マーラー 交響曲第5番 名盤珍盤 170CD聴き比べ! [#12 / CD:161-170]

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860/7/7 - 1911/5/18)の交響曲第5番(Symphony No.5)の聴き比べ#12。今回は次の10CDのインプレです。

①今年7-8月発売のヴァンスカとヤンソンス(旧盤と聴き比べ)
②1960年代以前の古い演奏
 (おまけ+3CD:メンゲルベルクとワルターのアダージェットのみ古い録音)

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.5 の聴き較べです (現在 #12回 170CDまで)
 #12:10CD 本投稿
 #11:10CD
 #10:10CD
 #9:15CD
 #8:15CD
 #7:10CD
 #6:14CD
 #5:5CD アバド追悼
 #4:20CD
 #3:25 26CD
 #2:20CD
 #1:15CD


オスモ・ヴァンスカ, Osmo Vänskä
Minnesota Orchestra
[BIS] 2016-6
 オスモ・ヴァンスカが2003年から首席指揮者を務める、ミネソタ管弦楽団を振った昨年6月の録音です。ミネソタ管のゴタゴタは興味ある方はググってくださいね。
第一楽章・第二楽章
第一楽章ファンファーレからいきなりギクシャク感のスロー、おとなしい葬送行進曲、第一トリオでは表情を変えますが緩め、第二トリオは弱音で入り柔らかな印象で個性的。
第二楽章第一主題も抑え目でギクシャク、第二主題も静音,スロー&マイルドです。展開部から再現部もマーラーの「最大の激烈さを持って」とは無縁、切れ味排除の曲者第一部です。
第三楽章
スケルツォもスローでhrはモタモタ、レントラー主題も微妙な揺らぎ、それ以降もいきなりのテンポアップとか読めない見晴らしの悪い残念な第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは薄く細い流れで山場も抑える好みの演奏、間を取りすぎなのは別として冷たく澄んだ流れは良いですね。
最終楽章の入りのhrは間を取り過ぎ、その後は適度に主題を絡ませながら常識的に進んで(軽快感は低いですが)、展開部の山場を盛り上げ、再現部では山場・コーダを見事に〆てラストはあっさり風w。
とはいえこの第三部は1-3楽章より遥かにマシです。
・・・・・
スロー&マイルドと奇妙な揺さぶり、そして管楽器のギクシャク。咳払いでもして喉のつかえを振り払いたい様なマーラー5です。
一癖モノがお好きな通の貴方には一聴の価値ありですw




マリス・ヤンソンス, Mariss Yansons (2録音)
ラトビア人指揮者ヤンソンスは、ムラヴィンスキーの助手を務めレニングラード・フィルでデビューしています。その後ほぼ同時期にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)とバイエルン放送交響楽団二つのビッグネイム・オケの首席指揮者を務めていましたね。


(#1)

Royal Concertgebouw Orchestra
[RCO Live] 2007-10/18,21 2008-1/16,17
 2004年から2015年までROCの首席指揮者を務めた時代のライヴです。
第一楽章・第二楽章
第一楽章はややスローで落ち着いた葬送行進曲、第一トリオでは目醒めてテンポアップかつ激しさを見せ、第二トリオでは控えめな弦の音色から抑えめの展開です。第二楽章第一主題は切れ味良く、第二主題では第一楽章第二トリオの回帰でコントラストを付けます。殊更の重厚さと激しさは避けていますが、主流派的な第一部です。
第三楽章
ややスローなスケルツォ主題、レントラー主題は優美に推移し、第三主題も落ち着いています。展開部再現部も同様に控え目でスローな流れ、正統派ですが第一部同様ややシャープさに欠ける気がする第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは、9分台前半の演奏時間(テンポ)も含めて、抑えの効いた情感で好きなパターンですね。最終楽章は第一・第二主題がうまく絡みながらの落ち着いた流れで展開部の山場を抑え気味に、再現部の山場からコーダは壮大に、ラストのアッチェレランドは抑え気味ながらビシッと決めますね。この第三部が好みでしょうか。
・・・・・
スパイスに欠けるきらいは残るものの悠然と落着き払ったマーラー5です。全体として独特の個性を感じる演奏ですね。
ラストにだけ入るとって付けた酷いアプローズは何?!w




(#2)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR Klassiks] 2016-3/10,11
 2003年からヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送響との昨年のライヴです。上記RCOの8年後のこの演奏は第四楽章以外は演奏が長くなっていますがそれを感じませんね。
第一楽章・第二楽章
葬送行進曲は適度なテンポと重厚さが付きました。第一トリオでも切れ味が増して、第二トリオも適度にテンポを確保しています。(第一トリオの途中でテンポダウンする特徴は同じですね) 第二楽章第一主題は速さ控え目、第二主題はコントラストを付ける様に第一楽章第二トリオを回帰させます。第一楽章でより顕著ですが、RCO録音より切れ味が増して見通しの良くなった第一部です。
第三楽章
ゆったりとしたネルソンスのスタンスはそのままに、スケルツォはよりリズミカル、レントラーは美しさを増しています。第三主題はゆったり構えた中に切れ味を増しました。スタンスはRCOと変わらずに聴き慣れた方向にシフトした第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは9'を切り 速くなっていますが、ディナーミクを付けています。濃くなってしまった感じで残念です。最終楽章はRCOと良く似た傾向にありますね。
・・・・・
RCOに比べると処々でメリハリが付きより王道的なマーラー5になりました。鬼に金棒と見るか、没個性化と見るか…
根幹部分の悠然としたヤンソンスのスタンスは変わらないので、オケの個性と言えるかもしれません。ドイツのオケと組むとこういう傾向になるのは今までも他の指揮者*で聴いています。

*J-P.サラステ、M.シュテンツ、等がそうでした。





ここから1960年代以前の古い録音です。(録音はmono主体で、その良し悪しを問うのは意味がないでしょう)
圧倒的個性を放つシェルヘンの4CDは#2で紹介済みですw



