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リュドヴィク・テジエ(Ludovic Tézier) のバリトンで聴く『ヴェルディ・アリア集』



VERDI
Ludovic Tézier (リュドヴィク・テジエ, b.1968)
これまでソロアルバムを出していなかったのが不思議なフランス人の人気バリトン、リュドヴィク・テジエですね。53歳と脂の乗ったバリトンは、近年ですと2018ザルツブルク音楽祭の「トスカ」のスカルピア男爵、2019ロイヤル・オペラ「運命の力」のドン・カルロが光りましたね。

ガラで歌うのも得意としていますが、ブリン・ターフェルの様なエンターテイメント性とは違ってオペラからはみ出す印象は個人的にはありません。アリアを朗々と聴かせてくれる印象が強いです。

CDの日本語紹介文にはカウフマンのアルバムでのビゼーの"真珠採り"「神殿の奥深く」のデュエットが紹介されていますが演奏含めてテンションが低く、この曲のテジエなら2007年の"オペラ・ガラ バーデン・バーデン"でのヴァルガスとのデュオが良いでしょう。

演奏はフレデリック・シャスラン指揮、ボローニャ市立歌劇場管弦楽団。満を持してのヴェルディのアリア集です。







楽曲 1. "運命の力"「死ぬということ…何と恐ろしいことだろう」2. "ドン・カルロス"(仏語版)「私です、カルロス!・・・わが生涯の最高の日」3. "エルナーニ"「偉大な神よ!この墓の大理石の上で奴らは」4.同じく「私と一緒に来ておくれ、バラだけで」5. "ファルスタッフ"「これは夢か? まことか?」6. "トロヴァトーレ"「全く人の気配はない・・・あの人のかすかな微笑みは」7. "椿姫"「プロヴァンスの海と大地」8. "マクベス"「裏切り者め!イングランドと組んで私に刃向かうか」9. "ナブッコ"「ユダの神よ」10. "オテロ"「俺は信じる、俺を造り給うた無慈悲な神を」11. "リゴレット"「廷臣たちよ、下劣で呪われた者どもよ」12. "仮面舞踏会"「あなたに微笑んでいる人生には」13.同じく「立て!お前の息子はあそこだ」14. "ドン・カルロ"(伊語版)「私です、カルロス!・・・わが生涯の最高の日」


1."運命の力"のカルロの様な曲に抑揚があるシーンはテジエらしい艶やかなバリトンが生きますし、4."エルナーニ"のカルロの様なトーンが高いパートはテノールの様な伸びのあるテジエの声質にはピッタリですね。

5."ファルスタッフ"のフォードは激情的で気持ちが入っているのが分かります。6. 7.と落ち着いた曲を並べるのも上手い構成になっているでしょう。8."マクベス"や9."ナブッコ"では表情変化を付けて歌い、10."オテロ"のヤーゴ 11."リゴレット"では力感を見せますね。

2.と14.は同じ"ドン・カルロス"のお馴染みアリア「ロドリーゴの死」ですが、仏語と伊語で歌いわけます。元々は仏語の方が先で、後から伊語版が出来ていますが、当然ながら仏語の方が歌唱がテジエにフィットした感じです。伊語ver.がスローに歌われているのもあるかもしれませんね。このシーンですとスローの方が良いのかもしれませんが…



テジエらしいバリトンと並びの良い楽曲で楽しめる一枚になっています。テジエらしい艶やかでテノールの様な伸びあるハイ・バリトンが素晴らしいですね。

欲を言えばデュオが入っていても良かったかもしれません。(3.ではほんの僅かなDuoがありますが)



 ★試しにYouTubeで観てみる?
  今回は入っていない"カルメン"「闘牛士の歌」です。素晴らしいので是非!!
  (2007年の"オペラ・ガラ バーデン・バーデン"から)
  今ほどの体型でもなく、声質もよりハイです

  参考までにブリン・ターフェルが歌う"闘牛士の歌"もどうぞ
  (アバド指揮で女性陣もフォン・オッターを含めて豪華布陣です)
  試しにターフェルも観てみる?



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『チャイコフスキー 交響曲 第5番』2020パーヴォ・ヤルヴィを1960ムラヴィンスキーで聴き比べ


チャイコフスキー 交響曲 第5番
今更の曲をなぜ? それも2020年リリースのP.ヤルヴィを1960年のムラヴィンスキーで聴き比べ??

