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ダニエル・ハーディング / スウェーデン放送響 の『マーラー 交響曲 第5番』を聴く


同年代中堅指揮者三人のマーラー交響曲 新譜CD三連続インプレの最後は、第5番でD.ハーディングです。(クルレンツィス:b.1972年、ネトピル, ハーディング:b.1975年)



ダニエル・ハーディング (Daniel Harding, 1975 - )
スウェーデン放送交響楽団 (Swedish Radio Symphony Orchestra)

コンサートでは相性の悪い指揮者の一人、ハーディングです。この曲もコンサートでは新日フィルとパリ管で聴いていますが、パリ管ではとてもクセの強い演奏でした。このスウェーデン放送響との第9番のCDは良かったですが、第5番はどうでしょう。
現在はパリ管と本CDスウェーデン放送響の音楽監督ですね。


マーラー交響曲第5番 175CD聴き比べ」もご参考下さい



マーラー 交響曲 第5番



第一部
第一楽章提示部主要主題はスローで揺らぎを入れていますがやや間延び気味。第一トリオでは激しさというより派手やかに、第二トリオも微妙な揺らぎを入れていますね。第二楽章第一主題は明瞭に、第二主題も揺らぎをなくして素直な響きです。再現部・展開部も激しさは控えめで、第二主題は緩め、弱めのコントラストに感じます。

第二部
スケルツォ主題は優美ですが揺らぎを入れて、レントラー主題はあっさり感ですね。再現のvnの方が優美です。第三主題はスローを強めにして落としています。展開部・再現部も刺激な抑えめで印象はスローが勝っている感じですね。obl.hrの鳴りは良かったです。コーダは異常な速さです!

第三部
アダージェットは速めで入り後半スロー化ですが終始物静かに。山場も控えめ中間部でも冷静で好きなクールな展開ですね。中間部の揺らぎは気になりますが。最終楽章は第一第二主題が心地よく絡んであげてゆき、コデッタ(第四楽章中間部の変奏)は軽快に現れます。展開部・再現部の山場からコーダは興奮は抑え気味に、フィニッシュでいきなりのアッチェレランドです。(第三楽章と似ていますね)



今ひとつスカッとしない、独特の揺らぎも気になるマーラー5ですね。抑えた強音パートとスローの印象が強く残りますね。

ふとパリ管との来日公演の同曲を思い浮かべました。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

トマーシュ・ネトピル / エッセン・フィル の『マーラー 交響曲 第9番』を聴く


トマーシュ・ネトピル (Tomáš Netopil, 1975 - )
エッセン・フィルハーモニー管弦楽団 (Essener Philharmoniker)
若手チェコ人指揮者ネトピルは、ストックホルム王立音楽院でヨルマ・パヌラ(Jorma Panula)に師事し、2013年からエッセン・フィルの音楽監督を務めています。

ちなみにエッセン・フィルは1906年にマーラーの"交響曲第6番"をマーラー本人の指揮で初演していますね。またR.シュトラウスの"家庭交響曲"もシュトラウス本人指揮で初演されています。

マーラー交響曲第9番 80CD聴き比べ」もご参考下さい



マーラー 交響曲 第9番



第一楽章
穏やかでスロー美の第一主題から、同じ雰囲気を漂わせて第二主題へ。反復後の第三主題は広がりを見せて展開部も穏やかさを主体にしてJ.シュトラウスの引用を聴かせます。山場も大きいですが穏やかさが感じられますね。少々緩め美的な第一楽章でしょう。展開部で経過部の鐘が殆ど聴こえないのは不思議ですが。

第二楽章
主要主題は弱く穏やかで、第一トリオもマイルドに、第二トリオは当然一層穏やかです。

第三楽章
主要主題は弾みますが強烈さはありません。副主題(第一トリオ)も平和な気配で、中間部は緩徐的表情に変化させますが元々穏やかですから…

第四楽章
主要主題は広がりある甘美さを奏でます。第一エピソードも陰影は付けますが哀愁は薄めの穏やかスロー、第二エピソードも山場は〆めますが緩い静的パートが印象を支配しますね。コーダからフィニッシュは哀しみをpppに沈めて終息します。ここで救われた感じです。



全体を通して穏やかスロー甘口のマーラー9です。破綻のない綺麗な演奏ではありますが。
生クリームたっぷりのケーキに、ぬるくて砂糖いっぱいのコーヒーをホテルのラウンジで、みたいな。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

テオドール・クルレンツィス / ムジカエテルナ の『マーラー 交響曲 第6番』を聴く


テオドール・クルレンツィス (Teodor Currentzis, 1972 - )
ムジカエテルナ (MusicAeterna)
クルレンツィスとムジカエテルナ、今注目度の高いセットですね。ギリシャ人指揮者でテミルカーノフのアシスタントから、2004年にムジカエテルナを創設し音楽監督となっています。この9月から南西ドイツ放送交響楽団(SWR Sinfonieorchester)の首席指揮者も務めていますね。
個人的にはメリハリを強くしてくるタクトを感じてしまいますが、ここではどうでしょうか。

マーラー交響曲第6番 55CD聴き比べ」もご参考下さい



マーラー 交響曲 第6番



第一楽章
第一主題は切れ味鋭く、モットーで約束通りに落とすとアルマの主題を情感強く奏でます。見晴らしの良い提示部です。展開部も挿入部のスロー静と前後の速い切れ味のコントラスト付けを明確にしていますね。チェンジペースの際にしゃくる様な妙な揺さぶりを付けているのは気になりますが。

第二楽章
スケルツォです。主要主題はここでも速く切れ味、中間部は少し落として優美さを色付け。チェンジペース時の揺さぶりはしっくりきませんが。

第三楽章
主要主題は少し揺さぶりを感じますね。細かなアゴーギクとディナーミクを組合せた感じです。違和感が… 副主題は楽譜指示通り情感を高めます。中間部は明るさと広がりを付けています。濃い味付けですね。

第四楽章
気になる序奏は緩やかさ主体です。第一主題は対比させる様に締まった流れを作ります。決して暴れません。第二主題はテンポ変化を抑えて軽妙です。展開部・再現部も強音パートにアゴーギクを振って波をうまく作っています。勇壮な行進曲や騎行は締まって見事ですね。一体感が出てきて心地良い最終楽章になっています。



計算づくのマーラー6です。強音パートも型崩れはしませんし、スローも退屈に落ちる事もありません。静はスロー、強音パートは切れ味でファスト、アゴーギク主体のコントラストをピシッと付けています。時折気になる細かな揺さぶりもスパイス。

でも、やっぱり聴き終わった全体印象はくどい気がしますね。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 80CDの聴き比べです [#6 / CD71-80]

マーラー第9番も今回(#6)の10枚で80CDまで来ました。全て聴いてインプレするにはまだ時間がかかりそうですが、一枚一枚違って楽しいですね。


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在#6回 80CD
 #1:10CD
バーンスタイン[x5 ★☆], アバド[x2 ★☆], ラトル[x2 ★], ゲルギエフ
 #2:20CD
カラヤン[x4 ★☆], テンシュテット[x3 ☆], クレンペラー[x3], ノイマン[x3], ベルティーニ[x3 ☆], クーベリック[x2], 井上道義[☆], 小林研一郎
 #3:10CD
インバル[x3], ドゥダメル, サラステ[☆], バルビローリ[☆], ジュリー二, ドラティ[㊟], ムント, 朝比奈隆
 #4:10CD
ラザレフ, ヤンソンス[x2], シャイー[★☆], ジンマン, バルシャイ, W.モリス, シェルヘン[㊟], マデルナ[x2 ☆]
 #5:20CD
ノット[★☆], ハーディング[☆], ギーレン[x2 ㊟], 小澤征爾[x2], シノーポリ[x2 ㊟], ザンデルリング[x4], コンドラシン[x2], ミトロプーロス[x2], サロネン, アルブレヒト[x2 ☆], マズア
 #6:10CD 本投稿です
ショルティ[x2], ロペス=コボス, 金聖響, スラドコフスキー, セーゲルスタム[☆], ゴレンシュタイン, 高関健, 山田一雄, ミュンフン, ネトピル



ゲオルク・ショルティ, Georg Solti

鳴りの良さとパワーのイメージが強いショルティ(w/シカゴ響)のマーラーですが、9番(正規盤)はロンドン響とシカゴ響の録音を残しています。アクの強さがマーラーに合うかは好みの問題もあるでしょうね。



(#1)
London SO
[DECCA] 1967-4/28-5/11


帯同して来日したこともあるロンドン響とのマーラー9ですね。1967年録音で、当時はこんなにマーラーに人気がなかったと思います。(少なくともSP→LP時代の親父は長い交響曲は嫌いでしたねw)

