FC2ブログ

アストリグ・シラノシアン(Astrig Siranossian)の『ディア・マドモアゼル』ブーランジェへのトリビュート



Dear Mademoiselle ディア・マドモアゼル
Astrig Siranossian (アストリグ・シラノシアン, チェロ)
仏の若手女性チェリストですね。特別興味があったわけでもなく、実は初めて聴きます。

ポイントはナディア・ブーランジェへのトリビュートという事ですね。仏女性音楽家N.ブーランジェ(1887-1979)は現代音楽の指導者としての存在感の大きさです。楽曲はあまり知られる範疇ではありませんが、今活躍中の現代音楽家・演奏家を調べているとやたらと名前が出てきます。

今回の顔ぶれはピアニストのバレンボイムも含めて、ブーランジェ関連の音楽家と言う事になります。ジャンルを跨いだ顔ぶれに驚きですね。全曲vcとpfですからチェロ・ソナタ感覚になるでしょうか。

pfは ナタナエル・グーアン(Nathanaël Gouin) です。(ブーランジェの曲のみダニエル・バレンボイム)








アストル・ピアソラ
(Astor Piazzolla, 1921-1992)
ブーランジェに師事した翌年、新しいタンゴの為の "ブエノスアイレス八重奏団" をピアソラは結成(1955)しています。その後 "Tango Nuevo" としてブレイクする訳で、旧来のタンゴからの脱却を導いたのですから凄いですよね。
"ル・グラン・タンゴ"はクラシック音楽の為のチェロとピアノの楽曲で、ロストロポーヴィチに献呈されている代表曲の一つです。

■1. ル・グラン・タンゴ (1982)
 いかにもピアソラらしいクロスオーバー・タンゴですね。はっきりとタンゴなのですが、vcの濃い音色がクラシカルに、pfの歯切れの良さはジャズっぽさがあります。二人の演奏にもメリハリがあってピアソラの楽団に近い感じがありますね。
楽曲的には三部形式っぽく、クラシック音楽的な緩徐の中間部(トリオ)が挟まれています。



イーゴリ・ストラヴィンスキー
(Igor Stravinsky, 1882-1971)
ブーランジェの5歳年上で、彼女が最も傾倒した音楽家がストラヴィンスキーだったそうです。新古典主義時代の作品ですね。Gregor Piatigorskyによるvc, pf編曲ver.です。

■2. イタリア組曲 (1932)
 バロックから古典風味の流れから初期ロマン派的、III.Ariaくらいが新古典主義でしょうか。シラノシアンのvcは もっとヴィブラートを付けるかと思いましたが、ほどほどに抑えている様です。ただ、ピアソラの後に聴くと退屈さを感じてしまいます。恐縮ですが。
多少なりと編曲にも その方向性を感じます。



ナディア・ブーランジェ
(Nadia Boulanger, 1887-1979)
本人作品ですね。この曲の原曲はオルガンですが、後に作られたチェロとピアノver.です。
バレンボイムはクリス・ マーネと共同制作したフォルテ・ピアノの様な平行弦ピアノ "バレンボイム・マーネ" を使っていますね。

■3. チェロとピアノのための3つの小品 (1911)
 美しく繊細な流れは 仏印象派そのものですね、特にピアノは。透明感のあるその音色が平行弦ピアノの効果と言う事なのでしょうか?! 最後のIII. No.3は良く弾んで強音、スケルツォ相当になって、二人の演奏も生き生きしています。



エリオット・カーター
(Elliott Carter, 1908-2012)
カーターは新古典主義時代にブーランジェに師事していますね。ストラヴィンスキーもそうですが、その後 調性からの脱却を目指します。ブーランジェ本人は調性から逸脱する事は無かった様です。

■4. チェロとピアノのためのソナタ (1948)
 初期の新古典主義からの脱却時期の作品になるでしょう。調性は若干怪しく、リズムも少しアンバランスさを見せて "rhythmically-complex" の流れになっています。複雑な調性・拍子で自由度の大きさがありますね。演奏もvcの音色を一番朗々と鳴らしている感じがします。これがベスト・トラックでしょう。



