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バイエルン国立歌劇場2023 シュトラウス 喜歌劇「こうもり」をNHKプレミアムシアターで観る


"Bayerische Staatsoper 2023-2024" から昨年(2023)12月のヨハン・シュトラウスの人気オペレッタ「Die Fledermaus」です。

演出はオペレッタを得意とするバリー・コスキーですが、個人的には2017バイロイト音楽祭の"マイスタージンガー"が印象に残ります。配役をみんなワグナーやリストたちに仕立てたのはオペレッタの乗りでしたね。
今回は第三幕に"仕込み"があると現地webにはありますから楽しみでした。

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(写真はwebよりお借りしました)


演出
今回はウィーン、ジェンダー、ブルジョア、と言った事への風刺がベースとか。

問題の第三幕では、■刑務所長フランクがストリッパーの様なスパンコールの下着姿(ハイヒールと乳首に何か付けて)で登場、これもジェンダーレスの投影でしょうか。■アイゼンシュタインも意味不明の露出度の高い下品な格好で奇妙な被りモノです。その主張が何であれちょっと過激で下劣なオチャラケを最後にやりたかった訳ですね。
■フロッシュにも個性を与えてあり、通常の '語り1人' の他に 'タップダンス&ボディパーカッション1人' と '4人のダンサー' の6人で表現しています。主はタップのシーンですが。

舞台・衣装
舞台三幕それぞれに趣向を凝らした充実感がありました。一幕はアイゼンシュタイン宅らしく街並みと室内を合わせ、二幕オルロフスキーのパーティ会場はパーティメンバーの派手な衣装を引き立てる様にシンプルに 山場のシーンでは派手な吊るしモノ、三幕刑務所長フランクの部屋は背景を工事現場の"足場"の様な立体的多段に。

衣装も同様で一幕では適度な時代感とシーンを反映させてオペレッタらしさを作り、'こうもり'の衣装も過激さ異常さはありませんでした。二幕はカラフルでちょっとファンタジー系の様相にメイクもジェンダーレスに。そして三幕は二人のメンバーに上記の様な異常性を与えました。

配役
【女性陣】 まずはロザリンデのダムラウが流石でした。役柄とオペレッタを理解した演技とsop表現はピカイチで、ともすると主役をアデーレに持っていかれがちの処を誰が主人かを魅せ付けました。年齢具合もフィットですね。
アデーレのコンラディも見栄え, 演技, sopとも良かったのですが、個人的にどうもこの役があまり好きになれません。

【男性陣】 アイゼンシュタインはバリトンのニグルで'おちゃらけ'気配を上手くこなしました。やっぱりバリトンでしょうアイゼンシュタインは。
フランクのヴィンクラーは驚きの一言。まずお堅い刑務所長らしい演技と身なり(一幕)で、メチャクチャな仏語も面白く(二幕)、最後にストリッパーシーン(三幕)ですから。
オルロフスキー公爵にカウンターテノール(通常はmez)のワッツを使ったのはジェンダーレスのキーでもあったでしょう。(舞踏会のメンバーも男女の見分けしづらさを作っていました) 歌声と演技は何の問題もありませんでした。
アルフレードのパニカーは役柄にとても合っていたと思います。程良く抑えたtenも良かったです。
ファルケ博士のブリュックは落ち着きと洒脱なお笑い感が良かったですね。役柄から言ってコメディアンになる必要はありません。

音楽
もちろん指揮は音楽総監督を務めるユロフスキで、まず序曲は軽快さの中にアゴーギクを入れメリハリを付けていました。全体としても歌劇のバックらしく抑え気味な流れにピークは大きく鳴らしてコントラストはありました。


オペレッタらしさに今の時代のちょっとした過激さで楽しさ溢れる 'こうもり' になりました。ソリスト陣もフィットして、今まで見た'こうもり'の中では一番楽しめたかと。

ベストキャストはロザリンデのダムラウでしょう。今回の華やかな楽しさを牽引しました。

風刺表現では"ジェンダー"は色々感じましたが、"ウィーン"は第二幕ラストで背景の街が崩れるくらい、"ブルジョア"に関してはあまり感じる処はありませんでした。
タバコを吸うシーンは違和感がありましたが。



