですね。この流れもありのチャイコフスキー5です。






エフゲニー・ムラヴィンスキー
レニグラード・フィルハーモニー管弦楽団


(4, 5, 6番のset、いずれも名盤ですね)


第一楽章
序奏「運命の主題」は陰鬱なスロー、第一主題は色濃い力感でピークを激しく。第二主題は感情強く、パッセージは力強さですね。展開部はリズムを生かして音厚を増します。再現部は落ち着きから第二主題パッセージで感情を高めますね。コーダは弦の下降音階と管楽器が厳しい音で対峙します。感情こもったアゴーギクとディナーミクが素晴らしい楽章です。

第二楽章
主部のhrはスローで澄んで美しく、ob動機は明るい流れを作ります。第一トリオは静の中の緊張感から山場を大きな鳴りで広げます。哀愁の中間部は"運命の主題"をシャープに。主部回帰では優美さを見せつつ山場で炸裂!! そして突然の爆裂"運命の主題"です。厳しい出し入れで緊張感漂う流れですね。

第三楽章
主部の第一・第二ワルツは優美、第三ワルツは木管の鳴りを生かします。中間部は主部の流れキープし16連音符を明確にバトンタッチして行きます。主部回帰の第一ワルツは少しスケルツォ風、コーダの"運命の主題"後の強音が唐突です。ワルツらしさの中にもシャープさが見られますね。

第四楽章
序奏の"運命の主題"は悠然。弦の第一主題は厳しく速く、第二主題は流れに乗って現れて金管の"運命の主題"はキレキレに激走します。感動ものです!!
展開部はゆっくりと鎮めて哀愁に。再現部は突然暴れて緊張感と揺さぶり強く、スローに落として"運命の主題"から山場を作ります。コーダは祭典的な行進曲でラストは勇壮そのものです。


激しい出し入れと感情溢れる第5番です。ムラヴィンスキーが得意としたチャイコフスキー5、気持ちの入った強音パートに惹かれますね。

半世紀を共にした指揮者とオケの一体感が作る隙の無い見事さ
(脳にインプリンティングされているので) 個人的にはこれを超える演奏には出会えません。




対極にいる演奏ですね。気持ち昂る力演のムラヴィンスキー、肩の力を抜いて優美ささえあるP.ヤルヴィ、どちらも完成度が高いです。

どちらを聴いても損はありませんね。もちろん個人的には何十年も聴いているムラヴィンスキーという事にはなるわけですが。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





今気になるCHANDOSのエドワード・ガードナー(Edward Gardner), 二つの『浄夜』シェーンベルク と フリート



Verklärte Nacht
Edward Gardner (エドワード・ガードナー, 指揮者)
今年からロンドン・フィル(LPO)の音楽監督に就任する英中堅指揮者のガードナー。この処注目度の高い作品をCHANDOSレーベルから次々とリリースしていて、2020年だけでも「ペレアスとメリザンド」「ピーター・グライムズ」と気になるCDを出しています。この注目セットから新たに出たのが四人の近現代音楽家の作品集ですね。曲的には後期ロマン派ですが。

ドイツの詩人リヒャルト・デーメル(Richard Dehmel)の "浄夜"(Verklärte Nacht) を元にそのままタイトルにした二曲を並べたのがポイントですね。"浄夜"と言えばシェーンベルクですが、フリートの作品は初めて聴きます。

もう一つのポイントはテノールのステュアート・スケルトン(Stuart Skelton)です。同じくCHANDOS/ガードナーの「グレの歌」でもヴァルデマル王で起用されていましたね。A.フィッシャーのマーラー「大地の歌」でもヘルデン・テノールらしいハイトーンを聴かせてくれました。



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧








フランツ・レハール
(Franz Lehar, 1870-1948)
レハールと言えば「メリー・ウィドウ」ですねェ。年代的には近現代ですが、その範疇のイメージは誰もないでしょう。歌曲を聴くのは初めてです。

Fieber (1915)
 後期ロマン派の色濃いテノール歌曲ですね。スケルトンのテノールがヘルデンらしいトーンで聴かせてくれますが、少し押し出しが弱いかもしれません。楽風はレハールらしく時に舞曲の様に、またシェーンベルクの「グレの歌」を思わせる様な色合いも見せますね。結構楽しめるかもしれません。



