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2019年6月25日 クシシュトフ・ペンデレツキ / 都響『ペンデレツキ:ヴァイオリン協奏曲第二番 | ベートーヴェン:交響曲第七番』at サントリーホール

梅雨の東京は天気は今ひとつ。何とか晴れた今日、六本木まで行ってきました。今回は「日本・ポーランド国交樹立100周年記念」だそうです。

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85歳になっても各地のオケに指揮者として客演し、自曲を指揮する元気なポーランドの現代音楽家クシシュトフ・ペンデレツキ(Krzysztof Penderecki)の都響客演ですね。今回も二曲目の庄司紗矢香さん(vn)の "メタモルフォーゼン*" が聴きどろこかと。
ベートーヴェンの第七番ですが、今やコンサートセットされない限り聴く事は無くなったので厳しいですね。派手派手しいので誰がやっても受けると思いますがw

*仲良しのA.S.ムターに献呈されていて、1997年にペンデレツキ指揮(LSO)で録音されていますね.





ペンデレツキ:平和のための前奏曲 (2009年)

管楽器とパーカッションの楽曲で、調性回帰後の曲ですね。ファンファーレ的で華やかで鳴りの良い演奏でした。tpが少し怪しかったですがw
(指揮者が同行のアシスタント:マチェイ・トヴォレクに変わりました)



ペンデレツキ:ヴァイオリン協奏曲第2番《メタモルフォーゼン》 (1992-95年)

長い第一楽章は、抑えた深遠さや幽玄さと言うよりも厚めの音を感じました。vnもムターの繊細で細い音色ではなく、ヴィブラートの効いた切れ味と音の厚さでしたね。
第二三四の三つの楽章はvnの表情を濃く、オケは出し入れ強く、押し出しの強い感じがしました。
第五楽章のメイン、長いカデンツァはなぜかとても短く感じてしまいました⁈
締めの最終楽章は第一楽章の回帰となりますが、オケもvnも厚め濃厚でしたね。
A.S.ムター/LSO盤に比べると、庄司紗矢香さんは技巧を見せつけて都響は音圧のある演奏だったかと。予想通りでしたが、好みは前者になります...




ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 op.92

第一楽章はソナタ三つのパートを華やかに、ですが流れはややフラット気味でした。
第二楽章は本来緩徐楽章ですが、ここは指示通りに少し速めに。然程の特徴は無かった気がします。
第三楽章はスケルツォで、第一楽章回帰的な楽章、ややメリハリが付いてきた様に思えました。
第四楽章はお馴染みの派手な二拍子、テンポ上げて来ました。この楽章が白眉でしたね。速いテンポが締まりを生み出してコントラストも付きました。コンサートならではの一体感も少し感じられましたね。
楽章が進むにつれて、メリハリがハッキリする流れでしたね。最終楽章は聴かせてくれました。




指揮者としてのペンデレツキのイメージが無いのですが、本人のヴァイオリン協奏曲は献呈したムターとの演奏とは対極に感じました。この日一番は、ベートーヴェン7番最終楽章の楽しさだったと思います。

ベートーヴェン第7番を聴くと、この熱狂は1812年当時は現代音楽だったのでしょうねぇ、と思います。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2019年4月14日 東京春祭2019 最終日 大野和士/都響の シェーンベルク『グレの歌』at 東京文化会館


東京・春・音楽祭2019の最終日、天気下り坂の上野まで行ってきました。今回は大野さんの指揮ですから流れは何となく想像できたわけですが、もう一つのポイントは山鳩を得意とする藤村実穂子さんの期待値でしたね。グルントヘーバーは?、不安と期待がありましたが…w


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アルノルト・シェーンベルク『グレの歌, Gurre-Lieder』はレコード時代から大好きな曲で、13CDの聴き比べもしてあります。ぜひそちらもご笑覧下さい。

  ▶️ 『グレの歌 13CD聴き比べ:名盤・おすすめは





ヴァルデマルとトーヴェは始めからステージに、その他は歌う際のみ登場する珍しいパターンでしたね。大ベテランのグルントヘーバーは最後までステージに残りました。曲の繋がりだけでなく脚の具合も勘案したのかもしれません。

ヴァルデマル王 (クリスティアン・フォイクト, Christian Voigt)
入りの "迫り来る黄昏に" で、軽やかなテノールがヴァルデマルらしさを感じさせてくれました。ところが "馬よ!" では残念ながら声が前に出て来ません。表現は好みなのですが、強音の高音は無理を感じました。従って第二・第三部の神と対峙する姿勢は弱かったです。

