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ピエール・ブーレーズ「主なき槌」と ブーレーズに捧ぐ フィリップ・マヌリ「B-パルティータ」新旧前衛現代音楽

興味深い二曲、ですがライナーノートを見ても そのコンセプトらしき内容が見当たらない不思議なアルバムです。


Pierre Boulez »Le Marteau sans maître« | Philippe Manoury »B-Partita«
前衛三羽ガラスの一人で、IRCAM創設他 現代音楽界に多大な影響力を最後まで及ぼしたブーレーズ。そして現在の仏現代音楽界を代表するマヌリ。室内楽ですが、前者は歌曲であり、後者はエレクトロニクスが入ります。

どう見ても何らかのコンセプトがありそうな二作曲家の組み合わせ、ライナーノートを見てもマヌリの曲がブーレーズの思い出に(in memoriam)書かれている事意外に記述は見つかりませんでした。

演奏はダニエル・カフカ(Daniel Kawka)指揮、アンサンブル・オルケストラル・コンタンポラン(Ensemble Orchestral Contemporain)です。1. にはメゾ・ソプラノのサロメ・アレール(Salomé Haller)が入ります。








ピエール・ブーレーズ
(Pierre Boulez, 1925-2016)
ブーレーズに関しては殆どインプレを残していません。シュトックハウゼン, ケージも同じですが、この前衛全盛期年代に関してはその内まとめてインプレできればと思い〼

■1. Le Marteau sans maître (1954)
 ブーレーズの代表曲の一つ「主なき槌」、シェーンベルクの "月に憑かれたピエロ" を元にしていて、構成も明らかに類型です。"管理された偶然性"になる前、セリエルに自由度を与えた時代、29歳の作品になりますね。
まずブーレーズらしいキラキラとした音色が感じられるのが嬉しいですね。音の跳躍と点描的なセリエルらしい楽曲ですから、そこが源流である無調の "ピエロ" との大きな違いです。パート毎にテンポが変化して行き、時にホモフォニー的に構成される事もあります。それでも変化に乏しく感じてしまい、それがセリエル系の問題だった事がよくわかります。
歌唱が入るのは3. 5. 6. 9.の4パート(全9パート)で、シュプレッヒゲザングで "ピエロ" を超える様な何かは見当たらないと思います。残念ながら今や化石化してしまったセリエルの幻影かもしれません。

ちなみに、ブーレーズ本人指揮CD、繊細切れ味のCBS盤、繊細マイルドなDG盤、に比べると、テンポはやや遅く鳴りが太い演奏になっていますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Ulrich Pöhl指揮, INSOMNIOの演奏です。シャープな流れですね




フィリップ・マヌリ
(Philippe Manoury, b. 1952)
度々の来日がありますが、直近コンサートでは2018年のサントリーホール・サマーフェスティバルですね。ポスト・セリエルからの王道欧エクスペリメンタリズム系で、IRCAMで習いMAXを使ったエレクトロニクスを駆使します。強音ポリフォニーや機能和声回帰と言った多様性も見せる様になっていますね。

■2. B-Partita (2016)
 2016年作品ですから、ブーレーズの亡くなった年の作品です。マヌリのパルティータというとvaとエレクトロニクス作品 "Partita I" を思い出しますね。その後、vnとエレクトロニクスの II. が作られて、その拡張版だそうです。タイトルの"B"はB-flatの事で、意図は'分身を消し去る様な印象'だと、言っています。よくわかりませんがw
反復・変装、ポリフォニー、等拍、即興的混沌、ノイズ、時に音が渦巻く空間音響系でもありますね。多様な構成で強弱出し入れが強いので、表情豊な変化を見せてくれます。中盤ではvnの超絶技巧を見せてヴァイオリン協奏曲の様相ですね。何でもありの多様性です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  パリのManifestes Ircam Festivalでの初レコーディングだそうです
  CDの方が刺激的な流れになっていて好みです




キラキラとした音はブーレーズがメシアンから受け継いでいる最大の特徴だといつもながら思います。残念ながら既に時代はセリエル系を過去の遺産としてしまったと再認識する事になりますが。

マヌリは今の時代の欧エクスペリメンタリズムらしい、セリエル禁止事項(反復や三度五度)や調性も交えた多様性になっていますね。目新しさに欠けるのは今や仕方のない事でしょう。

