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フィリップ・グラファン(Philippe Graffin) と イェルゲル・ブランケン(Jelger Blanken) の「Pijper & Escher / Violin Sonatas」を聴く


フィリップ・グラファン (vn. Philippe Graffin)
イェルゲル・ブランケン (pf. Jelger Blanken)
ビッグネームとの共演も多いフランス人ヴァイオリニストのグラファンが、オランダ人ピアニストのブランケンをパートナーにした近現代のヴァイオリン・ソナタ集ですね。
この二人は2010年9月のGergiev Festivalでオランダの初期現代音楽家のヴァイオリン・ソナタを演奏しています。これはその延長線上にあるアルバムになり、作曲家は全てオランダ人が選ばれていますね。




ウィレム・ペイペル (Willem Pijper, 1894/9/8 - 1947/3/18)
ユーレヒト音楽院で学びアムステルダム・ロッテルダム両音楽院で指導にも当たっていたオランダ国内で活動した現代音楽家です。初期はマーラーの影響があり、1920年頃より無調に踏み込みますが調性を放棄する事は無かった様です。この時代のオランダ現代音楽を代表する一人です。
■ Sonata No.1 for violin and piano (1919年)
僅かに不協和音を混じえますが、後期ロマン派と印象派、民族和声を合わせた様な折衷さです。強弱もあり美しい調べと言っていいでしょうね。

■ Sonata for violin solo (1931年)
四楽章のソロで和声の自由度は広がり、調性を大きく飛び越す事はありませんが表現は豊富になっていますね。ちょっと技巧性も感じて面白いです。ただ、四楽章とも似た感じなのは気になりますが。

■ Sonata No.2 for violin and piano (1922年)
NO.1の3年後ですが無調に一歩踏込んだ事がわかります。美しい音色を基調としているのは同じですが、俄然面白くなって来ていますね。三曲の中では一番興味深いです。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?



ルドルフ・エッシャー (Rudolf Escher, 1912/1/8 - 1980/3/17)
ロッテルダム音楽院で上記ペイペルに師事しています。仏印象派や宗教曲の影響を受け、ポリフォニー構成が特徴ですね。画家のエッシャーは叔父にあたります。
■ Sonata for violin and piano (1950年)
即興的ポリフォニーではなく変奏的な旋律を絡めます。pfの二声部もポリフォニー的ですね。無調でしょうが混沌ではなく調性の延長線上にあるので聴きやすいですね。新古典派を無調化したらこんな感じ?!



アレクサンデル・フォールモーレン (Alexander Voormolen, 1895/3/3 - 1980/11/12)
ユーレヒト音楽院の同級生にペイペルがいますね。パリ留学でルーセルに師事し、ラヴェルやディーリアスに厚遇されていたそうで、仏印象派の傾向です。後年にはM.レーガーらの影響を受けている様です。
■ Pastorale for oboe and piano (1940年)
まさに印象派の音色ベース、機能和声の美しい楽曲です。悪く言うと時代錯誤的かもしれません。なぜここに?!



トン・デ・レーウ (Ton De Leeuw, 1926/11/16 - 1996/5/31)
メシアンに習い、若い頃はベルトークの影響もある様です。インドやジャワも訪れ民族音楽を志向していましたね。技法的には微分音を駆使する作曲でした。
■ Sonatina for violin and piano (1955年)
基本は機能和声の速度変化の揺さぶりをつけた曲です。明確な微分音はわかりませんが後半に不協和音を挟んでいます。もちろんpfは微分音を出せませんね。(調律や特殊奏法なら別ですが)

■ Improvisation on the Dutch Christmas carol 'Midden in de winternacht'
特殊奏法らしき音色の静音vnと点描pfでクリスマスキャロルをやっています。一番前衛的で面白いです!!



いずれも完全無調、セリエルの様な、ではなく調性ベースに無調化の様な和声ですから違和感は薄いですね。「ちょっと気持ち悪いけど楽しめる」的でしょうw
前衛隆盛へ向かう時代、当時の前衛先端メンバーからは攻撃の対象となった様な気がしますね。

グラファンのvnに特筆する様なものは感じられませんでした。音色も細くも太くもキレキレでもありませんね。ブランケンのpfは少し煌きがあって悪くない感じですね。




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NHK交響楽団 Newライヴ・シリーズ『スヴェトラーノフ・N響 / マーラー交響曲第5番・第6番』をロシア国立響と聴き比べてみました


N響 vs ロシア国立響
先月発売された同シリーズの中にスヴェトラーノフ客演のマーラーの第五番(2000年)と第六番(1999年)が入っていました。

スヴェトラーノフ-マーラー-NHK

同時期エフゲニー・スヴェトラーノフ(Evgeny Svetlanov)が音楽監督(1965 - 2000)を務めていた手兵、ロシア国立交響楽団(Russian State SO)と聴き比べてみました。手兵vs客演さてどうだったでしょう。


本来なら『交響曲 第5番 170CD』と『交響曲 第6番 50CD』の中でインプレするのですが、次のアップ機会という事で先行投稿です。



スヴェトラーノフ / マーラー 交響曲 第五番

ロシア国立交響楽団
(Russian State Symphony Orchestra)
1995-10

第一楽章・第二楽章
特徴的にスロー弱音の葬送行進曲、山場ディナーミク強めです。第一トリオは明瞭にテンポを変え激しさですがクセはありません。第二トリオもややスローの標準的です。第二楽章の第一主題は速く第二主題はスロー静の対比です。展開部以降も同様で、コントラストを明確にした第一部ですね。
第三楽章
スケルツォ主題は緩めでhrも弱点、レントラー主題も第三主題も緩く演奏の質にも難があってぼんやりとした感じです。展開部・再現部も同じ流れで、特にスローの間延び感でボケた第二部に思えます。
第四楽章・第五楽章
主要主題は甘美を避けクール、中間部でも澄んだ流れを作っていて好きなアダージェットですね。最終楽章は第一第二主題がうまく絡みテンポアップで上げていきコデッタを優美に仕上げます。展開部と再現部の流れもスローが少なく山場も気持ち良く盛上げますが、この曲のコーダからラストでスローに落としてしまってはアウト!ですね。


コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか

スヴェトラーノフ節で、アゴーギクとディナーミク共に大きく振っているのですがスローが締まらない感じです。演奏も少々…なのも事実でしょう。





NHK交響楽団
(NHK Symphony Orchestra)
2000-9/28

5年後のN響との演奏になりますね。

第一楽章・第二楽章
葬送行進曲はやはりスローですがここでももっそりで何かが足りない感じです。第一トリオ・第二トリオ、展開部以降も第二楽章も5年前とよく似た第一部です。
第三楽章
ほぼ同じ構成、もやったスロー主体で見晴らしの悪さが印象に残ってしまいます。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは色合いは同じですが、スローになっていて残念です。最終楽章も気持ちの良いテンポ設定で流れて行って、コーダ・ラストも類似かと思いきやスローにはしませんでしたね。アッチェレランドは効いていませんでしたが悪くありませんでした。


コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか。←1995年ロシア国立響と同じコメントです。(とにかくよく似ています)

スローで何をやりたいのか駄耳なのでわかりません、やっぱりこのスローは鬼門ですね。ラストが普通になっていたのが救いでした。





スヴェトラーノフ / マーラー 交響曲 第六番

ロシア国立交響楽団
(Russian State Symphony Orchestra)
1990

第一楽章
第一主題は抑揚を付けたスロー、モットーの後の静音は大きく落としアルマの主題は華やか、スヴェトラーノフらしい揺さぶりです。展開部以降も揺さぶりは強く、勇壮なパートは素晴らしのですが間をとったパートはぼんやりです。
第二楽章
とんでもなく速いスケルツォ主題、強烈です。そしてトリオでは素っ気なくスローで凄いコントラストです。冗談としか思えない面白さ!
第三楽章
穏やかな主要主題と副主題は適度なスローで流れて美しさと哀しみを感じ、中間部では広がり山場は見事です。長いスローパートは気になりますが。
第四楽章
序奏はコントラストが生きています。流れに乗って第一主題から経過句は強烈高速ですっ飛び、第二主題も軽妙ながら速く強烈な提示部です。展開部も緩急がここではメリハリになっていますね。騎行は爆速、行進曲は山場は力技が溢れ、麻薬の様な危ない魅力があります。


パワーパートは暴れて爆速もあるクセものマーラー6です。嫌いじゃありませんねぇ。

一部気になるスロー、録音にも問題?、には目を瞑りましょうw
スヴェトラーノフ節炸裂で好みは明確に分かれるでしょうが、個性派好きにオススメです。





NHK交響楽団
(NHK Symphony Orchestra)
1999-2/11

上記9年後、N響を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
スロー堂々葬送行進曲風の第一主題、アルマの主題は優美、アクの強さは減った提示部です。展開部からも遅め堂々が基本となって揺さぶりは大きく減り、挿入部の間延び感も避けられています。
第二楽章
速いスケルツォには変わりませんが驚くほどではなくなりました。トリオのスロー加減も削られて、全体として速めという感じになりましたね。
第三楽章
主要主題・副主題共にスローでクセもありません。弱点に感じたスローも大丈夫ですが、中間部も平均化です。山場はスヴェトラーノフらしいですね。
第四楽章
序奏はスロー主体、第一主題も適度な速さ、第二主題も自然に流れます。展開部・再現部もクセはなくなり、まとまりが良くなってはいますね。山場もちゃんと盛上げています。


落ち着いた大人のマーラー6です。スーツをスマートに着こなした感じ?!

ロシア国立響から大きく揺さぶりを削り去ってしまい、クセがない代わりに平凡な一枚になってしまったのは残念です。決して悪い着こなしではありませんが。(客演であの演奏は難しいでしょうね)




第五番はスローが足を引っ張ってぼんやり感が強い気がします。
 (ロシア国立交響楽団と瓜二つの演奏ですね)

第六番は落ち着いた演奏で悪くありません。
  +αがあれば良かったでしょう。
 (ロシア国立交響楽団はとても個性的で楽しめます)




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ユルク・フレイ(Jürg Frey)のクラリネットで聴く『Beuger・Cage』ヴァンデルヴァイザーの"音"


ユルク・フレイ
(Jürg Frey, 1953/5/15 - )
ヴァンデルヴァイザー(Wandelweiser)楽派のスイス人現代音楽家にしてクラリネット奏者、スイス在住でクラリネットの指導もしています。Wandelweiser Komponisten Ensemble(ヴァンデルヴァイザー楽派のトップメンバーで構成されています)のメンバーとしても活躍していました。今回はクラリネッティストとしてボイガーのヴァンデルヴァイザー楽曲とJ.ケージを演奏しているCDです。

ヴァンデルヴァイザー楽派については「このblogで言う現代音楽」でどうぞ。実はこの世界は日本も頑張っていますね。


アントワン・ボイガー
(Antoine Beuger, 1955/7/3 - )
今更ジョン・ケージ(John Cage, 1912/9/5 - 1992/8/12)の紹介は不要でしょう。ボイガーはオランダの現代音楽家でフルート奏者ですね。ジャンルはヴァンデルヴァイザー(Wandelweiser)楽派で、本格的に作曲活動に入ったのは1990年代からで遅咲きかもしれませんね。もう少し知りたいのですが情報が不足です。




dialogues (silences), (1993年) / Antoine Beuger
単音が時に高く時に低くポツ…ポツ…と鳴ります。殆どは無音の空(くう)です。これがヴァンデルヴァイザーで、無音の中に現れ消える音を聴くわけです。空調を入れていると、その音に負けてしまいます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Music for One, (1984年) / John Cage
沈黙を聴くとなれば、この人でしょう。もちろんヴァンデルヴァイザーではありませんが、言わずもがな実験音楽総本山です。晩年の作品になり、ボイガーに比べると音数も増えて音色も強音が混ざりますね。ポツ・ポツとした音の出現ではなくて引っ張る様な音色や旋律も出てきますから"音"より"曲"でしょうか。


現代音楽の中でも実験音楽ですから音楽スレスレの世界ですね。無音の中に現れる"音"を感じて味わう?わけですから旋律も調性も全く関係ない世界です。個人的にはLiveだとより面白いのですが、CDじゃ????って感じもしますかね。

