ジョナサン・ノット/東京交響楽団 の「ブルックナー:交響曲第9番」を聴く


コンサートとCD化
本年2018年4月14日のサントリーホールでのコンサート二曲がCD化されました。二枚組ですが、昨日インプレしたマーラー10番は28分でCD一枚という半端な編成。どうしても二曲共出したかったのでしょうね。


ブルックナー交響曲第9番
当日のコンサートのインプレでも書きましたが、この曲は楽しめました。CD化ではどうでしょう。コンサートのインプレも参考ください。(15日のミューザ川崎の同曲演奏会も使われているので、どちらがメインでどこまでマスタリングで調整されているのかはわかりません。いずれ演奏に大きな違いはないとは思いますが。)



第一楽章の第一主題からコンサートの印象通りにメリハリと緊張感が張り詰めています。第二主題でも広がりよく、第三主題も微妙な音の使い回しが綺麗です。展開部・再現部も音の鳴り良く押し寄せる山場を緊張感の中聴かせてくれます。ラストのトゥッティは迫力です。
第二楽章は主要主題と副主題がキレキレのパワーを炸裂させています。この曲のポイントと言っていい出来ですね。トリオでは手を返して軽快に弾みコントラストの良さを対比させています。
第三楽章の不思議な響きの動機を組合せた第一主題から第二主題も出し入れの良さが光ります。妖しげな調性をスローに隠と陽、そしてパワーを表現して緊張を維持していますね。欲を言えば、どこかで緊張を解した見晴らしの良さがあれば尚良かった気がします。(コーダは穏やかで良いのですが時すでに遅し、この楽章の特性もありますが)


スローな低重心というヴァント以来の時代流を保ちつつ、荒さを見せながら澄んだ音色と流れを作る好演のブルックナー9です。コンサート・インプレでも書いた通りで、第三楽章の重厚一辺倒の印象を澄んだ流れ等で拭えれば名演と言ってもよかったのでは…
(ダイナミックレンジが広いのでヴォリュームをあげられる環境がおすすめです)

東響の演奏も見事でノットの意図を見事具現化している様です。本コンサートとCDで、来期は東響の定期会員になろうかと思います。^^v







テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ジョナサン・ノット/東京交響楽団 の「マーラー:交響曲第10番アダージョ」を聴く


コンサートとCD
本年2018年4月14日のサントリーホールでのコンサートで録音していたのは知っていましたが、こんなに早くリリースされるとは思っていませんでした。コンサートのインプレとの違いはあるでしょうか。ブルックナーの9番は別途インプレしますね。→ こちら


マーラー交響曲第10番アダージョ
以下コンサートインプレと同じです。『ソナタ形式ですが個人的印象は①序奏主題、第一主題、第二主題がロンド形式の様に展開する前中盤、②まるでトリオ(中間部)の様なコラールから和音、③緩徐の長いコーダですね。』



序奏主題はコンサートより鬱に沈んだ印象、第一主題と反行形主題は暖かな美しさに感じました。特に暖色系の気配が印象的になっています。第二主題はコンサートの印象と同じく個性的な旋律が生きました。
中間部の様な管楽器主役の和音は迫力は抑え気味、コーダの緩徐は静美的印象が薄く感じたのもコンサート同様ですね。


調性の妖しさよりも温もりと力強いアダージョですね。コンサートで感じた通りのコントラストでしたが、スパイス不足の感は無くより明快に感じました。鬱的な、例えばD.ハーディングの様な、方向とは対極になる演奏でしょう。

出来ればノットには全曲を一度やってほしいです。







テーマ : クラシック
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バーンスタイン生誕100周年『バーンスタイン・オン・ブロードウェイ』を聴く


レナード・バーンスタイン (Leonard Bernstein, 1918/8/25 - 1990/10/14 )
指揮者の顔が大きいので現代音楽家としての紹介が少ないのですが、今年は生誕100周年という事で色々CDが出ますね。バーンスタインの楽風は代表的なミュージカル系と交響曲に代表される多様性とになりますが、いずれにしても聴きやすい訳でアメリカの今の時代の流れの本流の一つでしょう。


Bernstein On Broadway
今回はタイトル通りミュージカルの代表作三作(抜粋)が並んだアルバムですね。何回目かの再発だと思います。
演奏はロンドン交響楽団*(LSO)で "West Side Story"と"Candide*"がバーンスタイン本人指揮, "On the Town*"が師弟関係となるマイケル・ティルソン・トーマスになります。歌手陣もホセ・カレーラス、キリ・テ・カナワ、他当時の豪華メンバーが揃います。



