FC2ブログ

サラ・ニューフェルド(Sarah Neufeld) の「The Ridge」は心地よいポップさでしょうか


サラ・ニューフェルド
(Sarah Neufeld, 1979/8/27 - )
ヴァイオリニストであり、作曲もこなすカナダの女性音楽家です。作曲よりも演奏の方が主なのでまだ現代音楽家という方向性がどこまでなのかは不明ですね。

興味を持ったのはその経歴です。ロックバンドの"Arcade Fire"のサポート・メンバー(ツアーやレコーディング)であり、その他グループ活動もしているそうです。B.バルトークやS.ライヒからの影響や電子音楽まで包括するそうですから、マルチなフュージョン系の現代音楽を期待しますね。


The Ridge
上記バックボーンからソロアルバム「Hero Brother」をリリースし、本作は2ndアルバムとなります。

今回は以下アーケイド・ファイアのメンバーを含むカルテット(弦x2, 打, 管)です。ポップならヴァイオリンとリリコンにリズムセクションですね。リリコンとシンセを考えると電子音楽的サウンドでしょうか。
 ・Sarah Neufeld [vilolin, voice, synth]
 ・Jeremy Gara [drums, synth]
 ・Colin Stetson [lyricon]
 ・Hans Bernhard [bass]






The Ridge
第一印象はシンセサイザーの"ミニマル"ですね。味付けはロック的リズムを刻むドラムでしょう。中盤からシンセがロングトーンの重厚さを被せてきますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

We've Got A Lot
ドラムのリズムにvnの反復が乗ります。そこにヴォーカリーズと低音のシンセ音。ポップなヴォーカルナンバーですが、これと言った前衛性は感じられません。

They All Came Down
ただのポップ・ソングです。

The Glow
単純な旋律反復のポップスです。ディストーションしたシンセは絡みますが…

Chase The Bright and Burning
ドラムのリズムとミニマル、そしてヴォーカリーズのパターンですね。少し退屈かも…

A Long Awaited Scar
vnの反復ソロから発展する曲です。少し幽玄さを感じますが、それがバルトーク?!ですか。ロック色も加味されて来て初めて面白さがあります。

From Our Animal
ミニマルvnソロ曲ですが、何か超絶技巧性とかが欲しいです。

Where The Light Comes In
現代のサロンミュージックの様な心地よいvn曲です。シンセ等も入ってアンビエントな感じですね。



ロックをベースにした現代音楽かと思いきや、ミニマル基調のただのポップスと特徴的に薄いヴァイオリンでしたね。新しいものを探そうとするとこう言う事も起こります。仕方ありませんね。

唯一 "A Long Awaited Scar" の展開に面白さを感じました。



 ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧

テーマ : 本日のCD・レコード
ジャンル : 音楽





ザルツブルク音楽祭2019 オッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」をNHKプレミアムシアターで観る


今年のザルツブルク音楽祭(Salzburger Festspiele)から、人気の演出家バリー・コスキーによるオッフェンバック(Jacques Offenbach) の「天国と地獄 (Orphée aux enfers)」です。これをTVで観られるのが嬉しいですね。

コスキーは2017年のバイロイト音楽祭「マイスタージンガー」で面白い演出を見せたのを思い出します。今回は神の世界の破茶滅茶ぶりをどう捌いてくれるのか楽しみです。



(euronewsからの出演者解説付き超ダイジェストです)



演出
一部流れに変更を加えつつ始めから終わりまで破茶滅茶です。息つく暇も有りませんね。徹底しています。細かい事はその陰に隠れてしまいますが、配役に擬音・語り手を入れたり、衣装も表情作りもグロテスク・エロティックな表現でしたね。その徹底さがコスキーらしい演出になるでしょう。

舞台・衣装
コスキーの破茶滅茶演出に沿った極端な衣装の対比が笑いにスパイスを加える様でした。ジュピテルは約束通りハエになっていましたが卑猥な衣装でしたね。舞台は今流行りの暗い背景主体です。

