マグヌス・グランベルイ(Magnus Granberg) の How Deep is the Ocean, How High is the Sky? を聴く

スウェーデンの現代音楽家マグヌス・グランベルイ(グランバーグとも, Magnus Granberg, 1974 - )は室内楽系を得意として、即興系のパフォーマーでもありますね。若くしてサキソフォニストでエーテボリやニューヨークでも活動していたそうです。
その後、ensemble "Skogen" を結成して自らの音楽の演奏活動に入っています。Skogenは11人編成でエレクトロニクスも含んだり、日本人メンバーによる和楽器"笙(sho)"の採用もありますね。

本アルバムは10人編成で、古楽器やプリペイド・ピアノ、エレクトロニクスの混成音楽となります。スコアは全てのパートを厳密に譜面化してはおらず、裁量の余地を残している様です。

How Deep is the Ocean, How High is the Sky? / Magnus Granberg
Magnus-Granberg-HowDeep.jpg
(英音響系インディペンデント・レーベルanother timbreからリリースされています)
  Magnus Granberg - prepared piano, composition
  Cyril Bondi - objects, percussion
  d’incise - objects, electronics
  Teresa Hackel - bass recorder
  Wolfgang Hillemann - chitarrone
  Anna Lindal - baroque violin
  Hans Jürg Meier - bass recorder
  Anna-Kaisa Meklin - viola da gamba
  Eric Ruffing - analogue synthesiser
  Christoph Schiller - spinet, objects

1曲1パートの約1時間で、音の密集度の低い瞑想感、ノイズ(特殊奏法、電子ノイズ)、の空間音響系の現代音楽です。旋律や動機、それが無調であれ、はほぼ存在しません。当然ミニマルの様な反復やポリフォニーも存在しません。またサウンドの強弱は薄く、テンポ変化もほぼ無いドローン風です。
それが後半近くで音密度が少し上がり、動機の様な流れがカノンの様相を呈しますね。その後ノイズを強めにして音を少し強めますが、最後は元の流れに回帰して終わります。
作曲技法が不明なのですが、即興性の余地を残しているので偶然性の前衛でもありますね。

試しにYouTubeで聴いてみる
 お試しver.の6'です




ドローンではないのですが、その様なサウンド傾向ですから静かにかけておくのに最適です。音に浸る、そんな音楽ですね。全体の構成感もあって悪くありません。


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ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze) の交響曲第9番を聴く

先日 第1番(1947年)と第6番(1971年)を紹介したドイツの現代音楽家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze, 1926/7/1 - 2012/10/27) の後期の交響曲である第9番(1997年)を聴きましょう。
略歴等はその際の紹介にありますので、よろしければご参考に。
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze) の交響曲第1番・第6番を聴く

ヘンツェは10の交響曲を作っています。1番6番は三楽章形式でしたが、ここでは反ナチズムの独小説家アンナ・ゼーガース(Anna Seghers) の「第七の十字架, The Seventh Cross」 7人の囚人の脱獄の話, を元にドイツ学者で詩人のハンス-ウルリッヒ・トライヒェル(Hans-Ulrich Treichel) がテキスト化して7パートの合唱付の交響曲になっています。(ヘンツェの政治的背景やアンチ・ファシズムの話には、ここでは触れません。歌詞の内容についても同様です)

初演は1997年のベルリン・フェスティバル(同委嘱)で、インゴ・メッツマッハー(Ingo Metzmacher)指揮 ベルリンフィル(BPO)で行われています。いかにヘンツェが大物だったかわかりますね。

WEAGO盤なので演奏は前回紹介と同じ、マレク・ヤノフスキ(Marek Janowski)指揮、ベルリン放送交響楽団(Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin) に合唱のベルリン放送合唱団(Rundfunkchor Berlin)が入ります。

sinfonia n.9 / Hans Werner Henze
1.Die Flucht (Escape) - 2.Bei den Toten (Among the Dead) - 3.Bericht der Verfolger (The Persecutors' Report) - 4.Der Platane spricht (The Plane Tree Speaks) - 5.Der Sturz (The Fall) - 6.Nachts in Dom (Night in the Cathedral) - 7.Die Rettung (The Rescue)
 オペラやバレエを得意とするヘンツェらしさが楽しめます。タイトルロールのないヘンツェの現代音楽オペラという感じですね。(パート6では宗教音楽的でもあります)
静音と吐出するクラスター音になりますが、極端な音の跳躍の繰り返しや即興的混沌はありません。後年のヘンツェらしく明瞭な旋律は減っています。そこにvocalの旋律が乗る感じになります。オケとのポリフォニーの様相を見せます。時折見せる美しい旋律、それもヘンツェですね。
パート毎に楽風は、雰囲気ですが、変わりますが基本の構成感は同じです。いずれ標題音楽になりますから、歌詞が必須ですが英訳付です。

