FC2ブログ

クロノス・クァルテットで聴く テリー・ライリー(Terry Riley) の『Sun Rings』というNASAミュージック


テリー・ライリー
(Terry Riley, 1935/6/24 -)
今更ですが、シュトックハウゼンから始まりラ・モンテ・ヤングからミニマルに、そしてインド音楽とクロノスSQとの関係と進んで来ましたね。即興とミニマルで知られますが、テープやマイクロトーナル、そして映像コラボのインスタレーションと先進性も見せる米ビッグネームとしては珍しいマルチ現代音楽家です。

米現代音楽ミニマル界ではスティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラスと並ぶ大御所ですね。ライヒがフェイズシフティングなら、ライリーはモジュールの即興(偶然性?!)という技法を元にしますね。

 ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


Sun Rings (2001-2002年)
クロノス弦楽四重奏団 (Kronos Quartet)
10の小曲(spacescapes)からなる楽曲です。キーになっているのは"NASA Art Program"の一環で、そのボイジャー等によるスペースサウンドを使って Willie Williamによる映像も含めたインスタレーションになる様です。そこに弦楽(ライヴ)と合唱(録音)を加えて作られていますね。(クロノスのHPから様子が写真で見られます)

演奏は米のクロノスSQで、欧のアルディッティSQと対比する現代音楽を専門とするString Quartetですね。違いはミニマルも得意とする男女のクァルテットという事でしょうか。クロノスもちゃんと書いておかないといけませんねェ。






1.Sun Rings Overture - 2.Hero Danger - 3.Beebopterismo - 4.Planet Elf Sindoori - 5.Earth Whistlers - 6.Earth/Jupiter Kiss - 7.The Electron Cyclotron Frequency Parlour - 8.Prayer Central - 9.Venus Upstream - 10.One Earth, One People, One Love

まず"Overture"で耳に入るのはノイズですね。中には通信会話と思しきものや解説も入っている様です。というわけで楽曲は二曲目"Hero Danger"からです。ライリー得意のインド和声から無調まで入り、そこにノイズが紛れ込みます。はっきりと、多分ですがw、スペースノイズ的な物が入っています。それを生かした無調弦楽も盛り込まれてノイズの現代音楽と言ってもおかしくありません。ノイズは少ないですが、ラスト "One Earth, One People, One Love" は素晴らしいですね。

ただ "Earth/Jupiter Kiss" の様な、ノイズと無調系音楽がマッチしているパートは多くありません。ライリーは相変わらず調性・無調・インド和声と様々な音色を紡ぎますが…
宗教曲風の合唱パートが印象的なので、一層のことスペース・カンタータにしても良かったかも。

どのノイズがスペースサウンドなのか、はたまた特殊奏法なのか、ステージを見ないとわかりませんね。

 ★試しにYouTubeで覗いてみる?
  "Beebopterismo"のオフィシャル・ビデオで、映像を見る事ができます。




楽器の特殊奏法やコンピューターによるノイズではなく、スペースノイズのノイズ系現代音楽ですね。そこにライヒ音楽が出現する新しいと言えば新しい音楽(技法)?! その二つが混じり合ってマッチしているパートが少なく、そこが微妙な感じですね。

来年(2020)の9-10月に、クロノスSQが本作品で来日するそうです。ステージを観に行ってみましょうか。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





2CELLOS の ルカ・スーリッチ(Luka Sulic) がチェロの室内楽に編曲した ヴィヴァルディ『四季』


ルカ・スーリッチ
(Luka Šulić, 1987/8/25 - )
人気チェロ・デュオの2CELLOSの一人、旧ユーゴ出身でYouTubeからビッグネームになった今の時代の音楽家ですね。チェリストの父親を持ち ザグレブ、ウィーンから英王立音楽アカデミーで学んでいます。

2CELLOSはポップなスタイルからヒットしたので、本来なら偏屈な視野の自分としては範疇外。でも一度聴いたらバックボーンにジョヴァンニ・ソッリマ*やマリオ・ブルネロを感じました。実は2012年のコンサートにも行っていますw
それ以来、気になってはいました。

