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マルク=アンドレ(マルカンドレ)・アムランの『オペラ・トランスクリプションズ | 幻想曲』ピアノ超絶技巧曲 リストvsタールベルク

以前はよく来日していましたが、最後に雨の銀座のヤマハホールのコンサートに行ったのが2018年でした。10年ぶりくらいだったでしょうか。


マルク=アンドレ(マルカンドレ)・アムラン
(Marc-André Hamelin: pf)
今年も6月に来日予定があった様ですが、covid-19で中止になっています。(行く予定も無かったのですが…)

アムランのインプレは多々残してありますが、CD(セッション)ではクールなヴィルトゥオーゾ、Liveでは見せつける技巧とピアノを最大限鳴らすヴィルトゥオーゾで、スタンスが異なりますね。CDでもLive盤を聴くとその違いがよくわかると思います。(今回はやたらと鳴らしている感じですが…)

本アルバムではリストとタールベルク二人のピアノの技巧曲を並べて聴かせてくれると言う事で、期待値が高いですね。メインは一曲目のリスト「ヘクサメロン」(9パート)で、タールベルクの変奏曲も含めてベッリーニの主題をトランスクリプションした6人の作品を集結しています。




オペラ・トランスクリプションズ | 幻想曲
Opera transcriptions & Fantasies



1. ヘクサメロン S.392 【リスト】
1. 序奏(リスト) 2. 主題(リスト) 3. 変奏I(タールベルク) 4. 変奏II(リスト) 5. 変奏III(ピクシス-リスト) 6. 変奏IV(エルツ) 7. 変奏V(ツェルニー-リスト) 8. 変奏VI(ショパン-リスト) 9.フィナーレ(リスト)

まず1. 序奏は強鍵でpfの残響音を思い切り響かせるのが印象的ですね。2. 主題もテーマを朗々と鳴らし上げます。3. 変奏I(タールベルク)では小刻みな装飾音を入れて技巧を見せつけるヴィルトゥオーゾ、そして4. 変奏II(リスト)でトーンを暗くスロー静へと切り替えながら表情作りです。リストの選曲構成も見事ですね。いずれも明確な主題を残しつつ技巧を見せるトランスクリプションですね。

面白いのは7. 変奏V(ツェルニー)の舞踏曲の様な弾む様なリズム強調ver.で、ガッツリとpfを鳴らします。最高なのは9.フィナーレ(リスト)で、強烈な早弾きから派手な流れまで網羅されています。トランスクリプションを得意としたリストの本領発揮でしょう。アムランは猛烈にpfを鳴らします。

超絶技巧からエモーショナルな哀愁までがミックスされた曲と演奏になっていますね。完璧にpfを鳴らしていますね。いずれにしてもリスト編曲がやっぱり素晴らしいと実感します。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア付きです。アムラン含めて4人の演奏者で、オススメ・必聴です!!



2. ドン・パスクヮーレのモティーフによる大幻想曲 Op.67 【タールベルク】
タールベルクらしいロマン派色の濃い旋律を中心に技巧が鏤められています。アムランはエモーショナルなタッチから、爆音まで表情を変化させていますね。いかにもアムランらしい演奏です。以前シュテファン・イルマー(Stefan Irmer)のpfでタールベルクを聴いていますが、叩きまくるイルマーに対して色々と弾き分けるのは流石です。


3. 演奏会用パラフレーズ「エルナーニ」 S.432 【リスト】
低音鍵盤から高音まで広く使われて、音楽的にも単純なロマン派的ではありませんね。サロンで曲を楽しむと言うよりも演奏を聴くと言う感じです。アムランはここでも猛烈にpfを鳴らしますね。


4. モーゼの主題による幻想曲 Op.33 【タールベルク】
変奏曲的な流れで入って来ます。もちろんタールベルクですから、至る所ロマン派そのものの旋律で溢れています。技巧パートはそれを見せつけると言うよりも装飾音的に散在していますね。ラストは壮絶です。


5. 大幻想曲「ノルマの回想」 S.394 【リスト】
ここでも低音をよく使う印象です。初期のロマン派と言うよりも少し表現主義的な事も含めて後期ロマン派的な印象ですね。もちろん技巧性の高いパートが盛り沢山で、その辺がリストらしいですね。超絶技巧のピアノの音でお腹いっぱいになれますw