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter

New York Philharmonic
[Sony] 1947-2/10

(右はCBS録音のセット物です)
 マーラーがハンブルク歌劇場の音楽監督(1891年ー1897年)だった時代、その下で研鑽したブルーノ・ワルター(1876/9/15 - 1962/2/17 )が唯一残したマーラー5番全曲 ニューヨーク・フィルの音楽監督時代の録音です。
第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、テンポ速めでその変化も少なめです。第2トリオも叙情を感じさせながらもテンポ変化はありません。第二楽章第一主題は激しさを増し、第二主題で叙情性強く変化させます。まさに王道です。
第三楽章
軽快なスケルツォ、レントラーも速めですね。第三主題はマーラーの「より遅く、落ち着いて」が見事に展開されます。15'ちょっとで、今聴き直すととても速い感じです。
第四楽章・第五楽章
7'半と短いのですが速く感じる事はなく、ゆったりと冷静なアダージェットで好みですね。最終楽章は軽量軽快な第一主題と第二主題が絡みながら上げて行き、展開部と再現部の山場はキッチリ盛り上げてコーダからフィニッシュまでは迫力いっぱいです。アッチェレランドを強烈に決めます。
・・・・・
全体的に速めですが、まさに王道のマーラー5ですね。今の時代の指揮者が繰り出すアゴーギクとディナーミクを剥ぎ取れば、この演奏が現れます。真髄で一聴必須です。
久しぶりに聴きましたが、聴き終わってから心に余韻が残りますね。

ワルターはアダージェットのみですが1938年にVPOとの録音を残しています。最後にインプレしています。




ディミトリス・ミトロプーロス, Dimitris Mitropoulos
New York Philharmonic
[delta] 1960-1/2
 ワルターの後ニューヨークフィルの首席指揮者(1949-1958)だったミトロプーロスがその職責を退いた後の録音ですね。ワルターの13年後、バーンスタインの3年前のニューヨークフィルとのマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
少し不思議な間のファンファーレとゆったりとした葬送行進曲、第1トリオは派手ですがテンポ変化は少なめ、第2トリオも情感的ですがテンポ変化は薄めです。第二楽章第一主題は速めで切れ味良く、一転第二主題で柔らかさを強調します。構えの大きな正統派第一部ですね。
第三楽章
速めで揺さぶりのスケルツォはオケが暴れ気味、レントラーでは優美さを見せます。速めで揺さぶりから第三主題もスローですがアゴーギク強めです。全体としても揺さぶりと華々しさの第二部です。
第四楽章・第五楽章
澄んだ音色のアダージェットは間をとって大きいスタンスです。第五楽章は提示部からスローに妙なアゴーギク、山場は派手に、コーダからフィニッシュはスローを交えながらのアッチェレランドです。
・・・・・
雄大で迫力の第二楽章は見事ですね。揺さぶりのクセが強めですが、パワーパートは華々しいマーラー5です。




ルドルフ・ケンペ, Rudolf Kempe
Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
[ARCHIPEL] 1948-11/3
 Rudolf Kempeとライプツィヒ放送交響楽団の古い演奏です。これもシェルヘンと同じ様にカット短縮盤です。シェルヘンの初録音(1953)よりさらに5年古く、当時の流れでしょう。
第一楽章・第二楽章
やたらスローなファンファーレと葬送行進曲、第1トリオもモッタリ、第2トリオは普通ですw 第二楽章第一主題はややテンポアップでコントラストが付きますが、いずれモタモタして長〜ぃ第一部です。
第三楽章
カットありの12分ですね。優美に入るスケルツォも同じ流れのレントラーも、その後も全体にもっさり。切れ味はありません。
第四楽章・第五楽章
ワルターと比べたら2分近く長いのですが、他の楽章が超スローなのでアダージェットは速く感じます。第五楽章ホルンがメタメタ、その後もスローで怪しげ、一部カットしながら山場とコーダ・フィニッシュは普通に炸裂させています。
・・・・・
演奏も怪しげ、モタモタとした退屈なマーラー5です。時代に関係なくひどい演奏が存在する証明ですねw 第三・五楽章カットもあり、怪しげマニアの貴方にオススメ。(爆)
アダージェットは悪くありません。




ハンス・ロスバウト, Hans Rosbaud
Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
[ica] 1951-10/22
 大戦前後に活躍した現代音楽が得意な指揮者ロスバウトが、ケルン放送響を振ったマーラー5ですね。
第一楽章・第二楽章
スロー重厚な葬送行進曲から第1トリオは激しさと強烈な速さに表情を一変させます。第二楽章第一主題は一楽章トリオの流れで厳しく、第二主題は緩やかなテンポに落としてきます。第一楽章の二つのトリオの印象を忠実に再現させている感じで、締まりのいい第一部です。
第三楽章
速め優美なスケルツォ、それ以降も全体16’弱と速めですが第三主題は見事に緩やかです。アゴーギクを大きく振った第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは少し速いのですが、甘美さが感じられます。最終楽章は締まりの良い前半から流れよく二つの山場を盛り上げます。コーダは壮大、ラストのアッチェレランドもビシッと決めます。
・・・・・
テンポや表情の変化を明確に打ち出した硬派のマーラー5ですね。特に第一部と第五楽章は素晴らしく、今の時代の録音なら☆です!




