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マイケル・フィニスィー の「音で辿る写真の歴史 (History of Photography in Sound)」をイアン・ペースのピアノで聴く


マイケル・フィニスィー
(Michael Finnissy, 1946/3/17 - )
フィニシーやフィニッシーとか日本語表記が曖昧ですが、イギリス人でロンドンの王立音楽大学で学んだ"新しい複雑性"の現代音楽家にしてヴィルトゥオーゾ・ピアニストですね。現代音楽の超絶技巧系ピアノ曲作曲家を代表する一人です。

楽風はポスト・セリエル。音の跳躍の大きいセリエルのヴィルトゥオーゾ初期(1960年代)から、静音パートを生かした聴きやすい方向性へと変化していますね。また過去の作曲家作品のトランスクリプションや民族音楽にも方向性を見出しています。教育にも熱心で、ニコラス・ハッジスやイアン・ペイス・他の現代音楽ヴィルトゥオーゾ・ピアニストを見出してもいますね。


音で辿る写真の歴史 (1995-2001年)
History of Photography in Sound
フィニスィーと言えば1972年から2005年にかけて作られた「ヴェルディ編曲集:全36曲 (The 36 Verdi Transcriptions)」になる訳ですが、並ぶ代表曲ですね。

CD5枚set/全11曲/5時間超のピアノ・ソロ曲集で音楽自叙伝です。5年間かけて演奏者のイアン・ペース(Ian Pace)の為に書かれ*、初演(2001年:英国王立音楽院)・初録音(本CD)されています。二人目の全曲演奏者マーク・ヌープ(Mark Knoop, クヌゥプとも)も出てきていますし、ペースの再演もある様です。

*ペースが1996年にフィニスィー50歳の誕生日を祝ってピアノ作品の全曲演奏会を行った事への返礼だった様で、当初は5books9曲だったそうです。






History of Photography in Sound

[CD1] 1. Le Démon De L'Analogie - 2. Le Réveil De L'Intraitable Réalité [CD2] 1. North American Spirituals - 2. My Parents' Generation Thought War Meant Something [CD3] 1. Alkan-Paganini - 2. Seventeen Immortal Homosexual Poets - 3. Eadweard Muybridge - Edvard Munch [CD4] 1. Kapitalisch Realisme [CD5] 1. Wachtend Op De Volgende Uitbarsting Van Repressie En Censuur - 2. Unsere Afrikareise - 3. Etched Bright With Sunlight

CD1-1は流麗な流れではありますが音の跳躍感も感じられ、セリエル的点描で静と強の組合せが明白です。opening-chapterとの事で初期のイメージを取込んでいるのでしょうか、-2では流れの良さが強まります。

CD2-1ではいきなり旋律感のある入りを見せ激しさも表現します。点描的表現は変わりませんが音の跳躍は明らかに減り、調性的コード和音が見られて、タイトル通りにアイヴズを始めとる米現代音楽への関連を見せているのかもしれません。途中で大きく休符を挟んだ演奏になるのも特徴的です。-2では旋律感と反復・変奏が強まりますね。

CD3-1はタイトルの二人を主に、シューマンやリストのフィルターも入れてあるそうです。アルカンの"Trois Grandes Etudes Op.76"を模した、左手・右手・両手の三部構成になります。イメージ以上に静的なセンスが強く、動機と変奏が一層感じられますね。-2では強fas・弱slowの対比が明確に、-3では静美な旋律が主導する新しい展開を感じます。

CD4-1は三部構成で、それぞれが間奏曲で繋がれているそうで3B(Beethoven, Bach and Busoni)のイメージとか。ブゾーニという処がフィニスィーですね。得意とする他音楽家のトランスクリプション(というか再構築)?、冒頭は明らかに"運命"を感じますが、流れはやや点描回帰かもしれません。長くて退屈?!

CD5-1は暗く静かで調性にさらに近づいた和声と音数の少なさで表情を作ります。とは言え耳馴染みの良い旋律は存在しませんし点描表現なのですが。-2も方向性は似ていますが途中で現れる民族音楽的な和声と調性旋律が印象的ですね。-3では点描反復(変奏)のキラメキと民族音楽和声を見せます。



フィニスィーのポスト・セリエル系のピアノ難曲の楽風推移が冒頭の紹介通り伝わります。
言えるのは点描的表現から抜け出さないという事で、それが"前衛の停滞"の証だと感じます。インスタレーションや多様性を中心とした現在の主流から行くと古典的な現代音楽の印象は免れませんね。

この系譜をCD7枚組に大きくまとめたのが「Darmstadt Aural Documents Box 4・Pianists」という事になるでしょう。

英文のみで100ページ近いライナーノートにフィニスィーに関して1/3ページほどの簡易紹介しかありません。殆どがイアン・ペースによるもので、曲の詳細解説さえフィニスィー本人でないという不思議さです。(現役なのに?)



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望月京(Misato Mochizuki) の「エテリック・ブループリント三部作」を聴く


望月 京
(Misato Mochizuki, 1969/1/31 - )
前回に続き望月さんです。東京芸大卒業後にフランスへ渡って学んだ欧州エクスペリメンタリズム系前衛です。前回インプレを参照くださいね。
現在は国内や執筆でも活躍中で、明治学院大学で文学部芸術学科の教授を務めていらっしゃいます。本アルバムには「明治学院大学学術振興基金」のサポートと日本語で明記され、NEOSレーベルでは稀な日本語訳が載っていますね。


Etheric Blueprint
望月さんが影響を受けている邦楽から笙の古曲二曲と、天空の青写真(エテリック・ブループリント)で室内楽作品と言っていいでしょう。タイトル曲は三部作で三曲目はアンサンブルにエレクトロニクスが入ります。

笙の古楽二曲は演奏者である宮田まゆみさん、古楽演奏のみならず現代音楽奏者として世界で活躍、による選曲だそうです。
タイトル曲の演奏は杉山洋一指揮, mdi ensembleの演奏になります。エレクトロニクスはChristophe Mazzellaですが、残念ながらライナーノートを見ても経歴や具体的な使われ方には触れられていませんね。






盤渉調調子, Banshikicho no choshi (笙雅楽:10世紀以前)
"冬・水・北・黒"を象徴する曲だそうです。ロングローンの笙曲で音階変化は少ないです。この時代から空間を意識する曲だったという事ですね。


双調調子, Sojo no choshi (笙雅楽:10世紀以前)
"春・木・東・青"を象徴する曲だそうです。曲調はほぼ変わりません。同じ曲の延長線上、というよりも同じ曲に聴こえますね。アンビエントの楽曲の様です。


エテリック・ブループリント三部作, Etheric Blueprint Trilogy
  ・4D, for 9 players (2003年)
  ・Wise Water, for 9 players (2002年)
  ・Etheric Blueprint, for 9 players and electronics (2005-06年)

1. 4Dは笙の曲の延長線にある音色とトーンで繋がっている様です。ロングトーンと電子音の様な高音、エレクトロニクスは未使用のはず、が空間にちりばめられます。弦楽器の特殊奏法も現れてノイズが加わりますが、楽器間の関係はポリフォニーですね。望月さんらしく途中で曲構成を変化させます。現れる雅楽風和声や等拍も望月さんらしいです。ご本人曰く、見えるもの(3D)と見えないもの(4D)の対比を空間に散在させる、感じです。空間音響系ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

2. Wise Waterは4Dラストと水の滴り音で繋がります。エレクトロニクスだと思いますけどねぇ。ジャジーなベース、それに各楽器が絡みます。新しい展開が見えますね。ここでも構成は変化して、テンポを速めたり、反復性を強めたりします。
"水と波動で異なる結晶ができる"ことや水の状態変化の姿を現すそうで、滴り音は構成の変化点で必ず現れます。

3. Etheric Blueprintは背景にノイズを配したパルスな刺激で始まります。ノイズはエレクトロニクスで、一部は特殊奏法かもしれません。"神の御技とそれを検知させる空気を揺らがせる電波の様な介在"を表現しているのでしょう。もちろんリズムや構成変化を挟んだお約束の手法です。
ラストはバッハ・ブラームス・B.マーリーらの細切れな引用とノイズで構成されています。



"第六感やデジャ・ヴと言った時空や文化を超えた不可思議な謎への取組、科学・数学・天文学・哲学・宗教・芸術の様な学問、を音楽で一つにした総合表現が究極の目標" (意訳)とご本人は言っておられます。その通り科学者や哲学者の執筆からのインスパイア作品も多いですね。壮大な構想で、本三部作の解説だけで辿り着けるものではないでしょう。

望月さんらしい構成変化と対比的流れで、好きな前衛現代音楽です。今の時点で目指す理想の高みを覗くのは凡人には難しいかもしれませんが、この先の作品が楽しみですね。



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望月京(Misato Mochizuki) の「Si bleu, si calme; 他」を聴く


望月 京
(Misato Mochizuki, 1969/1/31 - )
日欧で活躍する現代音楽家ですね。フランス国立高等音楽院ではエマヌエル・ヌネスに、IRCAMの研究員としてトリスタン・ミュライユに師事し、クラウス・フーバーからも支持を受けています。その流れでしょうか、欧州前衛の拠点ダルムシュタットやドナウエッシンゲンで活躍があり、作品は欧州現代音楽の代表的レーベルKAIROSやNEOSからリリースされています。バリバリの欧州エクスペリメンタリズムですね。
楽風は対比によるストーリー(構成)を感じる流れで、日本の古楽(古楽器)展開もしていますね。


