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ダニエレ・ガッティ「マーラー 交響曲 第2番 '復活'」ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団


Mahler Symphony No. 2 'Resurrection'
(Royal Concertgebouw Orchestra, Daniele Gatti: cond.)
ガッティがRCO主席指揮者に就任した2016-17シーズン開幕公演(2016-9/18)のLIVEで、配信版でリリースされたものです。(DVD/BDやBlu-ray Audio等のバリエーションがあった様な…)
ガッティのマーラーと言うとアゴーギクを効かせた流れが浮かびますが、ここではどうでしょうか。

ソロ二人はアンネッテ・ダッシュ(Annette Dasch, sop)、カレン・カーギル(Karen Cargill, mez)です。





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第一楽章
提示部第一主題は低弦強調で重心を低く落ち着いて、葬送行進曲もその流れからテンションを上げます。緊張感の高まりから第二主題で安らぎの音色に。コデッタはテンポアップで重厚感が強いです。
展開部前半の第二主題はスローに優しさを広げ、徐々に上げて行きコデッタの山場は行進曲らしさを中心に。後半は暗鬱に入りコラールの山場へ向かいます。山場は勇壮なテンションを見せます。
再現部は殊更に色合いを濃くせず、コーダの葬送はかなり鬱に落としてラストのピークは落ち着いて締め括ります。
重心の低い流れを中心に第二主題の優しさとのコントラストを付けた第一楽章です。


第二楽章
主要主題は演舞的なメヌエットを柔らかさで。トリオでもリズムを利かせますが落ち着いて静美に。回帰ではしっかりと音厚を上げてテンションもアップさせて、主部ラスト回帰のピチカートは表情豊かです。
落ち着きつつも変化を大きく与えた流れで上手いです。

第三楽章
主部主題は色合いの濃い『子供の不思議な角笛』で軽妙さはありません。中間部は弦と木管が作る心地よい会話でコラールの華やかさと対比させます。コーダは一度華やかに鳴らしてから緩やかに。

第四楽章
主部「原光」のアルトは低く鎮めて入り歌詞を表現。ややスローも効いていいですね。中間部は少し哀愁を挟んでから明るさを見せます。カーギルは表情が豊かでオペラの様です。


第五楽章
提示部第一主題は派手で一瞬音圧高く出て、パウゼを強調後hrの動機が静の中に緩やかに響きます。第二主題"復活"の動機が落ち着いて登場。そこからの動機群も興奮は避けて、徐々に緊迫感を上げて行きピークは華々しさです。この流れが処々にみられ、アゴーギクを上手く合わせてガッティらしさでしょう。
展開部の入りはハイテンション、そこからは落ち着いたテンポにアゴーギクで表情を付けて、スッキリと見晴らしの良い"死者の行進"になりました。スロー基調と言うのは珍しいかもしれません。
再現部導入部の管弦楽はやや速めの流れと緊張感を強めに、バンダとのやりとりは静の空間を生かします。合唱が静に現れてソプラノそこに浮かび上がるのはお約束の"Aufersteh'n"の導入、アルトが太く低く "O glaube, Mein Herz" と信じる事を伝えるとテンションが高まり、受けるソプラノで落ち着いた透明感とのコントラストが作られます。これは良いですね。
シャープに響く男声合唱に続くsop/alto重唱も切れ味強く絡んで"光へ向かい"ます。一呼吸後、溜めたスローで全体が一丸となってパワーの"Aufersteh'n"を歌い上げます。ガッティらしいタクトで見事な感激的フィニッシュでした。



全体的に色彩感があって表情豊かなマーラー2です。RCOらしい艶やかな音色に、アゴーギクでテンションをコントロール、オケとタクトが織りなす聴き応えある'復活'になりました。

パウゼ強調や、ラストをスロー個性的な大団円にまとめたりとガッティらしさが楽しめます。
カーギルのアルトとダッシュのソプラノも素晴らしく、その表情とコントラストがこの熱演に色を添えたのも間違いありません。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 135CDの聴き比べです [#8 : 2CD]


