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ミャンマー民族音楽と米現代音楽の出会い『Bang on a Can Meets Kyaw Kyaw Naing』


チョー・チョー・ナイン
(Kyaw Kyaw Naing, 1964 - )
このblogでは大のご贔屓 米現代音楽組織Bang on a Can(以下BOAC)、その室内楽団Bang on a Can All Stars(以下BOAC-AS)については、既に十分に紹介済みです。ここではチョ・チョ・ナインとBOACの関係について紹介しておきましょう。

ミャンマーの民族音楽家のナインは、同民族楽器であるパット・ワイン(pat waing)やサイン・ワイン(saing waing)のプレイヤーでもあります。ナインと米国音楽との接点は1999年のUCLAでの体験から始まっている様です。ミャンマー民族音楽を米国で広げる為に活動しはじめたナインは、その後BOAC-ASメンバーであるE.ジポリンから声をかけられて、BOACとの共演が始まります。

2001年にはBOAC恒例のマラソン、そして2002年にはBOAC All Starsと共演していますね。2003年にはN.Y.でミャンマー民族音楽をダンサーも混じえて演奏して評価を受けています。以降 米現代音楽とのコラボやミャンマー音楽を展開し、N.Y.在住で活躍の様ですね。


Bang on a Can Meets Kyaw Kyaw Naing
2002年BOAC-ASと共演した本アルバムは、N.Y.タイムズからも好評を得ていますね。
楽曲はチョー・チョー・ナイン他ミャンマー音楽家の作品も入っていますが、経歴等の詳細は不明です。演奏にもBOAC-ASとナイン(pat waing 他)以外にミャンマー音楽家が民族楽器(si wa)で参加しています。ミャンマー色の強いBOACのアルバムですね。

2012年にBOAC-ASを退団した創設メンバー, エヴァン・ジポリン(Evan Ziporyn)の音楽指向性を色濃く反映している感じがします。






長くても8'に満たない全9曲を個別インプレする必要はないでしょうね。
東南アジア特有の民族和声の穏やかなメロディラインとリズム、それをBOAC-ASの西洋楽器とミャンマー民族楽器のコラボで奏される音楽です。展開はテンポアップやリズムの明確化で一昔前で言うフュージョン(ジャズ)系にもなり、チック・コリア(Return to Forever)などを思い浮かべます。アレンジャーのC.J.Millerの方向性もあるのかもしれませんね。
一曲目「Hsaing Kyaik De Maung」や「Improvisation」はそんな流れの代表で、特にナインの曲は西洋音楽との接点を意識して作られている感じがします。反復などは米現代音楽の方向性を感じますね。逆に「Ka Pya Chi」などは民族和声を強く感じます。その一方で「Japan Patsan」などは中華和声(よくある勘違いの日本?)で、ミャンマー人でも東洋和声の混乱がある事を伺わせる曲もありますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  "Kyi Nu Bwe" の2004年Live映像です。より抑揚が強くなっていますね。




一言で言って"Bang on a Canの民族和声音楽"です。何の違和感もありませんね。BOACの持つ一つの顔そのものと言った感じです。民族音楽指向という米現代音楽の楽しい一面ですね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

『MUSICA VIVA 29』で聴く 英現代音楽家 ハリソン・バートウィッスル、「マンチェスター楽派」の音楽


ハリソン・バートウィッスル
(Harrison Birtwistle, 1934/7/15 - )
英現代音楽ムーブメント「マンチェスター楽派」の1人ですね。英現代音楽界で、技巧性やポリテンポ等を取り入れた無調ベースの音楽です。とは言え、トータル・セリエルには方向性を合わせなかったので旋律や反復、そして調性感と言った聴きやすやは存在していますね。


MUSICA VIVA 29
先ずは「MUSICA VIVA」シリーズについてですが、以前ご案内しています。 ▶️ こちら

そのMusica Vivaから第29集はまるまる一枚、欧州前衛現代音楽としては少々異なる印象が強いバートウィッスルですね。協奏曲と管弦楽になります。

演奏は、ステファン・アスバリー(Stefan Asbury)指揮、バイエルン放送交響楽団(Bavarian RSO)、一曲目のpfはピエール=ロラン・エマール(Pierre-Laurent Aimard) です。






Responses. Sweet Disorder (2014) for piano and orchestra
30'弱の一楽章形式ピアノ協奏曲です。無調で明確な(心地よい)主題は存在しませんが、前衛・実験音楽ではありません。構成は旋律感があり調性音楽風です。pfとオケの関係は明らかに協奏的で、協調関係にあります。エマールらしい明確なpfの音もマッチしている感じです。主たる印象はハイテンポの緊迫感・緊張感で、それと無調の流れで前衛風に聴かせていると思いますね。
流れの変化は薄いですが、コンサートの前半で取り上げても盛り上るのではないでしょうか。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  世界初演(本CD)の練習シーンと本人のコメント入りです (演奏はもちろん同メンバーです)



Gawain's Journey (1991) for orchestra
作曲年代は大きく異なりますが、曲調は類似性が高いですね。こちらの方がより調性を感じる旋律感が強く、前衛の色合いが薄いです。強音の緊張感が占めるのは同じですね。
ドン・シャン的派手さが何処と無くヴァレーズを思い浮かべます。そんな感じです。




無調の衣で前衛を気取ってはいますが、基本はコンベンショナル。楽風変化は薄く緊迫感一本調子。と言ったら悪い印象に聞こえるかもしれません。でも、今の時代らしいクラシック音楽になるのかもしれませんね。

二曲目は20世紀の "前衛の停滞" 後作品なので、より調性回帰的な流れを感じますね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

響き渡る強鍵の4手ピアノ、リスト 4手ピアノのための『死の舞踏』と交響詩集 / Duo ツユキ&ローゼンボーム


TOTENTANZ piano 4 hands
リストをここで紹介する必要性はないと思いますので割愛ですね。
このアルバムに興味を惹かれたのはピアノ連弾で"死の舞踏"を弾くというパターンだからですね。そしてこの曲だけ、演奏者の2人による編曲版(それ以外はリスト編曲)です。その他の曲も耳馴染みの良い曲が4手ピアノ版で楽しめるのは興味深いですね。割とミーハー的かもしれませんが、それも楽しいということで。

Duo Tsuyuki and Rosenboom による2016年録音ですが、2009年にドイツ(ハノーファー音楽大在学中)結成され、日本を含む各国音楽コンクールでの受賞もあるそうです。露木智恵さんはリストの演奏で評価を受けている様ですね。






死の舞踏『怒りの日』によるパラフレーズ
打楽器の様な鍵盤の使い方、独特の"怒りの日"の旋律を生かすコントラストの強いピアノの鳴り、この曲の濃厚な印象を表現していますね。
ただDuo二人による編曲は装飾音が多く、"怒りの日" の音色が朗々と響き渡る この曲本来の心地よさが少し削られているのが残念ですね。4手強音パートは蠢く迫力よりも少しうるさい感じが強いかもしれません。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Live映像です。こちらの方が少し静音パートでの表情等が感じられますね。



交響詩 第6番「マゼッパ」
当然ながら技巧性を表に出していますね。ここでもお馴染みの主題をパワープレイで鳴らします。肩肘張ってガチ演奏の気配を前面に感じます。確かにスローパートはスローなのですが、流れにタッチの緩やかさや"間"が欲しい様な…


交響詩 第11番「フン族の戦争」
ここでもアゴーギク不足の様な強烈なパワーが強く、強烈な聴き疲れを感じます。静音パートはもちろん静音ですが、なぜか硬く感じます。コンサートで聴いたら、もっと違う印象があるのでしょうね。


