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前半二楽章の美しさ、2019年10月16日 小泉和宏/都響 の『ブルックナー 交響曲 第7番』at サントリーホール


ブルックナーの7番を聴きに六本木まで。近年はコンサートでもない限り聴くことは無くなりましたが好きな曲、本日70歳の誕生日を迎えたマエストロがどう振ってくれるか楽しみですね。


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発売時のインパクトも含めて、この曲の個人的マスターピースはカラヤン最後の録音(w/ VPO)です。w/ BPO盤の厳しい抑揚を削ぎ落として、クールに広がる美しさが光りますね。





ブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 WAB107 (ノヴァーク版)

■ 第一楽章 [三つの主題のソナタ形式]
第一主題はvcを美しく奏で、第二主題のobとclは流れに乗りながら、山場の後の第三主題は表情変化を大きく奏でました。
展開部・再現部は主題をコントラスト良く対比させて、コーダは大きく派手な山場を作りました。
全体としては揺さぶりや重厚さを抑えていましたね。
■ 第二楽章 [A-B-A-B'-A のロンド形式]
主要主題は暗さを軸足に取ったアダージョ、中間部はやや明るさを見せるモデラートでした。
その後の両主題回帰ではもう少し短調の主要主題を生かして欲しかった気がしました。コーダのワーグナーの「葬送音楽」ももっと鎮めた音色でも良かったのでは。
■ 第三楽章 [中間部一回の三部形式]
主要主題はスケルツォらしさよりも勇壮さ主体に、中間部はその流れからの穏やかさでした。
ブルックナーらしい怒涛の流れがありましたね。もう一歩踏み込めば陶酔的だったかも。
■ 第四楽章 [三つの主題のソナタ形式]
テンポ設定が速めでした。第一主題は弾ける響きを強調しながら第二主題は優美に、第三主題は派手派手しく、適度なコントラストと言った感じです。
展開部を細く繋げて、再現部は逆順となる三主題を明確に回帰させました。コーダはもちろん大きく広げて締めました。


前半二つの楽章の美しさを前面にしたブルックナー7でした。そこに怒涛や低重心、揺さぶりといった方向を回避しましたね。個人的には好きな方向ですが、それが好みを分たかもしれません。

コンサートならではの一体感と言った、+αがあればもっと素晴らしかったかな⁈

カーテンコールではマエストロに"happy birthday to you"と花束も出て楽しいコンサートだったと思います。


テーマ : クラシック
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2019年9月20日 ヴァイグレ/読響『マーラー 交響曲 第5番』at サントリーホール


季節が秋風に変わった東京、清々しい空気の六本木一丁目まで行ってきました。ヴァイグレ/マーラー5番の三日連続公演の初日です。(後二回は東京芸術劇場)

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この四月から読売日本交響楽団第10代常任指揮者に就任したセバスティアン・ヴァイグレ(Sebastian Weigle)さんですが、恥ずかしながら殆ど知見がありません。と言うわけで、今回がその個性と手腕を楽しむチャンスとなりました。(カンブルランは以前から現代音楽を振っていましたからね)





マーラー 交響曲第5番 嬰ハ短調

第一部
tpが少し怪しいですが、ファンファーレがまずは派手。葬送行進曲はスロー低重心、第一トリオ速くて激しく、第二トリオは哀愁、コントラストの明確な流れでした。
第二楽章第一主題は速くて荒っぽい良い気配から、第二主題は哀愁よりも力強さを感じましたね。展開部のvcは優しい美しさがありました。期待を抱かせる第一部だったのですが。

第二部
スケルツォ主題もレントラー主題も優雅さがありません。その一つの理由はhrの破綻でしょう。その後もオブリガートhrは安定せず、他の管楽器もまとまりに欠けました。この楽章に欲しい優美さは感じられませんでした。強音パート、ラストは荒れ気味で面白かったのですが。

第三部
アダージェットは夏の夕陽の様な暖色系で濃厚。トリオさえも力強さを見せてきます。近年珍しいですね。最終楽章、第一主題と第二主題の絡みは管楽器にまとまりがありません。その後もそこが足を引っ張った様な... コデッタは一転して実に優美でしたね。この流れを第三楽章に作ってくれればgoodだっのですが。展開部の山場、再現部は山場からラストはほぼトゥッティの爆演ですから管楽器は馬脚を現さずに済みました。

