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2019年9月6日 クリスティアン・バスケス指揮 トゥルク・フィルハーモニー の『マーラー 交響曲 第5番』 «ネット配信»


クリスティアン・バスケス 指揮
トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
ベネズエラの"エル・システマ"出身、注目の若手指揮者バスケス(Christian Vasquez, 35歳)が フィンランドのトゥルク・フィル(Turku Philharmonic Orchestra)を振ったマーラー5です。ちなみにトゥルク・フィルの現首席指揮者は北欧の怪人レイフ・セイゲルスタムですね。
同オケのオフィシャル・ウェブサイト"TFO Live"からの映像付き配信です。

▶️ こちら (賞味期限は短いでしょうから、お早めに)




マーラー 交響曲 第5番
(6.sep.2019 at Turku Concert Hall)

20190906ChristianVasquez_tpo-mahler5.jpg


第一部
葬送行進曲は落ち着いていますね。殊更な重厚はなく悠々としています。第一トリオでも適度な緊張に刺激のスパイスを入れてきますね。第二トリオは静的で哀愁の良い流れで、構成上も上手い感じです。第二楽章第一主題も切れ味良くシャープで、第二主題(一楽章二トリオ)もコントラストの良い哀愁感です。展開部は両主題、vcのスローパート、共にバランス良く表情作りされていますね再現部もクセのない堂々とした流れで続きます。落ち着きがあって姿勢の良い第一部です。

第二部
この楽章を代表するスケルツォ主題は優雅に、レントラー主題は緩やかに美しく、両者王道です。第三主題はオブリガートホルンも活躍して流れに締まりを付けています。vaのピチカート第一音が外しますがw 展開部から再現部で少々演奏が落ち着かなくなるのが残念です。

第三部
スロー静美なアダージェットで、最近はこの傾向が多いでしょうね。第五楽章提示部の第一・第二主題の絡みは締まりがありますね。コデッタでもその流れを継続します。展開部はややバランスを崩す事もありますが、山場は大きく作ります。再現部も似た流れですが、山場からラストは抑えたテンポ、そこからアッチェレランドです。この楽章後半に締まりが薄いのは残念です。
オーディエンスの反応はボチボチ、ブラボーは飛びませんね。


クセはないのですが、やや締まりに欠けるマーラー5です。トゥルク・フィルも頑張っていますが、第三楽章の間延び感や第五楽章のバランス崩れは残念です。興奮も避けていて、無個性的な印象に埋没しそうです。

隙のないくらい徹底的に仕上げるか、個性のスパイスを振るか、どちらかが欲しかった気がします。



CDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





大野和士 / バルセロナ交響楽団 の「マーラー 交響曲 第5番」は…… 都響で聴きたいかも、ですね


大野和士 Kazushi Ono
Barcelona Symphony and Catalonia National Orchestra
2018-sept. rec.
大野さんが得意としそうなイメージですが、何故かあまりピンときませんね。録音は1996年に常任指揮者時代のザグレブ・フィルと残している様ですが。今回のリリースは2015年から音楽監督を務めるカタルーニャ国立バルセロナ響を振ったマーラー5です。(都響の音楽監督も同年からですね)
同楽団は二代前に大植英次さんが音楽監督(2006-2010)を務めていました。

マーラー 第5番 名盤珍盤 175CD 聴き比べ」にも追記予定です。






第一部
葬送行進曲は抑えを効かせて進み緩いアゴーギクで揺さぶりファンファーレを鳴らします。第一トリオの入りは不思議なリズム感を感じます。第二トリオでは繊細な哀愁からピークを奏でます。でも何かスッキリしません。
第二楽章第一主題は激しさそこそこ、第二主題で哀愁に落とします。展開部の第一主題や第二主題vcもどこか抜けの悪さがあります。再現部もテンポ設定にもっさり感がありますね。今ひとつスカッとしない第一部です。


第二部
スケルツォ主題はhrをメインに演奏の揃いが今ひとつに感じます。レントラー主題は弦楽器主体パートは普通ですが。続く主題変奏から第三主題も流れにまとまりが感じられません。展開部・再現部も同じですね。コーダも〆のhrが…


第三部
緩やかな暖色系の流れから山場も適度に、中間部は透明感ある流れを作ります。やや間延び感はありますが、クールで澄んだアダージェットですね。最終楽章、絡む第一・第二の二つの流れが落ち着きません。展開部から再現部も同様ですが山場は高らかに鳴らし挽回、コーダも大野さん好みに炸裂してアッチェレランドで駆け抜けました。最後の帳尻合わせは見事でした!



ラストは見事、でも演奏の見晴らしの良くないマーラー5です。流れにスカッとした抜けの良さがありません。指揮者のタクトにオケはいっぱいいっぱいの感じでした。ラストを上手く締めて印象挽回ですが。

こうなると、マーラーを得意とする都響との5番を大野さんに期待せずに要られませんね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 70CDを聴き比べてみました [#4 / CD:61-70]

今年(2019年)逝去したギーレン追悼アルバムが出たのを機に、大植さんとボンガルツの超個性派2CDも含めて10CDほど聴いてみました。これで70CDになりますね。まだまだストックが…


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在 #4回 70CD
 #0:4CD バルビローリ聴き比べ
バルビローリ[x4]
 #1:16CD
バーンスタイン[x2 ★☆], アバド[x4 ★☆], カラヤン[x2 (★)☆], ハイティンク[x2 ★], ゲルギエフ, 小澤征爾, 井上道義[x2 ☆], プレートル[㊟], ワールト
 #2:20CD
ヴァンスカ, ダーリントン[☆], ラトル[x2 ☆], P.ヤルヴィ[☆], N.ヤルヴィ[x2 ㊟], ジークハルト, セーゲルスタム, パッパーノ, ザンダー, ショルティ[☆], ヴィト, シェルヘン[㊟], ズヴェーデン, ノット[☆], J.サイモン, アブラヴァネル, パク・ヨンミン
 #3:20CD
テンシュテット[x4 ☆], シャイー[x2], ヤンソンス[x2], MTトーマス, ハーディング, 朝比奈隆[x2 ㊟], スヴェトラーノフ[x2 ㊟], セル[x2], バルシャイ, 井上喜惟, 山田和樹, クルレンツィス[★]
 #4:10CD 本投稿
ギーレン[x3 ☆], シノーポリ, メータ, サロネン[☆], サラステ, ヤング, 大植英次[㊟], ボンガルツ[㊟]


ミヒャエル・ギーレン, Michael Gielen (4録音 3CD)