小曲三曲
この三曲はシラノシアンとグーアンの編曲になります。ミニマリストから映画音楽・ジャズ・ポップと言ったジャンルの音楽家まで指導していたのが凄いですね。

□5. フィリップ・グラス (1937- ):Tissue No.7
 鬱に美しいミニマルですw カーターの流れからのチェンジとしてはいい感じかも。

□6. ミシェル・ルグラン (1932-2019):メドレー
 フランスらしい美しさをがあり、Duoとは思えない音厚も見せますね。誰もが知っている"シェルブールの雨傘"もvcとpfに合った上手い編曲になっていてgoodです。

□7. クインシー・ジョーンズ (1933- ):ソウル・ボサノヴァ
 良く知られるQ.ジョーンズらしいジャジーなボサノヴァです。ここでも二人の編曲がとても生きてショータイムの様な楽しい流れを作り出していますね。この曲だけラスト フェードアウトです。



 ★試しにYouTubeで観てみる?
  録音風景のteaserです。冒頭曲が7. ですね




古典からポップ、調性多様性までヴァリエーションの広い楽曲選択。シラノシアンとグーアンの快活さが明確な演奏もフィットして、チェロとピアノDuoを楽しめるアルバムになっています。

肩肘張らずに二人で一杯🥃やりながら聴くのにもピッタリです。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アンナ・クライン(Anna Clyne) の「Mythologies, 神話集」と言う米現代音楽



アンナ・クライン (Anna Clyne, b.1980)
米在住のイギリス人女性現代音楽家で、室内楽・管弦楽、そしてエレクトロ・アコースティックを得意としているそうです。個人的にはエレクトロニクスを使っている印象がありません。まさかPAでのリバーブ等の操作では無いとは思いますが。

このブログ的に興味あるのは、ジュリア・ウルフに師事してBang On a Canとのコラボもあると言う方向性ですね。(インプレ済みです)
米オケの在籍作曲家を重ねているキャリアから想定できるスタンスとギャップも感じますが。


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


Mythologies BBC交響楽団
BBCラジオ3 Live音源の管弦楽集で指揮者が色々です。1. マリン・オールソップ、4. アンドルー・リットン、5. アンドレ・デ・リッダー、になります。

2. 3. は現在のBBC響の主席指揮者のカリ・オラモがですが、BBCはプロムスなどで カリ・オラモと呼んでいますね。







1. Masquerade (2013)
空を飛んでいる様な、空中を舞っている様な、連続したグリッサンド中心のメリハリの強い流れです。もちろん調性で、中盤過ぎに短い中間部(トリオ)の様な変化点も置いてあります。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  本CDの音にスコア付きです



2. This Midnight Hour (2015)
勇壮な弦楽から入って、速いテンポの流れを作ります。ドラスティックなフィルム・ミュージック的変化で表情豊かです。


3. The Seamstress (2014)
ヴァイオリン協奏曲です。1. 2.と違って哀愁感の入りで、冒頭からソロvnが感情を強めに奏でます。静的なパートも神秘的な印象を作って、voiceの呟きが効果的ですね。21'の中にはスロー・ファスト、強・弱、緊迫・幽玄、と言った変化全てが明確に並べられています。ソロvnも終始しっかり鳴らしていますね。

vnはジェニファー・コー(Jennifer Koh)、voiceはアイリーン・バックリー(Irene Buckley)で、アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツ(William Butler Yeats)のTextを元にしています。


