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ベルンハルト・ラング(Bernhard Lang) の「Die Sterne des Hungers, Monadologie VII」


ベルンハルト・ラング (Bernhard Lang, b.1957)
このブログではお馴染みのオーストリアの現代音楽家ですね。作風は徹底した反復による多様性現代音楽になりますね。かつては否定された音楽手法ですが、今の時代ならではになっているのがポスト・セリエルからの現代音楽の流れを感じさせてくれます。過去ログに紹介済みなので、このくらいで。



Die Sterne des Hungers, Monadologie VII
一曲目は、オーストリアの詩人クリスティーネ・ラヴァント(Christine Lavant)の3つの詩をベースにしています。その詩をソフト"Abulafia"を使って断片化して使っているそうです。この作品はラングの二つの活動の一つ"D/W"(Differenz / Wiederholung)の過程で生まれたとの事ですね。(もう一つの活動は次のMonadologieです)
残念なのはライナーノートに歌詞がない事です。

ラングが進める中心的な活動"モナドロジー(Monadologie)"シリーズは既存作品の再構築になっていますね。最近では Monadologie XXXIII がワーグナーのパルジファルを基にした「ParZeFool」としてリリースされたのが思い出されます。本作VIIは2009年と少々古くなりますが シェーンベルクの"室内交響曲 第2番"(1906-1940)を基にして、長期に渡る中断と楽風の変化プロセスを背景としているそうです。キーは"行き詰まり"? (よくわかりませんがw)
オーストリアの映画製作者マーティンアーノルド(Martin Arnold)に献呈されていますね。

演奏はお馴染みS.カンブルラン指揮、クラングフォルム・ウィーン、一曲目にザビーネ・ルッツェンベルガー(mez, Sabine Lutzenberger)が入ります。







1. Die Sterne de Hungers (2007)
  nach Texten von Christine Lavant
「飢餓の星」全7パートのヴォーカル入り室内楽です。入りから主動機の反復・変奏になっていますね。無調ですが、不協和音のキツイ機能和声音楽と言った感じでしょうか。その音の外れ方はいかにも欧エクスペリメンタリズム的ですね。表情変化はテンポの変化になります。part Iの器楽曲にある反復が強いアップテンポでは陶酔的な流れを感じ、楽器が増えると擬似的?ポリフォニーに聴こえます。そこは面白かったのですが、反面 歌曲には速い流れのパートが存在せず緩く長〜く感じてしまいますね。

part IIからMezが入りますが、ほとんどヴォーカリーズです。音的にも音量的にも楽器の一つの様な扱いになってて、跳躍の大きい声楽は古さを感じてしまいます。
変化に乏しく似たり寄ったりの印象と、voiceが室内楽に溶け込んで、声楽現代音楽の楽しさが感じられないのが残念です。


2. Monadologie VII ...for Arnold (2009)
「モナドロジー7」は5パートの室内楽です。徹底反復ですが、不安定な印象を濃くしていますね。混沌を濃くしているかもしれません。この曲は変化があるので楽しめますが、それでも基本に流れるパターンが全パートで似通っていて今ひとつワクワク感に欠ける気がします。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



今回は特殊奏法でもノイズでも空間音響でもない、不協和音反復の単純性がネガティブに感じてしまいました。それでもまた"Monadologie VII"の方が変化があって楽しめましたね。

面白のは同じ反復でもミニマルやポスト・ミニマルの印象が起きない事でしょうね、個人的に。



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ラインハルト・フックス(Reinhard Fuchs) の「Mania」欧エクスペリメンタリズム前衛音楽


ラインハルト・フックス (Reinhard Fuchs, 1974 - )
オーストリアの現代音楽家ですね。作曲はウィーン音楽大でM.ジャレルに師事しています。また米フロリダ・マイアミ大でB.ファーニホウ、M.リンドベルイ、K.フーパーのマスタークラスを受けています。いずれにしても欧州エクスペリメンタリズムの現代音楽家に学んでいる事に違いありませんね。


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"the palimpsest"(パリンプセプト)と言う技術*からのオリジナル技法、*古い書籍の消えた部分に新たに記述する事、でレイヤを構成させてそれを削除しながら繰り返すそうです。ライナーノートには手書きのスコア(五線譜ではない)が有ってとても興味深いですね。



