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ニルス・レンスホルト(Niels Rønsholdt) の『Songs of doubt』という美しい前衛合唱曲

さてどちらの方向を見せてくるのか、そこに興味が沸くレンスホルトです。


Composer
ニルス・レンスホルト
(Niels Rønsholdt, b.1978)
今先端の前衛実験現代音楽を創るデンマーク1970年代生まれの現代音楽家の一人、レンスホルトですね。何回もインプレしているので詳細は割愛ですw

前衛のすっ飛んだ音楽と、美しい楽風の両面を持っているのも特徴的です。前衛実験方向はとにかく音楽の枠組みを広げるので、旧来の音楽のイメージで聴くのでは楽しむのが難しいかもしれませんね。



Album Title
Songs of doubt, Prospect / Retrospect (2015)
ため息などでvoiceを入れるのはレンスホルトの基本楽風ですが、今回はそこにオンドマルトノを入れています。その使い方が気になりますね。

中間ゾーン、'過去と未来' や '前と後' の狭間と言った様な、の話になっている様で、それが本人の言う "疑いの歌" と言う事だそうです。疑いとは両方向を見るからだそうで、背後にあるのは 'sick longing and uncomprehending wisdom' …(笑) ステージはインスタレーションになっている様ですね。

voiceはRoderik Povel, オンドマルトノはNathalie Forget, コーラスはStudium Chorale, 指揮はHans Leendersです。







1.The Night 2.You Said 3.The Lake 4.All I Care About 5.Forest of Light 6.It's Only You 7.Waiting 8.Clouds 9.The Rain 10.The Wind

この曲の全体印象は残念な事にライナーノートに全て書かれてしまっています。

"The soundscape is distinctive, because it is a mixture of classical choir, amplified solo voice and electronic sounds."

その通りで、クラシックの合唱に電子処理されたソロ・ヴォーカル, そして電子音楽の合体した音風景です。調性をベースとした心地良い合唱曲をベースに、電子処理の空間音響サウンド、反復や引用、と言った技法で色付けをしています。決して支離滅裂混沌方向ではありません。

多様性という単純さを超えた方向を感じますね。普通この手の調性軸足の音楽は中途半端さが気になるのですが、素直に聴く事ができます。TEXTもタイトルに絡むシンプルな英文なので聞いて、それなりにわかると思います。

オンドマルトノも極自然にフィットしていて、クセのあるその音も上手く主張させている事ですね。メシアンのトゥーランガリラ以来の印象です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  LIVEです。背景にモニターが配置されてインスタレーションです
  途中でプルトにハプニングが起こりますが、仕込み?!w
  指揮者に隠れているのがオンドマルトノですね




前衛的な手法を使いながらの旧来音楽の踏襲、新しいクラシック合唱曲の可能性を感じますね。これがレンスホルトの一つの方向でしょう。

調性に現代音楽技法と言った垣根を超えた音楽になるのかもしれません。とは言え、バロックや古典の愛好家の方には納得のいく音楽にはならないかもしれませんが…



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





オスモ・ヴァンスカ/ミネソタ管弦楽団 の「マーラー 交響曲 第2番 "復活"」穏やかな流れ

そろそろ第七番がリリースされますね。その前に所有盤をインプレしておきましょう。


Conductor | Orchestra
オスモ・ヴァンスカ (Osmo Vänskä)
Minnesota Orchestra, 2017-6
ヴァンスカが長期政権で音楽監督を務めるミネソタ管と進めているマーラー・サイクルからの第2番ですね。
ちなみにヴァンスカの前の首席指揮者が大植英次さんでした。

ソプラノはルビー・ヒューズ(Ruby Hughes)、メゾソプラノはサーシャ・クック(Sasha Cooke)です。





マーラー 交響曲 第2番



第一楽章
第一主題低弦は速く重さ控え目、葬送行進曲は揺さぶりながら、第二主題は穏やかです。コデッタは晴れやかですね。展開部の前半も後半も微妙なアゴーギクで穏やかスローから山場はシャープにあっさりです。スロー&アゴーギクで重厚さは避けた第一楽章になっています。

第二楽章
主要主題はバロック風優しい舞踏、トリオでも少々緩めな流れです。回帰でも殊更には色合いを濃くしませんね。最後の主題回帰はいっそうの穏やかさになっています。

第三楽章
主部『子供の不思議な角笛』, 中間部共に控え目で流れは美しくヴァンスカ象徴的な感じです。コーダも炸裂はオブラートに包まれた感じ!?

第四楽章
主部アルト「原光」はスロー静に乗って美しい流れを作ります。中間部もその流れに沿った穏やかな美しさになっていますね。

第五楽章
提示部第一主題は刺激的に入り、hrの動機が直ぐに鎮めます。第二主題のコラールも落ち着いた音色で、復活の動機も秘めた意思ですね。
展開部も落ち着いて、"死者の行進"でも極端な刺激はなく爽快感になっていますね。
再現部は緊迫感を持ちながらも穏やかに進み夜鶯の一呼吸から、合唱が静かに現れるとソプラノが浮き上がる様に登場します。スローで静かな世界からアルトは "O glaube, Mein Herz" を朗々と歌いますね。男声合唱が「復活」を高々と歌いますが控え目、sop/alto重唱も刺激は薄いです。合唱が加わって一気に山場を作りますが、全てが落ち着いた山場ですね。


穏やかで美しい流れのマーラー2です。スロー緩やかマイルドな徹した構成で、ラストの大団円も興奮は排除のヴァンスカ・マーラーです。

ラストに待っているこの曲の感動をどう聴くかで、好みは別れるかもしれません。刺激物が苦手な方向きですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





エンノ・ポッペ(Enno Poppe) の前衛エレクトロニクス歌曲『Interzone』

作品が少ないのが困りますが、好きな前衛現代音楽家の一人ですね。


Composer
エンノ・ポッペ (Enno Poppe, b.1969)
日本では指揮者の印象の方が強いかもしれませんね。もちろん本ブログでは独現代音楽家としてのインプレです。

