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「エネスク, イザイ, バツェヴィチ:弦楽のための作品集」シンフォニア・オブ・ロンドン & ジョン・ウィルソン


Bacewicz, Enescu, Ysaÿe: Music for Strings
Sinfonia of London | John Wilson: cond.
英人指揮者J.ウィルソン(b. 1972)が2018年に再設立して芸術監督を務めるシンフォニア・オブ・ロンドン(以下SOL)とのアルバムです。
SOLの過去活動のメインは映画音楽の録音で、J.ウィルソンもその方向性が強い様です。

今回のアルバムは後期ロマン派世代の中心から終焉の中庸な三人の作曲家を並べました。共通点はヴァイオリニストとしての活躍がある事で、それを生かした楽曲での「弦楽のための作品集」と言う事になるのでしょう。





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ジョルジェ・エネスク
(George Enescu, 1881-1955)
ルーマニアの音楽家で、世代的にはバルトークと同年生まれでベルクよりも4歳若いです。楽風的にはロマン派から後期ロマン派、そして民族音楽(モード)や調性逸脱、微分音と言った前衛技法にも興味を見せるそうです。時代の流れに沿った変遷でしょうか。

■1. Octet Op. 7 (1900)
 "弦楽八重奏曲"は10代の時の作品で四楽章です。ロマン派と後期ロマン派両者の表情に民族音楽和声も感じます。動機の反復変奏と対位的イメージを持つホモフォニーの楽器の絡みがみられます。緩徐でほんの微かに調性からの逸脱感が仕込まれているのは時代の繁栄でしょうか。
弦楽奏曲ですが管楽器も入れて大編成室内楽にして変化をつけるのもありかも。38'弱は長く反復変奏の単調さが少し気になりますから。



ウジェーヌ・イザイ
(Eugène Ysaÿe, 1858-1931)
言わずと知れたベルギーのヴァイオリニストで作曲家ですね。指揮者でもありました。世代的にはマーラーの2歳年上です。
作曲でもヴァイオリン楽曲が多数を占め、もっとも知られるのは"無伴奏ヴァイオリンソナタ"Op. 27 (1924)でしょう。(Kremer, Zehetmair, Zimmermann, Ibragimova で聴き比べしてあります)

■2. Harmonies du Soir Op. 31 (1922-24)
 弦楽四重奏+弦楽オケのための "夕べのハーモニー" です。入りからイザイらしい幽幻な弦楽奏が厚く流れます。ソロの弦楽器も計算された複雑なホモフォニーと対位的関係を構成します。そこもイザイの聴かせ処の一つでしょう。もちろん緩急の大きな揺らぎも上手く作られ飽きさせません。
今の時代でも古さを感じさせない素晴らしさです。



グラジナ・バツェヴィチ
(Grażyna Bacewicz, 1909-1969)
ポーランドの女性音楽家として第一人者だったそうで、作曲だけでなくピアノとヴァイオリンの奏者でもありました。この時代を代表する女性音楽家であるナディア・ブーランジェに師事していているそうです。音楽家としては後半人生が作曲家になる様で、ヴァイオリン曲がメインです。(過去の紹介文より)

■3. Concerto for String Orchestra (1948)
 三楽章の"弦楽オーケストラのための協奏曲"です。時代背景から行けば前衛黎明期ですが、全く気配はなく新古典主義の様相でしょうか。明白な動機が並びSOLが水を得た魚の如く元気に奏します。ソロ楽器の絡みは多用されず、すぐに分厚い弦楽奏に飲み込まれます。(緩徐楽章でも同じ)
時折ショスタコーヴィチやラフマニノフの様な民族音楽動機も登場します。何か目新しさが欲しい気がしてしまいます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  第一楽章です




面白いのはイザイの "夕べのハーモニー" ですね。

後はSOL / J.ウィルソンの作りだす出し入れの明瞭な音を楽しめばOKでしょう。それがこのアルバムの意図だと思われ、まさにその通りかと。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





20世紀のアイスランド管弦楽「Icelandic Works for the Stage」アイスランド交響楽団(ISO)


舞台のためのアイスランド管弦楽作品
アイスランド交響楽団, ラモン・ガンバ指揮
(Iceland Symphony Orchestra, Rumon Gamba: cond.)
ISOは自国の現代音楽家をフィーチャーしてCD化する事が多いですね。今回は日本ではほぼ無名と思われる20世紀のアイスランド音楽家二人の管弦楽作品になります。タイトルの "舞台のための…" が実はキーになるわけですが。

指揮はかつてISOの音楽監督/主席指揮者(2002–2010)だったイギリス人指揮者のラモン・ガンバです。現在の同席はフィンランドの女性指揮者エヴァ・オリカイネン(Eva Ollikainen)が務めています。





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ヨウルン・ヴィーザル
(Jórunn Viðar, 1918/12/7-2017/2/27)
レイキャビクで生まれ育った女性ピアニストで作曲家です。アイスランド以外ではベルリンの音楽アカデミー、N.Y.ではジュリアードで学んでいます。
世代的にはJ.ケージと同じ1910年代生まれで、後期ロマン派から前衛への移行時代。ただ彼女の楽風は無縁です。アイスランドの民族音楽をベースにしたものだそうですが…

■1. Eldur, Ballet for Orchestra (1950)
 9'強の単一楽章で、激しいアレグロスタートからファンファーレが入って、途中から暗鬱な緩徐パートになりラストは華々しく鳴らします。隅から隅まで明瞭な調性旋律のホモフォニーで構成されています。
流れは後期ロマン派と言うよりもブリテンを思わせる様な英国管弦楽的ストーリー性を感じる音楽です。どこにアイスランドのフォークが入っているのか難しいです。バレエ音楽の流れで舞台を浮かべると曲の流れがスッキリするかも。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ISOのコンサートLIVEで, 指揮はDaníel Bjarnasonです



■4. Ólafur Liljurós, Ballet for Orchestra (1952)
 前曲でも同じですが1950年代の音楽に感じられないシンプルな機能和声と旧態的な構成です。調性からの逸脱やポリフォニーの様な複雑性は聴く限りでは現れません。
また知見の薄い自分が言うのは憚られますが、アイスランド・フォークが特異性のあるモードが皆無なのか、そこも見えて来ません。
表情が絶えず変化する流れは管弦楽と思わずにバレエ音楽として聴くと初めてこの曲の印象が見えてくるかもしれません。



パール・イソルフソン
(Páll Ísólfsson, 1893/10/12-1974/11/23)
アイスランドのオルガニストで作曲家、レイキャビクの他にライプツィヒやパリでも学んでいます。活動は作曲にとどまらず、音楽学校の校長やバンドの監督、いくつかの教会のオルガニストや放送局の職員も務めていたそうです。

