マグヌス・リンドベルイ(Magnus Lindberg) の「Al Largo・Cello Concerto No.2・Era」を聴く


マグヌス・リンドベルイ (Magnus Lindberg, 1958/6/27 - )
フィンランドの現代音楽家で、シベリウス音楽院でE.ラウタヴァーラやP.ハイニネンに習っています。北欧系の現代音楽家はそのまま作曲活動に入る事で独特な音楽感を作る事が多いですね。しかしM.リンドベルイはその間も夏期講習会のシエーナでF.ドナトーニ、ダルムシュタットではB.ファーニホウに師事しています。卒業後は渡欧して仏でG.グリゼーに習い、独では和太鼓やパンクロックにも興味を示していますね。今や昔の話になっていますがw
近年は前衛離反、機能和声への転換方向で商業的な臭いが強くなっているのが残念です。

🎶 北欧 現代音楽CD(作曲家別)一覧


Al Largo・Cello Concerto No.2・Era
2010年代に入っての新しい管弦楽作品集で「Al Largo」はニューヨーク・フィル"Composer-in-residence"時代の作品、「Cello Concerto No.2」はロサンゼルス・フィル、「Era」はロイヤル・コンセルトヘボウ管の委嘱作品になり、人気の証拠ですね。それが良いかは別にして…ですが…
演奏はハンヌ・リントゥ(Hannu Lintu)指揮、フィンランド放送響(Finnish Radio SO)です。



Al largo (2009-10年)
抑揚の強い調性の管弦楽で、派手な新古典主義的?です。以前の様な調性の薄さは全く無くなりました。まさに米オケが委嘱したり好んで取り上げそうな退屈な楽曲です。

Cello Concerto No.2 (2013年)
チェリストはアンッシ・カルットゥネン(Anssi Karttunen)です。その音色に若干の不協和音的なニュアンスは残し、北欧風の澄んだオケが広がります。欧前衛ではなくて所謂(いわゆる)北欧の現代音楽の印象になりますね。良いのですがなぜ今更といった感も残ります。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  CDと同メンバーによるライヴですね。


Era (2012年)
再びメリハリのある機能和声のフィルム・ミュージック的サウンドです。いかにも的な明瞭な旋律、演奏時間も20分程度と委嘱に応えるところが人気の元でしょうか。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  好きな指揮者John Storgåds、BBC Symphony Orchestraの演奏です。
  こちらの方がより彫りが深い感じですね。


前回紹介した1990年代の管弦楽集から、更に機能和声方向になっている感じです。「Cello Concerto No.2」には北欧らしい調性の薄さを生かした広がりのある方向も感じられ、派手さを打出したフィルム・ミュージックやマニエリスムなクラシカル音楽の姿になってしまった方向性よりは好みですが。
作曲技法のいかんを問わず中途半端感はぬぐえません。

SACDで音の定位や広がりは素晴らしいのでオーディオ好きの方には向いている感じです。




♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

オルガ・ノイヴィルト(Olga Neuwirth) の「Akroate Hadal・他 Chamber Music」をアルディッティ・クァルテットとN.ハッジスのピアノで聴く


オルガ・ノイヴィルト (Olga Neuwirth, 1968/8/4 - )
オーストリアの女性現代音楽家でウィーンやサンフランシスコで学んでいますが、何と言ってもIRCAMで電子音楽や音響系を学んでいる事でしょう。その際にトリスタン・ミュライユに師事している事を考慮すれば音楽のスタイルは想定できますね。ノーノとの政治的スタンスについてはコメントできませんが。
室内楽を得意としていますが、近年はより大編成化した音楽やオペラ等のステージ音楽にも傾倒してインスタレーション系のアプローチもある様です。


