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ウラジーミル・マルティノフ(Vladimir Martynov) の『ユートピア交響曲 (UTOPIA)』ミニマルとマニエリスムの美しさ



ウラジーミル・マルティノフ
(Vladimir Martynov, 1946/2/20 - )
ロシア前衛音楽の推進者の一人ですね。モスクワ音楽院で習い、初期は十二音技法やセリエルのスタイルだったそうです。その後、ロシア前衛のグバイドゥーリナやシュニトケ達と顔を合わせています。ロシア民族音楽への傾倒から民族音楽学者となって、宗教への興味も持つ様になり、ロシア正教会聖歌を学びながら米ミニマル音楽を統合するマルティノフの楽風を構築していきます。


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UTOPIA
London Philharmonic Orchestra (Vladimir Jurowski, cond.)
この作品は2005年の交響曲 "シンガポール:地政学的ユートピア" と言う作品のリメイク版になりますね。当時の駐ロシアのシンガポール大使Michael Tayからのシンガポールを祝う為の委嘱作品だったそうで、老子の"老子道徳経"を元にユートピア思想を描いているそうです。

演奏はロシア生まれのウラディーミル・ユロフスキが主席指揮者を務めるロンドン・フィルハーモニー管弦楽団です。他に合唱・ヴァイオリン独奏・語り手(speaker)が入りますね。







1. ユートピア交響曲 (2019)
2part構成です。手拍子と合唱の反復から入るのが面白いですね。すぐわかるのは機能和声のミニマルもしくはポスト・ミニマル音楽だと言う事です。音の響きは確かに宗教曲の和声を感じるものがあります。米ミニマルや同じく宗教とミニマルを合わせせたA.ペルトとはまた異なるミニマル路線を感じますね。

殆ど変わらない、歌詞は変わっていきますが、曲調がどんどんと楽器数も増えながら音の厚みを増して行きます。ありげなパターンではありますが、陶酔的でどことなくケチャの様でもあります。中間部(トリオ)の様な変化がやって来ますが、変化は小さいですね。一部露骨にグラス風のミニマルになるのが面白いです。

大きな変化は合唱に替わってvnの反復も出て来ると英語の語りがアジテートして合唱団が追従するパートですね。その後は曲調の変化があります。"part II"は平和で美しく穏やか、まさにユートピア。陶酔的なミニマルではなく、主役は反復からメロディーラインの美しさとなります。ミニマルと言うよりもマニエリスムの楽曲でしょうか。捻くれた心が洗われる様ですw


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  全曲聴く事が出来てしまいますw



明るく陽気で賛歌的なミニマルの"Part I"と、美しく穏やかなマニエリスムの"Part II"です。前衛性はゼロですね。

"Part II"の様な美しい調性旋律に普段は興味は湧かないのですが、通して聴くと心が穏やかになる気がします。一度YouTubeで聴いてみてはどうでしょうかw




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アルディッティ弦楽四重奏団の "シャリーノ | クセナキス | 細川俊夫 | リゲティ" 作品集



SCIARRINO | XENAKIS | HOSOKAWA | LIGETI
Arditti Quartet
アルディッティ4の新譜は大物現代音楽家の作品を並べました。"シャリーノ | クセナキス | 細川俊夫 | リゲティ"、新鮮味には欠ける様な…

実は昨年(2019)11月の高崎芸術劇場での来日公演からになります。コンサートなら嬉しいチョイスですね。
ポイントは細川俊夫さんの「パッサージュ」、高崎芸術劇場/ケルン・フィルハーモニー共同委嘱作品で世界初演でした。


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1. Codex Purpureus II [サルバトーレ・シャリーノ]
1984年作品ですね。執拗に続く静のトレモロの緊張感、そこにpf強音が一瞬のパルスで飛び込み、弦の刺激音が湧き起こります。殆どは静の空間。この静の空間と一瞬の烈出現がシャリーノですね。後半はやや饒舌になります。