4. Night Ferry (2012)
2.の勇壮さに1.の弦グリッサンドを入れた様な流れになっています。勿論それは導入部で、その後は表現豊かに変化させているのは同じです。フィルムのシーン切替的ですね。


5. rewind (2005)
重厚、ハイテンポ、トリル・トレモロの激しさとメリハリです。典型的 'ドン・シャン' サウンドですね。



劇的な流れと変化でわかり易く表情豊かなフィルム・ミュージック風ですね。ディズニー映画を思い浮かべる様な。

印象の勘違いもあって、この路線でしたっけ!?、って言う感じでした。好みは別として今の米現代音楽の一つの流れですね。確かにグラミー賞路線かも。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジョン・ゾーン(John Zorn) の「コブラ COBRA」と言うサバゲー的即興インスタレーション



ジョン・ゾーン (John Zorn, b.1953)
米のサックス奏者でインプロヴァイザー、基本的にはフリー・ジャズや実験音楽だとは思いますが、その範疇には前衛現代音楽も入っているでしょう。日本での活動も多く、よく知られていますね。

前回、前々回と10-20年前の非クラシック系の前衛実験音楽をインプレをして、そのからみでジョン・ゾーンの "コブラ (COBRA)" を思い出しました。



John Zorn's COBRA Tokyo Operations '94
東京作戦 吉凶部隊
コブラは前衛現代音楽で言う偶然性や不確定性の音楽にゲーム性を加えたゾーン考案の即興演奏システムですね。


プロンプターと呼ばれる指示者と10人ほどの演奏者を配置します。その際、楽器の選択は自由です。プロンプターはカードを所持していて、そこには演奏の指示が書かれています。スコアではありません。プレイヤーは自らの意思表示も含めて即興演奏します。

プロンプターは演奏指示(カード)以外にダウンビートと言うリセット権限を持ち流れを制御しようとします。それに対して演奏者も指を使ったコール(カード要求)を出せて、ゲリラと言った様相一変行為も作れます。演奏自体がサバゲー的即興インスタレーションですね。

演奏者を“部隊”と呼び今回の"吉凶部隊"は、和楽器主体の特徴的編成(+ギタートリオにVoice)です。プロンプターは東京作戦で数々の部隊を率いたヒカシューの巻上公一さんです。パフォーマンス・タイトルは暦注の"六曜"から付けていますね。

音だけでは面白さ半減を承知での今更インプレですw







1. Sensyo 先勝
和楽器の音色がしっかりと繋がりを作ってスタートしてます。自由度と言うより完成度?! それが流れの中で時折回帰するのは"SOUND MEMORY"のカード指示になっているのでしょう。全体が混沌に陥らないのは、プロンプターの意図なのか演奏者のコールなのか不明ですが、雅楽的モードな流れが支配的です。

2. Tomobiki 友引
ここでも出だしは静的で祭囃子的な構成感がありますね。その流れが続いて曲としてまとめようと言う協調性の強さが目立ちます。もっと何か個性的主張のインプロビゼーションにならないとコブラの面白みが薄い感じです。

3. Senbu 先負
前二曲とは異なり、邦楽に西洋の流れが対抗します。とは言え、ここでも協調性を強く感じてフリーの即興の戦いらしさは弱いですね。
巻上さんのプロンプターでは二つの流れの出し入れが多い様な印象があります、楽曲風vs即興の様な。

4. Butsumetsu 仏滅
3.に似ていて邦楽と西洋の流れの対抗になっていますが、それぞれがそれらしい旋律を作ってしまうのでスリルに欠けるのが残念です。二人の声楽も変な声を出しているだけにしか聞こえませんねェ。

5. Taian 大安
少し混沌化して来ましたが、それでもリズムを合わせたりして、何だか仲良しGr的ですね。もっとスリル満点の緊迫感を味わいたいです。犬の遠吠えなどいったい…面白さの方向が違う様な…

6. Shakko 赤口
ここでも一つ一つの楽器は和モードか西洋機能和声か、voiceは喚き声主体。モードや調性を超えた何かもっと新しい自由を味わいたかったです。



まとまりの良い邦楽和声範疇の音が並び、ギターとベースも機能和声範疇でした。この編成ならではのフリー邦楽・雅楽とは行かず、斬新なインプロビゼーションは見当たりませんでした。

まるでスコアがある曲みたいでスリル不足ですが、演奏のプロセス(映像)が無いのでCOBRAのシステムの楽しさはわかりませんね。



 ★試しにYouTubeで観てみる?



