ジョナサン・ノット/東京交響楽団 の「マーラー:交響曲第10番アダージョ」を聴く


コンサートとCD
本年2018年4月14日のサントリーホールでのコンサートで録音していたのは知っていましたが、こんなに早くリリースされるとは思っていませんでした。コンサートのインプレとの違いはあるでしょうか。ブルックナーの9番は別途インプレしますね。→ こちら


マーラー交響曲第10番アダージョ
以下コンサートインプレと同じです。『ソナタ形式ですが個人的印象は①序奏主題、第一主題、第二主題がロンド形式の様に展開する前中盤、②まるでトリオ(中間部)の様なコラールから和音、③緩徐の長いコーダですね。』



序奏主題はコンサートより鬱に沈んだ印象、第一主題と反行形主題は暖かな美しさに感じました。特に暖色系の気配が印象的になっています。第二主題はコンサートの印象と同じく個性的な旋律が生きました。
中間部の様な管楽器主役の和音は迫力は抑え気味、コーダの緩徐は静美的印象が薄く感じたのもコンサート同様ですね。


調性の妖しさよりも温もりと力強いアダージョですね。コンサートで感じた通りのコントラストでしたが、スパイス不足の感は無くより明快に感じました。鬱的な、例えばD.ハーディングの様な、方向とは対極になる演奏でしょう。

出来ればノットには全曲を一度やってほしいです。







テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルのフェアウェル・コンサート『マーラー交響曲第6番』NHKプレミアムシアター

先月2018年6月19・20日のサイモン・ラトル、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(BPO)常任指揮者としてのラスト・コンサートですね。ラトルはBPOとの初ライヴ(1987年客演)もこのマーラー第6番で、CD化されていています。(ラトルのマーラーの6番はもう一枚あり、その2年後1989年に手兵だったバーミンガム市響との録音を残していますね)

このブログでは『マーラー交響曲第6番 40CD聴き比べ』でラトルの二枚のCDもインプレしています。



マーラー 交響曲 第6番「悲劇的」 / ラトル・BPO

【第一楽章】
第一主題は切れ味良く重厚さは抑え気味、アルマの主題では少しスローにして優美さを見せますね。展開部・再現部でも切れ味重視で過度の色付けをしていません。重厚さや華美を控えてクールなラトルらしからぬ第一楽章ですね。

【第二楽章】
アンダンテです。主要主題は抑えた優しさを感じ、副主題のobとclも静かな哀しみを表現しました。中間部も抑えられた流れを継承しまして、ラスト前山場の溢れ出す哀愁は見事でしたね。

【第三楽章】
スケルツォは主要主題はやや速めの流れで切れ味良く、トリオは抑えながら変拍子を活かしました。最終楽章へはアタッカで繋げましたね

【第四楽章】
キーの一つ序奏はオケの個々の楽器の鳴りが澄んで見事でした。提示部第一主題は切れ味そのもの、パッセージを大きく奏でて第二主題をのどかに。展開部・再現部はバランスの良いアゴーギクとディナーミクでコントラストと見晴らしの良さが際立ちました。この楽章は素晴らしい出来でした。


クールで緊迫感のあるマーラー6でした。もっと大袈裟に来るかと思っていましたが、予想を裏切る抑えの効いた締まりの良い演奏で驚きました。白眉は最終楽章でしたね。

既発CDとの比較ではバーミンガム市響よりもBPOとの初ライヴに近く更に落ち着きと切れ味を増した感じでしょうか。


BPOのメンバーのセリフはまさに我儘天狗軍団で笑えましたね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

オスモ・ヴァンスカ(Osmo Vanska) の マーラー交響曲第六番 を聴く


オスモ・ヴァンスカ (Osmo Vänskä, 1953/2/28 - )
フィンランドの指揮者ヴァンスカというとラハティ響を育て上げた事が浮かびますね。
そして近年では昨年発売のマーラー第五番2015年来日のシベリウス「フィンランディア」(w/読響)を思い出します。(両インプレあり)
現在音楽監督を務めるミネソタ管弦楽団(Minnesota Orchestra)とのマーラー5番はややクセ者的な印象もあったのですが、チクルス第二弾の6番はどうでしょう。

『交響曲 第6番 30CD 聴き比べ』には次回追記予定です。



第一楽章
スローで抑えめの第一主題、モットーは美しくアルマの主題ではそれを広げる様に華やかですがスローのアゴーギクが気になりますね。反復後の展開部も力強さはあっても冷静さが常に背後にいます。再現部では少し躍動感が感じられるかもしれません。
第二楽章
アンダンテを持ってきました。主要主題・副主題ともにごく普通の優美さ、中間部も流れは同じですが明るさが現れますね。美しい緩徐楽章ですが個性は薄いです。
第三楽章
スケルツォですね。主要主題は客観的で迫力や興奮を否定しているかの様です。クールとは違いますね。トリオは優美なスケルツォですが、それ以上でもありません。
第四楽章
序奏は緊張感の漂う素晴らしい流れかと思いきやスローモッソリに落ち込みがっかり。長い序奏から提示部の第一主題と経過句は勇壮ですがアゴーギクを殺して抑え込み、第二主題も同様です。展開部は序奏と同じく揺さぶりの効いた前半パートとフラット単調さの行進曲以降の組合せです。再現部も同じですが、それでもこの楽章が一番良いかもしれません。

よそよそしく掴みどろこの薄いマーラー6番です。この曲は興奮かクールさかですが、はっきりしないのはどうも…好みの問題になるかもしれませんね。
シベリウス・アカデミー同期生サロネンやサラステのマーラーの様にはいかない様です。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 70CD聴き比べ! [#5 / CD:51-70]

第5回目は好きなノット盤や発売されたばかりのハーディング盤からベテラン勢、20CDのインプレ追加です。

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.9の聴き比べです (現在#5回 70CDまで)
 #5:20CD 本投稿
 #4:10CD
 #3:10CD
 #2:20CD
 #1:10CD


ジョナサン・ノット, Jonathan Nott
★☆
Bamberger Symphoniker
[Tudor] 2008-9/15-19

(ノットのマーラーは全集で買って後悔しませんね)

現東京交響楽団の音楽監督を務めるノットが16年間首席指揮者だったバンベルク響とのチクルスからですね。
第一楽章
スロー緩やかな第一主題から第二主題も流れはスロー、そこから金管の下降を経て大きく反復と第三主題を奏します。展開部もスローな暗さと激しい山場の対比が葛藤を描くようです。山場の後は必ず落ち込む鬱も生きています。
第一楽章に欲しい"暗さ"がスローのテンポの中息づいて素晴らしいですね。
第二楽章
主要主題と第一トリオはテンポよく穏やかな優美さで、第二トリオも流れよくスケルツォを奏でます。優美さが引き立ち一楽章からの対比がきれいですね。
第三楽章
主要主題と副主題は速めの流れで、第二楽章ラストの狂奏からの繋がりがあります。中間部のターン音型で徐々に流れを穏やかに落とします。これは最終楽章の中心をなすターンへの流れにピッタリで、前後楽章との連携が見事ですね。ラスト山場も見事な狂乱です。
第四楽章
スローで哀しみの強いアダージョの主題。第一エピソードも沈んだ流れから弦楽緩徐の哀しみ溢れる美しさが大きく広がります。その後もスローなターン音型の浮遊感を最大限生かしながら透明な哀しみと美しさをラストの消え入る動機まで繋げます。この楽章に欲しい"死"を前にした澄んだ世界が感じられます。素晴らしいですね。
・・・・・
この曲の真髄とも言える第一楽章の"暗"と第四楽章の"哀"の美しさが伝わるマーラー9です。
スローで情感深い第一四楽章、明瞭な第二三楽章、その楽章構成が見事ですね。個人的ベスト5の一枚です!




ダニエル・ハーディング, Daniel Harding

Swedish Radio Symphony Orchestra
[harmonia mundi] 2016-9/8-10
ハーディングが2007年から音楽監督を務めるスウェーデン放送交響楽団(Swedish Radio Symphony Orchestra)との録音ですね。
第一楽章
緩やかで美しい第一主題、不安を感じさせる第二主題、反復は大きく奏でます。提示部のラストを激しく、展開部も柔らかさと切れ味の出し入れのコントラストが見事に付いていますね。再現部も懐の広さを感じさせながら、うまく静的なコーダへ結びます。
第二楽章
主部主題、第一トリオ、共にやや重さを感じます。第二トリオは緩やかですが、決して軽やかではありません。第二第三楽章では激しさがベースに存在しますね。
第三楽章
主部主題は切れ味良く、副主題もそれに絡みます。重厚さと軽妙さの微妙なバランスです。中間部はやや速めに美しさと哀しみを合わせ大きな波を奏でます。ラストの暴れ方は見事!!
第四楽章
主要主題は美しく、ファゴットのモノローグから第一エピソードは情感大きく盛り上げ繊細に納めます。第二エピソードもその流れです。「亡き子をしのぶ歌」の引用からコーダはpppスローの美しさを生かして消え入ります。
・・・・・
重心の低い切れ味と見事な広がり、哀愁よりも嶮しさのマーラー9番です。
一四楽章vs二三楽章の対比が見事でした。コンサートでは相性の良くないハーディングですが、期待を裏切る素晴らしさでしたw おすすめの一枚ですね。


本アルバムは2016年9月8-10日のセッションですが、翌2017年7月24日のヴェルビエ祝祭管弦楽団(Verbier Festival Orchestra)とのLiveを聴く事ができます。
Mahler “Symphony No. 9” (Daniel Harding • Verbier Festival Orchestra, 24 Jul 2017)
流れとしては良く似た演奏になります。第一楽章は悪くありませんが、第二楽章が軽めで間伸び感を感じます。第三楽章は揃いは今ひとつですが激しさが良いですね。第四楽章は似た展開ですがやや緩いです。
結果的には煮詰めたセッションと言う事になるのでしょうが、それをライヴで聴きたいところですね。




ミヒャエル・ギーレン, Michael Gielen (2録音)
個人的には現代音楽の擁護者といった指揮スタイルも含めて興味の尽きないギーレンですが、マーラー9番は首席指揮者を務めた現南西ドイツ放送交響楽団(SWR Sinfonieorchester)との録音が2枚正規盤として残されています。


(#1)

SWF-Sinfonieorchester Baden-Baden
[Intercord] 1990-Apr. Aug.
バーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団の首席指揮者時代のマーラー9ですね。
第一楽章
第一主題から第三主題までをディナーミク強く情感を高めた提示部。展開部も静のスローを鬱と哀に、強音パートをスピード感と切れ味にコントラストを付けて素晴らしいです。処々で細かな癖があるのもギーレンらしい?!
第二楽章
主部主題はなんともスロー、第一トリオは程よいテンポに戻して心地よく鋭いレントラーです。そこから穏やかに第二トリオへ入ります。スローの主題が特徴的ですね。
第三楽章
主要主題と副主題は刺激的にやや刺々しく絡んで流れ、中間部でテンポを大きく落としてコントラストをつけます。
第四楽章
主要主題はナチュラルに弦楽の美しさを讃えます。第一エピソードは細い静音から情感を込めつつも速めの流れで展開しラストでスローに持ってきます。第二エピソードも速めで入りスロー静音に落としてコーダへ向かううまさです。
・・・・・
表現的揺さぶりとメリハリのマーラー9です。静音パートは大きくスローにハイテンポを交えて、そこに一癖と好みは分かれるかもしれません。でも好きな演奏です。




(#2)
SWF-Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
[Hanssler Classics] 2003-6/27-7/4
1996年にバーデン=バーデンからフライブルク・コンツェルトハウスへ本拠地を移しバーデン=バーデン・フライブルク南西ドイツ放送交響楽団に名称変更。ギーレンは1996年まで首席指揮者を努めていましたね。(その後2016年にシュトゥットガルト放送交響楽団と統合されて現在に至っています)
第一楽章
第一第二主題を緩やか厚めに、第三主題で大きく波を立てます。展開部はコントラストを強く付けて重厚です。クセはなくなり堂々の風貌です。
第二楽章
主部主題はやっぱりスロー、第一トリオもややスロー気味ですがレントラー感はあります。第二トリオでスローに落とし後半をアップテンポで切れ味を見せますが全体としてスロー感が強くなっています。
第三楽章
主要主題と副主題はややスローになり絡みも刺激は減りました。テンポアップ後の中間部で再びスローにします。基本はスローですね。
第四楽章
主要主題は微妙なアゴーギクを振った美しさになっています。第一エピソードは細い静音から速めに流れて情感を戻すのは同じです。第二エピソードも流れは変わりません。ディナーミクを抑えた事で厚みを感じますね。
・・・・・
クセはあるものの堂々としたマーラー9です。極端な静音ディナーミクを減らし重厚さが出ましたね。とはいえスロー中心のアゴーギクは個性的です。
ならば昔のクセ者の流れに心惹かれるものを感じますが。(汗)




小澤征爾, Seiji Ozawa (2録音)