■2. Veislan á Sólhaugum, for Orchestra (1943)
 1940年代と言うよりも古典やルネッサンス的で動機の反復と変奏が構成上の軸になっているのがわかります。解説にあるモードの取り込みは駄耳なので感じられませんでした。
音楽を聴く事をメインにするのではなく、主役は舞台である事を理解すべきなのでしょう。


■3. Úr Myndabók Jónasar Hallgrímssonar, Incidental Music for String Orchestra (1945)
 これも前曲と同じく古い印象を拭えない音楽です。情報なしで聴いたら古典派以前の音楽だと思ってしまうかもしれません。
ここでも伝統のリングダンスを意識した舞台が主役だと思えば良いようです。



1940/50年代の管弦楽曲としたら技術的には時代に取り残された印象になるかもしれません。

主役はバレエや舞台であくまで付随音楽と言う事になるのでしょう。そう思うとJ.ヴィーザルはバレエ音楽としてフィットしている感はありますが、それでもP.イソルフソンの二曲は厳しいです。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





エマーソン弦楽四重奏団の ラストアルバム「Infinite Voyage」


Infinite Voyage
(Emerson String Quartet, 1976-2023)
今月(2023年10月)をもって活動を終了するエマーソンSQのラストアルバム、タイトルも『終わりなき航海』です。

不思議な事にSQのラストアルバムなのに純粋の弦楽四重奏曲は一曲で、四曲中 三曲(1, 3, 4)にソプラノが入ります。ソプラノは指揮者としても活躍が目覚ましいバーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan)、前衛を得意としているので本ブログではお馴染みになります。
エマーソンSQとハンニガンのリレーションが以前から深かった事は意外でした。

ちなみにラストコンサートは10/21, 22にN.Y.リンカーンセンター(Alice Tully Hall)の予定で、シューベルトの弦楽五重奏曲 Op. 163 (for Two Violins, Viola, and Two Cellos)では2nd Celloに創設メンバーのDavid Finckelが入るそうです。





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1. Melancholie, Op. 13 (1919)
  [Paul Hindemith, 1895-1963]
独の音楽家で後期ロマン派と前衛の間で生きたパウル・ヒンデミット、楽風も両者を跨ぐ印象です。
 浮遊感のある旋律が特徴的で、そこには不協和音的な調性の自由度を感じます。そして何処かモードの旋法感もあるイメージです。タイトル通りに"メランコリー"なポスト後期ロマン派的楽曲になっています。


2. String Quartet, Op. 3 (1910)
  [Alban Berg, 1885-1935]
アルバン・ベルクの初期作品で、この曲だけがソプラノの入らない純粋な弦楽四重奏曲です。
 全音音階を軸とした主題はいわゆる旋律感は薄く、調性や旧来的構成からの逸脱を狙った流れです。ところどころでシェーンベルクの"浄夜"の流れを感じたり、ポリフォニックで多調的な様相も現れます。コンサート受けする楽曲で、エマーソンSQは程よく刺激を与えてバランスの良い弦楽奏に仕立てていますね。


3. Chanson perpétuelle, Op. 37 (1898)
  [Ernest Chausson, 1855-1899]
今回唯一の19世紀の音楽家エルネスト・ショーソンです。「終わりなき歌」はピアノ伴奏版やオケ伴奏版もありますが、一番知られるのは今回のpf+SQ版でしょう。
 メランコリックで1.で薄くした旋律感を取り下げた流れです。この曲には冒険的な構成は見当たらず、前二つの楽曲の原点の位置付けになっているのかと思われます。pfも入ってB.ハンニガンの情感に溺れないクールなsopも合っています。


4. String Quartet No. 2, Op. 10 (1907-08)
  [Arnold Schönberg, 1874-1951]
アルノルト・シェーンベルク初期の弦楽四重奏曲で、第四楽章のみスコアは無調になっています。無調から十二音技法へ向かう足がかりになった作品と言われていて、ソナタ形式で主題も存在しています。
 前半二楽章は反復や変奏もあって楽曲的には後期ロマン派の印象が色濃く感じられます。この時代のシェーンベルクらしく濃厚なロマン色を強く押し出しているパートが中心になってて、その辺りはエマーソンSQが上手く表現しているでしょう。
sopが入る第三楽章からやや調性を崩す様な流れや跳躍音階が登場して、ラストの四楽章は反復を残しつつも調性感は怪しくなっています。ここではハンニガンらしいsopの切れ味が見事ですね。



前衛前夜のポスト後期ロマン派への時代を楽しむにはピッタリのアルバムです。機能和声から調性逸脱への流れで構成されて、楽曲間のコントラストがあって良い感じです。

ハンニガンのsopは例によって硬質でクール。その現代音楽を得意としているスタンス/表現力とESQの演奏が相まった4.がベストトラックです。
オススメのアルバムですね。




オフィシャルの録音excerptです



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





クラウス・マケラ/パリ管のストラヴィンスキー「春の祭典 | 火の鳥」二曲のコントラスト


Le Sacre du printemps | L'Oiseau de feu
Igor Stravinsky, 1882-1971
(Orchestre de Paris, Klaus Mäkelä: cond.)
マケラ/パリ管弦楽団の2022年来日公演と同演目ですね。今やビッグネームのマケラ、CD化はされていませんがマーラーの5番, 6番, 9番も素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

気になる事があるとすれば、既にあまりに王道的な完成度が高い事でしょうか。(もちろん+αもあるのですが)
今回の二曲は今までもインプレしていますが、マケラはどう振ったのでしょうか。





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1. 春の祭典 (1947)
前半の"大地の礼賛"。'1.序奏' はスローの木管で不気味な気配を作ります。'2.春のきざし 乙女たちの踊り' は刻む変拍子と反復がバレエ曲らしさと緊迫感を上手く聴かせます。
'4.春の輪舞' では鬱な音色を鎮めながら落ち着いた状態をキープして中間部の脅迫的な強音反復に繋げ、その後も激しさの出し入れとリズム感を生かす流れですね。

後半"生贄の儀式"。'9.序奏' は静の中に漲る緊迫、'10.乙女の神秘的な踊り' は同じ動機を美しさを加えて不安定な優美さに流れを変化させます。微妙な調性感も生かしていますね。出し入れ強い流れから、'13.祖先の儀式' では暗鬱の反復でコントラストを付け、'14.生贄の踊り' は華やかな金管でまとめます。
派手な中にストーリー性を重視した構成感ですね。


