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2023年3月21日 大野和士/東京都交響楽団, バヴゼ『バルトーク と ドビュッシー』at サントリーホール


コロナ明けで2年ぶりのコンサートは春色のサントリーホール。久しぶりの大野さん/都響、好きなピアニストのジャン=エフラム・バヴゼ (Jean-Efflam Bavouzet)を楽しみたいと思います。
バヴゼの「ドビュッシー: ピアノ作品全集」は本当に素晴らしいですね。



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(六本木一丁目駅からサントリーホールへの道すがら)


今回は前半も後半も二曲構成で、インプレは前後半のメイン曲です。
(前半の一曲目は「バルトーク: 舞踏組曲」後半一曲目は「ラヴェル: クープランの墓」です)
バルトーク「ピアノ協奏曲 第一番」
 ・好きなバヴゼのノセダBBCフィル盤(CHANDOS 2009 rec.)との違い
ドビュッシー「交響詩 "海"」
 ・事前の「"海" 25人の指揮者で聴き比べ」に対する立ち位置






ピアノ協奏曲 第一番
ベラ・バルトーク (Béla Bartók, 1881-1945)

バヴゼのピアノをセンターに、打楽器群 前列両翼配置に驚きましたね。(バヴゼは過去コンサートで採用しているので、バヴゼの提案?!)

1. 第一楽章
序奏の基本動機はしっかり華やかに、第一主題と第二主題のpfは共に弾ける様に、力感ある提示部です。
展開部もオケの鳴りが明瞭で、本来微妙な調性なのですが朗朗と鳴らすpfとオケでしたね。

2. 第二楽章
主部は三連音型動機からハッキリ、pfの不協和音を生かしますが影や鬱の印象より明です。
トリオも鬱よりも鳴り、三連音型動機の暗鬱さは最後まで控えめでした。

3. 第三楽章
第一主題は激しくpf連打リズムを刻み、第二主題もそのリズムの上に現れて荒れ気味に進みます。
展開部も勢いをキープ、第三主題は複雑な対位的様相が弱い印象でしたね。再現部では突撃色を増して、コーダはパワーで締め括りました。

pfもオケも鳴りの高いパワープレイでした。期待した絶妙な奇妙さ?は低かったですね。バヴゼBBCフィル録音と比べるからそう感じてしまうのかもしれません。
アンコールはバヴゼと大野さんの連弾でしたが、バヴゼのドビュッシーを聴きたかったですね。




交響詩『海』
クロード・ドビュッシー (Claude Debussy, 1862-1918)

1. 第一楽章「海上の夜明けから真昼まで」
序奏の二つの共通動機は緊張感、主部主題は淡々と、第二主題もその流れに乗りました。
第三主題では厚めの弦の鳴りを広げて進め、コーダはしっかりと決めました。

2. 第二楽章「波の戯れ」
主要主題は淡々とですが、第二主題は揺さぶりで色付け、第三主題はモワッとした変化を利かせました。
その後も微妙なアゴーギクを入れて色彩感を付けていましたね。

3. 第三楽章「風と海の対話」
序奏動機は暗鬱さをクレシェンドさせ、共通動機と絡むと出し入れを強めて山場を派手に鳴らしました。
コラール主題ではさりげなくトーンダウン。騎行をカラフルに進めて、コーダは派手に鳴らして締めましたね。

華やか派手なこの曲らしさでしたが、過度の華飾華美を避けた'まとまりの良さ'でした。
後半の一曲目「ラヴェル "クープランの墓"」も煌びやかですがコントロールの効いた流れでした。



明朗な音出しの前半バルトーク二曲、コントロールされた後半ラヴェルとドビュッシーと言った感じでしょうか。個人的にはバルトークはリズムと怪しい調性を生かした構成を、"海"は驚く様な煌めき派手さを期待していましたが…w

とは言え演奏は素晴らしく、久しぶりのコンサートはやっぱり楽しかったです👏


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2021年3月27日 井上道義 / 東京交響楽団「ショスタコーヴィチ 交響曲 第6番」at サントリーホール



