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あまりに違うマリス・ヤンソンスの『ブルックナー 交響曲 第9番』同年録音2CD | バイエルン放送響 vs コンセルトヘボウ管


ブルックナー「交響曲 第9番」
今更のブル9なので紹介は割愛して、個人的な各楽章のインプレのポイントを事前にw

第一楽章:提示部(三主題)に対して、展開部(第一主題)+再現部(第二第三主題)の構築といった流れで、第一主題第七動機がポイントなのはもちろんです。
第二楽章:特徴的なのは重厚な主題を目立たせて、中間部を走らせる事ですね。ここでも細かく組合される動機が気になります。
第三楽章:構成が判りづらく、提示部(G.P.) - その変奏部(G.P.) - コーダとして聴いています。「生との訣別」主題との対比は欲しいですね。ラストの尻切れとんぼ感は避けて欲しいです。

ちなみに原典版採用ですね。年寄りには三楽章で終了するこのパターンが普通に聴けます。


マリス・ヤンソンス
(Mariss Jansons, 1943/1/14 - )
これまた今更の人気のベテラン ラトビア人指揮者ヤンソンス。レニングラード音楽院からウィーン国立音楽アカデミーで学んでいますが、何と言ってもレニングラード・フィルでムラヴィンスキーの助手を務めた事が大きい様です。

今回の2CDは共にビッグネーム・オケですが、同時期に首席指揮者を務めていたのが凄いです。ドイツのオケとコンセルトヘボウを振ると全く異なる印象になるのは、例えばバーンスタインのマーラー9番などでもわかりますね。(サラステ・他もマーラーではドイツオケで振ると独特の色合いになる事はインプレしています)

ちなみに演奏時間は、
     [BRSO] [RCO]
第一楽章 23:56 → 23:05
第二楽章 11:06 → 10:52
第三楽章 22:08 → 20:44
となり、コンセルトヘボウの方がかなり速くなっていますね。





バイエルン放送交響楽団
(首席指揮者:2003年 - 現在[2019])
2014年1月13-17日 rec.




第一楽章
"ブルックナー開始"から始まる第一主題動機群はクリアーでメリハリがあり見通しの良さを感じます。第7動機では重心の低さを見せ重厚そのもの。第二主題はやや速めな穏やかさでトリオの様に雰囲気を変えます。第三主題のオーボエの絡みは哀愁を奏で、山場を大きく作ります。
展開部の第一主題動機は割とさりげなく、第7動機二回目の山場はその前ポリフォニカルな流れから大きく響かせます。
再現部は第二第三主題を揺さぶりを付けて色付けし、コーダは渦を巻きラストのトゥッティ山場は陶酔的です。


第二楽章
冒頭主題は浮遊感、第一トリオはスローに落として重厚さを全面に押し出し、第二トリオの戯けたオーボエとの強い対比を作ります。中間部トリオは軽快聡明で三者対比が上手く作られて、その後の動機の組合せも見晴らしが良いですね。


第三楽章
冒頭導入部はやや強めの広がりを、そこから静的に沈ませて「生との訣別」主題を大きく華やかに奏でます。その後少々ダレる感もありますが、第二主題の弦と木管は美しい広がりを感じます。G.P.(ゲネラルパウゼ)後はそれまで(提示部?)の動機に緩急付けて流れを作っています。コーダは静的な流れに緊張感を与えてラストは上手く余韻を残します。



緩急のアゴーギクを振りながらも見晴らしの良いブルックナー9です。ヴァントに聴き慣れていると揺らぎが気になるのですが、録音の良さと相まって心地よさを感じますね。

伸し掛かる様な重々しさは回避しています。第二楽章での動機群のメリハリの良さは素晴らしいです。




ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(首席指揮者:2004年 - 2015年)
2014年3月19,21,23日 rec.