マーラー第9番聴き比べ#8です。今回はヴァンスカとワールトの素晴らしい2録音から、これでトータル135CDになります。
今後はこのページに追記となります。(特に "後日投稿" は記しません)

Mahler Symphony No.9
 #8:2CD
ヴァンスカ[☆], ワールト[☆]

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


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マーラー9 投稿記事 | 指揮者 一覧

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オスモ・ヴァンスカ, Osmo Vänskä


Minnesota Orchestra
[BIS] 2022-3/21-25

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2003-2022年まで音楽監督を務めたヴァンスカとミネソタ管弦楽団のマーラーチクルスから第9番です。


【第一楽章】
第一主題は仄かな鬱の美しさをスローに、第二主題でも落差は小さめに緊迫感を作って第三主題のピークを派手に大きく広げます。展開部前半から中盤も暗鬱さをスローで表現、力強さはファストとコントラストを付けています。心地良い王道です。経過部の葬送は少し強めにしています。
再現部は提示部よりも広がりが強く華やかで、コーダは最終楽章を思わせる静にする上手さです。

【第二楽章】
主部主題、第一トリオ共にスローでリズムの刻みを強調。多少刻むのはよくありますが ここまで徹底して刻むのは聴いた事がなく、個性を放つレントラー楽章です。第二トリオでも穏やかな中に尖ったリズム感があって、主部回帰の山場は一転してハードでファストです。

【第三楽章】
主部主題は速いテンポ。前楽章とのコントラストを激しさと力強さで荒っぽく表現します。サブ主題的な第一トリオも軽快ですが締りがあって速いです。中間部(第二トリオ)も速めで入りますが、スローになると最終楽章のターン音型を彷彿させます。ちょっと鳥肌モノです!! 当然ラストは強烈にpiù strettoです。

【第四楽章】
主部主題は緩やかな哀愁でこの曲らしさそのもの。fg動機後も極端な音厚は避けて良いですね。第一エピソードは低弦の裏にvnを薄く入れて哀愁を表現し、緩やかに大きく弦楽奏を広げます。王道ながら心に響きます
第二エピソードは速めの流れにしてコントラスト付け、弦楽が入ると緊張感を上げて山場を大きく激しく鳴らします。後半からコーダへはゆっくりと鎮まり、ターン音型の浮遊さで静空間に音を浮かばせて終息します。


構成感とコントラストが光るマーラー9です。そのベースになるアゴーギクは基本的な "静スロー・烈ファスト"。それを強めに有効的に使っています。

第一・四の緩徐楽章も王道的に素晴らしいのですが特筆すべきは二つの中間楽章の対比でしょう。バーンスタイン盤を始めとする名盤はいずれも中間楽章の素晴らしさですから。
マーラー9聴き比べの中でもトップクラスの一枚になるでしょう。


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エド・デ・ワールト, Edo De Waart


Netherlands Radio Philharmonic
[RCA] 1995-4/8

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ワールトが主席指揮者(1989-2004)を務めた時代のオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団とのマーラー・チクルスから9番です。


【第一楽章】
スローで気持ちの入った第一主題から第二主題は緊迫感を程よく加えピークを鳴らして反復へ、第三主題は当然パワーを見せてくれます。展開部前半のコントラストも序奏を暗鬱に鎮め明確なメリハリ、その後も緊迫感ある流れを挟みながら三回のピークを派手な鳴りで攻めて来ます。後半の葬送もシャキッとしたイメージが勝っています。
大きな流れで見晴らしの良さが素晴らしい第一楽章です。

