マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 60CD聴き比べ! [#5 / CD:51-60]

第5回目は好きなノット盤や発売されたばかりのハーディング盤からベテラン勢、10CDのインプレ追加です。

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.9の聴き比べです (現在#5回 60CDまで)
 #5:10CD 本投稿
 #4:10CD
 #3:10CD
 #2:20CD
 #1:10CD


ジョナサン・ノット, Jonathan Nott
★☆
Bamberger Symphoniker
[Tudor] 2008-9/15-19

(ノットのマーラーは全集で買って後悔しませんね)

現東京交響楽団の音楽監督を務めるノットが16年間首席指揮者だったバンベルク響とのチクルスからですね。
第一楽章
スロー緩やかな第一主題から第二主題も流れはスロー、そこから金管の下降を経て大きく反復と第三主題を奏します。展開部もスローな暗さと激しい山場の対比が葛藤を描くようです。山場の後は必ず落ち込む鬱も生きています。
第一楽章に欲しい"暗さ"がスローのテンポの中息づいて素晴らしいですね。
第二楽章
主要主題と第一トリオはテンポよく穏やかな優美さで、第二トリオも流れよくスケルツォを奏でます。優美さが引き立ち一楽章からの対比がきれいですね。
第三楽章
主要主題と副主題は速めの流れで、第二楽章ラストの狂奏からの繋がりがあります。中間部のターン音型で徐々に流れを穏やかに落とします。これは最終楽章の中心をなすターンへの流れにピッタリで、前後楽章との連携が見事ですね。ラスト山場も見事な狂乱です。
第四楽章
スローで哀しみの強いアダージョの主題。第一エピソードも沈んだ流れから弦楽緩徐の哀しみ溢れる美しさが大きく広がります。その後もスローなターン音型の浮遊感を最大限生かしながら透明な哀しみと美しさをラストの消え入る動機まで繋げます。この楽章に欲しい"死"を前にした澄んだ世界が感じられます。素晴らしいですね。
・・・・・
この曲の真髄とも言える第一楽章の"暗"と第四楽章の"哀"の美しさが伝わるマーラー9です。
スローで情感深い第一四楽章、明瞭な第二三楽章、その楽章構成が見事ですね。個人的ベスト5の一枚です!




ダニエル・ハーディング, Daniel Harding

Swedish Radio Symphony Orchestra
[harmonia mundi] 2016-9/8-10
ハーディングが2007年から音楽監督を務めるスウェーデン放送交響楽団(Swedish Radio Symphony Orchestra)との録音ですね。
第一楽章
緩やかで美しい第一主題、不安を感じさせる第二主題、反復は大きく奏でます。提示部のラストを激しく、展開部も柔らかさと切れ味の出し入れのコントラストが見事に付いていますね。再現部も懐の広さを感じさせながら、うまく静的なコーダへ結びます。
第二楽章
主部主題、第一トリオ、共にやや重さを感じます。第二トリオは緩やかですが、決して軽やかではありません。第二第三楽章では激しさがベースに存在しますね。
第三楽章
主部主題は切れ味良く、副主題もそれに絡みます。重厚さと軽妙さの微妙なバランスです。中間部はやや速めに美しさと哀しみを合わせ大きな波を奏でます。ラストの暴れ方は見事!!
第四楽章
主要主題は美しく、ファゴットのモノローグから第一エピソードは情感大きく盛り上げ繊細に納めます。第二エピソードもその流れです。「亡き子をしのぶ歌」の引用からコーダはpppスローの美しさを生かして消え入ります。
・・・・・
重心の低い切れ味と見事な広がり、哀愁よりも嶮しさのマーラー9番です。
一四楽章vs二三楽章の対比が見事でした。コンサートでは相性の良くないハーディングですが、期待を裏切る素晴らしさでしたw おすすめの一枚ですね。


本アルバムは2016年9月8-10日のセッションですが、翌2017年7月24日のヴェルビエ祝祭管弦楽団(Verbier Festival Orchestra)とのLiveを聴く事ができます。
Mahler “Symphony No. 9” (Daniel Harding • Verbier Festival Orchestra, 24 Jul 2017)
流れとしては良く似た演奏になります。第一楽章は悪くありませんが、第二楽章が軽めで間伸び感を感じます。第三楽章は揃いは今ひとつですが激しさが良いですね。第四楽章は似た展開ですがやや緩いです。
結果的には煮詰めたセッションと言う事になるのでしょうが、それをライヴで聴きたいところですね。




小澤征爾, Seiji Ozawa (2録音)

(#1)
Boston SO
[Philips] 1989-10
言わずと知れたボストン響の音楽監督時代のマーラー9番です。
第一楽章
第一主題と第二主題を抑えて冷静な流れから展開部へ入ります。展開部もクールで静的パートと激情パートのコントラストがコントロールされています。再現部も"計算尽く"を感じます。
第二楽章
主要主題はややスロー穏やかに絡んで第一トリオでシャキッと気配を変え心地よいスケルツォになります。第二トリオは緩やか穏やかです。後半の山場も暴れる事なく全体として穏やかさのスケルツォですね。
第三楽章
主題と副主題は心地よい勇壮感と軽快感で絡んで進み、中間部では穏やか伸びやかで山場へ繋ぎます。ラストもマーラーの指示通りに荒々しく、見晴らしの良い楽章です。
第四楽章
序奏・主題の美しい広がりは第三楽章からの対比が心地よいですね。第一エピソードは暗い静音パートと弦楽緩徐パートの広がりが美しです。第二エピソードもうまくアゴーギク・ディナーミクを振って哀愁ある美しさが際立ちます。この流れからのラストの静的美しさはマッチしています。
・・・・・
全て小澤さんコントロール下、ライヴとしてはマイルドでまとまりすぎのマーラー9です。
ただ、第三楽章から最終楽章は素晴らしく全体この流れだったら絶対☆ですね。