SI BLEU, SI CALME
少々古くなりますが、2000年前後の室内楽集です。10'前後の曲構成で聴き易いのも嬉しいです。

アンサンブルはベアト・フラー設立のクラングフォールム・ウィーン(Klangforum Wien), 指揮は現代音楽家でも紹介しているヨハネス・カリツケ(Johannes Kalitzke)、ソロはMarino Formenti (piano), Eva Furrer (flute), Sophie Schafleitner (violin), Bernhard Zachhuber (clarinet), ですね。






Si bleu, si calme (1997年) for ensemble
水と空気の流れを元に作られたそうです。
パルスな打撃音と蠢く混沌の対比で構成されています。パルスは単音打撃的で、混沌は静的なポリフォニーです。楽曲的には大編成オケ版があっても面白い気がしますね。


All that is including me (1996年) for bass flute, clarinet and violin
タイトルはバックミンスター・フラーの詩から引用し、雅楽の構成にインスパイアされているそうです。
フルートは横笛、クラリネットは尺八の様な音と奏法を模しています。そこにヴァイオリンの現代音楽的な、でも特殊奏法ではない、音が絡みます。そこも対比ですね。拍子変化も少なく、邦楽古楽的和声の現代音楽です。


Chimera (2000年) for ensemble
ギリシャの想像の動物キマイラ(頭はライオン、胴はヤギ、尾はヘビ)を元にしています。
アンサンブル・ポリフォニーですね。各楽器は反復やトリル・トレモロを主体としている様です。極端な強音や弱音は挟まず、リズム変化も薄めで流れていきます。そのズルズルとした感じの中に緊張感があって面白いですね。


Intermezzi I (1988年) for flute and piano
"Intermezzi"シリーズの#Iで、7つの小さなフラグメントで構成されているそうです。(#IIは琴ソロ曲だそうですが)
これも古典邦楽的流れです。フルートですが尺八的な"しゃくり"感がありますね。ピアノは打楽器的に音を出し特に和寄りではなく対比的。個人的には邦楽和声の現代音楽は好みではないのですが、望月さんの作品は一捻りあってイイですね。


La chambre claire (1998年) for ensemble
仏哲学者ロラン・バルトのタイトル同名本、撮影・写真をテーマとした、を元にしているそうです。
執拗な反復をベースにポリフォニーな音が入り乱れます。基本の流れは残しながら構成を変化させて行きますね。それまでの曲と同じく時に刺激的になるのもスパイスです。この構成感が望月さんの印象かもしれません。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  アニメバックのver.でCDと若干印象は異なりますが、面白いです。




対比・構成感があって聴きやすい前衛現代音楽でしょう。基本は反復変奏のポリフォニーで、特殊奏法は感じられません。もちろん旋律感はなく構成されていますが、即興的暴力性や混沌カオスでもありません。
突出した個性に欠けるのかもしれませんが、作曲技法や譜面などがわかればより興味深いと思いますね。



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古典邦楽と現代音楽のコラボ:琴とリコーダーのための作品集『3つの俳諧アンド・モア (three haikei and more) 』を聴く


three haikei and more
3つの俳諧アンド・モア
琴と尺八をベースにした、日本の古楽と現代音楽の楽曲を組合せた作品集ですね。尺八に代わりリコーダーを使い、箏の古楽(八橋検校/六段の調べ)、尺八の古楽(古典本曲/二曲)、三曲を採用しています。
演奏は箏が後藤真紀子(Makiko Goto)さん、リコーダーがジェレミアス・シュヴァルツァー(Jeremias Schwarzer)です。箏とリコーダーはそれぞれ音域違いのものを使い分けていますね。

古楽が途中に挟まられ曲の並びはランダムなのですが、インプレは作曲家ごとです。







古典邦楽
(八橋検校・古典本曲)
日本人なら聴いた事がある八橋検校(Yatsuhashi Kengyo, 1614-1685)の箏曲"六段の調べ"と、尺八古典の道曲から二曲が採用されています。

六段の調べ
  for recorder and koto
"六段の調べ"を理解しているわけではないのですが箏の旋律はオリジナル通りではないでしょう。ただリコーダーの音色は尺八的なので全体違和感がありません。この和声とシンプルさは海外では前衛に聞こえるのでしょうか。

山越え (道曲)
  for recorder solo
道曲二曲のアレンジはJ.シュヴァルツァーになります。原曲を知らないのですが、ただの静かな尺八の曲にしか聞こえませんw

打破 (道曲)
  for recorder solo
これも同じですね。アレンジはされているのですが、原曲の和声にならっていると思います。尺八曲です。




エルヴィン・コッホ=ラファエル
(Erwin Koch-Raphael, 1949 - )
ドイツ人現代音楽家でクセナキスやドナトーニに習っていますね。細川俊夫さんと共に尹伊桑の元でも習っています。このアルバムでは邦楽和声で曲を作ったそうです。

Composition No. 60 " shogo / noonday" I (2005年)
  for recorder and koto
和楽の歌が入ります。リコーダーはそのまま尺八の音色ですね。旋律は和的で、琴も入っている様です。極度にシンプルな小曲です。

Composition No. 60 " shogo / noonday" II & III (2005年)
  for koto
箏の爪引き音ですが音数は少なく静的空間を感じます。空間音響系と言ってもいいかもしれません。




アネッテ・シュリュンツ
(Annette Schlünz, 1964 - )
ドイツの女性現代音楽家で、ウド・ツィンマーマン、クセナキス、ラッヘンマンに師事しています。教育にも熱心で南米やアジアにも訪れていますね。

Light from the One (2006年)
  for recorder and 17-string bass koto
和楽器の横笛の様なリコーダーの音色と和声です。速い流れと緩やかな流れが共存して、そこに箏のアルペジオが絡んできます。そして凶暴な音色とDialogueも見せます。邦楽和声をベースに不協和音という感じですね。微分音的な音色も見せて不思議と言えば不思議ですが、機能和声を邦楽和声にしただけの現代音楽 と言ってしまえばそれまでかもしれません。




高橋悠治
(Yuji Takahashi, 1938 - )
言わずと知れた天才ピアニスト・現代音楽家ですね。紹介は割愛ですw

Koto nado asobi 箏など遊び (2000年)
  for koto, recorder and shamisen
静的な琴は音数少なく、かすかに絡むもう一つの弦は三味線なのでしょうか? そこに歌い、後藤真紀子さんと思われます、が入ります。歌いはおどろおどろしい気配も感じます。
(三味線のクレジットはありますが、楽器奏者の中に三味線記述はありません)

Recorder nado asobi リコーダーなど遊び (2000年)
  for recorder, bass koto and 21-string koto
全体に音数は少ないですね。歌いというよりも語り、男声です、が入ります。静的世界です。




望月京
(Misato Mochizuki, 1969 - )
ファーニホウやヌネスに影響を受け、クラウス・フーバーからも支持を受けています。その時点でダルムシュタットやドナウエッシンゲンでの活躍が想定できますね。楽風は音の変化にストーリー性があって面白い印象があります。

Toccata (2005年)
  for recorder and 21-string koto
箏もリコーダーも特殊奏法でしょうね。弾き爪弾く様な音色の箏、炸裂する様なリコーダーの音、それぞれが対位法的に絡みます。片方が叫ぶ時は片方が引きます。その流れが面白いです。楽器は和的ですが無調の現代音楽でこれは面白いですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




細川俊夫
(Toshio Hosokawa, 1955 - )
細川さんの今回の曲は二曲間で27年もの開きがあります。soloとduoですが、その作風変化も今回の楽しみの一つですね。

Nocturne 夜想曲 (1982年)
  for bass koto
箏を使っていますが、邦楽和声ではありません。細川さんらしい静的で鬱美の和声の現代音楽です。極端な特殊技法はありませんが、本来の箏の音色にはない音を使っていますね。現代音楽として違和感はありません。

Schneeglöckchen 待雪草 (2009年)
  for recorder and koto
27年後、和声が明らかに邦楽に近づいています。面白いのかもしれませんが、個人的には邦楽和声を弄った方向性に興味が惹かれません。




丁々発止的な流れは皆無、静的空間と二つの楽器の音色が音数少なくDialogueする日本的な印象ですね。邦楽和声は調性ではないモードの世界ですから、そのままでも西洋では現代音楽でしょう。

楽曲組合せからいくと"邦楽古楽"、"邦楽和声曲"、"和楽器を使った現代音楽"の三つですね。面白かったのは望月京さんと細川俊夫さんの夜想曲で、"和楽器を使った現代音楽"でした。日本人だから他の二つは違和感がない古楽ですね。




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ドナウエッシンゲン音楽祭2017 (Donaueschinger Musiktage 2017 - NEOS) で味わう現在形現代音楽


Donaueschinger Musiktage 2017
ドナウエッシンゲン音楽祭2017
国内発売が毎年遅れる様になっている気がしますが、欧州前衛現代音楽の現在を楽しめるドナウエッシンゲン音楽祭の定例CD、NEOSレーベルから発売ですね。

前回に続きCD2枚組での発売になりました。CD1がアンサンブル、CD2が管弦楽の組合せも同じですね。ベテランから若手、といって40代半ばというのが少々寂しい?、を取り上げていますが 特徴的なのは2012年に亡くなったヌネスでしょう。それも初期作品ですから。






