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洒脱なダンス音楽集:バーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan) の「Dance With Me」


ダンス・ウィズ・ミー
(バーバラ・ハンニガン, b. 1971)
カナダのソプラノ歌手ですが、今では指揮者の顔も随分と広がっています。sopの技量はそれほどでも無い感はあるのですが、特に現代オペラでの表現力の素晴らしさは群を抜きますね。

アルファ・レーベルからの彼女のリリースは毎回ワクワクするわけですが、今回はダンスミュージック集です。ジャズやタンゴまでジャンルに拘らずに良く知られた12曲で構成されています。

演奏は指揮者としてのハンニガンと密接な関係のルートヴィヒ管弦楽団(Ludwig Orchestra)の他、ベルラーヘ・サクソフォン・クァルテット(Berlage Saxophone Quartet)、tpソロはルシエンヌ・ルノダン=ヴァリ(Lucienne Renaudin Vary)、ソプラノは御本人です。







1. Moonlight Serenade - 2. Quien sera - 3. Youkali - 4. Copacabana - 5. Fluffy Ruffles - 6. Je veux t'aimer - 7. Whispering - 8. My Shawl - 9. I Could Have Danced All Night - 10. In The Mood - 11. Lambada - 12. Salut d'amour

まず冒頭グレン・ミラーの1. "ムーンライト・セレナーデ"でこのアルバムのコンセプトがわかりますね。ハンニガンのsopを含めて心地良くメローな流れに作り上げられています。ラテンの名作2. "キエン・セラ"も切れ上がる様相の角を落として心地良さ、バニー・マニロウのヒット曲4. "コパカバーナ"はチャカポコとしたリズムにルノダン=ヴァリがtpを洒脱に鳴らします。途中でジャジーな流れも取り入れますね。

5. "フラッフィー・ラッフルズ"ではハイテンポに軽快に、7. "ささやき"は大人の遊園地音楽、マイフェアレディからの9. "一晩中踊れたら"は美しいワルツになっています。
そして10. "イン・ザ・ムード"のライト・ジャイヴな洒脱さは思わず指を鳴らしてしまいますね。ラストはエルガーの名曲 12. "愛の挨拶"で、まさに愛を奏でるかの様です。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  アルファのPVで"3. Youkali"です



ジャンルレスで洒脱なダンス・ミュージック集になりましたね。若い頃だったら '中途半端で単純' などと知った風な口を利いていたかもしれません。

聴いた音楽の数や経験を重ねるとこう言った楽しみを感受出来る様になるのは本当に嬉しい事です。
誰か遊びに来た際にかけておいたら、ジャケットと合わせて最高にオシャレなBGMになること間違いなしです!



テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





「Jugendstil」マーラーの"交響曲"(パート)、シェーンベルク"浄夜"をベアトリス・ベリュのピアノで


Jugendstil
(Beatrice Berrut, pf)
スイスの女性ピアニスト ベアトリス・ベリュのピアノ編曲&独奏で聴くマーラーとシェーンベルクです。

"Jugendstil, ユーゲント・シュティール"は直訳すると若者(Jugend)のスタイル(stil)ですが、19世紀末から20世紀初頭のドイツのアール・ヌーヴォーの事とか。時期的には確かに後期ロマン派終焉時代に当たり、マーラーとシェーンベルク初期にピッタリですね。それをコッテリと聴かせようという趣旨でしょうか?!

マーラーは交響曲の一部楽章、シェーンベルクの浄夜は全曲です。







1. マーラー:交響曲第5番 第四楽章・アダージェット
主部主題は色濃く甘美、アゴーギクとディナーミクを強く振って陰影を作ります。中間部の清美な動機も抑揚を与えて思い切り甘く濃厚です。
クレンペラーが聴いたら "だからサロンミュージックは嫌なんだ" って言いそう?!