(#2)
サイトウキネン・オーケストラ
[Sony] 2001-1/2-4
BSOとの12年後、これまた言わずもがなの創設者であり総監督を務めるサイトウキネンを振った演奏です。
第一楽章
タメの効いた第一主題と揺らぎを持った第二主題、金管の半音下降からの反復と第三主題の緊張感が素晴らしいですね。展開部・再現部共に緊張感とオケの漲るパワーを感じられます。ただこの楽章としては厳つい気配が強すぎの気がします。
第二楽章
主要主題は穏やかな流れ、第一トリオでピシッとするのはBSOと同じですね。その後も良く似ていますが演奏の切れ味はこちらが上。
第三楽章
主題と副主題は切れ味よく絡み、伸びやかな中間部以降ですが前半がややフラットに感じます。ラストのパワーは見事。
第四楽章
序奏・第一主題は重厚感、第一エピソードも重さが際立ちます。第二エピソード緩徐パートもそっけない感じです。ラストに向けても線の細さより朗々と鳴る気配です。
・・・・・
この曲に感じる哀しみや美しさが弱いマーラー9ですね。通して重厚、緩徐パートも厚い音色だからかもしれません。
演奏が素晴らしいのでコンサートで聴いたら賞賛してしまうかもしれませんね。(汗)




クルト・ザンデルリンク, Kurt Sanderling (4録音)
日本でもお馴染みの父ザンデルリング。マーラーの9番は4枚も正規録音を残しています。(もう一枚フィルハーモニア管との非正規盤がありますが…)


(#1)
Berlin SO
[Deutsche Schallplatten] 1979-2/28,3/2,8
鍛え上げた手兵 ベルリン交響楽団(東独)の芸術監督/首席指揮者を1977年に退いた2年後の録音ですね。
第一楽章
スローな序奏と第一主題、第二主題から反復で大きな波を奏でます。第三主題の激しさから暗転して展開部に入りますが少しモヤモヤした感じですね、山場はパワフルですが。再現部は落ち着いた流れで悪くありません。
第二楽章
主要主題と第一トリオは硬派なレントラーとスケルツォ。第二トリオはやや緩めて流れる様なスケルツォです。後半は情感を上げますが真面目過ぎかも。
第三楽章
主要主題と副主題の絡みは教科書的で変化に乏しく、中間部やラストでも変化量が不足気味です。
第四楽章
序奏・第一主題は厚めの音で入ります。第一エピソードは細く入って厚くなりますが没個性的です。第二エピソードも生真面目で、流れにアゴーギク・ディナーミクの個性が感じられません。
・・・・・
破綻の無い、落ち着いて計算された真面目なマーラー9です。何か一味足りません。




(#2)
BBC Philharmonic
[BBC Legends] 1982-7
ベルリン響の3年後、BBCフィルハーモニックを振った演奏です。
第一楽章
スローな出だしは変わりません。第三主題から展開部も同様ですが、自然体の流れと程良いコントラストがありますね。
第二楽章
ここでも主要主題から第二トリオまで穏やかさのレントラーとスケルツォになっています。全体としてやや緩さが強くダレますが。
第三楽章
主要主題と副主題の絡みはフラット、中間部も変化が薄いです。ラストはもっと強烈さが欲しいです。
第四楽章
序奏・第一主題は緩徐色を強めていますね。第一エピソードも第二エピソードもその流れで緩徐的です。ただ単調で感情移入は薄くフラットさが拭えません。
・・・・・
特徴が薄く緩いマーラー9です。特に第二第三楽章にマーラーの指示する「粗野」や「反抗的」が欠ける感じですね。




(#3)
NDR Symphonieorchester Hamburg
[Profil] 1987-11/7
BBC-Pとの5年後、北ドイツ放送交響楽団(現:NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)との演奏です。非正規盤から昨年正規盤となって話題になりましたね。
第一楽章
序奏から第一主題は適度にスローですが第二主題と反復も含めて緊張感があります。第三主題も緊迫感がいいですね。展開部、再現部共に適度な揺さぶりと荒れが締まりのある演奏にしています。
第二楽章
主要主題はカッチリ、そこから流れを作り第一トリオは表情変化させて明確なリズムを刻みます。スローダウンの第二トリオも全体の流れを生き生きさせていますね。後半は約束通りに荒れ気味に。
第三楽章
主要主部と副主題は落ち着いた絡みから軽妙さを見せ、中間部で牧歌調にチェンジします。ラストはコントロールが効き過ぎかも。
第四楽章
第一主題は大きく優美さを見せます。そして第一エピソードも重心の低い豊かな表情を見せてくれます。第二エピソードも哀愁漂う表情を見せながら山場を作り、『亡き子をしのぶ歌』引用の浮遊感から消え入ります。
・・・・・
適度な揺さぶりと興奮、安心して聴ける王道的マーラー9です。初めて聴くのにもオススメですね。
指揮者よりもドイツオケならではのパターンの気がします。この演奏だけ色合いが違うのが明白ですから。(同じ事はマーラー5番でも感じてインプレしています)




(#4)
Philharmonia O
[ERATO] 1992-1/24,25
NDR響の5年後、名誉指揮者を務めたフィルハーモニア管弦楽団を振った演奏です。
第一楽章
出だしは再びスローに戻って、第二主題への流れは変化が薄く反復もモッソリ。第三主題も見晴らしがよくありません。展開部・再現部もスローモヤモヤですね。
第二楽章
主要主題のtbが奇妙なヴィブラートですが、流れはレントラーが生きています。第一トリオはスロー、例によって落ち着かない変化です。第二トリオもスローの揺さぶりでモヤモヤ感が拭えません。
第三楽章
主要主題と副主題はリズミカルですが変化に乏しく退屈、でも中間部では表情を一転させます。ラストは約束通りに少し乱舞して見せます。
第四楽章
入りは美しい緩徐ですね。第一エピソードは抑揚が抑えられてフラット、第二エピソードもその延長、通して長く感じてしまいます。
・・・・・
82年BBC-Pの延長線上にある、もどかしさ満点のマーラー9番です。モッソリ・モヤモヤ、体調不良かもw
結局ザンデルリンクはNDR主導の演奏だけという事に思えてしまいます。




