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ベアト・フラー(Beat Furrer)の「Chamber Music」を聴く


ベアト・フラー
(Beat Furrer, 1954/12/6 - )
このブログではご贔屓のスイス人現代音楽家ですね。ローマン・ハウベンシュトック=ラマティに師事し、現代音楽アンサンブルのクラングフォルム・ウィーン(Klangforum Wien)創設者でもあります。指揮はオトマール・スイトナーに習いマーラーなどもやるそうですから一度聴いてみたいですところですね。(スイトナーもマーラーを録音していますね)
1980年代までの作風はより実験的でラッヘンマンの影響(特殊奏法)が大きいですね。1990年代以降は多様性の流れに乗りますが、それが現在の欧エクスペリメンタリズム現代音楽の主流かもしれません。あとはインスタレーションでしょう。


Return and transformation
Beat Furrer’s chamber music, 1991–2011
実はこのMusiques Suisses盤にはジャケットに具体的なタイトルはありません。ただ海外サイトを見るとなぜか"Chambre Music"となっている事が多いですね。上記はライナーノート(の英文訳)によるものです。
1991年から2011年の作品で年代順に並んでいるので楽風変化も感じれるのが嬉しい一枚になります。フラーの作品は今までもそうですが、KAIROSから出る事が多いのでこのマイナー・レーベルは個人的には初めてです。

演奏は、Trio Catch, ensemble proton bern, 及びそのメンバー。ラストの"ピアノのための練習曲"は現代音楽ヴィルトゥオーゾのニコラス・ハッジス(Nicolas Hodges)ですね。






Aer (1991年)
クラリネット, チェロ, ピアノの三重奏曲です。もろにpf特殊奏法ベースの無調ノイズ系ですね。ラッヘンマンと言われても頷いちゃうかもしれません。ただ反復的な要素がclにはっきりと現れて、三者の関係も存在しています。
流れの基本は静的方向でポリフォニカルな中に互いの音を聞く様な印象を感じますね。


... cold and calm and moving (1992年)
フルート, ハープ, 弦楽三重奏の楽曲です。前曲と一年違いですが、特殊奏法を控えてより静音パートを強調しています。フルートには処々で旋律感のある流れも感じられ、静の中にインパクトを挟む緊張感ある方向性も見え始めます。三度・五度といった機能和声な音もあって、フラーらしさが出て来た感じですね。


Lied (1993年)
ヴァイオリンとピアノの曲です。より調性感の強い流れになっています。それによってエレジー風の印象さえ感じます。静的支配はより強まっていて、静の緊張が張り詰めている感じがします。


auf tönernen füssen (2001年)
"for voice and flute"です。フルートは特殊奏法バリバリです。そこにドイツ語の間をとった語りが入ります。Textは1950年代後半のオーストリアの女性詩人Friederike Mayröckerによるものですが、英訳がないので意味不明です。従ってコメントができません。詩が主体なのですから。


Studie (2011年)
ピアノの為の練習曲です。ちょっと単音点描的でセリエルの流れを感じてしまうかもしれません。音の跳躍も存在しているので余計そう思えるかもしれません。ただ動機と変奏の組み合わせ、もちろん無調ですが、になっているので全く異なるわけですが。
6'ほどですぐに終わってしまい然程面白さは感じられませんが、一つの方向性と言う事でしょうか。



"... cold and calm and moving"が一番面白いですね。そして"Lied"。全体の流れからするとフラーの本流ではないかと思います。

残念ながら、このアルバムでフラーの面白さを感じるのは難しい感じもしますね。



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オーストリアの女性現代音楽家オルガ・ノイヴィルト(Olga Neuwirth) の『死と乙女 II, Death and the Maiden II』を聴く


オルガ・ノイヴィルト
(Olga Neuwirth, 1968/8/4 - )
以前素晴らしいN.ハッジス(pf)とアルディッティ(SQ)の「Akroate Hadal, Chamber Music」を紹介したオーストリアの女性現代音楽家ですね。以下はその際の紹介文になります。
ウィーンやサンフランシスコで学んでいますが、何と言ってもIRCAMで電子音楽や音響系を学んでいる事でしょう。その際にトリスタン・ミュライユに師事している事を考慮すれば音楽のスタイルは想定できますね。ノーノとの政治的スタンスについてはコメントできませんが。
室内楽を得意としていますが、近年はより大編成化した音楽やオペラ等のステージ音楽にも傾倒してインスタレーション系のアプローチもある様です。


