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ピエール=ロラン・エマールで聴く「バルトーク:ピアノ協奏曲集」E.P.サロネン指揮 サンフランシスコ響


Bartók Piano Concertos
Pierre-Laurent Aimard: pf
(San Francisco Symphony, Esa-Pekka Salonen: cond.)
ベラ・バルトーク(Béla Bartók, 1881-1945)はピアノ協奏曲を三曲残しています。(厳密には第三番は最後が未完で補筆完成版)
今回は "仏のピアニスト/北欧の指揮者/米オケ" と言うグローバルセットで聴いてみましょう。

バルトークの知られる曲を年代で見ると、「青髭公の城」が1911年で「オケ・コン」が1943年、初期の民族音楽の時代と米亡命後晩年期の激しさの時代です。

一方ピアノ協奏曲は、第一・二番が1926年と1931年で中間期、第三番は1945年の最晩年期です。中間期の薄い調性から新古典主義への一・二番がどう表現されるかがポイントでしょうか。





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1. ピアノ協奏曲第一番 (1926)
バルトークが自らの為に書いた曲で、ピアニストとしてこの時期活躍が多かったそうです。緩徐楽章を挟んだ三楽章で自らのpfで初演を行いました。
第一楽章】 一瞬ストラヴィンスキーのバレエ曲を思わせます。pfは和音の連打が飛び跳ね強鍵的な演奏で、オケもそれに負けない強音パートで応えるパワプレーのアレグロです。構成は新古典主義的ですが、民族和声や一部不協和音が絡んで微妙な調性に感じます。
第二楽章】 ここでもpfは和音連打、一楽章をスロー静音にした様な流れで調性はいっそう不安定感を増して来ます。途中で暗鬱なスケルツォも現れ民族和声の舞踏になります。
第三楽章】 第一楽章回帰的です。打楽器を含めてよりアグレッシブになってpfは技巧性を増しています。主導機が変奏されて楽器間を行き来して、pfがそれに絡みます。かなり諄いですw


2. ピアノ協奏曲第二番 (1931)
バルトークに言わせると"聴きやすい協奏曲にした"とかw ここでも緩徐を挟んだ三楽章で、自ら初演をこなしています。
第一楽章】 相変わらずpfは和音連打で、オケは派手な鳴りで対峙します。オケはやや反復が増えたかもしれませんが、pfの高速アルペジオはかなり厄介そうです。派手で諄い鳴りですが調性が明確な動機・旋律が増えて新古典主義の色合いが濃くなっています。
第二楽章】 第一番と大きく変わりました。幽玄な弦楽奏から入りpfも落ち着いたアルペジオで応えます。打楽器もそこいるのですが控え目です。途中prestoになりpfが高速アルペジオで疾走しますが、ラストは主部の弦楽奏で静の幽玄さに。コントラストの付いた素晴らしい緩徐楽章になりました。
第三楽章】 第一楽章回帰的に暴れます。とにかく鳴らして怒涛です。調性感と新古典主義傾向は強まり、何処か米フィルムミュージック風でもあります。


3. ピアノ協奏曲第三番 (1945)
奥さん(Ditta Pásztory-Bartók)の為に米国で書かれた曲で、その録音も残されているそうです。ラスト17小節は補筆になります。基本構成は一・二番と同じですが…
第一楽章】 大きく変化して、クセのある強い連打音で飛びまくるパートが抑えられています。変わって調性感が強まり、心地良い動機(旋律?)の反復・変奏が登場です。新古典主義と言うよりも新ロマン主義の様相になりました。民族和声や調性の薄さはありません。
第二楽章】 いかにも緩徐楽章で、個性は消えて印象派に鞍替えしたシューマンの様な感じです。(僅かな不協和音をpfに残しつつ)
第三楽章】 ここでもpfは走りつつも明瞭な旋律で構成されます。個性は極薄まり、どこかバルトークっぽいかな?!、と言った感じになりました。