CD 1
エマヌエル・ヌネス
(Emmanuel Nunes, 1941 - 2012)
ポルトガルの現代音楽家で、ダルムシュタットでブーレーズに ケルンでシュトックハウゼンに師事しています。その後はダルムシュタットで長年に渡り講師を続けていますから、楽風はわかりますね。当然ダルムシュタット式のポスト・セリエルをベースとして空間音響やライブ・エレクトロニクス、ドローンといった様式を展開します。反復の拒否等のベースは変わらず、馴染みよい旋律はすべからず拒否のスタンスですね。

Un calendrier révolu, for 14 instruments (1968 / 1969年)
Remix Ensemble, Emilio Pomàrico(cond.)
 「過去のカレンダー」は若き日の作品でまさに前衛の停滞が叫び始められた時代そのものです。セリエル的で点描音列配置な音の並び、テンポ設定はありますが動機や楽器間の協調は存在しません。(ポリフォニーや対位法的と表現すれば、そうかもしれませんが) 基本はスロー&静の流れで、その中にアンサンブルの一つ一つの音の重なりが作り出す響の妙が感じられますね。Part IIでは等拍パルスも使われています。早くも空間音響系の音作り、後半ではドローンも感じますね。ヌネスらしいポスト・セリエルといった風情です。




アイヴィン・ビューエネ
(Eivind Buene, 1973 - )
ノルウェイの現代音楽家で、ノルウェー国立音楽アカデミーで作曲を習い室内楽を得意としている様です。

Lessons in Darkness, for ensemble (2017年)
Ensemble Musikfabrik (Enno Poppe, rehearsals)
 「闇の中のレッスン」の主展開はポリフォニーの混沌で、ノイズも採用して一部即興風でもあります。強音パートもありクラスター的にも展開しますし、静的なパートではロングトーンでドローン風でもあります。最後は動機の存在するホモフォニーも使います。なんとなくゴチャ混ぜ感が強いです。少し整理した方が面白さを感じられるかも。(スコア上の面白さはあるのかもしれません)

エンノ・ポッペがリハーサル指揮で音作りをしている様です。




CD 2
アンドレアス・ドーメン
(Andreas Dohmen, 1962 - )
ドイツ人現代音楽家で、作曲をF.ドナトーニに師事していますね。このSWR主催のドナウエッシンゲン音楽祭の他にも、WDRの関連音楽祭からも委嘱を受けています。

a doppio movimento, for electric guitar, harp, piano and large orchestra (2016 / 2017年)
Yaron Deutsch(electric guitar), Andreas Mildner(harp), Nicolas Hodges(piano), SWR Symphonieorchester, Ilan Volkov(cond.)
 「二重の動き」はエレキギター/ハープ/ピアノとオケの協奏曲で、ピアノは現代音楽ピアニストの雄ニコラス・ホッジスです。
トリル・トレモロの緊張感のある流れにパルス的にクラスターが割り込みます。独奏三人の細かく速い音が強弱を付けながら流れを作り、特殊奏法も使って絡みながら進んでいきます。オケ、特に管、のクラスター的絡みも生きていますね。後半はハープの特殊奏法(ペダルの足踏み音)も上手い使い方で面白く好きな流れです

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  当日のLive動画です!! 特殊奏法の様子もよくわかります。





マルトン・イレス
(Márton Illés, 1975 - )
ハンガリーの現代音楽家でピアニストです。ハンガリーでピアノと作曲を習った後、チューリッヒとハノーバーでピアノを主として習い、作曲をW.リームに師事していますね。

Ez-tér (Es-Raum), for orchestra (2014 / 2017年)
SWR Symphonieorchester, Pablo Rus Broseta(cond.)
 「それは宇宙」は4パート構成で一番長くても6'ほど。主役はトリル・トレモロや快速アルペジオの刻まれた音です。Part I.は管弦打楽器全てでそれが展開されて渦巻き・暴れ、II.では静的になりストレッチされた音も絡みます。III.では背景に金属系の残響の様な音を配して即興的混沌化します。ラストIV.は再び静的展開と混沌です。
緊張感のある流れは悪くありませんね。




ハヤ・チェルノヴィン
(Chaya Czernowin, 1957 - )
米在住のイスラエル人女性現代音楽家ですね。B.ファーニホウに師事した影響が大きく、"新しい複雑性"の流れを汲みます。譜面上の難読性というよりも特殊奏法によるノイズ系になります。日本でもおなじみですね。

Guardian, for violoncello and orchestra (2017年)
Séverine Ballon(violoncello), SWR Symphonieorchester, Pablo Rus Broseta(cond.)
 「ガーディアン」はチェロ協奏曲です。もちろんバリバリ特殊奏法ですから、耳馴染みの良い動機や旋律は存在しません。ギギギィ〜のノイズ系です。聴こえる音楽からいえばファーニホウというよりラッヘンマンのシュツットガルト楽派風でしょうね。ノイズ系サウンドが辺りを満たします。こういうのを聴くとドナウエッシンゲンだなぁ、って思いますね。




全体印象は無難な音楽を集めたという印象ですね。一番面白いのはA.ドーメンの「二つの動き」ですが、格別の展開があるわけでもありません。インスタレーションを思わせる曲がないのも要因かもしれませんね。
望月京(Misato Mochizuki)さんも出ていたので取り上げて欲しかったです。

今回の中ではマリナ・ローゼンフェルド*(Marina Rosenfeld)がインスタレーションだとカタログには記載されていますが、出来ればそれを入れて2014年盤の様にDVD付きの4枚組くらいが嬉しいですね。

*実際彼女はかなり奇抜でパフォーマーに近いかもしれませんね。




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ヨハネス・カリツケ(Johannes Kalitzke) の「Vier Toteninseln / Six Covered Settings」を聴く


ヨハネス・カリツケ
(Johannes Kalitzke, 1959/2/12 - )
日本では指揮者の顔の方が知られている感もあるドイツ人現代音楽家ですね。ケルンと仏で学んだ後、2015年からはモーツァルテウム音楽大で指揮の教鞭もとっています。作曲はヨーク・ヘラーに、電子音楽をIRCAMで習っていますね。
楽風イメージは旋律感を残した無調強音ポリフォニーが特徴的に感じます。


Vier Toteninseln / Six Covered Settings
4つの死の島 / 6つのカヴァード・セッティング
4つの死の島」はブラームスの"4つの厳粛な歌"からのカリツケの洞察と、ベックリーンの絵画「死の島」を元に作られたそうです。四楽章で、歌詞はドイツ語(英訳なし)なので残念ながら意味不明です。(Textは旧約聖書・他から使われています)
6つのカヴァード・セッティング」は英語の"set"を、舞台セットと夕日(sunset)の二つに対比させているそうです。その二つをダブらせた6つのイメージで、ルネッサンスやバロック様式、ベルリオーズの"幻想交響曲"の引用といった要素を使っているとの事です。

演奏は、トマス・E・バウアー(Thomas E. Bauer, バリトン)、トマス・ラルヒャー(Thomas Larcher, ピアノ)、ベルリン・ドイツ交響楽団(Deutsches Symphonie-Orchester Berlin)、指揮はもちろん御本人ヨハネス・カリツケです。
後者はシュタードラー四重奏団(Stadler Quatuor)になりますね。
ピアノのラルヒャーは現代音楽家としても活躍していて本ブログでもインプレしています。






Vier Toteninseln, 4つの死の島
  2人のソリストとオーケストラのための(2002/03年)
ピアノとバリトンをフィーチャーした協奏曲風です。ピアノは左右の手が対位法的で陰影の強い無調の調べを奏で、オケがポリフォニーに被り、その中にバリトンが清々とした歌いで入ります。時に凶暴な色合いを作り、また静的な美しい緩徐パートも作ります。歌曲も得意とするカリツケらしい上手さを感じますね。バウアーのバリトンも良い伸びを感じます。
ポリフォニカルな強音支配的混沌は欧前衛的で、調性の薄い緩徐(part2,4)を対比させるところは多様性であり今の時代らしい流れを感じられますね。その構成感が心地よい楽曲です。


Six Covered Settings, 6つのカヴァード・セッティング
  弦楽四重奏のための(1999/2000年)
ロングボウイングとトリル・トレモロ、ピチカートが重なり、テンポをスロー・クイックと変化させます。短いクイックなパートは強音ですね。残念ながら本人の言うバロックやルネッサンスがどこに生かされているのかは不明ですが。
処々特殊奏法のノイズもあったりしますが、スロー静美パートが印象的です。


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



強音混沌と静美パートの対比が印象的です。無調ですがノイズや即興の様な完全カオスではありませんね。それがカリツケらしさでしょう。



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ジョヴァンニ・ソッリマ(Giovanni Sollima)の「Aquilarco」「Aquilarco, live in New York」を聴く


ジョヴァンニ・ソッリマ
(Giovanni Sollima, 1962/10/24 - )
イタリア人現代音楽家・チェリストでシュツットガルトやザルツブルクでも学んでいます。楽風はポスト・ミニマルで、基本は反復と変奏です。特徴的なのは民族音楽和声を感じる事とポップなクロスオーバー交える事でしょう。そういった意味からも欧州エクスペリメンタリズム前衛現代音楽ではなく、むしろ米現代音楽に近いスタンスと言えるかもしれません。
チェリストとしても立って弾いたり歩いたりと、パフォーマンスやインスタレーションに近いスタイルですね。個人的ご贔屓の現代音楽家&チェリストです。