配役
世論のフォン・オッターは相変わらず美しいですが老けた印象です。(まぁ64才ですから…笑)
ウリディスのキャスリーン・リーウェック一人が歌唱・演技・体型?!共に光りましたね。ハエのジュピテルとの"ジー・ジー"二重唱(Duo de la Mouche)は過激なエロティック・コメディでした。近年では驚きませんね。ステュクスは役者のM.ホップを採用して擬音と語りパートで孤軍奮闘なのですが、これが今回演出の一つの見せ場ですね。
それ以外はコスキーの破茶滅茶演出の範疇になるでしょう。なにせ個々の個性を超えた極端さですから。

音楽
オケなしの語りパートが多くて、その方が印象に残りましたね。


全面破茶滅茶狂気のコスキー演出の徹底したエンターテイメントでしたね。他の全ては、その陰に隠れた感じです。神の世界狂気「天国と地獄」らしさ炸裂の楽しさでした。

どんどん過激になるコスキーの次回演出作品が楽しみですね。


<出 演>
 ・世論(Public Opinion):アンネ・ソフィー・フォン・オッター [Anne Sofie von Otter]
 ・ジョン・ステュクス:マックス・ホップ [Max Hopp]
 ・ウリディス:キャスリーン・リーウェック [Kathryn Lewek]
 ・オルフェ:ホエル・プリエト [Joel Prieto]
 ・アリステ/プリュトン:マルセル・ビークマン [Marcel Beekman]
 ・ジュピテル:マルティン・ヴィンクラー [Martin Winkler]

<合 唱> ベルリン・ヴォーカルコンソート
<管弦楽> ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮> エンリケ・マッツォーラ [Enrique Mazzola]
<演 出> バリー・コスキー [Barrie Kosky]


収録:2019年8月12・14・17日 モーツァルト劇場(ザルツブルク)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジェルジュ・クルターグ(György Kurtág) と ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger) の対話『Zwiegespräche』


Zwiegespräche, 対話
ジェルジュ・クルターグ(b.1926 HUN🇭🇺)
ハインツ・ホリガー(b.1939 SUI🇨🇭)
欧州前衛エクスペリメンタリズムのビッグネーム二人による、作曲も演奏も'対話'形式になった作品ですね。
ホリガーの80歳を祝して93歳のクルタークが作曲し、それに応える様にホリガーが協調して作られた共作です。演奏もホリガーと弟子のオーボエ奏者マリー=リーゼ・シュプバッハ(Marie-Lise Schupbach)が'対話'しつつ、クラリネットのエルネスト・モリナーリやソプラノのサラ・ウェゲナーが絡みます。

37曲という小曲の組合せ、まさに対話、になっています。TextはPhilippe Jaccotterですが、残念ながら独語のみで英訳がありません。






Zwiegespräche (2018年)
まず始めの二曲ですね。クルターグの"… ein Brief aus der Ferne an Ursula"をホリガーがソロで吹き、それにホリガーの曲"Berceuse pour M"をシュプバッハが吹いて応えます。よく似た静的で深淵な曲ですが、淡々としながら音色の通るホリガーに対して、イングリッシュホルン(コーラングレ: 少し低音のオーボエですね)の幅広い音色です。これが基本構成でしょう。

クルターグらしい調性に片足を置いた深淵な曲が並びますね。そんな中、唯一のピアノ曲… für Heinz …(pf: Heinz Holliger)は口数が少ないのに光ります。メインのデュオ曲は対位法、ホモフォニー、時にカノンの様な流れも感じますね。クラリネットはバス系低音で、リード楽器同士の音色の交感が心地よいです。終始クールで、興奮や混沌はありません。あえて言えばホリガーの方が"Sonate für Oboe solo"の様に音数が多め、"Oiseaux"の様に特殊奏法等で多少刺激を与えているかもしれません。

"対話"は曲の中にも、曲と曲の間にも存在します。また、歌曲と朗読もあってヴァリエーションの広い小曲の組合せですから、ホリガーの代表作を思い浮かべました。



通して静ベースの深淵さです。そして小曲構成となるとホリガーの"Scardanelli-Zyklus"を思い浮かべてしまいますね。クルターグもそれを考えたかもしれませんね。