トーヴェ (エレーナ・パンクラトヴァ, Elena Pankratova)
ヴァルデマルの"馬よ!" を受けての "星は歓びの…" は凄く速いテンポ設定で驚かされました。走っているごとくでしたね。太めのsopで表現力も濃厚、可憐な若さというよりも恋愛に長けた女性と言った風。個人的な好みのトーヴェとは少し違いました。

山鳩 (藤村実穂子, Mihoko Fujimura)
トーヴェの死の悲しみと怒りを、見事に色濃く歌い上げましたね。声量・表現・切れ味 共に素晴らしかったです。ただ、ヤンソンスとの共演盤の方が、絞り出す様な歌い方で好みではありますが。(中国初演:上海公演に近い感じだったかも)
やっぱり期待を裏切らない凄さでした。

農夫 (甲斐栄次郎, Eijiro Kai)
前半は慄きは上手いバス・バリトンで、"Da fährt's…" から後半のキリストに祈るパートではやや一本調子ではありましたが落着きを見せる表現でしたね。予想を上回る出来で、失礼!!、嬉しかったですね。

クラウス (アレクサンドル・クラヴェッツ, Alexander Kravets)
道化の具合は完璧! 本当に道化で、着崩れて一杯やりながら酔っ払った演技で登場しました。歌は速めでもちろんコミカル、笑いも入れてクールな内容を斜に構えて歌いましたね。本来ならあまり道化たクラウスは好みでは無いのですが、今回は一本取られましたw

語り手 (フランツ・グルントヘーバー, Franz Grundheber)
御歳81歳のシュプレッヒゲザングは前半は凄い早口。後半"夏の夢"からは内容に合った諭すようなバリトンが生きましたね。
登場時は杖を突いてゆっくりと出てきたので、また演技付きかと思いましたがマジでした。拍手!!

合唱団 (東京オペラシンガーズ)
"よくぞ来られた…" は、オケのパワーに負けてました。個人的な希望としては複数合唱団が良いですね、色々難しいでしょうが。"見よ, 太陽!" は混声合唱が活きていました。


演奏と流れ (東京都交響楽団/大野和士)
第一部序奏は速めで厚い音、管楽器が少し破綻をきたし不安がよぎりました。ところが "馬よ!" は第一部最高の演奏で、ディナーミクを振った派手さが生きました。第一部は前半の速めのテンポ設定が特に際立ちました。
第二部は動機群を山場 "ヴァルデマルの絶望" を含めて見事にメリハリを付けて鳴らしました。
第三部も第二部の流れからペースも上がって'出し入れ'の明瞭なこの曲らしさを味合わせてくれました。ここでも途中、管楽器の破綻が有ったのが実に残念ですが、目をつぶれる全体の見事な出来でしたね。



素晴らしいグレだったと言って良いのでは! 演奏は多少の破綻は有ったものの大野さんらしいドンシャン・メリハリを生かした演奏が決まり この曲らしさを見せてくれやした。

歌手陣も楽しさ十分でした。藤村さんの見事な山鳩、カーテンコールの拍手も一番!、を筆頭に農夫・クラウス・語り手それぞれが個性的に演じてくれましたね。主役二人がやや残念ですが、補って余りあり!でしたね。

この曲にはクールで良い録音もありますが、迫力系+演技の仕込で楽しめたのは間違いなく、今日は楽しかったです。



今年は『グレの歌』コンサート当たり年ですね。先月3月のカンブルラン/読響、そして10月にはノット/東響と三回楽しめます。

ちなみに個人的最大の聴き処は第三部#4「トーヴェの声で森はささやき」ラスト、亡霊になってなおヴァルデマルがトーヴェを慕う "Tove, Tove, Waldemar sehnt sich nach dir! "です。そこは次回のお楽しみと言う事で。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2019年4月10日 ジョナサン・ノット / スイス・ロマンド管弦楽団『マーラー 交響曲 第6番 悲劇的』at 東京文化会館

春真っ盛りの東京にシトシトと寒い雨が降る中、上野の東京文化会館へノットのマーラー6番を楽しみに行ってきました。

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J.ノットはバンベルク交響楽団と素晴らしい演奏(2008年)を残していますね。今回は2017年から首席指揮者を務めるスイス・ロマンド管(Orchestre de la Suisse Romande)を率いての演奏です。バンベルク響の6番と基本的には同じ構成ですが、軸足がコントラストから激しさになっていました。