Aquilarco (1997-1998年, Live 1999年)
アキラルコ
electric-ギター・ベースを含むチェロ主役のアンサンブル作品で、9パートのタイトル曲と他3曲で一つの作品になっています。タイトルの"Aquilarco"は"aquilone(凧)" and "arco(弓を使った弦楽奏)"の合成語で、本人曰く「空中を飛んだり旅したり、鳥やダヴィンチの飛行マシーンをイメージして、それをチェロのボウイングで凧の様に表現したい」そうです。今回はLive盤も合わせて聴いてみましょう。


GiovanniSollima-Aquilarco.jpg


タイトル曲以外3曲には語り(voice:Robert Wilson)が入り、Textは米詩人で画家のクリストファー・ノウルズ(Christopher Knowles)によるものです。内容は単純な文ですがアヴァンギャルドで意味不明、"nonsense"で組まれたとありますね。
楽曲が米現代音楽風と書きましたが、エグゼクティヴ・プロデューサーにフィリップ・グラスが名を連ね、ミキシングもLiveもニューヨーク。メンバーには本ブログおすすめの米Bang On A Can All-Starsからリサ・ムーア(Lisa Moore)がkeymoardsで入っている(#1, #3)のも興味深いです。

楽曲は以下
1.Aquilarco #1 (Prelude) - 2.Aquilarco #2 (Hintone's Drawings) - 3.Aquilarco #3 (Ornithomanteia) - 4.Aquilarco #4 (Aquiolastro) - 5.Aquilarco #5 (Leonardo's Ornithopterus) - 6.Aquilarco #6 (Spinning Top Prelude) - 7.Aquilarco #7 (Rotating Dance) - 8.Aquilarco #8 (Aria) - 9.Aquilarco #9 (Rotating Dance) - 10.Loof And Let Dine - 11.Di Di - 12.Give You Up
(Liveでは"10.Loof And Let Dine"が#5の後に、"11.Di Di"が#7の後に、"12.Give You Up"が#8の後に入ります)




 
(右がLive盤です)


ベースをポスト・ミニマルとしたソッリマの楽風全貌を感じられますね。ベーシック的室内楽(2,3,7,8,9)、チェロ技巧曲(1)、ポップ系(5,9)、ミニマル(12)そしてアヴァンギャルド(4,6,11)。スローからハイテンポまで、楽器編成を変えながら様々な表情で楽しませてくれます。ロバート・ウィルソンの語り口も合っていますね。

好きなのは#1の技巧チェロ、#4の唸る様なボウイング、#6の浮遊感、#7の美しい調べ、11.Di DiのTextと語りと音楽の絶妙マッチ、ですね。特に11.Di DiのTextはチェロの技巧曲としても聴きどころがあって面白いです。
イタリアの香りする美しい調べ、例えば#2や#7など、はジャン・フランチェスコ・マリピエロの弦楽四重奏曲を思い浮かべます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Live盤では先鋭化してキレキレ、演奏を楽しむならばこちらがおすすめですね。#1はチェロの技巧とelec-bassのコントラストが強烈です。美しい室内楽#2,7なども感情のこもった音色が響いて素晴らしいですね。Textがある3曲が途中に挟まれるのも全体構成からすると合っている気がします。



オリジナル(スタジオ録音)盤ではP.グラスがプロデューサーに入っているからか、全体の流れはその手の美しいミニマル楽風に整えられた感じがします。米市場ターゲット的な臭いですね。Live盤ではチェリスト:ソッリマの本来の姿を聴くことができるでしょうし、米現代室内楽的な楽器編成が生き生きとしています。

■スタジオ録音盤は上質なBGMとしてとてもおすすめです。■Live盤は感情移入があって演奏を楽しむなら断然こちらですね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ジャン・フランセ(Jean Françaix) の「A Huit・Divertissement・Clarinet Quintet」を聴く


ジャン・フランセ
(Jean Françaix, 1912/5/23 - 1997/9/25)
20世紀のフランス人現代音楽家で、新古典主義だそうです。無調やセリエルの様な前衛とは無縁、若くしてラヴェルから認められた通りプーランクの様な流れを汲んだ多作家です。前向きな明るい楽風はHyperionレーベルから出ている事でもわかりますね。管弦楽法に精通してるそうですが、全くこのブログ的ではありませんw


A Huit・Divertissement・Clarinet Quintet
中期の木管を取り入れた室内楽曲になりますね。以前紹介したのも木管でした。ピアノ曲を得意として最後に一曲ピアノ(pf:Susan Tomes)をフィーチャーしていますが、それ以前の問題も含んでいるのでハードルは高そうです。
演奏はThe Gaudier Ensembleになります。






A Huit (1972年), Octet for clarinet, horn, bassoon, violins, viola, cello & double bass
  I. Moderato. Allegressimo - II. Scherzo - III. Andante. Adagio - IV. Movement de valse
穏やかな主題反復変奏が続き、後半はスケルツォ主題で反復、のpart I. 他2partも同様の単純構成です。心地よいといえばそうなのですが、全てが明確な主題に変奏という構成は退屈過ぎですね。宮廷貴族的?!

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?


Divertissement (1942年), for bassoon & string quintet
  1. Vivace - 2. Lento - 3. Vivo assai - 4. Allegro
"A Huit"の30年前の曲ですが、切り替わったのがわからないほど似た展開です。この30年間は何なのでしょう??!!


Clarinet Quintet (1977年), for clarinet & string quartet
  1. Adagio: Allegro - 2. Scherzando - 3. Grave - 4. Rondo
省略


L' heure du berger (1947年), for flute, oboe, clarinet, horn & piano
  1. Les Vieux Beaux - 2. Pin-Up Girls - 3. Les Petits Nerveux
省略



古典宮廷音楽に近い印象で、全部同じサロンミュージックの様に聴こえます。単純明快な主題を変奏させて続ける構成で、それが全て軽妙さで統一されているわけですからすぐに飽きてしまいますねぇ。感性の低い駄耳では太刀打ちできませんでした。

年代的に現代音楽なので一覧(下記)にリストアップはしておきましょう。以前もアルバムの中の一曲としてインプレしてありますが、リストに入れていないのはそういった理由です。



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テーマ : クラシック
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アンリ・デュティーユの代表作アルバム「交響曲第2番 "ル・ドゥブル" 、メタボール、他」を聴く


アンリ・デュティユー
(Henri Dutilleux, 1916/1/22 - 2013/5/22)
フランスの現代音楽家で、パリ音楽院(Conservatoire de Paris)で学んでいます。年代的にはメシアン(1908年)とブーレーズ(1925年)の間に挟まれていますが、その二人から今に至る仏前衛系の現代音楽ではありませんね。多様性の現代音楽ともひと味違います。

19世紀末生まれのフランス6人組(オネゲル、ミヨー、プーランク達)の流れを汲んでいる様な美しさや情感を感じます。調性の薄さを生かし より陰的な美しさをベースにした音楽で、機能和声の音楽を調性の枠から解放した楽風の一つですね。
作品は1940年代からになりますが、この当時吹き荒れた十二音技法やトータルセリエルとは当然ながら各別しています。(一部顔を出したりしますが)


Symphonie N° 2・Métaboles・ETC.
初期から中期の管弦楽代表作が並ぶアルバムになりますね。デュティユーというと当初PHILIPS盤で出ていたこのアルバムを思い浮かべる方が多いではないでしょうか。
演奏はセミヨン・ビシュコフ(Semyon Bychkov)指揮、パリ管弦楽団(Orchestre De Paris)になります。






Symphonie N° 2 «Le Double» (1959年)
  1. Animato, Ma Misterioso - 2. Andantino Sostenuto - 3. Allegro Fuocoso
オケの中から12人の編成にした室内楽交響曲とも言えますね。タイトル通りの二重の編成が対比になっています。
幽玄で陰影の強い新古典主義風、そう書くと物議をかもす?、な流れはミヨーや一部ジョリヴェを思わせます。微妙な調ではありますが、基本的には調性域の音楽ですね。二つの編成のポリフォニカルさ、完全なポリフォニーではありません、が特徴的です。中途半端と言われると厳しいところかもしれませんが。


Timbres, Espace, Mouvement Ou «La Nuit Étoilée» (1978年)
  Nébuleuse - Interlude. Constellations
「音色、空間、運動」サブタイトル通りゴッホの絵画"星月夜"の天空が渦巻く様を表現した楽曲です。
スローで調性の薄い旋律を対位法的に並べます。そこから生み出される浮遊感がタイトルのイメージなのでしょう。ゴッホと同じくポスト印象派ということなのかもしれません。主な流れは変奏による反復か連続か、といった感じです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ポール・トルトゥリエ指揮、BBCフィルの演奏です



Métaboles (1964年)
  1. Incantatoire - 2. Linéaire - 3. Obsessionnel - 4. Torpide - 5. Flamboyant
代表作「メタボール」、変奏曲で途中で十二音技法も採用されているそうですが聴いただけではわかりませんね。
3'前後の小曲構成で、六つの変奏曲になっている様です。曲の区切れ目は無く、デュティユー的幽玄さと出し入れで変奏され、二つの表情が入れ替わる一つの曲の様です。



旋律や調性に自由度を与えた音楽で、特徴は二つの顔です。新古典主義的な出し入れの強さ、ポスト印象派印象的な幽玄さ、それがデュティーユでしょう。

聴きやすく好きなのですが、中途半端感と折衷感が気になるのも事実です。



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シェーンベルク『グレの歌』12CD聴き比べ《ブーレーズ, 小澤征爾, インバル, ラトル, シノーポリ, シャイー, アバド, ギーレン, サロネン, ヤンソンス, ストコフスキー》おすすめ・名盤は?!


アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schoenberg, 1874/9/13 - 1951/7/13)
言わずと知れたシェーンベルク、現代音楽の黎明期前衛時代と合わせてちょっとだけおさらいです。[以下、前回紹介文引用です]

後期ロマン派の最終期とも言える時期の傑作から始まり、1910年くらいに前衛の原点"無調作品"を世に送りました。そして"無調"に新しい音楽理論を当てはめた"十二音技法"を確立したのが1920年くらいなわけですね。
ただシェーンベルクは無調ですが調性に近い楽風を保持する様になり、1934年の渡米で更に調性回帰的になっています。
音楽理論的な前衛を推し進めたのは弟子で新ウィーン楽派の一人アントン・ヴェーベルンのトータル・セリエリズムであり、その流れを主流とした「ダルムシュタット夏季現代音楽講習会」をベースにシュトックハウゼン/ノーノ/ブーレーズが時代を支配して1970年代の"前衛の衰退"へまっしぐらに突進した訳ですね。



Gurre-Lieder (1900-1911年)
グレの歌
登場人物5人 語り手1人、400人を超える大編成(オケと合唱団)で、2時間弱という壮大な歌曲の大曲ですね。基本は後期ロマン派の美しいストーリーと楽曲です。(詳細構成等は割愛しますね)

概要 (イェンス・ペーター・ヤコブセン「サボテンの花開く」より)
ヴァルデマル王は侍従の娘トーヴェと狩猟の城グレで愛を育んでいました。それを嫉妬した王妃によりトーヴェは毒殺されてしまいます。(第一部)
ヴァルデマルは悲しみと怒りで神を呪い(第二部)、天罰で死して亡霊となり亡き兵士たちを呼び起こして毎夜百鬼夜行します。死してなおトーヴェを恋い焦がれるヴァルデマル、最後はトーヴェの愛の力で救済を迎えます。(第三部)


本年三回のコンサート機会(下記)が訪れました。レコード時代から大好きで聴き込んでいるこの曲をこのブログで初めてインプレしようと思います。

 2019-3/14:カンブルラン/読響 (カンブルラン首席指揮者退任月)
 2019-4/14:大野和士/都響 (東京春祭2019最終日)
 2019-10/5,6:ノット/東響 (ミューザ川崎シンフォニーホール開館15周年記念)



インプレ結果 12CD ダイジェスト

[①ブーレーズ] 全体バランスの良さ、個人的標準原器です。
[②小澤征爾] 荒れ気味興奮の演奏がお好きな方向きです。
[③インバル] クールで広がりある個性派、おすすめ盤です。
[④ラトル] 全編濃厚、BPOファン御用達盤です。
[⑤シノーポリ] 強音の締まりの良さを感じたい方向きです。
[⑥シャイー] 爆裂疾走の快感、嫌いじゃない一枚です。
[⑦アバド] 名盤か最低か!!、"語り手"の好み一つでどちらかです。
[⑧サロネン] 淡々とした流れとクールさ。気掛かりは歌手陣です。
[⑨ギーレン] 隙のない完成度の高さ。そこが好みを分けるでしょう。
[⑩ヤンソンス] 歌い手とオケの一体感ならこれ。心和みます
[⑪ストコフスキー#1] 一度は聴きたい1932年世界初録音です。
[⑫ストコフスキー#2] 1961年のこれを聴くなら1932年盤かと。




個別インプレ


ピエール・ブーレーズ
(Pierre Boulez)
[1974年]

ブーレーズがBBC交響楽団(BBC Symphony Orchestra)首席指揮者時代(1971-1975)にイヴォンヌ・ミントンを擁して録音した作品ですね。ミントンとは"月に憑かれたピエロ"でも名演を残していますね。
LP時代の馬に乗ったヴァルデマール(国内盤)とは大きく異なるジャケットです。



ヴァルデマル王 (ジェス・トーマス, Jess Thomas)
落ち着いたテノールでシーン別の表情変化も明瞭にして上手い歌い分けです。"馬よ!"や神に対峙する厳しさもオケと一体感がいいですね。第三部の”天にある厳しき…”は演奏と共に白眉です。

トーヴェ (マリタ・ネピア, Marita Napier)
何よりもナピアの歌声から感じる若さがトーヴェにピッタリ!です。ヴァルデマルを想う心を優しさで聴かせてくれますね。強すぎず決して興奮しないネピアのトーヴェこそ好みです。

山鳩 (イヴォンヌ・ミントン, Yvonne Minton)
重心の低いMezで伸びが良く、トーヴェの死の悲しみと怒りを表現しています。溢れる感情を心に秘めての歌いは流石はY.ミントンで、この役一二を争う素晴らしさですね。

農夫 (ジークムント・ニムスゲルン, Siegmund Nimsgern)
曲の流れはやや速めで、緊迫のバス表現が強めです。"Da fährt's…"はかなり早く出ますね。

クラウス (ケネス・ボーエン, Kenneth Bowen)
テノールを生かした洒脱な道化を上手く歌います。洒落た表現は戯け過ぎずに王の姿を表現して好演ですね。

語り手 (ギュンター・ライヒ, Günter Reich)
速めの曲調に乗って厳しさを、緩く落として優しさを。シュプレッヒゲザングも適度な振りで抑揚を生かします。

合唱団
第三部"よくぞ来られた…"を始めとして激しいパートの切れ味を感じます。"見よ, 太陽!"の華やかさも当然ですね。


演奏と流れ
透明感と落ち着いた夕暮黄昏の序奏から第一部の前半、"馬よ!"で聴かせる締まった激しさ、"真夜中のモチーフ"の陰鬱。第二部は大きくアゴーギクを振り、第三部ではヴァルデマル(及び家臣)の神に対する激しさを適度な荒れで前面に出しながら、各パートで表現力を最大限活かします。
全体としては激しさと優しさをバランスよく両立させています。(これ以上激しさを前に出すならマスタリングの問題でしょうね)



的を得た配役陣の個性と演奏、トータル・バランスの高さを誇る一枚ですね。この曲の印象は、頭に擦り込まれたこの演奏があるからかもしれません。特にネピアのトーヴェはまり役で、上回るソプラノは聴いたことがありませんね。(上手い下手ではありません) もう一人は山鳩のミントンでしょう。

ブーレーズはCBS時代とDG時代で再録を多くしてしますが、この曲はしていません。再録していたらどの様になっていたのか興味は尽きませんね。




小澤征爾
(Seiji Ozawa)
[1979年]

言わずと知れた小澤さんと手兵のボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)によるグレ。ポイントは何と言ってもトーヴェ、ビッグネームのジェシー・ノーマンでしょう。J.マックラケンはこの18年前にストコフスキーにも採用されていますね。
ジャケットはレコード時代もこんな感じだったと記憶しています。



ヴァルデマル王 (ジェイムズ・マックラケン, James McCracken)
多少神経質さを感じるヴァルデマル。"馬よ!"ではオケに、"星は歓びの…"ではトーヴェに食われ気味で、負けじと?第一部後半はドラマティコorバリトン気味で力み過ぎです。後半も神と対峙の決意には欠ける様な。

トーヴェ (ジェシー・ノーマン, Jessye Norman)
J.ノーマンを使ったわけですから、堂々としたトーヴェです。"星は歓びの…"では尖っていますね。簡単に毒殺されそうにありませんw

山鳩 (タティアナ・トロヤノス, Tatiana Troyanos)
感情過多ではありませんが、かなり尖った声で表現しますね。好みは内に秘めた感情なのですが…

農夫 (ディヴィッド・アーノルド, David Arnold)
のびのびとした歌いで、"Da fährt's…"は炸裂的ですね。オケは控え目です。

クラウス (キム・スコウン, Kim Scown)
そこそこ道化ています。好みではありませんが、曲全体の濃い流れから行くとこれでマッチしている気もしますね。

語り手 (ヴェルナー・クレンペラー, Werner Klemperer)
シュプレッヒゲザング感はより低く、語り的ですね。前半の自然の激しさは超早口、中盤の"夏の夢"からは一呼吸置き歯切れの良いシュプレッヒゲザングとなっていますね。オケは控え目です。

合唱団
第三部"よくぞ来られた…"では結構暴れて陰影強く、ラストは派手ですね。


演奏と流れ
序奏は少しリズムを強調した感じで少し厚め、"馬よ!"も唐突的な激しさ、概して第一部は弱音パート薄めやや速めフラットな流れです。第二部は切れ味良く、第三部は強音パートの力強さに荒れが味方している感じですね。最後の序奏は半端感が猛烈ですが、ラスト"見よ, 太陽!"は劇的です。



本来好みとはミスマッチの全体的には速め厚め力感のグレです。流れもアゴーギクよりディナーミク強調型。厚めの第一部から 荒れ気味の速め強音パートの第三部への流れとなります。
ヴァルデマルとトーヴェも力感重視、筋肉質なトーヴェはあまり好きになれませんが。というかJ.ノーマンがトーヴェに合っているとは思いづらいです。最後の"語り手"の表現は濃いですが悪くありません。

