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アネッテ・ビク(Annette Bik) の『Double Bach』バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータと現代音楽

本アルバムを所有している理由は、好きな現代音楽家ベルンハルト・ガンダーが入っているからですね。バッハをメインとしたアルバムとなると普段なら…w


Album Title | Player
Double Bach "...the experience of infinity for mortals."
Annette Bik, vn (アネッテ・ビク, b.1962)
近年多いバロック(やルネッサンス)と現代音楽の対比になっています。バッハの無伴奏ヴァイオリン「パルティータ第1番 BWV1002」の4曲を元に、編曲(インスパイア曲?)版を現代音楽家四人に依頼して出来たアルバムですね。
バッハの4曲はそれぞれ後半に'double'(ドゥーブル)と呼ばれる変奏パートが入っています。それに現代曲が続くので"double - double"、'変奏'と'二つ'の両方のdoubleになっています。(とライナーノートにもありますw)

オーストリアの女性ヴァイオリニストのビクは、元ハーゲン・クァルテットのメンバーでG.クレーメルとの活動など活躍していますね。このブログならばベアト・フラーが創設した現代音楽アンサンブル "Klangforum Wien" のメンバーであり、創設者の一人でもあります。本アルバムはビクの初ソロ・アルバムです。

本ブログではバッハは守備範囲外なので、インプレするのは4曲の現代音楽になります。







エヴァ・ライター
(Eva Reiter, b.1976)
オーストリアの女性音楽家ですね。古楽器のリコーダーとヴィオラ・ダ・ガンバの奏者で、エレクトロニクスを駆使する現代音楽家でもあります。この曲でビクはペダルボードを使っているそうです。

Allemande multipliée
 ダブルストップが印象的なパルティータ'1.Allemande - Double' に続く曲です。グリッサンドや奇妙なボウイング、そしてドコドコ言う打音やノイズ、おまけにvoiceまで登場します。アヴァンギャルドなパフォーマンスで、インスタレーションの可能性もありますね。処々に引用で、バッハの動機の細切れが入って来ます。



シモーネ・モヴィオ
(Simone Movio, b.1978)
ベアト・フラーに師事していて、IRCAMでも学んでいますね。Incantoシリーズの一曲として書かれている様ですが、バッハのアルペジオに沿って書かれているそうです。

Incanto VII
 主題変奏的なパルティータ'2.Courante - Double. Presto'に基づく曲です。グリッサンドとロングボウイング主体の刺激的なノイズ系サウンドで明確な旋律は存在しません。スピッカートも使われていますね。バッハが聴いたら卒倒してしまうでしょうw



アンドレアス・リンデンバウム
(Andreas Lindenbaum, b.1963)
ウィーン在住のドイツ人チェリストで現代音楽家です。1989年からKlangforum Wienのメンバーでもあります。

En tournant
 哀愁の強いパルティータ'3.Sarabande - Double'に続く曲です。ピチカートやフラジョレットが印象的で、旋律感は薄いですが澄んだ美しさを感じさせる無調のvn曲ですね。ノイズや特殊奏法も混じりますが、それでも他三曲に比べると聴き易い??かも…w



ベルンハルト・ガンダー
(Bernhard Gander, b.1969)
本ブログでは贔屓の現代音楽家の一人です。グラーツで電子音響音楽をB.フラーに習い、パリUPICやチューリッヒでも学んでいますね。ダルムシュタットやドナウエッシンゲンでも活躍しています。

Bourée bourée
 一曲目と似たパルティータ'4.Tempo di Bourree - Double'を元にしています。不協和音を使って落ち着かないバッハ? 旋律感が明確に残されている分、とても奇妙に感じます。そして調性感がどんどんと壊れて行きます。流れは狂気を見せる様に変化して短い4'を終えます。これは面白いですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



タイプの異なる前衛のヴァイオリン曲が楽しめるアルバムです。ただ、バッハと並べる必要性をどこまで見るのかは疑問符も付きますね。今流行りの構成という事でしょうか。
逆にバッハ・ファンが聴いたら怒るかも?!

ビクのバッハは揺さぶりが強く尖った演奏で、バロック的な典雅とは対極の演奏です。



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トビアス・フェルトマンの『シベリウス | ラウタヴァーラ』フィンランドのヴァイオリン協奏曲集

アルファ ・レーヴェルからリリースする若手ヴァイオリニストのフェルトマンのフィンランドの近現代ヴァイオリン協奏曲集ですね。


Album Title | Player
Sibelius | Rautavaara : Violin Concertos
Tobias Feldmann, vn (トビアス・フェルトマン, b.1991)
フィンランドを代表する作曲家シベリウス、そのシベリウスの晩年に接点のあるラウタヴァーラ、二人のヴァイオリン協奏曲です。フィンランドの近代音楽から現代音楽への流れを聴き比べられますね。曲順はラウタヴァーラが先になっていますが、年代順にシベリウスから聴こうと思います。

