武満徹の「Orchestral Works III, Autumn, etc」を聴く


武満 徹 (Toru Takemitsu, 1930/10/8 - 1996/2/20)
亡くなられてから22年も経つんですねぇ。時が経つのは早いです。武満さんも前衛最盛期から衰退の時代を生きたので、前衛の縛りから始まり封じた調性を解き放つ自由度(多様性?)への音楽への変遷でしたよね。久しぶりに聴いてみました。


Orchestral Works III, Autumn, etc
名曲「カトレーン」と同じ中期1970年代の管弦楽曲「Autumn」をメインに、調性感が増した後期1980年代の弦楽曲やフルート協奏曲といったオケ作品集ですね。
演奏は沼尻竜典指揮、東京都交響楽団です。



Autumn - Into The Fall After A Little While (1973年), For Biwa, Shakuhachi & Orchestra
 Biwa – Kakujo Nakamura, Shakuhachi – Katsuya Yokoyama
名作『ノヴェンバー・ステップス』(1967年) と同じ"琵琶"と"尺八"の協奏曲です。よりスロー化して静vs烈vs間のコントラストが明確になって来ています。その分、深淵で官能的な美しさが増して奏でられますね。二つの和楽器が奏でるパートはかなり類似性を感じます。"空"の中に感じる存在は進化している様に思えます。
個人的にはこのAUTUMNの方が好みですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

A Way A Lone II (1981年), For String Orchestra
後期ロマン派からの延長線上を感じる弦楽曲、例えばシェーンベルクの浄夜やマーラーの弦楽緩徐楽章の様な、の流れですね。武満さんらしい"揺らぎ*"を残していますが、それを排除すると不協和音の少し加わった緩徐曲風かもしれません。でもこの幽美さは心地よいですね。
*短くてクイックなクレシェンドやデクレシェンドの様な

I Hear The Water Dreaming (1987年), For Flute And Orchestra
 Flute – Hiroshi Koizumi
独特の"揺らぎ"と武満和声の不協和音が減り、やや平板化して来ています。それでも弦楽器と管楽器の奏でる音色は美しい響きですね。

Twill By Twilight (1988年), For Orchestra
ここでも同傾向が見られます。緩やかな流れが強まり、深淵ながら平和さがより濃く感じられます。

当時は和楽器が入ることに違和感を感じたものですが、AUTUMNは素晴らしいです。やっぱり武満さんは中期(1970年代)作品に魅力を感じてしまいますね。
美しい楽曲アルバムで、中期から後期への武満さんの変移もわかりますからオススメです。




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マルセル・ランドスキ(Marcel Landowski) の 協奏曲集を聴く


マルセル・ランドウスキ (Marcel Landowski, 1915/2/18 - 1999/12/23)
オネゲルに影響を受けたフランス人現代音楽家で、指揮はモントゥーに師事していますね。楽風的には仏近代音楽の流れを無調に展開した中庸さです。もちろん前衛ではありません。時代は前衛最盛期から衰退期に生きていますが。
経歴の派手さ、仏文化省の音楽・オペラ部局監督から仏国立アカデミー終身総裁、の方が象徴的かもしれません。


Concertos
協奏曲集になりますね。ピアノ、オンド・マルトノ、パーカッション、トランペット、電子音楽、といったバリエーション豊かなコンチェルトです。



■ Concerto No. 2 pour Piano et Orchestre (1963年)
ランドウスキの代表作の一つでしょう。三楽章形式で無調ですが旋律が主体で混沌の無調とは一線を画します。pfはソフト&スローからハード&クイックと幅広く、オケはより調性的です。この当時は前衛バリバリの時代、中途半端感が強烈だったでしょうね。

■ Concerto pour Ondes Martenot, Orchestre à cordes et percussions (1954年)
オンド・マルトノとパーカッションです。オンド・マルトノは例によって幽霊の様な音色、弦楽器群も調性薄めに幽玄な印象派的流れを作り、パーカッションが控えめに絡むといった様相です。第二楽章の冒頭は一瞬メシアン風?!