ただ、静音の中に強音の出現と言ったG.シェルシの様な前衛の楽風を思い切り削って行ったらこのアルバムのケージを経てヴァンデルヴァイザーに辿り着く気もします。そんな楽しみもあるのがこの世界かもしれません。

何枚か所有しているので懲りずに紹介しますね。ヾ^^;




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アンネ=ゾフィー・ムターのヴァイオリンで聴くペンデレツキ『Anne-Sophie Mutter Hommage à Penderecki』


クシシュトフ・ペンデレツキ
(Krzysztof Penderecki, 1933/11/23 - )
ポーランドの現代音楽家ですが、前衛的無調から始まってはいても重厚で暗い調性回帰か宗教色かといった印象が拭えませんね。以前、交響曲全集をインプレしていますが印象は変わりませんでした。今回も1990年代以降の作品なので、どうでしょうか。


アンネ=ゾフィー・ムター
(Anne-Sophie Mutter, 1963/6/29 - )
言わずと知れたドイツのビッグネームですね。10代でカラヤンの秘蔵っ子、近現代音楽もレパートリー、近年は随分と痩せました、と言った個人的印象です。演奏スタイルは弾き振りの影響もあってか"これ見よがし"から"切れ味"になってきましたね。(メンデルスゾーンで聴き比べています)

そのムターがペンデレツキと長年の交友があったとは知りませんでした。全曲ムターに献呈されていて、メタモルフォーゼン以外はムターからの委嘱曲でもあります。「ヴァイオリン・ソナタ第2番」は世界初録音*だそうで、今年85歳を迎えるペンデレツキへのオマージュという事で2CDsetでの登場ですね。
普段ならほぼ興味の湧かないセットですが、その様な話を知ったら聴いてみたくなりました。




ラ・フォリア (2013年), ヴァイオリン・ソロのための
近年の9パート、途切れ目なしの楽曲です。陰鬱な音色の調性旋律を使った極小曲の集まりで、反復(変奏含む)も強く新古典主義的にも感じますね。曲の特徴は薄いですがムターのvnは切れ味が、適度にですが、鋭いですね。ムターが好きそうでソロのコンサートには良さそうです。

協奏的二重奏曲 (2010年), ヴァイオリンとコントラバスのための
曲調は類似ですがダブルベースと互いの旋律がdialogue的に重なります。ポリフォニーではなくホモフォニーで古典的ですが表情豊かでペンデレツキ的刺激もあり面白いですね。

 ★ 試しにYouTubeで観てみる?

ヴァイオリン・ソナタ第2番* (1999年), ヴァイオリンとピアノのための
実はこれだけが2017年新録音、五楽章形式での陰鬱で重い空気のペンデレツキらしい楽曲です。旋律は変奏を含めて反復されています。また時に民族音楽の色合いを見せるのは気配が変わり面白いですね。曲の気配が"あっけらかん"としている訳ではないので、それらしい気分で聴くwには楽しめますね。

メタモルフォーゼン, ヴァイオリン協奏曲第2番 (1992-1995年)
ペンデレツキ指揮、ロンドン交響楽団の演奏で六楽章構成、1997年録音の再発"Metamorphozen"ですね。上記CD1の楽風を管弦楽に置き換えただけ、と言っては失礼かもしれませんがそんな感じです。静的パートに表現を与えて悪くはないのですが代わり映えしない様な。ペンデレツキ本人が指揮をしているので曲は意図通りなのでしょう。
ただコンサートで聴いたら陰影もあり演奏時間も適度なので聴きごたえがありそうです。ムターは繊細・神経質でいい感じですが前に出てこないですね。(ミキシングの問題?!)

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  1st mov. Allegro ma non troppo になります。



ムターの程よい切れ味のvnは表現力を感じましたね。今回初録音*一曲のみが2017年で後は旧録音なのは残念ですが…

一方ペンデレツキの曲は、無調前衛の現代音楽に軸足を置いて聴かなければ、機能和声+αの幽玄深淵さと刺激もあり十分に楽しめそうですね。バルトークあたりがお好きならば良い感じかと。




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現代音楽の『MUSICA VIVA』シリーズについて:MUSICA VIVA 03 / Ustwolskaja, Rihm, B.A.Zimmermann


MUSICA VIVA
まずはMUSICA VIVAシリーズについてですね。
『ムジカ・ヴィヴァ・ミュンヘン (Musica Viva München)』シリーズはCol Legnoレーベルのヴルフ・ヴァインマン(Wulf Weinmann, owner and label manager)が、バイエルン放送局主宰の同音楽祭(設立は1945年Karl Amadeus Hartmann)の音源をリリースしたものになりますね。

基本的には欧州エクスペリメンタリズムで、ダルムシュタットやドナウエッシンゲンと同列の音楽祭でお馴染みの顔ぶれとなります。現代音楽ファンには知られたシリーズですね。
その後ヴァインマンが新たに設立したNEOSレーベルに引き継がれる事になります。


MUSICA VIVA 03
三人の現代音楽家を取り上げていますね。いずれもビッグネームで、演奏はバイエルン放送響(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)になります。

Galina Ustvolskaya (ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ, 1919/6/17 - 2006/12/22)
後期の反復とクラスターとモノフォニーの個性的な音が一時期人気を博しました。少し古い20世紀の現代音楽家としては好きな一人です。

Wolfgang Rihm (ヴォルフガング・リーム, 1952/3/13 - )
言わずと知れたドイツの現代音楽家で三人の中では唯一存命、まだ66歳、ですね。後期ロマン派との折衷的な作風で当時の前衛シュトックハウゼンやブーレーズとは相反するものでしたね。前衛の衰退後「新しい単純性」などを標榜しますが、ラッヘンマン達のエクスペリメンタリズムとは歩調を合わせませんでした。アコースティックに拘り、作品数が多い、個人的には聴く機会が少ないです。

Bernd Alois Zimmermann (ベルント・アロイス・ツィンマーマン, 1918/3/20 - 1970/8/10)
好きなちょっと古い20世紀の現代音楽家B.A.ツィンマーマンです。10CDほどですがインプレもしてあり、その中に全体印象を残してあります。→ こちら