オフィシャルのTrailerです



<出 演>
 ・アイゼンシュタイン:ゲオルク・ニグル [Georg Nigl]
 ・ロザリンデ:ディアナ・ダムラウ [Diana Damrau]
 ・フランク:マルティン・ヴィンクラー [Martin Winkler]
 ・オルロフスキー公爵:アンドリュー・ワッツ [Andrew Watts]
 ・アルフレード:ショーン・パニカー [Sean Panikkar]
 ・ファルケ博士:マルクス・ブリュック [Markus Brück]
 ・アデーレ:カタリナ・コンラディ [Katharina Konradi]
 ・フロッシュ (台詞のみ):今回6人

<合 唱> バイエルン国立歌劇場合唱団
<管弦楽> バイエルン国立歌劇場管弦楽団
<指 揮> ウラディーミル・ユロフスキ [Vladimir Jurowski]
<演 出> バリー・コスキー [Barrie Kosky]


収録:2023年12月28・31日 バイエルン国立歌劇場(ドイツ)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





トゥールーズ・キャピトル劇場 2022/23 ドボルザーク歌劇「ルサルカ」をNHKプレミアムシアターで観る


ドボルザークのオペラ "ルサルカ"(三幕) Théâtre du Capitole 2022 "Rusalka" です。演出のS.ポーダは個人的に初見で、どの様な作りにしているのか興味深いです。また仏上演らしく?バレエダンサーが登場します。

'水の精'を主人公としていてストーリーは人魚姫とほぼ似ているのですが、王子の最後をどう捉えるのかは少々腑に落ちない印象です。(救済なのか、復讐の完結なのか?)


(演出のPodaのYouTubeからTrailerです)


演出
水の精を生かす演出で、前衛的なストーリーの置き換え・等はありません。配役の設定もオリジナルを生かして、水の精はそれらしく非現実的幻想に、王子・王女たちもドレスアップ・ファンタジー系です。
そして男性は王子と同じ衣装と髪型、女性は王女と同じ衣装と髪型でプロポーションも合わせています。これが何を表すのかは不明ですが、それが生きた第二幕が一番楽しめました。(その動きが二人の心を表している?!)

舞台に水が張られて第一・三幕は水の中での演技が中心になっています。
また抽象表現的な巨大な両手が上から下がって来たりもして、衣装と合わせて舞台設定での表現力が感じられます。

舞台・衣装
全体的に具体性のない無機質な舞台に仕上げられ、ブルー中心のライティングでまさにそれらしい青白い設定です。

配役
【女性陣】まずタイトルロールのハルティクですが、華奢で繊細な水の精と言う役割には今ひとつそぐわないsopと◯◯でした。
イェジババのバーネット=ジョーンズは黒装束で見栄えは合わせていますが、mezがsop寄りで線が細く不気味さが足りなかった感じです。
外国の王女のユリア=モンゾンは尖ったsopと演技で良かったです。'嫌な女'がピッタリでしたw 王子との重唱は聴かせてくれました。

【男性陣】王子のブシェフスキは見映えはそれらしく、力感あるテノールで安定感がありました。
ヴォドニクのイサエフは堂々とした容姿とバスがフィットして、王女のモンゾンとイサエフの二人が今回良かったと思います。

音楽
幽幻でメリハリのある楽曲構成で、ベアマンのタクトはそれを強調する演奏でした。幽幻な静パートは鎮め、トゥッティ的な強音は炸裂的に、です。どこかワーグナーを思わせます。


ファンタジー系演出が光るルサルカです。ストーリーまで弄ぶ前衛系とは違う、ストーリーに忠実な展開を抽象的ファンタジーな舞台演出で魅せてくれる今の時代のオペラでしょう。