Der Tod und das Mädchen II
Expo2000でドイツ・パビリオンで採用されたザールランド州立劇場による委嘱作で、オーディオテープ作品ですね。バレエ曲ですがTextはオーストリアのエルフリーデ・イェリネク(Elfriede Jelinek)で、ノイヴィルトとはオペラ作品でもコラボしています。
ベースはテープの電子音楽で、ナレーター二人(アンネ・ベンネント Anne Bennent, ハンナ・シグラ Hanna Schygulla)が入ります。Textは"眠れる森の美女"の男(王子)と女(王女)の立ち位置に踏み込んでいて、シューベルトの同名歌曲"死と乙女"の死の意義とはスタンスが少々異なる様ですね。Textは眠っている女性の眠りと目覚めの哲学的解析の独白と、王子の永遠と死の見識になっています。(独語のみライナーノートにあり。パートを拾って翻訳ソフトに入れると、英文解説で言っているおおよその流れはわかりますね)






Part 1-15
全15パート、約52分です。基本は電子音のキーンとしたノイズとvoiceですが、ヴォーカリーズの様な滑舌の悪さや反響も入ります。主となる独語パートに英訳さえないので残念ですが、曲目説明にある様に"眠れる森の美女"の眠り(死)と目覚めと男(王子)に対してクールに語っています。王子の方が斜に構えた語り口の様ですね。こちらも淡々とした表現です。
楽曲としては欧州エクスペリメンタリズムそのもののノイズ系ドローンのサウンドで、語りの時はサウンドが控えめでバレエとしても当然前衛となるのでしょう。後半はポップが顔を出したり笑い声が入ったり前衛弦楽四重奏的な音やネイチャー・サウンドもあったり、とサウンドの存在感が強まり多様性方向を見せていますね。ラスト・パートは音楽だけで終わります。
ただ、どう聴いても語りの内容が重要ですからせめてTextの英訳は欲しかったです。(英文解説で流れはわかりますが)



楽曲としては多様性ノイズ系の欧州前衛現代音楽そのもので楽しめますが、絶対的に歌詞が必要な音楽ですね。少し時間をかけても独語の一部を翻訳してTextの流れを理解しておくのは必須でしょう。(それでライナーノートの英文解説がわかります)

ノイズ系サウンドとTextの融合、それでバレエ曲ですから実際に観てみたいですね。バレエ曲というよりもインスタレーションとして捉えた方がベターなのかもしれませんね。



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ヨエル・ボンス(Joël Bons) の『遊牧の民, Nomaden』をジャン=ギアン・ケラスのチェロとアトラス・アンサンブルで聴く


ヨエル・ボンス
(Joël Bons, 1952 - )
アムステルダム生まれのオランダ人現代音楽家で、若い頃はジミヘンやザッパを聴き、後にストラヴィンスキーから民族音楽へと興味の世界を広げたそうです。その元となったのは両親がアフリカのポリリズムやブギウギ他、多ジャンルの音楽を聴いていた事の様ですね。
その後音楽大学に学んで、ダルムシュタットでドナトーニやドナウエッシンゲンにも行き、フライブルクではファーニホウに師事しています。


Nomaden
タイトル・イメージ通り世界各国の民族楽器とケラス(Jean-Guihen Queyras)のチェロとのアンサンブルになります。構成は38曲で、Nomaden:#1-8 / 経過句(passage):#1-11 / 残りは特定楽器タイトル曲となりますね。

演奏のアトラス・アンサンブル(Atlas Ensemble)は2002年にボンスが創設した現代音楽アンサンブルで、世界各国の民族楽器を用いています。日本の"笙"で佐藤尚美さんが入っていますね。指揮はエト・スパンヤールト(Ed Spanjaard)です。






38曲殆どが1'前後の小曲構成ですから合わせて一曲だと思います。
基本は旋律感のあるスロー静ベースとモード的無調の楽曲になります。明確な民族音楽和声は一部楽曲で、様々な流れで構成されていますね。