(#1)
Boston SO
[Philips] 1989-10
言わずと知れたボストン響の音楽監督時代のマーラー9番です。
第一楽章
第一主題と第二主題を抑えて冷静な流れから展開部へ入ります。展開部もクールで静的パートと激情パートのコントラストがコントロールされています。再現部も"計算尽く"を感じます。
第二楽章
主要主題はややスロー穏やかに絡んで第一トリオでシャキッと気配を変え心地よいスケルツォになります。第二トリオは緩やか穏やかです。後半の山場も暴れる事なく全体として穏やかさのスケルツォですね。
第三楽章
主題と副主題は心地よい勇壮感と軽快感で絡んで進み、中間部では穏やか伸びやかで山場へ繋ぎます。ラストもマーラーの指示通りに荒々しく、見晴らしの良い楽章です。
第四楽章
序奏・主題の美しい広がりは第三楽章からの対比が心地よいですね。第一エピソードは暗い静音パートと弦楽緩徐パートの広がりが美しです。第二エピソードもうまくアゴーギク・ディナーミクを振って哀愁ある美しさが際立ちます。この流れからのラストの静的美しさはマッチしています。
・・・・・
全て小澤さんコントロール下、ライヴとしてはマイルドでまとまりすぎのマーラー9です。
ただ、第三楽章から最終楽章は素晴らしく全体この流れだったら絶対☆ですね。




(#2)
サイトウキネン・オーケストラ
[Sony] 2001-1/2-4
BSOとの12年後、これまた言わずもがなの創設者であり総監督を務めるサイトウキネンを振った演奏です。
第一楽章
タメの効いた第一主題と揺らぎを持った第二主題、金管の半音下降からの反復と第三主題の緊張感が素晴らしいですね。展開部・再現部共に緊張感とオケの漲るパワーを感じられます。ただこの楽章としては厳つい気配が強すぎの気がします。
第二楽章
主要主題は穏やかな流れ、第一トリオでピシッとするのはBSOと同じですね。その後も良く似ていますが演奏の切れ味はこちらが上。
第三楽章
主題と副主題は切れ味よく絡み、伸びやかな中間部以降ですが前半がややフラットに感じます。ラストのパワーは見事。
第四楽章
序奏・第一主題は重厚感、第一エピソードも重さが際立ちます。第二エピソード緩徐パートもそっけない感じです。ラストに向けても線の細さより朗々と鳴る気配です。
・・・・・
この曲に感じる哀しみや美しさが弱いマーラー9ですね。通して重厚、緩徐パートも厚い音色だからかもしれません。
演奏が素晴らしいのでコンサートで聴いたら賞賛してしまうかもしれませんね。(汗)




ジュゼッペ・シノーポリ, Giuseppe Sinopoli (2録音)
シノーポリと言えば学研肌でスローという印象でしょうか。それと指揮中に倒れて亡くなった事。個性的ですが音楽的な好印象が残っていません。


(#1)
Philharmonia Orchestra
[DG] 1993-12
シノーポリが首席指揮者を努めていたフィルハーモニア管を振ったマーラー9です。
第一楽章
緩やかで甘美な第一主題、第二主題で曇らせますがテンポはキープされます。そこから揺らぎを入れて反復、第三主題から派手に盛上げます。展開部も"静音=スロー強調"の定義?で、強音パートとコントラストが明確です。
第二楽章
主要主題と第一トリオは適度なテンポ設定、第二トリオでも特異性はなくレントラーらしさはあるものの印象は薄めです。長い…
第三楽章
マーラーの言う"きわめて反抗的に"とまでは行かないかもしれませんが、前楽章より切れ味はあります。
第四楽章
主要主題は暖色系のややスローで哀愁ではないでしょう。第一エピソードは静音パートも含め速めになります。第一楽章での流れの設定とは全く異なります。ラストのvaの動機(F♯,G,A,G)だけ音が大きめなのも不自然さを感じます。
・・・・・
第一楽章のスローと強音パートの印象は第四楽章で崩されたり、統一感に欠けるマーラー9です。




(#2)

Staatskapelle Dresden
[PROFIL] 1997-4/6
上記4年後、シュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者として振ったマーラー9ですね。スロー化が全楽章で進み、82分から93分を超える演奏になっています。特に第一楽章は世界最遅演奏(32'57")です。
第一楽章
第一第二主題はさらに遅くなり気配も薄くなっています。強音もスロー化して反復、第三主題も大スロー化。何でもかんでもスローになってます。スロー再生で聴いているみたいです。世界最遅の第一楽章ですからね。
第二楽章
一部パートを極端にスロー化しり変な揺さぶり構成になっています。ディナーミクの弱側がスッと消えたり、流れを遮る様な奇妙なアゴーギクを振ったり。立派なクセ物楽章です。
第三楽章
ありきたり印象の主要主題と副主題はやや速めに…あれっ普通??…ところが中間部で一転大スロー化!! ここからはディナーミクも加わってクセ物と化します。
第四楽章
第一主題はスローが増して甘美ですが、乗っけから揺さぶってきます。第一エピソードは速め繊細、ですが、弦楽の山場からは昂ぶりを否定する様なスローと煽りが入ります。第二エピソードは平穏な流れで1回目の山場を迎えますが、ターン音型からスローになり2回目の山場は抑え目の大スローです。その後は超静音スローでコンサートなら素晴らしいでしょう。
・・・・・
スローで揺さぶりのクセ物マーラー9です。特に第一楽章のフラットスローは密度が希薄になって窒息しそうですw その後はアクの強い?流れがたっぷりと味わえますね。なんとラストは美しいです。
クセ物マニアの貴方におすすめです!!




クルト・ザンデルリンク, Kurt Sanderling (4録音)
日本でもお馴染みの父ザンデルリング。マーラーの9番は4枚も正規録音を残しています。(もう一枚フィルハーモニア管との非正規盤がありますが…)


(#1)
Berlin SO
[Deutsche Schallplatten] 1979-2/28,3/2,8
鍛え上げた手兵 ベルリン交響楽団(東独)の芸術監督/首席指揮者を1977年に退いた2年後の録音ですね。
第一楽章
スローな序奏と第一主題、第二主題から反復で大きな波を奏でます。第三主題の激しさから暗転して展開部に入りますが少しモヤモヤした感じですね、山場はパワフルですが。再現部は落ち着いた流れで悪くありません。
第二楽章
主要主題と第一トリオは硬派なレントラーとスケルツォ。第二トリオはやや緩めて流れる様なスケルツォです。後半は情感を上げますが真面目過ぎかも。
第三楽章
主要主題と副主題の絡みは教科書的で変化に乏しく、中間部やラストでも変化量が不足気味です。
第四楽章
序奏・第一主題は厚めの音で入ります。第一エピソードは細く入って厚くなりますが没個性的です。第二エピソードも生真面目で、流れにアゴーギク・ディナーミクの個性が感じられません。
・・・・・
破綻の無い、落ち着いて計算された真面目なマーラー9です。何か一味足りません。




(#2)
BBC Philharmonic
[BBC Legends] 1982-7
ベルリン響の3年後、BBCフィルハーモニックを振った演奏です。
第一楽章
スローな出だしは変わりません。第三主題から展開部も同様ですが、自然体の流れと程良いコントラストがありますね。
第二楽章
ここでも主要主題から第二トリオまで穏やかさのレントラーとスケルツォになっています。全体としてやや緩さが強くダレますが。
第三楽章
主要主題と副主題の絡みはフラット、中間部も変化が薄いです。ラストはもっと強烈さが欲しいです。
第四楽章
序奏・第一主題は緩徐色を強めていますね。第一エピソードも第二エピソードもその流れで緩徐的です。ただ単調で感情移入は薄くフラットさが拭えません。
・・・・・
特徴が薄く緩いマーラー9です。特に第二第三楽章にマーラーの指示する「粗野」や「反抗的」が欠ける感じですね。




(#3)
NDR Symphonieorchester Hamburg
[Profil] 1987-11/7
BBC-Pとの5年後、北ドイツ放送交響楽団(現:NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)との演奏です。非正規盤から昨年正規盤となって話題になりましたね。
第一楽章
序奏から第一主題は適度にスローですが第二主題と反復も含めて緊張感があります。第三主題も緊迫感がいいですね。展開部、再現部共に適度な揺さぶりと荒れが締まりのある演奏にしています。
第二楽章
主要主題はカッチリ、そこから流れを作り第一トリオは表情変化させて明確なリズムを刻みます。スローダウンの第二トリオも全体の流れを生き生きさせていますね。後半は約束通りに荒れ気味に。
第三楽章
主要主部と副主題は落ち着いた絡みから軽妙さを見せ、中間部で牧歌調にチェンジします。ラストはコントロールが効き過ぎかも。
第四楽章
第一主題は大きく優美さを見せます。そして第一エピソードも重心の低い豊かな表情を見せてくれます。第二エピソードも哀愁漂う表情を見せながら山場を作り、『亡き子をしのぶ歌』引用の浮遊感から消え入ります。
・・・・・
適度な揺さぶりと興奮、安心して聴ける王道的マーラー9です。初めて聴くのにもオススメですね。
指揮者よりもドイツオケならではのパターンの気がします。この演奏だけ色合いが違うのが明白ですから。(同じ事はマーラー5番でも感じてインプレしています)




(#4)
Philharmonia O
[ERATO] 1992-1/24,25
NDR響の5年後、名誉指揮者を務めたフィルハーモニア管弦楽団を振った演奏です。
第一楽章
出だしは再びスローに戻って、第二主題への流れは変化が薄く反復もモッソリ。第三主題も見晴らしがよくありません。展開部・再現部もスローモヤモヤですね。
第二楽章
主要主題のtbが奇妙なヴィブラートですが、流れはレントラーが生きています。第一トリオはスロー、例によって落ち着かない変化です。第二トリオもスローの揺さぶりでモヤモヤ感が拭えません。
第三楽章
主要主題と副主題はリズミカルですが変化に乏しく退屈、でも中間部では表情を一転させます。ラストは約束通りに少し乱舞して見せます。
第四楽章
入りは美しい緩徐ですね。第一エピソードは抑揚が抑えられてフラット、第二エピソードもその延長、通して長く感じてしまいます。
・・・・・
82年BBC-Pの延長線上にある、もどかしさ満点のマーラー9番です。モッソリ・モヤモヤ、体調不良かもw
結局ザンデルリンクはNDR主導の演奏だけという事に思えてしまいます。




キリル・コンドラシン, Kirill Kondrashin (2録音)

(#1)
Moscow Philharmonic Orchestra
[Meloydia] 1964-5
コンドラシンが15年間首席指揮者を務めた手兵モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団を振った演奏です。
第一楽章
美しく軽い第一主題、第二主題も重さは控え目に、反復でも重厚さより明るさを感じます。展開部も軽めながらスピード感と切れ味の山場です。再現部も速め軽量で胃もたれしない流れですね。
第二楽章
主要主題は落ち着きから優美に、第一トリオはややもったいぶっていますが良いスケルツォ感です。第二トリオも大きく変化はさせずに穏やかですね。
第三楽章
主要主題・副主題共に速め軽やかで中間部も速く変化量は少なめです。12'を切って流れは速いですね。
第四楽章
序奏・主題は透明感ある美しさで、第一エピソードは哀愁を感じる流れからhrが主題を美しく奏でていい緩徐パートです。第二エピソードも哀しみを感じる美しさから山場を作ります。この流れはラストの消え入るターン音型にベストマッチでこの楽章として好みですね。透明な美しい哀しみの音色は、静かな"ersterbend 死"のイメージに近い印象です。
・・・・・
やや速めライトウェイトの肩のこらないマーラー9番です。最終楽章の静的な美しさは好みですね。
コンドラシンにしては淡白でしょうか。




(#2)
Moscow Philharmonic Orchestra
[ALTUS] 1967-4/16
1967年東京文化会館でのマーラー9番本邦初演。記念すべき録音ですね。マーラー人気が近年の事であるのが今更ながら再認識されますね。
第一楽章
美しい緩やかさの第一主題から興奮を避けた第二主題、それを大きく構えた反復と第三主題の提示部です。展開部も落ち着きはらい緩やか優美からアレグロ・リゾルートで興奮の山場を作りコントラストの良い流れ。彫りが深く、美しさと暗い重さのバランス良い楽章です。
第二楽章
主要主題は優美ですが表情豊かです。第一トリオは派手め第二トリオを優美にと、濃厚なスケルツォ楽章です。
第三楽章
主要主題・副主題は切れ味と軽快さのバランスよく流れて中間部は速めです。緩やかな揺さぶりを感じます。
第四楽章
揺さぶりを感じる主題、第一エピソードは繊細な音色からマーラーらしい弦楽の美しい山場を作ります。第二エピソードも静音パートは素晴らくラストへの静的流れはいいのですが山場もクールです。
・・・・・
コンドラシンらしい陰影を付けた明快なマーラー9番です。山場強音パートに激情さや狂気があれば素晴らしかったでしょう。