楽風はノイズや反復から、微分音を中心に電子処理(シンセサイズ)された音楽になります。調性旋律も普通に取り入れる多様性であり、極度に音密度の高いサチュラシオン系の様相も見せますね。そしてインスタレーションにも踏み入れて、まさに今の時代の欧エクスペリメンタリズムの現代音楽です。



Album Title
Interzone, Lieder und Bilder (2003/04)
Berliner Festspieleの委嘱作品で、voiceと歌入り17パートの楽曲です。サブタイトルにある様に"歌と写真"で構成されたインスレーションになっています。(映像空間担当にAnne Quirynenが入って、ライナーノートを見るとステージには多数のモニターがありますね)

タイトルは"ブレード・ランナー"で知られる米作家のバロウズ(William S. Burroughs)の作品名で、昼と夜の間と言った様な中間ゾーンの意味だそうです。具体的にはモロッコのタンジール地区の事で、そこは帰属する国が様々で不明確であり、変化と存在そしてこれからを表現する意味とか… タイトルだけでも意図が複雑ですw

歌詞として使われているドイツの作家マルセル・バイアー(Marcel Beyer)のTextは自分を見つめ問いかける形而上学的内容となっています。

voiceはOmar Ebrahim、コーラスはNeue Vocalsolisten、演奏はJonathan Stockhammer指揮, ensemble mosaicになります。電子処理のプログラミングはいつもの通りWolfgang Heinigerですね。







1. Like Spain, I am bound to the past - 2. Untroubled, wide awake and calm - 3. Why don’t you have a soda pop - 4. I cannot breathe - 5. I had no lips, no teeth, no vision - 6. He who has words to hear may spell - 7. And Joselito - 8. And the stairs, porches, lawns, driveways - 9. Let the dawn blue as a flame cross the city - 10. It’s Man or Monkey - 11. BROKEN PIECES - 12. I made recordings of the continuous music - 13. Who is the third - 14. Do they ever come back - 15. God grant I never die in a fucking hospital - 16. Word - 17. I can only wait for it to happen

1.は散文詩と言うよりもイントロダクションでストーリーテラー、完全な語りパートです。2.から始まりますが、エレクトロノイズをサンプリングした様なサウンドですね。そこにvoiceが入りますが、シンプルな語りでシュプレッヒゲザングの様な異常性はありません。その替り、コーラスメンバーがシュプレッヒゲザング的に入って管楽器とのポリフォニカルな対位を見せてくれます。サウンドは1970年代のロックの様なポップさも感じさせますね。背景に常駐するパーカッションが効果的です。

"11. BROKEN PIECES"だけがインストルメントでアンサンブルの反復・変奏を主体とした無調ポリフォニーの混沌になっていますね。ラストは近年ほどではありませんが、少しだけサチュラシオン傾向になります。

続く"12. I made recordings of the continuous music" が一番長い18'のメインパートで、電子ノイズのドローンから入り、そこにvoiceとコーラスが載ってきます。静的な空間を作っていて前半のパートと大きく異なりますね。後半はそう言った傾向になっていて"14. Do they ever come back"ではホモフォニー的一体感を作っています。

ちなみにタイトルは各Textの冒頭部分です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  14. Do they ever come back です




前衛エレクトロニクスの歌曲ですね。voiceは語りでコーラスは無調の独唱と重唱、演奏は即興的混沌性は低く対位構成感の無調ポリフォニーです。Text内容と音楽表現の直接的なマッチングは感じられません。

インスタレーション作品なので、ぜひ全写真付きのステージを見てみたいですね。そこが一番のキー(問題?)かもしれません。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 90CDを聴き比べてみました [#5 : 81-90]


#5回で90CDまで来ました。マーラーの交響曲で実績のあるブーレーズ、ベルティーニ 、インバルです。


Mahler Symphony No.6 -- 90 CDs 

 ★:名盤 (一般的にいわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #0:4CD バルビローリ聴き比べ
バルビローリ[x4]
 #1:16CD
バーンスタイン[x2 ★☆], アバド[x4 ★☆], カラヤン[x2 (★)☆], ハイティンク[x2 ★], ゲルギエフ, 小澤征爾, 井上道義[x2 ☆], プレートル[㊟], ワールト
 #2:20CD
ヴァンスカ, ダーリントン[☆], ラトル[x2 ☆], P.ヤルヴィ[☆], N.ヤルヴィ[x2 ㊟], ジークハルト, セーゲルスタム, パッパーノ, ザンダー, ショルティ[☆], ヴィト, シェルヘン[㊟], ズヴェーデン, ノット[☆], J.サイモン, アブラヴァネル, パク・ヨンミン
 #3:20CD
テンシュテット[x4 ☆], シャイー[x2], ヤンソンス[x2], MTトーマス[x2], ハーディング, 朝比奈隆[x2 ㊟], スヴェトラーノフ[x2 ㊟], セル[x2], バルシャイ, 井上喜惟, 山田和樹, クルレンツィス[★]
 #4:20CD
ギーレン[x3 ☆], シノーポリ, メータ, サロネン[☆], サラステ, ヤング, 大植英次[㊟], ボンガルツ[㊟], シュテンツ, ヘンヒェン[x2], アシュケナージ[x2], ヴロンスキー, タバコフ, シュワルツ, マーツァル, ネトピル
 #5:10CD 本投稿
ブーレーズ[x4 ★☆㊟], ベルティーニ[x3 ☆], インバル[x3]




ピエール・ブーレーズ, Pierre Boulez (4録音)

このブログでは現代音楽家の印象の方が強いわけですが、実はマーラーの良い録音を残しているブーレーズですね。



(#1)