ポール・パレー, Paul Paray
Detroit SO
[TAHRA] 1959-11/12
 フランス人指揮者ポール・パレーが音楽監督(1952-1963年)を務め鍛えた時代のデトロイト交響楽団とのマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、第二楽章も同じく、正攻法の第一部です。気持ち速めの演奏はややまとまりの弱さを見せますが。
第三楽章
速めで不安定なスケルツォと微妙な揺らぎのレントラー、その後も全体速い展開です。カットなし15'ですから。
第四楽章・第五楽章
アダージェットはやや速く厚めです。第五楽章第一・二主題は荒々しいですが流れは標準的に進み、展開部・再現部も力技的に迎えます。コーダからラストは溜めを作ってアッチェレランドで飛ばし上げます。
・・・・・
演奏が荒いのですが、全体速めのテンポ以外は正攻法なマーラー5です。荒さは録音精度も問題ですがw
パレーの口ずさみがよく聞こえます。




エーリヒ・ラインスドルフ, Erich Leinsdorf
Boston SO
[RCA] 1963-11
 ワルターやトスカニーニの助手を務めた辛辣さで知られるラインスドルフが音楽監督を務めた時代のボストン交響楽団とのマーラー5です。この二代後が小澤征爾さんですね。
第一楽章・第二楽章
哀しみと美しさを感じさせる葬送行進曲、テンポを上げてシャープな第1トリオ、憂いの第2トリオと流れの美しい第一楽章です。ラストのティンパニが変則ですね。第二楽章は一楽章の二つのトリオのイメージを再現します。バランスの良さと落ち着いた第一部です。
第三楽章
円舞曲的なスケルツォ、優美なレントラー、第三主題と大きなテンポ変化は避けながらも全体は美しさで通しています。
第四楽章・第五楽章
8'半とやや速めなアダージェット、アゴーギクで美しく奏でられます。第五楽章は軽やかに二つの主題を絡め上げていき、バランスよく山場を盛り上げてコーダからフィニッシュもアッチェレランドできれいにまとめます。
・・・・・
録音に3日かけていて、充分に作り込まれていますね。クセも破綻も過度の興奮も殺した、落ち着きのある完成度の高いマーラー5です。出来過ぎ感が気になりますが一聴の価値ありです。
現在の一部作品に見られる録音技術で作り込まれた不自然さがないのがいいですね。'63年録音ですがステレオでバランスも音も良いです。(ADDでD.リマスターされているでしょう)




カレル・アンチェル, Karel Ančerl
Toronto SO
[TAHRA] 1969-11/4
 カレル・アンチェルが小澤征爾さんの後を継いでトロント交響楽団の常任指揮者に就任した年の録音ですね。
第一楽章・第二楽章
標準的な葬送行進曲から元気な第1トリオになり、憂いの第2トリオの第一楽章。第二楽章も取り立てて個性的ではありません。
第三楽章
やたらとスローなスケルツォと怪しげな管楽器、その後も"緩々と怪しげ"な流れで20'を超える演奏は長すぎです。ぼーっとしていて気がついたら、まだやってた…みたいな。
第四楽章・第五楽章
ここでも標準的で甘美でもクールでもないアダージェットです。第五楽章は緩めに二主題を絡めて行き、山場とラストは締まりよく納めます。
・・・・・
演奏も怪しく締まりに欠ける退屈なマーラー5です。
'69年録音ですがmonoでAAD、音もかなり残念。リマスタリングでヒスノイズは削減されてはいますが。






【おまけ】
マーラーと親交のあったメンゲルベルク(1926年録音)とワルター(1938年録音)のアダージェットをインプレしておきましょう。
(アダージェットのみなので聴き比べ枚数にはノーカウントです)


ウィルヘルム・メンゲルベルク, Willem Mengelberg
アダージェット / Concertgebouw O
[Opus kura] 1926-5
 メンゲルベルク(1871/3/28 - 1951/3/22)とコンセルトヘボウの約7'の演奏は特別速く感じませんが、間が置かれていないので落ち着きが足らない感じですね。ただ後半vnのポルタメントがキュゥ〜ンという感じまで強調されているのは特徴的ですね。
マーラー本人も同様な演奏時間だったそうですから、これがマーラーの演奏(意図)に近いのでしょう。
今の時代のアダージェットに比べれば、そっけないですがそれでも充分にサロンミュージック風ですよね。



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter
アダージェット / Vienna Philharmonic
[Opus kura] 1938/1/15
 メンゲルベルクよりスローに聴こえますが、間が少ないのは同じですね。ポルタメントの強調はありません。また上記1947年のニューヨークフィルとの演奏と大きくは変わりませんね。



ケネス・スローイク, Kenneth Slowik
最後はメンゲルベルクの譜を元にガット弦vnで再現されたアダージェットです。

アダージェット / Smithsonian Chamber Players
[DHM] 1995
 スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズによる再現演奏です。
当時の人はこの様に聴こえたのでしょうか。現在の録音でポルタメントの揺らぎがさらに強調されている感じで、甘美です。
このアルバムには上記メンゲルベルクとワルター二つの古い演奏も始めの1'弱づつ入っています。(マーラーがアレンジしたベートーベンOp.95やシェーンベルクの"浄夜"の興味深いver.も入っています)




そろそろ所有のマーラー第五番も先が見えてきました。次回のインプレで在庫クリアーになり、後は新譜と何かのチャンスで既発売品の入手になりそうです。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ザルツブルク音楽祭2017 ヴェルディの歌劇「アイーダ」をNHKプレミアムシアターで観る

今年の夏のザルツブルク(Salzburger Festspiele)、ヴェルディのスペクタクル・オペラ『アイーダ, Aida』(全4幕) が茶の間で楽しめましたね。(もちろん深夜ではなく録画ですw)
注目は初のタイトル・ロールを演じる まん丸ネトレプコちゃんですね。

SalzburgerFestspiele2017-Aida.jpg
オフィシャルサイトより

演出

注目の演出はニューヨークで活躍するインスタレーション系の女性映像作家シリン・ネシャット。白と黒メインに一人アムネリスにシグナルカラーの配色、大きく単純な舞台装置にプロジェクションマッピングという演出は、シンプルな中に今の時代らしい「アイーダ」になりましたね。
"勝って帰れ"等、アイーダの独唱シーンでのPMは気持ちが生かされていました。またバレエだけは前衛っぽかった?!、でも生きていました。


舞台・衣装

舞台は大きな壁の様な装置がメインで光と影のシンプルさ。そこに投影される特大映像が浮き立ちました。衣装も時代考証や、殊更の現代性でもない抽象的シンプルなもので、舞台とのマッチが良かったですね。


