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ショパンを現代曲でサンドイッチした、有島京さんのピアノ曲集『Works for Solo Piano』


Works for Solo Piano
有島京 (Miyako Arishima, 1992 - )
残念ながらピアニストの有島さんには知見がありません。選曲優先で手にしたアルバムです。
桐朋女子高等学校卒業後にポーランドに留学・活動、2015年のショパン国際ピアノコンクールに出場していらっしゃる様です。2016年からは現代音楽アンサンブル"Sort Hul Ensemble"のメンバーでもあります。
選曲を一眼見て幽玄さを表現してれそうな並びだったので、期待値はそこになりますね。







武満徹
(Toru Takemitsu, 1930-1996)
言わずと知れた武満さんですね。中間部とコーダに"dying away"と注記が会って、消え入る音を聴き込む姿勢がある曲ですね。(この曲を元にした"Rain Tree Sketch II"生涯最後の作品になります)

雨の樹素描 (Rain Tree Sketch) (1982)
 フランス印象派的な流れに無調を合わせていますが、曲の幽玄さが強く調性を感じる素晴らしさですね。それが武満さんかもしれません。pfは強音の後の消えていく静音が美しい音色ですね。ラストの余韻も。とにかく素晴らしいです。




カロル・シマノフスキ
(Karol Szymanowski, 1882-1937)
このブログではピアノ曲、もちろんそれだけではありませんが、でオススメの作曲家です。今回は様々なピアニストでお馴染みの"メトープス"から第三楽章"ナウシカー"、そしてシマノフスキ最後の作品"2つのマズルカ"が取り上げられていますね。

Métopes - "Nausicaa" Op.29 (1915)
 今まで何枚かのCDインプレしている好きな曲(の一部)です。個人的にはもう少しスロー(アゴーギクでも)での幽玄さを表にしてくれると好みかもしれません。切れ味と技巧を主体に表現していて、どちらかと言うと硬い印象ですね。この楽章だけの演奏だからかも?!


2 Mazurkas Op.62 (1934)
 シマノフスキらしい美しく幽玄な曲になりますね。CDではショパンの後に入りますが、ショパンから技巧性を引いて調性を薄くした感じも確かにしますね。今回の流れでよくわかった感じです。
pfはここでも音を明瞭にする感じです。好みはもう少しあやふやな?!タッチ・色付け、その方がシマノフスキっぽい様な気がします。




フレデリック・ショパン
(Fryderyk Chopin, 1810-1849)
ポーランドで活躍するからこそのショパンなのか、なぜ現代音楽家三人の中に入っているのか理由を知りたいですね。代表作"舟歌"を含む三曲が選ばれましたが、生涯49番(作品番号なし除く)まで作曲したマズルカ(Op.33)と、スケルツォ最後の第4番も興味深いですね。

舟歌 (Barcarolle) in F sharp major Op.60 (1846)
 美しく柔らかい主題からソフトなタッチで、この有名曲を奏でます。表現的には、よりノクターン的にも感じますね。優しさがありますね。


4 Mazurkas Op.33 (1838)
 22-25番ですね。22-24は2分前後の小曲で、マズルカらしい民族音楽和声を粒立ちのよい音色で聴かせてくれます。適度な揺さぶりも上手い感じです。
25は6'弱ですが最も表情の彫りが深い曲です。それに合わせて感情を深くつける様なアゴーギクとディナーミクを振っていますね。やや濃厚な味付けを感じます。


Scherzo No.4 in E major Op.54 (1842)
 ここでは技巧性を強くしています。ベースは感情表現の強さですが、そのバランスがシックリこない様な… 技巧中心なら淡々とした中に超絶性の方が聴きやすい気がします。




カジミェシュ・セロツキ
(Kazimierz Serocki, 1922-1981)
ポーランドのピアニストにして現代音楽家ですね。作曲はN.ブーランジェに習っています。楽風は新古典主義から十二音技法の欧州前衛にシフト、その後前衛の停滞と共にエレクトロニクスも手掛けている様です。ただ十二音技法もシェーンベルクら新ウィーン楽派の規程通りではなく反復や調性にあるものですね。
今回の"プレリュード組曲"は代表作で、十二音技法で書かれていますが上記の流れ。日本語訳ライナーノートではショパン - 新ショパン主義(英文:post-Chopin シマノフスキだそうです)からの流れと書いてありますね。さらには、この十二音技法が新シェーンベルク主義的(英文:neo-Schönbergian dodecaphony)だと、驚きの解説ですw