▶️ マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 60CDを聴き比べ
  (ノット/バンベルク響のインプレあり)





マーラー 交響曲 第6番《悲劇的》

■ 第一楽章
提示部第一主題は速く勇壮、パッセージで若干静めてアルマの主題は速めながら鳴りの良さを感じました。展開部では第一主題は激しさ、挿入部のスローも情熱を感じる流れ、コーダも第二主題は速めに走りました。
■ 第二楽章
スケルツォでした。主要主題は一楽章の流れに乗って速めで激しく、トリオも優美さよりも力の入った変拍子でしたね。
■ 第三楽章
アンダンテは全体スロー。主部二主題は穏やかな優美さと哀愁を、中間部では大きな安らぎを感じました。主部の再現では山場を大きく鳴らして、やや色の濃い緩徐楽章になってしまいましたね。
■ 第四楽章
この曲のキーの一つ序奏は締まり良く、提示部第一主題は一気に勢いと激しさを増して、第二主題は明るく穏やかな中に刺激を感じました。展開部は二つの主題のコントラストを生かして、騎行・行進曲と第一主題の激しさを際立たせました。再現部は第一主題回帰以降を激しさで突き進み、コーダで静めるとラスト一撃。全体的にやや荒っぽい力技的な流れですね。


速いテンポと激しさを全面に押し出したマーラー6でした。激しさはシャープや切れ味と言うより力感と荒っぽさですね。

コンサートならではの気持ちが現れた荒れは歓迎ですが、何か今ひとつスッキリしません。残念ながらオケの揃いや丁寧さと言った力量があまり伝わらなかったからかもしれません。
(第一ヴァイオリン第5プルトの二人は指揮者が入ってくるまでお喋りに花を咲かせていました。アジアツアーで疲れていて集中力が欠けていたのかもしれません。オーディエンスの拍手もあまり長くは続きませんでしたね)


番外で恐縮ですが、前半のメンデルスゾーン『ヴァイオリン協奏曲』vnの辻彩奈さんは暖色系でヴィブラートと出し入れが強く、表現力で大向こうを唸らせるタイプのヴィルトゥオーゾですね。細く切れる様なクールさとは異なる方向性です。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2019年3月24日 カンブルラン常任指揮者最終日 読響『ベルリオーズ:幻想交響曲・他』at 東京芸術劇場


今日はシルヴァン・カンブルランの最終日、桜も咲いた晴天の東京・池袋まで行ってきました。


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(カーテンコール後の撮影許可がありました)


今やまずコンサート機会以外では聴かないベートーヴェンなので『ピアノ協奏曲第3番』はポリーニ/アバド/BPOで予習して来ました。
『幻想交響曲』マエストロ曰く "何か新しい事を" と。10年前の読響客演は行っていませんし、残念ながらそのCDも未所有です。(耳タコの一曲ですが、CDなら最近はミュンシュ/パリ管の様なドンシャン演奏よりも、デュトワ/モントリオール管の様な繊細さと切れ味が好きですね。M.T.T./S.F.響よりもさらにクールで、ピリオドのインマゼールほど穏やかでもありません。コンサートだとメリハリが盛り上がりますが...)





歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
エクトル・ベルリオーズ (Hector Berlioz, 1803-1869)

キョロキョロと表情を変える小曲ですね。緩やか和やかな印象で、まとまりは良いのですが今日の幕開けにしてはテンション低めの感じでしたね。


ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 Op. 37
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven, 1770-1827)

まずはピアノのピエール=ロラン・エマール(Pierre-Laurent Aimard)ですが、ソフトな音色でアゴーギクの表情付けでした。
第一楽章は第一主題をスマートに、第二主題は古典優美は避けたゆったりとした流れでした。pfカデンツァではヴィルトゥオーゾらしさを見せてくれましたね。
第二楽章はpfの主題のスロー優美な音色と中間部の落差は小さく、コントラストがやや低い眠い流れを感じてしむいました。
第三楽章主要主題はpfとオケがマイルドに絡み合い、中間部でも表情変化は少なめでしたね。後半のトゥッティからパッセージ そしてコーダの見せ場も肩肘張らずにナチュラルにフィニッシュしました。
もっとメリハリを付けて来るかと思いましたが、柔らかいバランス感の前半でした。



幻想交響曲 Op. 14
エクトル・ベルリオーズ

見事なラスト二楽章と言っていいでしょうね。
「IV. 断頭台への行進」処刑場への行進曲は管楽器の鳴りと弦楽のマッチが良くカラフル華やかでした。最後断ち切られるイデー・フィクス前後の激しさもビシッと締まりました。(首が転がる音が聴こえないのは不思議でしたが)
「V. サバトの夜の夢」前半の魔女の宴では出し入れ強く、"怒りの日"は管弦打楽器一体でホールに響き渡りました。後半はまさに怒涛迫力の色彩音でフィニッシュまで駆け抜けました。
最終日ならではの一体感と盛上がりはやっぱりスペシャル、素晴らしい演奏になりました!!