 ★試しにYouTubeで観てみる?

■ Concerto pour trompette, Orchestre et éléments électroacoustiques "Au bout du Chagrin, une fenêtre ouverte" (Paul Eluard) (1976年)
この時代らしくエレクトロニクスを使っています。流れは一曲目のピアノ協奏曲と似て、無調的tpに調性色のオケですが幽玄な流れを感じますね。とは言え前衛の衰退の時代背景にあっては難しい立ち位置の気がします。


ジョリヴェやオネゲルといった仏音楽の先達を思わせますね。前衛や実験とは無縁の無調で、不協和音や移調・転調的な話声です。特徴的なのはソロ楽器には無調を、オケは調性でといった構成でしょうか。
いずれ中途半端な退屈感は残りますが…




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エリーシャ・ネルソン(Eliesha Nelson) のヴィオラで聴く「Russian Viola Sonatas」


エリーシャ・ネルソン (Eliesha Nelson, ヴィオラ va )
アラスカ出身の女性ヴィオラ奏者エリーシャ・ネルソンが、ナイジェリア生まれで英国のピアニストのグレン・イナンガ(Glen Inanga)と組んだヴァイオラ・ソナタ集です。
取り上げた作曲家が旧ソ連の近現代音楽家というところがポイントですね。


三人の作曲家
バーバラ・ガイジェローワ (Barbara Gaigerova, 1903 - 1944)
女性作曲家で、カトワールやミヤスコフスキと共にモスクワ音楽院で学んでいます。楽風は時代を背景とした後期ロマン派と以降の流れです。

アレクサンダー・ウィンクラー (Alexander Winkler, 1865 - 1935)
ロシアで学んだ後にフランスやオーストリアに渡っていますね。後にプロコフィエフを教えてもいますが、グラズノフやリムスキー・コルサコフと共にサンクトペテルブルクの"ベリャーエフ・サークル, Belyayev Circle"の一員でもありました。

パウル・ユオン (Paul Juon, 1872 - 1940)
モスクワ出身のスイス系ロシア人で活躍したのはドイツになりますね。楽風はバリバリのドイツ・ロマン派になります。そういう意味では、このブログの対象ではないかもしれません。

 ("現代音楽CD[作曲家別]一覧" の対象はガイジェローワ一人ですね)



Suite for viola and piano, Op.8 : Barbara Gaigerova
四楽章で、ロマン派の香りが強い機能和声の楽章と、少し調性の薄い幽玄な緩徐楽章、そしてロシア民族音楽を感じるといった独特の構成です。va, pf共に鳴りの良い演奏ですが、特徴的な印象が残りません。緩徐楽章もvaなのでvnの様な細い音色は難しそうです。第三楽章のロシア風リズムや民族系が生きているかもしれませんね。

Pieces for viola and Piano, Op.31 : Alexander Winkler
後期ロマン派的な楽曲です。美しい音色のpart1、リズミカルで技巧的なpart2の構成です。part2が個人的には楽しめました。

Sonata for viola and piano, Op.15 : Paul Juon
古典派の流れです。

Sonata Op.10 : Alexander Winkler
三楽章で第三楽章は主題のアンダンテと7つの変奏、そしてコーダの9小曲構成になっています。曲調は古典(〜ロマン)派的、第三楽章の変奏もこれといったパートはありません。


作曲家としては古典・ロマン派(〜後期ロマン派)の流れで、それ以上でも以下でもありません。それを飲み込んで楽しめるならヴィオラらしい音色の旋律が生きています。

しかし個人的嗜好はvaを生かした今の時代の楽曲演奏ですから、vnからvcの音色までカヴァーする貴重な楽器とはいえvnの切れる様な高音や朗々としたvcの胴の大きな音色は出ないわけで、バシュメットの様な楽曲選択、例えばカンチェリとか、が欲しい気がしますね。
もしくは先日インプレしたアントワン・タメスティの様に前衛現代音楽で突撃するか……そりゃ無理ですねw