Chamber Music
1990年代後半の室内楽集になります。
このCDの素晴らしさの一つは演奏メンバーでしょう。Arditti Quartet, ピアノは現代音楽を得意とするお馴染みニコラス・ハッジス(Nicolas Hodges), ヴィオラ・ダモーレは元A.Q.のガース・ノックス(Garth Knox), ヴァイオリンのソロはA.Q.リーダーのアーヴィン・アルディッティ(Irvine Arditti)と豪華です。



Akroate Hadal (1995年), for string quartet
弦楽の前衛ノイズ系ですねバリバリの。特殊奏法も含めてギィギィギギギ、ですw もちろん"間"を生かしたり、パルス的炸裂音であったり、切れる様であったりと表情変化させています。キレキレでアルディッティが好きそう。

Quasare/Pulsare (1995-96年), for violin & piano
ホワイト・ノイズの様な弦、打音、切れ上がるvnに走るpf、それぞれがカオスに塊り、そして離れます。緊張感がありますねぇ。無調混沌の欧前衛らしさ炸裂ですね。サンプリングやテープ等の電子処理に関しては不明です。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?

... ?risonanze!... (1996-97年), for viola d'amore
バロック時代の古楽器ヴィオラ・ダモーレ(viola d'amore)のソロ曲です。古楽器ですが特殊奏法を駆使するので面白い響きがあります。ノイズだけでなく、この楽器が持つ共鳴弦をうまく生かした響きを多く取り入れていますね。面白いです。

...ad auras...in memoriam H. (1999年), for 2 violins & wooden drum ad libitum
木製打楽器のアドリブが入るヴァイオリンDuo曲です。小さな羽虫が飛んでいる様な音や耳鳴りの様な音をベースに、パルス的にシャープで奇妙な2vnの短旋律がロンドの様に絡んで入ります。そこに打楽器がリズムを合わせて来る面白さです。パートの再現もあって、ただのカオスから様式・構成の面白さになっています。

incidendo/fluido (2000年), for piano & CD player
技巧系のピアノ曲です。終始技巧的なpfの背後にハムノイズ的な音が控えています。それがピアノの中に配置されたCDプレイヤーからのオンド・マルトノの音です。ただプリペイド・ピアノの様な音色はないので具体的な置場所は不明です。ニコラス・ホッジスの技巧が楽しめるのもポイントでしょう。

settori (1999年), for string quartet
一曲目に近いですが、楽器間でのホモフォニー的な要素が感じられます。様式回帰もノイヴィルトの推移の一つの方向性と思いますが、前衛全体としても多様性化の流れがあるので時代の潮流なのでしょうね。

 ★ 試しにYouTubeで観てみる?
  Ivana Jasava (vn), Aija Reke (vn), Samuel Kelder (va), Stephen Marotto (vc), の演奏です。Arditti Quartetに比べるとおとなしい静方向の演奏です。


前衛ノイズ系ベースに緊張感と技巧、静と烈、といった対比を見せるカオスです。空間的な"間"も感じられ、これぞ欧エクスペリメンタリズム現代音楽の楽しみでしょう。"わけのわかんない"現代音楽を王道で聴いてみたい人にもオススメ!?

最近の楽風はさらに変化しているので、そのうちインプレしないといけませんね。




♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ヘスス・トレス(Jesús Torres) の「Manantial de luz」を聴く


ヘスス・トレス (Jesús Torres, 1965/7/15 - )
スペイン人現代音楽家でマドリード音楽院に学び、作曲はフランシスコ・ゲレーロ・マリン(Francisco Guerrero Marín)に師事していますね。100を超える作品を持つ多作家で、60の管弦楽曲の他 様々な室内楽曲を書いています。テキストを用いる作品では同国の詩人ビセンテ・アレイクサンドレ(Vicente Aleixandre)の詩を元にする事が多いそうです。
多くの委嘱を受けていて、楽風は微分音や倍音を使ったポリフォニカルでノイジーな音という事ですが。


Manantial de luz
21世紀に入っての室内楽曲集でTrio Arbós(pf, vn, vc)を中心にフルート、クラリネット、ヴィオラ、パーカッションを曲により入れていますね。