【第二楽章】
レントラー主題は第一動機をスローに第二動機も刻みを抑えめに落ち着いた流れを作ります。ゆっくり音厚を高めて進み、第一トリオでシャキッと締まったレントラーに変換。第二トリオは緩やか優美に、主部回帰では抑えたテンポから上げつつ切れ味を見せ付けます。
"ゆったりさ" と "切れ味"のコントラストを明確に付けた第二楽章です。

【第三楽章】
主部主題は速めのテンポ設定でシャープに音厚を増して進み、そこに第一トリオは優美な色合いを加えます。速めの流れをキープしてシャープに、途中のピークは既にキレキレです。そして第二トリオ(中間部)も通常よりもテンションは高めで、後半のターン音型も最終楽章を僅かに覗かせる程度にしています。ピークは激烈に鳴らして、フィニッシュは一気の狂乱più strettoです👏👏
シャープでテンションが高くキレキレの第三楽章です。

【第四楽章】
主部は濃厚な弦楽奏アダージョでエモーショナル、スローに鎮めたfg動機からはより感情を厚く奏でます。この流れにとてもフィットしていて感激的です。
第一エピソードは低弦を利かせて緩やかな中にテンションを込め、hrが出ると音厚を上げてピークで感情が溢れる様に広げます。グッと来ます。
第二エピソードは淡々と入り、一回目のピークはテンポを速めながら大きく鳴らして心の叫びの様にこのパートを作り上げます。上手い構成に思えます。もちろん後半からのターン音型からは鎮めてスローに浮遊感を奏で、緩やかにersterbendします。
音厚が高い流れが作るちょっと感激的な最終楽章になりました。


大きく構えた流れが印象的なマーラー9です。楽章毎に構成感あってハイコントラスト/ハイテンション、見晴らしの良さも抜群です。

ここでも中間楽章が素晴らしく、この曲の名演奏の条件を満たします。もちろん大きくオススメです





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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ダニエル・ハーディング指揮/ヴェルビエ祝祭管弦楽団「マーラー 交響曲 第9番」


Mahler Symphony No. 9
Verbier Festival Orchestra / Daniel Harding: cond.
少々古い2017年7月24日のヴェルビエ音楽祭(スイス🇨🇭)でのマーラー9が登場です。当時その録音がフリーで配信されていました。多分それが配信専用でリリースされたのではないかと思われます。

この一年前にハーディングは手兵のスウェーデン放送響とのマーラー9をセッションで残しています。
そのLIVEヴァージョンかと期待して聴いた覚えがあります。実は落とし穴が隠れていたのですが…





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第一楽章
第一主題は弦楽に緩い揺さぶりを入れ、第二主題は約束通りに暗転させ、第三主題もしっかりと鳴らします。教科書的提示部です。展開部前半の"暗-明-烈"のコントラストはピークの激しさを強く、その後のピークも激しさを見せて来ます。個性は薄めですが強音パートを利かせる第一楽章です。


第二楽章
主部主題は不点音符の刻みを強く表現、鳴りの太い流れキープして第一トリオも弾ける様なリズムで、第二トリオもシンプルですが太いです。主題回帰のピークでは揺さぶりを入れてから慌ただしく。
落ち着きが無く全体的に太いレントラー楽章になりました。


第三楽章
主部主題は多声的流れでテンポを上げて力感程々に、第一トリオは肩の力を抜いて、第二トリオも変化率は低めです。ターン音型も太くて最終楽章をイメージさせてくれません。ラストはテンポを上げて激しくストレット、このパターンが得意の様です。
一本調子で駆け抜ける第三楽章です。ラストは上手くまとまりました。


第四楽章
主部主題は太く濃い弦楽奏、あまり聴かない暑苦しさです。第一エピソードも低弦を響せて低重心で流れはやはり太く、哀愁感は行方不明。第二エピソードも繊細さは低く淡々と進みピークは気持ち良く鳴らし上げます。一回目のピークで終わりにしたら楽曲成立した感じですw
コーダにかけてのターン音型も鳴りがあって未練たらたら、これでは "ersterbend" できません。