バルトークの音楽変遷がわかるピアノ協奏曲三つです。
聴き疲れのパワーと微妙な調性感第一番、より新古典主義に向いた第二番、調性回帰の新ロマン主義第三番、です。個人的には諄い一番が好きですが。

pfはとにかく叩きますから、エマールにはピッタリなのではないかと言う感じです。オケも華やかな鳴りで応えています。ただ全体的には程良くまとまった演奏の印象にはなりますが。
個人的にはブーレーズDG盤(3オケ, 3ピアニスト)をオススメでしょうか。



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ジェイソン・エカート(Jason Eckardt)の「Passage」認知心理学とCIA


ジェイソン・エカート
(Jason Eckardt, 1971/5/17 - )
米現代音楽家です。元はジャズ・メタルのギタリストでしたが、A.ヴェーベルンを聴いて作曲に専念する事にしたそうです。
年代からいくととても不自然?な印象ですが、M.バビットにも影響を受けているそうなのでセリエル系が源流なのでしょう。
IRCAMやISCMそしてダルムシュタットにも登場していて、様々な大学で教鞭にも立っています。

楽風は無調で微分音や多様なリズム/ポリフォニーが軸とあります。音楽以外の物や事に触発されての作品が多いそうで、代表作である今回の"パッセージ"もその方向性です。



Passage
(JACK Quartet, Jason Hardink: piano 2)
1. Passageは少々テーマが変わっています。 知覚・感覚の遮断と人間心理に関する影響と言う、CIAが歴史的にテーマとして関わった事柄に関するものだそうです。(Project Bluebookを思い出します)
それを三つのパート "I. Subject (主題)- II. Ascension (昇天) - III. Testify (証明)" に分けています。よくわかりませんし、聴いてわかるものでもないでしょうが、ステージでは軍が尋問に使うライトが使われるとか。(下のYouTubeで見られます)

2. pulse-echoは楽器の持つ基本的なデザインからインスピレーションを受けているとの事です。

こう言った能書きの'頭でっかち'感がいかにも前衛的だと思いますw





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1. Passage, for string quartet (I. 2011/II. 2014/III. 2018)
[I. Subject] パルス的に弦楽音は飛び交います。旋律感は低く衝撃音的で、僅かなトリル・トレモロや微分音的なショートグリッサンドを挟みます。でも統制感は強くカオスではありません。似た楽曲が浮かびません。
ところが突如として明確なポリフォニーとなり、インプロビゼーション風に激しく、また細かいピチカートの繊細な絡みで、と変化を付けますがこれは'ありげ'に感じます。
後半は静音空間の中に主部?のパルス的な展開と中間部?のポリフォニーが混ざった形式となります。とても興味深い前衛音楽になっています。

[II. Ascension] ここでも静空間に音を散らばす流れで入ります。出現する音に統制感があって計算された構成が特徴的です。ポリフォニーではなくホモフォニーでしょう。音楽か音か、そのボーダーです。
後半には激しいインプロビゼーション風ポリフォニーが現れますが、それがないまま終わった方が面白いと思うのですが。

[III. Subject] それまでに出てきた技法・構成が表情を変えて構成されます。入りは執拗な反復強調と言う風、そして微分音グリッサンドのシャリーノ風ホモフォニー、'ギコギコ'ノイズ系も明確に現れます。


2. pulse-echo, for piano quintet (2013)
静空間に音の散らばりで緊張感と神経質な流れに終始します。"1-II. Ascension"に近い構成ですが、ここでは最後まで激しいインプロビゼーション風ポリフォニーは現れません。それがgoodです。
技法的には、pf特殊奏法、パルス的音発信、残響音、も使われています。



神経質さがあって練られた構成感が見事なのですが、全体とするとどこかで聴いた的エクスペリメンタリズムに感じてしまいます。

メインの技法はインプロビゼーション(風)とポリフォニーでしょうか、元ジャズプレイヤーだったルーツを感じます。そして烈と静のコントラストです。
CIAとの関係はわかりませんでしたがw、ベストトラックは "1-I. Subject" でしょう。



Jack Quartetの"1-I. Subject"のLIVEです。使われているのは問題の照明でしょうか



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ピエール・ジョドロフスキ(Pierre Jodlowski)の破壊的混沌「Séries for Piano and Soundtrack」