第一楽章
第一主題は息遣いのごとく表情を見せ、第二主題は葛藤を演ずる様です。その後も表情豊かな展開部で楽しませてくれます。暗雲と嵐、常に"風雲急を告げる"的パワー表現メインですけどw
第二楽章
主要主題はもったいぶった調子でややスロー、第一トリオはテンポを上げて切れ味、第二トリオでも図太さを感じます。とにかく強側のメリハリ、疲れますね。
第三楽章
主要主題はオケの鳴りが全開、副主題(第一トリオ)では多少肩の力を抜きますが気合がすごいです。中間部(第二トリオ)は落としますが背後に力がこもっているのがわかります。ラストは爆走!!
第四楽章
主要主題は太くて濃く、暑いお風呂みたいです。第一・第二エピソードも朗々とした鳴りでスローや閑を排して力感いっぱい。聴き終わったら疲れてぐったり。


太く力漲るマッチョなマーラー9です。個性的ですが狂気というわけではなく暑苦しいだけ?、この曲の哀愁や情感には接点がないので残念です。
スキヤキを濃い割下で肉だけガッツリ早食い口いっぱい、みたいなw 好きな方にはオススメです。(爆) えっ、㊟印付けろ?? ですかねぇ。





(#2)
Chicago SO
[DECCA] 1982-5


ショルティと言えば音楽監督(1969-1991)だったシカゴ響。そのマーラー9ですね。上記15年後の演奏ですが、こちらはどうでしょう。

第一楽章
第一主題・第二楽章ともに抑えが増して静的に澄んだ音色に変化しています。反復から第三主題も適度な激しさを見せてバランスがいいですね。展開部も落ち着いてクセがなくなりお手本的、見晴らしよくなりました。後半スローが気になるのは演奏時間も3'以上長くなったからでしょうか。
第二楽章
全体の流れは似ていますが、少し肩の力が抜けて聴き疲れは弱まりました。第一トリオ以降もスロー気味です。
第三楽章
LSOと同傾向、全開運転です。中間部は少し速くなっている感じです。
第四楽章
通して同じ様な流れですが、少しスロー化して楽になった感じです。それにしても何かが伸し掛る様に強く重いです。ラストの静音はオマケみたい。


力強いマーラー9です。一部は一般化しましたが、いずれにしろ力感。ならばいっその事ロンドン響に一票でしょうか。




ヘスス・ロペス=コボス, Jesús López-Cobos

Cincinnati Symphony Orchestra
[TELARC] 1996-5/5,6


本年(2018年)3月2日に亡くなったスペイン人指揮者ロペス=コボスが首席指揮者(1986-2001)を努めていたシンシナティー響を振ったマーラー9、他には2,3,10番を残していてファンがいますね。

第一楽章
第一主題から第二主題への変化の流れは適度、そこからの反復と第三主題(コデッタ?)も安心して聴けますね。展開部も奇を衒ったパートはなく、標準王道的な落ち着きです。どちらかと言うと穏やかさの印象でしょうか。
第二楽章
主要主題から優美さ、第一トリオも刺激的変化を避けてマイルドに、第二トリオはよりマイルドで少し長く感じます。
第三楽章
主要主題は切れ味よく、副主題も同じ流れ。中間部は色合いは変えますがテンポ変化は少なめです。ラストもパワーはふるいますが刺激は薄いですね。
第四楽章
主要主題の穏やかな広がりの良さは得意とする処でしょう。流れの延長で第一エピソード、第二エピソード共には情感は適度ですが、後半からコーダのターン音型では静的に落としてこの曲らしさを聴かせます。


まとまりの良いマイルドなマーラー9です。抑え気味のアゴーギク・ディナーミクで個性・刺激には欠けるかもしれません。刺激物の苦手な貴方におすすめですw




金 聖響, Seikyo Kim

Kanagawa Philharmonic Orchestra
[Octavia] 2011-5/28


在日韓国人指揮者の金(キム)さんは2009年から2014年まで神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を務めました。その時代の録音になります。その後いろいろ問題があったのは残念な事です。

第一楽章
序奏・第一主題は緩やかに、第二主題からは重厚さを見せる教科書的な流れです。反復最後の第三主題にかけてもきっちりと盛り上げています。展開部も陰鬱さとアレグロ・リゾルートからの激しさと良いコントラストで堂々本流ですね。ただキッチリとしている気配が強すぎて機械的な流れです。
第二楽章
主要主題はゆったりレントラー、第一トリオでキリッと表情を上げてリズムよく、第二トリオは穏やかに、と正攻法です。山場も約束通りに盛り上げますが、教科書通り的で表情が感じられません。
第三楽章
ここでも主要主題から副主題を全く違和感なくリズミカルに、中間部でターン音型を美しく奏でます。規格品ですが何かが足りません。
第四楽章
vnのターン音型は美しく、第一エピソードは陰鬱さを軸とする流れをきれいにつけています。第二エピソードも後半からはコーダに向けた流れが作られています。何かが欠けている様な、個性に欠けるのが個性?!


不要な揺さぶりを殺して教科書の様なマーラー9です。レシピ通りの料理が好きな貴方向き?
ただこの曲に欲しい情熱や思い入れが、ライヴにもかかわらず伝わらないのが唯一最大の問題かもしれません。




アレクサンドル・スラドコフスキー, Alexander Sladkovsky

Tatarstan National Symphony Orchestra
[Μелодия] 2016


(コンドラシンとスラドコフスキーが1,5,9番を振った面白いset物ですね)

スラドコフスキーが首席指揮者で音楽監督を務めるタタルスタン国立交響楽団を振ったマーラー9ですが、両者ともよく知りません…

第一楽章
スローの序奏・第一主題から第二主題は激しさに表情を変え二面性を見せてきます。第三主題ももちろん激しさです。展開部も静のスローと烈のファストの明確な表情付けが、陰鬱さ・美しさ・激しさを生かす展開です。明瞭な第一楽章ですね。
第二楽章
歯切れの良いレントラーの主要主題から第一トリオをいきなりテンポアップ、第二トリオでスローダウンします。微妙ではなく明瞭なアゴーギクです。
第三楽章
主要主題は少々慌ただしい感じで副主題で少し取り戻し、絡んだ後に中間部で澄んだ音色からラストは精一杯盛り上げます。わかりやすいですね。
第四楽章
第一主題は予想通り一楽章回帰的にスローです。第一エピソードの鬱さは情感に欠けますし、第二エピソード後半からのターン音型のエモーショナルさは弱いです。山場は盛上げますが…


すっきり明快なマーラー9です。主題・動機ごとに明瞭にアゴーギクを振り替えています。個性も含めて微妙な"わび・さび"のアンジュレーションは弱いです。(この曲に一番欲しい物かもしれません)




レイフ・セーゲルスタム, Leif Segerstam


Danish National Radio Symphony Orchestra
[CNANDOS] 1991-9/23-25


(第7番とのカップリング3CDです)

北欧の怪人、フィンランドの指揮者セーゲルスタムです。個人的には多作の現代音楽家のイメージが勝ちますが、来日した指揮でも楽しませてもらいましたね。DR放送交響楽団(デンマーク放送交響楽団)首席指揮者時代(1988–1995)の演奏です。

第一楽章
とてもスローで大きな第一主題です。第二主題もその流れでスロー、そこから大きく山場を築いて反復、第三主題は落ち着きを払った雄大さです。展開部もスローを基本として奥行きのある流れを作っています。
第二楽章
主要主題スローで落ち着いたレントラーですが切れ味があります。第一トリオは威風堂々と、第二トリオは落ち着かせる様な優しさですね。山場は抑え気味で、この楽章のスローだけ今ひとつ感があるかもしれません。
第三楽章
主要主題と副主題は標準的なテンポで歯切れがいいですね。中間部のターン音型は最終楽章を印象付ける美しさです。ラストの緊迫は見事!決まりました。
第四楽章
主要主題は緩やか優美です。第一エピソードでは入りのcbからコーダ終焉に向けた気配を漂わせる構成です。第二エピソードも山場を含めて感情が溢れ出て、後半からコーダにかけての静音ターン音型パートの素晴らしさは格別かもしれません。


セーゲルスタムらしいスロー、雄大さと情感のマーラー9です。単純な静スロー・激ファーストの様なアゴーギクではないのがセーゲルスタムらしさでしょう。思い入れを感じられてとても好きな一枚です
CHANDOSの音の良さも一役買っているでしょう。