■週末1/30(土)の原田慶太楼さんと読響のコンサートの予習です
■この曲は個人的に1960ムラヴィンスキーが鉄板!!
■せっかくですから新しい録音(P.ヤルヴィ rec.2019)も合わせて

という事で…w




パーヴォ・ヤルヴィ
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団



第一楽章
序奏「運命の主題」はスローのアゴーギク。第一主題はテンポを取り戻してディナーミク強調、第二主題第一動機はアゴーギク強調、第二動機もスローの揺さぶりからパッセージは気持ち良く鳴らします。展開部の第一主題変奏は波の様な出し入れですね。再現部はスロー化して抑え気味、コーダもその流れにあります。揺さぶり強調ですが感情移入は薄めですね。

第二楽章
美しい弦のコラールから主部主題のhrも静美に、ob動機は繊細さです。第一トリオはvcと管楽器の対話を色濃い美しさで、山場はテンポアップから迎えます。中間部のclとfgはアゴーギクを振られていて、山場の"運命の主題"は空を覆う黒雲の様です。主部回帰では伴奏の色付けを美しく生かして心地良い山場を。突然の"運命の主題"も唐突性は抑えてラストの美しさが光ります。美しさのアンダンテ・カンタービレです。

第三楽章
主部の第一・第二ワルツは軽妙に、第三ワルツでスロー化ですね。中間部は16連音符を軽妙さを利かせて、主部回帰の三つのワルツも優しさ穏やかさです。コーダのソフトな"運命の主題"の後の強音は広がりです。重さ控えめでワルツらしさ強調です

第四楽章
序奏の"運命の主題"は優しい美しさ、厳しい弦の第一主題は切れ味から重厚さへ。第二主題は流麗な木管、金管の"運命の主題"は華やかです。展開部は勇壮さで弦の響きが印象的ですね。再現部はテンポアップしますが落ち着いて、"運命の主題"からスロー化して山場をシャキッと締めます。コーダは落ち着いて晴々とした行進曲からラストはアッチェランドの様なテンポアップで締め括ります。力感よりもスッキリ感の楽章ですね。


スッキリと心地良い第5番ですね。重厚さや爆裂の対角にいる流れです。

それを証明しているのが中間楽章の二つでしょう。アンダンテ・カンタービレとワルツ、そのものですね。この流れもありのチャイコフスキー5です。






エフゲニー・ムラヴィンスキー
レニグラード・フィルハーモニー管弦楽団


(4, 5, 6番のset、いずれも名盤ですね)


第一楽章
序奏「運命の主題」は陰鬱なスロー、第一主題は色濃い力感でピークを激しく。第二主題は感情強く、パッセージは力強さですね。展開部はリズムを生かして音厚を増します。再現部は落ち着きから第二主題パッセージで感情を高めますね。コーダは弦の下降音階と管楽器が厳しい音で対峙します。感情こもったアゴーギクとディナーミクが素晴らしい楽章です。

第二楽章
主部のhrはスローで澄んで美しく、ob動機は明るい流れを作ります。第一トリオは静の中の緊張感から山場を大きな鳴りで広げます。哀愁の中間部は"運命の主題"をシャープに。主部回帰では優美さを見せつつ山場で炸裂!! そして突然の爆裂"運命の主題"です。厳しい出し入れで緊張感漂う流れですね。

第三楽章
主部の第一・第二ワルツは優美、第三ワルツは木管の鳴りを生かします。中間部は主部の流れキープし16連音符を明確にバトンタッチして行きます。主部回帰の第一ワルツは少しスケルツォ風、コーダの"運命の主題"後の強音が唐突です。ワルツらしさの中にもシャープさが見られますね。

第四楽章
序奏の"運命の主題"は悠然。弦の第一主題は厳しく速く、第二主題は流れに乗って現れて金管の"運命の主題"はキレキレに激走します。感動ものです!!
展開部はゆっくりと鎮めて哀愁に。再現部は突然暴れて緊張感と揺さぶり強く、スローに落として"運命の主題"から山場を作ります。コーダは祭典的な行進曲でラストは勇壮そのものです。