ピエール・ジョドロフスキ
(Pierre Jodlowski, b. 1971)
9年前に「Drones・Barbarismes・Dialog/No Dialog」をインプレしていて、以下の様に紹介しています。

フランス人現代音楽家でパフォーマーも含めて他分野に活躍しています。リヨン国立高等音楽学校でフィリップ・マヌーリに師事しIRCAMでも学んでいます。現在はフランスとポーランドを拠点に活動中です。名前から見てもポーランド系?
作風はIRCAMのCURSUSプログラムによる電子音処理がベースの様ですが、時にポリフォニックであり即興的です。また一方では統一的なリズム感のある展開も見せてくれますし、もちろん空間音響系の残響的でもあります。でも音列配置的な傾向は全く感じる事は無く、まさに今の前衛現代音楽です。

その後もIRCAMとの関係を続けてエレクトロニクスを軸にダンス・演劇と言った他分野芸術との協業も多く、マルチアーティストとしての活動へと進化している様です。



Séries for Piano and Soundtrack
(Małgorzata Walentynowicz, pf)
タイトル通りのピアノとエレクトロニクスの作品集です。そして個別の楽曲タイトルを見るとカラー・シリーズで6タイトル6色が振られているのがわかります。

以前から演奏されていたピアノ&エレクトロニクスの楽曲を今回のポーランド人ピアニストであるマウゴルザタ・ヴァレンティノヴィチの提案でまとめたのが本アルバムで、全曲LIVEです
年代順に聴いたインプレになります。(No.がCD順です)





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2. Séries Noire (2005)
語りとelec.ノイズのテープと強音インプロビゼーション的pfの組み合わせ、コラージュです。語りは何らかのサンプリングで、この曲の為にvoiceを採用しているのではないでしょう。
pfは技巧性も高く破壊的な強音の出し入れです。台風とか嵐の真っ只中みたいな…


1. Séries Blanche (2007)
まず入りのpfは調性単純旋律の反復になりました。微妙な変奏から左右の手が対位的になり、調性が緩やかに崩れてエレクトロニクスでディレイとループの様に入って来ます。この時点でポリフォニー(もしくはヘテロフォニー)になって、シンプルな混沌を作り出します。pfの打鍵が強まってクレシェンド、破壊的混沌へと進みます。
コーダ?はノイズとシンプルな高音pfの響きで収束です。


5. Séries Rose (2012)
fpは残響音を中心に、テープは何らかのシーンの対話、それがコラージュされます。信号ノイズなどelec.ノイズ、pfはアルペジオが増えて空間密度が上がって行きます。シンプルな流れからコンプレックスになるのは上記Séries Blancheと似た展開です。もちろん破壊的混沌へ持って行きます。


3. Séries Bleue (2013)
ハムノイズとpfの短音&残響の入りで、年々pfの入りがシンプル化しているのがわかります。ここでもゆっくりとコンプレックスになって、インプロビゼーション系のポリフォニーな流れに。単純な上り坂ではなく、繰り返してその流れが現れます。ディストーションした電子楽器音も入ったり、ドローンの様な流れになったり、ロック風になったりと作風多様化も見られます。でも後半は破壊的混沌ですw


4. Séries Rouge (2017)
エレクトロニクスなのかチューニングなのかpfは微分音的な崩れた音色を出して来ます。他の音も聴くと特殊奏法なのかもしれません。それが曲の軸となっていて、即興的混沌ではありますが明らかに音楽技法の変化が感じられます。でも後半は破壊的混沌ww


6. Séries Cendre (2022)
pfとエレクトロニクスが等拍的なリズムを刻む新しい技法が登場します。とは言え全体は混沌コラージュで後半破壊的混沌www



pfとテープの混沌コラージュです。pfは処々で調性旋律が出ますが、基本は無調混沌系。エレクトロニクスは昔で言うテープのサンプリング(フィールドレコーディングを含む)になります。ソフト(CURSUSプログラム?)を使ったライヴエレクトロニクスでしょう。