試しにYouTubeで聴いてみる?
 多分メインとなる、パート6になります。



vocalパートの占める存在比率が、音楽・内容ともに高く交響曲と言う感じではありませんね。表題音楽であり、自由形式の単一楽章と考え合わせると交響詩の方がぴったりでしょう。
前回紹介の交響曲二曲と合わせて聴くと、CD2枚でヘンツェの音世界が垣間見えると思います。




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パーヴォ・ヤルヴィ/ HNK交響楽団で聴く「マーラー交響曲第6番 悲劇的」NHKプレミアムシアター

パーヴォ・ヤルヴィ(Paavo Järvi)とN響の本年2017年2月28日のベルリン・フィルハーモニーでの演奏で、NHKプレミアムシアターの録画になります。

2015年3月6日来日「火の鳥」以来2年ぶり、明日のエサ=ペッカ・サロネン(Esa-Pekka Salonen) w/ フィルハーモニア管弦楽団の同曲を前におさらいですね。

マーラー交響曲第6番 「悲劇的」 イ短調
第一楽章
 行進曲の第一主題は緩めに入ります。第一主題の流れは抑え気味で、続くアルマの主題である第二主題も控えめ。反復後の展開部も同様で牧歌調の流れはちょっと間延び感、でも再現部でこの曲らしい激しさと歯切れよさが感じられます。
全体的にややモッタリですが、再現部が締りがあっていい感じですね。 実はここから目を覚ますんですね。

第二楽章
 標準的にスケルツォを採用です。主部は第一楽章再現部からの良い流れで、第一トリオは牧歌的のどかさにもキレがあります。回帰する主部では重さを増してきますね。第一楽章からのつながり感がいいです。

第三楽章
 三部形式の始まり第一主題は穏やかな中にもうねりの様な波を見せ、暗くスロー。第2主題も隠的です。中間部は穏やかに入り山場向けて盛り上げていきます。緩徐楽章的な位置づけですが、切れ味があります。

第四楽章
 間を十分にとった序章から入り、提示部第一主題行進曲は華やか切れ味よく、第二主題は軽やかに入ります。序章再現からカウベルの展開部は静かに進みながら締まった迫力で山場を迎え、そのまま突き進みます。再度序章再現する再現部では、スローパートをうまく使いながらスピード感に変化を与えて緊張感のある良い流れを作りました。もちろんラストのトゥッティは見事に決まります。
ちなみにハンマーは標準的な二発でした。



やっぱり管楽器が弱く全体もっさりかな…という入りでしたが、第一楽章後半の再現部からは目を覚まして切れ味ある迫力の演奏でした。持っているN響のイメージと違いましたね。
父ネーメの派手さとは違うパーヴォ・ヤルヴィのタクト。このマーラー6番ではコントラストでしょうか、アゴーギクと出し入れを効果的に使った締りと緊張感のある演奏になりました。ベルリンのオーディエンスの反応も悪くはありませんでしたね。


さて、明日のサロネン/ フィルハーモニア管はどんなマーラー6番を聴かせてくれるでしょうか、揺さぶりの強いイメージのあるサロネンですから楽しみです。


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シェーンベルクの 浄夜 (Verklarte Nacht) を 個性派で聴き比べ:アルデッティ、ストコフスキー、マデルナ

言わずと知れたアルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg, 1874/9/13 - 1951/7/13)の初期、後期ロマン派時代の名曲「浄夜」(浄められた夜, Verklärte Nacht Op.4) です。

原作は独詩人リヒャルト・デーメル(Richard Dehmel)の同名の「精神的・形而上学的なエロスによる救済願望」を表す詩で、単一楽章5パートからなっています。
半音階技法や不規則な楽節(小節)が用いられている様ですが情感的で美しい後期ロマン派作品に違いなく、その後の無調〜十二音技法に至る現代前衛音楽を切り開く気配は見えませんね。

