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アンドレア・バッティストーニ指揮 / 東京フィルハーモニー交響楽団の「マーラー 交響曲 第5番」


Mahler Symphony No. 5
(Tokyo Philharmonic Orchestra, Andrea Battistoni: cond.)
イタリア人指揮者バッティストーニ(b. 1987)が2016年から主席指揮者を務める東京フィルを振ったマーラー5です。
昨年(2022-9/19 オーチャードホール)のLIVEですね。






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1. 第一部
抜けの良いファンファーレから葬送行進曲はややスローに鎮め、第一トリオでは鳴りを広げテンポアップ、第二トリオはアゴーギクを効かせた哀愁と王道に表情を付けた流れです。
第二楽章第一主題は速く激しく、第二主題は落ち着いた哀愁で第一楽章トリオのパロディを避けています。展開部の"烈-暗-明"のコントラストも正攻法でと見晴らしとコントラストの良い第一部になりました。


2. 第二部
スケルツォ主題は優雅な舞踏曲、レントラー主題ではスローに微妙なアゴーギクで優美さを。第三主題のオブリガートHrは朗々と鳴らし、変奏パートも得意のアゴーギクで変化を付けました。展開部はテンポを上げ大きめに鳴らして再現部へ、コーダは約束通りの激しさでまとめます。
変化球なしの王道スケルツォ楽章です。


3. 第三部
第四楽章主部は夏の夕暮れの様な優しさで中間部は繊細に。穏やかさで包み込む様なアダージェットです。
第五楽章は第二主題をテンポアップで第一主題に絡ませる面白い組合せ、コデッタ主題は優美です。展開部は全体的に力感、再現部後半山場は派手に大きく、コーダは強烈なアッチェレランドで駆け抜けます。



正攻法にアゴーギクの色彩を入れたマーラー5です。鳴らすパートはガッツリと鳴らして安定感があります。東京フィルの演奏も良く、バッティストーニの意図を表現していますね。

録音の上手さが一役買っているのも間違いないでしょう。完成度は高くこれと言った欠点は皆無、ただ聴き終えた後に残る印象がなぜか薄めなのはどうしてでしょう?!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





セミヨン・ビシュコフ指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の「マーラー 交響曲 第二番 "復活"」


Mahler Symphony No. 2 "Resurrection"
(Czech Philharmonic, Semyon Bychkov: cond.)
ビシュコフとチェコ・フィルが進めるマーラー・チクルスから第二番"復活"ですね。
ソプラノはリスティアーネ・カルク(Christiane Karg)、アルトはエリーザベト・クールマン(Elisabeth Kulman) です。

本ブログでは既出の第五番、ネット配信の第六番をインプレ済みです。







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第一楽章
提示部第一主題は間を入れて、葬送行進曲も同様に間を挟んだ慎重さから上げます。第二主題は静さと穏やかさを丁寧に、コデッタも刺激を利かせますが安定感ですね。
展開部前半はスロー穏やかに第二主題で入り、コデッタの山場は一瞬の力感。後半も一瞬の激しい第一主題から、クレシェンド強くコラールの山場も厳しいですが落ち着いて。
再現部も各主題の強調は薄めで、コーダは大きくパウゼをとって入り鬱のコントラストは低めですね。
慎重な第一楽章です。


第二楽章
主要主題は優美でスローなメヌエット、トリオでも流れは変えずにリズム感を加えます。トリオ回帰では強めに鳴らしますが安定していますね。少しシラッとしたアンダンテです。

第三楽章
主部はコントロールが効いた『子供の不思議な角笛』中間部も緩やかさを軸にしますがピークを気持ち良く鳴らします。見晴らし良くコンパクトな最終楽章の様な印象になりました。

第四楽章
主部アルト「原光」はスローで丁寧さ、中間部も楽器編成の違いを生かして心地良さが作られます。少しアルトが弱めに感じますが、澄んだ流れで前後楽章とのコントラストが作られます。


第五楽章
提示部第一主題は各動機を生かした標準的な構成。第二主題のclからの"復活"の動機もクセなく、そこからの動機群は各個性をアゴーギクで対比させてコラールは華やかです。
展開部"死者の行進"は流れに変化を付けて行進します。慎重さは感じますがマーラーらしさを表現していますね。
再現部前半はアゴーギクとディナーミクを最大限利かせた管弦楽で、バンダの音色を効果的に夜鶯も清廉な印象です。後半の合唱は静を強調して入り、ソプラノもそこに浮かび上がる標準的な仕様ですが少し弱かも。アルトの "O glaube, Mein Herz" ももう少し低いトーンが好みですが、重唱は切れ味がありますね。そこからは一気にクロプシュトックの"DIE AUFERSTEHUNG"らしい怒涛の山場を作り上げます。