ディミトリス・ミトロプーロス, Dimitris Mitropoulos (2録音)
B.ワルターの跡を継ぎニューヨーク・フィルの音楽監督(1949-1958)を務めたミトロプーロスはL.バーンスタインにバトンを渡したわけですが、米国にマーラーを広げた功績も大きいですね。第9番は1960年にNYPとVPOの両オケを振った録音が残されていますが、その違いも驚きです。
今回紹介は両方ともCDセットでmonoになります。


(#1)
New York Philharmonic
[Music&Arts] 1960-1/23
バーンスタインが引き継いだ1958年に名称をニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団からニューヨーク・フィルハーモニックに改名した元手兵を振ったマーラー9番です。
第一楽章
第一主題は適度な揺らぎ、第二主題も大きくは表情を変えませんが第三主題前後からは大きく盛りたてます。展開部は静音パートでうまく間を使いながらNYPらしいパワフルさを活かしていますね。
第二楽章
主要主題は速く、テンポを下げた第一トリオでは切れ味を見せます。第二トリオはやや速めな優美さです。
第三楽章
主要主題は切れ味とリズミカルを合わせながらの重量級、副主題は軽やかに絡みます。中間部ではシンプルな美しさ、スローに落としてラストは見事なパワープレイです。
第四楽章
主要主題は緩やかに美しく入り、第一エピソードでは美しい哀しみの流れから情感を盛上げます。第二エピソードはスローで哀しみの回音音型を最大限生かします。山場を大きく、『亡き子をしのぶ歌』引用からコーダは美しく消え入ります。
・・・・・
速め主体の流れで一昔前のスタイル?ですが、パワーのマーラー9です。第四楽章の素晴らしさで、1960年のNYPの実力が味わえますね。




(#2)
Vienna Philharmonic Orchestra
[Memories] 1960-10/2
上記同年10月に親交の厚かったウィーンフィルを振ったマーラー9番ですね。逝去(1960-11/2)一ヶ月前の演奏です。
第一楽章
スローになった第一主題から第二主題へは表情を変えずに、反復後の第三主題で盛上げます。展開部は静音スローを鬱的に表し、対比よく切れ味と迫力を見せます。今風の展開になっていますね。
第二楽章
主要主題は一気にスロー化(標準的に)されました。歯切れよく流れ第一トリオでも遅めでシャープ、第二トリオは緩やか穏やかです。その後は緩急交えた流れです。
第三楽章
主要主題はここでも重量級、副主題はスローでモッソリになっています。中間部は美しさを演出して、ラストは派手ですが落ち着いています。
第四楽章
主要主題は変わらず美しい流れですが、第一エピソードは速めになり静的哀しみの表情が薄くなっている感じですね。第二エピソードも速めになって、この楽章の逆変化が不思議です。山場を大きく情感を付けるのは同じですが。
・・・・・
大きく変わって教科書的なマーラー9になってしまいましたいます。演奏時間は80分と6分ほど長くなってスローを生かした演奏ですが、これで標準的な時間でしょう。




エサ=ペッカ・サロネン, Esa-Pekka Salonen
Philharmonia Orchestra
[signum] 2009-3/22
元は現代音楽家で、M.リンドベルイやサーリアホと実験音楽合奏団Toimiiを組んでいたりしましたね。1983年にMTTの代役として急遽フィルハーモニア管弦楽団を指揮。2008年から同楽団の首席指揮者を努めていて、来日公演でも素晴らしいマーラーを聴かせてくれましたね。
第一楽章
第一主題は緩やか、第二主題へも適度な刺激で、そして大きく盛上げて反復に入ります。第三主題から見事に山場に向かいます。展開部もメリハリの強い大きな流れを作り見晴らしの良さを感じますね。
第二楽章
主要主題はスローに歯切れよく、第一トリオはテンポアップして良いリズムを刻みます。第二トリオでは穏やかな流れに転じて展開がスッキリとしていますね。その後もテンポ変化がうまいです。
第三楽章
主要主題と副主題はリズミカルで少々派手気味で、中間部でもやや速めに流れを作ります。その後緩やかに落として大きく山場を築き、ラストはハイスピードで派手に盛上げて終わります。見事!!
第四楽章
序奏から主要主題は情感の厚みを感じます。第一エピソードでは薄暗さや哀しみを感じますが、やや速め重心低めです。第二エピソードでも美しさが速めのテンポで今ひとつ生かされません。その辺りはサロネンの意図でしょう。その後ターン音型からは静的叙情性を間を使って高め、コーダからフィニッシュは静かに消え入ります
・・・・・
明瞭明快、見晴らし良いマーラー9ですね。ディナーミクとアゴーギクのバランスがとてもいいですが、第一第四楽章に澄みきった静的哀愁さがあればだったかも。




ゲルト・アルブレヒト, Gerd Albrecht (2録音)
4年前(2014年)に亡くなられた読響の常任指揮者としておなじみのドイツ人指揮者アルブレヒトは二つの録音を残していますが、両者異なる展開で好演! 残念なのは共に市場にでる事が少ないという事でしょう。


(#1)

Philharmonisches Staatsorchester Hamburg
[insider] 1991-9
albrecht-mahler9-hamburg.jpg
(聞いた事のないレーベルでamazonには登録が無い様です)

1988年1997年に音楽総監督を務めたハンブルク州立歌劇場、そこの管弦楽団であるハンブルク・フィルハーモニカーを振ったマーラー9です。
第一楽章
緩やか優美な第一主題、第二主題から反復そして第三主題ではうまく緊張を与えます。展開部以降もスロー基本で緩急良く堂々とした構えの王道演奏ですね。
第二楽章
ここでも緩やかな流れで構成されています。スローが強めの主要主題から第一トリオ、そして第二トリオと変化と締まりが良いですね。
第三楽章
主要主題はキレよく入り副主題も少し穏やかに、中間部でのシンプル&スローの落とし方がうまいですね。構えの大きさが響きます。ラストも気合の入った迫力です。
第四楽章
主要主題はスローに哀しみの美しさを奏でます。第一エピソードもその流れで沈んだ美しさから入り、終盤のターン音型を意識した素晴らしい流れです。もちろん第二エピソードは山場も含めて哀しみの美しさが見事に表現され、コーダから消え入ります。お見事!!
・・・・・
スロー基本で堂々としたマーラー9です。重心は低く鬱や哀の静的美しさと緊張はこの曲の本道でしょう。
入手難が問題ですがおすすめの一枚で、コンサートで出会えたら大喝采ものです。




(#2)
読売日本交響楽団
[YNSO] 1997-12/13
albrecht-yomikyo_mahler9.jpg
(会員配布盤の為amazonには登録が無い様です)

上記の9年後、読響の常任指揮者(1998-2007)を務めたアルブレヒトが就任の一年前に振ったマーラー9番です。(読響とのマーラー5番はいただけませんでしたが…)
第一楽章
序奏・第一主題はやや速めでシャープ、第二主題の表情変化は少なめですが金管で盛上げて反復し第三主題をビシッと決めます。展開部も速め基本で揺さぶりを含めて切れ味とテンションの張った流れです。キレキレのシャープな第一楽章ですね。
第二楽章
主要主題は抑揚を付け、第一トリオも流れに乗りリズミカルでシャープ。第二トリオで穏やかな色を見せますが後半の動機の絡みは速めの流れです。
第三楽章
主要主題は速めでテンションが張っています。副主題で軽やかになりますが絡んで速めで勢いを付けて進みます。中間部では穏やかに一休み? その後は揺さぶりを強めながらラストの速く切迫した強烈な山場を作ります。
第四楽章
主要主題は美しいのですが緊張した揺さぶりが強いです。第一エピソードは一転して暗く静かに落とし繊細さを見せつけ、山場は速めです。第二エピソードも速めに入りそのまま二度の山場を作り、その後はラストに向けたターン音型を揺らぎを付け美しく落とします。
・・・・・
緊張感みなぎるマーラー9です。速め設定*で揺らぎとテンションが強く、哀しみや美しさより緊迫さです。
初顔合わせがもたらしたのかこの張り詰めた空気は一聴の価値ありです。(非売品というのが残念!)


*演奏時間が81’から71'と大幅に短くなっています




クルト・マズア, Kurt Masur
New York Philharmonic
[TELDEC] 1994-4
3年前に亡くなった日本でもおなじみのマズアがニューヨークフィルの音楽監督時代のマーラー9です。
第一楽章
第一主題から第二主題への流れは一般的、その後半からは抑揚を強め反復は切れ味が良いです。第三主題で一転して展開部は暗いのですが速めで、小気味好い出し入れが良い流れを作ります。再現部は穏やかです。
第二楽章
主部主題レントラーは軽量、第一トリオは速いです。第二トリオで穏やかになり、後半は速め主体の出し入れから穏やかにまとめます。
第三楽章
主部主題は切れ味よく軽快に、第二トリオの静的動機が繰り返され中間部に入ると細かなやりとりからラストは激しい締めくくりです。
第四楽章
第一主題は情感強く入ります。第一エピソードでは静的暗転から叙情をたたえる流れになります。第二エピソードは哀愁、そこから山場を作るとコーダへ向かう準備になり、主要主題の変奏と『亡き子をしのぶ歌』引用からは美しさを見せてpppに終息します。
・・・・・
速めの流れに切れ味でコンパクトな印象が残ります。ライトウェイトのマーラー9です。
決して悪くはないのですが…




チョン・ミュンフン, Myung-Whun Chung
Seoul Philharmonic Orchestra
[DG] 2013-8/29,30
韓国生まれの米国人指揮者チョン・ミュンフン、ソウル・フィル(ソウル市立交響楽団)音楽監督時代のマーラー9番です。
第一楽章
第一主題はスローに続く第二主題も柔らかさ重視で、反復から第三主題で山場を作ります。展開部もスロー穏やかメインに山場を築くコントラストが明確ですね。好きな流れですが無表情的で、再現部はもやっとしてしまいます。
第二楽章
主部主題はややテンポを上げてリズムよく、第一トリオも大きくは変えずスケルツォらしいです。第二主題は静でスローに落とします。
第三楽章
主部主題・副主題はいきなりのアップテンポ、中間部で静で薄く展開します。ラストも盛り上げますが、なぜか訴えて来ません。
第四楽章
主要主題は弦楽器で大きく奏でます。第一エピソードは薄く良い流れですが無表情、ラストがコーダの様なのはやり過ぎでは。第二エピソードも早々と前半からエンディングに意識を持って行っている感じです。
・・・・・
第一・第四楽章の静を強調したマーラー9です。ただ、この曲に欲しい情熱や思い入れとは無縁ですね。





全集物を中心にまだ残っているようですので、また追記すると思います。^^;



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ダニエル・ハーディング / スウェーデン放送交響楽団 の マーラー交響曲第9番 は期待を裏切る素晴らしさ


ダニエル・ハーディング (Daniel Harding, 1975/8/31 - )
今や中堅どころとなったハーディングですが、個人的にはコンサートであまり当たった記憶がありません。一昨年のパリ管とのマーラー5番も今ひとつ。でもマーラー10番のCDは素晴らしいので、この9番にも期待して予約購入しました。

ハーディングが2007年から音楽監督を務めるスウェーデン放送交響楽団(Swedish Radio Symphony Orchestra)との録音ですね。

【後日記】『マーラー交響曲第9番 : 65CD聴き比べ』にも追記しました。




■ 第一楽章
緩やかで美しい第一主題、不安を感じさせる第二主題、反復は大きく奏でます。提示部のラストを激しく、展開部も柔らかさと切れ味の出し入れのコントラストが見事に付いていますね。再現部も懐の広さを感じさせながら、うまく静的なコーダへ結びます。
■ 第二楽章
主部主題、第一トリオ、共にやや重さを感じます。第二トリオは緩やかですが、決して軽やかではありません。第二第三楽章では激しさがベースに存在しますね。
■ 第三楽章
主部主題は切れ味良く、副主題もそれに絡みます。重厚さと軽妙さの微妙なバランスです。中間部はやや速めに美しさと哀しみを合わせ大きな波を奏でます。ラストの暴れ方は見事!!
■ 第四楽章
主要主題は美しく、ファゴットのモノローグから第一エピソードは情感大きく盛り上げ繊細に納めます。第二エピソードもその流れです。「亡き子をしのぶ歌」の引用からコーダはpppスローの美しさを生かして消え入ります。

期待を裏切る素晴らしさ。重心の低い切れ味と見事な広がり、哀愁よりも嶮しさのマーラー9番です。
近年ちょっとした でもクセの強いアゴーギク*が目立つ気がしていますが、ここでは違いましたね。一四楽章vs二三楽章の対比が見事でした。おすすめの一枚です。

*昨年発売のThe Wagner Projectや上記パリ管とのライヴ



本アルバムは2016年9月8-10日のセッションですが、実は2017年7月24日のヴェルビエ祝祭管弦楽団(Verbier Festival Orchestra)とのLiveを聴く事ができます。