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Sinfonie Nr. 3 - Jesus Messias, Errette Uns! (1983年) / Galina Ustwolskaja
 [Conductor – Markus Stenz, Voice – Valeri Scherstjanoi]
旧ソ連時代、中後期の作品「交響曲第3番」ですね。副題に"救世主イエスよ、われらを救いたまえ"と付いています。この時代のソ連では日の目を見る機会は皆無に近い無調の現代音楽ですが、不協和音で斜に構えた様な機能和声的な旋律も顔を出しますね。基本はウストヴォーリスカヤらしい等拍的なリズムとホモフォニー(mono的)反復でしょう。ウストヴォーリスカヤらしさ全開ですね。演奏はややスローな気がします。

 ★ 試しにYouTubeで観てみる?
  ゲルギエフ指揮、ミュンヘン・フィル。2016年8月22日のBBC・Promsですね。

Musik Für Klarinette Und Orchester [Über Die Linie II] (1999年) / Wolfgang Rihm
 [Clarinet – Jörg Widmann, Conductor – Sylvain Cambreling]
「クラリネット協奏曲」で、clは来日も控える人気の現代音楽でもあるJ.ヴィトマンですね。序盤は静的スローで12音を使った様な不協和音をロングトーンで並べたクラリネット独奏が前面にいます。以降もテンポが早くなったり協奏的になったりもしますが、音数は決して多くなく印象は幽玄で美しさです。片足は調性にいて今の時代のクラシックでしょうね。

Photoptosis - Prelude Für Grosses Orchester (1968年) / Bernd Alois Zimmermann
 [Conductor – Markus Stenz]
「フォトプトーシス」はB.A.ツィンマーマンの後期を代表する知られた曲の一つですね。暗く淀んだ混沌、ロングトーンと各楽器の絡み、から始まります。そこに混沌とした管楽器の強音が出現して緊張感が増していきます。中程でベートーヴェンの引用が入るのも"らしい"ですね。そしてラストに向けてはポリフォニーで各楽器が渦を巻くような混沌とした流れを作り激しさを増して終わります。強烈でやっぱり素晴らしい!!

この曲は今までにハンス・ツェンダー(Hans Zender)の指揮で2回ほどインプレしています。本演奏を③として比べてみました。
フォトプトーシス3CD聴き比べ
 ① ザールブリュッケン放送交響楽団 (Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken)
 ② ベルリン・ドイツ交響楽団 (Radio-Symphonie-Orchester Berlin)
対比で言うと①が序盤の暗い淀みが強く②は弱いです、③は静かに潜んだ感じです。強音の割込みは①はパルス的刺激で②と③は流れを強調でしょう。後半の激しい混沌は①は脅迫的、②はキラメく混沌を感じますが③は弱さを感じました。
①は淀んだ混沌とパルスの対比、②は管楽器の鳴りとラストの混沌で聴かせてくれますね。本CD③は①②と比べると静的で落ち着いた流れを意識しますね。
単独で聴けばどれも素晴らしいですが、好みは両極の①と②で甲乙つけがたいでしょうか…



時代背景を考えて聴くとウストヴォーリスカヤとB.A.ツィンマーマンは本当に素晴らしいですね。リームも前衛ではありませんが、美しい響は拒絶反応が少ないと思います。







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マイケル・ハーシュ(Michael Hersch) の「end stages, violin concerto」を聴く | ヴァイオリンはコパチンスカヤ


マイケル・ハーシュ (Michael Hersch, 1971/6/25 - )
米現代音楽家でピアニストのハーシュは18歳の時にショルティ指揮のベートーヴェン「運命」のビデオを観て音楽の世界に入ったという変わった経歴ですね。バルティモアのピーボディ音楽院から始まり、ジョン・コリリアーノらと学んだこともあります。またタングルウッドではクリストファー・ラウズに師事し、PMFの参加で来日もしていますね。欧州ではヘンツェやベリオといったビッグネームの下でも働いていました。


end stages, violin concerto
一曲目のヴァイオリン協奏曲はパトリツィア・コパチンスカヤ(Patricia Kopatchinskaja)の委嘱による作品ですね。個人的にはそれで本アルバムに興味を持ったわけですがw 初演は同年Saint Paul Chamber Orchestraですね。本CDではInternational Contemporary Ensembleになります。
「end stages」はOrpheus Chamber Orchestra の委嘱・演奏です。Kevin Tuttleの死を元にした絵画に影響されていて、その画像がライナーノートにも入っていますが気持ちの良いものではありませんね。



violin concerto (2015年)
4パートの楽曲です。無調で即興的なポリフォニー風ホモフォニーw、キレる強音と緩徐の構成です。緩徐パートでも音数が減って静的になっているだけで、機能和声的な旋律は感じられませんね。今の時代の現代音楽の主流が多様性の流れとすれば硬派?と言えるかもしれません。コパチンスカヤのvnもPart III, IVではソロを明確に感じられる切れ味を聴かせてくれますが、殆どは不協和音で音色を奏でる全体構成の一部になっていますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ルツェルン音楽祭でのコパチンスカヤ。part I ですが一見の価値ありです!!


end stages (2016年)
1'〜4’程度の小曲8パート構成です。静的パートが主流となり少しドローン的なロングトーンの構成が入ってきて、調性を感じられる様な旋律がありますね。こちらの方が多様性の構成で、随分と聴きやすくなって個性は減っている気がします。静的流れに刺激音が乗り込むのも現代音楽としては多い流れですよね。


ヴァイオリン協奏曲は、遠慮なしバリバリの無調現代音楽ですね。多様性主流の21世紀現代音楽にあって懐かしささえ感じます。スコアに小節は存在していそうで無拍ではありませんから大丈夫、何が?!w ←実験的混沌ではありません。ヾ^^;

コパチンスカヤがハーシュを知ったのはご主人とインターネットで音楽検索をしていて見つけたそうです。コパチンスカヤ曰く「うわべだけの美しさや飾りも妥協もない。まるで手術の様に全てが正しい場所にある。」との事です。流石は現代音楽のコパチンスカヤですね。CD化に感謝しましょう。




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マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 50CDを聴き比べてみました [#3 / CD:41-50]

この夏は暑いので部屋でテンシュテットの4CDを中心に10CDほど聴いてみました。これで50CDになりますね。

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.6 の聴き較べです (現在 #3回 50CDまで)
 #3: 10CD (本投稿)
 #2: 20CD
 #1: 16CD
 #0: 4CD バルビローリ聴き比べ