本年3月8日に亡くなった 緩急が個性的な人気指揮者ギーレン。今回追悼アルバム "In memoriam" が発売され、1971年と2013年の録音が収録されましたね。既発の2CDと合わせて4録音(3CD)を聴いてみようと思います。

特徴的なのは第二楽章をスケルツォからアンダンテへ入替(2013年)、そして演奏時間の長大化という明確な変化ですね。

ちなみに2013年録音は、最遅と言われたシノーポリ(約93')より更に遅いです。また第二楽章を途中で入替えて録音を残しているのは他にもアバドやバルビローリがいますね。

[演奏時間]    [一楽章] [二楽章] [三楽章] [四楽章] [トータル]
(#1)1971年 21'04" - 12'02" - 13'15" - 27'36"  約 74'
(#2)1984年 23'04" - 13'24" - 13'03" - 29'30"  約 79'
(#3)1999年 24'54" - 14'31" - 14'46" - 30'40"  約 85'
(#4)2013年 27'45" - 16'09" - 15'31" - 34'40"  約 94'

注:第二楽章はスケルツォです。2013年録音は第二楽章(アダージョ)と第三楽章(スケルツォ)の時間を入れ替えています。



(#1)
Southwest German Radio Symphony Orchestra
[SWR Classic] 1971-3/12-14


首席指揮者(1986-1999)就任の15年前、44歳のギーレンが南西ドイツ放送交響楽団(現:バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団)を振ったマーラー6ですね。今回発売になった一番古い録音です。

第一楽章
速め切れ味の第一主題は緊迫感漲りますね。パッセージも速めでアルマの主題もアゴーギクはありますが速いです。展開部は第一主題は強烈に、挿入部ではスローで長閑さを付けて コントラストを上手く見せています。再現部の第一主題は一層の迫力快走で走り抜け第二主題は緩やかに、コーダはディナーミクによるメリハリを付けて〆ます。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章同様締まりが強く、延長線上イメージです。もちろん速さの流れで、トリオでアゴーギクを効かせたスローでコントラストを付けるギーレンらしい構成ですね。最後の主題回帰は狂気を感じる様な切れ味です。
第三楽章
主要主題は穏やかに流れよく、副主題(第一トリオ)は少しスロー化して哀愁を見せますね。中間部(第二トリオ)は広がりを大きく鳴らし平穏な印象を着けてきますね。全体としてギーレンとしては揺さぶりのない淡白な緩徐楽章になっています。ラスト前の山場は強烈に盛上げますが。
第四楽章
渦巻く長い序奏は明瞭さを感じます。提示部第一主題は切れ味良い流れを上手く作ります。テンポ設定はやや速いですが標準的ですね。パッセージも切れ味の良さで、第二主題を軽快に作ります。締まり良い提示部です。展開部はディナーミクを効かせて派手気味にメリハリを作ります。この辺りは作り込まれたスタジオ録音を感じますね。アゴーギクも振った速い再現部も同様で見事に "聴かせる" 構成を感じます。その見事さに少々腰が引けますがw


快速切れ味のマーラー6ですね。緩徐パートのアゴーギク&スロー対比、ビシッと締まりのある流れ、ギーレンらしい印象の演奏かもしれませんね。アンダンテは山場以外今ひとつの感ですが。

途中カットもある様なこの年代のマーラーとして完成度は高いのではないでしょうか。デジタル・マスタリングで音も悪くありませんね。





(#2)
Radio Symphonie Orchester Berlin
[Altus] 1984-9/5,6


ベルリン放送交響楽団(現:ベルリン・ドイツ交響楽団, DSO)を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
やや速め力感の第一主題は、アゴーギクで緩やかな揺さぶりを感じますね。パッセージは標準的に落ち着けて、アルマの主題を情感豊かに奏でます。展開部は挿入部を鎮めますが、提示部同様に王道的な流れになっていますね。再現部も同じ印象を受けます。テンポ設定は気持ち速め、流れはギーレンらしい微妙なアゴーギクと厳しい切れ味を感じます。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は少しスローに入り第一楽章との類似性を抑えた感じです。(第一楽章ラストをテンポアップしています) トリオはややテンポを落として優美です。ここでもビシッとしたコントラストが見事です。
第三楽章
主要主題はやや速めで弱いディナーミク、副主題は哀愁の音色を木管に与えます。中間部は自然な流れから広がりを見せ、ラスト前の山場は激情的です。全体濃いめの色付けを感じますね。
第四楽章
アゴーギクでタメを作る序奏からアレグロ・エネルジコ、提示部第一主題は鳴り良く走ります。パッセージもシャープに続き、第二主題で見事に軽快感を見せますね。その後はアゴーギクでコントラストを着けて展開部に入ります。主題の入替をギーレンらしいアゴーギクとディナーミクで怒涛のパワープレイ、そのまま再現部になだれ込みコーダへと突き進みます。聴き疲れするほどの力感ですね。


気持ち速めの濃厚なマーラー6ですね。もちろんギーレンですから隙は無く、得意のアゴーギクにパワーと切れ味があります。聴き応えは十分。1971年よりも主流派的に感じますね。堂々濃厚なマーラー6を聴きたい貴方にオススメです。

それなのになぜかを付けられないのは、Liveなのに出来過ぎ感という贅沢なイメージからか、全体濃い味一本だからでしょうか。見事なのですが…





(#3)
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
[Hanssler Classics] 1999-9/7-10


ギーレンが首席指揮者(1986-1999)として最後の年に録音したバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団とのマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題はややスローの低重心で重厚、アルマの主題は華やかな鳴りの良さですね。より王道的になっている提示部です。展開部・再現部も落ち着いていて、安定的です。アゴーギクも目立ちません。はて?ギーレンかなという感じですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章の延長を感じるややスロー低重心で落ち着いています。トリオは落ち着いた中に静的優美さです。クセのない王道のスケルツォになっていますね。
第三楽章
アンダンテ主要主題は澄んで透明感があります。ギーレンでは無いような静美さです。副主題(第一トリオ)も美しい哀愁で彩られて、中間部(第二トリオ)も明確に明るい光が差し込みますね。美しい緩徐楽章になっています。
第四楽章
本来ドロドロとした序奏ですが、クドさを殺しています。提示部第一主題はシャープで、パッセージから第二主題も綺麗な流れで構成されています。展開部もコントラストのある主題の変奏ですが、クールな切れ味ですね。再現部は騎行から迫力が増しますが、ギーレンらしいアゴーギクの揺さぶりは弱いです。素晴らしいですが、何か一つ腑に落ちない感じがします。


落ち着き払った王道のマーラー6です。4録音の中では最もクセが無く安定的正攻法で、それを基準とするならば一番でしょう。初めて聴く方にも勿論オススメですね。出汁も素材も厳選した上品なお吸い物、みたいな。

個人的にはギーレンらしい濃い味噌汁が好きです、身体に悪そうですがw ギーレンでなければ ?!