第一楽章
第一主題動機群は速めにシャープで緊張感があります。第7動機はその流れに乗った山場を作ります。その後も速めに第二主題も同じテンポでの穏やかさを構築、BRSOにあった中間部的な変化ではありませんね。第三主題のオーボエの絡みもさりげなく繋げてディナーミクを使って山場を大きく作ります。
展開部の第一主題動機はBRSO同様さらりと、第7動機も然程の強調はしていません。山場はかなり速めに強調されています。
再現部の第二第三主題は脚色は無く再現され、コーダはその流れからラストのトゥッティ山場をしっかり鳴らし切ります。


第二楽章
第一トリオは流れに乗った違和感のない重厚さを作り、第二トリオのオーボエとのさりげない対比を見せます。中間部トリオは当然軽快で三者対比は王道的安定感と言って良いでしょう。その後の動機の組合せでは緩急も入れて上手いです。


第三楽章
第一主題冒頭をまさに「トリスタンとイゾルデ」の様にスローに、その気配で鬱に変え「生との訣別」主題は流れに乗った山場感です。第二主題の弦と木管はシンプルですが、ディナーミクでの懐の広さを感じます。全休符後は全体速めの各動機群に対してディナーミク主体に色彩感と緊迫感の流れを作ります。コーダは静に澄んだ流れにして自らの交響曲の引用を使って安定感ある終結です。



速めですが統一感の強い王道的ブルックナー9です。アゴーギクの揺さぶりを避け全体の流れを重視した構成ですね。ディナーミクでの色付けの上手さを感じますね。

速めの設定をどう見るかはありますが、安心感ある堂々の演奏です。




緩急の表情を明確に付け見晴らしの良いバイエルン放送響、速めのテンポ設定で王道を行くコンセルトヘボウ。両者とも十分な聴き応えですね。

それにしても、テンポ設定、アゴーギク設定、あまりに異なる"同一指揮者/同年三ヶ月違い"の二つの演奏です。

これをオケの個性の違いでは片付けられないでしょう、少々違う感じもしますしね。武器を変えれば何でもできるゾ、っていうのがヤンソンスの答えなのでしょうか?!
(ヤンソンスが本当にやりたいブル9は? 気になりますね)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ユジャ・ワン のピアノ・ソロ Live『ベルリン・リサイタル』を聴く


Yuja Wang
The Berlin Recital
ユジャ・ワンというと技巧的で派手さのステージ向きという印象です。コンサートで観たのは既に6年前のM.T.トーマス/S.F.響と、少々古い印象になってしまっていますね。
その後もドゥダメル/シモン・ボリバルとの共演盤のラフマニノフとプロコフィエフのコンチェルトしか記憶にありません。というわけで評判の良かった北米・欧州ツアーのLiveが出たので久しぶりに聴いてみました。
国内ではゲルギエフ/ミュンヘン管との来日にぶつけたCD発売でもあったわけですが…







セルゲイ・ラフマニノフ
(Sergei Rachmaninov, 1873-1943)
絵画的練習曲《音の絵》は作品番号33と39、それぞれ9曲構成の中から選曲されています。(33/4は欠番)

前奏曲 Op.23/5
 ロシア民族和声の強烈な技巧系有名曲ですが、どちらかというと表情付けを強くした演奏になりますね。これ見よがしに強音のテクをひけらかす事を避けている感じです。余裕を感じる演奏ですね。


絵画的練習曲《音の絵》 Op.39/1, Op.33/3
 "Op.39/1"は超絶技巧曲です。速いアルペジオでディナーミクとアゴーギクを使っていますが、ここでも落ち着きがあって曲に表情を付けている感じです。押し出しの強い前半と後半も抑え気味です。
一方"Op.33/3"は叙情的な緩徐曲で、ここではエモーショナルなスロー側アゴーギクが映える演奏になります。以前のユジャ・ワンとは印象が異なり、この情感が伝わる演奏は悪くありません


前奏曲 Op.32/10
 ここでも澄んだ透明感ある音色を弾きますね。緩徐曲の表現力、バランスの良いアゴーギクとディナーミク、が見事に発揮されているのを感じます。美しい演奏になっています。




アレクサンドル・スクリャービン
(Alexander Scriabin, 1872-1915)
スクリャービンといえばピアノ曲で、このブログでも多くインプレしています。第5番以降の過渡期から無調への時代が好みですが、このピアノ・ソナタ 第10番は「トリルソナタ」と呼ばれてその名の通りの特徴ですね。単一楽章でソナタ形式になっています。

ピアノ・ソナタ 第10番 Op.70
 幽玄さはスクリャービンで、ここでも出し入れをうまく使っています。淡々とではなく、静的透明感ながら表現力は強めでしょう。テンポの揺らぎがうまいですね。トリルが少し硬く感じるパートもありますが…




ジェルジュ・リゲティ
(György Ligeti, 1923-2006)
ハンガリーの現代音楽家G.リゲティの後期を代表するピアノ・エチュードですね。1985-2001年にかけて作られた全18曲から3曲をピックアップしています。リゲティが亡くなって12年とは早いものです。