2017年のNew England Conservatoryから。これがCOBRAです!
ダウンビート(カード振下ろし), コール(指サイン), ゲリラ(拳突き上げ)
Performance3では3人のゲリラ・オペレーションが発生。大暴れ!



テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





Sachiko Mさんの「Sine Wave Solo」は、家中にノイズが伝わる迷惑さですw



Sachiko M (サチコ・エム, b.1973)
本名不詳のサイン波を使ったノイズ、ミニマル、即興演奏の音楽家さんですね。前回インプレの大友さんとのコラボ「あまちゃん」では「潮騒のメモリー」でレコード大賞を受賞しています。

現在は即興演奏家から作曲、アートの世界へも踏み込んでいるそうで、インスタレーションの方向性も睨んでいらっしゃるのかもしれません。坂本龍一さんとの面白いアルバムも所有していますので、またその内に。

そう言えば、以前やはりエレクトロニクスの中村としまるさんとかコラボしたり、COBRA東京作戦にも出ていた松原幸子さんっていらっしゃた様な気がしますが…



Sine Wave Solo Sachiko M
「サイン・ウェーヴ・ソロ」のタイトル通り、Sachiko Mさんの代名詞である サンプリング機能を排したサンプラー、プリセットのサイン波で作られたアルバムです。約20年前の作品、久しぶりに聴きました。

様々なエレクトロニクス・ノイズが並び、当時どの様なサンプラーとPAミキサーでどんな操作でどこまで崩せたのか興味深いですね。今やサンプラーの多機能化は顕著で、PAのエフェクト機能と合わせると可能性が広範囲になっていますね。現在ならソフトでもかなりの事が出来る気もしますし、MPC等でも色々出来る様な。(ノイズに拘った話ではありませんが)

8パートの作品で、それぞれ "Don't 〜" と言うタイトルになっています。







1. Don't Move - 2. Don't Ask - 3. Don't Touch - 4. Don't Get - 5. Take - 6. Don't Push - 7. Don't Stop - 8. Don't Do

サンプラーらしいリズムと音変換、そして反復ノイズの微妙なピッチ変更を感じる "1. Don't Move"。途中から音の並びも出現します。ドットノイズとハムノイズの組合せの "2. Don't Ask"、ひたすら「キーン」耳が痛くなる信号音系の "3. Don't Touch" では家族が「えっ、何の音、どこから??!!!」ってw 色々やってくれますね。

その後もモールス電信音の様なノイズや、ボコボコ言うノイズ、人為的なノイズが出てきます。そして低周波「ブーン」9分間の "7. Don't Stop" はボリュームを上げると近所まで響いてしまいそう。コンクリートスラブのマンションだったらかなりヤバイ!? 終わった瞬間, 霧が晴れた様に感じます



色々なエレクトロニクスのノイズを出現させてくれますね。いかにもサンプラーっぽいものから電子回路系、そして人為的なものまで。一番参ったのは "3. Don't Touch" の10分間ひたすら「キーン」ですね。ボリュームを上げていると驚いた家族が入ってきます。"7. Don't Stop"もヤバイですよ。

実は3.や7.のその先に「Bar さちこ」と言う強烈なアルバムが待っている訳ですが…
これはインプレする気力を削ぐ凄さですw




 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  何とアルバムごと聴けてしまいます
  勇気のある方はボリューム上げて3.と7.をどうぞ


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方
  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
   ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