前半は抑えめで心配しましたが、後半「幻想交響曲」は最終日のパワーが炸裂してコンサートならではの情熱と一体感の素晴らしい演奏になりました。ありがとう、シルヴァン!!でしたね。

読響も管楽器が特に華やかに鳴って曲を盛り立ててくれました。


アンコール
エマールがクルタークを持って来るのは予想していました。現代音楽を得意とする彼の旧知の間柄ですからね。(無調静的でオーディエンスは白けた様でしたが…)
カンブルランのアンコールはこちらですw


(当日は主催者よりカーテンコールからの撮影とSNS公開可の案内がありました)






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2019年3月19日 シルヴァン・カンブルラン『果てなき音楽の旅』w/ ピエール=ロラン・エマール, 読響 at 紀尾井ホール

読響常任指揮者最後の月にカンブルラン自ら選んだ現代音楽アンサンブル作品、場所も紀尾井ホールとうってつけです。

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音響系からスペクトル楽派に至る前衛の流れを並べましたね。前半はカラフルな音が交錯する音響系、後半は現在の空間音響系に直接的に繋がっていく二曲です。(という事で少々古い年代のチョイスではありますが)

 ▶️「このブログでいう現代音楽」に流れを載せてあります。





オクタンドル, Octandre (1923年)
エドガー・ヴァレーズ (Edgard Varèse, 1883-1965)

前衛前夜、ストラヴィンスキーを感じる3パートの小曲(for フルート, クラリネット, オーボエ, バスーン, トランペット, トロンボーン, ダブルベース)で、打楽器が無くヴァレーズらしからぬ楽曲ですね。しかしカンブルランはヴァレーズの煌びやかな反復旋律構成をカラフルに仕立てました。特に管楽器トゥッティでの色彩感溢れる音色は見事で、ホールに響き渡りましたね。
P.ブーレーズ盤(Sony)よりもやや速めで、華やか明快な展開でした。次のメシアンとのつながりの良さも感じました。




7つの俳諧, Sept haïkaï (1962年)
オリヴィエ・メシアン (Olivier Messiaen, 1908-1992)
I.導入部 - II.奈良公園と石燈籠 - III.山中湖-カデンツァ - IV.雅楽 - V.宮島と海中の鳥居 - VI.軽井沢の鳥たち - VII.コーダ

セリエル的な点描とメシアン和声がカラフルな楽曲ですね。III.ではピエール=ロラン・エマール(Pierre-Laurent Aimard)の鳴りの良いpfカデンツァと、アンサンブルの鳥の声のポリフォニーの煌びやかさ、二つの対比が素晴らしかったですね。もう一つのメインVI.はpfとアンサンブルが共にポリフォニカルに絡み、美しい混沌を作りました。
ヴァレーズもそうでしたが、強音パートでの煌びやかな色彩が、ここでも光りましたね。
エマールのpfもこの曲としては主張が明確でアンサンブルとのコントラストを作ってくれたと思います。




4つの小品, Quattro Pezzi (1959年)
ジャチント・シェルシ (Giacinto Scelsi, 1905-1988)

シェルシは弟子のヴィエーリ・トサッティ(Vieri Tosatti)と共同制作で、一音の響きを倍音解析するこの代表曲を作りました。後の"スペクトル楽派"の源流とされますね。
一つの音を色々な楽器で共鳴させる様な楽曲で、旋律(音形?)はありません。グリッサンドによる微分音やトリル・トレモロを組み込んでいます。パートが進むごとに音の重なりと音量が増し、第4パートでは発生する倍音のうねりがホール空間に響き渡りました。
まさに今の時代の空間音響系の原点を味わえましたね。素晴らしい演奏でした。




「音響空間」から“パルシエル”, Les espaces acoustiques: Partiels (1975年)
ジェラール・グリゼー (Gérard Grisey, 1946-1998)

