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エルガーの「エニグマ変奏曲」: コンサートを前に4CDで, 今更ながらの おさらいです


エニグマ変奏曲, Op.36 (1899年)
(エドワード・エルガー, Edward Elgar 1857-1934)
今更ですが、今回は個人的な聴き方ポイントをおさらいして来週のコンサート(都響/ブラビンズ, 4/25には東響/ノットも)の予習ですw


【エニグマ変奏曲の個人的楽しみ方】 
[前半]第7変奏までは緩徐に、短く派手な第4・7変奏でメリハリを。
[後半]をメインに。第9変奏「ニムロッド」の美しさ、第10変奏「ドーラベッラ」の軽妙さ、第11変奏「G.R.S.」のワンコ(Dan)の元気さ、第12変奏「B.G.N.」チェロの響き、と楽しみます。そして最後の第14変奏「エドゥー」では迫力ですね。


次の4CDでインプレです。バーンスタイン以外はそれぞれオケの主席指揮者(音楽監督)時代ですね。

 ①プレヴィン / ロイヤルフィル
 ②ラトル / バーミンガム市響
 ③バーンスタイン / BBC響
 ④モントゥー / LSO
 ・下へ行くほど濃い味ですw




アンドレ・プレヴィン
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 (1986年)



前半は緩徐パートの真面目な優しさが印象的ですね。ほどよいメリハリに第4変奏や第7変奏での強音を鳴りよく奏します。第9ニムロッドは優しい美しさが際立ちます。第10ドーラベッラは少しシャイに、第11Danは元気いっぱい、第12変奏のチェロは哀愁ですね。ラストE.D.U.は折り目正しい強音パートです。


落ち着いていて優しい、いかにもプレヴィンらしいエニグマですね。





サイモン・ラトル
バーミンガム市交響楽団 (1993年)


rattle-enigma.jpg
(ジャケット写真です)


前半は緩徐を明瞭に表現して、第4・第7変奏は切れ味の良さを感じました。後半第9変奏は特徴的にppを長くゆっくりと現れてきます。印象的なニムロッドです。第10ドラベッラは軽妙、第11のワンコDanはイタズラ子の如く、第12変奏B.G.N.のチェロは落ち着きを払います。第14変奏E.D.U.の強音は派手ですね。


ほどよいコントラストを付けた落ち着きある流れのエニグマですね。





レナード・バーンスタイン
BBC交響楽団 (1982年)



主題から間を取って彫りの深さを見せてくるのが, いかにもバーンスタインです。前半から聴かせに入っていて惹き込まれてしまいます。第4変奏はそれほど力みませんが、第7変奏Troyteは疾走です。

後半第9変奏はトーンを沈めて夜明けの光の様な広がりを作って見事なニムロッドですね。コンサートのアンコールだったら目頭が熱くなるでしょう。第10ドーラベッラは落ち着いた楽器間の会話が楽しく、第11変奏はDanの冒険ですね。第12変奏ではゆったりとしたチェロですがオケとの音の厚みを感じます。FinaleのE.D.U.は揺さぶりの強い濃い流れです。


どのパートをとっても隙のない深慮の采配、感動的なバーンスタインのエニグマになっています。BBC響の演奏も見事ですね。(実はカップリングの"威風堂々"も素晴らしいです)

もっと濃い味、となると次のモントゥーしかありませんw





ピエール・モントゥー
ロンドン交響楽団 (1961年) [mono]



前半の緩徐はやや速めで感情を強めに込めているのが特徴的ですね。第4・第7変奏では速く激しく、です。

後半ニムロッドは唯一静的な流れを作っていて、やや速めではありますがグッとくるものがあります。第10変奏ドーラベッラはまさにお喋りなドーラ・ペニーに、第11変奏は走り回って川に飛び込むDanです。第12変奏のチェロはエモーショナルで情感が濃いです。FinaleのE.D.U.は爆走爆裂です!!


とにかく速いです。あっという間に進んで行く感じです。そして感情過多で突撃系のエニグマ ですね。

一番古く個性的, mono録音のエニグマ。これが私の標準原器になりますね。理由はありません。なぜかこれです!!




このインプレは個人的嗜好が偏って参考にならないかもしれません。もちろんオススメは④モントゥーと③バーンスタインです。

④モントゥーは一度聴いて欲しいですが、monoですしこの曲の好まれる方向とは違うかもしれません。③は人気があると思いますが、①や②が今の方向性かもしれませんね。

次週のコンサート, 都響は指揮が英国人ブラビンズさんですからなんとなく方向はわかる気がしますが。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ワーグナーの序曲・前奏曲を楽しめる管弦楽曲集:クールなデ・ワールト vs 濃厚なエストラーダ


ワーグナー管弦楽曲集
①エド・デ・ワールト ②アンドレス・オロスコ=エストラーダ
リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner, 1813-1883)の楽劇の序曲や前奏曲を集めたアルバムですね。一昔前は人気があったと思うのですが、今やなんでも全曲版の時代。このパターンが少なくなった気がします。でもコンサートでの登場機会もあり、ワーグナーのお馴染みの曲を知っておきたい、聴いてみたい、と言ったニーズはあると思うのですが。