配役

・タイトル・ロールのネトレプコ、言われている様に今や声の艶や太さと繊細さは声量と共に素晴らしいですね。46歳という年齢から言っても絶頂期でしょうか。
・ラダメスのフランチェスコ・メーリはネトレプコとのコンビが多いですが、ザルツブルグ音楽祭2014 同じヴェルディの「トロヴァトーレ」ではハイCがイマイチだったのが記憶にありますw でも、いつもながらのハリのあるテノールでしたね。
・アムネリスのエカテリーナ・セメンチュクのmezもネトレプコのsopとの重唱で幅広い声域を聴かせて、演技と共に良さが光りました。実質 今回のベストアクトレスでしょう。
・バス・バリトン陣では突出はいませんが、名脇役的な存在感がありバランスの良さを感じました。


音楽

リッカルド・ムーティとVPOは太い音色を響かせました。VPOというよりも、ムーティの印象でしょうか。バレエ曲ではVPOらしいスマートさを感じました。


屋外ステージの様なスケールの大きさが浮かぶアイーダですが、現代的シンプルさで従来とは異なったアイーダになった感じです。売りの一つであるスペクタクル感には欠けたのは残念ですが、仕方ないかもしれません。
配役はネトレプコだけでなくバランスの良い顔ぶれでアイーダらしい多重唱も楽しませてくれました。それにしても、毎度書いていますが、今やコロコロしてしまったネトレプコも今回はセメンチュクが居て良かったかもw


<出 演>
 王ファラオ  : ロベルト・タリアヴィーニ (Roberto Tagliavini)…エジプト国王
 王女アムネリス: エカテリーナ・セメンチュク (Ekaterina Semenchuk)
 アイーダ   : アンナ・ネトレプコ (Anna Netrebko)…エチオピア王女で今は奴隷
 ラダメス   : フランチェスコ・メーリ (Francesco Meli) …指揮官
 ラムフィス  : ディミトリ・ベロセルスキー (Dmitry Belosselskiy)…祭司長
 アモナスロ  : ルカ・サルシ (Luca Salsi)…エチオピア王

<合 唱> ウィーン国立歌劇場合唱団
<管弦楽> ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮> リッカルド・ムーティ (Riccardo Muti)
<演 出> シリン・ネシャット (Shirin Neshat)


収録:2017年8月9・12日 ザルツブルク祝祭大劇場(オーストリア)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ハンヌ・リントゥ/都響の公演を前に、シベリウスのクレルヴォ交響曲を聴いておきましょう

ジャン・シベリウス(Jean Sibelius, 1865/12/8 - 1957/9/20)の『クレルヴォ交響曲 Op.7』、明後日のコンサートを前に予習ですねw

北欧叙事詩『カレワラ (全50章)』の第31−36章がクレルヴォですが、シベリウスはクレルヴォと妹の近親相姦にメインテーマを入れ替えてある様ですね。(妹の死のシーン・詩の改変他)


あらすじ = 全五楽章

《第一・二楽章:演奏のみ》カレワラ 31-34章
一家殺害されたカレルヴォの息子クレルヴォは幼くして一人残され、仇敵ウンタモへの復習を誓います。生き延びたクレルヴォは鍛冶屋に売られますが、父の形見のナイフで鍛冶屋の妻を殺します。逃げ出したクレルヴォは、森の中で父カレルヴォと母が生きていた事と妹が行方不明である事を知ります。

《第三楽章:ソプラノ・バリトン・合唱》35章
メインパートです。租税納めの帰り道、クレルヴォは若い娘を誘惑し一夜を共にしますが、それが妹と知り絶望します。(妹は自害しますが、シベリウスはカットしています)

《第四楽章:演奏のみ》36章
全ての責をウンタモと捉えたクレルヴォは怒りに燃えウンタモ一家復讐へ向かいます。(両親の死も、ウンタモの復讐もカットされています)

《第五楽章:合唱》36章
ウンタモ一家に復讐を果たし、森を歩くクレルヴォは妹への呵責の念から自害します。


パーヴォ・ベルグルンド / ボーンマス交響楽団
 Paavo Berglund / Bournemouth Symphony Orchestra の古い全集にしか所有がありません。

KULLERVO / Jean Sibelius

【第一楽章】導入部 Johdanto (Allegro moderato)
 後期ロマン派的な明確な音と、初期から見られる北欧的な風景感のある流れの中に主題がに現れます。展開部・再現部もその流れの組み合わせですね。再現部後半は激く、全休符からのコーダは静けさで閉じられます。(鍛冶屋の妻の殺害と脱出でしょうか)

【第二楽章】クレルヴォの青春 Kullervon nuoruus (Grave)
 緩やかで美しい緩徐楽章でロンド形式、トリオでは表情を変えます。主部の回帰で激しさと静けさの組合せとなり、両親と再会の衝撃かもしれません。

【第三楽章】クレルヴォとその妹 Kullervo ja hänen sisarensa (Allegro vivace)
 女性を求める心踊る五拍子リズムから入り、合唱がクレルヴォの動きを歌い続けます。その間にクレルヴォと女性(2人)の出会いでは短くやりとりが交わされます。三人目の娘(妹)が金銀に惹かれクレルヴォの欲望に捉えられるシーンから合唱はリズムとトーンを落とし管弦楽が流れます。その後、静かなオケをバックに身の上話が独唱されていきます。妹が身の上を語るのが終わると(本来はここで川に身を投げます)、クレルヴォは激しい調子で後悔の念を歌い上げます。

【第四楽章】戦いに向かうクレルヴォ Kullervon sotaanlähtö (Alla marcia)
 スケルツォですが途中(トリオor展開部?)では戦闘モードの旋律に変わります。コーダからフィニッシュは雄々しく締めます。

【第五楽章】クレルヴォの死 Kullervon kuolema (Andante)
 悲しみのこもる合唱が森の中を歩き妹の最後の場所へたどる道を歌います。自らの剣に死を問い、死を迎えるまでを激しく、管弦楽の後で合唱が大きく死を歌い終息します。

シベリウスらしい北欧風景感のある流れと後期ロマン派的な明確な音の展開がありますね。標題音楽ですから、話の流れをイメージして聴くと楽しさが増します。(途中の勝手な解釈は大目に見てください)
第三・五楽章は歌詞*があり、特に第三楽章は素晴らしいので、しっかり目を通しておくのは大切になりますね。