多少の変化はあってもドラスティックな楽風変化はありません。破壊的混沌は好きな方向で面白いのですがやや時代を感じてしまうかも。そんな感じの作品です。




"5. Séries Rose (2012)" でピアニストはCDと同じヴァレンティノヴィチです


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ヨウナス・アウスゲイル・アウスゲイルソン(Jónas Ásgeir Ásgeirsson)の『Fikta』オール・アイスランドの前衛アコーディオン


Fikta
(Jónas Ásgeir Ásgeirsson, accordion)
アイスランド人のアコーディオン奏者ですが、デンマーク王立音楽アカデミーで学位を取得、活動の拠点はデンマーク/コペンハーゲンの様です。

本アルバム"Fikta"で、アイスランド音楽賞2023クラシック/コンテンポラリー部門「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。

アイスランドの現代音楽家5人の作品で、作曲年代1972-2020年に渡っていますからアウスゲイルソンのスタイルだけでなく、アイスランド現代音楽の方向性も見えるかもしれません。
ドッティルさん達が一人も入っていないのがちょっと残念、🇮🇸を代表する人もいるので。





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フィンヌル・カールソン
(Finnur Karlsson, b. 1988)
アイスランド芸術大とデンマーク音楽アカデミーで習い、H.アブラハムセン, A.インゴルフソン, に師事しています。
"アコーディオン協奏曲"は今回演奏のJ.A.アウスゲイルソンとElja Ensembleの為に書かれていますが、COVID-19により初演が遅れました。

■1. Accordion Concerto (2020)
1, A Dream About Flying - 2. one and a -3. Thread / Longed for - 4. two and a - 5. Bontempi’s Ghost - 6. three and a - 7. Et Cetera
 7パートですが偶数パートは短い間奏曲。技術的には六音音階(hexatonic scale, -3.)やクラスター, エレクトロニクスを使っているそうです。
 まず1.はのっけからエレクトロニクスが絡み、多分w、ポリフォニー&クラスターっぽく。アルペジオが細かく刻まれて、静空間も対位的に作られて面白い入りです。
その後も間奏曲をリズム変化を付けて調性を崩しながら作りつつ、静の中の対位的旋律と強音を対比させて聴かせてくれます。楽器の特性を引き出す楽曲に演奏者が応えた楽しさがあります。

特殊な事がある訳ではないのですが、前衛には基本のポリフォニーとクラスター, エレクトロニクスや特殊奏法、調性の枠を越えようとする調性の崩しもあります。これは面白いです!!



アトリ・インゴルフソン
(Atli Ingólfsson, b. 1962)
本ブログでも紹介済みのインゴフルソンですが、仏G.グリゼーに師事していて音響系の技巧を使います。
この"Radioflakes"は文字通りラジオとアコーディオンの類似性を元に作られて、ラストはモールス信号のパターンを即興で奏でる様に指定されているそうです。(instructed to improvise ‘very irregular morse-like patterns’ · – ·   · –   – · ·   · ·   – – –   · · – · · – · · · – – · – · · · ·)

■2. Radioflakes (2004)
 入りは信号音的な単音、そこに何かを叩く様な音が入り、音幅とリズムが生まれます。広がりは調性を崩しながら複雑な対位法展開となって洪水に、処々で特殊奏法の音色も聴えます。1.と同じくこの楽器の持つ表現力を活かす作品とそれを生かす奏者のセットです。
テクニカルで聴かせるアコーディオンの技巧曲でもあるでしょう。流石はA.インゴルフソンです!!