ヴァイグレさんは速く激しいパートと優しさを対比させ、アダージェットの様な個性も見せましたね。演奏が着いていければ…





ちなみに前半の『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番』もメリハリがあり、まとまりもある演奏でした。全体的には古典色の強いマイルドな味わいでしたね。
pf:ルドルフ・ブッフビンダーは想像以上に流麗さのタッチでした。アンコールの"テンペスト第3楽章"の方が力感もあって、ブッフビンダーらしかった気がしましたね。



聴きに行ったのはマーラーだっのですが、良かったのはベートーベンの方でした。いずれにしてもヴァイグレさんはメリハリをはっきりさせた流れを作りそうですね。

読響管楽器群が頑張ってくれるとこれから楽しそうです。


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個性を感じた二つの演奏:2019年9月4日 大野和士/都響『ベルク:ある天使の思い出に | ブルックナー:交響曲第9番』at サントリーホール


"若杉弘没後10年記念"として行われる都響定期885回。もう10年になるんですねぇ…
なんと約1ヶ月ぶりのコンサート、サントリーホールへ行ってきました。何故か足が徐々に遠のきます…

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今回はコンサート定番二曲。外れの少ないセットだと思いますが、皆さん好みを持っていらっしゃる両曲でしょう。

ちなみに "ベルク:ある天使の思い出に" はクレーメルとツェトマイアーの聴き比べファウスト他5CD聴き比べも過去にインプレしています。(今回はツェトマイアーを聴いて来ました)





ヴァイオリン協奏曲《ある天使の思い出に》
アルバン・ベルク (Alban Berg, 1885-1935)

大野/都響は第一楽章を調性感のある明瞭な流れにして来ました。本当は深淵であって欲しかったですが。第二楽章I.Allegroでガツっとメリハリを付けるかと思いきや、そこそこに納めた感じでしたね。

問題はヴェロニカ・エーベルレ(Veronika Eberle)のvnが好みでない事でしたねェ。暖色系で明瞭な鳴りの第一楽章、この時点で好みとは違うのはわかりました。第二楽章I.Allegroはグリグリのテク見せつけて "大向こうを唸らせ" ました。この曲で?!
個人的には無調ベースの幽玄さ優しさが "ある天使=マノン" ですが、逆の暑苦しい感じで残念でした。




交響曲 第九番 ニ短調 WAB109(ノヴァーク版)
アントン・ブルックナー (Anton Bruckner, 1824-1896)

■ 第一楽章
第一主題の動機群は速めの緊迫感を作って第七動機の山場を迎えます。第二主題は優しく美しく心穏やか、とは行かず続く第三主題にかけて予想以上に濃厚な流れを作りましたね。落ち着きはありませんが個性的です。
展開部の第一主題変奏は第七動機が一層激しさを増していました。
再現部の第二・三主題も速く濃い流れを維持して、コーダはラスト炸裂でした。
■ 第二楽章
ここでも主要主題は速め、そこから強烈なトゥッティの動機で爆裂です。続くobからの動機も濃く、トリオも一般的な軽快とは言い難い濃厚さでしたね。"全体が速め音圧高め" の一二楽章は個性的でした。
■ 第三楽章
残念だったのはこの楽章でした。テンポも普通になってメリハリに欠けた感じです。特に第一主題入りのトリスタン和声はやや暑苦しく残念でした。「生への決別」は激しさ炸裂で良かったのですが、それでなくても構成の分かりづらい楽章がフラットに長く感じましたね。コーダは落ち着かせたのですが、ラストはやや尻切れトンボ風に感じました。
第三楽章は別として、第一第二楽章は速くて炸裂感の高い、一癖ある面白い流れでしたね。




前半の協奏曲は好みのパターンではなかったと言う事で...

ブルックナーは、ヴァントのスロー低重心と全く方向性の異なる、速めで腰の高い荒波の様で面白かったですね。全体完成度を上げて第三楽章もその流れに合っていたら興味深いブルックナー9だったのではないでしょうか。

大野さんの完成形を聴いてみたいですね。


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2019年6月25日 クシシュトフ・ペンデレツキ / 都響『ペンデレツキ:ヴァイオリン協奏曲第二番 | ベートーヴェン:交響曲第七番』at サントリーホール

梅雨の東京は天気は今ひとつ。何とか晴れた今日、六本木まで行ってきました。今回は「日本・ポーランド国交樹立100周年記念」だそうです。

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85歳になっても各地のオケに指揮者として客演し、自曲を指揮する元気なポーランドの現代音楽家クシシュトフ・ペンデレツキ(Krzysztof Penderecki)の都響客演ですね。今回も二曲目の庄司紗矢香さん(vn)の "メタモルフォーゼン*" が聴きどろこかと。
ベートーヴェンの第七番ですが、今やコンサートセットされない限り聴く事は無くなったので厳しいですね。派手派手しいので誰がやっても受けると思いますがw

*仲良しのA.S.ムターに献呈されていて、1997年にペンデレツキ指揮(LSO)で録音されていますね.