ウエスト・サイド物語 West Side Story (1957年初演)
The Dance At The Gym - Something's Coming - Maria - Tonight - America - I Feel Pretty - Somewhere
誰もが知る曲が並びますが、意外とバーンスタインの曲と知らない人が多いのでは。改めて聴き直してみるとマンボを始めジャズの要素を取り入れて明瞭な米人好みのサウンドとして作られているのがわかりますね。その中にカレーラスのトニーとテ・カナワのマリアの名曲Maria-Tonightが入って来ますね。やっぱりTonightはいいですね。^^
Americaを聴くとThe Niceのロックver.を思い出します、古い!!

オン・ザ・タウン On the Town (1944年初演)
New York, New York - Taxi Number: Come Up To My Place - Carried Away - Lucky To Be Me - Ya Got Me
みんな知っている"New York, New York"の華やかさとメリハリのサウンドに代表される訳ですが、当時のMGMのミュージカル映画を思い出しますね。

キャンディード Candide (1956年初演/1989年改訂)
Overture - Life Is Happiness Indeed - Oh, Happy We - Glitter And Be Gay - I Am Easily Assimilated - Make Our Garden Grow
三曲の中では前奏曲が入って一番管弦楽パートが練られている感じです。ドンシャン的な明瞭な楽風は米国オケが委嘱しそうな気配を感じます。その他曲調も表情が豊かです。

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる? (DGのアルバムTrailer(予告編)版です)


これを聴くとバーンスタインがメロディーメーカーとしても実力があった事がわかりますね。凝ったオーケストレーションが施されている訳でもなく、あくまでもミュージカル曲なのでそうそう聴く機会があるとは思いませんが100周年という事でチャンスが来たのは嬉しい事です。
指揮者としての記念アルバムはDG超大物セットを購入しようかどうか思案中ですw




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サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルのフェアウェル・コンサート『マーラー交響曲第6番』NHKプレミアムシアター

先月2018年6月19・20日のサイモン・ラトル、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(BPO)常任指揮者としてのラスト・コンサートですね。ラトルはBPOとの初ライヴ(1987年客演)もこのマーラー第6番で、CD化されていています。(ラトルのマーラーの6番はもう一枚あり、その2年後1989年に手兵だったバーミンガム市響との録音を残していますね)

このブログでは『マーラー交響曲第6番 40CD聴き比べ』でラトルの二枚のCDもインプレしています。



マーラー 交響曲 第6番「悲劇的」 / ラトル・BPO

【第一楽章】
第一主題は切れ味良く重厚さは抑え気味、アルマの主題では少しスローにして優美さを見せますね。展開部・再現部でも切れ味重視で過度の色付けをしていません。重厚さや華美を控えてクールなラトルらしからぬ第一楽章ですね。

【第二楽章】
アンダンテです。主要主題は抑えた優しさを感じ、副主題のobとclも静かな哀しみを表現しました。中間部も抑えられた流れを継承しまして、ラスト前山場の溢れ出す哀愁は見事でしたね。

【第三楽章】
スケルツォは主要主題はやや速めの流れで切れ味良く、トリオは抑えながら変拍子を活かしました。最終楽章へはアタッカで繋げましたね

【第四楽章】
キーの一つ序奏はオケの個々の楽器の鳴りが澄んで見事でした。提示部第一主題は切れ味そのもの、パッセージを大きく奏でて第二主題をのどかに。展開部・再現部はバランスの良いアゴーギクとディナーミクでコントラストと見晴らしの良さが際立ちました。この楽章は素晴らしい出来でした。


クールで緊迫感のあるマーラー6でした。もっと大袈裟に来るかと思っていましたが、予想を裏切る抑えの効いた締まりの良い演奏で驚きました。白眉は最終楽章でしたね。

既発CDとの比較ではバーミンガム市響よりもBPOとの初ライヴに近く更に落ち着きと切れ味を増した感じでしょうか。


BPOのメンバーのセリフはまさに我儘天狗軍団で笑えましたね。



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トーマス・エンコ(Thomas Enhco) と ヴァシレナ・セラフィモワ(Vassilena Serafimova)のピアノ/マリンバDuo「Funambules」を聴く