交響詩 第3番「前奏曲」
楽曲が変わっても印象は同じなのは、このDuoの明確なキャラだからでしょう。楽曲自体の構成をインプレしてもそれはリストなので、"同上"という感じですね。



全体を通して息をもつかさぬ力感に貫かれています。その手の演奏を好む方には垂涎の演奏でしょう。強鍵と無表情、それがこのPiano Duoのキャラなのかもしれませんね。

これだと"死の舞踏"はアルナルド・コーエンのpf(オススメです!)、他は管弦楽版の方が楽しめると思ってしまうのが残念ですが。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ドイツの現代音楽家 ミヒャエル・クヴェル(Michael Quell) の『室内楽 第二集』を聴く


ミヒャエル・クヴェル
(Michael Quell, 1960 - )
フランクフルト生まれで学んだドイツ人現代音楽家ですね。作曲・音楽理論だけでなく哲学も学んでいています。楽器はクラシック・ギターも専攻していて、楽曲の中に微分音(microtone)ギター曲が入るのが特徴的ですね。現在はフルダ(Fulda)在住で作曲のかたわらアナリーゼ等音楽理論を教えているそうです。

また、その傍らで「多領域での作曲の機会と可能性のやりとり (Deal with the opportunities and possibilities of composition in interdisciplinary dialogue)」と言った学術活動にも力を入れている様で、理論家ですね。


Chamber Music・Vol. 2
デュオからアンサンブルまでの室内楽集になります。最近発売の第二集を先にインプレしようと思います。所謂(いわゆる)欧エクスペリメンタリズムの楽風です。

演奏はアンサンブル・アヴァンチュール(Ensemble Aventure)、ピアノは日本人の岡部亜希子さんですね、他ゲストメンバー(ギター)になります。






Dark Matter (2011)
  for oboe, clarinet (bass clarinet) and bassoon
静の空間に三つの木管が単音を並べます。特殊奏法も入って来ますね。倍音も検討されているかもしれません。混沌ポリフォニカルな旋律構成もあり、単音のロングトーンとの対比もありますね。後半に出てくるトリル・トレモロの対話も面白いです。空間音響系ではないのですが、空間を感じて興味深いです。


φαντασία – lass die Moleküle rasen (2016)
  for soprano and speaking pianist
タイトルはギリシャ語で "想像力" だそうです。Sopシュプレッヒゲザングですね。声を楽器として聴く様なイメージです。ピアニストも"speaking pianist"とある通りで、語りも入れて来ますw 単音アルペジオ主体ですが特殊奏法もある様ですね。


Meister Eckhart und Suhrawardī: der Klang der Schwinge des Gabriel – ḥikmat al-ishrāq (2017)
  for four microtonal guitars and piano
四つの微分音ギターとピアノ曲です。微分音の微妙な音のづれが奏でる美しさも存在する面白さから、速弾き即興ポリフォニカルな混沌、そしてトリル・トレモロの反復、と言った変化と構成感があります。
まぁ、ギターなどはフレットがあってもチョーキングすれば微分音になる訳ですから。


Staubaggregation (2017)
  for flute, double bass and piano
フルート、コントラバスのピアノトリオです。単音的な特殊奏法から入り、主は三つの楽器のdialogの様な構成です。時に興奮したり、冷めたりと表情を変えるのも面白いですね。


A Blurring Cloud – Geschöpfe der Fahrt (2012)
  for violin, guitar and piano
ヴァイオリン・ギターとのピアノトリオで、ここでも入りは三楽器の単音の並びです。一つ前の"Staubaggregation"より空間的静音パートが長く、その原型の様な印象ですね。一番面白いかも。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  アンサンブル・アヴァンチュール(Ensemble Aventure)の映像配信で、ピアノは岡部亜希子さんですね



String II – Graviton (2015/2016)
  for ensemble in nonet formation (flute, two clarinets / bass clarinet, bassoon, horn, violin, viola, violoncello, double bass)
ノネット(九重奏)ですね。ここでも特殊奏法の単音的な流れから入るのは同じです。楽器数が増えて、音数での混沌が広がっていますね。従ってフリージャズに近い即興ポリフォニーの印象が大きいです。少し古臭い印象かも…



基本は無調混沌ですが、単音の響き〜ポリフォニカルな混沌〜トリル・トレモロ反復、と言った楽曲構成が存在しますね。

楽曲を一つの流れにしない事で現代音楽が陥る変化の乏しさの罠を避けている様な感じです。楽曲自体は少し古いポスト・セリエル時代風ですね。



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マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 70CDを聴き比べてみました [#4 / CD:61-70]

今年(2019年)逝去したギーレン追悼アルバムが出たのを機に、大植さんとボンガルツの超個性派2CDも含めて10CDほど聴いてみました。これで70CDになりますね。まだまだストックが…


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在 #4回 70CD
 #0:4CD バルビローリ聴き比べ
バルビローリ[x4]
 #1:16CD
バーンスタイン[x2 ★☆], アバド[x4 ★☆], カラヤン[x2 (★)☆], ハイティンク[x2 ★], ゲルギエフ, 小澤征爾, 井上道義[x2 ☆], プレートル[㊟], ワールト
 #2:20CD
ヴァンスカ, ダーリントン[☆], ラトル[x2 ☆], P.ヤルヴィ[☆], N.ヤルヴィ[x2 ㊟], ジークハルト, セーゲルスタム, パッパーノ, ザンダー, ショルティ[☆], ヴィト, シェルヘン[㊟], ズヴェーデン, ノット[☆], J.サイモン, アブラヴァネル, パク・ヨンミン
 #3:20CD
テンシュテット[x4 ☆], シャイー[x2], ヤンソンス[x2], MTトーマス, ハーディング, 朝比奈隆[x2 ㊟], スヴェトラーノフ[x2 ㊟], セル[x2], バルシャイ, 井上喜惟, 山田和樹, クルレンツィス[★]
 #4:10CD 本投稿
ギーレン[x3 ☆], シノーポリ, メータ, サロネン[☆], サラステ, ヤング, 大植英次[㊟], ボンガルツ[㊟]


ミヒャエル・ギーレン, Michael Gielen (4録音 3CD)

本年3月8日に亡くなった 緩急が個性的な人気指揮者ギーレン。今回追悼アルバム "In memoriam" が発売され、1971年と2013年の録音が収録されましたね。既発の2CDと合わせて4録音(3CD)を聴いてみようと思います。

特徴的なのは第二楽章をスケルツォからアンダンテへ入替(2013年)、そして演奏時間の長大化という明確な変化ですね。

ちなみに2013年録音は、最遅と言われたシノーポリ(約93')より更に遅いです。また第二楽章を途中で入替えて録音を残しているのは他にもアバドやバルビローリがいますね。

[演奏時間]    [一楽章] [二楽章] [三楽章] [四楽章] [トータル]
(#1)1971年 21'04" - 12'02" - 13'15" - 27'36"  約 74'
(#2)1984年 23'04" - 13'24" - 13'03" - 29'30"  約 79'
(#3)1999年 24'54" - 14'31" - 14'46" - 30'40"  約 85'
(#4)2013年 27'45" - 16'09" - 15'31" - 34'40"  約 94'

注:第二楽章はスケルツォです。2013年録音は第二楽章(アダージョ)と第三楽章(スケルツォ)の時間を入れ替えています。



(#1)
Southwest German Radio Symphony Orchestra
[SWR Classic] 1971-3/12-14


首席指揮者(1986-1999)就任の15年前、44歳のギーレンが南西ドイツ放送交響楽団(現:バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団)を振ったマーラー6ですね。今回発売になった一番古い録音です。