コンサートでもよく演奏されますし、今までも超有名盤のカラヤンとラサール そして好きなツェートマイアー(Thomas Zehetmair)を紹介しています。
他にも所有CDはありますが、ここは三人の個性派を揃えて聴き比べて見ましょう。



アルデッティ四重奏団
前衛現代音楽四重奏団の雄 アーヴィン・アルデッティ(Irvine Arditti)率いる Arditti Quartetによる演奏です。弦楽六重奏曲なので+2名(ヴィオラ、チェロ)を入れています。
 美しさよりも濃厚で刺激的なエロスを感じます。そういう意味ではこの後の作品「ペレアスとメリザンド」に似た気配を感じさせてくれる演奏です。(特にパート3までは) 各弦楽器が個別の表情を強く現していて、そこにディナーミクとアゴーギク振られています。感情の起伏が強く ストーリー性を感じる演奏ですね。
美しいパート4でも、オーケストラver.(例えばカラヤンBPO)の様な甘美さは全くありません。硬派の演奏です。


ストコフスキー
w/ レオポルド・ストコフスキー交響楽団
米で活躍した個性派指揮者ストコフスキーによるオケ編成、1957年演奏です。実は弦楽合奏版ではなく、弦楽六重奏曲をストコフスキーが編曲したver.になります。(録音当時はヒューストン響の指揮者) ストコフスキーは数多くの米国初演をこなし、また独自の編曲版を作っていますね。
このCDがamazonで見つからないのが不思議ですが、古い事と新星堂企画盤だからでしょうか。
VerklarteNacht-LeopoldStokowski.jpg
 全体の流れに不自然さは全くなく、スットコストコフスキー節は感じられません。細かなヴィブラート等のほどはよくわかりませんが、クセのある響きはありませんね。パート4からの美しさもナチュラルで、例えばマーラー5のアダージェットの様な甘美さではありません。素晴らしいのはパート5、入りからラストに向けての持って行き方ですね。澄んだ美しさにグッときます
編曲も含めてあまりにスマートな展開が意外ですが、"どうだ参ったか!!?" の裏をかかれたという意味では流石のストコフスキーですw 古い録音ですが音は悪くありません。(録音に関してストコフスキーは先見性がありましたね)


マデルナ
w/ Sinfonieorchester des Südwestfunks Baden-Baden
個性派指揮者といえば、このブログではお馴染み ブルーノ・マデルナ(Bruno Maderna, 1920/4/21 - 1973/11/13)でしょう。現代音楽家としても活躍は素晴らしく、kokotonPAPAご贔屓の音楽家です。指揮はシェルヘンに師事しているので強烈です。
レア盤なので入手は難しいかも知れませんね。「ペレアスとメリザンド」他もカップリングされたシェーンベルク曲2CDですからマデルナ・ファンなら必携?! ただし1960年mono録音で、音はARKADIAですから劣悪w
VerklarteNacht-BrunoMaderna-ARKADIA.jpg
 強烈に濃い味です。例によってアゴーギクとディナーミクは強烈。ただ音の強弱だけでなく、そこに微妙なアゴーギクを入れ込み感情の爆発を見せてくれます。静的パートは緩やかに、テンポアップして強音パートは揺さぶり強く、息つく暇を与えません。
それでもパート4〜5で見せる美しさは、この曲の持つ後期ロマン派譜面のなせる技でしょう。激情と静的美しさのバランス、その強烈なコントラストがマデルナですね



個性派の演奏は面白いですね。感情が剥き出しの様なアルデッティ、予想を裏切る展開の独自編曲ストコフスキー、極端な揺さぶりのマデルナ。
刺激的なアルデッティも大好きですが、個人的には何と言ってもマデルナの醸し出す強烈な激情さですね。



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カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho) の Trios を聴く

前回に続きフィンランドの女性現代音楽家 カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho, 1952/10/14 - )、好きな現代音楽家の一人です。
印象は物静かな大女(失礼!!)、サーリアホの室内楽集です。前回紹介の「Let The Wind Speak」はフルートをフィーチャーしたソロ、デュオ曲集でしたが、今回はタイトル通り三重奏曲のアルバムになりますね。