Funambules
今回は肩の力を抜いてリラックスできるピアノ/マリンバの音をw

フランス人ジャズピアニストのトーマス・エンコ(Thomas Enhco)とブルガリアのマリンバ奏者ヴァシレナ・セラフィモワ(Vassilena Serafimova)のDuo作品です。エンコは指揮者ジャン=クロード・カサドシュ(Jean-Claude Casadesus)の孫だそうですが、ここではエンコを現代音楽家として調べる必要はまだ感じませんね。
ジャズなのかクラシックなのかと問えば、モーツァルトが居座っているのでクラシックでしょう。エンコの曲や二人による編曲も含めてデュオ曲(一部ピアノ曲)になります。



1.Éclipse(Enhco) - 2.Signs Of Life - Blood Pressure(Zimmerli) - 3.Sonata for two pianos in D Major K.448(Mozart) - 4.Palimpseste(Enhco) - 5.Pavane, Op. 50(Fauré) - 6. Dilmano Dilbero, variations on a Bulgarian folk song(Enhco) - 7.Mare A Mare(Serafimova) -8.Sonata for solo violin in G minor BWV 1001 – Fuga(J.S. Bach) - 9.Aquarium (Improvisation after "Le Carnaval des animaux, 動物の謝肉祭 by Saint-Saëns") - 10.Bitter Sweet Symphony(同上)

上記曲構成ですが個別にインプレする内容ではありません。また最後の一曲はストーンズとザ・ヴァーヴの著作権問題になった同名曲をベースにしていますね。

まずは#1(YouTubeです)を聴いていただくとすぐにわかると思います。ピアノとマリンバの相性が思いの外ぴったりとマッチして上質クールな曲選択に合っていますね。エンコ本人の曲は叙情的でジャジーな気配も感じますね。(キース・ジャレットのソロを彷彿させるので危険性はありますが) その流れでインプロヴィゼーション風な曲もあり、例えば2.Signs Of Life - Blood Pressureなどはミニマルでありジャズっぽいかもしれません。またフォーレなどはピアノ曲でエンコの曲の印象に近い演奏ですね。
白眉は6.Dilmano Dilberoで調性感の薄さと民族音楽を生かしてキレの良い演奏を聴かせてくれます。BGMとはいかない素晴らしい演奏です。
普段は聴かない古典やバロック(MozartとJ.S. Bach)も曲調はそのままにピアノ/マリンバでリフレッシュ、でもモーツァルトは三楽章全部で20'超えで個人的にはキツイですがw

ジャズ風から古典まで、なんともピアノとマリンバの音色が洒脱に感じられます。BGMとして部屋でかけているのですが、こう言った幅広い構成が生きますね。
古典は長いモーツァルトを抜いてバッハだけなら尚可、でした。ヾ^^;






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オッリ・ヴィルタペルコ(Olli Virtaperko) の「Romer's Gap – Three Concertos」を聴く


オッリ・ヴィルタペルコ (Olli Virtaperko, 1973/12/29 - )
注目のフィンランド現代音楽の一端、前衛系のジャズやロックとの融合、を展開するO. ヴィルタペルコですね。更に一味違うのはバロックも視野に入れている事でしょう。
エジンバラ大でピーター・ネルソンに、シベリウスアカデミーでタピオ・ネヴァンリンナやマルック・ルオラヤン= ミッコラに師事しています。チェロに明るいのはミッコラの影響ですね。名前が知られる様になったのは彼のバロック・アンサンブル「Ensemble Ambrosius」がフランク・ザッパを取上げたアルバム「The Zappa Album」で、その後ロックの「Ultra Bra」でも活躍しています。ちなみにEnsemble Ambrosiusはバロック音楽そのものではなく、バロック楽器で現代音楽を演奏するユニットでチェロを担当していました。


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Romer's Gap – Three Concertos
タイトル曲を含む三つの協奏曲と言うことになります。アンプを使ったチェロ、バリトンサックス、モノラル・シンセサイザー、といった興味深いソロ楽器構成ですね。オケはヴィッレ・マトヴェイェフ(Ville Matvejeff)指揮、ユヴァスキュラ・シンフォニア(Jyväskylä Sinfonia)です。



Romer's Gap (2016年), for amplified cello and sinfonietta
I. Cadenza, II., III.
チェロはフィンランドのチェロ・ロックバンド「アポカリプティカ, Apocalyptica」のリーダーであり現代音楽家のペルットゥ・キヴィラークソ(Perttu Kivilaakso)です。
初めは少しアンビエント系の様な気配も見せながら調性感の強い新古典主義的チェロ協奏曲ですが、I. Cadenzaの終盤でチェロにアンプを使ってディストーションをかけています。II.では音数の少ないアンビエント、III.は電子処理したチェロは面白いですが、オケは物分かりの良いフィルム・ミュージック風になります。
特異性や冒険はないです。アンプを使ったディストーションのチェロ以外はマニエリスムで、イマイチです。