BBC Symphony Orchestra
[Enterprise] 1973 mono


Mahler6-Boulez-BBCso1973.jpg

BBC響の首席指揮者(1971-1975)時代のマーラー6ですね。正規盤か微妙なイタリアのレーベルからのリリースです。

第一楽章
恐ろしくスローな第一主題の入りです。tpが怪しいですね。テンポを徐々に上げモットーでは標準的に、アルマの主題は鳴りの良い広がりです。提示部反復の第一主題は通常テンポに戻しますね。展開部の第一主題では引っ張る様な奇妙なアゴーギクを振ってからの炸裂です。第二主題は大人しい静的流れで、山場はスローから上げて行きます。ところがピークで奇妙なスローの揺さぶりに。再現部は普通に、コーダの葬送は暗く第二主題は晴れやか派手にです。
アゴーギク変化球の第一楽章です。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はストレート、テンポと切れ味がスケルツォらしく素晴らしいですね。トリオも速めでシャープな美しさで、優しさではありませんね。木管の動機はスローに落としてコントラストが良いです。回帰するトリオでは少し揺さぶりをかけていますね。
変則パターン無しのキリッとしたスケルツォになっています。
第三楽章
主要主題は緩やか穏やかな中に微妙なディナーミクを付けています。第一トリオは哀愁感があって緩いアゴーギク、中間部(第二トリオ)は明確な明るさで変化を付けています。ラスト山場が強烈に速いと言うのが奇妙で珍しいですね。
アゴーギクで変化付けのアンダンテです。
第四楽章
序奏から揺さぶりを入れています。アレグロ・エネルジコから提示部第一主題はシャープな行進。切れ味のパッセージは主題と緊張感ある絡みでテンポアップし、第二主題は穏やかながら速いです。快速の提示部ですね。展開部チェロの動機から第二主題は揺らぎを強く現れ、激しい速度で山場へ駆け登ります。行進曲は抑えてクールですね。再現部第一主題は派手派手しく出現し、続く騎行を激烈に飛ばします。暴れ馬の様です!!



奇妙な揺さぶりの変化球と切れ味のストレート、両面を持つマーラー6です。ハイレベルの曲者アゴーギクですが、パワープレイも堪能できますね。

変化球好きの貴方はぜひ一度打席に立って下さい! 普通にマーラーを聴くなら無用の一枚かもしれません、個人的には手放せませんが…






(#2)
★☆
Wiener Philharmoniker (VPO)
[DG] 1994-5


(右は全集です。ブーレーズのマーラーはオススメですね)

BBC-SOから約20年後、ウィーンフィルを振った良く知られたマーラー6ですね。大きく変貌しています。

第一楽章
スローに入る第一主題は重厚、徐々に上げて標準的なテンポに。アルマの主題は華やかです。提示部反復の第一主題は初めから標準テンポですね。展開部第一主題は重々しく、実は厄介な挿入部は各ソロ・パートの上手さとバランスの良さでgoodですね。流石はVPO! 再現部は文字通りの再現ですが、より色合いの濃さを感じます。コーダも同様です。完成度が高い第一楽章です。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章の流れを受け継いで重厚で堂々と。若干速めのトリオは繊細な美しいメヌエットですが甘美に落とす事はありません。木管の動機も流れに沿った自然さでナチュラルです。全体を通して第一楽章の延長線上を感じますね。
第三楽章
この美しく優しい主題はまさにVPOの個性が発揮されたと思います。第一トリオも優しく哀愁が広がります。緩やかなアゴーギクがとても効果的ですね。中間部は雲が晴れるかの様に広がり、後半第一トリオ回帰の山場は壮大です。
6番最高のアンダンテの一つでしょう。
第四楽章
序奏はスローベースに揺さぶりを押さえ、二回目のモットーからアレグロ・エネルジコ達すると提示部第一主題を切れ味良く放ちます。パッセージも落ち着いてhrを朗々と鳴らし、第二主題が軽妙に現れます。展開部チェロの動機は抑えめに、第二主題は広大な音色です。第一主題からの行進曲は抑えながらも堂々ですね。再現部は第一主題回帰を華々しく迎えると騎行は切れ味鋭く駆け抜けます。



威風堂々とした完成度の高いマーラー6です。小細工無用、低重心盤石な構えといった風情ですね。優しく美しいアンダンテが色を加えているのも素晴らしいです。

VPOの鳴りの良さが最大限生かされているのも一つの大きな要因ですね。いつ聴いても間違いの無い一枚と言う感じです。






(#3)
Gustav Mahler Jugendorchester
[En Larmes] 2003-4/13

VPOの9年後、グスタフ・マーラー・ユーゲント管を振った非正規盤のマーラー6です。ブーレーズは同年同月同オケの東京公演で、シェーンベルクの"ペレアスとメリザンド"の名演を残していますね。
マーラー6番は、4/18:大阪ザ・シンフォニーホール、4/21:東京サントリーホールだったのですが、本CDはルツェルンでのLIVEです。(実は大阪の録音が存在するのですが…)

第一楽章
重厚な第一主題、途中からテンポを速めモットーから再びスローにします。アルマの主題は少し速めながら華やかですね。展開部第一主題は勇壮に、第二主題挿入部はVPOの様には行かずとも狙いは同じです。再現部はテンポを速めにしています。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は速めながら第一楽章延長線で、トリオはスロー&シンプルにして流れを切り替えます。ここでも速い設定ですね。木管の動機は少しスローにして雰囲気を作っています。
第三楽章
アンダンテですね。テンポは少しアップしていますが、主要主題の穏やかさはVPOと似てブーレーズの基本的な方向性は9年間でも変わっていない事を感じます。第一トリオも同じ様な流れで哀愁を作り、中間部は穏やかな明るさ、後半の山場は速く壮麗です。
第四楽章
陰鬱渦巻く序奏は割とあっさりとしています。第一主題はシャープに落ち着いてパッセージと共に進んで行き、軽妙な第二主題を迎えます。展開部の第二主題ではテンポをいっそう速めて切れ味を出し、行進曲は軽快なこなしです。再現部スロー静からの第一主題出現は華々しく、パッセージから飛び出して騎行は気持ちが入っているのが良くわかります。ユースオケの楽しさを感じられますね。