2. AKEA [ヤニス・クセナキス]
後期の1986年作品です。まずは無調混沌の弦楽四重奏にpfがアルペジオで絡んで幽玄な気配を醸します。不協和音旋律は存在して、pfは奇妙な旋律の反復も使われています。中盤からは強音の絡みも出て来てクセナキスらしく音密度が増してポリフォニーとなります。それでもタイミングを合わせた奇妙な反復が現れるのが不思議な感じですね。


3. Passage [細川俊夫]
世界初演(2019)となる新作ですね。静の空間に神経質な弦のトリル・トレモロやグリッサンドが右往左往。少しづつボリュームを上げながら刺激のあるボウイングを入れて来ます。時折パウゼを入れて表情を変化させてますが、主たる細川さんの幽玄神経質な音色の空間は変わりません。
もっとキレキレのアルディッティを聴きたかったですね。細川さんの作品なので幽玄さ重視で良かったのかもしれませんが。


4. Streichqurtett No. 2 [ジェルジ・リゲティ]
1968年作品でアルディッティ4のレパートリーですね。リゲティと言うと聴きやすい曲から実験的な曲までヴァリエーションの広さがありますが、この曲はいかにもアルディッティ4が好きそうな当時の前衛的な無調の弦楽四重奏曲です。基本はトリル・トレモロにポリフォニカルな無調の速い展開、静スローと強ファストの出し入れの強い流れ。本来なら、そのコントラストの強さをアルディッティ4がキレキレで楽しませてくれるのですが、昔を知っているとマイルドに感じてしまいます。(part 4は刺激的で良かったです)

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  LaSalle Quartetですが、繊細です
  切れ味はArditti Quartetの方が良いですね




実績ある現代音楽家の各個性を楽しめました。細川さんを除くと古いのですが、前衛の停滞時期であり多様性に推移した時代。まさに今の現代音楽の源流でしょう。

数年前のコンサートでも感じましたが、やっぱりアルディッティ4がマイルドになった印象が強いですね。昔の様に刺激物の様なキレキレさがありません。深淵になったのかもしれませんが、やっぱり残念な気がします。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アイスランド現代音楽家の作品集「Concurrence」ソルヴァルドスドッティル/トウマソン/シグフスドッティル/パールソン



Concurrence
Iceland Symphony Orchestra (Daníel Bjarnason, cond.)
アイスランド交響楽団と主席指揮者ダニエル・ビャルナソンが進めるアイスランド現代音楽家シリーズの第二弾『ISO Project vol. 2』です。"vol. 1"にはビャルナソン本人の作品も入っていましたね。

本アルバムにはCDの他にBlu-rayオーディオディスクが付いてmShuttleオーディオ対応です。ネット上からmp3, FLAC, wav, がDL出来ます。


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アンナ・ソルヴァルドスドッティル
(Anna Thorvaldsdóttir, b. 1977)
女性現代音楽家で、今やアイスランドを代表する一人と言って良いでしょうね。楽風は無調前衛です。紹介文は今更ですので割愛です。

Metacosmos (2017)
 暗幽玄のドローンです。そこに強音、バルトークピチカート?、が飛び込み、弦のトリル・トレモロが加わりますね。流れが混沌として来ると、管楽器が大きな雲の様な音塊を背景に投げかけて弦楽器と対位的に進みます。ゆっくりと静まってノイズが残ると、弦の神秘的な響に変わり、打楽器のパワーが出現して混沌状態がピークを迎えます。ラストは調性のある美しい静的エモーショナルの流れが出現します。
構成感もしっかりと組まれて聴き応えある作品になっていますね。スタンスが多様性の方向に向き始めているのを感じます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  CDと同じメンバーによる2019年のLIVEです!!