Suite of Preludes (1952)
 7パートの楽曲です。例によって聴いただけではわからない十二音技法ですねw 面白いのは単音点描的なセリエルを使ったパートと調性の薄さを生かした幽玄なパートを使い分けている事でしょうか。そこに何か意図があるのかもしれません。後者はシマノフスキに繋がる様な幽玄さです。そこに魅力を感じますね。そのパートのpfは緩やかなタッチで好みです。パート#4がその白眉ですね。ラスト#7は技巧曲です。




結局なぜ現代曲の中にショパンが混ざって、それもサンドイッチされる様に、いるのかはわかりませんでした。pfは表現濃厚の印象でしょうか。

個人的素人的にはメトープスを一つの楽章のみにしたりするくらいなら、シマノフスキをメインに前後を武満/セロツキでバインドした方が良かった気がします。そうなるともっと幽玄なタッチが欲しくなるかも。




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前半二楽章の美しさ、2019年10月16日 小泉和宏/都響 の『ブルックナー 交響曲 第7番』at サントリーホール


ブルックナーの7番を聴きに六本木まで。近年はコンサートでもない限り聴くことは無くなりましたが好きな曲、本日70歳の誕生日を迎えたマエストロがどう振ってくれるか楽しみですね。


20191016SuntoryHall01.jpg 20191016SuntoryHall02.jpg


発売時のインパクトも含めて、この曲の個人的マスターピースはカラヤン最後の録音(w/ VPO)です。w/ BPO盤の厳しい抑揚を削ぎ落として、クールに広がる美しさが光りますね。





ブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 WAB107 (ノヴァーク版)

■ 第一楽章 [三つの主題のソナタ形式]
第一主題はvcを美しく奏で、第二主題のobとclは流れに乗りながら、山場の後の第三主題は表情変化を大きく奏でました。
展開部・再現部は主題をコントラスト良く対比させて、コーダは大きく派手な山場を作りました。
全体としては揺さぶりや重厚さを抑えていましたね。
■ 第二楽章 [A-B-A-B'-A のロンド形式]
主要主題は暗さを軸足に取ったアダージョ、中間部はやや明るさを見せるモデラートでした。
その後の両主題回帰ではもう少し短調の主要主題を生かして欲しかった気がしました。コーダのワーグナーの「葬送音楽」ももっと鎮めた音色でも良かったのでは。
■ 第三楽章 [中間部一回の三部形式]
主要主題はスケルツォらしさよりも勇壮さ主体に、中間部はその流れからの穏やかさでした。
ブルックナーらしい怒涛の流れがありましたね。もう一歩踏み込めば陶酔的だったかも。
■ 第四楽章 [三つの主題のソナタ形式]
テンポ設定が速めでした。第一主題は弾ける響きを強調しながら第二主題は優美に、第三主題は派手派手しく、適度なコントラストと言った感じです。
展開部を細く繋げて、再現部は逆順となる三主題を明確に回帰させました。コーダはもちろん大きく広げて締めました。


前半二つの楽章の美しさを前面にしたブルックナー7でした。そこに怒涛や低重心、揺さぶりといった方向を回避しましたね。個人的には好きな方向ですが、それが好みを分たかもしれません。

コンサートならではの一体感と言った、+αがあればもっと素晴らしかったかな⁈

カーテンコールではマエストロに"happy birthday to you"と花束も出て楽しいコンサートだったと思います。


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アンナ・スミルノワのアビガイッレが光る, 2019年 チューリヒ歌劇場公演 ヴェルディ 歌劇「ナブッコ」NHKプレミアムシアター

本年6月の「Nabucco Oper Zürich 2019」旧約聖書を題材にしたヴェルディの初期オペラ「ナブッコ」ですね。

オペラ・セリアの流れをくむ派手で大向こうを唸らせる印象のナブッコですが、今回のキモ?はやっぱり演出のホモキさんでしょうねぇ。日本でもお馴染みですが、濃い色付けでしょうね。きっと…



