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2006年ザルツブルク音楽祭 『ZAIDE・ADAMA, ツァイーデ・アダマ』モーツァルト と チェルノヴィン



ツァイーデ・アダマ  (ZAIDE・ADAMA)
モーツァルト生誕250年を記念にザルツブルク音楽祭で全22作品の上演をDVDにまとめたシリーズ「MOZART 22」の第9弾「ZAIDE・ADAMA」(2006年)です。

この作品はモーツァルトの未完作品"ZAIDE"に新たに作られた"ADAMA"を入れて再構築しています。

ZAIDE(1780)は「後宮からの逃走 (1782)」の元となった作品でタイトルも見つかっていないので主人公の名前をとっていますね。


2006ZaideAdama.jpg
(映像は演出のClaus Guth氏のwebよりお借りしました)



ハヤ・チェルノヴィン Chaya Czernowin
再構築を担当した前衛女性現代音楽家チェルノヴィンは、ザルツブルク音楽祭の演出家ペーター・ルジツカ(Peter Ru­zicka)から委嘱され、脚本もZAIDEのヨハン・アンドレアス・シャハトナー(Jo­hann An­dreas Schacht­ner)を元にチェルノヴィンが担当しています。ちなみにADAMAとはヘブライ語で地球(earth)の意味だそうです。(基本的にはチェルノヴィンの作品と言っていいでしょう。スコアをリリースしているSCHOTT社も作曲者は分けていますがチェルノヴィン作品としています)


チェルノヴィンは次の様に言っていますね。

"ADAMAはモーツァルトのZAIDEの物語の対位的になっていて、自分がこの新たな作品の完全性に貢献したのは伝統的アリアではなく、フラグメントやピースをZAIDEのエレメントと交互に時折ラップする様にする事です。その意味で、ADAMAはZAIDEの鏡と言えるでしょう"

事実チェルノヴィンの言う通り、全29シーンに細分化されて ツァイーデが15シーン(全曲)、アダマが13シーン、一つの舞台で二つの流れが演じられます。(オケも指揮者も出演者もそれぞれ別です)


■ 物語の構成 ■
"ZAIDE"にはZaideとGo­matzの二人の恋人がいて、それは中近東の想像上の過去になります。"ADAMA"にも男女二人の恋人がいて、今日の中近東での宗教的かつ政治的な闘争に巻き込まれています。
時代が異なる恋人の関係を、モーツァルトの政治や文化の衝突で監禁された(Zaide)不運の愛と、イスラエル女性とパレスチナ男性の暴力で引き裂かれた愛で対比しています。ADAMAの配役には名前がありません。女・男・父と言った具合です。
(ちなみにチェルノヴィンはイスラエル出身。また、今回の演出は地域性を見せません)





音楽
ADAMAのシーンはモロに前衛現代音楽で、ノイズ系を含む前衛音楽に無調の旋律を歌います。もちろんZAIDEは古典音楽とアリアがあるので、その対比になっています。

一般的に前衛現代音楽家でもオペラの歌唱は調性+不協和音レベルになるのが殆どですが、チェルノヴィンは違いますね。歌唱自体に難しい無調旋律を与えています。これは素晴らしいですね。

オケ配置はZAIDEサイドはオケピットですが、ADAMAサイドは舞台の右で舞台道具の扉のガラスから見る事が出来ます。


演出
これが初演ですから比較するものはありません。配役の他に、大きな顔の被り物の人物が舞台に存在します。また血を見せるシーンもあって少しアヴァンギャルドですね。ZAIDEとADAMAそれぞれの配役は常に舞台に居てそれぞれ協調する演技設定になっています。二つのストーリーのミラーリフレクションにしていますね。

全体としては心象表現の強い前衛演出でZAIDEが持つロケーション的ストーリーを表現する事はありません


舞台・衣装
舞台は狭いですね、オケがいますから。白い部屋、そこに5倍くらいの大きさの家具が配置されて、人物が小さく見える様になっています。ADAMAでは全面にプロジェクション・マッピングが施されたりします。衣装はシンプル現代的です。


配役
【ZAIDE】Gomatzのレティプーはテノールものびのびと演技も熱がこもっています。Zaideのエルドマンはソプラノもよく声が出て、愛らしさが表現されていました。良い演技とテノールを聴かせてくれたのはSlimanのエインズリーで第二幕を締めましたね。曲があまりにもモーツァルトっぽ過ぎでしたがw