COVID-19で控えたので昨年11月の藤倉大さんの「アルマゲドンの夢」以来 4ヶ月ぶりの生コンサートは桜満開の六本木でした。

2020/21シーズンの定期演奏会は初めて東響にしたのですが、前半はドネーション、後半は演目もメンバーも変わってしまいパス。今日が最初で最後の今シーズン定期演奏会でした。

(2021/22シーズンは本当に残念ながら定期は無しにしました。またCOVID-19の収束までコンサートは見送る事にします)


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(六本木一丁目駅からサントリーホールへの途中です)


久しぶりのミッキー井上さんは得意のショスタコーヴィチ、それもレアな6番。これは逃せませんよね。予習はコンドラシン, バーンスタイン, ムラヴィンスキーの個性派三人で聴いて来ました。▶️ 予習のインプレ





ショスタコーヴィチ 交響曲 第6番 ロ短調 op.54

第一楽章
跳躍旋律の主部の暗鬱さはスローに音圧高く、渦めくごとくに濃厚です。中間部(トリオ)は鬱よりも幽玄で、特にタムタム後の2本のflでは静の幽玄さが広がり、主部と対比が見事に構成されていましたね。

第二楽章
普通は早い主部の上昇下降動機はゆっくり慌てず、ディナーミクを使ってピークを大音響に鳴らします。中間部も流れはキープされて山場は爆裂、ティンパニー連打からの主部回帰でもしっかりと鳴らします。
スケルツォ的軽快な印象の楽章なのですが圧倒する存在感になりました。

第三楽章
ウイリアム・テル序曲の様な第一動機から第二動機は飛ばします。低弦三拍子の中間部前半はディナーミクを振って力強く、fgからの後半の舞踏風流れを心地よく作ります。そして明るさを飛び越したコーダは華やか大爆発です!!



ディナーミクを軸にホールならではの山場大爆裂が味わえましたね。もちろん唯の大騒ぎではなく、各楽章にしっかりと構成感がありました。

東響も井上さんの指揮に応えて見事な演奏で、この曲でこんなにスカッとしたのは初めて。まさにミッキー節の快演でした



前半の「ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第4番」は守備範囲ではないのでインプレ残しませんが、pfの北村朋幹さんはソフィスティケートでした。ガサツな私には方向性が違いましたが...


■ 本コンサートはニコニコ動画で無料で観られますね✌️
  (残念ながら ホールでの音圧と爆演パワーは伝わらず印象が少し異なりますが)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2021年1月30日 原田慶太楼/読響「チャイコフスキー 交響曲 第5番」at めぐろパーシモン 大ホール


COVID-19緊急事態宣言の中なので、初体験のLIVE配信で参加です。コンサートホールで聴く様にはいきませんが、今の状況を配慮しての選択です。本来なら勿論現地で聴きたかったですけど…


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原田さんも若手(35)ではありますが、世界ではロレンツォ・ヴィオッティ(30)やクラウス・マケラ(25)といった人たちが活躍していますね。特にパリ管のシェフに就任したマケラは先日マーラー9で聴き応えある演奏を披露しています。

今回は頭の中に明確に曲と構成が存在しているので、原田さんのスタイルがわかりそうです。(ムラヴィンスキーとP.ヤルヴィで予習もしています)





交響曲 第5番 ピョートル・チャイコフスキー

第一楽章
序奏の"運命の主題"はアゴーギクで陰影強く。提示部はアゴーギクで主題間にコントラストを付けて、パッセージを力感で上手く盛り上げました。展開部の第一主題変奏は揺らぎを入れ、再現部でも全体的にアゴーギクを利かせています。コーダでは二拍子のリズムが印象的でした。とにかくアゴーギクですねw

第二楽章
鬱の強い弦コラールから主部のhrがスローに被り、ob動機で明るさを打ち出します。第一トリオはvcと管楽器の対話が穏やかに、中間部はclとfgの落ち着いた流れで"運命の主題"が晴れやかです。主部回帰は舞う様な優美さが魅力的でしたね。ラスト突然の"運命の主題"は間髪入れずに入って上手いです。