完成度は高く隙もないのですが、引き換えに感情移入が薄く淡々とした感の"復活"でしょうか。全体的には一/二楽章は間を入れたスロー、三/四/五楽章は楽章間のコントラストです。

録音技術も上がってセッションで作り込まれた完成度の高い作品の一つに思えます。駄耳ではありますが "やっぱりLIVEがいいね" などと思ってしまう今日この頃です。(LIVEのCDでも数回の公演の'良いとこ取り'も多い訳ですが…w)




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





オスモ・ヴァンスカ指揮/ミネソタ管弦楽団「マーラー 交響曲 第9番」は中間楽章の素晴らしさ


Mahler Symphony No. 9
(Minnesota Orchestra, Osmo Vänskä: cond.)
ヴァンスカ/ミネソタ管のマーラーチクルスから第9番ですね。実はヴァンスカは2022年で既に退任、22-23の本シーズンからはトマス・セナゴーが音楽監督に就任しています。







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1. 第一楽章
第一主題は仄かな鬱の美しさをスローに、第二主題でも落差は小さめに緊迫感を作って第三主題のピークを派手に大きく広げます。展開部前半から中盤も暗鬱さをスローで表現、力強さはファストとコントラストを付けています。心地良い王道ですね。経過部の葬送は少し強めにしています。
再現部は提示部よりも広がりが強く華やかで、コーダは最終楽章を思わせる静にする上手さです。


2. 第二楽章
主部主題、第一トリオ共にスローでリズムの刻みを強調。多少刻むのはよくありますが ここまで徹底して刻むのは聴いた事がなく、個性を放つレントラー楽章ですね。第二トリオでも穏やかな中に尖ったリズム感があって、主部回帰の山場は一転してハードでファストです。


3. 第三楽章
主部主題は速いテンポ。前楽章とのコントラストを激しさと力強さで荒っぽく表現しますね。サブ主題的な第一トリオも軽快ですが締りがあって速いです。中間部(第二トリオ)も速めで入りますが、スローになると最終楽章のターン音型を彷彿させます。ちょっと鳥肌モノです!! 当然ラストは強烈にpiù strettoです。


4. 第四楽章
主部主題は緩やかな哀愁でこの曲らしさそのもの。fg動機後も極端な音厚は避けて良いですね。第一エピソードは低弦の裏にvnを薄く入れて哀愁を表現し、緩やかに大きく弦楽奏を広げます。王道ながら心に響きますね。
第二エピソードは速めの流れにしてコントラスト付け、弦楽が入ると緊張感を上げて山場を大きく激しく鳴らします。このコントラストこそが今回のヴァンスカのスタンスでしょう。
後半からコーダへはゆっくりと鎮まり、ターン音型の浮遊さで静空間に音を浮かばせて終息します。



構成感とコントラストが光るマーラー9です。そのベースになるアゴーギクは基本的な "静スロー・烈ファスト"。それを強めに有効的に使っていますね。

第一・四の緩徐楽章も王道的に素晴らしいのですが特筆すべきは二つの中間楽章の対比でしょう。バーンスタイン盤を始めとする名盤はいずれも中間楽章の素晴らしさですから。
"マーラー9聴き比べ"ベスト5レベル!?




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ラファエル・パヤーレ指揮/モントリオール交響楽団 の「マーラー 交響曲 第五番」は変則を挟んだ心地良さ


Mahler Symphony No. 5
(Orchestre symphonique de Montréal, Rafael Payare: cond.)
2021年から音楽監督を務めるパヤーレとモントリオール響のマーラー5です。(2022-8 rec.)
パヤーレは当初ホルン奏者として"エル・システマ"、"シモン・ボリバル響"で活動していました。その後アバドや同郷ドゥダメルのアシスタントを務めて指揮者デビューしています。年齢はドゥダメルより一つ年上ですね。

