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フィリップ・グラファン(Philippe Graffin) と イェルゲル・ブランケン(Jelger Blanken) の「Pijper & Escher / Violin Sonatas」を聴く


フィリップ・グラファン (vn. Philippe Graffin)
イェルゲル・ブランケン (pf. Jelger Blanken)
ビッグネームとの共演も多いフランス人ヴァイオリニストのグラファンが、オランダ人ピアニストのブランケンをパートナーにした近現代のヴァイオリン・ソナタ集ですね。
この二人は2010年9月のGergiev Festivalでオランダの初期現代音楽家のヴァイオリン・ソナタを演奏しています。これはその延長線上にあるアルバムになり、作曲家は全てオランダ人が選ばれていますね。




ウィレム・ペイペル (Willem Pijper, 1894/9/8 - 1947/3/18)
ユーレヒト音楽院で学びアムステルダム・ロッテルダム両音楽院で指導にも当たっていたオランダ国内で活動した現代音楽家です。初期はマーラーの影響があり、1920年頃より無調に踏み込みますが調性を放棄する事は無かった様です。この時代のオランダ現代音楽を代表する一人です。
■ Sonata No.1 for violin and piano (1919年)
僅かに不協和音を混じえますが、後期ロマン派と印象派、民族和声を合わせた様な折衷さです。強弱もあり美しい調べと言っていいでしょうね。

■ Sonata for violin solo (1931年)
四楽章のソロで和声の自由度は広がり、調性を大きく飛び越す事はありませんが表現は豊富になっていますね。ちょっと技巧性も感じて面白いです。ただ、四楽章とも似た感じなのは気になりますが。

■ Sonata No.2 for violin and piano (1922年)
NO.1の3年後ですが無調に一歩踏込んだ事がわかります。美しい音色を基調としているのは同じですが、俄然面白くなって来ていますね。三曲の中では一番興味深いです。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?



ルドルフ・エッシャー (Rudolf Escher, 1912/1/8 - 1980/3/17)
ロッテルダム音楽院で上記ペイペルに師事しています。仏印象派や宗教曲の影響を受け、ポリフォニー構成が特徴ですね。画家のエッシャーは叔父にあたります。
■ Sonata for violin and piano (1950年)
即興的ポリフォニーではなく変奏的な旋律を絡めます。pfの二声部もポリフォニー的ですね。無調でしょうが混沌ではなく調性の延長線上にあるので聴きやすいですね。新古典派を無調化したらこんな感じ?!



アレクサンデル・フォールモーレン (Alexander Voormolen, 1895/3/3 - 1980/11/12)
ユーレヒト音楽院の同級生にペイペルがいますね。パリ留学でルーセルに師事し、ラヴェルやディーリアスに厚遇されていたそうで、仏印象派の傾向です。後年にはM.レーガーらの影響を受けている様です。
■ Pastorale for oboe and piano (1940年)
まさに印象派の音色ベース、機能和声の美しい楽曲です。悪く言うと時代錯誤的かもしれません。なぜここに?!



トン・デ・レーウ (Ton De Leeuw, 1926/11/16 - 1996/5/31)
メシアンに習い、若い頃はベルトークの影響もある様です。インドやジャワも訪れ民族音楽を志向していましたね。技法的には微分音を駆使する作曲でした。
■ Sonatina for violin and piano (1955年)
基本は機能和声の速度変化の揺さぶりをつけた曲です。明確な微分音はわかりませんが後半に不協和音を挟んでいます。もちろんpfは微分音を出せませんね。(調律や特殊奏法なら別ですが)

■ Improvisation on the Dutch Christmas carol 'Midden in de winternacht'
特殊奏法らしき音色の静音vnと点描pfでクリスマスキャロルをやっています。一番前衛的で面白いです!!