(公式Trailerです)



演出
王位を巡るストーリーを家族の物語に展開するホモキの演出だそうです。そう言われてもわかりませんね、まぁ原作も家族と言えばそうなのですが…
ナブッコらしく歌劇団のメンバーも小さな舞台に溢れる様に出てきます。ただ動きがあるので違和感はなく惹き込まれた感じはありましたね。メインキャストも同じ様に表情と動きがある演出でした。メリハリを付けるホモキ演出らしさでしょうか。少しだけいじってあるとすれば、アビガイッレが銃で自殺になっていてその音も入っている事くらいでしょう。

舞台・衣装
舞台は暗くグリーン基調のシンプルそのもの。大きな壁があるのみです。衣装は二世紀くらい前の欧州の様相で、ネイチャーカラーで統一されています。(兵士はブルー系) 大きな壁は分断の象徴だそうです。

配役
男性陣, タイトルロールのミヒャエル・フォレは堂々たる演技とバリトンで楽しませてくれましたね。役柄ピッタリでした。
イズマエーレ役のベルネームは少し印象が薄い感じでした。
ザッカーリアのツェッペンフェルトはいつもの通りのツェッペンフェルトです。(笑) スマートなバス・バリトンと容姿でクールで役を引立てていましたね。ただ声が前に出ていない様な。

女性陣はアビガイッレ役スミルノワは、伸びの良いソプラノを聴かせました。表情・演技も舞台映えしたと思います。見た目の太さに目をつぶれば今回のベスト・キャストでしょうねw
フェナーナのシメオーニはスミルノワに比べると声・演技共に控えめの印象でしょうか。

チューリヒ歌劇場合唱団には東洋系の男女が多く見られ違和感を感じます。欧州の話ですからねぇ。

音楽
F.ルイージは来日コンサートでは割と激しさを見せたりする印象ですが、まぁオペラだとどうしても舞台を中心に観るので特筆はありませんね。


狭い舞台ながらシンプルな配置と動きのある配役の演出で楽しませてくれたのではないでしょうか。配役ではタイトルロールとアビガイッレの二人が光りました。特にアビガイッレ役のスミルノワは見事に感じましたね。

ストーリーに前衛性を盛り込んでも面白かった気がしましたね。今やストーリー自体にさえ手を加える時代ですから。そうでなければアレーナ・ディ・ヴェローナの様な屋外の大劇場に時代背景の派手な舞台が"ナブッコらしい"気がします。



<出 演>
ナブッコ(バビロニア王):ミヒャエル・フォレ [Michael Volle]
イズマエーレ(エルサレム王のおい):バンジャマン・ベルネーム [Benjamin Bernheim]
ザッカーリア(ヘブライの大祭司):ゲオルク・ツェッペンフェルト [Georg Zeppenfeld]
アビガイッレ(ナブッコが奴隷に産ませた娘):アンナ・スミルノワ [Anna Smirnova]
フェネーナ(ナブッコの娘):ヴェロニカ・シメオーニ [Veronica Simeoni]

<合 唱> チューリヒ歌劇場合唱団
<管弦楽> フィルハーモニア・チューリヒ
<指 揮> ファビオ・ルイージ [Fabio Luisi]
<美 術> ウォルフガング・グスマン [Wolfgang Gussmann]
<衣 装> ウォルフガング・グスマン
ズザーナ・メンドーザ [Susana Mendoza]
<照 明> フランク・エヴァン
<振 付> チャン・キンスン
<演 出> アンドレアス・ホモキ [Andreas Homoki]


収録:2019年6月21・23日 チューリヒ歌劇場(スイス)

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コントラバスの可能性を楽しむ現代音楽:ステファノ・スコダニッビオ(Stefano Scodanibbio) の『Alisei』