ピアノのための練習曲集 第3番, 第9番, 第1番
 「妨げられた打鍵:第3番」「眩暈:第9番」「無秩序:第1番」共にもトリル系のミニマル風な速弾きで、ともするとフラットになりがちですが、曲により打鍵の変化を付けています。第3番はエモーショナルに最後の第1番は速く強健的にといった色付けですね。うまい構成感で聴かせてくれます




セルゲイ・プロコフィエフ
(Sergei Prokofiev, 1891-1953)
熟年期に書かれた 通称「戦争ソナタ」の三作目ですね。ユジャ・ワンですと、一つ前の派手な第7番を選ぶかと思いました。

ピアノ・ソナタ 第8番 Op.84
 調性の妖しさを生かす様な幽玄でミステリアスなパートの中に得意の強鍵が交錯する第一楽章、浮遊感のある微妙な調性感の主題をソフトな優しさで奏でる第二楽章、速い流れをユジャ・ワンらしいシャープで歯切れの良さで突き進む第三楽章です。
最後に現れたこの最終楽章の弾きが本来のユジャ・ワンでしょうね、やっぱり。




緩徐曲の美しさや幽玄さを中心に持ってきたピアノ曲集で、ユジャ・ワンの印象とは一味違ったエモーショナルな表現を魅せてくれるアルバムですね。
とは言え、ベスト・トラックは最後のプロコフィエフの第三楽章の元気さになってしまいます。

そうなると気になるのはスクリャービンとプロコフィエフ(第一楽章)で、幽玄さの中に処々ユジャ・ワン本来の硬く強鍵的な表現に没入するパートがミスマッチ風に感じられる気もします。

ジャケット写真を見ると、ステージ衣装は相変わらず派手ですねw





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

インゴ・メッツマッハーで聴く『英雄の生涯:R.シュトラウス | アメリカ:E.ヴァレーズ』& 『アメリカ』はミヒャエル・ギーレンと聴き比べ


インゴ・メッツマッハー (Ingo Metzmacher)
ベルリン・ドイツ交響楽団 (Deutsches Symphonie-Orchester Berlin)
新日フィルの"Conductor in Residence"(2013-2015)も務めて日本でも人気のドイツ人指揮者メッツマッハーですね。その最後のコンサートも行ってきましたが、演目はR.シュトラウスとE.ヴァレーズでした。メッツマッハーが得意としていたのは間違いなく、これは首席指揮者を務めた(2007-2012年)ベルリン・ドイツ交響楽団との録音です。

実は今週末(2018-12/15)のジョナサン・ノット/東響のコンサートがこの組合せなので、予習も兼ねてのインプレですね。







リヒャルト・シュトラウス
(Richard Strauss, 1864-1949)
言わずと知れたR.シュトラウス最後の交響詩ですね。個人的にも好きな後期ロマン派の一曲で、全6パートがアタッカで繋がっています。メッツマッハーは極少数派の第1稿を使っていますのでフィニッシュの盛り上げは無く、その前の静かな終焉になりますね。そこがポイントだったのですが。
「カラヤンのCDx3録音とシュトラウス本人のCDで聴き比べ」をインプレ済みです ➡️ こちら

英雄の生涯, Ein Heldenleben (1898年)
 緩やか優美なテーマ[1.英雄]から入り、嘲笑する敵と沈む心をコントラストを付けた[2. 英雄の敵]、vnの伴侶とオケの英雄が優美に語る緩徐の[3. 英雄の伴侶]はとても表情が豊かで素晴らしいですね。
敵や戦闘シーンを抑え気味にして落ち着きのある[4. 英雄の戦場]、[5. 英雄の業績]も後半の静的な美しさから最後の最終パートへ繋げています。この流れがメッツマッハーの意図した構成なのでしょう。最後[6. 英雄の隠遁と完成]も同じ構成で緩やかで心穏やかな流れを作って死を迎えます。看取るvn音色に心が動かされました。
"英雄"の勇ましさや勇敢さよりも心の表現を重視した流れで、人間としての英雄を描いた新しい"英雄の生涯"像です。