セリエル時代と今の前衛現代音楽の対比が明確に味わえる一枚になっています。



ブーレーズに興味がある方は次のCDセットいずれかを入手すると全貌を見通しやすいかもしれません。
BoulezCD.jpg


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ヘルムート・ラッヘンマン の「Gran Torso, Salut für Caudwell」前衛停滞1970年代作品



ヘルムート・ラッヘンマン (Helmut Lachenmann, b. 1935)
先日, 驚きの「さくら・さくら」をインプレした 欧エクスペリメンタリズム, ポスト構造主義(Post-Structuralism)のスーパー・ビッグネームですね。ラッヘンマンと言えば、一にも二にも、三にも? 特殊奏法となるわけですね。

ちなみに今の奥様はアロイス・コンタルスキーにも師事したピアニスト菅原幸子さんです。あまり関係ありませんがw ラッヘンマンは何やら新しい事を模索している感じもあるので最近また気になって来ました。

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Gran Torso, Salut für Caudwell
今回は、弦楽四重奏曲(Berner String Quartet)とギター・デュオ曲(g: Wilhelm Bruck & Walter Ross)、二曲の室内楽です。

いずれも古い1970年代のラッヘンマン作品で、前衛の衰退期になってからの作品となりますね。前衛三羽ガラス(シュトックハウゼン, ブーレーズ, ノーノ)から次の世代への移行、ラッヘンマンの楽風変化から見れば "Air" 以降でラッヘンマンらしさが発揮され始めた頃の作品と言う事なります。







1. Gran Torso (1971)
弦楽四重奏曲、ですが音楽ではなく新しい"音"です。ラッヘンマンらしい特殊奏法のノイズ系ですね。ピチカートの様な通常奏法も入るのですが、既にラッヘンマンさらしが際立ちます。とは言え 音は無調点描的でセリエルを感じさせ、それが1971年らしさかもしれませんね。"ギコギコ・ゴリゴリ・ピン"みたいなw
静の空間を強調する様な流れがもう出来上がっているのがわかりますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Améi Quartett による演奏です。特殊奏法がよくわかりますね


2. Salut für Caudwell (1977)
ギター2本の特殊奏法です。6年を経て、楽興の構成感が大きく変わっているのが面白いですね。等拍や反復, voiceと言った技法?が入って来て表情が着きました。点描的印象は残るものの、無表情なセリエル的印象では無くなっていますね。リズムに面白さが感じられますし、調性感のある旋律さえ存在します。ノイズ系に多様性の色合いが付き、時代の変化が感じられますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Gil Fesch と Nuno Pinto による演奏です



1970年代、欧州前衛停滞期のラッヘンマンの特殊奏法ノイズ系です。この時代の前衛実験音楽の雰囲気や方向性を味わえますね。

特殊奏法は現代音楽技法の標準の一つになったわけですが、普通の音楽ファンが聴くとやっぱり違和感でしょうかねぇ…w(特に一曲目などは)



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カイヤ・サーリアホ の「True Fire・Trans・Ciel d'hiver」現代管弦楽曲集



カイヤ・サーリアホ (Kaija Saariaho, b. 1952)
フィンランド現代音楽界のビッグネーム、サーリアホですね。このブログではお馴染みで、北欧にありながら欧エクスペリメンタリズム系の音楽家ですね。来日では物静かな大きなおばさん(失礼)と言った事を何回も書いているので割愛ですw

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True Fire・Trans・Ciel d'hiver
今回は2010年代の管弦楽曲三曲になりますね。声楽入り、小編成オケ、ハープ協奏曲、と言ったバリエーションがあるので楽しめそうです。

演奏はフィンランドのセット、ハンヌ・リントゥ指揮/フィンランド放送交響楽団になります。(ソリストは違いますが)







1. True Fire (2014) for baritone and orchestra
  I. Proposition I - II. River - III. Proposition II - IV. Lullaby - V. Farewell - VI. Proposition III
バス・バリトンはジェラルド・フィンリー(Gerald Finley)で、TEXTは米神秘主義者ラルフ・ワルド・エマーソン(Ralph Waldo Emerson)の ‘Spiritual Laws’ から使われています。