Manantial de luz (2007年), for piano soloist. Flute, clarinet, percussion, violin, viola and cello
I. Onírico - II. Inmaterial, suspendido - III. Torrencial, inundado de luz - IV. Íntimo, con dulzura - V. Vivo, con absoluta precisión - VI. Intensamente damrático
調性ベースの楽曲です。静音スロー中心に対極に速い流れでホモフォニー的な流れを配しています。そこに特徴的な緊迫感と緊張感が張り詰めていますね。調性感の低いスローに対して、速い流れの時は明瞭な旋律と反復が強いです。

Poética (2007年), for clarinet, violin, cello and piano
I. Dedicatoria (sobre un poema de Novalis) - II. Visión (sobre un poema de Friedrich Hölderlin) - III. Los amantes (sobre un poema de Rainer Maria Rilke) - IV. Canto nocturno (sobre un poema de Georg Trakl) - V. Fuga de la muerte (sobre un poema de Paul Celan)
曲別にある通りドイツの詩人5人の詩を元にした作品でピアノトリオ+クラリネットです。クラの音色がスローパートで幽玄さを奏で、その音を元にした倍音構成の響も感じられますね。ここでもスロー静&ファスト強が基本で、強音パートにはポリフォニー的な構成も明確です。(ショートパートですが)

 ★ 試しにYouTubeで観てみる?
  全曲ではありません。


Trío (2001年), for violin, cello, and piano
この中では一番古い作品で、調性がより薄くスローとファストの組合せが混在的になります。その分ポリフォニー的な強音パートの印象が強くなって即興的な無調曲になりますね。個性は近年の方が強く、類型を見つけられそうな現代音楽の気がします。

Presencias (2002年), for piano
Liturgia - J.C. - Perspectivas - Yakarta
上記"Trío"の一年後の作品で同じ流れのピアノ・ソロになります。悪くありませんが、やや没個性的な現代音楽でしょうか。

Decem (2006年), for violin, cello and piano
ピアノ・トリオ3'の小曲で調性感が明確です。速い流れでラウド、スローパートがないのはイマイチで残念です。

後年の一・二曲目は前衛的流れから機能和声方向が強まって個性が際立つ様になり、そちらが面白いですね。スローvsファストの対比が基本ですが、音数の少ない静的な中に存在する緊張感は美しく今の時代のクラシック音楽です。コンサートで聴きたいですね。

根底に反復・変奏があり欧ポスト・ミニマルと言ったら言い過ぎでしょうか。




♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze)の Sebastian im traum を聴く


ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ (Hans Werner Henze, 1926/7/1 - 2012/10/27)
折衷中道的現代音楽家のH.W.ヘンツェの初期は音列技法的、中期で無調混沌風に、後期は静的に研ぎ澄まされる、いずれも機能和声をベースにするといった印象です。そしてオペラの印象ですね。


Mahler symphony no.6/Sebastian im traum
見ての通り、M.ヤンソンス/RCOのマーラー交響曲第6番の二枚組みCDの残り時間合わせに入っていました。(笑)
でも世界初演初録音(2005年12月22,23日)ですし、インプレしない理由はありませんね。



Sebastian im traum (The Dream of Sebastian, 2003-04年)
I.♩=circa 80, II.Ruhig fliessend, III.♩=66
オーストリアの詩人ゲオルク・トラークル(Georg Trakl)の詩を元にした曲です。調性感のある中に不安感や幻想的な印象を作っていますね。例によって無調ではありませんが調性が整っているわけでもありません。静的な中にクラスター的混沌が現れるのは中後期の特徴で、所々でバレエ曲風な印象があるのも同様でしょう。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

適度に怪しげな調性に不明瞭な旋律、現代音楽の衣をまとった今の時代のクラシック音楽ですね。
バルトーク辺りと伍すくらいコンサートで取り上げられても良いと思うのですが。

