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エルガーの「エニグマ変奏曲」: コンサートを前に4CDで, 今更ながらの おさらいです


エニグマ変奏曲, Op.36 (1899年)
(エドワード・エルガー, Edward Elgar 1857-1934)
今更ですが、今回は個人的な聴き方ポイントをおさらいして来週のコンサート(都響/ブラビンズ, 4/25には東響/ノットも)の予習ですw


【エニグマ変奏曲の個人的楽しみ方】 
[前半]第7変奏までは緩徐に、短く派手な第4・7変奏でメリハリを。
[後半]をメインに。第9変奏「ニムロッド」の美しさ、第10変奏「ドーラベッラ」の軽妙さ、第11変奏「G.R.S.」のワンコ(Dan)の元気さ、第12変奏「B.G.N.」チェロの響き、と楽しみます。そして最後の第14変奏「エドゥー」では迫力ですね。


次の4CDでインプレです。バーンスタイン以外はそれぞれオケの主席指揮者(音楽監督)時代ですね。

 ①プレヴィン / ロイヤルフィル
 ②ラトル / バーミンガム市響
 ③バーンスタイン / BBC響
 ④モントゥー / LSO
 ・下へ行くほど濃い味ですw




アンドレ・プレヴィン
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 (1986年)



前半は緩徐パートの真面目な優しさが印象的ですね。ほどよいメリハリに第4変奏や第7変奏での強音を鳴りよく奏します。第9ニムロッドは優しい美しさが際立ちます。第10ドーラベッラは少しシャイに、第11Danは元気いっぱい、第12変奏のチェロは哀愁ですね。ラストE.D.U.は折り目正しい強音パートです。


落ち着いていて優しい、いかにもプレヴィンらしいエニグマですね。





サイモン・ラトル
バーミンガム市交響楽団 (1993年)


rattle-enigma.jpg
(ジャケット写真です)


前半は緩徐を明瞭に表現して、第4・第7変奏は切れ味の良さを感じました。後半第9変奏は特徴的にppを長くゆっくりと現れてきます。印象的なニムロッドです。第10ドラベッラは軽妙、第11のワンコDanはイタズラ子の如く、第12変奏B.G.N.のチェロは落ち着きを払います。第14変奏E.D.U.の強音は派手ですね。


ほどよいコントラストを付けた落ち着きある流れのエニグマですね。





レナード・バーンスタイン
BBC交響楽団 (1982年)



主題から間を取って彫りの深さを見せてくるのが, いかにもバーンスタインです。前半から聴かせに入っていて惹き込まれてしまいます。第4変奏はそれほど力みませんが、第7変奏Troyteは疾走です。

後半第9変奏はトーンを沈めて夜明けの光の様な広がりを作って見事なニムロッドですね。コンサートのアンコールだったら目頭が熱くなるでしょう。第10ドーラベッラは落ち着いた楽器間の会話が楽しく、第11変奏はDanの冒険ですね。第12変奏ではゆったりとしたチェロですがオケとの音の厚みを感じます。FinaleのE.D.U.は揺さぶりの強い濃い流れです。


どのパートをとっても隙のない深慮の采配、感動的なバーンスタインのエニグマになっています。BBC響の演奏も見事ですね。(実はカップリングの"威風堂々"も素晴らしいです)

もっと濃い味、となると次のモントゥーしかありませんw





ピエール・モントゥー
ロンドン交響楽団 (1961年) [mono]



前半の緩徐はやや速めで感情を強めに込めているのが特徴的ですね。第4・第7変奏では速く激しく、です。

後半ニムロッドは唯一静的な流れを作っていて、やや速めではありますがグッとくるものがあります。第10変奏ドーラベッラはまさにお喋りなドーラ・ペニーに、第11変奏は走り回って川に飛び込むDanです。第12変奏のチェロはエモーショナルで情感が濃いです。FinaleのE.D.U.は爆走爆裂です!!


とにかく速いです。あっという間に進んで行く感じです。そして感情過多で突撃系のエニグマ ですね。

一番古く個性的, mono録音のエニグマ。これが私の標準原器になりますね。理由はありません。なぜかこれです!!