マルク・ゴレンシテイン, Mark Gorenstein

State Symphony Orchestra of Russia (Svetlanov SO)
[MDG] 2010-2/20


釜山フィルの首席指揮者も務めたゴレンシュタイン、ロシア国立交響楽団の音楽監督(2002-2011)時代の録音です。

第一楽章
緩やかスローの第一主題は美しく第二主題は変化は少なめに入って大きく広げます、反復後の第三主題も含めて王道ですね。展開部もスロー基本で大きくバランスの良さがありますが、やや刺激に欠けて時折スローの間延びも感じます。
第二楽章
レントラー主題もスロー強調ですが、第一トリオではしっかりと締めて、第二トリオは緩やか。山場もスローなので強調感に欠けますね。
第三楽章
主要主題はリズミカルで重さを付けて良い流れを作ります。第一トリオも流れに乗って緊張感を保ち、第二トリオで緩やかにターン音型では美しさを強調しますがその後が弱いです。でもラスト山場は暴れて面白く、この楽章が一番でしょう。
第四楽章
主題は得意の雄大さが光ります。第一エピソードは暗く鬱に入りスローを生かして大きく広げて良い流れを作り、第二エピソードは一転速めで入ります。山場(mixingバランスが?)から徐々にスローに戻し、ターン音型を緩やかに納めます。


緩やか広々スローなマーラー9ですね。スロー主体でアゴーギクが薄く、強音パートに締まりに欠けるのが残念ですね。
良い処もあり、ジャケットも好きなのですが。




高関健, Ken Takaseki

群馬交響楽団
[ALM] 1999-3/21


高関さんが群馬交響楽団の音楽監督時代(1993 - 2008年)の録音ですね。

第一楽章
第一主題から第三主題までメリハリが不足している感じです。展開部もスローパートのモヤッとした感じが拭えないのはアゴーギクやディナーミクの弱さだけでなく、管楽器の音色もあるかもしれません。強音パートは適度に暴れて面白いですが、前途多難を感じました。
第二楽章
主要主題は速めですが何かスカッとしません。第一トリオは流れに乗ってシャープさが感じられます。速い展開はいける様ですね。第一楽章よりまとまってきました。
第三楽章
主要主題はマーラー指示の様に荒々しさがありなかなかです。第一トリオもその流れに乗り、第二トリオの静展開ではやはり何かこもった気配になります。ラスト山場は見事です。
第四楽章
不安を感じたスローの主要主題は落ち着いた演奏になります。第一エピソードは繊細なのですが、寂寞感や情感に繋がりません。第二エピソードは山場があるので、そこはこなしています。


今ひとつ見晴らしの良くないマーラー9です。全体的には荒れたパワーパートは面白さがありますがスローのモヤモヤが拭えず、この曲の持つ哀しみや美しさと言った情感が、テクニカル的にも、弱く感じました。




山田一雄, Kazuo Yamada

新日本フィルハーモニー交響楽団
[fontec] 1986-6/7


ヤマカズさんが新日本フィルを振ったマーラー9ですね。本当は第5番同様映像付きで見たいところです。

第一楽章
緩やかで緊張感を漂わせる第一主題と第二主題、そして反復からの第三主題は雄大です。展開部は陰鬱な流れからJ.シュトラウスの引用で明るさを見せ、流れよく山場へと進みます。鬱パートと山場の組合せは明確にコントラストを付けてきますがしっかりとアゴーギクがコントロールされて心地よいですね。再現部の間延び感が少し残念ですが。
第二楽章
レントラー主題は速く軽快な勇み足風に、第一トリオで一般的なテンポ設定に戻し明快な三拍子を付け、第二トリオでスローダウン。三つの顔を明確にしていますね。
第三楽章
主要主題は速めに少し乱暴で切れ味よく、第一トリオでは流れに乗った落ち着きを見せて、第二トリオはまさに中間部らしい美しい流れを作り出します。ラストも暴れて見事な構成感ですが、真面目過ぎかもw
第四楽章
主要主題は第一楽章で感じた様な緩やかな緊張感が少し弱いですね。第一エピソードを支配する静は全体スローでコーダをイメージさせ、第二エピソードはテンポアップして山場を迎えた後スローに落としコーダへ繋げます。


構成感もあり、きっちり真面目なマーラー9です。スローの優しさとコントロールされた強音パートをどう見るかで評価は分かれるかもしれません。
個人的にはコンサートならではの一体感や興奮が欲しいところです。少し羽目を外してもいいかも。指揮台のヤマカズさんの音が聞こえますねw




チョン・ミュンフン, Myung-Whun Chung

Seoul Philharmonic Orchestra
[DG] 2013-8/29,30


韓国生まれの米国人指揮者チョン・ミュンフン、ソウル・フィル(ソウル市立交響楽団)音楽監督時代のマーラー9番です。

第一楽章
第一主題はスローに続く第二主題も柔らかさ重視で、反復から第三主題で山場を作ります。展開部もスロー穏やかメインに山場を築くコントラストが明確ですね。好きな流れですが無表情的で、再現部はもやっとしてしまいます。
第二楽章
主部主題はややテンポを上げてリズムよく、第一トリオも大きくは変えずスケルツォらしいです。第二主題は静でスローに落とします。
第三楽章
主部主題・副主題はいきなりのアップテンポ、中間部で静で薄く展開します。ラストも盛り上げますが、なぜか訴えて来ません。
第四楽章
主要主題は弦楽器で大きく奏でます。第一エピソードは薄く良い流れですが無表情、ラストがコーダの様なのはやり過ぎでは。第二エピソードも早々と前半からエンディングに意識を持って行っている感じです。


第一・第四楽章の静を強調したマーラー9です。ただ、この曲に欲しい情熱や思い入れとは無縁ですね。




トマーシュ・ネトピル, Tomáš Netopil

Essener Philharmoniker
[OEHMS] 2018-4/10-13


チェコ人指揮者ネトピルは、ストックホルム王立音楽院でヨルマ・パヌラ(Jorma Panula)に師事し、2013年からエッセン・フィルの音楽監督を務めています。
(エッセン・フィルは、1906年にマーラーの"交響曲第6番"をマーラー本人の指揮で初演していますね。またR.シュトラウスの"家庭交響曲"もシュトラウス本人指揮で初演されています)

第一楽章
穏やかでスロー美の第一主題から、同じ雰囲気を漂わせて第二主題へ。反復後の第三主題は広がりを見せて展開部も穏やかさを主体にしてJ.シュトラウスの引用を聴かせます。山場も大きいですが穏やかさが感じられますね。少々緩め美的な第一楽章でしょう。展開部で経過部の鐘が殆ど聴こえないのは不思議ですが。
第二楽章
主要主題は弱く穏やかで、第一トリオもマイルドに、第二トリオは当然一層穏やかです。
第三楽章
主要主題は弾みますが強烈さはありません。副主題(第一トリオ)も平和な気配で、中間部は緩徐的表情に変化させますが元々穏やかですから…
第四楽章
主要主題は広がりある甘美さを奏でます。第一エピソードも陰影は付けますが哀愁は薄めの穏やかスロー、第二エピソードも山場は〆めますが緩い静的パートが印象を支配しますね。コーダからフィニッシュは哀しみをpppに沈めて終息します。ここで救われた感じです。


全体を通して穏やかスロー甘口のマーラー9です。破綻のない綺麗な演奏ではありますが。
生クリームたっぷりのケーキに、ぬるくて砂糖いっぱいのコーヒーをホテルのラウンジで、みたいな。







聴いた印象を素直に少しづつアップしていきたいと思っています。数々のヴァリエーションからこの曲の全体像が感じられると嬉しいと思います。

#2,3回あたりの古いインプレも見直し(聴き直し)の必要性を感じますね。そのうち…


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ミッシャ・マイスキー(Mischa Maisky) の マーラー「アダージェット」多重録音版を聴く


ミッシャ・マイスキー
(Mischa Maisky, 1948/1/10 - )
ラトビアの人気チェリスト、クレーメル(の一年後輩)やアルゲリッチとの印象が強くて、やっている事は興味深いのですが今ひとつ食いつけない一人ですね。コンチェルトで一回行っているかもしれませんが、ソロ・コンサートはまだ聴いた事がありません。早いもので70歳になったんですねぇ。
今ですとチェロはM.ブルネロやG.ソッリマが好みですね。昔はもちろんデュ・プレですがw


Adagietto
マーラーの交響曲第5番第四楽章「アダージェット」をハープを除きマイスキーが多重録音で演奏しています。マーラーをblogタイトルにしているので聴いてみる事にしましたw

全十四曲のこのアルバムはマイスキーが子供達に贈った小曲集だそうです。興味のある方はググっていただくと色々出てきます。




アダージェット from Mahler's Symphony No.5
主要主題の第一動機はスローです。第二動機以降徐々に速めてクレシェンドでテンポを戻してきますね。中間部はメインパートが煽る様な感じが強く滑らかさには欠けるでしょう。
室内楽ver.として聴いた場合、あまりそう言う機会はありませんが、バランスが良いとは言えない気がしました。