アトリ・ヘイミル・スヴェインソン
(Atli Heimir Sveinsson, 1938-2019)
ケルン国立音楽大でB.A.ツィンマーマンに師事していて、ダルムシュタットではシュトックハウゼンのコースにも入っていたそうです。多様性を尊重していたそうですが、時代を感じます。
今回の作品の初演は2020年になってからで、作曲から随分と時間が必要でした。TEXTはロシアの詩人オシップ・マンデリシターム(Osip Mandelstam)によるものですが内容は不明です。

■3. Lieder und Intermezzi for soprano and accordion (1996)
 跳躍音階を含む尖ったsopですが調性内です。アコーディオンはその伴奏になっています。それ以上でも以下でもない様な…
と思っていたら2'過ぎくらいからはsopもヴォーカリーズになって、ロングトーン中心の空間音響系の流れに変化します。sopはシュプレッヒゲザングにもなって、強い反復やトリル・トレモロの流れになったりと、この曲も表現変化の多彩さと面白さがあります。



ソルケル・シーグルビョルンソン
(Þorkell Sigurbjörnsson, 1938-2013)
高校卒業後に米国で学んでいます。その後アイスランドに戻って音楽界で様々な職席を務め、アイスランド芸術家協会の会長の席にもあったそうです。多作家で知られているとの事です。
この曲はデンマークのアンサンブル"Trio Mobile"の為に書かれたそうです。

■4. Mobilissima visione (1972)
 鍵盤打楽器やピアノ、打楽器やE-ギターの音色が絡みアコーディオンが主役ではなく室内楽です。
反復とトリル・トレモロが軸となって組み合わせれ小刻みな表情を見せる調性ベースの楽曲で、各楽器の音色がヘテロフォニー的に絡む面白さが生かされています。



フリズリク・マルグレタル=グズムンドソン
(Friðrik Margrétar-Guðmundsson, b. 1993)
2017年にアイスランド芸術大学を卒業した31歳のアイスランド若手作曲家で、舞台やメディア音楽を得意としている様です。
この曲は学生時代からの友人であるJ.A.アウスゲイルソンの為に作られていて五度の周波数比を元にしているそうです。

■5. Fikta (2018)
 五度の和音とそれに比率割で与えられた音がロングトーンでハーモナイズする空間音響系の音楽です。全体とすると変化率は低めでアンビエントやネオクラシックの方向性も感じます。限定された平均率の音楽と言う事になるでしょうか。



まず一言で言うなら"素晴らしいアルバム"です。アコーディオンにこだわる必要もないほどですが、見事にアコーディオンの可能性を作曲家と演奏家で作り上げたと言って良いとでしょう。

調性ベースでその枠を超える為のポリフォニーや調性の崩し他の技法を駆使し、楽曲により前衛色であったり技巧色であったりとバリエーションも豊かなオススメの一枚です!!



"2. Radioflakes"のオフィシャルMVで、パフォーマンスもあるのかも
また、使用しているアコーディオンがかなり複雑な事もわかります




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心に染みる ギャヴィン・ブライアーズ(Gavin Bryars) の名作『Jesus' Blood Never Failed Me Yet』

この曲を再インプレしようと思います。今の時代、心を癒すのに音楽が何かしらの役に立つとすればこれが選択肢の一つかと。


イエスの血は決して私を見捨てたことはない
(ギャヴィン・ブライアーズ, b. 1943)
ブライアーズと言えばこの『イエスの血は決して私を見捨てたことはない』、1971年に作者不明のホームレスの歌(元は讃美歌)を元に作られています。

1993年再録音の本アルバムはExective Producerがフィリップ・グラス、そしてトム・ウェイツ(Tom Waits)が参加したロングヴァージョンです。





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  "Jesus' blood never failed me yet
  Never failed me yet
  Jesus' blood never failed me yet
  There's one thing I know
  For he love me so..."

  イエスの血は決して私を見捨てたことはない
  決して見捨てたことはない
  イエスの血は決して私を見捨てたことはない
  一つ知っていること
  私を愛してくださる...


この唄が延々と呟くように74'間歌われ、バックに弦楽四重奏、弦楽、フルオケ、と途切れ目なく展開していきます。
ホームレスの口ずさむ歌はテープによる反復(今で言うならサンプリングでループ処理ですね)、サウンドもアンビエントな変奏と反復、それがマッチして優しさに溢れます。ポストミニマルな環境音楽です。

曲名はそのまま「Tramp with Orchestra」(Trampは浮浪者、元大統領はTrumpさん、ご注意を) で、バックの演奏変化で4曲(string quartet, low strings, no strings, full strings)、最後の二曲が「Tramp and Tom Waits with full Orchestra」「Coda: Tom Waits with High Strings」になります。

ラスト二曲はトム・ウェイツが遠くから入りながらテープとのduoとなり、最後はコーダとある通り一人になって歩き去る様にフェードアウト終了します。トム・ウェイツを入れたのは賛否両論あるでしょうが、私はこの再録音盤が好きです。

ちなみに歌った老人は音源化される前に亡くなったそうです。R.I.P.