2. 火の鳥 (1910)
'1.導入部' は暗鬱基調に作ります。そこからイワンと火の鳥 互いの緊張感をアゴーギクとディナーミクで作って、ここでもストーリー性とバレエ曲らしさを感じます。そして前半のキー曲 '6.火の鳥の嘆願' では通常よりも暗鬱さを強調して少し印象が違いますね。
前半は全体的に表現力抑え気味に感じます。その中で'10.王女たちのロンド' の抑えた美しさは光ます。

イワン王子がカスチェイの城に入ってからの聴かせ処、まずは '16.カスチェイ一党の凶悪な踊り' の凶暴さは打楽器を打ち鳴らしつつ派手さの中にコントロールされてバレエ曲らしい構成。後半は強烈です。
一転 '17.火の鳥の子守歌' は特徴的な主題を暗くスローに鳴らして6.同様 少しこの曲らしからぬ印象になります。もう少しシンプルな美しさが好みですね。
19.大団円' はゆっくりと上げて大きく鳴らしてまとめます。このラストシーンのために全体を抑えていたのかもしれません。(あまり聴いた事がない構成ですね)



明確な強弱出し入れの"春祭"ラスト一点集中の"火の鳥"です。両者に構成の違いが明確で楽しめます。華やかさある鳴りはパリ管の力量と言った処でしょうか。

マケラの構成力を感じられる この二曲のコントラストはオススメです。個人的には"春祭"の方に一票ですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーンフィルの 'クール'な「ブルックナー 交響曲 第九番」


Symphony No. 9 Anton Bruckner, 1824-1896
(Wiener Philharmoniker, Christian Thielemann: cond.)
ティーレマンとウィーンフィルのブルックナーチクルスから第9番(Nowak Edition)ですね。楽曲、オケ、指揮者、共に知られる処なので紹介文は割愛です。
2022年7月28, 30日のザルツブルク音楽祭でのLIVEです。





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第一楽章
提示部第一主題部は第一動機を少し引っ張って第二動機を鳴らします。第三動機は神経質に と緊迫させてピークの第七動機では間を入れる様に鳴らして来ます。
第二主題は印象を穏やかに変換、第三主題は繊細に入って山場へ向かいます。自然体の流れでしょう。
展開部は第一主題の動機を再現的に作り第七動機は神経質な激しさです。各動機も色付けはしっかりされていますが何処か淡白な印象ですね。パウゼ後の第七動機の鎮めも神経質さを感じます。
再現部の第二・第三主題は再現的安定感を強く、山場は混沌ですが落ち着かせています。コーダは神経質なポリフォニカルからコントロールされた鳴りで締めていますね。


第二楽章
主部動機は軽く弾ける様に緊迫させてトゥッティ主題では激しさと厳しさを鳴らします。ob主題は軽妙ですが背景に緊張感を置き、トゥッティ再現で力感復活! まさにこの曲の聴かせ処で王道ですね。
トリオは軽快に疾駆させて主部との対比を作っていますが、二つの動機の絡みは淡白です。
主部回帰では当然の如くトゥッティ主題を軸に作られます。全体としては王道ですが少し面白みに欠けるかもしれません。


第三楽章
提示部第一主題は穏やかさから華々しく、コラール主題は鬱に鎮める様に入ります。王道ですね。第二主題は緩やかスローに入ってそのまま木管・金管に繋げますがやや淡々としたイメージでしょうか。
展開部(再現部)は第一主題をゆっくりと、第二主題から緊迫感を作り山場を迎えます。ゲネラルパウゼ後は第二主題でゆっくりと優美さを強調、その後主題・動機に変化を付けて進みますが表情はややフラット気味でしょうか。山場は混沌で激しいこの曲らしさです。
コーダはゲネラルパウゼを大きく取って徐々に鎮めます。でも表情は'淡々として'ですね。



興奮を避けたクールなブルックナー9ですね。王道的で安定的、クセなど無く聴きやすいのですが その分かえって淡白に感じてしまうかもしれません。

頭の中にヴァントの低重心重厚な鳴りが響いているので、どうしてもそう感じてしまいます。そろそろヴァントの幻影から抜け出せる様な演奏に出会いたいこの頃です。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ドビュッシーの交響詩『海』25人の指揮者で 聴き比べ:名盤とオススメCD


La Mer L. 109 (1905)
(Claude Debussy, 1862-1918)
派手な展開でラストが決まるので必ずコンサート受けるわけですが、聴き比べてみるとその個性もわかりますね。

基本構成は第一楽章:華やかさ、第二楽章:カラフルさ、第三楽章:暗鬱な緊張感 です。


個人的なインプレ内容は以下になっています。
■ソナタや複合三部と言った旧来的な形式ではなく、■二つの共通動機と動機(主題)の組合わせで、■一・三楽章は「序奏-主部-コーダ」二楽章は「主題・動機変奏」■標題音楽やジャポニズムは考慮せず。



CDリスト&ダイジェスト  (戻りはブラウザの釦でお願いします)
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:変わっています (一味違った演奏を聴きたい貴方にw)
[① マルティノン] 派手で華やかと言えばこれ (★)

[② デュトワ] 落ち着いた心地良さです (★)

[③ ブーレーズ] 煌めく色彩感が光ります (★☆)

[④ ロト] 独特の鎮んだトーンの色合い

[⑤ サロネン] クールな"海"ならこれです (☆)

[⑥ ズヴェーデン] スカッと一気に駆け抜けます

[⑦ ラトル] 計算された完成度の高さです

[⑧ カンブルラン] カラフルな心地良さです

[⑨ ミュンシュ] 強烈な個性を味わうならこれ (㊟)

[⑩ ヤンソンス] どこか美しさを感じます

[⑪ ダーリントン] 堂々としたドイツ風です

[⑫ ドゥダメル] 感情移入を抑え気味に

[⑬ M.T.トーマス] 独特の美しさが味わえます (☆)

[⑭ ハイティンク] 丁寧でマイルド艶やかです

[⑮ ガッティ] 音厚を感じる華やかさです

[⑯ ゲルギエフ] 上品優美さと重厚力感の対比

[⑰ ムーティ] 主流派的な安定感です

[⑱ アバド] 強めのアゴーギクの出し入れ

[⑲ バーンスタイン] 本当にバーンスタイン?!