演奏はドイツの若手(29)ヴァイオリニストのフェルトマン、指揮はジャン=ジャック・カントロフ、リエージュ王立フィルハーモニー管弦楽団(ベルギー)になります。







ジャン・シベリウス
(Jean Sibelius, 1865-1957)
何の説明も不要のシベリウスですが、個人的印象は 叙事詩"カレワラ"とフィンランド愛国歌の"フィンランディア"です。そして北欧の風景の様な流れですね。その楽風の影響は、現代音楽の時代を向かえても残りました。
元はヴァイオリニストですが、ヴァイオリン協奏曲はこの一曲だけですね。1903年に作られ1905年に改訂されています。理由はメンデルスゾーンだかブラームスだかの影響とか… (初演の指揮者はR.シュトラウスですね)

ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47 (1905年)
 古典的な"allegro - adagio - allegro"の構成です。きっちっとしたコンチェルトで古典派の印象を受けますね。そう言った意味ではブラームスの印象が浮かぶかもしれません。(ブラームスは個人的には古典派です。年代はロマン派ですが)
その中にロマン的な旋律が浮かんで来るのはメンデルスゾーンになっていて折衷的ですね。カデンツァは技巧的で情熱的です。フェルトマンのvnもビシッとした硬派の印象になっています。緩徐の第二楽章も北欧の風景の様な印象ではなく、シューマン風な流れです。(後期ロマン派でもありませんね)

残念ながら1905年としては全体的に古臭い印象を受けてしまうかもしれません。



エイノユハニ・ラウタヴァーラ
(Einojuhani Rautavaara, 1928-2016)
シベリウス・アカデミーで学び、シベリウスの推奨により奨学金を得てジュリアードに行っています。年代的には欧州ならエクスペリメンタリズム世代です。セリエルに手を染めてもいますが、セリエル的な技法であって前衛実験方向の無調ではありません。その後は調性の薄さを活かした北欧の空気の様な広がりを感じさせる印象ですね。
多作家ですがヴァイオリン協奏曲はこの一曲しか書いていません。カデンツァはフェルトマン本人によるver.です。

ヴァイオリン協奏曲 (1977年)
 "I. Tranquillo - II. Energico" の二楽章構成で、第一楽章の導入部から繊細で北欧の空気を感じる様です。ここでは、調性の薄さを活かしたフェルトマンのvnの音色は細く切れる様でピッタリですね。重厚な第一トリオ?も北欧の天気の変化の様でラウタヴァーラらしさを感じます。長いvnダブルストップも良いですね。中間部でもそうですが、オケの各パートとのカデンツァのやりとりの様なパートが多いのも特徴的です。
第二楽章はアレグロ的で表情が豊です。打楽器の使い方の上手さを感じますね。途中に挟まれる緩徐パートの幽玄な美しさは冷たい空気の様です。フェルトマンver.のカデンツァもダブルストップと繊細さがあって、この曲にフィットしています。

機能和声をベースに調性の薄さを活かし、北欧の風景を描く様なラウタヴァーラらしい素晴らしい楽曲ですね。



 ★試しにYouTubeで観てみる?
  アルファ・レーベルによるPV? 演奏風景が見られます



シベリウスは少し残念ですが、ラウタヴァーラの北欧らしい素晴らしさが楽しめます。

フェルトマンのvnは太い音色に堂々とした姿勢を感じますね。ドイツ的な印象で北欧的ではない感じです。P.ヘルスタールのvnで聴きたかった気もします。



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ペーター・アブリンガー(Peter Ablinger) の「Grisailles (I-100)」というピアノ現代音楽

20世紀末という前衛現代音楽の流れを感じられるエレクトロニクスを使ったピアノ・ソロ曲ですね。


Composer
ペーター・アブリンガー
(Peter Ablinger, 1959/3/15 - )
オーストリア人現代音楽家で、ジャズ・ピアニストと作曲で活動をスタートさせていますね。エレクトロニクスも習っていて、インスタレーションを早くから取り入れています。そういう意味ではCDでは厳しい処もあるのかもしれません。ドナウエッシンゲン音楽祭にも登場していますね。


Album Title | Player
Grisailles (I-100)
ヒルデガルト・クリーブ (Hildegard Kleeb, 1957 -, pf)
三台のピアノの為の曲です。基本構造は24レイヤーで、それぞれが独自の時間と構成を持っている様です。アブリンガーなので普通のピアノ・ソロではつまらないですよね。

演奏者のH.グリーブはスイスの女性ピアニストで、活動を含めてアブリンガーとは接点がある様ですね。前衛・即興を得意としていて、米国時代にフリー・ジャズのアンソニー・バクストンと活動してたそうです。






Grisailles (I-100) (1991-93年)
I.とII.の二部構成になっています。第一印象は、"そこら中でピアノが鳴っている"感じです。溢れかえる程の音数でも無いし、定位の明確な三台に聴こえるのですが。
左・中央・右の三台のピアノ、エレクトロニクス処理(昔ならテープと表現でしょう)、が雨垂れの様な単音反復と背景に曇った打音を残して繰り返されます。打音は特殊奏法でしょう。
part IIで特殊奏法の打音が強くなったり多少の変化は見せますが、基本単純パターンが延々と続きます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  part I. です




方向性は別としても、カイホスルー・ソラブジ的なピアノ長尺現代音楽の流れを感じますね。

異なるのはピアニストに強烈な技巧性を求めてはいない事でしょう。代わりにエレクトロニクスを使って三台のピアノを重ねます。インスタレーション方向で見せていたら一層の面白さがありますね。