ステファノ・スコダニッビオ
(Stefano Scodanibbio, 1956/6/18 - 2012/1/8)
イタリア人のコントラバス奏者で現代音楽家、作曲はサルバトーレ・シャリーノに学んでいたので前衛ですね。Cb奏者としてはシャリーノの他にブライアン・ファーニホウやジェラール・グリゼイ、ジャチント・シェルシと言った錚々たる欧州前衛系の音楽家から楽曲が献呈されている事からも、その存在感がわかります。テリー・ライリーと言った米現代音楽家との親交も深かった様ですね。
56歳の若さで亡くなったのが惜しまれます。


Alisei
ソロ、デュオ、アンサンブル、全曲コントラバスのみの作品集です。残念ながら本人は演奏者に入っていません。
演奏の"Ludus Gravis Ensemble"はスコダニッピオとダニエーレ・ロッカート(Daniele Roccato)の二人が設立した、コントラバス・アンサンブルですね。そのD.ロッカートが今回全ての曲にフィーチャーされています。

何とも興味深いコントラバスのアルバムで、Cb.現代音楽好きとしては手を出すしかありませんね。






Alisei
  (Cb : Daniele Roccato)
特殊奏法も入ってノイズ風の中に薄い旋律が組込まれていますね。その旋律はフラジョレットで調性的です。他の弦はトレモロなので、どうやって弾いているの?!って言う感じですね。(YouTubeを見ればわかります) 途中からノイズの刺激が強くなり旋律が無調化、ラストは回帰的です。ソロ・コントラバスの楽しさいっぱいですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  CDと同じロッカートの素晴らしい演奏です



Ottetto
  (Cb : Alessandro Schillaci, Andrea Passini, Daniele Roccato, Francesco Platoni, Giacomo Piermatti, Paolo Di Gironimo, Simone Masina, Stefano Battaglia)
8人編成コントラバス・アンサンブル曲で、本アルバムのメインでしょうか。ここでも静的ノイズから入り、そこにトリル・トレモロや異音的ボウイングが絡みます。抑えの効いた流れから少しづつ音量と刺激がクレシェンドしていき、奇妙な調性旋律とモノフォニーを奏でたり、空間音響系の様な楽風になったり、昆虫の蠢きになったり、と変化を続けメタモルフォーゼ的多様性です。
30'に渡り怪獣の脳か, 宇宙空間のダークマターの波形を聴く様な楽しさ?!ですw


Due Pezzi Brillanti
  (Cb : Daniele Roccato)
ソロですね。単旋律反復と変奏をベースとしているコントラバス技巧曲です。音色と響も良く 2パート合わせて10'弱ですから、ソロ・コンサートだったら受ける事間違いなしですね。


Da Una Certa Nebbia
  (Cb : Daniele Roccato, Giacomo Piermatti)
デュオ曲です。フレジョレットと単音ボウイング&ピチカートの二挺の絡みは音数少なく呼吸の様に静的に、その後もゆったり二人のDialogueの様です。素晴らしい流れを感じますね。



前衛現代音楽のコントラバスが楽しめますね。無調や調性と言った括りかを超える今の時代の多様性前衛でしょう。もちろん無調基本ですが。

コントラバスの可能性も含めて、この楽しさを是非味わっていただきたいですね。オススメの一枚です。



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音楽で事実を再構築するドキュメンタリー:ジュリア・ウルフ(Julia Wolfe) の『ファイアー・イン・マイ・マウス, Fire in my mouth』


ジュリア・ウルフ
(Julia Wolfe, 1958/12/18 - )
このブログでは超オススメの米現代音楽機構"Bang on A Can"(以下BOAC)創設メンバーの一人、米女性現代音楽家ですね。(他にマイケル・ゴードン、デイヴィッド・ラングの二人。M.ゴードンはご主人です)

近年のソロ活動はアメリカの歴史的事件や伝説を綿密に調査して楽曲を構築するスタンスになっています。「Anthracite Fields」「Steel Hammer」 はそういった素晴らしい楽曲ですね。好きな現代音楽家の一人で、この二曲もオススメです!!