演奏は以下です。
 ・Alto Flute – Mikael Helasvuo
 ・Cello – Anssi Karttunen
 ・Percussion – Florent Jodelet
 ・Piano – Tuija Hakkila
 ・Soprano Vocals – Pia Freund
 ・Viola – Steven Dann
 ・Violin – Ernst Kovacic

Trios / Kaija Saariaho

Mirage, for soprano, cello & piano (2007年 Chamber version)
女性自身を歌うTextはメキシコ人シャーマンの祈祷師、Maria Sabinaのトランス状態の言葉を元にしているそうです。
この年代のサーリアホらしい楽風で、チェロとピアノは主従の関係から対位的位置づけになりポリフォニカルです。トリル&トレモロの反復は、その旋律と響で空間音響系音楽に感じられます。激情性も絡み、面白いですね。もちろん一時期の調性感はなく無調です。
オーケストラ版ではピアノがオケに変わります。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ちなみにオーケストラ版はこちら



Cloud Trio, for violin, viola & cello (2009年)
1. Calmo, meditato, 2. Sempre dolce, ma energico, sempre a tempo, 3. Sempre energico, 4. Tranquillo ma sempre molto espressivo
弦楽三重奏曲でノイズ系になります。グリッサンド、トリル、反復が基本で "ギロギロギロ..." 系です。三つの楽器は対位的であったり主従(旋律vs伴奏)であったり、曲風は幻想的であったり早いペースであったりと様々です。

Cendres, for alto flute, cello & piano (1998年)
唯一の20世紀作品で得意のフルートが入ります。基本はノイズ系でポリフォニー、静的な流れの混沌無調の中に旋律や刺激が挟まれます。サーリアホらしい作品と言う感じがしますね。好きなパターンです

 ★試しにYouTubeで観てみる?


Je sens un deuxième coeur, for viola, cello & piano (2003年)
1. Je dévoile ma peau, 2. Ouvre-moi, vite!, 3. Dans le rêve, elle l'attendait, 4. Il faut que j'entre, 5. Je sens un deuxième coeur qui bat tout près du mien
ノイズ系ピアノ三重奏曲です。基本的な構成は一つ前の「Cendres」似ていてバリエーションは広く表情変化が楽しめますね。ただ基本に流れるのは静的ではなく、part.2や4の様な徹底した反復クラスターの強烈さを見せてくれるのが特徴的です。

Serenatas, for percussion, cello & piano (2008年)
1.Delicato, 2.Agitato, 3.Dolce, 4.Languido, 5.Misterioso
パーカッションが入る事で色彩鮮やかになりますね。反復強音パートもあり、前曲の進化系的な音楽です。鍵盤打楽器を駆使していますが、現代音楽にマッチしていると思います。



電子音楽から調性感へ、そしてサーリアホが無調に回帰?した混沌の中に強音パートや旋律が存在する今の音楽が楽しめますね。
欧州エクスペリメンタリズムを楽しむなら、この辺から聴き始めるのも"あり"かと思いますね。



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カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho) の Let The Wind Speak を聴く

このブログでもお馴染みの女性現代音楽家、カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho, 1952/10/14 - )は、フィンランドらしからぬ欧エクスペリメンタリズム系ですね。(過去記事で紹介済みです)

2015年来日時のカリ・クリーク(fl)によるフルート協奏曲は印象深かったですね。フルート現代曲は彼女の得意とする分野であり、このアルバムも1982年コラボから付合いの長いカミラ・ホイテンガ(Camilla Hoitenga, fl)をフィーチャーしたフルート曲集になります。

他演奏者は楽曲により以下のメンバーです。
 アンッシ・カルットゥネン,Anssi Karttunen (cello) - 2, 8, 9, 11
 ダニエル・ベルチャー,Daniel Belcher (bariton) - 4, 5, 6
 エロイーズ・ドトリー,Héloïse Dautry (harp) - 1
 ダ・カメラ・オブ・ヒューストン,Da Camera of Houston - 4, 5, 6

Let The Wind Speak / Kaija Saariaho

01. Tocar (2010年)
ハープとのデュオですね。独特な和声、日本的?、を感じる曲で旋律が存在します。特殊奏法は感じませんが、フルート:主、ハープ:従 の関係が成立ち、フルートは和笛の様に流れてハープはオブリガート的です。

02. Mirrors I (1997年)
パートI, II, III が分割されて収録されているチェロとのデュオです。ここでも近年につながるサーリアホらしさが明確ですね。旋律の存在(フルート)と伴奏(チェロ)、そのせめぎ合いです。ややノイズ風でチェロはグリッサンドを多用します。

