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ヨハネス・クルンプ指揮 バーデン=ヴュルテンブルク州立ユース管の『マーラー 交響曲 第5番』の素晴らしさ


マーラー 交響曲 第5番
Landesjugendorchester Baden-Württemberg
Johannes Klumpp: cond.
ドイツ人指揮者のクルンプがクリエイティブ・アドバイザーを務めるユースオケのバーデン=ヴュルテンブルク州立ユース管弦楽団を振ったマーラー5です。

同オケはC.ヴァイネケン指揮でもマーラー5を残していて、ユースらしい元気な演奏を聴かせてくれましたね。






(現状は配信のみの様です)


第一部
力のこもったファンファーレから鬱ですが沈まない葬送、第一トリオでは伸びやかに鳴らして、第二トリオは落ち着いた流れで哀愁を奏でます。上々の第一楽章です!!
第二楽章第一主題はテンポ設定を速めて切れ味、第二主題も緩やかさを決めて、第一楽章のパロディを避けた上手い流れです。展開部もアゴーギクを生かしたコントラストで、再現部は抑揚を増してまとめ上げていますね。
表情豊かで生き生きとした素晴らしい第一部です。


第二部
スケルツォ主題は軽妙洒脱さを速さで表し、レントラー主題では優美な弦楽奏に落ち着かせます。第三主題オブリガート・ホルンと弦楽も情感を湛え、変奏パートのピチカートも表情を作って見事!! 展開部ではそれをまとめる様にテンポアップで締めて、再現部は三つの主題をアゴーギクとディナーミクで華やかに奏します。コーダは怒涛!!
表現力で見晴らし良いスケルツォ楽章になりました。


第三部
第四楽章主部は甘美を避けたクールさ、中間部も透明感ある美しさです。微妙なディナーミクとアゴーギクに、やや速めのクールなアダージェットは素晴らしく、好きなパターンです。
第五楽章二つの主題は軽快なテンポを生かして絡み、コデッタ主題は優美な舞踏風。展開部は力感を軸に突き進み、再現部山場からコラールはパワーを溜めてコーダは一気のアッチェレランドで駆け抜けます。
もちろん大喝采!! (たっぷりとアプローズも入っています)



表情豊かで見晴らし良いマーラー5です。主流的流れにディナーミクとアゴーギクを生かした構成、それについて行けるユースオケの技量が驚きの素晴らしさです!!

微妙な揺さぶりもしっかりと表現して、なんとも爽快で気持ち良さが光りますね。一聴の価値があるマーラー5になりました。今まで聴いたユースオケでは抜群の仕上がりでしょう。(録音技術も含めてです)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ダニエル・ライスキン指揮 ライン州立フィルハーモニー管弦楽団 の「マーラー 交響曲 第3番」



ダニエル・ライスキン Daniel Raiskin, b.1970
(Staatsorchester Rheinische Philharmonie, 2013-12/13 Live rec.)
ロシア人指揮者のD.ライスキンが主席指揮者を務めるライン州立フィル(独)とのマーラー3、アルトはエヴァ・マルチニェク(Ewa Marciniec)です。
昨年(2021)12月のリリースなのに録音が2013年で古いと思ったら、オリジナルは2015年に出ていたんですね。




マーラー 交響曲 第3番



第一楽章
序奏第一主題の8基のhrは緩やかに大きくアゴーギクを効かせ、その後も出し入れを強く第二主題へ。第三主題"目覚める牧神"は一転して穏やかさとコントラストが明瞭です。
提示部の"暗→明→烈"は色濃く、行進曲が軽妙で上手いですね。ラスト山場も快感です。
展開部の"烈→鬱→明"も色濃いその流れの延長上に作られて、合わせて一つのパートを構成するかの様です。
再現部でも表情は濃く、回帰する行進曲から徐々に力感を込めて劇的なコーダに雪崩込みます。
コントラストを効かせた見晴らしの良い第一楽章ですね。