 ★YouTubeで聴いてみて下さい


心が沈んだ時など、この曲の素晴らしさが心を満たしてくれるでしょう。
こんなコメントはこのブログらしくありませんが、それしかコメントは浮かびません。






[PS] ブライアーズが編集テープをかけたまま、コーヒーを注ぎにいった際の出来事を以下の様に書いています。それがこの曲の全てを言い表しているでしょう。

I left the tape copying, with the door open, while I went to have a cup of coffee. When I came back I found the normally lively room unnaturally subdued. People were moving about much more slowly than usual and a few were sitting alone, quietly weeping.


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ドブリンカ・タバコワ(Dobrinka Tabakova)の管弦楽集「Concerto For Viola And Strings / Earth Suite 他」


ドブリンカ・タバコヴァ
(Dobrinka Tabakova, b. 1980)
ブルガリア系イギリス人の女性現代音楽家です。生まれはブルガリアですが、1991年にロンドンに移住、音楽関係はロンドンの王立音楽アカデミー(RAM)やGSMD, キングス・カレッジで学んでいます。

ルイ・アンドリーセン、フィリップ・マヌリ、ヤニス・クセナキス 等の前衛系のマスタークラスにも通っていましたが、ジョン・アダムズの影響が大きいかも

以前ECMレーベルからリリースされた"String Paths"が2014グラミー賞ノミネートで注目されましたが、その時は まぁECMだったので…



Orchestral Works & Concerti
(The Hallé Orchestra, Delyana Lazarova: cond.)
二曲の協奏曲を含む管弦楽集です。16年間(2004-2020)の四作品が年台バランス良く並ぶので彼女の技法的な変遷を確認出来そうです。

演奏はデルヤナ・ラザロワ指揮/ハレ管弦楽団で、2.はマキシム・リザノフ(Maxim Rysanov, va)が、4.にはガイ・ジョンストン(Guy Johnston, vc)がソリストで入ります。

ちなみにタバコワはハレ管の "Artist in Residence" (2022-23)で、本作はハレ管の副指揮者ラザロワのCDデビュー、タバコワとラザロワは同じブルガリアのPlovdiv生まれだそうです。

例によって年代順に聴いています。(No.が収録順です)





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2. Concerto for Viola and Strings (2004)
調性の流れで反復変奏が軸になっています。幽玄な気配を漂わせるのは今の時代のクラシックの典型でしょう。
ただ、耳障りの良い動機が存在しているのが珍しいかもしれません。明瞭な動機や主題を配さないのが今の主流になりますから。
四楽章で、アレグロ/緩徐/スケルツォ/アレグロ、そう言う感じです。前衛性はありません


4. Concerto for Cello and Strings (2008)
ここでもノコギリ音型のギザギザした反復旋律がより強調されています。それと上昇下降の音階が続く流れです。どのパートもそう言った構成なので同じ曲がいつまでも続く様な印象になってしまいます。背景にミニマルがいると思うとわかりやすいかもしれません。


1. Orpheus' Comet (2017)
約10年後の5'の小曲で、入りはちょっと混沌的になりました。でもノコギリ反復は明確に軸となっています。そして鳴りが派手になって米フィルムミュージック風のクラシックに寄りましたね。


3. Earth Suite (2018-20)
ドンシャン的な出し入れの強い流れ、そしてトリル・トレモロ的な反復、それが一層明瞭になりました。こうなるとポスト・ミニマルになるでしょうか?!
興味深いのは緩徐の第二楽章で、僅かながら対位的なスローの不安定さを作ります。今まで無かった流れです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  第一楽章 Tectonic です