どの楽曲も基本旋律(主題)が存在して、その変奏が基本になっている様です。Erhungiではミニマル的な流れも見せてテンポもアップし変化を付けています。Duelでもduoのやりとりが強いですが、ホモフォニー的です。民族音楽的なら長い4'のAzertetが中近東風ですね。同じく長い4'の13/8ではポップな展開になっていますし、Erhuでは執拗なユニゾンが使われています。後半は少し前衛風なパートもありますね。
全体的には聴きやすい和声構成ですね。


民族楽器編成から想像される様なワールド音楽ではありませんね
かといって欧州エクスペリメンタリズム前衛でもありません。無調ながら旋律感を残しミニマル様相も見せ、もちろんモード展開や主題による変奏とホモフォニーからポップ風もあります。あらゆる表情を見せてくれますね。そういう意味では今の時代の多様性現代音楽でしょう。ただインスタレーションの方向があるのかは不明です。

どちらかと言うと米現代音楽の方向を感じますが、特異的なものが感じられないのが少々残念です。



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ペーテル・エトヴェシュ(Peter Eötvös) の『三つの新しい協奏曲:ヴァイオリン/チェロ/パーカッション協奏曲』を聴く


ペーテル・エトヴェシュ
(Peter Eötvös, 1944/1/2 - )
このブログではおなじみのハンガリー人現代音楽家・指揮者・教職者のエトヴェシュですね。今更になるので紹介は割愛です。
代表作「三姉妹」をアップしようと思いながら何年過ぎているでしょう…


DoReMi, CELLO CONCERTO GROSSO, SPEAKING DRUMS
今注目のアルファ・レーベルからリリースされたのが興味深いですね。エトヴェシュの三つの新作協奏曲ですが、チェロ以外それぞれ本CDソリストに献呈されています。(チェロはミクローシュ・ペレーニ[Miklós Perényi]に)
ヴァイオリン協奏曲ですが、五嶋みどりさんをMIDORIと紹介していますね。曲のタイトル"DoReMi"はそれを入替えたそうです。この曲の解説がエトヴェシュ本人が細かく書いているのでインプレするのに影響されそうですw
チェロは今回ジャン=ギアン・ケラス(Jean-Guihen Queyras)をフィーチャーしていますが、初演は上記ペレーニ(w/ ベルリン・フィル)でした。バルトークにインスパイアされて、ハンガリーの民族音楽が下敷きになっているそうです。
パーカションはマルティン・グリュビンガー(Martin Grubinger)です。始めの二つの楽章はエトヴェシュが度々参考にしているシャンドール・ヴェレシュ(Sándor Weöres)の詩を元に、第三楽章は12世紀インドの詩人ジャヤデヴァ(Jayadeva)を元にしているそうです。

指揮はもちろんエトヴェシュでフランス放送フィルハーモニー管弦楽団(Orchestre philharmonique de Radio France)による演奏です。






DoReMi, VIOLIN CONCERTO NO.2 (2012年)
I.は神経質に切れ上がるvnの鋭い音色に処々"ドレミ"や"ミレド"の音列が入ります。エトヴェシュ曰く"1-2-3"と同じだそうです。流れは先鋭・凶暴さを感じますね。II.も基本は同じ流れで、vnのトリル・トレモロが執拗に奏されてオケの強音が襲いかかります。III.はそれまでの小刻みな神経質さの中に低い音の流れやロングトーンも使われます。いずれ技巧性の高い先鋭・凶暴な全体構成には違いありません。
ラストの微分音"ミレド"は印象的ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  何とコパチンスカヤのvnです!! ぜひご覧ください。
  五嶋みどりさんの方が強烈でしょうか。



CELLO CONCERTO GROSSO (2010/11年)
I.はまるでライヴ・エレクトロニクスが使われている様な弦楽どうしの重なりがありますね。その後はドン・シャン的なパートや 弦を弾いて指板に当てる‘Bartók pizzicato’、グリッサンドやトリル・トレモロの幽玄な流れと表情変化を付けています。II.は少しスロー化しますが楽器の特性からくる重心の低さや基本構成は同じですね。III.は回帰的で、トランシルバニア民族舞踊的なパートが現れます。
似た方向性ならvnコンチェルトの方が切れ味の面白さがありますね。