パヤーレのマーラー5は、アルスター管弦楽団との演奏 (2019 rec. ネット配信)をインプレ済みです。アゴーギクで作る個性派マーラー5でしたね。







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1. 第一部
ファンファーレから揺さぶり、葬送はややスローに間をとりながら優美さを感じさせます。第一トリオは華やかさを鳴らし、第二トリオも上品な哀愁を奏でます。
第二楽章第一主題では激しさをハイテンポで、第二主題も穏やかさで哀愁を押さえて、第一楽章のパロディを避けている感じです。展開部"烈-暗-明"の流れも心地良いコントラストですね。
アゴーギクを利かせながらも心地良く見晴らしの良い第一部です。


2. 第二部
スケルツォ主題は優美で舞踏風に、レントラー主題もスローに揺さぶる様な抑揚で優雅な流れを作ります。スケルツォ楽章らしい心地良い主部(提示部)になりましたね。第三主題オブリガートhrは朗々と鳴らし、弦楽奏も懐広く受け止めます。変奏パートもスローで透明感ある広がりがありますね。金管が少々怪しいパートもありますがw 展開部はテンポアップで切れ味を、再現部は三つの主題をスケルツォらしさに奏でて、ラストは超スローで入って一気呵成に突撃炸裂する聴いた事が無い超個性的コーダです!!


3. 第三部
第四楽章主部は静美で速めの流れ、中間部も澄んだ透明感です。クールなアダージェットです。
第五楽章第一・第二主題は程良いテンポ設定で心地良く絡み コデッタ主題も優美さと、キッチリ押さえています。展開部も軽快さから音厚を上げる堂々王道、再現部後半山場を派手に大きく鳴らし、コーダはビシッと締め括ります。



アゴーギクのスパイスで仕上げた心地良いマーラー5です。基本骨格は王道なので安心して聴けますね。だからこそ驚きの隠し技も生きて来ます。

全体スッキリ 個性も聴かせるパヤーレOSM、次のマーラーが楽しみになりました。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ヨナス・カウフマンの独唱で聴く 濃厚なマーラー『大地の歌』ノット指揮ウィーンフィル


Das Lied von der Erde Gustav Mahler, 1860-1911
(Jonas Kaufmann, tenor)
"大地の歌"はテノールとアルト(メゾソプラノ)と言うのが一般的ですが、アルトの替わりにバリトンと言うのもありですね。その代表がバーンスタイン/フィッシャー=ディースカウ(DECCA盤)でしょう。

今回はそこもJ.カウフマンが通して歌うテノール独唱ver.になりますね。オケがジョナサン・ノット/VPOと言うのも興味深いです。


"大地の歌"を少々荒っぽく括ると…
テノール(男性)が歌う奇数番楽章は盃を重ねる詩、アルト(女性)が歌う偶数番楽章は人の心の詩、最後の第六楽章だけは自然と友を謳う訳ですが、全体として"人は死しても大地は残る"というお話ですね。個別の古い中国の詩の引用ですから、楽章間でストーリー展開がある訳ではありません。







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第一楽章「大地の哀愁に寄せる酒の歌」

序奏の激しさからテノールも厳しい表現力で入って来る あまり聴かない導入部。その後もメリハリがかなり強くペザンテ強調です。管弦楽の展開部は落ち着かせますね。それでもかなり'うるさい'テノールですw

第二楽章「秋に寂しき者」
導入部の木管は落ち着いて、テノールも抑えていますが濃厚。展開部は抑揚を付け、再現部でもテノールは'くどい'表現です。濃厚な緩徐楽章になるでしょうね。

第三楽章「青春について」
スケルツォらしい跳ねる様なオケとテノールです。五音音階で中華和声も効いていますが…

第四楽章「美について」
導入部コモド(乙女)とオケの主題パートは前の楽章の延長線上的に。一転して中間部の馬で駆ける若者は派手な鳴りのオケでテノールも押して来ます。

第五楽章 「春に酔える者」
アレグロの提示部テノールは叫ぶが如くで、その後も勢いの良い声量を聴かせます。頭痛がしますww

第六楽章「告別」
提示部のテノールとフルートの掛け合いは抑えて良い感じですね。とは言え通して表現は濃く、やっぱりしっとりとしたアルトかバリトンで聴きたいと思ってしまいます。



くどいテノールが好きか嫌いか?wそれが左右する"大地の歌"ですね。オケもそれに負けない強さと濃厚さを感じます。

テノールだけで表現力が単調に感じる事も含めて個人的には少し辛いですが、貴方がカウフマンのファンなら必聴でしょう!!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