Fire in my mouth (2018年)
1911年にニューヨークで起きた「トライアングル・シャツウェスト工場火災」をベースにし、縫製工場の移民女性たちの死をオラトリオ形式で表現しています。もちろん詳細な調査により作られていて、"移民 - 工場 - 抗議 - 火災" という四部作になっています。タイトルは活動家のクララ・レムリッチ(Clara Lemlich)の言葉 "Ah, then I had fire in my mouth." から取っているそうです。

演奏はズヴェーデン指揮、ニューヨークフィル(委嘱作品)。合唱はザ・クロッシング(フィラデルフィア)とニューヨーク・ヤング・ピープルズ合唱団です。
本アルバムはDecca Goldレーベルからで、BOACの"cantaloupe"からではありませんね。






I. Immigration
フーガ風の三部形式といった構成でしょうか。"without passport"が印象的に続く美しいコラール風のパートから入り、中間部は変化が大きくミニマル・ベースの曲風も顔を出します。ラストの主題回帰は刺激を増していますね。


II. Factory
織機の音の様なノイズと工場の模倣音から入ります。このパートは重心の低い暗い印象の前衛的響きですね。ベースはあるのはミニマルでしょう。その流れに中盤以降で声楽が帰ってきます。対位的な二部合唱は若干の調性逸脱を感じますね。それが何かの訴求を感じさせ、緊迫感あるパートです。


III. Protest
打楽器の4/4拍子の上に女工たちの"I want you!"が反復で歌われます。等拍的な弦楽ミニマルを敷きながら曲は流れて陶酔的になります。中盤からは基本リズムはそのままに鎮まって、その後はコラール風となり激しさを増します。


IV. Fire
反復する打楽器と"Fire!"コラールの構成です。叫びでしょうね。サイレンの様な音色が中盤で現れると、劇的な音構成となり混沌を呈します。後半はミサの様な和声で構成され、時折刺激音が混じりラストはフェードアウトです。もちろんこの楽章で"then I had fire in my mouth"が入ります。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  公式trailerで、練習ステージの様子も見ることができます。ライヴで観たいですね。



事実を音楽で再構築するドキュメンタリー性の音楽ですね。それが今のジュリア・ウルフの世界だと思います。

音楽的にはミニマル・ベースに女性合唱をコラール風の重ねた多様性の米現代音楽になるでしょう。美しさから混沌まで素晴らしいですね。



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女性パーカッショニスト エヴェリン・グレニー(Evelyn Glennie) の『Oriental Landscapes』, 日本を題材にした二曲も興味深いですね


エヴェリン・グレニー (Evelyn Glennie)
スコットランド出身の聴覚障害を持つ女性パーカッショニスト、エヴェリン・グレニー(Evelyn Elizabeth Ann Glennie)ですが、その素晴らしさは「Veni, Veni Emmanuel」で紹介済みです。

ソロ・パーカッショニストとして初めてプロムスにも呼ばれ、聴覚にハンディがあるにも関わらず様々なコラボをこなします。ジャクリーヌ・デュ・プレに影響を受けたと語っていますね。


Oriental Landscapes
タイトル通りの東洋にちなんだ曲をシンガポール交響楽団と協奏しているアルバムですね。四人の音楽家(二人の中国人と米英二人)の作品で、タイトルに日本が絡む曲が二つもありますね。






Percussion Concerto (1998)
中国生まれ米国在住の女性音楽家Chen Yiの三楽章形式作品で、第二楽章にはSu-Shiによる詩が採用されています。グレニーに献呈されていて、民族楽器を含む数々のパーカッションが登場しますね。
基本中華和声ベースの機能和声楽曲になりますね。ただその中に縦横無尽に打楽器(鍵盤打楽器を含む)が走り回ります。パーカッションを上手く生かし、流れに激しさを織り混ぜてバレエ曲風に感じますね。第二楽章は詩の朗読がシュプレッヒゲザングを思わせ、前衛トーンです。


Journey Through A Japanese Landscape (1994)
  (concerto for solo marimba & wind orchestra)
米国在住スコットランド出身の女性音楽家Thea Musgraveの作品です。日本の俳句にインスパイアされたそうで、四季の4パート構成です。1994年の初演もグレニーでした。
いずれも調性内で特に日本的な和声は感じないのですが、通して存在する幽玄さがそれになるのでしょうか。出し入れはあるものの、全体の変化に乏しい感じがしましたが。