大友良英さんの徹底したノイズ系「NOWJazz」w/ Sachiko Mさん



大友良英 (Yoshihide Otomo, 1959/8/1 - )
大友さんと言えば NHKの「あまちゃん」ですが、本ブログ方向で言えば前衛・即興・ノイズ系の現代音楽家です。元々はフリー・ジャズ系からのスタートで、映画・TV音楽から『プロジェクトFUKUSHIMA!』へと繋がって 2013年の「あまちゃん」へとなりますね。

バンド"GROUND ZERO"(1990-1998)では菊地成孔さんや、今回もメンバーとしてリレーションがあるSachiko Mさんも参加しています。GROUND ZERO解散後は、菊地成孔さんのマイルス・トリビュート(と言うと怒られる?!)"DCPRG"(1999-2007)に参加もしていますね。

このブログでは藤倉大さんの主催する現代音楽フェス2018年『ボンクリ "Born Creative" 第2回』で、ご本人作品を指揮するシーンを拝見しています。



NOWJazz Donaueschinger Musiktage 2005
前回 "Donaueschinger Musiktage 2019" をインプレした際に、これがあるのを思い出しました。そうなると、もう一人の日本人音楽家の Sachiko Mさんを考慮しない訳には行きませんね。

Sachiko Mさんのサイン波の楽器はサンプラーで、オシレーターからの正弦波出力とスイッチング・ノイズだそうす。正弦波ですから違いますが、以前オシレーター出力の独自エレクトロニクスの音楽家さんにカラーノイズなの?って聴いたら、そう言われると違うネ、って言われた記憶がありますw Sachiko MさんはメーカーのサンプラーとPAの様ですね。
他二人のトランペットとドラムも変則的でエレクトロニクス化された音を出力します。

作曲が演奏メンバー "Quartet " (Otomo Yoshihide: turntable, electronics & guitar, Axel Dörner: trumpet, Sachiko M: sinewaves, Martin Brandlmayr: drums) 名義になっていますが、要はノイズ系即興音楽と言う事ですね。CD2枚組で、CD1(1, 2)はセッションでCD2(3, 4)はライヴになります。







CD1-1. allurement 1
入りはエレクトロニクスのノイズなのですが、その音色が左からセンターに移動します。tpは本来の音を出す事はありません。低周波ハムノイズの様な音はサイン波? 回転系のノイズはターンテーブル? 何かがパチパチと燃える様な音も出しますが、打楽器なのかエレクトロニクスなのかも不明…音階を意識させるモノはありません。

流れの中に強弱や密度の濃淡、言ってみればディナーミクやアゴーギクの変化、は殆どありません。長いパウゼはありますが。楽曲的様相を取り払っていてノイズ系では無くノイズそのものです。そんなノイズだけの中に現れる二つの表情は、時折のパーカッションの打音がリズムの様に、そしてテープによる会話?がコラージュの様にです。


CD1-2. allurement 2
金属系打楽器残響音での倍音のウネリが印象的です。その響が主役で、そこにサイン波と思われるノイズも波形変化による揺らぎで入って来ます。tpは今回は潰れた様な音色を創出、明らかに音の流れが作られて行きます。

1.と大きく異なるのはそんな音楽的構成が存在する事でしょう。流れに強弱・濃淡を排除しているのは変わりません。


CD2-1. allurement 3
'allurement 2'の延長線上的に始まりますね。ただ金属系打楽器の倍音はありません。それでも何らかの音の流れを感じます。反復の単音やノイズのリズム、ロングトーンと言った様なですね。そしてセッションと一番違うのは、僅かながら強弱・濃淡が有る事でしょう。終盤のミニマル的なノイズ・カオスはSachiko Mさん色を感じますね。


CD2-2. allurement 4
一番音密度が高いですね。やたらと交錯するエレクトロニクス・ノイズと打楽器ノイズ、サイン波からの執拗反復、そして特殊奏法に打楽器トレモロ。ノイズの想定が一番利きそうな感じです。tpは'音'を鳴らし、楽曲感さえ感じるパートも登場しますね。その分4曲の中では少し平凡さも感じるかもしれません。