*ソッリマの今夏の100チェロコンサートに行けなかったのは残念です


四季 (The four seasons)
アントニオ・ヴィヴァルディ (Antonio Vivaldi)
全12曲のOp.8ヴァイオリン協奏曲集の#1-#4、今更この曲の説明もないと思います。このブログ、と言うか個人的にも今は殆ど聴く事はなくなりましたが、いずれにしろイ・ムジチの印象でしょうか。

それをスーリッチがvnパートをvcに入れ替え、室内楽パートも自ら編曲しているとの事、そこがポイントで手にした訳ですね。現代のチェロ演奏を見せるスーリッチの古典音楽への方向性が楽しみです。
演奏は、ルイジ・ピオヴァーノ指揮、サンタ・チェチーリア・アカデミア弦楽合奏団です。






La Primavera
最も知られたアレグロではメリハリの強い派手な流れを作ります。チェロも技巧の見せつけパートになっていますね。少なくとも優美や優雅ではありません。ラルゴはチェロの音色を生かした落ち着き、アレグロは勿論回帰です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  1stMov.アレグロのLiveですが、本CDに比べ平凡な演奏になっていて残念!!
  やはり聴衆に配慮しているのでしょうか…



L'Estate
揺さぶりによる表情付けが明確で、vcパートの激しさは技巧的に見せて2CELLOS風になっていますね。"夏"が一番その傾向が強いでしょう。


L'Autunno
有名なアレグロは速くて派手ですね。ここでも技巧的な振りが大きく、落ち着きがないと感じるかもしれません。でも全体としてそういう編曲だという事でしょう。アダージョではスローでのコントラストを大きくつけていますね。3rdMov.のアレグロはチェロを生かし豪華円舞曲風です。


L'Inverno
アレグロは不安定な音の配分から入ってくる現代風の面白さがありますね。それまでの3パートにはない展開です。ラルゴも色濃い流れです。



予想通り2CELLOSを思わせる出し入れの強い"四季"になっていますね。洒脱や優美とは異なる、彫りの深い濃厚激情な流れです。その中で四つのパートのキャラクターを見事に変えています。そこは予想を超えた楽しさでした。

来年3月にはこの"四季"でクラシカル・ミュージック オンリーの来日を果たす予定だそうですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ロッシーニのオペラ「オリー伯爵」2011年 チューリッヒ歌劇場公演:好色コメディーの演出が光りました [DVD]


オリー伯爵 (Le Comte Ory, 1828年)
イタリア人作曲家ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini, 1792/2/29 - 1868/11/13)がフランスに移ってからの歌劇ですね。

元はフランス国王シャルル10世の即位のために書かれた戴冠式用限定オペラ「ランスへの旅」です。その音楽を流用して、好色者として知られたオリー伯爵を題材にした作品ですね。個人的に好きなオペラの一つです。

2011年12月31日 チューリッヒ歌劇場での収録です。

【配役】
 ・オリー伯爵:ハヴィエル・カマレナ [Javier Camarena]
 ・アデル伯爵夫人:チェチーリア・バルトリ [Cecilia Bartoli]
 ・イゾリエ(オリー伯爵の小姓): レベッカ・オルヴェラ [Rebeca Olvera]
 ・教育係(オリー伯爵付き):ウーゴ・グアリアルド [Ugo Guagliardo]
 ・ランボー(オリー伯爵の仲間):オリヴァー・ヴィドマー [Oliver Widmer]
 ・ラゴンド夫人(アデル伯爵夫人の侍女頭):リリアーナ・ニキテアヌ [Liliana Nikiteanu]

【指揮】ムハイ・タン [湯 沐海, Mu-hai TANG]
【演奏・合唱】チューリッヒ歌劇場管弦楽団・同合唱団
【演出】モーシェ・レイザ & パトリス・コリエ [Moshe Leiser & Patrice Caurier]