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セナテット(SCENATET)で聴く, イェペ・ユスト・クリステンセン(Jeppe Just Christensen)の『Songs & Movements』:デンマーク前衛実験音楽

音楽家(作曲家)だけでなく、DACAPOレーベルとセナテット共に気になるオール・デンマークの前衛ですね。


Composer
イェペ・ユスト・クリステンセン
(Jeppe Just Christensen, b.1978)
デンマークの現代音楽家でデンマーク王立音楽アカデミーで習い、今は同学院で教鞭をとっていますね。ベント・ソアンセン(Bent Sørensen)に、またドイツでヴォルフガング・リームにも師事しています。特徴的なのは日常の中からツールを楽器として用いる事で、ジャケットにある様なものですね。そしてエレクトロニクスを導入しています。
楽曲は、Recherche, Klangforum Wien、と言った著名な前衛アンサンブルにも採用されていますね。


Album Title | Player
Songs & Movements
SCENATET w/Jeppe Just Instituttet
"recycling, nostalgia, instruments, and toys" がポイントとなる奇妙な?音楽です。具体的には"エッグスライサー、コーヒーグラインダー、おもちゃのピアノ、メロディカ他自家製のおもちゃ楽器"での演奏という事になりますね。(もちろん通常の楽器も入ります)

演奏は注目のデンマーク前衛アンサンブルの"SCENATET"です。以前も紹介済みのセナテットですが、前衛アンサンブルであると同時にインスタレーション・パフォーマーでもある事が素晴らしく、CDだけではその先進性を感じるのが難しいかもしれません。①のみJ.J.クリステンセン自らのパフォーマンス・ユニット"Jeppe Just Instituttet"がパーカッションで入ります。






Three Songs in 9 Movements (2015)
9の楽章を3-3-3にグループ分けして、メロディーとコードを3グループの各楽章で合わせてあるそうです。使われているのは通常の楽器と家で作った楽器?で、子供時代のノスタルジーだそうです。
一つ目の楽章はvoice入りのバロック風の様な流れ、処々で調性は崩れますが。次は奇妙な楽器の織り成すオモチャのサウンド。三つ目の楽章はそのポリフォニー。それがx3のグループ(サイクル)になっています。楽章とサイクルが進むにつれて破滅的な流れが入り込んだり、入り乱れたりします。特に3つ目の楽章の音と前衛性が楽しいですね。
オモチャのサウンドから前衛混沌へのメタモルフォーゼで、最後は回帰かもしれません。


Movin' (2005)
反復中心のノイズ&リズムで、"ギロ"が中心にいますね。音楽というよりも、何かガタガタ・ゴトゴトと音を立てていると言った感じです。まさに前衛です。オマケの様な短い第二楽章もテンポアップするだけで同じですね。本人によると"反復は全く同じ繰り返しで演奏は出来ない"との事で、信念がありそうですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2012年のダルムシュタット夏季現代音楽講習会、Curious Chamber Players
  の演奏です。(SCENATETの方が面白いかな…)


Douglas (2009)
飛行機の中で聴いた奇妙な音を再現しているそうです。楽器はスプリングとパテナイフで作られたハシゴも使われて、犬の吠えるのも真似ているとか…
フリージャズと言えばピッタリの感じです。ライナーノートの"Giant Step"の旋律のモディファイも感じます。ここでも何かを叩く様なオモチャ・パーカッションが印象的ですね。ガタガタ・ボコボコ・ピーィ!!!です。この音を航空機で聞いたとしたら驚きとしか言えませんw



とにかく奇妙な楽器音での構成が顕著で、特殊奏法に対比する様な面白さを感じます。そしてパーカッション、と言うか何かを叩く音、でリズムの色付けですね。

反復とリズムが支配する混沌の世界。そこから①の構成感の強い流れに楽風も変化を見せていて期待値の高いデンマーク前衛実験音楽ですね。



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オルガ・ノイヴィルト(Olga Neuwirth) の「Orchestral Works」は豪華メンバーで楽しめますね

このアルバムのポイントの一つはその魅力的な顔ぶれ、ハーデンベルガー(tp), タメスティ(va), メッツマッハー(cond.), マルッキ(cond.), ハーディング(cond.), ですね。


Composer
オルガ・ノイヴィルト
(Olga Neuwirth, 1968/8/4 - )
今や中堅の安定した女性現代音楽家の一人ですね。オーストリア・グラーツ生まれで若くしてトランペットと作曲を学び、米に渡り作曲理論や映像を習っています。作曲では3人に影響を受けているそうで、A.ヘルツキー、IRCAMでのミュライユ、そして後期のノーノとの出会いでその共産主義的方向性に同調していますね。
楽風はノイズと出し入れの現代音楽ですが、方向性が調性回帰的になって来ています。


Album Title | Player
Orchestral Works
まず三曲の演奏メンバーを紹介しましょう。
 ①:Håkan Hardenberger(tp), Ingo Metzmacher(cond.), Gustav Mahler Jugendorchester
 ②:Antoine Tamestit(va), Susanna Mälkki(cond.), ORF Radio-Symphonieorchester Wien
 ③:Daniel Harding(cond.), Wiener Philharmoniker
人気のソリストと指揮者が並びましたね。曲ごとに異なるのも凄いです。