良かったのは第二幕の王子と外国の王女のシーンで、演出力が生かされました。料理人と狩人がPETボトルを回収しているのは水質汚染のイメージ演出でしょうか。


<出演>
 ・ルサルカ:アニタ・ハルティク [Anita Hartig, sop]
 ・王子:ピョートル・ブシェフスキ [Piotr Buszewski, ten]
 ・ヴォドニク(水の精):アレクセイ・イサエフ [Aleksei Isaev, bas]
 ・イェジババ(魔法使い):クレア・バーネット=ジョーンズ [Claire Barnett-Jones, mez]
 ・外国の王女:ベアトリス・ユリア=モンゾン [Béatrice Uria-Monzon, sop]

<合唱> トゥールーズ・キャピトル国立合唱団
<管弦楽> トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
<指揮> フランク・ベアマン [Frank Beermann]
<演出・美術・衣装・振付・照明> ステファノ・ポーダ [Stefano Poda]


収録:2022年10月14・16日 トゥールーズ・キャピトル劇場(フランス)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





エクサン・プロバンス音楽祭2023 ベルクの歌劇「ヴォツェック」をNHKプレミアムシアターで観る


今年の "Festival d'Aix-en-Provence 2023" からアルバン・ベルク(Alban Berg, 1885–1935)のオペラ "WOZZECK" です。

ベルクが各幕の音楽構成をキッチリと作り込んでいて音楽的に手の込んだ作品ですが前衛音楽、ストーリーは生体実験や狂気錯乱や貧困と言った陰惨さで一般的には人気があるオペラではないと思います。
そこをどう料理するか、今回演出のマクバーニーには知見が無いのでどの様な方向性なのか楽しみです。

ベルクの"ヴォツェック"(1925)と"ルル"(1928)、それを合わせた様なB.A.ツィンマーマンの"兵士達"(1965)の三作品は時代の流れを感じさせて興味深いです。


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(写真はwebよりお借りしました)


演出
シンプルさを前面にしています。舞台・衣装から動きまで全てが単純化され、キャストは表現主義的な鋭い表現でこの陰惨なストーリーを表現しています。
その単純性が心的葛藤を表現する前衛音楽とフィットしていたと言って良いのではないでしょうか。
ストーリーの置き換えもありませんし、極端な前衛性もありません。

舞台・衣装
上記の通り色彩も含めて両者極端にシンプルです。モノクロのプロジェクトマッピングが時折使われるものの程良く、照明もスポットライトをキーに暗い周囲とのコントラストで統一されています。配役や合唱団員の動きも少なく小さくなっています。

配役
【女性陣】マリー役のビストレムは無表情の中に極端な素振りを付けてパントマイム風の表現です。この表現は狂気を感じて陰惨なストーリーにピッタリ来ていました。

【男性陣】タイトルロールのゲルハーヘルですが、如何にもヴォツェックらしい貧乏たらしい?姿を見せます。このオペラはそれが表立たないと成立しませんから。
演技も"第三幕 第2場池のほとりの小道"でのマリーとのシーンは白眉でした。
鼓手長のブロンデレは今一つでしたが、上司の大尉ホーアは歌唱・演技共に神経質な役柄を上手く演じ、生体実験の医者役シェラットも'それらしい'表現が光ました。
アンドレスのロバート・ルイスは端役なのですが、ヴォツェックとの絡みがフィットして良いコントラストでした。

音楽
基本的に音楽は所謂(いわゆる)オペラっぽくありません。無調前衛方向が現れるので、歌唱も心地良いアリアなども皆無です。従って歌手陣はシュプレッヒゲザング風で、表現主義的な流れになります。
LSOとラトルは陰影の強い音出しで、演出と相まってコントラストでこのオペラらしさを作りました。


演技と歌唱・音楽が表現主義的ヴォツェックでした。それを引き立てる為の極シンプル化した舞台・衣装で、それを上手く浮かび上がらせました。

極端な演出ですが前衛ではありません。ストーリーも衣装も基本に忠実です。それでもここまでの表現が作れた演出の見事さでヴォツェックらしさを楽しめました


  
<出 演>
 ・ヴォツェック:クリスティアン・ゲルハーヘル [Christian Gerhaher]
 ・マリー:マリン・ビストレム [Malin Byström]
 ・鼓手長:トーマス・ブロンデレ [Thomas Blondelle]
 ・大尉:ピーター・ホーア [Peter Hoare]
 ・医者:ブリンドリー・シェラット [Brindley Sherratt]
 ・アンドレス:ロバート・ルイス [Robert Lewis]
 ・マルグレート:エロイーズ・マス [Héloïse Mas]