ちなみにワグナーが序曲から前奏曲に替えたのは"ローエングリン"から、歌劇を楽劇に替えたのは次の"トリスタンとイゾルデ"からですね。

色々ありますが 個人的に馴染んでいたのはEMIカラヤン盤('74)ですね。今更それもないと思いますので、今回は色合いの異なる二つのヴァージョン、"エド・デ・ワールト指揮/オランダ放送フィル"(2003) と "アンドレス・オロスコ=エストラーダ指揮/フランクフルト放送響"(2018) で聴き比べてみようと思います。

ワーグナー作品年代 w:ワールト, e:エストラーダ】
  1840年:リエンツィ e
  1842年:さまよえるオランダ人 w, e
  1845年:タンホイザー w, e
  1848年:ローエングリン w, e (eは第1幕前奏曲のみ)
  1848-1874年:ニーベルングの指環 (今回録音なし)
  1859年:トリスタンとイゾルデ w, e
  1867年:ニュルンベルクのマイスタージンガー w
  1882年:パルジファル w, e




① Edo De Waart
Radio Filharmonisch Orkest Holland


Orchestral Work I
 
(左はハイブリッド盤, 右はシングルレイヤーSACDです)


『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲
かの冒頭の"マイスタージンガーの動機"はやや速めの落ち着いた気配で入ってきますね。"求愛の動機"はフルートで静める様に、コラールの様な"ダヴィデ王の動機"で華やかに、"芸術の動機"から山場へ向かいますが、この曲としては落ち着いた流れでしょう。展開部以降も同様で曲構成のわりには落ち着いた前奏曲になっています。

余計な事ですが、この曲の再現部の動機(主題)の表情を変える変奏パターンはマーラーもよく使っていると思いますね。


『ローエングリン』第1幕への前奏曲
序奏で天上が奏でられて、繊細で透明感ある"聖杯の動機"が現れます。木管に動機が移ると明るい光を感じる様になり、さらに金管が入って緩やかな広がりにします。山場は自然な流れで迎えて、静かに弦楽でおさめられていきます。穏やかで心地良い前奏曲になっていますね。


『ローエングリン』第3幕への前奏曲
第3幕の結婚行進曲への短い導入曲ですから"歓喜の動機"を切れ味よく必要以上の興奮を避けながら入ります。"婚礼の動機"を優美に奏でて、再び"歓喜の動機"がシャープに出現します。派手な曲ですが、落ち着いた前奏曲になっていますね。


『パルジファル』第1幕への前奏曲
冒頭の"聖餐の動機"は澄んだ音色を奏でて不安の流れを保ち、二回目の全休符後に"聖杯の動機"がゆったりと鳴り渡ります。"信仰の動機"が明るい光を優しく与えて、全体的には落ち着いた流れで、寂しげな"聖餐の動機"が印象的な前奏曲です。


『さまよえるオランダ人』序曲
ホルンが響く"呪いの動機"は締まり良く入り、鬱に流れます。ゼンタの"救済の動機"は静かに奏され、対話をする様ですね。曲が混沌としながらコーダは"救済の動機"で鎮まります。とは言え、抑えの効いた序曲の印象です。


『トリスタンとイゾルデ』第1幕への前奏曲・愛の死
前奏曲」のトリスタン和声が現れる冒頭の"憧れの動機"は間を作りながらもクール、"愛のまなざしの動機"は徐々にくるおしさを増しながら大きな波となりますが、揺さぶりはなくスッと冒頭の動機に寝ります。緩やかで冷めた前奏曲になっています。

愛の死」では"愛の死の動機"で静かに入り、"愛のまなざしの動機"の変奏で徐々に上げて行きます。ラストに静かに"憧れの動機"を見せます。愛の濃厚さ気高く表す感じです。


『タンホイザー』序曲
冒頭の"巡礼の動機"は緩やかに光を感じます。そのまま大きく盛り上げて"バッカナールの動機"を劇的に、巡礼動機を挟んで"ヴェーヌスの動機"は陽気に現れますね。例によってクールなコントラストですね。動機を絡ませ山場は激しさを見せて、ラストは落ち着いた広がりですね。落ち着いた構成のタンホイザーです。



楽曲構成に忠実さを感じ、興奮を排したクールなワーグナーの序曲・前奏曲になっていますね。揺さぶりは少なく、唸らせる様な流れは避けている感じです。

序曲・前奏曲自体で勝負と言うよりも、あくまでも全曲への導入をする印象です。




② Andrés Orozco-Estrada
Frankfurt Radio Symphony


Overtures & Preludes


『さまよえるオランダ人』序曲
"呪いの動機"は華々しく激しく、この曲らしさを感じます。"救済の動機"では鬱的なゼンタを緩やかに表してコントラストが良いですね。その後も荒々しさを表に出して、コーダの"救済の動機"で心の鎮まりを見せます。ストーリー性を強調する様な序曲です。


『ローエングリン』第1幕への前奏曲
澄んだ天上の音色から"聖杯の動機"は細い弦音でやや速めの繊細さです。木管が入ると落ち着いた音色となってきます。さらに金管が入る事で重心を下げて、山場は雄大に奏でます。まるで天上界から降臨するかの様です。速めのテンポ設定と楽器編成を生かして、名曲の美しい流れに磨きをかけていますね。