クラウス・テンシュテット, Klaus Tennstedt (4録音)
マーラー振りと言われた時に個人的にまず浮かぶ好きな一人ですね。亡くなって今年で20年とは本当に早いものです。1983年から1991年の8年間に四つの正規録音を残しています。手兵ロンドンフィル(LPO)と1983年のセッションとライヴ。その三年後1986年のニューヨーク・フィル客演ライヴと1991年LPOのライヴです。密度が高くライヴが多いので興味深いですね。


(#1)
London Philharmonic Orchestra
[EMI] 1983-4/28,29 5/4,9

(右は1983年のセッションと1991年のライヴを含めたマーラー全集16CD)

まずはLPO首席指揮者に就任した年のセッションです。
第一楽章
インテンポ(多分)で勇壮な第一主題からパッセージで鎮めてアルマの主題を華やかに奏でます。揺さぶりを適度に入れて快感ですね。展開部もキレのある第一楽章変奏を中心にして静を奏でるスローな挿入部、その後もコントラストが強い分、好みは分かれるでしょう。スローパートはもっそり感があるかもしれません。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は一楽章第一主題の写し的に入ります。トリオでスローながら弾む様に感じるのはスケルツォらしさを生かしたのでしょうね。ここでも強いコントラストです。
第三楽章
主要主題は予想通りスロー、副主題もスローをキープしますが哀愁も弱めです。表情が薄いスローで間延びした感じがしますね。中間部もややギクシャクですが山場は壮大です。
第四楽章
スロー陰影の強い序奏から第一主題で切れ上がり、パッセージで盛り上げると第二主題は爽快に駆け抜けます。展開部以降はスローで山場を引っ張るのでくどさがあるかもしれません。行進曲や騎行のスローは厳しいですね。
・・・・・
強調されたスロー多用が好みの分岐点となるマーラー6ですね。アゴーギクとディナーミクで、スローの静と勇猛、速い勇壮が強いコントラストを描きますが重心はスロー。個人的には少々スローやり過ぎの様な…




(#2)
London Philharmonic Orchestra
[LPO] 1983-8/22
セッションの約四ヶ月後のライヴですから興味は尽きませんね。LPOレーベルから後年(2009年)に発表されました。
第一楽章
セッションと似た提示部ですが揺さぶりは減り、速めになってスッキリとしたキレを感じます。展開部の挿入部の静も適度なスローになり、その後再現部にかけてもスローを抑えて速さに重心を移しシャープになりましたね。なんとセッションよりも1'30"以上速くなっていました。
第二楽章
スケルツォは速めの主要主題からトリオは控えめスローで優美になりましたね。コントラストはありますが、速め軸足で軽快です。
第三楽章
主要主題・副主題ともスローですが、副主題では哀愁が感じられる様になりました。感情が現れて聴きやすくはなりましたが、この楽章だけは強いスロー傾向のアンダンテです。
第四楽章
少しスローを抑え刺激的序奏、テンポアップして第一主題を快速に飛ばし第二主題で軽快さに広がりを見せます。展開部以降もスローの気になる揺さぶりはありますが、速さに軸足を移しているので聴きやすなりましたね。セッションより2'も速くなっていますw
・・・・・
セッションより軽快シャープなマーラー6になりました。速さに軸足を移して、落ち着かないスロー揺さぶりはあっても印象は正反対かもしれません。演奏時間は大きく短縮され、色々と試していたのかもしれませんね。




(#3)
New York Philharmonic
[MEMORIES] 1986-10/23
上記3年後、LPO音楽監督時代(1983-1987)のNYP客演Liveですね。NYPはズービン・メータが首席指揮者時代です。
第一楽章
勇壮な第一主題の少し速めのテンポに違和感はありません。第二主題も広がりのある優美さを見せて王道的提示部です。'83年ライヴに似た速めパターンですが重心が低い感じです。
第二楽章
スケルツォ主要主題も速めの中に落ち着きを見せる良い流れになりました。スローに落とすトリオは美しさです。このコントラストは良いですね。テンポ変化も自然です。
第三楽章
主要主題にも美しさが感じられる様になり、'83ライヴに似たスローな流れですがブラッシュアップされたアンダンテですね。
第四楽章
序奏から提示部、再現部以降、流れは'83ライヴに似ていますがNYPの音の華やかさと まとまりが一枚上手でワクワク感があります。
・・・・・
速め主体にスローの対比が落ち着いた流れのマーラー6です。基本は'83ライヴと同じですがNYPとの顔合せが吉と出たのかもしれません。
MEMORIESなので録音は大幅値引きして聴く必要がありますがw




(#4)

London Philharmonic Orchestra
[EMI] 1991-11/4,7

(右は1983年のセッションと1991年のライヴを含めたマーラー全集16CD)

NYPの5年後の手兵LPOとのライヴです。1987年に首席指揮者を退き癌との闘病中でしたね。(桂冠指揮者になっています)
第一楽章
提示部第一主題からの流れは揺さぶりも'83セッションに戻った感じですが、演奏も練れて心地よいですね。展開部からも'83セッションに戻ったスロー揺さぶりですが、締まりがあって"もっそり感"はありません。元々勇壮パートは良いので、これぞライヴならではの緊張感の賜物でしょうか。スローはより強調され演奏時間はセッションよりも1'くらい長くなっています。
第二楽章
スケルツォも流れは'83セッションに近いですが、切れ味の主要主題にスローで弾むトリオの対比に磨きがかかった様です。
第三楽章
一貫してスローを通したアンダンテですが、主要主題の美しさはこれが一番でしょう。副主題の哀しみや中間部の明るさとの対比も聴かせてくれ、スローが生きました。
第四楽章
スロー主体にコントラストの強い序奏、切れ味の第一主題からパッセージ、軽快な第二主題はいつもの通り。展開部以降でスローの揺さぶりを取り戻しますが、ここでは広がりを感じてスケールの大きな演奏になっています。突撃しない行進曲も同様です。コンサート会場なら素晴らしかったでしょうね。
・・・・・
スローを最大限生かして勇壮さと対比させた個性的マーラー6ですね。色々試して最後は'83セッション回帰のスローに戻っています。(演奏時間はさらに長くなっています)