■ その他
 2. マルチェッロ:アダージョ (オーボエ協奏曲, バッハによるチェンバロ協奏曲編)
 3. バッハ:ラルゴ [アリオーソ] (チェンバロ協奏曲第5番 第2楽章)
 4. モーツァルト:パミーナのアリア「愛の喜びは露と消え」(歌劇『魔笛』)
 5. サン=サーンス:カンタービレ「あなたの声に心は開く」(歌劇『サムソンとデリラ』)
 6. マスネ:タイスの瞑想曲 (歌劇『タイス』)
 7. チャイコフスキー:秋の歌 (四季 Op.37から10月)
 8. チャイコフスキー:感傷的なワルツ (6つの小品)
 9. スクリャービン:エチュード第11番 (12のエチュード Op.12)
 10. スクリャービン:ロマンス
 11. グリーグ:ソルヴェイグの歌『ペール・ギュント』
 12. シューベルト:ノットゥルノ 変ホ長調 D.987
 13. シューマン:アンダンテ・カンタービレ (ピアノ四重奏曲 Op.47 第3楽章)
 14. ブラームス:アンダンテ (ピアノ四重奏曲 Op.60 第3楽章)


古典は個人的には平和すぎて同じ曲に感じてしまいます.(汗) サン=サーンスやマスネ、チャイコやグリーグには情感がありました。やっぱりスクリャービンの二曲が感情の起伏があって良かったですね。最後のシューマンとブラームスはアルゲリッチ達とのクァルテットのLive (12のトリオも)です。ライヴのアプローズは不要でしょう。
このアルバムの為に演奏した1-11は優しく美しい曲が並び、ミッシャが子供達を思いながら弾いたんだろうなぁ...って感じですね。


新しいアプローチを期待したアダージェットですが、音数が少ないわりにスムーズなマッチングに欠けてしまった感があります。特別に新しい何かは??

心地よい小曲集なのでBGMでかけたら良いのかもしれません。胎教にオススメかもしれません。そんなアルバムですね。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

NHK交響楽団 Newライヴ・シリーズ『スヴェトラーノフ・N響 / マーラー交響曲第5番・第6番』をロシア国立響と聴き比べてみました


N響 vs ロシア国立響
先月発売された同シリーズの中にスヴェトラーノフ客演のマーラーの第五番(2000年)と第六番(1999年)が入っていました。

スヴェトラーノフ-マーラー-NHK

同時期エフゲニー・スヴェトラーノフ(Evgeny Svetlanov)が音楽監督(1965 - 2000)を務めていた手兵、ロシア国立交響楽団(Russian State SO)と聴き比べてみました。手兵vs客演さてどうだったでしょう。


本来なら『交響曲 第5番 170CD』と『交響曲 第6番 50CD』の中でインプレするのですが、次のアップ機会という事で先行投稿です。



スヴェトラーノフ / マーラー 交響曲 第五番

ロシア国立交響楽団
(Russian State Symphony Orchestra)
1995-10

第一楽章・第二楽章
特徴的にスロー弱音の葬送行進曲、山場ディナーミク強めです。第一トリオは明瞭にテンポを変え激しさですがクセはありません。第二トリオもややスローの標準的です。第二楽章の第一主題は速く第二主題はスロー静の対比です。展開部以降も同様で、コントラストを明確にした第一部ですね。
第三楽章
スケルツォ主題は緩めでhrも弱点、レントラー主題も第三主題も緩く演奏の質にも難があってぼんやりとした感じです。展開部・再現部も同じ流れで、特にスローの間延び感でボケた第二部に思えます。
第四楽章・第五楽章
主要主題は甘美を避けクール、中間部でも澄んだ流れを作っていて好きなアダージェットですね。最終楽章は第一第二主題がうまく絡みテンポアップで上げていきコデッタを優美に仕上げます。展開部と再現部の流れもスローが少なく山場も気持ち良く盛上げますが、この曲のコーダからラストでスローに落としてしまってはアウト!ですね。


コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか

スヴェトラーノフ節で、アゴーギクとディナーミク共に大きく振っているのですがスローが締まらない感じです。演奏も少々…なのも事実でしょう。





NHK交響楽団
(NHK Symphony Orchestra)
2000-9/28

5年後のN響との演奏になりますね。

第一楽章・第二楽章
葬送行進曲はやはりスローですがここでももっそりで何かが足りない感じです。第一トリオ・第二トリオ、展開部以降も第二楽章も5年前とよく似た第一部です。
第三楽章
ほぼ同じ構成、もやったスロー主体で見晴らしの悪さが印象に残ってしまいます。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは色合いは同じですが、スローになっていて残念です。最終楽章も気持ちの良いテンポ設定で流れて行って、コーダ・ラストも類似かと思いきやスローにはしませんでしたね。アッチェレランドは効いていませんでしたが悪くありませんでした。


コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか。←1995年ロシア国立響と同じコメントです。(とにかくよく似ています)

スローで何をやりたいのか駄耳なのでわかりません、やっぱりこのスローは鬼門ですね。ラストが普通になっていたのが救いでした。





スヴェトラーノフ / マーラー 交響曲 第六番

ロシア国立交響楽団
(Russian State Symphony Orchestra)
1990

第一楽章
第一主題は抑揚を付けたスロー、モットーの後の静音は大きく落としアルマの主題は華やか、スヴェトラーノフらしい揺さぶりです。展開部以降も揺さぶりは強く、勇壮なパートは素晴らしのですが間をとったパートはぼんやりです。
第二楽章
とんでもなく速いスケルツォ主題、強烈です。そしてトリオでは素っ気なくスローで凄いコントラストです。冗談としか思えない面白さ!
第三楽章
穏やかな主要主題と副主題は適度なスローで流れて美しさと哀しみを感じ、中間部では広がり山場は見事です。長いスローパートは気になりますが。
第四楽章
序奏はコントラストが生きています。流れに乗って第一主題から経過句は強烈高速ですっ飛び、第二主題も軽妙ながら速く強烈な提示部です。展開部も緩急がここではメリハリになっていますね。騎行は爆速、行進曲は山場は力技が溢れ、麻薬の様な危ない魅力があります。


パワーパートは暴れて爆速もあるクセものマーラー6です。嫌いじゃありませんねぇ。

一部気になるスロー、録音にも問題?、には目を瞑りましょうw
スヴェトラーノフ節炸裂で好みは明確に分かれるでしょうが、個性派好きにオススメです。





NHK交響楽団
(NHK Symphony Orchestra)
1999-2/11

上記9年後、N響を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
スロー堂々葬送行進曲風の第一主題、アルマの主題は優美、アクの強さは減った提示部です。展開部からも遅め堂々が基本となって揺さぶりは大きく減り、挿入部の間延び感も避けられています。
第二楽章
速いスケルツォには変わりませんが驚くほどではなくなりました。トリオのスロー加減も削られて、全体として速めという感じになりましたね。
第三楽章
主要主題・副主題共にスローでクセもありません。弱点に感じたスローも大丈夫ですが、中間部も平均化です。山場はスヴェトラーノフらしいですね。
第四楽章
序奏はスロー主体、第一主題も適度な速さ、第二主題も自然に流れます。展開部・再現部もクセはなくなり、まとまりが良くなってはいますね。山場もちゃんと盛上げています。


落ち着いた大人のマーラー6です。スーツをスマートに着こなした感じ?!

ロシア国立響から大きく揺さぶりを削り去ってしまい、クセがない代わりに平凡な一枚になってしまったのは残念です。決して悪い着こなしではありませんが。(客演であの演奏は難しいでしょうね)




第五番はスローが足を引っ張ってぼんやり感が強い気がします。
 (ロシア国立交響楽団と瓜二つの演奏ですね)

第六番は落ち着いた演奏で悪くありません。
  +αがあれば良かったでしょう。
 (ロシア国立交響楽団はとても個性的で楽しめます)




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 55CDを聴き比べてみました [#3 / CD:41-55]

この夏は暑いので部屋でテンシュテットの4CDを中心に15CDほど聴いてみました。これで55CDになりますね。


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています。(普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在 #3回 55CD
 #0:4CD バルビローリ聴き比べ
バルビローリ[x4]
 #1:16CD
バーンスタイン[x2 ★☆], アバド[x4 ★☆], カラヤン[x2 (★)☆], ハイティンク[x2 ★], ゲルギエフ, 小澤征爾, 井上道義[x2 ☆], プレートル[㊟], ワールト
 #2:20CD
ヴァンスカ, ダーリントン[☆], ラトル[x2 ☆], P.ヤルヴィ[☆], N.ヤルヴィ[x2 ㊟], ジークハルト, セーゲルスタム, パッパーノ, ザンダー, ショルティ[☆], ヴィト, シェルヘン[㊟], ズヴェーデン, ノット[☆], J.サイモン, アブラヴァネル, パク・ヨンミン
 #3:15CD 本投稿
テンシュテット[x4 ☆], ヤンソンス[x2], MTトーマス, ハーディング, 朝比奈隆[x2 ㊟], スヴェトラーノフ[x2 ㊟], セル[x2], バルシャイ, 井上喜惟, 山田和樹, クルレンツィス