[⑳ カラヤン] 爽快前半、重厚後半です

[㉑ シノーポリ] この辺りが標準仕様かと

[㉒ インマゼール] この曲としては淡々と自然体

[㉓ ツェンダー] 第三楽章が良ければ…

[㉔ ショルティ] 期待を裏切るクールさです

[㉕ ネゼ=セガン] 緩やか・穏やか・心地良さ




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ジャン・マルティノン (Jean Martinon)

マルティノンが音楽監督だったフランス国立放送管弦楽団(Orchestre National de l'ORTF)を振った演奏です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏から共通動機を明瞭に鳴らし、主部主題を哀愁よりも明るさで表現します。第二主題も共通動機と煌びやかな絡みで山場は大きく、第三主題でも明るさを広げる弦楽になっています。コーダのコラールは勿論大きく鳴らします。
豪華絢爛表現ですね。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は流麗に、第二主題でも揺らぎを入れ、第三主題も不安定な美しさです。tp動機も含めてこの楽章としては音厚があって濃い表現になっています。特に中盤以降は顕著で、その分ラストの静が生きます。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機と共通動機を強く、主部主題もやや速めの不安定さを強調します。速い不安定さで緊張感ある流れで共通動機を絡め山場を激しく、二度目のコラール主題からのコーダは怒涛の大炸裂です。


出し入れが強く派手で激しさと緊張感漲る"海"になっています。聴き終えたイメージは華やかさの印象が残りますね。
名盤と言われた一枚ですが好みを大きく分けるでしょう。



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シャルル・デュトワ (Charles Dutoit)

デュトワが音楽監督を務めたモントリオール交響楽団(Orchestre symphonique de Montréal)との演奏です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は緩やかに上げて、主部主題は優美さを、第二主題も同様に、その後も共通主題と第二主題を穏やかに絡ませます。山場は抑えて第三主題で心地良い明るさを広げます。コーダも派手ですが落ち着いて鳴らします。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は軽妙に、第二主題も少し緊張感を与え、第三主題も抑え気味。そんな程良い緊張感とテンポが生きています。心地良さが広がります。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は暗鬱さを強めに、主部主題はそこを横切る様な印象です。共通動機を緊張感で流すと山場は一瞬の重厚さです。一回目のコラール主題でしっかり落ち着かせて緩やかに上げ、騎行を速め爽快に コーダはしっかり派手に華やかさを鳴らします。


落ち着いて心地良い"海"です。派手さや力感をコントロールしつつも表情は豊かに美しく、デュトワらしい上手さを感じます。



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ピエール・ブーレーズ (Pierre Boulez)

ブーレーズが主席指揮者だったクリーヴランド管弦楽団(Cleveland Orchestra)を振った演奏です。期間は2年と極短かったですね。(録音は退いた後?)

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏から幽玄でトリスタン風、主部主題でテンポと色合いを増します。第二主題もそれに合わせて神秘な奥行きを感じる流れ、ピークは抑えて第三主題では明るさをアゴーギクとディナーミクで飾ります。コーダは晴れやかそのものです。

2. 第二楽章「波の戯れ」
導入部と主要主題がフィット、第二主題で少しトーンを落として、第三主題は不安定さを奏でます。その中に煌めく様な輝きある流れが見事ですね。オケの各楽器の音色も生かされている感じです。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機と共通動機が緊迫感を強め、主部主題で不安定さを与えます。そこからは共通動機が絡んで上げ、一回目のコラール主題で葬送の様に鎮め、表情がとても豊かですね。再び上げてからのコーダはこの曲らしい混沌的な派手さでまとめます。


絶妙なアゴーギクとディナーミクが作る色彩感溢れる"海"になりました。
幽玄さや美しさとパートで表現を変えて、見晴らしの良さも格別と言って良いでしょう。名盤の誉ある一枚です。



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ロト (François-Xavier Roth)

ロトと手兵のレ・シエクル(Les Siècles)、もちろん楽器は当時のものを使った演奏です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の共通動機を暗鬱に、主部主題で緩やかに広がりを見せると第二主題は明るさの予兆を見せます。トーンの低い落ち着きの流れを作ります。第三主題からは明るい喜びを感じさせ、コーダは派手に華やかに。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は速めに滑る様に、第二主題も刻む流れを作り、第三主題では鬱な色合いを浮かばせます。tp動機も含めて速めの流れで作る色彩感です。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機を速めに陰鬱な色合いを表現、主部主題は速めの繊細さに奏で、そこに共通動機を絡めながら変化はトーン控えめに作ります。一回目のコラール主題で鎮めて再び上げると、騎行を慎重に鳴らし コーダは派手ですが興奮は避けています。


鎮んだトーンの色合いが特徴的です。音色を包み込む様な独特の色彩感の中に作られるコントロールされた華やかさが聴き処でしょう。
楽器編成上の個性もあるのかもしれません。



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エサ=ペッカ・サロネン (Esa-Pekka Salonen)

サロネンが桂冠指揮者(録音時は主席指揮者)を務めるロサンジェルス・フィルハーモニック(Los Angeles Philharmonic)との演奏です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の二つの共通動機をゆっくりと、主部主題も落ち着きから広がりへ、第二主題も落ち着いて澄んだクールな流れを作ると、第三主題から興奮を避けた優美さを引き出します。コーダもしっかり鳴らしますがコントロールされます。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は淡々と、第二主題も落着きで、第三主題の不安定感も控え目に。刻々と変化する中でも流れは細やかな繊細さを感じます。勿論表情は豊かです。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は控え目に鳴らして共通動機とフィット、主部主題も繊細さです。そこからの共通動機との絡みも複雑ながらクールに繋ぎ山場はパーカッションを生かします。コラール主題から落ち着かせ緩急を強調して進み、コーダは混沌表現を避けて華やかです。


過度の華美さや激しさを回避してとてもクールな"海"に仕上げています。このクールさを印象派的とみても良いかもしれません。好きな演奏です。



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ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン (Jaap van Zweden)

ズヴェーデンが2018年から音楽監督を務めるニューヨークフィル(New York Philharmonic)との"海"です。就任初週の演奏だそうです。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は明瞭に、主部主題もその流れに乗せ
て陰影のないさっぱり風味です。第三主題からも若干の揺さぶりは入れますが細工のない明るいあっけらかんとした流れです。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は速めです。第二主題も細かく揺さぶりながら緊張感を上げて、第三主題もその流れに乗って登場します。tp動機を含め全体テンション高めで表情変化は弱めに感じます。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機を太く鳴らし、主部主題はその先に不安定さを増す様に共通動機と繋がりますが流れはガッツリ傾向です。一回目コラール主題も落差は小さめで骨格はしっかり、コーダもスカッと鳴らして締め括ります。


微妙な陰影や表情変化よりも朗々とした一気通貫の"海"です。ヌケの良さであり、機微を聴くと言うパターンではありません。



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サイモン・ラトル (Simon Rattle)