速いテンポ設定を生かして、スッキリとしたマーラー6です。VPOのテンポ設定を速めて軽量化した感じですね。ブーレーズの狙いと思われ、ユース・オケの演奏実力が十分発揮されています。

この若々しい流れは"あり"ですね。音源も放送用レベルです。






(#4)
Lucerne Festival Academy Orchestra
[Accentus] 2010-8, 9


上記#3の7年後、2010年ルツェルン音楽祭でルツェルン音楽祭アカデミー管を振ったマーラー6です。ユースオケでの聴き比べが出来ますね。

第一楽章
スッキリとした第一主題ですね。アルマの主題は適度に優美で、全体的にスタンダードっぽい提示部になっています。なぜか展開部第一主題だけ変わったアゴーギクを振って(1973の様な)、挿入部はスローを強調し音は押さえた感じになりますね。再現部も今ひとつ切れ味が感じられないのが残念です。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はメリハリがありません。そうなると速めのトリオはそっけない感で、木管の動機も印象が残りません。
第三楽章
主要主題は速めの設定になり、この方が自然な流れに感じますね。ユースの場合はテンポ設定が少し速い方が良い感じでしょうか。スローに落とす第一トリオは弱い感じです。中間部はhrとtpの対話が良いですね。でも残念ながら弱々しいアンダンテです。
第四楽章
序奏はスロー基本でモヤっとした感じ、第一主題もやや遅めなので走れません。安全運転の提示部です。展開部・再現部もどこかスッキリしない感じがしてしまいますね。それでも再現部第一主題回帰以降は元気を見せてくれた気がします。



スカッとしない曇り空の様なマーラー6です。テンポ設定が標準的で全体教科書的、そうなるとユースオケですからフラットになってしまいますね。

速めのテンポが生かされた "Gustav Mahler Jugendorchester" の様な若々しさ見つかりません。ブーレーズ85歳、流石に厳しかったのでしょうか。





ガリー・ベルティーニ, Gary Bertini (3録音)

都響の音楽監督時代のマーラーが思い出されるベルティーニですね。なぜか都響はベルティーニとのマーラー全集を出しませんね。選集はあるのですが…



(#1)

Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
[Weitblick] 1973-4/30


ベルリン・ドイツ交響楽団(DSO)を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
速くて切れ味のある刺激的な第一主題、モットーからパッセージでスッキリさせるとアルマの主題は派手で華やか若干速めです。提示部の反復はカット!です。展開部の第一主題は激しさを増し、第二主題は低弦が呪いの様なボウイングで唸っています。再現部第一主題は激走、コーダは荒々しく納めます。
強烈ハイテンポ切れ味の第一楽章です。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は速く第一楽章の延長線上を感じさせる流れです。締まりが心地良いですね。トリオはブレーキを掛けてスローになっていますが優しいメヌエットには落としませんね。刻むリズムがピシピシ跳ねて印象的です。木管の動機も哀愁はほどほどでそっけないですが、この流れには合っていますね。
第三楽章
主要主題は流れを一変させるスローですが、優美さというよりキッチリ固い印象を受けます。第一トリオも同じ流れですが、少し緩やかさを付けていますね。第二トリオ(中間部)は明るい光が燦々と輝きます。ラスト山場は大きく鳴らして来ます。
一癖モノのアンダンテになっていますね。
第四楽章
序奏からスローベースにディナーミクを振って彫りの深い流れを作り、モットーから走る気配を漲らせて、アレグロ・エネルジコから提示部第一主題は強烈キレキレに疾走します。パッセージで手綱を締め直して走らせると、第二主題もテンポをキープして提示部の流れはシャープです。展開部はチェロの強迫的動機から第二主題は派手な鳴りで大きな山場を作ります。適度なアゴーギクからの行進曲は当然の怒涛爆進です。思わず笑っちゃうほどですね。再現部も一呼吸の前半を超えると第一主題回帰から騎行は狂気の突進になります。
爆裂爆走の最終楽章です。



テンポの速い硬派の突撃型マーラー6です。刺激と気合が全面に出た感じですね。また今の時代では聴く事のない、第一楽章提示部の反復カット版です。

決して素直なマーラー6ではありませんが、どうもこういう演奏が好きになりますねぇ。






(#2)
Kölner Rundfunk Sinfonieorchester
[EMI] 1984-9/21


(右は全集ですね)

かのケルン放送響とのマーラー・サイクルからの一曲で、もちろん首席指揮者時代(1983-1991)の録音です。

第一楽章
第一主題は適度なテンポに乗って勇壮に、穏やかなパッセージからアルマの主題は派手で華々しくアゴーギクを効かせていますね。展開部は勇壮な第一主題とスローの第二主題のコントラストを明確に付けてきます。再現部第一主題はテンポアップして激しさ漲らせて、ラスト第二主題変奏もパワフルですね。
怒涛で派手な第一楽章です。好きなパターンかもw
第二楽章
スケルツォですね。主要主題は一楽章の延長線上ですが、少しクールに納めていますね。中間部は穏やかなメヌエット風にギヤを切り替えて続く木管の動機はほどほどにと、良い流れを作っています。回帰でもう少し色付けをが欲しかった気もします。
第三楽章
アンダンテです。主要主題は穏やかマイルドに、第一トリオがそこに哀愁を付け加えて来ます。王道の流れです。第二トリオの中間部は陽光さす明るさを緩やかに表現していますが、全体少し緩さを感じるかもしれません。
第四楽章
序奏の揺さぶりは弱めの流れですが、アレグロ・エネルジコから提示部第一主題は歯切れ良い勇壮さです。パッセージも切れ味鋭く現れて第一主題と対位的に絡んでシャープです。第二主題もその流れを崩さずに入って来ますね。展開部は両主題を大きな鳴りで広げます。行進曲は快感の勇壮さ、ディナーミクのコントロールがとても効果的ですね。再現部も騎行パートは超ハイテンポで強烈に突き進みます。見事な締まりの良さです。