<合 唱> エストニア・フィルハーモニー室内合唱団
     ブーシュ・デュ・ローヌ聖歌隊 (児童合唱)
<管弦楽> ロンドン交響楽団 [London Symphony Orchestra]
<指 揮> サイモン・ラトル [Simon Rattle]
<演 出> サイモン・マクバーニー [Simon McBurney]


収録:2023年7月5・13日 プロバンス大劇場(フランス)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





フィレンツェ五月音楽祭劇場2022 ヴェルディ歌劇「エルナーニ」をNHKプレミアムシアターで観る


"Maggio Musicale Fiorentino 2022" からヴェルディ初期(1844)のオペラ「エルナーニ, ERNANI」です。知見のない演出家のムスカートがどう見せるか楽しみです。



(DVDのTrailerです)


  
演出
時代背景は19世紀前半に設定されているそうですが、よくわかりません。(実際の時代設定は16世紀前半)
ストーリーには手が入れられていて、例えばラストのエルナーニが死んだ後のエルヴィーラは失神せずにシルヴァに対峙する姿になっています。ただ両者共に目新しさや新鮮さはありません
逆に全体的に合唱団を含めて配役の動きが極端に少なく、殆ど起立整列で演奏会形式の様でした。

舞台・衣装
舞台は常に暗く、ライティングで影を背景に作るパターンです。狭い舞台に木造の衝立で一層狭く感じます。
衣装は時代に合っているのか不明ですが、それらしい気配で統一されていました。

配役
【女性陣】エルヴィーラのシーリですが、かなり力技的なソプラノです。演技も見た目も太く力がこもって役柄的にはもっと繊細さが欲しい気がしました。確かにこれならラストも気を失う事はないでしょう。個人的には✖️ですw

【男性陣】エルナーニのメーリは伸びやかですが乾いたテノールでした。他のバリトンとバスとのバランスは良く、ラストのエルヴィーラとのデュオも聴かせてくれました。
ドン・カルロのフロンターリは王の力感が不足気味で、エルヴィーラとのデュオでは完全に食われてしまいました。
シルヴァのコワリョフは風貌とバスがフィットして堂々とした気配が光りました。ただ老人には見えませんがw

音楽
米人指揮者コンロンは全体的に引き気味の演奏でした。特にソリストのバックではそこまで落とさなくても…と言うくらいでした。


何か違う"エルナーニ"です。
最も違和感があったのが力感オンリーの全てが太いソプラノ。そして、極端に動きの少ない配役演出、引けた感のオケ、全てが足を引っ張った感じです。

悲劇と寛容が入れ違いに繰り返されるストーリーを楽しむのがこのオペラなのですが、気持ちがそこにフォーカス出来なかったのは残念。ちなみに現地のwebの評価はまちまちでした。



<出演>
 ・エルナーニ:フランチェスコ・メーリ [Francesco Meli]
 ・ドン・カルロ:ロベルト・フロンターリ [Roberto Frontali]
 ・ドン・ルイ・ゴメス・デ・シルヴァ:ヴィタリー・コワリョフ [Vitalij Kowaljow]
 ・エルヴィーラ:マリア・ホセ・シーリ [María José Siri]
 ・ジョヴァンナ:クセニ・ツィオヴァラス [Xenia Tziouvaras]
 ・ドン・リッカルド:ジョセフ・ダーダー [Joseph Dahdah]
 ・ヤーゴ:ダヴィデ・ピーヴァ [Davide Piva]

<合唱> フィレンツェ五月音楽祭合唱団
<管弦楽> フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団 [Fiorentino Maggio Musicale Orchestra]
<指揮> ジェームズ・コンロン [James Conlon]
<演出> レオ・ムスカート [Leo Muscato]


収録:2022年11月10日
   フィレンツェ五月音楽祭劇場 ズービン・メータ・ホール(イタリア)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