(#4)

SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
[SWR Classic] 2013-8/21


ギーレンが首席指揮者退任14年後にバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団を指揮したマーラー6。今回発売、引退一年前86歳での録音です。ここで第二楽章をアンダンテにしています。

第一楽章
第一主題行進曲はグッとスローになりますがメリハリは良く付いて、パッセージは落ち着きを払っています。アルマの主題はスローの中にも緩やかながらアゴーギクを効かせます。提示部は"繰り返し"の方が気持ち速めに感じますね。展開部の挿入部は元々スローなので流石に極端には落としていませんが、その中に各楽器の音色を生かしているので空間を感じる流れです。再現部も鳴りの良さが朗々としていますね。
第二楽章
ここでアンダンテにして来ましたね。主要主題は緩やかに、副主題(第一トリオ)は哀愁感を強く感じます。中間部(第二トリオ)では伸びやかな広がりがあります。スローが生きた大きく美しい緩徐楽章になっていますね。
第三楽章
主要主題は大きなスローですが締まり良く、第一楽章の印象を残していますね。トリオはスロー穏やかに、落差はあまり付けませんが回帰するとアゴーギクを振って来ます。ギーレンらしさを感じる少ないパートかもしれません。
第四楽章
序奏は大きなスローベースの陰影付けです。提示部第一主題はスローで大きい流れを作り、パッセージも広がり良く、第二主題をその中に置く感じです。展開部も大きくスローで、このパートにありがちなせっかちな緊迫感・迫力と言った流れよりも、"大きな見晴らし"の様な印象を受けますね。行進曲もスロー低重心で悠然とした新しい世界です。再現部はやや旧来的な流れを取り戻してパワープレイ的な要素も見られます。コーダは大きなスローからの一撃で、ラストのピチカートも生きました。
オーディエンスは大ブラボー・大喝采です!!


大きなスローで通した、ゆったり泰然自若のマーラー6ですね。もちろん各パートには締まりもコントラストもありますが、細かな表情よりも広大・雄大な音の広がりを強く感じます。

ギーレンの新たな境地でしょうか、これは今までに聴いた経験のない新しいマーラー6を感じます




ジュゼッペ・シノーポリ, Giuseppe Sinopoli

The Philharmonia Orchestra
[DG] 1986-9


シノーポリが首席指揮者(1984-1994)時代のフィルハーモニア管を振ったマーラー6ですね。上記ギーレンの2013年録音が出るまで、世界最遅演奏だったと思います。(全楽章が遅いわけでは無く、アンダンテが異常にスローなのですが…)

[演奏時間]       [一楽章] [スケルツォ] [アンダンテ] [四楽章] [トータル]
(シノーポリ)1986年 25'09" - 13'39" - 19'53" - 34'32"  約 93'
(ギーレン) 2013年 27'45" - 16'09" - 15'31" - 34'40"  約 94'

ちなみにシノーポリはシュトゥットガルト放送響(1985年)との録音も残していますが、それは然程遅くありませんね。


第一楽章
勇壮な第一主題行進曲からパッセージで一息ついて、アルマの主題を大きく奏でるといった教科書的な提示部です。再現部第一主題も適度に激しく、挿入部もほどほどにテンポダウン。中盤以降奇妙な揺さぶりを散見しますが、全体が平均的印象を超えませんね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章の延長性を強く感じます。やや速めでしょうか。トリオも標準的に優美です。ここでも多少のテンポの揺さぶりを感じますね。
第三楽章
問題のアンダンテです。主要主題は緩く甘美で"間"をとって揺さぶりながらスローに進みます。副主題(第一トリオ)も同じスローの揺さぶりで哀愁は弱めです。中間部(第二トリオ)での変化を感じないほどモワ〜ッと全体スローです。変な事は確かですが緩徐楽章ならこれもアリ的な感じ、ただこの楽章だけどうして?!という違和感は残りますね。他の楽章に個性的な味付けはありませんから。
とは言え、いつまでたっても終わらないスローが凄いです! (普通なら終わるあたりから、更に5'くらいありますからねェ)
第四楽章
アンダンテの後で集中力も切れますが、流れはディナーミクでのメリハリです。序奏アレグロ・エネルジコから第一主題を力感よく走らせて、第二主題を極端にスロー化するという変則があります。全楽章にこの手の特異性を通せれば面白かったでしょうね。展開部・再現部にもテンポの揺さぶりがあり興味深いですが、"時すでに遅し" です。


アンダンテだけが極端にスローの変則マーラー6ですね。他の楽章はテンポ変化の揺さぶりくらいなので残念です。全楽章を通して何らか意図のある特異性を持ち込んでいたらまた楽しみが違ったかもしれませんね。(それでも34'overの最終楽章は少し変わっていますから、特に前半二つの楽章ですね)

変則は嫌いじゃありませんが、中途半端出し惜しみ は着いて行くのが厳しいです。(汗)




ズービン・メータ, Zubin Mehta

Israel Philharmonic Orchestra
[Apex] 1995-7


インド出身の指揮者メータが長く音楽監督を務める(本年2019年で退任です)イスラエル・フィルを振ったマーラー6ですね。メータの6番はもう一枚、非正規盤ですがVPOとの録音があります。

第一楽章
第一主題はかなり速いです。静音化するパッセージも速く、アルマの主題では速度を落として優美のコントラストを付けますが直ぐに速い流れに戻してきますね。展開部第一主題は少し混乱気味に、挿入部は基本に立ち返りスロー美を奏でます。再現部は提示部より一層速く慌ただしいですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はそれほど速めていません。第一楽章との類似性を避けているのでしょうか。トリオ(中間部)はスロー静な穏やかさで、全体の流れは標準的になっていますね。
第三楽章
アンダンテの主要主題は抑えて優美、副主題(第一トリオ)も静的な陰ある哀愁です。中間部(第二トリオ)は程よく明るさを見せて、ここでも標準的な流れを作っていますね。
第四楽章
序奏は抑え気味、提示部第一主題でパワフルに驀進します。パッセージからも締まり良く、第二主題で軽妙さに転じます。展開部第二主題回帰の山場を大きく盛上げ、コラールを派手に第一主題変奏の行進曲を軽快に走らせます。再現部第一主題回帰は迫力があり、騎行では締まりある流れを作ります。若干の強弱はありますが標準的印象でしょう。