ヘイクル・トウマソン
(Haukur Tómasson, b. 1960)
以前フルート協奏曲#2をインプレしているトウマソンは、アイスランド以外の米・独・オランダでも学んでいます。初期はフィボナッチ数を使っていたりしますが、その後本人の言う"spiral technique"と言う技法?とアイスランド民族音楽の方向性に変わって来ています。

Piano Concerto No. 2 (2016)
 単一楽章のピアノ協奏曲で、pfはヴィキンガー・オラフソン(Víkingur Ólafsson)になります。点描的なpfとオケがポリフォニーに絡み合い、pf二声部さえも対位的です。音価の高い音がなかなか現れないので落ち着きのないピョコピョコとした流れが前半を支配しますね。中間部(トリオ)?らしきパートは美鬱な緩徐の流れを調性感薄く入って、激しさと重厚さに。点描ポリフォニーの流れが戻ると激しい混沌を描きます。
無調から調性を行き来して、オリジナリティーの強さを感じる作品ですね。



マリア・フルド・マルカン・シグフスドッティル
(Maria Huld Markan Sigfúsdóttir, b. 1980)
"ISO Project vol. 1"でもフィーチャーされていた女性現代音楽家です。元はヴァイオリニストで弦楽四重奏団でも活躍、作曲は博士号をアイスランド芸術アカデミーで取得していてエレクトロニクスにも明るい様です。

Oceans (2018)
 北欧の森を通り抜ける朝の風の様な美しさを、調性感の強いロングトーンの"音"が折り重なって作り上げていますね。全体で旋律のイメージを作りますが、"音塊"の印象が強く感じます。
いかにも北欧的なサウンドで北欧ロマン主義の流れを感じますね。素晴らしいです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  CDと同じメンバーによる2019年のLIVEです!!




パール・ラグナル・パールソン
(Páll Ragnar Pálsson, b. 1977)
元はプログレッシブ系ロックバンドのギタリスト、その後クラシック現代音楽の作曲家を目指しアイスランド芸術大に入っています。エストニアに渡りエストニア音楽アカデミーでも学んでいて、エストニア音楽界とのリレーションが強いそうです。

Quake (2017)
 チェロ協奏曲で、vcはサイウン・ソルステインスドッティル(Saeunn Thorsteinsdottir)です。無調で刺激の強い濃厚さを感じますね。弦は微分音も入れて来ますし執拗な反復も入って、ソロのvcの他にvnも強烈な激しいボウイングを見せて嵐の様相です。静音パートを挟みながら主流は激烈と緊迫感です。



完成度の高いアイスランド現代音楽を並べましたね。近年作品で、どの曲も聴き応えがあります。演奏者の力量も見事な表現力を感じますね。

多様性の現代音楽になりますが、前衛寄りから調性寄りまで、美から烈まで、表情豊かな曲がバランスよく並んでいて素晴らしいです。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アンティ・アウヴィネン(Antti Auvinen)の「Junker Twist | Himmel Punk | Turbo Aria」強烈なパワープレイ



Junker Twist | Himmel Punk | Turbo Aria
アンティ・アウヴィネン (Antti Auvinen, b. 1974)
若い頃はクラシックギタリストを目指していたフィンランドの現代音楽家で、プラハ音楽アカデミーやアムステルダム音楽院で学んでいます。
楽風は様々な構成のアンサンブル作品を得意としていて、ポリリズムとポリパルスを用いるのが個性的との事です。打楽器を多用する様になってからはより個性がましたそうで、エレクトロニクスも使っていますね。

今回は管弦楽曲集ですね。演奏はハンヌ・リントゥ(Hannu Lintu)と、リントゥが主席指揮者を務めるフィンランド放送交響楽団(The Finnish Radio Symphony Orchestra)です。


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1. Junker Twist (2015)
一瞬、日本のお祭りの音頭かとw 特殊奏法なのか打楽器なのかハイテンポの打楽器群と管と弦。それぞれが小刻みな旋律をホモフォニーとポリフォニーの境界面で疾走します。リズムで言うとポリリズムではありますが統合感はありますね。ホイッスルを使ったり楽器も人も叫んだりして大暴れで面白いですね。