第二楽章
主要主題はマーラー指示通りまさにメヌエット、トリオは変拍子を生かして跳ねる様に。全体を軽妙洒脱に美しくまとめ上げています。

第三楽章
主部の各動機は"角笛"らしさから力を増し、風景をチェンジするトリオは金管が静寂の中に響かせます。王道的コントラストを作っていますね。

第四楽章
アルト独唱は処々でmez気味に聴こえ少し弱め。"永遠を欲する"歌詞から行くともう少し腰の低いalto感が好みかもしれません。

第五楽章
子供達の"ビム・バム"は天国を明るくスケルツォ風に歌いますが、やや薄めの表現は残念です。濃いめのアルトとのコントラストを作っているのかもしれません。

第六楽章
主要主題から第一トリオは澄んだスローに哀愁を乗せ清廉で美しい流れです。各動機の回帰では色合いを増して感情が溢れる様に、山場からコーダは感激的です。第五楽章の"天国へ向かう"流れを受けた完結・大団円になりました。



表現力と見晴らしの良さのマーラー3です。アゴーギク中心にディナーミクをフィットさせているのが効果的で、重心の低さもあり色濃い流れが楽しめます。

歌が入る二つの楽章が少し好みとは違いましたが、それでも聴き応えあるマーラー3だと思います。まぁ 2・3・8番はそう言う曲ではありますが。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





佐渡裕 指揮 トーンキュンストラー管弦楽団 の「マーラー 交響曲 第2番 "復活"」



佐渡裕 Yutaka Sado
(Tonkunstler Orchestra, 2019-5/15-22 Live rec.)
佐渡さんとトーンキュンストラーのマーラー第二弾は "復活" ですね。前回キャプランの "復活" を聴いた際にこれがあるのを思い出しました。

ソプラノはダニエラ・ファリー(Daniela Fally)、メゾソプラノはエリーザベト・クールマン(Elisabeth Kulman)、合唱はスロヴァキア・フィル合唱団です。

ちなみに個人的な"復活"ベスト2は、全編シャープなテンシュテット/NDRの非正規盤、最終楽章(再現部)に全てを集約するバーンスタイン/NYPの2CDです。




マーラー 交響曲 第2番 "復活"



第一楽章
第一主題、葬送行進曲、第二主題、コデッタにはっきりしたコントラスト付け。
展開部前半の"穏→烈→静"は強音パート重視で"静"は速く、後半はいきなり大きなパウゼを使って静スロー強調、最後はバシッと動機を叩きつけます。再現部は'おさらい'的、コーダは冒頭の鬱動機に異様な気配を作ります。
アゴーギクを強く振って明瞭な流れを作っていますね。

第二楽章
主部は演舞曲かメヌエットで三拍子の古典曲そのもの。回帰のトリオだけロマン派風にしていますね。

第三楽章
速めで揺さぶりを付けた『子供の不思議な角笛』、中間部も刻むリズムの心地良さです。

第四楽章
主部「原光」アルトは軽く、もっと低く沈んで欲しかった様な。苦悩と決意を歌っている訳ですから。

第五楽章
提示部"復活の動機"の金管がちょっと弱いですね。そこからの動機群もややコントラストが不足気味。
展開部"死者の行進"はハイテンポに一気にチェンジしますが味付けがマイルド。もっとキレキレか低重心かが欲しいですねぇ。
再現部のバンダと夜鶯は明瞭に鳴らして来ます。これだと静に現れる合唱の厳かさとフィットしません。アルトの "O glaube, Mein Herz" も軽さが気になり、男声合唱もsop/alto重唱も切れ味が不足。この曲のラストらしい劇的感動に届かないのは残念です。



マイルドであっけらかんとした"復活"です。各楽章にアゴーギクで明瞭さを構築していますが、好みは別れるでしょう。

切れ味と重厚不足でこの曲のシリアスさがボケてしまった印象です。アルトと金管が少し弱いのも気になりましたね。何よりラスト"Aufersteh'n, 甦る!"の感激が薄いのは残念。アプローズもこの曲としては控え目に感じます。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