速く慌ただしい第一楽章の後は標準的な流れのマーラー6です。標準的な三つの楽章も多少の色付けはあるもののやや面白みに欠ける感がありますね。いっその事、もっと荒れて驀進した方が面白かった気がします。




エサ=ペッカ・サロネン, Esa-Pekka Salonen


Philharmonia Orchestra
[Signum] 2009-5/28


サロネンが2008年から首席指揮者を務めるフィルハーモニア管弦楽団を振ったマーラー6ですね。2017年5月18日にこのセットで素晴らしい来日公演 "悲劇的" がありましたね。

第一楽章
第一主題、王道ですが管楽器に少し不安を感じますね。第二主題は微妙にアゴーギクを入れて流れを優美に変えます。展開部では第一主題を高らかに、挿入部を穏やか長閑に奏します。ここでも間延びを避ける様に緩いアゴーギクを振っていますね。再現部は二つの主題を色濃く、コーダの主役第二主題もメリハリを付けています。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はややテンポを落として第一楽章の類型化を逃れています。激しさよりも落ち着きですね。第二主題はスローに落としてここでも落ち着いた流れをキープします。変拍子を殊更に印象付ける事はありません。(全体にアゴーギクを使っているからそう感じるのかも)
第三楽章
主要主題はやや速めで静的に入り、第一トリオも同じ流れで極端に情感を濃くする事はありません。ここでもクールです。中間部は明るく鳴らし、後半の山場は大きく奏でます。
第四楽章
序奏は揺さぶりは弱く主にコントラスト付け、アレグロ・エネルジコからの提示部第一主題は鳴り良く走らせます。パッセージのHrも朗々と響き、第二主題は軽快です。展開部はアゴーギクで緩急を付けて、込み入った構成を明確にしました。交響曲2番引用の行進曲は速めに振って見事に決まりましたね。再現部も第一主題回帰後山場から騎行が同様に走って素晴らしいです。


スパイスを上手く効かせたクールなマーラー6です。適度で絶妙なアゴーギクによる色付けで、通して心地良さがありコントラストも明確です。

この曲は熱烈爆走的演奏が一つのパターンですが、サロネンは全体の流れをスッキリとさせて、その対極にある演奏です。整理されすぎという意見も有りそうですが、好みでオススメですね。




ユッカ=ペッカ・サラステ, Jukka-Pekka Saraste

Oslo Philharmonic Orchestra
[Simax] 2010-3/10-12


オスロ・フィルハーモニー管弦楽団のマーラーチクルスの一環で、音楽監督だったサラステが振ったマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題は約束通りの勇壮さ、パッセージを緩やかにアルマの主題の伸びやかな美しさに繋げます。堂々ですが、処々微妙なアゴーギクを感じますね。展開部・再現部もクセのない流れを作っています。ラストの締まりはいいですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章回帰的ですがクールな印象もあり切れ味がありますね。トリオ(中間部)は約束通りにスロー&穏やかさのメヌエットの印象です。後半速めのアゴーギクは少し気にはなりますが、見晴らしの良い楽章になっています。
第三楽章
アンダンテですね。主要主題は美しく優しく、第一トリオ(副主題)はテンポを落とさずに哀愁を奏でます。流れの基本は少し速めに感じますね。第二トリオ(中間部)はスローにして広がりを聴かせてくれます。後半の第一トリオ回帰は大きな波の山場を作ります。
第四楽章
序奏は各主題をスローに鳴り良くコントラスト良く、提示部第一主題は刺激を付けて行進します。パッセージから第一主題の絡むパートを落ち着いて奏でると、第二主題はテンポを維持したまま穏やかに現れますね。展開部第一主題前のvcは厳しく切れ味ある流れを誘導し、回帰する第二主題の山場へ。その後もアゴーギクとディナーミクを共鳴させて、この曲らしいコントラストの強い締まった流れです。最後はコーダでは三発目のハンマーが登場します。


基本速め印象ですが、堂々としたマーラー6です。王道に速めのアゴーギクを振った感じでしょうか。その微妙な立ち位置をどう感じるかで評価が分かれるかもしれませんね。

ハンマー三発という珍しさ、演奏も録音もよく、広がりがあるので気持ちよく聴きたい方にオススメですね。




シモーネ・ヤング, Simone Young

Hamburg Philharmonic Orchestra
[Oehms Classics] 2007-4/22,23


日本でもおなじみのオーストラリア人女性指揮者S.ヤングはコンロンやバレンボイムに師事しています。ドイツを中心に活躍していて、音楽監督を務めた時代のハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題は勇壮に、木管の経過句を緩やかに落としてアルマの主題の優美さと繋がりを良く作っていますね。展開部は主題の絡みの後の挿入部にやや間延び感がありますが安定して、再現部では両主題の締まりが増してコーダはメリハリが強いです。
第二楽章
アンダンテです。主要主題は穏やかに、イングリッシュホルンが動機を示す副主題(第一トリオ)は哀愁を高めます。中間部(第二トリオ)は大きな長調的広がりを見せますが、以降は山場を除くと少し緩いでしょうか。
第三楽章
スケルツォですね。主要主題は第一楽章の印象を持って進み、トリオではテンポを落として変拍子の表情変化を生かしています。
第四楽章
象徴的な長い序奏は極端な陰影や表情付けはありません。提示部第一主題は軽快に鳴らして経過句を締まり良く、第二主題でも流れを維持して心地よさがあります。問題の展開部はスコアの持つ出し入れの快感を伝えていますが、もう少し刺激のスパイスを加えたら素晴らしかったと思います。再現部は騎行ではテンポ変化を生かして流れに勇壮さをみせてくれます。(コーダではヤングの意図で3発目のハンマーが打たれます)


揺さぶりは無く安定指向のマーラー6です。心躍る様な冒険や楽しみはありませんが、王道的流れは大きく外しません。

アクセルコントロール(アゴーギク)は安全運転ですから、初めて聴くのにもおすすめですね。




大植英次, Eiji Oue


Osaka Philharmonic Orchestra
[fontec] 2005-3/20


齋藤秀雄→小澤征爾→L.バーンスタインに師事した人気指揮者の大植さんのマーラーと言うとどうしても第9番が浮かびますが、これは大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督時代のマーラー6ですね。