ペンデレツキ:平和のための前奏曲 (2009年)

管楽器とパーカッションの楽曲で、調性回帰後の曲ですね。ファンファーレ的で華やかで鳴りの良い演奏でした。tpが少し怪しかったですがw
(指揮者が同行のアシスタント:マチェイ・トヴォレクに変わりました)



ペンデレツキ:ヴァイオリン協奏曲第2番《メタモルフォーゼン》 (1992-95年)

長い第一楽章は、抑えた深遠さや幽玄さと言うよりも厚めの音を感じました。vnもムターの繊細で細い音色ではなく、ヴィブラートの効いた切れ味と音の厚さでしたね。
第二三四の三つの楽章はvnの表情を濃く、オケは出し入れ強く、押し出しの強い感じがしました。
第五楽章のメイン、長いカデンツァはなぜかとても短く感じてしまいました⁈
締めの最終楽章は第一楽章の回帰となりますが、オケもvnも厚め濃厚でしたね。
A.S.ムター/LSO盤に比べると、庄司紗矢香さんは技巧を見せつけて都響は音圧のある演奏だったかと。予想通りでしたが、好みは前者になります...




ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 op.92

第一楽章はソナタ三つのパートを華やかに、ですが流れはややフラット気味でした。
第二楽章は本来緩徐楽章ですが、ここは指示通りに少し速めに。然程の特徴は無かった気がします。
第三楽章はスケルツォで、第一楽章回帰的な楽章、ややメリハリが付いてきた様に思えました。
第四楽章はお馴染みの派手な二拍子、テンポ上げて来ました。この楽章が白眉でしたね。速いテンポが締まりを生み出してコントラストも付きました。コンサートならではの一体感も少し感じられましたね。
楽章が進むにつれて、メリハリがハッキリする流れでしたね。最終楽章は聴かせてくれました。




指揮者としてのペンデレツキのイメージが無いのですが、本人のヴァイオリン協奏曲は献呈したムターとの演奏とは対極に感じました。この日一番は、ベートーヴェン7番最終楽章の楽しさだったと思います。

ベートーヴェン第7番を聴くと、この熱狂は1812年当時は現代音楽だったのでしょうねぇ、と思います。




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素晴らしい"グレ"!、2019年4月14日 東京春祭2019 最終日 大野和士/都響の シェーンベルク『グレの歌』at 東京文化会館


東京・春・音楽祭2019の最終日、天気下り坂の上野まで行ってきました。今回は大野さんの指揮ですから流れは何となく想像できたわけですが、もう一つのポイントは山鳩を得意とする藤村実穂子さんの期待値でしたね。グルントヘーバーは?、不安と期待がありましたが…w


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アルノルト・シェーンベルク『グレの歌, Gurre-Lieder』はレコード時代から大好きな曲で、13CDの聴き比べもしてあります。ぜひそちらもご笑覧下さい。

  ▶️ 『グレの歌 13CD聴き比べ:名盤・おすすめは





ヴァルデマルとトーヴェは始めからステージに、その他は歌う際のみ登場する珍しいパターンでしたね。大ベテランのグルントヘーバーは最後までステージに残りました。曲の繋がりだけでなく脚の具合も勘案したのかもしれません。

ヴァルデマル王 (クリスティアン・フォイクト, Christian Voigt)
入りの "迫り来る黄昏に" で、軽やかなテノールがヴァルデマルらしさを感じさせてくれました。ところが "馬よ!" では残念ながら声が前に出て来ません。表現は好みなのですが、強音の高音は無理を感じました。従って第二・第三部の神と対峙する姿勢は弱かったです。

トーヴェ (エレーナ・パンクラトヴァ, Elena Pankratova)
ヴァルデマルの"馬よ!" を受けての "星は歓びの…" は凄く速いテンポ設定で驚かされました。走っているごとくでしたね。太めのsopで表現力も濃厚、可憐な若さというよりも恋愛に長けた女性と言った風。個人的な好みのトーヴェとは少し違いました。