「マーラー交響曲第2番 "復活"」だけを振る指揮者 ギルバート・キャプランの2CD聴き比べ



マーラー 交響曲 第2番 "復活"
ギルバート・カプラン (Gilbert Kaplan, 1941-2016)
G.キャプランは5年前に亡くなられた米実業家のマーラーマニアですね。マーラー好きの方にはお馴染みでしょう。

■マーラー第二番"復活"だけを振る指揮者にまでなり ■"復活"のキャプラン校訂版(今回②)スコアもリリース ■キャプラン・ファウンデーションを設立しマーラーディスコグラフィーも編纂

今更ですが正規録音2CD(室内楽ver.を除く)で、両者セッションでの作り込みになります。




ロンドン交響楽団
London Symphony Orchestra, 1987-7/27-29, 1988-1/29
(Benita Valente: sop, Maureen Forrester: mez)



第一楽章
提示部葬送行進曲はややギクシャク、第二主題は微妙なアゴーギク、コデッタもスムーズではありません。
展開部は緩やかな牧歌風ですがコデッタの山場は落ち着きません。後半はコラールの山場を行進曲風に強調してから炸裂。再現部はもっそり、コーダは暗鬱を初めて見せて締め括ります。
この楽章らしいワクワク感に欠けていますね。

第二楽章
主要主題はスロー気味のメヌエットで美しさが弱くトリオも緩いです。回帰では主部・トリオ共に音厚が増して来ますがスコア通り。
第三楽章
主部vnとobは鬱と明のコントラストな『子供の不思議な角笛』で面白いです。中間部もリズミカル良い流れをキープ。回帰パートも広がりを作りっていますね。
第四楽章
アルト「原光」は落ち着きを払って、中間部転調も微妙な和声変化を上手く付けています。

第五楽章
提示部は一気に叫んで静に落としhr動機へ。"復活の動機"は光が注ぐ様な上手い流れです。そこからの動機群はややもったいぶった印象でしょうか。
展開部"死者の行進"は力感から切れ味へと進めてマーラーらしさが広がります
再現部は静まるバンダの鳴りと夜鶯から合唱が厳かに緩やかに現れてソプラノは抑え気味に登場。アルトが "O glaube, Mein Herz" を歌うとテンションが上がって、男声合唱が"復活の動機"をコントラスト大きく歌うとsop/alto重唱が切れ上がります。
一度落ち着けてからの"Aufersteh'n"は勿論感激的です。


生真面目さの"復活"です。前半は遊びや余裕が薄く少々辛いところかもしれませんが、第三楽章からは肩の力が抜けて良くなりますね。

計算された緩急強弱の付け方、それが最後の劇的なフィニッシュに生かされた感じです。まぁそう言う曲ですが。







ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
Wiener Philharmoniker, 2002-Nov. Dec.
(Latonia Moore: sop, Nadja Michael: mez)



第一楽章
第一主題は重厚で葬送行進曲も含めてスローの緊迫感。第二主題は濃厚な美しさで、コデッタは勇壮に行進します。
展開部は美しい第二主題をスロー濃厚に、コデッタの山場はシャープにと濃淡をハッキリさせます。
再現部も濃厚で出し入れを強め、コーダも低く渦巻く鬱から落ち着いて鎮めます。
スローで重厚 そして濃厚な流れになりました。

第二楽章
主部は落ち着いたメヌエットで重心は低く、トリオから回帰パートでも美しさと緊張感がキープされていますね。
第三楽章
主部は陰のあるスケルツォで隙がありません。中間部もファンファーレが主張を明白に鳴らしコントラスト付け。最後のトリオ回帰は迫力ものです。
第四楽章
アルトは柔らかく抑えてオケとフィットさせました。美しさに心和む素晴らしい「原光」です。