SPEAKING DRUMS (2012/13年)
I. TANZLIED / DANCE SONG - II. NONSENS SONGS - III. PASSACAGLIA
I.はvoice入りのパーカッション・ソロから入ってオケは調性感の煌びやかな響きで応えます。II.もperc.ソロで入りオケは調性感が強いです。それが流れの見通しを良くしてスッキリとした印象です。III.では鍵盤打楽器が入りアフリカン風ヴォイスがいっそう元気に叫ばれます。それが最大限生きる様な協奏曲構成ですね。
なぜか現代音楽パーカッション奏者のヴォイスは面白いです。



エトヴェシュですから無調でも旋律を持った構成で、実験音楽的混沌はありません。素晴らしいのはヴァイオリン協奏曲で、キレキレの技巧勝負。ぜひコンサートで聴きたいものです!!

パーカッション協奏曲も楽しさいっぱいで、三曲共に22'〜26'程度とコンサートの前半向きですね。十分楽しめておすすめの一枚ですね。



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今の時代のクラシック音楽:エサ=ペッカ・サロネン新作『チェロ協奏曲』ヨーヨー・マ(vc) を聴く


エサ=ペッカ・サロネン
(Esa-Pekka Salonen, 1958/6/30 - )
何と言っても指揮者の顔が浮かぶフィンランド人音楽家サロネンですが、元々はホルン奏者で現代音楽家ですね。同じフィンランド現代音楽家のマグヌス・リンドベルイ達と前衛集団"Toimii"(トイミー)を結成していた事もあります。作曲はシベリウス音楽院で習い、ドナトーニにも師事しています。指揮者になってから作曲の頻度は落ちているのが残念ですが。


Cello Concerto
中国系米人チェリスト:ヨーヨー・マ(Yo-Yo Ma)の為に書かれた作品で、ロサンゼルス・フィルの他にシカゴ響やN.Y.フィルとの委嘱作品になっている様です。
演奏はもちろんサロネン指揮で、音楽監督を務めたロサンゼルス・フィル(Los Angeles Philharmonic, 現音楽監督:G.ドゥダメル)になります。






チェロ協奏曲
3パートのコンチェルトです。
I.はアンダンテ的で、反復をベースに調性の薄い(実際には無調でしょう)中に旋律を持つ流れです。印象は幽玄でマのvcにも中華和声を感じる旋律もありますね。カデンツァはありません。
II.はキラキラとして煌びやかな入りですが緩徐楽章になっています。その後のスロー静の幽玄なvcカデンツァにライヴ・エレクトロニクスでループが使われている様ですね。シャリーノを思わせる様なグリッサンドもあって面白いですね。
III.は再び反復・変奏の流れになりますがアレグロの三部形式的です。前半(主部)はvcの先鋭な旋律がリードしながらパーカッションが入り、中盤(中間部or展開部?)はオケが鳴り渡ります。派手なオケも反復的で、その後主部の回帰の様な流れになり短いカデンツァ?が入りますね。フィニッシュはノイズです。



無調ですが調性感のある旋律で構成されていて実験的要素はなく、今の時代のクラシック音楽ですね。約35'で三楽章ですから、コンサート前半で使われ易い構成になっている気もしますね。それが委嘱作品という事かもしれません。

マのvcは伸びやかな音色を聴かせ、パートIII.では技巧性も高いvcの見せ所もありますね。



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ノルウェーの現代音楽家 ヨン・オイヴィン・ ネス(Jon Øivind Ness) の『Low Jive』を聴く


ヨン・オイヴィン・ ネス
(Jon Oivind Ness, 1968/3/30 - )
ノルウェー国立音楽アカデミーで学び、複調多調から始まり四分音符から微分音の方向を持っていますね。楽曲は米・欧でも取り上げられています。個人的には気になる多様性の楽風の北欧現代音楽家ですね。


Low Jive
各楽曲は英米のロックや時事的出来事をモチーフにして、ポップ・ミュージック文化との接点から作られたアルバムになっている様です。楽曲を直接的に"引用"したりはしていません。ポップも含む多様性の現代音楽の楽しさがJ.O.ネスですから本領発揮でしょう。