第一楽章
速め切れ味の第一主題は緊迫感漲りますね。パッセージも速めでアルマの主題もアゴーギクはありますが速いです。展開部は第一主題は強烈に、挿入部ではスローで長閑さを付けて コントラストを上手く見せています。再現部の第一主題は一層の迫力快走で走り抜け第二主題は緩やかに、コーダはディナーミクによるメリハリを付けて〆ます。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章同様締まりが強く、延長線上イメージです。もちろん速さの流れで、トリオでアゴーギクを効かせたスローでコントラストを付けるギーレンらしい構成ですね。最後の主題回帰は狂気を感じる様な切れ味です。
第三楽章
主要主題は穏やかに流れよく、副主題(第一トリオ)は少しスロー化して哀愁を見せますね。中間部(第二トリオ)は広がりを大きく鳴らし平穏な印象を着けてきますね。全体としてギーレンとしては揺さぶりのない淡白な緩徐楽章になっています。ラスト前の山場は強烈に盛上げますが。
第四楽章
渦巻く長い序奏は明瞭さを感じます。提示部第一主題は切れ味良い流れを上手く作ります。テンポ設定はやや速いですが標準的ですね。パッセージも切れ味の良さで、第二主題を軽快に作ります。締まり良い提示部です。展開部はディナーミクを効かせて派手気味にメリハリを作ります。この辺りは作り込まれたスタジオ録音を感じますね。アゴーギクも振った速い再現部も同様で見事に "聴かせる" 構成を感じます。その見事さに少々腰が引けますがw


快速切れ味のマーラー6ですね。緩徐パートのアゴーギク&スロー対比、ビシッと締まりのある流れ、ギーレンらしい印象の演奏かもしれませんね。アンダンテは山場以外今ひとつの感ですが。

途中カットもある様なこの年代のマーラーとして完成度は高いのではないでしょうか。デジタル・マスタリングで音も悪くありませんね。





(#2)
Radio Symphonie Orchester Berlin
[Altus] 1984-9/5,6


ベルリン放送交響楽団(現:ベルリン・ドイツ交響楽団, DSO)を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
やや速め力感の第一主題は、アゴーギクで緩やかな揺さぶりを感じますね。パッセージは標準的に落ち着けて、アルマの主題を情感豊かに奏でます。展開部は挿入部を鎮めますが、提示部同様に王道的な流れになっていますね。再現部も同じ印象を受けます。テンポ設定は気持ち速め、流れはギーレンらしい微妙なアゴーギクと厳しい切れ味を感じます。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は少しスローに入り第一楽章との類似性を抑えた感じです。(第一楽章ラストをテンポアップしています) トリオはややテンポを落として優美です。ここでもビシッとしたコントラストが見事です。
第三楽章
主要主題はやや速めで弱いディナーミク、副主題は哀愁の音色を木管に与えます。中間部は自然な流れから広がりを見せ、ラスト前の山場は激情的です。全体濃いめの色付けを感じますね。
第四楽章
アゴーギクでタメを作る序奏からアレグロ・エネルジコ、提示部第一主題は鳴り良く走ります。パッセージもシャープに続き、第二主題で見事に軽快感を見せますね。その後はアゴーギクでコントラストを着けて展開部に入ります。主題の入替をギーレンらしいアゴーギクとディナーミクで怒涛のパワープレイ、そのまま再現部になだれ込みコーダへと突き進みます。聴き疲れするほどの力感ですね。


気持ち速めの濃厚なマーラー6ですね。もちろんギーレンですから隙は無く、得意のアゴーギクにパワーと切れ味があります。聴き応えは十分。1971年よりも主流派的に感じますね。堂々濃厚なマーラー6を聴きたい貴方にオススメです。

それなのになぜかを付けられないのは、Liveなのに出来過ぎ感という贅沢なイメージからか、全体濃い味一本だからでしょうか。見事なのですが…





(#3)
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
[Hanssler Classics] 1999-9/7-10


ギーレンが首席指揮者(1986-1999)として最後の年に録音したバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団とのマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題はややスローの低重心で重厚、アルマの主題は華やかな鳴りの良さですね。より王道的になっている提示部です。展開部・再現部も落ち着いていて、安定的です。アゴーギクも目立ちません。はて?ギーレンかなという感じですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章の延長を感じるややスロー低重心で落ち着いています。トリオは落ち着いた中に静的優美さです。クセのない王道のスケルツォになっていますね。
第三楽章
アンダンテ主要主題は澄んで透明感があります。ギーレンでは無いような静美さです。副主題(第一トリオ)も美しい哀愁で彩られて、中間部(第二トリオ)も明確に明るい光が差し込みますね。美しい緩徐楽章になっています。
第四楽章
本来ドロドロとした序奏ですが、クドさを殺しています。提示部第一主題はシャープで、パッセージから第二主題も綺麗な流れで構成されています。展開部もコントラストのある主題の変奏ですが、クールな切れ味ですね。再現部は騎行から迫力が増しますが、ギーレンらしいアゴーギクの揺さぶりは弱いです。素晴らしいですが、何か一つ腑に落ちない感じがします。


落ち着き払った王道のマーラー6です。4録音の中では最もクセが無く安定的正攻法で、それを基準とするならば一番でしょう。初めて聴く方にも勿論オススメですね。出汁も素材も厳選した上品なお吸い物、みたいな。

個人的にはギーレンらしい濃い味噌汁が好きです、身体に悪そうですがw ギーレンでなければ ?!





(#4)

SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
[SWR Classic] 2013-8/21


ギーレンが首席指揮者退任14年後にバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団を指揮したマーラー6。今回発売、引退一年前86歳での録音です。ここで第二楽章をアンダンテにしています。

第一楽章
第一主題行進曲はグッとスローになりますがメリハリは良く付いて、パッセージは落ち着きを払っています。アルマの主題はスローの中にも緩やかながらアゴーギクを効かせます。提示部は"繰り返し"の方が気持ち速めに感じますね。展開部の挿入部は元々スローなので流石に極端には落としていませんが、その中に各楽器の音色を生かしているので空間を感じる流れです。再現部も鳴りの良さが朗々としていますね。
第二楽章
ここでアンダンテにして来ましたね。主要主題は緩やかに、副主題(第一トリオ)は哀愁感を強く感じます。中間部(第二トリオ)では伸びやかな広がりがあります。スローが生きた大きく美しい緩徐楽章になっていますね。
第三楽章
主要主題は大きなスローですが締まり良く、第一楽章の印象を残していますね。トリオはスロー穏やかに、落差はあまり付けませんが回帰するとアゴーギクを振って来ます。ギーレンらしさを感じる少ないパートかもしれません。
第四楽章
序奏は大きなスローベースの陰影付けです。提示部第一主題はスローで大きい流れを作り、パッセージも広がり良く、第二主題をその中に置く感じです。展開部も大きくスローで、このパートにありがちなせっかちな緊迫感・迫力と言った流れよりも、"大きな見晴らし"の様な印象を受けますね。行進曲もスロー低重心で悠然とした新しい世界です。再現部はやや旧来的な流れを取り戻してパワープレイ的な要素も見られます。コーダは大きなスローからの一撃で、ラストのピチカートも生きました。
オーディエンスは大ブラボー・大喝采です!!