第五楽章
提示部入りは炸裂ではなく落ち着いた強音でナチュラルに静へ繋がります。"復活の動機"が希望を表現すると、動機群が強い出し入れで緊張感を高める上手い構成です。
展開部"死者の行進"は堂々勇壮にマーチ。重心は低いですが表情変化があります。
再現部はバンダと夜鶯が平穏さを作ると聴き処へ。合唱とソプラノが霧が広がる様に厳かに現れ、アルトが "O glaube, Mein Herz" でしっかり気持ちを伝えて、sop/alto重唱が '死と復活' を高らかに歌います。そこからは一気に "復活" Aufersteh'n(甦る)の怒涛です。


濃厚なマーラー"復活"です。終始音厚があって色濃い流れと緊張感が支配的です。ロンドン響にあったアンフィット感もなくなり、全てのパートがキッチリと組み合わせれています。

曲の完成度は高いのですが、それを超えるプラスアルファが見つかりません。それが一番難しい事なのかもしれませんね。




スコアに集中的なロンドン響、スコアを手の内にしたウィーンフィル。特に後者の完成度の高さが印象的ですね。

スーパーアマチュアとしたら出来る事は全てやった見事さで大拍手ではないでしょうか。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





"マーラーだけどマーラーじゃない"「NO TIME FOR CHAMBER MUSIC」コレクティフ9(Collectif9)



NO TIME FOR CHAMBER MUSIC
("Collectif9", strings nonet)
マーラーの室内楽トランスクリプションですね。交響曲単位とかではありますが、これは楽章や歌曲の一部を抜粋して構成した9曲細切れ版です。

カナダの弦楽九重奏団コレクティフ9による演奏で、編曲はメンバーのベルタン=マギ(Thibault Bertin-Maghit)によるもので、8.だけフィリップ・エルサン(Philippe Hersant)によるものです。

弦楽九重奏団の編成はストリング・クァルテットx2 + コントラバスの9名ですね。







1. 自然の音のように [第1番] - 2. 狩人の葬送 [第1番] - 3. 葬送行進曲 [第2番] - 4. レントラー [第2番] - 5. 僕の胸の中には燃える剣が [さすらう若者の歌] - 6. 葬送行進曲 [第5番] - 7. 告別 [大地の歌] - 8. カロ風の葬送行進曲 [第1番] - 9. ドン・ファンの幻想 [若き日の歌 第1集]

1.から2.はアタッカで繋がり「グーチョキパーで何作ろ」の短調主題に入ります。ここではクレシェンドで主題強調、テンポ変化を付けて面白い流れを作りますが"マーラーの交響曲ではないですね" と言うだけでしょうか。

3.は緊張感ある主題は再現されていますが、弦楽だけでは無理があります。このパターンならオリジナルを聴いた方が素晴らしさを味わえるでしょう。6.も明らかに奇妙なリズムに変換していますが、それ以上でも以下でもない印象でオリジナルを越えられません。どうせなら緩徐のメヌエット風にするとか…

8.は交響曲第1番の主題をコラージュや転調して一番面白い曲ですが、それなら1.と2.はいらないでしょうね。出し入れが弱いのですが、それでもこの8.がベスト・トラックでしょう。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  PVかMVですね。絵があると少し面白い?!



"マーラーだけどマーラーじゃない"です。流れは二つ、曲に割と忠実なパートと自由に組んでいるパートです。

マーラーを聴いていればいずれ中途半端に感じます。オリジナルを知らない方が楽しめるかも!
なるほど、だからタイトルにマーラーがいないんですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ハンマー3発の『マーラー 交響曲 第6番 "悲劇的"』アダム・フィッシャー指揮 / デュッセルドルフ交響楽団



アダム・フィッシャー | デュッセルドルフ交響楽団
(Adam Fischer | Düsseldorf Symphony Orchestra)
アダム・フィッシャーとデュッセルドルフ響のマーラー・チクルス最後の一枚ですね。ここまで好演のマーラーを残して来た兄フィッシャーなので期待値が上がります。

COVID-19ロックダウン直前の演奏だそうです。確かにこの後にパンデミック宣言が出されていますね。





マーラー 交響曲 第6番 "悲劇的"
(2020-2/27-3/2, 三回のLIVEより)