Out Of Tang Court (2000)
Chen Yiのご主人Zhou Long、北京生まれ米在住の音楽家作品です。この作品だけ鍵盤打楽器なしですね。
中華和声ですね。ここでも出し入れは明確でクラスター的な流れも入ります。ただパーカッションがオケに隠れてしまう傾向も同じですね。ミキシング等で、もう少しパーカッションを前に出して欲しい気もします。


Fantasy On Japanese Wood Prints Op. 211 (1965)
日本の雅楽や浄瑠璃に影響を受けた米国人音楽家Alan Hovhanessの作品で、シロフォン協奏曲です。
繊細なシロフォンの音色の背景に静的な弦楽の反復、雅楽器を真似た管楽器、調性の薄さと邦楽和声、モノフォニーにホモフォニーの対比、色々と仕込まれていますね。良く練られてこの曲だけが楽しめる感じです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  CDの方が良いかも。残念ながらシロフォンもグレニーではありませんが…




似た楽曲が並ぶのは残念ですが、"Fantasy On Japanese Wood Prints"は楽曲的にもパーカッションの生かし方も興味深く、一曲目も面白い曲調です。

パーカッションの超絶技巧を盛り込んだり、楽風変化を考慮するともっと楽しめた感じがします。良くある勘違い, 中華和声を日本と混同する, が無いのは嬉しいですね。



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明瞭な美しい12の主題が並ぶ、スヴェン・ヘルビッヒ(Sven Helbig) の『Pocket Symphonies』


スヴェン・ヘルビッヒ
(Sven Helbig, 1968 - )
ドイツの現代音楽家でプロデューサーですね。現代音楽家といっても前衛系ではなくエレクトロニカ/アンビエント、そしてポップの方向性です。クロスオーバー・クラシックなどと言われる事もありますね。プロデューサーとしてはペットショップボーイズの"The Battleship Potemkin, 戦艦ポチョムキン"なども手がけています。
また現代音楽専門のオケ"Dresden Symphony Orchestra"の創設者の一人でもあります。


ポケット・シンフォニーズ
2013年にDGから発売された代表作ですね。12パートの小曲構成で、スマートフォンやiPhoneユーザーがポケットに入れて聴けるシンフォニー集と言う発想から出来ている様ですね。発想も時代背景も違います

演奏は、クリスチャン・ヤルヴィ(Kristjan Järvi)指揮、MDR交響楽団(MDR Leipzig Radio Symphony Orchestra), フォーレ[ピアノ]四重奏団(Fauré Quartett) になります。





(ジャケット違いの所有盤とは曲の並び, 下記, が違う様です)


1.Am Abend - 2.Gone - 3.Rise - 4.A Tear - 5.Eisenhuttenstadt - 6.Urban Perfume- 7.Sing For The Moment - 8.Frost - 9.Zorn - 10.Autumn Song - 11.Bell Sound Falling Like Snow - 12.Schlaflied

上記2-5分の小曲の組合せですから、個別のインプレは出来ませんね。
エモーショナルなピアノのコンチェルト風"Am Abend"はロマン派風、刺激的で美しいミニマルの"Rise"、"Eisenhuttenstadt"、そして叙情的な"Sing For The Moment"と、ロマン派とミニマルの組合せになっています。唯一の無調"Autumun Song"が光ますね。

いずれも室内楽とオケの協奏曲的な構成となっていて、それを上手く生かした楽曲になっていますね。刺激と言うスパイスがあるのでフィルム・ミュージック風ですが、それに陥る事がありません。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  公式サンプラーです




無形式(ソナタ・複合三部形式・等なし)の主題・動機群のみで構成された12の交響曲集と言ったアルバムですね。主題・動機なので明確な曲が並んでいますが、刺激があるので飽きさせません。オムニバスかガラの様な曲と言ったらわかっていただけるでしょうか。

映画音楽風だとすれば、各映画の主タイトル曲のセットのイメージかもしれません。K.ヤルヴィが来日客演でやってくれたら面白そうです。



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エーデン・ラーツ(Ödön Rácz) のコントラバスで聴く 洒脱な三曲『My Double Bass』


My Double Bass
ハンガリー生まれの若手コントラバス奏者エーデン・ラーツ(Ödön Rácz, 1981/9/6 -)は、ウィーンフィル(及び歌劇場)で首席コントラバス奏者を務めているそうです。