03. Couleurs du vent (1998年)
フルートのソロです。旋律は01ほど民族和声ではありませんが、その方向性です。ここでも実は伴奏があり、ホイテンガの吹きながらの呟きが入ります。テクニカルでスピード感と鋭利性が感じられますね。

04-06. Sombre: I - Canto CXVIII, Sombre: II - Canto CXX, Sombre: III - Fragment (2012年)
バリトンとアンサンブル(ダブルベース, ハープ, パーカッション)、そしてバス・フルートの曲で世界初録音。Da Camera Society of Houston 委嘱作品になります。Textは米詩人エズラ・パウンド(Ezra Pound)のCantosからになり、このアルバムでは最近年曲です。
音の響を生かした音響系で今のサーリアホらしい楽曲です。旋律と主従の関係から、空間音響系に推移しています。ドローン音に支配される様な単純な響ではなく、旋律と各楽器の音色や響の組合せで成立させていますね。とても興味深いサウンドです。
奏法や歌詞はこちらから確認する事ができます。(チェスター出版社のサンプルpdfです)

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2013年2月24日の世界初演の様子です。演奏はもちろんDa Camera of Houstonですね。


07. Dolce tormento (2004年)
フルートのソロでここでも呟きが入ります。旋律はより機能調性感が強まります。

08. Mirrors III (1997年)
part II の前に III がきます。基本スタンスは02の I と同じです。

09. Oi Kuu (1990年)
チェロとのデュオです。"Mirrors"との相違は電子処理がある事でしょう。その分音響系音楽であり、面白さは伝わりますね。

10. Laconisme de l'aile (1982年)
フルートのソロで、ここでも呟き語りありです。なにやら特殊奏法が入っていますが、旋律は機能調性的で透明感のある先鋭的幻想美です。

11. Mirrors II (1997年)
Mirrors の II です。同じ曲想になりますね。デュオでライヴ受けしそうな楽曲です。



近年に至るこの年代間のサーリアホの楽風変化、エレクトロニクス - 旋律と主従 - 空閑音響、が味わえますね。そして彼女が得意とするフルートで、メインは2012年の "Sombre I, II, III" でしょう。


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エリオット・シャープ(Elliott Sharp) の Tranzience を聴く

米現代音楽家エリオット・シャープ(Elliott Sharp, 1951/3/1 - )は前衛系で、特に電子音楽に関しては米国でも早くから取り入れていました。Terraplane, Carbon といったアンサンブルを率い、またギターを中心として自らのパフォーマンスも見せてくれますね。
現代音楽の作曲はモートン・フェルドマンらに師事しています。また作品はアンサンブル・モデルンやクロノスQ.にも取り上げられていますね。楽風はノイズでありノー・ウェーブ系(パンクロック・サブカルチャー)です。

本アルバムは2016年発売の室内楽集になります。エリオット・シャープ曰く、数学や科学は宇宙の生データを解析して秩序付けるものであり、自分の創作はそんな中に見る不合理や直感と合理性があるとの事です。

Tranzience / Elliott Sharp

Tranzience (2013年)
[JACK Quartet] Chris Otto, violin; Ari Streisfeld, violin; John Pickford Richards, viola; Kevin McFarland, cello
弦楽器のトリル、トレモロを徹底的に使ったノイズ系の前衛音楽です。もちろん長音もからみながら、アゴーギクを振っています。それに前衛ミニマルとでもいう様な反復が乗ってきます。28分ですが、ポリフォニーも組み込まれたりと表情変化はとても豊かです。

Approaching The Arches of Corti (1997年)
[New Thread Quartet] Geoffrey Landman, Kristen McKeon, Erin Rogers, Zach Herchen, soprano saxophones
ソプラノ・サックス四重奏曲です。ここでは極端な特殊奏法もなく、ミニマル的な反復を長音との組合せを生かしています。反復の中に楽器間の微妙なズレ(ライヒのフェイジングに様な?)も使っていますし、長音では共鳴音もある様です。ミニマル・ポリフォニーなパートもなかなかです。