このインプレは個人的嗜好が偏って参考にならないかもしれません。もちろんオススメは④モントゥーと③バーンスタインです。

④モントゥーは一度聴いて欲しいですが、monoですしこの曲の好まれる方向とは違うかもしれません。③は人気があると思いますが、①や②が今の方向性かもしれませんね。

次週のコンサート, 都響は指揮が英国人ブラビンズさんですからなんとなく方向はわかる気がしますが。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ワーグナーの序曲・前奏曲を楽しめる管弦楽曲集:クールなデ・ワールト vs 濃厚なエストラーダ


ワーグナー管弦楽曲集
①エド・デ・ワールト ②アンドレス・オロスコ=エストラーダ
リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner, 1813-1883)の楽劇の序曲や前奏曲を集めたアルバムですね。一昔前は人気があったと思うのですが、今やなんでも全曲版の時代。このパターンが少なくなった気がします。でもコンサートでの登場機会もあり、ワーグナーのお馴染みの曲を知っておきたい、聴いてみたい、と言ったニーズはあると思うのですが。

ちなみにワグナーが序曲から前奏曲に替えたのは"ローエングリン"から、歌劇を楽劇に替えたのは次の"トリスタンとイゾルデ"からですね。

色々ありますが 個人的に馴染んでいたのはEMIカラヤン盤('74)ですね。今更それもないと思いますので、今回は色合いの異なる二つのヴァージョン、"エド・デ・ワールト指揮/オランダ放送フィル"(2003) と "アンドレス・オロスコ=エストラーダ指揮/フランクフルト放送響"(2018) で聴き比べてみようと思います。

ワーグナー作品年代 w:ワールト, e:エストラーダ】
  1840年:リエンツィ e
  1842年:さまよえるオランダ人 w, e
  1845年:タンホイザー w, e
  1848年:ローエングリン w, e (eは第1幕前奏曲のみ)
  1848-1874年:ニーベルングの指環 (今回録音なし)
  1859年:トリスタンとイゾルデ w, e
  1867年:ニュルンベルクのマイスタージンガー w
  1882年:パルジファル w, e




① Edo De Waart
Radio Filharmonisch Orkest Holland


Orchestral Work I
 
(左はハイブリッド盤, 右はシングルレイヤーSACDです)


『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲
かの冒頭の"マイスタージンガーの動機"はやや速めの落ち着いた気配で入ってきますね。"求愛の動機"はフルートで静める様に、コラールの様な"ダヴィデ王の動機"で華やかに、"芸術の動機"から山場へ向かいますが、この曲としては落ち着いた流れでしょう。展開部以降も同様で曲構成のわりには落ち着いた前奏曲になっています。

余計な事ですが、この曲の再現部の動機(主題)の表情を変える変奏パターンはマーラーもよく使っていると思いますね。


『ローエングリン』第1幕への前奏曲
序奏で天上が奏でられて、繊細で透明感ある"聖杯の動機"が現れます。木管に動機が移ると明るい光を感じる様になり、さらに金管が入って緩やかな広がりにします。山場は自然な流れで迎えて、静かに弦楽でおさめられていきます。穏やかで心地良い前奏曲になっていますね。


『ローエングリン』第3幕への前奏曲
第3幕の結婚行進曲への短い導入曲ですから"歓喜の動機"を切れ味よく必要以上の興奮を避けながら入ります。"婚礼の動機"を優美に奏でて、再び"歓喜の動機"がシャープに出現します。派手な曲ですが、落ち着いた前奏曲になっていますね。


『パルジファル』第1幕への前奏曲
冒頭の"聖餐の動機"は澄んだ音色を奏でて不安の流れを保ち、二回目の全休符後に"聖杯の動機"がゆったりと鳴り渡ります。"信仰の動機"が明るい光を優しく与えて、全体的には落ち着いた流れで、寂しげな"聖餐の動機"が印象的な前奏曲です。


『さまよえるオランダ人』序曲
ホルンが響く"呪いの動機"は締まり良く入り、鬱に流れます。ゼンタの"救済の動機"は静かに奏され、対話をする様ですね。曲が混沌としながらコーダは"救済の動機"で鎮まります。とは言え、抑えの効いた序曲の印象です。


『トリスタンとイゾルデ』第1幕への前奏曲・愛の死
前奏曲」のトリスタン和声が現れる冒頭の"憧れの動機"は間を作りながらもクール、"愛のまなざしの動機"は徐々にくるおしさを増しながら大きな波となりますが、揺さぶりはなくスッと冒頭の動機に寝ります。緩やかで冷めた前奏曲になっています。

愛の死」では"愛の死の動機"で静かに入り、"愛のまなざしの動機"の変奏で徐々に上げて行きます。ラストに静かに"憧れの動機"を見せます。愛の濃厚さ気高く表す感じです。


『タンホイザー』序曲
冒頭の"巡礼の動機"は緩やかに光を感じます。そのまま大きく盛り上げて"バッカナールの動機"を劇的に、巡礼動機を挟んで"ヴェーヌスの動機"は陽気に現れますね。例によってクールなコントラストですね。動機を絡ませ山場は激しさを見せて、ラストは落ち着いた広がりですね。落ち着いた構成のタンホイザーです。