一番面白いのは極端な徹底ノイズ"allurement 1"ですね。次の"allurement 2"はその対極で音の残響を生かしています。Live(CD2)になると強弱・濃淡が発生して表情が付き、一部音楽的流れも感じます。

同じ編成でも異なるノイズの方向性があって興味深いです。これはノイズがどの様に出されているか、演奏しているシーンが欲しいですねェ。




 ★試しにYouTubeで大友さんのノイズを観てみる?
  今回のクインテットの動画はありませんが、大友さんのターンテーブルでのノイズです


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方

  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧

   ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





今の時代の前衛現代音楽「ドナウエッシンゲン音楽祭2019」(Donaueschinger Musiktage 2019)



Donaueschinger Musiktage 2019
毎年お馴染みの「ドナウエッシンゲン音楽祭」の2019年LIVEです。

書く事も同じです。①年々国内発売が遅れます。以前は翌年11月?くらいに出ていましたが、今は翌々年2月です。②曲目が減っています。以前は数枚組みCDsetやDVD付きでした。③新鮮さが無くなってきています。今回の四人も本ブログで紹介済みです。④一番の問題はインスタレーション系で、CDではヴィジュアル部分がわからない事でしょう。DVDやBDでのリリースも必要ですね。


今回もCDオンリーなのでインスタレーションの注目曲、ステーン=アナセン(Simon Steen-Andersen)の「TRIO für Orchester, Bigband, Chor und Video」や、カーステン・リーズ(Kirsten Reese)の「Neglou」と言った作品が漏れてしまっています。意味不明難解なこの辺が今の前衛ですね!!
他にもアンジェラ・ブロック(Angela Bulloch)の音に反応してドローイングするX-Yプリンターとかも入っていません。


今や欧エクスペリメンタリズムのメインはインスタレーションですから、耳だけで前衛現代音楽を味わうのは不可能になって来ています。

各音楽家の紹介文は過去インプレ時を流用しています。








マーク・アンドレ
(Mark Andre, b.1964)
(仏表記Marc André)はドイツ在住のフランス人現代音楽家で、パリでグリゼーに、シュトゥットガルトでラッヘンマンに師事しています。強音から静音に、そして微分音へと作風変化は大きく、パラメーター表記の難解さはファーニホウの「新しい複雑性(New Complexity)」と興味深いです。プロテスタントのフランス・ユグノー派に傾倒して、宗教的作品も多いですね。

■1. rwḥ 1 for ensemble and electronics (2019)
 まずは静空間のノイズで入ります。グリゼーの空間音響にラッヘンマンのノイズで 反復の様相も見せます。徐々に色濃くなって行きますがクラスターにはならずに、音密度は高めません。緊張感と切れ味あるノイズですが、類型的で何処かで聴いた様なサウンドになっている事ですね。

ところが中盤に現れるpfから面白さが出現、(鍵盤)打楽器のボウイング奏法の様な響、いきなり現れるクラスターは面白い感じがあります。後半の緊張感の高揚が聴き処です。ただ、スタジオ処理されているエレクトロニクスの使われ方やステージ上で何らかのパフォーマンスがあるのかは不明ですね。
(Ensemble Resonanz, Bas Wiegers [cond.], SWR Experimentalstudio [electronics])



ヨハネス・ボリス・ボロウスキ
(Johannes Boris Borowski, b.1979)
ドイツ人現代音楽家でドイツとフランスで学び、その作品はアンサンブル·アンテルコンタンポランやアンサンブル·モデルンといった著名どころに取り上げられています。今回の演奏もアンテルコンタンポランですね。

■2. Allein for ensemble (2018-2019)
 音密度の低い各楽器の反復とノイズの微妙なバランス、そして静空間。ここでもノイズ&空間音響を感じますね。今の時代の主流である事に違いないのですが、この方向ばかりですとどうしても類型性を感じてしまいます。

確かにここでは通常奏法の音色が主体ではありますが、所謂(いわゆる)動機や主題的な旋律は存在しませんから特殊奏法との差分しかありません。後半に音密度が上がって時折ポリフォニーになったりするのも良くあるパターンでしょう。
(Ensemble Intercontemporain, Matthias Pintscher [cond.])