第一印象は現代オペラを感じますね。オケは無調の幽玄な流れになって、歌唱パートも極端な無調では無いにしても幽玄さが強く、バルトークの"青ひげ公の城"を思わせますね。オケはパートごとに下降音階やトリル・トレモロや反復と言ったパターンを変化させ、どの楽器も鬱で深淵な音色です。そして常に煌びやかさを残しているのが素晴らしいですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  1st mov. "Proposition I"。bass-baritone は Davóne Tines です


2. Ciel d'hiver (2013)
自身の作品 'Orion' の中間楽章 ‘Winter Sky’ のsmaller orchestra ver. です。名前を混同しない様にフランス語のタイトルにしたそうです。

得意の幽玄・鬱なダークさで、聴き様によってはドローン系にも感じる空間音響系ですね。いかにもサーリアホの作品と言ったイメージでしょうか。旋律らしき流れはあっても、主部や主題と言った構成感はありませんね。大きく聴くと反復・変装が基本になっている感じですが、それ以上に残響を含めて"響く音"の世界です。倍音的な唸りも感じますね。緩いクレシェンドで音厚が増して緊張感も高まります。最後はオルゴールか時を刻む時計の様な印象です。


3. Trans (2015) for harp and orchestra
  I. Fugitif - II. Vanité - III. Messager
サントリー芸術財団・他共同委嘱作品の「ハープ協奏曲」ですね。初演は2016年東京で、ハープは本CDと同じグザヴィエ・ドゥ・メストレ(Xavier de Maistre)でした。(オケは東京交響楽団) 日本の歳時記を参考にしているとも当時聞いた記憶がありますね。

2.Ciel d'hiver の延長上にある感じです。hpとシロフォン?(or ヴィブラフォン)のDialogueの様な透明感ある対比で始まります。そこに漂う緊張感と煌びやかな音色にまず惹かれますね。続く 対位法の様なhpのL/HとR/Hも面白いです。"II. Vanité" では箏奏の様な印象のhpも聴く事ができます。鬱・ダークよりも透明感のある深淵さを感じますね。part III. のラストは主部回帰の流れを作って終わります。



近年のサーリアホの充実した完成度の高さを味わえるアルバムになっていますね。

幽玄さを軸にした声楽と管弦楽の素晴らしさ、オススメの一枚です。




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カール・ニールセンの「交響曲 第1番 第2番」をトーマス ・ダウスゴー/シアトル響で

来日でも素晴らしいニールセンを聴かせてくれたダウスゴー、シアトル響とのニールセン・チクルスです。


カール・ニールセン
(Carl Nielsen, 1865/6/9 - 1931/10/3)
今更ですが、フィンランドのシベリウスと並び(同年生まれです)北欧音楽を高めたデンマークの音楽家ですね。年代から行くと後期ロマン派から近代音楽世代で、欧州で言えばマーラー(b. 1960)やR.シュトラウス(b. 1964)とほぼ同年代になります。

マーラーの様に機能和声を越えようとする方向性がある世代で、ニールセンも多調・転調や不協和音の様な志向がありますね。事実、交響曲ですと第6番などは調号が付られていませんし、第5番も殆どのパートで調号はありません。



交響曲 第1番 第2番
トーマス・ダウスゴー (シアトル交響楽団)
今回のポイントはニールセンを得意とするダウスゴーです。2019年から音楽監督を務めているシアトル響(Seattle Symphony)とのニールセン・チクルスからですね。

ダウスゴーは来日公演でも二回、2012年3月(第4番:不滅)と2015年5月(第3番)、ニールセンを聴いていますが、いずれも素晴らしかったです。







1. 交響曲第1番 ト短調 Op. 7
第一楽章第一主題は明瞭な鳴りと転調での情感変化でこのパートらしさを演出、第二主題も管楽器の音色で流れをキープしますね。展開部・再現部も主題の明瞭な鳴りを生かし、第二楽章アンダンテは濃厚な弦楽奏になっていますね。やや古い印象を感じるのはその為もありそうです。第三楽章主要主題は重厚さ、第一トリオのvnも濃厚な表現です。中間部hrは抑えていますね。第四楽章第一主題弦楽は力強く、第二主題もその流れに乗って進みます。コーダはあっさりかもしれません。
重厚さを主体とした流れが明瞭です。