【ADAMA】二人は無調で難しい歌が入ります。心地良い旋律は存在しない訳で、そこは配役の良し悪し外です。演技は常にシリアスな気配が表現されて二つのストーリーの合成に貢献していますね。



ADAMAが完全に前衛現代音楽で出来上がっているのが驚きです。それが出来たのは古典の流れと前衛の流れをタイミング良く入れ替える構成にしたからでしょう。

その素晴らしさを構築したのがチェルノヴィンと言う事になりますね。クラウス・グースの演出も古典ZAIDEを前衛的にして統一感があり、全体として前衛オペラです。

今や前衛演出全盛ですからモーツァルト・ファンの方も違和感は少ないでしょうし、前衛現代音楽ファンとしてはもちろんオススメの作品です!!



【出演者】
[ZAIDE]
 ・Mo­jca Erd­mann, Zaide
 ・Topi Le­htipuu, Go­matz
 ・Jo­han Re­u­ter, Allazim
 ・John Mark Ains­ley, Soli­man
 ・Ren­ato Gir­o­lami, Os­min
[ADAMA]
 ・Noa Fren­kel, Wo­man
 ・Yaron Windmüller, Man
 ・An­dreas Fisc­her, Fath­er
 ・Paul Lorenger, Dan­cer
 ・Bernd Grawert, Act­or

【オケ・指揮者】
[ZAIDE]
 ・Moz­ar­teum Or­ches­tra Salzburg, Ivor Bol­don(con­d.)
[ADAMA]
 ・Aus­tri­an En­semble for New Mu­sic, Jo­hannes Kal­itzke(con­d.)

【演出】
 ・Claus Guth


ザルツブルク音楽祭 2006年8月15-19日

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





セバスチャン・ムラート(Sebastian Mullaert)『Natthall』チューリッヒ・トーンハレ管 "tonhalleLATE - classic meets electronic"



セバスチャン・ムラート (Sebastian Mullaert, b. 1977)
スウェーデンのマルチ・タレントのムラート(マーレイとも)、来日回数もあるエレクトロニクス・ミュージック、DJ、ライヴ・パフォーマンス、プロデューサーですね。その主舞台はもちろんクラシックではありません。ポップの世界からクラシック・クロスオーバーへ、今回は自らの楽曲を携えてチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団との共演という新しいエレクトロニクスの世界へ踏み込みました。


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Natthall w/Tonhalle Orchester Zürich
トーンハレ管のプロジェクト"tonhalleLATE - classic meets electronic"として参加・今年リリースされました。クラシック音楽とポップ系エレクトロニクスのクロスオーバーで、無理やり言えばポップ系現代音楽になりますね。ちなみにタイトルはスウェーデンの美しい断崖風景地だそうで、そこにインスパイアされたとの事。

トーンハレ管のメンバーは以下です。
Julia Becker (vn), Alexander Neustroev (vc), Felix-Andreas Genner (cl), Mischa Greull (hr), Sarah Verrue (hp), Peter Solomon (pf)







1. Living Invitation - 2. As The River Pass - 3. No Words For A Beautiful World - 4. Ascending Of A Spotless Bird - 5. Undressing The Sky - 6. Views Of Natthall - 7. Moonwaker - 8. Woods of Admittance - 9. Rest Of The Heron

"1. Living Invitation"はアンビエントですね。ロングトーンは何処までが楽器なのかエレクトロニクスなのかが微妙です。反復打音もあってミニマル傾向も感じます。そこからは、"2. As The River Pass"ではエレクトロニクスらしい重低音ビートが、"4. Ascending Of A Spotless Bird"では弦楽奏を生かして、"8. Woods of Admittance"はピチカートと中華和声?、と言った多少の差異は見られますが、基本的に同じ様なサウンドです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  エフェクト風景映像付き "6. Views Of Natthall" です。
  これがある方がインスタレーション的で面白いかも


いずれも響く重低音とミニマルがベースのトランス系でしょう。何処にもドキッとする様な新しさはありません



ミニマルがベースのエレクトロニカやハウス、トランスと言った音楽を超える何かは感じられませんでした。もっと極端な、もっと新しい、もっとインスピレーション度の高い音楽であって欲しかったです。

トーンハレ管(一部メンバー)がやった事に意味を見出すくらいが目新しさでしょうか。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ハヤ・チェルノヴィン(Chaya Czernowin)の「冬の歌, Wintersongs」今の時代の前衛現代音楽