いずれも完全無調、セリエルの様な、ではなく調性ベースに無調化の様な和声ですから違和感は薄いですね。「ちょっと気持ち悪いけど楽しめる」的でしょうw
前衛隆盛へ向かう時代、当時の前衛先端メンバーからは攻撃の対象となった様な気がしますね。

グラファンのvnに特筆する様なものは感じられませんでした。音色も細くも太くもキレキレでもありませんね。ブランケンのpfは少し煌きがあって悪くない感じですね。




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ユルク・フレイ(Jürg Frey)のクラリネットで聴く『Beuger・Cage』ヴァンデルヴァイザーの"音"


ユルク・フレイ
(Jürg Frey, 1953/5/15 - )
ヴァンデルヴァイザー(Wandelweiser)楽派のスイス人現代音楽家にしてクラリネット奏者、スイス在住でクラリネットの指導もしています。Wandelweiser Komponisten Ensemble(ヴァンデルヴァイザー楽派のトップメンバーで構成されています)のメンバーとしても活躍していました。今回はクラリネッティストとしてボイガーのヴァンデルヴァイザー楽曲とJ.ケージを演奏しているCDです。

ヴァンデルヴァイザー楽派については「このblogで言う現代音楽」でどうぞ。実はこの世界は日本も頑張っていますね。


アントワン・ボイガー
(Antoine Beuger, 1955/7/3 - )
今更ジョン・ケージ(John Cage, 1912/9/5 - 1992/8/12)の紹介は不要でしょう。ボイガーはオランダの現代音楽家でフルート奏者ですね。ジャンルはヴァンデルヴァイザー(Wandelweiser)楽派で、本格的に作曲活動に入ったのは1990年代からで遅咲きかもしれませんね。もう少し知りたいのですが情報が不足です。




dialogues (silences), (1993年) / Antoine Beuger
単音が時に高く時に低くポツ…ポツ…と鳴ります。殆どは無音の空(くう)です。これがヴァンデルヴァイザーで、無音の中に現れ消える音を聴くわけです。空調を入れていると、その音に負けてしまいます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Music for One, (1984年) / John Cage
沈黙を聴くとなれば、この人でしょう。もちろんヴァンデルヴァイザーではありませんが、言わずもがな実験音楽総本山です。晩年の作品になり、ボイガーに比べると音数も増えて音色も強音が混ざりますね。ポツ・ポツとした音の出現ではなくて引っ張る様な音色や旋律も出てきますから"音"より"曲"でしょうか。


現代音楽の中でも実験音楽ですから音楽スレスレの世界ですね。無音の中に現れる"音"を感じて味わう?わけですから旋律も調性も全く関係ない世界です。個人的にはLiveだとより面白いのですが、CDじゃ????って感じもしますかね。

ただ、静音の中に強音の出現と言ったG.シェルシの様な前衛の楽風を思い切り削って行ったらこのアルバムのケージを経てヴァンデルヴァイザーに辿り着く気もします。そんな楽しみもあるのがこの世界かもしれません。

何枚か所有しているので懲りずに紹介しますね。ヾ^^;




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アンネ=ゾフィー・ムターのヴァイオリンで聴くペンデレツキ『Anne-Sophie Mutter Hommage à Penderecki』


クシシュトフ・ペンデレツキ
(Krzysztof Penderecki, 1933/11/23 - )
ポーランドの現代音楽家ですが、前衛的無調から始まってはいても重厚で暗い調性回帰か宗教色かといった印象が拭えませんね。以前、交響曲全集をインプレしていますが印象は変わりませんでした。今回も1990年代以降の作品なので、どうでしょうか。


アンネ=ゾフィー・ムター
(Anne-Sophie Mutter, 1963/6/29 - )
言わずと知れたドイツのビッグネームですね。10代でカラヤンの秘蔵っ子、近現代音楽もレパートリー、近年は随分と痩せました、と言った個人的印象です。演奏スタイルは弾き振りの影響もあってか"これ見よがし"から"切れ味"になってきましたね。(メンデルスゾーンで聴き比べています)

そのムターがペンデレツキと長年の交友があったとは知りませんでした。全曲ムターに献呈されていて、メタモルフォーゼン以外はムターからの委嘱曲でもあります。「ヴァイオリン・ソナタ第2番」は世界初録音*だそうで、今年85歳を迎えるペンデレツキへのオマージュという事で2CDsetでの登場ですね。
普段ならほぼ興味の湧かないセットですが、その様な話を知ったら聴いてみたくなりました。




ラ・フォリア (2013年), ヴァイオリン・ソロのための
近年の9パート、途切れ目なしの楽曲です。陰鬱な音色の調性旋律を使った極小曲の集まりで、反復(変奏含む)も強く新古典主義的にも感じますね。曲の特徴は薄いですがムターのvnは切れ味が、適度にですが、鋭いですね。ムターが好きそうでソロのコンサートには良さそうです。

協奏的二重奏曲 (2010年), ヴァイオリンとコントラバスのための
曲調は類似ですがダブルベースと互いの旋律がdialogue的に重なります。ポリフォニーではなくホモフォニーで古典的ですが表情豊かでペンデレツキ的刺激もあり面白いですね。

 ★ 試しにYouTubeで観てみる?