第三楽章
主部の第一第二ワルツは揺さぶりを入れ、第三ワルツfgはスローのアゴーギクです。中間部は16連音符を流れる様にパスして行きます。主部回帰のワルツ群は再現性を強く、コーダのラスト強音は唐突性を弱めていますね。揺さぶりはあっても個性とまでは行きません

第四楽章
アタッカで入りましたが、その指示は無い様な…
序奏の"運命の主題"は落ち着いていますが、弦の第一主題は刺激的に一気に高めて期待値を上げる流れを作ります。第二主題は落ち着きから切れ上がり、金管の"運命の主題"が切れ味ある行進曲となります。ムラヴィンスキーもそうですが、ここがポイントで見事ですね!!
再現部はテンポアップし各主題にディナーミクの個性を振って緊迫感を作り、山場はアゴーギクを利かせて鳴らします。全休符を短くコーダに入り祝祭的ですが引きずる様な行進曲から、ラストはアッチェレランド風に駆けてから収めます。
素晴らしい最終楽章になりました



誰が振ってもそれなりに聴ける曲なのですが、意外や素晴らしい最終楽章が待っていました。それまではアゴーギクを強く感じたものの、流れとしては特筆なしだったのですが最後はウキウキする高揚感がありました。この曲はそう言う曲ですよね。

原田さんのタクトで、BPMの無い より自由度の高いマーラー5あたりを聴いてみたくなりました。それにしても原田さんは顔で指揮しますねw



バックステージ・カメラも楽しかったです。ネット配信だからか、開演時間通りにスタートしたのも驚きでした。普通は5'ディレイくらいですよね。

最後にはなりましたが、小井土文哉さんのpfは荒削りさが魅力でした。少し流麗さが感じられると嬉しかった気がします。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





藤倉大 オペラ「アルマゲドンの夢」2020年11月18日 at 新国立劇場 under COVID-19


ボンクリで現代音楽を楽しませてくれる藤倉大さんの新作オペラです。そして新国立劇場は昨年の西村朗さんと芸術監督の大野和士さんの「紫苑物語」が素晴らしく、行かない理由が見つかりませんでした。大野さんは昨年 都響との素晴らしい「グレの歌」でも演出力を披露してくれましたね。


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"A Dream of Armageddon"


全9場, 1時間40分, インターミッションなし, 英語(日英字幕)上演。コロナ禍の東京、海外メンバーも揃って来日、オーディエンスは40%ほどでした。





音楽
藤倉さんの音楽ですから調性の薄さを生かした洗練ですね。前衛実験系とは距離を置く藤倉さんらしさで、楽曲が心象風景にとても合っている感じです。トリル・トレモロ反復変奏が多かった事、四拍子の行進曲があった事など意外性もありましたね。
やや調性色が強まって エレクトロニクスが無くなったのは少し残念だったかもしれません。(先進性を軸足にライヴエレクトロニクスを入れたら更に面白かった様な)

演奏も大野さん(東京フィル)は予想通りのメリハリ、間違いなくステージを盛り立てましたね。


演出
初演ですから、今の時代のオペラ演出で まず気になる原作からの読み替えや逸脱は当然ありませんね。

グロテスクや理解不能な前衛性は無く、時代設定は現代(20世紀中盤?)になるでしょうか。プロジェクション・マッピング(PM)や暗さを中心とした今の時代らしい設定で、モノトーンからカラフルまで色彩を生かしています。テーマとなる"現実と夢"も、通勤電車の具体風景とPMやミラーといった対比にしていましたね。

素晴らしかったのはラストの少年のアーメン。ややせわしない流れから、最後はミサの様に鎮めてこれでとどめを打った感じでした。神が語られても救済感がないのは不思議?!