オケはオスロ・フィルハーモニック管弦楽団です。






Violin Concerto, "Mad Cap Tootling" (2003年)
  ヴァイオリン協奏曲 "マッド・キャップ・トゥートリング"
タイトルはイラク侵攻を先導した米大統領を揶揄したものだそうです。vnは好きなヴァイオリニストの一人、ペーテル・ヘレスタール(ヘルスタールとも, Peter Herresthal)です。
ヘレスタールの細く切れそうな先鋭なvnの音色が静的空間を切り裂き、背景にはノイズと単音の連続音が現れます。背景音は楽器数を増して、vnは無調旋律を技巧的に奏し、ポリフォニカルな空間となりますね。もちろんネスらしくホモフォニー的な連携感も存在してきます。強音の展開もあって変化は大きく、聴きごたえ十分な構成ですね。


Cello Concerto, "Wet Blubber Soup" (2002年)
  チェロ協奏曲 "ウェット・ブラバー・スープ"
タイトルはロックグループ"10cc"のメンバーが結成したグループ名をもじったそうですが全然わかりませんw
初めから総演奏的な流れですが、オケの音色が米管弦楽曲的な明確ドンシャンで ちょっと新古典主義的な印象になりますね。無調のvcがその上を走り回る感じです。今の時代のクラシック音楽でしょうか。vcはオイスタイン・ビルケラン(Oystein Birkeland)です。


Gust (2005年) 突風
ダブルベースとヴィオラのDuo曲で、自然と文化のDialogueだそうです。
静的空間に音が現れるネスらしい入りです。低いうねりの様なDBを背景にvaが無調旋律を出現させます。進むに連れ両者の絡みが強くなって行くのはネスらしいさでしょう。ラストはノイズです。
幽玄なアンビエントやドローンに一味追加した良い流れを感じます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Low Jive (2007年) ロウ・ジャイヴ
タイトルはイギリスのパンク・グループの楽曲の歌詞の一部だそうです。
二曲目の様な調性軸足の管弦楽で、明確な主題・動機はありません。前衛ではないでしょうが、かと言ってマニエリスムでもないでしょう。そう言ったスタンスです。流れは若干のポップさでシャイニングですw



まさに現在の多様性現代音楽ですね。調性感を残しながら無調を生かして、ポリフォニーとホモフォニーを使い分け、ノイズ等の技巧も凝らしています。よりポップなスタンスを作っていたらまた面白さが出るかもしれませんね。

ヘレスタールのvnの音色はやっぱり好きですね。おすすめの(北欧系)現代音楽です



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オイスタイン・ボーズヴィーク(Øystein Baadsvik) の plays Tuba Concertos by Baadsvik・Ness・Lindberg を聴く


Øystein Baadsvik plays Tuba Concertos by Baadsvik・Ness・Lindberg
ノルウェーのチューバ奏者オイスタイン・ボーズヴィーク(Oystein Baadsvik, ボーツヴィックとも)をフィーチャーした北欧系のチューバ協奏曲集です。以前「Prelude, Fnugg & Riffs」をインプレしていますが、少々消化不良気味だったと記憶しています。(本人の楽曲のみ面白かったですが)
今回はどうでしょうか。

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オケはクリスティアン・リンドベルイ指揮、ノルウェー・アークティック・フィルハーモニー管弦楽団(Arctic Philharmonic Orchestra)になります。







オイスタイン・ボーズヴィーク
(Øystein Baadsvik, 1966/8/14 - )
ノルウェーのチューバ・ソリストとして知られていますが、作曲者としては殆ど話が出てきません。所有の中でも自分の演奏アルバムの中に書いている程度です。

チューバ協奏曲 (2012年)
 前回紹介の本人作曲の代表曲"Fnugg Blue"は面白く、そのチューバ奏法 "Lip Beat" は知られるところですが、今回はそういった楽しみにはなりませんでしたね。
 パッと聴くと印象はマニエリスム的な調性の音楽です。メリハリがはっきりとして動機(主題?)も明確に楽器間で共有されています。特殊奏法や無調の様な前衛性はなく、チューバもヴィルトゥオーゾ的超絶技巧を見せるわけでもなく、全体平凡な演奏に感じてしまいます。あえて言えば第三楽章にジャズ的なモードを取り入れているくらいでしょうか、冒険的ではありませんが。チューバのコンチェルトは珍しいですから、コンサートなら受けるかもしれませんね。




