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カールハインツ・シュトックハウゼンの初期エレクトロニクス:EtudeからHymnenまで


The early electronics music 1950s-1960s
(Karlheinz Stockhausen, 1928-2007)
今更ですが、シュトックハウゼンの1950年台から1960年台のエレクトロニクス楽曲9曲の推移を通して聴いてみようかと。
所有は"Stockhausen-Verlag盤"で、分厚いコテコテの解説付きです。


【1950年台】 = テープとサイン波の変調 =
Etude (1952) - Studie I (1953) - Studie II (1954) - Gesang der Jungelinge (1955-56) - Kontakte (1953-60)
この時代のエレクトロニクスとはテープ録音と編集の作品です。今の様にデジタルデータとして重ねられないので編集はテープの切り貼りです。
音源はオシレーターからのサイン波(単一正弦波)やカラーノイズ(スペクトル)で、それを変調(リング変調 等)やフィルタ処理し合成して楽曲化します。(ベースとなるのはセリエルの数字列です)
これもアナログなので今の様に手軽に色々な変化をとは行きません。


【1960年台】 = LIVEエレクトロニクス =
Mixtur (1964) - Mikrophonie I (1964) - Mikrophonie II (1965) - Telemusik (1966) - Hymnen (1966-67) ←インプレ済み
それまで音源はサイン波でテープに残しましたが、ライヴエレクトロニクスとなり生楽器の音を上記変調技術で直接変調させ出力します。要はエフェクターですね。
そして、それをモメンテで楽曲化します。


変調やフィルターは音だけでなく電信・他 周波数関係の基本技術、シンセサイザーやエフェクターの基本原理です。リングモジュレーター変調は"周波数シフター"として音をウネらせたりするのに使っていますし、同時にフィルターによる波形選択も可能です。カラーノイズもノイズジェネレータで使われています。

時代背景的にも1960年台から初期のシンセやエフェクターが登場するので特別感はありません。
単純なオシレーターからのサイン波を変調させてノイズ系のパフォーマンスを見せる音楽家さんはその手のライヴハウスに今でもいらっしゃいます。





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(amazonには見つかりません)


1. Etude (1952) 3'15"
6台のプリペアド・ピアノをテープに録音して、アタック部分をハサミでカットしたのが元音源だそうです。そのテープを元に切り貼り編集する様子がライナーノートにあります。セリエルの数値列表もついています。変調処理は無くミュージック・コンクレートです。
電気信号系のノイズです。ピアノの音を思わせるところは皆無で、それを変調させてエレクトロニクスのノイズにしているのが珍しい事だったのでしょう。すぐにパルス信号的点描で音列が成立しているのがわかります。一つ一つの音を読めばセリエルの構成は判断出来るかもしれませんが。そこまで興味は湧きません。


2. Studie I (1953) 約10'
サイン波を変調した初めての楽曲です。Hypotheses[前提]-Frequencies[周波数]-Groups[グループ]-Amplitudes[振幅]-Durations[持続]-Formal balancing[形式的均衡] 各内容が具体的に説明されていて、それぞれがキッチリとセリエルでコントロールされているのがわかります。
一昔前の宇宙空間の様な響きです。処々でサイン波も感じられ、変調音もディストーションされてはいないので濁ったノイズにはなっていません。意外や澄んだ音色を感じます。
きっと周波数を調整して切りの良い組合せを作っているのでしょう。そう言う意味では初期のシンセサイザー的なのかもしれません。サイン波変調とテープでこれが作られているのはもの凄い手間でしょうねェ。
ここでもパルス的点描音階があってセリエル構成は感じられます。時代も感じてしまいますがw


3. Studie II (1954) 3'20"
"Studie I"のサイン波変調からホワイトノイズをフィルターを使ってカラーノイズ化する方向に変更しています。確かに単一波形から作るのでは手間がかかりそうです。
ここではピッチのこだわりが見て取れます。RCジェネレーターで100Hz以上の周波数を特定の間隔(25√5)で81段階のスケールを作ります。5つの組合せを作り、同じ間隔で5列も作って5x5=25の周波数で一つのグループにしています。横に見れば音の並び、縦に見れば音塊がセリエルでコントロールされています。
音色は2.と似て宇宙空間的でパルス点描ですが、少し音価に変化が付けられて来ているのがわかります。それはインパクト音の後に引きずられる小ノイズ音の尾となって続きます。その形がギクシャク感も作ります。"Studie I"よりも一歩進んだエレクトロニクス音になっているかも。


4. Gesang der Jungelinge (1955-56) 約13'
"少年の歌"の方が馴染みがあるでしょうか。人間の声を多重に処理、電子音はサイン波の変調とフィルター処理、それにより両者を近づける工夫がなされています。
アブクの様な音、子供のおしゃべり、エレクトロニクスの反響音、それらが左右に大きく広がりを作って移動します。この時期のシュトックハウゼンの空間音楽(空間移動)が盛り込まれています。
人間の声とエレクトロニクスの接近には思えませんが、明らかに構成感があってそれまでの3曲とは異なる面白さです。エレクトロニクスを使った前衛音楽になりました。