キリル・コンドラシン, Kirill Kondrashin (2録音)

(#1)
Moscow Philharmonic Orchestra
[Meloydia] 1964-5
コンドラシンが15年間首席指揮者を務めた手兵モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団を振った演奏です。
第一楽章
美しく軽い第一主題、第二主題も重さは控え目に、反復でも重厚さより明るさを感じます。展開部も軽めながらスピード感と切れ味の山場です。再現部も速め軽量で胃もたれしない流れですね。
第二楽章
主要主題は落ち着きから優美に、第一トリオはややもったいぶっていますが良いスケルツォ感です。第二トリオも大きく変化はさせずに穏やかですね。
第三楽章
主要主題・副主題共に速め軽やかで中間部も速く変化量は少なめです。12'を切って流れは速いですね。
第四楽章
序奏・主題は透明感ある美しさで、第一エピソードは哀愁を感じる流れからhrが主題を美しく奏でていい緩徐パートです。第二エピソードも哀しみを感じる美しさから山場を作ります。この流れはラストの消え入るターン音型にベストマッチでこの楽章として好みですね。透明な美しい哀しみの音色は、静かな"ersterbend 死"のイメージに近い印象です。
・・・・・
やや速めライトウェイトの肩のこらないマーラー9番です。最終楽章の静的な美しさは好みですね。
コンドラシンにしては淡白でしょうか。




(#2)
Moscow Philharmonic Orchestra
[ALTUS] 1967-4/16
1967年東京文化会館でのマーラー9番本邦初演。記念すべき録音ですね。マーラー人気が近年の事であるのが今更ながら再認識されますね。
第一楽章
美しい緩やかさの第一主題から興奮を避けた第二主題、それを大きく構えた反復と第三主題の提示部です。展開部も落ち着きはらい緩やか優美からアレグロ・リゾルートで興奮の山場を作りコントラストの良い流れ。彫りが深く、美しさと暗い重さのバランス良い楽章です。
第二楽章
主要主題は優美ですが表情豊かです。第一トリオは派手め第二トリオを優美にと、濃厚なスケルツォ楽章です。
第三楽章
主要主題・副主題は切れ味と軽快さのバランスよく流れて中間部は速めです。緩やかな揺さぶりを感じます。
第四楽章
揺さぶりを感じる主題、第一エピソードは繊細な音色からマーラーらしい弦楽の美しい山場を作ります。第二エピソードも静音パートは素晴らくラストへの静的流れはいいのですが山場もクールです。
・・・・・
コンドラシンらしい陰影を付けた明快なマーラー9番です。山場強音パートに激情さや狂気があれば素晴らしかったでしょう。





全集物を中心にまだ残っているようですので、また追記すると思います。^^;

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ダニエル・ハーディング / スウェーデン放送交響楽団 の マーラー交響曲第9番 は期待を裏切る素晴らしさ


ダニエル・ハーディング (Daniel Harding, 1975/8/31 - )
今や中堅どころとなったハーディングですが、個人的にはコンサートであまり当たった記憶がありません。一昨年のパリ管とのマーラー5番も今ひとつ。でもマーラー10番のCDは素晴らしいので、この9番にも期待して予約購入しました。

ハーディングが2007年から音楽監督を務めるスウェーデン放送交響楽団(Swedish Radio Symphony Orchestra)との録音ですね。

本来なら『マーラー交響曲第9番 : 50CD聴き比べ』に加えるのですが、それは次回ロットということで。




■ 第一楽章
緩やかで美しい第一主題、不安を感じさせる第二主題、反復は大きく奏でます。提示部のラストを激しく、展開部も柔らかさと切れ味の出し入れのコントラストが見事に付いていますね。再現部も懐の広さを感じさせながら、うまく静的なコーダへ結びます。
■ 第二楽章
主部主題、第一トリオ、共にやや重さを感じます。第二トリオは緩やかですが、決して軽やかではありません。第二第三楽章では激しさがベースに存在しますね。
■ 第三楽章
主部主題は切れ味良く、副主題もそれに絡みます。重厚さと軽妙さの微妙なバランスです。中間部はやや速めに美しさと哀しみを合わせ大きな波を奏でます。ラストの暴れ方は見事!!
■ 第四楽章
主要主題は美しく、ファゴットのモノローグから第一エピソードは情感大きく盛り上げ繊細に納めます。第二エピソードもその流れです。「亡き子をしのぶ歌」の引用からコーダはpppスローの美しさを生かして消え入ります。

期待を裏切る素晴らしさ。重心の低い切れ味と見事な広がり、哀愁よりも嶮しさのマーラー9番です。
近年ちょっとした でもクセの強いアゴーギク*が目立つ気がしていますが、ここでは違いましたね。一四楽章vs二三楽章の対比が見事でした。おすすめの一枚です。

*昨年発売のThe Wagner Projectや上記パリ管とのライヴ



本アルバムは2016年9月8-10日のセッションですが、実は2017年7月24日のヴェルビエ祝祭管弦楽団(Verbier Festival Orchestra)とのLiveを聴く事ができます。

Mahler “Symphony No. 9” (Daniel Harding • Verbier Festival Orchestra, 24 Jul 2017)