ヨン・オイヴィン・ ネス
(Jon Øivind Ness, 1968/3/30 - )
ノルウェーの現代音楽家でノルウェー国立音楽アカデミーで学び、複調多調から始まり四分音符から微分音の方向を持っていますね。楽曲は米・欧でも取り上げられています。個人的には気になる北欧現代音楽家の一人ですね。

悪魔収穫機, Bogey Thresher (2011年)
 タイトルから刺激的です。暗い印象の根暗な曲で、反復の重低音が続く中にチューバや管楽器の咆哮が入ります。もちろん無調で微分音の奇妙な音色で勝負してきます。得意の"Lip Beat"も入り、表情変化も目まぐるしいですね。構成は調性的展開も含む反復・変奏ベースで、その基本旋律とテンポを変化させます。
特殊奏法ノイズや即興的混沌は無く、流れは存在しますから奇妙な小気味の良さも感じられますね。ポスト・ミニマル的要素も見せ、今の時代の多様性の現代音楽です。




クリスティアン・リンドベルイ
(Christian Lindberg, 1958/2/15 - )
スウェーデンのスーパー・トロンボーニストにして現代音楽家、そして指揮者としても活躍中ですね。このブログではご贔屓の一人で、演奏者も指揮者でも来日公演に行っています。今回は指揮者&現代音楽家として登場ですね。

恋するパンダ, Panda in Love (2007-2010年)
1.Panda Searching for Something He Cannot Find - 2.Lion Cub - 3.Panda in Love - 4.Panda in Protest, Goes to Tiananmen Square - 5.Speech of the Panda - 6.Panda Climbing up the Hill... into a World of Freedom
 6パートの協奏曲で子ライオンも登場するパンダの標題音楽です。そういう構成をイメージして聴くとチューバの活躍が楽しめます。楽風は機能和声寄りなので違和感はないでしょう。ストーリー性が明確にあるのは、リンドベルイ本人がトロンボーンで演奏しても成立する様に作っているからかもしれません。三曲の中ではチューバの演奏テクも聴かせ処を作っていて、遊び心が曲に生きた楽しさを味わえますね。




今回は、ボーズヴィーク本人作品以外が面白いです。(笑)
前衛の多様性ネス、標題音楽の楽しさリンドベルイ、二つが味わえますね。ただ、特にチューバである必要性が薄い感じはしますが。(例えばリンドベルイのトロンボーンの方が…w)

前回のアルバムよりも楽しめます。一度ボーズヴィークの圧倒するチューバ超絶技巧を聴いてみたいものですね。





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アイスランドの現代音楽《RECURRENCE》管弦楽集:ヨンスドッティル/ヴィルマーソン/シグフスドッティル/ビャルナソン/ソルヴァルドスドッティル


RECURRENCE
Iceland Symphony Orchestra
アルバムのクレジット名はアイスランド交響楽団になっていて "ISO project vol. 1" とありますね。指揮者ダニエル・ビャルナソン本人作品を含めた近年注目度の上がるアイスランドの現代音楽家5人の管弦楽集になります。

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【余談】アイスランド人は名前で男女がわかります。---ソン(son, 息子)なら男性、---ドッティル(dóttir, 娘)なら女性です。







スリドゥル・ヨンスドッティル
(Thurídur Jónsdóttir, 1967 - )
レイキャビク音楽大学でフルートと作曲を習った女性現代音楽家です。その後ボローニャ音楽院でエレクトロニクスを習得していますね。

Flow and Fusion
 旋律感の低いロングトーン多声と鍵盤打楽器(マリンバ)の様な連打が少し入ります。エレクトロニクス的な響きもありますが、楽器の音なのか判別できません。フラットではなくディナーミクがあり、空間音響系だと思います。アンビエント系になるのかも?! そんな感じです。