大きなスローで通した、ゆったり泰然自若のマーラー6ですね。もちろん各パートには締まりもコントラストもありますが、細かな表情よりも広大・雄大な音の広がりを強く感じます。

ギーレンの新たな境地でしょうか、これは今までに聴いた経験のない新しいマーラー6を感じます




ジュゼッペ・シノーポリ, Giuseppe Sinopoli

The Philharmonia Orchestra
[DG] 1986-9


シノーポリが首席指揮者(1984-1994)時代のフィルハーモニア管を振ったマーラー6ですね。上記ギーレンの2013年録音が出るまで、世界最遅演奏だったと思います。(全楽章が遅いわけでは無く、アンダンテが異常にスローなのですが…)

[演奏時間]       [一楽章] [スケルツォ] [アンダンテ] [四楽章] [トータル]
(シノーポリ)1986年 25'09" - 13'39" - 19'53" - 34'32"  約 93'
(ギーレン) 2013年 27'45" - 16'09" - 15'31" - 34'40"  約 94'

ちなみにシノーポリはシュトゥットガルト放送響(1985年)との録音も残していますが、それは然程遅くありませんね。


第一楽章
勇壮な第一主題行進曲からパッセージで一息ついて、アルマの主題を大きく奏でるといった教科書的な提示部です。再現部第一主題も適度に激しく、挿入部もほどほどにテンポダウン。中盤以降奇妙な揺さぶりを散見しますが、全体が平均的印象を超えませんね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章の延長性を強く感じます。やや速めでしょうか。トリオも標準的に優美です。ここでも多少のテンポの揺さぶりを感じますね。
第三楽章
問題のアンダンテです。主要主題は緩く甘美で"間"をとって揺さぶりながらスローに進みます。副主題(第一トリオ)も同じスローの揺さぶりで哀愁は弱めです。中間部(第二トリオ)での変化を感じないほどモワ〜ッと全体スローです。変な事は確かですが緩徐楽章ならこれもアリ的な感じ、ただこの楽章だけどうして?!という違和感は残りますね。他の楽章に個性的な味付けはありませんから。
とは言え、いつまでたっても終わらないスローが凄いです! (普通なら終わるあたりから、更に5'くらいありますからねェ)
第四楽章
アンダンテの後で集中力も切れますが、流れはディナーミクでのメリハリです。序奏アレグロ・エネルジコから第一主題を力感よく走らせて、第二主題を極端にスロー化するという変則があります。全楽章にこの手の特異性を通せれば面白かったでしょうね。展開部・再現部にもテンポの揺さぶりがあり興味深いですが、"時すでに遅し" です。


アンダンテだけが極端にスローの変則マーラー6ですね。他の楽章はテンポ変化の揺さぶりくらいなので残念です。全楽章を通して何らか意図のある特異性を持ち込んでいたらまた楽しみが違ったかもしれませんね。(それでも34'overの最終楽章は少し変わっていますから、特に前半二つの楽章ですね)

変則は嫌いじゃありませんが、中途半端出し惜しみ は着いて行くのが厳しいです。(汗)




ズービン・メータ, Zubin Mehta

Israel Philharmonic Orchestra
[Apex] 1995-7


インド出身の指揮者メータが長く音楽監督を務める(本年2019年で退任です)イスラエル・フィルを振ったマーラー6ですね。メータの6番はもう一枚、非正規盤ですがVPOとの録音があります。

第一楽章
第一主題はかなり速いです。静音化するパッセージも速く、アルマの主題では速度を落として優美のコントラストを付けますが直ぐに速い流れに戻してきますね。展開部第一主題は少し混乱気味に、挿入部は基本に立ち返りスロー美を奏でます。再現部は提示部より一層速く慌ただしいですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はそれほど速めていません。第一楽章との類似性を避けているのでしょうか。トリオ(中間部)はスロー静な穏やかさで、全体の流れは標準的になっていますね。
第三楽章
アンダンテの主要主題は抑えて優美、副主題(第一トリオ)も静的な陰ある哀愁です。中間部(第二トリオ)は程よく明るさを見せて、ここでも標準的な流れを作っていますね。
第四楽章
序奏は抑え気味、提示部第一主題でパワフルに驀進します。パッセージからも締まり良く、第二主題で軽妙さに転じます。展開部第二主題回帰の山場を大きく盛上げ、コラールを派手に第一主題変奏の行進曲を軽快に走らせます。再現部第一主題回帰は迫力があり、騎行では締まりある流れを作ります。若干の強弱はありますが標準的印象でしょう。


速く慌ただしい第一楽章の後は標準的な流れのマーラー6です。標準的な三つの楽章も多少の色付けはあるもののやや面白みに欠ける感がありますね。いっその事、もっと荒れて驀進した方が面白かった気がします。




エサ=ペッカ・サロネン, Esa-Pekka Salonen


Philharmonia Orchestra
[Signum] 2009-5/28


サロネンが2008年から首席指揮者を務めるフィルハーモニア管弦楽団を振ったマーラー6ですね。2017年5月18日にこのセットで素晴らしい来日公演 "悲劇的" がありましたね。

第一楽章
第一主題、王道ですが管楽器に少し不安を感じますね。第二主題は微妙にアゴーギクを入れて流れを優美に変えます。展開部では第一主題を高らかに、挿入部を穏やか長閑に奏します。ここでも間延びを避ける様に緩いアゴーギクを振っていますね。再現部は二つの主題を色濃く、コーダの主役第二主題もメリハリを付けています。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はややテンポを落として第一楽章の類型化を逃れています。激しさよりも落ち着きですね。第二主題はスローに落としてここでも落ち着いた流れをキープします。変拍子を殊更に印象付ける事はありません。(全体にアゴーギクを使っているからそう感じるのかも)
第三楽章
主要主題はやや速めで静的に入り、第一トリオも同じ流れで極端に情感を濃くする事はありません。ここでもクールです。中間部は明るく鳴らし、後半の山場は大きく奏でます。
第四楽章
序奏は揺さぶりは弱く主にコントラスト付け、アレグロ・エネルジコからの提示部第一主題は鳴り良く走らせます。パッセージのHrも朗々と響き、第二主題は軽快です。展開部はアゴーギクで緩急を付けて、込み入った構成を明確にしました。交響曲2番引用の行進曲は速めに振って見事に決まりましたね。再現部も第一主題回帰後山場から騎行が同様に走って素晴らしいです。


スパイスを上手く効かせたクールなマーラー6です。適度で絶妙なアゴーギクによる色付けで、通して心地良さがありコントラストも明確です。

この曲は熱烈爆走的演奏が一つのパターンですが、サロネンは全体の流れをスッキリとさせて、その対極にある演奏です。整理されすぎという意見も有りそうですが、好みでオススメですね。




ユッカ=ペッカ・サラステ, Jukka-Pekka Saraste

Oslo Philharmonic Orchestra
[Simax] 2010-3/10-12


オスロ・フィルハーモニー管弦楽団のマーラーチクルスの一環で、音楽監督だったサラステが振ったマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題は約束通りの勇壮さ、パッセージを緩やかにアルマの主題の伸びやかな美しさに繋げます。堂々ですが、処々微妙なアゴーギクを感じますね。展開部・再現部もクセのない流れを作っています。ラストの締まりはいいですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章回帰的ですがクールな印象もあり切れ味がありますね。トリオ(中間部)は約束通りにスロー&穏やかさのメヌエットの印象です。後半速めのアゴーギクは少し気にはなりますが、見晴らしの良い楽章になっています。
第三楽章
アンダンテですね。主要主題は美しく優しく、第一トリオ(副主題)はテンポを落とさずに哀愁を奏でます。流れの基本は少し速めに感じますね。第二トリオ(中間部)はスローにして広がりを聴かせてくれます。後半の第一トリオ回帰は大きな波の山場を作ります。
第四楽章
序奏は各主題をスローに鳴り良くコントラスト良く、提示部第一主題は刺激を付けて行進します。パッセージから第一主題の絡むパートを落ち着いて奏でると、第二主題はテンポを維持したまま穏やかに現れますね。展開部第一主題前のvcは厳しく切れ味ある流れを誘導し、回帰する第二主題の山場へ。その後もアゴーギクとディナーミクを共鳴させて、この曲らしいコントラストの強い締まった流れです。最後はコーダでは三発目のハンマーが登場します。