第一楽章
速い第一主題にまず驚きますね、大植さんですからw 経過句も速いですが抑えています。第二主題はテンポを標準的レベル(やや速い?)に落とし、揺さぶりは強いですが甘美を避けてスッキリとした流れです。展開部は第一主題をガツッと締め上げて、揺さぶってから第二主題に流れ挿入部へと。ここでもスローの中に微妙な揺さぶりで緊張感を与えていますね。その後はブレーキの様なアゴーギクを使って走り、爆裂から再現部へ。第一主題は荒れます、ここでも急ブレーキ的なアゴーギクですね。ちょっとシェルヘン先生を思わせる様な…
第二楽章
スケルツォですね。主要主題はやや抑え気味に入りますが、間を詰めた様な流れに緊迫感があります。トリオは極端にスローにして木管の動機まで引っ張ります。その後も揺さぶりは大きく、個性的ですね。
第三楽章
主要主題は細くスローで繊細に入って来ます。第一トリオは入りのイングリッシュホルンから流れは静美です。中間部(第二トリオ)で明るい日差しが差し込むと、回帰する主題で美しい哀愁に戻り、最後の第一トリオからは哀しみの山場を大きく作り上げます。揺さぶりを排して美しい緩徐楽章に仕立てていますね。
第四楽章
序奏の主題群はスロー構成で強烈な緊迫感を湛え、アレグロ・エネルジコから一気に加速して提示部第一主題を爆走します。経過句で落ち着かせると主題変奏と対位しながら盛り上げて行きます。そして第二主題で軽妙に落ち着かせると、テンポアップして展開部へ。第二主題を大きく広げて山場を作り、その後は切れ味良い流れから突撃、第二主題回帰で落ち着きし再び突撃とコントラストと見晴らしの良い展開部です。再現部も強烈にコントラストを着けて派手派手しく駆け抜けます。


強烈な揺さぶりでクセモノの一角をなす大植マーラー9ですね。急テンポからガクッと落としたスローの極端なコントラスト、もちろん暴れるパートは荒れます。H.シェルヘン、B.マデルナ、と言った方向性も感じる好きな一枚です。大フィルも好演ですね。普通の演奏じゃつまらない、と言う貴方に超オススメ盤であります!!

久しぶりに聴きましたが、安定志向の方には向かないでしょうねぇ。本来なら?、悩みどころですw




ハインツ・ボンガルツ, Heinz Bongartz


Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig (MDR Sinfonieorchester)
[Weitblick] 1969-6/30


プロイセン時代のドイツに生まれた指揮者ボンガルツ(1894-1978)ですね。ライプツィヒ放送交響楽団(現:MDR交響楽団)を振ったマーラー6です。

第一楽章
第一主題行進曲はとてもスローで重厚、彫りが深いです。経過句はスローながらクールに、アルマの主題は広がり大きく華やかです。珍しい提示部の反復無し! 展開部でも第一主題変奏はスローで重厚にして派手な鳴りですね。挿入部はもちろん静的なのですが、なぜか管楽器の響に煌びやかさを感じます。再現部もテンポを抑えて、コーダもスローな葬送から低重心を保ってフィニッシュします。スロー重厚で派手な鳴りがとても個性的です。
第二楽章
アンダンテですね。主要主題はややスローの優美さ、第一トリオ(副主題)は哀愁抑えめです。両主題の回帰で一部カットされている様ですね。中間部(第二トリオ)は明朗で明るい光です。山場は大きく哀愁を溢れる様に奏でてエンディングに向かいます。
第三楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章のパロディを避ける様にテンポアップです。とは言え標準的ですが、これなら第二楽章へ持ってきても良かった様な。ここでも華やかな鳴りを感じますね。(デジタル・マスタリングの影響かもしれません) トリオはテンポを落とさず、殊更に古典的にはしませんね。トリオの後の木管パートがカットされています。第二トリオとも言うべき重要パートですが…
第四楽章
個性を出しやすい序奏は陰影抑え気味、あえて個性を殺している感じさえします。しかし後半モットーからスローに転じて、提示部第一主題は 第一楽章を回想させるスロー重厚になります。パッセージもスローで、第二主題もスローの流れから逸脱しません。ここでも基本は大きな流れを作っています。展開部も行進曲も含めてスロー基本で鳴り良く、コントロールされて暴れる事はありません。再現部第一主題の再現は派手派手しいです。もちろんスローですが。コーダは元々スローなので違和感が少ないですが、ラスト一発の前の"間"が殆どありません。


提示部反復なしで中間楽章ではカットあり、第一第四楽章はスロー偏重という超個性的マーラー6です。でも流れは、大きな構えと鳴りの良さで悪くありません。シェルヘン先生と同じ様なカットはこの時代ならでは、と感じます。今では御目に掛かる事はまずありませんね。

年代の割に録音が良く、個性派を好まれる貴方にオススメの一枚です。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ミヒャエル・ギーレン追悼アルバム『In memoriam』マーラー 交響曲 第6番 1971年・2013年 2録音。演奏時間も印象も大きな違いを感じますね


In memoriam Michael Gielen
本年3月に亡くなった人気指揮者ギーレン(Michael Gielen, 1927/7/20 - 2019/3/8)。今回追悼アルバム "In memoriam" が発売され、1971年と2013年のマーラー6番が収録されましたね。ギーレンの既発の2CD(1984年・1999年)より前と後、2013年は引退一年前の録音です。

オケは名称が変わりましたが、両方とも同じ南西ドイツ放送交響楽団(現:バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団)です。ギーレンが首席指揮者(1986-1999)を務めたオケですが、両録音ともその時代ではありませんね。

特徴的なのは二つ。
 1) 後年の方が演奏時間が長大になっています
 2) 2013年録音は第二楽章アンダンテに変更しています
実は他2録音も含めて年代を追うごとに演奏時間は長くなり、第二楽章は最後(2013年)にアンダンテに変更しています。4録音全体のインプレは以下にアップしています。

▶️ マーラー交響曲第6番:70CD 聴き比べ






マーラー 交響曲 第6番


 



1971 3/12-14 at Hans-Rosbaud-Studio, Baden-Baden

第一楽章
速め切れ味の第一主題は緊迫感漲りますね。パッセージも速めでアルマの主題もアゴーギクはありますが速いです。展開部は第一主題は強烈に、挿入部ではスローで長閑さを付けて コントラストを上手く見せています。再現部の第一主題は一層の迫力快走で走り抜け第二主題は緩やかに、コーダはディナーミクによるメリハリを付けて〆ます。

第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章同様締まりが強く、延長線上イメージです。もちろん速さの流れで、トリオでアゴーギクを効かせたスローでコントラストを付けるギーレンらしい構成ですね。最後の主題回帰は狂気を感じる様な切れ味です。

第三楽章
主要主題は穏やかに流れよく、副主題(第一トリオ)は少しスロー化して哀愁を見せますね。中間部(第二トリオ)は広がりを大きく鳴らし平穏な印象を着けてきますね。全体としてギーレンとしては揺さぶりのない淡白な緩徐楽章になっています。ラスト前の山場は強烈に盛上げますが。