現代音楽の木管の音色とデュオの二旋律の絡みを味わえるアルバムです。



 ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





評判の高い ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger) の「スカルダネッリ・ツィクルス, Scardanelli-Zyklus」という欧州前衛現代音楽


ハインツ・ホリガー
(Heinz Holliger, 1939/5/21 - )
日本でもお馴染みのスイス人オーボエ奏者にして現代音楽家、そして指揮者ですね。今回は現代音楽家としてのインプレです。作曲はS.ヴェレシュとP.ブーレーズに師事している訳ですが、無理やり言うならキラメキの音はブーレーズであり、幽玄さはヴェレシュを感じる訳です。楽風はもちろんバリバリの欧州エクスペリメンタリズムですね。


Scardanelli-Zyklus (1975 -1991年)
先日ヴェレシュをインプレした際に、H.ホリガーとこの作品を思い出しました。もちろん2017の国内初演もですが…(コンポージアムのインプレは残していません)

制作期間16年間(それも前衛の停滞期以降で)とあまりに長く、練習曲だの独詩人ヘルダーリンの'四季'だの組合せだのと言われても混沌で、それ自体が前衛です。37年間精神を病んで籠った詩人を表現と言われても…ですし、CD1と2の落差も飲み込みづらいです。一言で言うなら全22曲のパッチワークの現代音楽でしょうか。織りなす綾(モチーフ)それぞれも大切ですが、全体像を楽しみたいですね。

タイトルの "スカルダネッリ・ツィクルス" は異常をきたしたヘルダーリンが自らをスカルダネッリと称して"四季"の春・夏・秋・冬を繰り返し連作した事をテーマにしている様です。






曲の個別インプレはありません。【CD1】の合唱と演奏は通して"陰・鬱・暗・静" そして微妙な調性感を感じる無調、流れは素晴らしいですが正体が見えづらいです。"Bruchstücke"は一部クラスター的に音を発しますが、全体は蠢きですしね。声楽微分音は無理やり納得するなら"Winter III"や"Herbest II"でしょうか。(えっ、そこには無い?!w) シンプルですが、全体像を掴みづらい面白さを感じますね。

【CD2】では少し表情変化と技巧・技法が感じられます。静かな中にポリフォニカルな混沌蠢きが入ってきて、技巧的にもグリッサンドを使ったノイズ系と思しきものも感じられますね。合唱パートにも表現主義的な色合いもが強くなって、"Sommer I"の詩のポリフォニー朗読は面白です。"Ostinato funebre"は倍音の空間音響系の様な中にノイズが絡みポスト・セリエル的な感じですし、"Der gerne Klang"は少し雅楽和声を感じさせますね。話題に上がるフルート独奏曲"(t)air(e)"は、コンサートでは光りますがそれほど興味は湧きません。なにぶんflの超絶技巧現代曲は数多ありますから。(ファーニホウやサーリアホ、他)



興味深いのはCD1の方、蠢く様な流れで全12曲で一つの生き物の様です。流れに身を任せるのか はたまた使われている技巧を聴き解くのか、楽しみは尽きません。CD2の方は全体的に所謂(いわゆる)現代音楽を感じるでしょうね。

ぜひ手元に一枚置いて欲しい現代音楽アルバムで、マニアックな "Super無調BGM" としてもオススメです。



 ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ハンガリーの現代と近代音楽家作品『ヴェレシュ/弦楽三重奏曲、バルトーク/ピアノ五重奏曲』


Veress/String Trio - Bartok/Piano Quintet
近代と現代を繋ぐ二人のハンガリーの音楽家の室内楽セットで、若手を中心とした演奏家のアルバムです。アルファ ・レーベルらしい組合せで思わず手にしました。クレーメルで知られる様になったロッケンハウス音楽祭とのコラボ作品だそうですね。