元はトランペッターのノイヴィルトですから①への思い入れは強そうで、トランペットはマイルス・デイヴィスがお手本だったと語っているのがイイですね。
ライナーノートには各曲楽章の詳細な解説が載っていますが、影響されない様に自分の聴いたインプレにしたいと思います。






...miramondo multiplo..., for trumpet and orchestra (2006)
ハーデンベルガーに献呈された5パートのトランペット協奏曲です。
いきなりのトゥッティ、そしてtpとオケの鳴りの良い協奏になります。多少の調性の薄さはあるのかもしれませんが、機能和声の音楽に聴こえます。各パート、基本的には派手な音を主体としていますね。緩徐のパートII. のtpはマイルスのミュートを感じますね。
明瞭な主題・旋律が存在しない今の時代の新古典主義的音楽ですね。ハーデンベルガーのtpは朗々とした通りの良さを感じます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  コンサートで抜粋ですが、tpはハーデンベルガーです



Remnants of Songs ... An Amphigony, for viola and orchestra (2009)
5パート構成でタメスティのために書かれています。ノイズ系に復帰?!しています。vaのノイズを含めたソロから入り、派手なトゥッティでオケが入って来ます。そこからもタメスティの技巧的な切れ味鋭い弦音がリードしながら、調性感も漂わせる出し入れの強い無調の混沌が心地良いですね。パートIV. の様な強い調性回帰は残念に感じますが、このノイズと出し入れがノイヴィルトですね!! タメスティのvaもキレキレです。


Masaot / Clocks without Hands (2013)
演奏オケのウィーン・フィルに献呈された作品です。スタートはノイズからトゥッティのお約束。タイトルのClocksの時計ノイズを入れてポリフォニー混沌、緊迫感、pとfのコントラストといったノイヴィルトらしい構成を見せてくれます。反復とモードも取り入れて、明確な調性のパートは'引用'と思われます。後半になると処々で調性色が強くなるのはガッカリですが、最近の傾向かもしれませんね。



楽風の変化が21世紀になってノイズ系から①の様な調性軸足の新古典主義的になっています。元々の派手でドン・シャン的な響きは聴きやすくなりますが、スリルは無くなり残念な舵の切り方になってしまいますね。

②③の様に本来?のノイヴィルトらしいパートがある楽曲もあるので、今回はそちらを楽しみましょう。何れにしても商業受け的な調性回帰方向は残念です。



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バーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan)の注目作『La Passione』は、指揮も充実の素晴らしさですね

アルファ ・レーベルはインパクトのある作品を出してくれますが、これはハンニガンのソプラノだけでなく指揮者としての活躍も楽しめるアルバムですね。


Soprano & Conductor
バーバラ・ハンニガン (Barbara Hannigan, 1971/5/8 - )
このblogではご贔屓の現代音楽を得意とするカナダ人女性声楽家で指揮者のハンニガンですが、指揮者として2019-20シーズンよりエーテボリ交響楽団(Gothenburg Symphony Orchestra)の首席客演指揮者を務めていますね。

近々の彼女の予定も興味深く、4月にはデンマークの"レオニー・ソニング音楽賞"を受賞します。この賞はストラヴィンスキーやバーンスタインの他にマイルス・デイヴィスも受賞しているのが良いですね。そして5月27,28日にはミュンヘン・フィルに客演してマーラー交響曲第4番の指揮とソプラノです。これは大注目ですね(前半2曲は本アルバムのノーノとハイドンです!! ハンニガンとアルバムの注目度の高さがわかりますね)


Album Title
ラ・パッショーネ, La Passione
今回のアルバムは受難をテーマとして、ハイドンと現代音楽家(と言っても少々古いですが)二人を並べています。もちろんソプラノと指揮で、演奏は"Crazy Girl Crazy"以来繋がりの強いルートヴィヒ管弦楽団(LUDWIG Orchestra)です。

本作は前作"ウィーン世紀末"でピアノを担当し先月2/14に亡くなったレインベルト・デ・レーウ(Reinbert de Leeuw)に捧げられています。







ルイジ・ノーノ
(Luigi Nono, 1924-1990)
政治色の濃かったノーノの中期作品で、アルジェリアの独立運動家"ジャミラ・ブーパシャ (1938-)"を元にしています。フランス当局からの虐待・拷問を訴えた女性活動家です。

ジャミラ・ブーパシャ Djamila Boupacha (1962)
 約5'のソプラノ独唱曲です。ハンニガンが得意とする現代音楽の声楽で、伸びやかなハイトーンで抑揚が強く表情豊かな表現主義的です。抑圧された陰鬱さよりも、"勇気へのオマージュ"と言ったハンニガンの表現がピッタリですね。