オスカー・フリート
(Oskar Fried, 1871-1941)
ユダヤ系ドイツ人音楽家で指揮者でマーラーとの懇親があり、意外にも"第6番・第7番・大地の歌・第9番"のベルリン初演をBPOで振っています。作曲家としては不遇を送った様です。

Verklärte Nacht Op.9 (1901)
 原作と同じ様に男(テノール)と女(メゾソプラノ, Christine Rice)が登場して、男女間のかなりシビアな語らいを紡ぎますから基本的なストーリーは知っておいた方がいいかもしれません。mezは意図強く問題のパートを歌い、tenorがそれに応えます。ストーリー性を感じる二人の歌いで、演奏は美しい後期ロマン派楽曲でラストは大きく広げます。ここでのスケルトンは伸び良く聴かせてくれますね。ただ、クリスティーネ・ライスの方が勝っていますが…



アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schoenberg, 1874-1951)
言わずと知れたシェーンベルク、その初期の無調に足を踏み入れる前の後期ロマン派時代の傑作ですね。録音は多々存在しますが、ガードナーはどうでしょうか。今回はオリジナル弦楽合奏版(1917)のコントラバス・パートを見直しした1943ver.を採用しています。

Verklärte Nacht Op.4 (1917, revised 1943)
 まず導入部動機は暗く美しいのですが、かなり抑え気味にそして揺さぶりを入れて来ます。その後も揺さぶりは強めで、前半は不安げな流れを作ります。この辺はストーリーと合わせている感じです。弦楽合奏版と言うとカラヤンが浮かぶわけですが、あの濃厚な美しさよりも不安を掻き立てる様な揺さぶりが特徴的ですね。後半も美しい流れは排除されて、強い揺さぶりがギクシャクする様な印象を受けます。好みかと聴かれると、ちょっと違う???かもw
個人的には濃厚な甘美さと激しさが"浄夜"です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  DG盤ではありませんが、カラヤンBPOですね
  最高のDG盤はもっと静にスローから迫りますがこれも素晴らしいです




エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト
(Erich Wolfgang Korngold, 1897-1957)
ユダヤ系オーストリアの音楽家ですね。前衛隆盛期に後期ロマン派の楽風で苦労し、米国で映画音楽家として活動していますね。ここにコルンゴルトが入っているのが少し不思議です。

Lieder des Abschieds Op.14 (1920-21)
 "別れの歌"、後期ロマン派と言うよりもロマン派のリート管弦楽ver.的でしょうか。穏やかな美しい流れとスケルトンらしい落ち着いたテノールです。これはこれで味わい深い印象ですね。オリジナルはmezとpfのリートですか?!



ガードナーのスタンスが "グレの歌" でもあった様にクセのある揺さぶりが特徴的である事が 今回もシェーンベルク "浄夜" でわかりますね。他の曲は頭にないので、それほど違和感を感じる事はありませんでした。

スケルトンのテノールも"グレの歌"の時の印象と同様で、やや引けた個性を感じました。4.が一番良かったですね。今回のベスト・トラックはフリートの"浄夜"でしょうか。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





フランク・ペーター・ツィンマーマン「マルティヌー/ヴァイオリン協奏曲、バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」新古典主義の流れ



Martinů : Violin Concertos
Bartók : Sonata for Solo Violin

(Frank Peter Zimmermann, vn)
今やドイツをと言うよりも欧を代表するヴァイオリニストの一人、F.P.ツィンマーマン。今回リリースしたのは、19世紀後年生まれの東欧の近現代音楽家二人をフィーチャーしたアルバムです。

ボフスラフ・マルティヌー(Bohuslav Martinů, 1890-1859)はチェコの音楽家で、パリに出た後、ナチス進行で米に渡っています。今回の二曲はパリ時代と全盛期の米時代に分かれていて、キャラクターが異なる面白さが味わえそうです。
ベラ・バルトーク(Béla Bartók, 1881-1945)はハンガリーのビッグネームですね。亡くなる前年の米時代の作品ですから新古典主義でしょう。

1930-40年代の作品ですから、欧州では十二音技法が確立され前衛エクスペリメンタルの隆盛前夜になります。その本流となるセリエルの基礎「メシアン:音価と強度のモード (1949)」がすぐに出現します。当時の米ではその流れを感じる事は少なかったでしょう。