何とか言いながら、コンサート受けしそうな荒れたパワープレイを聴きたくてかける機会が多かったのも事実ですねw




エリアフ・インバル
(Eliahu Inbal)
[1990年]

インバルが首席指揮者(1974-1990, 現名誉指揮者)を務めたフランクフルト放送交響楽団*(Radio-Sinfonie-Orchester Frankfurt)を振った演奏です。
*一時期hr交響楽団(hr-Sinfonieorchester)と名乗っていましたが、再びフランクフルト放送響(Frankfurt Radio Symphony)にしましたね。



ヴァルデマル王 (ポール・フレイ, Poul Frey)
暗く沈んだ美しい曲の流れに合ったテノール、"馬よ!"も激しさとキレはありますが興奮は避けています。第二部以降も激しさを活かしながらの見晴らしの良さは見事です。

トーヴェ (エリザベート・コネル, Elizabeth Connell)
こちらも曲の印象に合った落ち着いた印象のSop、伸びやかながらも繊細さを際立たせた美しさです。

山鳩 (ヤルド・ヴァン・ネス, Jard van Nes)
今にも溢れそうになるトーヴェの死の悲しみや苦悩を押さえつつ、情感深く歌います。その分ラストの溢れる感情は素晴らしいですね。

農夫 (ウォルトン・グレンロース, Walton Grönroos)
緊迫感ある歌いは堂々とも聞こえますね。"Da fährt's…"は"Holla!"と同期します。

クラウス (フォルカー・フォーゲル, Volker Vogel)
重さや道化感をうまく消化してクールなクラウスで、全体の流れにとてもマッチしています。

語り手 (ハンス・フランツェン, Hans Franzen)
小刻みな演奏と落ち着いたシュプレッヒゲザング、"夏の夢"からは優美な演奏にゆったりと。曲に合っていますね。

合唱団
第三部"よくぞ来られた…"は炸裂するオケに対してコントロールの聴いた大合唱で応えます。"時を告げようと…"ではミサのごとく、ラスト"見よ, 太陽!"は雄大に飾られます。


演奏と流れ
第一部の序奏は静的澄んだ流麗さ、興奮を避けた流れで抑揚を抑えて美しさを奏でます。"馬よ!"も演奏は強音メリハリはありますが客観的で、その後も美しさの第一部です。第二部もスタンスは変わらず "山場"ヴァルデマルの絶望"も素晴らしいです。第三部も特徴である百鬼夜行やヴァルデマルの神への怒りも怒涛の激しさの中にコントロールの効いた見晴らしの良さを感じますね。
基本スローに計算されたアゴーギクとディナーミクのコントロールが見事に決まっています。



見事な統一感、個性際立つ澄んだクールな流れのグレです。強音での激しく締まった演奏も見事に鳴りよく響かせながら、不要な興奮を避けて透明感のある美しい心地良さが素晴らしいです。
歌手軍は歌唱力と全員の個性が曲の流れにぴったりマッチ、トータル感を崩しません。好み一押しのグレと言っていいでしょう。
(ダイナミックレンジの広い録音で、聴く環境を要求するかもしれません)

インバルは『青ひげ公の城』でも同様の素晴らしい録音を残していますね。マーラーは今ひとつ合わないのですが…




サイモン・ラトル
(Simon Rattle)
[2001年]

2002年から昨年(2018年)6月まで首席指揮者・音楽監督を務めたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)との就任前年の録音ですね。BPO色が強そうに感じますが、クドさからいえば似た傾向にある両者ですからねぇ。(あまり聴かない一枚ですw)
ヴァルデマルを得意とするT.モーザーと、山鳩に大物オッターを迎えています。



ヴァルデマル王 (トーマス・モーザー, Thomas Moser)
トーヴェを思うパートは柔らかく甘美、"馬よ!"も暴れません。"時は夜半"での艶やかさは見事です。神との対峙でも過剰な暴力感は避けていますね。

トーヴェ (カリタ・マッティラ, Karita Mattila)
控え目ながら伸びを効かせるsop、濃厚さの流れの中でトーヴェらしさが光ります

山鳩 (アンネ・ゾフィー・フォン・オッター, Anne Sofie von Otter)
濃厚で感情剥き出しの表現です。個人的好みは、そこを心にグッと抑えて悲しみと無念を表現して欲しい処ですが。この先にあるとすれば狂気でしょう。

農夫 (トーマス・クヴァストホフ, Thomas Quasthoff)
精悍ささえ感じるバス・バリトンですね。"Da fährt's…"はかなり遅れて出てきますね。

クラウス (フィリップ・ラングリッジ, Philip Langridge)
演奏ともに表情濃いですが極端に道化てはいませんからいいですね。オケはくどいですがw

語り手 (→ "農夫"と二役)
明瞭な表現のシュプレッヒゲザングです。二役なのでここでも精悍さを感じますが、少し濃厚表現ですね。

合唱団
"よくぞ来られた…"ではオケ共々派手に大きく歌い上げ、"時を告げようと…"では抑え気味に、一息おいたラストはもちろん超ド派手です。


演奏と流れ
第一部序奏は明瞭な明るさを奏でます。本来夜を迎える黄昏で、二人の夜と死で完結する絶対の愛を前にする序奏なのですが。愛のパートは蕩ける様な甘美さ、"馬よ!"も適度な押しながら派手、艶やかな第一部です。山鳩は激唱です。第二部・第三部もパート毎に濃厚で、クラウスのパートなどは演奏との掛け合いのごとくです。オケが主役だと主張していますね。



至る所 濃厚な表現で溢れる満艦飾のグレですね。アゴーギクとディナーミクも細かい揺さぶりではなく、甘美さから激情まで濃厚な表情着けに厭わず振られています。歌唱陣ではオッターの感情をさらけ出すMezがその代表でしょう。オッター以外はバランス良いのですが、オケが前にしゃしゃり出ます。少々聴き疲れですね。

先入観もあってBPO色全開に感じます。ラトル本人も言っていますが基本弦楽四重奏ベースの曲のはずなのにクール・洒脱さは一片も見当たりません。単に好みの問題ですが。(笑)




ジュゼッペ・シノーポリ
(Giuseppe Sinopoli)
[1995年]

学研肌指揮者シノーポリが首席指揮者(1992-2001)を務めた時代のシュターツカペレ・ドレスデン(Staatskapelle Dresden)とのグレ。ヴァルデマル王を上記ラトル/BPOと同じT.モーザー(2005年にサイトウ・キネンフェス松本でも同役を演じています)、トーヴェを得意とするD.ヴォイト(フォイクト?)の起用と配役を固めています。



ヴァルデマル王 (トーマス・モーザー, Thomas Moser)
T.モーザーらしいマイルドなテノール、"馬よ!"でも力感を上手くコントロール、神に向かっても苦悩の濃さは出しますが怒りの熱唱ではありません。いいですね。

トーヴェ (デボラ・ヴォイト, Deborh Voigt)
朗々たる歌声に若さが弱く熟女的印象が強いです。"星は歓びの…"でははしゃぎ気味。最後は絶唱で、ちょっとトーヴェのイメージとは違うかなぁ。

山鳩 (ジェニファー・ラーモア, Jennifer Larmore)
細めのMezで神経質に感じますね。感情表現も強めだからでしょう。

農夫 (ベルント・ヴァイクル, Bernd Weikl)
テノールの伸びを生かして表情豊かに歌います。演奏も力感がありますね。

クラウス (ケネス・リーゲル, Kenneth Riegel)
道化色の濃いテノールになりますね。本来好みではないのですが、全体の流れが濃くないのであまり気にはなりません。

語り手 (クラウス・マリア・ブランダウアー, Klaus Maria Brandauer)
ちょっとクラウスにも似た道化的な表情を見せます、特に前半の速いパートですね。"夏の夢"からはトーンを落としてシュプレッヒゲザングします。

合唱団
"よくぞ来られた…"ではオケと張り合う様な勢いです。"時を告げようと…"では大きく広げてから静めて、"見よ, 太陽!"は盛大に。


演奏と流れ
第一部、序奏は少々ギクシャクぎこちなく、二人の愛のシーンは穏やか、"馬よ!"では心地よいメリハリ感、上手くツボは押さえていますね。第二部は激しさを前面に、第三部はコントラストが明白で強音のパワー炸裂が印象的です。それが全体として締まりの良さを感じるのでしょう。



強音パートを中心に押さえ処を心得た上手さを感じます。適度に引いては押す様な流れで聴きやすいでしょう。歌手陣では、ヴァルデマルのT.モーザーのクールな良さが流れに合っていますね。女性陣は強いですw

肩肘張らない流れで、強音パートをドッドーンと決めるので気持ちがいいですね。




リッカルド・シャイー
(Riccardo Chailly)
[1985年]

シャイーが首席指揮者(1982-1989)を務めた時代のベルリン・ドイツ交響楽団(Deutsches Symphonie Orchester Berlin)との録音で、ヘルデンテノールの雄S.イェルザレムを起用ですね。イェルザレムは次のアバドにも起用されています。



ヴァルデマル王 (ジークフリート・イェルザレム, Siegfried Jerusalem)
流石はヘルデンテノール、トーヴェとの愛の交歓でも感情表現を表に出し、神との対峙では力漲りますが、クドさは感じません。演奏も力感溢れるので良いバランスでしょう。