舞台・衣装
舞台はシンプルながら巨大な衝立が設定されてスクリーンやミラーとなっていました。全面スクリーンも時折使われて大きなプロジェクションマッピングが印象的でしたね。ついついそちらに目が行ってしまうくらいに使われていましたが邪魔にはなっていませんでした。舞台の奥行き感が生かされた上手さもありましたね。

衣装は前述の近現代風、合唱団メンバーには全身真っ白やファンタジーな非現実的衣装が配されます。これも今の時代らしい設定でしょうか。


配役
【男性陣】テノールのP.タンジッツ(クーパー・ヒードン役)は声も良く出て演技も映えましたが、やや一本調子的な感じがしました。S.カリコ(ロスコー/イーヴシャム)は思いのほか出番が少なかったです。
望月さん(歌手/冷笑者)はなんといっても"柳の歌"での存在感でしたね。間違いなく一つのハイライトシーンでした。女装の歌手はピンときませんでしたがw

【女性陣】J.アゾーディ(ベラ・ロッジア役)はテノールのタンジッツのミラーの様な印象でした。加納さんのインスペクターが声量も素晴らしく聴かせてくれましたね。テノールとソプラノがやや変化に乏しい感じがしたので、日本人二人が頑張った印象でした。

新国立劇場合唱団も存在感を見せましたね。いきなりのアカペラに愕きましたし、多メンバーでサークル(兵士)の存在感もよかったです。



【後日記】当日(11/18)のダイジェストです



今の時代のオペラを舞台いっぱいに楽しめました。ディストピア時代への警鐘と言った本オペラの主題・主張、それを表現する音楽・舞台。ストーリーと表現力がフィットして、すぐに惹き込まれてしまいました。

少し残念なのは100分と言う短い中に内容が濃いので慌ただしく感じた事でしょうか。また、ディストピア的な恐ろしさをパロディっぽくしていたのは、最後に神を歌う深慮な文面があったから?!

全体としては大野さんカラーを感じましたね。


近年作で比べると、見栄えする舞台とストーリー性なら「紫苑物語」の方が素晴らしく、訴えかける心象なら細川俊夫さんの「松風」「Stilles Meer 海、静かな海」が心に沁みると思います。方向性が違うと言ってしまえば、それだけの事でしょうが…
コロナとは言えカーテンコールが、あまりにもあっさりと静まってしまったのは驚きでした。



【出 演】
 ・クーパー・ヒードン:ピーター・タンジッツ [Peter Tantsits]
 ・フォートナム・ロスコー/ジョンソン・イーヴシャム:セス・カリコ [Seth Carico]
 ・ベラ・ロッジア:ジェシカ・アゾーディ [Jessica Aszodi]
 ・インスペクター:加納悦子 [Etsuko Kano]
 ・歌手/冷笑者:望月哲也 [Tetsuya Mochizuki]

【台 本】ハリー・ロス [Harry Ross]
【作 曲】藤倉大 [Dai Fujikura]
【芸術監督/指揮】大野和士 [Kazushi Ono]
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 [Tokyo Philharmonic Orchestra]
【合 唱】新国立劇場合唱団
【演 出】リディア・シュタイアー [Lydia Steier]


2020年11月18日 新国立劇場

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2020年1月16日 マーティン・ブラビンズ/都響「日本初演マクミラン/トロンボーン協奏曲 | エルガー/エニグマ変奏曲」at サントリーホール


今年の初コンサートです。指揮者にマーティン・ブラビンス(Martyn Brabbins)を招いた都響定期Bに行ってきました。

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メインは何と言っても本邦初演となる英現代音楽家ジェームズ・マクミランの「トロンボーン協奏曲」ですね。トロンボーン奏者は初演(初録音)のヨルゲン・ファン・ライエンというのも嬉しいです。もちろん同CDで予習のインプレもして来ました。▶️ こちら





ラヴェル:クープランの墓

管弦楽版なので4パートですね。頭で鳴っているのはデュトワ/モントリオール響の優しく洒脱な演奏です。

"プレリュード" は少し速く感じましたが、"フォルラーヌ"は上手くまとまりました。"メヌエット"は三部形式の中間部を印象的に、"リゴドン"では唯一金管が活躍する主要主題を鳴りの良さで表現してくれましたね。
とてもきっちりとした演奏で良かったです。肩の力の抜けた洒脱さが欲しかったかも...