ロマン派の和声をキープするタールベルク、技巧の中に独特の和声を配するリスト、二人の曲の違いがよくわかりますね。個人的には超絶技巧から調性を乗り越える方向を見せるリストが好きですね。("無調のバガテル"まで進みましたね)

曲・演奏も合わせてベスト・トラックは1.Hexaméron-9.Finaleでしょう。

美しい旋律の中にヴィルトゥオーゾを聴きたい人にはタールベルクはピッタリかと。それらを強鍵超絶技巧とエモーショナルのアムランのpfで、楽しいアルバムになりましたね。



リストのトランスクリプションをレスリー・ハワードのピアノで聴く100CDset「The Complete Liszt Piano Music」にチャレンジするのも"あり"かと。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ゲルギエフ/ミュンヘン・フィル:怒涛の「ブルックナー 交響曲 第9番」



Anton Bruckner | Symphony No. 9
Valery Gergiev | Münchner Philharmoniker
2015年からヴァレリー・ゲルギエフが首席指揮者を務めるミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団とのブルックナー9ですね。あまり注目してはいなかったのですが、マーラーの8番「千人の交響曲」をインプレした際にクールな良さを感じたので手にしてみました。

2018年9月26日、聖フローリアン修道院でのライヴですね。







第一楽章
提示部第一主題動機群では第一動機がまず沈んだ音色で登場、第二動機でスローに鳴らして進み、緊張感ある流れから第七動機で華々しく重心を低く奏でます。派手で重厚な動機群です。第二主題は美しく複雑に多声的に絡ませていますね。第三主題はobが鎮める様に現れて管楽器にバトンを渡すと山場は重厚です。展開部は第七動機を繰り返して鳴らすと、低弦ピチカートで跳ねる様な行進曲になります。再現部は動機群を色合いを付けて反復されて濃厚な山場を作り、コーダはパワープレイです。低い重心と重厚な第一楽章になっていますね。


第二楽章
序奏トリスタン和音は緊張感ある静のピチカート、そこから主部は怒涛のパワー・ケルツォです。第一トリオはその重厚な下敷きの中に軽妙に現れますが、すぐに怒涛の流れに消し去られます。第二トリオは快速軽快ですが、どこか緊張感を感じますね。


第三楽章
第一主題(部)vn動機は濃厚なトリスタン的、執拗な反復山場を厚く鳴らします。ワーグナーチューバの動機は暗鬱な中に響かせてコラールを強調しますが不安定な「生との決別」ですね。第二主題(部)は弦と木管が対位しながら、ここでも重心を下げて進みます。展開部はスローに第一主題を回帰させていますが最後まで重さはゆずりませんね。コーダは緩やかな流れに様々な動機を絡ませたディナーミク出し入れからhrの音色を強調して終息します。



低重心で空気密度の濃厚なブルックナー9です。怒涛で重々しいブル9好きにはたまらない一枚でしょう。

アゴーギクは振らずにディナーミクで強引に突き進む感じですね。全編重厚さと圧迫感、個人的な予想とは反しましたが。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





カール・ニールセンの「交響曲 第1番 第2番」をトーマス ・ダウスゴー/シアトル響で

来日でも素晴らしいニールセンを聴かせてくれたダウスゴー、シアトル響とのニールセン・チクルスです。


カール・ニールセン
(Carl Nielsen, 1865/6/9 - 1931/10/3)
今更ですが、フィンランドのシベリウスと並び(同年生まれです)北欧音楽を高めたデンマークの音楽家ですね。年代から行くと後期ロマン派から近代音楽世代で、欧州で言えばマーラー(b. 1960)やR.シュトラウス(b. 1964)とほぼ同年代になります。

マーラーの様に機能和声を越えようとする方向性がある世代で、ニールセンも多調・転調や不協和音の様な志向がありますね。事実、交響曲ですと第6番などは調号が付られていませんし、第5番も殆どのパートで調号はありません。