山鳩 (藤村実穂子, Mihoko Fujimura)
トーヴェの死の悲しみと怒りを、見事に色濃く歌い上げましたね。声量・表現・切れ味 共に素晴らしかったです。ただ、ヤンソンスとの共演盤の方が、絞り出す様な歌い方で好みではありますが。(中国初演:上海公演に近い感じだったかも)
やっぱり期待を裏切らない凄さでした。

農夫 (甲斐栄次郎, Eijiro Kai)
前半は慄きは上手いバス・バリトンで、"Da fährt's…" から後半のキリストに祈るパートではやや一本調子ではありましたが落着きを見せる表現でしたね。予想を上回る出来で、失礼!!、嬉しかったですね。

クラウス (アレクサンドル・クラヴェッツ, Alexander Kravets)
道化の具合は完璧! 本当に道化で、着崩れて一杯やりながら酔っ払った演技で登場しました。歌は速めでもちろんコミカル、笑いも入れてクールな内容を斜に構えて歌いましたね。本来ならあまり道化たクラウスは好みでは無いのですが、今回は一本取られましたw

語り手 (フランツ・グルントヘーバー, Franz Grundheber)
御歳81歳のシュプレッヒゲザングは前半は凄い早口。後半"夏の夢"からは内容に合った諭すようなバリトンが生きましたね。
登場時は杖を突いてゆっくりと出てきたので、また演技付きかと思いましたがマジでした。拍手!!

合唱団 (東京オペラシンガーズ)
"よくぞ来られた…" は、オケのパワーに負けてました。個人的な希望としては複数合唱団が良いですね、色々難しいでしょうが。"見よ, 太陽!" は混声合唱が活きていました。


演奏と流れ (東京都交響楽団/大野和士)
第一部序奏は速めで厚い音、管楽器が少し破綻をきたし不安がよぎりました。ところが "馬よ!" は第一部最高の演奏で、ディナーミクを振った派手さが生きました。第一部は前半の速めのテンポ設定が特に際立ちました。
第二部は動機群を山場 "ヴァルデマルの絶望" を含めて見事にメリハリを付けて鳴らしました。
第三部も第二部の流れからペースも上がって'出し入れ'の明瞭なこの曲らしさを味合わせてくれました。ここでも途中、管楽器の破綻が有ったのが実に残念ですが、目をつぶれる全体の見事な出来でしたね。



素晴らしいグレだったと言って良いのでは! 演奏は多少の破綻は有ったものの大野さんらしいドンシャン・メリハリを生かした演奏が決まり この曲らしさを見せてくれやした。

歌手陣も楽しさ十分でした。藤村さんの見事な山鳩、カーテンコールの拍手も一番!、を筆頭に農夫・クラウス・語り手それぞれが個性的に演じてくれましたね。主役二人がやや残念ですが、補って余りあり!でしたね。

この曲にはクールで良い録音もありますが、迫力系+演技の仕込で楽しめたのは間違いなく、今日は楽しかったです。



今年は『グレの歌』コンサート当たり年ですね。先月3月のカンブルラン/読響、そして10月にはノット/東響と三回楽しめます。

ちなみに個人的最大の聴き処は第三部#4「トーヴェの声で森はささやき」ラスト、亡霊になってなおヴァルデマルがトーヴェを慕う "Tove, Tove, Waldemar sehnt sich nach dir! "です。そこは次回のお楽しみと言う事で。


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2019年4月10日 ジョナサン・ノット / スイス・ロマンド管弦楽団『マーラー 交響曲 第6番 悲劇的』at 東京文化会館

春真っ盛りの東京にシトシトと寒い雨が降る中、上野の東京文化会館へノットのマーラー6番を楽しみに行ってきました。

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J.ノットはバンベルク交響楽団と素晴らしい演奏(2008年)を残していますね。今回は2017年から首席指揮者を務めるスイス・ロマンド管(Orchestre de la Suisse Romande)を率いての演奏です。バンベルク響の6番と基本的には同じ構成ですが、軸足がコントラストから激しさになっていました。

▶️ マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 60CDを聴き比べ
  (ノット/バンベルク響のインプレあり)