バイロイト音楽祭2023 ワーグナーも驚くAR採用の「パルジファル」をNHKプレミアムシアターで観る


Bayreuther Festspiele 2023 "Parsifal"

バイロイトの演出と言えば前衛的で何かしら一悶着起こす訳ですが、今回は一部のオーディエンスしか使えなかったARグラスの導入(準備したのは2,000人中330個) が物議を醸しました。もちろん放送ではそれを見られる由もありませんが。

話題はもう一つ、ガランチャのバイロイト・デビューです。グバノヴァ(Ekaterina Gubanova)の代役で、今回はタイトルロールも代役でした。珍しい事ではありませんが、個人的にはガランチャのファンなので嬉しいです。



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(写真はwebからお借りしました。左2枚目がARシーン?!)



演出
ストーリーの置き換えと、ストーリーそのものに手を付けた前衛演出です。

聖杯の守護ではなく、デジタル世界でコバルトやチタンと言ったレアメタルの守護者としているそうです。(その解説が無ければ、ただの抽象表現にしか感じませんが…)
聖杯はそれらの結晶になって、最後はパルジファルによって粉砕されてしまいますし、クンドリも死にません。
前奏曲でのグルネマンツとクンドリ似のキャストとのいきなりのセクシャルシーンは奇妙で、ラストでもこの二人が抱き合う姿があります。(クリングゾルの罠にかかったアンフォルタスのイメージ?)

ただ不思議な事に各シーン置き換え感は低く展開もストーリーに忠実になっているので違和感は少ないでしょう。


舞台・衣装
衣装はとても簡易で、舞台もシンプルな大物配置で背後に大きなプロジェクションマッピングが使われます。暗く抑揚の低いシーンは多分ARで様々なシーンが追加されているのでしょう


配役
【女性陣】まずは紅一点クンドリのガランチャ。ワーグナーの楽劇の中で唯一 敵味方が不明瞭な女性役を上手く演じたのではないでしょうか。(第一幕の髪の白黒染め分けはそれを意図?!)
特にシャープで硬質なmezは役柄にとてもフィット、第二幕でパルジファルと対峙するシーンは観応えがありました。

【男性陣】タイトルロールのシャーガーも第二幕の覚醒シーンからは良かったです。それまでは'愚かな'と言うよりも存在不明の印象でしたから。クリングゾルから聖なる槍を取り上げるシーンはゾクっとします。
グルネマンツツェッペンフェルトは抑えた(脇)役を演じるなら今最高のバス・バリトンでしょう。ここでも控えめながら落ち着き払ったツェッペンフェルトらしい演技と歌唱でした。名前を見た瞬間から安心感が生まれる一人です。
アンフォルタスのウェルトンも苦痛に支配される王を上手く演じていました。役柄通りではありますが熱演も光ました。
クリングゾルのシャハナンも良い(悪い?w)気配を漂わせて演技力を魅せてくれました。こちらはリアルな憎々しさよりもピンクの衣装とツノでファンタジーっぽさでしょうか。


音楽
有名な前奏曲はややスローに入って静美な流れから少し劇場性を効かせるタクトでした。もっと澄みきった"トリスタンとイゾルデ 愛の死"の様な演奏が好みですが、楽曲全体の動機は含まれるのでこれが良いのかもしれません。全体的にも局所的な強いメリハリを感じる演奏になっていました。


前衛演出は中途半端でした。ストーリーの置き換えや変更は見た目だけで、キャストの動きは本筋通りの王道的。これではギャップも違和感も薄く前衛とは言えないでしょう。

また各シーンは時にあまりにシンプルで 'ARだとどう見えたのか?' が拭えませんでした。

キャストはそれぞれ楽しませてくれました。ツェッペンフェルトとガランチャが良かったです。独サイトを見ても概ねこの二人の評価が高かったです。
カーテンコールも歌手陣は喝采で演出陣にはブーイングでしたが、個人的には楽しめました。