激しい出し入れと感情溢れる第5番です。ムラヴィンスキーが得意としたチャイコフスキー5、気持ちの入った強音パートに惹かれますね。

半世紀を共にした指揮者とオケの一体感が作る隙の無い見事さ
(脳にインプリンティングされているので) 個人的にはこれを超える演奏には出会えません。




対極にいる演奏ですね。気持ち昂る力演のムラヴィンスキー、肩の力を抜いて優美ささえあるP.ヤルヴィ、どちらも完成度が高いです。

どちらを聴いても損はありませんね。もちろん個人的には何十年も聴いているムラヴィンスキーという事にはなるわけですが。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





サン・ラックス(Son Lux) の「Bones」はLIVEが断然楽しいネ



サン・ラックス Son Lux
サン・ラックスは、以前 "eighth blackbird" のCDで楽曲をインプレした際はライアン・ロット(Ryan Lott)の別名義でしたが、本作では他二人のメンバーが加わったグループ名になっています。

具体的には2008年からR.ロット(keyboard, vocal)が使い、そこにツアーメンバーだったラフィーク・バーティア(Rafiq Bhatia, guitar)とイアン・チャン(Ian Chang, dms)が2015年に加入しています。

ポスト・ロックやエレクトロニカ方向は元々のR.ロットの方向性で、ジャズやヒップホップも包括してボーダーレス化。さて、どの様な方向性になったのでしょうか。



Bones (2015)
グループになっての初アルバムで、ジャンル的にはトップダンス/エレクトロニックのアルバムチャートで10位になっています。全曲がメンバーの作曲となっていて、制作とミキシングを含むレコーディングもこなしていますね。14人のvocalの他 演奏メンバーも追加しています。







1. Breathe In - 2. Change Is Everything - 3. Flight - 4. You Don't Know Me - 5. This Time - 6. I Am The Others - 7. Your Day Will Come - 8. Undone - 9. White Lies - 10. Now I Want - 11. Breathe Out

まずは低音ドローンにvocalの1'に満たないアンビエント "1. Breathe In" から入ります。"2. Change Is Everything" は電子音パルスの波の中、"4. You Don't Know Me" はヒーリング・ポップス、"5. This Time" のギターはディストーション、"8. Undone" では少しジャズ風ギターに、全曲歌入で簡単に括るとポップ・ミュージックです。

源流を手繰ればプリンスあたりが出て来そうな感じですね。



エレクトロニクス・ポップサウンドで、全曲歌入。もろにポップで このブログの守備範囲ではない様です。




実はLIVEがYouTubeにあって、こちらはvocalも含めて本人達トリオ演奏で全然面白いです。楽曲を「Bang On a Can」か「eighth blackbird」に提供して編成を見直せば、米エクスペリメンタリズムとしても生き生きとしそうですよね。えっ、ダメですか?!

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  "Bones"のLIVEです。圧倒的に面白いです!!
  CDはセッションなので、このエレクトロニクス・ポスト・ロック感は弱いです


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ジャンル : 音楽





今気になるCHANDOSのエドワード・ガードナー(Edward Gardner), 二つの『浄夜』シェーンベルク と フリート



Verklärte Nacht
Edward Gardner (エドワード・ガードナー, 指揮者)
今年からロンドン・フィル(LPO)の音楽監督に就任する英中堅指揮者のガードナー。この処注目度の高い作品をCHANDOSレーベルから次々とリリースしていて、2020年だけでも「ペレアスとメリザンド」「ピーター・グライムズ」と気になるCDを出しています。この注目セットから新たに出たのが四人の近現代音楽家の作品集ですね。曲的には後期ロマン派ですが。

ドイツの詩人リヒャルト・デーメル(Richard Dehmel)の "浄夜"(Verklärte Nacht) を元にそのままタイトルにした二曲を並べたのがポイントですね。"浄夜"と言えばシェーンベルクですが、フリートの作品は初めて聴きます。

もう一つのポイントはテノールのステュアート・スケルトン(Stuart Skelton)です。同じくCHANDOS/ガードナーの「グレの歌」でもヴァルデマル王で起用されていましたね。A.フィッシャーのマーラー「大地の歌」でもヘルデン・テノールらしいハイトーンを聴かせてくれました。