DVDになります


演出
レイザーとコリエの演出です。オリジナルは1200年代の十字軍の時代設定ですが、ここでは1900年代前半。オリー伯爵はキャンピングカーで流浪する盲人の神父に化けている設定ですね。好色コメディタッチを十分に効かせた演出で、この歌劇を楽しませてくれた感じです。イゾリエと伯爵夫人が…の演出は一歩踏み込んでいるかもしれませんねw


舞台・衣装
ヨーロッパの古い町並みを背景にしていますね。女性の衣装はロカビリー時代の様なヒラヒラです。舞台にはシトロエン2CVなどのフランス車が実車で登場しますね。


配役
タイトル・ロールのハヴィエル・カマレナは伸びの良いテノール、役柄らしい演技で楽しませんてくれましたね。ランボーのオリヴァー・ヴィドマーはあまり目立たず、第二幕ワインのシーンだけでした。教育係のウーゴ・グアリアルドは微妙なコミカルさで上手かったですね。

女性陣、アデル伯爵夫人のチェチーリア・バルトリがコロラトゥーラも聴かせて、ドラマティコとまでは行かないでしょうがしっかりとしたsopで、濃い表情の演技と共に流石でした。"ズボン役"で女性が演じるオリー伯爵の小姓イゾリエのレベッカ・オルヴェラは演技も良く、mezは良い声でした。残念なのは可愛さが欲しい役どころですが、見た目が老け気味だった事です。ラゴンド夫人のリリアーナ・ニキテアヌは今ひとつの声と演技でした。


音楽
古楽器での演奏でしたね。でもそれは聴いただけではわからない、と言ういのが印象です。



エロティック・コメディーの味付け(演出)と、タイトル・ロールとアデル伯爵夫人の二人がマッチしてとても楽しい喜劇オリー伯爵になっていましたね。

個人的には同年のメトのJ.D.フローレスのオリー伯爵の方が好みではありますが。



テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽





素晴らしい晩年のステンハンマル(Wilhelm Stenhammar)の「Sången (The Song), symphonic cantata 他」を鉄板のネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ響で聴きましょう


ヴィルヘルム・ステーンハンマル
(Wilhelm Stenhammar, 1871/2/7 - 1927/11/20)
指揮者と作曲家で知られるスウェーデンを代表する音楽家ですね。以前も書きましたが、楽風は1910年を境としてドイツ後期ロマン派風から北欧らしい風景感のある構成に変化しています。まだ欧州前衛が生まれる前ですから技法的な進歩性はないのですが、独特の音の広がりはこの時代の北欧系作曲家の流れですね。

 ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


Suite from Romeo och Julia・Sången・他
BISレーベルのネーメ・ヤルヴィ(Neeme Järvi)/エーテボリ交響楽団(Gothenburg Symphony)の録音は1982年のステンハンマルから始まっているそうです。このアルバムが2018年ですから長いですねぇ。

エーテボリ響はN.ヤルヴィが22年間主席指揮者として鍛え上げたオケで、その昔はステンハンマルも15年に渡り主席指揮者を努めていましたね。

本アルバムは後期オケ作品で、メインは4曲目の "Sången (The Song)" ですね。4人の声楽ソリストと混声合唱団・少年少女合唱団、そして大編成オケという大きな構成のカンタータです。もう一曲は最後の作品番号作品である"ロメオとジュリエット:組曲"でしょう。






Suite from Romeo och Julia, Op. 45 (1922年)
北欧の冷たく澄んだ空気の様な流れで、ソロパートには舞曲の様な民族音楽和声を感じますね。そのコントラストがとても心地よい曲で、まさに晩年のステンハンマルらしさを楽しめます。確かに大きく括れば後期ロマン派の派生でしょうね。


Reverenza, (1911–13年)
6'ほどの小曲です。メヌエットやスケルツォを思わせる様な流れに微妙な調性感を入れています。情感も強めですね。表題曲的で、単独曲と言うよりも組曲の一部の様な印象です。


Two Sentimental Romances, Op. 28 (1910年)
ヴァイオリン協奏曲になりますね。ちょうど楽風変化の時に当たる作品です。まだ、後期ほど北欧色は強くありません。vnの優しい旋律も明確で、後期ロマン派と言うよりもロマン派的に聞こえるかもしれませんね。タイトル通りかも。