2. マーラー:交響曲第3番 第二楽章
原曲はかなり古典色のメヌエット風ですが、ここでも揺さぶりますね。主部主題は高音寄りに、トリオはキンキンと音が飛び回ります。ここは変拍子パートなのでそれを表現しているのかと。回帰では一層濃くなって、一言で表せば'くどさ'を感じてしまいます。


3. マーラー:交響曲第6番 第三楽章
主部は妙なアゴーギクでギクシャクと、わざと半音強調にしたりとしてもいます。第一トリオは哀愁なのですが、'これみよがし'的に色合いをつけますね。中間部(第二トリオ)は'くどい流れ'からそのままの'くどさ'でこのパートで欲しい陽光が広がる様な印象はゼロです。


4. シェーンベルク:浄夜
ここでも同じ事が言えますね。この曲らしいダークな後期ロマン派の楽曲にそれ以上の表現主義的な色添えがついて回ります。その分かえってフラットに聴こえてしまいますね。パート毎の印象をインプレする必要はなさそうです。



マーラーは三曲ともに緩徐楽章を選んでいますが、ガッツリ表現主義的なピアノ曲になっています。強音パートは "どうだ、参ったか!!" って言う感じでしょうか。

タイトル通りなのかもしれませんが、駄耳なのでついていけないのが残念です。結果オリジナルの素晴らしさが残りました。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ラヴェルの管弦楽曲集「RAVEL LA VALSE」オラモ/ロイヤル・ストックホルムフィル


RAVEL LA VALSE
(Royal Stockholm Philharmonic Orchestra, Sakari Oramo: cond.)
モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)の人気曲をサカリ・オラモが昨シーズンまで主席指揮者を務めたロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団と演奏したアルバムですね。

ポイントは"クープランの墓"。オリジナル(ピアノ曲)から管弦楽版に編曲する際カットされた2曲*をケネス・ヘスケスの編曲版で追補、かつピアノ版と同じ並びにしている事だそうです。(それなのに2.と3.は"鏡"から二曲抜粋のままと言うのもアンバランスの様な…w)







1. クープランの墓 (1914-17, revised 1919)
[ I.プレリュード II.フーガ* III.フォルラーヌ IV.リゴドン V.メヌエット VI.トッカータ* ]
I.は速めの流れを軽妙に作ってobの音色を生かし、緩徐パートのII.も主題の変奏を透明感ある弦楽と管楽で対比させています。
III.ではいかにもラヴェルらしい斜に構えた美しさをソフトなスケルツォ風に、IV.はアレグロ的に華やかさを開かせる様に,弾ける様に,ステップを踏む様に。
V.は穏やかさを取り戻しobがメヌエットらしい哀愁を奏でますが、VI.ではハイテンポ強音で'くどさ'を感じてしまいます。個人的にはV.のメヌエットで終わった方が良かったのではないかと。

全体としてはいかにも印象派の変奏曲を洒脱に作り上げた感じです。アゴーギクを抑えて必要以上の甘美さを避けていますね。


2. 道化師の朝の歌 "Miroirs"より (1904-05, rev.?)
表情変化が強く掴みどころが弱い曲です。演奏もどこにフォーカスしているのか見えずらいです。


3. 海原の小舟 "Miroirs"より (1904-05, rev.?)
ここでも出し入れの強さを強調する演奏になっていますね。あまり好みでは…


4. 亡き王女のためのパヴァーヌ (1899, rev.1910)
第一主題から何やら淡々としていますね。hrがよそよそしく、あの包み込む様な優しさが薄く聴こえます。弦楽と木管はよい音を出してラヴェルらしさを作り、回帰する最後の主部パートは哀愁の美しさで締めくくります。


5. 古風なメヌエット (1895, rev.1928)
ピアノ曲のイメージが強いこの曲は少し尖った演奏に思えますね。金管が登場するとファンファーレ的な音色を響かせて、好みの方向性ではない印象になってしまいます。


6. ラ・ヴァルス (1919-20)
コンサートでもお馴染みのこの曲だけオリジナルが管弦楽曲ですね。
'いかにワルツを崩していくか' がキーな曲ですが、オラモらしい出し入れが効果を発揮。美とグロテスクな対比が作られ不安定さが構築されています。とは言えこの曲はもっと劇的な対比を作る事も出来るので、せっかくならやり過ぎくらいを聴きたかったですね。ラストは約束通りに荒れましたが、例えばもう少し流れにアゴーギクを効かせたりすると効果的だったかも。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  レニーがフランス国立管を振るとこうなりますね。これぞ "ラ・ヴァルス" !!