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ダリボル・ブクヴィッチ(Dalibor Bukvić) の Hrvatski Suvremeni Skladatelji を聴く


ダリボル・ブクヴィッチ (Dalibor Bukvić, 1968/1/1 - )
クロアチア人現代音楽家ブクヴィッチ(ダリボール・ブビッチの方が近い?)は、ザグレブの音楽学校を出てダルムシュタットでシュトックハウゼンに師事しています。その後パリのCNSMやIRCAMで習い、スペクトル楽派の雄ジェラール・グリゼーとも親交がある様です。2008年からはクロアチアのザグレブで活躍中ですね。


Hrvatski Suvremeni Skladatelji
Cantusレーベルから出ているクロアチア現代音楽家(Croatian contemporary composers)シリーズの一枚ですね。タイトルはクロアチア語の同名になります。
ソロから管弦楽、電子音楽まで聴く事ができます。



(DL版になります)

Spatial - Danse Des Apparitions (1998年), for electronics
電子音楽で左右の位相を使ったノイズ系ドローンですが、アンビエントではありませんね。残響音を残しているのはブクヴィッチの習ってきた音楽を背景に感じます。目新しさはありません。

Prophéties (1991年), for piano
テーマと6変奏の7つのピアノソロ小曲集です。主題は調性に不協和音的、音列的な印象で静から強への移行です。そもそもが旧態然とした動機で、その繰り返しと変奏ですから面白さが感じられないのが残念です。

Fantasia (1994/2008年), for flute
フルートソロで、やはり調性感漂う流れにスローな静からハイテンポ化します。動機の繰り返しと変奏も似たパターンですね。唸る様な超絶的技巧を感じる訳でもありません。

Musica Pian E Forte (1992年), for brass quintet
華々しい管楽器五重奏曲ですね。展開は同じですが、古典的なフーガさえ使って中途半端さが強烈です。

Diptih (1991年), for piano and ten woodwinds
上記曲の規模を大きくしたピアノと10人の管楽器奏者のための曲です。それでもpfの4/8拍子的ホモフォニーが面白さを出しているかもしれません。後半にはメシアンの様な管楽器とpfのポリフォニーパートもあります。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア付きで、繰り返しの印象がわかります。


Actus (1992年), for orchestra
一曲目の電子音楽と似た流れです。トレモロ・トリルに木管が被る静音パート、ピアノや金管が絡みます。個々の声部に特徴は薄いですが、ポリフォニーの幽玄さとクラスター炸裂の"それっぽい"気配がありますw

Afrodizzyak (1996年), for bass clarinet and piano - one musician
バスクラとピアノ曲で、両者特殊奏法です。ノイズ系になりますね。ここまでの小編成曲としては一番面白いでしょうか。ただ、調性感が存在するのは奏法とミスマッチの気がしますね。


調性感+不協和音的な曲が並びます。特に小編成ではワンパターン、古さ、平凡さと言った印象が拭えませんね。4拍子ホモフォニーや大きな楽器編成の方が面白いかもしれません。




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ドビュッシー(Debussy) の「映像 Images I, II」聴き比べ ▶︎ マルカンドレ・アムラン、バヴゼ、ミケランジェリ


アムランの久々の来日(2018年6月)を前にCD棚を見たら印象の薄いドビュッシー「映像」がありました。ならばと、好きなバヴゼ、基準となるミケランジェリでちょっと聴き直してみました。

Debussy-Images.jpg

【映像 第1集】(Images I, 1905年)
  1. 水の反映, Reflets dans l'eau
  2. ラモーをたたえて, Hommage à Rameau
  3. 運動, Mouvement
【映像 第2集】(Images II, 1907年)
  1. 葉ずえを渡る鐘, Cloches à travers les feuilles
  2. 荒れた寺にかかる月, Et la lune descend sur le temple qui fut
  3. 金色の魚, Poissons d'or