『トリスタンとイゾルデ』第1幕への前奏曲
入りの"憧れの動機"から大きくスローにアゴーギクを振っています。そこから"愛のまなざしの動機"がチェロで緩やかに入ると、感情移入の強い流れで二人の絡み合う情感が伝わる様です。高みに登った二人の感情が最後は見つめ合いながら離れる様におさまります。ストーリー的で情熱溢れる愛の前奏曲になっていますね。


『トリスタンとイゾルデ』イゾルデの愛の死
"愛の死の動機"はゆっくりと光がさす様に、そして"愛のまなざしの動機"変奏を繰り返しながら感情を高めて山場は劇的です。静かに死を迎える様に音をまとめるのも上手いです。イゾルデの愛が溢れる「愛の死」で、思わずグッときます。


『パルジファル』第1幕への前奏曲
"聖餐の動機"は穏やかで緩やかな光の様です。一回目の全休符後は哀しみに色を変え、二回の全休符後の"聖杯の動機"は堂々と鳴り響きコントラストが見事ですね。"信仰の動機"は緩やかに大きく、静かな中から現れます。アゴーギクを排したスロー静の中に表情のある前奏曲になっていますね。後半やや中だるみ感があるのが少し残念です。


『タンホイザー』序曲
"巡礼の動機"は澄んだ哀愁の音色を感じます。"バッカナールの動機"・"ヴェーヌス"の動機は派手な鳴りで色合いを濃く奏します。山場は速目に刺激を与えて、ラストはもちろん壮大そのものです。本編並みに激しい流れになっていますね。


『リエンツィ』序曲
殆ど序曲でしか聴くことのない歌劇ですね。導入部の管楽器の動機は暗く落ち着き、リエンツィの祈りで広げる様に美しい流れを作ります。雄叫びでは大きく鳴らして流れに変化を付けています。その後もメリハリ主体で、この曲を派手に飾り立てていますね。



アゴーギクとディナーミクによる色付けがマッチしたメリハリのあるワーグナーの序奏・前奏曲になっています。

トリスタンとイゾルデ「愛の死」は気持ちが入ってしまいますし、ローエングリンの第1幕前奏曲は素晴らしい演奏です。エストラーダ侮れず!! と言った感じですね。




クールなワールト、濃厚なエストラーダと言うとても対照的な二枚ですね。ストーリーをイメージしながらゆったり聴くならワールト。感情移入しながらメリハリを楽しむならエストラーダでしょう。

ワールトのワグナーと言うとデ・ヴリーガー編曲の管弦楽版"指環"が知られる訳ですが、個人的には以前インプレしたジョナサン・ダーリントンの"ドレスラー編曲版"も侮れずだと思います。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アンドリュー・デイヴィス指揮 All英国セットで聴く エドワード・エルガー(Edward Elgar) の「The Music Makers / The Spirit of England」


エドワード・エルガー
(Edward Elgar, 1857/6/2 - 1934/2/23)
イングランドの作曲家エルガーですが、知っているのはエニグマ変奏曲と威風堂々(第一番)くらい。このブログでインプレもチェロ協奏曲だけですね。知っている様で知らない英国人音楽家の一人です。

ブリテンもそうですが、楽風からこのブログの現代音楽家リストに入れていません。年代的には近現代音楽家なのですが。

 ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


The Music Makers / The Spirit of England
前回インプレで派手な合唱曲を聴いたので、ふとこのアルバムがある事を思い出しました。二曲ともに独唱を含めた合唱曲です。

アンドリュー・デイヴィス(Andrew Davis)指揮、BBC Symphony Chorus and Orchestra、そして歌手陣もレーベルも全て英国セットでの演奏です。






The Music Makers, Op. 69 (1912年)
内容は個性的で自曲の引用、分かりませんがw、を多く使っています。Testは詩人オショーネシーの「Ode」、芸術家を称える詩、です。ソプラノはサラ・コノリー(Dame Sarah Connolly)になります。
メロディアスなロマン派的な序奏から入り、合唱曲は聖歌風から情熱のフォルテに、派手な流れを主流にして雰囲気は勇壮な中に暗い印象を受けますね。#6 partでsopが芸術家を緩徐に、そして合唱と合わせて大きく表現します。ここが山場ですね。全体通して大きなロマン派的合唱曲です。


The Spirit of England, Op. 80 (1915-17年)
第一次大戦中に作られた曲で「イングランドの精神」というのがエルガーらしいと思ってしまうタイトルですね。Textはバイニョンから使っていて勇壮、テノールはアンドリュー・ステープルズ(Andrew Staples)です。
導入部から明るく派手ですね。そしていきなりテノールが入ってきます。歌詞も'栄光の死'などと、それらしい流れです。勇壮ですが、明るく朗々とした印象が強く、テノールの伸びある歌声がピッタリですね。全体的には優しさと緩徐の印象もありバランスが良い合唱曲になっています。



ロマン派的な二曲で、曲の背景は異なるのですがエルガーらしく心地よさがあります。二曲共に大きな合唱曲で、プロムスで聴いたら盛り上がる気がします。個人的には一曲目の方が好みです。

ライナーノートには英文の詩があるので、見ながら聴くのをオススメします。記載は主文だけで、歌には反復があり不明様ではありますがw



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





リッカルド・ムーティ&シカゴ響 の "ショスタコーヴィチ/ミケランジェロの詩による組曲"、"シェーンベルク/コル・ニドライ" という迫力カップリングCD


Kol Nidre
Suite on Verses of Michelangelo Buonarroti
メインは『ミケランジェロの詩による組曲』ですね。実は素晴らしいシェーンベルクの『コル・ニドライ』が一曲目にこっそり置かれています。ムーティならではの見事な選曲でしょうか。