*コンサートで配られる月間都響No.338(10-11月号)の対訳はとても参考になりました
 (PDF版には入っていませんね)

コンサート当日一番不安で楽しみなのは『フィンランディア』がアンコールで準備されている事です。このコンサート受けする楽曲をアンコールでやるとメインが霞むのはいつもの事ですから…



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

アン・アキコ・マイヤーズ(Anne Akiko Meyers) の Fantasia を聴く

久しぶりのマイヤーズ(Anne Akiko Meyers)の新譜でラウタバーラとシマノフスキが楽しめます。もう一曲、ラベルのツィガーヌもカップリングされていますね。

注目は昨年亡くなったフィンランドの現代音楽家エイノユハニ・ラウタヴァーラ(Einojuhani Rautavaara, 1928/10/9 - 2016/7/27)の『ファンタジア』世界初録音になります。米でも学んだ現代音楽家で個人的には交響曲の素晴らしさですね。

オケはクリスチャン・ヤルヴィ指揮、フィルハーモニア管弦楽団です。

Fantasia / Anne Akiko Meyers

ラウタヴァーラ:ヴァイオリンと管弦楽のための『ファンタジア』(2015年)
亡くなる一年前の作品になりますね。後期のラウタヴァーラらしく若干の不協和音で調性の枠を広げ、北欧の空気を思わせる様な管弦楽になっています。この辺りが北欧現代音楽家の特徴ですね。マイヤーズのvnは殊更細い音色を奏でるわけではありませんが、緩やかな流れの美しさです。コンサートで聴いてみたいですね。
K.ヤルヴィ来日で採用される可能性はあるかもしれません。

シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番
vnの音色が一転して細くて切れる様なシャープさで、シマノフスキの曲にぴったりですね。幽玄さが特徴的なシマノフスキを、やや暖色系ですがオケも広がりよく鳴らしています。vnのテクニカルパートの歯切れの良さがもう少し出れば最高だったと思います。
Zehetmair, Juillet, Kulka, Oistrakh, Zimmermannの5人で聴き比べ があります

ラヴェル:ツィガーヌ
ここでは太い音色から細い音色までを使い分けて技巧を聴かせます。原曲pf相手ですからオケも控えめ、所々に現れるチャールダーシュからの変奏もテクニック重視の演奏です。マイヤーズの技巧を前面に押し出しています。

通してマイヤーズの流れの美しいvnと技巧が味わえますね。特にシマノフスキでのカミソリの様な音色は素晴らしいです。テクを聴くならラヴェルでしょう。
前衛ではありませんが幽玄優美の近現代曲と民族色強いヴァイオリン協奏曲が充分楽しめますね。



♬ 現代音楽CD(作曲家)一覧

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ウジェーヌ・イザイの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 作品27』聴き比べ:イブラギモヴァ x ツィンマーマン x ツェートマイアー x クレーメル

続けてのイブラギモヴァ、Eugène Ysaÿe (ウジェーヌ・イザイ, 1858/7/16 - 1931/5/12) の『ヴァイオリン・ソナタ』です。せっかくですからフランク・ペーター・ツィンマーマンとトマス・ツェートマイアー、そしてギドン・クレーメルの4CDで聴き比べて見ましょう。

六曲全てが、それぞれヴァイオリニストに献呈されていますね。
 第1番 ト短調 四楽章(ヨゼフ・シゲティ, Joseph Szigeti)
 第2番 イ短調 四楽章(ジャック・ティボー, Jacques Thibaud)
 第3番 ニ短調 バラード, Ballade 一楽章 (ジョルジェ・エネスク, George Enescu)
 第4番 ホ短調 三楽章(フリッツ・クライスラー, Fritz Kreisler)
 第5番 ト長調 二楽章(マチュー・クリックボーム, Mathieu Crickboom, 弟子)
 第6番 ホ長調 一楽章(マヌエル・キロガ, Manuel Quiroga)




イブラギモヴァ
Ysaye Sonatas for Solo Violin
/ Alina Ibragimova
とにかくスロー、情感的で美しい古典のヴァイオリン・ソロといった気配です。スローでは技巧性が低く感じて、この曲には…という感じもします。
【第1番】特にスローで色合いを濃く付けています。音色は太く、情感が豊かですね。技巧性は抑え気味です。極端なのは一楽章で5'49"と最短のクレーメル3'19"と比べてわかりますね。ツィンマーマン3'55"、ツェートマイアーは4'28"です。【第3番】揺さぶりと音色の強い前半、後半の技巧パートはスローでそつなくです。【第4番】第三楽章で彼女らしい強い弓さばきの技巧が味わえます


ツィンマーマン
6 Sonatas pour violin solo Op.27
/ Frank Peter Zimmermann
クレメールほどの速さではありませんが流れる技巧性、そして柔らかな音色で曲を美しく奏でます。いいとこ取りですが、一味足りない感が残ります。
【第2番】透明感のある音色で技巧と情感のバランスが取れています。綺麗ですが『怒りの日』の激しさは弱いです。【第4番】流れる様な美しさ、技巧性の強い第三楽章でもそれを忘れる事はありませんね。【第5番】ただ一人三楽章に分割しています。技巧と曲の美しさが冴えていますね。どちらも凄いのですが、まとまったバランスの中に突出したものが殺されている様な…


ツェートマイアー
Sonatas pour violin solo
/ Thomas Zehetmair
音色は硬質・無機質的でキレキレの演奏、ヴィルトゥオーゾ的な切れ味を味わえますね。録音の良さも、その音色を光らせているでしょう。
【第2番】技巧を見せながら切れ味を主体としたヴィルトゥオーゾ的演奏です。テーマの『怒りの日』にピッタリで、切れ味と激しさは一番です!!【第3番】全音音階の幽玄さを透明感ある音色で奏でます。後半にかけて切れ味が冴え渡ります。【第5番】繊細な美しい音色から、朗々と響かせる音色が際立つ聴かせる演奏です。


