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室内楽版『マーラー 交響曲 第5番』クラウス・ジモン(Klaus Simon)編曲



ホルスト=シンフォニエッタ Holst-Sinfonietta
(クラウス・ジモン編曲, Klaus Simon 1968/4/19 - )
K.ジモンはドイツの音楽家で、ピアノをコンタルスキーに、指揮をH.ツェンダーとJ.カリツケに学んでいます。こう聞いただけで前衛色を強く感じますね。
ジモン編曲マーラー交響曲室内楽版は、第1番・第4番・第9番、がありますが聴いていません。今回は少し変わった"Bastille Musique"レーベルから第5番が出たので聴く事にしました。
演奏はジモン創設の"ホルスト=シンフォニエッタ"です。(編成は、#1vn, #2vn, va, vc, cb, fl, ob, cl, b-cl, fg, #1hr, #2hr, tp, #1perc, #2perc, hp, pf, acc, の18人です)

Mahler5-KlausSimon.jpg


ちなみに室内楽版マーラー5はナタリア・アンサンブル版も存在します。("マーラー聴き比べ #12"にインプレ済みです)




マーラー 交響曲 第5番 [室内楽版]



第一部
ファンファーレは意外や音圧を出して、葬送行進曲は超スローで雰囲気を作ります。第一トリオは落ち着いた切れ味、第二トリオの哀愁はスローで葬送の延長的印象です。
第二楽章第一主題は速くシャープでオケのイメージに近いです。第二主題はvc?の中低音を生かして哀愁を聴かせます。展開部もオケ版に近い"烈→暗→明"のコントラストを醸して、再現部にも違和感は少なく、通常のオケ版に近い音で驚きですね。

第二部
スケルツォ主題はhrの使い方もオケに近い印象を作り、レントラー主題は楽器数を減らしてスローに、上手いですね。第三主題は金管がオケそのもの、弦楽パートも上手く管楽器を加えて処理します。展開部から再現部もオケ版らしさを聴かせますが、コーダはやや薄くなってしまいました。主旋律と従旋律、特に従旋律を上手くアレンジしてオケに近づけている感じですね。

第三部
第四楽章はやっぱりハープ五重奏、アダージェットはこうなるのが自然でしょうが面白さはありませんね。
第五楽章は弦楽の第二主題に厚み不足を感じ、展開部は終始スローが気になります。再現部冒頭三主題は当然ピッタリ、山場からコーダは18人で頑張った感じですね。フィニッシュ編曲も見事にまとめました。



室内楽らしさを生かす編曲ではなく、18人でフルオケ並みに聴かせる方向性ですね。スカスカしてしまう音圧不足は、打楽器と低音の鳴らし方で上手く対処して18人とは思えません。アンサンブル・オーケストラ金沢さん辺りがやったら面白そう?!

ただ室内楽らしいマーラー5を聴いてみたい気持ちも残ったかもしれません。見事だったのですが、これなら普通にオケ版を聴けばいいか? などとも思ってしまいました。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ピアノ2台版『マーラー 交響曲 第5番』を ミヒャエル・ナナサコフ で聴く

ここへ来てマーラー5の変則ver.2枚、ピアノと室内楽、がリリースされましたね。まずはピアノ2台ver.(左)です。

IMG_9794.jpeg


ミヒャエル・ナナサコフ Michael Nanasakov, pf
(アウグスト・ストラダル編曲, August Stradal 1860-1930)
ヴィルトゥオーゾ系ピアノファンなら知っているナナサコフですが、まさかマーラーで出てくるとは思いませんでしたね。

ナナサコフと七澤順一さん】
ナナサコフは七澤さんが作ったバーチャル・ピアニストですね。仮想履歴まであります。
演奏はYAMAHAの自動演奏ピアノ"Disklavier"、そしてMIDIシーケンス・ソフト。そう言った方式でのピアノ2台版になっている様です。いずれにしてもスコアにあるアッチェレランドの様な表現もデーター化して同期&再構築している訳ですから大変そうです。

ストラダル編曲
マーラー(1860-1911)と同年同じチェコ生まれのピアニストで作曲家ですね。得意とするのは交響曲のピアノ版編曲で、それを得意としたリストに弟子入りしていた事も影響しているかもしれませんね。その方向性はピアノで弾ける様にしたと言うよりも原曲に近く難易性が高いとの事です。

ちなみにピアノ版マーラー5はオットー・ジンガー版も存在します。(トレンクナー&シュパイデルのCDを"マーラー聴き比べ #12"にインプレ済みです)




マーラー 交響曲 第5番 [ピアノ2台版]



第一部
ファンファーレから音の厚みがありますね。そして音の歯切れが強くギクシャクで、葬送行進曲は強烈な不自然さを作っています。第一トリオはメイン旋律が裏に回り、第二トリオは哀愁が弾んでしまってます。マーラー本人のピアノロール第一楽章とは全く異なる印象です。
第二楽章第一主題はフィットした激しさ、第二主題は哀愁が跳ねています。展開部は本来vcの動機がギスギスと、再現部も全体的にそう言った音を強く感じてしまいます。

第二部
スケルツォ主題は良く鳴らし、レントラー主題では音量を落として少し揺さぶっていますね。第三主題のhrパートは違和感ですねぇ、弦楽パートはOKですが。変奏パートは'らしく'なっています。展開部と再現部も緩やかなアゴーギクを感じますが、スコア通り?!
第一部よりは総譜に近い印象かもしれません。

第三部
第四楽章は少し音の跳ね具合を落としますが、それでも鍵盤をカツンと叩く様なカクカクした印象のアダージェットです。
第五楽章第一・第二主題はとてもフィット感があって本録音中一番でしょう。コデッタもいいですね。展開部は強い流れで通して聴き疲れ、再現部冒頭三主題はフィットして山場からコーダは少しうるさいかもw