コル・ニドライ, Op. 39 (1938年)
アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874-1951)

シェーンベルク米国亡命後の晩年作品ですね。楽風的には調性回帰や新古典主義風味の時代になり、最晩年に多く手がける事になる合唱曲です。"コル・ニドライ"はユダヤ教の典礼歌(→Wikipedia)を元にしていて、合唱だけでなく語り手(Alberto Mizrahi)が入ります。

幽玄さはバルトーク風、バレエ音楽的な要素はストラヴィンスキー風、そんな印象が初めに浮かびました。そこに"グレの歌"のシュプレッヒゲザングの様な語り手が入ります。合唱が入るとオラトリオの様です。
ショスタコーヴィチのオマケで付けられたのが残念なくらい素晴らしいです。ムーティが得意そうなのも好演の理由でしょうね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ギーレンのLive録音です。これも素晴らしい!!
  なぜか初期作品の"グレの歌"を思わせます。





ミケランジェロの詩による組曲, Op. 145a (1974年)
ドミトリ・ショスタコーヴィチ (Dmitrii Shostakovich, 1906-1975)

ショスタコーヴィチが亡くなる一年前の曲です。第15番(得意とした交響曲と弦楽四重奏曲)は澄んだ印象さえ受けるわけですが、この合唱曲ではどうでしょう。バスはイルダール・アブドラザコフ(Ildar Abdrazakov)です。ちなみに作品番号についている"a"はバス/管弦楽伴奏版ですね。(オリジナルはバス/ピアノ版)

11パートの楽曲です。第一印象は重厚なバスを前面に押し出した、ショスタコーヴィチらしからぬ旋律です。独特のショスタコ節は影を潜め、低音弦の響く#1パートの印象は強烈です。
その後もバスと管弦楽が沈みながら、時に細い光を見つける様に進みます。暗さにおどろおどろしさは無く、研ぎ澄まされた流れに感じますね。今一つその個性が好みにならないショスタコーヴィチですが、晩年のこの迫力は楽しめますね。アブドラザコフのバスも、ムーティ/シカゴ響もピッタリです。



強烈な威圧感の二曲が並びました。どちらも新古典主義的ではありますが個性的です。派手なオラトリオ的なシェーンベルク、重厚リート的なショスタコーヴィチ、両者強力ですね。

ムーティも見事で、合唱・声楽曲が好きな方にはオススメの一枚になります!!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





素晴らしい晩年のステンハンマル(Wilhelm Stenhammar)の「Sången (The Song), symphonic cantata 他」を鉄板のネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ響で聴きましょう


ヴィルヘルム・ステーンハンマル
(Wilhelm Stenhammar, 1871/2/7 - 1927/11/20)
指揮者と作曲家で知られるスウェーデンを代表する音楽家ですね。以前も書きましたが、楽風は1910年を境としてドイツ後期ロマン派風から北欧らしい風景感のある構成に変化しています。まだ欧州前衛が生まれる前ですから技法的な進歩性はないのですが、独特の音の広がりはこの時代の北欧系作曲家の流れですね。

 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


Suite from Romeo och Julia・Sången・他
BISレーベルのネーメ・ヤルヴィ(Neeme Järvi)/エーテボリ交響楽団(Gothenburg Symphony)の録音は1982年のステンハンマルから始まっているそうです。このアルバムが2018年ですから長いですねぇ。

エーテボリ響はN.ヤルヴィが22年間主席指揮者として鍛え上げたオケで、その昔はステンハンマルも15年に渡り主席指揮者を努めていましたね。

本アルバムは後期オケ作品で、メインは4曲目の "Sången (The Song)" ですね。4人の声楽ソリストと混声合唱団・少年少女合唱団、そして大編成オケという大きな構成のカンタータです。もう一曲は最後の作品番号作品である"ロメオとジュリエット:組曲"でしょう。






Suite from Romeo och Julia, Op. 45 (1922年)
北欧の冷たく澄んだ空気の様な流れで、ソロパートには舞曲の様な民族音楽和声を感じますね。そのコントラストがとても心地よい曲で、まさに晩年のステンハンマルらしさを楽しめます。確かに大きく括れば後期ロマン派の派生でしょうね。


Reverenza, (1911–13年)
6'ほどの小曲です。メヌエットやスケルツォを思わせる様な流れに微妙な調性感を入れています。情感も強めですね。表題曲的で、単独曲と言うよりも組曲の一部の様な印象です。


Two Sentimental Romances, Op. 28 (1910年)
ヴァイオリン協奏曲になりますね。ちょうど楽風変化の時に当たる作品です。まだ、後期ほど北欧色は強くありません。vnの優しい旋律も明確で、後期ロマン派と言うよりもロマン派的に聞こえるかもしれませんね。タイトル通りかも。