クレーメル
SIX SONATAS FOR VIOLIN SOLO OP.27
/ GIDON KREMER
若き日のクレーメルですね。技巧と情感の揃った朗々と鳴るバランスです。技巧性を見せるパートの速さと切れ味はダントツです。
【第1番】やたらと速いのですがvnの鳴りが良く、技巧も効かせてバランス感抜群です。【第3番】ポイントは中〜後半、テンポを上げて技巧を強烈に見せつけますね。技巧性は一番です!!【第5番】滑る様に速い技巧的演奏で、他の演奏者より演奏時間が遥かに短いです。



この曲の好みの演奏は、技巧性が叙情性を上回ってくれること、そして切れ味の鋭い冷たい硬質なvnの音色。それを基準に考えると…

ツェートマイアー ≒ クレメール > ツィンマーマン > イブラギモヴァ

・ツェートマイアーの切れる無機質な音色、クレーメルの抜群の高速技巧は甲乙つけがたく
・イブラギモヴァのスローさはこの曲としては今ひとつかも
・ツィンマーマンは素晴らしいけどまとまり過ぎ、何か刺激が欲しくなります

どれか一枚!、ならばツェートマイアーでしょう。




♬ 現代音楽CD(作曲家)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

カロル・シマノフスキ(Karol Szymanowski) の ヴァイオリンとピアノ曲集 Œuvres pour violon et piano を聴く

久しぶりにシマノフスキ(Karol Szymanowski、1882/10/6 - 1937/3/29)です。ヴァイオリンとピアノ曲集ですね。
以前イブラギモヴァとティベルギアンのCDでインプレしています。
今回はクシシュトフ・ヤコヴィツ(Krzysztof Jakowicz, vn) と クリスティナ・ボルキンスカ(Krystyna Borucinska, pf)です。

大枠でのシマノフスキの楽風は、①音楽学校を出てからの古典+ロマン派的時代、②1914-21年のパリ・ロンドンでの影響を受けた印象派風の時代、③その後の民族音楽と調性の薄い時代、となりますね。

このCDにはポーランドの音楽家・ヴァイオリニスト、パウル・コハンスキ(Paweł Kochański, 1887/9/14 – 1934/1/12)がトランスクリプトした小曲三曲*が入っています。イブラギモヴァ盤には入っていませんでした。

Œuvres pour violon et piano / Karol Szymanowski

1. Sonate en ré mineur Op. 9 (1904年)
 三楽章の初期楽曲、初演は上記P.コハンスキ(vn)とA.ルービンシュタイン(pf)だそうです。(この二人は盟友ですね)
古臭さとテクニック、シマノフスキらしい深淵さが詰め込まれた楽曲です。鳴りの良いvnと 響の良いpfの組合せで楽しめます。イブラギモヴァ盤はテクと音色の濃いvnと音の歯切れの良いpfですが、こちらの方が情感も強くよりロマン派的に聴こえますね。

2. Romance en Ré majeur Op.23 (1910年)
 後期ロマン派時代の作品で、1.の古臭さい抑揚が減っていますね。イブラギモヴァ盤は繊細なvn+pfの透明感、こちらヤコヴィツは感情移入的な演奏です。ヤコヴィツのvnはスローでビブラートが強めです。

3*. Chant de Roxane, extrait de l'opéra Le Roi Roger (1931年)
 シマノフスキの代表作 King Roger Op.46 の第二幕からのトランスクリプトです。民族音楽和声を感じる旋律が印象的ですね。

4*. Danse des Montagnards, extraite du ballet Harnasie (1931年)
 バレエ曲のHarnasie Op. 55からのトランスクリプトです。ここでも民族音楽和声が感じられます。弱音で音数を減らし、そこからキレキレの強音パートへ向かうのはコンサート受けしそうですね。これは楽しめます!!

5*. Chant de Kurpie "Hennis, cheval" (1931年)
 Twelve Kurpian songs (solo voice and piano) の no.9 を編曲したものですね。メランコリックに終始する美しい楽曲です。

6. Berceuse Op.52 (1925年)
 ショパンの"Berceuse, 子守歌 変ニ長調"を思わせるとライナーノートにありますね。確かによく似た曲調で、テクを抜いて幽玄さを加えた感じです。厚みのある演奏で、vnのビブラートとポルタメントがくどい感があるかもしれません。イブラギモヴァ盤は細く繊細なvn+pfで幽玄さを表出させています。

7. Mythes Op.30 (1915年)
I.La Fontaine d'Aréthuse - II.Narcisse - III.Dryades et Pan
 3パートの楽曲で、印象派+幽玄さのシマノフスキらしさが楽しめます。その楽風を色濃く演奏します。vnは濃厚でpfも対抗する様に絡みます。一方イブラギモヴァ盤はvn, pf共に揺さぶりの少ない透明感のある演奏で対照的です。


1.の古さは別とすると、微妙な調性で幽玄な旋律を奏でるシマノフスキらしさが楽しめるアルバムですね。以前も書きましたが、vnはシマノフスキの楽風に合っていると感じます。

このアルバムはvnのビブラート&ポルタメントが強く情感も濃いですね。一方イブラギモヴァ盤はテク系で音色は繊細です。ホットかクールか、旧来的か近代的か、お好み次第でしょう。
個人的には後者ですね。


Karol_Szymanowski-violinpiano.jpg



♬ 現代音楽CD(作曲家)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

メシアン 歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」のストーリーと音楽。カンブルラン/読響の本邦初演を前に…

オリヴィエ・メシアン(Olivier Messiaen, 1908/12/10 - 1992/4/27)の唯一のオペラで大作『アッシジの聖フランチェスコ (Saint François d'Assise, 1975-83年)』全3幕8景で4時間半かかります。
音楽だけでなく台本もメシアンになりますね。


11月のカンブルラン/読響のコンサートを前に予習です。
アッシジの聖フランチェスコ 読響


ストーリー

聖フランチェスコの人生を3幕(8場)にしています。1,2幕でフランチェスコの逸話(レプラ患者*の奇跡、鳥への説教)を、最後に自身の昇華へとたどり着く様になっています。