楽曲構成に忠実さを感じ、興奮を排したクールなワーグナーの序曲・前奏曲になっていますね。揺さぶりは少なく、唸らせる様な流れは避けている感じです。

序曲・前奏曲自体で勝負と言うよりも、あくまでも全曲への導入をする印象です。




② Andrés Orozco-Estrada
Frankfurt Radio Symphony


Overtures & Preludes


『さまよえるオランダ人』序曲
"呪いの動機"は華々しく激しく、この曲らしさを感じます。"救済の動機"では鬱的なゼンタを緩やかに表してコントラストが良いですね。その後も荒々しさを表に出して、コーダの"救済の動機"で心の鎮まりを見せます。ストーリー性を強調する様な序曲です。


『ローエングリン』第1幕への前奏曲
澄んだ天上の音色から"聖杯の動機"は細い弦音でやや速めの繊細さです。木管が入ると落ち着いた音色となってきます。さらに金管が入る事で重心を下げて、山場は雄大に奏でます。まるで天上界から降臨するかの様です。速めのテンポ設定と楽器編成を生かして、名曲の美しい流れに磨きをかけていますね。


『トリスタンとイゾルデ』第1幕への前奏曲
入りの"憧れの動機"から大きくスローにアゴーギクを振っています。そこから"愛のまなざしの動機"がチェロで緩やかに入ると、感情移入の強い流れで二人の絡み合う情感が伝わる様です。高みに登った二人の感情が最後は見つめ合いながら離れる様におさまります。ストーリー的で情熱溢れる愛の前奏曲になっていますね。


『トリスタンとイゾルデ』イゾルデの愛の死
"愛の死の動機"はゆっくりと光がさす様に、そして"愛のまなざしの動機"変奏を繰り返しながら感情を高めて山場は劇的です。静かに死を迎える様に音をまとめるのも上手いです。イゾルデの愛が溢れる「愛の死」で、思わずグッときます。


『パルジファル』第1幕への前奏曲
"聖餐の動機"は穏やかで緩やかな光の様です。一回目の全休符後は哀しみに色を変え、二回の全休符後の"聖杯の動機"は堂々と鳴り響きコントラストが見事ですね。"信仰の動機"は緩やかに大きく、静かな中から現れます。アゴーギクを排したスロー静の中に表情のある前奏曲になっていますね。後半やや中だるみ感があるのが少し残念です。


『タンホイザー』序曲
"巡礼の動機"は澄んだ哀愁の音色を感じます。"バッカナールの動機"・"ヴェーヌス"の動機は派手な鳴りで色合いを濃く奏します。山場は速目に刺激を与えて、ラストはもちろん壮大そのものです。本編並みに激しい流れになっていますね。


『リエンツィ』序曲
殆ど序曲でしか聴くことのない歌劇ですね。導入部の管楽器の動機は暗く落ち着き、リエンツィの祈りで広げる様に美しい流れを作ります。雄叫びでは大きく鳴らして流れに変化を付けています。その後もメリハリ主体で、この曲を派手に飾り立てていますね。



アゴーギクとディナーミクによる色付けがマッチしたメリハリのあるワーグナーの序奏・前奏曲になっています。

トリスタンとイゾルデ「愛の死」は気持ちが入ってしまいますし、ローエングリンの第1幕前奏曲は素晴らしい演奏です。エストラーダ侮れず!! と言った感じですね。




クールなワールト、濃厚なエストラーダと言うとても対照的な二枚ですね。ストーリーをイメージしながらゆったり聴くならワールト。感情移入しながらメリハリを楽しむならエストラーダでしょう。

ワールトのワグナーと言うとデ・ヴリーガー編曲の管弦楽版"指環"が知られる訳ですが、個人的には以前インプレしたジョナサン・ダーリントンの"ドレスラー編曲版"も侮れずだと思います。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アンドリュー・デイヴィス指揮 All英国セットで聴く エドワード・エルガー(Edward Elgar) の「The Music Makers / The Spirit of England」


エドワード・エルガー
(Edward Elgar, 1857/6/2 - 1934/2/23)
イングランドの作曲家エルガーですが、知っているのはエニグマ変奏曲と威風堂々(第一番)くらい。このブログでインプレもチェロ協奏曲だけですね。知っている様で知らない英国人音楽家の一人です。