ハンガリーの氏名は日本と同じ"姓・名"の順なので、最近は《ベラ・バルトーク➡︎バルトーク・ベラ》となっています。でも本ブログでは旧来表記ですw







シャーンドル・ヴェレシュ
(Sándor Veress, 1907/2/1 - 1992/3/4)
ハンガリー人現代音楽家ですが、スイスをベースに活躍していたそうです。バルトークやコダーイに師事していますね。ハンガリーの民族音楽に精通していて、指導者としてもリゲティ, クルターグ, ホリガー と言った錚々たる顔ぶれを育てていますね。楽風は民族音楽と前衛になりますね。

弦楽三重奏曲 (1954年)
 バルトークの幽玄さを引き継いでいるのが分かりますね。無調幽玄旋律のポリフォニー、もしかしたらカノンも?、で紡ぐ様な弦楽奏です。時に先鋭になり、静になり、優美になり、織りなす綾は美しさを感じますね。II.Allegro moltoでも切れ味重視で、暴走や混沌に陥る事はありません。旋律感は民族和声も入っている様です。素晴らしいですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Mondrian Ensembleのvn, va, vc, の演奏です




ベーラ・バルトーク
(Béla Bartók, 1881/3/25 - 1945/9/26)
ここで紹介も不要でしょうね。常識ある?wクラシック・ファンの方が現代音楽として限界なのがバルトークとか聞いた事があります。(実際には近代音楽家になるでしょう)
今までPiano Quintetはインプレしていない様なので良かったです。

ピアノ五重奏曲 SZ.23 (1904年)
 初期作品で民族音楽に触れ始めた時代の作品になりますね。ロマン派とハンガリーの舞曲を組合せた室内楽です。楽器間の関係がよりホモフォニー構成になる事を再確認できます。浮遊する様な薄い調性感はまだ薄め、激しく弾む舞曲の流れは民族音楽そのものと言った感じです。ヴェレシュとの対比だと1910年代以降作品の方が良かったかもしれません。



民族音楽和声と調性の薄さがその後のバルトークなら、そこからより無調方向に足を踏み込んだのがヴェレシュでしょう。ハンガリー近代・現代音楽の素晴らしさが垣間見れるでしょうか。

初期バルトークの弾ける様な舞曲もあり、楽しめる一枚です。



♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





心に響く『マーラー 交響曲 第9番』 «ネット配信» エド・デ・ワールト指揮 / ミルウォーキー交響楽団 2019年4月26, 27日


エド・デ・ワールト, Edo de Waart
(Milwaukee Symphony Orchestra)
デ・ワールトのマーラーは個人的に好みです。2009〜2017年まで首席指揮者、現在は桂冠指揮者を務めるミルウォーキー響を振ったマーラー9、PRX(オーディオ&ストリーミング)からの配信です。
英発音ではエド・デ・ヴァールトですね。

▶️ こちら(賞味期限は短いでしょうから、お早めにどうぞ)




マーラー 交響曲 第9番 «ネット配信»
(Live at Uihlein Hall, April 26-27th, 2019)


EdoDeWaart-Mahler9-Apr2019.jpg

(写真はアウトリーチ活動組織'UPAF'のHPです。デ・ワールトも歳をとりましたね)


第一楽章
抑えの効いた第一主題から緊迫感を与えた第二主題へ、反復で大きく広げ第三主題は鳴りよく。中心となる展開部は暗い緊張感からJ.シュトラウスIIの引用で緩やかに光を見せて、山場を派手に奏でると後半を緊迫混沌に彩ります。再現部は大きな波の様です。緩急の緊迫感が見事な第一楽章ですね。

第二楽章
主要主題は洒脱に舞います。第一トリオではシャキッとして、第二トリオは優美に。三つの主題が舞曲の様に構成されますね。バレエ曲の様な美しい構成です。

第三楽章
主要主題は刺激的に対位的旋律を絡ませます。副主題は軽やかに、中間部はあまりテンポ変化を付けず一休み的です。ラストはパワー、全体は軽やかさが光ります

第四楽章
主要主題はスローに大きく、哀しみより包み込む様な優しさです。第一エピソードは抑えた暗い流れから大きく穏やかに広げ、後半は静的ターン音型でラストを印象付けますね。第二エピソードでは入りのターン音型から哀しみを深く、張り詰めた緊張感から山場を奏でます。後半からコーダは静かに緩やかに別れを告げるかの様です。