エドガー・ヴァレーズ
(Edgard Varèse, 1883-1965)
1915年にフランスから米国に渡ったヴァレーズはその初期作品を一曲のみ残して廃棄していますね。その後の第一作目がストラヴィンスキーの影響を感じるこの"アメリカ"になります。その後はクラスターを中心に空間音響や電子音楽を作り出して現代音楽の流れの一つを築き上げている現代音楽家ですね。
「ブーレーズCDx2録音とシャイーで"ヴァレーズ作品集"の聴き比べ」をしています ➡️ こちら

アメリカ, Amériques (1920年)
 静的パートに重心を置いている様に感じます。強音はもちろん炸裂的で華やかですが、静音の煌めきと落ち着いたスローな流れはストラヴィンスキー感は薄めです。新世界の派手な喧騒クラスターやサイレンは強調された感が薄く、蠢く陰の側にスポットを当てた様に感じますね。




新日フィル最後のコンサートでもそうでしたが、際立たせる迫力よりも感情表現を感じますね。"英雄の生涯"では、自己を見つめる様な流れに新しさを感じて共感できました。この流れですと第1稿がとても合っていますね。
"アメリカ"でも新世界大都市的な派手さよりも、そこに潜むものを表現しているかの様です。ただ、こちらはヴァレーズらしさが薄まっている感は否めません。

今更ですが、メッツマッハー/新日フィル 最後のコンサートは、これを聴いてから行くべきだった気がします。







ギーレン:アメリカ

ミヒャエル・ギーレンと首席指揮者(1986-1999年)を務めたバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団のアメリカを聴き比べてみましょう。



初めの静音パートからテンポがあって明瞭さが強いです。挟まれる等拍パルスも印象的で、現れるクラスターはパルス的で力強さ漲ります。攻撃的で静音パートも彫りが深く先鋭、全体に厚めで緊迫感ある構成、ラストの躍動・混沌も見事です。これぞヴァレーズの響!!
(強音軸足のこの盤か、静的パートに透明感をみせるSony盤ブーレーズがおすすめですね)




♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ストラヴィンスキーの『春の祭典』をグスターボ・ヒメノ と ワレリー・ペトレンコ で聴いてみましょう


春の祭典 (The Rite of Spring, Le sacre du printemps)
イーゴリ・ストラヴィンスキー (Igor Stravinsky, 1882-1971)
言わずと知れた曲紹介不要のストラヴィンスキー『春祭』ですが、オケ版は "クルレンツィス、ロト、シャイーで聴き比べ" 以来になりますね。今回も近年の発売から二枚、G.ヒメノとV.ペトレンコです。
コンサートの予習として、12/10(月) A.ギルバート/都響 第868回を前に聴き比べてみようと思います。




グスターボ・ヒメノ (Gustavo Gimeno)
ルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
2015年から音楽監督を務めるルクセンブルク・フィル(Orchestre Philharmonique du Luxembourg)との演奏ですね。




第一部"序奏"はライトでシンプルさを感じてバレエ曲らしさで始まります。続く"乙女達の踊り"でも落ち着いた流れを作っていますが、煌びやかさも持ち合わせますね。"春の輪舞"も色合いは深いですが、極端な揺さぶりは避けています。第二部の"序奏"もシンプルで調性の薄さを生かした妖しげな流れを作ります。"乙女の神秘的な踊り"もその流れで続き静的ですね。ラスト"生贄の踊り"も多少色付けは強くなりますが、基本的には安定度が高く変拍子も然程強調感がありません。

全体としては華やかをもたせながらバレエ曲としての完成度が高い感じですね。ディナーミクは付けますが、アゴーギクの陰影付けは極弱めです。アゴーギクをあまり振られたら踊りづらいかもしれません。




ワシリー・ペトレンコ (Vasily Petrenko)
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団
2006年からペトレンコが首席指揮者を務めるロイヤル・リヴァプール・フィル(Royal Liverpool Philharmonic Orchestra)との演奏ですね。




第一部"序奏"は緩やかな揺らぎを作りながら管楽器が表情付けしていますね。"乙女達の踊り"はテンポアップして切れ味を見せ、"春の輪舞"は陰影を明確に付けてきますがクドさはありません。第二部の"序奏"もうまく色合いを付けて表情がありますね。"乙女の神秘的な踊り"ではテンポ変化を付けて不安定さを表現しています。"祖先の儀式"のコントラストの強い激しい流れから、"生贄の踊り"では変拍子を強調するように陰影を強めて切れ味を見せますね。