基本速め印象ですが、堂々としたマーラー6です。王道に速めのアゴーギクを振った感じでしょうか。その微妙な立ち位置をどう感じるかで評価が分かれるかもしれませんね。

ハンマー三発という珍しさ、演奏も録音もよく、広がりがあるので気持ちよく聴きたい方にオススメですね。




シモーネ・ヤング, Simone Young

Hamburg Philharmonic Orchestra
[Oehms Classics] 2007-4/22,23


日本でもおなじみのオーストラリア人女性指揮者S.ヤングはコンロンやバレンボイムに師事しています。ドイツを中心に活躍していて、音楽監督を務めた時代のハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題は勇壮に、木管の経過句を緩やかに落としてアルマの主題の優美さと繋がりを良く作っていますね。展開部は主題の絡みの後の挿入部にやや間延び感がありますが安定して、再現部では両主題の締まりが増してコーダはメリハリが強いです。
第二楽章
アンダンテです。主要主題は穏やかに、イングリッシュホルンが動機を示す副主題(第一トリオ)は哀愁を高めます。中間部(第二トリオ)は大きな長調的広がりを見せますが、以降は山場を除くと少し緩いでしょうか。
第三楽章
スケルツォですね。主要主題は第一楽章の印象を持って進み、トリオではテンポを落として変拍子の表情変化を生かしています。
第四楽章
象徴的な長い序奏は極端な陰影や表情付けはありません。提示部第一主題は軽快に鳴らして経過句を締まり良く、第二主題でも流れを維持して心地よさがあります。問題の展開部はスコアの持つ出し入れの快感を伝えていますが、もう少し刺激のスパイスを加えたら素晴らしかったと思います。再現部は騎行ではテンポ変化を生かして流れに勇壮さをみせてくれます。(コーダではヤングの意図で3発目のハンマーが打たれます)


揺さぶりは無く安定指向のマーラー6です。心躍る様な冒険や楽しみはありませんが、王道的流れは大きく外しません。

アクセルコントロール(アゴーギク)は安全運転ですから、初めて聴くのにもおすすめですね。




大植英次, Eiji Oue


Osaka Philharmonic Orchestra
[fontec] 2005-3/20


齋藤秀雄→小澤征爾→L.バーンスタインに師事した人気指揮者の大植さんのマーラーと言うとどうしても第9番が浮かびますが、これは大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督時代のマーラー6ですね。

第一楽章
速い第一主題にまず驚きますね、大植さんですからw 経過句も速いですが抑えています。第二主題はテンポを標準的レベル(やや速い?)に落とし、揺さぶりは強いですが甘美を避けてスッキリとした流れです。展開部は第一主題をガツッと締め上げて、揺さぶってから第二主題に流れ挿入部へと。ここでもスローの中に微妙な揺さぶりで緊張感を与えていますね。その後はブレーキの様なアゴーギクを使って走り、爆裂から再現部へ。第一主題は荒れます、ここでも急ブレーキ的なアゴーギクですね。ちょっとシェルヘン先生を思わせる様な…
第二楽章
スケルツォですね。主要主題はやや抑え気味に入りますが、間を詰めた様な流れに緊迫感があります。トリオは極端にスローにして木管の動機まで引っ張ります。その後も揺さぶりは大きく、個性的ですね。
第三楽章
主要主題は細くスローで繊細に入って来ます。第一トリオは入りのイングリッシュホルンから流れは静美です。中間部(第二トリオ)で明るい日差しが差し込むと、回帰する主題で美しい哀愁に戻り、最後の第一トリオからは哀しみの山場を大きく作り上げます。揺さぶりを排して美しい緩徐楽章に仕立てていますね。
第四楽章
序奏の主題群はスロー構成で強烈な緊迫感を湛え、アレグロ・エネルジコから一気に加速して提示部第一主題を爆走します。経過句で落ち着かせると主題変奏と対位しながら盛り上げて行きます。そして第二主題で軽妙に落ち着かせると、テンポアップして展開部へ。第二主題を大きく広げて山場を作り、その後は切れ味良い流れから突撃、第二主題回帰で落ち着きし再び突撃とコントラストと見晴らしの良い展開部です。再現部も強烈にコントラストを着けて派手派手しく駆け抜けます。


強烈な揺さぶりでクセモノの一角をなす大植マーラー9ですね。急テンポからガクッと落としたスローの極端なコントラスト、もちろん暴れるパートは荒れます。H.シェルヘン、B.マデルナ、と言った方向性も感じる好きな一枚です。大フィルも好演ですね。普通の演奏じゃつまらない、と言う貴方に超オススメ盤であります!!

久しぶりに聴きましたが、安定志向の方には向かないでしょうねぇ。本来なら?、悩みどころですw




ハインツ・ボンガルツ, Heinz Bongartz


Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig (MDR Sinfonieorchester)
[Weitblick] 1969-6/30


プロイセン時代のドイツに生まれた指揮者ボンガルツ(1894-1978)ですね。ライプツィヒ放送交響楽団(現:MDR交響楽団)を振ったマーラー6です。

第一楽章
第一主題行進曲はとてもスローで重厚、彫りが深いです。経過句はスローながらクールに、アルマの主題は広がり大きく華やかです。珍しい提示部の反復無し! 展開部でも第一主題変奏はスローで重厚にして派手な鳴りですね。挿入部はもちろん静的なのですが、なぜか管楽器の響に煌びやかさを感じます。再現部もテンポを抑えて、コーダもスローな葬送から低重心を保ってフィニッシュします。スロー重厚で派手な鳴りがとても個性的です。
第二楽章
アンダンテですね。主要主題はややスローの優美さ、第一トリオ(副主題)は哀愁抑えめです。両主題の回帰で一部カットされている様ですね。中間部(第二トリオ)は明朗で明るい光です。山場は大きく哀愁を溢れる様に奏でてエンディングに向かいます。
第三楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章のパロディを避ける様にテンポアップです。とは言え標準的ですが、これなら第二楽章へ持ってきても良かった様な。ここでも華やかな鳴りを感じますね。(デジタル・マスタリングの影響かもしれません) トリオはテンポを落とさず、殊更に古典的にはしませんね。トリオの後の木管パートがカットされています。第二トリオとも言うべき重要パートですが…
第四楽章
個性を出しやすい序奏は陰影抑え気味、あえて個性を殺している感じさえします。しかし後半モットーからスローに転じて、提示部第一主題は 第一楽章を回想させるスロー重厚になります。パッセージもスローで、第二主題もスローの流れから逸脱しません。ここでも基本は大きな流れを作っています。展開部も行進曲も含めてスロー基本で鳴り良く、コントロールされて暴れる事はありません。再現部第一主題の再現は派手派手しいです。もちろんスローですが。コーダは元々スローなので違和感が少ないですが、ラスト一発の前の"間"が殆どありません。