一音一音の粒立ちが極端に明瞭で、流麗さは極低くギクシャクとまさに機械仕掛けの様な印象です。

インテンポとライナーノートにはありますが、そもそもマーラー5のスコアにはBPM表記がありません。印象は全体やや速めでアゴーギクもしっかり感じますね。

スカスカなオットー・ジンガー編曲版より音数があってそれらしさが味わえます。ふとM.A.アムランの多重録音で聴いてみたいと思いました。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ダニエル・ハーディング指揮 / ベルリンフィル の「マーラー 交響曲 第1番 "Titan"」は王道ですね



ダニエル・ハーディング Daniel Harding
(Berliner Philharmoniker, 2019-3/29 Live rec.)
残念ながらコンサートでは相性の良くない指揮者の一人、D.ハーディング。2年前の2019年にベルリンフィルを振ったマーラー1 "巨人" です。
ベルリンフィルとのマーラーはFM放送録音に2014年12月5日のマーラー6のLiveがあるのですが、それは素晴らしいですね。ハーディングのスタンスと言うよりもBPO色を感じますが…




マーラー 交響曲 第1番「巨人」


(BPOリリースの豪華マーラー全集。右は本録音のみのデジタル配信です)


第一楽章
序奏は陰鬱さの下降動機にカッコウ動機やtp, hrが明るく乗ってコントラストが明瞭。チェロの第一主題は明るい歩みの様に、対位的な第二主題はその流れに寄り添う様に落ち着いていますね。展開部は静を鬱に彩って、hr動機で明るい日差しに切り替え、山場は華やかさが際立ちます。短い再現部はコーダの様に見晴らしよくまとめ上げていますね。落ち着いた中にまとまりがある第一楽章です。

第二楽章
主部主題は重厚さあるスケルツォで、転調パートは表情を付けて進めています。歯切れの良さを感じますね。トリオの弦レントラーは優美な舞踏曲風。主部回帰では締まりの良いスケルツォで重心は低いですね。

第三楽章
主部主題の短調『グーチョキパーで…』は重さを避けつつ入って、カノンの流れも落ち着きがあります。木管の二つの動機は心地良さにチェンジペースですね。中間部は緩やかでアレグロ風に美しく。陰影を程良く表現する第三楽章です。

第四楽章
序奏は少し神経質に、提示部第一主題は切れ味を強めた行進曲風に出ます。vnの第二主題はスローに抑揚を着けてと王道の流れですね。
展開部第一主題導入部で切れ味に激しさを少しトッピング、落ち着いた流れからピークを派手やかに築きます。
厄介な再現部前半は落ち着いて、va動機で鋭い音を出して第一主題を切れ味よく奏でます。ラスト山場は緊張感を与えて、コーダは発散させる様に華やかに大きく広げて終わります。



見晴らしの良い王道のマーラー1 "Titan"ですね。この落ち着き払った流れはBPOらしさと見ていいのではないでしょうか。

奇を衒ったパートはなく、最後のコーダに向けてフォーカスした気持ち良さが味わえますね。ただ、どこかに興奮か炸裂の様な刺激があったらもっと良かったかもしれません。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ドゥダメル指揮/ロサンゼルス・フィルの「マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"」



グスターボ・ドゥダメル Gustavo Dudamel
(Los Angeles Philharmonic, 2019-5/30, 31, 6/2 Live rec.)
ドゥダメルのマーラー第8番と言うとすぐに浮かぶのはシモンボリバル響とロサンゼルスフィルを擁し、ステージを埋め尽くした1400人のパフォーマンス映像が浮かぶ訳ですが、残念ながら未所有。

今回リリースのマーラー8は2009年から首席指揮者を務めているLAフィル100周年シーズン記念のコンサートからですね。

主役の8人のソリストは以下の通りで、注目の藤村さんは#1アルトですから二部のスケルツォパートで"成熟した天使たち"に登場して、フィナーレで"サマリアの女"を歌いますね。

Tamara Wilson(sop), Leah Crocetto(sop), Joélle Harvey(sop), 藤村実穂子(mez), Tamara Mumford(mez), Joseph Kaiser(ten), Ryan McKinny(bar), Morris Robinson(bas)





マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"



第一部
提示部:「来れ創造主たる精霊よ」がいきなりのハイテンションで入って、パッセージも荒々しく流れは速めです。第二主題の#1ソプラノが神経質に登場すると、続く重唱もかなり自由で速く尖った印象です。
展開部:入りの管弦楽奏は暗く怪しさを奏で、再び現れる重唱群は緊張感がありますね。第一主題変奏の合唱は激しさを増しています。
再現部:第一主題を速さと各パートの絡みを強くして大きく歌い、コーダの少年合唱団の"Gloria…"はキレキレの独唱群に飲み込まれる様な勢いになっています。
速いテンポと尖った歌唱群が叫ぶ第一部です。


第二部
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
5度下降のピチカートを暗く光らせる主題、緩やかな流れを作ります。それでもテンションを感じて少し落ち着きが不足気味ですね。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
「合唱とこだま」は序奏の流れをそのままキープ、「法悦の神父」力感を抑え気味に愛の痛みと喜びを歌います。「瞑想の神父」はバスと言うよりもバリトン的に朗々と自然と神を讃えますね。