協奏曲(1. 2.)の演奏は主席指揮者のヤクブ・フルシャが振るバンベルク交響楽団です。



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1. マルティヌー:ヴァイオリン協奏曲第1番 (1933)
アルバムでは第2番が先になっていますが、いつもの様に年代順に1番を先に聴きます。
 華やかでストラヴィンスキー風の祭典的主題が現れる一楽章。派手で切れ味良いvnが現れて、僅かに民族音楽的な和声も感じます。アンダンテは民族音楽ベースの緩徐楽章で、東欧ローカルの音風景が伝わりますね。第三楽章もそうですが、全体的には民族和声をベースに舞踏的な歯切れ良さです。vnもしゃしゃり出ずに切れ味良く、です。


2. マルティヌー:ヴァイオリン協奏曲第2番 (1943)
10年後の作品です。派手で陰影が強く、vnも幽玄神秘ながら押し出しの強い音色を奏でる第一楽章。この時点で新古典主義(新ロマン主義?)の様相を感じますね。vnが表に出て来て技巧を見せるパートも多いです。第二楽章では古典の様な動機が明確に現れていて、執拗なvnの反復も出て来ます。第三楽章は重心の低い出し入れの強い主題が支配的、ラスト前にカデンツァが待っています。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Julia Fischer(vn), Czech Philharmonic, David Zinman(cond.)です
  こちらの方がオケの表情が豊かですね



3. バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ (1944)
バルトークで浮かぶ暗く幽玄な音世界ではありませんね。一音一音を際立たせて明瞭に鳴らす方向性が感じられます。動機も調性の薄さは皆無で押し出しの強さです。バルトークだと思って聴くと???的でしょう。ただ、技巧性も高くてシャープな曲ですからツィンマーマンのvnを聴くなら一番良いでしょうね。

唯一、第三楽章だけは以前のバルトークらしい幽玄さを聴かせてくれる緩徐楽章になっていて嬉しいです。ツィンマーマンのvnがもう少し暗く鬱に鳴らしてくれるとより好みなのですが…w



バルトークは新古典主義、マルティヌーは民族和声主体から新古典主義へ個性を変化させ、この時代の前衛ではないメインストリームのクラシック音楽を味わえます。

今の時代でも米オケが好みそうな出し入れの強さと明快さのコンチェルト。ソロ曲はF.P.ツィンマーマンらしい明瞭な音色でvn技巧を聴かせてくれますね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





R.シュトラウス『ツァラトゥストラはかく語りき』2020リリース2CD(ウルバンスキ, ダウスゴー)と鉄板カラヤン聴き比べ


Also sprach Zarathustra Op. 30 [1896]
(Richard Strauss, 1864-1949)
リヒャルト・シュトラウスの交響詩ですと個人的にはストリー性が明確な"ドン・キホーテ", "英雄の生涯"の方が好きですね。"ティル"や"ドン・ファン"は短いですし、"死と変容"が本作品の位置づけと似ているかもしれません。最近では"ツァラトゥストラはこう語った"と訳すんですね。

今年(2020)リリースされた2CD、若手指揮者①ウルバンスキ(NDRエルプフィル, 2016 rec.)と、中堅の②ダウスゴー(シアトル響, 2019 rec.)、そして頭で鳴っているマスターピース③カラヤン(BPO, 1983 rec.)も入れて聴き比べしておきましょう。






クシシュトフ・ウルバンスキ
(Krzysztof Urbański)
NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団 (NDR Elbphilharmonie Orchester)


やや弱めの印象の"ツァラトゥストラ"です。力強さと優しさを対比させている感じですが、バランスは優しさになっていますね。

その優しさが弱々しく感じる事、処々で主題・動機が薄いのが気になります。




トーマス・ダウスゴー
(Thomas Dausgaard)
シアトル交響楽団 (Seattle Symphony)


濃厚な色合いの"ツァラツストゥラ"です。テンポは速め、音厚高く強音強調、と言った方向性を強く感じます。

ラストを繊細な流れにして落ち着かせたのは上手いな、って言う感じです。そんな静美とのコントラストが全体にあれば、もっと素晴らしい"ツァラツストゥラ"になったのではないでしょうか。




ヘルベルト・フォン・カラヤン
(Herbert von Karajan)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (Berliner Philharmoniker)