Sången (The Song), symphonic cantata, Op. 44 (1921年)
二部構成のカンタータです。textは国や自然、そしてそこからの様々な歌(The Song)を聞くと言った内容です。
激しい歌唱、荒波の様なオケ、厚い合唱団の歌声、濃厚な30'が楽しめます。楽風は複雑化していて対位法からポリフォニーの様な折り重なる流れが主流となっていますね。他のステンハンマルの曲とは一味違う劇的な厚みが素晴らしい一曲ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ブロムシュテットの指揮、スウェーデン放送響の演奏です。
  ヤルヴィの重厚さに対して、こちらは先鋭さですね。




やっぱり晩年最後の二曲が素晴らしく、20世紀前半のスカンジナビア音楽家独特の澄んだ空気感と、複雑で厚みあるカンタータのコントラストを聴かせてくれます。

"組曲"で感じる北欧の澄んだ空気は、音の跳躍が無く ターン音階の様な旋律構成がその要因の一つでしょう。一方コンプレックスな"カンタータ"では父ヤルヴィらしい出し入れが味わえますね。そんなステンハンマルを楽しめる好アルバム、オススメです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





グラインドボーン音楽祭2019 モーツァルトの歌劇「魔笛」をNHKプレミアムシアターで観る


今年の夏の英グラインドボーン音楽祭(Glyndebourne Festival Opera)からモーツァルトの人気オペラ「魔笛 (The Magic Flute)」カナダの演出Duoのバルブ&ドゥセーによる演出ですね。



(見せ場の一つ、夜の女王の第二幕アリアです)


魔笛の演出(舞台・衣装含む)ですと、古いジョン・コックスやグース・モスタートの古典的なパターンが頭にあります。近年では面白い宮本亜門さんの演出もありましたが…
さて、バルブ&ドゥセー(André Barbe と Renauld Doucet)はどう楽しませてくれたのでしょうか。


演出
舞台と時代設定は、20世紀初めの老舗ホテルだそうです。ザラストロは料理長、夜の女王は女主人という対決設定ですね。
喜劇的シーンも上手く仕込んでいましたが、全体的にすっきりしない流れに感じました。タミーノとパミーナ二人が火と水の試練を乗り越えるのが料理人設定で、そこで笑いを取りましたが、それは違う様な。
最後にアヴァンギャルドな演出が残されていますね。(女性・人種問題と絡めてました)

舞台・衣装
舞台道具は手書き風で二階を作ったりと、今の時代としては大きな設置です。衣装は20世紀初めの印象ですね。近現代ですが、パパゲーノはかつての鳥の羽を思わせる緑のスーツを着ています。

配役
女性陣ではパミーナ(S.フォミナ)のsopは良かったですね。強い女性の印象は設定でしょうか。夜の女王(K.ヴェッテグレン)は、見た目も優しいsopでしたね。かの夜の女王のアリア(第二幕)ではコロラトゥーラに余裕が感じられませんでした。第一幕では少々金切声っぽかった様な。パパゲーナ(A.ローズ)は、"パパパ"の二重唱で最高の演出を含めて楽しませてくれました。このシーンは本舞台一番でした!!
男性陣タミーノ(D.ポルティーヨ)は生真面目っぽいテノールで 役にはあっていたと思いますが、何となく控え目でしょうか。役得のはずのパパゲーノ(B.ビュルガー)は前半は演技も控え目でした。でも後半はコメディーさが増して楽しませてくれましたね。ザラストロ(B.シェラット)は落ち着いた良い気配とバスでしたね。舞台が締まりました。