Mahler “Symphony No. 9” (Daniel Harding • Verbier Festival Orchestra, 24 Jul 2017)

流れとしては良く似た演奏になります。第一楽章は悪くありませんが、第二楽章が軽めで間伸び感を感じます。第三楽章は揃いは今ひとつですが激しさが良いですね。第四楽章は似た展開ですがやや緩いです。
結果的には煮詰めたセッションと言う事になるのでしょうが、それをライヴで聴きたいところですね。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 40CD聴き比べ [#2 / CD:21-40]

マーラーの6番、パワープレイが嵌れば言うことなしですね。一方で冷めたクールさもありで楽しめます。好きなので色々なパターンで気に入った演奏が多いかもしれません。
今回は変化球と魔球の二人、N.ヤルヴィとH.シェルヘンを含めた20CDのインプレです。ストックはそれほどありませんが、これで40CDになりますね。

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.6 の聴き較べです (現在 #2回 40CDまで)
 #2: 20CD 本投稿
 #1: 16CD
 #0: 4CD バルビローリ聴き比べ




【後日記】ヴァンスカのマーラー6が出たので追記です
オスモ・ヴァンスカ, Osmo Vänskä
Minnesota Orchestra
[BIS] 2016-11
現在音楽監督を務めるミネソタ管弦楽団(Minnesota Orchestra)とのマーラー5番はややクセ者的な印象もあったのですが、チクルス第二弾の6番はどうでしょう。
第一楽章
スローで抑えめの第一主題、モットーは美しくアルマの主題ではそれを広げる様に華やかですがスローのアゴーギクが気になりますね。反復後の展開部も力強さはあっても冷静さが常に背後にいます。再現部では少し躍動感が感じられるかもしれません。
第二楽章
アンダンテを持ってきました。主要主題・副主題ともにごく普通の優美さ、中間部も流れは同じですが明るさが現れますね。美しい緩徐楽章ですが個性は薄いです。
第三楽章
スケルツォですね。主要主題は客観的で迫力や興奮を否定しているかの様です。クールとは違いますね。トリオは優美なスケルツォですが、それ以上でもありません。
第四楽章
序奏は緊張感の漂う素晴らしい流れかと思いきやスローモッソリに落ち込みがっかり。長い序奏から提示部の第一主題と経過句は勇壮ですがアゴーギクを殺して抑え込み、第二主題も同様です。展開部は序奏と同じく揺さぶりの効いた前半パートとフラット単調さの行進曲以降の組合せです。再現部も同じですが、それでもこの楽章が一番良いかもしれません。
・・・・・
よそよそしく掴みどろこの薄いマーラー6番です。この曲は興奮かクールさかですが、はっきりしないのはどうも…好みの問題になるかもしれませんね。
シベリウス・アカデミー同期生サロネンやサラステのマーラーの様にはいかない様です。




ジョナサン・ダーリントン, Jonathan Darlington

Duisburger Philharmoniker
[Acousence] 2008-6/18.19
このブログで超ご贔屓の管弦楽セット、ジョナサン・ダーリントン(Jonathan Darlington)とデュイスブルク・フィルハーモニー管弦楽団(Duisburger Philharmoniker)です。マーラーは第5番でも素晴らしい演奏を残していますね。→ このブログ内のダーリントンの投稿記事

第一楽章
重厚オーソドックスな第一主題の行進曲、そしてアルマの主題(第二主題)は情熱溢れる美しさです。展開部の二つの主題は重厚ですが、挿入部では不安感を隠す様なスローの静寂さに。再現部も響の良い華々しさです。
第二楽章
アンダンテを採用しています。緩やかで優しさを感じる第一主題に哀しみをたたえる様な第二主題、中間部はその流れから山場へ向かいますが全体として穏やかさを重視した緩徐楽章です。
第三楽章
従ってスケルツォ、主部は第一楽章の回帰的で華やかさ。トリオはスケルツォらしい優美さになります。
第四楽章
序奏は極端な揺さぶりは使いませんがややスロー。提示部第一主題は跳ねる様なリズムで第二主題に続きます。この曲の難解パート展開部ではスローとコントロールの効いた激しさで落ち着いた表現です。再現部でも同様に過度の興奮を避けながら山場を盛り上げます。コーダは暗さ控え目、ラストの一撃は約束通りです。
・・・・・
重厚にして華々しい第一・四楽章、穏やかさと優美さの第二・三楽章、このコントラストの付け方がダーリントンの音楽ですね。Liveですが、録音も素晴らしくクールなマーラー6番でおすすめです。




サイモン・ラトル, Simon Rattel (2録音)
ラトルは1987年と1989年に同曲を振っていますが、あまりに落差が大きいです。


(#1)

Berliner Philharmoniker
[BPH] 1987-11/14.15
ラトルが初めてBPOを振ったライヴ、それがこのマーラー6番でした。その15年後にBPO主席指揮者・芸術監督に着いたわけですね。
第一楽章
切れ味と緊迫感の第一主題とモットー、そこからコントラストよく第二主題を華麗に奏でます。速めの流れと相まって締まりある演奏が爽快です。
第二楽章
アンダンテの主要主題は優美さが心地よく副主題も哀愁感がいいですね。スロー静音パートも透明感があり、中間部の広がりに心地よくつなげます。山場は哀しみが溢れ、グッと来ますね。
第三楽章
落ち着いた中に切れ味良い主部主題、変拍子を生かした洒脱なトリオはまさにスケルツォです。後半は出し入れが強くなり情熱が伝わりますね。
第四楽章
序奏は揺さぶり少なく、第一主題を王道的に締まり良く、経過句のhrも朗々と鳴らすと第二主題は軽快そのものです。展開部・再現部もこの楽章の持つ激しさと華々しさのコントラストがよく、大きな見晴らしが快感です。ラスト一撃ではフライングがありますがBPOのご愛嬌w
・・・・・
ピッと張ったテンションが心地よい流れを作るマーラー6。不要な揺さぶりを排した速めのテンポと切れ味がマッチしました。
初ライヴでラトル得意の陰影付けは薄まり、カラヤン呪縛のBPO色が強いかもしれません。好きな一枚です!!




(#2)
City of Birmingham SO
[EMI] 1989-12/14-16
上記BPOの2年後録音、ラトルが鍛え上げたバーミンガム市響とのマーラー6番です。
第一楽章
提示部第一主題は重厚、モットーで抑えてアルマの主題は優美ですが、反復でなぜか間延び感が残ります。展開部・再現部でもスローパートでの緩さが気になりますね。やや締まりに欠ける感が強いです。
第二楽章
アンダンテですね。主部の二つの主題はスローでふんわり・もわ〜っと穏やか、掴み所がわかりずらいです。中間部以降も同様の流れで、山場以外は強烈な間延び感です。(汗)
第三楽章
スケルツォ主要主題は切れ味よく、ここまでで一番良い流れです。トリオもスケルツォらしい優美さがいいですね。
第四楽章
長い序奏は混沌さよりシャープさで、アレグロ・エネルジコからは流れよく提示部第一主題に入ります。そこから経過句、第二主題は特出はありませんが安心感がありますね。ただ展開部への繋ぎで緩さを見せる様に、その後もスローの間延び感が顔を出してしまいます。アップテンポの騎行などは締まっているのですが。
コーダでは三発目のハンマーが聴こえます。
・・・・・
BPOとは打って変わったスロー基本。そのスローが靄った見晴らしの良くないマーラー6です。アゴーギクや管楽器も処々で今ひとつ感が残りますね。

この2年の大きな違いは?? こちらは手兵ですからラトルのマーラー6、2年前はBPOの個性が出たマーラー6ということになるでしょう。




パーヴォ・ヤルヴィ, Paavo Järvi

Frankfurt Radio Symphony Orchestra
[major BD] 2013-6/29,30
現N響首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィが、当時首席指揮者だったフランクフルト放送交響楽団(現:hr交響楽団, hr-Sinfonieorchester)を振ったBD盤(第5番とカップリング)です。
第一楽章
やや速めで、行進曲は落ち着いて、アルマの主題は広がりを大きく進みます。展開部の穏やかさと再現部の切れ味も良いですね。
第二楽章
主部主題はテンポを抑えて適度重厚さ、トリオは一転スローで抑えめのシンプル。パーヴォも踊るスケルツォです。
第三楽章
アンダンテは主部の二つの主題はスローで澄んだ美しさ、同じ流れで中間部を超えると叙情高く山場を盛り上げて静かに締めくくります。美しい緩徐楽章ですね。
第四楽章
序奏は鬱でスローの揺さぶりからアレグロ・エネルジコで走ると、提示部行進曲は切れ味良く経過句を含めて進み、第二主題もシャープです。キーとなる展開部はスローの美しさと切れ味の表情変化を見事に付けて、行進騎行ではアゴーギクを振って来ます。再現部も同様に出し入れの良い流れを作り、コーダを鎮めてラスト一撃です。
・・・・・
切れ味の鋭さと美しい穏やかさのコントラスト、見晴らしの良いマーラー6ですね。広がりがあるBDの録音の良さも大きく寄与しているでしょう。
(ダイナミックレンジの広い録音の良さでハンマーの音がこんなに良く聴こえたのは初めてですね。逆にラスト一撃が弱く感じて弱点に思えるくらいですw)

同じ放送局系であるN響をベルリンで振った(2017年2月28日)演奏より一枚上手ですね。




ネーメ・ヤルヴィ, Neeme Järvi (2録音)
息子パーヴォとは違う、速さとメリハリの父ヤルヴィの本領発揮のマーラー6ですね。
ネーメの二つの録音、第一楽章提示部(再現有り)は20'程度でとても速い演奏です。参考にその演奏時間を並べておきますね。
      RSNO 日フィル
 第一楽章 20:01 20:52
 第二楽章 11:32 11:41
 第三楽章 13:37 13:05
 第四楽章 27:07 27:29


(#1)

Royal Scottish National Orchestra
[CHANDOS] 1992-11/8,9
ネーメ・ヤルヴィが1988年にロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の首席指揮者を退いた後の演奏ですね。現在は桂冠指揮者を務めます。
第一楽章
第一主題の入りから驚きのハイスピードです。アルマの主題も速くて優しさよりもそっけなさです。(笑) 展開部の挿入部ではスローにテンポを落とし、再現部で再びハイスピードに激しさを加えます。
第二楽章
スケルツォ主部主題も速くてキレキレ、トリオでは美しさを見せ揺さぶりをかけながら小ロンドCパートへ入ります。激しい出し入れが切れ味を感じさせてくれます。
第三楽章
やや速めから標準的になり、緩徐楽章の色合いを残すように哀愁の音色を奏でます。山場の盛り上げも美しく見事ですね。
第四楽章
王道系です。序奏は程々の揺さぶり、提示部行進曲は華やかさと切れ味、経過句から軽妙な第二主題につなげます。展開部は出し入れと陰影強くメリハリの効いた、このパートらしい切れ味が光ります。再現部でもその良い流れをつなげてコーダからラスト一撃です。
・・・・・
第一楽章、こういう変化球は大好きですね。速さのN.ヤルヴィの面目躍如。そして全体を貫く切れ味と怒涛のマーラー6番です。
演奏の切れ味も素晴らしいですし、音質もCHANDOSですから☆の方が良かったかな!!
(☆と㊟は紙一重ですw 個性派・クセ者でも楽しめるものが㊟ですね)




(#2)
日本フィルハーモニー交響楽団
[JPS] 2000-6/23
RSNOとの8年後、ネーメ・ヤルヴィが現在 客員首席指揮者を務める日フィルを振った演奏です。RSNOとの比較で聴いてみました。
第一楽章
第一主題はRSNOよりはテンポは遅いですがそれでも速め、アルマの主題はやや速め程度の提示部、展開部も標準的な演奏で基本速め、再現部は迫力で暴れ気味になりラストは突っ走ります。再現部はこちらの勝ち!!
第二楽章
スケルツォ主部主題もやや速め程度になり、トリオ以降も特徴的な揺さぶりは減っています。
第三楽章
アンダンテは速めで感情移入を避けた淡白さです。もちろん後半山場は迫力ですが全体的に美しさや哀愁は弱いです。
第四楽章
序奏は所々で暴れます、そこから提示部行進曲から経過句へは疾走、第二主題は軽快ですが弱い感じ。展開部は揺さぶりを生かして、厄介なこのパートをコントラスト良く見晴らしを付けます。続く再現部が素晴らしく、適度に暴れながら盛り上げが見事です。コーダのスローは影を感じさせる流れからラストの一撃です。
・・・・・
RSNOに比べると前半楽章のテンポも"速め"くらいで、後半の王道さも不足気味です。それでも充分に一癖モノを楽しめるマーラー6。
日フィルも好演で、RSNO盤を知らなければ㊟印です。