マーラー 交響曲 第5番 名盤・珍盤 CD195枚 聴き比べです [#13 : 191-195]


近年リリース分中心の#13、増分はここに追記して行く予定です。 [最終追記:2023/9]

Mahler Symphony No.5 -- 195 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:15CD
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン[x3 ☆], プレートル, 小澤征爾, モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル[x2], ドホナーニ, 参考音源/資料類
 #2:20CD
M.T.トーマス, テンシュテット[x6], ベルティーニ[x2 ㊟], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4 ☆], シノーポリ, 井上道義, ザンダー[x2]
 #3:25CD
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], スワロフスキー[㊟], レヴァイン, 外山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 飯森範親, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, マーツァル[x2], シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4], ブーレーズ[x3 ★㊟], メータ[x3 ☆], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★☆], バルビローリ[x2], バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:15CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, スウィトナー, 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ, アルブレヒト, I.フィッシャー, 堤俊作, フェルスター
 #7:10CD
ガッティ[㊟], レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル, フェルツ[㊟], 大植英次, マッケラス
 #8:15CD
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2 ㊟], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2 ㊟], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン, ヒルシェ
 #10:10CD
ゲルギエフ[x4 ☆], ラトル, ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, 山田一雄
 #11:20CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト, エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス, スターン, デプリースト, ワルター[☆], ミトロプーロス[㊟], ケンペ, ロスバウト, パレー[㊟], ホーレンシュタイン, ラインスドルフ, アンチェル, ルドルフ・シュワルツ
 #12:20CD
佐渡裕[x2], 大野和士, ハーディング, A.フィッシャー[☆], ロト, スヴェトラーノフ[x2], ジンマン, ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ズィロウ・チャン, フックス, フロマン, ブリッグス(オルガン), トレンクナー&シュパイデル(ピアノDuo), ミヒャエル・ナナサコフ(ピアノDuo), ナタリア(アンサンブル), ホルスト=シンフォニエッタ(アンサンブル)
 #13:5CD 本投稿
バッティストーニ, パヤーレ, ネゼ=セガン[☆], バーナード, ビシュコフ[☆], カーチュン・ウォン, クルンプ, バリエンテ



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アンドレア・バッティストーニ, Andrea Battistoni

Tokyo Philharmonic Orchestra
[DENON] 2022-9/19


イタリア人指揮者バッティストーニ(b. 1987)が2016年から主席指揮者を務める東京フィルハーモニー交響楽団を振ったマーラー5です。


【第一部】
抜けの良いファンファーレから葬送行進曲はややスローに鎮め、第一トリオでは鳴りを広げテンポアップ、第二トリオはアゴーギクを効かせた哀愁と王道に表情を付けた流れです。
第二楽章第一主題は速く激しく、第二主題は落ち着いた哀愁で第一楽章トリオのパロディを避けています。展開部の"烈-暗-明"のコントラストも正攻法でと見晴らしとコントラストの良い第一部になりました。

【第二部】
スケルツォ主題は優雅な舞踏曲、レントラー主題ではスローに微妙なアゴーギクで優美さを。第三主題のオブリガートHrは朗々と鳴らし、変奏パートも得意のアゴーギクで変化を付けました。展開部はテンポを上げ大きめに鳴らして再現部へ、コーダは約束通りの激しさでまとめます。
変化球なしの王道スケルツォ楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は夏の夕暮れの様な優しさで中間部は繊細に。穏やかさで包み込む様なアダージェットです。
第五楽章は第二主題をテンポアップで第一主題に絡ませる面白い組合せ、コデッタ主題は優美です。展開部は全体的に力感、再現部後半山場は派手に大きく、コーダは強烈なアッチェレランドで駆け抜けます。


正攻法にアゴーギクの色彩を入れたマーラー5です。鳴らすパートはガッツリと鳴らして安定感があります。東京フィルの演奏も良く、バッティストーニの意図を表現していますね。

録音の上手さが一役買っているのも間違いないでしょう。完成度は高くこれと言った欠点は皆無、ただ聴き終えた後に残る印象がなぜか薄めなのはどうしてでしょう?!