マーラー 交響曲 第6番《悲劇的》

■ 第一楽章
提示部第一主題は速く勇壮、パッセージで若干静めてアルマの主題は速めながら鳴りの良さを感じました。展開部では第一主題は激しさ、挿入部のスローも情熱を感じる流れ、コーダも第二主題は速めに走りました。
■ 第二楽章
スケルツォでした。主要主題は一楽章の流れに乗って速めで激しく、トリオも優美さよりも力の入った変拍子でしたね。
■ 第三楽章
アンダンテは全体スロー。主部二主題は穏やかな優美さと哀愁を、中間部では大きな安らぎを感じました。主部の再現では山場を大きく鳴らして、やや色の濃い緩徐楽章になってしまいましたね。
■ 第四楽章
この曲のキーの一つ序奏は締まり良く、提示部第一主題は一気に勢いと激しさを増して、第二主題は明るく穏やかな中に刺激を感じました。展開部は二つの主題のコントラストを生かして、騎行・行進曲と第一主題の激しさを際立たせました。再現部は第一主題回帰以降を激しさで突き進み、コーダで静めるとラスト一撃。全体的にやや荒っぽい力技的な流れですね。


速いテンポと激しさを全面に押し出したマーラー6でした。激しさはシャープや切れ味と言うより力感と荒っぽさですね。

コンサートならではの気持ちが現れた荒れは歓迎ですが、何か今ひとつスッキリしません。残念ながらオケの揃いや丁寧さと言った力量があまり伝わらなかったからかもしれません。
(第一ヴァイオリン第5プルトの二人は指揮者が入ってくるまでお喋りに花を咲かせていました。アジアツアーで疲れていて集中力が欠けていたのかもしれません。オーディエンスの拍手もあまり長くは続きませんでしたね)


番外で恐縮ですが、前半のメンデルスゾーン『ヴァイオリン協奏曲』vnの辻彩奈さんは暖色系でヴィブラートと出し入れが強く、表現力で大向こうを唸らせるタイプのヴィルトゥオーゾですね。細く切れる様なクールさとは異なる方向性です。


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2019年3月24日 カンブルラン常任指揮者最終日 読響『ベルリオーズ:幻想交響曲・他』at 東京芸術劇場


今日はシルヴァン・カンブルランの最終日、桜も咲いた晴天の東京・池袋まで行ってきました。


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(カーテンコール後の撮影許可がありました)


今やまずコンサート機会以外では聴かないベートーヴェンなので『ピアノ協奏曲第3番』はポリーニ/アバド/BPOで予習して来ました。
『幻想交響曲』マエストロ曰く "何か新しい事を" と。10年前の読響客演は行っていませんし、残念ながらそのCDも未所有です。(耳タコの一曲ですが、CDなら最近はミュンシュ/パリ管の様なドンシャン演奏よりも、デュトワ/モントリオール管の様な繊細さと切れ味が好きですね。M.T.T./S.F.響よりもさらにクールで、ピリオドのインマゼールほど穏やかでもありません。コンサートだとメリハリが盛り上がりますが...)





歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
エクトル・ベルリオーズ (Hector Berlioz, 1803-1869)

キョロキョロと表情を変える小曲ですね。緩やか和やかな印象で、まとまりは良いのですが今日の幕開けにしてはテンション低めの感じでしたね。


ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 Op. 37
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven, 1770-1827)

まずはピアノのピエール=ロラン・エマール(Pierre-Laurent Aimard)ですが、ソフトな音色でアゴーギクの表情付けでした。
第一楽章は第一主題をスマートに、第二主題は古典優美は避けたゆったりとした流れでした。pfカデンツァではヴィルトゥオーゾらしさを見せてくれましたね。
第二楽章はpfの主題のスロー優美な音色と中間部の落差は小さく、コントラストがやや低い眠い流れを感じてしむいました。
第三楽章主要主題はpfとオケがマイルドに絡み合い、中間部でも表情変化は少なめでしたね。後半のトゥッティからパッセージ そしてコーダの見せ場も肩肘張らずにナチュラルにフィニッシュしました。
もっとメリハリを付けて来るかと思いましたが、柔らかいバランス感の前半でした。



幻想交響曲 Op. 14
エクトル・ベルリオーズ

見事なラスト二楽章と言っていいでしょうね。
「IV. 断頭台への行進」処刑場への行進曲は管楽器の鳴りと弦楽のマッチが良くカラフル華やかでした。最後断ち切られるイデー・フィクス前後の激しさもビシッと締まりました。(首が転がる音が聴こえないのは不思議でしたが)
「V. サバトの夜の夢」前半の魔女の宴では出し入れ強く、"怒りの日"は管弦打楽器一体でホールに響き渡りました。後半はまさに怒涛迫力の色彩音でフィニッシュまで駆け抜けました。
最終日ならではの一体感と盛上がりはやっぱりスペシャル、素晴らしい演奏になりました!!