Wintersongs (Chaya Czernowin, b. 1957)
前回に続きチェルノヴィンなので、紹介はそちらをご覧下さいね。

voice入りの室内楽集で、"Wintersongs" と "Five Action Sketches" の二つのシリーズものになっています。チェルノヴィン得意のパターンですが、後者は一曲2〜3.5分の小曲です。Wintersongsは前回インプの"Shifting Gravity"にもIII.が入っていました。
面白いのは作品を一気に作る様で、今回も一曲を除き2014年に作られています。(異なる一曲"6.Wintersongs II"は2003年で "III"と同じです)

演奏はICE [International Contemporary Ensemble]、Steven Schick(cond.)、voiceはJeffrey Gavett(baritone 1,2,4,5,7)、Kai Wessel(contra tenor 1,2,4,5,7)です。


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1. Wintersongs V: Forgotten Light (2014)
全楽器協奏みたいなロングトーンのトゥッティ、静空間、特殊奏法と打楽器音、弦グリッサンド、いろいろな構成を見せてくれます。基本的に旋律はなくて"音塊"です。voiceはもちろんヴォーカリーズで歌詞は無く人間特殊声法?!です。チェルノヴィンの楽風品評会の様な24'ですが、ノイズ系があまり出て来ませんね。


2. Five Action Sketches I: Breathe (2014)
2'弱のvoiceや各楽器のホモフォニー的対話です。voiceは例によって特殊声法wですね。それが面白いです。


3. Wintersongs IV: Wounds / Mistletoe (2014)
各楽器が旋律の無い音出しを繰り返します。それが静空間の中に散りばめられる感じで、背景音と前音の様な構成もあります。音の会話は進むに連れて濃くなったり、静が強くなったりと変化しますね。最後は大きな塊と化してから鎮まります。
voiceが入らないのでシンプルな構成ですが、入ったらもっと面白かった?!

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア付きです



4. Five Action Sketches II: So Narrow (2014)
読経かドローンの様なvoiceから入って、台詞のない対話が見え隠れします。その時に一瞬ですが機能和声的ハーモニーになるのが面白いですね。voiceグリッサンドも後半出て来ます。


5. Five Action Sketches IV: Sliver (2014)
ロングトーンでノイズも入ったドローンを背景にして、特殊奏法の音が前面に現れます。一回だけ強音がその中に出現します。


6. Wintersongs II: Stones (2003)
この一曲だけ古い2003年作品です。低音音塊が辺りを彷徨う感じで、生き物が蠢く感じなのはチェルノヴィンのこの時代の楽風ですね。魑魅魍魎の暗躍といった気配です。


7. Five Action Sketches V: Sand (2014)
珍しく楽器がハーモニー音を出しますね。もちろん不協和音ですが、そこからグリッサンドで分かれて行くのが面白いです。そしてvoice特殊声法の登場です。



無調混沌ですが、即興的ポリフォニーの様な音のカオスではありません。静の中に旋律の無い音塊がホモフォニー的に出現するのがチェルノヴィンです。

まだノイズ感が低いですが、今(2020)のチェルノヴィンの作品方向になっていますね。特殊声法とも言える肉声が入るとますますその面白さが増すのも特徴的です。個性的で素晴らしいですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ハヤ・チェルノヴィン(Chaya Czernowin)の室内楽集『Shifting Gravity』



ハヤ・チェルノヴィン (Chaya Czernowin, b. 1957)
C.チェルノヴィンはイスラエル出身で米在住の女性現代音楽家ですね。米西海岸UCSDでB.ファーニホウに師事して、その影響が大きいですね。従って欧エクスペリメンタリズムの"新しい複雑性"を標榜しファーニホウの後任としてUCSDで教鞭をとり、今はハーバード大で指導しています。(英出身のファーニホウも今は米ビバリーヒルズ在住でスタンフォード大で教鞭をとっています)

作品もさることながら、今や指導者としての注目度が高い音楽家の一人になるでしょうか。楽風は特殊奏法のノイズ系でエレクトロニクスや調性に近い方向性も見せます。"新しい複雑性"ですが、強度な演奏・スコアの難異性ではありませんね。(以上、前回インプレ "Hidden" の紹介文と同じ)


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Shifting Gravity
チェルノヴィンの室内楽集になります。"Anea Crystal" と "Winter Songs" は彼女が得意とする連作楽曲の一部でしょう。

演奏はQuatuor Diotima(1,3,5), Ensemble Nikel(2), ascolta(4), ensemble courage(6), IRCAM(6)、指揮者略です。