第四楽章
渦巻く長い序奏は明瞭さを感じます。提示部第一主題は切れ味良い流れを上手く作ります。テンポ設定はやや速いですが標準的ですね。パッセージも切れ味の良さで、第二主題を軽快に作ります。締まり良い提示部です。展開部はディナーミクを効かせて派手気味にメリハリを作ります。この辺りは作り込まれたスタジオ録音を感じますね。アゴーギクも振った速い再現部も同様で見事に "聴かせる" 構成を感じます。その見事さに少々腰が引けますがw


快速切れ味のマーラー6ですね。緩徐パートのアゴーギク&スロー対比、ビシッと締まりのある流れ、ギーレンらしい印象の演奏かもしれませんね。アンダンテは山場以外今ひとつの感ですが。

スタジオ録音で作り込まれていて、デジタル・マスタリングで音も悪くありませんね。この年代のマーラーとして完成度は高いのではないでしょうか。





2013 8/21 at Großes Festspielhaus, Salzburg [LIVE]

第一楽章
第一主題行進曲はグッとスローになりますがメリハリは良く付いて、パッセージは落ち着きを払っています。アルマの主題はスローの中にも緩やかながらアゴーギクを効かせます。提示部は"繰り返し"の方が気持ち速めに感じますね。展開部の挿入部は元々スローなので流石に極端には落としていませんが、その中に各楽器の音色を生かしているので空間を感じる流れです。再現部も鳴りの良さが朗々としていますね。

第二楽章
アンダンテですね。主要主題は緩やかに、副主題(第一トリオ)は哀愁感を強く感じます。中間部(第二トリオ)では伸びやかな広がりがあります。スローが生きた大きく美しい緩徐楽章になっていますね。

第三楽章
主要主題は大きなスローですが締まり良く、第一楽章の印象を残していますね。トリオはスロー穏やかに、落差はあまり付けませんが回帰するとアゴーギクを振って来ます。ギーレンらしさを感じる少ないパートかもしれません。

第四楽章
序奏は大きなスローベースの陰影付けです。提示部第一主題はスローで大きい流れを作り、パッセージも広がり良く、第二主題をその中に置く感じです。展開部も大きくスローで、このパートにありがちなせっかちな緊迫感・迫力と言った流れよりも、"大きな見晴らし"の様な印象を受けますね。行進曲もスロー低重心で悠然とした新しい世界です。再現部はやや旧来的な流れを取り戻してパワープレイ的な要素も見られます。コーダは大きなスローからの一撃で、ラストのピチカートも生きました。
オーディエンスは大ブラボー・大喝采です!!


大きなスローで通した、ゆったり泰然自若のマーラー6ですね。もちろん各パートには締まりもコントラストもありますが、細かな表情よりも広大・雄大な音の広がりを強く感じます。

これは今までに聴いた経験のない新しいマーラー6を感じます。




緊迫と切れ味の1971年から、大きく広がりの2013年へ。ギーレンの42年の変移は印象的ですね。大きく性格の異なるマーラー6で、個人的には構えの大きな2013に一票です

年代も大きく違う二つの録音ですが、マスタリングで音の違和感を上手く消していますね。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





近年最高のマーラー5では!! 2019年7月5日 ユッカ=ペッカ・サラステ / ケルンWDR交響楽団『マーラー 交響曲 第5番』 «ネット配信»


ユッカ=ペッカ・サラステ, Jukka-Pekka Saraste
(ケルンWDR交響楽団, WDR Sinfonieorchester Köln)
サラステが今シーズン(2018–2019)まで首席指揮者を務めるケルンWDR交響楽団(WDR Sinfonieorchester Köln)を振ったマーラー5ですね。このセットは素晴らしいマーラー5番のCD(2013年録音)を残しているので楽しみですね。先日のマーラー6番に続いての、独放送局"WDR3 Radio"ウェブサイトからの配信です。


▶️ こちら (8月7日まで楽しめます)


実は一曲目のベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann)のフォトプトーシス(Photoptosis)も素晴らしい演奏です。是非お聴きいただきたいですね。




マーラー 交響曲 第5番
(5 Jul. 2019 at Kölner Philharmonie)

20190705JukkaPekkaSaraste-Mahler5.jpg
(当日のプログラムの表紙です)


第一部
第一楽章葬送行進曲は陰鬱ですが殊更のスローではありません。導入句のファンファーレは力強く、第一トリオは一気にテンポアップして切れ味鋭い迫力を見せてくれますね。第二トリオは細い哀愁から入りますが哀しみに溺れる事なく鋭い流れに戻りますね。第二楽章第一主題も激しさと鋭さです。そして第二主題(一楽章第二トリオ)を鎮めてコントラストをキッチリと付けて来ます。展開部・再現部でも動機と主題が一層のコントラストで彩られています。マーラーの指示に沿ったメリハリある気持ちの良い第一部ですね。

第二部
スケルツォ主題はリズム良く弾ける流れで、そこからレントラー主題は緩やか優美に流れを変えています。切れ味ある小刻みな動機の後、第三主題は落ち着いた流れにしていますね。短い展開部で一気に激しさを表出させて、その流れに乗って再現部の主題回帰はより華やかに入ります。こちらの方が展開的流れです。コーダは派手で迫力の素晴らしさです!
優美な前半から切れ味の後半、素晴らしい構成と演奏の第三楽章です。オブリガート・ホルンも良い音色です。

第三部
第四楽章主部は甘美を避けてやや速めで透明感ある流れでクールそのものです。マーラーの緩徐でお約束の情熱パートもさりげない上手さで、続く中間部はトーンを抑えて秘めた感情を表現します。ラストで溢れる感情、好きなアダージェットです! 最終楽章の第一第二主題の絡みは適度な揺さぶりを付けた切れ味を、コデッタ主題ではリズム良くと対比します。展開部は各主題の広がりを大きくして、山場に向かいます。再現部も主題を明確に色付けて締まり良く、山場からコーダは纏まり派手さと迫力を作ります。フィニッシュはアッチェレランドがビシッと決まります。鳴り止まない大喝采!!


構成感のしっかりとしたメリハリのマーラー5です。この曲の持つ迫力・優美・洒脱を見事に構成して、近年聴けた最高の演奏の一つかと。

実際のコンサートでこの演奏に出会えたら当面マーラー5番は行かなくてもいいかも!!