流れとしては良く似た演奏になります。第一楽章は悪くありませんが、第二楽章が軽めで間伸び感を感じます。第三楽章は揃いは今ひとつですが激しさが良いですね。第四楽章は似た展開ですがやや緩いです。
結果的には煮詰めたセッションと言う事になるのでしょうが、それをライヴで聴きたいところですね。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

H.ラッヘンマン(Helmut Lachenmann)のピアノ曲集 2CD「„…Zwei Gefühle…“, Pression, Piano Works」と「Klaviermusik」本人のピアノとR.ケラーで聴き比べ


ヘルムート・ラッヘンマン (Helmut Lachenmann, 1935/11/27/ - )
何枚もインプレしている欧現代音楽ビッグネームの一人ラッヘンマン、昨年も来日していますね。紹介は割愛ですw

♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧

ラッヘンマンのピアノ・ソロ曲集を2CD。■印の三曲(Weigenmusik, Guero, Ein Kinderspiel)が重なっていますので、本人とローランド・ケラーのピアノで聴き比べしてみましょう。
ラッヘンマンの楽曲は様々なCDでラップしていますが、とりあえずはこの二枚で。



„…Zwei Gefühle…“, Pression, Piano Works

ピアノはラッヘンマン本人です。


Weigenmusik (1963) for piano solo
ラッヘンマンが名付け親であるピアニスト/ヨースト・クレーマー(Jost Cramer)の娘スザンナの為に書いた"揺かごの曲"だそうです。
硬質で不協和音のシンプルな3'半ほどのピアノ曲です。静音と金属的な共鳴音が印象的ですね。

Guero (1970) for piano solo
バッタやコオロギの音をイメージするそうで、特殊奏法バリバリの小曲です。ギリギリギリ…ゴンゴッゴン…的なw 所謂(いわゆる)ピアノの音色はありません。おとなしめな演奏に感じますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  もちろん本人の演奏で特殊奏法が明瞭にわかります。


Ein Kinderspiel (1980) for piano solo
息子のデイヴィッドの為に書いた7曲からなる小曲集です。子供用練習曲とはいえラッヘンマンですから単純ながらの強烈な表現主義。基本は単純音階+和音+不協和音で、強烈なディナーミクの高音から低音までの展開です。タイトル「子供の遊び」の通り楽しさいっぱい、特に強音パートは子供が弾いて喜びそう?!

„…Zwei Gefühle…“, Musik mit Leonardo (1992) for speaker and ensemble
 ・Helmut Lachenmann, narrator, ・Ensemble Signal, ・Brad Lubman, conductor
室内楽と本人の語り、Textは本人の代表作"マッチ売りの少女"からになりますね。強烈な出し入れと特殊奏法で構成される1990年代後半のラッヘンマンそのものです。静と間の間にパルス的強音とノイズ、それが嵐の様に襲いかかってきます。刺激的な21'のやっぱりこの曲がメインでしょう。

Pression (1969-70) for cello solo
 ・Lauren Radnofsky, cello
特殊奏法のチェロ曲です。ほとんどチェロとは思えません。作曲年代も1970年で目一杯特殊奏法ですしね。その中に旋律が存在して、これぞラッヘンマンでしょう。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  チェロはJonathan Gotlibovichです。


本人のピアノは無機硬質で単純明快さが響きますね。"Guero"ではラッヘンマンらしい特殊奏法が印象的ですが、他二曲は子供の為の曲?、それでも"Ein Kinderspiel"ではラッヘンマンらしさを感じました。
でもやっぱり室内楽曲の„…Zwei Gefühle…“にはかなわないですね。Pressionもラッヘンマンらしさ炸裂で、おすすめのアルバムです





Klaviermusik

こちらは全曲ピアノ・ソロ、pfはローランド・ケラー(Roland Keller)です。
右は再発盤ですね。


Weigenmusik (1963) for piano solo
ラッヘンマンに比べると表情、アゴーギク、を感じます。その分無機的共鳴は低くなりますが、細く弱い抑揚が生きている感じですね。(M.A.アムランに弾かせたら、こうなりそうw)

Guero (1970) for piano solo
ライナーノートに特殊奏法の技法が写真入りで解説されています。より特殊奏法性が強く、強弱が明確もになります。演奏時間が1'以上長いのはどうしてでしょう? それほどスローには思えません。

Ein Kinderspiel (1980) for piano solo
ここでもアゴーギクで表情を付けています。子供が喜びながら弾く感じではなく、明らかに単純な表現主義からピアニストの曲になっている感じです。楽しさよりも単純さの裏にあるものを見せようという感じです。ただラストの"Schattentanz"は個性的で素晴らしかったですね。

Five variations on a theme of Franz Schubert (1956) for piano
ドイツ舞曲を元にしているそうですが、シューベルトは範疇外なので…^^; もろにシューベルトがヴァリエーション化によって動機を活かしながら不協和音と調性自体を崩して行きます。それはそれで面白いかも。ラッヘンマン本人が弾いたらどうなるのでしょう?!

Echo Andante (1961) for piano
初期作品で、間と音のピアノ曲です。音列配置的な印象で、古さを感じますね。

ピアニストとしての楽曲になっていますね。その割に今ひとつ強烈な印象が残らないのは残念です。
「ラッヘンマンのピアノ曲ね…ふぅ〜ん」的な。(汗)




やっぱりオリジナルw、ピアノはラッヘンマンの硬質で金属的な響きがいい感じです。特に"Ein Kinderspiel"の印象は、強烈な楽しさでやられました。
ケラーはピアニストとしての独自表現を出していますね。
アルバムとしては『„…Zwei Gefühle…“, Pression, Piano Works』が楽しめます。



最後にラッヘンマンが「猫踏んじゃった」を演奏するシーンをYouTubeで。

これを見ると「Ein Kinderspiel, 子供の遊び」の気持ちが伝わりますね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ブルーノ・マントヴァーニ(Bruno Mantovani) の La Sette Chiese, Streets, Éclair de Lune を聴く