機能和声の反復変奏ベースの楽曲です。
ギザギザとした反復の流れはミニマル方向になって、動機も存在して旋律感もあるので聴きやすい今の時代のクラシック音楽になるでしょう。

楽風は新古典主義的な流れからフィルムミュージック方向へと変化している様です。調性の縛りからの自由解放性はありません。




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ブルーノ・マデルナ(Bruno Maderna)の「衛星のためのセレナータ, ヴェネツィアン・ジャーナル 他」実験前衛の時代


ブルーノ・マデルナ
(Bruno Maderna, 1920-1973)
前衛の時代を生きたビッグネームのイタリア人作曲家/指揮者で、その立ち位置的にはP.ブーレーズ(1925-2016)と似ているかもしれません。
現代音楽家としては当然ながら欧エクスペリメンタリズムの技法を纏い、指揮者としては処々で表現主義的な尖ったタクトを振っています。(指揮は"あの"シェルヘンに師事しています)
この時代の好きな音楽家の一人です。



Serenata per un satellite, Venetian Journal, and other works
(Bruno Maderna Ensemble, Gabriele Bonolis: cond.)
マデルナ没後50周年を記念したアルバムです。1957-1972年のソロ/デュオ/アンサンブル/声楽付き管弦楽と幅広いヴァリエーションで前衛音楽の変遷が楽しめると思います。

一部資料は録音年が2003年になっていますが誤りで、当然裏ジャケ表記の2023年が正解です。





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1. Serenata No. 2, for 11 instruments (1957)
第一印象は典型的セリエル点描。各楽器が点描旋律で複雑な対位かポリフォニーに絡みますが平板です。その流れは鍵盤打楽器の登場で少しテンポアップし後半にはトゥッティ(orクラスター?)や等拍も登場します。
いずれ"今や昔"のセリエル期の残照に感じてしまいます。


2. Honeyrêves, for flute and piano (1961)
点描的ではありますが特殊奏法が入り速い流れも登場して少し表情を感じる様になりました。跳躍音階によるflとpfのdialogueです。


3. Aulodia per Lothar, for oboe d'amore (1965)
オーボエとイングリッシュホルンの中間の古楽器"オーボエ・ダモーレ"のソロ曲です。
点描からの脱出が見られ、反復変奏による旋律感を出しています。無調混沌ではありませんが不安定な調性ですから多様性へ舵を切った印象でしょうか。技巧性も高くしている様です。


4. Serenata per un satellite, for variable ensemble (1969)
ポリフォニーで即興的混沌の "いかにも前衛" です。(完全無調のカオスではありません)
心地良い旋律は皆無で、普通は前衛現代音楽と言うとこの様な楽曲をイメージするでしょう。そんな流れです。楽器編成を変えればフリージャズにも聴こえそうです。(スコアがあるのでフリーにはなりませんが)

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


5. Widmung, for solo violin (1967)
点描風に入って激しさとのコントラストを付けて来ます。そこには特殊奏法が絡んで、技巧性の高いパートも登場します。調性を大きく崩す様な印象は薄いのですが心地良い旋律は無く、今の時代につながる多様性現代音楽でしょう。


6. Venetian journal, for tenor, orchestra and tape, on word by J. Boswell (1972)
すぐに浮かんだのはB.A.ツィンマーマンのコラージュです。引用も多発されてなんでも有り、テープの役割が大きく色々な声や音が貼り絵の如くに現れては消えて行きます。それまでの流れとは全く異なります
まさにミュージック・コンクレートでしょう。これが進んで今のライヴ・エレクトロニクスの様な方向となりますね。まだIRCAM(フランス国立音響音楽研究所, 1977年ブーレーズ創設)も存在しない時代の作品です。



1950-1970年代の実験前衛音楽の隆盛期から停滞期に渡る音楽を一望出来るアルバムで、懐かしさを感じます。

もし貴方がセリエルからポスト・セリエルの時代を体感したいと思おうならベストチョイスの一枚になるでしょう。"こう言う時代もあったんだ" と。5.などは今でも誰かが作っている様な…w



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