音楽
ウィグルスワースは序曲では速めのメリハリ付けが印象的でしたね。劇中ではもちろん特別に感じる様な事はありませんでした。


前半はもやもや、後半に面白さを見せた"魔笛"でした。ラストは夜の女王が復活してパミーナやザラストロと仲直りするのも今の時代らしい前衛的演出でしたね。

前半(第一幕)にも"パパパ"の様なシーンが演出されれば、楽しい"魔笛"だったという気がします。


<出 演>
ザラストロ:ブリンドリー・シェラット [Brindley Sherratt]
タミーノ:デイヴィッド・ポルティーヨ [David Portillo]
夜の女王:カロリーネ・ヴェッテグレン [Caroline Wettergreen]
パミーナ(夜の女王の娘):ソフィア・フォミナ [Sofia Fomina]
パパゲーノ:ビヨルン・ビュルガー [Björn Bürger]
パパゲーナ:アリソン・ローズ [Alison Rose]

<合 唱> グラインドボーン合唱団
<管弦楽> エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団
<指 揮> ライアン・ウィグルスワース [Ryan Wigglesworth]
<演出・美術・衣装> バルブ&ドゥセー [Barbe & Doucet]


収録:2019年8月4日 グラインドボーン音楽祭歌劇場(イギリス)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第5番』 «ネット配信» ジョアナ・カルネイロ指揮 / BBCフィルハーモニック 2019年10月26日


ジョアナ・カルネイロ, Joana Carneiro
(BBCフィルハーモニック, BBC Philharmonic)
ポルトガル人女性指揮者のカルネイロが、BBCフィルを客演で振ったマーラー5ですね。初めて聴くカルネイロですがさてどうでしょうか。BBC Radio 3ウェブサイトからの配信です。

▶️ こちら (2019-12/5まで配信されますね)




マーラー 交響曲 第5番 «ネット配信»
(Live at Leeds Town Hall, 26 Oct 2019)

26oct2019jaonacarneiroMahler5.jpg
(写真はチェリストのLaura van der Heijdenです)


第一部
葬送行進曲は抑え気味でクールにファンファーレと対比付けをしています。第一トリオは適度な激しさとテンポアップで正攻法ですね。第二トリオでも適度な哀愁感です。第二楽章は第一楽章の延長線上を示す様に二つの主題を作りますね。展開部のチェロパートは極端に鎮めたスローで上手いコントラスト付けです。輪郭線のある第一部です。

第二部
スケルツォ主題とレントラー主題は、それぞれ華やかさと優美さで この楽章らしさを出しています。第三主題部でもクセはありませんね。再現部は各主題をより明瞭にしながら色合い濃く展開し、コーダは走ってピシッと締めます。

第三部
アダージェットの主要主題は感情移入を抑えて鎮め、トリオは繊細さを聴かせてくれました。第五楽章第一・第二主題の絡みからコデッタは軽快で心地良いですね。展開部は力感を増しながら山場を派手に作ります。再現部は出し入れを見せた流れから山場、そしてコーダへなだれ込みます。ラストはアッチェレランドからキレよくフィニッシュします。


適度なコントラストに正攻法の流れ、でも何かスパイスが欲しいマーラー5です。アゴーギクとディナーミクの振りが山場だけなのが要因かもしれませんね。その分安心して聴けたのも事実ですが、やや没個性の感も残りました。



CDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





So Percussion で聴く ポール・ランスキー(Paul Lansky) の『Threads』は緩やかな陶酔感ですね


ポール・ランスキー
(Paul Lansky, 1944/6/18 - )
ニューヨークで活躍する米現代音楽家ですね。なんと言ってもコンピューター・ミュージックで知られるところでしょう。十二音技法と理論派のミルトン・バビット(Milton Babbitt)に師事しているのですが、バビットがシンセサイザーに傾倒している時代という事でしょうか。

ランスキーのコンピューター・ミュージックはハードウェアからアルゴリズム、そしてプログラム言語・ソフトウェアと全方位で絡みます。その辺りは、コンピューター・ミュージックをインプレする際にまた。

▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


Threads (2005年) by "So Percussion"
今回はそんなランスキーのパーカッション曲です。20世紀後半から手がけた器楽曲の中で一番初めにアプローチしたパーカッション曲の中でも、初期の作品になりますね。