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧








フランツ・レハール
(Franz Lehar, 1870-1948)
レハールと言えば「メリー・ウィドウ」ですねェ。年代的には近現代ですが、その範疇のイメージは誰もないでしょう。歌曲を聴くのは初めてです。

Fieber (1915)
 後期ロマン派の色濃いテノール歌曲ですね。スケルトンのテノールがヘルデンらしいトーンで聴かせてくれますが、少し押し出しが弱いかもしれません。楽風はレハールらしく時に舞曲の様に、またシェーンベルクの「グレの歌」を思わせる様な色合いも見せますね。結構楽しめるかもしれません。



オスカー・フリート
(Oskar Fried, 1871-1941)
ユダヤ系ドイツ人音楽家で指揮者でマーラーとの懇親があり、意外にも"第6番・第7番・大地の歌・第9番"のベルリン初演をBPOで振っています。作曲家としては不遇を送った様です。

Verklärte Nacht Op.9 (1901)
 原作と同じ様に男(テノール)と女(メゾソプラノ, Christine Rice)が登場して、男女間のかなりシビアな語らいを紡ぎますから基本的なストーリーは知っておいた方がいいかもしれません。mezは意図強く問題のパートを歌い、tenorがそれに応えます。ストーリー性を感じる二人の歌いで、演奏は美しい後期ロマン派楽曲でラストは大きく広げます。ここでのスケルトンは伸び良く聴かせてくれますね。ただ、クリスティーネ・ライスの方が勝っていますが…



アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schoenberg, 1874-1951)
言わずと知れたシェーンベルク、その初期の無調に足を踏み入れる前の後期ロマン派時代の傑作ですね。録音は多々存在しますが、ガードナーはどうでしょうか。今回はオリジナル弦楽合奏版(1917)のコントラバス・パートを見直しした1943ver.を採用しています。

Verklärte Nacht Op.4 (1917, revised 1943)
 まず導入部動機は暗く美しいのですが、かなり抑え気味にそして揺さぶりを入れて来ます。その後も揺さぶりは強めで、前半は不安げな流れを作ります。この辺はストーリーと合わせている感じです。弦楽合奏版と言うとカラヤンが浮かぶわけですが、あの濃厚な美しさよりも不安を掻き立てる様な揺さぶりが特徴的ですね。後半も美しい流れは排除されて、強い揺さぶりがギクシャクする様な印象を受けます。好みかと聴かれると、ちょっと違う???かもw
個人的には濃厚な甘美さと激しさが"浄夜"です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  DG盤ではありませんが、カラヤンBPOですね
  最高のDG盤はもっと静にスローから迫りますがこれも素晴らしいです




エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト
(Erich Wolfgang Korngold, 1897-1957)
ユダヤ系オーストリアの音楽家ですね。前衛隆盛期に後期ロマン派の楽風で苦労し、米国で映画音楽家として活動していますね。ここにコルンゴルトが入っているのが少し不思議です。

Lieder des Abschieds Op.14 (1920-21)
 "別れの歌"、後期ロマン派と言うよりもロマン派のリート管弦楽ver.的でしょうか。穏やかな美しい流れとスケルトンらしい落ち着いたテノールです。これはこれで味わい深い印象ですね。オリジナルはmezとpfのリートですか?!



ガードナーのスタンスが "グレの歌" でもあった様にクセのある揺さぶりが特徴的である事が 今回もシェーンベルク "浄夜" でわかりますね。他の曲は頭にないので、それほど違和感を感じる事はありませんでした。

スケルトンのテノールも"グレの歌"の時の印象と同様で、やや引けた個性を感じました。4.が一番良かったですね。今回のベスト・トラックはフリートの"浄夜"でしょうか。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジュリアン・ジュベール(Julien Joubert) の「Vous ne saurez jamais...」美しいフレンチ・ミュージック



ジュリアン・ジュベール (Julien Joubert, 1973/10/15 - )
仏音楽家のJ.ジュベールはチェロ・ピアノ・歌唱から作曲家に転向していて、一部作品を指揮者/オーケストレーションの兄との共同作業にしている様です。作曲のモチーフとして詩人・文学者のTEXTを元にしている事も多い様ですね。また少年少女たちとの合唱団活動にも力を入れているそうです。

