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アルバン・ベルクの歌劇「ルル」:クリスティーネ・シェーファーのタイトルロールで


ベルクの代表作、未完の現代音楽オペラの傑作「ルル」です。
タイトルロールのクリスティーネ・シェーファーは現代音楽を得意としていてシェーンベルク「月に憑かれたピエロ」でも素晴らしい歌声?!を残していています。


Album Title | Composer
LULU (1928-未完)
アルバン・ベルク (Alban Berg, 1885-1935)
ここで使われている十二音技法(的な手法)は主音列の十二音をルルに割り当てて、その音列を様々な組合せ変更でシェーン博士・他のキャラクタに振り分けています。言われている事ですが、ワーグナーのライトモティーフの様ですね。

落ちぶれて娼婦に落ちる魔性のルル。その構造は■1)夫たち, 2)取り巻きたち, 3)客たち, の三つに分かれます。特徴的なのは■殺した夫シェーン博士(役)が 最後に客の切り裂きジャックで登場する事、他二人の死んだ夫(役)も三幕で客になる■興味ある第一・三幕シンメトリックな二役が設定されている事でしょう。また, ■第二幕でルルの"逮捕・裁判・投獄"が劇中無声映画で流される事ですね。

現代音楽家フリードリヒ・チェルハ補筆版の全三幕ヴァージョンです。1996年のグラインドボーン音楽祭、少々古いですがよく知られた一枚でしょう。

【配役】
 ・ルル:クリスティーネ・シェーファー [Christine Schäfer]
 ・シェーン博士/切り裂きジャック:ウォルフガング・シェーネ [Wolfgang Schöne]
 ・アルヴァ(シェーン博士の息子):デイヴィッド・クブラー [David Kuebler]
 ・ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:キャサリン・ハリーズ [Kathryn Harries]
 ・画家/黒人客(?*):ステファン・ドラクリチ [Stephan Drakulich]
 ・医事顧問/教授(客):ジョナサン・ベイラ [Jonathan Veira]
 ・シゴルヒ:ノーマン・ベイリー [Norman Bailey]
 ・衣裳係/ギムナジウムの学生/下僕頭:パトリシア・バードン [Patricia Bardon]
 ・猛獣使い/力業師:ドナルド・マクスウェル [Donald Maxwell]
 ・公爵/従僕/侯爵:ニール・ジェンキンス [Neil Jenkins]

【指揮】アンドリュー・デイヴィス [Andrew Davis]
【演奏】ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 [LPO]
【演出】グラハム・ヴィック [Graham Vick]

* 原題"ein Neger"ですが特に黒人として出てくる訳ではありません。





(日本語字幕付きで, わかり易いです)


演出
ヴィックの演出は、この時代のクールさを感じさせますね。古典的な演出からアヴァンギャルドに移行する時代のシンプルな洗練さです。残虐さやエロティックなシーン演出もそこそこで留めていますね。
個人的には、この陰惨なオペラには前衛のドロドロ演出の方が合っている気がしますね。


舞台・衣装
現代的な衣装はシンプルに、舞台もシンプルで狭いグラインドボーン・ハウスの舞台を生かしていますね。中央にせり上がりのある同心円で動く多重の回舞台もあって、この時代らしい20世紀末の洗練された印象です。


配役
まずは何と言っても95年のザルツブルクでもタイトルロールを演じているシェーファーですが、個人的には子供っぽく妖艶さに物足りなさを感じてしまいます。sopも美しいのですが魔性の色合いはありませんね。演技も薄めで小柄でベビーフェイスの小悪魔?、ちょっと違う感じでしょうか。
やっぱりシェーン博士/切り裂きジャックのW.シェーネの素晴らしさでしょう。見栄えと通りの良いバス・バリトンはこの役にピッタリでしたね。
その他顔ぶれも特筆はありませんが、バランスの良い顔ぶれでサポートしていましたね。あえて言えばアルヴァのD.クブラーのテノールと、シゴルヒ役ノーマン・ベイリーの存在感でしょう。


音楽
当時グラインドボーン音楽祭の音楽監督だったアンドルー・デイヴィスは、かなり音を広げて鳴らしている感じがします。歌唱パートはともかく、音楽自体も主役だと言っているかの様です。

ベルクの音楽自体はより調性に回帰指向が強くなっている最晩年ですから違和感はヴォツェックに比べたら無いに等しいでしょう。語りパートも決してシュプレッヒゲザングにはなりません。