フリヌール・アジルス・ヴィルマーソン
(Hlynur Aðils Vilmarsson, 1976/8/2 - )
レイキャビク音楽大学で作曲を、コーパヴォグル音楽学校でエレクトロニクスを学んでいます。B.ファーニホウにも師事していて、電子工学に明るいそうです。

BD
 BAは博士号のことでしょうか。こちらも旋律感の低いロングトーン多声音響ですが、旋律を挟み込んできます。短旋律反復でノイズ的、それが対位法的に絡み、特殊奏法のポリフォニーそしてホモフォニーへと変化します。即興的混沌には陥らず、奇妙なリズム感の表情でちょっと面白い感じです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




マリア・フルド・マルカン・シグフスドッティル
(María Huld Markan Sigfúsdóttir, 1980/9/29 - )
作曲の博士号をアイスランド芸術アカデミーで取得した女性現代音楽家です。イギリスでも学んでいますね。

Aequora
 ストレッチした音が多声で共鳴する音響空間を作り、そこに静的な旋律が薄く浮かびクレシェンドしてピークを作ります。音色は静的透明感ですが、ディナーミクでの表情付けがありますね。




ダニエル・ビャルナソン
(Daníel Bjarnason, 1979/2/26 - )
レイキャビクで学び、指揮者と現代音楽家で活躍中ですね。

Emergence
 空間音響系で3パートに分かれています。神経質な雰囲気が漂うパート1、連打音が背景に置かれてドローンが被るパート2、静的空間色が全体クレシェンドするパート3。
他の楽曲に比べると反復旋律が耳に付きますね。その意味ではポスト・ミニマルの指向性があるのかもしれません。




アンナ・ソルヴァルドスドッティル
(Anna Thorvaldsdottir, 1977/7/11 - )
アイスランドを代表する女性現代音楽家で、このブログでもご贔屓の一人です。その独特の楽風は魅力的ですね。紹介は割愛です。

Dreaming
 紹介済みの楽曲ですね。(聴き比べはしませんw)
ベースとなるのは旋律感の低いノイズ系のドロドロとした蠢めく様な低い地鳴り、ドローンや響に近いでしょう。それがソルヴァルドスドッティルですね。そこに不安な色合いの旋律やクラスター的強音が現れます。ラストは弦楽器の特殊奏法だけのパートで面白いです。




アイスランド空間音響系の楽曲集で、北極圏の360°広がる上空を耳で感じる様な印象です。いわゆるドローンと違って細かな音色や変化による色付けがしっかりあるのが特徴的ですね。

旋律性は低く、響きで空間を満たす世界です。この手の現代音楽を聴いてみたい方にはおすすめですね。





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ジャンル : 音楽

イェクスパー・ホルメン(Jexper Holmen) の『オールトの雲, Oort Cloud』を聴く


イェクスパー・ホルメン
(Jexper Holmen, 1971/2/16 - )
デンマークの現代音楽家、ロイヤル・デンマーク音楽院でイブ・ノルホルム(Ib Nørholm)に学んでいます。現在はインスタレーション系を得意としている様ですね。

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Oort Cloud
オールトの雲*
英ハダースフィールド・コンテンポラリー・ミュージック・フェスティバル(hcmf// Huddersfield Contemporary Music Festival)からの委嘱作品になりますね。サックスと2台のアコーディオン、そしてエレクトロニクスです。そしてマーティン・スティグ・アンダーセン(Martin Stig Andersen)の"CosmogyralEcho"が残響音的に挟まれているそうです。両方ともに宇宙ネタのタイトルですね。

前衛ライナーノートが大問題で、ジャケット写真の様に全ページ文字を分散して表記してあるので全く読む気がしません。と言うわけでレーベルの紹介ページを参照する必要があります。

* 太陽系最外殻カイパーベルトの延長線上にあるとされる仮想天体群






Oort Cloud (2008年)
  "CosmygyralEcho" by Martin Stig Andersen included
ライナーノートにはエオリアン・ハープ(Aeolian harp)を例に楽曲の印象を含めた解説(インプレ?!)がありますが、先入観になる可能性がありますね。
察しの良い方は想定想像の範疇で、56’一曲です。聴くというよりも浸るとか、その中にいるとか言った大括りアンビエント系ですね。アコーディオンの音色はわかり易いですが、サックスは特殊奏法的です。
当然旋律は無く、ロングトーンと響きだけが延々とフラットに連続します。ただ音色からするとドローンとは一味違う様な。(わかっていないだけかも…汗)