提示部反復なしで中間楽章ではカットあり、第一第四楽章はスロー偏重という超個性的マーラー6です。でも流れは、大きな構えと鳴りの良さで悪くありません。シェルヘン先生と同じ様なカットはこの時代ならでは、と感じます。今では御目に掛かる事はまずありませんね。

年代の割に録音が良く、個性派を好まれる貴方にオススメの一枚です。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ミヒャエル・ギーレン追悼アルバム『In memoriam』マーラー 交響曲 第6番 1971年・2013年 2録音。演奏時間も印象も大きな違いを感じますね


In memoriam Michael Gielen
本年3月に亡くなった人気指揮者ギーレン(Michael Gielen, 1927/7/20 - 2019/3/8)。今回追悼アルバム "In memoriam" が発売され、1971年と2013年のマーラー6番が収録されましたね。ギーレンの既発の2CD(1984年・1999年)より前と後、2013年は引退一年前の録音です。

オケは名称が変わりましたが、両方とも同じ南西ドイツ放送交響楽団(現:バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団)です。ギーレンが首席指揮者(1986-1999)を務めたオケですが、両録音ともその時代ではありませんね。

特徴的なのは二つ。
 1) 後年の方が演奏時間が長大になっています
 2) 2013年録音は第二楽章アンダンテに変更しています
実は他2録音も含めて年代を追うごとに演奏時間は長くなり、第二楽章は最後(2013年)にアンダンテに変更しています。4録音全体のインプレは以下にアップしています。

▶️ マーラー交響曲第6番:70CD 聴き比べ






マーラー 交響曲 第6番


 



1971 3/12-14 at Hans-Rosbaud-Studio, Baden-Baden

第一楽章
速め切れ味の第一主題は緊迫感漲りますね。パッセージも速めでアルマの主題もアゴーギクはありますが速いです。展開部は第一主題は強烈に、挿入部ではスローで長閑さを付けて コントラストを上手く見せています。再現部の第一主題は一層の迫力快走で走り抜け第二主題は緩やかに、コーダはディナーミクによるメリハリを付けて〆ます。

第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章同様締まりが強く、延長線上イメージです。もちろん速さの流れで、トリオでアゴーギクを効かせたスローでコントラストを付けるギーレンらしい構成ですね。最後の主題回帰は狂気を感じる様な切れ味です。

第三楽章
主要主題は穏やかに流れよく、副主題(第一トリオ)は少しスロー化して哀愁を見せますね。中間部(第二トリオ)は広がりを大きく鳴らし平穏な印象を着けてきますね。全体としてギーレンとしては揺さぶりのない淡白な緩徐楽章になっています。ラスト前の山場は強烈に盛上げますが。

第四楽章
渦巻く長い序奏は明瞭さを感じます。提示部第一主題は切れ味良い流れを上手く作ります。テンポ設定はやや速いですが標準的ですね。パッセージも切れ味の良さで、第二主題を軽快に作ります。締まり良い提示部です。展開部はディナーミクを効かせて派手気味にメリハリを作ります。この辺りは作り込まれたスタジオ録音を感じますね。アゴーギクも振った速い再現部も同様で見事に "聴かせる" 構成を感じます。その見事さに少々腰が引けますがw


快速切れ味のマーラー6ですね。緩徐パートのアゴーギク&スロー対比、ビシッと締まりのある流れ、ギーレンらしい印象の演奏かもしれませんね。アンダンテは山場以外今ひとつの感ですが。

スタジオ録音で作り込まれていて、デジタル・マスタリングで音も悪くありませんね。この年代のマーラーとして完成度は高いのではないでしょうか。





2013 8/21 at Großes Festspielhaus, Salzburg [LIVE]

第一楽章
第一主題行進曲はグッとスローになりますがメリハリは良く付いて、パッセージは落ち着きを払っています。アルマの主題はスローの中にも緩やかながらアゴーギクを効かせます。提示部は"繰り返し"の方が気持ち速めに感じますね。展開部の挿入部は元々スローなので流石に極端には落としていませんが、その中に各楽器の音色を生かしているので空間を感じる流れです。再現部も鳴りの良さが朗々としていますね。

第二楽章
アンダンテですね。主要主題は緩やかに、副主題(第一トリオ)は哀愁感を強く感じます。中間部(第二トリオ)では伸びやかな広がりがあります。スローが生きた大きく美しい緩徐楽章になっていますね。

第三楽章
主要主題は大きなスローですが締まり良く、第一楽章の印象を残していますね。トリオはスロー穏やかに、落差はあまり付けませんが回帰するとアゴーギクを振って来ます。ギーレンらしさを感じる少ないパートかもしれません。

第四楽章
序奏は大きなスローベースの陰影付けです。提示部第一主題はスローで大きい流れを作り、パッセージも広がり良く、第二主題をその中に置く感じです。展開部も大きくスローで、このパートにありがちなせっかちな緊迫感・迫力と言った流れよりも、"大きな見晴らし"の様な印象を受けますね。行進曲もスロー低重心で悠然とした新しい世界です。再現部はやや旧来的な流れを取り戻してパワープレイ的な要素も見られます。コーダは大きなスローからの一撃で、ラストのピチカートも生きました。
オーディエンスは大ブラボー・大喝采です!!


大きなスローで通した、ゆったり泰然自若のマーラー6ですね。もちろん各パートには締まりもコントラストもありますが、細かな表情よりも広大・雄大な音の広がりを強く感じます。

これは今までに聴いた経験のない新しいマーラー6を感じます。




緊迫と切れ味の1971年から、大きく広がりの2013年へ。ギーレンの42年の変移は印象的ですね。大きく性格の異なるマーラー6で、個人的には構えの大きな2013に一票です

年代も大きく違う二つの録音ですが、マスタリングで音の違和感を上手く消していますね。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

今年も行くよ、"ボンクリ・フェス2019" を前に 藤倉大さん の『ざわざわ』を聴いておきましょう


藤倉 大
(Dai Fujikura, 1977/4/27 - )
このブログでは既にアルバム四作品ほど紹介していていますので、今更のプロフィール紹介は割愛ですね。ポスト・クラシカルや空間音響系の楽風に、優しさと美しさの印象がありますね。
そして今年第三回(9月28日)となる現代音楽1dayフェス "ボンクリ" のディレクターも務めます。もちろん今年も行きますよ!! ここで行われるライブ・リミックスはとても楽しいです。

昨年のボンクリのインプレは ▶️ こちら


ZAWAZAWA
藤倉大さんの新譜ですね。アンサンブルとソロ作品、そして歌曲の組合せです。ボンクリ・フェス2019(Born Createvi Festival 2019)の予習ではありませんが、楽しめるアルバムでしょうね。






kite(きいて) for soprano (2017年)
小林沙羅さんの委嘱作品でご本人のソプラノです。前衛ソロ・ヴォーカルです。"きいて"の反復で、変奏と歌詞変化があります。動機もあり、シュプレッヒゲザングでもありません。2'弱ですが楽しめます。


Zawazawa for choir (2016年)
Sawasawa (Zawazawa pt. 2) for choir and marimba (2017年)
この曲と次の曲は東京混声合唱団の"Resident Artist"として書かれていて、当然二曲とも合唱曲です。指揮者の山田和樹さんとプラハでの会話の中で"ざわざわ"・"さわさわ"と言った日本語のオノマトぺ(onomatopée:擬音語・擬態語)の重要性から出来たそうです。実は一つ前のアルバム「ダイヤモンド・ダスト」にも"ころころ"・”ゆらゆら”が入っていて一つのキーですね。(このアルバム、まだインプレしていませんでしたw)
ここでも動機があり、反復と変奏的です。前衛と言うよりも調性的で教会音楽に近い印象も受けますね。アカペラの後の"さわさわ"は曲調は似ていますが、マリンバの音色が浮遊的です。とても興味深いですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  (東京混声合唱団による世界初演です)