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ラファエル・パヤーレ, Rafael Payare

Orchestre symphonique de Montréal
[PentaTone Classics] 2022-8/17, 18


2021年から音楽監督を務めるR.パヤーレとモントリオール交響楽団のマーラー5です。


【第一部】
ファンファーレから揺さぶり、葬送はややスローに間をとりながら優美さを感じさせます。第一トリオは華やかさを鳴らし、第二トリオも上品な哀愁を奏でます。
第二楽章第一主題では激しさをハイテンポで、第二主題も穏やかさで哀愁を押さえて、第一楽章のパロディを避けている感じです。展開部"烈-暗-明"の流れも心地良いコントラストですね。
アゴーギクを利かせながらも心地良く見晴らしの良い第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は優美で舞踏風に、レントラー主題もスローに揺さぶる様な抑揚で優雅な流れを作ります。スケルツォ楽章らしい心地良い主部(提示部)になりましたね。第三主題オブリガートhrは朗々と鳴らし、弦楽奏も懐広く受け止めます。変奏パートもスローで透明感ある広がりがありますね。金管が少々怪しいパートもありますがw 展開部はテンポアップで切れ味を、再現部は三つの主題をスケルツォらしさに奏でて、ラストは超スローで入って一気呵成に突撃炸裂する聴いた事が無い超個性的コーダです!!

【第三部】
第四楽章主部は静美で速めの流れ、中間部も澄んだ透明感です。クールなアダージェットです。
第五楽章第一・第二主題は程良いテンポ設定で心地良く絡み コデッタ主題も優美さと、キッチリ押さえています。展開部も軽快さから音厚を上げる堂々王道、再現部後半山場を派手に大きく鳴らし、コーダはビシッと締め括ります。


アゴーギクのスパイスで仕上げた心地良いマーラー5です。基本骨格は王道なので安心して聴けますね。だからこそ驚きの隠し技も生きて来ます。
次のマーラーが楽しみになりました。


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ヤニック・ネゼ=セガン, Yannick Nézet-Séguin


Philadelphia Orchestra
[The Philadelphia Orchestra Association] 2010-10/29

Nezet-Seguin_Mahler5.jpg
(配信のみで現状CDリリースがありません)

2012年から音楽監督を務めるネゼ=セガンがフィラデルフィア管弦楽団を振ったマーラー5ですね。録音は2010年で12年からの音楽監督就任がオケからアナウンスされた年です。


【第一部】
葬送行進曲は控え目な重厚さと鬱で、第一トリオもコントロールされたテンポアップと激しさ、第二トリオの哀愁もクールさです。
第二楽章第一主題と第二主題は一楽章トリオの再現風に、展開部の"列-暗-明"も明確に出し入れを作りつつも感情移入を回避しています。
王道ですが感情の起伏をコントロールした第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は程よいテンポで三拍子の優美さを、レントラー主題では弦楽奏を生かした優雅さを奏でます。第三主題主部はオブリガートHrと弦楽のやりとりは約束通りの安定感、変奏パートも同様です。展開部のテンポアップ、再現部の色合い付けもしっかりと。コーダは狂乱興奮を避けつつ最大限の音の広がりを鳴らします。
スケルツォらしい心地良さが楽しめる楽章になりましたね。

【第三部】
第四楽章主部は淡々としながらも静美そのもの、中間部から主部回帰も透明感に溢れます。クールな甘美に包まれるアダージェット原器でしょうか。
第五楽章は第一主題から第二主題へテンポアップで爽快軽快に絡み、コデッタ主題で優美さへと導きます。展開部は静で入って力感アップを明確に、再現部も三つの主題を丁寧に、後半山場を大きく構えて華々しく鳴らします。コーダのアッチェレランドは勿論ビシッと締め括りました。


教科書的王道ながらクールなマーラー5です。それは装飾的なアゴーギクとディナーミクを徹底して抑えているからでしょう。

普通なら'つまらない'印象となる処をクールに聴かせているのは演奏の確かさかと。原点回帰的素晴らしさで初めてのマーラー5としても言う事無しの一枚です。


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デイヴィッド・バーナード, David Bernard

Park Avenue Chamber Symphony
[Recursive Classics] 2022-5 ?