メリハリの強い演奏でラヴェルを演奏しています。ディナーミクを強調する流れで、澄んだ音色や瀟洒洒脱さは低いでしょう。
ベスト・トラックは"1. クープランの墓"ですね。

この流れから期待した"6. ラ・ヴァルス"はラスト以外暴れ足りませんでした。全体今ひとつ見晴らし不良の様な…



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ダナ・ゼムツォフ(Dana Zemtsov) がチョイスする「Dutch Hidden Gems, 忘れられたオランダの名曲」


Dutch Hidden Gems
Dana Zemtsov (ダナ・ゼムツォフ, va)
米を活躍の拠点とするメキシコ人女性ヴィオリストのゼムツォフ。
今回はあまり知られていないオランダの近現代音楽家の作品集、そこかポイントですね。

演奏はアンナ・フェドロヴァ(Anna Fedorava, pf), フィオン管弦楽団(Phion, Orchestra of Gelderland & Overijssel)。
指揮はシズオ・Z・クワハラ(Shizuo Z Kuwahara)さんで米で学び活躍しています。"Z"は正規のミッドネームではなく愛称(ズィー)だそうで、来日機会も多いですね。








ヘンク・バディングス
(Henk Badings, 1907/1/17 - 1987/6/26)
ジャワ島生まれの作曲家で、ほぼ独学だったそうです。多作家で、'the octatonic scale'(八音音階)といった独自の和声を使っていた様ですが、注目されたのは21世紀に入ってからですね。

■1. Viola Concerto (1965)
 弦のトレモロで入るので一瞬ブルックナーかとw すぐにvaソロとなりますが、重厚で出し入れが強いです。機能和声の音楽で新ロマン主義なのか新古典主義的なのか、1960年台の前衛の気配はありません。それでも濃厚幽幻な聴き応えがある楽曲になっていて、第三楽章では舞踏風の民族和声も使って構成も熟れて感じです。
ゼムツォフのvaも色濃い音色で重厚なオケに対峙して、コンサートで聴いてみたいですね。


■4. Sonate for Viola and Piano
 1.のスタンスをデュオ曲にした様な印象ですね。オケがpfになっている感じです。これはこれでフーガ的あり、対位的あり、美しいホモフォニーあり、技巧パートありで楽しめます。途中で一風変わった和声が登場しますが、それが'the octatonic scale'でしょうか?!
ここでも第三楽章は舞踏曲風です。



アルネ・ヴェークマン
(Arne Werkman, 1960/10/3 - )
ハーグ生まれですが、育ったのはスイス/フランスで1994年(34歳)からオランダに戻りました。主にジュネーブで学んだ様で、オランダではユトリヒト音楽院でで習っていますね。

■2. Pavane for Viola and String Orchestra
 ちょっと仏印象派の様な美しさの弦楽奏曲です。新ロマン主義なのかもしれませんね。強音パートは無く全体が微妙な浮遊感で構成されていて、短いカデンツァではダブルストップを効かせています。
ヴェークマンの他の曲も聴いてみたいですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



ヤン・クーツィール
(Jan Koetsier, 1911/8/14 - 2006/4/28)
指揮者としても活躍した音楽家で、ベルリン音楽大で学びコンセルトヘボウの副指揮者、バイエルン放送響のカペルマイスターにも就いています。
ヒンデミットの影響があり、マーラーやR.シュトラウスを好んだとありますね。

■3. Concerto for Viola and Orchestra (1940, rev. 1955)
 確かにヒンデミットを感じる様な新古典主義基軸の印象を受けますね。主題や動機からの変奏もあったりと、旧来的な基本構成が主になっているのも明瞭です。
そう言えばヒンデミットもva奏者で、va曲も多かったですね。



ヘンリエッテ・ボスマンス
(Henriette Bosmans, 1895/12/6 - 1952/7/2)
音楽家の両親を持つ女性作曲家ですね。ピアニストとしても活躍していて、モントゥーやメンゲルベルクとの共演もあるそうです。コンセルトヘボウのために多くのピアノ協奏曲を提供しています。