ブリテンもそうですが、楽風からこのブログの現代音楽家リストに入れていません。年代的には近現代音楽家なのですが。

 ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


The Music Makers / The Spirit of England
前回インプレで派手な合唱曲を聴いたので、ふとこのアルバムがある事を思い出しました。二曲ともに独唱を含めた合唱曲です。

アンドリュー・デイヴィス(Andrew Davis)指揮、BBC Symphony Chorus and Orchestra、そして歌手陣もレーベルも全て英国セットでの演奏です。






The Music Makers, Op. 69 (1912年)
内容は個性的で自曲の引用、分かりませんがw、を多く使っています。Testは詩人オショーネシーの「Ode」、芸術家を称える詩、です。ソプラノはサラ・コノリー(Dame Sarah Connolly)になります。
メロディアスなロマン派的な序奏から入り、合唱曲は聖歌風から情熱のフォルテに、派手な流れを主流にして雰囲気は勇壮な中に暗い印象を受けますね。#6 partでsopが芸術家を緩徐に、そして合唱と合わせて大きく表現します。ここが山場ですね。全体通して大きなロマン派的合唱曲です。


The Spirit of England, Op. 80 (1915-17年)
第一次大戦中に作られた曲で「イングランドの精神」というのがエルガーらしいと思ってしまうタイトルですね。Textはバイニョンから使っていて勇壮、テノールはアンドリュー・ステープルズ(Andrew Staples)です。
導入部から明るく派手ですね。そしていきなりテノールが入ってきます。歌詞も'栄光の死'などと、それらしい流れです。勇壮ですが、明るく朗々とした印象が強く、テノールの伸びある歌声がピッタリですね。全体的には優しさと緩徐の印象もありバランスが良い合唱曲になっています。



ロマン派的な二曲で、曲の背景は異なるのですがエルガーらしく心地よさがあります。二曲共に大きな合唱曲で、プロムスで聴いたら盛り上がる気がします。個人的には一曲目の方が好みです。

ライナーノートには英文の詩があるので、見ながら聴くのをオススメします。記載は主文だけで、歌には反復があり不明様ではありますがw



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





リッカルド・ムーティ&シカゴ響 の "ショスタコーヴィチ/ミケランジェロの詩による組曲"、"シェーンベルク/コル・ニドライ" という迫力カップリングCD


Kol Nidre
Suite on Verses of Michelangelo Buonarroti
メインは『ミケランジェロの詩による組曲』ですね。実は素晴らしいシェーンベルクの『コル・ニドライ』が一曲目にこっそり置かれています。ムーティならではの見事な選曲でしょうか。







コル・ニドライ, Op. 39 (1938年)
アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874-1951)

シェーンベルク米国亡命後の晩年作品ですね。楽風的には調性回帰や新古典主義風味の時代になり、最晩年に多く手がける事になる合唱曲です。"コル・ニドライ"はユダヤ教の典礼歌(→Wikipedia)を元にしていて、合唱だけでなく語り手(Alberto Mizrahi)が入ります。

幽玄さはバルトーク風、バレエ音楽的な要素はストラヴィンスキー風、そんな印象が初めに浮かびました。そこに"グレの歌"のシュプレッヒゲザングの様な語り手が入ります。合唱が入るとオラトリオの様です。
ショスタコーヴィチのオマケで付けられたのが残念なくらい素晴らしいです。ムーティが得意そうなのも好演の理由でしょうね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ギーレンのLive録音です。これも素晴らしい!!
  なぜか初期作品の"グレの歌"を思わせます。





ミケランジェロの詩による組曲, Op. 145a (1974年)
ドミトリ・ショスタコーヴィチ (Dmitrii Shostakovich, 1906-1975)

ショスタコーヴィチが亡くなる一年前の曲です。第15番(得意とした交響曲と弦楽四重奏曲)は澄んだ印象さえ受けるわけですが、この合唱曲ではどうでしょう。バスはイルダール・アブドラザコフ(Ildar Abdrazakov)です。ちなみに作品番号についている"a"はバス/管弦楽伴奏版ですね。(オリジナルはバス/ピアノ版)

11パートの楽曲です。第一印象は重厚なバスを前面に押し出した、ショスタコーヴィチらしからぬ旋律です。独特のショスタコ節は影を潜め、低音弦の響く#1パートの印象は強烈です。
その後もバスと管弦楽が沈みながら、時に細い光を見つける様に進みます。暗さにおどろおどろしさは無く、研ぎ澄まされた流れに感じますね。今一つその個性が好みにならないショスタコーヴィチですが、晩年のこの迫力は楽しめますね。アブドラザコフのバスも、ムーティ/シカゴ響もピッタリです。