ラトルがベルリンフィルの主席指揮者時代の録音です。聴く前からイメージが湧く感じでしょうかw

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は緩やかに入りテンションアップ、主部主題は一瞬明るさにし 細かい出し入れを効かせて各主題の表情付けをして来ます。山場を〆めた後、第三主題は緊迫感あるアゴーギクを振ります。その後共通動機を変化率高く構成してコーダはBPOらしく怒涛を鳴らします。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は軽快さに表情を加え、第二主題で落ち着けます。その後も緊張感を与える第三主題にしたりと動機・主題毎に変化を明確に付けます。細かな緩急強弱を使えるだけ使った様な印象でしょうか。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機はBPOらしく重厚に揺さぶりを入れ、主部主題はその流れから繋がり力感をキープしながら共通動機と重心の低い流れを作ります。山場は激しく鳴らすパターンで、そこからコラール主題で鬱に鎮めます。強い出し入れで緊張感を湛える流れから騎行へ繋ぎ、コーダは混沌方向の強い怒涛爆裂です。


演奏精度や構成の表情変化も十分で計算された完成度の高さを聴かせる演奏です。第三楽章ではBPOらしい重心の低い鳴りを聴かせてくれます。



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シルヴァン・カンブルラン (Sylvain Cambreling)

カンブルランが主席指揮者時代のバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団(SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg)との演奏です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の共通動機はディナーミクを効かせた浮遊感、主部主題はモード風に繋ぎます。その後も動機と主題をディナーミクで色付けしたカラフルさです。第三主題ではアゴーギク&ディナーミクで明瞭に揺さぶり、抑揚を大きめにつけて進みます。コーダは華美よりも広がりの大きさです。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は流麗に流れる様に、第二主題の弦は神経質に、第三主題はモワッと雲か霧のごとく。全体は出し入れを使った表情豊かな煌めきある流れです。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は抑え目に入って緊張感を増して主部主題の不安定さにバトンタッチ。そこからは二つの共通動機も神経質さで絡み、弦と管が共に煌びやかな音色を奏でます。コラール主題が静に出ると緩急を使って色合いを変化させ、騎行を弾ける様に、コーダは興奮を避けながらも爆裂です。


ナチュラルな表情付けのカラフルで心地良い"海"です。
肩の力が抜けた自然体の色合いはカンブルランらしさでしょう。ドイツのオケよりも指揮者の個性が出た演奏になりました。



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シャルル・ミュンシュ (Charles Munch)

ミュンシュがボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)を振った"海"です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は落ち着いた二つの共通動機、主部主題では流れに上手く乗せて軽妙な流れを作ります。緩やかなアゴーギクで第二主題も違和感なく続きます。流麗で淡々とした風景です。第三主題もパウゼのタメを作らず入って来ます。全体の流れは速くなり力感も入りますが色合いは薄めで、コーダは気持ち良く鳴らします。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は速く、第二主題も付き合って速め、第三主題も同様です。その後も速い流れをキープ、主題・動機に色付けしますが勢いを付けてあっと言う間に終わる変則的楽章になりました。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は暗く力強く、主部主題も速く肩に力が入った流れです。二つの共通動機も速く緊迫させて勢いが付き落ち着きません。山場は大きく炸裂!!
コラール主題もスロー静にしますが浮足だった様な印象です。その後はアゴーギクを大きく揺さぶって、騎行は慌ただしさでコーダもゴチャゴチャにまとめ上げます。


勢い余った第二・三楽章が強烈に突き進む個性派の"海"です。特に第三楽章は狂気を感じる表現主義的タクトです!!
第一楽章が正反対の落ち着きで、それも異様な対比です。



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マリス・ヤンソンス (Mariss Jansons)

ヤンソンスが主席指揮者だったロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(Royal Concertgebouw Orchestra)との演奏です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の共通動機は繊細に、主部主題も丁寧な扱いです。第二主題でも特別な色合いは避け、主題と動機を慎重に重ねる印象です。第三主題では暖色の華やかさを丁寧に、コーダは鳴らしますが美しさです。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は優美さ、第二主題も少し神経質ですが美的、第三主題も曇らせつつその流れはキープされています。tp動機も可愛さで、通してマイルドな美しさが軸になっています。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序章動機は暗鬱で速め、主部主題は不安感を与える流れです。その後も共通動機を嵐の様な鳴りで進め、極微音にしたコラール主題から鬱に。後半の騎行は速く、コーダは荒々しさです。
この楽章は厳しさが感じられ、その中に丁寧さも共存します。


この曲らしい表情変化を付けつつも オケの鳴りとタクトでどこか美しさを感じる"海"です。RCOらしさを感じられるかもしれません。



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ジョナサン・ダーリントン (Jonathan Darlington)

ダーリントンが主席指揮者を務めたデュースブルク・フィルハーモニー管弦楽団(Duisburger Philharmoniker)を振った演奏です。当時このセットは本ブログで一押しの一つでした。マーラーでも好演を残しています。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は整然ときっちり、主部主題も織り目正しい流れです。第二主題も姿勢の良い流れを作り、第三主題では約束通りに緩やかさを奏でます。コーダも派手さより揃いの良さです。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題はここでも几帳面に仕上げ、第二主題から第三主題も揺さぶりは無くストレートな表現です。弱めのアゴーギクにディナーミクで進みますが、華やかさは充分です。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は抑えて入り上げ共通動機へ繋ぎます。主部主題は感情を抑え気味に序奏動機の背景に乗ります。力感を増して共通動機と絡み山場を炸裂させて、コラール主題ではナチュラルに鎮めます。騎行は軽快さで、コーダは怒涛の力強さです。
堂々とした流れになりました。


華やかさ派手さの中に堂々した真面目さの演奏です。細かい揺さぶりを排してストレート、これもありの表現ですね。
フランスと言うよりもドイツ的な仕上がりかと。



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グスターヴォ・ドゥダメル (Gustavo Dudamel)

"シェーンブルン宮殿 夏の夜のコンサート2012" でドゥダメルがウィーン・フィル(Wiener Philharmoniker)を振った演奏ですね。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏はスロー神秘的に、主部主題もスロー気味で、第二主題も変化率は抑えます。感情起伏は抑え気味で山場もそれなり、第三主題も美しさですが際立つほどではありません。それでもコーダ大きく鳴らします。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は淡々と、第二・第三主題も速めで抑え気味です。その後も主題・動機ごとの表情付けはやや薄く、後半でやっと華やかさを聴かせますが直ぐにエンディングの静パートを迎えます。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は暗鬱に緊張感を与え、主部主題は個性は控えめ、それでも二つの共通動機との絡みは鳴りを強めています。コラール主題も変化率は低めであまり落とさず鬱色。騎行は速めで軽快に進め、コーダはスコア通り的に激しくです。