全体としてはドン・シャン的な派手さと変化を生かしながらもスマートです。アゴーギクも明瞭で、空気感を常に変化させる様な流れですね。




華やかながらややフラットさを感じるG.ヒメノ、揺さぶり強く色合いを付けながら興奮は避けたV.ペトレンコ。
どちらがどう?というよりも、好対照な両者の印象でしょうか。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ストラヴィンスキー(Stravinsky) / サティ(Satie), PARIS JOYEUX & TRISTE PIANO DUETS を聴く


STRAVINSKY / SATIE
PARIS JOYEUX & TRISTE PIANO DUETS
現代音楽やフォルテピアノで知られるロシア人ピアニストのアレクセイ・リュビモフ(Alexei Lubimov)と、同じく現代音楽に精通したロシア人ピアニストのスラヴァ・ポプルーギン(Slava Poprugin)によるピアノ・デュオ曲集ですね。

面白い作品をリリースするアルファ・レーベルですから、ただストラヴィンスキーとサティを取り上げただけではありませんね。ピアノを20世紀初頭のものを使って当時のイメージをつけて来ました。プレイエル1920年製、ガヴォー1906年製の二台のフランス製と、ドイツのベヒシュタイン1909年製(プリペアードで使用、サティの"シネマ")ですね。Duo編曲版でも、ジョン・ケージのものを使ったりと遊び心に溢れています。






イーゴリ・ストラヴィンスキー
(Igor Stravinsky, 1882 - 1971)
1930年代の曲で渡米する前、パリ在住時代の作品ですね。したがって新古典主義からセリーへの移行時期の作風になっています。

ピアノ協奏曲「ダンバートン・オークス」(1938年)
 ストラヴィンスキーらしい華やかさの中に明らかな不協和音が混ざり、音列配置的な点描音を感じますね。ピアノ曲なのでよけいかもしれません。跳ねるような動機に変装反復が繰り返されているのも特徴的ですね。二人のピアノは落ち着いています。もう少し派手でも良かったかもしれません。


2台のピアノのための協奏曲 (1935年)
 よく跳ねて不協和音があるのは似ていますが、新古典主義の風合いが強い感じですね。流れにメリハリがあるにもかかわらず、ここでも全体がフラットな印象です。なぜだかわかりませんが....




エリック・サティ
(Erik Satie, 1866 - 1925)
後期の1920年前後の二曲です。こちらは2台のピアノver.の編曲者がジョン・ケージと、ダリウス・ミヨー(プリペアードピアノ)ですから興味深いですね。サティとしては跳ねた二曲でしょうね。

ソクラテス プラトン著の対話録にもとづく管弦楽のための演劇 (1919年)
 サティらしい透明感のある音色と和声はそのままにJ.ケージが編曲しています。原曲を知らないのですが違和感は全くありませんね。陰影付けと跳ねるような響きを殺せばもっとサティっぽい様な気はしますが。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  part III (Mort de Socrate)になります



シネマ 『本日休演』のための幕間音楽 (1924年)
 この曲が一番楽しいですね。弾ける様な曲調と二人のpfがマッチした感じで表情も豊かです。他の曲、特にストラヴィンスキー、で感じた何故かフラット感?!がありません。ショパンのソナタ第2番のパロディの様なパートでプリペアードも面白く使われて生き生きとしていました。



実はレーベルに惹かれたのとジャケ買いの一枚ですw
期待したほどの個性はありませんでした。個人的にはストラヴィンスキーはもう少し生き生きとした色彩感が欲しい気がしましたね。一方、サティの"シネマ, Cinéma"は楽しめました

年代物のピアノを使った事に関しては、駄耳なのでCDで聴く限りでは然程の特徴が出ているとは思えませんね。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

クールで洒脱なBGM:エレーヌ・グリモー(Hélène Grimaud) の『メモリー Memory』を聴く


エレーヌ・グリモー
(Hélène Grimaud, 1969/11/7 - )
グリモーも今年で50歳になるんですねぇ。前回のアルバム『Water』と同じ様なジャケットを見ると髪を切ってショートにしてさすがに老けたかな。っていうくらいお馴染みの米在住フランス人ピアニストですね。
全集物やその他もあるのですが今ひとつスタイルがわかりづらいというのが個人的印象です。レパートリーがドイツやロシアの大物作曲家というのもあるかもしれません。(ピアノ曲は敬遠気味w)