太い鳴り一気通貫の珍しいマーラー9です。アゴーギクとディナーミクを生かして機微を聴かせるなんて面倒な事はしません。

緩徐性の低いマーラー9もあるのかもしれませんが、それを成立させるのは難しいでしょうねェ。
ヴェルビエ祝祭管はユース・オケでした。それを考慮すると妥当にまとめるよりもこっち方向を選んだ?!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





「マーラー 交響曲 第6番」サイモン・ラトル指揮/バイエルン放送交響楽団


Mahler Symphony No. 6
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
Simon Rattle: cond.
ラトルがバイエルン放送響の主席指揮者就任の月の演奏(2023年9月28,29日)がCDリリースされました。
(BPO客演初登場と主席指揮者退任時もこの曲で、CD化されています)

実はこのコンサートはその翌週に配信で聴いてインプレを残しています。CD化に当たってはミキシング/マスタリングは見直しているでしょうから、完成度は上がっているかと。




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1. 第一楽章
第一主題は落ち着いて、鎮めたパッセージをスローにアゴーギク、アルマの主題は華やかさを上品に広げます。展開部の両主題のコントラストも姿勢正しくコントロール、再現部からしっかり主題強調ですがそれを超えるものは見せません。コーダのフィニッシュは力がこもりました。
気持ちを抑えた真面目な第一楽章です。


2. 第二楽章
アンダンテです。主部主題は仄かにアゴーギクを効かせますが気持ちは抑えて、第一トリオも哀愁を淡々と、山場もディナーミクのコントロールは強めです。中間部(第二トリオ)も日差しは明るいのですが控え目、最後の第一トリオ回帰の山場は哀愁を広げますが何処か客観的です。
やや速めで哀愁度合いを下げた緩徐楽章です。


3. 第三楽章
主部主題は速めでクールにまとめ、トリオもスローに入って淡々と穏やかな対比、木管動機も流れの延長上に作られます。各回帰は揺さぶりを入れて音作りを上げますが、全体印象は気持ちを抑えたスケルツォ楽章です。


4. 第四楽章
序奏はトゥッティの鳴りからメリハリで表情濃く、アレグロ・エネルジコから一気に第一主題へ雪崩れ込みハイテンポ勇壮さはキレキレです。パッセージはクールに落ち着かせてから力感をアップ、そこへ第二主題が軽妙そのものに現れてハイテンポキープで良い流れを作ります。上手いです。
展開部の第二主題は少しテンポアップして派手に大きく、スローにタメてからの行進曲はビシッと低重心の切れ味を見せつけます。アゴーギクとディナーミクが見事です。
再現部も待ち構える第一楽章を華々しく鳴らし、一気に紀行に飛び込みます。ハイテンポでキレキレの流れからアゴーギクを効かせて突撃です。
パワーと切れ味を見せつつもクールにまとめた最終楽章です。



クールに計算された最終楽章集中型のマーラー6です。心地良い切れ味の第四楽章は見晴らし良く。一二三楽章も後半・ラストは気持ちを入れているのがわかり、この構成を作り込んでいる事が明瞭です。

最後まで乱暴さや狂気, 過度の興奮は避けた一体感を崩さない高完成度です。そのクールさがこの演奏の強みであり、もしかしたら弱みでもあるのかもしれません。



ラトルのマーラー6既出3CDのインプレは"マーラー6聴き比べ"のラトルのパートをご覧下さい。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





オスモ・ヴァンスカ指揮/ミネソタ管弦楽団 の「マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"」


Mahler Symphony No. 8 'Symphony of a thousand'
(Minnesota Orchestra, Osmo Vänskä: cond.)
ヴァンスカ/ミネソタ管のマーラーチクルスからマーラー8です。ベースは2022-6/10-12のLiveですが、三日間(6/14-16)かけてセッション追補して完成させている様です。
実は追補の無い2022-6/10, 11のLIVE(映像付き, ミネソタ管オフィシャルサイト)を以前インプレ済みです。ミキシングやマスタリングも異なりますのでその違いも感じられます。