強烈な威圧感の二曲が並びました。どちらも新古典主義的ではありますが個性的です。派手なオラトリオ的なシェーンベルク、重厚リート的なショスタコーヴィチ、両者強力ですね。

ムーティも見事で、合唱・声楽曲が好きな方にはオススメの一枚になります!!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2CELLOS の ルカ・スーリッチ(Luka Sulic) がチェロの室内楽に編曲した ヴィヴァルディ『四季』


ルカ・スーリッチ
(Luka Šulić, 1987/8/25 - )
人気チェロ・デュオの2CELLOSの一人、旧ユーゴ出身でYouTubeからビッグネームになった今の時代の音楽家ですね。チェリストの父親を持ち ザグレブ、ウィーンから英王立音楽アカデミーで学んでいます。

2CELLOSはポップなスタイルからヒットしたので、本来なら偏屈な視野の自分としては範疇外。でも一度聴いたらバックボーンにジョヴァンニ・ソッリマ*やマリオ・ブルネロを感じました。実は2012年のコンサートにも行っていますw
それ以来、気になってはいました。

*ソッリマの今夏の100チェロコンサートに行けなかったのは残念です


四季 (The four seasons)
アントニオ・ヴィヴァルディ (Antonio Vivaldi)
全12曲のOp.8ヴァイオリン協奏曲集の#1-#4、今更この曲の説明もないと思います。このブログ、と言うか個人的にも今は殆ど聴く事はなくなりましたが、いずれにしろイ・ムジチの印象でしょうか。

それをスーリッチがvnパートをvcに入れ替え、室内楽パートも自ら編曲しているとの事、そこがポイントで手にした訳ですね。現代のチェロ演奏を見せるスーリッチの古典音楽への方向性が楽しみです。
演奏は、ルイジ・ピオヴァーノ指揮、サンタ・チェチーリア・アカデミア弦楽合奏団です。






La Primavera
最も知られたアレグロではメリハリの強い派手な流れを作ります。チェロも技巧の見せつけパートになっていますね。少なくとも優美や優雅ではありません。ラルゴはチェロの音色を生かした落ち着き、アレグロは勿論回帰です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  1stMov.アレグロのLiveですが、本CDに比べ平凡な演奏になっていて残念!!
  やはり聴衆に配慮しているのでしょうか…



L'Estate
揺さぶりによる表情付けが明確で、vcパートの激しさは技巧的に見せて2CELLOS風になっていますね。"夏"が一番その傾向が強いでしょう。


L'Autunno
有名なアレグロは速くて派手ですね。ここでも技巧的な振りが大きく、落ち着きがないと感じるかもしれません。でも全体としてそういう編曲だという事でしょう。アダージョではスローでのコントラストを大きくつけていますね。3rdMov.のアレグロはチェロを生かし豪華円舞曲風です。


L'Inverno
アレグロは不安定な音の配分から入ってくる現代風の面白さがありますね。それまでの3パートにはない展開です。ラルゴも色濃い流れです。



予想通り2CELLOSを思わせる出し入れの強い"四季"になっていますね。洒脱や優美とは異なる、彫りの深い濃厚激情な流れです。その中で四つのパートのキャラクターを見事に変えています。そこは予想を超えた楽しさでした。

来年3月にはこの"四季"でクラシカル・ミュージック オンリーの来日を果たす予定だそうですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





素晴らしい晩年のステンハンマル(Wilhelm Stenhammar)の「Sången (The Song), symphonic cantata 他」を鉄板のネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ響で聴きましょう


ヴィルヘルム・ステーンハンマル
(Wilhelm Stenhammar, 1871/2/7 - 1927/11/20)
指揮者と作曲家で知られるスウェーデンを代表する音楽家ですね。以前も書きましたが、楽風は1910年を境としてドイツ後期ロマン派風から北欧らしい風景感のある構成に変化しています。まだ欧州前衛が生まれる前ですから技法的な進歩性はないのですが、独特の音の広がりはこの時代の北欧系作曲家の流れですね。

 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


Suite from Romeo och Julia・Sången・他
BISレーベルのネーメ・ヤルヴィ(Neeme Järvi)/エーテボリ交響楽団(Gothenburg Symphony)の録音は1982年のステンハンマルから始まっているそうです。このアルバムが2018年ですから長いですねぇ。

エーテボリ響はN.ヤルヴィが22年間主席指揮者として鍛え上げたオケで、その昔はステンハンマルも15年に渡り主席指揮者を努めていましたね。

本アルバムは後期オケ作品で、メインは4曲目の "Sången (The Song)" ですね。4人の声楽ソリストと混声合唱団・少年少女合唱団、そして大編成オケという大きな構成のカンタータです。もう一曲は最後の作品番号作品である"ロメオとジュリエット:組曲"でしょう。