ブルーノ・マントヴァーニ (Bruno Mantovani, 1974/10/8 - )
フランスの現代音楽で、作曲はもちろんの事 仏国内でアナリーゼから電子音楽までを学んでいますね。もちろんIRCAM出身でもあり、バリバリの仏現代音楽家です。


La Sette Chiese, Streets, Éclair de Lune
マントヴァーニの転換期作品、本人も語っている、となる「La Sette Chiese, 七つの教会」をメインとしたアンサンブル作品集ですね。
演奏はスザンナ・マルッキ(Susanna Mälkki)指揮、アンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain)と最高の布陣です。



La Sette Chiese, for ensemble (2002年)
1.La piazza Santo Stefano - 2.L'église de Saint-Jean Baptiste - 3.La crypte - 4.La basilque du sépulcre - 5.Basilique des saints Vital et Agricola - 6.La cour de Pilate - 7.L'église du martyrium - 8.Le cloître - 9.La chapelle du bandeau
「七つの教会」はボローニャの複雑な教会をモチーフにしているそうです。二部に分かれていて、全9つの楽曲は教会とそのエリアに対比させています。アンサンブルを四編成に分けていて、第二部一曲目(5)はメシアンへの追悼、二曲目(6)はJ.ノットへ送られれています。
 ポリフォニックで反復、静音とクラスター、時折現れる旋律。9曲の表情は異なりますが特徴は同じです。静音パートには美しさも感じられます。アンサンブルを四部に別けている配置については書かれていませんが、前方四ヶ所でしょうか。オーディエンスを中心に配置しているとしたらライヴでないと広がりはわからないかもしれません。
即興的混沌やノイズ的特殊奏法はなく、ポリフォニーの音響系?です。ちょっとブーレーズを思い出しますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Streets, for ensemble (2007年)
アンテルコンタンポラン委嘱のこの曲はピエール・ブーレーズに献呈されていて、ニューヨークを歩いている時に発想したそうです。
 トリルや細切れの音色が錯綜しているのはN.Y.の喧騒でしょうか。反復的で緊張感のある平坦なその流れをベースに打音やパルスが絡みます。前曲の7年後で、曲調は単純化して研ぎ澄まされている感じです。

Éclair de Lune, for 3 instrumental groups & electronics (2006年)
IRCAMとアンサンブル・イクトゥス(Ensemble Ictus)の共同委嘱作品で、アンサンブルとエレクトロニクスの音楽です。
 ピアノのトレモロ・トリルがベースラインに存在し、それ自身も変化しながら流れます。マントヴァーニ曰く"piano sonata"だそうです。そしてパーカッションが現れて、ノイズ的にも発展します。クラック音のノイズはエレクトロニクスのセバスチャン・ルー(Sébastien Roux)がやっていそうですが、それ以上は不明ですw 


細かく速い演奏にスローと単音が絡む強弱のポリフォニー、ライナーノートの楽譜からも明確です、が特徴的で美しさも感じられます。後年作品の方が表情変化のヴァリエーションは減っていますね。
ただ突出した前衛性は感じられません。その分、安心して聴くことができるのも事実でしょう。完成度が高く、IRCAMを中心とした今の仏現代音楽を楽しむには良い一枚ですね。




♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ガブリエル・フォーレ(Gabriel Fauré) の The Music for Cello & Piano を聴く


ガブリエル・フォーレ (Gabriel Faure, 1845/5/12 - 1924/11/4 )
フォーレの印象といえば、優しく美しい楽曲でフランスらしい音楽でしょうか。古典でもロマン派でもないその微妙な後期の和声はフランス印象派の黎明音楽家と言われていますね。


The Music for Cello & Piano
1880年から1921年までのチェロ&ピアノ小曲集で、主に中期のフォーレらしい美しい旋律の曲が並んでいます。
・チェロ:アンドレアス・ブランテリド (Andreas Brantelid)
・ピアノ:ベングト・フォシュベリ (Bengt Forsberg)
'6.Morceau de lecture' のみもう一人のチェリスト:フィリップ・グラデン(Filip Graden)とのDuoになります。



1.Romance (1894) - 2.Papillon (1884) - 3.Sérénade (1908) - 4.Berceuse (1879?) - 5.Sonata for Cello and Piano No.1 (1917) - 6.Morceau de lecture (1897) - 7.Berceuse, form Dolly (1864/1893) - 8.Sicilienne (1893/98) - 9.Elégie (1880) - 10.Sonata for Cello and Piano No. 2 (1921) - 11.Andante (1894)

年代順になっていないのが残念ですが、初期から後期までのフォーレが楽しめます。
古典やロマンの香り漂う優しさと美しさの初期作品4.Berceuseや7.Berceuse, form Dolly、フォーレらしい和声の中期作 2.Papillonの洒脱なvcのトリルや3.Sérénade、8.Sicilienne、11.Andanteの旋律ですね。ちなみにSicilienneは名作「ペレアスとメリザンド」に転用されている有名な旋律です。

 試しにYouTubeで「Sicilienne」を観てみる?
  David Louwerseのチェロと François Daudetのピアノです。


素晴らしいのは半音階的で調性感の薄くなる後期作品。5.Sonata for Cello and Piano No.1の第二・三楽章、10.Sonata for Cello and Piano No. 2の第三楽章は、まさに仏印象派の音色でドビュッシーやラヴェルにつながる事が明白です。

ブランテリドのvcは暖色系で表情豊かな音色と演奏ですね。全体としてはもう少しクールに弾いてもらった方が好みかもしれません。ベストトラックは9.Elégieでしょう。


フォーレをただの美しいサロンミュージックと聴くのか、時代を反映させた和声を楽しむのかで違うかもしれません。個人的には後期作品の洗練に一票ですが。
もちろんリビングルームでゆったりとした時間を過ごすのには最高の音楽でしょう。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