ヴァイオリン・ソナタ第2番* (1999年), ヴァイオリンとピアノのための
実はこれだけが2017年新録音、五楽章形式での陰鬱で重い空気のペンデレツキらしい楽曲です。旋律は変奏を含めて反復されています。また時に民族音楽の色合いを見せるのは気配が変わり面白いですね。曲の気配が"あっけらかん"としている訳ではないので、それらしい気分で聴くwには楽しめますね。

メタモルフォーゼン, ヴァイオリン協奏曲第2番 (1992-1995年)
ペンデレツキ指揮、ロンドン交響楽団の演奏で六楽章構成、1997年録音の再発"Metamorphozen"ですね。上記CD1の楽風を管弦楽に置き換えただけ、と言っては失礼かもしれませんがそんな感じです。静的パートに表現を与えて悪くはないのですが代わり映えしない様な。ペンデレツキ本人が指揮をしているので曲は意図通りなのでしょう。
ただコンサートで聴いたら陰影もあり演奏時間も適度なので聴きごたえがありそうです。ムターは繊細・神経質でいい感じですが前に出てこないですね。(ミキシングの問題?!)

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  1st mov. Allegro ma non troppo になります。



ムターの程よい切れ味のvnは表現力を感じましたね。今回初録音*一曲のみが2017年で後は旧録音なのは残念ですが…

一方ペンデレツキの曲は、無調前衛の現代音楽に軸足を置いて聴かなければ、機能和声+αの幽玄深淵さと刺激もあり十分に楽しめそうですね。バルトークあたりがお好きならば良い感じかと。




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現代音楽の『MUSICA VIVA』シリーズについて:MUSICA VIVA 03 / Ustwolskaja, Rihm, B.A.Zimmermann


MUSICA VIVA
まずはMUSICA VIVAシリーズについてですね。
『ムジカ・ヴィヴァ・ミュンヘン (Musica Viva München)』シリーズはCol Legnoレーベルのヴルフ・ヴァインマン(Wulf Weinmann, owner and label manager)が、バイエルン放送局主宰の同音楽祭(設立は1945年Karl Amadeus Hartmann)の音源をリリースしたものになりますね。

基本的には欧州エクスペリメンタリズムで、ダルムシュタットやドナウエッシンゲンと同列の音楽祭でお馴染みの顔ぶれとなります。現代音楽ファンには知られたシリーズですね。
その後ヴァインマンが新たに設立したNEOSレーベルに引き継がれる事になります。


MUSICA VIVA 03
三人の現代音楽家を取り上げていますね。いずれもビッグネームで、演奏はバイエルン放送響(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)になります。

Galina Ustvolskaya (ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ, 1919/6/17 - 2006/12/22)
後期の反復とクラスターとモノフォニーの個性的な音が一時期人気を博しました。少し古い20世紀の現代音楽家としては好きな一人です。

Wolfgang Rihm (ヴォルフガング・リーム, 1952/3/13 - )
言わずと知れたドイツの現代音楽家で三人の中では唯一存命、まだ66歳、ですね。後期ロマン派との折衷的な作風で当時の前衛シュトックハウゼンやブーレーズとは相反するものでしたね。前衛の衰退後「新しい単純性」などを標榜しますが、ラッヘンマン達のエクスペリメンタリズムとは歩調を合わせませんでした。アコースティックに拘り、作品数が多い、個人的には聴く機会が少ないです。

Bernd Alois Zimmermann (ベルント・アロイス・ツィンマーマン, 1918/3/20 - 1970/8/10)
好きなちょっと古い20世紀の現代音楽家B.A.ツィンマーマンです。10CDほどですがインプレもしてあり、その中に全体印象を残してあります。→ こちら


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Sinfonie Nr. 3 - Jesus Messias, Errette Uns! (1983年) / Galina Ustwolskaja
 [Conductor – Markus Stenz, Voice – Valeri Scherstjanoi]
旧ソ連時代、中後期の作品「交響曲第3番」ですね。副題に"救世主イエスよ、われらを救いたまえ"と付いています。この時代のソ連では日の目を見る機会は皆無に近い無調の現代音楽ですが、不協和音で斜に構えた様な機能和声的な旋律も顔を出しますね。基本はウストヴォーリスカヤらしい等拍的なリズムとホモフォニー(mono的)反復でしょう。ウストヴォーリスカヤらしさ全開ですね。演奏はややスローな気がします。