トーヴェ (スーザン・ダン, Susan Dunn)
優しさを歌う可憐な歌声がトーヴェらしさを感じさてくれます。トーヴェ最後の"あなたは私に…"はオケが濃厚過ぎで、力が入っちゃてますね。

山鳩 (ブリギッテ・ファスベンダー, Brigitte Fassbaender)
感情が溢れてしまう様な表現です。速め濃いめの歌唱ですが、オケが強いのでこのくらいでいいのかもしれません。

農夫 (ヘルマン・ベヒト, Hermann Becht)
速めの流れで切羽詰まった気配が伝わるうまさですね。"Da fährt's…"は派手な演奏に埋もれています。

クラウス (ピーター・ハーグ, Peter Haage)
道化感はほどほどですが、濃厚な歌いです。とにかく速いのでこれでないと着いていけないかも。

語り手 (ハンス・ホッター, Hans Hotter)
速くて早口になってます。"夏の夢"からスローにはなって表現力を上げますね。オケとのコラボも生かしています。

合唱団
"よくぞ来られた…"は爆唱炸裂から暗く落とすコントラスト、"見よ, 太陽!"はまさに大団円ですね。


演奏と流れ
入りの序奏を色濃く、二人のシーンを優美にサポートして、"馬よ!"では激しさを、流れにメリハリが強い第一部です。山鳩ではオケMez共に押し出し強めです。第二部・第三部もメリハリ重視はそのまま引き継がれます。
出し入れの強い演奏で速さ基調、落とす時はピシッとスローなので胃もたれ感は少ないでしょう。ディナーミクも同様です。



ドン・シャン的濃厚・派手な演奏で速くてパワープレイ主軸。とにかく全体速めで飛ばしアゴーギクの振り方が明確、スローかファストか、です。ディナーミクはもちろん強音軸足です。歌手陣も表現力が強めですが、この演奏に"ごする"には必要でしょう。

好きな一枚で、一度は聴きたいイケイケ爆裂方向の個性的グレです。処々スローで休みますが、とにかく爆走大好きですw




クラウディオ・アバド
(Claudio Abbado)
[1992年]

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(Wiener Philharmoniker)は首席指揮者を置いていませんが、その母体であるウィーン歌劇場(ウィーン国立歌劇場管弦楽団)には音楽監督がいます。アバドが音楽監督(1986-1991)を退任した翌年録音です。
知る人ぞ知る"問題盤"になります。それは"語り手"に映画女優B.スコヴァの起用。女優起用だけなら新目線ですが、そのシュプレッヒゲザングたるや驚き以外にありません。(スコヴァはアバド/BPOとの演奏会、次に紹介する2009年サロネン盤にも起用されています)



ヴァルデマル王 (ジークフリート・イェルザレム, Siegfried Jerusalem)
シャイー盤と比べてオケが落ち着いた分イェルザレムのしっとりとした表現は美しさを増して、"馬よ!"でも力感より伸びの良さを感じます。神への怒りもシャープな歌いで聴かせてくれます。

トーヴェ (シャロン・スウィート, Sharon Sweet)
穏やかながら伸びよく抑えの効いたsop、若々しさを感じられるトーヴェらしさですね。(41歳のSweetですが)

山鳩 (マルヤーナ・リポヴシェク, Marjana Lipovšek)
悲しみと無念を心に秘めながらの深い情感の歌いは、スローで沈んだオケとぴったり来ていますね。

農夫 (ハルトムート・ヴェルカー, Hartmut Welker)
堂々と聴こえる農夫で、"Da fährt's…"はオケと共に炸裂です。キリストへの祈りからは落ち着きが伝わりますね。

クラウス (フィリップ・ラングリッジ, Philip Langridge)
程よい道化色がオケとマッチして、曲の中でスケルツォ的な印象を与えてくれますね。

語り手 (バルバラ・スコヴァ, Barbara Sukowa)
いきなりの軽いノリで素っ頓狂な声をあげるのでビックリ!! えっ, どうしたの, なんで??!!的な印象は今聴いても拭えません。表情豊かというわけでもなく、スローになる"夏の夢"からもアニメのアテレコみたいな。せっかくの女性シュプレッヒゲザングなら、「月にピエロ」的だったら面白かったかもしれません。

合唱団
"よくぞ来られた…"はオケと共にまさに百鬼夜行です。"時を告げようと…"では静かに沈み、"見よ, 太陽!"のラスト1分はクレッシェンドを効かせて大きく納めます。


演奏と流れ
クセのない落ち着いた序奏、二人の愛のシーンは穏やかな美しさを、"馬よ!"では締まり良く、山鳩に繋げる間奏は大きな揺らぎで見事に、大きな構えを感じる第一部です。第二部の"ヴァルデマルの絶望"モチーフも深く大きく、第三部もスローの落ち着きを元に激しさを切れ味よく大音響で鳴らします。



緩やか懐広いパートと、締まりある迫力の強音パートが両立しています。構えの大きな素晴らしい流れですが、唯一最大の違和感 "語り手" が全てを崩してしまいました。
歌手陣とオケの流れとのマッチもとても素晴らしく、素っ頓狂な"語り手"以外ですが、聴き応え十分ですね。何とも残念至極の一枚です。

"語り手"に違和感が無い方には最高の一枚と言っていいと思います。




エサ=ペッカ・サロネン
(Esa-Pekka Salonen)
[2009年]

サロネンが2008年から首席指揮者を務めるフィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)を振ったグレですね。"語り手"が、アバド盤で迷演のバルバラ・スコヴァというハードルがあります。ヴァルデマルは同年録音のヤンソンス盤でも好演のスティー・アナセンなのですが。農夫は次のギーレン盤でも同役のラルフ・ルーカスです。



ヴァルデマル王 (スティー・アナセン・Stig Andersen)
優しさを感じさせるリリコ的なテノールはこの役に合っていますね。トーヴェの優しさを慕うのに汗臭い強面の王様は似合いません。好みのヴァルデマル歌いです。

トーヴェ (ソイレ・イソコスキ・Soile Isokoski)
清楚ながらしっかりのイメージがsopのシャープさに感じられます。もう少し優しさが勝ってもよかった気もします。

山鳩 (モニカ・グロープ・Monica Groop)
朗々と歌います。感情を込めてというよりも歌唱力で勝負的な山鳩でしょうね。

農夫 (ラルフ・ルーカス・Ralf Lukas)
切迫した気配の前半、"Da fährt's…"は2分割で叫びます。後半のキリストへの祈りで落ち着きを見せ変化をつけるうまさを感じます。

クラウス (アンドレアス・コンラッド・Andreas Conrad)
道化感はとても低く、でのびのび朗々と歌います。王の姿を客観的に表現というよりも誰かに訴えているかの様です。

語り手 (バルバラ・スコヴァ・Barbara Sukowa)
アバドとの録音から17年、出だしは僅に落ち着いた様にも感じたのですが結局素っ頓狂。受け入れるのは厳しいシュプレッヒゲザングでした。アバド盤よりは良い気もしますが…

合唱団
"よくぞ来られた…"と"時を告げようと…"は迫力よりも広がりですね。


演奏と流れ
淡々としながらクールな序奏と愛の交歓、"馬よ!"でも過度の緊張を避け、クセのない第一部です。第二部も抑えを効かせたバランスです。第三部でも演奏は興奮を抑えて流れを作ります。



ヴァルデマル(S.アナセン)とサロネンのクールさがマッチした心地良さですね。クセがなく淡々とした中に緩やかで大きなアゴーギクも効果的です。
ただ全体として残念な結果。歌手陣の山鳩とクラウスは好みではありませんし、"語り手"にB.スコヴァがいる時点でかなり厳しくなってしまいます。

アナセンとサロネン以外には聴くポイントが弱い印象です。




ミヒャエル・ギーレン
(Michael Gielen)
[2006年]

ギーレンが首席指揮者(1986-1999)を務めたこともあるバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団(SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg)を振ったグレですね。



ヴァルデマル王 (ロバート・ディーン・スミス・Robert Dean Smith)
若々しいテノールで"馬よ!"も伸びやかに、第二・第三部でも神への呪いを切れ味で歌います。

トーヴェ (メラニー・ディーナー・Melanie Diener)
綺麗に澄んだsopはトーヴェ向きですね。"星は歓びの…"でも感情コントロールが上手く、"あなたは…"ではの伸びは素晴らしいです。

山鳩 (イヴォンヌ・ナエフ・Yvonne Naef)
トーヴェの死の悲しみや憤りを表現力高く歌ってくれますね。Mezの声もぴったり来ています。

農夫 (ラルフ・ルーカス・Ralf Lukas)
切迫の表情を見せるバス、"Da fährt's…"は分割的スクリームです。キリストへの祈りからは落ち着きを見せるうまさですね。

クラウス (ゲアハルト・ジーゲル・Gerhard Siegel)
朗々と歌います。道化感は低めで声は伸びますが淡々と状況を語る感じは悪くありませんね。後半は熱唱も。

語り手 (アンドレアス・シュミット・Andreas Schmidt)
シュプレッヒゲザング感は弱めで、語りなのか歌なのかの微妙さです。その分流れには乗っていますね。