コントラストと見晴らしの良さが心地良いマーラー9ですね。第一・第四楽章の緊迫感に対し、中間楽章の心地よさ。各楽章の中での緊迫感と柔らかさの対比、と言った素晴らしい全体構成です。

流石はデ・ワールトと言った完成度、オケもそれに応えていますね。聴き応え十分の素晴らしさです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第5番』 «ネット配信» "BBC Proms JAPAN 2019" トーマス・ダウスゴー指揮 / BBCスコティッシュ交響楽団 2019年10月30日


トーマス・ダウスゴー, Thomas Dausgaard
(BBC Scottish Symphony Orchestra)
先月初めての日本公演があったBBCプロムス。その初日のメイン、マーラー5番がBBCradio3のウェブサイトより配信されています。

指揮はお馴染みのT.ダウスゴー、BBCスコティッシュ響は初来日だったそうです。英語紹介ではダウスガードですね。 (当日の日本語パンフレット)

▶️ こちら (配信は2019年12月24日までの様ですね)




マーラー 交響曲 第5番 «ネット配信»
(Live at オーチャード・ホール, 2019年10月30日)

Dausgaard-Mahler5-30oct2019Tokyo.jpg


第一部
ファンファーレのtpが怪しげw 葬送行進曲は重厚さを避けて静的に、第一トリオでは速め適度な激しさでコントラスト付けです。第二トリオも少し速めですね。第二楽章第一主題も速めで荒れ気味の流れ、第二主題は(一楽章#2トリオですが)テンポを落とし優美です。やや切れ味に欠けますがコントラストの良い第一部です

第二部
スケルツォ主題は伸びやかに心地良く、レントラー主題は優美、第三主題もスロー&マイルドと良い流れです。再現部は緩急を付けながらの三主題の緊迫感ある流れを上手く作っていますね。締まりある第二部です

第三部
第四楽章は気持ち速めで表情は濃い目、トリオでは落ち着いた流れにメリハリを付けています。夏の夕暮れ、温泉に浸かりながら夕日を眺める様なアダージェットです。第五楽章の第一・第二主題の絡みは慌てず良い流れ、コデッタも優美に心地良いですね。展開部は山場へ向けて高める上手い流れを作り、再現部は緊張感を保ったまま山場・フィニッシュをビシッと決めました。


緩急・激しさと言ったコントラストの良いマーラー5でしたね。好演なのですが、スカッとした抜けの良さに欠ける感じです。原因はフラットに感じる録音の問題なのでしょうか。(金管が多少怪しいのがあるにしても…)

ダウスゴーのマーラー5は以前 新日本フィルでも聴きましたが、その時はオケの怪しさを感じた覚えがありますね。会場も同じだったと思います。



残念ながらCDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





フィンランドの現代音楽 ヨウニ・カイパイネン(Jouni Kaipainen) は欧州前衛の残像?!


ヨウニ・カイパイネン
(Jouni Kaipainen, 1956/11/24 – 2015/11/23)
ヘルシンキ生まれのフィンランド人現代音楽家です。シベリウス音楽院でお馴染みのサッリネンやへイニネンに習っている北欧現代音楽家のメインストリーマーなのですが、基本は無調で技法的には欧州前衛の十二音技法からポスト・セリエルへと進みました。従って北欧風景の様な楽風ではありませんね。

 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


Meet The Composer: Jouni Kaipainen
フィンランドのレーベル"FINLANDIA"が北欧音楽家を2枚組CDで紹介する"Meet The Composer"シリーズの一枚ですね。
CD2枚に7曲を詰め込む為に年代順にはなっていませんが、せっかくですからインプレは年代順にしようと思います。(作品番号ではなく完成年です)

演奏はE.P.サロネン/BBC-SO、他諸々ですね。






Ladders to Fire (Concerto for Two Pianos), Op. 14 (1979年)
3パートのピアノデュオ曲ですね。無調点描的で音列配置のpfです。1979年の作ですが既に行き詰まったセリエルそのものの気配で、静も動も全てが古いモダニズム色です。