前半は抑えめで心配しましたが、後半「幻想交響曲」は最終日のパワーが炸裂してコンサートならではの情熱と一体感の素晴らしい演奏になりました。ありがとう、シルヴァン!!でしたね。

読響も管楽器が特に華やかに鳴って曲を盛り立ててくれました。


アンコール
エマールがクルタークを持って来るのは予想していました。現代音楽を得意とする彼の旧知の間柄ですからね。(無調静的でオーディエンスは白けた様でしたが…)
カンブルランのアンコールはこちらですw


(当日は主催者よりカーテンコールからの撮影とSNS公開可の案内がありました)






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2019年3月19日 シルヴァン・カンブルラン『果てなき音楽の旅』w/ ピエール=ロラン・エマール, 読響 at 紀尾井ホール

読響常任指揮者最後の月にカンブルラン自ら選んだ現代音楽アンサンブル作品、場所も紀尾井ホールとうってつけです。

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音響系からスペクトル楽派に至る前衛の流れを並べましたね。前半はカラフルな音が交錯する音響系、後半は現在の空間音響系に直接的に繋がっていく二曲です。(という事で少々古い年代のチョイスではありますが)

 ▶️「このブログでいう現代音楽」に流れを載せてあります。





オクタンドル, Octandre (1923年)
エドガー・ヴァレーズ (Edgard Varèse, 1883-1965)

前衛前夜、ストラヴィンスキーを感じる3パートの小曲(for フルート, クラリネット, オーボエ, バスーン, トランペット, トロンボーン, ダブルベース)で、打楽器が無くヴァレーズらしからぬ楽曲ですね。しかしカンブルランはヴァレーズの煌びやかな反復旋律構成をカラフルに仕立てました。特に管楽器トゥッティでの色彩感溢れる音色は見事で、ホールに響き渡りましたね。
P.ブーレーズ盤(Sony)よりもやや速めで、華やか明快な展開でした。次のメシアンとのつながりの良さも感じました。




7つの俳諧, Sept haïkaï (1962年)
オリヴィエ・メシアン (Olivier Messiaen, 1908-1992)
I.導入部 - II.奈良公園と石燈籠 - III.山中湖-カデンツァ - IV.雅楽 - V.宮島と海中の鳥居 - VI.軽井沢の鳥たち - VII.コーダ

セリエル的な点描とメシアン和声がカラフルな楽曲ですね。III.ではピエール=ロラン・エマール(Pierre-Laurent Aimard)の鳴りの良いpfカデンツァと、アンサンブルの鳥の声のポリフォニーの煌びやかさ、二つの対比が素晴らしかったですね。もう一つのメインVI.はpfとアンサンブルが共にポリフォニカルに絡み、美しい混沌を作りました。
ヴァレーズもそうでしたが、強音パートでの煌びやかな色彩が、ここでも光りましたね。
エマールのpfもこの曲としては主張が明確でアンサンブルとのコントラストを作ってくれたと思います。




4つの小品, Quattro Pezzi (1959年)
ジャチント・シェルシ (Giacinto Scelsi, 1905-1988)

シェルシは弟子のヴィエーリ・トサッティ(Vieri Tosatti)と共同制作で、一音の響きを倍音解析するこの代表曲を作りました。後の"スペクトル楽派"の源流とされますね。
一つの音を色々な楽器で共鳴させる様な楽曲で、旋律(音形?)はありません。グリッサンドによる微分音やトリル・トレモロを組み込んでいます。パートが進むごとに音の重なりと音量が増し、第4パートでは発生する倍音のうねりがホール空間に響き渡りました。
まさに今の時代の空間音響系の原点を味わえましたね。素晴らしい演奏でした。




「音響空間」から“パルシエル”, Les espaces acoustiques: Partiels (1975年)
ジェラール・グリゼー (Gérard Grisey, 1946-1998)