Multikolor (2014年), for baritone saxophone and small chamber orchestra
サックスは現代音楽を得意とするヨナタン・ラウティオラ(Joonatan Rautiola)ですね。
ここでもアンビエントの顔つきでサックスは特殊奏法も見られます。無調前衛風の表情を見せていますが多調で括れそうな機能和声の楽曲でしょう。ロングトーンが主体ですが音響系でもありませんね。長い16'です。

Ambrosian Delights (2016/2015年), for Knifonium and chamber orchestra
I. Fat & Filth - Cadenza (attacca), II. Ambrosian Delights (attacca), III. Passacaglia, IV. More is More
元Ensemble Ambrosiusのメンバーで真空管式モノトーンのシンセサイザー「クニフォニウム(Knifonium)」を製作者の一人であるヨンテ・クニフ(Jonte Knif)が弾きます。
楽器構成を変更しただけで音楽は同じ流れになります。処々でポップ感や今更シンセの懐かしい音色を奏でられても…(キース・エマーソンが草葉の陰で笑ってます ^^;)

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  2013年バロック・オーケストラ版になります。


もっとハチャメチャで はじけていて欲しかった気がします。ベースになる管弦楽はアンビエント風か、米オケが好んで委嘱しそうなフィルム・ミュージックや新古典主義的な音楽です。そこに個性的なソロが絡むと言う構成ですね。
真面目さが強く、経歴から期待するほどの新しさや楽しさが見られないのが残念です。




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アルベルト・ポサダス(Alberto Posadas)の「Liturgia fractal」を聴く


アルベルト・ポサダス (Alberto Posadas, 1967 - )
マドリッドの音楽院で習ったスペインの現代音楽家です。二つの方向性があり、一つは数学をベースとしてフラクタル理論やトポロジー変換の様な変移性の技法を用いている事。もう一つはエレクトロアコースティックや空間音響系音楽で、IRCAMでも電子音楽を学んでいます。


Liturgia fractal
「フラクタル典礼」というタイトル通り、五つの異なるフラクタル・モデルに基づいて作られた弦楽四重奏曲集だそうです。フラクタルは"全体と部分の相似性"で、大きな複雑形状は詳細部分も類似する事、になります。良く出てくるのリアス式海岸の図形ですね。という事は… と勝手に想像は膨らみます。
演奏はディオティマ弦楽四重奏団(Quatuor Diotima)です。



Liturgia fractal (2003-2007年), Cycle of five string quartets

■ Ondulado tiempo sonoro...
「うねった時の音響...」はブラウン運動を元にしているそうで、弦のトリル・トレモロが羽虫が飛び交う様に横行します、ブラウン運動?w そしてその中に神経質で切れる様な音が切り込まれます。全体的に音密度は低めで空間を感じさせてくれます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

■ Modulaciones
「転換」も様々なブラウン運動からになっているそうで、テンポはややスローになります。もちろん明瞭な旋律の存在はなく四弦楽器がポリフォニー的に存在する混沌ですが、どちらかと言えば静的なノイズ系でしょうか。ベースになる流れはありますが、空間が意識されます。

■ Órbitas
「軌道」はフラクタル理論を直接的に引用しているとの事ですが、グリッサンドを強めて一曲目に回帰した様な展開です。キロキロキロ・キュルキュル〜、みたいなw 即興的高密度なパートがあります。

■ Aborescencias
Arborescencias?, ジャケットとライナーノートで異なりますが、この構成の中で例外的なパートでソロ・ヴァイオリンと弦楽三重奏の組合せだそうです。どこがソロでしょうか?!、良くわかりませんね。ただそれまでの三曲とは異なり旋律を奏でる流れが増えてホモフォニー的な感が強くなっています。

■ Bifurcaciones
「分岐点」は再び強固な塊に戻るそうです。どこが??って言う感じですが。面白いのは曲が後半になるほど強音パートが増えてホモフォニー的に連携する事でしょう。個人的には、そうではない方が楽しめますが…


トリル・トレモロ・グリッサンドの静的ポリフォ二ー基本の構成で、後半は強音でホモフォニー的な連携付も見せています。ただ極端な無調混沌ではなく、特に静音パートでは空間を感じさせてくれますね。