本当に残念ながらCDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2019年3月11日 ヴァレリー・ゲルギエフ / マリインスキー劇場管『マーラー 交響曲 第5番』at Barcelona Obertura Spring Festival #1 «ネット配信»


ヴァレリー・ゲルギエフ, Valery Gergiev
(マリインスキー劇場管弦楽団, Mariinsky Theatre Symphony Orchestra)
ゲルギエフが長く総裁を務める手兵マリインスキー劇場管を率いて、第一回となる『バルセロナ・オーベルトゥーラ春の祭典, (Barcelona Obertura Spring Festival)』に出演した時のマーラー5ですね。

▶️ こちら (賞味期限は短いのでお早目に)




マーラー 交響曲 第5番
(11 Mar. 2019 at Sala Pau Casals de L'Auditori)


20190311BarcelonaOberturaSpringFestival-ValeryGergiev-Mahler5.jpg
(フェスティバルのプログラムの表紙です)


第一部
第一楽章葬送行進曲は間を作ったファンファーレから少し揺さぶりながら鬱な音色で進めます。山場のコントラストは明瞭です。第一トリオでは鳴りの良さを生かします。激しさはほどほどですが、テンポと演奏が緊迫感を作っていますね。第二トリオは細い哀愁です。第二楽章第一主題は緊張感高く、第二主題で静的哀愁でコントラストを付けます。緊迫感の高いメリハリの第一部、マーラーの指示通りの流れを感じますね。

第二部
スケルツォ主題はややスローに入りますが、vnがシャープに感じます。レントラー主題は優しく華麗です。このコントラストが欲しかったのでしょうか。中間部(トリオ)に近い流れの第三主題は緩い流れに転じます。その後も短い展開部は締まり良く、コーダはストレッタ的です。第三楽章は優美よりもシャキッとしたスケルツォです。

第三部
第四楽章はスロー甘美は避けて表現の強い美しさです。山場は大きく中間部も情熱を感じますね。あまり類型が無いアダージェットです。第五楽章導入部のホルンは破綻が酷いです。第一・第二主題の絡みは速く力感があり、コデッタもシャキッとした流れです。展開部もかなり速く強く、特にvnの流れは、慌てている様な感じです。その分再現部山場からコーダは暴れて、その手が好きな方向きです!


全体速め硬めで、特に後半に向けて走るマーラー5です。ゲルギエフは各地のコンサートでもマーラーを取り上げるので、いろいろな事をやっている感もありますね。速め基本、特に最終楽章の慌ただしさはやり過ぎかと。

実はコンサートでの相性が良くない一人、最近は生で聴いていないのですが…



CDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





王道の演奏で、CD化の予感がしますね。2019年6月29日 ユッカ=ペッカ・サラステ / ケルンWDR交響楽団『マーラー 交響曲 第6番』«ネット配信»


ユッカ=ペッカ・サラステ, Jukka-Pekka Saraste
(ケルンWDR交響楽団, WDR Sinfonieorchester Köln)
サラステが今シーズン(2018–2019)まで首席指揮者を務めるケルンWDR交響楽団(WDR Sinfonieorchester Köln)を振ったマーラー6ですね。このセットのマーラーは5番と9番で素晴らしいCDを残しているので楽しみですね。(サラステのマーラー6番はオスロフィルとの2010年録音が残されています。そこでもハンマーは三発でした)
独放送局"WDR3 Radio"ウェブサイトからの配信です。


▶️ こちら (7月31日まで楽しめます)




マーラー 交響曲 第6番
(29 Jun. 2019 at Kölner Philharmonie)

20190629JukkaPekkaSaraste-Mahler6.jpg
(当日のプログラムの表紙です)


第一楽章
第一主題は過度の興奮は回避した行進曲にして、パッセージの静からアルマの主題を感情を込めた流れにします。王道ですね。展開部は第一主題に激しさを増して、厄介な挿入部をvnのトレモロを明確に表現して穏やかな音色に仕立てます。各ソロパートの腕も確かですね。楽章としてアゴーギクは少なめです。

第二楽章
スケルツォです。ここでも主要主題は殊更の重厚さを避けて切れ味です。トリオ(中間部)は軽妙に色合いを変えていますね。変化球なしのストレート勝負です。

第三楽章
アンダンテです。楽章が始まる前のチューニング音も入っています。主要主題は優しく心持ち速めに、副主題(第一トリオ)のイングリッシュホルンも優しさを込めてここではややスローに流れを作ります。優しく穏やかな緩徐楽章に作り上げられました。中間部(第二トリオ)での明るい流れは明瞭、ラスト前第一トリオ回帰の溢れる哀愁は見事です。マーラーの緩徐楽章らしい山場の構築ですね。

第四楽章
序奏は各主題を明らかにしながらスローベースに組み立てていますね。もちろんコントラストは強いです。提示部第一主題は勇壮にシャープに走ります。その流れでのパッセージから、第二主題で軽妙洒脱にチェンジ。見事に決まりましたね。展開部からコーダは各主題がどうのこうのと能書きは不要でしょう。過度の興奮を避けつつも、アゴーギクとディナーミクを使った切れ味ある組合せで流れを作ります。ぜひボリュームを上げて聴いて欲しいですね。コーダでハンマー三発目!


堂々王道のマーラー6です。このパターンは演奏の質を問われる訳ですが、もちろん完成度が高いですね。録音も素晴らしく、楽章間もそのままなのでボリュームを上げられればコンサートホールの印象で楽しめるでしょう。2010年のオスロ・フォルとのCDよりも更に完成度を上げていますね。唯一の欠点は出来過ぎ、と言う贅沢な悩みかもしれません。

本録音をベースに、"Profil"レーベルからCD化される気がします。CD化されればもちろん☆印ですね。



残念ながらCDではないので「マーラー第6番聴き比べ:60CD」にはアップしません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2019年6月25日 アレクサンドル・ブロック / リール国立管弦楽団『マーラー 交響曲 第5番』«ネット配信»


アレクサンドル・ブロック, Alexandre Bloch
(リール国立管弦楽団, Orchestre national de Lille)
フランス人指揮者のブロックが2016年から音楽監督を務めるリール国立管を振ったマーラー5ですね。リール国立管と言うとどうしてもジャン=クロード・カサドシュ(Jean-Claude Casadesus)が1976年に創設して長く音楽監督を務めたイメージが強いですね。(カサドシュとリール国立管はマーラー5番のCDも残しています)
仏放送局"france musique radio"ウェブサイトからの配信です。

▶️ こちら (賞味期限は短いのでお早目に)




マーラー 交響曲 第5番
(2019/06/25 at Basilique-Cathédrale de Saint-Denis)