2. Himmel Punk (2016)
打楽器が暴れます。曲調は1.と同じ路線ですがポリフォニー方向が強まっているでしょうか。ほぼ全体が強音パートですが、中間部(トリオ)的な緩徐パートが出現(2回目はラスト)するのが1.と異なる処でしょう。pfもウストヴォーリスカヤの様な打音を奏でて、もちろんホイッスルや人の叫び声も入り、全体が暴力的強引さで構成されています。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


3. Turbo Aria (2017/2018)
一番新しい楽曲で楽風が変化しています。エレクトロニクスが採用されてサンプリングによるエフェクト音の様やノイズ系の音が入ります。それが基調となって強音主張は追従的な関係に変化しています。追従的と言っても主張は強烈ですがw サンプリングではヴォイス・エフェクトやテープのヒスノイズの様な音とヴァーカリーズ・サウンドも出て来たりします。強音連打でもポリフォニカル要素が強くなり、1.や2.から表情がとても豊になって新しい方向性が見えて来ました。



調性軸の多様性現代音楽です。打楽器が主張を強く鳴らしハイテンポ強音の色合い、そこにエレクトロニクスも加わって現代のエドガー・ヴァレーズと言った風合いです。

北欧現代音楽は欧エクスペリメンタリズムと一線を画す印象が強かったのですが、今や前衛・多様性、両方で聴き応えがあります。このパワープレイは好みで、オススメの一枚になりますね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





Musica Viva #36:欧州前衛エンノ・ポッペ(Enno Poppe) の "Fett / Ich kann mich an nichts erinnern"


Fett / Ich kann mich an nichts erinnern
エンノ・ポッペ (Enno Poppe, b.1969)
本ブログではお馴染みのドイツの現代音楽家/指揮者ですね。特徴はエレクトロニクスと微分音になるでしょうが、近年は反復や調性和音を使う多様性の現代音楽に少しづつ変化している感じです。今回は近年作品ですので傾向が見られそうです。

現代音楽ファンにはお馴染み、本ブログでも何回か紹介済みの"Musica Viva"シリーズ#36です。興味のある方はそちらを参照下さいね。

演奏はバイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)と同合唱団、1.の指揮はスザンナ・マルッキ(Susanna Mälkki)、2.はマティアス・ピンチャー(Matthias Pintscher)。現代音楽を得意とする安定感ある顔ぶれです。


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1. Fett (2018-2019)
パーカッションを除いた管弦楽曲です。いきなり微分音で入って来ます。微分音だけではなく、調性感の強い美しいハーモニーとのコラボレーションの様な流れです。ほぼ旋律は無く、ロングトーンが重なる反復で、響きですね。静的ですがどんどんと音が溢れて、それが寄せては返す波の様な抑揚を重ねて行きます。処々でサチュラシオン的な印象になっているかもしれません。聴くとパーカッションを外したのが、なるほどと感じますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  指揮はCDと同じくマルッキ、オケはヘルシンキ・フィルです



2. Ich kann mich an nichts erinnern (2005-2015)
ポッペと同世代のドイツの作家・詩人のマルセル・バイアー(Marcel Beyer)のTEXTを元にした、オルガンと合唱と管弦楽の為の9パートのカンタータです。
 合唱は調性的でオケは微分音を含んだ幽玄なサウンドと言った、ポッペらしさですね。ロングトーンの音の重なりは1.と同様ですが、特徴的なのは音の厚みでしょうか。全体としては調性感の強い流れで、テンポ変化は薄く極端に暗くスロー重厚なカンタータになっています。



反復陶酔的な1.と幽玄重厚な2.。どちらもポッペらしさで、両者共にテンポ変化を抑えて音厚で変化を付ける処が特徴ですね。

今の時代の欧エクスペリメンタリズムを味わえる、興味深い一枚です!!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジャチント・シェルシ(Giacinto Scelsi) のピアノ曲「suite 8 & 11 per pianoforte」