Homage Leroy Jenkins (2008年)
Joshua Rubin, clarinet; Rachel Golub, violin; Jenny Lin, piano
クラリネット- ヴァイオリン - ピアノ三重奏曲です。旋律が多く感じられる音楽です。もちろん無調ですが、反復もなく旋律がからむパートは調性感さえあります。でも、その後は反復ノイズ系音楽&トリル・トレモロの波がやってきます。後半の民族音楽の様な音色は米現代音楽らしさを感じますね。

Venus & Jupiter (2012年)
[Either/Or] Stephanie Griffin, viola; Margaret Lancaster, alto flute; Chris McIntyre, trombone; Joshua Rubin, bass clarinet; David Shively, marimba; Alex Waterman, cello; Richard Carrick, piano, conductor; w/Elliott Sharp, electroacoustic guitar
こういう楽器編成が個人的には好きな米現代音楽ですね。曲風は同じですが、楽器の音色で表情の広がりがありますね。ポリフォニーでは楽器編成が広がった分の混沌が現れてきます。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
 世界初演のステージです。もちろんEither/Orと本人のE.ギター&指揮です。




様々な楽器編成でエリオット・シャープの反復&トリル・トレモロのノイズ音楽が楽しめますね。その中に旋律が存在するのが米現代音楽と言う感じです。
即興的混沌や微分音の様な極端な不安定感は少なく聴きやすいノイズ音楽?!ですね。
ノイズ系現代音楽を聴いてみるにはおすすめですね。



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ジョン・アダムズ(John Adams)のシェヘラザード2を聴く:都響公演(本邦初演)を前に

都響のコマーシャルが飛びまくるジョン・アダムズ(John Coolidge Adams, 1947/2/15 - )の昨年作品「シェヘラザード.2)」を聴いておきましょう。もちろん都響定期公演(A.ギルバート指揮)のチケットを持っている4月18日公演の予習ですね。
とはいえ、定期公演のチケットがなければ楽風から見て行く事は無いでしょう。また、個人的には2005年度武満徹作曲賞とコンポージアム2005を個人的な商業的理由からすっぽかした悪印象から逃れられませんが...(汗)

この作品は日本初演(Japan Premiere)ですね。騒がれていますが、ポイントは以下の様です。
1.今回指揮のアラン・ギルバート指揮による初演で2回の日本公演が45・46回目の話題曲である事 2.ヴァイオリンが主役のコンチェルト風(作品を献呈されたリーラ・ジョセフォウィッツが全ての演奏会でvn独奏) 3.ツィンバロンが使われている事(本ブログでは紹介済み)

シェヘラザードと言えばリムスキー=コルサコフですが、その関係や今の時代のシェヘラザードを描いた事は本人の語りでどうぞ。

Scheherazade.2 / John Adams

第1楽章:若く聡明な女性の物語 - 狂信者たちに追われて / I. Tale of the Wise Young Woman - Pursuit by the True Believers
 いきなりのツィンバロンとvnの音色で始まります。第一印象は現代音楽ではなく、映画音楽風の標題音楽という事ですね。各楽器が役割を持っていて、機能和声での旋律がアラビア風サウンドを奏でます。ツィンバロンの音色も一役買っています。
主役のvnは雄弁で語りの様な旋律です。

第2楽章:はるかなる欲望(愛の場面) / II. A Long Desire (love scene)
 楽章は変わりますが、構成感は変わりません。構成がソナタ形式を採用しているのかも一回目では主題やトリオ(曲調変化はわかりますが)は不明です。

第3楽章:シェヘラザードと髭を蓄えた男たち / III. Scheherazade and the Men with Beards
 ここでも同じです。緩徐楽章を入れてもよかったのではないかと思ってしまいますね。

第4楽章:脱出、飛翔、聖域サンクチュアリ / IV. Escape, Flight, Sanctuary
 最終楽章もアクの強いアゴーギクとディナーミクは変わりません。四楽章通して常時劇的シーンの様な流れは少々疲れる感が拭い切れません。(断片的に緩徐シーンはありますが...)
最後は静的に終了します。
ちなみに、vnのLeila Josefowiczは刺激的な演奏を見せてくれました。そこはコンサートが楽しみですね。



ヴァイオリンがシェヘラザードとなって語る千夜一夜物語音楽「劇的交響曲」ですね。そういう意味ではリムスキー=コルサコフの様な音楽性よりもストーリー性が濃厚です。同じストーリー性で言えばR.シュトラウスの「ドン・キホーテ」の様な後期ロマン派音楽作品というよりも、より出し入れの強い映画音楽風でsolo-vnの出番も多いです。