メモリー
サティにドビュッシー、Waterに続きグリモーらしからぬエモーショナルな曲を並べて来たアルバムです。ピアノソロはこの手の楽曲の方が人気が出るからでしょうか?!w 11月来日公演予定で、もちろん本アルバムのレパートリー(+ラフマニノフも入れてますね、やっぱり)ですね。

アリス=紗良・オットが先日リリースした『ナイトフォール Nightfall』と曲が被ります。印象の違いは最後にインプレしておきましょう。両方ともDGなのでツアーも合わせて販売路線w






シルヴェストロフ:バガテル第1番, 第2番
両曲ともに透明感のある抑揚を殺した静&スローです。曲の持っている穏やかで澄んだ旋律が生きていて素晴らしいですね。


ドビュッシー:アラベスク第1番, レントより遅く, 月の光, 夢想
緩やかなアゴーギクがかかったアラベスクは明るく明瞭さが強いですね。"レントより遅く"と"夢想"はさらにディナーミクも付けて表情があります。"月の光"は美しさとエモーショナルさを緩いアゴーギクとディナーミクで強調して甘美です。


サティ:グノシエンヌ第1番, 第4番, ジムノペディ第1番, 冷たい小品/2.ゆがんだ踊り第1,2曲
グノシエンヌは冷たい音色と緩いアゴーギクのマッチが良く繊細なサティらしさが出ていましたね。ジムノペディではより表情を抑えて実にクールで好きですね。


ショパン:ノクターン第19番, マズルカ第13番(作品17の4), ワルツ第3番
ショパンの選曲は技巧パート強調がない事でしたね。ノクターンとワルツはディナーミクを他の曲より強めに付けて感情表現を入れていました。マズルカでは冷めた流れにディナーミクの波を挟んでいましたね。


ニティン・ソーニー:ブリージング・ライト
Waterの時とは違い普通のピアノ曲で、一番強いタッチの表現でした。



作曲家毎に揺さぶり具合が違うのが興味深いです。ディナーミクやアゴーギクを抑えたシルヴェストロフとサティのクールな情感表現は素晴らしかったですね。ショパンやドビュッシーあたりの色付けが本来のグリモーかもしれませんが、いずれ部屋で静かにかける洒脱なBGMとしてはクールな一枚でおすすめです。

透明感あるピアノの音色は良いのですが、エコーがかかった様な残響音が少し気になります。(ペダリングではありませんね)




《アリス=紗良・オットNightfallと重なる四曲*の印象の違い》
*サティ (グノシエンヌ#1, ジムノペディ#1)、ドビュッシー (夢想、月の光)
オットは揺さぶりを抑えスローで静、淡々としたクールな表現でした。グリモーもクールですが、澄んだ音色の中にアゴーギクとディナーミクを入れて表情を付けていますね。
アルバムとしてはオットNightfallには強音パートで知られるラヴェル"夜のガスパール"が入っているので全曲エモーショナルではありません。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

来日中のアリス=紗良・オット(Alice Sara Ott) の新譜『ナイトフォール (Nightfall) 』:ドビュッシー, サティ, ラヴェル を聴く


アリス=紗良・オット
(Alice-Sara Ott, 1988/8 - )
人気若手、どこまでを若手というかはありますが、のドイツ人ピアニストですがコンサートで観る限りは華奢な見た目と違ってソフトなソロよりも強鍵なコンチェルト向きだと思っています。

現在来日中で、本アルバム曲をメインにツアーを組んでいますね。


Nightfall
夕暮れ、夜の帳が降りる頃、と言ったタイトルですが、今更のドビュッシーとサティとラヴェルです。それも満を持してか超有名曲ばかりで、なぜ今更?といった疑念が頭を過ぎったりします。"夜のガスパール"以外はソフトタッチな曲ですし…
これだけの曲ですから誰でもイメージを持っていらっしゃると思いますが、私の頭にはドビュッシーはバヴゼ、サティは高橋悠治さん、ラヴェル*(夜のガスパールに関して)はアルゲリッチがいますね。

*ピアノ・ソロ曲に関して言えば何と言ってもアリス・アデールですね。




ドビュッシー : 1) 夢想, 2) ベルガマスク組曲全曲
流れる柔らかいパート、"夢想*"や"月の光*"はクールな優しさです。ベルガマスクの前奏曲・メヌエット・パスピエの様なメリハリがある方がオットらしい表情が生きていますね。スロー緩徐なパートより少しでも鍵盤を走らせる曲の方が彼女らしい気がしますがエモーショナルを排したそれがドビュッシーかと言われると…