Suite from Romeo och Julia, Op. 45 (1922年)
北欧の冷たく澄んだ空気の様な流れで、ソロパートには舞曲の様な民族音楽和声を感じますね。そのコントラストがとても心地よい曲で、まさに晩年のステンハンマルらしさを楽しめます。確かに大きく括れば後期ロマン派の派生でしょうね。


Reverenza, (1911–13年)
6'ほどの小曲です。メヌエットやスケルツォを思わせる様な流れに微妙な調性感を入れています。情感も強めですね。表題曲的で、単独曲と言うよりも組曲の一部の様な印象です。


Two Sentimental Romances, Op. 28 (1910年)
ヴァイオリン協奏曲になりますね。ちょうど楽風変化の時に当たる作品です。まだ、後期ほど北欧色は強くありません。vnの優しい旋律も明確で、後期ロマン派と言うよりもロマン派的に聞こえるかもしれませんね。タイトル通りかも。


Sången (The Song), symphonic cantata, Op. 44 (1921年)
二部構成のカンタータです。textは国や自然、そしてそこからの様々な歌(The Song)を聞くと言った内容です。
激しい歌唱、荒波の様なオケ、厚い合唱団の歌声、濃厚な30'が楽しめます。楽風は複雑化していて対位法からポリフォニーの様な折り重なる流れが主流となっていますね。他のステンハンマルの曲とは一味違う劇的な厚みが素晴らしい一曲ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ブロムシュテットの指揮、スウェーデン放送響の演奏です。
  ヤルヴィの重厚さに対して、こちらは先鋭さですね。




やっぱり晩年最後の二曲が素晴らしく、20世紀前半のスカンジナビア音楽家独特の澄んだ空気感と、複雑で厚みあるカンタータのコントラストを聴かせてくれます。

"組曲"で感じる北欧の澄んだ空気は、音の跳躍が無く ターン音階の様な旋律構成がその要因の一つでしょう。一方コンプレックスな"カンタータ"では父ヤルヴィらしい出し入れが味わえますね。そんなステンハンマルを楽しめる好アルバム、オススメです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





軽音楽か洒落たBGMかの様な、ヴィヴィ・ヴァシレヴァ(Vivi Vassileva) の パーカッションアルバム『SINGIN' RHYTHM』


Vivi Vassileva | SINGIN' RHYTHM
ヴィヴィ・ヴァシレヴァ(1994-)はライナーノートによればドイツ生まれ、母はピアニストで父と兄妹はヴァイオリニスト 自らもヴァイオリンからパーカッションに移行したそうです。パーカッションと言ってもマリンバの様な鍵盤打楽器になるのは、メロディーを演じたいという本人の希望があるからの様ですね。

"SINGIN' RHYTHM"は、7人の音楽家の打楽器作品を集めたアルバムです。演奏は自ら若手で編成した "Vivi Vassileva Quartet" (pf, wb, perc.x2, 本人)に、ゲストの若手ブラジル人ギタリスト, ルカス・カンパラ・ディニス(Lucas Campara Diniz)が入っていますが、ソロやでデュオ曲も多いですね。

新しい気配・流れを感じる レーベル/ジャケ買いの一枚ですが…







期待したアルファ・レーベルらしい20代若手新進気鋭の斬新な音楽ではありません。もちろん前衛でもなければクラシックでもジャズでもアンビエントでもありませんね。(後日記:曲別インプレは削除しました)

軽音楽・BGMが好きな方向きでしょうか。ビシッと女性パーカッショニストで現代音楽をという方には「エヴェリン・グレニー / Veni, Veni Emmanuel」がオススメですね。



テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





マイルス・デイヴィスの『ラバーバンド Rubberband』と そのオリジナル・セッション『The Last Word』


Rubberband
(Miles Davis, 1926/5/26 - 1991/9/28)
以前から存在は知られていたラバーバンドが発売になりましたね。でも これには編集前のオリジナルが存在し、その『The Last Word』が流出した事があります。その中で "Maze", "See I See", "Rubberband" の三曲がラップしています。bootleg盤の "Black Album" にも入っていましたね。

今回はそんな『The Last Word』にも入っているオリジナル・セッション三曲で、違いをインプレしようと思います。

"Maze" や "Carnival", "Wrinkle" などはbootleg盤のライヴでも多々取り上げられて、一部はCD "TuTu Delux Edition" にも入っていますね。


マイルス・デイヴィスが生きた時代と
若い頃はM.Davisの大ファン、特に電化後、でした。リアルタイムで驚いたのはやはり1970年の "Bitches Brew" ですね。当時は高価なレコードでした。