マーラーの第6番も好演ですから、購入して損のないアルバムです。




♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ZIMMERMANN / HARTMANN / EGK - Violinkonzerte を聴く


Violin Concertos
20世紀ドイツ音楽が前衛現代音楽とナチスに向き合った時代の三人の音楽家のヴァイオリン協奏曲ですね。

ベルント・アロイス・ツィンマーマン
(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10)
 最も好きな現代音楽家の一人、B.A.ツィンマーマンです。その作風変化は過去インプレ済みですね。
初期の新古典主義から前衛に移行する時代の作品です。他二人より若く、第二次大戦は学生で音楽家としての大きな軋轢環境は異なるでしょう。

カール・アマデウス・ハルトマン
(Karl Amadeus Hartmann, 1905/8/2 - 1963/12/5)
 交響曲で知られ、シェルヘンと親交がありましたね。後期ロマン派・新古典主義的作品でしたが第二次大戦でナチスに抵抗したためその時期の作品は少なく、本作品はその時期で代表作でもあります。その後ヴェーベルンに影響を受けた前衛作風となります。下記エックとは確執があった様です。

ヴェルナー・エック
(Werner Egk, 1901/5/17 - 1983/7/10)
 カール・オルフに師事したエックは前衛や現代音楽ではありません。現代的音楽を「退廃音楽」とし弾圧したナチスの庇護の元にいて第二次大戦中も活躍、その時代の作品です。ハルトマンの対極にいましたね。


♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


演奏はヴァイオリンがハンス・マイレ(Hans Maile)、アレクサンダー・サンダー(Alexander Sander)指揮 ベルリン放送交響楽団(Radio-Symphonie-Orchester Berlin)になります。




■ Zimmermann / Konzert Für Violine Und Großes Orchester (1950)
大編成オケの新古典主義的な濃厚表情をベースにソロvnで調性からの脱却というスパイスを付けたツィンマーマンらしい表現主義を見せます。vnの点描的表現は音列主義的であり引用的でもあります。今の時代なら折衷的というよりも多様性の評価に値するでしょうねェ。激しさと切れ味、コンサートで聴きたいですね。生まれるのが20年早かった!!

■ Hartmann / Concerto Funèbre (1939) Für Solovioline Und Streichorchester
「葬送協奏曲 Concerto funèbre 」と標題音楽的タイトルが付いています。新古典主義作品でしょう。ドイツ古典主義の成れの果て的なオケとvnソロは濃密で超叙情的にまとわりつきます。ある意味フィルム・ミュージック的でもあるかもしれませんね。上記ツィンマーマンから前衛性を排除した感じ、悪くはありません。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Sebastian Bohren(vn), CHAARTS Chamber Aartists の演奏です。
  CDよりもかなりおとなしいかも。


■ Egk / Geigenmusik Mit Orchester (1936)
上記二人に比べて古臭い? 古典からバロック的な旋律を用いています。1930年代にこの音楽はいかにも時代錯誤を感じます。でも現在でも当然バロックや古典ファンの方は多いわけですから、今の様に情報氾濫がない時代には正統本流だったのかもしれません。


前衛の乱流に流れ込む時代のドイツ音楽を聴く事ができます。同じ新古典派作風に前衛の香りがする1950年作のツィンマーマンに対して1930年代の二つの作品は確実に時代の古さを感じさせますね。
当時の時代の流れを想像しながら聴くのも一興でしょう。







テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

カイホスルー・ソラブジ(Kaikhosru Sorabji) の「交響的ノクターン(Symphonic Nocturne)」を聴く


カイホスルー・ソラブジ (Kaikhosru Sorabji, 1892/8/14 - 1988/10/15)
前回の初中期の代表作「オーパス・クラヴィチェンバリスティクム(Opus Clavicembalisticum)」に続き後期作品を紹介です。