変化球なし、真っ向勝負のマーラー6です。あまりにストレート過ぎるのが問題でしょうかw 個性あるアゴーギクのスパイスを一振りして欲しかったですね。

勇壮な第一・四楽章が見事なので、中管楽章の二つに締まりがあれば素晴らしかったと思います。






(#3)
Tokyo Metropolitan SO
[fontec] 2002-6/30


音楽監督時代(1998-2005)の都響とのマーラー6ですね。埼玉と横浜で行われたチクルスです。この21年前の1981年に東京文化会館で6番を初客演で振っています。(#1と似た方向性で面白いのですが、残念ながら最終楽章は演奏が着いて行けませんでした)


第一楽章
低弦の弾む様なリズムを強調した第一主題、肩の力が抜けた流れです。アルマの主題は少し速めにマイルドな華やかさですね。展開部、再現部共に安定感抜群の流れを感じますね。手の内に入った演奏とでも言うのでしょうか。
18年前のケルンRSOと比べると落ち着いた流れを感じます。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は落ち着いた流れで隙はありません。トリオも程よくテンポダウン、落ち着きは変わりませんね。木管の動機も違和感はありません。回帰でもアゴーギクの揺さぶりを上手く付けて来ます。
第三楽章
アンダンテですね。主要主題はややスローで透明感ある落ち着きに、第一トリオでもスローはキープして色合いを哀愁に変えて来ます。中間部は広がりある音色で明るさを見せて、緩やかな流れが全体を支配しています。
第四楽章
陰影強い序奏を押さえて進み、テンポアップしてモットーへ。第一主題は爽快に、パッセージもhrの鳴りを生かします。第二主題は軽妙ですね。展開部の両主題の交感もほどほどに、行進曲も計算通りの刺激でしょう。ウッドクラッパーの音色が良いですね。再現部は押さえの効いた流れから騎行も落ち着きの中にコントロールされています。



落ち着いて行儀の良いマーラー6です。全パートで程よいテンポ、程よい刺激、全てがコントロールされた成熟した姿でしょうか。

角が取れた円熟さと引き換えに角(つの)も削られた様な…
ベルティーニの声が良く聞こえますね。





エリアフ・インバル, Eliahu Inbal (3録音)

マーラー振りの一人インバルですが、三回のマーラー・サイクルの内二回が都響とですね。それも約5年ほどしか開けていません。なんだか不思議な感じですね。



(#1)
Radio-Sinfonie-Orchester Frankfurt
[DENON] 1986-4/24, 26


フランクフルト放送響(現:hr交響楽団)とのチクルスからのマーラー6ですね。

第一楽章
スローな第一主題は途中から徐々にテンポアップで計算を感じますね。重厚さはほどほどです。パッセージを大きく落として、アルマの主題は緩やかな印象です。展開部スローの挿入部を極緩く、後半の山場も興奮を避けるかの様ですが、再現部は締まり良い行進曲で入りますね。コーダの葬送ではスローを強調、全体の流れは緩い印象です。
第二楽章
スケルツォですね。主要主題は緩いです。これがインバルの狙いなのでしょうね。トリオはいっそう落とします。木管の動機もドロ〜んとした感じです。残念ながら強烈な間延び感を拭えません。
第三楽章
アンダンテはスローを避けて適度なテンポ設定ですが、それでも主要主題はのんびり感を醸して ぬるいコーヒーみたいですね。第一トリオは哀愁が漂いますが、主題からディナーミクが極度に弱くベターっとしています。第二トリオ(中間部)で何とか色合いを変えてくれますが、全体ユルユルです。
微妙なポルタメントもよく聴こえる様な奇妙さも…
第四楽章
序奏は当然スローでアゴーギクは薄め、提示部第一主題からパッセージは程よくテンポアップしますが、アゴーギクが弱く耳と脳が疑っていて快感は伝わりません。展開部からも、処々で標準的なテンポと揺さぶりを見せます。それなら今までの緩いスローは何だったのでしょう??って感じになりますね。この楽章だけ特別コントラストが良いわけでもありませんし。



緩くてもわ〜っとしたマーラー6です。アゴーギクは振っていますが基本はスロー、個人的にはシャキッとして欲しい気分が先に立ちます。特に中感楽章のモワモワ感は強烈です。

クセ物の一枚ですが、好みではないのでにはなりませんね。






(#2)
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
[fontec] 2007-12/19


都響のプリンシパル・コンダクターの前、特別客演指揮者以後でのマーラー・サイクルの6番ですね。フランクフルト放送響から21年後になります。

第一楽章
第一主題は重厚と言うよりも肩の力を抜く感じ、モットーからパッセージも段階的に落として、アルマの主題はスロー低重心の優美さが珍しいです。展開部は力感の第一主題変奏から、挿入部は表情を感じさせるスローで上手く奏します。再現部は勇壮さを増してテンポも上げて来ますが、第二主題は平凡な回帰です。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は冷静さを感じます。そこへトリオが洒脱な色合いで入ります。ついでにインバルの唸りも着いて来ますがw
第三楽章
主要主題は微妙なアゴーギクを振っていますね。第一トリオは揺さぶりを消して哀愁から穏やかさに変化させて行きます。第二トリオ(中間部)では王道的に明るい光を感じさせてくれますね。
第四楽章
長い序奏はスローの緊張感で上手いですね。アレグロ・エネルジコからの提示部第一主題は締まりの良い疾走です。パッセージhrの鳴りが良く、第一主題との絡みも切れ味がいいですね。第二主題は軽快そのものです。展開部も教科書的にピシッとまとまって突き進みます。生真面目な完成度の高さと引き換えにスリルやワクワクする様な楽しさが薄まった感じですが、都響らしさかも。