41'過ぎに無音を挟んでノイズのバックグラウンド音が現れます。これが"CosmygyralEcho"でしょう。エレクトロニクスのノイズ(のドローン?)と思われますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  56'完全版です。



アンビエントなのかエレクトロニカなのか不明ですが、要はそういう範疇です。タイトルのイメージっぽいのが素晴らしいのか残念なのか??!!

少なくとも"オールトの雲"の推測理論や技術データからの曲構築という解説はありませんでした。(ライナーノートのスペルのバラバラ分散が何らかの意味あり??!!)



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ジャンル : 音楽

デンマークの現代音楽:ベント・セアンセン(Bent Sørensen) の「ミニョン, Mignon」を聴く


ベント・セアンセン
(Bent Sørensen, 1958/7/18 - )
デンマークの現代音楽家ベント・セアンセンは、デンマーク音楽アカデミーでイブ・ネアホルム(Ib Nørholm)に習い、その後オーフス王立音楽アカデミーでペア・ノアゴー(Per Nørgård)に師事しています。アコースティックを用いて静美な音楽を微妙な調性(四分音符や微分音)で表現しますね。電子音楽には手をつけていません。
サーアンセン、ソレンセン、例によって日本語表があやしい北欧系名です。

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Mignon
ミニョン
管弦楽とピアノ協奏曲で、ソロのヴァイオリン曲も入りますね。

演奏はラップランド室内管弦楽団(Lapland Chamber Orchestra)、指揮ヨーン・ストルゴーズ(John Storgårds)のフィンランド・セットです。ピアノはカトリーヌ・ギスリンゲ(Katrine Gislinge)、ストルゴーズはヴァイオリン・ソロ*も披露していますね。

* ストルゴーズはサロネンが首席指揮者時代のスウェーデン放送響のコンサートマスターでした。指揮を習う前からヴァイオリニストでしたね。






Mignon - Papillons, for piano and strings (2013-14年)
パピヨン三部作(Papillons trilogy)の一つで、本ピアニスト: カトリーネ・ギスリンジェの為に書かれています。
7パートの楽曲で調性の薄い、実際には無調でしょうが、印象派-後期ロマン派末裔的な楽曲です。古典的な旋律も現れますが、もちろん支配しているのは"静寂美"です。弦楽グリッサンドやトリルの幽玄な音色の中に繊細なピアノのアルペジオが絡みます。ディナーミクはしっかり付きますが、強音らしさは奮い立てませんね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Serenissima, for solo violin (2014年)
グリッサンドの反復・変奏を中心とした曲で、静音静寂が支配します。ここでも時折強音パートが現れますが、すぐに消滅しますね。パターンでしょう。


Sinful Songs, for ensemble (1997-98年)
管楽器のグリッサンドで微分音を生かすセアンセンのパターンですね。細かい打楽器の連打と速いトリルの組み合わせも挟まれますが、幽玄さが主役である事は変わりません。


The Lady of Shalott, version for solo violin (1987; 1992年)
ソロですが二挺のヴァイオリンの様な音色を聴かせてくれます。基本構成は変わりません。


Ständchen, for 8 players (2006年)
5パートの楽曲で、冒頭管楽器に旋律が現れます。ゆっくりとグリッサンドに崩れて行きますが、一味違うポリフォニー的ですね。殆どのパートはグリッサンドとトリルです。


The Weeping White Room, for piano and ensemble (2002年)
冒頭曲に戻った様なピアノ協奏曲です。このグリッサンドとピアノの組合せは面白いですね。ここではvoiceも入っています。



グリッサンドを中心に微分音を使うのが特徴的で、その調性の薄い静美・静寂は個性的で、路線はその一本ですね。弦楽器のグリッサンドだけをとってみるとシャリーノを彷彿するかもしれません。

幽玄な無調のBGMとしても面白いと思います。



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・2017年12月9日
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