20190625AlexandreBloch-Mahler5.jpg


第一部
第一楽章葬送行進曲は静的で重厚さを避け、ファンファーレの回帰も抑え気味です。第一トリオは明瞭に広げますが荒々しさはありませんね。第二トリオの哀愁もほどほどです。第二楽章第一主題は適度なアップテンポと緊迫感を付けています。第二主題も程よくテンポを落として哀愁のコントラストを付けています。クセも個性もあまり感じませんが。展開部・再現部も特徴は薄く、クセのない教科書的な第一部ですね。

第二部
スケルツォ主題は少しもっさりしている感じです。オブリガート・ホルンが今ひとつだからかもしれません。レントラー主題は緩やか優美ですが纏まりがよくありません。第三主題ももっさりとした印象です。短い展開部で締まりを取り戻しますが、再現部は各主題の纏まりがやっぱり良くない感じです。見晴らしの良くない第二部です。

第三部
アダージェットは弦楽パートなので本来バランスが良いはずですが、細かな揃いが足りていない感じです。トリオで妙な揺さぶりがあります。第五楽章第一第二主題の絡みにクセはありませんね。コデッタも特徴はありません。展開部山場から再現部は揃いが悪く、そのままコーダへなだれ込みます。ラストは力技です。


流れも演奏も全部が今ひとつのマーラー5です。流れはクセもない代わりに個性もなく、演奏は大きな破綻はありませんが切れ味のあるパートも見つかりません。

指揮者とオケの全体印象はカサドシュが振ったマーラー5と似ているのかもしれません。



CDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2019年6月19日 ヤクブ・フルシャ / ベルリン・ドイツ交響楽団『マーラー 交響曲 第6番』«ネット配信»


ヤクブ・フルシャ, Jakub Hrůša
(ベルリン・ドイツ交響楽団, Deutsches Symphonie Orchester Berlin)
都響の首席客演指揮者であった事もあり、チェコ人若手指揮者(38)のフルシャは日本でもお馴染みですね。現在バンベルク交響楽団の首席指揮者、フィルハーモニア管の首席客演指揮者を務めています。今回はベルリン・ドイツ交響楽団を客演で振ったマーラー6、ドイツの放送局Deutschlandradio Kulturのウェブサイトからの配信です。

▶️ こちら (賞味期限が短いのでお早目に)




マーラー 交響曲 第6番
(2019/6/19 at Philharmonie Berlin)

20190619JakubHrůša-Mahlre6
(当日のプログラムの表紙です)


第一楽章
第一主題は勇壮な中に落ち着きを見せます。少し特徴的なアゴーギクを感じますね。経過句はかなり鎮め、アルマの主題は緩い揺さぶりを入れて甘美に仕立てています。展開部は二つの主題を締まり良く、挿入部のスローにも適度な緊張感を残します。再現部では両主題に激しさと緩やかさのコントラストを付けますね。

第二楽章
アンダンテを持ってきました。主要主題を抑え気味に入るので第一楽章ラストとの対比構成があります。第一トリオ(副主題)もその流れでスロー静の緩徐の気配が強く、中間部で緩やかな明るさを灯します。この楽章全体を大きな(ターン音型)動機の緩徐として構築し、前後楽章とのコントラスト付けが素晴らしいです。

第三楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章の印象を復活させた気配でクールな勇壮さです。トリオは変拍子をあまり意識させない静的優美な流れでコントラスト付けしていますね。回帰する主題とトリオも都度表情を変化させて上手いです。トリオの後の木管の動機はあっさりしているかもしれません。

第四楽章
問題の?序奏はスローを基本に流れを統一するので見晴らしは良いですね。そこから一気に提示部第一主題を走らせるのが狙いだったのでしょう。もちろん過度の興奮は避けています。パッセージも抑えつつ、現れる第二主題では軽妙さを出しています。この曲の心臓部でもある展開部から再現部は、アゴーギクとディナーミクのコントラスト付けを最大限に振って華やかささえ感じますね。行進曲や騎行での興奮をクールに抑えているのもいい感じです。


クールでシャープ、構成感あるマーラー6です。爆演や興奮はありません。代わりにアゴーギクを主体に構築し、上手くディナーミク付けした 締まりある良い流れです。

個性を見せつつ見晴らしの良さもある感じ、やっぱりフルシャは注目ですね。CDインプレなら☆印(個人的お勧め)です。



残念ながらCDではないので「マーラー第6番聴き比べ:60CD」にはアップしません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





大人の味付けを感じる端正さ、ブロムシュテット / バンベルク響の『マーラー 交響曲 第9番』


ヘルベルト・ブロムシュテット, Herbert Blomstedt
(バンベルク交響楽団, Bamberger Symphoniker)
このブログではマーラー9番は守備範囲なので作曲者と楽曲紹介は割愛です。
今回リリースされたのはスウェーデン人指揮者(米生まれですが)のブロムシュテットが名誉指揮者を務めるバンベルク響を昨年2018年6月に振った新しい録音ですね。ブロムシュテットはマーラーをそれほど多く残して無いので、91歳の貴重な録音になるかもしれませんね。

近いうちに「マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 100CD」にも追加記述する予定です。






第一楽章
緩やか穏やかな第一主題から陰に籠る様な第二主題へと流れ、山場から提示部反復、第三主題を盛り上げるのは基本的ですね。展開部前半の隠な流れから中後半の出し入れの強いパートも上手く陰影を付けますが安定的で、この楽章の印象は落ち着いた感じです。


第二楽章
主要主題は二つの動機を対比的に紳士的、第一トリオはレントラーらしく優美で、流れは緩やか主体です。第二トリオでは更に落ち着きを増した感じです。主要主題の回帰からも然程暴れませんね。


第三楽章
主要主題は適度な抑揚とテンポ、副主題(第一トリオ)も決して慌てません。レハールの引用も穏やかに流れて、中間部(第二トリオ)は格別に変化を強調していません。ラストも真面目に荒れていますw。この二つの中間楽章の落ち着きが曲全体を印象付けているかもしれませんね。


第四楽章
主要主題は感情移入は薄く端正です。第一エピソードは入りから終盤のターン音型を思わせる静けさです。ブロムシュテットの計算を感じますね。第二エピソードの山場は初めて情感強くまとめます。もちろん後半からコーダは計算通りにターン音型を鎮めて消え入ります。上手い構成感を感じました。



落ち着き払った大人の(?)マーラー9ですね。アゴーギクによる揺さぶりや感情移入を廃して、端正な几帳面さを感じます。"座して心穏やかにお抹茶をいただく"、といった風でしょうか。中間楽章のテンポ設定が緩やかなのも影響しているかもしれません。

日本でも人気のブロムシュテットらしいマーラー9番でしょうか。一度聴いて欲しいですね





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





プロフィール

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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