米N.Y.を活動の拠点とする指揮者で、今回のパークアヴェニュー室内交響楽団の音楽監督を務めています。


【第一部】
少々荒いtpと曇った金管のファンファーレ、葬送は歩みを明確に感じます。第一トリオはややモッタリ金管は荒く、第二トリオも弦楽の哀愁感が弱くコントラストがつきませんね。
第二楽章第一主題は速めですがバランスが崩れ気味。第二主題は淡々とした哀愁で、気持ちおの入りは弱いです。展開部の"烈→暗→明"のコントラストは管楽器の撹乱が気になってしまいますね。行進曲はバタバタです。再現部は全体的に安定性に欠けてしまいます。
演奏の不安定さが気になる第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は落ち着いて優美、怪しい処もありますが…w、レントラー主題は少しスローに落として方向性は見せています。第三主題はオブリガートhrが音をまとめられません。受ける弦楽もドロドロです。展開部も駆け抜け様とするのですがギクシャクですね。この曲のラストを予測させるコーダが一番まとまりました。
演奏技量が暴露されて一体感に大きく欠けるレントラー楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は速めの甘美さ、中間部はどことなく気持ちに欠け気味です。大きく馬脚を現さずに何とかまとめたアダージェットでしょうか。
第五楽章序奏はhrが不安定、第一・二主題はここでも何とかまとめコデッタ主題もギリギリの優美さ。展開部もとりあえずバランスは崩さずに山場へ登り詰めましたね。再現部山場からコーダはなぜかバランスも鳴りも良く、フィニッシュは見事にアッチェレランドを利かせました。
ラストを見事にまとめた第三部と言った風でしょうか。驚くほどビシッと決めましたね。


荒く不安定なマーラー5です。残念ながら荒っぽさが演奏技量からくるものなので表現力不足になってしまいます。余裕が感じられず、金管群だけでなく弦楽まで全てヤバイですw (アマかユーズのような印象です)

久しぶりの低次元争いの一枚かと思いきや、最後のフィニッシュはものの見事に音もテンポも揃えるという意味不明さもあって不思議さ満点!、この手が好きな方っていらっしゃいますよねw


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セミヨン・ビシュコフ , Semyon Bychkov


Czech Philharmonic
[PENTATONE] 2021-12/8-11


2018年からビシュコフが首席指揮者を務めるチェコ・フィルハーモニー管弦楽団とのマーラー5ですね。マーラー・チクルスの一環だそうです。


【第一部】
静で鎮んだ葬送行進曲に興奮を抑えた導入句ファンファーレ、第一トリオでも力感をアゴーギクでコントロール、第二トリオの哀愁は静美で上品です。
第二楽章第一・第二主題は第一楽章トリオのパロディ、展開部の"烈-暗-明"も淡々としたコントラストです。再現部も各主題を厳しくしますが暴れず、それでも終盤のコラールはしっかりとした音出しで見事に聴かせますね。
コントロールされて落ち着いた第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は肩の力を抜いた優美な舞踏曲、レントラー主題もテンポをキープしながら軽妙さを聴かせます。控え目真面目な主部ですね。第三主題オブリガートホルンは朗々と鳴らして低弦と穏やかさを作り、変奏パートも必要以上のリズム変化を付けずクールです。
展開部も多少の力感を加えてテンポアップ、再現部主題群も踊るが如く対位法を生かして絡み合い、コーダはアップテンポで見事に鳴りを広げます。
三拍子が生かされた端正で心地良いスケルツォ楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は端正な美しさですがテンポは速めで入って甘美さを回避、落ち着くとテンポを落とし トリオも静美な透明感です。クールなアダージェットで好みですねェ。
第五楽章序奏は'角笛'風、第一・二主題は軽快にコデッタ主題も優美さを奏でます。展開部も落ち着いていますが、徐々にテンポと共に緊迫感を上げて山場を大きく鳴らす上手い流れです。再現部三主題部はスロー化で'ため'を作り、山場からコーダは一気呵成に登り上がって派手に鳴らしフィニッシュは見事アッチェレランドです。


クールで端正なマーラー5です。揺さぶりなどありませんが何処を取っても緩みは無く、聴かせ処は締まりある見事さです。上品なコース料理の様で、これは'あり'でしょう

近年のマーラー5で多くなった演奏の気がしますね。録音技術向上で細部の音色がわかるようになったのかもしれません。('作り込まれた'感は少し気にはなりますが…)


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カーチュン・ウォン, Kahchun Wong

Japan Philharmonic Orchestra
[DENON] 2021-12/10, 11


シンガポールの指揮者ウォン(黃佳俊)が2021年から主席客演指揮者を務める日本フィルハーモニー交響楽団を振ったマーラー5、昨年末のサントリーホールでのLIVEですね。
ちなみにウォンの初リリースCDで、2023-24シーズンから主席指揮者になる様です。