Mania Klangforum Wien
15年間の活動での作品がアルバムになっていますね。アンサンブルから歌曲、そしてエレクトロニクスと方向性はまちまちですが楽風は一本です。

演奏はクラングフォールム・ヴィーン(創設者は現代音楽家のベアト・フラー)です。3.だけORF Radio-Symphonieorchester Wien w/ sop: Anna Maria Pammerです。指揮は1.がS.カンブルラン、2.がB.フラー、3.4.がJ.カリツケと言うお馴染みの顔ぶれですね。







1. Mania (2014)
  for ensemble and electronics
ノイズの様な特殊奏法はありません。暗い中に低音を中心とした楽器が蠢く感じです。尖った音や音塊も含めて楽器は関連して流れるので、ポリフォニカルではありますが無調混沌系のホモフォニーの様相ですね。エレクトロニクスの出番は少ないのではないでしょうか。'いかにも'的で安心・安定感の欧州前衛現代音楽です。


2. blue poles (2003)
  for large ensemble
蠢く様な暗く鬱な流れはフックスの基本の様ですね。ここではポリフォニーかホモフォニーか微妙な線上を流れて行きます。ポリリズムではないのでホモフォニーに感じるだけかもしれませんね。全ての音が一緒くたに束ねられた様な印象で、無調ですが突飛な音が無いので調性はコントロールされている感じです。(調号記述はありませんが)

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア付きです



3. Wo Angst auf Umhülle prallt (2001)
  for female voice and large orchestra
管弦楽の流れは上記二曲と同じ方向性です。そこに語りのvoiceが入ってきて、中盤以降はvoiceが混沌の音の中に追い込まれた狂気の様に表現されるシーンも出てきます。演出のあるモノローグが舞台で展開されればとても興味深いものを感じます。オペラ化されても面白そうな流れですね。


4. Descrittivi di stati d’animo di Didone (2004)
  for ensemble
基本は変わりませんが、静的空間が増えて音に繊細さが見受けられる流れになっています。その分、ありげな方向性にはなっていますが。
小声のvoiceも入ります。



蠢く様な暗く鬱な流れ、いかにも多様性の欧エクスペリメンタリズム前衛音楽ですね。

実は前衛の様相を見せながら調性感の強い流れで、前衛先端性は弱いかもしれません。パリンプセプト技法こそがフックスの存在価値になりそうです。この辺りから前衛音楽を聴くとイイかもしれませんね。




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デイヴィッド・ラング(David Lang) の歌劇「prisoner of the state」は現代の"フィデリオ"


デイヴィッド・ラング (David Lang, b.1957)
米現代音楽集団"Bang on a Can"(以下BOAC)創設者の一人D.ラングですね。(他二人はジュリア・ウルフとマイケル・ゴードン) 前回BOAC関係のCDインプレをしたので、これが出ているのを思い出しました。

BOAC関連は多々インプレしているのでD.ラングの紹介も含め割愛ですが、本ブログ超オススメの米現代音楽推進チャンネルの一つですね。

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prisoner of the state
Jaap van Zweden (cond.) | New York Philharmonic
ニューヨーク・フィルによる委嘱作品(オペラ)です。ベートーヴェンの"フィデリオ"の現代版で、現代に置換えてトレースされているのでわかりやすいですね。メインキャスト四人(下記)の絡みに絞られてはいますが、一度あらすじを復習してから聴くとbetterです。

フロレスタン(囚人)はそのまま"The Prisoner"であり、妻のレオノーレ(男装してフィデリオ)はもちろん“The Assistant”(助手)に、ピツァロ(刑務所長)は“The Governor”(知事)に振り分けられます。下記17のパートの楽曲もそれぞれフィデリオに相当していますね。処々でフィデリオからの引用もあるそうですが、序曲しか浮かばないのでわからないかも…w

The Prisonerのモデルはグアンタナモ収容所に罪状不明のまま拘置され "地獄からの手記" を書いた政治犯モハメドゥ・スラヒ(Mohamedou Slahi)ではないかとの話もある様です。