Symphonic Nocturne
ソラブジ後期の作品ですね。演奏時間が短くなって来たとはいえ2時間のピアノ曲です。
ピアニストのルーカス・ユイスマン(Lukas Huisman)は技巧性の強い現代音楽を得意として、ファーニホウ、フィニッシーといった"新しい複雑性"の現代音楽家の曲を演奏していますね。



Symphonic Nocturne for Piano Alone, KSS 97 (1977–78年)
後期に入り機能和声から脱却、時すでに遅しですが、を見せている事。これ見よがしの超絶技巧よりも幽玄な音の配置を主軸にしている事。この2点がわかりますね。強音パートと音数を圧倒的に減らして後期ソラブジの和声が静的幻想さにある事が明瞭ですね。無調混沌ではありませんが、調性はかなり薄いです。
変わらないのは構成が上昇音階下降音階を繰り返す事や動機の繰り返しと変奏でしょう。方向性の変更で聴きやすいのですが、2時間というのはBGMに流しておくにはいいですが…

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?


超絶技巧を強いる曲からソラブジ和声への転換で、うるさいピアノから静かなピアノになりました。聴くというよりもかけておくという感じでしょうか。
コンサートでこれを二時間聴こうとは思いませんねぇ。




♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

カイホスルー・ソラブジ(Kaikhosru Sorabji) の「オーパス・クラヴィチェンバリスティクム(Opus Clavicembalisticum)」を聴く


カイホスルー・ソラブジ (Kaikhosru Sorabji, 1892/8/14 - 1988/10/15)
ソラブジと言えばピアノ曲、超絶と長時間でしょう。ブゾーニに見出され、ゴドフスキーやシマノフスキに傾倒したという時点でその方向性は浮かぶのではないでしょうか。
1930年から、自曲の公開演奏を禁止していたのも知られる処で活動期は大きく三つの期間になりますね。その第一期はひたすら長大化した時代で「交響変奏曲(pf版)」は約9時間にもなります。第二期は1940年代を中心として"擬似トーン・クラスター"や長時間の中にパートを区切るといった技巧を凝らす様になっていて、代表曲「超絶技巧百番練習曲」をインプレ済みです。第三期は1970年代を中心に前衛の衰退期と重なって注目度が上がり、公開演奏解禁や演奏時間も短縮傾向になりました。日本で知られる様になったのはその後でしょう。


Opus Clavicembalisticum
約4時間の長時間で12パート区切りといった初期から第二期への特徴を併せ持った代表作ですね。超絶的な技巧とfffffといった極端な指示もあり難解曲でも有名です。本人の演奏後1930年に公開演奏が禁止された為それが解禁される1982年のマッジの演奏会まで日の目を見ませんでした。現在CDは今回紹介のマッジとオグドン盤がありますね。ちなみにマッジの演奏にはソラブジが賞賛したようです。今回紹介はマッジ盤になります。(オグドン盤はこちら)

ジョフリー・ダグラス・マッジ(Geoffrey Douglas Madge)は現代音楽を得意とし、ブゾーニ、ゴドフスキー、ソラブジ、そしてクセナキスといった音楽を紹介してきたオーストラリア人ピアニストです。