2. 交響曲第2番 ロ短調「四つの気質」Op. 16
古代ギリシアのヒポクラテスの四体液説の副題があるのですが、標題音楽ではないと言われています。そこに触れる知見はありませんが。
第一楽章第一主題はここでもメリハリ強調、第二主題は美しさを残しながらも音の強さ、コデッタもインパクトを与えています。第二楽章は低音弦のリズムが印象的、素直でない舞踏曲らしさを上手く表現していますね。第三楽章主部は低重心の弦楽が効果的に美しく鳴り響き、木管で始まるトリオは抑えて澄んだ印象です。第四楽章は速め力感の流れで進み、パウゼからの静音に繋ぎます。この静音も素直ではなく澱んだ力感がありますね。
この曲らしい力強い音と表情が感じられますね。



ダウスゴーの強音力感の流れが印象的です。転調の表情変化よりも、そこを強く感じますね。調性感と力強いニールセンらしさですね。(曲自体に新鮮さは欠けると思います)

どうもニールセンを聴くと、すぐにお腹いっぱいになる気がしますw



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エリーザベト・クッフェラート(Elisabeth Kufferath) の『TWO』前衛の無伴奏ヴァイオリンとヴィオラ



TWO
エリーザベト・クッフェラート (vn, va: Elisabeth Kufferath)
クッフェラートはハンブルク生まれの女性ヴァイオリニスト/ヴィオリスト。テツラフ・クァルテットの創設期からのメンバーでもありますね。現代音楽を得意として、ハインツホリガーから称賛を受けています。また初演を多くこなし、ルツェルン音楽祭他から招聘を受けている様です。

今回のポイントは彼女ではなく、4人の前衛現代音楽家の興味深い企画です。

ヴァイオリン・ソロとヴィオラ・ソロの計8曲
約20年づつ離れた前衛現代音楽 4世代

彼女に献呈された2曲が含まれ、そしてエトヴェシュはB.A.ツィンマーマンに曲を捧げています。








ベルント・アロイス・ツィンマーマン
(Bernd Alois Zimmermann, 1918-1970)
前衛最盛期セリエル時代、当時の前衛を牛耳っていた三羽烏(シュトックハウゼン, ブーレーズ, ノーノ)陣営から批判の的となっていましたね。亡くなった後になるのが残念ですが、結果的には彼らが陥ったセリエルの暗闇に嵌まらず、今の時代の"多様性"前衛の魁として再評価されています。
このブログでは一押しの古典前衛現代音楽家の一人です。いつも書きますが、生まれるのが20年早かったですねェ…

■1. Sonata for Violin Solo (1951)
 1950年代はツィンマーマンの中期で、セリエルの方向性を見せます。ここでも調性に片足を置きながら、点描的な楽曲になっています。セリエルとは言っても幽玄な旋律感を軸にして、禁令の反復も執拗に入れていますね。それがツィンマーマンでしょう。
クッフェラートは強音強調の演奏でキレキレです。


■2. Sonata for Viola Solo (1955)
  “....an den Gesang eines Engels“
 ノイズやダブル・ストップ、グリッサンドが入り、ヴァイオリン・ソロよりも表情の彫りが深くなっています。旋律感は低くなり楽曲としては、こちらの方が俄然面白いです。二曲とも今の時代の無伴奏vn, va曲と言っても何の問題もなさそうですね。コンサートで聴きたいです。



トルステン・エンケ
(Thorsten Encke, b. 1966)
54歳(2020で)になるドイツの現代音楽家で、チェリスト, 指揮者でもあります。また室内アンサンブル"musica assoluta"の創設者であり、指揮者・音楽監督も兼ねているそうです。

■3. Outline for Violin Solo (2017)
 本ヴァイオリン・ソロ曲はクッフェラートに献呈されています。トリル・トレモロを軸にグリッサンドを混ぜていますね。上昇音階と下降音階を中心にして、無調でしょうが旋律感があって聴きやすいです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  クッフェラートの演奏姿が見られます



■4. Inner Voice for Viola Solo (2015)
 ここでわかるのは、3.もそうでしたがエンケは弦の高音部を使うパートを書くと言う事ですね。トリル・トレモロ、グリッサンドの構成も同じで、少し音数が減っている感じです。(こちらの方が2年古いですが)



ヨハネス X. シャハトナー
(Johannes X. Schachtner, b. 1985)
今回最も若い35歳(2020で)のドイツの現代音楽家で、指揮者でもあります。元はトランペットを習っていたそうですが、ミュンヘン音楽大で作曲を学んだそうです。
ヴァイオリン・ソロはバッハへのオマージュで、一部引用と"B-A-C-H"のモチーフ・コードを使っているそうです。よくあるパターンではありますが。