【主な配役】
 ・The Assistant (sop):Julie Mathevet [ジュリー・マトヴェ]
 ・The Governor (ten):Alan Oke [アラン・オーク]
 ・The Prisoner (bar):Jarrett Ott [ジャレット・オット]
 ・The Jailer (bas-bar):Eric Owens [エリック・オーウェンズ]

【演奏】
 ・ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮、ニューヨーク・フィル

【収録】2019年6月6-8日







1. I was a woman - 2. Prisoners! wake up! - 3. I stole a loaf of bread - 4. where is the boy? - 5. gold - 6. there is one thing - 7. prison song - 8. entrance of the governor - 9. better to be feared - 10. o what desire - 11. uhhh. So dark - 12. how cold it is - 13. he’s moving - 14. return of the governor - 15. stand back - 16. what is one man? - 17. waiting for the inspectors

はじめにコメントするなら、これは前衛音楽ではないと言う事ですね。機能和声の音楽ですがストーリー性を強く打ち出している情感の流れが明確です。処々でミニマルの楽風は覗きますが殊更のミニマル音楽を出さないのは嬉しいです。

一曲目の"I was a woman"から美しいソプラノ・ソロのバラードになっていて気持ちを引きつけられます。通して英語もスローに表現されてわかり易いので嬉しいですね。音楽的流れはクラシカルと言うよりもミュージカル的に感じますね。
"7. prison song"の様な楽団員のアカペラや、"8. entrance of the governor"の三重唱、聖歌風の"10. o what desire"も配されてヴァリエーション効果も盛り込まれています。個人的ベスト・トラックはThe PrisonerのJ.オットが歌う"11. uhhh. So dark"ですね。

配役的にはイタリア・オペラの様なアリアはありませんから、突出した個々のキャラクターを出す事はありません。またYouTubeで見られる様に、ステージ上にオケが配置される事はあっても舞台演出的も前衛ではありません。N.Y.P.も残響を生かした良い鳴りの演奏ですね。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  舞台ダイジェスト他が観られます



音楽的に前衛ではありません。でも音楽が作り出す雰囲気がミュージカル風に現代版フィデリオを作り上げていますね。これこそが米現代オペラという気がします。

主張を強く感じられます。BOACはJ.ウルフをはじめ米史の社会問題をテーマに取り上げる方向性を強めている感じですね。素晴らしい作品で全編観たいですね👏👏




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Bang on a Can と エイス・ブラックバード(Eighth Blackbird) のコラボレーション『Singing in the Dead of Night』今の米現代音楽


Bang on a Can (founded 1987)
N.Y.を中心に活躍するこのブログで超一押しの米国現代音楽集団の "Bang on a Can"(以下BOAC) ですね。今回はその創設者三人が楽曲を提供しています。紹介は過去ログにありますので割愛です。


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今回はエイス・ブラックバードからの委嘱なので、BOACのアンサンブル Bang on a Can All-Starsの演奏ではありませんね。また、この作品はBOACと振付家スーザン・マーシャル(Susan Marshall)との初コラボの作品で、舞台ではパフォーマンスも楽しめる"特殊な音作り"がありそうです。



Singing in the Dead of Night Eighth Blackbird
アルバム・タイトルの冒頭に"Blackbird"を付けると、すぐにビートルズのホワイトアルバムに入っていた有名曲の冒頭の歌詞だとわかります。当時はこの曲をギター一本で弾いたものですw

と言う事でタイトルは全曲その歌詞から取られています。楽曲的には全く関係なく、今回アルバムタイトル曲を作ったJ.ウルフの不眠症での音楽イメージからだそうです。なるほど、歌詞が浮かぶとニヤッとしてしまいますね。D.ラングの3パート作品の間にM.ゴードンとJ.ウルフの楽曲が挟まれる並びになっています。

ちなみにエイス・ブラックバードはシカゴを拠点とする米現代音楽セクステットです。こちらも本ブログご贔屓、名前の由来等々過去ログにありますので紹介は割愛ですが。(以前はネットにエイ""・ブラックバードとある事が多かったのですが、やっとこう書かれる様になりましたね)







1. These broken wings, Part 1 [David Lang]
プチプチと弾ける様な音列的な印象の流れです。音の跳躍もありますが、もちろん音列配置の訳はありません。反復のホモフォニーなのですが、陶酔的な混沌の印象が残りますね。サウンド的にはいかにもBOAC的です。