◼︎ Opus Clavicembalisticum (1930年)
1.Introito - 2.Preludio Corale - 3.Fuga I quatuor vocibus - 4.Fantasia - 5.Fuga II Duplex (A Due Soggetti) - 6.Interludium Primum (Thema Cum XLIV Variationibus) - 7.Cadenza I - 8.Fuga Tertia Triplex (A Tre Soggetti) - 9.Interludium Alterum (Toccata. Adagio. Passacaglia Cum LXXXI Variationibus) - 10.Cadenza II - 11.Fuga Quadruplex A Quattro Soggetti - 12.Coda-Stretta
もちろん機能和声の超絶技巧曲です。とはいえ美しい旋律や心和む緩徐の流れはありません。激しさと一息つくパターンで構成されて、山場は次々とやって来ます。即興的な技巧性の高い山場は常に強烈で、鳴り渡る感じです。ひたすらその流れが続きます。何か主題・動機でパッセージなのか不明、頭が痛くなりそうw
よく聴くと反復と変奏で構成されている事と旋律の中に古典以前の流れは感じますね。その辺りがソラブジの初期らしさかもしれません。特徴的なのは「6. Interludium Primum」静音パートの中にシマノフスキやスクリャービン的和声が、「9. Interludium Alterum」では民族音楽和声が感じられます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
 「7. Cadenza I」オグドンでスコア付きです。マッジより速く、揺さぶりも効いています


無調混沌でもなく調性の和みもない、とにかくピアノ超絶技巧性だけを全面に打出したソラブジらしさ炸裂ですね。4時間通してそれが味わえます。久しぶりに聴いたら、やっぱりキツかったです。(笑)
超絶技巧性の高い曲はどうしても聴きづらくなるので現代音楽の源流と今更ながら感じますね。個人的に面白さがかわかりませんが、ピアノの超絶曲を聴きたい人に超オススメですw 

次回は第三期の作品「交響的ノクターン」を紹介予定です。




♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

グロリア・コーツ(Gloria Coates) の「String Quartet No.9, Sonata for Violin Solo, Lyric Suite for Piano Trio」を聴く


グロリア・コーツ (Gloria Coates, 1938/10/10 - )
ミュンヘンで活躍する米女性現代音楽家で、カノン(十二音技法以降で逆行・反行が技法的に復活)を用いたポスト・ミニマルと言われています。技術的な特徴は四分音(#のまた#, 半音の半分。これを進めると微分音に)とグリッサンドの多用でしょうね。交響曲を得意としていますが、弦楽四重奏曲も多く書いています。


String Quartet No.9, Sonata for Violin Solo, Lyric Suite for Piano Trio
コーツの室内楽アルバムですが、2CDに分けた弦楽四重奏曲の#1-8のアルバムに入らなかった#9をフィチャーしたものですね。コーツは現在まで第10番(少々別扱い的)まで書いています。
演奏はKreutzer Quartet(vn-soloはメンバーのPeter Sheppard Skærved), とpfはRoderick Chadwickになります。



String Quartet No. 9 (2007年)
三曲の中では一番新しい作品で、幽玄な旋律を持つ無調の弦楽トリル, グリッサンドの四重奏曲です。特殊奏法の様な音色も入り、主に対して追従するホモフォニー的な展開はベースをカノンにしている事がわかります。四分音・微分音の違和感、そして反復も明確に存在してポスト・ミニマルの様相ですね。混沌ポリフォニーとは異なる方向性の、欧米合体的な現代音楽でしょうか。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Sonata for Violin Solo (2000年)
四楽章のvn-soloです。ここでもパワーやハイスピードを排したグリッサンドの積み重ねが基本です。楽器が一本になった分、より幽玄さを感じますね。面白さは弦楽四重奏曲の方が上でしょうが、美術館で四枚の絵画をみている様な気配です。

Lyric Suite for Piano Trio, 'Split the Lark - and you'll find the Music' (1996年)
7パートの小曲からなる楽曲です。調性感の強い弦楽器の旋律とpfの和音、そしてトリル。pfの和音がクラスター的に響くパートがあるのも一味違いますね。一見フラットにも感じる流れに美しさを感じる幽玄さ、その中に表情がうまく表されています。なぜか「展覧会の絵」が浮かびます。


幽玄な気配のポスト・ミニマルで技法は微分音を入れたグリッサンド主体のカノン展開、と言ったG.コーツらしさが全開です。無調ですが存在する旋律、単調に感じる流れの中に表情を作るのは彼女の特徴でしょう。




♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)と ポホヨネン(Kimmo Pohjonen)、コスミネン(Samuli Kosminen)の「UNIKO」を聴く


クロノス・クァルテット, Kronos Quartet
前回の「Black Angels」に続きクロノス4ですね。クロノスとフィンランドの音楽家二人のコラボ作品になりますが、実はこの二人が面白いので今回インプレを載せることにしました。


UNIKO
前衛バンドのKTU(発音はK2)を組むフィンランド人アコーディオン奏者のキンモ・ポホヨネン(Kimmo Pohjonen*)、同じくフィンランド人打楽器奏者で電子音楽/サンプラーのサムリ・コスミネン(Samuli Kosminen**)が2004年にフィンランドでクロノス4と共演のために書いたクロノス委嘱の全7パートの楽曲です。(本スタジオ録音/2007年)
興味深い二人のサウンドも下のYouTube(*&**)を観て下さいね。

演奏は上記二人とクロノスですが、チェロはジェフリー・ゼイグラー(Jeffrey Zeigler, 2005年–2013年Kronos4メンバー)になっていて、voiceはもちろんポホヨネンになります。



Uniko (2004年), for accordion, voice, string quartet, and accordion and string samples
I. Utu - II. Plasma - III. Särmä - IV. Kalma - V. Kamala - VI. Emo - VII. Avara

ベースに響く電子パーカッションと電子ノイズ、サンプリング・サウンドと思われる細い弦楽音、そこに弦楽四重奏とアコーデオンが乗ってきます。
クロノスの弦楽は調性の美しい音色(I. Utu)で米ミニマルのP.グラスを思わせる処もあります。一番違うのは重く響くパーカッションですね。処理された重低音はポップな印象を与えています。それはIII. Särmäで明確になりアコーデオンの音と唸る様なvoiceで彼らのサウンドとなります。米前衛ポップ系の様なノリで面白いのはここから、IV. Kalmaでは特殊奏法を含むノイズ&風民族音楽の展開に、V. Kamalaは弦の特殊奏法を強めて前衛+ミニマル風、VI. Emoは電子ノイズが脳に響く緩徐、VII. Avaraはサンプリング音楽主役、多分w、で華々しいです。とにかく表情豊かで楽しさいっぱいの楽曲です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Kalma(part IV)になります。Kimmo Pohjonen official websiteです。
  Helsinki festival september 2004 ライヴでクロノスのチェロはJ.ジャンルノーです。
  電子音の重低音がここでは薄くて、本来の迫力に欠けるのがちょっと残念。



ポスト・ミニマルでポップです。無調混沌の欧前衛とは違い、米現代音楽的サウンドだと思います。
始めのミニマル二曲は無い方が落ち着きますね。その後のサンプラーの電子ノイズ・ベースのポップや民族音楽は素晴らしく、ポホヨネンのサウンドにコスミネンの電子処理の威力を感じます。好きですね。^^v



* ポホヨネンの強烈な前衛アコーディオン協奏曲(合唱付き)です
▶︎ https://www.youtube.com/watch?v=kqGHoIaVGKY
** コスミネンのサンプラーと打楽器の演奏です
▶︎ https://www.youtube.com/watch?v=eMVwAwnuRHw
(現状でこの二人は「現代音楽CD(作曲家別)一覧」には載せていません)



♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)の「Black Angels」を聴く


クロノス・クァルテット, Kronos Quartet
今更のクロノスですが、1973年デイヴィッド・ハリントン(David Harrington, #1vn)が創設した米現代音楽四重奏団ですね。チェロ以外は現在もオリジナル・メンバー(John Sherba, #2vn / Hank Dutt, va)です。このアルバムはオリジナル・メンバーなのでチェロは紅一点ジョーン・ジャンルノー(Joan Jeanrenaud)です。