コントラストと見晴らしが素晴らしい"ツァラトゥストラ "です。緩急・静と烈・繊細さと華やかさ・心地良さと刺激、全てのバランスが揃えられています。

R.シュトラウスと言えばカラヤン、そう言う人も多いのではないでしょうか。私もその一人な訳ですがw




【全体インプレ】
少し弱々しいウルバンスキ、力感に拘るダウスゴー、見晴らしの利いたカラヤン、三者三様ですがやっぱりカラヤンが頭一つ抜きん出ている感じです。

新しい録音を楽しみにしつつ、名盤と言われるカラヤン/BPO(1983)がマスターピースと言う事になるのは仕方ないでしょうか。




パート別インプレ
1. 序奏
① かの「自然の動機」"ド・ソ・ド"はともかく、ティンパニーが弱めですが、続く長和音は大きく鳴らします。
② 「自然の動機」はいじりようがありませんw その後の長和音も同じですね。多少のメリハリ感程度がある感じでしょう。
③ 序奏はほとんど変化のさせ様がないのでコメントは付けよう無しですw あえて言うなら"タメ"の上手さを感じるかもしれません。

2. 後の世の人々について
①「あこがれの動機」は控えめ、ホルンのクレド動機も弱めに出て美しい弦楽はややスローに入ります。エモーショナルさを強めながらクレシェンドしていくのですが、優しさを強く感じます
② 「あこがれの動機」は鬱が強め、ホルンのクレド動機は落ち着いています。そこからの弦楽奏は明瞭な音を少し揺さぶりをかけながら進めています。音は厚めで濃厚さを感じます。
③ ファゴットの「あこがれの動機」は繊細、クレド動機は穏やかさが光ます。その流れに乗って弦楽奏が現れると、緩やかさから切れ味へと美しさを変化させて聴き応えある見事さになっています。

3. 大いなる憧れについて
①「あこがれの動機」と木管による「自然の動機」静で優しく絡みます。「マニフィカト」パッセージからの高揚感は弱めです。
②「あこがれの動機」は速めで明瞭に、木管による「自然の動機」が淡々と入り美しさと緊迫感を対比させます。力感が増してパッセージが出ると激しさの山場へ。
③「あこがれの動機」が美しくテンポ良く出て、木管の「自然の動機」がクールに絡み合います。徐々に上げてオルガンの「マニフィカト」パッセージからは高揚させて良い流れですね。

4. 喜びと情熱について
① 二つの動機を力感付けながら上げて、山場のトロンボーンのV字音階「嫌悪の動機」は表情が薄いですね。
② 新たな二つの動機は深刻な印象を強く鳴らし、激しさを増して行きます。山場でのトロンボーンの「嫌悪の動機」は朗々と鳴らされますね。
③ 表情豊かに切れ味よく動機を作り込んで進めて見晴らしがいいですね。クライマックス付近のトロンボーンが「嫌悪の動機」も力強いです。

5. 墓場の歌
① オーボエの「墓場の歌」弱く、上昇音階の「あこがれの動機」と下降音階の絡みは淡々としています。
② オーボエが奏でる「墓場の歌」は弦楽と絡んで濃い色合いです。「あこがれの動機」と下降音階の絡みは進むにつれて淡々と静まらせています。
③ オーボエの「墓場の歌」は繊細に現れ落ち着いた流れを作っています。中盤からの「あこがれの動機」は少し鬱を見せ下降音階の弦流れとコントラスト良く絡みます。

6. 学問について
①「暗鬱なフーガ」は弱々しい印象で、木管が加わると色合いが出ます。「舞踏の動機」でテンポを上げて軽妙な明るさに、「自然の動機」「嫌悪の動機」の木管パッセージが木管楽器は緩やかさで、最後はなんとか締めます。
②「暗鬱なフーガ」は静鬱なクールさで、木管が入ると力感を少し増します。「舞踏の動機」は少しテンポアップでの美しさにしていますね。tpが出るとパッセージの木管楽器を落ち着いて絡ませ、最後は力感を上げます。
③ コントラバスとチェロの「暗鬱なフーガ」を静暗スローに鎮め、木管が加わると少し光を感じます。幸福感ある「舞踏の動機」はvnの繊細な美しさと木管の明るさの対比が見事ですね。カデンツァ的流れを静に、最後は大きく盛り上げます。コントラストが見事なパートです。