さてどこがフラクタルか? ライナーノートのサンプル・スコアからは大小の相似性は不明ですし、ストレッチされたロングトーンとトリル? その辺が簡単にわからないのも前衛現代音楽でしょうw 楽しめますね




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フィンランド国立歌劇場公演 ファーゲルルンドの 歌劇「秋のソナタ」を NHKプレミアムシアターで観る

イングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman)原作の1978年の映画「秋のソナタ, Höstsonaten」をベースに、フィンランド独立100周年を記念してフィンランド国立歌劇場が委嘱し、セバスチャン・ファーゲルルンド(Sebastian Fagerlund)が手がけた全2幕のオペラ作品ですね。フィンランド現代音楽家ファーゲルンドの第二作目のオペラです。

2017AutumnSonataFNO.jpg
(画像はwebよりお借りしました)


あらすじ
有名ピアニストの母と残された娘の葛藤を描く暗く鬱な内容です。

《第一幕》
著名ピアニストのシャルロッテが7年も会っていない娘エヴァに会いに来ます。エヴァは夫ヴィクトルとの息子エリックを3歳で亡くし、妹ヘレナは難病です。そしてシャルロッテ自身もパートナー、レオナルドを亡くなっています。
全て自分の世界しか話のない母と、不満を抱えるエヴァは折り合いが付きません。シャルロッテは、そこで難病の次女ヘレナをエヴァが引き取った事を知ります。その夜二人は感情のもつれを剥き出しにします。
《第二幕》夜の場の延長
母への不満を爆発させるエヴァ、演奏家としての不安を表出させるシャルロッテ、二人の心が対比されます。自分の世界に生きる母と僻みの娘の本音の錯乱にヘレナも加わりながら、シャルロッテは改心を誓います。ツアーに戻った母にエヴァは侘びる手紙を書き、まだ時間はあると願います。


演出

世界初演ですから、このブラウンシュヴァイク演出が基本となる訳ですね。音楽は北欧現代音楽ですから調性は薄く、ストーリーも鬱的で演出はシンプルになっています。プロジェクション・マッピングは使っていますがアヴァンギャルドさはありません。


舞台・衣装

広い舞台にシンプルな道具立、衣装は現代、まさに今の時代のオペラ設定です。


配役

明瞭な旋律を持つアリアや歌唱はありませんが、前衛的な歌唱跳躍のシュプレッヒゲザングもなく、感情爆発的激しさもありますがフラットな印象です。エヴァの葛藤の爆発も主に表情で表現することになるのでズンネガルドとシャルロッテのオッター二人の対比は重要で、見事でしたね。


音楽

曲は北欧現代音楽の流れで、演奏は陰影を付けて舞台を引き立てる様に感じました。


細川俊夫さんのオペラでも感じますが、現代音楽オペラらしい葛藤を描く作品です。動きの少ない中で人の心を描くのは現代音楽に合っていと思いますね。

とは言えストーリー展開は単純で、娘の中絶等々の話を挟んでも深みに欠けてしまいます。音楽に寄りかかれない分、演出が重要になるのかもしれません。
今回はオッターの老練?(62歳ですw)さが魅せてくれましたが、もう一回観たいかと言われれば、どうでしょう…



<出 演>
シャルロッテ・アンデルガスト:アンネ・ソフィー・フォン・オッター[Anne Sofie von Otter]
 ・世界で活躍するピアニスト
エヴァ:エリカ・ズンネガルド[Erika Sunnegårdh]
 ・シャルロッテの娘
ヴィクトル:トミ・ハカラ[Tommi Hakala]
 ・エヴァの夫
ヘレナ:ヘレナ・ユントゥネン[Helena Juntunen]
 ・シャルロッテの次女、難病で身体が不自由
レオナルド:ニコラス・セーデルルンド[Nicholas Söderlund]
 ・亡くなったシャルロッテのパートナー、回想シーンで登場
エリック:オットー・レトネン[Otto Lehtonen]
 ・3歳で亡くなったエヴァとヴィクトルの息子、思い出で登場
  (どう見ても3歳とは思えない年齢でしたがw)

<合 唱> フィンランド国立歌劇場合唱団[Finnish National Opera Orchestra]
<管弦楽> フィンランド国立歌劇場管弦楽団
<指 揮> ヨーン・ストルゴーズ[John Storgårds]
<演 出> ステファン・ブラウンシュヴァイク[Stéphane Braunschweig]


収録:2017年9月23日 フィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)


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グロリア・コーツ(Gloria Coates)の「ピアノ五重奏曲 / 交響曲 第10番」を聴く