■5. Epitaph for Violin Solo (2007)
 22歳の時の作品ですか。単音強ピチカートと激しいボウイングと繊細な音色の組合せ、無調ですが途中民族和声も感じます。残念ながらバッハの引用はよくわかりません。個性は感じられず、21世紀に入って若い時の作品ならもっと何らかの冒険があってもいい様な…


■6. Patheia. Epilogue for Viola Solo (2015/17)
 クッフェラートに献呈されたヴィオラ・ソロ曲です。船の霧笛の様なロング・トーン、それがダブル・ストップで入り、クレシェンドして強音が現れます。旋律感は薄くなっていてノイズの様な弱音も現れます。強音vs静音の反復の緊張感が面白くこれは好きですね。



ペーテル・エトヴェシュ
(Peter Eötvös, b. 1944)
ハンガリーの現代音楽家/指揮者エトヴェシュ、76歳になるんですねェ。このブログではお馴染みのエトヴェシュですので、紹介は割愛ですw ちなみにエトヴェシュはケルンでツィンマーマンに師事していますね。

■7. Para Paloma for Violin Solo (2015)
 反復・変奏の旋律を軸にしています。点描的でツィンマーマンを思わせますね。


■8. Désaccord 2 for two Violas (2018)
  (In memoriam B.A. Zimmermann)
 B.A.ツィンマーマンに捧げられた2挺のヴィオラ曲でクッフェラートの多重録音です。激しいボウイング、トリル・トレモロ、反復・変奏、そして何より2vaの音の厚みですね。激しいやりとりが生かせているのも当然好印象です。一瞬バッハ? バロック? の調べ(引用でしょうか)が入ってくるのも効果的にツィンマーマンを象徴していますね。本アルバムで一番の聴きどころです



古い前衛のツインマーマンから、35歳の若手まで、似た様な多様性無伴奏曲が並びました。それによっていかにツィンマーマンが時代の流れを先行していたかがわかりますね。
B.A.ツィンマーマンのファン御用達アルバムです。

クッフェラートはやりすぎくらいの強気で強引なボウイングが印象的です。近年増えているYouTube系パターンですね。



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ミヒャエル・ペルツェル(Michael Pelzel) の「Gravity's Rainbow」今の欧エクスペリメンタリズム前衛音楽



ミヒャエル・ペルツェル (Michael Pelzel, 1978/3/20 - )
スイス生まれでドイツを活躍の場としている現代音楽家ですね。元はピアノ奏者でオルガン奏者へ鞍替え、作曲はルツェルンやバーゼル、他の音楽院で習っています。ドイツに渡ってG.F.ハースやW.リームに師事しています。

他にもT.ミュライユやB.フラー、H.ラッヘンマンと言ったビッグネームのマスタークラスでも学んでいますね。多いパターンですが各音楽賞を渡り歩いて今がある様です。ダルムシュタットでもセミナーを持つ処まで行っている様です。



Gravity's Rainbow
室内楽メインになりますが、"CLEX"などと言う新しい楽器へのチャレンジも含まれていて、デュオ, トリオ, クインテット, 室内楽, そして協奏曲まで幅広いヴァリエーションが楽しめます。

これでペルツェルの方向性は見える感じですね。演奏者は多岐にわたるので今回は割愛です。







1. Mysterious Anjuna Bell (2016)
  for ensemble and chamber orchestra
旋律ではなく"音"と"響"の前衛現代音楽です。特殊奏法よりもグリッサンドとトリル・トレモロを主体として、そこに打楽器が強烈なガッガ〜ンと入って来ます。弦と管は"キュルルル〜ン"と言った感じでしょう。後半でキラキラする打楽器音の背景音に、弦と管の下降音階の笑い声の様なグリッサンド音が入るのは面白いですね。シャリーノ風でしょうか。


2. Carnaticaphobia (2017)
  for percussion, piano and cello
pfは特殊奏法ですね。その打音が響く中にキラキラしたパーカッション、そしてキュルキュルと鳴らす下降グリッサンドのvcが入ります。エレクトロニクスも感じる様な…
一曲目をスリムにした楽曲です。同期した強音が現れたり、ポリフォニー的に絡んだりしますね。流れの変化はちゃんとあるのですが、全体印象は"どこかで聴いた様な前衛"です