マルティン・ジークハルト, Martin Sieghart
The Arnhem Philharmonic Orchestra
[EXTON] 1994-3/19
交響曲第5番では残念な演奏だったオーストリア人指揮者ジークハルトと常任揮者を務めていた時のアーネム・フィルです。
第一楽章
第一主題は重厚勇壮で、アルマの主題は情感深い良い流れの提示部です。展開部も締まりのある第一主題からスローの挿入部へ重厚さの余韻を残す様に入り平安な流れにつなぎます。再現部は提示部の回帰で、コーダからフィニッシュも素晴らしい見晴らしの良さです。
第二楽章
スケルツォ主部の主題は第一楽章第一主題の流れを汲んで締まりが良いですね。重厚さをベースにトリオで一息つく感じです。マーラーの指示通り「重々しく」です。
第三楽章
緩やかで穏やかな第一主題、哀しさ覚える第二主題、その緩徐の流れから後半の山場を盛り上げます。スローさで時折気がぬける様な気配は気になりますが。
第四楽章
あまり変化を付けない序奏で入ります。提示部第一主題は勇壮、第二主題では穏やかに流れます。展開部コントラストの強い演奏で、アゴーギク・ディナーミクを振って濃い演奏です。スローの流れが素直に受け入れられないパートもありますが。再現部もスローから迫力で山場へ進み、輝かしい管楽器パートからコーダへ入り、ラストの一撃を迎えます。
・・・・・
90'を超えるスローな重厚さを全面に押し出したマーラ−6番です。もう少しスローさを抑えれば全体が締まったかも。また、録音・ミキシングでの作品作りも強く感じ、それもオケを助けている気がしますね。




レイフ・セーゲルスタム, Leif Segerstam
Danish National Radio Symphony Orchestra
[CHANDOS] 1990-9/24-26
フィンランドの怪人セーゲルスタムは個人的には現代音楽家の印象の方が勝ちますね。首席指揮者(1988–1995)を務めたデンマーク放送交響楽団(DR放送交響楽団)を振っています。第5番では素晴らしい演奏を見せてくれましたね。
第一楽章
行進曲主題はシャープに、アルマの主題はディナーミクで優しさを見せますが両者クセはありません。特徴的なのは展開部・再現部のスローパートを強調している事でしょう。
第二楽章
スケルツォ主部主題は第一楽章の印象を継続する様に進み、ここでもトリオをスローに明確に落として優美さを強調します。
第三楽章
第一主題は柔らかな音色で、第二主題では色合いを哀しみに変えます。優しさの中から山場を作るマーラーの緩徐楽章らしさに溢れたアンダンテになっています。セーゲルスタムは山場を押さえ気味でいいですね。
第四楽章
序奏は揺さぶりは少ないながら、不安感を掻き立てて提示部に流れ込みます。行進曲から経過句を経て第二主題まで冷静に奏で展開部へ。ここでもスローをうまく使い、過度の興奮や重厚さはありません。再現部もコーダも冷静です。気になったのはコーダでハンマーの様な音を感じた事、そうであればハンマー三発演奏ですが。
・・・・・
シャープさとスローの出し入れ(Agogik)がセーゲルスタムらしいですね。興奮と重厚さを排して、クールでスマートなマーラー6です。好きな盤ですね。
突撃型演奏が好きな方には向かないかも。




アントニオ・パッパーノ, Antonio Pappano
Orchestra dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia
[EMI] 2011-1/8,10,11
パッパーノが音楽監督を務める聖チェチーリア音楽院管弦楽団を振ったマーラー6です。
第一楽章
第一主題はスローにして重厚、モットーで抑えると第二主題アルマの主題を華やかに奏でます。展開部・再現部は強弱コントラストを生かして派手で壮大ですね。管楽器の華やかさが光ります。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は重厚、変拍子のトリオは優美でまさにスケルツォ。この二つの旋律が小気味好く、メリハリのある流れを作っていますね。
第三楽章
抑えの効いた主要主題はスローに美しく、イングリッシュホルンの副主題も同様に美しい流れを作ります。中間部以降も情感強い山場を含めて、美しい緩徐楽章になっていますね。
第四楽章
長い序奏は力強さと暗さのコントラストを付けて明瞭に、アレグロ・エネルジコからの提示部第一主題は抑え気味の行進曲から経過句で盛り上げると、軽快な第二主題へと見晴らしの良い流れを見せてくれます。展開部・再現部は行進曲や騎行を切れ味よく派手で劇的に、コーダは暗く沈みラストの一撃へ繋げます。
・・・・・
見事なライヴ、派手で華々しい明瞭なマーラー6。気持ち良さが欲しい人にはこれでしょう。☆を付けたくなります。




ベンジャミン・ザンダー, Benjamin Zander (2録音)
英国人指揮者ザンダーは1979年に自ら立上げたセミプロのオーケストラ、ボストン・フィルハーモニー管弦楽団(小澤征爾さんのいたボストン響 BostonSymphonyOrchestraとは違います)を率いてますね。コンサートの前にはプレトークで、毎回コンセプトを解説しているそうです。


(#1)
Boston Philharmonic Orchestra
[Carlton] 1994-3
その手兵ボストン・フィル(略ならBPO?笑)を振ったマーラー6です。
第一楽章
勇壮な第一主題ですがモットー弱音でスロー化、アルマの主題では広がりのよい美しさで対比がいいですね。展開部のスローパートを強調して間延び感、それ以外はややありきたりで少々退屈な第一楽章です。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はキレはありますが重心が軽め、トリオもやや速めで軽量。あっさり過ぎかも。
第三楽章
主要主題、副主題共に適度に優美ですがフラット気味、ぬるま湯です。中間部以降も変化は薄いです。
第四楽章
陰鬱薄めの序奏から提示部第一主題は流れに乗りますが抑揚が不足気味、第二主題でも表情変化は適度ですね。展開部もモヤモヤしています。再現部の締まりが一番いいかもしれません。
・・・・・
モワッとしたマーラー6です。オケもイマイチで気持ちが入っていません、残念ながら。
ハンマー三発でしたね。




(#2)
Philharmonia Orchestra
[TELARC] 2001-5/22-25
上記の7年後、フィルハーモニア管を振ったマーラー6です。興味深いアルバムで、第四楽章はハンマー3発(初期稿)と2発(改定)の二つのヴァージョンを残しています。また全楽章の解説コメントCD付きで、どうも解説をしないと気が済まない?様ですw (マーラー5番でも同様に解説語りCD付きでしたね)
第一楽章
重厚な第一主題からアルマの主題は華々しくスロー重視の提示部です。展開部以降も演奏の締まりは良いのですが、全体のスロー感が今ひとつで集中力が途切れます。
第二楽章
スケルツォ主要主題は締まりを感じます。トリオ後半もうまく変化を付けていますね。堂々としています。
第三楽章
主要主題は少し抑揚を付け優美で前楽章とのコントラストがいいですね。副主題はスローを生かした哀愁さがうまいです。中間部以降も適度な揺らぎが生きた展開です。
第四楽章
序奏は陰影薄めアゴーギクは振っていますがスローが気になります。第一主題から第二主題への流れや展開部以降もボストンフィルと似ています。スローが気になるもののオケの締まりが全然上でその分が楽しめます。
・・・・・
スローが足を引っ張るマーラー6です。第二第三楽章は楽しめますが、特筆はと問われれば…??
何よりオケの差を感じましたね。




ゲオルク・ショルティ, Sir Georg Solti

Chicago Symphony Orchestra
[DECCA] 1970-3,4
言わずと知れたショルティが育て上げた手兵 シカゴ交響楽団とのマーラー6ですね。
第一楽章
速さで突き進む第一主題、派手に奏でるアルマの主題、乗っけからまさにショルティ/シカゴ響炸裂です。展開部も勇壮さメインに柔らかな響のコントラスト、激しさを増しながら再現部へ突入するとコーダを派手派手しく納めます。
第二楽章
第一楽章の流れをそのままに主要主題は速め迫力、怒涛の進撃です。トリオは優美なスケルツォに変化させコントラスト付けが上手いですね。
第三楽章
アンダンテらしい優美な流れの主部二つの主題、中間部では明るさと美しさから大きく山場を作ります。厚いアンダンテ。
第四楽章
序奏は陰鬱さは薄く重厚中心に変化を与えています。提示部第一主題と経過句は迫力の行進です。第二主題もその流れのまま続きます。展開部・再現部も緩急はありますが突撃性大重視です。3発目のハンマー?の様な音がしますが。
・・・・・
いかにもショルティ/シカゴ響、怒涛の迫力のマーラー6ですね。とにかく勇壮な戦闘シーンです。




アントニ・ヴィト, Antoni Wit
Polish National Radio Symphony Orchestra
[NAXOS] 1992-12/15-19
カラヤンの助手を務めていたポーランド人指揮者ヴィトですが、何と言ってもNAXOSで数多くの録音を残している事で知られていますね。そのヴィトが1983-2000年の間音楽監督を務めたポーランド国立放送交響楽団との録音です。
第一楽章
第一主題は勇壮、モットーで静まりアルマの主題は華やかです。展開部ではスローパートを強調しているのが特徴的ですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は抑えめで、トリオはスローに落とします。最後の主要主題では迫力を見せますが、楽章としては控えめの感じがしますね。
第三楽章
主部の二主題は穏やかそのもの、中間部もやや抑え気味に山場を作ります。
第四楽章
序奏は静的、第一主題は行進曲を明確にしていますがやや弱め。展開部・再現部共にコントラストは弱めです。
・・・・・
穏やかさが印象に残るマーラー6ですね。迫力もあるのですが強烈さは弱いですね。炭酸の弱いコーラみたい?!




ヘルマン・シェルヘン, Hermann Scherchen

Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
[MEMORIES] 1960-10/4 =mono=
さてシェルヘン先生です。ライプツィヒ放送交響楽団(現:MDR交響楽団)を振ったマーラー6ですが、大カット短縮演奏です。よく言われるのは第5番ですが、こちらも負けず劣らずの狂気を味わえます。(MEMORIESから再発されましたね)
第一楽章
第一主題・第二主題共に猛烈なハイスピードで管楽器はもつれ気味。提示部の繰り返しはもちろんカット!! 展開部・再現部も早回しで聴いているみたいですw
第二楽章
アンダンテを持ってきました。ここでは特別大きな異常性を見せませんね、中間部入りと山場でいきなりテンポアップは凄いですがそのくらい。シェルヘンは緩徐楽章は猛スピード化させない傾向ですね。(第5番では逆に超スロー化しています)
第三楽章
爆速スケルツォです。小ロンド形式で主要主題とトリオを繰り返すわけですが、そんなかったるい事しません。当然カット!! あっという間に終了、演奏時間は約半分w
第四楽章
序奏はコントラスト良く、アゴーギクが強いくらいです。まぁ一般的には充分"変"ですが。提示部第一主題からスピードアップ、でも第二主題も含めてそれほど過激ではありません。展開部はテンポは揺さぶりの強い程度の感じですが、後半はカ〜ット!! なのでハンマーは一発になっちゃいますw。再現部も似た流れで中盤をカット!! でもコーダはごく普通ですね。
・・・・・
爆速、奇怪、カット短縮のマーラー6です!!
詳細は楽章インプレの通り。音は劣悪ですが、一度聴いてみてほしいですねw




ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン, Jaap van Zweden
Dallas Symphony Orchestra
[dsolive] 2013-3
オランダのズヴェーデンはコンセルトヘボウ管のコンマスから指揮者になっています。来年2018年からニューヨークフィルの音楽監督に就任が決まっていて、早くも3月には新たな手兵を率いて来日しマーラー5番を演奏しますね。(もちろんチケット購入済みですw)
これは音楽監督を務めたダラス交響楽団を振ったマーラー6になります。
第一楽章
第一主題は少々まとまりの悪さと管楽器も危なげですがクセはありません。モットーからアルマの主題は優美です。展開部も再現部もバランスの良い音出しを感じます。
第二楽章
スケルツォです。主部主題からトリオもクセはなく安心の流れで切れ味もありますね。見事ですが何か一つ個性が欲しい感じです。
第三楽章
静的で美しいアレグロ。主部の主題も透明感があり、中間部でも牧場の広がりの様なのびやかさを見せます。本流の演奏ですね。
第四楽章
序奏の揺さぶりや陰鬱感は弱めですが良い流れで、第一主題から経過句も行進曲らしい切れ味で進みます。その流れからの第二主題も爽やかですね。展開部・再現部でも処々で間延び感はありますが山場を大きく奏でて、行進曲や騎行を勇壮に進みます。特徴に欠けるのは残念ですが素晴らしい演奏です。
・・・・・
音も良く クセも無く きれいにまとまったマーラー6です。その分、指揮者の意図や個性を楽しみづらくワクワク感がありません。初めて聴くならおすすめでしょう。