交響曲 第1番 第2番
トーマス・ダウスゴー (シアトル交響楽団)
今回のポイントはニールセンを得意とするダウスゴーです。2019年から音楽監督を務めているシアトル響(Seattle Symphony)とのニールセン・チクルスからですね。

ダウスゴーは来日公演でも二回、2012年3月(第4番:不滅)と2015年5月(第3番)、ニールセンを聴いていますが、いずれも素晴らしかったです。







1. 交響曲第1番 ト短調 Op. 7
第一楽章第一主題は明瞭な鳴りと転調での情感変化でこのパートらしさを演出、第二主題も管楽器の音色で流れをキープしますね。展開部・再現部も主題の明瞭な鳴りを生かし、第二楽章アンダンテは濃厚な弦楽奏になっていますね。やや古い印象を感じるのはその為もありそうです。第三楽章主要主題は重厚さ、第一トリオのvnも濃厚な表現です。中間部hrは抑えていますね。第四楽章第一主題弦楽は力強く、第二主題もその流れに乗って進みます。コーダはあっさりかもしれません。
重厚さを主体とした流れが明瞭です。


2. 交響曲第2番 ロ短調「四つの気質」Op. 16
古代ギリシアのヒポクラテスの四体液説の副題があるのですが、標題音楽ではないと言われています。そこに触れる知見はありませんが。
第一楽章第一主題はここでもメリハリ強調、第二主題は美しさを残しながらも音の強さ、コデッタもインパクトを与えています。第二楽章は低音弦のリズムが印象的、素直でない舞踏曲らしさを上手く表現していますね。第三楽章主部は低重心の弦楽が効果的に美しく鳴り響き、木管で始まるトリオは抑えて澄んだ印象です。第四楽章は速め力感の流れで進み、パウゼからの静音に繋ぎます。この静音も素直ではなく澱んだ力感がありますね。
この曲らしい力強い音と表情が感じられますね。



ダウスゴーの強音力感の流れが印象的です。転調の表情変化よりも、そこを強く感じますね。調性感と力強いニールセンらしさですね。(曲自体に新鮮さは欠けると思います)

どうもニールセンを聴くと、すぐにお腹いっぱいになる気がしますw



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





カタリーナ&スヴァンテ・ヘンリソン の「High, Low or In-Between」チェロと歌

面白いのか、面白くないのか、聴く人次第のアルバムですねw


High, Low or In-Between
Katarina Henryson, Svante Henryson
スヴァンテは元オスロ・フィルハーモニックの首席コントラバス奏者で現代音楽家、チェロは独学だそうですね。カタリーナはスウェーデンのジャズ・アカペラ・アンサンブル「リアル・グループ, The Real Group」、多々来日しています、の元一員(リーダー)で楽曲提供もしているそうです。ヘンリソンご夫妻ですね。

Svanteのチェロで、奥様Ktarinaが歌います。曲はロック・ジャズ・ポップ・等のカバーで良く知られたナンバーも多々あります。ジョージ・ハリソンの "Here Comes the Sun" とか。
そして曲はお二人の記念になる日々に関係したものが選ばれているそうです。もちろんお二人の楽曲(スヴァンテ*, カタリーナ**)も入って、全17曲。個別インプレは不要でしょう。

使われているチェロも独特のものですね。興味ある方はググってくださいw







1. Come Down in Time - 2. We Walk in a Fog - 3. Here Comes the Sun - 4. *Green (Instrumental) - 5. **A Little Kindness - 6. Eyes of a Child - 7. The Dry Cleaner from Des Moines - 8. *High (cello improvisation) - 9. **I Found the Key - 10. So Long, Frank Lloyd Wright - 11. *In between (cello improvisation) - 12. Everybody's Got To Learn Sometime - 13. Kiss - 14. *Low (cello improvisation) - 15. Det Växer Från Edens Tider - 16. Siv Larssons dagbok (Chega de Saudade) - 17. Monicas Vals (Waltz for Debby)