 ★ 試しにYouTubeで観てみる?
  ゲルギエフ指揮、ミュンヘン・フィル。2016年8月22日のBBC・Promsですね。

Musik Für Klarinette Und Orchester [Über Die Linie II] (1999年) / Wolfgang Rihm
 [Clarinet – Jörg Widmann, Conductor – Sylvain Cambreling]
「クラリネット協奏曲」で、clは来日も控える人気の現代音楽でもあるJ.ヴィトマンですね。序盤は静的スローで12音を使った様な不協和音をロングトーンで並べたクラリネット独奏が前面にいます。以降もテンポが早くなったり協奏的になったりもしますが、音数は決して多くなく印象は幽玄で美しさです。片足は調性にいて今の時代のクラシックでしょうね。

Photoptosis - Prelude Für Grosses Orchester (1968年) / Bernd Alois Zimmermann
 [Conductor – Markus Stenz]
「フォトプトーシス」はB.A.ツィンマーマンの後期を代表する知られた曲の一つですね。暗く淀んだ混沌、ロングトーンと各楽器の絡み、から始まります。そこに混沌とした管楽器の強音が出現して緊張感が増していきます。中程でベートーヴェンの引用が入るのも"らしい"ですね。そしてラストに向けてはポリフォニーで各楽器が渦を巻くような混沌とした流れを作り激しさを増して終わります。強烈でやっぱり素晴らしい!!

この曲は今までにハンス・ツェンダー(Hans Zender)の指揮で2回ほどインプレしています。本演奏を③として比べてみました。
フォトプトーシス3CD聴き比べ
 ① ザールブリュッケン放送交響楽団 (Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken)
 ② ベルリン・ドイツ交響楽団 (Radio-Symphonie-Orchester Berlin)
対比で言うと①が序盤の暗い淀みが強く②は弱いです、③は静かに潜んだ感じです。強音の割込みは①はパルス的刺激で②と③は流れを強調でしょう。後半の激しい混沌は①は脅迫的、②はキラメく混沌を感じますが③は弱さを感じました。
①は淀んだ混沌とパルスの対比、②は管楽器の鳴りとラストの混沌で聴かせてくれますね。本CD③は①②と比べると静的で落ち着いた流れを意識しますね。
単独で聴けばどれも素晴らしいですが、好みは両極の①と②で甲乙つけがたいでしょうか…



時代背景を考えて聴くとウストヴォーリスカヤとB.A.ツィンマーマンは本当に素晴らしいですね。リームも前衛ではありませんが、美しい響は拒絶反応が少ないと思います。







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マイケル・ハーシュ(Michael Hersch) の「end stages, violin concerto」を聴く | ヴァイオリンはコパチンスカヤ


マイケル・ハーシュ (Michael Hersch, 1971/6/25 - )
米現代音楽家でピアニストのハーシュは18歳の時にショルティ指揮のベートーヴェン「運命」のビデオを観て音楽の世界に入ったという変わった経歴ですね。バルティモアのピーボディ音楽院から始まり、ジョン・コリリアーノらと学んだこともあります。またタングルウッドではクリストファー・ラウズに師事し、PMFの参加で来日もしていますね。欧州ではヘンツェやベリオといったビッグネームの下でも働いていました。


end stages, violin concerto
一曲目のヴァイオリン協奏曲はパトリツィア・コパチンスカヤ(Patricia Kopatchinskaja)の委嘱による作品ですね。個人的にはそれで本アルバムに興味を持ったわけですがw 初演は同年Saint Paul Chamber Orchestraですね。本CDではInternational Contemporary Ensembleになります。
「end stages」はOrpheus Chamber Orchestra の委嘱・演奏です。Kevin Tuttleの死を元にした絵画に影響されていて、その画像がライナーノートにも入っていますが気持ちの良いものではありませんね。



violin concerto (2015年)
4パートの楽曲です。無調で即興的なポリフォニー風ホモフォニーw、キレる強音と緩徐の構成です。緩徐パートでも音数が減って静的になっているだけで、機能和声的な旋律は感じられませんね。今の時代の現代音楽の主流が多様性の流れとすれば硬派?と言えるかもしれません。コパチンスカヤのvnもPart III, IVではソロを明確に感じられる切れ味を聴かせてくれますが、殆どは不協和音で音色を奏でる全体構成の一部になっていますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ルツェルン音楽祭でのコパチンスカヤ。part I ですが一見の価値ありです!!