【第1幕】3場で1時間10分
①「La Croix, 十字架」
 perfect joyを求めるブラザー・レオーネとのシーンです。フランチェスコは十字架に答えがあるといいます。
②「Les Laudes, 賛歌」
 The leper(レプラ患者)*を愛する為の出会いと試練へ向けてのフランチェスコが祈ります。
③「Le Baiser au Lépreux, レプラ患者への接吻」
 第一幕の山場です。病と怒りのThe leperに愛を伝えるフランチェスコ、天使も現れて神の心を伝えます。フランチェスコが接吻で病を直し奇跡を起こします。(ちょっとグッときます)

【第2幕】も3場で2時間!!
④「L’Ange voyageur, 旅する天使」
 旅人に姿を隠した天使がヴェルナの森の修道院を訪れて"Predestination (救済の予定説)"を問います。ブラザー達は答えられず、最後に旅人が天使だったのではと思います。
⑤「L'Ange musicien, 音楽家たる天使」
 天使はフランチェスコの前にも現れ、viol(古楽器)を奏でて答えは音楽にあると諭します。
⑥「Le Prêche aux oiseaux, 鳥への説教」
 言わずと知れた緑のオーク林の鳥達のシーンです。鳥たちに説教を施すと、世界中の鳥たちが合唱で応えます。

【第3幕】は2場で1時間10分 (一部YouTubeで観れます)
⑦「Les Stigmates, 聖痕」
 聖フランチェスコの前に現れた巨大十字架、そして五つの光。それによりキリストと同じ五つの傷痕、聖なる証が残されます。
⑧「La Mort et la Nouvelle Vie, 死と新しい生命」
 死に瀕するフランチェスコの周りに天使やThe leper、小鳥たちが集まりる中フランチェスコが最後の神への言葉を口にします。死を迎え、合唱が復活を歌い上げてエンディングとなります。



Saint François d'Assise / Olivier Messiaen
  
左がメッツマッハーのDVD。右はケント・ナガノのCDです。
(DVDはmac標準DVDplayerではうまくいかずVLCで再生しました)

彼方の閃光」でも素晴らしい演奏を残しているメッツマッハーのDVDを観てインプレしておきましょう。CDはケント・ナガノ盤を所有しています。


音楽

ラスト作品『彼方の閃光』に近いメシアンの最終の姿です。特徴的な三つ、透明感のある美しい旋律、鳥の声にも使われれるパルス的な打音、短旋律の速い展開、いずれもホモフォニーやモノフォニーが多く 混沌ポリフォニーの比率は低いです。そこに声楽が抑揚を抑えて入ります。第3幕では合唱パートが厚くなり、ラストは壮大で展開が少し違います。
静的な中にディナーミクが表出するパートは宗教色を抑えめに後期メシアンらしいカラフルな色彩音が溢れて素晴らしいです。

前衛現代音楽家でも宗教曲を書くとその色合いが強くなる事が多いですがそれも弱く、初期の音列配置でもなく、安心してメシアンを楽しめますね。(第3幕合唱パートは若干宗教色が感じられますが)


歌詞と歌唱

神への言葉と祈りに近い宗教色の強さが目立ち、いわゆるオペラのストーリー展開とは異なります。歌い方も表情は薄く、表情の強弱 ディナーミクは演奏側がメインですね。(レプラ患者のThe leperだけは感情が強いですが)


舞台・演技

今回は音楽メインのインプレなので舞台演出等々については記述を控えますが、いずれもシンプルです。オケは舞台奥に位置取り、演技舞台は広くありません。演技も動きの強さは抑えられていますね。


オペラと言うよりも、煌めきと色彩感のある晩年のメシアンらしい素晴らしい音楽です。メシアンの傑作と呼ばれるにふさわしいのですが、いかんせん5時間近くかかります。CDで音楽だけを楽しむにはキツイですね。
やっぱり映像付きの方が字幕(英文)がついてストーリーがわかりやすく楽しめるのでDVD盤がオススメです。

メッツマッハーはディナーミクの切れ味を強くしながらカラフルでキラキラしたメシアンの素晴らしさを掘り深く表現していますね。
ケント・ナガノもディナーミクを生かしますが、煌びやかさよりシャープさです。鋭い切れ味で音楽が突き刺さります。個人的には色彩感のメッツマッハーに軍配です。
両者ともに録音がよく、ダイナミックレンジが広いので楽しめますね。


【後日記】行けなくなっちゃいました…残念 T_T



*レプラ患者とはハンセン氏病患者の事ですね。そのThe leperを黒と黄色の衣装にしている事に違和感を覚えます。今の時代の演出なら配慮があってしかるべきと思いますが、作曲当時の時代反映の結果かもしれません。読響は重い皮膚病としているようですね。




♬ 現代音楽CD(作曲家)一覧

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

フィリップ・グラス(Philip Glass) の The Complete Piano Etudes を 滑川真希 のピアノで聴く

前回に続きフィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - )のピアノ曲、今回はエチュードですね。エチュード(練習曲)というとピアノを得意とする作曲家がパートごとに技巧・技術を織り込んだテクニカルな小曲集をイメージしますよね。P.グラスのEtudesはどうでしょうか。

このblogのフィリップ・グラス関連投稿記事

コンプリートとある様に全20曲の内No.1-10を第1集、後に残り10曲を第2集として完成させています。第1集は自分自身の新しいソロ・ピアノ曲の提供と演奏技術の価値を高め広げる事、第2集はテクニカルとは異なりリズムとハーモニーの表現だそうです。
そして最後のEtude20は米映画監督ゴッドフリー・レッジョ(Godfrey Reggio)のドキュメント作品"Visitors" (2013年, 音楽はグラス)直後に書かれて似たコンセプトだそうです。

ピアノはドイツ在住の滑川真希(Maki Namekawa)さんで、国立カールスルーエ音楽大学のピアノ科講師を務めながら演奏活動をされています。現代音楽ではダルムシュタット国際現代音楽セミナーにも参加して、このブログでもお馴染みのジョルジュ・クルタークにも習ってもいますね。