クセも欠点も少ない、お行儀の良いマーラー6です。多少の揺さぶりは付けていますが、コンパクトにあっさりとまとまった印象ですね。

個人的には何+αが欲しい感じです。コンサートでもそうですが、インバルの唸りがやたらと聞こえますね。






(#3)
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
[Exton] 2013-11/2, 3


プリンシパル・コンダクター(2008-2014)時代、都響と二回目のマーラー・サイクルからの6番。上記の6年後になります。

第一楽章
第一主題は重心を低く力感の流れになっています。モットーからパッセージでも流れ良く鎮めてアルマの主題をスローに大きく広げます。展開部第一主題はビシッと決めて、挿入部スロー静も緊張感がありますね。(インバルが唸るフレーズがうるさいですがw) 再現部は勇壮さを見せながら進み、コーダも沈めた葬送から一気に走り抜けます。見晴らしの良い第一楽章になりました
第二楽章
スケルツォです。主要主題は落ち着いていますが切れ味は良いですね。重心を下げて流れを作るとトリオが静粛なイメージを作ります。上手い緊張感を作っていますね。続く木管の動機は殊更に哀愁を見せる事はしませんね。それぞれ回帰では色合いを加えて、表情のあるスケルツォになっています。
第三楽章
主要主題は緩やかなアンダンテで少しアゴーギクが振られ、第一トリオは透明感ある哀愁、中間部は力のある広がりです。それにしてもインバルの唸り声は歌い過ぎですね。
第四楽章
序奏は音の良さを感じます。提示部第一主題は姿勢正しく、パッセージも正面を見据えた感じです。第二主題は抑えた軽やかさで現れます。展開部は一呼吸入れる感じからチェロの強引な動機から第二主題が目覚める様に出現して大きく鳴らします。1stハンマーの後は行進曲を重心を低く堂々と進んで行きますね。静からの烈、再現部聴かせ処の第一主題回帰からの騎行パートは突撃突進で、素晴らしいです。



落ち着き払った堂々王道のマーラー6です。適度なアゴーギクとディナーミクがマッチして、録音も良く全方位良好です。興奮も排した出来過ぎ感が気になるかもしれませんが、それこそ都響の個性かと。m(_ _)m

インバルでマーラー6を聴くならこれでしょう。インバルのヴォーカリーズ(唸り声)で歌付きの6番になっていますがw







聴き始めると一気に聴けるのですが、なかなかその気になるきっかけがないのが問題ですw まだまだあるのですが…


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ベント・セアンセン(Bent Sørensen) の協奏曲集『Concertos』微分音の浮遊感

尖ったデンマーク前衛音楽世代を指導した印象が強いソレンセン(とも書かれます)ですね。


Composer
ベント・セアンセン
(Bent Sørensen, b.1958)
デンマークの現代音楽家です。同国のイブ・ネアホルム、ペア・ノアゴーに師事していて、技法・楽風は極端な前衛ではなくグリッサンドの微分音を生かした美しい音を作る印象です。アコースティック専門ですね。

本ブログで今注目の前衛実験系のデンマーク現代音楽家、ステーン=アナセン, レンスホルト, 他1970年台後半生まれの、が師事をしている事からも注目の音楽家ですね。


Album Title | Player
Concertos
協奏曲集です。一曲目はピアニストのアンスネスに献呈されています。アンスネスのスタンスにインスパイアされたそうです。他の二曲もそれぞれ北欧系の演奏者で、北欧系のセットになっていますね。

演奏は1.と3.がスカルスタード(Per Kristian Skalstad)指揮, ノルウェー室内管(Norwegian Chamber O)。2.がトマス・セナゴー(Thomas Søndergård)指揮, デンマーク国立響(Danish National SO)です。録音年の違いですね。(1.3.は2019年, 2.は2014年です)
ソロはそれぞれの曲にあります。






1.La Mattina (2007-2009)
  for piano and orchestra
5パートのピアノ協奏曲です。調性に軸足を置き、不協和音の構成ですね。バックの弦楽器はグリッサンドから微妙な微分音を出しています。そこを重点的に聴かせるテクも使っていますね。それがセアンセンですね。pfは正面切っての真っ向勝負ではなく、シンプルな旋律で主役の弦楽器?に呼応する感じでしょうか。パートに速度指示"Andante"や"Presto"があって機能和声的な構成です。
ピアノはもちろんレイフ・オヴェ・アンスネス(Leif Ove Andsnes)です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  part IV "Andante" です



2.Serenidad (2011-2012)
  for clarinet and orchestra
まずクラリネットの神経質な音色と微分音の弦楽が入ってセアンセンらしさがいきなり全開です。ピアノ協奏曲と比べると美しい浮遊感は同じですがディナーミクが強い楽曲ですね。voiceもハミングで入ります。3パートでII.はスケルツォ的ですから、ここでも古典的な協奏曲構成があります。
クラリネットはマーティン・フレスト(Martin Fröst)です。この曲だけLIVEで少し雑音が気になります。


3.Trumpet Concerto (2012-2013)
  for trumpet and orchestra
弦楽器の短めのグリッサンドを重ねて虫が飛ぶ様な音が、シャリーノ風な感じですね。時折このパターンを使いますね。また反復も多めに感じます。楽風的には一曲目の静的幽玄な美しさからメリハリが強くなって来ています。part IIは緩徐楽章で、tpが美しい旋律を奏でますね。
トランペットはティーネ・ティング・ヘルセット(Tine Thing Helseth)です。



グリッサンドと微分音、そこから現れるセアンセンらしい繊細で美しい浮遊感が伝わりますね。どの曲もラストが唐突に終了するのも個性的です。

調性の薄さと幽玄さは今やどこにでもある現代音楽の一つになっています。そこに何が存在するかが問題になる訳ですが、セアンセンには微分音の武器がありますね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