上記シェルシとローマで出会い、スペクトル解析倍音を元にした"スペクトル楽派"の流れをトリスタン・ミュライユと共に作りました。「音響空間」は基音Eの倍音構成で、今回のパート3.パルシエルは18人編成ですね。(▶️ 楽曲構成のインプレへ)
 シェルシ「4つの小品」との違いは微分音を弦楽器の旋律に載せている事、リズムを付ける事でしょう。とは言え、ともすると類型に陥りかねません。カンブルランはここで表現を倍音押出しから、繊細な旋律(or音形?)に軸足を変えました。これでシェルシの進化系という事が伝わりましたね。
そしてエンターテイメントはラスト3'の消え入るノイズに仕込まれていました。楽器をケースにしまう音、スコアの最終ページに貼られたトレース紙を弄る音、カンブルランは赤いタオルで汗を拭きます。ラストはスポットライトがシンバルを構える打楽器奏者に当たりそのまま真っ暗に。そこでpppで打たれて終わりました。
完全にやられましたね。曲の聴かせ方だけでなく、演出も一工夫で本当に楽しませてもらいました。




先ずはキーとなるシェルシの「4つの小品」を生で聴けたのが嬉しかったですね。グリゼーと並べて聴く事で、時代の先端性を強く感じる事が出来ました。

カンブルランが好きそうな?!色彩感ある4曲と見事な演出で素晴らしかったですね。

欧州では前衛現代音楽の指揮者として実績が大きいので、最後にそのカンブルランの顔を見られました。このコンサートに来られて本当に良かったです


オーディエンスは現代音楽好きが多かったので、もちろんスタンディング・オベーション。アンサンブルメンバーも足を踏み鳴らし、起立を拒否して拍手をカンブルランに譲るお馴染みの様子がありました。メンバーがステージから去っても拍手は止まず、カンブルランの再登場。素晴らしいコンサートには付き物ですが、いよいよラストだなぁという気配も感じましたね。



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2019年3月14日 カンブルラン/読響の シェーンベルク『グレの歌』at サントリーホール

いよいよシルヴァン・カンブルランの読売日本交響楽団"常任指揮者"最後の月になりました。ラストの3月24日まで毎週(計3回)カンブルランのコンサートに行く予定です。

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アルノルト・シェーンベルクの大曲歌曲『グレの歌』ですね。レコード時代から大好きな曲で、事前に13CDの聴き比べもして準備万端で楽しみにしていました。ぜひそちらもご笑覧下さい。

  ▶️ 『グレの歌 13CD聴き比べ:名盤・おすすめは





ヴァルデマル王 (ロバート・ディーン・スミス, Robert Dean Smith)
序奏下降音階からの"迫り来る黄昏"は愛を優しく歌い、"馬よ!" ではヘルデンテノールの伸びやかなハイトーンを見事に聴かせてくれました。第二部・三部の神に対峙する厳しさは怒りよりも堂々と、聴かせ処 "トーヴェの声で…" は感情が溢れましたね。ヴァルデマルに適役でした。

トーヴェ (レイチェル・ニコルズ, Rachel Nicholls)
"星は歓びの…" のワルツの様な美しさ、ヴァルデマルの "馬よ!" からの流れはこの曲最高の見せ場になりましたね。"あなたは私に愛の…" では優しさを伸びやかに歌って、トーヴェらしさが光りました

山鳩 (クラウディア・マーンケ, Claudia Mahnke)
トーヴェの死の悲しみと怒りを、残念ながら朗々と歌いました。できれば絞り出すような無念さが欲しかったです。

農夫 (ディートリヒ・ヘンシェル, Dietrich Henschel)
少々肩に力の入ったバス・バリトン、"Da fährt's…" は強音オケにかき消されましたね。後半のキリストへの祈りでも力みを感じて、少し好みとは違いましたね。

クラウス (ユルゲン・ザッヒャー, Jürgen Sacher)
適度な道化感で伸びやかに王の様子を語りましたね。テノールの活き活きとした表現がピッタリでした。

語り手 (→ "農夫"と二役)
シュプレッヒゲザング弱めで力み気味。でも中盤の"夏の夢"からは緩やかに、表情豊かにうたいました。

合唱団 (新国立劇場合唱団)
一眼見た時に少ない⁈って思った印象が尾を引いて、パワー不足を感じました。怒涛の声量が欲しかったのは欲が深すぎでしょうか。
(舞台背面のP席を埋め尽くす合唱団と勝手に想像していたので…)