来日コンサートは三回行っています。忘れられないのは1981年淀橋浄水場跡地でのライヴ。復活直後で体調の優れないマイルスに寄り添ってフォスターが出てきたを思い出します。まだ小さかった娘と一緒に芝生で楽しめた1988年ライブアンダーザスカイ、ベストは学生時代でマイルスの活動休止前1975年(確か2月)の新宿厚生年金会館でしょう。荒っぽかったこの日の方がバランスの良い名盤 "アガルタ", "パンゲア" よりマイルスらしいと思うのは自分だけでしょうか。(この年の録音は他にも有ってみんなHighになっています)






Maze
今回リリースは、オリジナル冒頭約2'のハイテンポのパートをカットし、ファンク色がかなり濃くよりポップなパートからスタートしています。その他サックスの絡むパートのカットもあり、大幅に短縮していますね。
オリジナル スタートのスピード感から、テンポダウンしてファンクになる変化がマイルス・バンドの様な… 演奏自体は極端な変更は感じられませんが楽曲構成はかなり異なります。


See I See
ここでもオリジナルと入りが異なります。冒頭30"のシンセのパートをカットしてベースの刻むリズムからの入りにしていますね。それによって曲のイメージが変わる様な変化はないでしょう。でもコンサートでは効果的と思えるバラードの様なプロローグは無くなりました。ラストもオリジナルではマイルスのソロで終わりますが、カットされてフェードアウトしています。


Rubberband
ここでも入りのボコーダーの様なベロベロベーが10"ほどがカットされて、それがラストに来ています。オリジナルの方が取って付けた様な不自然さを感じるので、これが本当のヴァージョンかも。
随所のマイルスの"ベロベロベー"は残されていますね。(笑) 他には途中割込むシンセのパートが少し異なるでしょうか、そしてギターパートは逆にカットされいてた部分を復活させている様です。

ちなみにLiveでは'85のチューリッヒで演奏が残っています。ベースの刻むリズムとマイルスのフレーズはそのままですが、ベロベロベーはありませんね。途中のシンセのパートからの長いギターも再現されますね。ハードな演奏になってはいますが、演奏時間も今回リリースと同じくらい。ラストはカットの可能性も。



まず演奏自体に大きく手を入れていないのは好感が持てました。代わりに一部カット再構成が明確です。セッションでも基本はライヴの構成感を持たせたのがオリジナルとすれば、ワーナー的にポップにまとめたのが今回のリリースと言うイメージでしょうか。

今やマイルスの音源は セッション中の全録音や、テープ音源の様なLive、等々果てし無いほどリリースされてしまいました。全貌が味わえるのは嬉しいですが マイルスはどう思っているでしょう、などと考えてしまうのは ジジイの懐古的感傷ですねw



テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





イアン・ボストリッジ 二回目の録音 シューベルト「冬の旅」ピアノは現代音楽家の トーマス・アデス


イアン・ボストリッジ Ian Bostridge
"冬の旅"に関する書籍も出していたり、同曲ツアーをしたり、ハンス・ツェンダー編曲オケ版も演じたりと、現代の名リート歌い手でスペシャリストの一人でしょうか。2枚目のリリースですね。

来日コンサートは過去二回、ブリテンの「戦争レクイエム」と「イリュミナシオン」に行きましたが、後者は良かった記憶があります。本年の「冬の旅」来日には行っていませんw

ピアノのトーマス・アデスも現代音楽をメインとするこのブログでは注目です。イギリス人現代音楽家で、過去インプレもしてあります。楽風も前衛ではなくブリテンの再来と言われていて、ピアニストとしても活躍しているので今回の起用も自然なのかもしれません。



冬の旅 Winterreise, Op.89 D911
今更の今更ですが、ストーリーは以下ですねw
シューベルト『冬の旅』は、川が凍る冬の寒さの中、①裕福な女性に振られた男性が、失恋で惨めな旅に向かう ②前半は元の恋人への未練 ③後半は死への旅路 ④最後は唐突なライアー弾きとの出会い

もう何十年も聴いていないと思います。印象に残るのは、クールな表現と寄り添うpfの「ディスカウ/ムーア(1971:DG)盤」、表情のあるメゾソプラノに色付けpfの「ファスベンダー /ライマン(1988:EMI)盤」ですね。






序曲となる"1. おやすみ"での印象は、ボストリッジのテノールに艶と抑揚表現がある事でしょうか。アデスのpfも淡々とした繊細さの中に緩やかなアゴーギクを感じますね。"2. 風見の旗"ではpfが対位的な立場を奏でる感じになりますね。歌詞に合った流れを作っている感じです。