■5. Arietta - Largo
 3'の小曲です。ロマン派の様なva/pfのデュオ曲です。時代が100年くらい遡った印象でしょうか。



前衛全盛期なのですが、選ばれているのは新古典主義や新ロマン派と言った機能和声の楽曲です。普段なら、インプレ対象外かもしれません。

それなのに意外や楽しめるアルバムになっているのはダナ・ゼムツォフのvaの表現力でしょうか。バディングスとヴェークマンは他の曲も聴いてみたいですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アンナ・ネトレプコ『闇に抱かれ, Amata dalle tenebre』微妙なイゾルデ



闇に抱かれ, Amata dalle tenebre
(アンナ・ネトレプコ Anna Netrebko, b.1971: sop)
今年50歳を向えた現在最高のディーヴァの一人アンナ・ネトレプコ。個人的には30代の頃の繊細なsopが意外に好きですが。

5年ぶりのリリースとは驚きで、もっと頻繁に出ていたかと思いましたがやっぱり聴いてみたくなりますね。
演奏はリッカルド・シャイー指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団、曲目は以下の通りです。

1. R.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》「すべてのものが清らかである国がある」
2. ヴェルディ《アイーダ》「勝ちて帰れ!⋯神々よ、憐れみたまえ」
3. ヴェルディ《ドン・カルロ》「世のむなしさを知り給うたあなた」
4. ワーグナー《タンホイザー》「貴き殿堂よ」
5. チレア《アドリアーナ・ルクヴルール》「哀れな花よ」
6. チャイコフスキー《スペードの女王》「もうかれこれ真夜中⋯ああ、心配で疲れ切ってしまった」
7. プッチーニ《蝶々夫人》「ある日、わたしたちは見ることになるのよ」
8. ワーグナー《ローエングリン》「ひとりさびしく悲しみの日々を送り」
9. プッチーニ《マノン・レスコー》「独りぼっちで、破滅して、見捨てられて」
10. パーセル《ディドとエアネス》「ベリンダ、そなたの手を⋯土の中に横たえられし時」(ディドの嘆き)
11. ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》「穏やかに、静かに彼が微笑み」(イゾルデの愛の死)







まずは入りの1. アリアドネは落ち着きを払ってmez風に、そしてヴィブラートを効かせてハイトーンで色付けします。2.のアイーダでは勇壮そのもので今のドラマティコの実力を見せつける様に、3.のエリザベッタも堂々朗々で表現力も濃いです。ヴェルディの重厚さがフィットしていますね。

4.のエリーザベトは伸びやかなsopを利かせ、5.ではアドリアーナを繊細なハイトーンで歌い上げて、6.のリーザはチャイコらしい後期交響曲風の音に乗って鬱美と、様々な表現力を披露して来ます。伸びやかなsopで表現力も十分な7.の蝶々夫人は今回の聴き処でしょう。

8.のエルザは明るく力強くて、もう少し鬱に歌っても良かったかもしれません。9.ではオケと共に哀愁を湛えた音楽に浸りますがネトレプコのマノンですから力感も仕込みます。一転10.ディドは哀愁を切々と歌います。この二曲のコントラストがいいですね。

ラスト11.はオケが前奏曲をかなり濃厚に奏でているのが印象的と言うか、何か違う様な。イゾルデも力強いsopで歌い上げて、演奏も歌も素晴らしいのですが何処か違和感が残ります。




その "イゾルデの愛の死" の映像付きですね
DGなので音は本CDと同じだと思います



どの曲でも同様な完成度があり少々お腹いっぱい感もありますが、ネトレプコらしいsopと表現が楽しめる一枚になっていますね。

良く知られた楽曲が並び、オケも前奏曲等のパートで濃い表現を見せてネトレプコのsopとフィットしていました。個人的には力の抜けた曲はそれなりにバランス良く聴きたかった感じがしますね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