ジョナサン・ノット, Jonathan Nott

Bamberger Symphoniker
[Tudor] 2008-10/27-31
現東響の音楽監督であるジョナサン・ノットが16年間首席指揮者を務めたバンベルク交響楽団とのマーラー・チクルスからのマーラー6です。ノットは現代音楽で著名なアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督も務めていた事もあり、現代音楽を積極的に取り上げるので好きですね。
第一楽章
速い第一主題、アルマの主題も優雅ですが速めです。展開部ではスローとのコントラストをうまく付け、再現部では激しさを増して来ます。コーダも第一主題を陰影強く、ラストは華々しさです。
第二楽章
スケルツォです。第一楽章の第一主題の流れを感じる主部主題で、切れ味抜群ですね。トリオでは一転させて優美そのもの、見晴らしと締まりの良さが感じられます。
第三楽章
アンダンテの主部二主題は緩やかな優しさの緩徐楽章です。マーラーの緩徐楽章につきものの山場も大きく奏でます。ただ、流れのキーになる中間部に明確さが欠けるのが気になり残念です。
第四楽章
個性が出やすい序奏はあまり弄りません。切れ味の行進曲から心地よい第二主題の提示部。展開部は落差の大きなコントラストが特徴的に付けられます。この辺りがノット節とでもいう感じでしょうか。再現部前半を緩く、第一主題再現からは一気に走り、コーダは暗く沈めます。
・・・・・
コントラストと切れ味のマーラー6です。指揮者とオケが流れの強弱・遅速表現を共有していることがわかります。陰影が強く好みが分かれるかもしれませんが主張が明確で好きですね。アンダンテ中間部は見逃しましょうw




ジェフリー・サイモン, Geoffrey Simon
Northwest Mahler Festival Orchestra
[NWMF] 1998-7/19
(自主制作盤の様で、残念ながらamazonでは見つかりません)

オーストラリア人指揮者J.サイモンは米国でチェロをシュタルケルに師事、指揮を英国で習って米オケで活動していました。現在は英国を活動拠点に、レオポルド・ストコフスキー協会の会長でもあります。
米アマチュアオケのノースウェスト・マーラー・フェスティヴァル管弦楽団の指揮者兼顧問時代の演奏で、同音学祭1998年のLiveです。
第一楽章
速い第一主題をモットーでスローダウンさせ、その流れにアルマの主題を乗せて行きます。ありそうで無いうまい流れですね。展開部では速い流れとスローを対比良く見せてくれます。
第二楽章
スケルツォも速めの主要主題で第一楽章との繋がりがいいですね。(議論と好みはあるでしょう) トリオは適度に落として美しくメリハリがあります。
第三楽章
主要主題と副主題では一転してスローで甘美です。中間部前で哀愁を見せて中間部では明るさを広げラストの山場を盛り上げます。が、この展開は楽器の実力が出るので厳しいかも…
第四楽章
序奏はスローで陰影の少ない、陰影深くは無理でしょうが、流れです。第一主題は落ち着いて適度なテンポですがHrは苦しい、第二主題はそのままのテンポで続きますが揺さぶりがうまく付けられていますね。展開部も王道的な抑揚を付けて表情豊かです。二発目ハンマーは壊れた様な音がしますw 重厚&パワー王道的流れですね。
・・・・・
基本は速さでスローとのコントラストを見せるマーラー6です。オケの技量はHrの酷さを頂点に次元は低いですが最終楽章は気持ちが伝わります。それがアマやユースのオケの楽しさですね。^^/
録音も今ひとつでrec.レベルが低く大きくヴォリュームを上げる必要がありましいた。




モーリス・アブラヴァネル, Maurice Abravanel
Utah Symphony
[Vanguard] 1974-5

(入手可能なら全集で持っていてもアブラヴァネルは面白いですね)

アブラヴァネルは第二次大戦でユダヤ迫害を逃れてオーストラリアに渡った後、米国ユタ州でユタ響の発展に寄与していますね。ユタ交響楽団を30年以上(1947–1979)に渡り磨き上げたアブラヴァネルのマーラー6です。
第一楽章
やや速めの第一主題はモットーでペースを落としてアルマの主題で広がりを見せます。現在では絶滅種の繰り返し無しの提示部です。それ以外はクセの少ない第一楽章ですね。
第二楽章
スケルツォも速く入り、約束通りにトリオで優美にスロー化させます。流れは自然体で肩が凝りません。
第三楽章
優美な主要主題から副主題は哀愁を感じて素晴らしい流れです。中間部で明るい光を照らして山場を盛上げて納めます。感情移入を避けているのですがグッとくるものを感じます。
第四楽章
序奏の陰影は少なめ、第一主題の適度な興奮から第二主題が穏やかな風を吹き込みます。展開部も適度なテンポ変化を付けて気持ち良いですね。過度の興奮を避けて流れ重視の最終楽章です。
・・・・・
アブラヴァネルらしいテンポ変化とナチュラルな演奏がマッチして心地良いマーラー6です。力む様な興奮を排してオケの馬脚を表さない流れかもしれませんが、アンダンテでは心を打たれるものがあります。

㊟印を付けた第5番の様な変化球とは対極にある自然体の演奏で興味深いですね。でも第一楽章提示部の反復無しver.は今や貴重かも。一聴の価値ありです。




パク・ヨンミン, Young Min Park
Bucheon Philharmonic Orchestra
[Sony] 2015-9/8,9
ギーレンに師事し、ラ・フォル・ジュルネ金沢でも来日経験のあるパクが2015年から音楽監督を務めるプチョン・フィルハーモニック・オーケストラ(1988年創設)を振ったマーラー6です。
第一楽章
第一主題は勇壮、アルマの主題は伸びやか優美な提示部です。基本は真正直な演奏ですが、展開部のスローは間延び感、再現部もキリッとした切れ味が欲しい感じです。
第二楽章
アンダンテを持って来ました。主部の二主題は穏やかですが、全体スローさの中に気持ちが伝わってこないもどかしさを感じます。
第三楽章
主部主題、トリオ共にまとまりは良いのですが、角を落とした様な何か一つ欲しい流れです。
第四楽章
序奏は派手さとコントラストが効いています。提示部第一主題行進曲は流れよく入るのですがスローの緩さが出ますね。第二主題も印象は薄いです。とは言えこの楽章の展開部・再現部が一番スパイスが効いています。まぁそう言う曲ですが。
・・・・・
スロー基本で安全運転のマーラー6。音も良くミスもクセもないのですが、情熱や個性といった訴えかける何かが感じられません。最終楽章展開部以降が元気になりますが、時すでに遅しかな。
(スローの揺さぶりはギーレン仕立て?!w)






次は数枚ストックしているテンシュテットをメインにインプレしようと思っています。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 70CD聴き比べ! [#4 / CD:41-50]

第4回のマーラー9番インプレは、ヤンソンスやシャイー, ジンマンといった実力派、それにシェルヘンとマデルナの変化球師弟コンビで計10CDです。冒頭はコンサートにも行ったラザレフ/日フィル盤です。
これで聴き比べも50CDまで来ましたね。


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.9の聴き比べです (現在#5回 70CDまで)
 #5:20CD
 #4:10CD 本投稿
 #3:10CD
 #2:20CD
 #1:10CD


アレクサンドル・ラザレフ, Alexander Lazarev
日本フィルハーモニー交響楽団
[JPS] 2013-10/27
日フィル首席指揮者時代(現:桂冠指揮者兼芸術顧問)に東京芸術劇場で振ったマーラー9ですね。このコンサートには行っていました ▶︎▶︎ インプレです
第一楽章
第一主題はやや速め、第二主題後半盛上げて反復、テンポを上げて第三主題に繋げます。やや速めながら癖のない提示部です。展開部はやや速めの流れですがパワーパートと緩やかさとのコントラストを付けています。
第二楽章
主要主題・第一トリオはやはり速めでシャッキリ感があります。第二トリオはトーンダウンさせますが楽章としては速い流れに変わりありません。
第三楽章
主要主題は標準的テンポ・表現になり、副主題はやや穏やかに現れます。中間部は緩徐ですがややテンポを揺さぶっています。ラストはマーラーの言う通り「きわめて反抗的に」です。
第四楽章
主要主題は暖色の優しさですね。やっぱり速めで、第一エピソード以降も色濃く哀愁美ではありません。しかし第二エピソード後半からは一転スローダウン、ターン音型を美しく生かしながら消え入ります。
・・・・・
速さとコントラストでシャキッとしたマーラー9ですね。悪くありませんが箱庭的コンパクトにまとまった感じです。速めの設定がそうさせているかもしれません。

上記コンサートのインプレとのギャップが面白いですね。タクトが降ろされるまでの長〜ぃ"間"が残されているのは嬉しいです。(CDはエンジニアが音作りに参画しているのでホールの音構成とは違ってきて当然ですね)




マリス・ヤンソンス, Mariss Jansons (2録音)

(#1)
Oslo Philharmonic
[SIMAX] 2000-12/13,14
ラトビア人指揮者ヤンソンスがオスロフィルの首席指揮者最後の年にマーラー9を振った録音ですね。
第一楽章
第一第二主題と反復、第三主題は王道の流れで心地よく展開部に入ります。展開部は緩急のコントラストを強調してメリハリが効いていますね。再現部でも締まりのある流れですね。
第二楽章
主部主題、第一トリオ、第二トリオ、共にクセのない流れで構成されて安心感がありますね。レントラー的リズム感は弱いです。
第三楽章
主部の二つの主題はリズムよく、第二トリオから中間部は哀愁を漂わせて最後は激しく結びます。流れは本流的で安心感はありますね。
第四楽章
序奏・主要主題、第一エピソードは本流的、第二エピソードは速めです。速い流れから山場を作り、『亡き子をしのぶ歌』引用からコーダは静的美しさです。
・・・・・
安定傾向が強く引き換えにワクワク度が低いマーラー9です。演奏はやや速め主体、切れ味はありますね。




(#2)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR-KLASSIK] 2016-10/20,21
オスロフィルの16年後、現在ヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送交響楽団とのマーラー9、昨年の録音ですね。
第一楽章
第一主題は緩やかに変わっていますね。そして第二主題への変化が滑らかながら強調されます。第三主題も大きく奏でて、展開部は陰影の大きさを出し入れよく進みます。演奏時間も2'以上長くなって、緩急の"緩"を生かしたスケール感が感じられます。
第二楽章
ここでも細かなアゴーギクとディナーミクでコントラストを付けて奥行きのある演奏へと変化しています。リズムも良い感じです。
第三楽章
主部から第一トリオはリズムと切れ味がドイツ風に感じますw 第二トリオからも広がりのある流れですね。
第四楽章
主要主題も程よい揺らぎが広がりを感じます。第一エピソードでの哀愁度は低めで第二エピソードは大きく奏でます。ラストは思いの外 暖かめです。オスロフィルより1'半くらい短くなっているのですが、ラストに感じる速めの流れと消え入り感不足は残念かも…
・・・・・
緩急のコントラストをうまく生かした演奏です。感じるのは ほっこり暖かな流れのマーラー9。そこが好みを分けるでしょうか。




リッカルド・シャイー, Riccardo Chailly
★☆
Royal Concertgebouw Orchestra
[DECCA] 2004-6/14-18
シャイーがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 首席指揮者最後の年の録音ですね。
第一楽章
序奏・第一主題はスロー、第二主題で暗く落として反復では雄大になります。第三主題を大きく奏でると展開部で暗転・重厚に、そして変化の激しい展開を見せます。再現部は大きく優美に入り後半からコーダは静的に美しく消え入ります。
第二楽章
レントラー主部主題はスローで硬い動き、第一トリオはスケルツォの様にゆったりとリズミカル、第二トリオは優美です。全体を通す3/4のリズムが生かされて心地よい楽章ですね。
第三楽章
主部主題はリズミカルに、第二トリオからの中間部を懐広く穏やかに、ラストは迫力です。
第四楽章
「愛の死」引用の序奏からvn主要主題は弦楽の美しさです。第一エピソードも暗く淀んだ哀しみと美しさでラストを予感させるかの様です。第二エピソードから山場を大きく描き、『亡き子をしのぶ歌』引用からアダージッシモのコーダへのppp静的美しさは素晴らしいですね。
・・・・・
完成度の高いマーラー9です。緩急バランスが良く、全パートに心地よさを感じます。




デイヴィッド・ジンマン, David Zinman
Tonhalle Orchester Zürich
[RCA] 2009-9/28〜10/1
1995–2014年にジンマンが音楽監督を務めたトーンハレ管とのマーラー9ですね。
第一楽章
スローで緩やかな第一主題、第二主題の翳りも薄めにして第三主題を高らかに山場を作ります。長い展開部は陰鬱に入りスロー基準に揺さぶりながら再現部の静かなコーダを結びます。
第二楽章
主部主題レントラーは華やかに、第一トリオも切れ味よく優美、第二トリオは穏やかに流れます。全体優美ですね。
第三楽章
主部主題はハイテンポで軽快に、中間部からは穏やかさですが後半山場とラストは力があります。
第四楽章
第一楽章を思わせるスローで緩やかな主要主題。第一エピソードは広がりのある流れですが情感は弱め、第二エピソードも同様ですね。緩い揺さぶりを経て『亡き子をしのぶ歌』引用からはpppの指示通りに静かに結びます。このラスト静音はスローが生きましたね。
・・・・・
感情移入を抑えゆったりとした、スローのマーラー9。薄味で緩さを感じてしまうかもしれません。