ソリストが一人足りません。sop1がsop3を兼ねています。その問題もそこに記してあります。

【ソリスト女性陣】キャロリン・サンプソン(Carolyn Sampson, sop1, 3), ジャクリン・ワーグナー(Jacquelyn Wagner, sop2), サーシャ・クック(Sasha Cooke, alt1), ジェス・ダンディ(Jess Dandy, alt2)
【ソリスト男性陣】バリー・バンクス(Barry Banks, ten), ユリアン・オルリスハウゼン(Julian Orlishausen, bar), クリスティアン・イムラー(Christian Immler, bas)





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第一部 『来たれ、創造主たる精霊よ』
提示部:タイトルの第一主題は歌詞通りの激しさでオケが強め、第二主題のsop1は落ち着いて伸びやかにコントラストを作り、続く込み入った重唱も抑え気味の流れ中にソリストが切れ味良く。
展開部:入りの管弦楽奏はリズム強調、再び重唱になると男性陣が力感を込めて、でもここでもややテンポを緩めて落ち着いた重唱に構成します。そして第一主題変奏の合唱では激しく速く、強いコントラストを作ります。
コーダは少年合唱団が神聖に出ますが直ぐに重唱陣と合唱が力感でフィナーレへ雪崩れ込みます。
「合唱は激しく速く、重唱はスローに落ち着いて」のコントラストをはっきりさせた第一部ですが、ソリストが光らないのは少々辛いかも。



第二部 『"ファウスト"から最終場』
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
主題をスロー強調で入り静的に山峡の地を表現して、山場を広げて対比を作っています。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
「合唱とこだま」は静スローで長く感じ、「法悦の神父」はbarよりもオケが揺さぶるのが気になります。「瞑想の神父」でも結構オケが鳴らします。ソリスト二人は隠者と言うよりも力漲る神父ですw

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
明るく軽く速めの児童合唱団に続いて、「成熟した天使たち」ではアルト(alt1)がトーンを落として永遠の愛によるファウストの魂の救済を願います。オケも引き気味に歌詞にフィットしていますね。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールが合唱に負け気味に入るのはいけません。いきなりハイトーンのテノールが前面に出るのが必須です。おまけにスロー強調になって前に出て来ません。

「かつてのグレートヒェンの告白」(sop2)は澄んだ歌声でマリアに祈りますが、「罪深き女」(sop1) 「サマリアの女」(alt1) 「エジプトのマリア」(alt2) の懺悔三人は対比が弱めです。スローテンポで変化が薄いのでそう感じるのかも。

「懺悔する女 (グレートヒェン)」は控え目に伸びやかに慈悲を歌いフィット、「栄光の聖母」はスローを生かして優しく包み込む繊細さでした。ここは良かったですね。
「マリア崇拝の博士」は喜びをスローに気持ちを込めますが落ち着き過ぎ、好みはもっと突き抜けるハイトーンです。

【5. コーダ:神秘の合唱】
「神秘の合唱」が静に広がる霧や霞みの様に流れ込み、ソリストがそれに沿う様に入り山場へ向かいます。スローの溜めを作って、ラストはもちろん壮大雄大で締め括りますが溢れる出る感情はありません



興奮や激しさを抑えたマーラー8でしょうか。静スロー烈ファストの基本的構成ですが軸足はスローで、アゴーギクやディナーミクの揺さぶりは薄いです。

スローがやや間延び感に繋がってしまったのは残念。特に歌唱パートはスロー過多で、気持ちの伝わりが弱まっている感じがしてしまいます。
グレートヒェンとマリアのシーンはフィットしていましたが。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ウラディーミル・ユロフスキ/ LPO の「マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"」