どこか淡々として感情移入が薄い印象が残ります。この曲自体が華やかなので単独で聴けば、感じないレベルかもしれませんが。
それとも駄耳だから?! 現にオーディエンスは大アプローズですから。



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マイケル・ティルソン・トーマス (Michael Tilson Thomas)

M.T.T.がフィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)を振った演奏ですね。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は鎮め気味に、緊張感を高めて主部主題で緩やかな明るさを見せます。第二主題も流れをキープ、出し入れを抑えた流れです。第三主題でも緩やか優美にコントロールされて、コーダも派手ですが興奮はありません。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は淡々と登場して神秘的な第二主題と第三主題に繋げます。動機・主題を色彩感強く変化させるのではなく、神秘的な静かな森の中で様々な様子に出会う様なイメージです。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機はクレシェンドさせ、主部主題で流れを落ち着かせます。共通動機との絡みは神経質さですが緊張感はほどほど、自然な流れで山場を鳴らして鎮めます。コラール主題で緩やかさを取り戻し神秘的な共通動機変奏に。騎行もおとぎ話的で、コーダも派手ですがコントロール下です。


派手さや煌めきとは対極の神秘的で優美さです。
もちろん鳴らすパートは鳴らしますが、興奮や情熱は排します。独特の美しさが感じられるでしょう。



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ベルナルト・ハイティンク (Bernard Haitink)

ハイティンクが主席指揮者を務めたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(Royal Concertgebouw Orchestra)との演奏です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は静的に落ち着き、主部主題も第二主題も色彩変化は抑え気味です。丁寧美的な流れで進み、第三主題も緩やかで艶やかに、コーダも美しく鳴らして締め括ります。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は平坦な印象、第二主題は僅かな緊張、第三主題は緩やかさ。それら主題・動機はアゴーギクで表情豊かに変奏されますが、ディナーミクは抑えられて印象はマイルド風味です。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は静からゆっくりとした持ち上げ、主部主題も共通動機との絡みでも極端な緊張感や不安感は避けてナチュラルです。途中の山場は鳴らしますが、コラール主題は淡々として落差は避けています。騎行は軽快に、コーダは鳴りの広がりです。


隅々まで丁寧で全体マイルドな艶やかにまとめられています。
ここでもRCOらしさが感じられ、心を落ち着かせて楽しめます



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ダニエレ・ガッティ (Daniele Gatti)

ガッティが主席指揮者を務めた時代にフランス国立管弦楽団(Orchestre National de France)を振った"海"です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は二つの共通動機を慎重に、主部主題では明るさを強調、第二主題は抑え気味に と落ち着いた流れです。第三主題は音厚を感じるタメのある優美さで特徴的です。コーダもスローからの派手さを奏でますが落ち着いています。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は少し揺さぶり、第二主題では色合いを強め、第三主題もハープの彩に乗ります。動機と主題をアゴーギクで飾る表情豊かで厚い音で聴かせます。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機の澱む様な緊張感に 主部主題は細い音色で応えます。共通動機と太い流れで緊迫感を強めて絡みながらも山場はコントロール、コラール主題も鎮める落差は弱めです。騎行は速めで緊迫させコーダは爆裂音で仕上げますが暴れません。


音厚を感じる華やかさが特徴的な"海"になっています。
興奮を避けて流れは落ち着いていますが、ディナーミクの振り幅が小さく 常に大きめ側の流れを作っているからかと思われます。好みは分かれるかもしれません。



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ヴァレリー・ゲルギエフ (Valery Gergiev)

ゲルギエフが主席指揮者としてロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra)を振った海です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は静に入って緩やかに上げ、主部主題と第二主題を穏やかに繋ぎます。その後も共通動機共に静美な構成にしています。パウゼを強調して入る第三主題も優美さそのもの、コーダも大きく鳴らしますがテンポは慎重です。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は速めですがコントロールを効かせ、第二主題はタメを入れたスロー、第三主題は穏やかさです。その後の変奏でも色合いの変化はしっかり付けますが上品さを感じる流れになっています。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は強めに入って太く、主部主題もその上にしっかりと乗せて、共通動機から山場は力感をキープします。コラール主題も緊張感を隠しながら、騎行は軽妙さから緊張感を上げてコーダは混乱的な炸裂で締め括ります。


上品優美さと重厚力感のコントラストです。第一・二楽章を瀟洒・洒脱とさえ言える流れに、第三楽章は力感の緊迫を付けて全体を〆ています。この極端な対比をどう聴くかでしょう。



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リッカルド・ムーティ (Riccardo Muti)

今や日本では東京春祭でお馴染みとなったムーティ。音楽監督時代にフィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)を振った演奏です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は緊張感を乗せ、主部主題は明瞭な旋律感、第二主題もその流れで共通動機とは適度な感情表現にコントロールされます。第三主題も緩くアゴーギクを効かせて穏やかさを表現、コーダもスローに広がりを鳴らします。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は引き気味に、第二主題は少し刻んで、第三主題ではやや速めにとテンポ変化を軸にしています。そのテンポ変化が面白い表情を作りちょっとフィルムミュージック風にも感じます。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は荒々しさを見せ、主部主題では慎重に緊張感を乗せています。コラール主題も程良くトーンダウンさせて山場を大きく、騎行は明るい刻みで進み、コーダも派手に激しくですが暴れ過ぎる事はありません


主流派的な表情変化の"海"になっています。程良い派手さ、程々の緊張感、そして心地よい華やかさ、安心感が伝わります。
どこを取っても安定感がありますが、聴き処は第二楽章の表情変化でしょう。



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クラウディオ・アバド (Claudio Abbado)

創設者であるアバドがルツェルン祝祭管弦楽団(Lucerne Festival Orchestra)を振った"海"ですね。(カップリングのマーラー第二番"復活"が名演で知られるCDですね)


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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は共通動機はバランス良く、主部主題も穏やかさ、第二主題もそれに続くと言うアバドらしい王道の流れです。第三主題は音厚と揺さぶりで色合いを付けた個性を見せ、コーダはクレシェンド風に上げます。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は静からの揺らぎを少し入れて、第二・三主題も僅かに揺さぶりを加えています。全体の流れでもアゴーギクを効かせた色付けになっていて表情変化は大きめです。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は強めに出します。珍しいくらいです。主部主題はそれに比べると落ち着いて、でも緊迫感を強めに煽って揺さぶりの主部です。激しさを感じます。
コラール主題も背景の弦楽が強い不安感を作ります。騎行は速めで繊細な神経質さ、コーダは錯乱的な激しさです。