Sången (The Song), symphonic cantata, Op. 44 (1921年)
二部構成のカンタータです。textは国や自然、そしてそこからの様々な歌(The Song)を聞くと言った内容です。
激しい歌唱、荒波の様なオケ、厚い合唱団の歌声、濃厚な30'が楽しめます。楽風は複雑化していて対位法からポリフォニーの様な折り重なる流れが主流となっていますね。他のステンハンマルの曲とは一味違う劇的な厚みが素晴らしい一曲ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ブロムシュテットの指揮、スウェーデン放送響の演奏です。
  ヤルヴィの重厚さに対して、こちらは先鋭さですね。




やっぱり晩年最後の二曲が素晴らしく、20世紀前半のスカンジナビア音楽家独特の澄んだ空気感と、複雑で厚みあるカンタータのコントラストを聴かせてくれます。

"組曲"で感じる北欧の澄んだ空気は、音の跳躍が無く ターン音階の様な旋律構成がその要因の一つでしょう。一方コンプレックスな"カンタータ"では父ヤルヴィらしい出し入れが味わえますね。そんなステンハンマルを楽しめる好アルバム、オススメです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ロマン派の香り付けした古典、シャルル・グノー(Charles Gounod)の『交響曲集:第一番・第二番』


シャルル・グノー
(Charles Gounod, 1818/6/17 - 1893/10/18)
ロマン派時代のフランス人作曲家で、このブログで聴くギリギリの年代です。年代的にはメンデルスゾーンやシューマンの約10年後、ワーグナーとブルックナーの間くらいで、仏音楽ですとフランクが年代がかぶります。古典派からロマン派に軸足がシフトする時代ですね。
仏現代音楽の源流ですと、この先約半世紀後のドビュッシーやサティを待つわけです。


SYMPHONIES
交響曲は二曲だけ完成させていますね。いずれも四楽章の古典をベースにしているので個人的なハードルはかなり高いです。とは言え、美しい流れはもしかしたら仏印象派に繋がるものがあるかもしれない、などと考えながら聴いてみたいと思います。

指揮は仏近代を得意とするヤン・パスカル・トルトゥリエ(Yan Pascal Tortelier)、そしてトルトゥリエが本年6月まで主席指揮を務めたアイスランド交響楽団ですね。(録音時は主席指揮者です)






交響曲第1番 ニ長調 (1855年)
I.Allegro moltoは軽妙軽快なテンポで処々に いかにもバロックから古典ならではの旋律も。II.Allegretto moderatoは文字通りアレグレットで、前楽章をモチーフに少し緩やかにした感じですね。III.Scherzo. Non troppo prestoはメヌエットで舞踏曲、スケルツォではありませんね。IV.Finale. Adagioも緩急を付けていますが基本は変化の少ない類型主題・動機と反復旋律基本ですから9'が長く感じますw
ロマン派ではなくバロックか古典ですね。時代が半世紀逆行しているみたいです。


交響曲第2番 変ホ長調 (1856年)
第一番と構成する主題や動機が多少異なるだけで、古典的な流れは変わりません。ただ、その中に明確なテンポの変化と主題の旋律に違いが感じられて、ロマン派的な印象が見出せますね。古典ながら第1番にあったバロック風味がロマン派風味に入替わった印象でしょうか。



バロック風古典の第1番、ロマン派風古典の第2番です。いずれも緩やかに優雅な古典で、ベルリオーズより15年も後の音楽と思うと不思議です。(今更グノーをインプレして言うのも恐縮ですし、15年後にブラームスではありますがw)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





素晴らしい2枚の『ブルックナー 交響曲 第九番』:アンドリス・ネルソンス(2018年) と ミヒャエル・ギーレン(2013年)


ブルックナー 交響曲 第9番
来週9月4日の都響定期#885「ブルックナー9番」を前に所有未インプレの盤2枚、A.ネルソンスと今年3月亡くなったM.ギーレンで予習をしておきましょう。

個人的なブルックナー9の流れ確認w (レーヴェ版以外)
第一楽章:提示部(三主題)に対して、展開部(第一主題)+再現部(第二第三主題)の構築といった流れで、第一主題第七動機がポイントなのはもちろんです。
第二楽章:特徴的な重厚さの主要主題を目立たせて、中間部を走らせる事ですね。ここでも細かく組合される動機が気になります。
第三楽章:構成が判りづらく、提示部 - (G.P.) - その変奏部 - (G.P.) - コーダとして聴いています。「生との訣別」での対比は必須で、ラストの尻切れとんぼ感は避けて欲しいです。


さて二人のタクトはどうでしょう。そして大野和士さんが振る都響は?!





アンドリス・ネルソンス
(Andris Nelsons)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
2018/12



第一楽章
第一主題導入部の動機からスローで緩いディナーミクで緊張感を与えて、第七動機で激しい山場を迎えます。第二主題は優しく美しく心穏やかです。その流れに乗って第三主題のobが現れ、上げていきながら山場を作ります。王道の提示部ですね。
展開部の主題変奏もクセはなく表情付けがされ、第七動機は激しいですね。再現部は第二・三主題を哀愁と優しさのコントラストを変奏し山場へ、コーダはラストの見事さです。


第二楽章
弾ける様な第一動機から一気に激しい第二動機へ。基本は刺激的でコントラストが見事ですね。トリオは軽く弾みながら走り、主要主題との対比が上手いです。ここでも王道的で締まりの良い流れです。