モートン・フェルドマン(Morton Feldman) の「バニタ・マーカスのために, For Bunita Marcus」を M.ヒンターホイザーとM.A.アムランのピアノで聴き比べ


モートン・フェルドマン (Morton Feldman, 1926/1/12 - 1987/9/3)
「ニューヨーク楽派」最後の米現代音楽家?フェルドマンと言えば、後期の静的平坦長舌な流れを思い浮かべる人も多いと思います。図系譜で知られていますが早々に放棄しており「新しい複雑性」の読譜の困難性と同じ様に前衛隆盛期に生まれた現代音楽の技法になりますね。
➡︎ このblogで言う現代音楽


For Bunita Marcus (1985年)
フェルドマン晩年の傑作「コプトの光」の前年に書かれた唯一の長いピアノ曲で、1'-3'ほどの小曲36パート切れ目なしの72'ほど、弟子の米女性現代音楽家Bunita Marcus(1976年から11年間作曲活動を共にした)に贈られています。彼女はこのブログではおなじみのBang On A Can all-stars等へ曲を書いていますね。



マルクス・ヒンターホイザー(Markus Hinterhäuser, 1958/3/30 - )はイタリア生まれのオーストリア人ピアニスト、現代音楽を得意とするヴィルトゥオーゾですね。Arditti Quartetとの共演、またフェルドマン他 J.ケージやG.ウストヴォーリスカヤの作品で知られています。
ペダルによる残響音が共鳴する様に残りながら静的アルベジオの音が流れます。もちろん無調で特徴的な旋律はなく、演奏は抑揚を排した音列配置的な単音の並びを無機的に奏でます。柔らかさと冷たさのバランスもありますが、印象は透明感の強い硬質さで氷の部屋の雫と反響の様、耳と脳に共鳴します。





このブログでも10CDくらいはインプレしているカナダ人ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト、マルカンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin, 1961/9/5 - )ですね。今年(2018年)6月に久々の来日が決まって、私もヤマハホールのチケットを入手済みです。
まず表情があります。音の並びに速さ(アゴーギク)と休符の長さを付けています。タッチもより柔らかく繊細で譜面指示pppの気配が強いです。冷たいながら有機的な音色は、静寂な氷の世界の小生命体の様な気配です。その分聴きやすいのではないでしょうか。



静寂平坦な単音羅列のピアノの音、5/16拍子, 3/8拍子で一小節1音と2/2拍子の全休符がメイン、が一時間以上続くわけですから集中して全曲聴き通すが難解なのも事実でしょう。それが後期フェルドマンの音楽ですね。

それでも二人の演奏は明らかに異なり、ヒンターホイザーは硬質無機的アムランは表情有機的です。抑揚の異なる二人の演奏が♩= 63-66 指示でほぼ同じ72分強(数秒違い)というのも面白いですね。
個人的好みですと、作品(スコア)にタッチとアゴーギクで色付け(表情付け)したアムランに一票でしょうか。もしフェルドマン本人が聴いたらヒンターホイザー?、楽譜を演奏者の解釈で変えられるのが嫌いだったそうですからね。




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R.シュトラウスの『町人貴族』聴き比べ:テンシュテット / ライナー / シュトラウス


リヒャルト・シュトラウス (Richard Strauss, 1864/6/11 - 1949/9/8)
今更のドイツ後期ロマン派最後の大物ですね。マーラーと時代を共にしてお互いに指揮者としても敏腕を振った二人、違うのはオペラと交響詩を得意とした事でしょうか。


町人貴族, Le bourgeois gentilhomme Op.60 (1917年)
モリエールの戯曲『町人貴族』のフーゴ・フォン・ホーフマンスタール改作時付随音楽から9曲にした組曲ですね。貴族になりたい金持ち町人ジョルダン、その娘リュシルが策略を巡らせて結婚をする喜劇です。
実はバロック調の曲構成でほぼ聴かないのですが、今回は明後日(2018-1/10)の大野和士/都響のコンサートを前に聴きなおしてみました。

1.Ouverture - 2.Minuet - 3.The Fencing Master - 4.Entry and Dance of the Tailors - 5.Lully's Minuet - 6.Courante - 7.Entry of Cléonte - 8.Intermezzo - 9.The Dinner
それぞれ1'から5'ほどの小曲(9.The Dinnerは10')なので、パート別の印象は不要かと思います。



クラウス・テンシュテット(Klaus Tennstedt)が音楽監督を務めた時代のロンドンフィル(LPO)との演奏です。
序曲の入りから優美です。通して洒落た古典っぽさを感じさせてくれる演奏で、テンシュテットの個人的な印象とは違って軽やかさが感じられます。とは言え「9.宴会」では交響詩の様な流れを切れ味のある演奏で聴かせてくれました。




フリッツ・ライナー(Fritz Reiner)が鍛え上げた手兵シカゴ響(CSO)を振った演奏です。ライナーはシュトラウス本人との交流もあり、得意としていましたね。ここでは2曲(5,6)がカットされています。
序曲から切れ味のある演奏でテンポも速め全体が重心の低い流れです。もちろんメヌエットやバロック調の曲では優美さも見せますが陰影がありますね。1956年の録音とは思えないほど音もいいです。また曲構成から2曲が欠けても印象に影響ありませんね。華々しく表情豊かで流石はシュトラウスを得意とするライナーです。




リヒャルト・シュトラウス本人の指揮でも聴いておきましょう。オケは音楽総監督を務めたベルリン国立歌劇場附属オーケストラのシュターツカペレ・ベルリン(Staatskapelle Berlin)、1930年の録音です。
バロック感もそれほど強くなく、アゴーギクで流れを作っています。メヌエットでも優美さの中に交響詩の様な動機を感じさせてくれます。印象は一番シャープでシュトラウスの曲らしい表情です。(笑)
ただ古いspからのmonoですから、それ以上の素晴らしさを聴き取るのは難しいですね。