Trois morceaux de l'aube, Op. 15 (1980–81年)
チェロとピアノのデュオ、2パートの楽曲です。pfがvcのグリッサンドを交えた無調の音色に変わり、三度・五度と言った和声や反復が出てくるので聴き易い方向には進んでいる様です。美しさを感じるかもしれません。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Trio I, Op. 21 (1983年)
3パートの室内楽です。相変わらず基本は点描的ですが、トリル・トレモロ・反復変奏と言った表情が現れてきます。調性を感じる様な流れも見えて多様性の現代音楽に踏み込んでいるのかもしれません。


String Quartet No. 3, Op. 25 (1984年)
"弦楽四重奏曲 第三番" です。何処となくアルディッティSQが演奏しそうな刺激的で技巧性の高い楽曲になっています。幽玄さもあり、静と動のコントラストも生きています。グリッサンドと反復、そして切れ味の弦楽奏ですね。ここまででは一番面白いでしょうね。


Symphony No. 1, Op. 20 (1980–85年)
一楽章の交響曲です。年代が広いので作風が交錯している様です。即興的点描の強音パートが散見するのは古い楽風、それ以外は1980年代中期のイメージでしょう。静の中に現れる打楽器含むクラスターや緊張感ある構成はポスト・セリエル時代の趣を感じますね。


Conte, Op. 27 (1985年)
ピアノ・ソロ曲です。音の跳躍が大きく点描的、基本はセリエルを引きずる感じです。旋律感もある事はあるのですが、'85年でこれは古すぎでしょうか。


Antiphona SATB (Super ‘Alta Trinitá Beata’), Op. 40 (1992年)
唯一'90年代の声楽曲です。宗教曲の様な和声で、児童合唱団と男声合唱のantiphonal-choirs構成です。そこにヴォーカリーズでの揺さぶりが掛かっているのが特徴的でしょう。そこはこのアルバム唯一の面白さかもしれません。



1979年の無調点描から調性を取り戻す様に舵を切り、1980年代中盤には類型的な前衛現代音楽の流れになっています。イメージはこの時代の欧州前衛の残照の様な印象を受けますね。

何かオリジナリティ、北欧らしい風向き か全く独自の技法とか、があれば興味をひくのではないかと思います。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ペア・ノアゴー(Per Nørgård) の無限セリーの傑作『交響曲 第3番』と「第7番」を、ダウスゴー/デンマーク国立響で聴く


ペア・ノアゴー
(Per Nørgård, 1932/7/13 - )
昨日の第2・6番に続きノアゴーの交響曲 第3・7番になります。第3番は、第2番に続くノアゴーのオリジナル:無限セリーの注目作ですね。

Nørgård-infinity sequence

 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


Symphonies 3 and 7
第3番は全面に無限セリーを取り入れたデンマーク国立放送からの委嘱作で、2番を書いた後5年経って完成させています。同じ無限セリー作品ですから続けて聴いて変化を楽しめそうですね。
その委嘱の際、無限セリーを追究する方向についてノアゴー本人が書いた資料が読めますね。無限級数の他、倍音等々にも触れられています。▶️ こちら

第7番は楽風が変化した作品で、世界初録音ですね。
演奏はトマス・ダウスゴー(Thomas Dausgaard)指揮、デンマーク国立交響楽団に合唱が入ります。






交響曲 第3番 (1972-75年)
導入部からノアゴーらしい煌びやかな管楽器とpfが特徴的です。その中に無限級数からのセリーらしき音が転がりますね。調性に近い音列が増えているのも特徴的です。その後もアゴーギクとディナーミクの変化や混沌、暗闇の様な流れを作り出します。

時にポリフォニーに、時にホモフォニーに、表情変化のある楽風は中後期に近いかもしれません。手法はセリーですが、無調混沌では無く調性を薄くした現代音楽ですね。第二楽章では調性感の強い北欧風の流れから大合唱に流れ込み、溢れる音の洪水が素晴らしいです。
アルトはウッラ・ムンク(Ulla Munch)です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