演奏はお馴染み、こちらもニューヨークで活躍するSo Percussionです。今回は演奏家主体なのでBang On a Can(以下BOAC)のCantaloupe Musicレーベルからのリリースになります。(ランスキーの曲はBridgeレーベルからのリリースが多いですが)






1.Prelude - 2.Recitative - 3.Chorus - 4.Aria - 5.Recitative - 6.Chorus - 7.Aria - 8.Recitative - 9.Chorus - 10.Chorale Prelude

10の小曲で構成されているので、個別インプレはいらないと思います。鍵盤打楽器を中心にしたミニマル的な流れ、太鼓系の東南アジア風打楽器音楽の様な流れ、その二つで構成されていますね。前者は美しく優しい響きが主役で、後者は当然ながらリズム主役です。リズム主役ですが、曲によって勇壮さや細やかさと言った変化を付けています。

Executive ProducersにM.ゴードン、D.ラング、J.ウルフの名前がクレジットされています。という事でBOACの一環作品になるでしょうね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Lagan Percussionによる演奏です。打楽器使いの様子がよくわかりますね




どことなく東南アジアのリズムと和声を感じるパーカッション曲です。バックボーンのBOACの影響もあるのかもしれませんね。緩い陶酔感が支配して心地良い独特な非現実音世界です。

ミニマルと東南アジア和声の融合のBOACとランスキーのコラボ結果かもしれませんね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジャズ風味の新古典主義的 オラトリオ:アンデルシュ・ヨルミン(Anders Jormin) の『Between Always and Never』


アンデシュ・ヨルミン
(Anders Jormin, 1957/9/7 - )
日本語名記述は上記二つ意外にアンダーシュ・ヤーミン、他で少し混乱するスウェーデンのベーシストですね。今回は現代音楽家としての作品紹介ですが、活躍の中心はジャズ・ベーシストですね。
ヨーテボリ大学(Göteborgs universitet)でピアノとベースでクラシックを学んでいて、音楽家の基本はクラシカルです。現在はヨーテボリ大学とシベリウス音楽院でジャズや即興の教鞭をとっているそうです。

1990年代からジャズシーンで活躍、特にチャールズ・ロイド (かつてK.ジャレットとJ.ディジョネットをマイルスに引き抜かれたので有名?!) とのコラボで知られた様ですね。個人的ジャズ熱中は'80年代までだったので、知見はありませんがドン・チェリーやリー・コニッツと言った古い顔ぶれとの共演もあった様です。来日もしていますね。

▶️ 北欧現代音楽CD(作曲家別)一覧


Between Always and Never (2013年)
オーケストラとコントラバスのための作品ですね。基本的には現代音楽アプローチのオラトリオで、二人のソリストと聖歌隊が中心となります。textもヨルミンによる作品ですね。

二人のソリストはヨルミンの他、ヴォーカルのレーナ・ヴィッレマルク(Lena Willemark)になります。






1.Aviaja – 2.Haiku – 3.Kärleksvisa (Song of Love) – 4.Vägen är öde (Desolate Road) – 5.Sol och måne (Moon and Sun) – 6.Dans ur Stenars tystnad (Dance - the Silence of Stones) –7.Mellan alltid och aldrig (Between Always and Never) – 8.Shakespeare Cogitatio – 9.Kärleksvisa・Triptyk (Song of Love - Triptych) – 10.Dans till solars lek (Dance - the Play of Suns) – 11.Eviga tanke (Eternal Thought) – 12.Hemingway Cogitatio – 13.M.