end stages (2016年)
1'〜4’程度の小曲8パート構成です。静的パートが主流となり少しドローン的なロングトーンの構成が入ってきて、調性を感じられる様な旋律がありますね。こちらの方が多様性の構成で、随分と聴きやすくなって個性は減っている気がします。静的流れに刺激音が乗り込むのも現代音楽としては多い流れですよね。


ヴァイオリン協奏曲は、遠慮なしバリバリの無調現代音楽ですね。多様性主流の21世紀現代音楽にあって懐かしささえ感じます。スコアに小節は存在していそうで無拍ではありませんから大丈夫、何が?!w ←実験的混沌ではありません。ヾ^^;

コパチンスカヤがハーシュを知ったのはご主人とインターネットで音楽検索をしていて見つけたそうです。コパチンスカヤ曰く「うわべだけの美しさや飾りも妥協もない。まるで手術の様に全てが正しい場所にある。」との事です。流石は現代音楽のコパチンスカヤですね。CD化に感謝しましょう。




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ミェチスワフ・ヴァインベルク(Mieczyslaw Weinberg) の「交響曲 第10番・第6番」を聴く


ミェチスワフ・ヴァインベルク (Mieczyslaw Weinberg, 1919/12/8 - 1996/2/26)
ポーランド生まれで、旧ソ連で活躍した現代音楽家ですね。
まずは名前が厄介です。このCDではソ連名"Moishei Vainberg, モイセイ・ヴァインベルク"となっていますが、一般的には上記ポーランド名からの英表現が今は一般的かと。楽風は新古典主義でショスタコーヴィチに影響を受けているとされていますが、ミャスコフスキとプロコフィエフを感じますが如何でしょう。


Symphonies Nos.10 & 6
20ある交響曲の中の二曲で、中期の作品になりますね。代表作の一つである第10番はルドルフ・バルシャイ指揮モスクワ室内管弦楽団に献呈されて初演、初録音(本CD, mono*)になります。
*6番はstereoです。



Symphony No.10 in A minor (1968年)
第6番の5年後、同じ五楽章形式ですが演奏時間は短くなっています。不協和音が生かされ調性が薄くなり、反復・変奏が強まります。構成が新古典的なパートと緩徐パートの対比なのがヴァインベルクでしょうか。特徴的なのは各楽章にリード楽器が現れて、オケと協奏になっている事でしょう。第6番より楽しめると思います。(mono録音ですが音質も十分です)

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Symphony No.6 in A minor (1963年)
五楽章形式です。不協和音を生かした微妙な美しさの第一楽章から始まり、少年合唱団の入る二・四楽章、派手で民族音楽を感じる第三楽章、と変化に富んではいますが全体としてはロシア新古典主義的という処でしょうか。コンドラシンの指揮(手兵モスクワフィル)で、色付けはされていますが。

以前インプレしたウラディーミル・ランデ指揮サンクトペテルブルク響の第6番に比べると揺さぶりが強め繊細さ弱めです。不協和音による浮遊感の透明さがやや劣る気がしますが陰影がロシア的ですね。これは完全にコンドラシンのパターンだからでしょう。


明瞭強音のロシア的新古典パートと陰鬱な緩徐パートの組合せで、20世紀ソ連時代を感じさせるロシア音楽。ちょっと中途半端。そんな感じですね。個人的には緩徐パートは好みかもしれません。




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クロード・エルフェ(Claude Helffer)のピアノで聴く現代音楽ピアノ曲集『Musique Contemporaine pour Piano』


クロード・エルフェ (Claude Helffer, 1922/6/18 - 2004/10/27)
現代音楽を得意としたフランス人ピアニスト。カサドッシュにピアノを師事し、ブーレーズ、ギーレン、マデルナ、シェルヘンといった現代音楽を取り上げる指揮者との共演も多いですね。


Contemporary Music For Piano
フランス人現代音楽家のピアノ曲オムニバスになります。年代的にはエルフェ本人も含めて前衛の隆盛から衰退期の波を受けた時代の顔ぶれでしょう。(P.マヌリを除き)