ハイドン
(Franz Joseph Haydn, 1732-1809)
残念ながらこのブログの守備範囲外なので、作曲家と作品に関するコメントはありません。

交響曲 第49番「受難」ヘ短調
I. Adagio - II. Allegro di molto - III. Minuet/Trio
各楽章ごとにインプレは出来ませんが、アゴーギクとディナーミクを同期させる強い揺らぎを感じますね。長い緩徐楽章の I. は特に印象的です。II. でもアレグロらしいテンポに強いディナーミクのコントラストを付けていますね。情感深く まるでロマン派の作品を聴いている様なタクト・演奏で、古典曲が得意でない私も楽しめました。



ジェラール・グリゼー
(Gérard Grisey, 1946-1998)
グリゼーの代表作の一つで、四つの死(天使・文明・声・人類)を世界の文明のTextを元にしていて、死の瞑想になっています。ハンニガンはこの曲を得意としてアンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain)とも共演していますね。

全5パートがノイズで繋がれています。楽曲内容についてはカンブルラン盤でインプレ済みです。

限界を超えるための4つの歌 Quatre chants pour franchir le seuil
I. La mort del'ange - II. La mort de la civilisation - III. La mort de la voix - IV. La mort de l'humanité - Berceuse
[part I] は風の様なノイズから煌めく様な旋律が現れて幽玄な流れを作ると、いきなり緊迫したsopが割り込みます。アサンブルの揺らぎとsopの息がピッタリです。
[part II] では神秘的で緩やかな弦の音色に、緩やかに寄り添うsopの流れ。緩徐楽章の位置付けです。
[part III] はいきなりのオケとsopの叫び。澱んだ流れがアンダンテ風に流れながら、叫びが繰り返されます。
[part IV] は全パート共通のノイズから入りますが、そのまま打楽器の混沌へと雪崩れ込みます。それまでのオケの暗い澱みは緊迫の打音空間へと変化して、管楽器群が割り込んで激しい混沌を作るとsopが乱入 主導権を握ります。sopは狂気を見せてオケを連れ回し、力比べです。見事な聴かせ処を作りましたね。
[part V] は静めて納めます。

微妙に調性感を残した幽玄さと空間音響、ハンニガンはオケを暗く混沌として澱んだ流れを主体に、そこにsopで緊張感を張り渡らせます。自らが歌いアンサンブルをコントロールするメリットが生かされて、そのコントラストと一体感が素晴らしいです。グリゼーの意図よりもsopが表に出ているかもしれませんが。
(ちなみにカンブルラン盤は煌めくオケの流れが主役でsopは抑え目です)



何と言ってもソプラノ・指揮共にグリゼーの曲の素晴らしさですね。この一体感と完成度はハンニガンの表現力・力量を示したと言って良いのではないでしょうか。

ハンニガンの音楽監督的方向性は強い出し入れによる表現主義風ですね。古典のハイドンでも見せた指揮力と、現代音楽表現の才を楽しめるオススメの一枚です。



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今の時代の欧エクスペリメンタリズム音楽『ドナウエッシンゲン音楽祭 Donaueschinger Musiktage 2018』



Album Title
Donaueschinger Musiktage 2018
毎年お馴染みのCDですが、年々その魅力が薄れて来ている感じがしますね。一つには一年遅れでのリリースという事、開催年のステージの一部でさえYouTubeで観られるという事、インスタレーションの場合はステージ映像が必須という事、等々があると思います。

そして今回もCD2枚組でのリリースですね。以前はDVD付きとかCD4枚組とかもう少しNEOSが力を入れた時代もありましたが…
とは言えお約束の欧州前衛実験現代音楽の流れですから、インプレしておきましょう。







CD1
イヴァン・フェデーレ
(Ivan Fedele, b.1953)
イタリアの現代音楽家で、ミラノ音楽院でピアノを習い、サンタ・セシリア・アカデミーでドナトーニに作曲を師事していますね。

Air on Air, for amplified basset horn and orchestra (2018)
I Floating on air… - II Squalls on the water surface... - III Calm... - IV In the eye of the storm... - V The pounding sound of the storm... - VI Crumbled air...
 クラリネットの古楽器バセットホルン(アンプに通しています)の協奏曲です。神経質で繊細な音色、徐々に激しさを増して上昇・下降音階を奏でます。サブタイトル通りの嵐の様相を表現しているのは分かり易いですね。静まって嵐の目に入ります。無調でホモフォニーなアンサンブルなので、あまり尖った曲調ではありません。バセットホルンの技巧的なパートもありますが、反復が強いですね。嵐の荒れたパートなどは即興的なポリフォニーでも良さそうな…いずれにしても、新鮮さは無いかもしれません。



マーリン・ボング
(Malin Bång, b.1974)
ストックホルム在住のスウェーデンの女性現代音楽家ですね。B.ファーニホウ、G.グリゼー、P.マヌリ、と言ったビッグネームにも師事しています。アンサンブルや管弦楽、エレクトロニクス系の楽曲を得意としていますね。ドイツのオケからの委嘱も多い様です。

splinters of ebullient rebellion, for orchestra (2018)
 溢れる特殊奏法のノイズ、そして即興的混沌、所謂(いわゆる)音楽ではありません。"グリグリギギギイィィィ"、でもこれがドナウエッシンゲンでしょう。少しボリュームを上げて、混沌の音の中に自分を置いてみる。そんな楽しみ方がピッタリ来ますね。師である上記三人よりもラッヘンマンの方向性かと。中間部で現れる手回しオルゴールの静的で美しい旋律が色合いを添えています。全体構成も良く楽しめますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2018年のドナウエッシンゲン音楽祭の映像そのものです!!
  数々の特殊奏法を見る事ができます