エヴァ・ライター
(Eva Reiter, b.1976)
オーストリアの女性音楽家ですね。古楽器のリコーダーとヴィオラ・ダ・ガンバの奏者で、エレクトロニクスを駆使する現代音楽家でもあります。今回も本人参加で"Paetzold-flute"と言う変わった楽器が使われていますね。

■3. Wächter for double bass flutes and tube orchestra (2019)
 始まりはここでも上記2曲と同じで薄いノイズの様な、またはノイズの、静のロングローンです。そこに管楽器の音色や特殊奏法音、voiceが被って来ます。静の空間を意識させる、何処かで聴いた様な…

ところが "double bass flute" の低音反響や "Paetzold-flute" を使った面白さとvoiceを絡める中盤以降は異なった色合いを見せ始めます。音厚も高まって打楽器も表情が増し、新しい楽器選択を軸とした面白い流れになっています。voiceも旋法を感じる変化を見せて来ます。これは'あり'でしょうね。
(Michael Schmid [double bass flute], Eva Reiter & Susanne Fröhlich [Paetzold-flute], Deutscher Kammerchor, SWR Symphonieorchester, Tito Ceccherini [cond.])



アルベルト・ポサダス
(Alberto Posadas, b.1967)
マドリッドの音楽院で習ったスペインの現代音楽家です。二つの方向性があり、一つは数学をベースとしてフラクタル理論やトポロジー変換の様な変移性の技法を用いている事。もう一つはエレクトロアコースティックや空間音響系音楽で、IRCAMでも電子音楽を学んでいます。この経歴だけで欧州エクスペリメンタリズムと見事にわかりますね。

■4. Ojo del diablo [from Poética del espacio] for ensemble (2019)
 混沌系の空間音響でしょうか、"グワ〜ン"といった打楽器と金管の響から始まります。そしてトリル・トレモロが走りまくり頭の中を縦走し、楽器数が増えてカオスになりますね。落ち着きを見せてから再び大音響のクラスターになりますね。ポリフォニカルなのか微妙なラインです。大音響と静のコントラストで、何処か煌めきを感じさせる面白さがあります。

創造的斬新さは薄いかもしれませんが、方向性は好きですね。最後の等拍とポリフォニーからのパルスは上手いですね。煌めきを感じるのはカンブルランが振っているからかもしれません。
(Klangforum Wien, Sylvain Cambreling [cond.])



近年の主流である空間音響やノイズがメインになっています。安定期な前衛実験現代音楽でより刺激的な斬新さを味わいたい気分ですね。

3.などは特殊楽器とvoiceを主体に構成した面白さがあって期待できそうですし、4.は新しいポリフォニーを感じさせてくれてはいます。次回に期待?、ちなみに2020はCOVID-19のため中止になっていますが…




 ★試しにインスタレーション注目曲をYouTubeで観てみる?
  シモン・ステーン=アナセンの"TRIO für Orchester, Bigband, Chor und Video"です
  映像とarchive recordingsとのインスタレーションですね (CDには入っていません)
  TRIOとはオーケストラ、ビッグバンド、合唱団、が独立している意味だそうです
  映像にはチェリビダッケやデューク・エリントン達が出てきます


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方 

  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧

   ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ペトリス・ヴァスクス(Pēteris Vasks) の『遠き光 | ピアノ四重奏曲 | サマー・ダンス』の素晴らしさ!!