ベッツィ・ジョラス (Betsy Jolas, 1926/8/5 - )
 アメリカ系フランス人の女性現代音楽家で、ミヨーやメシアンに師事しています。メシアンの代わりに音楽院でアナリーゼを受け持ったりしましたが、彼女の前衛性は当時としては受け入れられたとは言えないかもしれません。

ジルベール・アミ (Gilbert Amy, 1936/8/29 - )
 ジョラスと同じくミヨーとメシアンに師事したフランス人現代音楽家です。ダルムシュタットではシュトックハウゼンにも習い、とりわけブーレーズからの信頼が厚かった様ですね。

アンドレ・ブクレシュリエフ (André Boucourechliev, 1925/7/28 – 1997/11/13)
 フランスの現代音楽家で、ダルムシュタットに通いながらベリオやマデルナに習っていますね。米前衛に触れ、偶然性の音楽にも薫陶されています。

フィリップ・マヌリ (Philippe Manoury, 1952/6/19 - )
 好きな現代音楽家の一人で電子音楽系現代音楽を代表する一人ですね。紹介済みですので割愛です。

ヤニス・クセナキス (Iannis Xenakis, 1922/5/29 - 2001/2/4)
 言わずと知れたクセナキス、もちろん割愛です。m(_ _)m


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hellferCD.jpg
(色々検索してみましたが、amazonには登録が見つかりません)

B for sonata (1973年), Betsy Jolas
点描で音列配置的です。セリエルかどうかは聴いただけではわかりませんが、それをベースにして仏印象派の様な和声と混ざります。前衛の衰退が明確になった時代の作品ですから、折衷的なポスト・セリエル作品が出てきても不思議ではありませんね。現在では絶滅危惧種の様な現代音楽の類かもしれません。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?

Cahiers d'Epigrammes (1961年), Gilbert Amy
こちらも無調音列技法の様な曲になります。時代は前衛真っ只中ですからセリエルであって不思議はありません。実際にセリエルかはライナーノートにもありませんが、この時代の作品らしく楽曲構成について本人の記述があります。この曲の方が絶滅危惧レベルは高そうですw

6 Etudes d'arès Piranèse (1975年), Andre Boucourechliev
年代から多少の多様性がうかがえる様に感じますが、それでも根底にセリエル的な無調がある気がしますね。クラスター的な音と、セリエルでは禁止された三度五度を使った旋律が存在してきます。エチュードなので技巧系になりますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Angela Toshevaのpfになります


Crytophonos (1974年), Philippe Manoury
エルフェに献呈された曲で初演もエルフェだそうです。マヌリ初期のポスト・セリエルの点描的音楽(Punctualism)ですが、それでも今の楽風を思わせる良さが見られます。現在の電子空間音響系の現代音楽は素晴らしいですが、その萌芽が見えるのは楽しいです。

Mists (1981年), Iannis Xenakis
クセナキス後期の難読スコア、四声部で書かれた、の曲ですね。この後六声部の難曲Keqropsを書くことになりますね。クセナキスらしい陰影強い表情のポスト・セリエルの楽曲です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア(四声部)付きです



前衛全盛の時代のピアノ曲、音列技法を中心としたポスト・セリエルが並びます。今は昔の物語、といった趣でしょう。当時を振り返って懐かしさに浸るにはもってこいかと。






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ボフスラフ・マルティヌー(Bohuslav Martinu) の「弦楽四重奏曲 第3番, 4番, 5番」を聴く


ボフスラフ・マルチヌー (Bohuslav Martinů, 1890/12/8 - 1959/8/28)
多作家で知られるチェコの近現代音楽家マルティヌーは、初期チェコ時代、1923年からのパリ時代、1941年ナチスを逃れた米国時代、1953年からの欧州時代に分かれますね。
その楽風は印象派(チェコ時代後期)から新古典主義、そして新印象主義(欧州時代)と変化しています。前衛的無調に手を染めたことはありません。

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String Quartets 3, 4 & 5
弦楽四重奏曲は第1番(1914年)から第7番(1947年)まであります。ちなみに第1番は12歳での作品で、今回収録の3, 4, 5番はパリ時代の作品になります。
演奏はエンペラー弦楽四重奏団(Emperor String Quartet)ですね。