マルコ・ストロッパ
(Marco Stroppa, b.1959)
イタリアの現代音楽家でイタリアで学んでいますが、米国でも心理学等 多岐のジャンルを学んでいます。ブーレーズの下でIRCAMでも習い、後にラッヘンマンの後任で教鞭にも立っていますね。

Come Play With Me, for solo electronics and orchestra (2016–2018)
1. Come - 2. Play - 3. With Me - 4. RUN - 5. GUN - 6. STRIKE - 7. SCRATCH
 全7パートの構成が込み入っている楽曲ですね。基本は混沌ですが、特殊奏法やノイズではありません。パートによって無調ポリフォニカルに旋律が交錯する流れや、ホモフォニーの様な構成も作られ、中には調性的なパートも存在しています。音響系パートやクラスターもあり、良く練られた楽曲構成で表情豊かではありますが、統一感は低いかもしれません。ラスト一曲だけの方が締まったかも。エレクトロニクスの使われ方がよくわかりませんね。



CD2
アガタ・ズベル
(Agata Zubel, b.1978)
ポーランドの女性現代音楽家で、スタートは声楽家ですね。作曲は調性音楽から始まって、電子音楽を導入する様に至っている様です。ポーランドの現代音楽祭"ワルシャワの秋"での活躍や、"Elettro Voce"という声楽と電子音楽のユニット活動もありますね。

Chamber Piano Concerto, for piano(s) and ensemble (2018)
 点描的で初期セリエルの名残りの様な、ヴェーベルンを今に引きずり出してきた様な、そんな楽風です。でも、反復や調性感, 即興的カオスが入って古さを感じさせないのがポイントでしょう。多様性になるでしょうが、帰ってきたポスト・セリエル?!的で以外に楽しめます。



ミレラ・イヴィチェヴィチ
(Mirela Ivičević, b.1980)
ウィーン在住のクロアチア女性現代音楽家で、ザグレブとウィーンで習い、グラーツではベアト・フラーに師事していますね。現在はパフォーマーでもある前衛アンサンブル"Black Page Orchestra"の創設者の一人として活躍しています。(インスタレーションでしょうねェ)

 ★ちょっと脱線、Black Page OrchestraをYouTubeで観てみる?
   エレナ・リコワ(Elena Rykova)の"101% mind"、ライヴです。面白いです!!


CASE WHITE, for ensemble (2018)
 "速・遅"と"静・クラスター"、そのコントラストを執拗な反復・変奏で彩る流れです。もちろん無調で旋律感は極薄く、類型の危険性も感じますが今の時代の前衛っぽい楽しさがありますね。



フランチェスコ・フィリデイ
(Francesco Filidei, b.1973)
イタリアの現代音楽家でオルガン奏者です。シャリーノやマンゾーニに学び、IRCAMでも習っているそうです。

BALLATA N. 7, for ensemble (2018)
 ppな音構成は微妙な調性感の美しさを持って流れます。背景の低弦音が少しづつ強まると、テンポも緩やかに上がって、パルス的な強音が挟まれます。後半はその対比が強く、そして混沌となって行きます。"静の中に現れる強音"、それはシャリーノですね! 後半にオーディエンスの笑い声が聞こえます。何でしょう?



ヘルマン・マイヤー
(Hermann Meier, 1906–2002)
スイスの現代音楽家で、このアルバムで唯一21世紀に入って亡くなっていますね。年代から行くとメシアンと同じ、シュトックハウゼンらの前衛世代よりも20年ほど年上、ヴェーベルンよりも約20年くらい年下ですね。それでも十二音技法やセリエルに触れて、独特の前衛実験音楽方向の楽風だった様です。

Stück für großes Orchester und Klavier vierhändig, HMV 62 (1965)
 「大規模オーケストラと四手ピアノの為の作品」1965年ですから時代は前衛の隆盛期でしょう。処々で三度・五度の音色や反復が入って多様的ですが、基本はポスト・セリエルの色合いを濃く感じますね。ブラインドで聴いても、目新しさを感じる事は無いと思います。流れに変化はあって、以外に絶賛したりして…w



今回は女性コンポーザー三人が楽しませてくれましたね。とは言え、アルバム全体としては突出したオリジナリティは味わえず、Younes Baba-Aliの"Tic Nerveux"様なCD化の難しい注目作品が漏れるのは残念な事です。

来年あたりはDVDオンリーで出してくれると嬉しいかも。だったら、YouTubeでいい??!! 難しい時代になりましたね。



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ギヨーム・コネソン(Guillaume Connesson)の管弦楽作品集「死者の書, Pour sortir au jour」は派手なマニエリスム音楽ですね



Composer
ギヨーム・コネソン
(Guillaume Connesson, 1970/5/5 - )
フランスの現代音楽家で、フランス国内の音楽院で学んでいますね。影響を受けた音楽家はフランス・ドイツ・ロシアから米の前衛や映画音楽、はたまたファンクまで上げている様ですが、以前インプレした"Lucifer"では、ストラヴィンスキーの音色を強く感じたのを覚えています。少なくともジェームズ・ブラウンの気配は感じられませんでしたねw