第一楽章
速め勇壮な第一主題、少しパッセージを揺さぶりアルマの主題は緩やか華やかです。ちょっとした揺さぶりスパイスが効いていますね。展開部も第一主題を厳しく、挿入部を緩やかにとマーラーらしい三部形式的展開部を作ります。コントロールの効いた流れからコーダはアルマの主題らしい華やかさで締め括ります。
過度な重厚さや華やかさを避けて程よいバランスですね。

第二楽章
アンダンテを持って来ました。主要主題は緩やかでソフトに少し揺さぶりを入れ、第一トリオは哀愁を強く表現します。中間部(第二トリオ)の陽光の広がりも緩やか穏やかです。第一トリオ回帰の溢れる哀愁もしっかりコントロールされます。
優雅さと哀愁のコントラストを効かせた緩徐楽章ですね。

第三楽章
スケルツォ主題は第一楽章のパロディ的。このパターンだと普通は第二楽章に持って来るのですが… トリオはスローに落としてメヌエット風、マーラーの指示を表現していますね。木管動機もスローに入ってトリオの流れに従う形です。テンポ変化で聴かせるスケルツォ楽章です。

第四楽章
長く厄介な序奏を見晴らし良く作り、アレグロ・エネルジコからの第一主題は勇壮な行進曲。パッセージのhrは気持ち良く鳴らして第一主題と絡んで快感、見晴らしが良いです。
展開部はvc動機と第二主題にメリハリを与え、行進曲は興奮ではなくリズム感の良さが味わえます。似た構成の再現部も華やかに第一主題が現れるとパッセージと共に一気に弾けて騎行は晴れやかに鳴らします。力感よりも晴れやかしい最終楽章になりました。ちなみにコーダで三発目のハンマーが登場しますね。


過度の刺激や興奮を避けたマーラー6です。決して悪いわけではなく、ちょっとした揺さぶりのトッピングもあって完成度は高いでしょう。

楽章ごとの表情もしっかりと作られているので、この曲をじっくり聴きたい方にはジャスト・フィットかと。第四楽章も力感よりもリズム感と見晴らしの良さで一味違います。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





二つの「大地の歌」マーラー と シャオガン・イェ



The Song of the Earth =Mahler & Ye=
(Shanghai Symphony Orchestra, Long Yu: cond.)
グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860-1911)と中国の現代音楽家シャオガン・イェ(Xiaogang Ye, b.1955)二人の「大地の歌」のカップリングです。

シャオガン・イェの「大地の歌」はマーラーと同じ六楽章(男声1,女声1)構成で、上海交響楽団による委嘱作品です。(マーラーは基本アルト/テノール、シャオガン・イェはソプラノ/バリトンです)

シャオガン・イェは初めて聴くわけですが、マーラーは以下の概要です。

マーラー「大地の歌」の流れを少々荒っぽく言えば、テノール(男性)が歌う奇数番楽章は盃を重ねる詩、アルト(女性)が歌う偶数番楽章は人の心の詩、最後の長い第六楽章だけは自然と友を謳う訳ですが、全体として"人は死しても大地は残る"というお話ですね。個別の古い中国の詩の引用ですから、楽章間でストーリー展開がある訳ではありません。







"Das Lied von der Erde"
=Gustav Mahler=

(mez: Michelle DeYoung, ten: Brian Jagde)


第一楽章「大地の哀愁に寄せる酒の歌」
アレグロでペザンテらしく、提示部入りは揺さぶり強く個性的。管弦楽の展開部も出し入れ強調型です。
ジャグデは力感と切れ味でテンションが高いテノールですね。オケもくどいくらいの力感で、歌詞内容の勢いを強調なのでしょうか。

第二楽章「秋に寂しき者」
変わって導入部木管は落ち着いた気配、そこに濃いアルトが入ります。流れはやや一本調子、ソフトですが濃いオケと濃厚なデヤングのアルトの緩徐楽章です。