約3時間と長いのですが、流れの明確な演出もあって飽きさせません。そして何と言ってもベルクの音楽の素晴らしさを楽しめる事でしょう。アンドルー・デイヴィスとLPOに拍手ですね。

ただこのストーリーの渦巻く猜疑心や凄惨な流れとは対極にある演出は、きれいにまとまり過ぎの気がします。3人の夫他周囲を死に巻き込み、殺人罪で最後は娼婦に落ちぶれて死を迎えるのですから。今風のアヴァンギャルドな演出で楽しみたいですね。

とは言え、名作をすんなり楽しめるオススメDVDです。



独語+仏語字幕でOKならば、全編YouTubeで観られます!




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アルバン・ベルクの歌劇「ヴォツェック, Wozzeck」を個性派ブルーノ・マデルナのDVDで

このブログのメインは現代音楽なので、約50年前の古いこの映画版DVDの注目ポイントはブルーノ・マデルナです。


Conductor
ブルーノ・マデルナ
(Bruno Maderna, 1920-1973)
個人的に好きな現代音楽家で指揮者です。前衛全盛期にトータル・セリエルを牽引し、指揮者としてはあのシェルヘンに師事して超個性的で素晴らしいマーラーやシェーンベルクを残していますね。(インプレしてあります)


Album Title | Composer
ヴォツェック Op.7 (Wozzeck, 1925年)
アルバン・ベルク (Alban Berg, 1885-1935)
新ウィーン楽派の中ではシェーンベルクと共に好きな音楽家です、ヴェーベルンは苦手ですがw
「ルル」と並ぶベルクの代表作オペラですね。三幕それぞれが明確な音楽構成を持っていて、"I. 5つの性格的作品" - "II. 5楽章交響曲" - "III. 6つのインヴェンション"、ですね。各幕・各場は舞台と整合して、三幕五場の作品となっています。(第三幕には間奏曲が入って"6つの…"となります)

ルル同様陰惨な作品になりますが、その両者を合わせた様なB.A.ツィンマーマンの名作「兵士たち」の元にもなっていますね。現代音楽オペラ(映像付き)は、作品により所謂(いわゆる)オペラと楽しみ方も違う事があります。今回のポイントは2つです。

■ 救済も大団円も無い陰惨ドロドロのストーリー。
マデルナ指揮のベルク現代音楽としての楽しみ。





(所有盤は左です。右は国内発売盤ですね)


音楽
無調ですが旋律感は強いので、前衛現代音楽としては聴き易いですね。歌唱は音の跳躍が大きく、一部はシュプレッヒゲザングになって 前衛初期の時代を感じさせてくれますね。特に役柄によってシュプレッヒゲザングを強くしているのも印象的です。
一幕では十二音技法が使われていますが、それは技法的にであり旋律と言ったものが存在するのがベルクらしさですね。第二幕はより調性感が強く交響曲構成で聴き易く、第三幕はセリエル的なパートを感じます。間奏曲は多調の後期ロマン派的ですね。(構成上はフィニッシュ前のコーダの位置付けになります)

マデルナは例によって派手な出し入れの強い流れを作ります。ただ声楽が主役のオペラですから得意の極端なアゴーギクの振りは避けている様です。それでもメリハリの良さは音楽だけを楽しんでも十分満足できるでしょう。


配役
唯一表情豊なタイトルロールのトニ・ブランケンハイム(Toni Blankenheim)が印象に残ります。ただ映画版なので、自由度の高い映像とセッション録音で作り込まれた完成度になるでしょう。舞台と違い映像と歌唱(音楽)の一体感が薄く、ここで配役の印象をコメントするのは難しいと思いますね。(映像無しで聴いた方が素晴らしさを感じます)


演出
1970年前後のオペラは時代背景に忠実に作られていますから、ここでもその様な設定(1820年頃)になっていてストーリーも基本通りですね。今の演出は現代の舞台設定やアヴァンギャルドですから、基本を知らないと その面白さがわかりづらいのが事実です。
個人的には、この作品こそドロドロの前衛演出で楽しみたいとは思いますが。


完成度が高くストーリーもわかり易いのですが、映画版はどうしても好きになれませんねェ。映像なしで音楽だけ楽しむ方が曲や歌唱の素晴らしさが満喫出来ます。問題は独語の歌詞だけでは追いづらい事でしょうか。

マデルナのコントラストの強い流れと、各配役のいずれも完成度の高い歌唱を期待する貴方にはオススメです。もちろんカラーで音も問題ありませんがmonoなのでご注意を。



なんとYouTubeで英語字幕付き全編観られます!