2. The light of the dark [Michael Gordon]
一転してvcの濃厚なグリッサンドをベースラインにして、そこにvnや管楽器のキラキラした旋律が絡んできます。高速アルペジオはモノフォニーで奏でられる事もあって、ここでも陶酔的な混沌イメージです。後半はポリフォニーの様相も見せますね。


3. These broken wings, Part 2 (Passacaille) [David Lang]
邦楽の笛の様な静の音色、そこに楽器不明の打撃音が入ります。これはステージで何かやっています。後半はスロー音階で管弦がゆっくりと歩む中に、ここでも不明の打撃音… これはパフォーマンスでしょうからステージが見えないとダメですね。打撃音はエレクトロニクス処理もされている様です。静と打音の面白さです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Ensemble ConnectのLiveステージです。打撃音がわかります



4. Singing in the dead of night [Julia Wolfe]
等拍リズムを刻むpf、そこに各楽器がロングトーンでポリフォニカルに絡んできます。大きなパウゼを挟みながら少しづつ音厚を上げて行きます。途中でサラサラと言うノイズが入ってきます。スーザン・マーシャルが仕込んだパフォーマンスでしょう。(サンドペーパーか砂かのはず…w) そのシーンではpfはストップして静的空間になりますね。#3と類型性が強いです。その後J.ウルフにしては珍しい即興的なパート(あくまで反復主体です)が現れるので、ソナタか複合三部形式かの様な構成感がありますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ノイズを出している時にpfがお休みの理由がわかりますね
  このパフォーマンスには他にもヴァリエーションがある様です



5. These broken wings, Part 3 (Learn to Fly) [David Lang]
明らかなポスト・ミニマルのサウンドに回帰します。明確に刻まれるリズムが印象的です。一番シンプルで、ここではパフォーマンスはない様です。



もちろんポスト・ミニマルで三者三様ですが、陶酔的な混沌の今の米現代音楽になっています。

残念なのはパフォーマンスが明らかにあるのが分かるので、それが視覚に反映しないもどかしさが残る事ですね。




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エレーヌ・コルレット(Hélène Collerette)のヴァイオリン・ソロ集『Norigine』カナダと北欧の現代音楽


Norigine エレーヌ・コルレット (vn. Hélène Collerette)
カナダ(ケベック)出身のフランス人ヴァイオリニスト、コルレットの無伴奏ヴァイオリンソロ集です。フランス国立管弦楽団のコンサート・ミストレスを務めるそうですね。

とは言え全く知見は無く、興味の対象は演奏者ではなく作曲者の方になり恐縮です。








ジャック・エテュ
(Jacques Hétu, 1938/8/8 - 2010/2/9)
カナダの現代音楽家でモントリオール音楽院で習い、タングルウッドでも学んでいますね。フランスでH.デュティユーとO.メシアンというビッグネームにも師事しています。

Variations Op.11
 主題と5つの変奏、6パートの楽曲です。主奏から調性を軸足にした神経質・幽玄な旋律が組み合わされています。そこに切れ味の良いコルレットのヴァイオリンが被って、力感を見せながらも繊細さがあって素晴らしいですね。
基本は速い流れで微妙なダブルストップや技巧パートもあり、ヴァイオリニストが好みそうです。この後の曲もそうなのですが…



スヴァンテ・ヘンリソン
(Svante Henryson, 1963/10/22 - )
スウェーデンの現代音楽家で、今回一番の注目になります。チェロとコントラバス奏者ですが、ヘヴィ・メタルとジャズの活動をしていますね。オスロ・フィルの首席コントラバス奏者でもありました。

Sonata For Solo Violin
 基本は調性の薄さを感じるレベルになり無調無拍の混沌ではありません。基本はスローな幽玄さで、所謂(いわゆる)北欧らしい風景感を感じるかもしれませんね。もちろん高速技巧パートもあり聴き応え十分です。主旋律の変奏と反復を感じますから、無理やり言うならポストビヨンド・ミニマルの方向性w。