マルカンドレ・アムラン, Marc-André Hamelin
アムランがドビュッシーに合っていたのか記憶が消えています…
 ▶︎ このブログ内のM.A.アムランのCDインプレ


まずは一番知られた「水に映る影」ですが、繊細なタッチとエモーショナルで微妙なアゴーギクを振りますが全体としてはとてもソフトです。「運動」は技巧の見せ所なので、速いアルペジオに対して旋律側も速い弾きになっていますね。両手のコントラストが欲しい感じがします。「葉ずえを渡る鐘」はミケランジェリに近い硬質さを感じます。一番技巧性の強い「金色の魚」は本来の"何気なく超絶を弾き倒す"なのですが、エモーショナルさを前面にしています。

甘美さを抑えた美しさですが表情が薄い感じですね。アムランらしからぬソフトタッチが貫かれています。




ジャン=エフラム・バヴゼ, Jean-Efflam Bavouzet
個人的にフランス人の曲はフランス人演奏家、お国もの?、の印象が。ドビュッシーのピアノはバヴゼがいい感じで全集で持っていますね。


(バヴゼは右の全集がおすすめですね)

I-1.「水に映る影」はナチュラルな美しさで、明瞭なタッチと速めにアゴーギクを付けています。ディナーミクも大きく鳴り響かせます。I-3.「運動」は軽やかさと響のコントラストを生かし、II-1.「葉ずえを渡る鐘」はソフトな印象にまとめています。II-3.「金色の魚」はヴィルトゥオーゾ性を高める演奏です。
ミケランジェリでは印象の薄いI-2.「ラモーをたたえて」やII-2.「荒れた寺にかかる月」も美しさが染みますね。

ディナーミクとアゴーギクをうまく生かした情感深さが魅力のバヴゼです。静音のエモーショナルさは際立ちます。




アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ, Arturo Benedetti Michelangeli
今更ミケランジェリもないとは思うのですが、ドビュッシーのピアノというと思い浮かべるのも困ったものですw


(何かと基準となるミケランジェリ、所有は右の全集です)

「水に映る影」は硬質な美しさです。粒立ちの良いピアノの音色で陰影は薄めですが、シャープさが印象的です。「運動」では速いアルペジオに美しい音色とディナーミクを効かせてメリハリを付けていますね。「葉ずえを渡る鐘」の硬質透明さはミケランジェリらしさが感じられます。「金色の魚」ではアゴーギクで表情が強く感じられますね。

硬質な音色と切れ味のミケランジェリですね。抑揚も適度でクールさが魅力でしょう。




いかにもドビュッシーのピアノ曲らしさの「映像」。ソフトながら表情を抑えたM.A.アムラン、透明感ある甘美さのバヴゼ、硬質堅実なミケランジェリ。
個人的嗜好にはアムランは向かない印象です。やっぱりバヴゼ一押しでしょう。





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ルノー・カピュソンで聴くヴァイオリン現代音楽 | W.リーム、P.デュサパン、B.マントヴァーニ


ルノー・カピュソン (Renaud Capuçon, 1976/1/27 - )
若手と思っていたら今や中堅人気ヴァイオリニストですね。印象はアルゲリッチのルガーノ、ゴーティエとの兄弟音楽家、暖かい音色のvn、といった処が固定概念になっています。当初のカプソンからカピュソンになったのもw


三人の作曲家
R.カピュソンが三人の現代音楽家に委嘱したヴァイオリン協奏曲集で、いずれも世界初演Live録音ですね。
ヴォルフガング・リーム (Wolfgang Rihm, 1952/3/13 - )
 言わずと知れたドイツ人現代音楽家ビッグネームで、アコースティックへのこだわりですね。
パスカル・デュサパン (Pascal Dusapin, 1955/5/29 - )
 フランコ・ドナトーニやヤニス・クセナキス師事したフランス人現代音楽家で、折衷的印象です。
ブルーノ・マントヴァーニ (Bruno Mantovani, 1974/10/8 - )
 個人的には今注目のフランス人現代音楽家で、多ジャンルをベースにIRCAMで学んでいます。