<出演>
 ・パルジファル:アンドレアス・シャーガー [Andreas Schager]
 ・クンドリ:エリーナ・ガランチャ [Elīna Garanča]
 ・クリングゾル:ジョーダン・シャハナン [Jordan Shanahan]
 ・グルネマンツ:ゲオルク・ツェッペンフェルト [Georg Zeppenfeld]
 ・アンフォルタス王:デレク・ウェルトン [Derek Welton]
 ・ティトゥレル先王:トビアス・ケーラー [Tobias Kehrer]

<合唱> バイロイト祝祭合唱団  
<管弦楽> バイロイト祝祭管弦楽団 [Orchester der Bayreuther Festspiele]
<指揮> パブロ・エラス・カサド [Pablo Heras-Casado]
<演出> ジェイ・シャイブ [Jay Scheib]


収録:2023年7月25日 バイロイト祝祭劇場(ドイツ)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





シャンゼリゼ劇場 2022 オッフェンバックの喜歌劇「ラ・ペリコール」をNHKプレミアムシアターで観る


昨年末のパリ・シャンゼリゼ劇場(Théâtre des Champs-Élysées)公演から、ジャック・オッフェンバック(Jacques Offenbach, 1819-1880)のオペレッタ「ラ・ペリコール, La Perichole」です。

演出・衣装はロラン・ペリーでオペレッタは得意とする処でしょうから楽しみです。(今まで好みの演出に当たった事がないのですがw)



オフィシャルのビデオで、本公演のストリートパフォーマンスです
(ピキーヨ役とダブルキャストのペリコール役二人の三人)

演出
ペリーですから前衛性はゼロ、もちろんストーリーに手を入れるなどあり得ません。いかにもコメディと言ったタッチを強調しています。この手の作品には考える余地を排除した、あっけらかんとした明瞭さがフィットしますね。"魔笛"のパパゲーノのパロディも決まりました、上手いです。

舞台・衣装
街中シーンは建物等大物配置はシンプルで今の時代っぽい身なり。でも宮殿シーンはファンタジー系に大仰に揃えて 落差が大きいです。
でもそれにはあまり重要性はなく、いずれも演出はコメディで通されますからストーリーにヴィジュアル的変化を与えるにすぎません。

配役
【女性陣】タイトルロールのヴィオティは、役柄のキャラクタが明確なので殊更なモノが無くても十分に楽しませる事が出来ます。でも悲喜交々の様子を上手く演じてベストロールでした
端役にはなりますが、このオペレッタで重要な"三人の従姉妹"も喜劇らしさを振り撒いて盛り上げました。

【男性陣】ピキーヨのバルベラク、敵役副王ドン・アンドレスのナウリ、共に役柄を超える物は無かった印象ですが、それで良かったのでは。この作品と演出ならこれがフィットでしょう。
パナテッラス伯爵のブリアン、ドン・ペドロのロトは言わずもがなです。

音楽
序曲は強弱メリハリと表情のある演奏でした。舞台が始まってもオッフェンバックらしい跳ねたリズム感を活かした演奏で明るさを明瞭に出していた感じでナイスフィット。全編"天国と地獄"の流れですw


舞台も音楽もオッフェンバックの喜劇、それを明確に組み立てた演出・演奏でした。配役の技量を問うよりも、如何にストーリーを活かすかで通されていました。

この手のオペレッタを久しぶりに理屈抜きで楽しく観られました。前衛好きなので今やオペラは疑問符が付く様な展開でないと満足出来ない困り者ですが。


<出演>
 ・ペリコール (美しい流しの歌手):マリナ・ヴィオティ [Marina Viotti]
 ・ピキーヨ (ペリコールの恋人):スタニスラス・ド・バルベラク [Stanislas de Barbeyrac]
 ・ドン・アンドレス (ペルー副王で好色男):ロラン・ナウリ [Laurent Naouri]
 ・パナテッラス伯爵 (議会の貴族):ロドルフ・ブリアン [Rodolphe Briand]
 ・ドン・ペドロ(リマの長官):リオネル・ロト [Lionel Lhote]
 ・三人の従姉妹:1st[Chloé Briot], 2nd[Alix Le Saux], 3rd[Eléonore Pancrazi]