実は、先日トーマス・アデスを聴いた際に、ふと同じDGからリリースされている同年代のコネソンを思い出しました。個人的にはあまり使いませんがポスト・モダンと言う事になる様です。


Album Title | Player
Pour sortir au jour, 死者の書
ステファヌ・ドゥネーヴ指揮 (ブリュッセル・フィル)
管弦楽曲集になりますね。タイトル曲はフルート協奏曲で、BPOの首席フルート奏者のマチュー・デュフォー(Mathieu Dufour)が入ります。派手な楽風から言ってもオケ作品が合いそうですね。

"Lucifer=悪魔 (堕天使)"、"死者の書"といった???なタイトルやジャケットは近年のDG方向でしょうか。






Flammenschrift (2012年)
"風雲急を告げる"的な機能和声の管弦楽です。中間部で緩徐の流れを作りますが、反復も強く出し入れの強さがあってフィルム・ミュージック風です。これがコネソンですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  スラットキン指揮、デトロイト響のコンサートです


Pour sortir au jour (2014年)
  Concerto For Flute And Orchestra
5パートのコンチェルトです。民族和声を使った様な緩徐パートから入り、派手で急峻な流れに入り込んで行きます。もちろん音楽のバックボーンは反復で、そこにflの旋律が乗ってくる感じですね。派手なパートはどの曲も同じに聴こえてしまいますが、最終パートだけはバレエ音楽の様な面白さで楽しめました。(ストラヴィンスキーっぽい?!)
タイトルが付いているので当然ですが表題音楽の印象が強く、何らかの映像がバックに浮かぶ感じです。


E chiaro nella valle il fiume appare (2015年)
緩徐から入る曲ですが、前曲の類型性が強いですね。どの曲もオーケストレーションが似ていてみんな同じ曲に聴こえてしまいます。


Maslenitsa (2012年)
残念ながら駄耳の私には全部同じ曲に聴こえてしまい、楽しむのが難しいです。なんとか最後の曲になったと言う感じです。m(_ _)m



米国オケが委嘱しそうなドン・シャン的で派手なマニエリスムの今の時代のクラシック音楽なのでしょう。反復の強い映画音楽の様な調性音楽で、本来ならこのブログの守備範囲外かもしれません。

同年代現代音楽家のトーマス・アデスは調性の薄さを使うわけですが、コネソンは退屈な機能和声の音楽。その違いが歴然ですね。どちらに一票か?となれば、アデスですが。



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イザベル・ファウスト(Isabelle Faust) のシェーベルク『ヴァイオリン協奏曲 | 浄夜 』



Album Title | Composer
Violin Concerto | Verklärte Nacht
アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874-1951)
"ヴァイオリン協奏曲"はシェーンベルク後期の新古典主義作品で、好きな曲の一つです。"5CD聴き比べ"もしています。(この演奏も追記予定です) 激しい技巧曲で、オケの演奏にもそれと同じくらいの情熱が要求されて良し悪し(好み)が明確に出ると思います。

"浄夜"は数多の演奏が残る前期の人気曲なので、このブログでもマデルナやストコフスキーといった"個性派3CD聴き比べ"もしています。弦楽六重奏曲ver.として印象に残るのはアルディッティ、カメラータ・ベルンですね。


Player
イザベル・ファウスト (Isabelle Faust, b.1972)
シェーンベルクの"ヴァイオリン協奏曲"と"浄夜"を、ファウスト/ハーディング(スウェーデン放送響)、ファウストが募ったその顔ぶれがとても興味をそそる弦楽六重奏曲版で楽しめます。このところコンスタントにアルバムをリリースしているファウストなので楽しみにしていました。

"浄夜"の顔ぶれはファウスト以外は次の通りです。
・アンネ・カタリーナ・シュライバー (Anne Katharina Schreiber, vn)
・アントワン・タメスティ (Antoine Tamestit, va)
・ダヌーシャ・ヴァスキエヴィチ (Danusha Waskiewicz, va)
・クリスティアン・ポルテラ (Christian Poltéra, vc)
・ジャン=ギアン・ケラス (Jean Guihen Queyras, vc)







ヴァイオリン協奏曲 Op. 36 (1936年)
(第一楽章:アレグロ)は第一主題から濃厚な音色、第二主題で静まりながら緊張感を与えて、vnとオケが対峙します。その後もvnとオケが押しては引きの流れで良いコントラストを作っています。vnは繊細な切れ味主体の印象です。カデンツァは澄んだ神経質さです。
(第二楽章:緩徐)も繊細な音色は変わらずに、静的神経質のエモーショナルな色付けをしています。細く切れてしまいそうなvnは特徴的です。
(第三楽章:フィナーレ・アレグロ)では主要主題?もバランスが良くコントロールが効いています。ただ、その後の激情的な演奏を見せてもよいパートもvnは冷めていますね。カデンツァも同じ感じです。
 ファウストのvnは激情ではなく表現力でしょう。落ち着きながらも先鋭な音色を主体にしていますね。オケも鳴りよく、出し入れを強く、この曲らしい急変化を上手くコントロールしていてvnを生かしている感じです。
劇的・技巧性方向よりもコントロール・繊細な表現の演奏ですね。