5. Kontakte (1953-60) 約35'
この曲は2 ver.があって、電子音楽版とそれにピアノと打楽器が入った版です。このCDに入っているのは前者です。電子音のメインはインパルス発生器によるパスル変形で、サイン波発生器と方形波発生器も使われています。パルスはノイズだけで無く打楽器の音に類型化した波形も発生させているそうです。二つのver.を聴くと興味深いです。
基本はエレクトロニクス・ノイズです。その音は様々でパルスから電信音、トレモロ、高音系のヒスノイズ、等々々…。そして僅かながら打楽器系の音色'もどき'も時折感じるかもしれません。
そしてそれらが空間を埋めて移動もする空間音楽でもあります。とは言え1-3の延長線上でエレクトロニクス・ノイズの一層のヴァリエーション発信になっただけ風。これだと4.の方が面白いでしょう。

さてピアノと打楽器が入るとどうなるか。下記YouTubeがそれです。
一気に様相が変わり、明確に生楽器音が主役になります。エレクトロニクスは三つ目の楽器として背景にいる感じでしょう。従ってエレクトロニクス・ノイズ曲ではなく無調混沌系の実験前衛音楽 "ピアノ, 打楽器, エレクトロニクス三重奏曲" になりました。
この曲はピアノと打楽器が入るver.が圧倒的に面白いと思います。


所有CDとは異なるピアノと打楽器が入ったver.です


【1950年台】

【1960年台】


6. Mixtur (1964)
大オーケストラ(5グループ化)とエレクトロニクス(4つの正弦波発生器と4つのリング・モジュレーター)のライヴ・エレクトロニクス曲です。打楽器群以外の4グループ(木管, 金管, 弦アルコ, 弦ピチカート)にリング変調を使っています。変調波入力はサイン波でモジュレーターを操作する4人がエレクトロニクス演奏者と言う事になるでしょう。
見直ししたヴァージョンが二つあって、少人数化した1967年ver.。もう一つは39年を経た晩年のシュトックハウゼンがアレアトリー性を含めて演奏難度を大幅に見直したMixtur2003です。
実はこの曲だけ未所有なので下記YouTubeの1967年ver.でのインプレになります。
特殊奏法も入った無調混沌の実験前衛現代音楽で、点描音列配置的ではありません。途中でほんの一瞬ですが引用ではないかと思われる様な調性楽曲のフラグメントがあります。
ここでも生演奏が主体でエレクトロニクスは背景的、聴いた限りでは5.のKontakteと似た印象です。同じ様な生楽器とエレクトロニクスの組合せなのですが、Kontakteは両者が個別に存在し、Mixturは演奏される生楽器からエレクトロニクスが作られるのが面白いですね。
モジュレーター操作の4人は各オケ・グループの背後にいて、中央手前はPAでしょう。


オリジナルを少人数化した1967年版です


7. Mikrophonie I (1964) 約27'
個人的にシュトックハウゼンのエレクトロニクス曲と言えばこれです。"for tamtam, 2 microphones, 2 filters, and controllers"とあってタムタム(銅羅)を二人が演奏、二人が音を録り(実際には演奏しながら)、二人が変調と出力する、6人のプレイヤーのライヴエレクトロニクス曲です。音の出し方(演奏&変調)も多彩です。楽曲としては33のモメンテで作られます。(CDも33パートになっていてわかり易いです)
生楽器の特殊奏法とエレクトロニクスですが、ここではその両者が主役になります。生のタムタム音も聴こえますが特殊奏法になるので明らかではありません。そこがポイントになるでしょうか。
完璧なノイズ系実験前衛で、モメンテなので微妙な旋律や構成も感じられます。


シュトックハウゼン本人も入った1966年の演奏です
オススメは"ブラック ページ オーケストラ"です


8. Mikrophonie II (1965) 約25'
12人の合唱団とハモンドオルガンのライヴエレクトロニクス、そしてテープです。変調には4器のリングモジュレーターが使われて、4本のマイク(4グループの合唱)からの入力と、リングモジュレーターの変調波入力にはオルガンからの音信号が使われます。オルガンはサイン波に似ているそうです。(リング変調は元の音と変調波に対して和と差の周波数を主力)
歌唱はヴォーカリーズ風で舌打ち音や笑い声などもあって、それ自体が表現主義的です。その表現主義的な音をベースにしたエレクトロニクス・ノイズが被り、テープのオケ・サウンドも入り込んで来ます。
ゴチャゴチャしたとても怪しげなサウンドです。