ライナー盤が、重心の低い流れでバロック的な印象を後期ロマン派的なものにしていいですね。あまりにバロック色が濃いのはシュトラウスさに欠ける気がします。
シュトラウス本人は、想像以上にシュトラウスらしさが感じられて(笑)録音の問題がなければ"これ"でしょう。
テンシュテットは軽すぎる感じです。

大野/都響がこのバロック・古典の調べをどう演奏してくれるか興味がありますね。独奏vnにも興味が湧きますし、「9.宴会」は一番の聴かせ処でしょう。





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ツェムリンスキー(Alexander Zemlinsky) の交響詩『人魚姫』を聴く


アレクサンダー・ツェムリンスキー (Alexander Zemlinsky, 1871/10/14 - 1942/3/15)
音楽感よりもアルマ・マーラー(シントラー)を恋仲の弟子にしていた事や、妹がシェーンベルクと結婚した事の方が知られている様なツェムリンスキーの印象です。
音楽的には当初ブラームスの尽力を得た事や、その後新ドイツ学派から後期になって調性感の薄い表現主義になっていますね。無調や十二音技法といったこの時代の前衛現代音楽には手を染めませんでした。

今回は、次週(2018-1/10)の大野和士/都響のコンサートを前に交響詩『人魚姫』の予習です。


交響詩『人魚姫』, Die Seejungfrau (1903年)
『人魚姫』はブラームス派から離れ、後期ロマン派的な新ドイツ楽派への変化の作品ですね。
演奏はリッカルド・シャイー(Riccardo Chailly)が首席指揮者だったベルリン放送交響楽団*(Radio-Symphonie-Orchester Berlin)を振っています。1990年代に話題となったDECCA頽廃音楽(Entartete Musik)シリーズ一枚ですね。
(カップリング曲Psalmは聖歌でインプレできない為割愛です)

*日本語では同名オケの"Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin"、旧東ドイツに属した、とは違います。ドイツのオケの名前は煩わしいですね。



三楽章の標題音楽で、アンデルセンの童話『人魚姫』を基にしています。
【第一楽章】暗い海底の音色からsolo-vnの奏でる人魚姫の動機が現れます。この辺りは派手さはワグナー、solo-vn旋律はシュトラウスを強く感じますね。後半の海が荒れて難破から王子との出会いは激しさから穏やかさでストーリー性が明確です。
【第二楽章】声を引換に痛みのある足をもらい人間になった喜びを派手に、その苦痛や王子が姫と結婚する悲しみを情感のコントラストを強く奏でます。処々でマーラー似の旋律が顔を出し、いかにも後期ロマン派的です。
【第三楽章】人魚姫が海に身を投じて泡となり風の精に生まれ変わって行くまで。緩徐楽章ですが(死の)山場を作るのはマーラー風に感じます。死を迎えた後は暗い緩徐パートとなりラストは細い音色の人魚姫のsolo-vnが入って天に登り救済されるシーンを奏でて閉じます。

後期ロマン派最後の時代20世紀初頭らしい音楽ですね。この時代を象徴するR.シュトラウスやG.マーラーの気配と、ストーリーを感じる標題音楽構成が明確です。人魚姫の物語を浮かべて聴くのは必須でしょう。
シャイーのコントラストある演奏もいいですね。

さて、次週の大野/都響は"うねる様"なこの曲をどう奏でてくれるでしょうか、楽しみです。




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バーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan) の CRAZY GIRL CRAZY を聴く


バーバラ・ハンニガン (Barbara Hannigan, 1971 - )
今や指揮者としても活躍の場を広げるカナダのソプラノ歌手 バーバラ・ハンニガンの最新作です。
現代音楽を得意とし、狂気さえ見せるハンニガンのソプラノは好きな一人です。このブログでも何回かインプレ済みですが、ジャケット写真を見ると『エクサン・プロバンス音楽祭 2016 オペラ「ペレアスとメリザンド」』のシーンを思い出しますね。


CRAZY GIRL CRAZY
本アルバムではベリオ/ベルク/ガーシュインを取り上げて、ハンニガン本人が指揮をしています。ガーシュインの曲では編曲にも関わっていますね。まさにハンニガン色のアルバムです。
ライナーノートではこのアルバムの三曲が、それぞれ奔放に生きた女性「ルル」を映し出していると言っていますね。演奏はルートヴィヒ管弦楽団 (Ludwig Orchestra)です。



Sequenza III for female voice (Luciano Berio)
ベリオの代表作でソロ曲シリーズの「セクエンツァ」その#3は楽器ではなく女性の声です。歌詞はMarkus Kutterの"Give me a few words for a woman to sing a true ..."でシンプルですが、前衛技巧で狂気に至る様な表現力を最大限必要とします。まさにハンニガンの実力を見せてくれます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Lulu Suite (Alban Berg)
 I Rondo - II Ostinato - III Lied Der Lulu - IV Variationen - V Adagio
ベルクの未完のオペラ『ルル』から1934年に組曲化(Symphonische Stücke aus der Oper „Lulu“)された交響小作品ですね。第二幕のシェーン博士の息子アルバのシーンから第三幕ラストの切り裂きジャックにルルが刺されるまでで、歌唱パートは「3.ルルの歌」ルルがシェーン博士を前に歌うアリアです。
もちろん無調無拍的な前衛ではなく、薄い調性の中に美しい旋律と激しさを作っている楽曲です。シーンを頭に浮かべながらでも楽しいです。ここでは情感強めに展開しますね。やはり聴き処はハンニガンのアリアでしょう、よく伸びるsopの声が楽しめます。(ラストにも入っています)
もちろんオペラ「ルル」のハンニガンも好評を博していますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?