【第一部】
強めのファンファーレに僅かに揺さぶりを見せる主部葬送、第一トリオは鳴りの良さで勝負、第二トリオの哀愁は軽量ですがアゴーギクとディナーミクの揺さぶりが強くクセがあります。
第二楽章第一主題は速め、第二主題は緩やかに、一楽章トリオのパロディを避けています。展開部は"烈→暗→明"のコントラストはテンポ変化を大きく付けて、再現部も提示部より一層抑揚を付けます。
揺さぶりで聴かせ処を作る第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は緩やか穏やかですがclパートで揺さぶり、レントラー主題は速めの流れにアゴーギク。もう少し優美・優雅さが欲しかったかも。第三主題はオブリガートホルンと弦楽パートも、変奏パートもクセはなく。展開部は静スローから一気に登って、再現部も三つの主題をそつなくまとめています。コーダはもちろん約束通りの鳴りの良さでまとめます。
提示部以外至って標準的なスケルツォ楽章になりました。

【第三部】
第四楽章主部は静的ですが気になるアゴーギク、中間部は静美に聴かせて、微妙な変化球アダージェットですね。
第五楽章第一・第二・コデッタ主題ともに教科書的、展開部も徐々に上げていく良くある流れです。再現部山場からコーダもフィニッシュのアッチェレランドも予想通りの盛り上げですね。LIVEらしいアプローズはカット…なぜ?!


揺さぶりと標準仕様が混在するマーラー5です。コーダのある第三・五楽章を落ち着かせて、一・二・四に変化をつけています。

どうせやるなら全部クセの個性派の方が拍手ですね。手が回らなかった?!


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ヨハネス・クルンプ, Johannes Klumpp

Landesjugendorchester Baden-Württemberg
[Animato] 2018-11/8


ドイツ人指揮者のクルンプがクリエイティブ・アドバイザーを務めるユースオケのバーデン=ヴュルテンブルク州立ユース管弦楽団を振ったマーラー5です。

同オケはC.ヴァイネケン指揮でもマーラー5を残していて、ユースらしい元気な演奏を聴かせてくれましたね。


【第一部】
力のこもったファンファーレから鬱ですが沈まない葬送、第一トリオでは伸びやかに鳴らして、第二トリオは落ち着いた流れで哀愁を奏でます。上々の第一楽章です!!
第二楽章第一主題はテンポ設定を速めて切れ味、第二主題も緩やかさを決めて、第一楽章のパロディを避けた上手い流れです。展開部もアゴーギクを生かしたコントラストで、再現部は抑揚を増してまとめ上げていますね。
表情豊かで生き生きとした素晴らしい第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は軽妙洒脱さを速さで表し、レントラー主題では優美な弦楽奏に落ち着かせます。第三主題オブリガート・ホルンと弦楽も情感を湛え、変奏パートのピチカートも表情を作って見事!! 展開部ではそれをまとめる様にテンポアップで締めて、再現部は三つの主題をアゴーギクとディナーミクで華やかに奏します。コーダは怒涛!!
表現力で見晴らし良いスケルツォ楽章になりました。

【第三部】
第四楽章主部は甘美を避けたクールさ、中間部も透明感ある美しさです。微妙なディナーミクとアゴーギクに、やや速めのクールなアダージェットは素晴らしく、好きなパターンです。
第五楽章二つの主題は軽快なテンポを生かして絡み、コデッタ主題は優美な舞踏風。展開部は力感を軸に突き進み、再現部山場からコラールはパワーを溜めてコーダは一気のアッチェレランドで駆け抜けます。
もちろん大喝采!! (たっぷりとアプローズも入っています)


表情豊かで見晴らし良いマーラー5です。主流的流れにディナーミクとアゴーギクを生かした構成、それについて行けるユースオケの技量が驚きの素晴らしさです!!