■ 弦楽四重奏曲 第3番, H.183 (1929年)
フーガやポリフォニーを織り交ぜて刺激にあるサウンドで新古典主義的な流れです。緩徐楽章では調性感の薄さを生かして気持ちの良くないw旋律を奏でます。折衷性が高く先鋭的、今の時代にピッタリくるクラシック弦楽四重奏曲に感じますね。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?
  全三楽章の抜粋です。Bennewitz Quartetによる2017年Liveです。


■ 弦楽四重奏曲 第4番, H.256 (1937年)
8年後の作品になりますが、民族音楽の要素が少し強くなっているでしょうか。強い音色を基本とする流れは変わりませんが、美しさと調性の薄さが増している様です。ポリフォニーとホモフォニーを混ぜた様な旋律のせめぎ合いも楽しいですね。小刻みな反復(変奏含め)とそこからの速い上昇・下降音階の構成がくどいと言われると、気にはなりますがw

■ 弦楽四重奏曲 第5番, H.268 (1938年)
1年後ですから大きな変化はありません。小刻みハイテンポな反復・変奏が骨格を成しているので同じ様な曲に感じてしまいますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


刺激とメリハリの強い機能和声範疇に納まりそうなクァルテットで、コンサート受けしそうですね。今の時代のクラシック弦楽四重奏曲として楽しめると思います。
通して共通するのはリズムを含めた反復・変奏の執拗さ、そして緩徐楽章での調性の薄さでしょう。続けて聴くと少しくどいでしょうか?

本インプレ(年代順)は、CD収録順とは逆になっています。








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ヨハネス・カリツケ(Johannes Kalitzke) の現代音楽オペラ「Die Besessenen」を聴く


ヨハネス・カリツケ (Johannes Kalitzke, 1959/2/12 - )
ドイツ人の指揮者で現代音楽家、以前も歌劇「音楽家ジャック・ティーアガルテンの死による物語 (Report of the Death of the Musician Jack Tiergarten)」をインプレしています。
作曲に関してはヨーク・ヘラー(York Höller)に師事し、エレクトロニクスをIRCAMで習っていますね。


Die Besessenen (取り憑かれて)
ポーランドの劇作家ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ(Witold Gombrowicz)の同名小説を基にした四幕75分のカリツケ四作目のオペラになります。「ティーアガルテンの死」と同様に人々の思惑と死で、タオルがキーですね。
タイトルは"脅迫"という日本語標記(naxos)が見られますが、"取り憑かれる"と言った意味の方がストーリーに合っている気がします。英題(The Possessed)もそう訳されていますね。
Theater an der Wien による委嘱作品で、カリツケ本人指揮 Klangforum Wienの演奏になります。


配役とあらすじ
Ocholowska (Majaの母) : Noa Frenkel
Maja (Ocholowskaの娘) : Hendrickje van Kerckhove
Cholawicki (Ocholowskaの使用人で老王子の世話人) : Leigh Melrose
Leszczuk (Majaの恋人) : Benjamin Hulett
Holszanski (老王子) : Jochen Kowalski
Skolinksi (美術史家) : Manfred Hemm
Maliniak (金持ちの老人) : Rupert Bergmann

娘Majaを金持ちに嫁がせたい母Ocholowskaは使用人で老王子Holszanskiの世話人であるCholawickiとの結婚を画策します。目的は王子蔵の絵画を売って高級ホテルの所有です。
 しかしMajaには恋人のLeszczukがいて、二人で絵画を持ち逃げする事を計画します。一方Cholawickiは美術史家Skolinskiを呼んで王子の城の絵画を鑑定、そこに幽霊がいる事を知ります。
 それは王子が認知を拒んだ私生児の息子がタオルを使って自ら絞殺死した、そのタオルが現れるのでした。王子は苦悩し、息子が許してくれる事を望んでいました。
 一方MajaとCholawickiの結婚は失敗し、母Ocholowskaは老紳士のMaliniakと結婚させようとしますが、その矢先Maliniakは殺害されてしまいます。
 Mayaは王子の息子がすでに許していると信じてタオルから呪いを解放し、王子の平穏を取り戻します。そこでCholawickiは絵画を持ち出して、美術史家が国に帰属する物だというにも関わらず、売ってしまいます。
 波乱の末、MayaとLeszczukはそれぞれ異なる未来に向かって進んで行く事を決めます。