米クロノスといえば殆どの方が欧アルディッティ、1974年創設のアルディッティ・クァルテット(Arditti Quartet)を思い浮かべるでしょう。同じ前衛現代音楽クァルテットですが、クロノスは古典からミニマル、ロック・ジャズ・民族音楽までとレパートリーは広いですね。アルディッティは欧前衛系を主体にしている点で異なりますが、これは米現代音楽シーンとの違いでしょう。
アルディッティQ.は昨年来日でも感じましたが、先鋭から円熟に舵を切っている様です。クロノスがどうなのか?、興味があるところですね。


Black Angels
本アルバムは興味深い点がいくつかありますね。一つはアイヴズの"They are there!"で、テープに残された本人の演奏との共演、もう一つはショスタコーヴィチ"Quartet No.8"という話題性の強い(興味のある方はググって下さい)の採用ですね。個人的には表題曲のクラム"Black Angels"が最大ポイントです。



Black Angels (1970年) / George Crumb
米現代音楽家ジョージ・クラム(1929/10/24 - )の代表作「ブラック・エンジェルズ1970-暗黒界からの13のイメージ」です。特殊奏法から引用まで、技法を駆使したベトナム戦争に触発された作品ですね。
エレクトリック弦楽の切れるような弦のトリル、ノイズ、そしてゴング、叫び(数字の13を各国語で。数字のカウントアップのつぶやきもあります。共に日本語あり)、等々。「電気昆虫の夜(Night of the electric insects)」といったパート・タイトルも含めて先鋭的表現は実に魅力的です。
大作ピアノ曲集「マクロコスモス」も早いところインプレしないといけませんねぇ。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  スコア付きでどうぞ。
  アンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain)の演奏もあります!!


Spem in alium / Thomas Tallis
16世紀の音楽家トマス・タリスの全40声部の作品で、クロノスのアレンジ版。一部パートを事前録音しておき演奏しています。技法的には面白いですがSacred Song(聖歌)ですね。

Doom. A Sigh (1989年) / Istvan Marta
ハンガリーの現代音楽家イシュトヴァン・マルタ(1952/6/14 - )の作品「運命、嘆息」です。
マルタがルーマニアの小村を訪れた際に録音した二人の女性の歌を元にしていますが、なんとも陰湿で不気味な流れです。その歌も入ります*1が不完全な録音と合わせてまるで泣き声の様、それに弦楽が哀しみの音色を薄く・失望を濃く合わせます。恐怖を覚えます
この後二人の女性は曲の元を追った独裁政権からの迫害に遭い、マルタは「二度と来ないで」と電報を受けたそうです。

They are there! (1917/1942) / Charles Ives
米現代音楽の父チャールズ・アイヴズ(1874/10/20 - 1954/5/19)がテープに残した演奏との共演です。アメリカンな陽気さで歌うアイヴズとピアノ。よく聴くとクラスターと不協和音が絡んでいます。ヒスノイズだらけの音に乗って時代背景も含めての演奏ですね。弦楽は薄いですがw

Quartet for Strings no 8 in C minor, Op. 110 (1960年) / Dmitri Shostakovich
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の代表作ですね。時代背景と作曲の関係の話題性以外、曲に関しては特にコメントはありません…


個人的には次の二曲です。
一つはクラムの代表作「Black Angels」を聴くために所有しているアルバムで、その先鋭な曲を楽しみたいですね。もう一つはマルタの「Doom. A Sigh」で、この様な不気味で恐ろしい現代音楽は他に聴いたことがありません。
興味の尽きないアルバムです



*1 人が口ずさむ歌のテープをメインに曲を被せたパターンですとギャヴィン・ブライアーズ(Gavin Bryars)の名曲『イエスの血は決して私を見捨てたことはない, Jesus' Blood Never Failed Me Yet 』を思い浮かべます。よく似たパターンですが、こちらの方が先の1971年作、そして心に染みます。



♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

プロフィール

kokotonPAPA

Author:kokotonPAPA
.
    




・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。

ご案内
カテゴリ
ありがとう