クラウス・テンシュテット, Klaus Tennstedt (4録音)

マーラー振りと言われた時に個人的にまず浮かぶ好きな一人ですね。亡くなって今年で20年とは本当に早いものです。1983年から1991年の8年間に四つの正規録音を残しています。手兵ロンドンフィル(LPO)と1983年のセッションとライヴ。その三年後1986年のニューヨーク・フィル客演ライヴと1991年LPOのライヴです。密度が高くライヴが多いので興味深いですね。



(#1)
London Philharmonic Orchestra
[EMI] 1983-4/28,29 5/4,9


(右は1983年のセッションと1991年のライヴを含めたマーラー全集16CD)

まずはLPO首席指揮者に就任した年のセッションです。

第一楽章
インテンポ(多分)で勇壮な第一主題からパッセージで鎮めてアルマの主題を華やかに奏でます。揺さぶりを適度に入れて快感ですね。展開部もキレのある第一楽章変奏を中心にして静を奏でるスローな挿入部、その後もコントラストが強い分、好みは分かれるでしょう。スローパートはもっそり感があるかもしれません。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は一楽章第一主題の写し的に入ります。トリオでスローながら弾む様に感じるのはスケルツォらしさを生かしたのでしょうね。ここでも強いコントラストです。
第三楽章
主要主題は予想通りスロー、副主題もスローをキープしますが哀愁も弱めです。表情が薄いスローで間延びした感じがしますね。中間部もややギクシャクですが山場は壮大です。
第四楽章
スロー陰影の強い序奏から第一主題で切れ上がり、パッセージで盛り上げると第二主題は爽快に駆け抜けます。展開部以降はスローで山場を引っ張るのでくどさがあるかもしれません。行進曲や騎行のスローは厳しいですね。


強調されたスロー多用が好みの分岐点となるマーラー6ですね。アゴーギクとディナーミクで、スローの静と勇猛、速い勇壮が強いコントラストを描きますが重心はスロー。個人的には少々スローやり過ぎの様な…





(#2)
London Philharmonic Orchestra
[LPO] 1983-8/22


セッションの約四ヶ月後のライヴですから興味は尽きませんね。LPOレーベルから後年(2009年)に発表されました。

第一楽章
セッションと似た提示部ですが揺さぶりは減り、速めになってスッキリとしたキレを感じます。展開部の挿入部の静も適度なスローになり、その後再現部にかけてもスローを抑えて速さに重心を移しシャープになりましたね。なんとセッションよりも1'30"以上速くなっていました。
第二楽章
スケルツォは速めの主要主題からトリオは控えめスローで優美になりましたね。コントラストはありますが、速め軸足で軽快です。
第三楽章
主要主題・副主題ともスローですが、副主題では哀愁が感じられる様になりました。感情が現れて聴きやすくはなりましたが、この楽章だけは強いスロー傾向のアンダンテです。
第四楽章
少しスローを抑え刺激的序奏、テンポアップして第一主題を快速に飛ばし第二主題で軽快さに広がりを見せます。展開部以降もスローの気になる揺さぶりはありますが、速さに軸足を移しているので聴きやすなりましたね。セッションより2'も速くなっていますw


セッションより軽快シャープなマーラー6になりました。速さに軸足を移して、落ち着かないスロー揺さぶりはあっても印象は正反対かもしれません。演奏時間は大きく短縮され、色々と試していたのかもしれませんね。





(#3)
New York Philharmonic
[MEMORIES] 1986-10/23


上記3年後、LPO音楽監督時代(1983-1987)のNYP客演Liveですね。NYPはズービン・メータが首席指揮者時代です。

第一楽章
勇壮な第一主題の少し速めのテンポに違和感はありません。第二主題も広がりのある優美さを見せて王道的提示部です。'83年ライヴに似た速めパターンですが重心が低い感じです。
第二楽章
スケルツォ主要主題も速めの中に落ち着きを見せる良い流れになりました。スローに落とすトリオは美しさです。このコントラストは良いですね。テンポ変化も自然です。
第三楽章
主要主題にも美しさが感じられる様になり、'83ライヴに似たスローな流れですがブラッシュアップされたアンダンテですね。
第四楽章
序奏から提示部、再現部以降、流れは'83ライヴに似ていますがNYPの音の華やかさと まとまりが一枚上手でワクワク感があります。


速め主体にスローの対比が落ち着いた流れのマーラー6です。基本は'83ライヴと同じですがNYPとの顔合せが吉と出たのかもしれません。
MEMORIESなので録音は大幅値引きして聴く必要がありますがw





(#4)

London Philharmonic Orchestra
[EMI] 1991-11/4,7


(右は1983年のセッションと1991年のライヴを含めたマーラー全集16CD)

NYPの5年後の手兵LPOとのライヴです。1987年に首席指揮者を退き癌との闘病中でしたね。(桂冠指揮者になっています)

第一楽章
提示部第一主題からの流れは揺さぶりも'83セッションに戻った感じですが、演奏も練れて心地よいですね。展開部からも'83セッションに戻ったスロー揺さぶりですが、締まりがあって"もっそり感"はありません。元々勇壮パートは良いので、これぞライヴならではの緊張感の賜物でしょうか。スローはより強調され演奏時間はセッションよりも1'くらい長くなっています。
第二楽章
スケルツォも流れは'83セッションに近いですが、切れ味の主要主題にスローで弾むトリオの対比に磨きがかかった様です。
第三楽章
一貫してスローを通したアンダンテですが、主要主題の美しさはこれが一番でしょう。副主題の哀しみや中間部の明るさとの対比も聴かせてくれ、スローが生きました。
第四楽章
スロー主体にコントラストの強い序奏、切れ味の第一主題からパッセージ、軽快な第二主題はいつもの通り。展開部以降でスローの揺さぶりを取り戻しますが、ここでは広がりを感じてスケールの大きな演奏になっています。突撃しない行進曲も同様です。コンサート会場なら素晴らしかったでしょうね。


スローを最大限生かして勇壮さと対比させた個性的マーラー6ですね。色々試して最後は'83セッション回帰のスローに戻っています。(演奏時間はさらに長くなっています)

テンシュテットが拘った姿がここに結実したのでしょう、今まで違和感の強かったスローが生きていますね。LPOの演奏も見事です。(最終楽章展開部の行進曲をスローに振ってくる演奏は超個性的で他に聴いた事がありません。テンシュテットは悲劇的の何を表現したかったのでしょう)




マリス・ヤンソンス, Mariss Jansons (2録音)

ムラヴィンスキーの助手を務めていたラトビア人指揮者、今や人気ベテラン指揮者の一人ですね。もう一枚オスロ・フィルとの正規録音(2009)があるのですが見た事がありません。



(#1)
London Symphony Orchestra
[LSO Live] 2002-11


LSO(ロンドン交響楽団)を振ったマーラー6。LPO(ロンドン・フィル)では首席客演指揮者を務めていましたが録音は残していませんね。

第一楽章
軽快な第一主題、アルマの主題もさっぱりとこなしています。展開部も勇壮さは弱めで平和的パート重視ですね。
第二楽章
アンダンテです。主要主題、副主題(第一トリオ)共に沈んだ気配でだるい感じが強いです。中間部も印象に残りません。
第三楽章
主要主題はさっぱりと流し、トリオも何気なくテンポダウンしてきます。気持ちが入っている感じが伝わりませんね。
第四楽章
序奏は少しモヤモヤ、それでも第一主題は何とか勇壮さを見せますが流れは今ひとつシャキッとしません。展開部以降もそんなバランスで、時折元気さいっぱいですが時すでに遅し。


淡白あっさりのマーラー6です。何か元気もなく魂の抜けた様な…
ハンマーの音色もこもって、録音も一因?





(#2)
Royal Concertgebouw Orchestra
[RCO Live] 2005-8/22,9/7,8


2004-2015年首席指揮者を務めたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を振ったマーラー6です。オリジナルレーベル「RCO Live」はヤンソンスが着任した年から始まりました。

第一楽章
第一主題は抑揚がありメリハリが付きました。アルマの主題でも情感を感じさせる様になっていますね。その後も流れはLSOと同じだと思いますが明確な表情付けになりました。
第二楽章
アンダンテです。LSOの沈没気配から一般的な情感になって中間部も山場も明瞭です。基本的に抑え気味なのは変わりません。
第三楽章
切れ味が良くなった主要主題、トリオでもトーン変化を効かせていますね。
第四楽章
序奏の陰影付けは弱めですが、提示部は第一主題とパッセージを心地良く第二主題の穏やかさに繋ぎます。展開部・再現部では広がりの良い響きを奏でますね。


程よい抑揚で表情の伝わる、安心して聴けるマーラー6です。クセを感じないのはアゴーギクよりもディナーミク主体での色付けだからでしょう。(ベースはLSOと同じで色付けだと思います)
演奏も録音もこちらが上ですが、うまくまとまり過ぎですかね。それがヤンソンス/RCO?!