上記シェルシとローマで出会い、スペクトル解析倍音を元にした"スペクトル楽派"の流れをトリスタン・ミュライユと共に作りました。「音響空間」は基音Eの倍音構成で、今回のパート3.パルシエルは18人編成ですね。(▶️ 楽曲構成のインプレへ)
 シェルシ「4つの小品」との違いは微分音を弦楽器の旋律に載せている事、リズムを付ける事でしょう。とは言え、ともすると類型に陥りかねません。カンブルランはここで表現を倍音押出しから、繊細な旋律(or音形?)に軸足を変えました。これでシェルシの進化系という事が伝わりましたね。
そしてエンターテイメントはラスト3'の消え入るノイズに仕込まれていました。楽器をケースにしまう音、スコアの最終ページに貼られたトレース紙を弄る音、カンブルランは赤いタオルで汗を拭きます。ラストはスポットライトがシンバルを構える打楽器奏者に当たりそのまま真っ暗に。そこでpppで打たれて終わりました。
完全にやられましたね。曲の聴かせ方だけでなく、演出も一工夫で本当に楽しませてもらいました。




先ずはキーとなるシェルシの「4つの小品」を生で聴けたのが嬉しかったですね。グリゼーと並べて聴く事で、時代の先端性を強く感じる事が出来ました。

カンブルランが好きそうな?!色彩感ある4曲と見事な演出で素晴らしかったですね。

欧州では前衛現代音楽の指揮者として実績が大きいので、最後にそのカンブルランの顔を見られました。このコンサートに来られて本当に良かったです


オーディエンスは現代音楽好きが多かったので、もちろんスタンディング・オベーション。アンサンブルメンバーも足を踏み鳴らし、起立を拒否して拍手をカンブルランに譲るお馴染みの様子がありました。メンバーがステージから去っても拍手は止まず、カンブルランの再登場。素晴らしいコンサートには付き物ですが、いよいよラストだなぁという気配も感じましたね。



テーマ : クラシック
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2019年3月14日 カンブルラン/読響の シェーンベルク『グレの歌』at サントリーホール

いよいよシルヴァン・カンブルランの読売日本交響楽団"常任指揮者"最後の月になりました。ラストの3月24日まで毎週(計3回)カンブルランのコンサートに行く予定です。

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アルノルト・シェーンベルクの大曲歌曲『グレの歌』ですね。レコード時代から大好きな曲で、事前に13CDの聴き比べもして準備万端で楽しみにしていました。ぜひそちらもご笑覧下さい。

  ▶️ 『グレの歌 13CD聴き比べ:名盤・おすすめは





ヴァルデマル王 (ロバート・ディーン・スミス, Robert Dean Smith)
序奏下降音階からの"迫り来る黄昏"は愛を優しく歌い、"馬よ!" ではヘルデンテノールの伸びやかなハイトーンを見事に聴かせてくれました。第二部・三部の神に対峙する厳しさは怒りよりも堂々と、聴かせ処 "トーヴェの声で…" は感情が溢れましたね。ヴァルデマルに適役でした。

トーヴェ (レイチェル・ニコルズ, Rachel Nicholls)
"星は歓びの…" のワルツの様な美しさ、ヴァルデマルの "馬よ!" からの流れはこの曲最高の見せ場になりましたね。"あなたは私に愛の…" では優しさを伸びやかに歌って、トーヴェらしさが光りました

山鳩 (クラウディア・マーンケ, Claudia Mahnke)
トーヴェの死の悲しみと怒りを、残念ながら朗々と歌いました。できれば絞り出すような無念さが欲しかったです。

農夫 (ディートリヒ・ヘンシェル, Dietrich Henschel)
少々肩に力の入ったバス・バリトン、"Da fährt's…" は強音オケにかき消されましたね。後半のキリストへの祈りでも力みを感じて、少し好みとは違いましたね。

クラウス (ユルゲン・ザッヒャー, Jürgen Sacher)
適度な道化感で伸びやかに王の様子を語りましたね。テノールの活き活きとした表現がピッタリでした。

語り手 (→ "農夫"と二役)
シュプレッヒゲザング弱めで力み気味。でも中盤の"夏の夢"からは緩やかに、表情豊かにうたいました。

合唱団 (新国立劇場合唱団)
一眼見た時に少ない⁈って思った印象が尾を引いて、パワー不足を感じました。怒涛の声量が欲しかったのは欲が深すぎでしょうか。
(舞台背面のP席を埋め尽くす合唱団と勝手に想像していたので…)