グロリア・コーツ (Gloria Coates, 1938/10/10 - )
先日もインプレした米女性現代音楽家のG.コーツです。四分音や倍音を使った幽玄な音使いが特徴的で、クラスター的な様相も見えますね。
画家としての活動もありジャケットは自身の「Parallel Univers」になります。


Piano Quintet Symphony No.10
先日は室内楽をインプレしましたが、今回は交響曲を含んだ先日リリースのアルバムになります。
ピアノ五重奏曲はエミリー・ディキンソンの詩を元に作られ、演奏はクロイツェル四重奏団です。交響曲第10番はサブタイトルにある様にバイエルン州エルディングの「ケルト古代遺跡」を元にしています。演奏はスーザン・アレン指揮カリフォルニア芸術大学(カルアーツ)管弦楽団ですが、アレンは本曲で指揮者デビューしましたがその一年後に他界しています。



ピアノ五重奏曲 (2013年)
近年作で四楽章構成です。もちろん無調ですが旋律らしきものが存在してpfとクァルテットの関係はホモフォニーでもあり、カノンの様な構成感があります。微妙な音程の四部音(第三楽章でpfにも感じられますが調律して出しているのでしょうか)と倍音の音色を全編通して反復で響かせるのがメインで、ドローン的なグリッサンドもあります。その辺りがコーツらしさで印象は"深淵"でしょうか。面白いですね。

交響曲 第10番「Drones of Druids on Celtic Ruin」(1989年)
彼女が得意とする交響曲で三楽章形式です。第一楽章は倍音と思しき単音の共鳴音の反復を表に出しています。パォ〜ン・パォパォォ〜ン、みたいなw 第二楽章では打楽器楽章、小太鼓の連打を中心、で単音の響きではなくドラミングの音色が交錯します。第三楽章は、その組合せになっています。とてもシンプルで、やや単調に感じてしまうかもしれません。(第三楽章は無い方がいいかも…)


幽玄さを四部音と倍音の響きで構成するポスト・ミニマルですね。欧州前衛の電子音楽的な空間音響系とは異なりますが、響きを主体にする点では空間音響的な現代音楽です。(G.コーツの活躍の場は欧州ですが…)

"Special thanks"の中にDavid Rosenboomの名前がありますが、ニューロフィードバックを引用しているのでしょうか? (ライナーノートには特に記載はありません)




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マイケル・ティルソン・トーマス/SFS で聴く チャイコフスキー交響曲第6番『悲愴』


M.T.Tで新しい「悲愴」が見つかったのでつい入手です。今回は配信のみの発売で、2017年3月1-4日の録音ですね。
「悲愴, Pathétique」は数々ありますが、レコード時代からムラヴィンスキー/レニングラードPO(DG盤1960年)が頭の中にあります。どうしてもこれがスタンダードで自然と比較してしまっているでしょうか。さてマイケル・ティルソン・トーマス/サンフランシスコ交響楽団はどうでしょう。



チャイコフスキー 交響曲第6番『悲愴』ロ短調 Op.74
【第一楽章】
スローで重苦しい序奏から第一主題をテンポを上げて第二主題は晴れない気分を軽妙さと美しさで流します。ディナーミク抑えめアゴーギクを振ってくる構成を感じますね。トゥッティから入る展開部も激しさよりも見晴らしの良さを感じます。再現部からコーダはあっさりしていますが、スローな提示部・再現部と速い展開部のコントラストが効いた構成です。
【第二楽章】
テンポ・情感がコントロールされたワルツで殊更の甘美さは避けて、中間部でも哀しみに特別に重み付けを増やしません。クールです。
【第三楽章】
スケルツォは軽量、行進曲も興奮を排除しています。前中半はやや肩透かしかもしれませんが反復後の行進曲は、それでもアゴーギクを効かせて勇壮さを見せてくれますね。(興奮は抑えていますが)
【第四楽章】
流れは一転、提示部第一主題から情感のこもった流れを作り、この楽章の持つ特異性を掴む様に山場も緊張感があります。明らかにこの楽章に焦点を当てた構成を感じますね。
全体楽章的には逆の構成の方がしっくり来たのでは? と思ってしまいます。


M.T.トーマスらしいクールな「悲愴」ですね。心にのし掛かる重さや熱い情感は回避しながら最終楽章で一気にエモーショナルさを見せつけます。
中二つの楽章がさっぱりし過ぎなのが個人的には残念な気がします。






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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。





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