合唱団
"よくぞ来られた…"は切れ味よく、ラストもコントロールの効いた広がりです。


演奏と流れ
各楽器を明確にした序奏、"馬よ!"での激しさもコントロールよく、全体適度な揺さぶり(アゴーギク)で二人のパートを並べる上手さを感じる第一部です。第二部はスロー基本で興奮より重厚です。強音パートを中心に付けられた微妙な揺さぶりはギーレンらしさでしょう。そこも含めたギーレンらしいメリハリの第三部です。全体としては納まりが良すぎる感じですが。



シェーンベルクを得意としたギーレン、見事な完成度ですね。歌手陣のバランスも良く、全体の流れはもちろん熱狂パートでさえギーレンの手の内にある素晴らしさ。情熱の破綻も一切無いまとまりの良さです。ただそれが何回も聴きたいと思わせてくれない理由かもしれません

個人的には、溢れる情熱の様な何かスパイスが欲しい気がします。




マリス・ヤンソンス
(Mariss Jansons)
[2009年] DVD

現在ヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)の60周年記念演奏会の映像付き収録ですね。トーヴェはシノーポリ盤でも演じたD.ヴォイトです。S.アナセンは同年サロネン盤、ギュンター・ノイホルト盤(2012年/未所有)でもヴァルデマルを演じています。農夫・語り手(二役)M.フォレは2017年バイロイト音楽祭「ニュルンベルクのマイスタージンガー」でザックス役を好演したのが記憶にありますね。


(CD未発でDVDになります)


ヴァルデマル王 (スティー・アナセン, Stig Andersen)
優しさのある入り、"馬よ!"も情熱は強いですが伸びやかに、"時は夜半"はこのストーリー全体を表情豊かに歌い上げます。神への怒りパートも力感を伝えますが、過激さは回避します。感情を込めながらも聴かせる素晴らしさですね。

トーヴェ (デボラ・ヴォイト, Deborh Voigt)
シノーポリ盤から15年経っていますが優しさが伝わります。とは言え、尖った感じは残ってしまいますね。

山鳩 (藤村実穂子, Mihoko Fujimura)
抑えの効いた、その中に悲しみと無念を表現するMez。ここで流れが一変するほどの切れ味見事な山鳩です。

農夫 (ミヒャエル・フォレ, Michael Volle)
伸びやかなバス・バリトンで聴かせてくれます。後半のキリストへの祈りも朗々と歌いますね。

クラウス (ヘルヴィヒ・ペコラーロ, Herwig Pecoraro)
弾むような歌い方とテノールが適度な道化感を伝えます。ここでもオケとのバランスの良さを感じますね。

語り手 (→ 農夫と二役)
言葉の流れの良いシュプレッヒゲザングです。"夏の夢"からも表情豊かですね。

合唱団
"よくぞ来られた…"をはじめ少々抑え気味の印象ですが、もちろんラストは盛大です。


演奏と流れ
序奏から二人の愛シーンは優美に、"馬よ!"も激しさはヤンソンスのコントロール下、緩やかな大きな流れで歌手陣を生かす第一部です。第二部も大きく構えて、第三部も激しさの中に歌い手とのうまいマッチングを感じます。しゃしゃり出るオケではありません。



優美で大きな流れ、激しさには走りません。何よりも歌手陣を生かすオケが光ります。オケと歌い手のマッチングが素晴らしい一枚ですね。歌手陣はヴァルデマル王のアナセン、山鳩の藤村さん、この二人素晴らしさは所有盤の中でも一二を争います。第三部ヴァルデマルの歌う"トーヴェの声で森は囁き"では、思わずこちらもグッと来てしまいます。

アプローズではスタンディングオベーション、上記二人に拍手が大きく、客席にはクリスティアン・ティーレマンとケント・ナガノの顔も見えました。

本年(2019年)4月春祭の大野/都響、10月ミューザのノット/東響、二つの『グレの歌』で藤村実穂子さんが山鳩を演じるので楽しみですね。




レオポルド・ストコフスキー [#1]
(Leopold Stokowski)
[1932年]

ストコフスキーが世界初録音を行なった盤で、米国初演になりますね。オケはストコフスキーが首席指揮者(1912-1938)を務めた時代のフィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)です。532人を擁した演奏は、この時代の録音とは思えない良好さで驚きですね。冒頭に本人の解説付き(5'のわかり易い英語です/所有盤)です。


(左:ドビュッシーやラヴェル他4CDset | 右:グレ単独D/L版ですね)


ヴァルデマル王 (ポール・アルトハウス, Paul Althouse)
低重心で押し出しの強い表現です。"馬よ!"は速く急げという表現になっていますね。神に対しても威風堂々とした歌いです。感情が溢れますね。

トーヴェ (ジャネット・ヴリーランド, Jeanette Vreeland)
濃厚に歌いながらテンポ変化で表情表現をつけていますね。厚めの歌いです。

山鳩 (ローズ・バンプトン, Rose Bampton)
表現力が強く、オケのテンポ設定もかなり揺さぶっています。色濃いMezです。

農夫 (アブラーシャ・ロボフスキー, Abrasha Robofsky)
初めて聴くスローさで、歌いはフラット気味です。怯えた感じを出しているのでしょうか。音程も不安気味でなんだか変です。

クラウス (ロバート・ベッツ, Robert Bette)
道化感薄めに伸び伸びとしたテノールで、途中からテンポの揺さぶりが入り表現も濃厚になります。

語り手 (ベンジャミン・デ・ローチェ, Benjamin de Loache)
あまり揺さぶりません。シュプレッヒゲザングというよりも語りに近いでしょうか。抑揚はつけました、といった風です。

合唱団
"よくぞ来られた…"は爆速の激しさですね。ラスト"見よ, 太陽!"は、この時代の録音によく納まったと思える大熱演です。


演奏と流れ
序奏は少し速めで緩やかな揺らぎです。二人の愛のシーンはスローに振って、"馬よ!"と"星は歓びの…"では明確なテンポアップと、パート毎に大きな振り分けの第一部です。第二部は前半穏やかで、後半ヴァルデマルから速く展開します。第三部もスローとファストの振りが大きく、超スローの"棺のふたが…"から爆速"よくぞ来られた…"はすごいです。ラストは大迫力!!



87年前の演奏ですが、極端に緩急を入れ替えるのが特徴的です。アゴーギクというよりもパート毎の振り分けですね。速いパートが時代を感じさせるのは事実ですが、それを楽しめるのも良いですね。歌手陣も全体的に今よりも濃厚な表現・味わいでしょう。

歴史的な1932年の世界初録音、米プレミア演奏をこの音質で楽しめるとは素晴らしいですね。(オーディオマニアの方には無縁の世界でしょうw)




レオポルド・ストコフスキー [#2]
(Leopold Stokowski)
[1961年]

フィラデルフィア管から29年後、とはいえ今から58年前、エディンバラ国際フェスティバルでロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra)を振った録音ですね。ヴァルデマルには小澤/ボストン響[1979年]にも登場するJ.マクラッケン採用です。
冒頭にBBCアナウンスと英国国歌斉唱が入っています。



ヴァルデマル王 (ジェイムズ・マクラッケン, James McCracken)
小澤盤との18年前、この時のマクラッケンの方が落ち着き払っている感じで、"馬よ!"でも伸びよく歌い上げます。神との対峙でも感じるのは激しさよりも伸びの良さでしょう。

トーヴェ (グレ・ブロウウェンスティン, Gre Brouwenstijn)
優しさを感じるのですが、sopはやや力が入って濃いめ尖めでしょう。

山鳩 (ネル・ ランキン, Nell Rankin)
演奏の揺さぶりが以前同様見られます。それに乗ったMezで、表情を色付けして上手い表現は本アルバム中出色です。

農夫 (フォーブス・ロビンソン, Forbes Robinson)
ここでもややスローですが、以前ほどではありません。声は重厚ですが、やっぱり表現薄めです。なぜか"Holla!"が聞こえない不思議さです。

クラウス (ジョン・ラニガン, John Lanigan)
ここでも伸びやかテノールです。これはストコフスキーの好みでしょうか。

語り手 (アルバー・リデル, Alvar Lidell)
今ひとつ説得力に欠けるきらいのあるシュプレッヒゲザングです。テンポ設定が、特に前半、速いからかもしれません。

合唱団
"よくぞ来られた…"はテンポは一般化しましたが、とってもクセの強い歌になっています。"時を告げようと…"でも一部でクセを感じますね。


演奏と流れ
序奏は濃厚な優美さ、二人の愛のシーンも以前ほどスローに振っておらず速めに感じるくらいです。"馬よ!"は速くなりますが、スローとの極端な落差は減りましたね。短い第二部も同様で、第三部も個性は残りつつ平均化しているのは間違いありません。



極端なスロー&ファストの展開の影は潜めました。そうなると録音はmonoでダイナミック・レンジは狭いですから、没個性化してしまいますね。('61年録音としては良いレベルなのですがハンディになります)
とは言え、歌手陣はJ.マクラッケンが小澤盤より好演でN.ランキンの山鳩は一聴の価値があります

両録音ともテンポ変化は判断できますが、ディナーミク系は難しいですね。残念ですが想像力では補填できません。






おすすめ盤
あくまで個人的感想ですが。

 ■ まず一枚なら   ➡️  ①ブーレーズ
 ■ クールさ好み   ➡️  ③インバル
 ■ 豪快に聴きたい  ➡️  ⑥シャイー
 ■ 歌曲として楽む  ➡️  ⑩ヤンソンス

というところかと。ヤンソンス盤はDVDなのでコンサート気配も楽しめます。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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