Mahler Symphony No. 8 "Symphony of a thousand"
(London Philharmonic Orchestra, Vladimir Yurovsky: cond.)
ロンドンフィルハーモニー管弦楽団(LPO)の主席指揮者(2007-21)時代のユロフスキのマーラー8。ロイヤル・フェルティバルホール(2017年4月8日)でのライヴです。

【ソリスト女性陣】ジュディス・ハワース(Judith Howarth, sop1)、アンネ・シュヴァーネヴィルムス(Anne Schwanewilms, sop2)、ソフィア・フォミナ(Sofia Fomina, sop3)、ミヒャエラ・ゼリンガー(Michaela Selinger, alt1)、パトリシア・バードン(Patricia Bardon, alt2)
【ソリスト男性陣】バリー・バンクス(Barry Banks, ten)、ステファン・ガッド(Stephen Gadd, bar)、マシュー・ローズ(Matthew Rose, bas)





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第一部 『来たれ、創造主たる精霊よ』
提示部:第一主題(第一部のタイトル)は派手やかなオケと合唱団のコラボ、第二主題のソプラノは落ち着き伸びやかに、アルトと絡むとそこからの各ソリストの重唱は落ち着きつつも伸びやかな歌声を対峙させます。オケの半歩引いた良いスタンスもgoodです。
展開部:入りの管弦楽奏は抑えつつも弾んだ様子を強めに、続く重唱は男性陣が力強さをみせ、女性陣が加わると興奮や力感を避けながら対位的で見事な絡みを聴かせます。第一主題変奏の合唱は一転して激しく力感重視のコントラスト、"ソロは落ち着きで、合唱は派手に"そんなコンセプトが明瞭に作られます。
再現部:流れは延長線で、コーダは少年合唱団からソリストと合唱団が入り乱れ歓喜の渦を作り上げて締め括ります
何とここで大アプローズ!! それも納得の見事さです。



第二部 『"ファウスト"から最終場』
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
印象的なピチカートの主題を淡々と、続いて管弦が穏やかに続けて澄んだ空気と山峡の静けさを表現し後半は緊迫を作り情景に厳しさを与えます。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
「合唱とこだま」は序奏のピチカートをトレースする様に慎重に山の自然を歌い、「法悦の神父」は伸びやかなバリトンで'永遠の愛'を力強く、「瞑想の神父」も気持ち漲るバスで'全能の愛'を力説します。

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
一転して「天使の合唱」と「祝福された少年たち」は澄んだ声の歓喜でファウストの魂を出迎えます。
「成熟した天使たち」ではvnのソロとアルト(alto1)が、永遠の愛が魂の束縛を解放する事を切々と歌い、「未熟な天使たち」がその願いを「祝福された少年たち」に伝えます。ストーリーを表現する上手い構成感です。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールは約束通りに天に突き抜ける様なハイトーンのテノールで登場し聖母を讃えると、「かつてのグレートヒェンの告白」ではsop2が澄んだ音色のオケとhpに合わせて歌う美しさ際立つパートになりました。

「罪深き女」(sop1), 「サマリアの女」(alt1), 「エジプトのマリア」(alt2)はややスローの中にそれぞれ気持ちが入った歌声で緊張感を作り聴き応え十分!! ともすると力みがちになる"贖罪の女三人の合唱"も説得力重視で見事です。

再登場のsop2「懺悔する女 (グレートヒェン)」は優しさのソプラノで場の流れを変え、ファウストの魂の救済を願います。
それに応える影の主役「栄光の聖母」(sop3)は極短いながら、天の声らしい高みを柔らかく表現。「マリア崇拝の博士」が喜びを満面に歌い上げ、オケも合わせて広げると合唱がそこに加わり徐々に上げて行きエンディングへ向かう準備を整えます。

【5. コーダ:神秘の合唱】
「神秘の合唱」は静の中にスローに低く漂い決して慌てません。そしてソリストが浮かび上がる様に入るとゆっくりと上げて山場へ、ラスト3'はスローの中に喜びが溢れて歓喜が全体を包み込む素晴らしさ
勢いや激情ではない崇高な歓喜で、ちょっとグッと来てしまいました。お見事!!