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
このパートの中核「成熟した天使たち」ではvnのソロと合唱を受けて#1アルトの藤村さんの艶やかな歌いが美しく登場、象徴的で素晴らしく流石は藤村さんですね。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールは約束通りに通ったハイトーンを聴かせます。マリアを讃えるこの声が必須ですね。vc独奏が第一主題を奏でると合唱が加わり、スロー緩徐に一転して「かつてのグレートヒェンの告白」#2ソプラノが合唱に浮かび上がります。
「サマリアの女」で再び藤村さんが登場、落ち着いたアルトを見事に聴かせます。「エジプトのマリア」のアルトは切れ味、そして 慈悲をこう"贖罪の女三人の合唱" での絡みは一つのハイライトでしょう。
「懺悔する女 (グレートヒェン)」が再登場でファウストを導きを伸びやかに歌うと、「栄光の聖母」が美しいソプラノで促します。一瞬の出番しかない聖母マリアはこの曲のキー歌手ですが、暖かさがあってフィットしていますね。一番の聴かせ処です。
「マリア崇拝の博士」が伸びやかなテノールでマリアを讃え、合唱と共にコーダへ。

【5. コーダ:神秘の合唱】
静まって入る「神秘の合唱」では合唱団が厳かに例の"母性的なもの"を歌います。そしてソリストが入るとクレッシェンド的に山場へ向かい、ラストは大きく高みへと広げます。



あっという間に終結で落ち着きに欠けるマーラー8でしょうか。第二部でどこにフォーカスしたのか感じづらく、ラストの感動も薄めなのは痛いですね。第一部の速くて切れ味を全面にした流れは興味深いのですが…

そんな中ですが、表現力の高い藤村実穂子さんがやっぱり見事だったので'良し'としましょうw 藤村さんのマーラーとシェーンベルク「グレの歌」の'山鳩'は本当に素晴らしいですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ゲルギエフ指揮 / ミュンヘン・フィル の「マーラー 交響曲 第2番 "復活"」は心地良さ



ヴァレリー・ゲルギエフ Valery Gergiev, b. 1953
(ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団, 2015-9/16-20 Live rec.)
ゲルギエフが2015年から首席指揮者を務めるミュンヘン・フィル(Münchner Philharmoniker)とのマーラー2 "復活" ですね。

同セットのマーラーは「第8番"千人の交響曲"」を先にインプレしています。またwebでのLIVEの第5番もインプレ済み。いずれも素晴らしかったので、遅ればせながら第2番を聴いてみましょう。最終楽章は歌詞を見ながら聴きたい曲ですよね。感激が倍になります。

ソプラノはアンネ・シュヴァネヴィルムス(Anne Schwanewilms)、メゾソプラノはオリガ・ボロディナ(Olga Borodina)です。




マーラー 交響曲 第2番 "復活"



第一楽章
第一主題は落ち着いて出て、緊迫感を作るとパッセージからは緩やかに第二主題の優しさに繋げています。コデッタは行進曲の色を残しますね。
展開部は前半の第二主題の緩やか優しさが印象的で、コデッタの激しさと対比を明確に作ります。
再現部は淡々とした流れで、コーダの葬送は強い鬱ですね。刺激と落着きのコントラストが明瞭な第一部になりました。

第二楽章
主部はスロー優美な中に微妙なアゴーギクを入れた古典色の動機、トリオは繊細にリズムを強調して来ます。回帰で少し揺さぶりも増して、上手くコントラストを付けたアンダンテです。

第三楽章
主部はアゴーギクで緩い波の様な『子供の不思議な角笛』、トリオで明るさを出します。コーダを含めてトリオの管楽器の動機をしっかり鳴らしますね。

第四楽章
主部アルト「原光」は約束通りに低く落ち着いた独唱で、中間部もvnや木管と落ち着いた流れを作っています。O.ボロディナのアルトがフィットしていますね。

第五楽章
提示部第一主題は勿論一瞬の激しさから一気に落ち着いて朝の光の清々しさを作ります。第二主題"復活"の動機はその流れから金管が入って、後半の動機パートでアゴーギクの強い表情変化になります。
展開部"死者の行進"は出し入れの強い見晴らしの良い行進曲。実に素晴らしく、ゲルギエフは"悲愴"を思わせる様な流れを作っています。
再現部は緊張感を残しながらバンダと掛け合い、テンションアップ、そして鎮めてと見晴らし良い管弦楽の前半です。合唱は極静スローに現れてソプラノも切れ味を見せつつ静かに登場、光が射すように流れが広がります。上手いですね。ここでもアルト"O Glaube"の緊迫感が見事!!、ハイコントラストな男声合唱、sop/alto重唱がテンションを上げ、ラスト"Aufersteh'n"の山場を作り上げます。フィニッシュ前に作る一瞬の静音もピッタリです!!



程よい緊張感と心地良さの"復活"ですね。最終楽章集中型ではなくて、全楽章高完成度型のマーラー2です。最後まで気持ち良く聞き通せますね。

個人的にはテンシュテットの非正規盤アバドのザルツブルクデビューの様な流れも懐かしいですが。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





マーラー交響曲第6番 "悲劇的" 名盤珍盤 110CDを聴き比べてみました [#6 : 101-110]



今回の第6弾はマーラー振りの一人ハイティンクをメインに、ニューリリースのペトレンコ/ベルリンフィルなどで10CDインプレです。ストックはまだありますがゆっくり更新予定です。