7. 病より癒えゆくもの
① トロンボーン動機は揺さぶり気味に進んで、山場はテンポアップで怒涛に鳴らします。管楽器の「暗鬱なフーガ」は鬱ですがしっかりと鳴らして来ます。トランペットの信号音が出てテンポを上げると「嫌悪の動機」と表情強く絡みながら安定的な流れにして行きます。この楽章は切れ味とメリハリの良さを感じます。
② トロンボーン動機は速めで鋭く好戦的に上げて、山場は激しくキレキレです。ゼネラルパウゼを大きく取って「暗鬱なフーガ」は暗い影を強め、鋭いトランペットの信号音が「嫌悪の動機」と速く切れ味よく絡み、最後は明るい色合いで華やかにしています。派手なパートになりました。
③ トロンボーン動機は落ち着いて入ってテンポを上げつつ派手さを増します。ド派手なピークの後のゼネラルパウゼは短め。「暗鬱なフーガ」を陰鬱に進め、トランペットの信号音が砕けて登場すると「嫌悪の動機」と変則的に絡み合いながら、明るく楽しげに力強く変化させて行きます。

8. 舞踏の歌
① ソロ・ヴァイオリンによるウィーン舞踏風動機は繊細弱め、絡む木管もですが、そこから穏やかに優美さを増して行きます。ホルンの動機が優しく出ると澄んだ音色で動機群を奏で、華やかな音色を強くしながらラストの山場は大きく作ります。
② 明るい「自然の動機」から入り、ソロ・ヴァイオリンによるウィーン舞踏風動機は鋭く出て来ます。その流れが優美さになって濃くなると、ホルン動機からは主題群がシンプルに溶け合いながら濃厚さを増してラスト山場は派手に。
③ ソロ・ヴァイオリンのウィーン舞踏風動機はスロー&シャープ、静な流れから色合いを強めて大きな舞踏曲する上手くて安心感ある構成で見事です。中盤でホルンが出ると流れはシンプルになってから華やかさを増して山場を派手に鳴らします。

9. 夜のさすさい人の歌
① 深夜を告げる鐘が弱いですね。鎮まってロ長調で表情は安定、「あこがれの動機」と「舞踏の動機」は穏やかです。最後の高音長和音と低弦C音の対比は静的です。
② 山場が徐々に鎮まってロ長調が顔を出すと、「あこがれの動機」と「舞踏の動機」を緩やかに上手く落ち着かせています。ハープ上昇音階からはシンプルになって、ラストの高音長和音と低弦C音は繊細さを表現する良い流れです。
③ 深夜を告げる鐘はハッキリと打たれて、徐々に鎮まります。やっぱりこのパターンでないと… ロ長調に変わると流れは落ち着いて「あこがれの動機」と「舞踏の動機」が繊細さと穏やかを満たします。ハープが顔を出すと静を強めて、ラストは低弦C音が困惑の表情を見せて終わります。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





フェルッチョ・ブゾーニ(Ferruccio Busoni) の「ピアノ協奏曲, Piano Concerto」


フェルッチョ・ブゾーニ (Ferruccio Busoni, 1866-1924)
イタリア生まれの作曲家でピアニスト、ブゾーニの印象はイタリア/ドイツ, 後期ロマン派/新古典主義, ピアノ曲/トランスクリプション, と言った錯綜感がありますね。

ピアノに関してはリスト - アルカン - ブゾーニ - ソラブジと言ったヴィルトゥオーゾpf超絶技巧作曲家の系譜の一人になるでしょうか。



Piano Concerto in C major, Op. 39 (1904)
Garrick Ohlsson, pf
ブゾーニの唯一のピアノ協奏曲で、特徴的な作品です。協奏曲なのに70'で最終楽章に合唱が入ると言うのは当時としては異質作品でしょう。

合唱TEXTはアダム・エーレンスレーヤー(Adam Oehlenschläger, 1779-1850)の「アラジン」からでドイツ語になっていますが、曲構想は全くトレースされていません。

この曲はJ.オグドンやM.A.アムランと言った名だたるヴィルトゥオーゾが演奏レパートリーに入れていますが、ギャリック・オールソンも18歳でブゾーニ国際ピアノコンクール優勝と言う経歴の持ち主。バックはクリストフ・フォン・ドホナーニ指揮クリーヴランド管弦楽団, 同男声合唱団です。







第一楽章 (Allegro dolce e solenne)
独ロマン派的なアレグロで、導入部は軽妙に入りつつ第一主題?で派手な動機をピアノで鳴らします。動機の変奏を経てカデンツァ風のパートでは繊細ながら指のよく転がる技巧曲になっています。全体的にpfは出番が多く和音と速いアルペジオで派手ですね。