9. Telemusik (1966) 約18'
来日時にNHKで作成・初演された曲で知られます。ライナーノートにはその時の事が冒頭熱く語られています。楽曲的にはこの後作られるHymnenの前準備的でコラージュと変調のエレクトロニクスです。コラージュのアイテムは民族音楽で、Hymnenではそれが国歌になります。既存とエレクトロニクスによる"相互変調, Intermodulation"と言う言葉もここで出てきます。(忌み嫌ったコラージュを容認する事ができないのでコラージュではなく相互変調だと…)
電信音的ノイズから入ってパートの切れ目毎に和楽器や鐘の音が入ります。初めに登場するのは邦楽とそのエレクトロニクス・ノイズで、流れの中の軸は変調されたノイズです。民族音楽を素直に聴かせないのはコラージュでは無いと言う主張なのでしょう。読経や雅楽がベースにいる訳ですがモードとしてでしょう、それに特別の意識をする必要はないと思います。アナリーゼされるなら別ですが…


10. Hymnen (1966-67) 約2hr←インプレ済み




作曲の経緯や技法 拘りを説明しないと始まらない典型的な20世紀の実験前衛現代音楽でしょう。
出力される作品よりもそれが優先されます。聴いただけでは何が新しいのか何が前衛なのかさえも不明です。その権化シュトックハウゼンらしさバリバリです。

【楽曲の印象】
 エレクトロニクスの音の研鑽:1-3, 5(電子音楽ver.)
 エレクトロニクス前衛音楽 :4, 8
 無調混沌系の実験前衛音楽 :5(生楽器+ver.), 6
 ノイズ系エレクトロニクス :7, 9, 10

個人的ベストはやっぱり"7. Mikrophonie I"です。聴き直す度にノイズ系の完成度の高さを感じます。
そして他の曲も含めて 'かつてもてはやされた' 懐かしさを覚えます。

この時代のエレクトロニクスはトランジスタ・アナログ時代と言う不便さの産物でしょう。この先IC/LSIになると一気にデジタル化で世界が変わります。波形処理も理論演算だったフーリエ変換が離散フーリエ変換でデジタル処理出来ます。今やあらゆる楽器でソフトを含むライヴエレクトロニクスの複雑な処理がアマチュアでさえ可能です。

今回のインプレでシュトックハウゼンはお休み(最後?)に。ストックは多いのですが、今や時代が…
聴くならば新しい作品を優先に、それが前衛現代音楽ですね。



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ニルス・レンスホルト(Niels Rønsholdt)の前衛オペラ「Den sidste olie」地球は宇宙という大海の鯨


Den sidste olie
(Niels Rønsholdt, b. 1978 🇩🇰)
本ブログ一推しの現代音楽家の一人で、元気なデンマーク前衛をリードするニルス・レンスホルト、多々登場しているので紹介文は割愛です。

今回の「The last rites (英) / 最後の儀式 (日)」は前衛室内楽オペラで、一幕1時間弱(17パート)とコンパクトな作品です。
今回は音源による楽曲インプレなので舞台が見えない事が問題になるかもしれません。歌詞はデンマーク語ですが英訳も入ったリブレットで内容確認出来たので助かりました。リブレットは必須です。


テーマストーリー概要
■ 1721年デンマークがグリーンランドを植民地化し始めた時代に遡り永遠の過剰搾取をテーマにしています。そこにある搾取、捕鯨(鯨油)から石油採掘による自然破壊への風刺です。
地球自体を巨大な鯨と捉えて石油はそこに内包される油とみなします。ならば搾取の代償はなく、それは自分たちより遥か先の問題だ、と時代背景と問題意識を括っています。

■ 捕鯨船に乗る四人のソリストにはそれぞれ 権力(Power), 理想(Ideals), 冷笑[皮肉]主義(Cynicism), 懐疑主義(Skepticism)、の名前が与えられ "宇宙が海で地球は巨大な鯨" と思い付きます。そして石油を見つけ取り分をめぐって…


上演
オペラ会場は室内アイススケートリンクで、出演者にも観客にも寒さを感じさせるとか。(会場はどの様な場所でも構わないとレンスホルトは言っていますw)
■ また時代背景を鑑みバロックオペラ方式での上演とありますが、バロックに疎いのでよくわかりません。


ソリスト
Katinka Fogh Vindelev:Power (sop)
Morten Grove Frandsen:Ideals (countertenor)
Nana Bugge Rasmussen:Cynicism (mez)
Richard Låås:Skepticism (bar)

演奏・指揮・演出
Athelas Sinfonietta (ensemble)
James Sherlock (cond. & piano)
Louise Beck (director)

初演は2022年のコペンハーゲン・オペラ・フェスティバルで行われました。(Østerbro Ice Skating Rink Copenhagen)



Excerptです。変化があるパートを切り抜いた様な感じですが





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Den sidste olie [17 scenes] (2022)
下記17パートは1'〜7'程度の小曲なので、パート毎のインプレはしません。( )内は登場人物の頭文字で無記名は四人全員です。他に狼の遠吠えと闇の声が登場します。