ルドルフ・バルシャイ, Rudolf Barshai
Moscow Radio SO
[BIS] 1993-4/13
イスラエル亡命後のバルシャイが初めてロシアに帰った時にモスクワ放送交響楽団を振ったマーラー9番です。
第一楽章
第一二主題は大きく、その後も緩急をうまく使い締まりの良い流れです。
第二楽章
マーラーの指示の様に粗野的なレントラー主題は重厚に進み、複合三部形式のBパートは力強い流れです。Cも穏やかですが強さを感じますね。山場は抑え気味ですね。
第三楽章
ここでも堂々たる前半を作り、中間部はやや速めに流します。ラストは重厚さを生かして迫力いっぱいです。
第四楽章
「愛の死」引用は重厚な美しさ、主要主題も重々しいです。第一エピソードも弦が重さを保ち、第二エピソードへは美しく繋ぎます。そこから大きく山場を作り、厚みのある流れからアダージッシモのコーダは静的で美しいです。アプローズは熱烈です。
・・・・・
威風堂々、コンサート受けしそうなマーラー9ですね。個人的には線の細さが欲しいきがしますが、この流れもありかもしれません。




ウィン・モリス, Wyn Morris
Symphonica of London
[IMP] 1978-5
マーラー解釈では名が知れた?くせ者の一人、好きなウィン・モリスです。オケは詳細が良く分からない「シンフォニカ・ロンドン」とのマーラー9ですね。
第一楽章
序奏・第一主題は違和感なく、第二主題も落差をあまり付けずに入ります。反復は穏やかから劇的に、重厚な展開部に入ります。再現部もバランスが良いです。クセのない代わりに特徴も薄い演奏ですね。
第二楽章
主部主題レントラーは正統に、切れ味良い第一トリオから穏やかな第二トリオにトーンを落とします。流れに少し緩さを感じます。
第三楽章
主部主題、第二トリオから中間部はここでも正統、ですが後半で少しスローになって暴れてくれます。間延び感は拭えませんがモリスの個性が垣間見れました。
第四楽章
主要主題、もちろん正統。第一エピソードは澄んだ音色を聴かせ、第二エピソードもその流れから大きな波に繋ぎます。『亡き子をしのぶ歌』引用からの美しさもキッチリ静音でコーダに繋げます。
・・・・・
正統ですが各楽章のパート構成にメリハリが薄く、何かスッキリしないマーラー9です。とてもW.モリスとは思えませんw
唯一の救いは第三楽章のラストですね。




ヘルマン・シェルヘン, Hermann Scherchen

Wiener Philharmoniker
[ORFEO] 1950-6/19
5番6番では本領を発揮したシェルヘン先生がウィーンフィルを振った盤です。9番はもう一枚BBC-SOとの録音(非正規盤)もありますね。
■ 第一楽章
とにかく速めのスタート。そしていつの間にかペースは戻ってきます。この独特のアゴーギク、シェルヘン教祖ならではでしょう。
■ 第二・三楽章
レントラーは全体的にもっそりですが、ここでも変化は激しいです。第三楽章はリズムよく流れ一般的な解釈で走り抜けますが、コーダは驚異のアッチェレランドを見せます。
■ 第四楽章
予想に反して標準的スローに入ります。微妙なアゴーギクを振ってはいますが王道的解釈でしょう。ラストも美しいです。
・・・・・
もちろん変則、よくもVPOをここまで手なずけたと言った感じでしょうか。とは言え5番6番に比べれば大した事はなく?、古いので音も最悪ですからシェルヘン先生に興味がなければ無用でしょう。私には大切なCDですw
ちなみにマーラー9番としては世界最速演奏(第一楽章単独も)になります。




ブルーノ・マデルナ, Bruno Maderna (2録音)
現代音楽家にして奇才指揮者マデルナのマラ9は3録音残されていますね。(所有は2CD)
指揮は上記H.シェルヘンに師事しています。師に倣ってARKADIA盤の第二楽章(13'21")は世界最速演奏になりますね。


(#1)

BBC SO
[BBC Legends] 1971-3/31
マデルナがBBC管を振ったマーラー9番です。
■ 第一楽章
提示部から感情の出し入れの激しさを見せます。長い楽章ですが出し入れの強さで聴かせますね。ラストは美しいです。
■ 第二楽章
テンポの速いレントラーで始まり、複合三部形式の各パートもアゴーギクやディナーミクも極端に振らずに軽快そのもの。山場はハイスピードです。
■ 第三楽章
ロンドも速めで入りメリハリのある演奏ですがやや落ち着きが足りない感じですね。中間部以降は緩やかな美しさも見せながら、ラストはハイスピード一体感をもって締めています。
■ 第四楽章
最終第四楽章も入りはやや速いですが不思議と違和感は感じません。第一エピソードも速く、第二エピソードは穏やかです。アゴーギクを細かく振って緩急を付けながら山場を盛り上げて、「太陽の輝くあの高みでの美しい日」引用を美しく奏でて消え入ります。(拍手の入りが早すぎ!)
・・・・・
Scherchenの影響を感じる緩急独特アゴーギク、それに追従するBBC-SOの演奏も良いですね。この流れもありで、好きな一枚。




(#2)
Orchestra Sinfonica di Torino della RAI
[ARKADIA] 1972-12/22
1年9ヶ月後、トリノ・イタリア放送交響楽団(現:RAI国立交響楽団, Orchestra Sinfonica Nazionale della RAI)を振ったマーラー9盤です。
■ 第一楽章
スローな入りですが、全体的には速くなりディナーミクも強めになっています。怪しげな雲行きといった気配でしょうか。
■ 第二楽章
テンポの速いレントラー、複合三部形式の各パートとも速くアゴーギクはその分薄くなっていますね。山場は強烈なハイスピードで、オケも着いて行くのがいっぱいです。
■ 第三楽章
ここでも速めでメリハリのある演奏ですが、忙しないのは同じですね。中間部はもったいぶった情感さを強く、その後スローにしてラストは強烈ハイスピード!!
■ 第四楽章
最終第四楽章も入りは穏やかに変わっていますね。実は演奏時間が1'半近く伸びています。「愛の死」引用テーマは速めに素っ気なくなっています。第一エピソードはやや遅くなり優美さから揺さぶり強い劇的山場へ向かいます。「太陽の輝くあの高みでの美しい日」引用を同じ様に美しく、そして静寂に消え入ります。
・・・・・
アゴーギクの振り幅が大きく揺さぶりの強い変化球マーラー9番です。でも抑え処はしっかり、ラストなどは王道そのもの。それが"どっちつかず"な印象を残しているかも。せっかくなら魔球にして欲しかったw
シェルヘン先生が上にいなければ、㊟印!!






もう少しかと思っていたのですが、全集物など見直すとまだまだありそうです。整理が悪い?!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

フランソワ=グザヴィエ・ロト(François-Xavier Roth) の マーラー交響曲第5番 は最終楽章ですね


本来なら「マーラー交響曲第五番・名盤珍盤 聴き比べ 170CD 」の方でインプレするのですが、先に単独インプレです。


フランソワ=グザヴィエ・ロト (François-Xavier Roth)
フランス人指揮者で、現在46歳。ケルン・ギュルツェニヒ管のKapellmeister (音楽監督でいいですよね) を務めています。またロンドン交響楽団(LSO)の首席客演指揮者も務めていますね。
個人的には現代音楽の指揮を得意としてドナウエッシンゲン音楽祭などに登場しているイメージがあります。昨年4月には東京文化会館で都響と素晴らしい「火の鳥」を演じてくれたのは記憶に新しいです。➡︎ インプレです


ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団(Gürzenich-Orchester Köln)
ケルン・ギュルツェニヒ管はマーラー5番の初演(1904年10月19日 マーラー本人指揮)オーケストラですね。CDケースの裏にもそれが謳われていて売り文句の様です。
(本CDは本年2017年2月20-22日録音)


第一楽章・第二楽章
 葬送行進曲は適度にアゴーギクとディナーミクを振り重厚さは控えめ、ファンファーレとのバランスも上手く取れていますね。第1トリオも過度の激しさよりも主題とのコントラストを押さえています。第二楽章もその流れを明確に繋ぎます。第1トリオを継ぐ様な第一主題、第2トリオからの第二主題です。激しさを押さえた見晴らしの良い第一部。
第三楽章
 ディナーミクを使った締まりあるスケルツォに、微妙なリズム感のレントラー主題、第三主題は間を生かしたスローで穏やかさです。全体的にマイルド、独特のディナーミクとアゴーギクを感じる第二部です。
第四楽章・第五楽章
 微妙なアゴーギクの中間部主題の前後を、スローで甘美な美しさで挟んだ個性的アダージェットです。第五楽章はスローな序奏からテンポの良い第一第二主題が絡みながら山場を目指します。展開部・再現部の山場を気持ちよく盛り上げてコーダからフィニッシュは迫力と大アッチェレランド。最終楽章では見事な王道に回帰!!

個性を見せながらも心地よいと思っていたら、最後に保守本流の展開が待っていました。どっちがロト!? のマーラー9です。
どちらも悪くないのですが、どっちかにしてねw





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー 交響曲第5番 名盤珍盤 170CD聴き比べ! [#12 / CD:161-170]

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860/7/7 - 1911/5/18)の交響曲第5番(Symphony No.5)の聴き比べ#12。今回は次の10CDのインプレです。

①今年7-8月発売のヴァンスカとヤンソンス(旧盤と聴き比べ)
②1960年代以前の古い演奏
 (+おまけ:マーラーと親交のあったメンゲルベルクとワルターの古いアダージェットのみ)

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.5 の聴き較べです (現在 #12回 170CDまで)
 #12:10CD 本投稿
 #11:10CD
 #10:10CD
 #9:15CD
 #8:15CD
 #7:10CD
 #6:14CD
 #5:5CD アバド追悼
 #4:20CD
 #3:25 26CD
 #2:20CD
 #1:15CD


オスモ・ヴァンスカ, Osmo Vänskä
Minnesota Orchestra
[BIS] 2016-6
 オスモ・ヴァンスカが2003年から首席指揮者を務める、ミネソタ管弦楽団を振った昨年6月の録音です。ミネソタ管のゴタゴタは興味ある方はググってくださいね。
第一楽章・第二楽章
第一楽章ファンファーレからいきなりギクシャク感のスロー、おとなしい葬送行進曲、第一トリオでは表情を変えますが緩め、第二トリオは弱音で入り柔らかな印象で個性的。
第二楽章第一主題も抑え目でギクシャク、第二主題も静音,スロー&マイルドです。展開部から再現部もマーラーの「最大の激烈さを持って」とは無縁、切れ味排除の曲者第一部です。
第三楽章
スケルツォもスローでhrはモタモタ、レントラー主題も微妙な揺らぎ、それ以降もいきなりのテンポアップとか読めない見晴らしの悪い残念な第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは薄く細い流れで山場も抑える好みの演奏、間を取りすぎなのは別として冷たく澄んだ流れは良いですね。
最終楽章の入りのhrは間を取り過ぎ、その後は適度に主題を絡ませながら常識的に進んで(軽快感は低いですが)、展開部の山場を盛り上げ、再現部では山場・コーダを見事に〆てラストはあっさり風w。
とはいえこの第三部は1-3楽章より遥かにマシです。
・・・・・
スロー&マイルドと奇妙な揺さぶり、そして管楽器のギクシャク。咳払いでもして喉のつかえを振り払いたい様なマーラー5です。
一癖モノがお好きな通の貴方には一聴の価値ありですw




マリス・ヤンソンス, Mariss Yansons (2録音)
ラトビア人指揮者ヤンソンスは、ムラヴィンスキーの助手を務めレニングラード・フィルでデビューしています。その後ほぼ同時期にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)とバイエルン放送交響楽団二つのビッグネイム・オケの首席指揮者を務めていましたね。


(#1)

Royal Concertgebouw Orchestra
[RCO Live] 2007-10/18,21 2008-1/16,17
 2004年から2015年までROCの首席指揮者を務めた時代のライヴです。
第一楽章・第二楽章
第一楽章はややスローで落ち着いた葬送行進曲、第一トリオでは目醒めてテンポアップかつ激しさを見せ、第二トリオでは控えめな弦の音色から抑えめの展開です。第二楽章第一主題は切れ味良く、第二主題では第一楽章第二トリオの回帰でコントラストを付けます。殊更の重厚さと激しさは避けていますが、主流派的な第一部です。
第三楽章
ややスローなスケルツォ主題、レントラー主題は優美に推移し、第三主題も落ち着いています。展開部再現部も同様に控え目でスローな流れ、正統派ですが第一部同様ややシャープさに欠ける気がする第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは、9分台前半の演奏時間(テンポ)も含めて、抑えの効いた情感で好きなパターンですね。最終楽章は第一・第二主題がうまく絡みながらの落ち着いた流れで展開部の山場を抑え気味に、再現部の山場からコーダは壮大に、ラストのアッチェレランドは抑え気味ながらビシッと決めますね。この第三部が好みでしょうか。
・・・・・
スパイスに欠けるきらいは残るものの悠然と落着き払ったマーラー5です。全体として独特の個性を感じる演奏ですね。
ラストにだけ入るとって付けた酷いアプローズは何?!w