第三楽章「青春について」
スケルツォは五音音階の中華和声を強く、テノールもキレキレです。力が入り過ぎでしょうか、談笑しながら飲むと言うよりも闘い前の勢い付けの様な…

第四楽章「美について」
導入部コモド(乙女)はデヤングですからアネゴ肌です。それに合わせるオケの主要主題パートも、もう少し優美さ強調でも良い様な。中間部の馬で駆ける若者はオケもアルトも力感漲り、肩に力の入った"美"になっています。

第五楽章「春に酔える者」
アレグロのテノールはやっぱり力感、全然酔いが進んでいませんw

第六楽章「告別」
重厚さで入る提示部、アルトの伸びとフルートは少し抑え目に夕陽が沈むのを歌い、コーダは明るく広げて友を待ちます。ただかなり気分が重くなりますね。オケ・パートの展開部でも緊張感が漲り濃厚、夜の帷を魑魅魍魎のすみかの様に表現しています。再現部 王維「告別」は暗く沈み、そこから明るさをコントラスト高く付けて最後は緩やかに'永遠なる大地'に結びます。全てはここを目指したのかも。


あまり聴かない濃厚表現の"大地の歌"です。アルト, テノール, オケ, 全てが色濃く緊張感高くですね。第三楽章などは、ゆっくりと盃を交わしたいところですが…

中国の詩をもとにしている曲を、中国人の指揮と演奏ですからこれが本質なのかもしれません。アルトとテノールも中国人歌手がフィットしたのでは と思います。





"The Song of the Earth"
=Xiaogang Ye=

(sop: Liping Zhang, bar: Shenyang)


第一楽章 "Tale of Sorrowful Song"
明確な五音音階から入って来ますが、マーラーからの違和感がありません。明るく広がりある機能和声と中華和声ミックスで後期ロマン派ベースにした音楽です。リピンのsopは伸びやかですね。

第二楽章 "Banquet at Tao Family's Pavilion"
フィルム・ミュージック風の表現になります。チョコマカとディズニーの印象で、リピンのソロが中華和声で色添えしています。

第三楽章 "Imitation of Old Poem: Long Autumn Night"
ここでも微妙な五音音階が入って、楽器編成でも笛にその音色を感じる様な… リピンは伸びやかですが、緩徐楽章を生かしたオケの音色とフィットしています。

第四楽章 "Song of Pick Lotus"
緩徐の後のアレグロで '風雲急を告げる' 的です。シェンヤンのバリトンは少しクセをつけた印象です。細かいバイブレーションも使って、素直には表現しない感じでしょうか。ここでも中華和声と機能和声との上手いフィッティングを感じますね。

第五楽章 "Feelings upon Awakening from Drunkenness on a Spring Day"
今の時代の米管弦楽曲の様な印象、ここのシェンヤンは落ち着いたバリトンでオケとフィット。ちょっとした浮遊感のオケに金管を響せるのは今の時代のSTD的です。

第六楽章 "Staying at Teacher's Mountain Retreat, Awaiting a Friend in Vain, Farewell"
緩徐的に入って来ます。そして再びリピンが登場して幽幻なオケを背景に伸びるsopを披露、もちろん中華和声を最大限に生かしています。流れは出し入が強く現代的管弦楽の印象で、コーダは中華色を全面に出しています。


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  バリトンShenyang投稿の第五楽章です



無調前衛やクロスオーバーではなく、機能和声と中華和声をミックスした今風の歌曲管弦楽です。新鮮さには少し欠けるかもしれませんが、マーラーから続けて聴ける安心感がありますね。

流石に中華和声の入れ方が上手く、西洋から見た'いかにも'的な違和感がありません。意外に楽しめたかも



濃厚な個性的マーラーと中華和声を生かしたシャオガン・イェの「大地の歌」二曲対比が楽しめるアルバムです。

"マーラーの進化形の様なシャオガン・イェ"と言っても良いかもしれません。基本的には米フィルム・ミュージックの系統だと思いますが、ナチュラルな中華和声(五音音階)の使い方が好印象でした。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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