0. 入口
1. 何も見えない (C, S)
2. 暗くて寒く何かしなければならない (P, C, S)
3. お互いの人間性の良さを確かめ合う
4. PowerとIdealsが愛を口にする (P, I, C)
5. Idealsは何をすべきかを知っている
6. 出航を決意する
7. Idealsがその拡張を表現する
8. 誰が行ったのか誰が代金を支払ったのかを知る
9. 北へ航海する
10. 見つけた土地、でもまだ凍っている
11. CynicismとSkepticismが故郷を懐かしむ (I, C, S)
12. Powerによって慰められるIdealsが落胆に襲われる (P, I)
13. Idealsが新しいアイデアを持って戻ってくる (P, I)
14. IdealsとPowerが地中に石油を見つけ、CynicismとSkepticismが戻ってくる
15. 関係が壊れる
16. Idealsは誰も必要とせず、石油と一人残される (P, I, C)
17. Idealsが闇の声を聞く (P, I, C)


とてもシンプルで変化率の極端に低い流れです。どこを切って取ってもいつも同じ様な、と言った感じでしょう。もちろん実験前衛でもなんでも無く機能和声で旋法風です。

歌唱には最後の単語を'こだま'の様に繰り返し発音します。そして旋律もほぼ同じです。それがいつもいつも並びます。

冒頭のSkepticismの場合
 En fugl, er det en fugl? fugl? fugl? fugl? …
 Jo, en mejse. mejse mejse mejse …
と言った具合です。(YouTubeの1'15"からがその流れです)

伴奏は基本ピアノです。それも単純な和音(コード)とそれを分解した短いアルペジオの昇音階と決まっています。そこに金管の二音昇音が入ります。アンサンブルが演奏として聴かせるパートはどこにも無く、'パート1-16' までほぼ同じ流れで続きます。時折のピークで管楽器が短音反復を鳴らすくらいです。

流れが異なるのはパート0.と17.の二つで、0.は歌唱はなく上記の様な演奏でもありません。ここだけが約1'の前衛風になっています。ラストの17.は音厚のある流れも登場してストーリーの締めくくりです。



音楽から伝わるものは無いかもしれません。歌詞の対訳を読んだのと大差ないでしょう。
楽曲としても実験前衛を楽しむ、そう言った方向性ではありません。

ここまで極端に平板な楽曲にした真意ははかりかねますが、テーマが全てであり それを展開するのが歌詞(本人作)かと思えます。
そこに焦点を当てるために、あえて音楽は徹底シンプルなのかと。配役のインプレも不要レベルです。

黙示的なパフォーマンスにはレンスホルトらしさが見えますから、レンスホルトの新しい主張形式になるのかもしれません。全編映像付きで観てみたいですね。



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「エネスク, イザイ, バツェヴィチ:弦楽のための作品集」シンフォニア・オブ・ロンドン & ジョン・ウィルソン


Bacewicz, Enescu, Ysaÿe: Music for Strings
Sinfonia of London | John Wilson: cond.
英人指揮者J.ウィルソン(b. 1972)が2018年に再設立して芸術監督を務めるシンフォニア・オブ・ロンドン(以下SOL)とのアルバムです。
SOLの過去活動のメインは映画音楽の録音で、J.ウィルソンもその方向性が強い様です。

今回のアルバムは後期ロマン派世代の中心から終焉の中庸な三人の作曲家を並べました。共通点はヴァイオリニストとしての活躍がある事で、それを生かした楽曲での「弦楽のための作品集」と言う事になるのでしょう。





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ジョルジェ・エネスク
(George Enescu, 1881-1955)
ルーマニアの音楽家で、世代的にはバルトークと同年生まれでベルクよりも4歳若いです。楽風的にはロマン派から後期ロマン派、そして民族音楽(モード)や調性逸脱、微分音と言った前衛技法にも興味を見せるそうです。時代の流れに沿った変遷でしょうか。

■1. Octet Op. 7 (1900)
 "弦楽八重奏曲"は10代の時の作品で四楽章です。ロマン派と後期ロマン派両者の表情に民族音楽和声も感じます。動機の反復変奏と対位的イメージを持つホモフォニーの楽器の絡みがみられます。緩徐でほんの微かに調性からの逸脱感が仕込まれているのは時代の繁栄でしょうか。
弦楽奏曲ですが管楽器も入れて大編成室内楽にして変化をつけるのもありかも。38'弱は長く反復変奏の単調さが少し気になりますから。



ウジェーヌ・イザイ
(Eugène Ysaÿe, 1858-1931)
言わずと知れたベルギーのヴァイオリニストで作曲家ですね。指揮者でもありました。世代的にはマーラーの2歳年上です。
作曲でもヴァイオリン楽曲が多数を占め、もっとも知られるのは"無伴奏ヴァイオリンソナタ"Op. 27 (1924)でしょう。(Kremer, Zehetmair, Zimmermann, Ibragimova で聴き比べしてあります)