今の時代のクラシック音楽 ヴァイオリン協奏曲風でしょうか。というよりも、コンサート受けを考えて作られている感じもしますね。オケはドンシャン風、vnもキレキレですからw



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先月発売の アムラン と ブニアティシヴィリ で聴き比べるラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番

ここ近々で発売されたセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov, 1873/4/1 - 1943/3/28)のピアノ協奏曲第三番、注目の二枚を聴き比べてみようと思います。
言わずと知れた人気の超絶技巧ピアノ・コンチェルトですのでラフマニノフと曲の紹介は割愛ですね。
それにしてもジャケットもモノクロでタイトルが赤と似ていますよね。

HamelinBuniatishvili.jpg



かつてハマっていたアムランのCDは10枚以上インプレ済みだと思いますが、近年は来日がありませんね。
マルク=アンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)と書きますが、発音はマルカンドレ・アムラン。そんな事は音楽に関係無いと思いますが、こだわる人もいて日本語化は面倒です。

Medtner Piano Concerto No.2, Rachmaninov Piano Concerto No.3 / Marc-Andre Hamelin

ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
 全体スローです。第一楽章の例のカデンツァ(長くなるのでオリジナルとオッシアの件は割愛w)は切れ味の効いた、これ見よがしの無いシャープさです。アムランらしいですね。第二楽章のエピソードなどもピアノの歯切れの良さは素晴らしいですね。通してピアノパートは派手さを抑えたアムラン・パターン、オケも控えめで落ち着いたコンビネーションです。pfはたとえ強音パートでも興奮より雄大さ。ユロフスキ指揮/ロンドンフィルも寄り添うように必要以上の盛上げを回避しています。全てで音の粒立ちの良さはアムランらしい さりげない超絶テク、まさにクール!
コンサートで熱狂を誘う様なあざとい演奏とは一線を画した、アムランのコンチェルトですね。

□ メトネル・ピアノ協奏曲第2番
 カップリングはメトネル(Nikolai Karlovich Medtner, 1880/1/5 - 1951/11/13)です。と言ってもアムランとイリーナ・メジューエワくらいしか浮かびません。アムランのアルバムで初めて聴いたのが正直なところです。ラフマニノフの7歳上、印象はロシア的ロマン派ですね。
まさにそんな曲ですが、ここでのアムランはラフマニノフよりも饒舌です。表情を強く出す様なディナーミクと見合ったpfの力を見せてくれますね。特別面白い曲でも無いのですが、打鍵の切れ味の良いアムランのpfが最大の魅力です。



見た目の肉感的(失礼!)な様相とは違うエモーショナルさが好きなピアニスト、ブニアティシヴィリ(Khatia Buniatishvili)です。この二曲は不安感でした。大向こうを唸らせる演奏が今のブニアティシヴィリの個性に合ってとは思えない気がするからですね、個人的にですが。

Rachmaninoff Piano Concertos Nos 2&3 / Khatia Buniatishvili

ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
 速めでアゴーギクを振ります。第一楽章のカデンツァは濃い感じがブニアティシヴィリらしく無い気がします。速めな分、pfは技巧を見せつけたくなる展開ですがそこはブニアティシヴィリ、明るいパートやスローなパートでの情感あるエモーショナルさを聴かせます。この曲の持つ美しさを最大限表すブニアティシヴィリの良さですね。ただ、オケ(P.ヤルヴィ/チェコフィル)はもったいぶった陰影を付け過ぎのきらいが感じられます。強音パートでのpfのブニアティシヴィリも今ひとつ、そこでのネガティブ感が強いですね。プロデューサー、グロスの責任?w

□ ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番
 カップリングされたのは第2番、ここでも同じ事が感じられます。確かにこの二曲は重厚壮大さでコンサートでは大受けとなるわけですが、ブニアティシヴィリの良さを生かすのが本当にその王道でP.ヤルヴィ/チェコフィルの様なセットなのかなぁ、って思います。ブニアティシヴィリの感性を生かした解釈で新しいラフマニノフのピアノ協奏曲を作っても良かったのでは。今更リヒテルも無いでしょうし、アルゲリッチから脱却してもいいと思います。その手はラン・ランあたりに任せて、今の時代の新しい演奏が聴きたいですね。