マクミラン:トロンボーン協奏曲

曲はアタッカで繋がっていて単一楽章的ですが、CDでは三楽章になっているのでそれに沿って聴いて来ました。

【第一楽章】静的ポリフォニカルなオケとtbの対話が予想以上にしっかりと流れで、中間部ではtbの低い唸りが先導するとオケは調性色の強さを鳴らしました。
【第二楽章】明るい音色のtbは抑えた音色で入りましたね。その後はオケとの対位的な流れを上手く上げて激しさを見せましたが、ホモフォニーや出し入れはやや固かったでしょうか。
全休符を挟んで激しい中にサイレンも鳴り響きますが、直ぐに静的流れに。後半は調性の薄さを生かした美しい緩徐でしたが少々間延び感だったかもしれませんね。
【第三楽章】トゥッティとサイレンからキレあるリズムに乗ってtbは小刻みに軽快にオケと疾走。再び管楽器トゥッティ風から静音パートとなります。混沌からライエンがオケに振り向くとオケtb3本とのtb絡み合いの見せ場を見事に築きました。(都響tbも負けていませんでした!)
都響は真面目で調性感が伝わり、ライエンのtbも終始几帳面さを感じました。



エルガー:エニグマ変奏曲 Op.36

コンサートでは超お馴染みの曲ですが、久しぶりに4CDでインプレをして自分勝手にポイントを予習して来ました。

主題第一動機でまずはスローで揺さぶりを感じましたね。第7変奏までの[前半]は強音の第4変奏"W.M.B." 第7変奏"Troyte"を派手に、全体揺さぶりの強い流れでした。
メインの[後半]、第9変奏"ニムロッド"の美しさは感動的、第10変奏"ドーラベッラ"は今ひとつでしたが、第11変奏"G.R.S."のDanは派手に大きく駆け回り素晴らしかったですね。第12変奏"B.G.N."のチェロは強烈濃厚な哀愁でした。
ラスト第14変奏"エドゥ"は派手で重厚に聴かせてくれました。
表情豊かでエルガーらしいエニグマが楽しめました。ブラビンズはスコアを開く事もなく、タクト姿も前半とは違う'手の内'感がありましたね。




真面目な前半、表情豊かな後半と二つのスタイルを楽しませてもらいました。前半は都響のキャラ、後半は英人指揮者ならではのお家芸でしょうか⁈

やっぱりエニグマの素晴らしさに一票でしょうね。


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ジャンル : 音楽





ハンマー三発、第二楽章アンダンテの「マーラー 交響曲 第6番」: アラン・ギルバート/都響 2019年12月16日 at サントリーホール


今年最後のコンサートです。クリスマス飾りのカラヤン 広場、コンサートの機会を減らしているので久しぶりのサントリーホールです。


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ギルバート/都響のマーラーは2016年7月の「第5番」以来です。都響スペシャル公演のweb配信で24日のLiveを観る事ができる様になりましたね。翌25日の定期公演に行きましたが素晴らしいマーラー5でした。インプレも残してあります。

今回の「第6番」の注目は、三発目のハンマーと第二楽章アンダンテですね。事前に月刊都響(webにもあります)でわかってしまったのは微妙ですがw





マーラー 交響曲 第6番《悲劇的》

第一楽章
第一主題はvc, cbが刻むモットーから荒々しさを感じさせ、パッセージを鎮めてアルマの主題は派手な流れを作りました。展開部は導入部に激しさを持ってきて挿入部の静とコントラストを付けましたね。遠くから聞こえるカウベルを左サイドのバンダにしていました。このパターンは第四楽章でも使っていましたね。
コーダの締まりは、この楽章をまとめる様な激しさがありました。