テンシュテットが拘った姿がここに結実したのでしょう、今まで違和感の強かったスローが生きていますね。LPOの演奏も見事です。(最終楽章展開部の行進曲をスローに振ってくる演奏は超個性的で他に聴いた事がありません。テンシュテットは悲劇的の何を表現したかったのでしょう)




マリス・ヤンソンス, Mariss Jansons (2録音)
ムラヴィンスキーの助手を務めていたラトビア人指揮者、今や人気ベテラン指揮者の一人ですね。もう一枚オスロ・フィルとの正規録音(2009)があるのですが見た事がありません。


(#1)
London Symphony Orchestra
[LSO Live] 2002-11
LSO(ロンドン交響楽団)を振ったマーラー6。LPO(ロンドン・フィル)では首席客演指揮者を務めていましたが録音は残していませんね。
第一楽章
軽快な第一主題、アルマの主題もさっぱりとこなしています。展開部も勇壮さは弱めで平和的パート重視ですね。
第二楽章
アンダンテです。主要主題、副主題(第一トリオ)共に沈んだ気配でだるい感じが強いです。中間部も印象に残りません。
第三楽章
主要主題はさっぱりと流し、トリオも何気なくテンポダウンしてきます。気持ちが入っている感じが伝わりませんね。
第四楽章
序奏は少しモヤモヤ、それでも第一主題は何とか勇壮さを見せますが流れは今ひとつシャキッとしません。展開部以降もそんなバランスで、時折元気さいっぱいですが時すでに遅し。
・・・・・
淡白あっさりのマーラー6です。何か元気もなく魂の抜けた様な…
ハンマーの音色もこもって、録音も一因?




(#2)
Royal Concertgebouw Orchestra
[RCO Live] 2005-8/22,9/7,8
2004-2015年首席指揮者を務めたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を振ったマーラー6です。オリジナルレーベル「RCO Live」はヤンソンスが着任した年から始まりました。
第一楽章
第一主題は抑揚がありメリハリが付きました。アルマの主題でも情感を感じさせる様になっていますね。その後も流れはLSOと同じだと思いますが明確な表情付けになりました。
第二楽章
アンダンテです。LSOの沈没気配から一般的な情感になって中間部も山場も明瞭です。基本的に抑え気味なのは変わりません。
第三楽章
切れ味が良くなった主要主題、トリオでもトーン変化を効かせていますね。
第四楽章
序奏の陰影付けは弱めですが、提示部は第一主題とパッセージを心地良く第二主題の穏やかさに繋ぎます。展開部・再現部では広がりの良い響きを奏でますね。
・・・・・
程よい抑揚で表情の伝わる、安心して聴けるマーラー6です。クセを感じないのはアゴーギクよりもディナーミク主体での色付けだからでしょう。(ベースはLSOと同じで色付けだと思います)
演奏も録音もこちらが上ですが、うまくまとまり過ぎですかね。それがヤンソンス/RCO?!




マイケル・ティルソン・トーマス, Michael Tilson Thomas
San Francisco Symphony
[SFS] 2001-9/12-15
MTTが1995年から長く音楽監督を務めるサンフランシスコ交響楽団とのお馴染み自主制作盤マーラー6ですね。過去の来日でも良いマーラーを聴かせてくれました。
第一楽章
第一主題から第二主題は感情移入を抑えテンポをうまく効かせたクールさ、展開部も適度な抑揚でパッセージの表現は心地良いですね。
第二楽章
スケルツォです。ここでも適度な揺さぶりで主要主題とトリオを組合わせています。興奮や優美よりもクール。特にトリオでのテンポの変化はうまいですね。この辺りがMTTでしょう。
第三楽章
主要主題は全体の流れに合って美しさ、副主題はスローに哀愁を醸して中間部は明るさを見せてほっとさせてくれます。スロー基本に緩徐らしさを全面に打出していますね。
第四楽章
序奏は基本的スローで抑えています。提示部はコントロールの効いた第一主題からパッセージ、第二主題と繋ぎます。展開部もうまく抑揚を付けて心地良い広がりを感じます。再現部も普通は目立たない第一主題回帰前のスローがいいですね。
・・・・・
興奮や切れ味とは一味違う落ち着いたクールなマーラー6です。ディナーミクは抑えて落ち着いたアゴーギクの味付けが絶妙です。アンダンテが緩徐抑えめなら絶対ですね。
私はゲイではありませんがw好みのMTTです。




ダニエル・ハーディング, Daniel Harding
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR KLASSIK] 2014-3/20-22
第9・10番では素晴らしいCDを残したハーディングですが、何回も行っているコンサートでは未だに当たった事がなく相性の良くないマエストロ代表です。(笑)
バイエルン放送交響楽団(首席指揮者はヤンソンス)を振ったマーラー6ですね。
第一楽章
第一主題をやや速めに、モットーからアルマの主題は優美、コントラストをうまく付けています。展開部も速め基調で緩急よく見晴らしの良い流れですが、全体的には個性に欠けるのが残念な気がします。
第二楽章
アンダンテを持って来ましたね。主要主題から第一トリオはテンポにもクセのない優雅さで、中間部(第二トリオ)も同じ流れの延長上にあり、大きな流れです。
第三楽章
ここでもクセのない主要主題にトリオで重心の低い腰の座ったスケルツォです。
第四楽章
個性的な序奏も捻りよりどっかり重厚さ。提示部はややスローの堂々たる第一主題から経過句、自然なつながりの第二主題です。この曲のピーク展開部は出し入れの明確な大きな流れを見せてくれます。
・・・・・
重心の低い独オケ教科書的なマーラー6です。悪くないのですが何かワクワクするオリジナリティで楽しませて欲しい気がします。


実はFM放送録音に同年(2014年)の12/5にベルリンフィルを振ったマーラー6のLiveがあります。個性に乏しい教科書から王道へ。重心の低さを上回る地響きの様な重圧感と切れ味を示し、アンダンテでは哀愁を引き出す、表情の豊かさと強力なオケの一体感です。我儘軍団の好き嫌いは別にしてBPOサウンドでしょう。ハーディングも指揮していて楽しかったのではw
ふとカラヤン/BPOのシャンゼリゼ6番(非正規盤)を思い浮かべました。