サティ : 3) グノシエンヌ第1番*, 4) ジムノペディ第1番*, 5) グノシエンヌ第3番
サティの好みは無機質・無表情です。緩やかなディナーミク、ややスローのオットは良い気配を感じます。ジムノペディはもちろん、情感を抑えたグノシエンヌはなかなかですね。

ラヴェル: 6) 夜のガスパール全曲, 7) 亡き王女のためのパヴァーヌ
"夜ガス"はエモーショナルを殺した硬質な音色です。絞首台はクール、技巧性が売りの"スカルボ"も揺さぶりはありますがまとわりつく情感はありません。"パヴァーヌ"も表情を見せないクールさが悪くありませんね。


オットの主の流れはエモーショナルより表情を抑えた表現になっています。甘美さを避けた繊細さの印象は弱く、硬さを感じてそれがフランス印象派のピアノかと言われると微妙かもしれません。

冷めたクールな美しさ新しいフランス印象派表現ですかね? それなら淡々としたサティかラヴェルの"絞首台"や"パヴァーヌ"がいい感じですね。



【後日記*】
この後 9月にエレーヌ・グリモーが「メモリー」をリリースしましたが、四曲*がダブっています。そちらでオットとの違いもインプレしています。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ジョナサン・ノット/東京交響楽団 の「ブルックナー:交響曲第9番」を聴く


コンサートとCD化
本年2018年4月14日のサントリーホールでのコンサート二曲がCD化されました。二枚組ですが、昨日インプレしたマーラー10番は28分でCD一枚という半端な編成。どうしても二曲共出したかったのでしょうね。


ブルックナー交響曲第9番
当日のコンサートのインプレでも書きましたが、この曲は楽しめました。CD化ではどうでしょう。コンサートのインプレも参考ください。(15日のミューザ川崎の同曲演奏会も使われているので、どちらがメインでどこまでマスタリングで調整されているのかはわかりません。いずれ演奏に大きな違いはないとは思いますが。)



第一楽章の第一主題からコンサートの印象通りにメリハリと緊張感が張り詰めています。第二主題でも広がりよく、第三主題も微妙な音の使い回しが綺麗です。展開部・再現部も音の鳴り良く押し寄せる山場を緊張感の中聴かせてくれます。ラストのトゥッティは迫力です。
第二楽章は主要主題と副主題がキレキレのパワーを炸裂させています。この曲のポイントと言っていい出来ですね。トリオでは手を返して軽快に弾みコントラストの良さを対比させています。
第三楽章の不思議な響きの動機を組合せた第一主題から第二主題も出し入れの良さが光ります。妖しげな調性をスローに隠と陽、そしてパワーを表現して緊張を維持していますね。欲を言えば、どこかで緊張を解した見晴らしの良さがあれば尚良かった気がします。(コーダは穏やかで良いのですが時すでに遅し、この楽章の特性もありますが)


スローな低重心というヴァント以来の時代流を保ちつつ、荒さを見せながら澄んだ音色と流れを作る好演のブルックナー9です。コンサート・インプレでも書いた通りで、第三楽章の重厚一辺倒の印象を澄んだ流れ等で拭えれば名演と言ってもよかったのでは…
(ダイナミックレンジが広いのでヴォリュームをあげられる環境がおすすめです)

東響の演奏も見事でノットの意図を見事具現化している様です。本コンサートとCDで、来期は東響の定期会員になろうかと思います。^^v







テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マイケル・ティルソン・トーマス/SFS で聴く チャイコフスキー交響曲第6番『悲愴』


M.T.Tで新しい「悲愴」が見つかったのでつい入手です。今回は配信のみの発売で、2017年3月1-4日の録音ですね。
「悲愴, Pathétique」は数々ありますが、レコード時代からムラヴィンスキー/レニングラードPO(DG盤1960年)が頭の中にあります。どうしてもこれがスタンダードで自然と比較してしまっているでしょうか。さてマイケル・ティルソン・トーマス/サンフランシスコ交響楽団はどうでしょう。