全体はただのポップなチェロ伴奏ソングです。本当に特別な事は何もありません。ヴァリエーションも似たり寄ったりで、チェロの伴奏というのが珍しいだけ…
スヴァンテのチェロ・ソロ曲*、歌パートの主旋律がある"4.Green"以外、8, 11, 14, は即興で面白いです。ダブルストップなのかエレクトロニクスなのか、と言った面白さや伸びやかさがありますね。全く違う音です。このパターンに歌を載せてくれたら面白かったかもしれません。カタリーナの曲**は、少しジャズ風味かもしれませんが然程の面白さはありません。

カタリーナの声は、楽曲にもあるジョニ・ミッチェルを優しくした様な感じですね。特にシャウトしたりとかはせずに淡々と歌います。歌伴のチェロはピチカートとボウイングを混ぜていますが、特殊奏法的な物はありませんね。ピチカートが多いのが曲の変化を薄めている気もしました。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  3. Here Comes the Sun、二人のステージです




チェロを伴奏にしたポップ・ソングアルバム。それ以上でも以下でもない様です

現代音楽家のチェロ、ジャズ系ヴォーカリスト、二人が作る……その期待値を上げ過ぎたかもしれませんねw




テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





エルネスト・ショーソンの代表作「愛と海の詩 | 交響曲 変ロ長調」をフランス・セットで


エルネスト・ショーソン (Ernest Chausson, 1855-1899)
フランスの音楽家でフォーレとドビュッシーの間の年代になりますね。20歳を過ぎてから音楽の道に入り44歳で早逝、活動期間は短いです。セザール・フランクに師事していますが、ベルリオーズやドビュッシー、そしてワーグナーの影響も強いそうですが…



Poème de l'amour et de la mer | Symphonie
Alexandre Bloch (cond.) | Orchestre National de Lille
同年代作品の二つ、ショーソンの代表作ですね。

"Poème de l'amour et de la mer, Op. 19"はフランクの影響で統一テーマが繰り返して使われるそうです。3パートのカンタータ、もしくは連作歌曲で、楽曲的には上記の音楽家の影響が見られるとの事ですね。初期のアールヌーボーだともあります。Textはショーソンの友人でもあるモーリス・ブーショール(Maurice Bouchor)からになります。
"Symphonie, Op. 20"は師であるフランクの名曲「交響曲ニ短調 (1888)」の影響が大きいそうですがより自由度がある様ですね。年代的にはすぐ直後に作られています。

演奏はアレクサンドル・ブロック指揮、フランス国立リル管弦楽団になります。







1. 愛と海の詩, Op. 19 (1882-92)
瞬間的に感じる第一印象は仏ロマン派のイメージでしょうか。後期ロマン派も印象派も感じませんし、殊更ワーグナー を感じることもないですね。あえて言うなら歌曲にはシャンソンの香りがするかもしれません。駄耳なので統一された動機は気がつきませんでした。

3パートで中間パートの管弦楽曲はあまり面白みはありません。やっぱり歌曲がイイですね。ヴェロニク・ジャンス(Véronique Gens)はかなり濃い目のsopで、朗々とした歌いがメインですね。

歌曲にも関わらず、sopパートでもオケがかなり対位的に主張して来るのが特徴的です。オケが単なる歌曲伴奏にならないのは個性的ですね。それがショーソンの意図なのか指揮者A.ブロックのタクトなのかは不明です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  録音風景ですね。alphaレーベルのPVです



2. 交響曲 変ロ長調, Op. 20 (1889-90)
第一楽章は主動機の変奏から入ってきますが、ロマン派から後期ロマン派への流れを感じますね。第二楽章は緩徐で陰鬱な流れが印象的な入りでしたが、気がつけばロマン派的な流れになっていました。第三楽章はベルリオーズやフランクの印象があるかもしれません。残念ながら、これと言った楽しさを見つける事はできませんでした



ロマン派の楽風ですね。特に強烈な個性を放つ事はありません。交響曲は退屈やや平凡で、歌曲の方が自由度が大きく楽しめる気がしました。

オケは明瞭さが強く、陰影を付ける表現ではありませんね。歌曲には合いましたが交響曲はフラットになったかもしれません。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