■2. Harmonies du Soir Op. 31 (1922-24)
 弦楽四重奏+弦楽オケのための "夕べのハーモニー" です。入りからイザイらしい幽幻な弦楽奏が厚く流れます。ソロの弦楽器も計算された複雑なホモフォニーと対位的関係を構成します。そこもイザイの聴かせ処の一つでしょう。もちろん緩急の大きな揺らぎも上手く作られ飽きさせません。
今の時代でも古さを感じさせない素晴らしさです。



グラジナ・バツェヴィチ
(Grażyna Bacewicz, 1909-1969)
ポーランドの女性音楽家として第一人者だったそうで、作曲だけでなくピアノとヴァイオリンの奏者でもありました。この時代を代表する女性音楽家であるナディア・ブーランジェに師事していているそうです。音楽家としては後半人生が作曲家になる様で、ヴァイオリン曲がメインです。(過去の紹介文より)

■3. Concerto for String Orchestra (1948)
 三楽章の"弦楽オーケストラのための協奏曲"です。時代背景から行けば前衛黎明期ですが、全く気配はなく新古典主義の様相でしょうか。明白な動機が並びSOLが水を得た魚の如く元気に奏します。ソロ楽器の絡みは多用されず、すぐに分厚い弦楽奏に飲み込まれます。(緩徐楽章でも同じ)
時折ショスタコーヴィチやラフマニノフの様な民族音楽動機も登場します。何か目新しさが欲しい気がしてしまいます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  第一楽章です




面白いのはイザイの "夕べのハーモニー" ですね。

後はSOL / J.ウィルソンの作りだす出し入れの明瞭な音を楽しめばOKでしょう。それがこのアルバムの意図だと思われ、まさにその通りかと。



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『マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"』«web配信» セミヨン・ビシュコフ指揮/NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団 2024年4月12日


NDR Elbphilharmonie Orchester
Semyon Bychkov, cond.
ビシュコフがNDRエルプ・フィルに客演した先週のマーラー8です。(同オケの主席指揮者はA.ギルバートで、現在ビシュコフはチェコ・フィルの主席指揮者)

このオケは "テンシュテットのマーラー" や "ヴァントのブルックナー" のイメージが強くやっぱり"北ドイツ放送響"の方がフィットしますね。

配信はもちろんNDR radio&TVからです。


【ソリスト】
  キャロリン・サンプソン (Carolyn Sampson, sop)
  カミラ・ティリング (Camilla Tilling, sop)
  ミリアム・クトロヴァッツ (Miriam Kutrowatz, sop)
  ステファニー・イラーニ (Stefanie Irányi, mez)
  ジェニファー・ジョンストン (Jennifer Johnston, mez)
  アンドレアス・シャーガー (Andreas Schager, ten)
  アダム・プラチェトカ (Adam Plachetka, bas/bar)
  ネイサン・バーグ (Nathan Berg, bas/bar)



▶️ NDR radio&TV (配信期間は短いと思われます)






«web配信»
Mahler Symphony No. 8
"Symphony of a Thousand"


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[Live at Elbphilharmonie, 12 Apr. 2024]


第一部 『来たれ、創造主たる精霊よ』
提示部:第一主題は微妙な揺さぶりでやや落ち着かず。第二主題のソプラノは少し遠く聴こえ、そこからの各独唱の重唱パートは落ち着いて力感が弱めですが多声を生かした絡みです。
展開部:入りの管弦楽奏はリズムを刻み、ソリストが端正に重唱をコントロールすると第一主題変奏の合唱が激しいパワープレイで一気に流れを変え、続くソリストも激しさで応えます。
コーダ:少年合唱団で始まる"Gloria…"が落ち着いて入り、ソリストと合唱が華々しく派手に飾り立てフィニッシュ。怒涛のパワープレイそのものです。
荒っぽいのは歓迎ですが どこか安定感に欠ける第一部です。



第二部 『"ファウスト"から最終場』
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
5度下降ピチカートと木管の主題は若干ギクシャク、一体感が弱く不安定さを見せるのが気になります。弦の激しいトレモロが入る山場も今一つです。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
「合唱とこだま」は序奏の演奏の延長でやや締まりが弱く長く感じます。
「法悦の神父」バリトンは濃い表現で'自らを貫け'と歌い、「瞑想の神父」バスも声量が弱めですが力感を見せて肩肘張った隠者のパートになりました。