これも以前P.グラス来日で全曲演奏の日本公演がありましたよね。

The Complete Piano Etudes / Philip Glass

Etudes for piano, Volume 1 (No.1-10, 1994–1995年), Etudes for piano, Volume 2 (No.11-20, 2012年)
 多少なりとエチュードらしさを感じたのはNo.1, 3, 6, 13, で後は2パターン。シンプルなミニマルの美しさでフラットに終始するか、Vol.2に多い映画音楽的な叙情性です。(譜読みが出来なければ 込められた物はわからないのかもしれませんが)
演奏技術向上を目指したというVol.1でさえも、個人的なエチュードのイメージとは正反対の感じです。Vol.2でもハイスピードの旋律が多用されていますが反復であり技巧とは言えない気がします。

曲として面白いと感じたのは少し色合いの異なるNo.10でした。室内楽にしても面白いポスト・ミニマルかも。えっ、ライヒに似ている?!w



いずれも単純反復のミニマル色が強く表情変化が薄いです。ミニマルと括ってしまうとまずいでしょうね。どこを突ついても似た様な調性感と甘さで出来ているフィリップ・グラスの"映画音楽風マニエリスム・ミニマル"です。

例えばショパンのエチュードの様に技巧的パートが色濃く、ピアニストの技巧表現聴き比べが楽しめるかと言えば…さてどうでしょうか。"グラス的美の表現"聴き比べなら良いかもしれませんが。

全曲で約二時間、やっぱり美的感性とセンスの薄いkokotonPAPAにはバッハと同じくらい難しい音楽ですねぇ。
隣でkokotonMAMAいわく「私はかけておいても大丈夫だよ」だそうです。







テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

フィリップ・グラス(Philip Glass) の Beauty and the Beast をピアノ曲で聴く

続けてフィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - )、今回と次回はピアノ曲をインプレしようと思います。

このblogのフィリップ・グラス関連投稿記事

『美女と野獣 (La Belle et la Bête) 』ですね。本作品は1994年のP.グラスの同名シネ・オペラ(ジャン・コクトーの1946年の映画に声楽パートと演奏を合わせた)をピアノ・ソロ版にした組曲作品で、商人の三女が野獣の屋敷に行くところからになる様です。
余談ですが、先日インプレした交響曲「ヒーローズ」も原作のデヴィッド・ボウイ版ではこの話が一曲目に使われていますね。(グラスは不採用ですが)

ピアニストはマイケル・リースマン(Michael Riesman)で、フィリップ・グラス・アンサンブル(Philip Glass Ensemble)の音楽監督でもあります。同アンサンブルで本シネ・オペラの日本公演をやった様な…

Beauty and the Beast / Philip Glass
01. Overture - 02. Beauty Goes to the Castle - 03. Dinner at the Castle - 04. A Walk in the Garden - 05. The Beast's Confidence - 06. Avenant's Passion - 07. The Mirror - 08. The Pavillon - 09. The Metamorphosis

 ピアノ曲としては大した事を感じませんが、明確に標題音楽ですね。ミニマル・ベースのピアノ版映画音楽でテクニカル・パートはありません。ディナーミクとアゴーギクを揺らさないのでミニマルと相まって単調な流れを感じますが、各シーンをイメージしながら聴くと良いのかもしれません。



絶対音楽のピアノ曲としたらつまらない掴み所のはっきりしないミニマルで、聴いていてやっぱり飽きるでしょうね。
P.グラスは標題音楽としてストーリーと合わせて楽しむのが良いと思いますが、それでもフラットな感じが…
なるほど、それこそがフィリップ・グラスのオリジナリティ!!という事ですね。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

フィリップ・グラス(Philip Glass) の 交響曲第3番を聴く

前回に続きフィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - )の管弦楽曲を何とか頑張ってもう一枚聴きましょうw 前回は1番と4番を聴いたので、その間の3番ですね。その楽曲の構成等々興味は薄いのでカットです。

指揮は前回同様ミニマルそしてP.グラスを得意とするデニス・ラッセル・デイヴィス(Dennis Russell Davies)です。オケは首席指揮者を務めた二つ、シュトゥットガルト室内管弦楽団(Stuttgart Chamber Orchestra) と ウィーン放送交響楽団*(Vienna Radio SO) ですね。

Symphony No.3 / Philip Glass

Symphony No.3 for string orchestra (1995年)
19人の弦楽合奏による四楽章構成です。細かいことは抜きにすると映画音楽風、ベースはミニマルでロマン派的な管弦楽曲です。多少の波風はありますが、弦楽の心地よさが終始し平和すぎですねw

Interlude No.1 from the CIVIL warS (1984年)
美しく穏やかな管弦楽曲です。

Mechanical Ballet from the voyage* (1992年)
個人的には映画音楽風に感じるのがこのパターンです。ミニマルベースで表情変化の流れの良さがあるのですが、それ以上でもそれ以下でもありません。BGMとして流すには五月蝿い感じでしょうか。

Interlude No.2 from the CIVIL warS (1984年)
No.1に同じく。

The light* (1987年)
上記楽曲のいずれかに似ていますw



いずれもひたすら美しく そのままという流れでその手の管弦楽曲を好む方向けでしょう。一方それを退屈と感じる方には音楽理論がどうであれ興味の薄い全て同じ様な楽曲です。まぁそれがP.グラスなのですが。

個人的には後者であり、これならば後期ロマン派作品の方が遥かに楽しめるかも。^^;
P.グラスを固めてインプレしようと決めたのですが前回今回で腹いっぱい、でも頑張って次はピアノ曲をw

正直な話をしますと、昔はこの辺りの曲が素晴らしいと思った時代があったのです。年を経ると共に嗜好性は大きく変わるものですね。
感性がどんどんと鈍り、シンプルな穏やかさは退屈さに直結しますw




このblogのフィリップ・グラス関連投稿記事



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

プロフィール

kokotonPAPA

Author:kokotonPAPA


ものずき、おっさん じいさん、わがままきまま.

 kokotonPAPAのブログ  ホームページtop  メールtop


ご案内
カテゴリ
お友達ブログ
kokotonPAPAカウンター
unique-access