マイケル・ティルソン・トーマス, Michael Tilson Thomas

San Francisco Symphony
[SFS] 2001-9/12-15


MTTが1995年から長く音楽監督を務めるサンフランシスコ交響楽団とのお馴染み自主制作盤マーラー6ですね。過去の来日でも良いマーラーを聴かせてくれました。

第一楽章
第一主題から第二主題は感情移入を抑えテンポをうまく効かせたクールさ、展開部も適度な抑揚でパッセージの表現は心地良いですね。
第二楽章
スケルツォです。ここでも適度な揺さぶりで主要主題とトリオを組合わせています。興奮や優美よりもクール。特にトリオでのテンポの変化はうまいですね。この辺りがMTTでしょう。
第三楽章
主要主題は全体の流れに合って美しさ、副主題はスローに哀愁を醸して中間部は明るさを見せてほっとさせてくれます。スロー基本に緩徐らしさを全面に打出していますね。
第四楽章
序奏は基本的スローで抑えています。提示部はコントロールの効いた第一主題からパッセージ、第二主題と繋ぎます。展開部もうまく抑揚を付けて心地良い広がりを感じます。再現部も普通は目立たない第一主題回帰前のスローがいいですね。


興奮や切れ味とは一味違う落ち着いたクールなマーラー6です。ディナーミクは抑えて落ち着いたアゴーギクの味付けが絶妙です。アンダンテが緩徐抑えめなら絶対ですね。
私はゲイではありませんがw好みのMTTです。




ダニエル・ハーディング, Daniel Harding

Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR KLASSIK] 2014-3/20-22


第9・10番では素晴らしいCDを残したハーディングですが、何回も行っているコンサートでは未だに当たった事がなく相性の良くないマエストロ代表です。(笑)
バイエルン放送交響楽団(首席指揮者はヤンソンス)を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題をやや速めに、モットーからアルマの主題は優美、コントラストをうまく付けています。展開部も速め基調で緩急よく見晴らしの良い流れですが、全体的には個性に欠けるのが残念な気がします。
第二楽章
アンダンテを持って来ましたね。主要主題から第一トリオはテンポにもクセのない優雅さで、中間部(第二トリオ)も同じ流れの延長上にあり、大きな流れです。
第三楽章
ここでもクセのない主要主題にトリオで重心の低い腰の座ったスケルツォです。
第四楽章
個性的な序奏も捻りよりどっかり重厚さ。提示部はややスローの堂々たる第一主題から経過句、自然なつながりの第二主題です。この曲のピーク展開部は出し入れの明確な大きな流れを見せてくれます。


重心の低い独オケ教科書的なマーラー6です。悪くないのですが何かワクワクするオリジナリティで楽しませて欲しい気がします。


実はFM放送録音に同年(2014年)の12/5にベルリンフィルを振ったマーラー6のLiveがあります。個性に乏しい教科書から王道へ。重心の低さを上回る地響きの様な重圧感と切れ味を示し、アンダンテでは哀愁を引き出す、表情の豊かさと強力なオケの一体感です。我儘軍団の好き嫌いは別にしてBPOサウンドでしょう。ハーディングも指揮していて楽しかったのではw
ふとカラヤン/BPOのシャンゼリゼ6番(非正規盤)を思い浮かべました。




朝比奈 隆, Takashi Asashina (2録音)

朝比奈さんといえばブルックナーでしょうが、創設者であり54年間手兵であった大阪フィルハーモニー交響楽団と2枚のLive録音を残していますね。いずれも大フィルレーベルから出ています。



(#1)

Osaka Philharmonic Orchestra
[大阪フィル] 1979-9/7


大フィル東京定期演奏会、71歳の時のライヴですね。今ほどマーラーが演奏されなかった1970年代のLiveです。

第一楽章
第一主題は速めで落ち着きに欠けるきらいがあります。モットーは強音で切替てあっさりと、アルマの主題は速めながら優美です。展開部も基本は速く、ディナーミクともに挿入部で落とされるくらいです。とにかく速いです!
(実は演奏時間表記25'32"は大間違いで、実際は20'56"ほど。これは提示部再現有りでは世界最速のN.ヤルヴィに迫りますね。Kaplan Foundation表記も間違っています。)
第二楽章
スケルツォです。主要主題は標準的でくせがありません。トリオで穏やかさを見せて、後半はこのコントラストが明瞭になりますね。
第三楽章
アンダンテですが、主要主題は抑揚を抑えて副主題のobも流れは感情をあまり見せません。静かに流れますが演奏に今ひとつ落ち着きがありません。後半はここでも盛り上げてきます。(気になるのはテンポはそれほど速くないのに演奏時間が12'53"少しと短いです。ここでも表記12'08"は間違いですね)
第四楽章
序奏は出し入れは強めですが、もやっとした感じです。第一主題はリズムよく力感を見せ駆け抜け、第二主題で晴れ晴れとした表情に変えて良い気配です。残念なのはオケの技量が少し… ところがこの曲のメインの展開部になると荒れた中に情熱が溢れて炸裂します。見事に気持ちは伝わりました。


突進する第一楽章の速さと最終楽章の情熱という異色のマーラー6です。オケの力量も十分ではありませんし これを名盤とする事もないでしょうが、最終楽章は指揮者とオケが一体となった気持ちが伝わりグッと来ます。





(#2)
Osaka Philharmonic Orchestra
[大阪フィル] 1992-2/18


その13年後、大阪定期公演での演奏で84歳でのタクトです。

第一楽章
第一主題はバランスが向上しているのがわかります。モットーからアルマの主題でも落ち着いていますね。処々速いですがテンポもより一般化してその分特徴が薄まっている気もします。全体の演奏レベルが格段に上がってるのはわかります。
第二楽章
主要主題は速めで切れ味があり、トリオでは適度に穏やかになります。全体的には速いスケルツォになっていますね。
第三楽章
主要主題は美しさを増して副主題も哀愁を奏でます。演奏レベルも安定し、美しいアンダンテですが没個性といえなくもありません。中間部の揃いは今ひとつかも。
第四楽章
序奏は適度にコントラスト付けて第一主題はテンポアップ、第二主題でスッキリ感を出していますが提示部としてはキレがあまり良くありませんね。展開部もスローのアゴーギクがもっそり感を作り、パワーパートでも演奏の一体感にやや欠けて見晴らしがあまり良くありません。この楽章は少々残念です。


欠点も大きく減った代わりに'79年の様な個性・情熱も薄まったマーラー6ですね。演奏レベルの向上は明白ですが凡百に埋もれそうで、心に残るのは'79年盤になるでしょうか。
(録音に一部ノイズが入りますが、未発表音源なのでご愛嬌w)




エフゲニー・スヴェトラーノフ, Evgeny Svetlanov (2録音)

ロシア人作曲家の交響曲を得意としていましたね。英名記述はYevgeny表記もあります。またこの2録音の他にUSSR SOと1989年の録音も残しています。



(#1)

Russian State Symphony Orchestra
[Russian Season] 1990


ロシア国立交響楽団の音楽監督(1965 - 2000)を務めていた時代のマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題は抑揚を付けたスロー、モットーの後の静音は大きく落としアルマの主題は華やか、スヴェトラーノフらしい揺さぶりです。展開部以降も揺さぶりは強く、勇壮なパートは素晴らしのですが間をとったパートはぼんやりです。
第二楽章
とんでもなく速いスケルツォ主題、強烈です。そしてトリオでは素っ気なくスローで凄いコントラストです。冗談としか思えない面白さ!
第三楽章
穏やかな主要主題と副主題は適度なスローで流れて美しさと哀しみを感じ、中間部では広がり山場は見事です。長いスローパートは気になりますが。
第四楽章
序奏はコントラストが生きています。流れに乗って第一主題から経過句は強烈高速ですっ飛び、第二主題も軽妙ながら速く強烈な提示部です。展開部も緩急がここではメリハリになっていますね。騎行は爆速、行進曲は山場は力技が溢れ、麻薬の様な危ない魅力があります。


パワーパートは暴れて爆速も見せるクセ者マーラー6です。嫌いじゃありませんねぇ。一部気になるスロー、録音にも問題?、には目を瞑りましょうw
スヴェトラーノフ節炸裂で、好みは明確に分かれるでしょうが曲者好きにオススメです。