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
「天使の合唱」はやや荒い演奏に負けそうになりながら、「祝福された少年たち」と「若い天使たち」は落ち着いて。
「成熟した天使たち」ではvnのソロが強くやや邪魔なくらい、アルト(#1)は良く伸びていました。合唱は控え目でしたね。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールの入りは弱くオケと合唱に負けそう。それにもっと素っ頓狂なくらいに聖母を讃えて欲しいです。落ち着き過ぎでしょう。
「かつてのグレートヒェンの告白」ソプラノは静美な合唱の流れに促される様に登場し、聖母に願いを伝えます。ここは上手い流れです。
「罪深き女」は伸びやかに、「サマリアの女」と「エジプトのマリア」はしっかりと言葉を伝える様に願いを歌います。
その"贖罪の女三人の合唱"になると少しテンポアップし対位的な絡みを強めて良い流れを作りました。
「懺悔する女 (グレートヒェン)」は良く通るソプラノで聖母への慈悲を歌います。標準的ですが、それがグレートヒェンでしょう。
「栄光の聖母」は短いながら影の主役で願いを受けての台詞は感激的です。ここでは柔らかく澄んだソプラノでそれを歌いフィットさせています。hrももっと澄んだ音色で吹いて欲しい処です。
「マリア崇拝の博士」はここでも落ち着き払っています。好みはもっと弾けて欲しいのですが。違うだろ!? って感じw

【5. コーダ:神秘の合唱】
オケの揺らぎが強い流れからの「神秘の合唱」は静に落ち着いてから低くスローに、ゆっくりと雲海の様に広げます。ソリストが浮かび上がる様に入ると山場へ向かい"永遠なる母性"を讃えてハイテンションに感激的に。ラスト管弦楽はスローに派手に溜めを作り、その荒っぽさも味方に着けてまとめ上げます



やや荒いオケが軸となったマーラー8です。その為一体感と落ち着きに欠けるのが気になります。

ソリストも一部アンフィッティングな感もありますし、全体的にこれと言った構成感も見当たりません。それでもラストは激しさからの広がりある大団円でしっかりまとまってしまいます。実に困った曲ですw



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バイエルン国立歌劇場2023 シュトラウス 喜歌劇「こうもり」をNHKプレミアムシアターで観る


"Bayerische Staatsoper 2023-2024" から昨年(2023)12月のヨハン・シュトラウスの人気オペレッタ「Die Fledermaus」です。

演出はオペレッタを得意とするバリー・コスキーですが、個人的には2017バイロイト音楽祭の"マイスタージンガー"が印象に残ります。配役をみんなワグナーやリストたちに仕立てたのはオペレッタの乗りでしたね。
今回は第三幕に"仕込み"があると現地webにはありますから楽しみでした。

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(写真はwebよりお借りしました)


演出
今回はウィーン、ジェンダー、ブルジョア、と言った事への風刺がベースとか。

問題の第三幕では、■刑務所長フランクがストリッパーの様なスパンコールの下着姿(ハイヒールと乳首に何か付けて)で登場、これもジェンダーレスの投影でしょうか。■アイゼンシュタインも意味不明の露出度の高い下品な格好で奇妙な被りモノです。その主張が何であれちょっと過激で下劣なオチャラケを最後にやりたかった訳ですね。
■フロッシュにも個性を与えてあり、通常の '語り1人' の他に 'タップダンス&ボディパーカッション1人' と '4人のダンサー' の6人で表現しています。主はタップのシーンですが。

舞台・衣装
舞台三幕それぞれに趣向を凝らした充実感がありました。一幕はアイゼンシュタイン宅らしく街並みと室内を合わせ、二幕オルロフスキーのパーティ会場はパーティメンバーの派手な衣装を引き立てる様にシンプルに 山場のシーンでは派手な吊るしモノ、三幕刑務所長フランクの部屋は背景を工事現場の"足場"の様な立体的多段に。

衣装も同様で一幕では適度な時代感とシーンを反映させてオペレッタらしさを作り、'こうもり'の衣装も過激さ異常さはありませんでした。二幕はカラフルでちょっとファンタジー系の様相にメイクもジェンダーレスに。そして三幕は二人のメンバーに上記の様な異常性を与えました。

配役
【女性陣】 まずはロザリンデのダムラウが流石でした。役柄とオペレッタを理解した演技とsop表現はピカイチで、ともすると主役をアデーレに持っていかれがちの処を誰が主人かを魅せ付けました。年齢具合もフィットですね。
アデーレのコンラディも見栄え, 演技, sopとも良かったのですが、個人的にどうもこの役があまり好きになれません。

【男性陣】 アイゼンシュタインはバリトンのニグルで'おちゃらけ'気配を上手くこなしました。やっぱりバリトンでしょうアイゼンシュタインは。
フランクのヴィンクラーは驚きの一言。まずお堅い刑務所長らしい演技と身なり(一幕)で、メチャクチャな仏語も面白く(二幕)、最後にストリッパーシーン(三幕)ですから。
オルロフスキー公爵にカウンターテノール(通常はmez)のワッツを使ったのはジェンダーレスのキーでもあったでしょう。(舞踏会のメンバーも男女の見分けしづらさを作っていました) 歌声と演技は何の問題もありませんでした。
アルフレードのパニカーは役柄にとても合っていたと思います。程良く抑えたtenも良かったです。
ファルケ博士のブリュックは落ち着きと洒脱なお笑い感が良かったですね。役柄から言ってコメディアンになる必要はありません。