交響曲 第7番 (2004-06年)
約10年後の作品ですね。派手な管楽器とパーカッションの対比が面白く、調性を強く感じさせながらの第一楽章。オルガンを含めた音の厚さの中にテンポ・強弱の出し入れの第二楽章。ふとバーンスタインの曲を思わせる様な第三楽章。そんな中、楽器の音色を上手く活かしているのはノアゴーらしさですね。一つ前の6番より調性回帰が強く新古典主義でしょうね。



表情の薄い第2番から第3番の変化が大きいですね。煌びやかで表情のある この第3番の楽風から無限セリーを除いたのが、その後の1900年代のノアゴーの気がします。それも踏まえて素晴らしい北欧前衛の現代音楽ですね。

調性回帰の強い第7番も聴き応えがあり、強くオススメの一枚です。ダウスゴーも見事ですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





デンマークの現代音楽家 ペア・ノアゴー(Per Nørgård) の無限セリーの数式と「交響曲 第2番・第6番」


ペア・ノアゴー
(Per Nørgård, 1932/7/13 - )
デンマークの現代音楽家ノアゴーと言えば、なんと言っても1960年代に構築した無限セリーでしょう。それまでの北欧和声から欧州前衛で猛威を奮っていたセリエルに踏み入り、独自の無限セリーを開発した事ですね。ポスト・セリエルと言うよりも、数学を使ったセリエル技法の一つになるでしょうか。

ただ、その使用は欧前衛の衰退が叫ばれた1970年代までで、以降は使われていませんね。楽風は無調前衛のスタンスを保ちつつ、21世紀に入ると調性回帰が強まり新古典主義的になります。

Nørgård-infinity sequence

 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧



Symphonies 2 & 6
その無限セリーを使った第2番と、中期の第6番のカップリングになります。第6番は本CDのオスロフィル他 北欧3交響楽団からの委嘱作品で、ミレニアム(西暦2000年)を祝って作られていますね。三楽章形式ですが、ここでは"three passages"と表現されています。祝典音楽ですから楽しみですね。CDは2番が後になっていますが、年代順に聴きましょう。

指揮はヨーン・ストルゴーズ(John Storgårds)ですが、NørgårdもStorgårdsも日本語読みが相変わらずいろいろで戸惑いますねw






交響曲 第2番 In One Movement (1970年)
23'の一楽章形式で、ソナタや三部形式の様な構成感はありません。導入部は単音の共鳴の様な音の重なりで、まさに実験音楽風。所謂(いわゆる)交響曲とは縁遠いですね。そこから単純音階の音列配置的な音が重なりますが、弦楽のロングボウと面白いマッチングを見せてくれます。明確な旋律は存在しませんが混沌は少なく、アゴーギクも振ってあるので聴きやすさはありますね。無限セリーの音は解析値の様にターン音形風で反復の色合いが強く、煌びやかなセリエルの残照の様な音楽です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  セーゲルスタム指揮デンマーク国立管の演奏です。



交響曲 第6番 "At the End of the Day" (1999年)
長い第一楽章は無調の煌めく混沌から入ります。基本は無調ポリフォニーですね。弦楽が主になるパートでは暗い印象になり、コントラストも付いて煌びやかです。第二楽章は暗闇の緩徐が面白く、アタッカで繋がる第三楽章は何と"Allegro energico"で変拍子的な派手な流れになります。この最終楽章は実に表情が豊かですね。



カラフルな管楽器とロングトーンの弦楽器が作るノアゴーらしい無調の煌びやかさは時代を超えて美しいと再確認ですね。処々に少し混沌を混えるのも変わりません。

楽風は似ていますが、表情が薄い2番よりも6番の方が面白さは上でしょう。2番には時代の流れを味わえますね。楽しい一枚です



 次回は究極の無限セリー作品である "交響曲 第3番" をインプレしようと思います。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





プロフィール

kokoton

by kokoton
.
    




・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。


カレンダー
11 | 2019/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ようこそ
カテゴリ
ありがとう