強めのアゴーギクで切れ味鋭い"海"になりました。後半に行く程にそれが増して、特に第三楽章は象徴的でディナーミクも強めて厳しさを大きく表現しています。アバドらしくない?!w



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レナード・バーンスタイン (Leonard Bernstein)

バーンスタインが名誉総裁だったイタリアのサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団(Orchestra dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia)を振った"海"です。
なぜかこの曲はビッグネームのバーンスタインとカラヤンが不人気です。と言う訳で次はカラヤンをインプレ予定ですw

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の二つの共通動機は意外やさり気無く、主部主題も少しだけ色付けて、第二主題もそれなりです。多少のディナーミクは感じますが…
第三主題は太い鳴りですがそれだけ、コーダも大きく でも普通。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は抑え気味、第二主題も速めで表情は控えめ、第三主題も主張はしません。ディナーミク中心に多少のアゴーギクが振られて速め、全体とすると然程の色彩感は伝わりません

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は予想通りに暗く低く強く、主部主題は標準的に背景の動機を強めに、共通動機との絡みも力感ほどほどです。コラール主題でも殊更のコントラストは付けていません。騎行も多少の弾け感はありますが淡々と、コーダは混沌さよりも鳴りで納めます。


ディナーミクはあるもののバーンスタインとは思えない普通?の流れに仕上がっています。
出し入れのコントラストと重心の低さは確かにあるのですが、何と言ってもバーンスタインと言うフィルターがかかっていますからねェ…



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ヘルベルト・フォン・カラヤン (Herbert von Karajan)

カラヤンは"海"の録音を4回残しています。今回は最後の録音でもちろんベルリンフィル(Berliner Philharmoniker)を振っています。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の共通動機は少し緩急、主部主題は明瞭な明るさに、第二主題は抑え気味、その後も少し揺さぶりを入れながら見晴らしよく。第三主題でも揺さぶりつつの優美さで広がりを奏でます。コーダも美しく雄大に。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は序奏に被る様に、煌びやかさから第二主題は少し神経質、第三主題は鬱を見せて変化を明瞭に並べます。その後も変奏する主題・動機は速めのテンポ設定で目まぐるしく表情を変えます

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は暗雲濃くテンポ速め、主部主題も速めで緊迫感に乗ります。共通動機も重厚怒涛なのですが、速いテンポ設定で鬱陶しさは避けられています。コラール主題でトーンダウンですが低弦が唸るのはBPOらしさでしょうか。山場はガッツリ鳴らして騎行は疾駆させ、コーダは激しく狂乱状態を作り一気に駆け抜けます。


爽快な一二楽章 vs 重厚な三楽章の対比です。
カラヤンBPOらしからぬ前中盤、カラヤンBPOらしさ全開の最終楽章です。統一適用は全体速めのテンポ設定でしょう。



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ジュゼッペ・シノーポリ (Giuseppe Sinopoli)

学者肌の指揮者シノーポリが主席指揮者を務めたフィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)との"海"です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の共通動機は標準的、主部主題は穏やかに、第二主題も同様です。華やかな色付けはあって標準仕様とも思える流れです。第三主題も柔らかな広がりを聴かせて共通動機との絡みを強めに広げ、コーダもしっかりと派手やかな音を鳴らします。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は落ち着いた音色で、第二主題は神経質に、第三主題はふんわり包み込む様に、表情変化を明確にしています。その後も動機と主題にカラフルに色付けするこの楽章らしさになっています。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は暗鬱な力感を強調、主部主題でも緊張感を与えます。共通動機も揺さぶりで緊迫させています。コラール主題で緩やかにトーンを落ち着かせ、騎行は色合いを濃いめに コーダは狂乱気味に鳴らします。


この曲らしい三つの楽章の標準仕様と言った印象です。
第一楽章:華やかさ、第二楽章:カラフルさ、第三楽章:暗鬱な緊張感、のコントラストある構成です。



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ジョス・ファン・インマゼール (Jos van Immerseel)

インマゼールが創設した古楽器オケのアニマ・エテルナ(Anima Eterna)との演奏です。個人的には古楽器だからと言って興味が湧くわけではありませんが…

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏はクセなく落ち着いて、主部主題も緩やかな心地よさ、第二主題も寄り添います。流れは落ち着いた印象が強く二つの共通動機を絡ませます。第三主題も自然体で穏やかさを表現し、コーダもゆったりとしています。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は色合いを抑えめに、第二主題は落ち着き、第三主題ももわっと、色付けはコントロールされています。その後の変奏でも色合い変化はありますがナチュラルで、この楽章らしい煌びやかさよりも自然体に近い印象になるかもしれません。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は暗い渦の様に、主部主題でもその流れを下敷きにしていますが少しづつ落ち着きます。一二楽章よりは出し入れは強めですが、それでも興奮は抑え気味でしょう。コラール主題でも落差は低めです。騎行は速めに少し色合いを増して、コーダはコントロールされています。


第三楽章はディナーミクを効かせて鳴らしますが淡々とした自然体で、この曲らしい派手な華やかさは抑えられています。
全体のテンポ設定が少し遅めになっているのも一因だと思われます。



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ハンス・ツェンダー (Hans Zender)

現代音楽家で指揮者のツェンダーがザールブリュッケン放送交響楽団(Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken)を振った演奏です。主席指揮者を務めていました。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の二つの共通動機は整然明瞭に、主部主題もハッキリとした鳴りで応えて 第三主題は落ち着きで聴かせます。その後も太い鳴りと骨格で流れを作ります。第三主題でもアゴーギクを効かせて厚い音で煌めきを鳴らし、コーダは派手派手しく!

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題はハイテンポで軽やかに色彩感を強めて、第二主題は神経質な色合い、第三主題も何かを包み込む様にと 表情を豊かに変化させています。アゴーギクとディナーミクを上手く混ぜ合わせて色彩鮮やかな楽章にしています。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機はハイテンポで不安感を作って、主部主題も抑えを効かした繊細さ、共通動機が絡むと徐々に上げてピークを作ります。コラール主題では極端には落とさず、前二つの楽章と比べると淡白な流れで少しガッカリかもしれません。コーダも派手な中にもコントロールが効いています。


少し残念な第三楽章が足を引っ張ってしまった印象です。第一・二楽章はカラフルでディープな興味深い"海"に仕上がっていますのでよりそう思えるかも。



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ゲオルク・ショルティ (Georg Solti)

ショルティが手兵とも言えるシカゴ交響楽団(Chicago Symphony Orchestra)を振った"海"です。いかにもショルティCSOがフィットしそうなのですが、カラヤンやバーンスタインと同様あまり人気がありません。理由は簡単ですw