クリスタ・ルートヴィヒ:マーラー歌曲集『亡き児をしのぶ歌、リュッケルトによる5つの歌曲』の名盤



亡き児をしのぶ歌・リュッケルトによる5つの歌
(グスタフ・マーラー, 1860-1911)

クリスタ・ルートヴィヒ(Christa Ludwig, mez), カラヤンBPO
ここへ来て三人(ハルテロス | ガランチャ | 藤村実穂子)の "リュッケルト…" を聴きましたが、その度に本ルートヴィヒ/カラヤン盤の素晴らしさが思い出されました。

この古い録音('74)をアップするのはやめておこうと決めていたのですがカップリングの "亡き児…" も素晴らしいので、やっぱりインプレしておきましょう。

■"リュッケルト…"の最終完成5曲目*のオーケストレーションはマーラーではなく、■曲順は自由。■二曲共にTEXTはフリードリヒ・リュッケルトで、■作られたのは交響曲で言うと第5番と第6番の時代。です。






(右は交響曲第6番"悲劇的"とのカップリング盤です)


1. 亡き児をしのぶ歌, Kindertotenlieder (1904)
"1. Nun will die Sonn' so hell aufgeh'n (いま太陽は明るく昇る) - 2. Nun seh' ich wohl (いま私には分かるのだ) - 3. Wenn dein Mütterlein (おまえのお母さんが) - 4. Oft denk' ich (よく私は考える) - 5. In diesem Wetter (こんなひどい嵐の日には)"

1.はそれでも日が昇る無情と照らす光とのコントラストを明瞭に歌い、オケも抑えた音色で絡みます。ルートヴィヒはアルト風に感じますね。この曲の核心2.は湛える哀愁を静かに流れるが如く深く。時に溢れる悲しみを歌います。

3.では対位的なオケとアルトの立ち位置を明確に、でも寄り添う様に両者の関係を上手く構成させて聴かせています。カラヤンのタクトが生きている事が伝わりますね。

気分をチェンジする4.は緩いスケルツォ風に陰を付ける様に美しく、5.では "In diesem …" を繰り返しながら激しいアレグロ風に過去の不安を表現。後半を緩やかな心地に鎮めてラストの穏やかさに繋げています。

アルトの表情変化と常に寄り添うオケとの見事なバランスの"亡き児…"です



2. リュッケルトによる5つの歌, Rückert-Lieder (1903)
曲の並びは長いメインの二曲を1. と 5.に配していますね。
"1. Ich bin der Welt abhanden gekommen (私はこの世に捨てられて) - 2. *Liebst du um Schönheit (美しさゆえに愛するのなら) - 3. Blicke mir nicht in die Lieder (私の歌を覗き見しないで) - 4. Ich atmet' einen linden Duft (私は仄かな香りを吸い込んだ) - 5. Um Mitternacht (真夜中に)"

抑えの効いた穏やかで清廉なmezとオケの素晴らしさ、1.だけでこの曲の名盤と言っても良いかもしれません。2.もその流れを広げる様な緩やかなディナーミクの心地良さですね。歌詞の内容を緩く表現しています。

3.はマーラーらしい気配を上手くスケルツォ風に作り上げ、4.では菩提樹の芳香に酔う様な浮遊感をオケが作っています。

ラスト5.は唯一主部動機が明確ですが、それを生かした明瞭な流れを作ります。 "Um Mitternacht" を繰り返し真夜中の不安を朗々と歌うルートヴィヒのmez。それにピッタリ寄り添うカラヤンBPO。ラストはこのパートらしいコラールを大きく作って締めくくります

"1.は優しく、5.は締まり良く"。この曲のメイン二曲を見事に作り上げました



メゾソプラノとオケのフィット完成形の二歌曲ですね。スローと程良いディナーミクで表現するmez。抑えて寄り添うカラヤンBPO。三者が共有するストーリーにブレはありません。

この曲を聴く嬉しさがあってまさに名盤!
カラヤンの考えが見事に結実していますね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