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『マーラー 交響曲 第5番』 «ネット配信» ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮 / ニューヨーク・フィル 2017年9月19日

新型コロナウィルスの影響を大きく受けて生命最優先のニューヨーク。
そんな中ですが、ニューヨーク・フィル公式ウェブサイトでは2017–18シーズン開幕で FACEBOOK LIVE として放映されていた映像が配信されています。


Conductor | Orchestra
ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン (Jaap van Zweden)
New York Philharmonic
2017-18シーズンからN.Y.P.の音楽監督を務めるズヴェーデンの就任にあたってのコンサートですね。この日はエンパイア・ステートビルのスペシャル・コンサートで、続く22, 23, 両日もホームのDavid Geffen Hallで同曲を演奏しています。
ニューヨーク・フィル公式サイトの"Watch & Listen"から映像付き配信です。


➡︎ NYP Watch & Listen (配信期間は短いと思われます、お早めに)





マーラー 交響曲 第5番 «ネット配信»
(Live at Philharmonic Red, 19 sep. 2017)

JaapVanZweden-NYP-Mahler5.jpg


第一部
派手やかなファンファーレから葬送行進曲は美しさを感じさせる流れです。第一トリオは軽快感を付けて、tpの鳴りの良さも良いですね。第二トリオの哀愁は適度でコントロールが効いています。第二楽章第一主題は切れ味よく興奮を避けて速めに、第二主題(一楽章第二トリオ)は回帰的な色合いです。展開部でも同様にコントラスト付けは冷静に感じますね。録音の関係か、第二主題でのティンパニのトリルが強い気がししました。再現部山場もコントロールされて、まとまりと見晴らしの良さの第一部です。

第二部
スケルツォ主題は緩やか優美ですが、オブリガート・ホルンが今ひとつなのが残念です。(その後は大丈夫ですが、最終楽章序奏でまたコケますw) チェンジテンポのレントラー主題は美しさを感じますね。長い第三主題では落とし過ぎずに維持してスマートに、短い展開部はその延長線上にありますね。再現部はこの楽章の縮小版となって主題を並べ、コーダは切れ上がって見事に響かせます。

第三部
第四楽章主要主題は暖色系で夕暮れの景色の様に、中間部では微妙なアゴーギクを使っています。少し濃い味付けのアダージェットですね。最終楽章の第一主題と第二主題の絡みはテンポは速めで小気味良く、コデッタ主題では大きく広げます。展開部ではその流れに乗って華々しい山場を作り、再現部で落ち着かせると山場からコーダは壮大、ラストはビシッと決めました。もちろんここでもズヴェーデンは東京公演と同様 万歳フィニッシュですw
ブラボーの嵐と拍手喝采!!


落ち着いてまとまりのある、心地良いマーラー5です。突出した素晴らしさはないかもしれませんが、この一体感は一聴の価値ありではないでしょうか。

人種の坩堝的なメンバー構成もNYPらしさがあって素晴らしいですね。



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アネッテ・ビク(Annette Bik) の『Double Bach』バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータと現代音楽

本アルバムを所有している理由は、好きな現代音楽家ベルンハルト・ガンダーが入っているからですね。バッハをメインとしたアルバムとなると普段なら…w


Album Title | Player
Double Bach "...the experience of infinity for mortals."
Annette Bik, vn (アネッテ・ビク, b.1962)
近年多いバロック(やルネッサンス)と現代音楽の対比になっています。バッハの無伴奏ヴァイオリン「パルティータ第1番 BWV1002」の4曲を元に、編曲(インスパイア曲?)版を現代音楽家四人に依頼して出来たアルバムですね。
バッハの4曲はそれぞれ後半に'double'(ドゥーブル)と呼ばれる変奏パートが入っています。それに現代曲が続くので"double - double"、'変奏'と'二つ'の両方のdoubleになっています。(とライナーノートにもありますw)

オーストリアの女性ヴァイオリニストのビクは、元ハーゲン・クァルテットのメンバーでG.クレーメルとの活動など活躍していますね。このブログならばベアト・フラーが創設した現代音楽アンサンブル "Klangforum Wien" のメンバーであり、創設者の一人でもあります。本アルバムはビクの初ソロ・アルバムです。