第三楽章
提示部第一主題の入りは大きく、「生との訣別」では見事な山場を作り上げます。これぞブル9のイメージでしょうか。第二主題は穏やかな陰に落としながら表情ある緩徐を作り、コントラストが良いですね。ゲネラルパウゼの後の変奏部はトリスタンを大きく再現して、その後も彫りの深い流れですね。各動機の回帰もクセは見せません。コーダは緊張感ある静を作って、最後は穏やかに終息します。



締まりの良い王道のブルックナー9ですね。メリハリも良く、クセはなく、誰でも安心・満足感のある一枚になっているでしょう。

ヴァントの様な始終低重心ではありませんが、この曲に欠かせない緊張と重厚を持っていますね。






ミヒャエル・ギーレン
(Michael Gielen)
バーデンバーデン・フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
2013/12/20



第一楽章
第一主題群はテンポをやや遅めにとって緊張感を高め、第七動機を炸裂させます。計算通りと言ったアゴーギクです。第二主題は美しい動機に揺さぶる様な間をもたせます。スローベースのこの辺りはギーレンらしさでしょうか。第三主題のobはスローに入り、山場を作ります。展開部は第一主題の変奏を色濃く力感で奏でますね。再現部も主題を微妙な揺さぶりをかけ変奏しながら、山場へと向かいます。コーダは第一主題の動機を緊迫感で組合せ盛上げます。
ギーレンらしいタメ(アゴーギク)を効かせた第一楽章でしょうね。


第二楽章
主要主題の強烈な動機は重厚パワープレイです。若干スローで重戦車風、続くobの動機も優美ですが緊迫感が勝っています。トリオは約束通りに軽快ですが、ここも緊張感を湛えて来ます。軸足は重厚・緊迫感に感じます。


第三楽章
冒頭のトリスタン和声は重厚に、続く「生への決別」は派手派手しく広げて見事な対比を作ります。第二主題はスロー緩やかに鎮めて影のある緩徐パートを作ります。ゲネラルパウゼの後の変奏部はスロー基調に各主題を重厚に並べ、緊迫感漲り見事です。再びゲネラルパウゼ後のコーダはスローに間をとって、ゆっくりと鎮めて納めます。上手い構成ですね。



ギーレンらしい微妙なアゴーギクで、重厚で緊迫感のあるブルックナー9になっていますね。ややスローの設定もぴったりと来ています。隙のないギーレン、聴き応え十分のオススメです

引退一年前の演奏ですね。ちなみに同年のマーラー6は世界最遅演奏でしたが、ここではそこまで極端ではありません。





王道のネルソンス、個性際立つギーレン、どちらもオススメのブルックナー9が楽しめます。

大野和士さんは、きっとメリハリと迫力の演奏になるでしょう…と 勝手に推測しますが。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





響き渡る強鍵の4手ピアノ、リスト 4手ピアノのための『死の舞踏』と交響詩集 / Duo ツユキ&ローゼンボーム


TOTENTANZ piano 4 hands
リストをここで紹介する必要性はないと思いますので割愛ですね。
このアルバムに興味を惹かれたのはピアノ連弾で"死の舞踏"を弾くというパターンだからですね。そしてこの曲だけ、演奏者の2人による編曲版(それ以外はリスト編曲)です。その他の曲も耳馴染みの良い曲が4手ピアノ版で楽しめるのは興味深いですね。割とミーハー的かもしれませんが、それも楽しいということで。

Duo Tsuyuki and Rosenboom による2016年録音ですが、2009年にドイツ(ハノーファー音楽大在学中)結成され、日本を含む各国音楽コンクールでの受賞もあるそうです。露木智恵さんはリストの演奏で評価を受けている様ですね。






死の舞踏『怒りの日』によるパラフレーズ
打楽器の様な鍵盤の使い方、独特の"怒りの日"の旋律を生かすコントラストの強いピアノの鳴り、この曲の濃厚な印象を表現していますね。
ただDuo二人による編曲は装飾音が多く、"怒りの日" の音色が朗々と響き渡る この曲本来の心地よさが少し削られているのが残念ですね。4手強音パートは蠢く迫力よりも少しうるさい感じが強いかもしれません。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Live映像です。こちらの方が少し静音パートでの表情等が感じられますね。



交響詩 第6番「マゼッパ」
当然ながら技巧性を表に出していますね。ここでもお馴染みの主題をパワープレイで鳴らします。肩肘張ってガチ演奏の気配を前面に感じます。確かにスローパートはスローなのですが、流れにタッチの緩やかさや"間"が欲しい様な…


交響詩 第11番「フン族の戦争」
ここでもアゴーギク不足の様な強烈なパワーが強く、強烈な聴き疲れを感じます。静音パートはもちろん静音ですが、なぜか硬く感じます。コンサートで聴いたら、もっと違う印象があるのでしょうね。


交響詩 第3番「前奏曲」
楽曲が変わっても印象は同じなのは、このDuoの明確なキャラだからでしょう。楽曲自体の構成をインプレしてもそれはリストなので、"同上"という感じですね。



全体を通して息をもつかさぬ力感に貫かれています。その手の演奏を好む方には垂涎の演奏でしょう。強鍵と無表情、それがこのPiano Duoのキャラなのかもしれませんね。

これだと"死の舞踏"はアルナルド・コーエンのpf(オススメです!)、他は管弦楽版の方が楽しめると思ってしまうのが残念ですが。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