ジャチント・シェルシ (Giacinto Scelsi, 1905-1988)
実はエクスペリメンタリズムからするとシェルシは微妙な年代です。前衛三羽ガラス(ブーレーズ, シュトックハウゼン, ノーノ)は1920年代生まれ、新ウィーン楽派の三人は1970-80年代生まれで、十二音技法が1920年代に登場します。

1905年生まれのシェルシは1930年代中盤に十二音技法を身に付け、即興性や微分音といった方向へ向かうわけですが、1970年代にグリゼーとミュライユがシェルシの倍音共鳴の影響を受けて作ったスペクトル楽派が今の時代の前衛の一つの流れを創造したわけですね。

シェルシの作品は共同製作者ヴィエーリ・トサッティ(Vieri Tosatti)の存在があるわけですが、今回の二曲もピアノ曲という事と年代から行ってトサッティとの共同作品になるでしょう。


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suite 8 & 11 per pianoforte Sabine Liebner, pf
ピアノ・ソロ2曲です。"suite n. 8"にはサブタイトルに"bot-ba"とありますが、チベットの事だそうです。もっとも音楽的には関係なく、東洋哲学への信奉から来ているそうです。また"suite n. 11"は晩年になってシェルシによって全9パートが再構築されていて、今回はそのファイナルver.での初録音だそうです。

演奏の女性ピアニストザビーネ・リープナーは現代音楽を得意としていて、既に"suite n. 9"と"suite n. 10"をリリースしています。そちらもインプレしなければなりませんね。







1. suite n. 8 – bot-ba per pianoforte (1952)
6パート(I-VI)のピアノソロです。トリル・トレモロ風の流れから単音反復の(I)、微妙な残響音の面白さの(II)、仏印象派の様な(III)の前半、低音の音響空間的な(IV)、不協和音コードの(V)、神経質な和音からの展開(VI)。
とにかく色々な表情のピアノ曲を並べています。共通しているのは 強鍵でpfをズッシリ良く鳴らす事と残響でしょう。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ピアノはMarianne Schroederです



2. suite n. 11 per pianoforte (1956)
9パート(I-IX)のピアノソロです。傾向はますます偏重化しています。短い曲の連なりですが、ドカーンと多声的に和音で鍵盤を叩いてpfをグワワ〜ンと鳴らす方向性が強くなっています。その分、残響音も響き渡る訳ですね。繊細に入る(II)や(IV)でも十分に響かせて鳴らしますし、(VIII)や(IX)はかなり暴れます旋律や音と言うよりも音塊と残響です。



この時点(1950年代)でpfの響きからの倍音の唸りを強く感じます。それがこの先の"一つの音を聴き込む"技法になったのでしょうか。音塊と残響倍音が気になるピアノ曲ですね。

ズッシリとしたpfの鳴りは印象的で、ウストヴォーリスカヤを思い浮かべる感じでもあります。個性的で興味深いアルバムです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アンサンブル・アンテグラルのオーストリア前衛音楽家作品集「alpenglühen」と言う選択肢



alpenglühen, アルプスの夕映え
(Ensemble Intégrales, アンサンブル・アンテグラル)
オーストリアの現代音楽家5人の作品をピックアップした現代音楽を得意とするアンサンブル・アンテグラルのアルバムですね。アンサンブルがオーストリアのアイデンティティを得るために、同国の5人の音楽家に委嘱したそうです。

個人的には、このアルバムに興味を持ったのはベルンハルト・ガンダーの曲が入っているからですね。このブログでは一押しのエクスペリメンタリズム現代音楽家の一人になります。

Ensemble Integrales以外のメンバーは、Henning Kaiser (tenor), Karlheinz Essl (computer)です。








ヴォルフラム・シュリーク
(Wolfram Schurig, 1967/12/31 - )
オーストリアの現代音楽家でチューリッヒでH.ラッヘンマンに習っています。ダルムシュタットに招聘された事もある様ですね。