Mahler Symphony No.6 -- 110 CDs 

 ★:名盤 (一般的にいわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #0:4CD バルビローリ聴き比べ
バルビローリ[x4]
 #1:16CD
バーンスタイン[x3 ★☆], アバド[x5 ★☆], カラヤン[x3 (★)☆], ゲルギエフ, 小澤征爾, 井上道義[x2], プレートル[㊟]
 #2:20CD
ヴァンスカ, ダーリントン[☆], ラトル[x3 ☆], P.ヤルヴィ[x2], N.ヤルヴィ[x2 ☆], ジークハルト, セーゲルスタム[☆], パッパーノ, ザンダー[x2], ショルティ[☆], ヴィト, シェルヘン[㊟], ズヴェーデン, ノット, J.サイモン, アブラヴァネル, パク・ヨンミン
 #3:20CD
テンシュテット[x4 ☆], シャイー[x2], ヤンソンス[x2], MTトーマス[x2], ハーディング, 朝比奈隆[x2 ㊟], スヴェトラーノフ[x2 ㊟], セル[x2], バルシャイ, 井上喜惟, 山田和樹, クルレンツィス[★]
 #4:20CD
ギーレン[x3 ☆], シノーポリ, メータ, サロネン[☆], サラステ, ヤング, 大植英次[㊟], ボンガルツ[㊟], シュテンツ, ヘンヒェン[x2], アシュケナージ[x2], ヴロンスキー, タバコフ, シュワルツ, マーツァル, ネトピル
 #5:20CD
ブーレーズ[x4 ★☆㊟], ベルティーニ[x3 ☆], インバル[x3], ルイージ[x3 ☆], レヴァイン[x2], フェルツ, ツェンダー[㊟], ガッティ, ファーバーマン, ドホナーニ
 #6:10CD 本投稿
ハイティンク[x5 ★☆], ジンマン[x2], ペトレンコ, ハーヴェイ, ワールト





ベルナルト・ハイティンク, Bernard Haitink (5録音)

マーラー振りというと浮かぶ一人、ハイティンクですね。第6番も枚数が多く存在します。集めるつもりもないのですが、それでも5録音ほどあります。途中で大きく変化を見せて、ハイティンクのスタイルの全貌を垣間見る事が出来ますね。



(#1)

Concertgebouw Orchester Amsterdam
[philips] 1969-1/29, 2/2


ハイティンクと言えばコンセルトヘボウ(RCO)ですね。主席指揮者時代(1961-1988)に手兵(当時の名称: アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団)を振ったマーラー6です。


【第一楽章】
第一楽章は速めで勇壮、アルマの主題は華やかに大きく、まさに王道の提示部です。展開部も第一主題を速め切れ味で引き締め、挿入パートの静とのコントラストを明確化。再現部も約束通りに主題に刺激を付けてスピードアップ、コーダの葬送も速めでラスト第二主題を気持ち良くまとめ上げます。
速め王道の第一楽章になりました。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は重厚さよりも明るく華やか、これがハイティンクが鳴らすRCOでしょうね。トリオはスロー優美に一気に変わって変拍子も生かしています。木管動機もリズムを明確にして来ます。RCOらしさが光る優美なスケルツォ楽章です。

【第三楽章】
主要主題は緩やかでスロー優美に流れます。第一トリオは哀愁を強く美しく、流れが厚くなった処で中間部は大きく包み込む様な陽光を作っていますね。ラスト前山場も気持ちのこもった大きさを感じます。美しいアンダンテの完成形の一つですね。

【第四楽章】
序奏は激しさ緩急よりも楽器の鳴りの良さを感じます。第一主題は重心を下げて進み、第二主題もクセなく軽妙に入って明るさを大きく広げます。展開部のvc動機も力感は抑えて、第二主題を気持ち良く鳴らし、行進曲も興奮は排除して爽快にリズムを刻んで進みます。#2ハンマーからスローが珍しい。再現部も第一主題で華やかに鳴らすと一気に騎行へ飛び込み、一番の切れ味を見せて軽快に闊歩します。爽快感あふれる最終楽章になりましたね。


華やかで豊かな鳴りのマーラー6です。流れはもちろん王道で、重厚さや興奮の変わりに爽快な心地よさですね。

これぞハイティンク/コンセルトヘボウのマーラー面目躍如と言った感じです。ハイティンクのマーラーはやっぱりRCOでしょう!!






(#2)

Berliner Philharmoniker
[DECCA] 1989-4/6-8


コンセルトヘボウから20年後、ハイティンクが60歳の時にベルリンフィル(BPO)を振った演奏です。


【第一楽章】
第一主題から重厚な音に、速めは変わりません。アルマの主題はRCOと似た広がりですが音が厚いのはBPOでしょうね。展開部はドッカリと鳴らして、挿入パートの静はあまり落としません。再現部もスピードアップですが主題の色付けはほどほど、コーダも葬送を速めにと、流れは20年前と似ています。ただBPO色が出て重厚でガッシリした骨格の第一楽章になりました。

【第二楽章】
スケルツォ主部は重さを控えて、速めの切れ味です。トリオはRCO同様にスローに一転して軽量優美ですが、変拍子は薄くなりましたね。木管動機は殊更なしの印象です。回帰は出し入れが強まり、RCOの優美さからBPOらしい怒涛のスケルツォ楽章へ。

【第三楽章】
主要主題はここでもスロー優美ですが重心の低さはBPOですね。第一トリオは哀愁感を抑え目に入って来ますし、中間部で大きく陽光を照らすのも似ています。ラスト前の山場はBPOが鳴らすので怒涛。流れはRCOとほぼ同じですが、色濃いアンダンテになりましたね。

【第四楽章】
序奏はコントラスト控え目に。提示部第一主題行進曲は勇壮にBPOらしく力感がこもります。落ち着いたホルンのパッセージを経て第二主題までは抑え気味。展開部は出し入れの強いインパクトさで彫りの深い演奏ですがコントロールは効いています。#2ハンマーの後のスローは少し弱まりました。再現部も第一主題のコントラストは強いですが興奮を抑え落ち着いてますね。騎行もなんとか爆走させずに、ハイティンクらしい手綱を締めた最終楽章です。それが良いかは別の話になりますが。