Die Besessenes (2008-2009年), Opera in four acts
音楽は出し入れの強い無調の混沌ですが、基本はホモフォニー構成を感じオペラ背景音楽としては違和感は少ないでしょう。一方歌唱は明瞭な旋律は無く、トーキングに近い不協和音旋律で歌われます。とは言え大きな音程跳躍も無いので舞台全体としては今の時代のオペラであり、現代音楽を敬遠される方にも楽しんでもらえそうです。(第三幕後半あたりは前衛度が高いところも散見できますが)

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  超ダイジェストですが映像付きで雰囲気は十分伝わると思います



今まで何作も現代音楽オペラをインプレしていますが、現代音楽による背景音楽は実験的な作品はないので違和感なく楽します。歌も人間は微分音等で歌ったりノイズで表現したりする事はなく、旧来のオペラに比べれば演劇に近いのかもしれませんね。完全実験的前衛のオペラも観てみたいですが…

82ページのライナーノートに舞台のカットと英訳、原語は独語、が載っていて展開は事前に読めますが、やっぱり映像で観たいですね。演技は狂気もありそうなのでDVD付きで出してくれたらよかったのですが。(そういう作品もありますから)




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ミカエル・ジャレル(Michael Jarrell) の朗読オペラ「Cassandre」を聴く


ミカエル・ジャレル (Michael Jarrell, 1958/10/8 - )
スイス人現代音楽家で、クラウス・フーバーに師事していますから基本は「新しい複雑性」のフライブルク楽派という事になりますね。その証は技巧性を基本とするスコアや、スコア自体を32分音符グリッドの様なものに見られる様です。IRCAMで電子音楽コースにも入っていますね。
楽風の変化は多様性に変わる今の時代のメインストリームにあり、機能和声や穏やかさを見せる様になっています。


カッサンドラ
ジャレルの代表作の一つで、サブタイトルに『アンサンブルと女優のための朗読オペラ』とある様に劇音楽で16の小曲構成、約55分ほどのギリシャ神話を元にした小作品になります。
演奏はスザンナ・ マルッキ(Susanna Mälkki)指揮、アンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble intercontemporain)で、IRCAMがエレクトロニクスという問答無用のメンバー。女優はアストリッド・バス(Astrid Bas)です。


あらすじ
タイトルロールのカッサンドラはトロイ*の統治者の娘の一人で、アポロから予知・予言能力を授かりながら見棄てられ、その予言を誰も信じない様に呪いをかけられてしまいます。彼女はトロイの悲運を予言しますが、誰も信じません。トロイの木馬の話ですね。

*近年はトロイア表記の方が多い様です



Cassandre (1994年), a spoken opera for ensemble and actress
1.Apollon te crache dans la bouche… - 2.Hecube, ma mere… - 3.Le cypres… - 4.Vers le soir… -5.Quand je remonte… - 6.1er interlude instrumental - 7.Polyxène, ma sœur - 8.C‘était la veille du départ... - 9.Remarquez bien... - 10.2e interlude instrumental - 11.C‘était une journée pareille... - 12.Je vis mon frère hector... - 13.Enée vint à la nouvelle lune... - 14.Depuis qu‘en ce lieu... - 15.L‘effondrement vint vite... - 16.Oui, ce fut ainsi...
音はタンギングの連続音やトリル・トレモロを多用した重なりで流れ、それにロングトーンや打楽器の残響が入ります。旋律の類はなく、全体としては抑揚を抑えた空間音響系でしょう。エレクトリック処理の詳細は分かりませんが、サンプリングによる背景音やエコー処理だけということはないでしょう。

「新しい複雑性」とはいえ曲調は穏やか、ライナーノートのサンプル・スコアを見てもその気配はありません。唯一感じたのはCass.パートは歌詞だけなので合わせるのが難しそうに見えた事でしょうか。そのA.バスの語りはまさに朗読で、表現力は見せますが所謂(いわゆる)シュプレッヒゲザングの様な狂気はありません。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  残念ながら少しだけです。ヴィユアライズされていてインスタレーション化の方向にありますね


現代音楽アンサンブルをバックにした一人芝居か朗読で、相性は良い感じです。ただ全体としてはフラットで、実際に観るか、空間音響系音楽に集中して聴くか、という事になろうかと思います。Textはフランス語で英訳はありますが平行記述ではないので着いていけませんw

好きな曲調ですが抑揚に薄いのが足を引っ張っている気もしますね。




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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。





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