ペトリス・ヴァスクス (Pēteris Vasks, 1946/4/16 - )
ラトビアの現代音楽家 ペトリス・ヴァスクス(ペーテリス・ワスクスとも)は、リトアニアで学び初期はペンデレツキやルトスワフスキの影響があります。でも個性が確立後はラトビア民謡や和声を基に技法を使うようになりますね。またバプテスト教会の傾倒が強く宗教的な和声も特徴的です。クロノス弦楽四重奏団にも楽曲提供しています。[過去の紹介文流用です]



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧



Distant Light | Piano Quartet | Summer Dances
ワジム・グルズマン (Vadim Gluzman, vn)
ヴァスクスのヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリン・デュオ、ピアノ四重奏曲(vn, va, vc, pf)、の三曲ですね。と言うわけでvnのグルズマンが主役のアルバムです。全て弦楽奏曲ですが、デュオから室内楽、そして協奏曲とバランスも良いですね。

ヴァスクスの代表作 "遠き光" ですが、何故かこのところCDリリースも多く、コンサートで取り上げられる機会も増えていますね。5パート(3つのカデンツァを入れると8パート)ですが一楽章の様に演奏される弦楽奏オケの協奏曲で、同じラトビア出身のギドン・クレーメルに献呈されています。

演奏は1.がハンヌ・リントゥ指揮、フィンランド放送交響楽団になります。







1. Distant Light, Concerto for violin and string orchestra (1996-97)
極端に神経質な細いvnのアンダンテから入って静空間に澄んだ音を満たして行きます。#1カデンツァはアンダンテ延長線でグルズマンの鋭い音色のダブルストップが楽しめます。カンタービレは荒涼とした冬の凍った風景の様に透明感のある調性旋律で静、モッソでは舞曲的な激しいvnを聴かせてくれます。#2, #3カデンツァではカミソリの様なソロが味わえますね。#3カデンツァの最後は狂気の様な激しい混沌となり、最後はアンダンテに戻って静空間の澄んだ音色で納めます。

澄んだ透明感と舞曲的に激しいリズムを刻む二つのコントラストが素晴らしい楽曲です。それを澄んだ鋭い音色のグルズマンと透明感ある広がりを見せるオケが素晴らしいフィットを聴かせてくれます。今まで聴いたこの曲としては一番好みかもしれません。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ギドン・クレーメルのvnと手兵クレメラータ・バルディカで、
  哀愁と美しさの完成度です
  鋭い切れ味を味わいたければ本CDの方が良いかも



2. Summer Dances, for two violins (2017)
民族音楽和声を下敷きにした二つのvnがホモフォニーに、時折対位的に、繊細な動機を奏でます。時に静に、そして舞曲風に力強くと表現力豊かに弾き倒します。7パートに渡って素晴らしさに惹きつけられてしまいますね。#2vn(多分低音パート)にはSandis Šteinbergsが入っていますが、音色や奏法でとても相性が良さそうです。


3. Quartet for violin, viola, cello and piano (2001)
6パートのピアノ四重奏です。年代的には2.の16年前になりますが、出し入れの強さや広がりを強く感じますね。混沌まで包括し、IVでは調性の薄さを見せたりする懐の広さもあります。やや反復が濃い気はしますが、ここでも民族音楽和声がベースになっているのでヴァスクスらしさは変わりません。
変化率が高く素晴らしい楽曲と見事な演奏のフィットです。ラストのカミソリの様な薄く鋭いvnの音色も素晴らしいですね!!



ヴァスクスを聴くとやっぱりG.カンチェリを思い出してしまいますね。そして驚きのグルズマンの素晴らしいvnでした。リントゥ/フィンランド放送響との"遠き光"のフィッティングは最高ですね。

繊細で澄んだ美しい旋律はラトビア民族音楽が生かされていています。機能和声からの脱却の一つが無調だとすれば、もう一つはこの様な広義での"モード"と言う事になりますね。それを生かしたヴァスクスの楽曲と、グルズマン他演奏者の素晴らしいアルバムでオススメです!!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





プロフィール

kokoton

by kokoton
.


    


カレンダー
02 | 2021/03 | 04
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
ようこそ
カテゴリ
ありがとうございます