朝比奈 隆, Takashi Asashina (2録音)
朝比奈さんといえばブルックナーでしょうが、創設者であり54年間手兵であった大阪フィルハーモニー交響楽団と2枚のLive録音を残していますね。いずれも大フィルレーベルから出ています。


(#1)

Osaka Philharmonic Orchestra
[大阪フィル] 1979-9/7

AsahinaMahler6.jpg
(ジャケット写真です)

大フィル東京定期演奏会、71歳の時のライヴですね。今ほどマーラーが演奏されなかった1970年代のLiveです。
第一楽章
第一主題は速めで落ち着きに欠けるきらいがあります。モットーは強音で切替てあっさりと、アルマの主題は速めながら優美です。展開部も基本は速く、ディナーミクともに挿入部で落とされるくらいです。とにかく速いです!
(実は演奏時間表記25'32"は大間違いで、実際は20'56"ほど。これは提示部再現有りでは世界最速のN.ヤルヴィに迫りますね。Kaplan Foundation表記も間違っています。)
第二楽章
スケルツォです。主要主題は標準的でくせがありません。トリオで穏やかさを見せて、後半はこのコントラストが明瞭になりますね。
第三楽章
アンダンテですが、主要主題は抑揚を抑えて副主題のobも流れは感情をあまり見せません。静かに流れますが演奏に今ひとつ落ち着きがありません。後半はここでも盛り上げてきます。(気になるのはテンポはそれほど速くないのに演奏時間が12'53"少しと短いです。ここでも表記12'08"は間違いですね)
第四楽章
序奏は出し入れは強めですが、もやっとした感じです。第一主題はリズムよく力感を見せ駆け抜け、第二主題で晴れ晴れとした表情に変えて良い気配です。残念なのはオケの技量が少し… ところがこの曲のメインの展開部になると荒れた中に情熱が溢れて炸裂します。見事に気持ちは伝わりました。
・・・・・
突進する第一楽章の速さと最終楽章の情熱という異色のマーラー6です。オケの力量も十分ではありませんし これを名盤とする事もないでしょうが、最終楽章は指揮者とオケが一体となった気持ちが伝わりグッと来ます。




(#2)
Osaka Philharmonic Orchestra
[大阪フィル] 1992-2/18
その13年後、大阪定期公演での演奏で84歳でのタクトです。
第一楽章
第一主題はバランスが向上しているのがわかります。モットーからアルマの主題でも落ち着いていますね。処々速いですがテンポもより一般化してその分特徴が薄まっている気もします。全体の演奏レベルが格段に上がってるのはわかります。
第二楽章
主要主題は速めで切れ味があり、トリオでは適度に穏やかになります。全体的には速いスケルツォになっていますね。
第三楽章
主要主題は美しさを増して副主題も哀愁を奏でます。演奏レベルも安定し、美しいアンダンテですが没個性といえなくもありません。中間部の揃いは今ひとつかも。
第四楽章
序奏は適度にコントラスト付けて第一主題はテンポアップ、第二主題でスッキリ感を出していますが提示部としてはキレがあまり良くありませんね。展開部もスローのアゴーギクがもっそり感を作り、パワーパートでも演奏の一体感にやや欠けて見晴らしがあまり良くありません。この楽章は少々残念です。
・・・・・
欠点も大きく減った代わりに'79年の様な個性・情熱も薄まったマーラー6ですね。演奏レベルの向上は明白ですが凡百に埋もれそうで、心に残るのは'79年盤になるでしょうか。
(録音に一部ノイズが入りますが、未発表音源なのでご愛嬌w)



まだまだコンドラシンなど変わったのもありますので、徐々にアップしたいと思います。


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ミェチスワフ・ヴァインベルク(Mieczyslaw Weinberg) の「交響曲 第10番・第6番」を聴く


ミェチスワフ・ヴァインベルク (Mieczyslaw Weinberg, 1919/12/8 - 1996/2/26)
ポーランド生まれで、旧ソ連で活躍した現代音楽家ですね。
まずは名前が厄介です。このCDではソ連名"Moishei Vainberg, モイセイ・ヴァインベルク"となっていますが、一般的には上記ポーランド名からの英表現が今は一般的かと。楽風は新古典主義でショスタコーヴィチに影響を受けているとされていますが、ミャスコフスキとプロコフィエフを感じますが如何でしょう。


Symphonies Nos.10 & 6
20ある交響曲の中の二曲で、中期の作品になりますね。代表作の一つである第10番はルドルフ・バルシャイ指揮モスクワ室内管弦楽団に献呈されて初演、初録音(本CD, mono*)になります。
*6番はstereoです。



Symphony No.10 in A minor (1968年)
第6番の5年後、同じ五楽章形式ですが演奏時間は短くなっています。不協和音が生かされ調性が薄くなり、反復・変奏が強まります。構成が新古典的なパートと緩徐パートの対比なのがヴァインベルクでしょうか。特徴的なのは各楽章にリード楽器が現れて、オケと協奏になっている事でしょう。第6番より楽しめると思います。(mono録音ですが音質も十分です)

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Symphony No.6 in A minor (1963年)
五楽章形式です。不協和音を生かした微妙な美しさの第一楽章から始まり、少年合唱団の入る二・四楽章、派手で民族音楽を感じる第三楽章、と変化に富んではいますが全体としてはロシア新古典主義的という処でしょうか。コンドラシンの指揮(手兵モスクワフィル)で、色付けはされていますが。

以前インプレしたウラディーミル・ランデ指揮サンクトペテルブルク響の第6番に比べると揺さぶりが強め繊細さ弱めです。不協和音による浮遊感の透明さがやや劣る気がしますが陰影がロシア的ですね。これは完全にコンドラシンのパターンだからでしょう。


明瞭強音のロシア的新古典パートと陰鬱な緩徐パートの組合せで、20世紀ソ連時代を感じさせるロシア音楽。ちょっと中途半端。そんな感じですね。個人的には緩徐パートは好みかもしれません。




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クロード・エルフェ(Claude Helffer)のピアノで聴く現代音楽ピアノ曲集『Musique Contemporaine pour Piano』