山下洋輔「バンスリカーナ」再々発売と過去の音楽記憶

久しぶりのジャズ系インプレで、再発売されていたとは知らずの一枚です。思わずポチッと…

クラシック好きの父親がかけていたSP盤/蓄音機の時代から、中学生の時にはSP&LP/stereoに。ロック中心時代のその頃の情報源は"ミュージック・ライフ"、ジャズ中心の高校生時代は"スウィング・ジャーナル"、クラシック系はレコードのライナーノートにある評論家の先生のあまりの上から目線でうんざり腰が引けて雑誌は一切買わない事にw

もちろん当時はインターネットどころがPCさえありませんでしたから、ロックは深夜放送、ジャズは新宿や銀座のレコード屋さんも情報源でしたね。
ネット情報は、インターネット発展の前の電話回線の"パソコン通信" nifty-forumからですから1990年代中盤になってからです。PCネタがメインで、音楽系は薄かった様な…

このアルバムはフリージャズ好きの学生時代でした。前衛現代音楽にシフトするのはもっと後の事ですね。


Player
山下洋輔 (1942/2/26 - )
山下洋輔さんの紹介をするつもりは当然ありませんw トリオは坂田明(as), 森山威男(ds)が個人的な印象です。その後、ドラムスを小山彰太さんに入れ替えて、大きな編成等もやっていたのではないかと思います。違うかな?

1970-1980年代の活躍が印象に残っていますが、この後1980年代からは激しさは変わりませんがコード重視の音作りになって行った様に思います。


Album Title
Banslikana (1976年)
Piano Solo
ライヴで見せる姿とは一味も二味も違うスタンダード曲を中心としたアルバムでしたね。レコードで購入した時は、どんなスタンダードになっているのか興味津々だった記憶があります。

聴きやすさと刺激のバランスが良くてBGMの様にかけていたと思いますね。






1. チュニジアの夜 - 2. ステラ - 3. バンスリカーナ - 4. キアズマ - 5. 枯葉 - 6. コーズ・デイドリーム - 7. ララバイ - 8. バード

ハードボイルドな味付けのスタンダード&オリジナルジャズ曲になっていますね。"チュニジアの夜"などは縦横無尽の打鍵の疾駆がYAMASHITA的で、"ステラ"はかなりフリー・バラードな味付けになっています。

"バンスリカーナ"は名曲で、このフレーズが今でも時折頭に浮かびます。メインフレーズ(主題)を変奏しながら強鍵で進んで行くのは前衛的です。YAMASHITA節炸裂ですね。

"キアズマ"も得意曲ですが、こちらは即興的な楽曲で熱が入っています。"枯葉"はトランスクリプション的で、オリジナルの気配はありません。激しいフリーインプロビゼーションです。"コーズ・デイドリーム"は挟まれる美しいコードが特徴的です。"バード"はバップの香りがありますね。

昔のレコードの録音時間制約から、全8曲で長くても一曲あたり8'以下と言うのが残念です。



バンスリカーナという曲を聴くと主題の変奏と、打楽器の様にピアノを扱う奏法とで、この後自分の嗜好が前衛現代音楽に向かったのがわかります。まさに前衛ピアノ曲と演奏です。

フリーインプロビゼーションは類型化を感じますが、バンスリカーナ 一曲を聴くために買っても惜しくないレアな一枚です!



 ★YouTubeで山下洋輔トリオを聴いてみる?
  やっぱりバンスリカーナのトリオ爆演と言うならこれでしょう。
  本CDと同年モントルー1976ライヴ"Montreux Afterglow"からです。
  3.5'あたりの爆演や、5.5'あたりからの坂田さんのas大ブロウもあって、
  こちらの方が聴きやすいかも。今聴くと思わず笑みがこぼれてしまいます。



テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽





エリック・モンタルベッティ(Eric Montalbetti) の室内楽作品集「Harmonieuses Dissonances」

ソロ、管弦楽、そして今回の室内楽と展開して来たモンタルベッティ。そろそろインプレを残しおきましょう。


Composer
エリック・モンタルベッティ
(Éric Montalbetti, b.1968)
フランスの現代音楽家ですね。ピアノとオルガンを習い、仏学問の頂点Collège de Franceに続いてIRCAMでP.ブーレーズに師事しています。P.マヌーリ、T.ミュライユにも学んで仏前衛系の印象でしょうか。M.リンドベルイにも習っていたりするのが気になりますがw

ラジオ・フランス・フィルの芸術監督を務めてもいましたが、楽曲デビューは2015年と遅咲きですね。本年7月には板倉康明/東京シンフォニエッタがモンタルベッティ作品(委嘱作品・他)を公演予定ですが、COVID-19で危ぶまれます。


Album Title | Player
Chamber Music
"Harmonieuses Dissonances"
二重奏曲, 三重奏曲, 四重奏曲, ですね。ソロ曲を得意としていたので、小編成楽曲は実力発揮ではないかと期待しています。楽器編成的には極アコースティックでIRCAMらしい電子処理は無い様ですね。

演奏はC.テツラフ(vn, #1)や永野英樹(pf, #3)さんの様な知られた顔ぶれが揃っています。






1. Duo Pour Violon & Piano
  "友情あふれる人生への感謝の歌"
ピアノとヴァイオリンの重奏曲です。対位的な関係をメインに構成されていて、処々でホモフォニーの顔を覗かせます。調性感が強く、適度な不協和音を使って幽玄さを醸す感じですね。中間部?辺りで少しpfソロの無調強音パートが登場しますが、楽風印象は変わりません。
特別な和声もなく、構成感にも新しさを感じませんね。


2. Hommage à Matisse, pour Clarinette & Voix De Femme
  "マティスへのオマージュ"
メゾソプラノとクラリネットのデュオです。voiceはヴォーカリーズですから楽器と同じ扱いでしょう。他の楽器組合せver.もある様です。
いつもの事ですが、voiceは人間なので極端に調性を崩した旋律はありません。3パート曲ですが、変化は薄く中庸な流れでフラットです。clは跳躍音階も出しますが、旋律感が低いだけで機能和声的ですね。