微妙な揺さぶりもしっかりと表現して、なんとも爽快で気持ち良さが光りますね。一聴の価値があるマーラー5になりました。今まで聴いたユースオケでは抜群の仕上がりでしょう。(録音技術も含めてです)


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ホセ・マリア・モレーノ・バリエンテ, José María Moreno Valiente

Málaga Philharmonic Orchestra
[IBS Classical] 2020-6/22-26


スペインの若手指揮者バリエンテが2020/21シーズンから首席指揮者を努める同国マラガ・フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー5ですね。残念ながら両者知見がありません。


【第一部】
ファンファーレのtpが怪しいw 葬送行進曲は穏やかですが何処か落ち着きません。第一トリオは標準的激しさで、第二トリオの哀愁も特徴は薄いですね。
第二楽章第一・第二主題、共に一楽章のトリオ再現的で、展開部の"烈→暗→明"のコントラストも平凡です。個性は無く演奏も自信なさげな第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は標準的ですがhrがヒヤヒヤ、レントラーもスローに落としてSTD的です。第三主題のオブリガートhrは一杯一杯、短い展開部やカラフルな再現部もバランスや一体感に大きく欠けます。コーダは荒れ具合が面白いかも?w
標準的スケルツォですが不安定感満載です。録音の問題でしょうが、なぜかhrが遠く聴こえるのも気になります。

【第三部】
第四楽章は弦楽奏なのに音色や揃いが良くないと言うのは困りものです。主部の途中でスローに落としている意味が不明です。
第五楽章序奏の管楽器は不安定、二つの主題をなんとか音にして提示部を逃げ延び、展開部もボロボロになりながらも山場へたどり着きます。再現部山場からコーダが一番いいかもしれません、やり直しを重ねたのでしょうねェ…


何とか形にした、そんな感じのマーラー5です。演奏レベルは酷しく、個性を見せる余裕は全く無さそうで"間"や"一体感"とはかけ離れている感じですね。

ミキシングのバランスも少し難を感じ、マスタリングのボリューム感にもやや違和感を覚えます。作り込んでいる割には全体今ひとつですね。下位争いに参加かも。







この後は新譜と何かのチャンスで既発売品の入手のインプレになります。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





デイヴィッド・バーナード指揮/パークアヴェニュー室内響の「マーラー 交響曲 第五番」


Mahler Symphony No. 5
(Park Avenue Chamber Symphony, David Bernard: cond.)
米N.Y.を活動の拠点とする指揮者D.バーナードが音楽監督を務めるパークアヴェニュー室内交響楽団を振ったマーラー5です。

COVID-19も落ち着いて来て、大編成で避けられていたマーラーもコンサートで取り上げられる機会が明らかに増えていますね。







第一部
少々荒いtpと曇った金管のファンファーレ、葬送は歩みを明確に感じます。第一トリオはややモッタリ金管は荒く、第二トリオも弦楽の哀愁感が弱くコントラストがつきませんね。
第二楽章第一主題は速めですがバランスが崩れ気味。第二主題は淡々とした哀愁で、気持ちおの入りは弱いです。展開部の"烈→暗→明"のコントラストは管楽器の撹乱が気になってしまいますね。行進曲はバタバタです。再現部は全体的に安定性に欠けてしまいます。
演奏の不安定さが気になる第一部です。


第二部
スケルツォ主題は落ち着いて優美、怪しい処もありますが…w、レントラー主題は少しスローに落として方向性は見せています。第三主題はオブリガートhrが音をまとめられません。受ける弦楽もドロドロです。展開部も駆け抜け様とするのですがギクシャクですね。この曲のラストを予測させるコーダが一番まとまりました。
演奏技量が暴露されて一体感に大きく欠けるレントラー楽章です。


第三部
第四楽章主部は速めの甘美さ、中間部はどことなく気持ちに欠け気味です。大きく馬脚を現さずに何とかまとめたアダージェットでしょうか。
第五楽章序奏はhrが不安定、第一・二主題はここでも何とかまとめコデッタ主題もギリギリの優美さ。展開部もとりあえずバランスは崩さずに山場へ登り詰めましたね。再現部山場からコーダはなぜかバランスも鳴りも良く、フィニッシュは見事にアッチェレランドを利かせました。
ラストを見事にまとめた第三部と言った風でしょうか。驚くほどビシッと決めましたね。



荒く不安定なマーラー5です。残念ながら荒っぽさが演奏技量からくるものなので表現力不足になってしまいます。余裕が感じられず、金管群だけでなく弦楽まで全てヤバイですw (アマかユーズのような印象です)

久しぶりの低次元争いの一枚かと思いきや、最後のフィニッシュはものの見事に音もテンポも揃えるという意味不明さもあって不思議さ満点!、この手が好きな方っていらっしゃいますよねw



テーマ : クラシック
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