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クールなヴィルトゥオーゾ、アムラン。際立つ超絶技巧を軽々と難なく見せつけるスタイルはやっぱり素晴らしく、買って損なし!!です。メトネルの情熱ある演奏も良いですね。久しぶりのアムランを楽しめました。
 一方ブニアティシヴィリは彼女らしい情感の高さを生かすも、重厚な興奮を求めたくなるパートでその良さが生かせず。もし、そのパートを音楽監督やプロデューサーが新しいオリジナリティを考えていたらもっと違った世界があったかもしれません。良い悪いはわかりませんが、期待したブニアティシヴィリではありませんでした。



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ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ(Galina Ustvolskaya)の ピアノ作品集(Piano Sonatas No.1-6, 12 Preludes)を聴く

超個性的なロシアの女性現代音楽家ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ(Galina Ustvolskaya, 1919/6/17 - 2006/12/22)のピアノ作品集です。ショスタコーヴィチとの師弟関係等は以前に紹介済みです。

何と言っても後期のホモフォニーで単拍子のクラスター音楽は似た世界がありません。このアルバムでは1947年から1988年にかけてのピアノ・ソナタと1953年の12 Preludesが楽しめます。
ピアノはイワン・ソコロフ(Ivan Sokolov)です。ウストヴォーリスカヤのピアノ曲集は多数出ているので、本来ならヒンターホイザー(Markus Hinterhaeuser)らとの聴き比べが必要でしょうが、今回は楽曲のインプレになります。

Piano Sonatas No.1-6, 12 Preludes / Galina Ustvolskaya

■ ピアノ・ソナタ第1番 (1947年)
四楽章の音列配置的な楽曲です。第三楽章は緩徐楽章ですが、全楽章で打鍵の強さを感じますね。一つ一つの音が存在感を持つのはこの時代から既に確立されていた感じです。基本的には新ウィーン楽派ピアノ曲からの派生の様相です。

■ ピアノ・ソナタ第2番 (1949年)
二楽章で#1に似ている展開です。一つの音符に明瞭に打たれる強い打鍵音はウストヴォーリスカヤですが、全体としては音列配置風の音楽の域を脱しませんね。ただ、後半楽章で旋律的な展開や反復が見られる様になります。

■ ピアノ・ソナタ第3番 (1952年)
一楽章形式になります。反復が採用され、打鍵音には強弱の変化が大きくなります。基本的にはアルペジオ点描的音列ですが、表情変化が明らかに認められる様になりますね。

■ ピアノ・ソナタ第4番 (1957年)
時代はトータルセリエルからポストセリエルへの時代。四楽章形式に戻りますが、強弱のコントラストと旋律の存在、そして反復が明確になります。和音やトリル展開も入り、それが音列配置の中に何か超える楽風を見せ始めます。

■ ピアノ・ソナタ第5番 (1986年)
何と約30年を隔てて創られた一楽章のソナタです。いきなりの強音展開です。和音でのクラスター音は音塊です。基本に流れるのは反復構成で、緊迫感を増していますね。静音との対比で、それが一層感じられますね。後期のウストヴォーリスカヤらしいパワーが溢れています。

■ ピアノ・ソナタ第6番 (1988年)
一楽章で、よりおどろおどろしい気配が強くなります。執拗な反復と低音域の和音クラスターの組み合わせは単拍子で特徴的、ピアノがゴワ〜ンと共振しているのがわかります。無比のウストヴォーリスカヤのとんでもない素晴らしさです。

試しにYouTubeで聴いてみる?
 楽譜付です。♩=92の速度記号と1/4の拍子記号はありますが小節はありません。単拍子の楽譜が明瞭です。(拍子記号があるのに小節がないのも不思議ですが...)


12の前奏曲 (1953年)
ピアノソナタ第3番の翌年作品です。基本姿勢はpreludeだからと言って変わるはずもなく、ここでは小節はありませんが1/4と1/8の拍子記号はあります。(小節も拍子記号もない事が多い様です)
印象はsonata no.3と同じですね。

試しにYouTubeで聴いてみる?
 同じく楽譜付です。




何と言っても後期、ピアノソナタ第5番・第6番です。それも圧倒的に第6番の凄さで、一時代 人気を博したのがわかりますね。実にオススメです。

このブログのウストヴォーリスカヤの投稿記事



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