"4. 氷結"では速めの流れに乗ってpfと気持ちの高ぶりを込めていますね。そして"5. 菩提樹"ではまずpfに気持ちが入って出て来ます。そこに思い出を語る様にテノールが続きます。甘美な優しさではありません。続く"6. 溢れる涙"も同じ流れを引き継いでいます。ここで歌詞に同期した感情表現を明確にしている事がはっきりします。

"8. 回想"は揺さぶりがとても強いです。"11. 春の夢"では美しい夢をメヌエットの様に表現し、現実をpf共に強烈に演じ、アゴーギクを交えたコントラストを付けています。"13. 郵便馬車"は軽妙にテンポを上げ、"14. 霜おく頭"ではスローに落として死を望むコントラスト付けが明確ですね。

"21. 宿屋"の墓場のシーンはスローで静、抑揚を緩やかに付けて鎮む気持ちをはっきりとさせています。ラストのpfは一般とは逆のクレシェンドですね。"22. 空元気"は予想通り、明るく明瞭感強い流れを作っています。ここまでで唯一明るさが歌われますね。
ラストの"24. 辻音楽師"では老人の回すライアーの音色を細い音色をpfが象徴的に奏で、テノールは状況を語る様に歌います。



淡々とした流れに秘める気持ちではなく、歌詞の内容に沿って気持ちを込めて抑揚強く歌う方向ですね。pfも単に寄り添うだけではなく、主張がありますね。 情感濃い「冬の旅」です。

個人的には前者の表現の方が好みではありますが、シンプルな曲なのでボストリッジの様な色付けの差別化で楽しめますね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





素晴らしきアレクサンドル・タローの世界、シャンソン歌手『バルバラ』へのトリビュート・アルバム


アレクサンドル・タロー
(Alexandre Tharaud, 1968/12/9 -)
日本でもお馴染みのフランス人ピアニストですね。個人的にはラヴェルのピアノ曲全集、まだインプレしていません、がお気に入りです。フランス印象派的な音は、まさにフランス音楽にピッタリです。
何故かフランス音楽はフランス人の演奏家・指揮者が、合う気がします。


Barbara
ピアニストであるA.タローがプロデュースした、伝説のフランスのシャンソン歌手・作詞家・作曲家バルバラ(Barbara, 1930/6/9 - 1997/11/25) 没後20年記念のトリビュート・アルバムですね。
多彩なゲスト(歌手・俳優・演奏)、そしてタローの編曲による情感豊かなアルバムです。タローのピアノやアコーディオン以外にも様々なパターンで聴かせてくれます。ルノー・カピュソン(vn)他の顔ぶれですが、個別表記はここでは割愛です。






CD 1 [ver. 唄と伴奏]
ドミニクAがピアノと弦楽四重奏をバックに歌う "2.Cet Enfant-la" のしっとりとした哀愁、"3.美しい9月" の ジョルダナの可愛い歌声と繊細なpfタッチ、ベースとアコーディオンをバックにジュリエットが歌う "4.私の恋人たち" の洒脱さ、表情豊かなバリエーションは歌手の個性と演奏のバリエーションを変化させてこその楽しさでしょう。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  "3.美しい9月"のレコーディングシーン(多分)でしょう。グッときます


ティム・ダップが歌う "8.ピエール" などは1970年代のフランス映画の様ですね。この洒脱さがクラシックも含めてフランス音楽の元にある様な気がします。


CD 2 [ver. インストルメント]
ジュリエット・ビノシュのしっとりとした唯一の語り "1.私の劇場" はフランス語がわからないのが残念です。タローのpfソロが楽しめる三曲 "2.Valse de Frantz", "6.もう何もない", "8.私は恋を殺した" はやっぱり素晴らしいですね。そしてタローのアコーディオンとクラリネットの合奏曲。いずれもシックな音色の構成でCD1とはまた違った味わいが楽しめます。タロー色が濃厚ですね。



これがシャンソンかどうか、これならバルバラ本人で聴いた方が、と言った事が脳裏に浮かぶ人がいるかもしれません。
しかし、シャンソンをベースにアルバム全体を通して伝わるフランス音楽の洒脱さが嬉しいですね。常に優しく寄り添う様なタローのpf。そのpfやアコーディオンと唄のセットがもっと多くても良かった気がします。

上質なBGMとしても、部屋でゆっくりと聴くにも、素晴らしい一枚でオススメです!!

フランス音楽、というよりもアレクサンドル・タローの世界かもしれませんね。



テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。


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