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Violin Concerto, "Gedicht des Malers" / Wolfgang Rihm
無調ながら繊細な旋律の存在するvn、そしてそれに呼応する幽玄なオケ、時折の強音。美しさを感じるvnの音色はルノー・カピュソンらしい暖色系です。現代音楽苦手派にも聴いてほしい、まさに今の時代のヴァイオリン協奏曲ですね。
オケはフィリップ・ジョルダン指揮、ウィーン交響楽団です。

Aufgang / Pascal Dusapin
変奏的反復を主体にしたvnとオケが対峙します。その関係もシンプルなポリフォニーで混沌ではありません。時に緩やかに、時にハイテンポ、調性感ある旋律も現れ、表情があります。vnはキレキレですね。中途半端といえばそうかもしれませんが、このくらいが聴き易いのも事実でしょう。
オケはチョン・ミョンフン指揮、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団です。

Jeux d'eau / Bruno Mantovani
前二曲に比べるとパルス・クラスター的なオケのパートが現れ緊張感ある陰影付けがされます。そこはマントヴァーニですから混沌無調ではないので大丈夫、何が?(笑) vnにも技巧性の強いパートがカデンツァ的にも出現します。やっぱりこの曲が一番面白いでしょうね。
オケはフィリップ・ジョルダン指揮、パリ国立歌劇場管弦楽団です。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?



幽玄幻想的、明瞭な主題は存在しませんが実験的現代音楽ではありません。いずれも聴き易い印象で、カピュソンのvnも生きています。
この辺りでまとめるのがルノー・カピュソンらしさかもしれませんね。機能和声に近いので、現代音楽を覗いてみるのにもイイ感じかも。






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パトリツィア・コパチンスカヤの「DEUX」を聴く


パトリシア・コパチンスカヤ (Patricia Kopatchinskaja, 1977 - )
何かと印象の深いコパチンスカヤのα(アルファ)レーベル第三弾で近現代音楽家の作品になります。前作シューベルト「Death & the Maiden」は今ひとつでしたが「TAKE TWO」は素晴らしかったですよね。

本blog内のコパチンスカヤのCDインプレ


DEUX
今回はフランスとハンガリー作曲家のvn-pfDuo、vnソナタ集になりますね。年代を近現代に戻して来て期待値が上がりますね。ピアノはポリーナ・レシチェンコ(Polina Leschenko)になります。



プーランク:ヴァイオリン・ソナタ FP119
フランシス・プーランク(Francis Poulenc, 1899/1/7-1963/1/30)は機能和声の瀟洒なイメージですね。
プーランクらしい美しさの第二楽章の緩徐性は活かしつつ、前後楽章では陰影を思い切り付けるvnとpf二人の激しいやりとりがDuo=Dialogueです。この激しいアゴーギクとディナーミクがコパチンスカヤでしょう。プーランクが聴いたら怒る驚く?

ドホナーニ:ドリーブ『コッペリア』のワルツ (arr. for piano by Ernst von Dohnányi)
エルンスト・フォン・ドホナーニ(Ernst von Dohnányi, 1877/7/27 - 1960/2/9)はバルトークと同窓のハンガリー人近現代音楽家ですが、作風は古典・ロマン的ですね。
レオ・ドリーブのバレエ「コッペリア」のワルツをドホナーニが編曲しているわけですが、ここでは心地よい二人の演奏が楽しめます。優美なワルツを多少の揺さぶりで洒脱な印象を付けていますが特異性は低いです。

バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第2番 Sz.76
ベーラ・バルトーク(Béla Bartók, 1881/3/25 - 1945/9/26)、この顔ぶれ中では一番好みでしょう。
調性の薄さ、幽玄な繊細さ、激烈さといったバルトークらしさを二人が最大限活かします。それは曲目リストを見た時から想定していて、期待に応えた楽しさと言えばピッタリでしょうか。この二人のライヴで観たい!ですね。ベスト・トラックです。

ラヴェル:ツィガーヌ M.76
個人的にピアノ曲では一番好きなモーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875/3/7 - 1937/12/28)、言わずと知れたフランス印象派重鎮ですね。
二人は強い陰影付けで「ツィガーヌ」の持つハンガリーの民族音楽性を、バルトークの様に展開します。上記バルトークの第三楽章といっても良い様な流れ、この二曲の流れを二人は企画したのでしょう。


ともするとやり過ぎ、スタンドプレーに陥りかねないラインをすれすれに表現主義的演奏です。昔からのクラシック音楽ファンには鬼門?、でも今の時代のクラシック音楽でいいのではないでしょうか。特に三四曲目の流れは楽しめますね
コパチンスカヤの現代的奔放さを活かすなら、20世紀後半以降の現代音楽だと思います。




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イェルク・ヴィトマン(Jörg Widmann) の「Viola Concerto」をアントワーヌ・タメスティで聴く


イェルク・ヴィトマン (Jörg Widmann, 1973/6/19 - )
以前「Elegie」を紹介しているヴィトマン、先日来日もあり今注目の現代音楽家・クラリネット奏者ですね。(紹介文はElegie参照下さい)
楽風は空間音響系と即興系の二面性を持ちますね。本CD「ヴィオラ協奏曲」は下記タメスティのために書かれたタイトル曲を主体とした室内楽集で、発売が決定した時点で聴きたいと思いました。


アントワーヌ・タメスティ : ビオラ
フランス人ヴィオラ奏者 アントワン・タメスティ*(Antoine Tamestit) はパリ高等音楽院ヴィオラ科教授を務めた後ソロ活動を広げる38歳の若手実力者の一人、ハルモニアムンディからの第一弾だそうです。使用しているストラデバリウスの名前が"マーラー"(1672年)というのも気になりましたw
*本年10月19日の来日では都響863回とブルーノ・マントヴァー二「2つのヴィオラと管弦楽のための協奏曲」を演奏しますね。楽しみです。



Viola Concerto : for Antoine Tamestit
タメスティに献呈されたヴィオラ協奏曲ですね。オケはダニエル・ハーディング指揮、バイエルン放送交響楽団です。
特殊奏法、民族音楽風、刺激的な静音vs強音、いわゆる旋律を協奏させる訳ではありません。一部ノイズ系や即興的なパートも顔を出しますが、基本は静的パートでその中にシャープな音色が切れ込む空間音響系現代音楽ですね。vaはピチカートからロングボウイングや"叫び"まで表情豊かに、オケも戦慄的なパルスをはじめ刺激音で対抗します。最終の第五楽章に調性感の漂う幽玄さを持って来るのも面白いですね。
緊張感が漂い舞台に何か演出があればインスタレーション受けしそうな素晴らしさです。コンサートでぜひ聴きたいですね。

 ★ 試しにYouTubeで観て見る?
  エストラーダ指揮フランクフルト放送響(hr交響楽団)、vaはもちろんタメスティです。
  必見,ぜひ一度!


24Duos (selection) : for violin and violoncello (arr. with viola by Antoine Tamestit)
本来はヴァイオリンとチェロのためのDuoですが、ヴィオラとヴァイオリン、もしくはチェロとのDuoにタメスティが編曲しています。
繊細幽玄な流れを中心に1'台かそれ以下の小曲9曲で、無調ですが旋律を残した流れで言葉少ななDialogueの様相です。NO.21ではバロックか古典の引用も感じます。小ホールで聴きたいですね。

Jagdquartett : String Quartet No.3 Allegro vivace assai
民族音楽風に不協和音を絡ませた技巧系弦楽四重奏曲です。リズミカルで絶叫voiceも入り、スピード感あふれて楽しめます。演奏はSignum Quartettです。