クロード・エルフェ (Claude Helffer, 1922/6/18 - 2004/10/27)
現代音楽を得意としたフランス人ピアニスト。カサドッシュにピアノを師事し、ブーレーズ、ギーレン、マデルナ、シェルヘンといった現代音楽を取り上げる指揮者との共演も多いですね。


Contemporary Music For Piano
フランス人現代音楽家のピアノ曲オムニバスになります。年代的にはエルフェ本人も含めて前衛の隆盛から衰退期の波を受けた時代の顔ぶれでしょう。(P.マヌリを除き)

ベッツィ・ジョラス (Betsy Jolas, 1926/8/5 - )
 アメリカ系フランス人の女性現代音楽家で、ミヨーやメシアンに師事しています。メシアンの代わりに音楽院でアナリーゼを受け持ったりしましたが、彼女の前衛性は当時としては受け入れられたとは言えないかもしれません。

ジルベール・アミ (Gilbert Amy, 1936/8/29 - )
 ジョラスと同じくミヨーとメシアンに師事したフランス人現代音楽家です。ダルムシュタットではシュトックハウゼンにも習い、とりわけブーレーズからの信頼が厚かった様ですね。

アンドレ・ブクレシュリエフ (André Boucourechliev, 1925/7/28 – 1997/11/13)
 フランスの現代音楽家で、ダルムシュタットに通いながらベリオやマデルナに習っていますね。米前衛に触れ、偶然性の音楽にも薫陶されています。

フィリップ・マヌリ (Philippe Manoury, 1952/6/19 - )
 好きな現代音楽家の一人で電子音楽系現代音楽を代表する一人ですね。紹介済みですので割愛です。

ヤニス・クセナキス (Iannis Xenakis, 1922/5/29 - 2001/2/4)
 言わずと知れたクセナキス、もちろん割愛です。m(_ _)m


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hellferCD.jpg
(色々検索してみましたが、amazonには登録が見つかりません)

B for sonata (1973年), Betsy Jolas
点描で音列配置的です。セリエルかどうかは聴いただけではわかりませんが、それをベースにして仏印象派の様な和声と混ざります。前衛の衰退が明確になった時代の作品ですから、折衷的なポスト・セリエル作品が出てきても不思議ではありませんね。現在では絶滅危惧種の様な現代音楽の類かもしれません。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?

Cahiers d'Epigrammes (1961年), Gilbert Amy
こちらも無調音列技法の様な曲になります。時代は前衛真っ只中ですからセリエルであって不思議はありません。実際にセリエルかはライナーノートにもありませんが、この時代の作品らしく楽曲構成について本人の記述があります。この曲の方が絶滅危惧レベルは高そうですw

6 Etudes d'arès Piranèse (1975年), Andre Boucourechliev
年代から多少の多様性がうかがえる様に感じますが、それでも根底にセリエル的な無調がある気がしますね。クラスター的な音と、セリエルでは禁止された三度五度を使った旋律が存在してきます。エチュードなので技巧系になりますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Angela Toshevaのpfになります


Crytophonos (1974年), Philippe Manoury
エルフェに献呈された曲で初演もエルフェだそうです。マヌリ初期のポスト・セリエルの点描的音楽(Punctualism)ですが、それでも今の楽風を思わせる良さが見られます。現在の電子空間音響系の現代音楽は素晴らしいですが、その萌芽が見えるのは楽しいです。

Mists (1981年), Iannis Xenakis
クセナキス後期の難読スコア、四声部で書かれた、の曲ですね。この後六声部の難曲Keqropsを書くことになりますね。クセナキスらしい陰影強い表情のポスト・セリエルの楽曲です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア(四声部)付きです



前衛全盛の時代のピアノ曲、音列技法を中心としたポスト・セリエルが並びます。今は昔の物語、といった趣でしょう。当時を振り返って懐かしさに浸るにはもってこいかと。






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ボフスラフ・マルティヌー(Bohuslav Martinu) の「弦楽四重奏曲 第3番, 4番, 5番」を聴く


ボフスラフ・マルチヌー (Bohuslav Martinů, 1890/12/8 - 1959/8/28)
多作家で知られるチェコの近現代音楽家マルティヌーは、初期チェコ時代、1923年からのパリ時代、1941年ナチスを逃れた米国時代、1953年からの欧州時代に分かれますね。
その楽風は印象派(チェコ時代後期)から新古典主義、そして新印象主義(欧州時代)と変化しています。前衛的無調に手を染めたことはありません。

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String Quartets 3, 4 & 5
弦楽四重奏曲は第1番(1914年)から第7番(1947年)まであります。ちなみに第1番は12歳での作品で、今回収録の3, 4, 5番はパリ時代の作品になります。
演奏はエンペラー弦楽四重奏団(Emperor String Quartet)ですね。



■ 弦楽四重奏曲 第3番, H.183 (1929年)
フーガやポリフォニーを織り交ぜて刺激にあるサウンドで新古典主義的な流れです。緩徐楽章では調性感の薄さを生かして気持ちの良くないw旋律を奏でます。折衷性が高く先鋭的、今の時代にピッタリくるクラシック弦楽四重奏曲に感じますね。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?
  全三楽章の抜粋です。Bennewitz Quartetによる2017年Liveです。


■ 弦楽四重奏曲 第4番, H.256 (1937年)
8年後の作品になりますが、民族音楽の要素が少し強くなっているでしょうか。強い音色を基本とする流れは変わりませんが、美しさと調性の薄さが増している様です。ポリフォニーとホモフォニーを混ぜた様な旋律のせめぎ合いも楽しいですね。小刻みな反復(変奏含め)とそこからの速い上昇・下降音階の構成がくどいと言われると、気にはなりますがw

■ 弦楽四重奏曲 第5番, H.268 (1938年)
1年後ですから大きな変化はありません。小刻みハイテンポな反復・変奏が骨格を成しているので同じ様な曲に感じてしまいますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


刺激とメリハリの強い機能和声範疇に納まりそうなクァルテットで、コンサート受けしそうですね。今の時代のクラシック弦楽四重奏曲として楽しめると思います。
通して共通するのはリズムを含めた反復・変奏の執拗さ、そして緩徐楽章での調性の薄さでしょう。続けて聴くと少しくどいでしょうか?

本インプレ(年代順)は、CD収録順とは逆になっています。








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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。





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