(#2)
NHK Symphony Orchestra
[キング] 1999-2/11


上記9年後、N響を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
スロー堂々葬送行進曲風の第一主題、アルマの主題は優美、アクの強さは減った提示部です。展開部からも遅め堂々が基本となって揺さぶりは大きく減り、挿入部の間延び感も避けられています。
第二楽章
速いスケルツォには変わりませんが驚くほどではなくなりました。トリオのスロー加減も削られて、全体として速めという感じになりましたね。
第三楽章
主要主題・副主題共にスローでクセもありません。弱点に感じたスローも大丈夫ですが、中間部も平均化です。山場はスヴェトラーノフらしいですね。
第四楽章
序奏はスロー主体、第一主題も適度な速さ、第二主題も自然に流れます。展開部・再現部もクセはなくなり、まとまりが良くなってはいますね。山場もちゃんと盛上げています。


落ち着いた大人のマーラー6です。スーツをスマートに着こなした感じ?!
ロシア国立響から大きく揺さぶりを削り去ってしまい、クセがない代わりに平凡な一枚になってしまったのは残念です。決して悪い着こなしではありませんが。(客演であの演奏は難しいでしょうね)




ジョージ・セル, George Szell (2録音)

第二次大戦勃発と共に米国に定住しましたが、欧州時代にR.シュトラウスに指揮を師事していますね。クリーブランド管弦楽団の音楽監督(1946-1970年)を20年以上努めてローカル・オケから全米ビッグ・ファイヴにしたのは有名な話ですが、マーラーとなると印象は薄い気がしますね。



(#1)
The Cleveland Orchestra
[Sony (Columbia)] 1967-10


セルの手足ともなった20年目の手兵クリーブランド管を振ったマーラー6のLiveですね。

第一楽章
第一主題はテンポもしっかり勇壮そのもの、経過句で落としてアルマの主題はテンポを上げ甘美さを避けています。切れ味優先の提示部で、反復はカットされていますね。展開部もキレのある第一主題を中心にここでも挿入部を落としてうまくコントラストを付けています。全体速めでシャープさの効いた第一楽章です。
第二楽章
テンポ抑え目怒涛の重厚主要主題、トリオは虚飾を廃止たシンプルさで変拍子の表情変化を生かします。見晴らしの良いスケルツォですね。
第三楽章
アンダンテ。主要主題は優美に、第一トリオは哀愁を、第二トリオでは広がりを。やや速めで、甘美さ情感よりも折り目正しい緩徐楽章になっています。
第四楽章
序奏も過度の揺さぶりは排して、快速勇壮な第一主題へ突入します。経過句を切れ味良く、第二主題で緩やかな対比を見せますが流れは速いですね。展開部も速めで締まった流れを保持して、再現部は強烈な快速で陰影付け、コーダで大きく暗転しフィニッシュします。


速めで無用な揺さぶりを排し、芯の通った硬派のマーラー6です。妥協を許さないセルの本領発揮でしょう。無機質・機械的?、かもしれませんが好きな演奏ですね。ですかねぇ...





(#2)
The Cleveland Orchestra
[virtuoso] 1967-10/12

SzellMahler6Virtuoso96007.jpg
(amazonに登録が無い様です)

上記Sony盤の正式録音"日"は不明*ですが、これは後に発行された上記演奏の同年同月のLive盤になります。同月Liveなのに第三楽章の演奏時間の違いが大きいですね。(*Kaplan Foundation 確認)

      [Sony] [virtuoso]
 第一楽章 :17'45" → 17'44" (提示部反復なし)
 第二楽章 :13'11" → 13'43"
 第三楽章:13'32" → 15'48"
 第四楽章 :28'58" → 29'22"

第一楽章
Sony盤同様に勇壮な第一主題からの流れでよく似た速くてシャープな第一楽章です。もちろん提示部の反復はカットですね。
第二楽章
スケルツォも似ていて重厚さの主題と、変拍子を生かす中間部です。
第三楽章
アンダンテは主要主題がよりスローな流れになり、第一トリオもその流れを引き継ぎます。第二トリオは山場の様な流れを作っています。この楽章では情感の強い甘美さを感じる流れに変化していますね。
第四楽章
hrが怪しいのを除けばよく似た速さと切れ味の流れに感じますw。再現部では第一主題のスローと騎行の快速がより強調されて迫力が増していますね。


楽章間の立ち位置を明確にしたマーラー6ですね。同月録音のSony盤と違うのは第三楽章で、スロー化で表情を付た甘美な緩徐楽章になっています。

全体を通した印象ではSony盤の方がセルらしい統制感があり好きですね。最終楽章はこちらの方がパワー漲り好きですが。

同じ様な咳がノイズで入っていたり、演奏直後に同じ様にアプローズなのがちょっと気になりますね。




ルドルフ・バルシャイ, Rudolf Barshai

読売日本交響楽団
[読響アーカイブ] 1989-11/25


日本のオケに度々客演していたバルシャイが読響を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
行進曲の第一主題はスローでやや緩く、アルマの主題も情感は抑えめです。展開部もややギクシャクした感じの中で第一主題を奏でスローな挿入部へと流れますが、シャキッとした感じに欠ける気がします。音はmixingにも問題があるかもしれませんが。
第二楽章
スケルツォは第一楽章の延長の流れの主要主題で荒々しいのは良いのですが締まりに欠けます。トリオは音量を落としますがテンポはキープされ優美さが薄いですね。
第三楽章
主要主題は速いく、緩徐の美しさはあっさり風味でしらばっくれているみたいです。副主題も同様ですが、中間部では明るさを見せてくれますね。全体速く「とにかく演奏したゾ」みたいな感じですw
第四楽章
序奏はモヤモヤ。第一主題は暴れて第二主題は表情変化が薄いです。展開部・再現部も強音パートは無闇に荒れて面白いですが静音パートは薄い情感。締まりは今ひとつですが、それでもこの楽章の苛立ちの様な狂乱パワーは面白いです。


掴み所がなく見晴らしの良くないマーラー6です。荒れるけれど締まらず、あっさりそっけない速い緩徐、最終楽章以外 やる気のなさに溢れています。最終楽章は一転何かにうなされた様な錯乱状態。最終楽章だけならでしょう!!




井上 喜惟, Hisayoshi Inoue

Japan Gustav Mahler Orchestra
[JMO] 2001-11/25


井上 喜惟さんのマーラー6番が出てきました。もちろん手兵のジャパン・グスタフ・マーラー・オーケストラです。第5番では理解を超えた世界を覗きましたが、ここにも驚きの発見が…

第一楽章
異様なほど遅い第一主題、ゆっくりとテンポを上げて経過句へ繋ぎアルマの主題は優しさ溢れる流れです。展開部でも流れの基本はスロー、再現部もスロー。スローの間延び感はなく、安定感があります。これは個性的!!
第二楽章
スケルツォ主題をまたもやスロー強調、でも第一主題ほどではありません。似ているのは抑揚を抑えたスローである事でしょう。それが全編通している訳ですね。トリオも当然のスローです。
第三楽章
アンダンテは緩徐なので流石にややスロー程度です。もちろん主要主題も副主題も陰影付けは薄くですが、中間部は明るく色付けされ山場もスローを生かしました。
clが一度素っ頓狂な音を出しましたが、演奏の破綻もそのくらいです。
第四楽章
序奏は流石にもっさり。第一主題はアレグロ・エネルジコからの流れなのでテンポは少し戻していますね。ところが跳躍進行の経過句で大スロー化。第二主題は標準的に鳴らし、この曲のメイン展開部は通常のテンポとディナーミクに近づけてきます。一部スロー回帰しますが、そうなると中途半端になってしまいます。そこが残念!!