喜びを讃え歓喜に溢れるマーラー8です。第一部は"Veni, creator spiritus!"の漲る感情が、第二部はファウストが天に昇る救済の切な祈りと喜びが、それぞれしっかりと伝わります。(特に二部の祈りを中心とした崇高さはあまり聴いた事がありません)

ソリスト全員の気持ちのこもった歌唱力と、感情的な第一部とやや控え目とさえ思われる第二部のオケ表現にLPOが見せた技量の結果でしょう。

マーラーが配置した感動的なストーリーを演奏と歌唱で描く素晴らしい一枚、オススメですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジモン・ガウデンツ(Simon Gaudenz)指揮/イェナ・フィル「マーラー 交響曲 第5番」の危険なアプローチ


COMPLETE SYMPHONIES
(Jenaer Philharmonie, Simon Gaudenz: cond.)
独イエナを拠点とするイェナ・フィルハーモニー管弦楽団とその音楽監督を務めるジモン・ガウデンツ(b. 1974)のマーラー5です。残念ながら両者知見がありません。

今回はマーラー5のみのインプレになりますが第4番とのカップリングで、両曲の前に現代音楽(A.L.Scartazzini)を前奏曲風に配置しています。実はそこに大問題を抱えている訳ですが。

またタイトルは "交響曲全集 Vol.1" (英: COMPLETE SYMPHONIES)とあってこれからマーラーチクルスを進める様です。





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1. 第一部
?…荘厳に鳴らすファンファーレから静スローに微細な揺さぶりの葬送、第一トリオは激しさは少し低めにスロー気味に、第二トリオも哀愁度は弱めです。
第二楽章第一主題は少し速めで力感を込め、第二主題は哀愁を強めにと一楽章トリオの再現化を避けた提示部です。展開部"烈-暗-明"コントラストは付けていますが、あまりに教科書的で逆に見晴らしはあまり良くありません。
保守的な第一部ですが聴き処(ポイント)を絞りづらい印象です。また何であれ冒頭の処理は話になりません。


2. 第二部
スケルツォ主題は優美な演舞曲風に少し鳴りを太めに、レントラー主題はテンポをキープしつつ軽妙洒脱さを強調します。約束通りですね。
第三主題主部の主役オブリガートhrは朗々と鳴らして弦楽と絡み、変奏パートもピチカートのテンポ変化を生かしています。短い展開部をアップテンポで締めくくるのもこれまた約束通り。コーダも含めて流れがほぼ予測通りにやって来る教科書の様なスケルツォ楽章になっています。


3. 第三部
第四楽章主部は静美でやや速めですがハープの音色が強いですね。強音パートは厚く、中間部は繊細さを、とクールと甘美の両者をみせるアダージェットです。
第五楽章第一主題は少しテンポを抑え気味に鳴りを良く、第二主題でテンポを戻し、コデッタ主題は優美さです。展開部は徐々に上げるのではなく強く入って落ち着かせて最後を締めるパターン、再現部山場からコーダはテンポと力感を徐々に上げて大きく鳴らし、フィニッシュはアッチェレランド利かせて走り抜けます。約束通り仕様ですねw



標準仕様のマーラー5で '吊るしのスーツ' みたいな印象かもしれません。誰でも安心で失敗なし、でも何処かにちょっとしたお洒落さや遊び心が欲しいと言った感じでしょうか。

ただとんでもない問題が一つあって、第一楽章冒頭に前曲のフェードアウトが残されて被っています。チャレンジャブルなタクトは歓迎ですが、あくまでこの曲の中でお願いしたいです。(第四-第五楽章アタッカのパロディだとしてもNGですね)




テーマ : クラシック
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