エサ=ペッカ・サロネン
(Esa-Pekka Salonen, 1958/6/30 - )
フィンランドの指揮者で現代音楽家ですね。もちろん紹介文は割愛ですw

Lachen Verlernt
 繊細幽玄で調性はよりいっそう薄くなります。スコアを見ないと無調かどうかわからない感じですね。もちろん旋律感は明確で、音色を細く そして太くと表現を変化させています。ここでもコルレットの表現力が生きていますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  teaserで、サロネンを前に弾いています。CDの方がキレキレですね




セルジュ・アルキュリ
(Serge Arcuri, 1954/6/10 - )
カナダの現代音楽家で、モントリオール音楽院で作曲とアナリーゼを学んでいますね。またモントリオール大では電子音楽も習っています。

Soliloque 1
 繊細で幽玄な楽曲です。今までの楽曲も同じ傾向が強く、またこのパターン?!的に感じてしまいます。楽曲も演奏も良いのですが、流石にここまで並べられると…



カール・ニールセン
(Carl Nielsen, 1865/6/9 - 1931/10/3)
言わずと知れたデンマークの音楽家ですから、紹介割愛です。

Praeludium Und Thema Mit Variationen Op.48
 ここで気づくのは、幽玄繊細さは既にニールセンが作っていたという事実の再確認ですね。ここまでの四人の楽曲の傾向の元にあります。大きな違いはベースにあるのが機能和声である事でしょう。北欧的な後期ロマン派に、幽玄な調性の薄さをスパイスにした音楽ですね。表情も一番付いて楽しめます。ビッグネームは伊達では無いという事ですね。



予想以上にエレーヌ・コルレットのvnが良かったですね。力強さと繊細さを合わせて音で表現してくれるのは魅力です。

楽曲は前衛系ではなく、今の時代らしい調性の薄さを生かした幽玄さを並べた感じです。残念なのは似た様な楽曲ばかりで、ラスト一曲を聴けばそれで良かった?!



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エリッキ=スヴェン・トゥール(Erkki-Sven Tüür) の『Mythos』エストニア現代音楽


エリッキ=スヴェン・トゥール (Erkki-Sven Tüür, b.1959)
エリッキ=スヴェン・トゥールはエストニアの現代音楽家でタリン音楽院で習い、レポ・スメラにも師事しています。技法的にはミニマル・音響解析・等を使っているそうです。興味深いのは同時期にロック・グループ"In Spe"での活動がある事で、そこがポイントになり楽風にも影響を与えていれば面白そうですね。(以上、前回インプレ時と同文になります)



Mythos Paavo Järvi | Estonian Festival Orchestra
同じエストニアの指揮者パーヴォ・ヤルヴィに献呈された、神話や伝承を意味する"ミトス"をタイトルとする交響曲第9番をメインにしたアルバムですね。演奏はもちろんパーヴォ指揮で、エストニア祝祭管弦楽団になります。

P.ヤルヴィは、N響の首席指揮者(2015-)になる以前は好きな指揮者の一人だったのですが、近年はコンサートも行っていませんねぇ。ヤルヴィ家の三人の指揮者はそれぞれタイプが異なって面白いですね。個人的には弟のクリスチャン・ヤルヴィが好きです。







1. Symphony No. 9 "Mythos" (2018)
第一印象はドローン、アンビエント、エレクトリカ、的な空間音響系ですね。蠢く弦音が支配して管楽器ロングトーンの絡み合いが低く垂れ込めます。音色は澄んだ高音のパートや煌めくパートもあり、気配が繊細になったりもします。後半はポスト・ミニマル的ポリフォニーで、強い変奏・反復になりますが、それでもドミナントは空間の音です。ホールで聴いたら面白そうですね。


2. Incantation of Tempest (2015)
4'強の短い曲です。ここでも反復と低音の響きでポスト・ミニマルの楽曲になっています。音飽和的に鳴りが渦巻くのと、陶酔的な小刻みなリズムが印象的ですね。空間音響+ポスト・ミニマルです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2016年エストニアのPärnu Music Festivalからです



3. Sow the Wind... (2015)
サチュラシオンの傾向もあるのでしょうか、ここでも音の密度の濃さが印象的ですね。唸る低音をバックに、vnのソロパートが出現したりと異なる流れも加わります。もちろん"空間音響+ポスト・ミニマル"が基本です。



基本的には調性音楽ですね。そして明確なのは音密度の高い"空間音響+ポスト・ミニマル"の流れでしょう。コンサート受けしそうな今の時代のクラシック音楽ですね。

欧エクスペリメンタリズムとは方向性が異なるでしょう。エレクトリカを感じるのはトゥールのバックボーンがあるからでしょうか?!