山下洋輔「バンスリカーナ」再々発売と過去の音楽記憶

久しぶりのジャズ系インプレで、再発売されていたとは知らずの一枚です。思わずポチッと…

クラシック好きの父親がかけていたSP盤/蓄音機の時代から、中学生の時にはSP&LP/stereoに。ロック中心時代のその頃の情報源は"ミュージック・ライフ"、ジャズ中心の高校生時代は"スウィング・ジャーナル"、クラシック系はレコードのライナーノートにある評論家の先生のあまりの上から目線でうんざり腰が引けて雑誌は一切買わない事にw

もちろん当時はインターネットどころがPCさえありませんでしたから、ロックは深夜放送、ジャズは新宿や銀座のレコード屋さんも情報源でしたね。
ネット情報は、インターネット発展の前の電話回線の"パソコン通信" nifty-forumからですから1990年代中盤になってからです。PCネタがメインで、音楽系は薄かった様な…

このアルバムはフリージャズ好きの学生時代でした。前衛現代音楽にシフトするのはもっと後の事ですね。


Player
山下洋輔 (1942/2/26 - )
山下洋輔さんの紹介をするつもりは当然ありませんw トリオは坂田明(as), 森山威男(ds)が個人的な印象です。その後、ドラムスを小山彰太さんに入れ替えて、大きな編成等もやっていたのではないかと思います。違うかな?

1970-1980年代の活躍が印象に残っていますが、この後1980年代からは激しさは変わりませんがコード重視の音作りになって行った様に思います。


Album Title
Banslikana (1976年)
Piano Solo
ライヴで見せる姿とは一味も二味も違うスタンダード曲を中心としたアルバムでしたね。レコードで購入した時は、どんなスタンダードになっているのか興味津々だった記憶があります。

聴きやすさと刺激のバランスが良くてBGMの様にかけていたと思いますね。






1. チュニジアの夜 - 2. ステラ - 3. バンスリカーナ - 4. キアズマ - 5. 枯葉 - 6. コーズ・デイドリーム - 7. ララバイ - 8. バード

ハードボイルドな味付けのスタンダード&オリジナルジャズ曲になっていますね。"チュニジアの夜"などは縦横無尽の打鍵の疾駆がYAMASHITA的で、"ステラ"はかなりフリー・バラードな味付けになっています。

"バンスリカーナ"は名曲で、このフレーズが今でも時折頭に浮かびます。メインフレーズ(主題)を変奏しながら強鍵で進んで行くのは前衛的です。YAMASHITA節炸裂ですね。

"キアズマ"も得意曲ですが、こちらは即興的な楽曲で熱が入っています。"枯葉"はトランスクリプション的で、オリジナルの気配はありません。激しいフリーインプロビゼーションです。"コーズ・デイドリーム"は挟まれる美しいコードが特徴的です。"バード"はバップの香りがありますね。

昔のレコードの録音時間制約から、全8曲で長くても一曲あたり8'以下と言うのが残念です。



バンスリカーナという曲を聴くと主題の変奏と、打楽器の様にピアノを扱う奏法とで、この後自分の嗜好が前衛現代音楽に向かったのがわかります。まさに前衛ピアノ曲と演奏です。

フリーインプロビゼーションは類型化を感じますが、バンスリカーナ 一曲を聴くために買っても惜しくないレアな一枚です!



 ★YouTubeで山下洋輔トリオを聴いてみる?
  やっぱりバンスリカーナのトリオ爆演と言うならこれでしょう。
  本CDと同年モントルー1976ライヴ"Montreux Afterglow"からです。
  3.5'あたりの爆演や、5.5'あたりからの坂田さんのas大ブロウもあって、
  こちらの方が聴きやすいかも。今聴くと思わず笑みがこぼれてしまいます。



テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽





アンナ・プロハスカ(Anna Prohaska) がソプラノで描く ミルトンの"失楽園"『Paradise Lost』

ジャケットに負けない素晴らしいコンセプトと表現力のアルバムですね。


Player
アンナ・プロハスカ
(Anna Prohaska, b.1983)
ドイツのソプラノ歌手ですね。現代音楽の賞であるハンス・アイスラー賞を受賞したり、オペラや古典だけでなく現代音楽も得意としている様です。そうなるとこのアルバムの構成も納得かもしれません。