Tuba Concerto for Tuba and Wind Orchestra (2016/2017年)
チューバのスーパープレイヤーであるノルウェーのオイスタイン・ボーズヴィーク(Øystein Baadsvik)の為に書かれた曲です。ボーズヴィークは何回か紹介済みですね。
このアルバムのメインでしょうか。緩やかな心地よさの旋律をボーズヴィークのチューバが奏でながら、バックの吹奏楽は無調の背景を作り上げています。時にホモフォニーに、時にポリフォニーに、時にミニマルの顔も覗かせます。そのバランスが何とも美しく、無闇に超絶技巧に走らない素晴らしさを感じます。調性と無調のバランス、まさに多様性音楽の良さでしょうね。


GO (movement V - for solo clarinet) (2016年)
ピアノと吹奏四重奏の為に書かれた"ゴー"の第五楽章でソロ・クラリネットのパートだそうです。
調性的で幽玄さが強い流れ、そして技巧性ですね。クラッタリングの音色も明確に入っています。そこは計算の上でしょうか。演奏時間も2'台でソロのアンコールにも向いている感じですね。


BIS for double bass (2018年)
前アルバム「ダイヤモンド・ダスト」に入っているコントラバス協奏曲からの楽曲です。
個人的には前衛(Jazzも含めて)コントラバスのソロ好きです。ハーモニクスも使ってピチカートの技巧性を表に出しながら即興的、と言うのがポイントでしょうか。


Yurayura for horn and string quartet version (2017年)
ホルン協奏曲第二番のカデンツァを元にしているそうです。ホルン協奏曲第2番(アンサンブル全編版)が今年の"ボンクリ"で世界初演されますね。
東洋和声を感じる流れを感じますね。笙の様な音色も感じます。ホルンの音色はまるで闇に響くvoiceの様にも思えますね。


ES for double bass (2008年)
ロンドン・ シンフォニエッタの50周年記念の為に書かれた曲で、首席ベーシストのEnno Senftの頭文字がタイトルになっています。
これもコントラバス・ソロ曲で、ここでもピチカート主体で荒っぽいボウイングも現れます。技巧性も高く面白いですね。小さなコンサート会場やライヴ・ハウスで聴いてみたい曲と言ったらわかっていただけるでしょうか。


Harahara for horn (2018年)
ホルンプレーヤー福川伸陽の為に書かれた曲で、Hakuju Hall(はくじゅホール)15周年の委嘱作品です。
前曲に似た技巧系曲です。ホルンの技巧を見せつける様な楽しさがありますね。ホルンプレイヤーなら一度はやってみたいのでは、と言った楽曲です。エレクトロニクスが入っているのではと思いますが…


The New House (1994年)
17歳の高校生(イングランド)の時の作品で、イギリスの詩人エドワード・トーマス(Edward Thomas)の詩を元にしているそうです。
ここでも宗教音楽系のハーモニーを感じます。



以前も書きましたが、藤倉さんの作品は前衛とかアンビエントを超えた上質なBGM的な心地よさと、ソロ技巧性の両面を感じます。今回もアカペラの声楽の新しい方向性を感じましたし、チューバ協奏曲でも美しい流れを楽しめました。そして、それに対抗する様なコントラバスの二曲やホルン・ソロの技巧性も楽しさいっぱいですね。

従来の現代音楽という、特に欧州エクスペリメンタリズム、概念から解き放たれた新しい方向性を感じます。



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ジャンル : 音楽

2018年11月 ボリショイ劇場公演 リムスキー・コルサコフ 歌劇「皇帝の花嫁」をNHKプレミアムシアターで観る


昨年11月のボリショイ劇場公演(Bolshoi Theatre)の リムスキー・コルサコフ のオペラ「皇帝の花嫁, The Tsar's Bride」(全4幕)ですね。ロシア作品をメインにするロシアを代表する歌劇場で歌手陣もロシアでで揃えて、オール・ロシアですね。

2108BolshoiTheatre-TheTsarsBride.jpg
(写真はオフィシャル・サイトよりお借りしました)


正直なところ、ロシア歌劇はあまり楽しむ機会がないのですが…


演出
演出はロシア生まれイスラエル在住の女性演出家ユリヤ・ペヴズネルですね。全く知見はありませんが、基本は昔からの流れ尊重でしょう。舞台・衣装含めて目新しさは全くありません。それをどうみるかでこの作品の好みが決まるのかもしれません。

舞台・衣装
時代考証(1572年秋,モスクワ郊外)風?で、大きな道具類に豪華な衣装。今のヨーロッパの歌劇場では既に絶滅した古典設定ですね。(ヨーロッパは予算の都合もある様ですが)

配役
女性陣が良かったですね。タイトル・ロールのマルファ役オリガ・セリヴェルストワですが、この役に必要な可愛い女性を、そしてポイントのラストの緩やかな狂気を演じました。Sopはコロラトゥーラを上手くこなしていますが、リリコでしょうね。
Mezリュバーシャ役アグンダ・クラエワが今回一番でしょう。もっと憎まれ役(演出)の方が良かった気がしましたが、本来のかわいそうな運命の役柄を 抑えた表現・歌唱で演じたと思います。

男性陣。ルイコフ役のイリヤ・セリヴァノフのテノールは演技共に落ち着いていましたが、特に強い印象は感じませんでしたね。出番の多いグリャズノイのエリチン・アジゾフがそれらしい良さがあったかもしれません。端役では医師で薬を調合するボメーリイのロマン・ムラヴィツキーが、微妙な立ち位置を楽しませてくれたでしょうか。

音楽
日本でもお馴染みのソヒエフが音楽監督を務めていますね。曲の流れと舞台がフラット気味なので、これといった特徴的なものは感じませんでしたね。オペラの場合、そう感じるのが普通だとは思いますが。(視覚が優先される舞台や映像で見る限りは、です)


ひとことで言うなら、古典的なオペラ(演出)でしょうか。いかにもロシア的、全てが時代考証風で100年前(初演は1899年です)と変わらないと思いますね。ロシアで人気の演目らしいですが、トラディショナルな流れが好まれるのでしょうね。(ロシアの歌劇場での前衛演出は聞きませんよね。トゥーランドットなんかでも超古典的です)

オペラを楽しむ一つのポイントは新鮮な、アヴァンギャルドも含め、演出です。後は好きな演目、もしくは出演者かどうか。そう言う意味では、舞台・演出が現代風だったらもっと楽しめた気がします。(ストーリー展開の良い第四幕は楽しめました)



<出 演>
 ・ソバーキン (ノブゴロドの商人):スタニスラフ・トゥロフィモフ [Stanislav Trofimov]
 ・マルファ (ソバーキンの娘):オリガ・セリヴェルストワ [Olga Seliverstova]
 ・グリゴーリイ・グリャズノイ (親衛隊員):エリチン・アジゾフ [Elchin Azizov]
 ・マリュータ (親衛隊員):ヴャチェスラフ・ポチャプスキー [Vyacheslav Pochapsky]
 ・イワン・ルイコフ (マルファの婚約者):イリヤ・セリヴァノフ [Ilya Selivanov]
 ・リュバーシャ (グリャズノイの愛人):アグンダ・クラエワ [Agunda Kulaeva]
 ・ボメーリイ (医者):ロマン・ムラヴィツキー [Roman Muravitsky]
 ・ドゥニャーシャ (マルファの友人):アンナ・ボンダレフスカヤ [Anna Bondarevskaya]
 ・サブローヴァ (ドゥニャーシャの母):イリーナ・ルブツォワ [Irina Rubtsova]
 ・ペトローヴナ (家政婦):アンナ・マツェイ [Anna Matsey]