3. Gravity's Rainbow (2016)
  for CLEX(contrabass clarinet extended) and orchestra
まず気になる"CLEX"とは電子拡張コントラバスクラリネットです。Clarinet Extendedの略で、超小型モーターとセンサーによってトーンホールを制御するそうです。

楽器の性格から予想がついてしまうのは困りますねw 重低ドローンの様な印象、静に現れるバスクラの音色、そんな空間です。バスクラは特殊奏法的な音色を出しますが、特殊奏法なのかは不明です。旋律と呼べるか微妙な音の並びで、フリー・インプロビゼーション的にもなって行きます。そこへまたもやキラキラのパーカッションとネコの様なグリッサンドが登場し、後半はポリフォニー的な流れも…新鮮さ不足ですねぇ。


4. "Alf"-Sonata (2014) for violin and horn
テープ(他のポップな音楽の録音)が入ります。何やら二人でvoiceも出してDialogueですね。ヴォイスと演奏の両方で対位的に戦います。これは面白いです!!

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Noëlle-Anne Darbellay, violin / Samuel Stoll, horn のLIVEです



5. Danse diabolique (2016)
  for winds, harp, organ, piano and percussion
"I. Introduction" は全体的にキラキラ音で始まり、最後までロングトーンの音を引っ張ります。"II. Danse diabolique" では、それを基本に重低音が入ってドローン的な印象が強くなります。即興的にもなったり変化はしますが…



旋律ではなく、楽器の"音"と"響"の前衛現代音楽です。いかにも欧エクスペリメンタリズム前衛音楽と言った風ですね。

面白いのですが、今や新しさを感じられません。静の中に"音"が現れるのは常套手段ですし、誰かの亜流的な感じが逃れられません。弦のグリッサンドはS.シャリーノが浮かびますね。



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エディット・カナ=ドゥ=シズィ(Edith Canat de Chizy) の管弦楽「Times」空間音響系現代音楽



エディット・カナ=ドゥ=シズィ
(Édith Canat de Chizy, 1950/3/26 - )
フランスのベテラン女性現代音楽家ですね。早くからエレクトロニクスを導入した事で知られていますね。ソルボンヌ大で音楽以外にも考古学や哲学も学んでいる様で、パリ音楽院ではアナリーゼや作曲をはじめ多くのジャンルで優秀な成績だったそうです。

エレクトロニクスと本人の楽器でもあるヴァイオリンをはじめとする弦楽を得意としてIRCAMにも楽曲提供していますね。来日経験もあります。



Times
大規模オーケストラ作品集になります。曲により指揮者とオケは代わりますが、山田和樹さん(1)と井上道義さん(3)が指揮者で入っていますね。







1. Times (2009)
代表作ですね。旋律はありますが主張は低く、鳴り響く"音"に軸足がありますから空間音響系でしょう。強音パートが多く、緊迫感のある打楽器・管楽器の音色が特徴的です。終盤に静音パートが来ますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


2. La Ligne d'Ombre (2004)
ノイズから入って来て、グリッサンドで音が広がり始めます。そして強音パートになると打楽器・管楽器が鳴らします。静の中の微音・弱音が主体になっていますね。音数は決して少ないわけではありませんが。


3. Yell (1989)
緊張感がありますね。静の空間が強調されていて、音も静音が中心的で幽玄さが感じられます。そこが前の二曲との違いですね。背景には微小な残響音が常に残されています。もちろん溢れる様な音の空間もやって来ます。
カナ=ドゥ=シズィの楽曲構成は短旋律の反復と単音ロングトーンが主体ですが、グリッサンドとトリル・トレモロがポイントになっている感じですね。


4. Alio (2002)
得意とする静の緊張感をベースとするパターンです。


5. Omen (2006)
無音に近い微音ノイズ(弦のトレモロでしょうか)から入ってくるのもパターンの一つですね。背景音のノイズは鍵盤打楽器のボウイングも使っているかもしれません。(間違っていたらゴメンなさい) clとperc.が音を主導して、緊迫感の中に音が散りばめられます。



基本は調性ですが旋律で構成されてはいません。空間音響系、張り詰めた"音"のサウンド・スケープですね。

好きなパターンですが、弱点は似たり寄ったりの危険性と少し古さを感じる事かも。一曲目などはクセナキスやヴァレーズが浮かびますね。



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