ハイティンクが考える流れをBPOが鳴らす重厚王道のマーラー6番です。流れ自体は20年前と良く似ているのでRCOとBPOのオケの個性が出た感じです。

個人的にはハイティンクの流れはBPOの重厚さとはアンフィット(中途半端)に感じます。従って華やかなRCOに一票ですね。それにしても20年を隔てても基本の流れはブレていないのが凄いです。






(#3)
Berliner Philharmoniker
[RNW] 1995-5/10

6年前と同じBPOとのマーラー6、オランダの"Mahler Feest 1995"からです。


【第一楽章】
速め重厚で6年前と変わらない第一主題、アルマの主題も華やかな広がりですね。展開部第一主題は速めですが鳴らし方は少し抑えめ?、挿入パートも静はほどほどですがスローの印象が上がりました。再現部も速いですが色付けが増し、コーダの葬送がスローに変わったのが印象的です。重厚さが少し薄くなった印象ですね。流れも上記の様に少し変化しています。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は速めで重厚さを控え切れ味に、トリオはスローに落として軽妙優美と6年前のスタンスをキープです。木管動機に個性を出さないのも同じで、もちろん回帰ではしっかり鳴らして来ます。

【第三楽章】
主要主題はここでもスロー優美ですが、少し揺さぶりを感じる様になりました。第一トリオは抑えた哀愁で、中間部の明るさも大きく広げます。6年前と違うのは第一トリオと中間部の後の主部回帰にアゴーギクが緩やかに使われて穏やかな哀愁の表情になった事でしょう。優しい哀愁に包まれたアンダンテになりました。

【第四楽章】
序奏はコントラスト控えめですがアゴーギクでスローを入れています。提示部第一主題はシャープですが殊更のパワーは控えながらパッセージと絡んで力を込め、第二主題は軽妙感が効く様になりました。展開部は抑えていたvc動機の刻み方がSTD化、全体はコントラストがありますが興奮は避けていますね。特徴的だった#2ハンマー後のスローはかなり薄まりました。再現部も安定感が増して騎行も音量は上げますがテンポは抑えて突撃性はコントロールされていますね。しっかり鳴らしますが興奮は避けた最終楽章です。


6年前に比べると重厚さから落ち着きと切れ味にシフトしたマーラー6です。基本は似た流れですが、各所に変化が見られます。

ハイティンクとBPOのセットならば、こちらの方が安心感がありますね。とは言え、この曲でのハイティンクとBPOのセットは今ひとつ好めないのですが。






(#4)
Orchestre National de France
[naïve] 2001-10/24


6年後、ハイティンクがフランス国立管弦楽団を振ったマーラー6ですね。大きく変化しています。


【第一楽章】
スロー重厚に変化した第一主題、アルマの主題は少し抑え気味ですね。おっと、なんと提示部の繰返しをカット!!です。展開部第一主題も, 挿入パートの静スローもテンポを標準に戻して、コントラストが薄くなり、再現部は速めで色付けされていますがパワー不足気味。コーダの葬送はスローですが、その後が引き締まりません。力感が弱くなって緩んで締まりに欠ける印象になりました。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は速めですが今ひとつ締まりがありません。トリオは明確にスロー化しますが弱さを感じ、木管動機もズルズルっと入ってしまう印象ですね。靄って見晴らし不良のスケルツォ楽章です。

【第三楽章】
主要主題は緩やか優美ですがスローは感じなくなりました。第一トリオの哀愁は弱めで淡々と、中間部では明るい光りを見せますがアゴーギクと言うかテンポ変化が弱くダラっと真っ直ぐ、抑揚が薄くフラットに感じるアンダンテです。

【第四楽章】
序奏はここでもスローを入れていますね。提示部第一主題は歯切れ良さを見せますがヌケが良くありません。第二主題は軽妙に登場して大きく鳴らし悪くありませんね。展開部vc動機は再び弱く表現する様に、第二主題も鳴らし方は弱めになって、行進曲は鳴らしますが抑揚も力感も薄め。#2ハンマー後の個性的スローは消滅しましたね。再現部の第一主題も脚色が弱くなり、騎行も前半のテンポがスロー化して走れません。エラーも破綻もありませんが、気持ちが入らないまま走り終えてしまう様な最終楽章です。


抑揚に欠けて見晴らしが良くないマーラー6です。ここへ来て大きく流れが変わり、爽快さや切れ味にあった軸足がどこかへ行ってしまいました。

鳴らしてはいますがテンポ設定がフラットで気持ちの入りが弱く、それが切れ味を奪っている感じです。そして、21世紀の演奏で何と "第一楽章提示部繰返しカット" と言うオマケ付き。今や組曲よりも全曲版が普通の時代なのに驚きですね。






(#5)
Chicago Symphony Orchestra
[CSO] 2007-10/18, 19, 20 and 23


6年後、ハイティンクとシカゴ交響楽団との演奏です。


【第一楽章】
スロー重厚の第一主題はモッソリと、アルマの第二主題もスローで華やかさも抑えて、緩い提示部です。繰返しは復活しましたね。展開部の第一主題も同じ様な緩い流れから締まった音を鳴らしますが一瞬、挿入パートは一層のスローでトーンを落として暗めです。再現部でも締まりに欠ける感じ。鳴らす山場パートは残っていますが、軸足をスローで緩い流れに持って来ましたね。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題はテンポを戻しますが力感は避けて薄味に、トリオも静で淡々と、木管動機も表情変化はさせません。最後の主部回帰は一瞬の激しさを見せて強烈なコントラストですが、"まばたき"の様な瞬間芸です。

【第三楽章】
主要主題は緩やか静を強調してスローにフィットしていますね。第一トリオも静スローの哀しみを細い旋律で聴かせます。悪くありませんね。中間部は穏やかに陽光を照らし、第一トリオ回帰で大きく鳴らしますが、そこ以外は緩いスロー徹底のアンダンテです。