<演出・衣装> ロラン・ペリー [Laurent Pelly]
<管弦楽> レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル [Les Musiciens du Louvre]
<合唱> ボルドー国立歌劇場合唱団 [Chœur de l’Opéra National de Bordeaux]
<指揮> マルク・ミンコフスキ [Marc Minkowski]


収録:2022年11月23・24日 シャンゼリゼ劇場(パリ)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ベルリン国立歌劇場 2022 モーツァルト歌劇「ポントの王ミトリダーテ」をNHKプレミアムシアターで観る

2020年11月初演予定がcovid-19で2年遅れたり、日本人の演出とか何かと話題になったベルリン国立歌劇場(Staatsoper Unter den Linden)のモーツァルト『ポントの王ミトリダーテ (Mitridate, re di Ponto)』がNHKプレミアムシアターに登場です。

このオペラも演出の宮城聰さんについても恐縮ながら知見がありません。宮城さんの他にも舞台や衣装, 他にも日本人スタッフの方が多く入られている様です。



オフィシャルのExcerptです


演出
番組冒頭で宮城さんの語りがありました。「ラストに鎮魂を入れる事で復讐の連鎖を避ける」「歌舞伎と桃山時代を織り込んで、キャストには等身大の人物像を避ける」と言ったお話でした。

紀元前のローマ帝国との戦いが舞台ですが、ストーリーの置き換えもなく前衛演出ではありません。ただ一面金ピカな武士の世界に仕立ててあります。キャストは直接的な絡みを作らない単独正面向きでの歌唱で演奏会形式の様に感じましたが、それが等身大を避ける事なのでしょうか?! 鎮魂だと言うエンディングも?? (嫉妬と復讐こそがオペラのコアなのでは)

舞台・衣装
舞台には木と金が混ざり合う巨大な雛壇がセットされています。その各段にキャストが登場します。
衣装は男性陣は金の鎧兜、女性陣はやはり金ピカですが日本の着物をベースに被り物は独創です。その他大勢は和洋取り合わせですが衣装も基本イメージは金色です。

配役
【女性陣】アスパージアのラビンは延びやかなソプラノと役柄にフィットした佇まいで良かったです。
シーファレのブラウアーは得意のズボン役(女性が男性を演じる)ですが、リアルな武将役なので演技・ソプラノ共に判断が難しいかもしれません。
イズメーネのアリスティドゥは一人だけタイの様な東南アジア風の出立ちでした。歌唱と表情作りは映えた感じです。

【男性陣】タイトルロールのパティはハイトーンのテノール、役柄と武士の様相にフィットした見栄えの良さでこの舞台一番でした。
ファルナーチェのベノ=ジアンはアルトなのでまるで女性の様な声、役柄とのギャップが大きいです。その設定自体があまり好めませんが…

音楽
序曲はバロックのシンフォニアになりますが、まさに古典の楽曲そのもので個人的には今やまず聴く事のない音楽ですからコメントしづらいです。(コンサートで取り上げられれば聴きますがw)


括って言えばファンタジー系の"ポントの王ミトリダーテ"です。少なくとも前衛ではありません。
金ピカ桃山時代風の舞台・衣装その見た目が主役であり、その設定に違和感を感じると厳しいかもしれません。

また、1770年という時代だからなのかコロラトゥーラの多用、ズボン役がいると思えば男性アルトがいる、と個人的にはアンフィティングな感がありました。そして何より長〜 w


<出演>
 ・ミトリダーテ:ペネ・パティ [Pene Pati]
 ・アスパージア:アナ・マリア・ラビン [Ana Maria Labin]
 ・シーファレ:アンジェラ・ブラウアー [Angela Brower] (ズボン役)
 ・ファルナーチェ:ポール=アントワーヌ・ベノ=ジアン [Paul-Antoine Bénos-Djian]
 ・イズメーネ:サラ・アリスティドゥ [Sarah Aristidou]

<管弦楽> グルノーブル・ルーヴル宮音楽隊 [Les Musiciens du Louvre Grenoble]
<指揮> マルク・ミンコフスキ [Marc Minkowski]
<演出> 宮城聰 [Satoshi Miyagi]


収録:2022年12月9・11日 ベルリン国立歌劇場(ドイツ)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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