■1. A.R.C.H.E., for Tenor Saxophone, Piano and Percussion (2000)
 ポリフォニーとホモフォニーが交錯する即興的な混沌です。ハードな流れとソフトな流れが入れ替わり立ち替わり現れます。無調でしょうが旋律感は存在していて、フリージャズ的な印象もありますね。音にセリエル的な跳躍点描が残っていてエクスペリメンタリズムとして新しいのか古いのか、良くわからない立ち位置かもしれません。少なくともラッヘンマンの様な特殊奏法ベースではありませんね。



ヴォルフガング・ズッパン
(Wolfgang Suppan, 1933/8/5 - 2015/5/4)
英語風にウルフギャング・スパンなのか例によって日本語表記での読み方は良くわかりませんね。オーストリアの現代音楽家で音楽学者、グラーツやウィーンで学んでいます。IRCAMにもいてエレクトロアコースティックには明るいそうです。

■2. Weiten und Male, for Tenor Voice, Violin, Gamepad and Live Electronics (2007)
 4パート構成でライヴエレクトロニクスを使っています。特殊奏法による"音"とvoiceで、旋律はありません。voiceも音の一つか独語の独白・ささやき。全体としてはノイズ系という事になるでしょうか。声とギリギリ・ギギギー・ボヨヨ〜ンみたいな…w
ライヴエレクトロニクスはvoiceに使われているのはわかりますが、他に使われているかは不明です。これはちょっと面白いですね。



カールハインツ・エッスル
(Karlheinz Essl, 1960/8/15 - )
オーストリアの現代音楽家でパフォーマー、F.チェルハに師事してIRCAMでも学んでいます。ソフトやライヴエレクトロニクスを使った電子音楽、他にE-Guitarで前衛ロックにも精通しているそうです。

■3. More or Less, for Violin, Saxophone, Piano, Percussion and Computer (2007)
 2パート構成です。虫の羽音や蠢く様なノイズが空間を暗躍します。ここでも"音"であり旋律はありません。そこにpfが速いアルペジオを投げ掛けて来ます。エレクトロニクスは背景音的に空間に風の流れや炸裂音を与えています。ロックの様なサウンドが入るのもエレクトロニクスでしょう。無調とか調性とかという外側にあるノイズ系で新しさを感じますね。パート2はポリフォニーの即興的反復混沌も登場します。エレクトロニクスもそこに絡んでこれまた興味深いです。



クリストフ・ディーンツ
(Christof Dienz, 1968 - )
オーストリアの現代音楽家で、音楽院ではバスーンを習っていてバスーン奏者としても活躍していました。

■4. Amplify, for Alto Saxophone, Violin, Double Bass (2007)
 ホワイトノイズの様な音のドローンから入ります。多分アコースティックで出しているのでしょうね。しばしすると旋律が現れて来ます。単純反復とロングトーンです。旋律は副次元的な印象ですから、空間音響系になるかと思いきや。エレクトロニクスのノイズや単純反復の洪水となってポスト・ミニマルの様相も呈します。それで終わりかと思うとジャズが出現し、ノイズになって行きます。超多様性エクスペリメンタリズムです!!

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



ベルンハルト・ガンダー
(Bernhard Gander, 1969/11/29 - )
さてガンダーですね。タトゥーを纏って過激な容貌のオーストリア人現代音楽家で、このブログでは一押しの欧エクスペリメンタリズムの一人です。今更の紹介は割愛ですw

■5. king's message, for Tenor Voice, Tenor Saxophone, Violin, Double Bass and Piano (2007)
 無調前衛オラトリオです。(笑) 過激で荒っぽいアンサンブルは音塊となってテノールに襲いかかります。音は無調爆裂で即興的でも反復的でもあります。テノールも負けずにシュプレッヒゲザングで対応。時にホモフォニーの様に全て固めるのも意味不明?! 狂気を感じる爆裂, これぞガンダーです!!



1.を除けば全て個性的エクスペリメンタリズムで楽しめます。ノイズ系や変化の大きい多様、そしてお馴染みガンダーの爆裂です。

三人(2. 3. 4.)の他の作品を探して聴いてみたいと思います。



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