音楽
もちろん指揮は音楽総監督を務めるユロフスキで、まず序曲は軽快さの中にアゴーギクを入れメリハリを付けていました。全体としても歌劇のバックらしく抑え気味な流れにピークは大きく鳴らしてコントラストはありました。


オペレッタらしさに今の時代のちょっとした過激さで楽しさ溢れる 'こうもり' になりました。ソリスト陣もフィットして、今まで見た'こうもり'の中では一番楽しめたかと。

ベストキャストはロザリンデのダムラウでしょう。今回の華やかな楽しさを牽引しました。

風刺表現では"ジェンダー"は色々感じましたが、"ウィーン"は第二幕ラストで背景の街が崩れるくらい、"ブルジョア"に関してはあまり感じる処はありませんでした。
タバコを吸うシーンは違和感がありましたが。



オフィシャルのTrailerです



<出 演>
 ・アイゼンシュタイン:ゲオルク・ニグル [Georg Nigl]
 ・ロザリンデ:ディアナ・ダムラウ [Diana Damrau]
 ・フランク:マルティン・ヴィンクラー [Martin Winkler]
 ・オルロフスキー公爵:アンドリュー・ワッツ [Andrew Watts]
 ・アルフレード:ショーン・パニカー [Sean Panikkar]
 ・ファルケ博士:マルクス・ブリュック [Markus Brück]
 ・アデーレ:カタリナ・コンラディ [Katharina Konradi]
 ・フロッシュ (台詞のみ):今回6人

<合 唱> バイエルン国立歌劇場合唱団
<管弦楽> バイエルン国立歌劇場管弦楽団
<指 揮> ウラディーミル・ユロフスキ [Vladimir Jurowski]
<演 出> バリー・コスキー [Barrie Kosky]


収録:2023年12月28・31日 バイエルン国立歌劇場(ドイツ)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ダニエレ・ガッティ「マーラー 交響曲 第2番 '復活'」ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団


Mahler Symphony No. 2 'Resurrection'
(Royal Concertgebouw Orchestra, Daniele Gatti: cond.)
ガッティがRCO主席指揮者に就任した2016-17シーズン開幕公演(2016-9/18)のLIVEで、配信版でリリースされたものです。(DVD/BDやBlu-ray Audio等のバリエーションがあった様な…)
ガッティのマーラーと言うとアゴーギクを効かせた流れが浮かびますが、ここではどうでしょうか。

ソロ二人はアンネッテ・ダッシュ(Annette Dasch, sop)、カレン・カーギル(Karen Cargill, mez)です。





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第一楽章
提示部第一主題は低弦強調で重心を低く落ち着いて、葬送行進曲もその流れからテンションを上げます。緊張感の高まりから第二主題で安らぎの音色に。コデッタはテンポアップで重厚感が強いです。
展開部前半の第二主題はスローに優しさを広げ、徐々に上げて行きコデッタの山場は行進曲らしさを中心に。後半は暗鬱に入りコラールの山場へ向かいます。山場は勇壮なテンションを見せます。
再現部は殊更に色合いを濃くせず、コーダの葬送はかなり鬱に落としてラストのピークは落ち着いて締め括ります。
重心の低い流れを中心に第二主題の優しさとのコントラストを付けた第一楽章です。


第二楽章
主要主題は演舞的なメヌエットを柔らかさで。トリオでもリズムを利かせますが落ち着いて静美に。回帰ではしっかりと音厚を上げてテンションもアップさせて、主部ラスト回帰のピチカートは表情豊かです。
落ち着きつつも変化を大きく与えた流れで上手いです。

第三楽章
主部主題は色合いの濃い『子供の不思議な角笛』で軽妙さはありません。中間部は弦と木管が作る心地よい会話でコラールの華やかさと対比させます。コーダは一度華やかに鳴らしてから緩やかに。

第四楽章
主部「原光」のアルトは低く鎮めて入り歌詞を表現。ややスローも効いていいですね。中間部は少し哀愁を挟んでから明るさを見せます。カーギルは表情が豊かでオペラの様です。


第五楽章
提示部第一主題は派手で一瞬音圧高く出て、パウゼを強調後hrの動機が静の中に緩やかに響きます。第二主題"復活"の動機が落ち着いて登場。そこからの動機群も興奮は避けて、徐々に緊迫感を上げて行きピークは華々しさです。この流れが処々にみられ、アゴーギクを上手く合わせてガッティらしさでしょう。
展開部の入りはハイテンション、そこからは落ち着いたテンポにアゴーギクで表情を付けて、スッキリと見晴らしの良い"死者の行進"になりました。スロー基調と言うのは珍しいかもしれません。
再現部導入部の管弦楽はやや速めの流れと緊張感を強めに、バンダとのやりとりは静の空間を生かします。合唱が静に現れてソプラノそこに浮かび上がるのはお約束の"Aufersteh'n"の導入、アルトが太く低く "O glaube, Mein Herz" と信じる事を伝えるとテンションが高まり、受けるソプラノで落ち着いた透明感とのコントラストが作られます。これは良いですね。
シャープに響く男声合唱に続くsop/alto重唱も切れ味強く絡んで"光へ向かい"ます。一呼吸後、溜めたスローで全体が一丸となってパワーの"Aufersteh'n"を歌い上げます。ガッティらしいタクトで見事な感激的フィニッシュでした。