第二楽章 (Vivacemente ma senza fretta)
スケルツォになるでしょうか。いきなり速い主題をpfが走らせます。すぐに異なる動機のpfが出現しますが、これも速いです。オケも激しい音で進んで、テンポの緩い動機で展開部?になると変奏しながら曲調を変化させます。pfは地味ながら技巧性が高そうです。後半はやや半端な印象を受けますが。


第三楽章 (Andante sostenuto pensoso)
この楽章が一番長く約23'あります。強いボウイングを見せる弦の暗い主題から木管が出ると落ち着いて来ます。pfがソロでアレグロらしく技巧性を抑えて入って来ます。次に現れるpfソロ(カデンツァではない?)では音厚を高めて、技巧性も見せる様になり山場を大きく響かせます。テンポはアンダンテですが、強音パートが多くうるさいですw


第四楽章 (Vivace in un tempo)
軽妙な速いテンポの主題にオケとpfが対位的に絡んで進みます。地味ですがpfの技巧性は高そうですね。すぐに強音パートとなってpfは激しい鳴りとなり激しい行進曲から騎行となって突き進みます。怒涛の流れで聴き疲れ間違いなしでしょう。


第五楽章 (Largamente)
静音パートから入りますが細かいアルペジオのpfが鬱陶しいです。vnが哀愁ある動機を奏でるとpfは退いて穏やかな流れとなり、男声合唱団が落ち着いた様相を呈します。テンションが上がるとpfが入って音圧も上がり、例によってクドくなりますね。それでもこの楽章が一番完成度が高いです。



やたらと強音パートを設定して、pfは終始技巧性の高いパートが並ぶ感じです。曲調は独ロマン派から新古典主義です。

各楽章で旧来的なテンポ設定がありますが、中身は類似的で変化の薄さが気になりますね。pfの技巧も同じです。どの楽章も強音主体で少しうるさいかもw

怒涛のパワープレイが好きな貴方にオススメです!!



 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2001年のM.A.アムラン(pf)です
  負けず劣らず大音響ですが、表情があります。pfの音の粒立ちもこちらが上でしょう



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





タベア・ツィンマーマン(Tabea Zimmermann)の「Cantilena」洗練されたヴィオラ/ピアノ

タベア・ツィンマーマンと言うと、コンサートの最中に退場するハプニングの2018年の都響公演を思い出しますね。


Cantilena タベア・ツィンマーマン(Tabea Zimmermann, va)
女性ヴィオリストと言うと彼女か今井信子さんが浮かぶ訳ですが、今回はソロアルバム(w/ pf: Javier Perianes)です。

全7曲ですが、音楽家のチョイスがスペイン5人、南米2人*、と言う何か意図的で面白いです。冒頭と末尾に"タンゴ"を持って来ているのが方向性なのかもしれませんね。いずれもva/pfのDuoヴァージョンにトランスクリプトされていて、何曲かはT.ツィンマーマンが対応しています。







1. Le Grand Tango (*Astor Piazzolla)
濃厚なタベアのvaとハヴィエル・ペリアネスのpfはディナーミクを強く、色濃いタンゴを豪快に奏でています。タベア・ツィンマーマンの低音には力感がありますね。pfも全く伴奏になる気はないらしく、ポリフォニーや対位的に鳴らして来ます。(実際にはホモフォニーですがw)


2. Cinco canciones negras (Xavier Montsalvatge)
小曲5曲で、曲自体はエモーショナルな繊細さを見せます。タベアのvaは、そんな中でも朗々と鳴らして濃い色の情感表現です。もちろん細い音色も使いますが、これが彼女のヴィオラでしょう。pfは程よい柔らかさで浮遊感を作ります。一杯やりながら聴きたいですね


3. Siete canciones populares españolas (Manuel de Falla)
スパニッシュな曲を濃厚な音色で奏でます。デ・ファリャらしい洒脱さをvaの太い音色が表現力で魅せてくれます。小曲7曲での表情変化も作れて選曲の良さも感じます。