1. Anea Crystal: Seed I, for string quartet (2008)
奇妙なピチカートから入って来ます。この時点で前衛色満開ですねw すぐにトリル・トレモロが現れ、対位法の様な流れを作り、そこにチェルノヴィンらしい弦のノイズが絡んで来ますね。埋め尽くす様な音では無くて、空間に散りばめた"音"です。猫の鳴き声の様なグリッサンドも出現して、会話的でもあります。後半は強烈なノイズを発生させますね。無調ポリフォニー混沌ではありません。


2. Sahaf, for four instrumentalists (2008)
pf, e-guitar, perc, sax, で、旋律感は薄く"音"の交錯です。楽器構成がセンス抜群で音の広がりが面白いですね。ここでもポリフォニカルでは無くてホモフォニーの様な連携を形作ります。その中にポリフォニカルな密集音も時折発生させますが、全体としては空間と音の印象ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ensemble Hinge によるLIVEです。音作りがよくわかります
  こちらの方がメリハリが強いですね



3. Anea Crystal: Anea, for two string quartet (2008)
1.のver.2で、同じ様にピチカートから入り、直ぐにグリッサンドとの絡みになっています。そこからノイズになるのも同じ流れですね。曲全体としても延長線上に、と言うか同じ流れでしょう。楽器構成が倍になっている感じも薄めですが。


4. Sheva, for seven instrumentalists (2008)
楽器編成が増えて少しポリフォニーの流れが入りますね。ゾウの咆哮の様な管楽器が特徴的で、弦楽器も生き物の雄叫び的に絡みます。音塊が叫ぶサファリ・ツアーみたいな音楽です。pfだけが即興的な音を出しますね。


5. Anea Crystal: Seed II, for string quartet (2008)
1.のver.3ですね。今回の入りはバルトーク・ピチカートとグリッサンドが一緒ですね。グリッサンドが主の流れを作りながらトリル・トレモロが蠢くという感じです。トリル・トレモロはノイズに変化もしています。切れ味鋭い短いボウイングが飛び交うのも面白いですね。


6. Winter Songs III, for ten instruments and electronics (2003-2004)
ここまでの5曲とは少々異なり、無音空間を感じる音の構成です。音があるからこそ空(くう)がある、と言った感じでしょうか。旋律はなく"音塊"で低音主体です。闇夜の魑魅魍魎なのかナイト・サファリなのか、見えないけれど何か居るゾ、みたいなw エレクトロニクスは後半のノイズはわかりますが、それ以外はよくわかりません。



まだ2010年より前の作品なのでノイズ主体にはなっていませんね。旋律感は低く無調の"音塊"によるホモフォニーで、その中にノイズも入る感じです。

これで即興的ポリフォニーにするとB.ファーニホウの方向になってしまいますが、弦のグリッサンドなどはシェルシやシャリーノの方向が見えたりしますね。ラッヘンマンを思わせる特殊奏法ノイズがこの後のチェルノヴィンの方向性になりますね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アレクサンドル・タローの『ヴェルサイユ』17-18世紀フランス音楽をモダン・ピアノで



Versailles Alexandre Tharaud, pf
前回インプレの「バルバラ」では素晴らしいシャンソンを聴かせてくれ、多方向性のピアノを楽しませてくれるA.タローですね。

ここでは17-18世紀のフランス音楽を取り上げています。当時ですからチェンバロ(仏ではクラヴサン)曲ですが、もちろんタローは現代のピアノ(pianoforte)での演奏です。ギター曲などは本人がトランスクリプトしていて、9にはソプラノ(サビーヌ・ドゥヴィエル)が入り、13はピアノ連弾(ジュスタン・テイラー, pf)になります。







1.ラモー:プレリュード 2.ラモー:鳥のさえずり 3.ド・ヴィゼー:サラバンド 4.ラモー:タンブーラン 5.ロワイエ:愛らしい 6.ラモー:ガヴォットとドゥーブル 7.ダングルベール:神の世界 8.ロワイエ:スキタイ人の行進 9.ラモー:来て 結婚の神よ 10.ロワイエ:タンブーラン I, II 11.クープラン:さまよう亡霊 12.デュフリ:ポトゥアン 13.ラモー:未開人(4手編曲版) 14.ダングルベール:シャコンヌ 15.ダングルベール:「カドミュスとエルミオーヌ」序曲 16.クープラン:パッサカーユ 17.ダングルベール:フーガ・グラーヴェ 18.デュフリ:ラ・ド・ブロンブル 19.リュリ:トルコ人の儀式のための行進曲 20.バルバトル:スザンヌ 21.ダングルベール:スペインのフォリアによる変奏曲