そのラーツが、三人の音楽家のコントラバス協奏曲をチョイスしたアルバムですね。それぞれ興味深い選択です。コントラバスは現代音楽に合うのでついつい手にしてしまいます。
演奏はスペランツァ・スカップッチ指揮フランツ・リスト室内管弦楽団です。







ジョヴァンニ・ボッテジーニ
(Giovanni Bottesini, 1821-1889)
19世紀イタリアの超絶技巧コントラバス奏者にして作曲家であり指揮者であったボッテジーニ。「コントラバスのパガニーニ」と言われたそうですから、まさに打って付けの選曲ですね。

Gran Duo concertante
 曲のイメージはイタリア歌劇風な印象です。そこにタイトルロールの様なコントラバスとヴァイオリン(Noah Bendix-Balgley)が朗々と音色を奏でます。ちょっとR.シュトラウスのドン・キホーテの様なDialogueの気配がありますね。超絶技巧を楽しむというよりも、そんな洒落た流れを楽しむ感じでしょうか。コントラバスは思いの外低音パートが少ないのが意外です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




アストル・ピアソラ (Astor Piazzolla, 1921-1992)
説明不要のアルゼンチン音楽家にしてバンドネオン奏者、タンゴですがクラシックやジャズの世界に多大な影響を与えましたね。現代音楽にもよくリストされます。

Le Grand Tango
 まず曲が良いですね。ピアソラらしいタンゴ和声の上に室内楽の音色が乗って、そこにコントラバスがリードパートを奏でます。適度な緊張感と神経質さ、ラーツのコントラバスにも曲のセンスに沿った表情があり まさにピアソラです。最後に思わず"ブラーヴォ!"と言いたくなります。




ニーノ・ロータ (Nino Rota, 1911-1979)
イタリアの現代音楽家ですが、誰でも知るところの「ゴッド・ファーザー」等々の映画音楽の方が著名でしょうね。個人的には興味が薄い音楽家の一人になるかもしれません。

Divertimento concertante
 四楽章の協奏曲です。曲はロータですから標題音楽的で映画音楽風です。フィルムミュージックを足がかりにした今の米管弦楽作品の様です。
ただ一味違うのは、ここでラーツのコントラバスがセンスの良い音色で表情を付けてくれる事でしょうね。それが無いと、何かのサントラ盤?!で終わってしまうかもしれません。ラーツが光ましたね。




三人の音楽家、"ウィーンフィルの…"、と言う時点で前衛系ではない事はわかりますね。コントラバスの可能性がどうの、と言うよりもメロディアスな三人の音楽をコントラバスで楽しませてくれるアルバムでしょう。

肩肘張らずに、ゆったりと一杯やりながら聴くと何だか心地よい。そんな時間が好きな方にうってつけの一枚です。



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米現代音楽家ブライス・デスナー(Bryce Dessner) と ピアノDuo ラベック姉妹 のコラボ『El Chan』


ブライス・デスナー
(Bryce Dessner, 1976/4/23 - )
演奏家がメインか作曲家か、難しいアルバムですね。まずは米現代音楽家デスナー、と言うよりもロックバンドの"ザ・ナショナル"のメンバーの方が知られているでしょうか。
このブログではご贔屓の "Bang On a Can" の関連で何回か紹介済みですね。

現代音楽家としては管弦楽・室内楽・歌曲とヴァリエーション広く活動していますね。米国のオケからの委嘱も多くフィルム・ミュージックも手がける様です。現代音楽家と言っても非前衛系で、ミニマルをベースにした典型的な今の時代の米音楽家ですね。


ラベック姉妹
Katia et Marielle Labèque
派手な音作りで人気のラベック姉妹ですが、カティアとマリエルの二人も随分お年を召されましたね。デスナーが子供くらいの年齢ですから言ってみれば"おばあちゃん"ですw
このブログでも何回か登場していますが、古典から現代音楽までジャンルを選ばず弾き倒します。好みは別ですがエンターテイメント性の高さは天下一品でしょうね。