抑揚を殺したスローなのに安定感、個性的で不思議なマーラー6です。フラット間延び感で最悪と思いきやしっかり流れが出来ています。第5番にあった不成立なくらい酷い演奏も十分聴けるレベルです。残念なのは最終楽章で、ここもフラット・スローで構築してくれたら興味深かったでしょう。

本オケは現在は活動はない様です。




山田和樹, Kazuki Yamada

日本フィルハーモニー交響楽団
[EXTON] 2016-3/27


人気の若手指揮者さんですが、残念ながらコンサートでの相性が良くない代表で近年全く行っていません。おしゃべりはとても魅力的ですけど。
まぁ駄耳なのでw このチクルスも一回も行っていないのですが、手頃な価格で見つけたので入手してみました。

第一楽章
速めの第一主題は切れ味良く経過句は自然に、アルマの主題も殊更に甘美にはしませんね。展開部も速め基本でシャープな心地よさがありますね。挿入部では適度に落としてコントラストを付けています。再現部は一層の締まりの良さを見せて、ラストの暴れ方も良いですね。
第二楽章
主要主題は速めで第一楽章の延長の流れを作っています。トリオでも流れを切らない旨さがあり、通して清涼感のあるスケルツォです。
第三楽章
主要主題はアンダンテらしいテンポ設定で甘美よりもクール、副主題(第一トリオ)の哀愁感もクールです。中間部(第二トリオ)では雲の切れ間からの光の様に、ラスト山場は大きく。過度のディナーミク/感情を抑えた流れですね。
第四楽章
長い序奏はスローに流れ、アレグロ・エネルジコからの歯切れの良い第一主題・行進曲を奏でて経過句から第二主題を清涼感高く入れてきますね。展開部・再現部は大きく緩やかなアゴーギクで整然とした流れを作り興奮は排しています。


ライトウェイトながら心地よい切れ味のマーラー6です。揺さぶりを抑えて、山場も適度に荒れて粘らないからでしょうか。何か一つスパイスがあったら良かった感じです。
20年後のチクルスは行って観ましょうか、生きていたらw




テオドール・クルレンツィス, Teodor Currentzis

MusicAeterna
[Sony] 2016/7/3-9


ギリシャ人指揮者でテミルカーノフのアシスタントから、2004年に本CDのムジカエテルナを創設し音楽監督となっていますね。この9月から南西ドイツ放送交響楽団(SWR Sinfonieorchester)の首席指揮者も務めています。

第一楽章
第一主題は切れ味鋭く、モットーで約束通りに落とすとアルマの主題を情感強く奏でます。見晴らしの良い提示部です。展開部も挿入部のスロー静と前後の速い切れ味のコントラスト付けを明確にしていますね。チェンジペースの際にしゃくる様な妙な揺さぶりを付けているのは気になりますが。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はここでも速く切れ味、中間部は少し落として優美さを色付け。チェンジペース時の揺さぶりはしっくりきませんが。
第三楽章
主要主題は少し揺さぶりを感じますね。細かなアゴーギクとディナーミクを組合せた感じです。違和感が… 副主題は楽譜指示通り情感を高めます。中間部は明るさと広がりを付けています。濃い味付けですね。
第四楽章
気になる序奏は緩やかさ主体です。第一主題は対比させる様に締まった流れを作ります。決して暴れません。第二主題はテンポ変化を抑えて軽妙です。展開部・再現部も強音パートにアゴーギクを振って波をうまく作っています。勇壮な行進曲や騎行は締まって見事ですね。パワーが心地良い最終楽章になっています。


計算づくのマーラー6ですが、聴き終わった全体印象は少々くどいかも。

強音パートも型崩れはしませんし、スローも退屈に落ちる事もありません。静はスロー、強音パートは切れ味でファスト、アゴーギク主体のコントラストをピシッと付けています。時折気になる細かな揺さぶりもスパイス。
でも何かクルレンツィス(w/ムジカエテルナ)特有のメリハリが強いですね。







まだまだコンドラシンなど変わったのもありますので、徐々にアップしたいと思います。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ジョナサン・ノット/東京交響楽団 の「マーラー:交響曲第10番アダージョ」を聴く


コンサートとCD
本年2018年4月14日のサントリーホールでのコンサートで録音していたのは知っていましたが、こんなに早くリリースされるとは思っていませんでした。コンサートのインプレとの違いはあるでしょうか。ブルックナーの9番は別途インプレしますね。→ こちら


マーラー交響曲第10番アダージョ
以下コンサートインプレと同じです。『ソナタ形式ですが個人的印象は①序奏主題、第一主題、第二主題がロンド形式の様に展開する前中盤、②まるでトリオ(中間部)の様なコラールから和音、③緩徐の長いコーダですね。』



序奏主題はコンサートより鬱に沈んだ印象、第一主題と反行形主題は暖かな美しさに感じました。特に暖色系の気配が印象的になっています。第二主題はコンサートの印象と同じく個性的な旋律が生きました。
中間部の様な管楽器主役の和音は迫力は抑え気味、コーダの緩徐は静美的印象が薄く感じたのもコンサート同様ですね。


調性の妖しさよりも温もりと力強いアダージョですね。コンサートで感じた通りのコントラストでしたが、スパイス不足の感は無くより明快に感じました。鬱的な、例えばD.ハーディングの様な、方向とは対極になる演奏でしょう。

出来ればノットには全曲を一度やってほしいです。







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【CD+BD化決定】サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルのフェアウェル・コンサート『マーラー交響曲第6番』NHKプレミアムシアター

先月2018年6月19・20日のサイモン・ラトル、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(BPO)常任指揮者としてのラスト・コンサートですね。ラトルはBPOとの初ライヴ(1987年客演)もこのマーラー第6番で、CD化されていています。(ラトルのマーラーの6番はもう一枚あり、その2年後1989年に手兵だったバーミンガム市響との録音を残していますね)

このブログでは『マーラー交響曲第6番 40CD聴き比べ』でラトルの二枚のCDもインプレしています。



マーラー 交響曲 第6番「悲劇的」 / ラトル・BPO

【第一楽章】
第一主題は切れ味良く重厚さは抑え気味、アルマの主題では少しスローにして優美さを見せますね。展開部・再現部でも切れ味重視で過度の色付けをしていません。重厚さや華美を控えてクールなラトルらしからぬ第一楽章ですね。

【第二楽章】
アンダンテです。主要主題は抑えた優しさを感じ、副主題のobとclも静かな哀しみを表現しました。中間部も抑えられた流れを継承しまして、ラスト前山場の溢れ出す哀愁は見事でしたね。

【第三楽章】
スケルツォは主要主題はやや速めの流れで切れ味良く、トリオは抑えながら変拍子を活かしました。最終楽章へはアタッカで繋げましたね

【第四楽章】
キーの一つ序奏はオケの個々の楽器の鳴りが澄んで見事でした。提示部第一主題は切れ味そのもの、パッセージを大きく奏でて第二主題をのどかに。展開部・再現部はバランスの良いアゴーギクとディナーミクでコントラストと見晴らしの良さが際立ちました。この楽章は素晴らしい出来でした。


クールで緊迫感のあるマーラー6でした。もっと大袈裟に来るかと思っていましたが、予想を裏切る抑えの効いた締まりの良い演奏で驚きました。白眉は最終楽章でしたね。

既発CDとの比較ではバーミンガム市響よりもBPOとの初ライヴに近く更に落ち着きと切れ味を増した感じでしょう。侮れない演奏ですね。


BPOのメンバーのセリフはまさに我儘天狗軍団で笑えましたね。





CD+BDでの発売になりましたね。




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オスモ・ヴァンスカ(Osmo Vanska) の マーラー交響曲第六番 を聴く


オスモ・ヴァンスカ (Osmo Vänskä, 1953/2/28 - )
フィンランドの指揮者ヴァンスカというとラハティ響を育て上げた事が浮かびますね。
そして近年では昨年発売のマーラー第五番2015年来日のシベリウス「フィンランディア」(w/読響)を思い出します。(両インプレあり)
現在音楽監督を務めるミネソタ管弦楽団(Minnesota Orchestra)とのマーラー5番はややクセ者的な印象もあったのですが、チクルス第二弾の6番はどうでしょう。

『交響曲 第6番 30CD 聴き比べ』には次回追記予定です。



第一楽章
スローで抑えめの第一主題、モットーは美しくアルマの主題ではそれを広げる様に華やかですがスローのアゴーギクが気になりますね。反復後の展開部も力強さはあっても冷静さが常に背後にいます。再現部では少し躍動感が感じられるかもしれません。
第二楽章
アンダンテを持ってきました。主要主題・副主題ともにごく普通の優美さ、中間部も流れは同じですが明るさが現れますね。美しい緩徐楽章ですが個性は薄いです。
第三楽章
スケルツォですね。主要主題は客観的で迫力や興奮を否定しているかの様です。クールとは違いますね。トリオは優美なスケルツォですが、それ以上でもありません。
第四楽章
序奏は緊張感の漂う素晴らしい流れかと思いきやスローモッソリに落ち込みがっかり。長い序奏から提示部の第一主題と経過句は勇壮ですがアゴーギクを殺して抑え込み、第二主題も同様です。展開部は序奏と同じく揺さぶりの効いた前半パートとフラット単調さの行進曲以降の組合せです。再現部も同じですが、それでもこの楽章が一番良いかもしれません。

よそよそしく掴みどろこの薄いマーラー6番です。この曲は興奮かクールさかですが、はっきりしないのはどうも…好みの問題になるかもしれませんね。
シベリウス・アカデミー同期生サロネンやサラステのマーラーの様にはいかない様です。






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プロフィール

kokoton

Author:kokoton
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後期ロマン派以降、現代音楽とマーラー交響曲(#5, #6, #9)を中心に楽しんでいます。


[2017年12月9日]
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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