4. Aria "Cantilena" (*Heitor Villa-Lobos)
6分弱のタイトル曲です。弾む様なpfにボウイングが美しいvaが絡んで来ます。まさに優美な弦の音色です。中間部(トリオ?)では尖った構成になっていますね。


5. En sourdine・他 (Pablo Casals)
4小曲で、不思議な調性感の曲も有って浮遊&神秘の演奏も入ります。曲の洗練さも素晴らしく、アルバムの流れの変化にもなっていてナイスチョイスです。


6. Tonadillas en estilo antiguo (Enrique Granados)
小曲4曲です。vaはダブルストップも使っている様です。スローで濃厚な曲で、それまでよりも音数が少なめなのでvaの濃い音がフィットしていますね。


7. Tango. Andantino (Isaac Albéniz)
2'半の小曲です。ハバネラの様なpf左手のリズムに美しいvaが被って来ます。力感を抜いた洒脱さが素敵な演奏になっていますね。


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  今回の二人のステージです。曲構成はクラシカルになります
  3.のManuel de Fallaがセレクトされていますね。CDの方が選曲がいいです



ヴィオラの音色を生かす洗練された選曲とピッタリ合致した演奏。鳴りの良いタベア・ツィンマーマンのvaと、響の良いハヴィエル・ペリアネスのpf、相性バッチリです。

ちょっとハイブロウなBGMとしてもいけますね。誰か遊びに来る時など使うと洗練された音風景になりそうです。もちろん二人でウィスキー
🥃を片手に、と言うシーンにもピッタリ。オススメの一枚です!!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ストラヴィンスキーとグラスの『ヴァイオリン協奏曲』ダーヴィト・ネベルのヴァイオリンで

若きヴァイオリニストと近現代曲を得意とする指揮者によるヴァイオリン協奏曲集ですね。


Stravinsky & Glass Violin Concertos
David Nebel(vn), Kristjan Järvi(cond.)
フィリップ・グラス(Philip Glass, b. 1937)はミニマルで知られる訳ですが、この作品は複雑化される前の作品です。その後グラスは2009年にヴァイオリン協奏曲第二番を書いています。
オケはロンドン響ですね。

イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky, 1882-1971)の協奏曲は今ひとつピンと来ないのですが、唯一のヴァイオリン協奏曲だそうです。サミュエル・ドゥシュキン(vn)のアドバイスにより書かれて、献呈されています。三大バレエ曲の18年後の作品で、ストラヴィンスキー本人指揮の録音も残されていますね。
オケはバルト海フィルです。







1. グラス: ヴァイオリン協奏曲 第一番 (1987)
何処をどう聴いてもミニマルです(笑) グラスらしいオーケストレーションで、ソロvnもその流れから一本の楽器を抜き出した様です。第一楽章はテンポの速い流れで激しさもあります。旋律を装飾音で飾った様な、例えば下降音階の一つ一つの音に速いターン音型を付けている様な、ミニマルです。第二楽章は緩徐楽章ですがミニマルの構成内容は変わりません。変化の薄いこの10'は長く感じます。第三楽章はアレグロ的な楽章で速い反復、ミニマルですから当然ですが、を中心に激しいパートも存在します。まぁ、いかにも米国的な流れです。
この年代だと映画音楽"MISHIMA"をつい思い浮かべてしまいますね。


2. ストラヴィンスキー: ヴァイオリン協奏曲 (1931)
三楽章形式ですが、このCDでは二楽章のアリアと二つの楽章に分けています。第一楽章はカラフルで表情変化の大きいリズミカルさが印象的なスケルツォ的楽章です。その上に激情的なvnが乗ってきますね。第二楽章は調性の薄さを入れた緩徐楽章になっています。それでもリズム変化を交えてバレエ曲の様な表情がありますね。一瞬ですがマーラーの交響曲からの引用を感じます。第三楽章も同じ流れで、いっそうの浮遊的な流れです。第四楽章は一楽章の回帰的で、BPM指示も♪=120で同じです。vn技巧パートも楽しめます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  コパチンスカヤとhr響のLIVEです。いかにも彼女が好きそうな曲です
  明瞭な鳴りの本CDよりもアゴーギクが強くカラフルでvnは先鋭です




聴き間違えのないミニマルのグラス。もちろん聴き処はストラヴィンスキーですね。バレエ曲の様な表情豊かな流れが素晴らしく、多少の不協和音を挟んだり、オケとvnの対比も聴き応えがあります。

ネベルのvnは歯切れ良く元気で、オケの鳴りの明瞭さはK.ヤルヴィらしさを感じますね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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