演奏と流れ
第一部は序奏を暖色の優しさ、"馬よ!" で聴かせる激しさは色彩感強く見事に決まりました。不要な揺さぶりを排し、暖かい優しさとカラフルな強音でしたね。
第二部は入り混じる各テーマを表情を付け、山場 "ヴァルデマルの絶望" を力強く鳴らしました。
(ここで休憩でした。普通は第一部との間が多いのですが)
第三部は、もうちょっとパワープレイでも良かった様な。「夏風の荒々しき狩」序奏のまとまりが不足気味なのも気になりましたね。とは言え色彩感あるオケはカンブルランでした。



揺さぶりや強音勝負は無く、派手さは抑えたカンブルランのグレでしたね。とは言え第一部 "馬よ!" から "星は歓びの…" の素晴らしさは格別で、ヴァルデマル / トーヴェ / カンブルラン三者の真髄だったと思います。

歌手陣ではヴァルデマルのディーン・スミスが出色でした。トーヴェのニコルズ、クラウスのザッヒャーも素晴らしかったですね。

最後にオケが退席し照明が点灯してもかなりの人が残って拍手は鳴り止まず、カンブルランが現れてスタンディングオベーションになりました。



今年は『グレの歌』のコンサート当たり年ですね。この後4月に大野/都響、そして10月にノット/東響とメンツも揃いました。楽しみです。

ちなみに個人的最大の聴き処は第三部#4「トーヴェの声で森はささやき」ラスト、亡霊になってなおヴァルデマルがトーヴェを慕う "Tove, Tove, Waldemar sehnt sich nach dir! "です。


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2019年1月10日 コパチンスカヤ/大野和士/都響 の『シェーンベルク : ヴァイオリン協奏曲』at サントリーホール

本年の初コンサートは待望のパトリツィア・コパチンスカヤの現代コンチェルトを楽しみに六本木まで行ってきました。

20190110SuntoryHall.jpg


この曲がコパチンスカヤにぴったりな事はわかっていましたから、名盤を含む事前の4CD聴き比べもして準備OKですね。もちろんチケットは完売だったそうです。





ヴァイオリン協奏曲 Op. 36
アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874-1951)

第一楽章
第一パートまずは主要主題を幽玄美で入ると主音列を切れ味で繋げました。そこからが十二音技法の展開なのですがわかりませんね。流れに切れ味と幽玄さはあるのですが、コパチンスカヤらしい大胆さが感じられません。小刻みなテンポで変奏を繰り広げる第二パートでも変化は少なめ、技巧的で神経質な音色が響きます。第三パートのカデンツァは静的スローをベースですが、期待した激しい切れ味が今ひとつ出て来ません。
第二楽章
第一楽章の残映の様な楽章になりました。入りのソロの第一楽章の主音列回帰は神経質で鬱な音色、トリオでは流麗に表情変化はあるものの音が前に出て来ません。都響にパワーがあったにしても、です。
第三楽章
流れが変わったのは、ここからでした。旋律感のあるvnの主要主題は明らかに元気が出てキレキレで再現するたびに表情を変化させましたね。音圧も上がり、コパチンスカヤらしさが動きにも現れました。
カデンツァは繊細さも合わせて奏でてくれましたが、遠慮せずに全面キレキレの力感でも良かったかと思いました。ラストはオケもパワープレイで応えてくれましたね。
期待したのは、大胆で奔放な炸裂するvn。そうではありませんでたね。繊細・幽玄に軸足、と言えばいいのでしょうか。第三楽章の元気さが始めから欲しかった、というのが正直な処です。
都響が元気だったので、余計にそう感じたのかもしれませんね。(パワープレイがあれば良いのか?というのも今の大野/都響には感じる事もあるわけですが…)



白のドレスに裸足のコパチンスカヤ、練習不足という事ではないでしょうがコンチェルトなのにスコアを準備していましたね。(事前に置かれたスコアと登場時自ら持ち込んだスコア)
個人的コパチンスカヤの期待値が高過ぎたのでしょう、彼女らしい大胆さが今ひとつ薄味に感じてしまいました。

予習で聴き込んだお気に入りのエディンガー(vn)/マデルナ盤が一番の原因?、それとも3月9日のベルリンフィルとの同曲共演の予行演習?!w

【後日記】BPO共演では絶好調でアンコールも二曲演奏したようです。典型的な外タレ招聘顔見世興行でしたね。


体調不良をおして行ったため、後半(ブルックナー/交響曲第6番)はエネルギーが持ちませんでした。



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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。


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