演奏と流れ
第一部は序奏を暖色の優しさ、"馬よ!" で聴かせる激しさは色彩感強く見事に決まりました。不要な揺さぶりを排し、暖かい優しさとカラフルな強音でしたね。
第二部は入り混じる各テーマを表情を付け、山場 "ヴァルデマルの絶望" を力強く鳴らしました。
(ここで休憩でした。普通は第一部との間が多いのですが)
第三部は、もうちょっとパワープレイでも良かった様な。「夏風の荒々しき狩」序奏のまとまりが不足気味なのも気になりましたね。とは言え色彩感あるオケはカンブルランでした。



揺さぶりや強音勝負は無く、派手さは抑えたカンブルランのグレでしたね。とは言え第一部 "馬よ!" から "星は歓びの…" の素晴らしさは格別で、ヴァルデマル / トーヴェ / カンブルラン三者の真髄だったと思います。

歌手陣ではヴァルデマルのディーン・スミスが出色でした。トーヴェのニコルズ、クラウスのザッヒャーも素晴らしかったですね。

最後にオケが退席し照明が点灯してもかなりの人が残って拍手は鳴り止まず、カンブルランが現れてスタンディングオベーションになりました。



今年は『グレの歌』のコンサート当たり年ですね。この後4月に大野/都響、そして10月にノット/東響とメンツも揃いました。楽しみです。

ちなみに個人的最大の聴き処は第三部#4「トーヴェの声で森はささやき」ラスト、亡霊になってなおヴァルデマルがトーヴェを慕う "Tove, Tove, Waldemar sehnt sich nach dir! "です。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2019年1月10日 コパチンスカヤ/大野和士/都響 の『シェーンベルク : ヴァイオリン協奏曲』at サントリーホール

本年の初コンサートは待望のパトリツィア・コパチンスカヤの現代コンチェルトを楽しみに六本木まで行ってきました。

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この曲がコパチンスカヤにぴったりな事はわかっていましたから、名盤を含む事前の4CD聴き比べもして準備OKですね。もちろんチケットは完売だったそうです。





ヴァイオリン協奏曲 Op. 36
アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874-1951)

第一楽章
第一パートまずは主要主題を幽玄美で入ると主音列を切れ味で繋げました。そこからが十二音技法の展開なのですがわかりませんね。流れに切れ味と幽玄さはあるのですが、コパチンスカヤらしい大胆さが感じられません。小刻みなテンポで変奏を繰り広げる第二パートでも変化は少なめ、技巧的で神経質な音色が響きます。第三パートのカデンツァは静的スローをベースですが、期待した激しい切れ味が今ひとつ出て来ません。
第二楽章
第一楽章の残映の様な楽章になりました。入りのソロの第一楽章の主音列回帰は神経質で鬱な音色、トリオでは流麗に表情変化はあるものの音が前に出て来ません。都響にパワーがあったにしても、です。
第三楽章
流れが変わったのは、ここからでした。旋律感のあるvnの主要主題は明らかに元気が出てキレキレで再現するたびに表情を変化させましたね。音圧も上がり、コパチンスカヤらしさが動きにも現れました。
カデンツァは繊細さも合わせて奏でてくれましたが、遠慮せずに全面キレキレの力感でも良かったかと思いました。ラストはオケもパワープレイで応えてくれましたね。
期待したのは、大胆で奔放な炸裂するvn。そうではありませんでたね。繊細・幽玄に軸足、と言えばいいのでしょうか。第三楽章の元気さが始めから欲しかった、というのが正直な処です。
都響が元気だったので、余計にそう感じたのかもしれませんね。(パワープレイがあれば良いのか?というのも今の大野/都響には感じる事もあるわけですが…)



白のドレスに裸足のコパチンスカヤ、練習不足という事ではないでしょうがコンチェルトなのにスコアを準備していましたね。(事前に置かれたスコアと登場時自ら持ち込んだスコア)
個人的コパチンスカヤの期待値が高過ぎたのでしょう、彼女らしい大胆さが今ひとつ薄味に感じてしまいました。

予習で聴き込んだお気に入りのエディンガー(vn)/マデルナ盤が一番の原因?、それとも3月9日のベルリンフィルとの同曲共演の予行演習?!w
【後日記】BPO共演では絶好調でアンコールも二曲演奏したようですね。


体調不良をおして行ったため、後半(ブルックナー/交響曲第6番)はエネルギーが持ちませんでした。



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ジャンル : 音楽

2018年12月15日 ジョナサン・ノット/東響 の『アメリカ(ヴァレーズ) | 英雄の生涯(シュトラウス)』at サントリーホール

今年最後のコンサート、晴れて寒い日が続く様になった東京・六本木まで行ってきました。


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ヴァレーズとR.シュトラウスという楽しみな組合せで、J.ノットとなれば聴きに行かない理由がありませんね。前半も一工夫入れて、Wメインの様相です。
事前予習は同二曲構成のCD、メッツマッハーです ➡️ こちら