第二楽章
アンダンテです。主要主題は緩やかですが微妙な揺さぶりを感じ、副主題(第一トリオ)は哀愁は控えめでした。ここでのカウベルは山場なのでステージ上で三人が鳴らしていましたね。
印象的なのは終盤の怒涛ですが、全体的には控え目でしょうか。

第三楽章
スケルツォです。主要主題は切れ味良く、中間部は変拍子を生かした流れに感じました。
この二つの中間楽章が、少し弱かったかもしれません。

第四楽章
長い印象的な序奏は嵐の前の静けさの様でした。ここでtpがフライングでヘマったのは残念!!
アレグロ・エネルジコから提示部第一主題を勇壮に入り、パッセージと絡みながら疾走。聴きどころの展開部はvcのモットーから流れは怒涛になり行進曲はクールに、荒々しさとコントラストを付けて進みました。再現部は静に鎮めて入り、テンポアップの第一主題回帰からパッセージそして騎行へは激走です。コーダには三発目のハンマーがありましたが、僅に遅れた様な...
とは言え、荒々しさ激しさが生きた最終楽章になりました。もちろん拍手喝采でした。


第一第四楽章が素晴らしいマーラー6でした。いつもはお行儀の良い都響ですが、この荒々しい締りの良さが見られて良かったです。ギルバートさんは5番に続いてマーラーを楽しませてくれました。

ハンマーや最後の一撃トゥッティの本当の響きはコンサートでしか味わえませんね。中間楽章や怪しげ1stHrに目をつぶってもお釣りが来たマーラー6でした。


テーマ : クラシック
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前半二楽章の美しさ、2019年10月16日 小泉和宏/都響 の『ブルックナー 交響曲 第7番』at サントリーホール


ブルックナーの7番を聴きに六本木まで。近年はコンサートでもない限り聴くことは無くなりましたが好きな曲、本日70歳の誕生日を迎えたマエストロがどう振ってくれるか楽しみですね。


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発売時のインパクトも含めて、この曲の個人的マスターピースはカラヤン最後の録音(w/ VPO)です。w/ BPO盤の厳しい抑揚を削ぎ落として、クールに広がる美しさが光りますね。





ブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 WAB107 (ノヴァーク版)

■ 第一楽章 [三つの主題のソナタ形式]
第一主題はvcを美しく奏で、第二主題のobとclは流れに乗りながら、山場の後の第三主題は表情変化を大きく奏でました。
展開部・再現部は主題をコントラスト良く対比させて、コーダは大きく派手な山場を作りました。
全体としては揺さぶりや重厚さを抑えていましたね。
■ 第二楽章 [A-B-A-B'-A のロンド形式]
主要主題は暗さを軸足に取ったアダージョ、中間部はやや明るさを見せるモデラートでした。
その後の両主題回帰ではもう少し短調の主要主題を生かして欲しかった気がしました。コーダのワーグナーの「葬送音楽」ももっと鎮めた音色でも良かったのでは。
■ 第三楽章 [中間部一回の三部形式]
主要主題はスケルツォらしさよりも勇壮さ主体に、中間部はその流れからの穏やかさでした。
ブルックナーらしい怒涛の流れがありましたね。もう一歩踏み込めば陶酔的だったかも。
■ 第四楽章 [三つの主題のソナタ形式]
テンポ設定が速めでした。第一主題は弾ける響きを強調しながら第二主題は優美に、第三主題は派手派手しく、適度なコントラストと言った感じです。
展開部を細く繋げて、再現部は逆順となる三主題を明確に回帰させました。コーダはもちろん大きく広げて締めました。


前半二つの楽章の美しさを前面にしたブルックナー7でした。そこに怒涛や低重心、揺さぶりといった方向を回避しましたね。個人的には好きな方向ですが、それが好みを分たかもしれません。

コンサートならではの一体感と言った、+αがあればもっと素晴らしかったかな⁈

カーテンコールではマエストロに"happy birthday to you"と花束も出て楽しいコンサートだったと思います。


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