13曲構成で、textはシェークスピアの引用もありますが 月や花、昼や夜といった自然を題材にしています。タイトルパートでは "AlwaysとNeverの狭間で、世界が変わる様な息を飲む瞬間が現れる" とありますね。

まず一曲目で感じるのは調性の薄い新古典主義的な印象でしょうか。旋律感はあるので聴き辛くはありません。合唱パートは聖歌(和声)で歌い、演奏で調性を薄めてバランスを取る感じです。パート間でのバリエーションは豊かで、反復や無調旋律を強調したり、3.の様な民族和声の流れも入れていますね。調性の美しいパートもあり軸足は機能和声で、現代音楽ですが前衛ではありません

ヨルミンのcbも音色を変えて脚色していますが、やっぱり楽しいのはヨルミンらしいジャズ風展開が見える時でしょうね。cbソロの"5.Sol och måne"が一番の聴きどころで、フラジョレットのピチカートやジャズの引用が良いですね。それが一番という処に問題がありそうな気もしますが。



ジャズのスパイスを振って気の利いた新古典主義風のオラトリオです。調性から無調を微妙に跨ぎますが、ジャズ色は本人のみ。ジャズ・スパイスがもっと効いていたらより楽しかったと思うのですが。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





研ぎ澄まされた透明感と緊張感:細川俊夫の室内楽『gardens』


細川俊夫
(Toshio Hosokawa, 1955/10/23 - )
日本を代表する現代音楽家の細川さん、このブログで今更の紹介もないと思います。B.ファーニホウやK.フーバーと言ったバリバリの"New Complexity"の旗手に師事しダルムシュタットでも活躍していますが、そこに透明感と美しさという全く異なる味付けをしているのが素晴らしいですよね。


gardens
今回のアルバムは室内楽集ですが、ウクライナのアンサンブルで録音を行なっています。東欧民族楽器のツィンバロム*を採用しているのもキーかもしれません。テーマはタイトル通り"庭"ですね。

指揮とツィンバロムはルイージ・ガッジェーロ(Luigi Gaggero), 演奏はウホ・アンサンブル・キエフ(Ukho Ensemble Kyiv)になります。

*ピアノの金属弦部分の様な楽器で、弾いたりマレットで叩いたりして演奏しますね






Drawing (2004)
ロングボウイングの静的なノイズ、そこに単音のpfの打音、煌く打楽器、透明感ある暗闇の様な空間です。音符密度は次第に上って混沌度も上がりますが、トリオの様なパートが現れてトリル・トレモロ・グリッサンドで空間を聴く様な音に変化し、最後は主部回帰となりますね。根底に邦楽和声を感じます。


Im Frühlingsgarten 春の庭にて (2002)
雅楽や能と言った気配を感じますね。静かな空間の中に緊張した空気を感じる様なサウンドです。


Nachtmusik 夜の音楽 (2012)
いきなりのツィンバロンの音色は、知らずに聴けばpfの特殊奏法かと思ってしまうでしょうね。金属的音色とその残響音を最大限生かしたツィンバロンのソロ曲で、共鳴の中に倍音も感じます。独特の和声を感じる空間音響系音楽です。


Singing Garden 歌う庭 (2003)
細川さんらしいピアニシモから入って来ます。もちろん旋律感もない無調ですが、各楽器がどこかホモフォニカルに呼応している感じです。そこに感じる美しさが細川さんらしさかと個人的には思いますが、いかがでしょう。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Voyage V 航海 V (2001)
フルート(Mario Caroli)が協奏曲風に入ります。それが尺八の様に感じますね。アンサンブルは情景を奏で、flは吹き抜ける風の様です。このアルバム中 唯一激しい出し入れがありますね。旋律もあり構成感もあって標題音楽風、異なるコンセプトの様な一曲かもしれません。



細川さんらしい透明感と緊張感です。スロー中心のその響きは空間音響系と言っても良いと思いますね、個人的には。
その中で何と言っても素晴らしいのは"Nachtmusik"でしょう。残響音と空間ですね。

作られた枯山水か竹林かと言った風情から最後に激しい自然、こういうアルバムから現代音楽を聴くと楽しさが伝わる気がします。



▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
▶️ 北欧現代音楽CD(作曲家別)一覧

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ワーグナーのパルジファルを基にした現代音楽:ベルンハルト・ラング(Bernhard Lang) の楽劇『パルツェフール』


ベルンハルト・ラング
(Bernhard Lang, 1957/2/24 - )
本ブログではお馴染みのオーストリアの現代音楽家ですね。ジャズベースや徹底反復、ラップや再構築といった今の時代の多様性前衛を代表する現代音楽家の一人です。代表作の"モーツァルトなんか嫌いだ"もインプレ済みです。