【第四楽章】
序奏は圧倒するスロー静へやたらと沈み込んで凄いです!! アレグ ロ・エネルジコからは普通に行進曲となっていますが力感無しでややスローのよそよそしさw、第二主題もあっさり風味です。変化の少ないテンポが興奮を避けていますね。再現部のキーとなる騎行だけはしっかりと力感を込めていていますが、せっかくならここも抑えた方が面白かった?!
他の楽章よりも表情があるもののアゴーギクを殺してスルッとした最終楽章ですね。


90'超えのひたすらスローで緩いマーラー6です。山場もテンポを戻して鳴らしますが短く、もしくは緩い力感です。

印象は圧倒的にスロー。それもアゴーギクも抑えたスローで力感を避けベタ〜っと緩いです。そこに瞬間芸の様なパワーパートが入って、かなり変わっていて面白い?!。もう一癖あれば間違いなしです。

(#4)の進化形、(#3)までとは別人ですね。ハイティンク共通のパターンかもしれません。





デイヴィッド・ジンマン, David Zinman (2録音)

米人のベテラン指揮者のジンマン。ハレ管とのマーラーチクルスの5番・9番は丁寧に作り込まれた印象でしたが、6番はどうでしょうか。他にもう一枚、ボルティモア響との録音を残しています。
二回の録音でこの曲の持つ変則性を色々入れ替えていますね。


(#1)
Baltimore Symphony Orchestra
[Baltimore Symphony Orchestra] 1992-2/27-29


TheZinmanLegacyBSO.jpg
(ジャケット写真です)

ジンマンが音楽監督(1985-1998)時代のボルティモア交響楽団とのマーラー6。第一楽章提示部繰返しカット&ハンマー3発の変則ver.です。


【第一楽章】
第一主題はスタンダードで締まり良く、アルマの主題は華やかですが少しディナーミクを感じます。提示部繰返しカットです。展開部"烈→暗→明"のコントラストはとてもシャキッとして快感ですね。特に"暗"となる挿入部は重さを上手く避けています。再現部は主題に適度な激しさを載せて常識的、コーダも葬送からフィニッシュまで安心感ある流れです。スタンダードですが心地良い切れ味です。

【第二楽章】
スケルツォです。主要主題は重さを強調するリズムを刻み、トリオはスローで優美にメヌエット感が強いです。木管動機も濃厚さを避けてスッキリしていますね。各動機の回帰でもアゴーギク&ディナーミクで微妙に流れを変化させています。

【第三楽章】
主要主題はいかにもアンダンテの優しさ、第一トリオは哀愁のコーラングレからホルンのバトンタッチが良いですね。前半ピークを哀愁強く鳴らして、中間部(第二トリオ)は明るい日だまりの様に広がります。後半ピークもしっかりと哀しみを溢れる様に鳴らして、ちょっとグッと来る哀愁と優しさのアンダンテです。

【第四楽章】
序奏は鳴りの良さと鬱スローで見晴らしの良いコントラスト、アレグロ・エネルジコからの第一主題はテンポアップで堂々の行進曲。パッセージもテンポ良く気持ちよく絡んで、第二主題は約束通りに軽妙に現れます。展開部#1ハンマー後の行進曲は勇壮に入って悠々と、最後は切れ味鋭く進みます。その流れの変化が心地良いですね。(ハンマーの響きがビリビリと揺れて長引くのは?) 再現部は第一主題回帰を大きく派手派手に鳴らして、騎行はテンポアップでキレキレ、最高ですね。LIVEで気持ちが入って何とも気持ち良い快感の最終楽章です!!
忘れていました、コーダで三発目のハンマーが入ります。やっぱり変に響き渡りますがw


スタンダードの安心感と心地良さのマーラー6です。控えめながらバランス良いアゴーギクとディナーミクがフィットして、そう感じさせるのでしょう。

肩肘張らない素晴らしさで, 最終楽章では刺激も十分味わえる、個人的隠れで好きなLIVE盤なのです。

本CD(3枚組)は興味深い交響曲集で、モーツァルト"Jupiter", ブラームス"#3", プロコフィエフ"#1", チャイコ"悲愴" も入っています。入手難が残念ですが…





(#2)
Tonhalle Orchester Zürich
[RCA] 2007-5/14-16


バルティモアから15年後、ジンマンが音楽監督と首席指揮者を努めた時代(1995-2014)のチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団とのマーラー6です。
第一楽章提示部反復あり、ハンマー二発、に戻していますが、代わりに第二楽章アンダンテに変更されています。


【第一楽章】
第一主題はキリッと締まってテンポ良く、アルマの主題は華やかでしっかり鳴らします。今回は提示部反復を入れていますね。展開部"烈→暗→明"の流れもメリハリがきっちり付いて隙がありません。再現部も一層の締まりを見せて、コーダの葬送もしっかり沈めます。力感もあり完璧な王道楽章になりました。

【第二楽章】
アンダンテに変更です。主要主題は控えめで淡々と、第一トリオは哀愁を見せますがほどほどです。中間部は大きく明るさを示して約束通り、後半の山場を大きく鳴らしてまとめますが、印象は淡々とした感じでしょうか。

【第三楽章】
主要主題は刻むリズムがより極端な方向になり、クセを感じるかもしれません。中間部もスローですがリズム感が強くメヌエットらしさはやや弱まりましたね。木管動機も色を濃くした感じで、このクセのあるスケルツォをどう聴くかもポイントでしょう。

【第四楽章】
序奏はまとまりが良くなりました。提示部第一主題の行進曲は厳しく刺激的、パッセージもハイテンションで入って絡み、第二主題が柔らかく登場して山場を作ります。展開部はvc動機を厳しく鳴らして第二主題を呼び出すと、行進曲は落ち着きを見せて前進。再現部第一主題ではタメを作って広げると、一気に激しい騎行に突入しますが駆け抜けませんね。三発目のハンマーはありません。激しさも計算されている感が拭えませんね。