マリス・ヤンソンスの『ブルックナー 交響曲 第9番』あまりに違う2CD同年録音 | バイエルン放送響 vs コンセルトヘボウ管


ブルックナー「交響曲 第9番」
今更のブル9なので紹介は割愛して、個人的な各楽章のインプレのポイントを事前にw

第一楽章:提示部(三主題)に対して、展開部(第一主題)+再現部(第二第三主題)の構築といった流れで、第一主題第七動機がポイントなのはもちろんです。
第二楽章:特徴的なのは重厚な主題を目立たせて、中間部を走らせる事ですね。ここでも細かく組合される動機が気になります。
第三楽章:構成が判りづらく、提示部(G.P.) - その変奏部(G.P.) - コーダとして聴いています。「生との訣別」主題との対比は欲しいですね。ラストの尻切れとんぼ感は避けて欲しいです。

ちなみに原典版採用ですね。年寄りには三楽章で終了するこのパターンが普通に聴けます。


マリス・ヤンソンス
(Mariss Jansons, 1943/1/14 - )
今回は同じ2014年録音の二つのオケでのブルックナー 9ですね。
・2014年1月:バイエルン放送交響楽団 [BRSO]
・2014年3月:ロイヤル・コンセルトヘボウ [RCO]

共にビッグネーム・オケですが、同時期に首席指揮者を務めていたのが凄いです。ドイツのオケとコンセルトヘボウを振ると全く異なる印象になるのは、例えばバーンスタインのマーラー9番などでもわかりますね。(サラステ・他もマーラーではドイツオケで振ると独特の色合いになる事はインプレしています)

ちなみに演奏時間は、
     [BRSO] [RCO]
第一楽章 23:56 → 23:05
第二楽章 11:06 → 10:52
第三楽章 22:08 → 20:44
となり、コンセルトヘボウの方がかなり速くなっていますね。さて、その違いは。





バイエルン放送交響楽団
(首席指揮者:2003年 - 現在[2019])
2014年1月13-17日 rec.




第一楽章
"ブルックナー開始"から始まる第一主題動機群はクリアーでメリハリがあり見通しの良さを感じます。第7動機では重心の低さを見せ重厚そのもの。第二主題はやや速めな穏やかさでトリオの様に雰囲気を変えます。第三主題のオーボエの絡みは哀愁を奏で、山場を大きく作ります。
展開部の第一主題動機は割とさりげなく、第7動機二回目の山場はその前ポリフォニカルな流れから大きく響かせます。
再現部は第二第三主題を揺さぶりを付けて色付けし、コーダは渦を巻きラストのトゥッティ山場は陶酔的です。


第二楽章
冒頭主題は浮遊感、第一トリオはスローに落として重厚さを全面に押し出し、第二トリオの戯けたオーボエとの強い対比を作ります。中間部トリオは軽快聡明で三者対比が上手く作られて、その後の動機の組合せも見晴らしが良いですね。


第三楽章
冒頭導入部はやや強めの広がりを、そこから静的に沈ませて「生との訣別」主題を大きく華やかに奏でます。その後少々ダレる感もありますが、第二主題の弦と木管は美しい広がりを感じます。G.P.(ゲネラルパウゼ)後はそれまで(提示部?)の動機に緩急付けて流れを作っています。コーダは静的な流れに緊張感を与えてラストは上手く余韻を残します。



緩急のアゴーギクを振りながらも見晴らしの良いブルックナー9です。ヴァントに聴き慣れていると揺らぎが気になるのですが、録音の良さと相まって心地よさを感じますね。

伸し掛かる様な重々しさは回避しています。第二楽章での動機群のメリハリの良さは素晴らしいです。




ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(首席指揮者:2004年 - 2015年)
2014年3月19,21,23日 rec.




第一楽章
第一主題動機群は速めにシャープで緊張感があります。第7動機はその流れに乗った山場を作ります。その後も速めに第二主題も同じテンポでの穏やかさを構築、BRSOにあった中間部的な変化ではありませんね。第三主題のオーボエの絡みもさりげなく繋げてディナーミクを使って山場を大きく作ります。
展開部の第一主題動機はBRSO同様さらりと、第7動機も然程の強調はしていません。山場はかなり速めに強調されています。
再現部の第二第三主題は脚色は無く再現され、コーダはその流れからラストのトゥッティ山場をしっかり鳴らし切ります。


第二楽章
第一トリオは流れに乗った違和感のない重厚さを作り、第二トリオのオーボエとのさりげない対比を見せます。中間部トリオは当然軽快で三者対比は王道的安定感と言って良いでしょう。その後の動機の組合せでは緩急も入れて上手いです。


第三楽章
第一主題冒頭をまさに「トリスタンとイゾルデ」の様にスローに、その気配で鬱に変え「生との訣別」主題は流れに乗った山場感です。第二主題の弦と木管はシンプルですが、ディナーミクでの懐の広さを感じます。全休符後は全体速めの各動機群に対してディナーミク主体に色彩感と緊迫感の流れを作ります。コーダは静に澄んだ流れにして自らの交響曲の引用を使って安定感ある終結です。