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近現代音楽家の「オーボエ協奏曲集」マルティヌー | B.A.ツィンマーマン | R.シュトラウス


Oboe Concertos シュテファン・シーリ (ob, Stefan Schilli)
ドイツ人オーボエ奏者のシュテファン・シーリをフィーチャーしたオーボエ協奏曲集ですが、ポイントはそこではありませんw

三人の近現代の音楽家の20世紀中盤の作品という事ですね。この時代は欧エクスペリメンタリズムの前衛真っ只中でした。

演奏は昨年11月に亡くなられたマリス・ヤンソンス指揮/バイエルン放送響の豪華オケ。実はそこに問題があったかもしれません。ちなみにシーリは同オケの首席奏者です。








ボフスラフ・マルティヌー
(Bohuslav Martinů, 1890-1959)
チェコの音楽家で、フランス音楽に傾倒した初期、ナチスから逃れ米活動の中期、欧州に戻って前衛と向き合う後期ですね。とは言っても新古典主義になります。

Concerto for Oboe (1955)
 欧州に戻ってからの後期晩年の作品になります。得意とする技巧性の高い協奏曲ですね。
いきなり民族和声的な軽快なリズムで入って来て驚きますね。obはオケの序奏が終わると澄んだ音色で牧歌的な印象です。第二楽章は緩徐で幽玄な流れになり、仏印象派を元にした様な流れを感じます。カデンツァと言っても良いpfとのDuoではよりその感が強いですね。第三楽章はいかにもアレグロ的にシャキッとしています。obも流れる様な旋律を奏でます。カデンツァは叙情的な中に技巧を見せる様になっていますね。
新古典主義とは言え、洒脱さは仏印象派を感じますね。



ベルント・アロイス・ツィンマーマン
(Bernd Alois Zimmermann, 1918-1970)
このブログでは一押しの、ちょっと古い前衛現代音楽家です。作風変化は過去のインプレにまとめてあります。

Concerto for Oboe (1952)
 セリエルの波に飲み込まれた中期の作品になります。この曲ですとH.ホリガーの名演がありますね。
パッと聴くと新古典主義の印象が強く、調性軸足的な流れですね。この時期・時代のツィンマーマンはセリエルを用いていますが、ヴェーベルンの様な使い方ではないので日和見に聴こえたかもしれません。それでもobは技巧的な流れが強い事がハッキリわかりますね。中間楽章の緩徐も緊張感が強く、出し入れも刺激的です。ラストのカデンツァも光りますね。コンサートでもう少し採用されても良さそうな気がします。
やっぱり20年生まれるのが早かったですね!

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  第一楽章です。obはH.ホリガー、ギーレン指揮・SWF SO Baden-Badenです
  こちらの方がオケ共に尖っていて、明確に前衛性があります




リヒャルト・シュトラウス
(Richard Strauss, 1864-1949)
言わずもがなのR.シュトラウスですから紹介などもちろん割愛です。

Concerto for Oboe (1945)
 前衛の時代を迎え、シュトラウス本人も古い音楽と言った晩年の作品です。
まず感じるのは入りのobの美しいロマン派の香りですね。前期ロマン派と言っても良い様な古典の響さえ感じます。残念なのは、交響詩やオペラのシュトラウスらしいストーリー性や抑揚が感じられません。昔帰りしている感じ?!でしょうか。
不協和音の様な調性の薄さも存在しないロマン派的流れは、今聴いても少し古く感じるかもしれません。



1940-50年代という前衛時代を背景にすると、いずれも時代の流れに乗れない楽風だったのかも知れません。そんな感慨の中で聴くのも一興かと思わせてくれる三曲ですね。

S.シーリのobは繊細さの音色を強く感じますね。オーケストラは演奏の流れ自体が流麗になっていて、前衛性を避けている感じもします。(ツィンマーマンのYouTubeを聴いてもらうと前衛性を感じます)



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