ヴィトマン侮れずですね。もちろん無調ですが、静からの刺激や旋律の絡みは無理がなく楽しめます。タメスティも冴えたvaを聴かせます。おすすめの一枚ですね
クラリネット奏者としてドナウエッシンゲン音楽祭にも出ていますし、しばらく注目して行きたい感じです。




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ストラヴィンスキーの『春の祭典』四手ピアノ版 聴き比べ || バヴゼ&ギィ、ラベック姉妹、マルカンドレ・アムラン&アンスネス

ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky, 1882/6/17 - 1971/4/6)の『春の祭典, Le sacre du printemps, The rite of spring』前回はオケ版でインプレしましたが、今回は 4-hands piano版ですね。注目の顔ぶれ3CDの聴き比べです。

以前アシュケナージとガブリーロフのピアノでもインプレしていますね。


ジャン・エフラム・バヴゼ(Jean-Efflam Bavouzet)
フランソワ・フレデリック・ギィ(François-Frédéric Guy)
個人的に好きなピアニストの一人バヴゼですね。フランス人音楽家のピアノ曲ならバヴゼが一番です。相方もフランス人ピアニストのギィですね。


序奏は繊細さが光ります。繊細スマートの「春のきざし - 誘拐」でも強音は爆裂的ではなく切れ味です。「敵の部族の遊戯」の躍動感もいいですね。第二部の序奏、そこから続く繊細なタッチのパートもこのDuoの聴かせ処でしょう。一転「選ばれし生贄への賛美」のパワーも光りますね。「生贄の踊り」のリズムの組合せも切れ味を感じます。

興奮を排した繊細さがバヴゼらしいスマートな春祭ピアノ版ですね。あくまでも冷静沈着クールなスタイルです。

同時収録されているバルトーク:2つの映像、ドビュッシー:遊戯(2台ピアノ版バヴゼ編曲)も素晴らしく、おすすめ盤ですね。




ラベック姉妹 (Marielle et Katia Labèque)
フランス人カティアとマリエルの姉妹ピアノDuo、2016年のシェーンブルンでも楽しい演奏を披露してくれましたね。
アルバム「Invocations」からです。


序奏ではソフトで柔らかさを感じますね。不協和音も生きています。「春のきざし - 誘拐」では強音パートと弱音パートのコントラストが見事です。ディナーミクとアゴーギクの組合せがうまく、パワー主体に美しさが同居しますね。「春の輪舞」の影のある緩やかさも聴き処でしょう。「生贄の踊り」では厄介なリズムが見事に表現されます。でも印象はなんといってもパワープレイのピアノでしょうね。

カラフル迫力の春祭ピアノ版です。楽しさとパワーの組合せは得意のパターン。
見方を変えると大向こうを唸らせるショーマン的タイプかもしれませんが、それが彼女たちの個性ですよね。




マルカンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)
レイフ・オヴェ・アンスネス(Leif Ove Andsnes)
6月に久々の来日を控えたM.A.アムラン、ノルウェーのアンスネスという強力布陣ですね。


序奏から硬質な響きで、音の粒立ちの良さが明瞭です。「春のきざし - 誘拐」でもこれ見よがしの表情を見せずに細かく速いアルペジオを聴かせます。この切れ味こそが まさにアムラン(主導)でしょう。「春の輪舞」の沈んだ気配も美しいです。全体として揺さぶる様なアゴーギクを振らずに流れるのも印象的で「大地の踊り」ではそこにパワーが発揮されます。

印象は硬質、とにかく個々の音の粒立ちが明瞭でキレキレ・シャープな春祭ピアノ版です。まさにヴィルトゥオーゾなDuoピアノ。
いつものアムランよりも弾けて(はじけて)いる?!