まず入りの"1.ラモー:プレリュード"ですが、とてもエモーショナルです。この曲のオリジナリティ通りなのか不明ですが、硬質なpfの音色でサロン・ミュージック的な甘美さは避けている気がしますね。"4.ラモー:タンブーラン"はリズムを強く刻んで揺さぶりを強くチェンバロが奏でる旋律とは異なる印象に、"6.ラモー:ガヴォットとドゥーブル"では強鍵で一音一音の粒立ちを明瞭に鳴らします。

"8.ロワイエ:スキタイ人の行進"では更に強烈に音を弾ませ唸らせてチェンバロでは絶対に出せない曲調にしていますね。今回のベスト・トラックでしょう。ソプラノが入る"9.ラモー:来て 結婚の神よ"ではpfが硬すぎてフィット感は今ひとつ、13.のピアノ連弾も特に印象的ではありませんね。

聴く前からイメージしていた仏印象派的なpfは無く、無理やり言えば?"17.ダングルベール:フーガ・グラーヴェ"の音色でしょうか。強鍵でpfを鳴らして来る流れが主体となって、全体としてはやや似たり寄ったりかもしれません。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  "1. ラモー:プレリュード"、場所はベルサイユ?!



チェンバロのイメージと頭の中で重ねて聴いてみると、pfならではのアゴーギクとディナーミクの振り方が濃くなっていますね。

当時の楽風を現在のpfで再現すると言ったコンセプトではありません。新しいアプローチで硬派なピアノソロですから、好みは別れそうです。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アルトゥーロ・フエンテス(Arturo Fuentes)の「Broken mirrors, Liquid crystals, Ice reflection, Glass distortion」ディオティマ弦楽四重奏団



アルトゥーロ・フエンテス (Arturo Fuentes, b. 1975)
オーストリア/インスブルック在住のメキシコ人現代音楽家アルトゥーロ・フエンテス(Arturo Fuentes, 1975 - ) です。1997年からミラノ(ドナトーニに師事)・パリ(INA-GRM, IRCAMで活動したH. Vaggioneに師事)・ウィーンで学び、器楽曲や電子音楽だけでなくダンス・ビデオ・エレクトロニクスの劇音楽も手がけています。
極端ではないですが各楽器に特殊技法を展開する構成はラッヘンマン的でもありますね。(以上、前回"Space Factory"インプレ文と同じ)

CDのリリースがNEOSや今回のKAIROSという処を見ると欧エクスペリメンタリズムの流れに乗っているのでしょう。ダルムシュタットやドナウエッシンゲンでの話は聞きませんが、師事した音楽家を見てもそうなりそうです。


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ディオティマ弦楽四重奏団, Quatuor Diotima
今回は弦楽四重奏曲集で、演奏はディオティマSQです。
フランスの音楽院出身者四人により1996年に設立されて、古典から前衛までレパートリーがありますね。"ディオティマ"の由来はプラトン他の作品に出てくるヒロインの名前で、ノーノの弦楽四重奏曲からとっているそうです。H.ラッヘンマンやB.ファーニホウと言ったビッグネーム他、前衛現代音楽家に委嘱していますね。







1. Broken Mirrors (2008 / rev. 2014)
無調でポリフォニー、特殊奏法を前面に出す感じはありません。先鋭で刺激があるボウイングで明確な反復もなく、いかにも欧エクスペリメンタリズムの印象でしょう。破壊的でも静の空間でもなく、やや古い印象になるかもしれません。後半のロング・トーンとの絡みは面白いですね。


2. Liquid Crystals (2011)
特殊奏法ではないのですが、音の構成が面白いですね。ちょっとシャリーノを思い浮かべました。ポリフォニーですが、何やら動物が蠢いている様な感じです。表情があって、後半にノイズ音が入ったり、1. に比べると面白さがありますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ディオティマSQによるLIVEステージです



3. Ice Reflection (2014)
2.の延長上で、細かいトリル・トレモロでのグリッサンドも入って来ます。旋律というよりも擬音の様なポリフォニーで、ネズミが走り回っている様な。一瞬の"間"も多くなって一層その感が増している感じです。単純反復も少し出て来ていますね。


4. Glass Distortion (2015)
この曲だけ25'と長く、メインディッシュでしょう。無調ポリフォニーからの脱却感があって、背景音に前面音の様な構成があります。ドローンの様な超ロングトーンのバックグラウンドが 3.に入った感じです。前面音は短旋律らしき音も出て来ましたし、明らかなノイズ系の音もあります。トリル・トレモロも反復感があって、ホモフォニー的なパートも見られます。少し多様性に入って来た感じがありますね。この曲が一番面白いです。