密度21.5 (無伴奏フルートのための)
アメリカ (1927年改訂版)
・エドガー・ヴァレーズ (Edgard Varèse, 1883-1965)

ノットは異なる印象の曲を序奏の様に置くのが好きですが、今回もシンプルなflソロ小曲を大編成オケ"アメリカ"に繋げました。
まず入りから明白な強音の切れ味に重心を置いた音色が炸裂です。特徴的なハープの等拍リズムとサイレンは間合い良く挟まれて響きましたね。打楽器は繊細さと大胆さを打ち分け、強音の空間の響きはホールを揺るがせました。中盤以降での独特のリズム感も生きていましたね。全体を緊張感で漲らせ、圧倒するパワーゲームはお見事‼︎
強烈な響きと緊張感は静音パートを凌駕して、ヴァレーズらしい鳴りと響きを轟かせてくれました。最高の"アメリカ"の一つだったでしょう‼




交響詩「英雄の生涯」Op.40
・リヒャルト・シュトラウス (Richard Strauss, 1864-1949)

[1. 英雄] 主テーマは精悍さをかなり速いテンポで表しました。
[2. 英雄の敵] は敵の揶揄する様な音色が強め。
[3. 英雄の伴侶] 伴侶vnの優しさと励ましが厚めのボウイングで、オケの英雄との会話が図太い伴侶に感じましたね。出来れば薄いボウイングの繊細さで寄り添う伴侶が好みでした。
[4. 英雄の戦場] 敵の管群と英雄のHr+弦が豪快に奏でられ、ノットらしさが見事に生きましたね。
[5. 英雄の業績] 前半は力感を引継ぎましたが、後半の静寂が厚めでコントラストの弱さが気になりました。
[6. 英雄の隠遁と完成] 心の平穏を静かに奏でて欲しい処でしたが、やっぱり音色が厚かった気がします。
概ね厚めにバランスした感じで、英雄と伴侶を中心とする濃淡・強弱のコントラストが弱かった気がしました。
ソロvnと緩徐パートに澄んだ静音があったら素晴らしかったと思います。




なんと言ってもアメリカでしょう。ヴァレーズらしいクラスターの響きが最高レベルで楽しめました。今年最後のコンサートが当たりで良かったです

録音されていたのでCD化されるでしょうね。楽しみが一つ増えました。


ヴァレーズ "アメリカ"は2015-4/18のメッツマッハー/新日フィル以来でした、今回の方が好みですね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2018年12月10日 アラン・ギルバート/都響 の『春の祭典』at サントリーホール

11月はコンサートを入れていなかったので久しぶりのサントリーホール、都響定期第868回です。

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12月なのにテーマは"春"。"フィンガル"と"春祭"はコンサートでおなじみですが、シューマンは今や聴く事が殆どないのでバーンスタイン盤だけでなく古典色濃いガーディナー盤も聴いて来ました。(別の曲みたいですね)
聴く事が多い"春祭"は、今回G.ヒメノ盤とV.ペトレンコ盤で聴き比べインプレ実施ですね。➡️ こちら





序曲 フィンガルの洞窟 Op.26
メンデルスゾーン (Felix Mendelssohn, 1809-1847)

頭で鳴っているのがバーンスタインというのがありますが、ここではアゴーギクを押さえてやや速めでしたね。ディナーミクもスコアを超えるようなスリルはなく、この曲としてはさっぱりとした感じでした。


交響曲第1番 "春" 変ロ長調 Op.38
シューマン (Robert Schumann, 1810-1856)

第一楽章は軽快さがある宮廷祭典音楽風、第二楽章の緩徐は重心を低くして第三楽章スケルツォよりも重厚で、第四楽章には特徴を感じられませんでした。
ソナタ提示部の反復や、主題間の変化の薄さ等 本来古典の色合いが強くて厳しい楽曲ですが、ギルバートのタクトは今ひとつ全体像が掴みづらかった感じです。


春の祭典
ストラヴィンスキー (Igor Stravinsky, 1882-1971)