今回は後期、まだ存命ですがw、の中心となるモナドロジー(Monadologie)シリーズの一環作品です。モナドロジーは既存作品の再構築で、今までにも "ハイドン:Monadologie IX" や "モーツァルト:Monadologie XXIV"、"ベートーヴェン:Monadologie XXVII" 等を取り上げていますね。そこには既存の引用やループ等の電子処理による反復といった再構築が施されてB.ラングの現代音楽ver.となっています。XIIIはインプレ済みです。


ParZeFool (Monadologie XXXIII, 2016)
基はワーグナーの"パルジファル"ですから、それを知っていればCD3枚と長いですが問題なく配役とストーリー展開はわかりますね。ラングはワーグナーがパルジファルの構築から初演に至るまでの経緯を調べて再構築しているそうです。またブーレーズの演奏のアナライズも実施している様ですね。
ライナーノートでは"Down the rabbit hole"とあります。不思議の国のアリスがウサギが掘った穴に落ちて体験する世界の事ですから、さてどうなるでしょう…

実際の舞台では月面基地に場所を設定していて、そこも前衛です。前衛オペラで観たかったかも。

演奏は、シモーネ・ヤング指揮、クラングフォルム・ウィーン、アルノルト・シェーンベルク合唱団です。
配役は、Daniel Gloger(ParZeFool), Magdalena Anna Hofmann(Cundry), Wolfgang Gankl(Gurnemantz), Tomas Tomasson(Amphortas), Martin Winkler(Clingsore), 他






前奏曲・第一幕
まず有名な前奏曲から全く違います。基音は類似性を感じますが単音ノイズ風から入ります。もちろん無調で反復ですが気配は似た感じが無きにしもあらず…なるほど。

アンフォルタス王の湯浴みも同様に雰囲気を似せながら、歌詞にも執拗な反復を使います。完全な無調パートもありますが、基本は調性は薄いものの旋律感のある徹底反復の流れです。クンドリは少し狂気を感じさせるパートもありますし、パルツェフールは如何にも愚か的で面白いです。シュプレッヒゲザングではありません。

室内楽の演奏もマリンバやアコーディオン等の使い方が面白く、上手く生かされている感じですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  有名な前奏曲ですね。



第二幕
前奏曲はサックスも入って得意のフリージャズ風です。魔法使いクリングゾルのライトモティーフかと思いましたが、そうではない様ですね。クリングゾル役のマルティン・ヴィンクラーのバス・バリトンが良いですね。この第二幕ではその後もフリージャズ風の展開が現れます。山場のParZeFoolの名前が明かされるシーンでは"パルジファル"と聞こえますね。後半はパルツェフールのダニエル・グローゲルの熱唱です。カウンターテノールなのでちょっと…ですが。


第三幕
ここでは演奏に即興ポリフォニー的なパターンも出てきます。騎士として現れるパルツェフールは、カウンターテノールなので何となく締りに欠ける感じです。実際の舞台は月面基地ですから何か面白さがあるのかもしれませんね。でも最後まで愚かなパルジファルの印象が拭えず、これが一番足を引っ張った気がしてしまいます。えっ、そこが前衛ですか?!



何と言っても執拗な反復が強烈です。前衛ですが、声楽は微分音の様な特殊唱法を出すのが難しいからでしょうが、無調混沌にはなっていません。そういう意味では、今の時代の楽劇と言って良いかと思います。ストーリーも分かりやすいですね。(唯一飲み込めなかったのはカウンターテノールの採用です。それが真髄だと言われると困りますね)

原作よりは短いとはいえ約3時間、でも思いの外流れよく聴く事が出来ました。"I hate Mozart"の様にDVDを追加してくれたらもっと良かったのですが…



▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
▶️ 北欧現代音楽CD(作曲家別)一覧

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





プロフィール

kokoton

by kokoton
.
    




・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




カレンダー
10 | 2019/11 | 12
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ようこそ
カテゴリ
ありがとう