類型性を感じる前衛弦楽四重奏曲です。いかにも欧エクスペリメンタリズムの音楽で、今や新しさを感じられませんねェ。

ただ、作曲年代と共に面白さは増しているので、また聴いてみたいと思います。ライナーノートのスコアを見ると無調で拍子記号とBPM指示があって、構成はシンプルですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2019ベルギー王立モネ劇場公演 オッフェンバックの歌劇「ホフマン物語」を NHKプレミアムシアターで観る


ジャック・オッフェンバック(Jacques Offenbach, 1819-1880)の人気オペラ「ホフマン物語, Les Contes d'Hoffmann)ですね。昨年(2019)のベルギー王立モネ劇場の公演です。

ホフマン物語といえば一人四役を演じる事ですよね。5幕中の四つのシーン(1,5.ルーテルの酒場 - 2オランピア - 3.アントニア - 4.ジュリエッタ)でそれぞれの役になりますね。役名が変わるだけで本質的には同じ様な役ですが。(このブログ的にはアルバン・ベルクの「ルル」を思い浮かべます)

未完成作品なので補筆版が多く存在しますが、現在のスタンダード"ケイandクック版"での上演です。



(公式Trailerです)


演出
演出家のヴァルリコフスキには知見がないのですが、現代のハリウッドに置きかえてホフマンを錯乱気味の映画監督にしています。

オリジナルと変えてあるのは次のシーンで、いずれも映画の引用が主です。■1.オリジナルに無い英語の台詞(プロローグと第三幕ラスト)挿入。本編はもちろん仏語ですが。また■2.第三幕のアントニアは死にません。■3.最後はオスカーの授賞シーンで、監督ホフマンが(英語で)割り込んで来ます。(ラストは中途半端感を拭う様にミューズが現れて救済シーンです)

全体的にはその置きかえが中途半端な印象です。もっと極端に、アヴァンギャルドに!!、ですね。


舞台・衣装
舞台は大画面のプロジェクション・マッピング、暗い舞台、シンプルな道具配置。キャストはケバケバしい化粧、今風の安っぽい衣装で大胆下品風、と言った感じです。今風ですが、衣装は内容のわりにインパクトが足りない感じですね。


配役
【男性陣】タイトルロールのE.カトラーは それなりに演技も作ってテノールも程々に生きていた感じです。リンドルフ(他)のG.ブレッツは敵対するイメージは合っていましたね。ただバリトンがややテノール風で対比感が弱かったかも。メイクは明らかにジャック・ニコルソンの映画"ジョーカー"のパロディでしょう。アンドレス(他)のL.フェリックスは存在感が弱かったですね。

【女性陣】注目のオランピア(他)のP.プティボンですがsopはともかく あまり面白さがありませんでした。これは完全に演出の問題でしょう。ニクラウスとミューズのM.ロジェが一番個性的な印象を受けましたね。mezと演技はそこそこなのですが存在感がありました。

キャストが今ひとつ感だったのは演出による処が大きかったのでは無いでしょうか。(個人的にあまり好みの演出ではありませんでしたから)


音楽
指揮のアルティノグリュにも知見がないのですが、強音パートはともかく静音パートが弱かった感じがしますね。



どの幕もオリジナルに対するハリウッド置きかえが中途半端で、それが全ての印象の足を引っ張っていた感じです。

舞台の置きかえをするならその落差も徹底的であって欲しかったです。"これじゃ歌詞と合ってないよねェ"くらい前衛に!!w


<出 演>
 ・ホフマン:エリック・カトラー [Eric Cutler]
 ・オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ:パトリシア・プティボン [Patricia Petibon]
 ・ニクラウス/ミューズ:ミシェル・ロジエ [Michèle Losier]
 ・リンドルフ/コペリウス/ミラクル/ダッペルトゥット:ガーボル・ブレッツ [Gábor Bretz]
 ・アンドレス/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:ロイク・フェリックス [Loïc Félix]

<合 唱> モネ劇場合唱団
<管弦楽> モネ劇場管弦楽団
<指 揮> アラン・アルティノグリュ [Alain Altinoglu]
<演 出> クシシュトフ・ヴァルリコフスキ [Krzysztof Warlikowski]


収録:2019年12月17・20日 ベルギー王立モネ劇場 (La Monnaie)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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