速めですが統一感の強い王道的ブルックナー9です。アゴーギクの揺さぶりを避け全体の流れを重視した構成ですね。ディナーミクでの色付けの上手さを感じますね。

速めの設定をどう見るかはありますが、安心感ある堂々の演奏です。




緩急の表情を明確に付け見晴らしの良いバイエルン放送響、速めのテンポ設定で王道を行くコンセルトヘボウ。両者とも十分な聴き応えですね。

それにしても、テンポ設定、アゴーギク設定、あまりに異なる"同一指揮者/同年三ヶ月違い"の二つの演奏です。

これをオケの個性の違いでは片付けられないでしょう、少々違う感じもしますしね。武器を変えれば何でもできるゾ、っていうのがヤンソンスの答えなのでしょうか?!
(ヤンソンスが本当にやりたいブル9は? 気になりますね)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ユジャ・ワン のピアノ・ソロ Live『ベルリン・リサイタル』を聴く


Yuja Wang
The Berlin Recital
ユジャ・ワンというと技巧的で派手さのステージ向きという印象です。コンサートで観たのは既に6年前のM.T.トーマス/S.F.響と、少々古い印象になってしまっていますね。
その後もドゥダメル/シモン・ボリバルとの共演盤のラフマニノフとプロコフィエフのコンチェルトしか記憶にありません。というわけで評判の良かった北米・欧州ツアーのLiveが出たので久しぶりに聴いてみました。
国内ではゲルギエフ/ミュンヘン管との来日にぶつけたCD発売でもあったわけですが…







セルゲイ・ラフマニノフ
(Sergei Rachmaninov, 1873-1943)
絵画的練習曲《音の絵》は作品番号33と39、それぞれ9曲構成の中から選曲されています。(33/4は欠番)

前奏曲 Op.23/5
 ロシア民族和声の強烈な技巧系有名曲ですが、どちらかというと表情付けを強くした演奏になりますね。これ見よがしに強音のテクをひけらかす事を避けている感じです。余裕を感じる演奏ですね。


絵画的練習曲《音の絵》 Op.39/1, Op.33/3
 "Op.39/1"は超絶技巧曲です。速いアルペジオでディナーミクとアゴーギクを使っていますが、ここでも落ち着きがあって曲に表情を付けている感じです。押し出しの強い前半と後半も抑え気味です。
一方"Op.33/3"は叙情的な緩徐曲で、ここではエモーショナルなスロー側アゴーギクが映える演奏になります。以前のユジャ・ワンとは印象が異なり、この情感が伝わる演奏は悪くありません


前奏曲 Op.32/10
 ここでも澄んだ透明感ある音色を弾きますね。緩徐曲の表現力、バランスの良いアゴーギクとディナーミク、が見事に発揮されているのを感じます。美しい演奏になっています。




アレクサンドル・スクリャービン
(Alexander Scriabin, 1872-1915)
スクリャービンといえばピアノ曲で、このブログでも多くインプレしています。第5番以降の過渡期から無調への時代が好みですが、このピアノ・ソナタ 第10番は「トリルソナタ」と呼ばれてその名の通りの特徴ですね。単一楽章でソナタ形式になっています。

ピアノ・ソナタ 第10番 Op.70
 幽玄さはスクリャービンで、ここでも出し入れをうまく使っています。淡々とではなく、静的透明感ながら表現力は強めでしょう。テンポの揺らぎがうまいですね。トリルが少し硬く感じるパートもありますが…




ジェルジュ・リゲティ
(György Ligeti, 1923-2006)
ハンガリーの現代音楽家G.リゲティの後期を代表するピアノ・エチュードですね。1985-2001年にかけて作られた全18曲から3曲をピックアップしています。リゲティが亡くなって12年とは早いものです。

ピアノのための練習曲集 第3番, 第9番, 第1番
 「妨げられた打鍵:第3番」「眩暈:第9番」「無秩序:第1番」共にもトリル系のミニマル風な速弾きで、ともするとフラットになりがちですが、曲により打鍵の変化を付けています。第3番はエモーショナルに最後の第1番は速く強健的にといった色付けですね。うまい構成感で聴かせてくれます




セルゲイ・プロコフィエフ
(Sergei Prokofiev, 1891-1953)
熟年期に書かれた 通称「戦争ソナタ」の三作目ですね。ユジャ・ワンですと、一つ前の派手な第7番を選ぶかと思いました。

ピアノ・ソナタ 第8番 Op.84
 調性の妖しさを生かす様な幽玄でミステリアスなパートの中に得意の強鍵が交錯する第一楽章、浮遊感のある微妙な調性感の主題をソフトな優しさで奏でる第二楽章、速い流れをユジャ・ワンらしいシャープで歯切れの良さで突き進む第三楽章です。
最後に現れたこの最終楽章の弾きが本来のユジャ・ワンでしょうね、やっぱり。




緩徐曲の美しさや幽玄さを中心に持ってきたピアノ曲集で、ユジャ・ワンの印象とは一味違ったエモーショナルな表現を魅せてくれるアルバムですね。
とは言え、ベスト・トラックは最後のプロコフィエフの第三楽章の元気さになってしまいます。

そうなると気になるのはスクリャービンとプロコフィエフ(第一楽章)で、幽玄さの中に処々ユジャ・ワン本来の硬く強鍵的な表現に没入するパートがミスマッチ風に感じられる気もします。

ジャケット写真を見ると、ステージ衣装は相変わらず派手ですねw





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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。


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