(#2)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR Klassiks] 2016-3/10,11
 2003年からヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送響との昨年のライヴです。上記RCOの8年後のこの演奏は第四楽章以外は演奏が長くなっていますがそれを感じませんね。
第一楽章・第二楽章
葬送行進曲は適度なテンポと重厚さが付きました。第一トリオでも切れ味が増して、第二トリオも適度にテンポを確保しています。(第一トリオの途中でテンポダウンする特徴は同じですね) 第二楽章第一主題は速さ控え目、第二主題はコントラストを付ける様に第一楽章第二トリオを回帰させます。第一楽章でより顕著ですが、RCO録音より切れ味が増して見通しの良くなった第一部です。
第三楽章
ゆったりとしたネルソンスのスタンスはそのままに、スケルツォはよりリズミカル、レントラーは美しさを増しています。第三主題はゆったり構えた中に切れ味を増しました。スタンスはRCOと変わらずに聴き慣れた方向にシフトした第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは9'を切り 速くなっていますが、ディナーミクを付けています。濃くなってしまった感じで残念です。最終楽章はRCOと良く似た傾向にありますね。
・・・・・
RCOに比べると処々でメリハリが付きより王道的なマーラー5になりました。鬼に金棒と見るか、没個性化と見るか…
根幹部分の悠然としたヤンソンスのスタンスは変わらないので、オケの個性と言えるかもしれません。ドイツのオケと組むとこういう傾向になるのは今までも他の指揮者*で聴いています。

*J-P.サラステ、M.シュテンツ、等がそうでした。





ここから1960年代以前の古い録音です。(録音はmono主体で、その良し悪しを問うのは意味がないでしょう)
圧倒的個性を放つシェルヘンの4CDは#2で紹介済みですw



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter

New York Philharmonic
[Sony] 1947-2/10

(右はCBS録音のセット物です)
 マーラーがハンブルク歌劇場の音楽監督(1891年ー1897年)だった時代、その下で研鑽したブルーノ・ワルター(1876/9/15 - 1962/2/17 )が唯一残したマーラー5番全曲 ニューヨーク・フィルの音楽監督時代の録音です。
第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、テンポ速めでその変化も少なめです。第2トリオも叙情を感じさせながらもテンポ変化はありません。第二楽章第一主題は激しさを増し、第二主題で叙情性強く変化させます。まさに王道です。
第三楽章
軽快なスケルツォ、レントラーも速めですね。第三主題はマーラーの「より遅く、落ち着いて」が見事に展開されます。15'ちょっとで、今聴き直すととても速い感じです。
第四楽章・第五楽章
7'半と短いのですが速く感じる事はなく、ゆったりと冷静なアダージェットで好みですね。最終楽章は軽量軽快な第一主題と第二主題が絡みながら上げて行き、展開部と再現部の山場はキッチリ盛り上げてコーダからフィニッシュまでは迫力いっぱいです。アッチェレランドを強烈に決めます。
・・・・・
全体的に速めですが、まさに王道のマーラー5ですね。今の時代の指揮者が繰り出すアゴーギクとディナーミクを剥ぎ取れば、この演奏が現れます。真髄で一聴必須です。
久しぶりに聴きましたが、聴き終わってから心に余韻が残りますね。

ワルターはアダージェットのみですが1938年にVPOとの録音を残しています。最後にインプレしています。




ディミトリス・ミトロプーロス, Dimitris Mitropoulos
New York Philharmonic
[delta] 1960-1/2
 ワルターの後ニューヨークフィルの首席指揮者(1949-1958)だったミトロプーロスがその職責を退いた後の録音ですね。ワルターの13年後、バーンスタインの3年前のニューヨークフィルとのマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
少し不思議な間のファンファーレとゆったりとした葬送行進曲、第1トリオは派手ですがテンポ変化は少なめ、第2トリオも情感的ですがテンポ変化は薄めです。第二楽章第一主題は速めで切れ味良く、一転第二主題で柔らかさを強調します。構えの大きな正統派第一部ですね。
第三楽章
速めで揺さぶりのスケルツォはオケが暴れ気味、レントラーでは優美さを見せます。速めで揺さぶりから第三主題もスローですがアゴーギク強めです。全体としても揺さぶりと華々しさの第二部です。
第四楽章・第五楽章
澄んだ音色のアダージェットは間をとって大きいスタンスです。第五楽章は提示部からスローに妙なアゴーギク、山場は派手に、コーダからフィニッシュはスローを交えながらのアッチェレランドです。
・・・・・
雄大で迫力の第二楽章は見事ですね。揺さぶりのクセが強めですが、パワーパートは華々しいマーラー5です。




ルドルフ・ケンペ, Rudolf Kempe
Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
[ARCHIPEL] 1948-11/3
 Rudolf Kempeとライプツィヒ放送交響楽団の古い演奏です。これもシェルヘンと同じ様にカット短縮盤です。シェルヘンの初録音(1953)よりさらに5年古く、当時の流れでしょう。
第一楽章・第二楽章
やたらスローなファンファーレと葬送行進曲、第1トリオもモッタリ、第2トリオは普通ですw 第二楽章第一主題はややテンポアップでコントラストが付きますが、いずれモタモタして長〜ぃ第一部です。
第三楽章
カットありの12分ですね。優美に入るスケルツォも同じ流れのレントラーも、その後も全体にもっさり。切れ味はありません。
第四楽章・第五楽章
ワルターと比べたら2分近く長いのですが、他の楽章が超スローなのでアダージェットは速く感じます。第五楽章ホルンがメタメタ、その後もスローで怪しげ、一部カットしながら山場とコーダ・フィニッシュは普通に炸裂させています。
・・・・・
演奏も怪しげ、モタモタとした退屈なマーラー5です。時代に関係なくひどい演奏が存在する証明ですねw 第三・五楽章カットもあり、怪しげマニアの貴方にオススメ。(爆)
アダージェットは悪くありません。




ハンス・ロスバウト, Hans Rosbaud
Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
[ica] 1951-10/22
 大戦前後に活躍した現代音楽が得意な指揮者ロスバウトが、ケルン放送響を振ったマーラー5ですね。
第一楽章・第二楽章
スロー重厚な葬送行進曲から第1トリオは激しさと強烈な速さに表情を一変させます。第二楽章第一主題は一楽章トリオの流れで厳しく、第二主題は緩やかなテンポに落としてきます。第一楽章の二つのトリオの印象を忠実に再現させている感じで、締まりのいい第一部です。
第三楽章
速め優美なスケルツォ、それ以降も全体16’弱と速めですが第三主題は見事に緩やかです。アゴーギクを大きく振った第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは少し速いのですが、甘美さが感じられます。最終楽章は締まりの良い前半から流れよく二つの山場を盛り上げます。コーダは壮大、ラストのアッチェレランドもビシッと決めます。
・・・・・
テンポや表情の変化を明確に打ち出した硬派のマーラー5ですね。特に第一部と第五楽章は素晴らしく、今の時代の録音なら☆です!




ポール・パレー, Paul Paray
Detroit SO
[TAHRA] 1959-11/12
 フランス人指揮者ポール・パレーが音楽監督(1952-1963年)を務め鍛えた時代のデトロイト交響楽団とのマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、第二楽章も同じく、正攻法の第一部です。気持ち速めの演奏はややまとまりの弱さを見せますが。
第三楽章
速めで不安定なスケルツォと微妙な揺らぎのレントラー、その後も全体速い展開です。カットなし15'ですから。
第四楽章・第五楽章
アダージェットはやや速く厚めです。第五楽章第一・二主題は荒々しいですが流れは標準的に進み、展開部・再現部も力技的に迎えます。コーダからラストは溜めを作ってアッチェレランドで飛ばし上げます。
・・・・・
演奏が荒いのですが、全体速めのテンポ以外は正攻法なマーラー5です。荒さは録音精度も問題ですがw
パレーの口ずさみがよく聞こえます。




エーリヒ・ラインスドルフ, Erich Leinsdorf
Boston SO
[RCA] 1963-11
 ワルターやトスカニーニの助手を務めた辛辣さで知られるラインスドルフが音楽監督を務めた時代のボストン交響楽団とのマーラー5です。この二代後が小澤征爾さんですね。
第一楽章・第二楽章
哀しみと美しさを感じさせる葬送行進曲、テンポを上げてシャープな第1トリオ、憂いの第2トリオと流れの美しい第一楽章です。ラストのティンパニが変則ですね。第二楽章は一楽章の二つのトリオのイメージを再現します。バランスの良さと落ち着いた第一部です。
第三楽章
円舞曲的なスケルツォ、優美なレントラー、第三主題と大きなテンポ変化は避けながらも全体は美しさで通しています。
第四楽章・第五楽章
8'半とやや速めなアダージェット、アゴーギクで美しく奏でられます。第五楽章は軽やかに二つの主題を絡め上げていき、バランスよく山場を盛り上げてコーダからフィニッシュもアッチェレランドできれいにまとめます。
・・・・・
録音に3日かけていて、充分に作り込まれていますね。クセも破綻も過度の興奮も殺した、落ち着きのある完成度の高いマーラー5です。出来過ぎ感が気になりますが一聴の価値ありです。
現在の一部作品に見られる録音技術で作り込まれた不自然さがないのがいいですね。'63年録音ですがステレオでバランスも音も良いです。(ADDでD.リマスターされているでしょう)




カレル・アンチェル, Karel Ančerl
Toronto SO
[TAHRA] 1969-11/4
 カレル・アンチェルが小澤征爾さんの後を継いでトロント交響楽団の常任指揮者に就任した年の録音ですね。
第一楽章・第二楽章
標準的な葬送行進曲から元気な第1トリオになり、憂いの第2トリオの第一楽章。第二楽章も取り立てて個性的ではありません。
第三楽章
やたらとスローなスケルツォと怪しげな管楽器、その後も"緩々と怪しげ"な流れで20'を超える演奏は長すぎです。ぼーっとしていて気がついたら、まだやってた…みたいな。
第四楽章・第五楽章
ここでも標準的で甘美でもクールでもないアダージェットです。第五楽章は緩めに二主題を絡めて行き、山場とラストは締まりよく納めます。
・・・・・
演奏も怪しく締まりに欠ける退屈なマーラー5です。
'69年録音ですがmonoでAAD、音もかなり残念。リマスタリングでヒスノイズは削減されてはいますが。






【おまけ】
マーラーと親交のあった11歳下のメンゲルベルク(1926年録音)と16歳下のワルター(1938年録音)のアダージェットをインプレしておきましょう。
(アダージェットのみなので聴き比べ枚数にはノーカウントです)


ウィルヘルム・メンゲルベルク, Willem Mengelberg
アダージェット / Concertgebouw O
[Opus kura] 1926-5
 メンゲルベルク(1871/3/28 - 1951/3/22)とコンセルトヘボウの約7'の演奏は特別速く感じませんが、間が置かれていないので落ち着きが足らない感じですね。ただ後半vnのポルタメントがキュゥ〜ンという感じまで強調されているのは特徴的ですね。
マーラー本人も同様な演奏時間だったそうですから、これがマーラーの演奏(意図)に近いのでしょう。
今の時代のアダージェットに比べれば、そっけないですがそれでも充分にサロンミュージック風ですよね。



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter
アダージェット / Vienna Philharmonic
[Opus kura] 1938/1/15
 メンゲルベルクよりスローに聴こえますが、間が少ないのは同じですね。ポルタメントの強調はありません。また上記1947年のニューヨークフィルとの演奏と大きくは変わりませんね。



ケネス・スローイク, Kenneth Slowik
最後はメンゲルベルクの譜を元にガット弦vnで再現されたアダージェットです。

アダージェット / Smithsonian Chamber Players
[DHM] 1995
 スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズによる再現演奏です。
当時の人はこの様に聴こえたのでしょうか。現在の録音でポルタメントの揺らぎがさらに強調されている感じで、甘美です。
このアルバムには上記メンゲルベルクとワルター二つの古い演奏も始めの1'弱づつ入っています。(マーラーがアレンジしたベートーベンOp.95やシェーンベルクの"浄夜"の興味深いver.も入っています)




そろそろ所有のマーラー第五番も先が見えてきました。次回のインプレで在庫クリアーになり、後は新譜と何かのチャンスで既発売品の入手になりそうです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。





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