力強く完成度の高い, でも出来過ぎが気になるマーラー6です。作り込んだ完璧さは、光る個性や溢れる感情が見えづらく、ワクワク感に欠けるパターンです。

5番・9番同様に録音を含めて作り込まれている感が強いですね。評判の高い盤ですが、個人的には上記ボルティモア響に一票です。





キリル・ペトレンコ, Kirill Petrenko

Berliner Philharmoniker (BPO)
[Berliner Philharmoniker Recordings] 2020-1/25


2019年からBPOの首席指揮者・芸術監督を務めるペトレンコのマーラー6です。超豪華版マーラー全集でBPOリリースですね。


【第一楽章】
第一主題は勇壮ですが抑え気味、パッセージも淡々としています。アルマの主題でも極度に華美を広げる事は避けていますね。展開部では"烈→静→強"のコントラストを明確にして来ますが淡々としています。再現部もまさに再現的、コーダがアゴーギクを利かせて一番良く 沈んだ葬送からの締まりの良さですね。高完成度クールな楽章になっています。

【第二楽章】
アンダンテを持って来ました。主要主題は感情を抑えた哀愁で流し、第一トリオで哀しみを湛える緩徐楽章にしていますね。中間部(第二トリオ)も燦々とした明るさですが抑え気味、後半第二トリオ回帰からラスト山場も感情の溢れはコントロールされています。
速めの設定が哀愁にアンフィットな感じがします。

【第三楽章】
主部は速めの設定で入って来ます。トリオではスローに落としてコントラストを付けていますが、木管動機も合わせて気持ちの入り具合は低めに感じます。回帰するトリオでは変拍子を強く付けて面白いのですが。

【第四楽章】
厄介な序奏は暗鬱やおどろおどろしさよりもクールさです。提示部第一主題はハイテンポでキレキレで疾走して、初めて好きな流れになりますね。パッセージが絡むと何故か落ち着いて、第二主題も変化少なめの軽妙さで現れます。展開部はvc動機も刺激は低め、第ニ主題回帰はコントロール、行進曲もカッコいいのですがどこか冷めている感じです。再現部第一楽章回帰は派手で華やかに、続く騎行は強力なハイテンポで突撃します。素晴らしいのですがコントロールがしっかり利いているので溢れる様なワクワク感はありません


クールでコントロールされた高完成度のマーラー6です。しっかり切れ味もあって見事なのですが、個性や感情移入は低くそっけない感じもします。

気持ちの入った流れはラスト最終楽章再現部の第一主題以降に見られましたが、何処かコントロール下の印象を拭えませんでした。これはペトレンコのスタンスの様でBPO以外のタクトでも同じですね。





レイモンド・ハーヴェイ, Raymond Harvey

Kalamazoo Symphony Orchestra
[Kalamazoo Symphony Orchestra] 2017-2/3


アフリカン-アメリカンの指揮者のR.ハーヴェイが名誉指揮者を務めるカラマズー交響楽団を振ったマーラー6です。1921年設立の米ミシガンのオケですが、残念ながら両者知見がありません。


【第一楽章】
第一主題はキレ良く、アルマの主題では喜びを広げる様に、反復を含め王道の提示部です。展開部も"烈→静→強"をキッチリとコントラスト付けして心地良い流れです。再現部は気持ちの昂り、コーダの葬送で落ち着かせて盛り上げる、約束通りですね。
技量ほどほどで個性は低いですが速め設定の主流派的気持ち良さがあります。

【第二楽章】
スケルツォです。主部は速めで第一楽章のトレース的、ピシッと折り目があって良いですね。その流れからのトリオも穏やかさの中に変拍子のリズム感があります。ここでも流れに快感ある楽章になっています。

【第三楽章】
主要主題は程よい甘美さ、第一トリオのイングリッシュホルンで哀愁に切り替える表情変化もしっかりと。残念なのはその後のホルンがコケますが。中間部(第二トリオ)は約束通りに心地良い明るい日差しが感じられます。第一トリオ回帰の溢れる哀しみの山場も大きく見事ですね。

【第四楽章】
この曲のポイントの一つになる序奏は速めで色濃くホルンは怪しくw、アレグロ・エネルジコから第一主題は一気に突き進みます。パッセージが入るとテンションを上げて突進、第二主題は軽妙ですがどこか力感がありますね。展開部は第二主題に強烈な勢いを付けて、行進曲は刻む力強いリズムが気持ち良く、スローキープのコラールも興味深いです。再現部も華やかに第一主題が回帰、そこからの騎行は以外やコントロールされています。狂乱の方が好みでしたが。


スカッと気持ちの良いマーラー6です。クセの無い速めのテンポ設定がそう感じさせてくれるのでしょう。程よいアゴーギクも効果的ですね。

金管はかなり怪しいですが、手慣れた感じがあるのでレパートリーなのか指揮者とオケの協調の高さなのかでしょうね。





エド・デ・ワールト, Edo de Waart

Netherlands Radio Philharmonic
[RCA] 2003-12/19, 21-23


ジャケット写真です

オランダ人指揮者エド・デ・ワールトがオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者(1989-2004)を務めていた時のマーラー・チクルスからの演奏ですね。


【第一楽章】
クセの無い標準的な第一主題からパッセージ、アルマの主題もややスローに情感高く鳴らして正攻法な提示部です。展開部も第一主題をシャキッと鳴らして、挿入パートの静スローへ教科書的に繋ぎます。再現部は強めに陰影を付けて約束通り、続くコーダ冒頭の葬送でスローへ落としてワールトの個性を垣間見せていますね。そこ以外は教科書の様な真面目な第一楽章です。