浄夜 Op. 4 (1899年)
(第1パート)の主題は静的に入って来ますが情感は低めで淡々とした印象です。そこからディナーミクと緩いアゴーギクを振って揺さぶりをかけています。主題回帰で落ち着き、再び激しい感情を表現します。
(第2パート)の緩徐の美しい主題はやや速めで甘美さは避けて、すぐに出し入れの強い流れに入って行きます。
(第3パート)でも主題は激しい揺さぶり、そして鎮まります。
(第4パート)この曲のメインとも言う主題に酔いしれる様な美しさがありません。第二主題は静かな中に優しさを感じましたが、このパートには全体を包む様な優しさが欲しい気がしました。
(第5パート)静的クールな流れで感情を排した印象です。指揮者がいたら感情表現は上がったのかも…??
全体としては揺さぶりを強くかけていますが演奏の為の構成に感じます。共演があるにしても一期一会の顔ぶれでは仕方がないかもしれません。



ヴァイオリン協奏曲は完成度は高いのですが、もう少し感情的になって入り込んで欲しい感じがしましたね。浄夜も全体の構成の見事さはありますが、この曲の主題の美しさが伝わらないのは少し残念です。

見事な演奏でクールなシェーンベルクだと言えば、その通りでしょうか。個人的には少し期待とは異なった作品となりました。



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トーマス・アデス(Thomas Adès)の『ADÈS CONDUCTS ADÈS』ピアノと管弦楽のための協奏曲 / 死の舞踏



Composer
トーマス・アデス
(Thomas Adès, 1971/3/1 - )
英現代音楽家でピアニスト、指揮者ですね。前回のインプレでブリテンとの類型やナンカロウとのピアノの話は書きました。その後のインプレで、ボストリッジとのシューベルト"冬の旅"では伴奏ピアノを演じています。

前衛現代音楽ではありませんが、なぜか興味をそそられる今注目の音楽家の一人ですね。ちなみに今年の"武満徹作曲家賞"、2020年度審査員を務めますね。新コロナウィルスで5月31日の本選演奏会開催が危ぶまれますが。


Album Title
ADÈS CONDUCTS ADÈS
ピアノと管弦楽のための協奏曲 / 死の舞踏
2曲の管弦楽曲のLive録音ですね。"ピアノと管弦楽のための協奏曲"は本アルバムの演奏者であるボストン響がpfのキリル・ゲルシュタイン(Kirill Gerstein)のために委嘱した作品です。

"死の舞踏"は2013年のプロムスで本人指揮で初演され、今回が初録音になりますね。ルトスワフスキと奥さんの思い出に捧げられています。15世紀の作者不明のTextが使われていて全15パート、バリトンが"死"を歌い、メゾソプラノが他の登場人物を歌います。

演奏はアデス本人指揮、ボストン交響楽団(Boston SO)。二曲目にはメゾソプラノにクリスティアーネ・ストーティン (Christianne Stotijn)、バリトンにマーク・ストーン (Mark Stone)が入ります。






Concerto for Piano and Orchestra (2018年)
第一楽章はアレグロ的で、調性の薄いpfのアルペジオが印象的です。オケも寄り添う様に幽玄な音色を重ねます。第二楽章は緩徐楽章で、独特の和声(和音)での入りからpfの美しい調べがいいですね。調性の薄さを最大限生かした今の時代のクラシック音楽的です。第三楽章では速い流れをpfが作り、強音のスケルツォ的でパワープレイの楽章です。中間部(トリオ)の様なスローパートが挟まれていて、フィニッシュは派手でコンサートで好まれるでしょうね。
無理やり言うなら調性の薄い新古典主義風の楽曲と言った感じでしょう。


Totentanz (2013年)
 for Mezzo-Soprano, Baritone and Orchestra
15パート, 約40分の楽曲です。派手でバリバリのパートと幽玄なパートをバリトンとメゾソプラノが歌いますから、いかにもタイトルらしい流れが作られています。ここでは明確さや美しい旋律を避けた機能和声の現代音楽オペラの様に聴こえますね。実際には調性は薄いのですが、肉声はいつでもそう聴こえます。オケの演奏も派手な打楽器や管楽器の鳴りが感じられます。"Totentanz"好きの方にお伝えすると、特に"怒りの日"のパラフレーズは使われていませんw ラストは"tanzen"(踊れ!)を繰り返しながら陰湿な暗がりに消え入ります。
"X. Der Tod zum Kaufmann"など倒錯混沌的な激しさで、コンサートで一度聴いて見たい楽曲です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  世界初演の"Proms 2013"です!!
  冒頭で本人の話も聞けますね。オケはこちらの方が抑えが効いて好みかも…




薄い調性感と出し入れの強さはアデスらしさですが、実験音楽的な方向性、例えば微分音や特殊奏法、は使われていないので聴き易いです。今の時代のクラシック音楽になるでしょうね。

基本はドンシャン的な派手さがありますから、コンサートでは受けそうです。そういう事もあって委嘱が多いのは当然でしょう。



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