全体的に色彩感があって表情豊かなマーラー2です。RCOらしい艶やかな音色に、アゴーギクでテンションをコントロール、オケとタクトが織りなす聴き応えある'復活'になりました。

パウゼ強調や、ラストをスロー個性的な大団円にまとめたりとガッティらしさが楽しめます。
カーギルのアルトとダッシュのソプラノも素晴らしく、その表情とコントラストがこの熱演に色を添えたのも間違いありません。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第5番』«ネット配信» クラウス・マケラ指揮/シカゴ交響楽団 2023年2月16日


クラウス・マケラ | シカゴ交響楽団
(Klaus Mäkelä | Chicago Symphony Orchestra)
つい先日(2024-4/2)、2027-28シーズンから次期音楽監督になる事がアナウンスされたマケラ/CSOのマーラー5が配信されました。
同シーズンにはRCOの主席指揮者にも就任が決まっていて、現在はパリ管の主席指揮者、オスロ・フィルの音楽監督でもあります。
28歳にしてトップクラスのオケを従える人気と実力の程がわかります。

マケラのマーラーはCD化はされていませんが、"ネット配信のLIVE" で以下をインプレしています。第五番は、パリ管(2021-6/16)との演奏がありました。

 ・マーラー第3番 マケラ/コンセルトヘボウ管 2023年9月24日
 ・マーラー第3番 マケラ/オスロ・フィル 2022年6月6日
 ・マーラー第2番 マケラ/パリ管 2023年3月13日
 ・マーラー第2番 マケラ/パリ管 2022年11月30日
 ・マーラー第6番 マケラ/コンセルトヘボウ管 2022年8月28日
 ・マーラー第5番 マケラ/パリ管 2021年6月16日
 ・マーラー第9番 マケラ/パリ管 2020年12月9日


今回はCSOのオフィシャルサイトCSOradioからの配信です。


▶️ CSOradio (2025-4/7まで配信予定です)





«ネット配信»
Mahler Symphony No. 5

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[Live at Orchestra Hall, 16 Feb. 2023]


第一部
ファンファーレは地鳴の如くCSOらしさですが、葬送は意外や静に鎮めて哀しみの行進に、第一トリオは明瞭に鳴らしますが激しさは控えめ、第二トリオも静の印象を強く奏でます。
第二楽章第一主題もシャキッとして切れ味勝負ですが怒涛ではありません。第二主題も静を感じる穏やかさで、第一楽章二つのトリオのパロディでしょう。展開部の序奏と両主題のコントラストもそれぞれ回帰的で彫りを深める事はありません。再現部のピークでは鳴りを広げて収束です。
落ち着いて淡々とした第一部になりました。

第二部
スケルツォ主題は抑えた穏やかな優美さ、レントラー主題も緩やかな表情ですがおとなしい流れです。ちょっと元気さが足りませんね。第三主題主部のオブリガート・ホルンも受ける弦楽奏も抑え気味、変奏パートもそのまま淡々と進み、本来それを締める短い展開部はスロー強調から入って鋭く進みますが力感は抑えます。再現部各主題・動機も程々の色付け、本来は激奏パートのコーダもしっかりと鳴らしますがコントロール感が強いです。
コントラストが低く覇気に欠けるスケルツォ楽章です。

第三部
第四楽章主部主題は静美で澄んだ音色ですが沈んだ印象、中間部もその流れをキープします。クールなのか元気がないのか変なアダージェットです。
第五楽章第一・二主題は少し気持ちが乗って元気を見せてリズミカルに絡んで進み、コデッタ主題も優美さを見せます。展開部は入りは緩く徐々にテンションを上げますが落ち着いています。ピークも太く鳴らしますが抑えられた印象です。ところが一転再現部山場からコーダは派手やかに仕上げてフィニッシュはビシッとアッチェレランド。これが狙いですか?!


極端な最終楽章ラスト集中型のマーラー5です。そこまでの長い道のりは元気がなく、せめて抑えた中に緊張感は置いて欲しかった処です。

2番や8番ではこのパターンも典型の一つでマケラもやっていますが、5, 6, 9番では記憶がありません。

また当初マケラは王道+αの方向でしたが、最近は少し捻りを入れて舵を切っている気がします。この先CSOやRCOとどの様なスタイルを見せてくれるのか楽しみですね。



テーマ : クラシック
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