【第二楽章】
スケルツォです。スロー気味の主部主題がリズムを明確に刻んで重厚さを見せ、トリオではよりテンポを落とした優美さと変拍子の刻みを強調してきます。木管の動機もグッとスローに奏でて、トリオの回帰ではスローの揺さぶりを強く。コーダ前の主部回帰はガッツリ鳴らします。早くもワールトらしいスローの拘りが見えて来ましたね。

【第三楽章】
肩の力が抜けた緩やかスロー基調の主要主題から第一トリオの哀愁も落差は小さく、適度にスローで揺さぶりもなく進めます。抑え気味の感情の昂りから、中間部(第二トリオ)では緩やかに大きく明るさを見せます。情感に溺れないアンダンテです。ラスト山場以外は少し間延び感が気になるかもしれませんが。

【第四楽章】
厄介な序奏はスローでディナーミクを効かせて、アレグ ロ・エネルジコから一気に提示部に突入します。第一主題はシャープな行進曲、第二主題も呼吸を整える様に軽妙に現れる 正攻法の流れ。展開部は第二主題がやや靄って抜けの悪い印象で、行進曲も勇壮さと荒っぽさが混在しています。後半に現れるスローも含めて見晴らしが今ひとつですね。再現部も前半のスローとまとまりがイマイチですが、騎行は速く奔放に鳴らして突撃。ここは面白いですが、全体は今ひとつ一体感に欠ける最終楽章です。それが面白いと言う人もいるかもw


ワールト節のスロー個性を光らせるマーラー6です。正攻法の上に被ったワールトらしい揺さぶりのスローパート、そしてピークはしっかりと鳴らして来ます。

好みを分けるかもしれないスロー、それがワールトのタクト、ワールトのマーラーですね。






COVID-19の影響で、コンサートで大編成となるマーラーの演奏が減っているのは残念な事に感じますね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ドゥダメル指揮・ベルリンフィルの「マーラー 交響曲 第3番」は心地良さですね



グスターボ・ドゥダメル Gustavo Dudamel b. 1981
(Berliner Philharmoniker, 2014-6/13 Live rec.)
今や人気実力を備えた指揮者となったドゥダメルがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー第三番です。今回の2014年録音は本来はマリス・ヤンソンスでしたが体調不良、代役での登場だったそうです。ドゥダメルはドイツやウィーンでは笑顔を絶やしませんが、来日公演ではあまり笑顔を見せませんね。

マーラーは第3番を二部6楽章としていますね。最後に作った長くて印象が異なる第一楽章を第一部、流れの続く第二楽章以降が第二部です。でも、1-3楽章が管弦楽 / 4,5楽章が歌曲(的) / 6楽章が大団円、と考えておくと流れを掴みやすいかもしれません。


今回のアルトはゲルヒルト・ロンベルガー(Gerhild Romberger)です。イヴァン・フィッシャー/ブダペスト祝祭管の"大地の歌"でも起用されていましたね。




マーラー 交響曲 第3番


BPOのマーラー全集。ドゥダメルは第5番も振っています
右は第3番のみのデジタル配信です


第一楽章
序奏第一主題は8基hrを揃い良く、行進曲はスロー、他の動機群も重厚スタンスです。その流れに第二主題も乗って、第三主題obの"目覚める牧神"が穏やかに軽妙に登場します。上手いコントラストですね。
提示部の"暗→明→烈"はtbの入りが鬱を強めに、行進曲から第四主題を静にゆっくり落ち着いて、力感を上げてラスト山場は大きく広げます。
展開部も静まってtbソロが出ると鬱な色合いが強まりますが、木管が出ると肩の力が抜けて各ソロへと表情豊かに繋げて明るさを増しますね。
再現部でもtbソロがキーとなって鎮む印象を作り、パウゼからマーラーらしい行進曲に繋げます。その先に快感のコーダが待っています。
重厚・華やか・緊張感が高バランスの第一部です。

第二楽章
主要主題のobが軽妙洒脱な音色を奏で、トリオは変拍子(テンポの揺さぶり)を生かした表情変化を付けていますね。主部とトリオの回帰は色合いを増しますが重厚さは付けません。

第三楽章
主部のピッコロ動機も明るさが強めで軽妙です。トリオはポストホルン(使っていないでしょうがw)がバンダでのどかな空気を作っていますね。山場は一気に緊張感を盛り上げて華やかに鳴らして締め括ります。明るさ方向の第三楽章です。

第四楽章
アルト独唱は"O Mensch!"が伸びやかに やや太めに歌われ、スローでしっかりと聴かせる感じですね。歌詞を見ながら聴きたいパートです。

第五楽章
子供達の"Bimm bamm!"はいきなり明るさいっぱいに弾む様に登場します。この楽章らしさを最大限表現している感じですね。トリオはアルトが伸びやかにリードしています。

第六楽章
弦楽奏の主要主題は静で厳かですが明るい光を含んでいます。木管が入っての第一トリオもその流れを引き継ぎ、第二トリオは一瞬の緊張感を控え目に作っています。各動機の回帰で音厚を高めていますが静の主部がアンダンテ的に静美を強調しているのが印象的です。山場は少し抑えて、コーダは天上界に昇る様に壮大に広げて、2番や8番の様ですね。少しワーグナーも感じました。



重厚さの中に明るさを感じるドゥダメルらしいマーラー3です。緊張感や重厚さはBPOの個性もあるかもしれませんが、明るいパートがキーになっていますね。歌唱の持つ幸せ感が表現されている感じです。

クセを排除して完成度は高く、全体の流れの素晴らしさに惹きつけられますね。久々に気持ち良く楽しめるマーラー3に出会えました。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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