プロハスカの個人的印象は殆ど無く、2012年ルツェルン音楽祭のアバドが振ったレクイエム(Mozart)が良かったくらいしか残っていません。古くて恐縮です。


Album Title
Paradise Lost
まずタイトルから惹かれますね。旧約聖書『創世記』第3章を元にしたジョン・ミルトンの同名作品をベースにした、良く知られるアダムとイヴのリンゴの話ですね。ジャケット写真もまさにそれに倣っています。

楽曲の構成が凝っています。全体を6つのパートに区切り、エデンの園から 追放されて地上での暮らしまでになっていますね。各パートに以下のバロックから近現代の音楽家20人の25作品を詰め込んでいます。それぞれ、失楽園に纏わるもしくは関連性のある小楽曲ですね。(例えばフォーレ"イヴの歌, Op.95")
ラヴェル, バーンスタイン, メシアン, フォーレ, ドビュッシー, ダニエル=ルシェール, ストラヴィンスキー,ヴォルフ, ブラームス, ライマン, ブリテン, プフィッツナー, ラフマニノフ, アイヴズ, パーセル, シューベルト, シューマン, アイスラー, マーラー, クラム


そしてピアノ伴奏のみのソプラノ・ソロと言う先鋭な設定です。(ピアノはジュリアス・ドレイク, Julius Drake)






I. 楽園の朝
ラヴェルは澄んだsopでパラダイスの三羽の小鳥を歌います。続くバーンスタインは弾む様な変化でとても生き生きしていますね。そしてメシアンの無調pfの音色とsopへと流れて、楽園がとても上手く構成されています。
楽風変化で作るI.ですね。


II. イヴの目覚め
フォーレの"楽園"はこのアルバム前半のメインでしょう。世界の夜明けを音数の少ないpfの上に透明なsopで、フォーレらしい美しさがピッタリですね。ドビュッシーからダニエル=ルシェールに繋がるフランス連携、美しさが輝きますね。
仏印象派の流れのII.です。


III. 理想郷/田園の牧歌
ストラヴィンスキーの知られた旋律にヴォーカリーズで弾むリズムで入ります。ヴォルフの二曲が色濃く、明瞭に、平和と喜びを歌い上げます。
心情を吐露するパートIII.ですね。


IV. 火遊び/イヴと悪/人間の堕落
古典(ブラームス)から、現代音楽(ライマン)、英音楽(ブリテン)、とリンゴへの欲望の世界を陰影強く歌います。プフィッツナーで遂にリンゴを食べてしまいます。
濃厚にリンゴの欲望を歌うIV.です。


V. 追放/出立/思い出
ラヴェルを思わせる様なpfのラフマニノフで混乱を見せて、アイヴズで夕暮れを陰鬱に、パーセルは古典英語の文でアダムに声をかけます。その後はシューベルトとシューマンが二曲づつ続き、ロマン派リートとなりますね。
クラシカル歌曲らしいV.になっていて、一番平凡かもしれません。


VI. 地上の暮らし
アイスラーの短い二曲で、この世は天国であり地獄、楽園は地獄、と歌います。調性はかなり薄くぴったりです。この作品のキー曲ですね。
マーラー「子供の不思議な角笛」から "浮世の生活" が使われて、親子の厳しい話が神経質なpfと共に速めのテンポで歌われます。
人間の悲しみから 最後はクラムの "風のエレジー" で調性を感じさせながら自然を歌い静めます。しかし30"以上の無音の後、楽曲リストにない26曲目が現れます。
作者不明の "I will give my love and apple…" です。静かに諭すように、最後に希望の光を灯します。(ライナーノートには歌詞も載っていません。存在は無記述です)
この作品最大の聴き処のパートになっています。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  PVです。録音風景やプロハスカの思いが聞けます



各パートに個性が与えられ、ストーリー展開も見事に決まっています。特にパートIV. は構成と歌詞と曲の流れが合致して素晴らしいですね。強力オススメの一枚!です。

歌詞は、独語・英語・仏語になりますが、英訳付きなのでストーリーを追えるのは助かりますね。この曲に歌詞は必須です。

プロハスカの構成力が際立つ作品で、このコンサートがあったら是非行きたいですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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