聴く側にとって厄介?なのは楽風が多岐にわたっている事の様ですね。よくわからないのが魅力だと仏webにもありますw


Vous ne saurez jamais...
仏小説家マルグリット・ユルスナール(Marguerite Yourcenar)の作品を元にした楽曲ですね。死した女性の七つの詩で、苦悩に耐える為の源になるTEXTが盛り込まれているそうです。それなのにライナーノートにTEXTないという…w

楽曲タイトルが "Vous ne saurez jamais..., あなたは決して知る事はない…" なのか "Tombeau, 墓石" なのかもよくわかりません。前者はジャケット・タイトルですが、楽曲としては後者の第7パートです。

指揮・オケの他に、二人の歌い手に本人のピアノ、そして合唱団が入ります。







1. Tombeau (2019?)
2'〜3'の小曲7パートの楽曲です。美しい調性?の歌曲です。もちろん前衛でもなければクラシカルっぽくもありません。シャンソンを感じるパートはありますが、ポップス系でもなくムードミュージック系でしょうかね。
グルノーブル冬季オリンピックのフランシス・レイのサウンド・トラックを思い出しました



このブログのインプレ曲ではありませんでしたが、心が洗われる様な美しい楽曲には違いありません。

ちなみにフランシス・レイのサウンド・トラック盤は好きでCDになっても所有しています。




テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden) の「Liberation Music Orchestra」今聴いても素晴らしいビッグバンド前衛!


今更古い前衛ジャズを持ち出してどうする?、と言う事もありますが前回インプレにカーラ・ブレイの名前が出ていたので主張のある前衛の "Liberation" (社会的 政治的解放)な音楽を久々に聴いてみようかと。


Liberation Music Orchestra
Charlie Haden (1937-2014)
ジャズを聴いていた学生時代にハマったアルバムで、ベーシストのC.ヘイデンが政治的バックグラウンドとフリージャズを基に組織・楽曲化した1970作品です。ヘイデンの他にカーラ・ブレイが編曲を含めて大きくフィーチャーされて、後の彼女のベースともなっているでしょうね。

楽曲は9パートで、現代音楽のハンス・アイスラーやフリージャズのオーネット・コールマンの作品も"引用"、現代音楽の技法で言えば、で盛り込まれています。引用としてはラストのピート・シーガー "We shall overcome" が印象的でしょう。

編成は13人で、ジャケット写真で右端がC.ヘイデン、左端がC.ブレイ、座っているのはドン・チェリーですね。他にもG.バルビエリやD.レッドマン、P.モチアンと言った錚々たるメンバーです。







リベレーション・ミュージック・オーケストラ (1970)
パート毎のインプレはしませんw
ジャジーなメロディラインに不協和音、ビッグバンドの響き、地域を超えた民族和声展開、主張ある楽曲引用、そして混沌フリーと言ったまさにダイバーシティーなサウンドです。

特にメインとなる"III.Medley"のポリリズム・ポリフォニーのフリー・インプロヴィゼーションは絶品です。C.ブレイによる編曲で、"El Quinto Regimiento", "Los Cuatro Generales", "Viva la Quince Brigada" と言うスペインの内乱の曲をベースにしています。混沌と明確なスパニッシュ旋律のコントラストが素晴らしいですね。この構成がその後のC.ブレイですね。技巧的にはテープも使われています。

その後も強烈なフリー混沌とメロディーラインの交錯と対比が素晴らしく、今聴いても十部に期待に応える作品です!! "VIII. Circus" には何とミュージック・コンクレートも使われていますね。


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  全曲聴く事が出来る様です。是非!



ワクワク聴いた時代が思い浮かびます。今聴いてもこの時代の混沌のフリージャズの元気さを味わえますね。そして見事な多様性でもあり、ラスト "We shall overcome" は思わずグッと来てしまいます。

1970年と言えば欧エクスペリメンタリズム前衛の停滞期そのものの時代、この延長線上に今の自分の前衛現代音楽の嗜好性があるのは明白ですw

前回インプレの "Ante Lucem" に足らないものが全てここにあります。コレクションに加える事をオススメ出来る一枚です!!




テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽





ベートーヴェンへの賛歌『ルートヴィヒを探して | Searching for Ludwig』マリオ・ブルネロ、ギドン・クレーメル


Searching for Ludwig
Gidon Kremer, Mario Brunello, Kremerata Baltica
興味深いアルバム、alphaレーベルらしい?、が出ましたね。

ベートーヴェンは定期コンサートでぶつからない限り 今やほぼ聴かないのですが、二人のチェリスト/現代音楽家マリオ・ブルネロとジョヴァンニ・ソッリマの名前があると視線が向いてしまいます。

そもそもはM.ブルネロとクレメラータ・バルティカがベートーヴェンの生誕250周年を祝うドイツの "Kronberg Festival" 共演で意気投合、南米ツアーを前に1.-3.を録音する事で出来上がったそうです。タイトルも「Searching for Ludwig」で決まり、ラスト一曲はG.クレーメルのチョイスになるベートーヴェン・トリビュートアルバムですね。

ブルネロは1.はチェロですが2. 3.は指揮者、クレーメルは4.でvnの弾き振りです。







1. ‘Muss es sein? Es muss sein!' (レオ・フェレ, 1916-1993)
仏音楽家でシャンソン歌手でもあるフェレの曲で、この曲だけvc, strings, perc. の編成ですね。他は弦楽奏曲(弦楽オーケストラ)です。
 陰鬱で濃厚なブルネロのvcソロから入ります。1'半くらいからフェレの語りが刺激的に加わると打楽器も入って、弦楽奏が音の厚みを加えて進みます。攻撃的なシャンソン、鮮烈さを加えて戦場の様に流れます。フェレの"Ludwig!!"の叫びが印象的です。中間部(トリオ)でvcソロが現れて、最後はフェレの叫びで終わります。


2. 弦楽四重奏曲 第16番 Op. 135 弦楽合奏版 (ベートーヴェン)
アレグロから優美さの流れを作りますね。展開部では切れ味を見せてコントラストは良いです。ヴィヴァーチェも延長線上にあってシャープに、トリオでもあまり流れに変化を付けません。四楽章形式になっていて全体としては古典色の強さが残ります、唯一の楽章を除いては。個人的興味はそのマーラーに影響を与えたとも言われる、第三楽章の緩徐のロマン派の様な流麗さですね。この時代ならメヌエット的でしょうから。ブルネロはその対比を意識していると思います。(近いタイミングでマーラー10の弦楽奏を指揮していますから)


3. Note Sconte (ジョヴァンニ・ソッリマ, 1962-)
唸る様な前衛的弦楽奏を背景にして、ベートーヴェンの動機と思われる旋律が奏でられます。パートにより小編成の古典弦楽奏になり、強弱のメリハリを明確に付けたベートーヴェンらしさを強調するかの様です。現代音楽と古典の邂逅の様な流れであって欲しかったのですが、冒頭パート以外はほぼ古典展開でガッカリ。ベートーヴェンが好きな方は新たな旋律・動機が楽しめるかもしれません。そうなると前衛的な色付けが邪魔?! 要は中途半端感が足を引っ張っているかも…


4. 弦楽四重奏曲 第14番 Op. 131 弦楽合奏版 (ベートーヴェン)
7楽章の名曲ですね。聴き処の一つ、第一楽章を繊細で美しい緩徐表現で入るのはクレーメルらしさでしょうか。第一楽章がアレグロではないのもこの曲の特徴ですね。メインの第四楽章は見事にメヌエットの変奏曲になっていますね。全体的には古典を尊重した軽妙な室内楽に仕上げている感じですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  クレーメルの脳裏に浮かんだというバーンスタイン/VPO(弦楽)の演奏です
  晩年の1981年で濃厚な弦楽奏曲になっていますね。これは一聴に値します!




ベートーヴェンの後期弦楽四重奏二曲は当然のごとく古典ですが、2.の第三楽章のロマン派の先取りの様な美しさが前後楽章や4.から異彩を放っています。

現代音楽二曲では、1.のフェレは尖った流れが魅力的で、3.のソッリマはベートーヴェンへのトリビュート感が強い古典楽風でした。1.以外アルバム全体としてはベートーヴェンで、旧来のクラシック音楽ファンの方に受け入れられ易い感じです。個人的興味は1.だけでしたが…w

クレーメルとブルネロの共演が無いのは寂しいですね。ソッリマは今年(2020)の来日がcovid-19で中止になりましたが、来年2月に一部延期なので来て欲しいです。(チケット所有なのでw)




テーマ : クラシック
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