藤村実穂子さんで聴く"ヴェーゼンドンク"と"リュッケルト"『ドイツ歌曲集』



ドイツ歌曲集
藤村実穂子 (Mihoko Fujimura, mez, b. 1966)
前回エリーナ・ガランチャの"ヴェーゼンドンク"と"リュッケルト"をインプレしたので、今更になってしまいますが藤村実穂子さんの同曲録音も残しておこうかと。マイナーver.のピアノ伴奏版(ロジャー・ヴィニョーレス: pf)になりますね。

藤村さんと言えばその表現力の素晴らしさ、そしてワーグナーでありバイロイトであり指輪でしょう。

でも個人的には藤村さんならではの「グレの歌」"山鳩"が好きですね。ヤンソンスとの録音ももちろんですが、2019年の大野和士/都響公演でも素晴らしかったです。

なお、本CDには他にシューベルトやR.シュトラウスもカップリングされていますが、インプレするのはメインとなる上記の2曲です。








ヴェーゼンドンク歌曲集, Wesendonck-Lieder
(Richard Wagner, 1813-1883)
"1. Der Engel (天使) - 2. Stehe still! (止まれ) - 3. Im Treibhaus (温室にて) - 4. Schmerzen (悩み) - 5. Träume (夢)”

1.では艶やかなmezで少しヴィブラートを効かせていますね。苦から天に昇るイメージが浮かびます。2.は力強く鋭く、3.は緩徐パートですが、藤村さんのmezは鋭さで不安を訥々と歌います。pfは抑え気味でコントラストがありますね。

4.は力強さですね。pfとmezが伸び伸びと絡み、痛みと感謝を表現しています。ラスト5.ではpfの穏やかな前奏に繋がる様に穏やかにシャープにmezが登場。複雑な'夢'を歌います。

ヴィブラートを効かせてmezらしい艶やかさのヴェーゼンドンクです。ややpfの方が前に聴こえるのが気になりますが。
個人的にはこの曲はオケver.の方が好みです。


"1.天使"です。演奏(2012)はハイティンクBPOと豪華版です
藤村さんのmezの伸びやかさもオケの広がりとフィットして見事👏
ちなみにCDの録音は2009年ですね




リュッケルト歌曲集, Rückert-Lieder
(Gustav Mahler, 1860-1911)
曲順は指定が無く自由。今回は短めの三曲を始めに、長い二曲は 重厚な "Um Mitternacht" から落ち着きある "Ich bin der…gekommen" で収めると言う流れにしていますね。
"1. Liebst du um Schönheit (美しさゆえに愛するのなら) - 2. Blicke mir nicht in die Lieder (私の歌を覗き見しないで) - 3. Ich atmet' einen linden Duft (私は仄かな香りを吸い込んだ) - 4. Um Mitternacht (真夜中に) - 5. Ich bin der Welt abhanden gekommen (私はこの世に捨てられて)"

1.から感情的に艶やかなmezを聴かせね。pfはちょっとフォローが弱い感じです。2.はpfが技量を見せてmezもそれに負けない様に歌う、そんな感じですね。マーラーらしさは一番強く出ているかもしれませんね。3.はpfがドビュッシーの様な音色を奏でて、mezも抑え気味に菩提樹の香りを歌います。美しいパートになりましたね。この2.から3.の流れが良い感じです

4.の主動機はpfでも違和感が少ないですね。mezはまさに美しく濃く歌われて、真夜中の物思いを表現します。繰り返し出てくる 'Um Mitternach' が印象的です。後半の盛り上がりはオケver.より落ち着きがありますね。
5.は落ち着きが強いパートですが、ピアノ伴奏ですと一層その感が強まります。

表現力を最大限聴かせる艶やかなmezのリュッケルトを味わえます。pfとのフィットもヴェーゼンドンクよりgoodですね。

ただこの曲はルートヴィヒ/カラヤンを超えるのが難しい事を今更ながら感じてしまいます。



艶やかで表現力のmezらしい声域が印象的ですね。ピアノ伴奏なので藤村さんらしいmezが一層強調されたのも確かです。

ただヴェーゼンドンクはオケの鳴りを背景にした方が歌が生きる気がします。このCDがオケver.だったらどう聴けたのか。あくまで個人的な印象ですが、もっと素晴らしかったのではないかなどと思ってしまいます。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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