ホールでじっくり味わうバヴゼ&ギー、フェスティバル向き熱狂のラベック姉妹、ヴィルトゥオーゾに酔うアムラン&アンスネス。
それぞれ個性際立つ楽しい3枚ですね。






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ストラヴィンスキーの『春の祭典』クルレンツィス、ロト、シャイーで聴き比べ

古楽器を使った演奏で高評価のロトとクルレンツィスのストラヴィンスキー(Igor Stravinsky, 1882/6/17 - 1971/4/6)『春の祭典 (Le sacre du printemps, The rite of spring)』ですが、発売元や評論家の先生方の思惑が渦巻いていそうなので買ってそのままでしたw 今回シャイー盤が出たので聴き比べをしてみました。


テオドール・クルレンツィス (Teodor Currentzis, 1972/2/24 - )
ギリシャ生まれでロシアの指揮者、ロトよりも三ヶ月若いクルレンツィスと自ら創設したムジカエテルナ(MusicAeterna)ですね。2019年2月来日が決まって大騒ぎしていますが、この曲以外でクルレンツィスを知らないのでなんとも…


「春のきざし - 誘拐」の切れ味、冒頭ゆるい「春の輪舞」のコントラストは素晴らしいですね。その後も突撃的なパートをストラヴィンスキーらしい動機を生かすような激しさで展開しています。激か静かの演奏です。個人的注目の「生贄の踊り」、しばしば現代音楽で三つの変拍子を動機としている事でアナリーゼ対象となりますね、はそのリズムを切れ味よく聴かせます。
バレエ音楽としたら濃すぎる感じがします。

強烈なメリハリの春祭ですね。コンサート受けは間違いなし的な展開です。特に古楽器がどうの といった印象は受けません。(駄耳だから?!)
弱音パートでの神秘的表情が薄い気がしてしまいます。





フランソワ=グザヴィエ・ロト (François-Xavier Roth, 1971/11/6 - )
2016年来日で都響との「ペトルーシュカ」「火の鳥」を観ましたが、素晴らしかったですね。→インプレです
そういう事からもレ・シエクル(Les Siècles)とのCDが際物ではないことは感じますね。今回の来日公演には行きませんが。
ちなみに1911年初版を使っています。


「春のきざし - 誘拐」ではメリハリよりも序奏からの流れを生かしています。静の中から表情展開は舞台を彷彿させてくれますね。湧き立つ激しさも突出ではなく、静音パートでも表情は豊かです。「生贄の踊り」ではそれぞれのリズムにディナーミクの差別化を配して激しさに陥らない客観視をしています。
コンサートで聴いた「火の鳥」の様なバレエ曲らしい完成度を感じます。

ストーリーを感じる表情のある春祭ですね。アゴーギクとディナーミクのバランスの良さが心地よい感じがします。





リッカルド・シャイー (Riccardo Chailly, 1953/2/20 - )
今や円熟の年代に入ったシャイーとルツェルン祝祭管(Lucerne Festival Orchestra)ですから期待は大きいですね。
2014年のゲヴァントハウスとの来日で聴いたマーラーの第7番は素晴らしかったですね → インプレです


序奏から色の濃い展開です。「春のきざし - 誘拐」への繋がりも同じですが、唐突的な大音響展開はありません。全体的に濃厚な演奏で静音と強音とに落差をあまり付けませんね。「生贄の踊り」でもリズムが突出することはありませんでした。
バレエの姿を想像するのは難しいかもしれませんが、本来の"大規模な管弦楽"らしさは一番かもしれません。

バレエ音楽というよりも管弦楽曲的春祭です。楽器の鳴りも朗々として微妙な表情よりも祝典(Celebration)的明瞭さですね。




ドンシャン的なクルレンツィス、情景浮かぶバレエ音楽のロト、管弦楽風のシャイー、それぞれの楽風で楽しめます。
個人的には 煮詰めたロトの完成度に一票でしょうか。


次回はM.A.アムランやバヴゼらの四手ピアノ版でインプレ(聴き比べ)します。


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Author:kokotonPAPA
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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。

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