チャイコフスキー 交響曲第6番『悲愴』ロ短調 Op.74
【第一楽章】
スローで重苦しい序奏から第一主題をテンポを上げて第二主題は晴れない気分を軽妙さと美しさで流します。ディナーミク抑えめアゴーギクを振ってくる構成を感じますね。トゥッティから入る展開部も激しさよりも見晴らしの良さを感じます。再現部からコーダはあっさりしていますが、スローな提示部・再現部と速い展開部のコントラストが効いた構成です。
【第二楽章】
テンポ・情感がコントロールされたワルツで殊更の甘美さは避けて、中間部でも哀しみに特別に重み付けを増やしません。クールです。
【第三楽章】
スケルツォは軽量、行進曲も興奮を排除しています。前中半はやや肩透かしかもしれませんが反復後の行進曲は、それでもアゴーギクを効かせて勇壮さを見せてくれますね。(興奮は抑えていますが)
【第四楽章】
流れは一転、提示部第一主題から情感のこもった流れを作り、この楽章の持つ特異性を掴む様に山場も緊張感があります。明らかにこの楽章に焦点を当てた構成を感じますね。
全体楽章的には逆の構成の方がしっくり来たのでは? と思ってしまいます。


M.T.トーマスらしいクールな「悲愴」ですね。心にのし掛かる重さや熱い情感は回避しながら最終楽章で一気にエモーショナルさを見せつけます。
中二つの楽章がさっぱりし過ぎなのが個人的には残念な気がします。






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プロコフィエフ(Sergei Prokofiev) の「十月革命20周年のためのカンタータ」を聴く


セルゲイ・プロコフィエフ (Sergei Prokofiev, 1891/4/23 - 1953/3/5)
このブログではプロコフィエフやショスタコーヴィチを現代音楽に入れていません。多分一般的にもそうだと思います。この時代のロシア音楽らしい新古典主義と民族音楽、そして独特のリズム感は特徴的で今更の紹介文は不要ですね。


Cantata for twentieth anniversary of the october revolution
プロコフィエフが1936年にソ連に帰国してすぐ書かれた異色作品ですね。ロシア革命20周年(1937年)の為に書かれた、合唱付大編成、軍楽隊、バヤン(ロシア式アコーデオン)合奏、レーニンのアジーテション、のソ連社会主義礼讃音楽です。2016年のゲルギエフ来日公演で取り上げられましたね。

演奏は以下の豪華布陣です。
◻︎アジテーター:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(Gennady Rozhdestvensky)
◻︎指揮:ネーメ・ヤルヴィ(Neeme Järvi)
◻︎演奏・混成合唱:フィルハーモニア管/フィルハーモニア合唱団



Cantata for twentieth anniversary of the october revolution, Op.74 (1936-37年)
I. Prelude » II. The Philosophers » III. Interlude » IV. A tight little band » V. Interlude » VI. Revolution » VII. Victory » VIII. The Oath » IX. Symphony » X. The Constitution
爆裂音から入り静的な流れを見せながら、合唱や1917年のレーニンの演説(アジテーション)を入れ込み、サイレンが鳴り常に激しい山場を作る。カンタータなので歌唱パートが多く、英文を見ればわかりますが勝利を歌い上げ、音楽構成と合わせて極端なプロパガンダ祭典音楽そのものですね。
炸裂クラスターに混沌があったりもしますが、プロコフィエフのロシア新古典的な音楽です。前衛を否定していたソ連は満足だったでしょう。凄い迫力とパワーです。

 ★ 試しにYouTubeで観てみる?
  ゲルギエフとロッテルダム・フィルのLIVEです!

Excerpts from 'The stone flower', Op.118 (1949年)
その12年後、一転してプロコフィエフが共産党ジダーノフ批判(1948年に始まった前衛芸術を拒否し芸術様式の統制を図る)を受けた時代のバレエ音楽「石の花の物語」からの抜粋ですね。演奏会用組曲Op.126-129もありますが、ここではバレエ曲の抜粋ですね。
民族音楽の色合いが新古典主義に加わり派手なサウンドもプロコフィエフらしい音楽になっています。一部はストラヴィンスキーのバレエ曲を思わせますね。政策的背景も含めて何が前衛拒否に当たったのか不明ですが、個人的には上記カンタータと楽風の相違はありません。今なら全く違和感はないでしょう。


カンタータはもの凄いパワーと迫力が迫って来ます。ただ音楽的には特別な事はないかもしれません。N.ヤルヴィらしい明瞭さは生きていると思いますが、速いテンポの揺さぶりは無いようですね。プロコフィエフ・ファン、時代背景を思い浮かべたり、大音響曲を聴きたい方は満足感が高いと思います。




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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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