ピアノ協奏曲、ピアノDuo、ピアノx2, ギターx2、の三つのヴァリエーションで構成されています。ギターはもちろんデスナーが入ります。





El Chan



Concerto for two pianos
三楽章形式の協奏曲です。第一楽章は派手なpfと激しいオケの対峙が聴き処でしょうか。緩急のコントロールもあるので緊張感もあります。第二楽章は緩徐楽章で、繊細なpfの音色が反復を基にした背景音に浮かびます。ラストは強音パートで第三楽章につながります。最終楽章も明瞭な鳴りの激しさとコントラストですね。
気持ち良い流れですが それ以上でもなく、騒がしい映画音楽的コンチェルトみたいな感じです。


Haven
エレキギターとピアノの組合せです。ハイテンポなミニマルの流れをギターが作り、pfの高音がそれに添いながら低音で絡みます。ミニマルの陶酔が楽しい楽曲ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2019年4月のパリでのLiveです。pfはもちろんラベック姉妹です。



El Chan
7パート構成のピアノDuo曲です。曲構成はコンチェルトの一曲目に似ています。強音と弱音のパートの出し入れ、コントラストを明確にしています。長い特徴的な旋律はありませんが、機能和声上にあってミニマルベース。聴きやすい音楽で、うるさくなければBGMでしょうね。



一・三曲目は、いかにもクラシカル系アメリカ音楽の主流ですね。今の時代のクラシック音楽か、はたまた映画音楽か、そんな感じです。ラベック姉妹らしい楽しさに欠けた感がありますね。

個人的にはミニマルの強い "Haven" が一番楽しめました。

Bang On a Canのレーベル"Cantaloupe Music"からリリースされたら、もっと楽しめるアルバムになったかな。(そうなるとラベック姉妹は無理ですねw)



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和声変化の楽しい彩:米女性現代音楽家 ハンナ・ラッシュ(Hannah Lash) の『Filigree』を ジャック・クァルテット(JACK Quartet) の演奏で


ハンナ・ラッシュ
(Hannah Lash, 1981 - )
N.Y.(州)生まれのハープ奏者で現代音楽家。ハーバード大でPh.Dを取得し、声楽, 室内楽, 管弦楽, ソロと幅広く作品を手がけていますね。
管弦楽ではロサンジェルス・フィルやミネソタ管からの委嘱も受け、室内楽もアルディッティQやジャックQから委嘱されています。


Filigree
室内楽集で、バロック音楽の学問的部分と中世のタペストリー芸術、その二つにインスパイアされた音楽だそうです。現代と古典を織り成す音楽でしょうか。
演奏は現代音楽を得意とする米のジャック・クァルテット(JACK Quartet)です。






Frayed
フラジョレット?によるオルガンの様なvnで入る面白い発想ですね。その流れは叙情的になり、いきなりの即興クラスター的劇奏になります。一部ノイズ的にもなりますが、楽風は無調前衛ではなく 調性ベースの新古典主義風でもあります。叙情と刺激のコントラストを明確にした面白さがありますね。


Suite: Remembered and Imagined
6パートの組曲です。僅かに感じる民族音楽和声、刺激的な音構成、その背景に調性と反復、ロンドやホモフォニーといったバロック・古典的基本ベースが存在しています。パート間の変化も切れ味良く、聴き応えがありますね。


Pulse-space
単純反復の強烈なトゥッティから入ります。それをベースに旋律が現れては消えます。背景に薄っすらとピチカートが入るのが効果的ですね。陶酔系の執拗な反復が面白いですね。この曲は他と方向性が少し異なりますかね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Filigree in Textile
"金属織物"のタイトル通りの"金" "銀" "シルク" の3パート作品です。バッハの無伴奏チェロの様な旋律から入り、宗教曲和声の様なピチカートが現れます。前曲からいきなり300年以上遡る様な印象を受けます。そこからはラッシュらしい和声変化を続けて、今の時代の流れに帰ってきます。興味深い構成感ですね。



機能和声あり無調あり、古典も新古典主義もありの和声変化の波。素晴らしい多様性の現代音楽で好みです。オケ作品も是非聴いてみたいですね。

特殊奏法の印象は薄く、特徴的なのはフラジョレットとピチカートを多用する事でしょうか。



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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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