<合 唱> ボリショイ劇場合唱団
<管弦楽> ボリショイ劇場管弦楽団
<指 揮> トゥガン・ソヒエフ [Tugan Sokhiev]
<演 出> ユリヤ・ペヴズネル [Julia Pevzner]


収録:2018年11月13・15日 ボリショイ劇場(モスクワ)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

シンガポール在住のN.Y.出身現代音楽家 ピーター・アイヴァン・エドワーズ(Peter Ivan Edwards) の『ionobia』を聴く


ピーター・アイヴァン・エドワーズ
(Peter Ivan Edwards, 1973 - )
ニューヨーク出身で米(ハヤ・チェルノヴィン)・独で学びシンガポール在住の現代音楽家ピーター・アイヴァン・エドワーズです。コンピューター音楽を得意として、そのアルゴリズム展開(具体的には不明ですw)し、ダルムシュタットやIRCAMといったエクスペリメンタリズム本流の世界でも実績がある様ですね。また活躍の場を欧米だけでなく韓国や中国に広げて現在シンガポールでコンピューター音楽の教鞭もとっています。


ionobia
本アルバムはコンピューター音楽は一曲のみです。他は様々な楽器編成、東洋音楽和声風の展開になっていますね。民族音楽楽器やモードではありませんが。






ionobia for oboe, percussion and piano (2017年)
  Trio Surplus
東洋和声、それも神楽の様な日本的? オーボエと打楽器は特にその傾向を感じます。そこにpfが機能和声の和音で入ってくるといった風でしょうか。途中からは欧前衛的な流れとなり特殊奏法も交えながらパルス的な強音も入ります。静の中に強音という、良くあるパターンにはなりますが…


fleepercellimano for flute, cello, percussion and piano (2013年)
  Ensemble Interface
速いフルートのアルペジオが主役で、手拍子と打楽器が色付けしています。pfも単音打楽器的、vcもピチカートで打楽器的です。和声的には東洋的な印象ですね。途中からflも含めてどの楽器も打楽器点描になります。それはそれで面白いかも。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Brastri per Celindano for orchestra (2015年)
  Young Siew Toh Conservatory Orchestra
管弦楽作品ですね。音厚あるロングトーンの和音構成で入ります。そこから管楽器が点描的単音を発して色付けして来ます。モノフォニー的な強音も入りますね。ここでは民族和声の印象はありません。また各楽器間はポリフォニーではなく、何らかの繋がりを持っているのでこじんまりと纏っている感じがします。これがエレクトロニクスだったら何か面白さがあったのかもしれません。
演奏は教鞭をとるヨン・シウ・トー音楽院の管弦楽団です。


Ascent: Two Perspectives for flute and violin (2011年)
  Matteo Cesari, Pieter Jansen
二つの楽器が動機を反復・変奏しながら絡んで進みます。印象的にはFlが主でvnが従のホモフォニー風です。不協和音はあっても動機が存在して調性的です。処々民族音楽和声も感じますが…


Ssoonro for bassoon and electronics (2017年)
  Christoph Wichert
この曲だけ得意のコンピューター系の楽曲になりますね。ファゴットの音色をバックグラウンドにループしたりテープ的に使いながらドローンの様なサウンド構成です。少し混沌的で面白さがあるかもしれません。これが一番面白いでしょうね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Re for flute, cello and piano (2010年)
  Ensemble Wu Xian
東洋音楽和声的であまり代わり映えのしない印象です。点描的という時点で、古い時代を思い出してしまいますしねぇ。



民族音楽和声風もあるけど調性的、民族音楽サウンド風だけど西洋楽器のみ、特殊奏法もあるけどオマケ的、流れは点描的。なんとなく全部が中途半端風に感じますね。

唯一面白かったのはエレクトロニクスの"Ssoonro"でした。やっぱり得意のエレクトロニクスを聴かないとダメかもしれない、という印象でした。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

近年最高のマーラー5では!! 2019年7月5日 ユッカ=ペッカ・サラステ / ケルンWDR交響楽団『マーラー 交響曲 第5番』 «ネット配信»


ユッカ=ペッカ・サラステ, Jukka-Pekka Saraste
(ケルンWDR交響楽団, WDR Sinfonieorchester Köln)
サラステが今シーズン(2018–2019)まで首席指揮者を務めるケルンWDR交響楽団(WDR Sinfonieorchester Köln)を振ったマーラー5ですね。このセットは素晴らしいマーラー5番のCD(2013年録音)を残しているので楽しみですね。先日のマーラー6番に続いての、独放送局"WDR3 Radio"ウェブサイトからの配信です。


▶️ こちら (8月7日まで楽しめます)


実は一曲目のベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann)のフォトプトーシス(Photoptosis)も素晴らしい演奏です。是非お聴きいただきたいですね。




マーラー 交響曲 第5番
(5 Jul. 2019 at Kölner Philharmonie)

20190705JukkaPekkaSaraste-Mahler5.jpg
(当日のプログラムの表紙です)


第一部
第一楽章葬送行進曲は陰鬱ですが殊更のスローではありません。導入句のファンファーレは力強く、第一トリオは一気にテンポアップして切れ味鋭い迫力を見せてくれますね。第二トリオは細い哀愁から入りますが哀しみに溺れる事なく鋭い流れに戻りますね。第二楽章第一主題も激しさと鋭さです。そして第二主題(一楽章第二トリオ)を鎮めてコントラストをキッチリと付けて来ます。展開部・再現部でも動機と主題が一層のコントラストで彩られています。マーラーの指示に沿ったメリハリある気持ちの良い第一部ですね。

第二部
スケルツォ主題はリズム良く弾ける流れで、そこからレントラー主題は緩やか優美に流れを変えています。切れ味ある小刻みな動機の後、第三主題は落ち着いた流れにしていますね。短い展開部で一気に激しさを表出させて、その流れに乗って再現部の主題回帰はより華やかに入ります。こちらの方が展開的流れです。コーダは派手で迫力の素晴らしさです!
優美な前半から切れ味の後半、素晴らしい構成と演奏の第三楽章です。オブリガート・ホルンも良い音色です。

第三部
第四楽章主部は甘美を避けてやや速めで透明感ある流れでクールそのものです。マーラーの緩徐でお約束の情熱パートもさりげない上手さで、続く中間部はトーンを抑えて秘めた感情を表現します。ラストで溢れる感情、好きなアダージェットです! 最終楽章の第一第二主題の絡みは適度な揺さぶりを付けた切れ味を、コデッタ主題ではリズム良くと対比します。展開部は各主題の広がりを大きくして、山場に向かいます。再現部も主題を明確に色付けて締まり良く、山場からコーダは纏まり派手さと迫力を作ります。フィニッシュはアッチェレランドがビシッと決まります。鳴り止まない大喝采!!


構成感のしっかりとしたメリハリのマーラー5です。この曲の持つ迫力・優美・洒脱を見事に構成して、近年聴けた最高の演奏の一つかと。

実際のコンサートでこの演奏に出会えたら当面マーラー5番は行かなくてもいいかも!!



本当に残念ながらCDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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