第一部"序奏"は静かなる変拍子とポリフォニーを生かして欲しかったのですが、速めで音の厚さが気になりました。続く"乙女達の踊り"は激しいリズム感に一体感が感じられません。"春の輪舞"は静音が厚くて鬱な優美さが弱く、後半の激しいコントラストに繋げられません。良かったのは第一部後半の一体感ある炸裂の素晴らしさ、聴かせてくれましたね。
第二部前半も神秘的な静寂の流れを作れません。どうしても静音パートに弱さを感じました。"祖先の儀式"から"生贄の踊り"は本来なら一番の聴かせ処ですが、静音とのコントラストがしっくり来ませんでした。

この曲ならではの煌めく色彩感は弱かったのですが、終わってみれば拍手喝采👏、都響メンバーも大満足な様子。またもや駄耳の証明になってしまいました。
第一部ラストが素晴らしかったので良しと言う事ですね。



出し入れの強い三曲が並びましたが、A.ギルバートの印象は流れは速めでアゴーギクは弱め、弱音を強調しない感じでしょうか。
個人的には弱音パートの幽玄さや神秘感、コントラストが薄い感じです。

2016年のマーラー5番は素晴らしかったのですが、2017年の都響では今回と同じ様な印象でしたね。




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2018年10月19日 ソリスト途中退場の大ハプニング‼︎ 大野和士/都響 の『マントヴァーニ と サン=サーンスの交響曲第3番』at サントリーホール

10月なのに天気の良くない日が続く東京ですが、フランスセットを楽しみに六本木まで行ってきました。


20181019SuntoryHall.jpg


今日の個人的メインはもちろんB.マントヴァーニですね。現在の仏現代音楽の主役の一人で、『2つのヴィオラと管弦楽のための協奏曲』のCDはインプレ済み(→ こちら)です。今回のヴィオラ二人もCDと同じ師弟コンビ、タベア・ツィンマーマン(Tabea Zimmermann)とアントワン・タメスティ(Antoine Tamestit)、で現代音楽を得意とする素晴らしい組合せです。今の時代の多様性の現代音楽、出し入れの強い旋律感のある音楽を作るマントヴァーニ、ですから 大野さんが得意としそうでワクワク感がありますね。

♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧





2つのヴィオラと管弦楽のための協奏曲 (2009年)
ブルーノ・マントヴァーニ (Bruno Mantovani, 1974 - )

前半の2vaカデンツァ、まずここから鳴りの良さと流れの良いボウイングの素晴らしいvaに驚きました。
そして突然と起こるオケの刺激音、割り込むオケと言いたいところですが、こちらはどうもマイルドです。va主導は良いのですがコントラストの弱さを感じましたね。
全休符後の後半も前半同様の見事なカデンツァで入りますが、オケのクラスターはやっぱり弱目です。管楽器、特に金管の弱さを感じましたね。

一番驚いたのは、後半途中で いきなりタベアが退場‼ けっこう長く10分以上ステージ不在で、全員手持ち無沙汰で待つ前代未聞の摩訶不思議さ。︎もちろん初体験でしたw

陰鬱美的なVaを食ってしまう様なクラスターのオケを期待しましたが、はずれました。大野さんはvaを引き立てる作戦に出たのでしょうか⁈。CDよりも弱く、マントヴァー二らしさが不足した様な...




交響曲第3番 ハ短調 op.78《オルガン付》(1886年)
カミーユ・サン=サーンス (Charles Camille Saint-Saëns, 1835-1921)

【第一楽章】
前半は循環主題を明瞭に、木管の第二主題を.....などと書こうかと思ったのですが、可もなく不可もなし的な印象。後半緩徐のオルガン登場はやや強調した感じもありましたが、甘美さが今ひとつ。
【第二楽章】
前半も後半も音の鳴りを大きくパワーを見せて拍手喝采でしたが、それはこの曲の持っている本質の様な。何かスパイスがあれば素晴らしかった気がしました。
頭にあるミュンシュとの比較になってしまいますが、各楽章に色付けが薄かった気がしました。




大野さんらしさはサン=サーンスの第二楽章のパワーと鳴りの良さだったのでしょうね。
残念だったのはマントヴァー二のオケの炸裂クラスターが不発弾になってしまった事でしょうか。でも2人の素晴らしいvaが楽しめてハプニングのおまけ付きwでしたから満足でしたね。



番外ですが、右隣席のオバさんは演奏中にパンフレットのページをめくり堂々と咳をして、左隣席のオジイさんはガムをクチャクチャ。どんなに気を使ったとしてもコンサートホールでは音がきになるはずなのですが…
コンサートのご老人は他よりも常識人が多い気がしますが、それでも近年困ったちゃんが増えています。





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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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