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の共通動機は標準的に、主部主題もクセなく、第二主題も抑え気味、と ショルティCSOらしからぬイメージです。その後もクールで淡々と、第三主題でも変化率は低く、コーダも鳴らしますが興奮は皆無です。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は弱く背景音に隠れ気味、第二主題も淡々と、第三主題でも表情変化が薄いです。この楽章らしいカラフルさはあるのですが、どこかよそよそしく感情移入の弱さが気になります。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は激しさをクールに、主部主題でも表情は淡々と、共通動機との絡みもクールに進みます。コラール主題でもトーンダウンは緩やか、騎行も至って普通で、コーダでも華々しいのですがスコア以上のものでも無いでしょう。


よそよそしい程の淡々とした真面目さです。クセのない演奏を聴くなら悪くありません。
でも ショルティCSOに期待する派手な鳴りは行方不明、良し悪し別にそれが一番寂しいですね。



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ヤニック・ネゼ=セガン (Yannick Nézet-Séguin)

ネゼ=セガンが主席指揮者を務めるメトロポリタン管弦楽団(Orchestre Métropolitain)を振った"海"です。

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1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏は心地良さ、主部主題は緩やかに広げ、第二主題も繊細に鳴らします。第三主題でも穏やかさを広げて、コーダも落ち着き払って鳴らします。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は淡々と、第二主題は少し幽幻さ、第三主題はユーモアを感じます。殊更な煌めきや色合いは付けませんが、この楽章らしい表情の変化はしっかり利かせています。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は暗鬱でしっかりと、主部主題も真面目に作ります。共通動機との絡みも几帳面な流れです。コラール主題でも極端なトーンダウンを避けて騎行は軽妙、コーダもその軽妙さに乗って駆け抜けます。


"緩やか・穏やか・心地良さ"の流れで統一されています。全てがコントロール下にあって、興奮炸裂や華美華燭を避けた流れに終始しています。
決して悪い訳ではなく、メロウな"海"と言ってもいいかもしれません。




何回も録音を残している指揮者も少なからずいますが、とりあえず '一指揮者一録音' でのインプレです。

隠れオススメはカンブルランダーリントン。一聴の価値ありです!!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ルイ・ロルティのピアノで聴く『リストのオペラ・トランスクリプション集』の楽しさ


Liszt At The Opera
(Louis Lortie, piano)
リストと言えばトランスクリプション。ベートーヴェンをはじめ 何でもヴィルトゥオーソ・ピアノ曲にしていますね。本CDは有名オペラ作品をピアノ編曲版にした楽曲集です。(7. "トリスタンとイゾルデ" 「I. 第一幕 前奏曲」のみロルティの編曲です)

ピアノはルイ・ロルティで、本ブログでのリスト作品は「巡礼の年」全曲版をインプレしています。





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1. ワーグナー:"タンホイザー" 序曲
"巡礼の合唱"を厳かにスローに入って大きく華々しく鳴らし、"懺悔の歌"では物静かさが響きます。そこにいきなり"ヴェーヌスの誘惑"がハイテンポの身軽なお遊び世界を表現します。
出し入れと技巧性の高さを生かしつつ、この序曲がタンホイザー全曲を表現している事を見事に作り上げていますね。エンディングは超絶技巧です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  pfはGyörgy Cziffraで、Lortieよりも強音打鍵は抑え気味ですね
  スコア付きで、アルペジオやスケールの強烈さがわかります


2. ワーグナー:"タンホイザー"「優しい夕星よ」レチタティーヴォとロマンス
透明感あるpf高音アルペジオ、そこから色濃い低音アルペジオと表現力を強く押し出します。緩徐なのですが、出し入れの強さはリストらしさでしょう。後半に行くほどに技巧を見せるのも同じです。
透明感あるpfが死期が迫るエリーザベトを表現していますね。


3. ワーグナー:"さまよえるオランダ人"「紡ぎ歌」
第2幕第1場の糸紡ぎをする女性陣のシーンですね。速くてお喋りなpfが鍵盤上を転がる様な音を奏でます。その強烈なハイスピードと旋律の対比が作り上げる技巧曲ですね。これはリストのトランスクリプションの典型の一つでしょう。


4. グノー:"ファウスト"「ワルツ」
第二幕のワルツで、ファウストがマルグリートに恋をするシーンですね。例によってメイン旋律は弄らずに技巧と出し入れで脚色します。特にラストは強い打鍵が印象的な激しいワルツで、コンサート受け間違いなしですね。


5. ベルディ:"リゴレット" 演奏会用パラフレーズ
リゴレットとありますが曲は第三幕の「美しい恋の乙女よ」のみで、ピアニストでもあった大指揮者ハンス・フォン・ビューローの為に書かれています。
よく知られる主題はスロー美を生かした演奏ですが、全体は強弱が強い編成です。その上ロルティはディナーミクをオリジナルよりも強く付けている感じがありますね。


6. モーツァルト:"ドン・ジョヴァンニ" の回想
5パートでドン・ジョヴァンニのストーリー各シーンがサブタイトルで付いています。お馴染みの主題が並びますがロルティは強音を軸としてpfを唸らせ、細かいアルペジオやスケールは速く 技巧性を見せ付けますね。


7. ワーグナー:"トリスタンとイゾルデ" 「I.第一幕 前奏曲」「II.イゾルデの愛の死」
コンサートでもお馴染みのクラシック音楽の中でも最も人気があるセットでしょう。
I.はロルティ本人の編曲でリスト作品と同様に強音を用いますがリズム変化と技巧は抑え気味で、その中にこの曲らしい澄んだ哀しみを湛える様な美しさをのこしますね。
II.は技巧を下敷きにして死んだトリスタンの後を追うイゾルデの哀しみを波の様に表現しています。出し入れも抑え気味になっていてラストシーンを思い浮かばせる見事なトランスクリプトになっています。それまでの編曲とは一味違いますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  Marc-André HamelinのII.で、Lortieよりもpfを鳴らします
  そして硬質な鳴りがアムランらしく、表現力も濃いです
  その演奏パターンはアムランのLIVEらしさで、アプローズ前からLIVEとわかります
  (スタジオ録音のアムランはLIVEとは違いクールです)



オリジナル構成を改編せず、出し入れと技巧を最大限生かしたヴィルトゥオーソ・ピアノ曲集です。

旧来的な大向こうを唸らすタイプの為の楽曲で、当時のスターだったリスト(長身美男子の超絶技巧派ピアニスト)を思い浮かべるのにもってこいですね。

ロルティのpfもやり過ぎかと思われるくらいディナーミクを強く振っていてpfが唸りを上げます。全曲聴くとお腹いっぱいですがラストに救われますね。構成も上手いです。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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