Girl Crazy Suite (George Gershwin)
ガーシュウィンのガール・クレイジー組曲ですが、ハンニガンとオーケストレーションのビル・エリオット(Bill Elliott)が編曲しています。
ガーシュインらしいらしいポップさをそのままに生かして、"I Got Rhythm" 等を歌うところはまるでMGMのミュージカル・サントラ盤の様です。この歌い方もハンニガンのもう一つの顔と言えるのかもしれません。これはこれで楽しさいっぱいです!


ハンニガンの前衛ソプラノ、手短に情感強く味わえる「ルル」、ミュージカルの様な楽しさ、異なる3つそれぞれ詰まったのがこのCDですね。これはおすすめです
20'ほどの映像も付いていてハンニガンの様子がわかるのも嬉しいですね。
α(アルファ)レーベルは楽しいアルバムを作りますよね。




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ホーカン・ハーデンベルガー の「20世紀のトランペット音楽」を聴く

現代音楽を得意とするヴィルトゥオーゾ・トランぺッター、ホーカン・ハーデンベルガー(Håkan Hardenberger, 1961 - )の現代音楽ソロ・トランペット曲集ですね。
7人の現代音楽家の作品で、武満さんとワトキンスの曲はハーデンベルガーの為に作られています。また、ベリオの「セクエンツァX」のみピアノでペーター・ソロモン(Peter Solomon)が入ります。


Sonatina for Solo Trumpet (1974)
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ (Hans Werner Henze, 1926/7/1 - 2012/10/27)の「ソロ・トランペットのためのソナティナ」は三楽章形式の楽曲、中期の作品です。
技巧曲ではない計4'の小曲です。点描的な音の流れですが音列配置ではありません。機能和声と無調の両方に足を跨いだ様なソロ曲です。微妙な立ち位置がヘンツェですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア付きです。



Paths (In Memoriam Witold Lutoslawski) (1994)
武満徹 (1930/10/8 - 1996/2/20)さんの晩年の作品「径 - ヴィトルド・ルトスワフキの追憶に-」で5'ほどの小曲です。
武満さんらしい細い幽玄さがtpにマッチしているかは少々??な部分はありますが、そこは武満サウンド。ミュートのかかった繊細な音色とオープンとのコントラストは美しいです。それが何を意図し表しているのか気になるところです。


Sequenza X per tromba in do (1984)
ルチアーノ・ベリオ (Luciano Berio, 1925/10/24 - 2003/5/27)のセクエンツァXがメインの様ですね。ベリオの代表作「セクエンツァ」は楽器別ソロ曲集で、そのNo.10「トランペットと共鳴のためのピアノ」ですね。
前曲の延長線上の様な音から入りますが、細かなフラッタータンギングが特徴的です。無調ですが音列配置でも、音の飛躍が大きな混沌でもありません。pfはほとんど明確な音色は出さず、tpの音色の共鳴を生んでいるそうです。流れるフレーズにフラッタータンギングが入り、そこにパルス的に単音が発せられます。背景に薄く残る共鳴音が印象的ですね。この曲が一番面白いです

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Josh Roganのtpで、共鳴を引き出すためにpfに吹き込む様子がわかりますね。pfはペダル操作をしています。



Old/New (Study for Solo Trumpet) (1986)
マウリシオ・カーゲル (Mauricio Kagel, 1931/12/24 - 2008/9/18)作曲で、「若い奏者のための新しいトランペット作品集*」にフィーチャーされたファンファーレ・コレクションの一曲です。
というわけで1'の超小曲。ミュートの陰鬱さが特徴的で、いわゆるファンファーレではありませんね。これならマイルスの方が俄然面白い?! 過激さや意外性、パフォーマンスといった表現主義的印象のカーゲルですが…残念。


Emotion (1992)
アントワーヌ・ティスネ (Antoine Tisné, 1932/11/29 - 1998/7/19)はフランスの現代音楽家、印象に薄いのですが本来表現主義の傾向が強いようですね。
デイヴィッド・ニーマン(David Niemann)の詩"エモーション"とのセット?ですが、意味不明ですw それが前衛? でも曲調はここまでの流れを超えるものはなく、不協和音的な旋律の楽曲です。


La mort de l'aigle for Trumpet in C (1993)
マイケル・ブレイク・ワトキンス (Michael Blake Watkins, 1948 - )はイギリス人現代音楽家。「死せるイーグル」は詩人ホセ=マリア・ヘレディア(Jose-Maria de Heredia)の作品からインスパイアされているそうです。
暗く哀愁を感じる旋律は後期ロマン派の調性さえ感じます。そこに不協和音を入れた感じで変化はありません。同じような曲ばかりで、そろそろ飽きて来ましたがw


Die grosse Schildkröten-Fanfare vom Südchinesischen Meer
ジェルジュ・リゲティ (György Ligeti, 1923/5/28 - 2006/6/12)の「《南シナ海》からの《ビック・タートル・ファンファーレ》」も前述「若い奏者のための新しいトランペット作品集*」の中の一曲で30"の超小曲です。
明確な4/4拍子のリゲティらしい楽しさ、でも響の悪いファンファーレで尻切れトンボです。30"ではねぇw


*「若い奏者のための新しいトランペット作品集」:トランペット奏者・音楽学者であるエドワード・タール(Edward Tarr, 1936/6/15 - )編纂による23曲の作品集


類似性が強い楽曲が並びます。現代音楽としては冒険性は低く、超絶技巧や新たな特殊奏法も感じられません。
そのためトランペットの表現や技巧を尽くすというほどのバリエーションや新鮮さは味わえませんでした。逆にトランペットの限界を感じる様な印象になってしまったのは残念。もっと色々やってくれるかと思いました。





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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。

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