3. Trio Pour Violon, Violoncelle & Piano
  "ピアノ三重奏曲"
ピアノ, ヴァイオリン, チェロの三重奏曲です。楽器数が一つ増えて少し面白さが感じられます。単なる対位的な二つの楽器から、三つのポリフォニー、もしくは二つのホモフォニーと一つの対位関係、それだけでも緊張感が変わります。
流れ自体は同じですから、表情変化はあまりなくて中庸の変化幅です。それを超える何かが欲しい気がします。


4. Quatuor à Cordes "Harmonieuses Dissonances"
  "調和する不協和音"
弦楽四重奏のアルバム・タイトル曲です。タイトルがモンタルベッティの音楽を表現していると思います。
仮にこれを20年前のアルディッティSQが弾いたと想像すると、四つの弦はもっと切れ上がった神経質な演奏をするでしょう。それなら面白いかもしれませんね。そう言う感じの作品です。




 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  Alpha ClassicsからのPVです



今やありげなパターンの一つ、調性の薄さを生かした幽玄な現代音楽ですね。技巧的に特徴的な和声を感じる訳でも奏法がある訳でもありません。跳躍旋律が現代音楽的ですが、その分変化に乏しくなります。

個人的には、以前何処かで聴いた様な現代音楽室内楽に感じます。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジョージ・クラム(George Crumb) の代表作『マクロコスモス, Makrokosmos 全曲』をBerlin PianoPercussionで

全曲を通して聴けるアルバムの少ないクラムのピアノ曲 "マクロコスモス" をインプレです。


Composer
ジョージ・クラム (George Crumb, b.1929)
米前衛現代音楽家の重鎮、90歳を超えたクラムは "新しい音"の追求や特殊記譜 "図形楽譜" で知られていますね。

"extended instrumental" と称される特殊奏法、例えばピアノは内部奏法で弦楽器の様に、でも有名かもしれません。アンプによる増幅も古くから取り入れていますね。



Album Title | Player
The Complete Makrokosmos I-IV
Berlin PianoPercussion
Black Angels(1971)と並ぶクラムの代表作で全4部のピアノ曲集ですね。バルトークの"Mikrokosmos"との関連はググって下さいw

実は最も知られる III. だけが変化球で、ピアノ(2)パーカッション(2)のクァルテット、楽曲内容も十二宮星座や宇宙から離れてクァジモド, パスカル, リルケのと言った詩人のエピグラフを元にしていますね。

楽曲構成は以下の様になっています。
・I. II.:ピアノ・ソロ (増幅・内部奏法等のextended piano*)
・III. :2ピアノ、パーカッション (4奏者、extended piano*)
・IV. :ピアノ・連弾 (1piano四手、extended piano*)

*内部の弦を弾いたりする特殊奏法、モノを入れたりするプリペアードピアノのクラムの総称です。

演奏のBerlin PianoPercussionは2008年創設のピアノ&パーカッションのアンサンブルです。全曲を通した統一感が期待できますね。日本人ピアニストの木吉佐和美さんが入っています。






Makrokosmos I, Twelve Fantasy-Pieces after the Zodiac (1972)
まず1-1)Cancerでの低音暗闇とそこに現れる強音で第一印象を植え付けられるでしょう。すぐに内部奏法も出現します。1-2)Piscesでは右手の細かい高速アルペジオが印象的に表情を変え、その後も少しJazzyな色付けやvoice(スクリームや狂気的), 口笛等があって変化を付けられています。パート毎で内部奏法が異なるのが特徴的ですね。3-3)Geminiではショパンの引用が入っています。
基本静で暗、pfの余韻・残響で空間を増幅で表現しているのは同じです。特殊奏法はラッヘンマンの様なノイズ系重視ではなく、よりpf表現に近い"新しい音"です。


Makrokosmos II, Twelve Fantasy-Pieces after the Zodiac (1973)
プリペアド・ピアノが入ってI.との違いを明確にしています。また、音数が増えているですが、表現される空間での浮遊感(その和声)と内部奏法・増幅残響は同じ流れです。2-3)ScorpioではI.には無かった前衛即興的な一面も見せていますね。2-4)Ariesでは"怒りの日"が引用されています。


Makrokosmos III, a Summer Evening (1974)
  for two amplified pianos and percussion (two players)
編成が大きくなり、pfの音幅は広がり、perc.が特殊奏法で補えなかった音色をサポートしています。基本はI. II.と変わりませんが、表情変化は大きくなり、ポリフォニカルな混沌や強音は効果的になっています。全曲中一番の楽曲、5)Music of the Starry Night のキラキラ感も光りますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  打楽器のパターンが良くわかりますね。CDよりも硬質な音色を感じます



Makrokosmos IV, Celestial Mechanics (1979)
  Cosmic Dances for Amplified Piano, Four Hands
一台のピアノを連弾しているので、I. II.に比べて強音化と音数増加の方向性になりますね。トリル・トレモロ、反復・変奏の傾向も少し強まっています。"Kosmas"の印象から行くと、静音残響を生かしたI. II.の方が面白いかもしれませんね。I.→ IV. へと音数増の傾向が明確です。



[I, II] 静で暗な空間に沈む音色とキラキラした色合い、増幅残響音。
[III] ポリフォニカル混沌と静音空間、溢れる音と現れる全音階。
[IV] 増える音数とトリル・トレモロ、そして強音混沌空間。

調性感と浮遊感の和声、そして"Cosmic Sound" 標題音楽です。独特の深淵さは、現代音楽ピアノ曲の傑作の一つで、amplifiedを含めて演奏者側に表現力を要求する楽曲ですね。Berlin PianoPercussionの本LIVE盤はオススメです。

バルトークの現代表現にドビュッシーの全音階的な組み合わせと言われるとわかりやすいのかもしれません。その表現は好きではないのですが…



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