本ブログではバッハは守備範囲外なので、インプレするのは4曲の現代音楽になります。







エヴァ・ライター
(Eva Reiter, b.1976)
オーストリアの女性音楽家ですね。古楽器のリコーダーとヴィオラ・ダ・ガンバの奏者で、エレクトロニクスを駆使する現代音楽家でもあります。この曲でビクはペダルボードを使っているそうです。

Allemande multipliée
 ダブルストップが印象的なパルティータ'1.Allemande - Double' に続く曲です。グリッサンドや奇妙なボウイング、そしてドコドコ言う打音やノイズ、おまけにvoiceまで登場します。アヴァンギャルドなパフォーマンスで、インスタレーションの可能性もありますね。処々に引用で、バッハの動機の細切れが入って来ます。



シモーネ・モヴィオ
(Simone Movio, b.1978)
ベアト・フラーに師事していて、IRCAMでも学んでいますね。Incantoシリーズの一曲として書かれている様ですが、バッハのアルペジオに沿って書かれているそうです。

Incanto VII
 主題変奏的なパルティータ'2.Courante - Double. Presto'に基づく曲です。グリッサンドとロングボウイング主体の刺激的なノイズ系サウンドで明確な旋律は存在しません。スピッカートも使われていますね。バッハが聴いたら卒倒してしまうでしょうw



アンドレアス・リンデンバウム
(Andreas Lindenbaum, b.1963)
ウィーン在住のドイツ人チェリストで現代音楽家です。1989年からKlangforum Wienのメンバーでもあります。

En tournant
 哀愁の強いパルティータ'3.Sarabande - Double'に続く曲です。ピチカートやフラジョレットが印象的で、旋律感は薄いですが澄んだ美しさを感じさせる無調のvn曲ですね。ノイズや特殊奏法も混じりますが、それでも他三曲に比べると聴き易い??かも…w



ベルンハルト・ガンダー
(Bernhard Gander, b.1969)
本ブログでは贔屓の現代音楽家の一人です。グラーツで電子音響音楽をB.フラーに習い、パリUPICやチューリッヒでも学んでいますね。ダルムシュタットやドナウエッシンゲンでも活躍しています。

Bourée bourée
 一曲目と似たパルティータ'4.Tempo di Bourree - Double'を元にしています。不協和音を使って落ち着かないバッハ? 旋律感が明確に残されている分、とても奇妙に感じます。そして調性感がどんどんと壊れて行きます。流れは狂気を見せる様に変化して短い4'を終えます。これは面白いですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



タイプの異なる前衛のヴァイオリン曲が楽しめるアルバムです。ただ、バッハと並べる必要性をどこまで見るのかは疑問符も付きますね。今流行りの構成という事でしょうか。
逆にバッハ・ファンが聴いたら怒るかも?!

ビクのバッハは揺さぶりが強く尖った演奏で、バロック的な典雅とは対極の演奏です。



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トビアス・フェルトマンの『シベリウス | ラウタヴァーラ』フィンランドのヴァイオリン協奏曲集

アルファ ・レーヴェルからリリースする若手ヴァイオリニストのフェルトマンのフィンランドの近現代ヴァイオリン協奏曲集ですね。


Album Title | Player
Sibelius | Rautavaara : Violin Concertos
Tobias Feldmann, vn (トビアス・フェルトマン, b.1991)
フィンランドを代表する作曲家シベリウス、そのシベリウスの晩年に接点のあるラウタヴァーラ、二人のヴァイオリン協奏曲です。フィンランドの近代音楽から現代音楽への流れを聴き比べられますね。曲順はラウタヴァーラが先になっていますが、年代順にシベリウスから聴こうと思います。

演奏はドイツの若手(29)ヴァイオリニストのフェルトマン、指揮はジャン=ジャック・カントロフ、リエージュ王立フィルハーモニー管弦楽団(ベルギー)になります。







ジャン・シベリウス
(Jean Sibelius, 1865-1957)
何の説明も不要のシベリウスですが、個人的印象は 叙事詩"カレワラ"とフィンランド愛国歌の"フィンランディア"です。そして北欧の風景の様な流れですね。その楽風の影響は、現代音楽の時代を向かえても残りました。
元はヴァイオリニストですが、ヴァイオリン協奏曲はこの一曲だけですね。1903年に作られ1905年に改訂されています。理由はメンデルスゾーンだかブラームスだかの影響とか… (初演の指揮者はR.シュトラウスですね)

ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47 (1905年)
 古典的な"allegro - adagio - allegro"の構成です。きっちっとしたコンチェルトで古典派の印象を受けますね。そう言った意味ではブラームスの印象が浮かぶかもしれません。(ブラームスは個人的には古典派です。年代はロマン派ですが)
その中にロマン的な旋律が浮かんで来るのはメンデルスゾーンになっていて折衷的ですね。カデンツァは技巧的で情熱的です。フェルトマンのvnもビシッとした硬派の印象になっています。緩徐の第二楽章も北欧の風景の様な印象ではなく、シューマン風な流れです。(後期ロマン派でもありませんね)

残念ながら1905年としては全体的に古臭い印象を受けてしまうかもしれません。



エイノユハニ・ラウタヴァーラ
(Einojuhani Rautavaara, 1928-2016)
シベリウス・アカデミーで学び、シベリウスの推奨により奨学金を得てジュリアードに行っています。年代的には欧州ならエクスペリメンタリズム世代です。セリエルに手を染めてもいますが、セリエル的な技法であって前衛実験方向の無調ではありません。その後は調性の薄さを活かした北欧の空気の様な広がりを感じさせる印象ですね。
多作家ですがヴァイオリン協奏曲はこの一曲しか書いていません。カデンツァはフェルトマン本人によるver.です。

ヴァイオリン協奏曲 (1977年)
 "I. Tranquillo - II. Energico" の二楽章構成で、第一楽章の導入部から繊細で北欧の空気を感じる様です。ここでは、調性の薄さを活かしたフェルトマンのvnの音色は細く切れる様でピッタリですね。重厚な第一トリオ?も北欧の天気の変化の様でラウタヴァーラらしさを感じます。長いvnダブルストップも良いですね。中間部でもそうですが、オケの各パートとのカデンツァのやりとりの様なパートが多いのも特徴的です。
第二楽章はアレグロ的で表情が豊です。打楽器の使い方の上手さを感じますね。途中に挟まれる緩徐パートの幽玄な美しさは冷たい空気の様です。フェルトマンver.のカデンツァもダブルストップと繊細さがあって、この曲にフィットしています。

機能和声をベースに調性の薄さを活かし、北欧の風景を描く様なラウタヴァーラらしい素晴らしい楽曲ですね。



 ★試しにYouTubeで観てみる?
  アルファ・レーベルによるPV? 演奏風景が見られます



シベリウスは少し残念ですが、ラウタヴァーラの北欧らしい素晴らしさが楽しめます。

フェルトマンのvnは太い音色に堂々とした姿勢を感じますね。ドイツ的な印象で北欧的ではない感じです。P.ヘルスタールのvnで聴きたかった気もします。



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ペーター・アブリンガー(Peter Ablinger) の「Grisailles (I-100)」というピアノ現代音楽

20世紀末という前衛現代音楽の流れを感じられるエレクトロニクスを使ったピアノ・ソロ曲ですね。


Composer
ペーター・アブリンガー
(Peter Ablinger, 1959/3/15 - )
オーストリア人現代音楽家で、ジャズ・ピアニストと作曲で活動をスタートさせていますね。エレクトロニクスも習っていて、インスタレーションを早くから取り入れています。そういう意味ではCDでは厳しい処もあるのかもしれません。ドナウエッシンゲン音楽祭にも登場していますね。


Album Title | Player
Grisailles (I-100)
ヒルデガルト・クリーブ (Hildegard Kleeb, 1957 -, pf)
三台のピアノの為の曲です。基本構造は24レイヤーで、それぞれが独自の時間と構成を持っている様です。アブリンガーなので普通のピアノ・ソロではつまらないですよね。

演奏者のH.グリーブはスイスの女性ピアニストで、活動を含めてアブリンガーとは接点がある様ですね。前衛・即興を得意としていて、米国時代にフリー・ジャズのアンソニー・バクストンと活動してたそうです。






Grisailles (I-100) (1991-93年)
I.とII.の二部構成になっています。第一印象は、"そこら中でピアノが鳴っている"感じです。溢れかえる程の音数でも無いし、定位の明確な三台に聴こえるのですが。
左・中央・右の三台のピアノ、エレクトロニクス処理(昔ならテープと表現でしょう)、が雨垂れの様な単音反復と背景に曇った打音を残して繰り返されます。打音は特殊奏法でしょう。
part IIで特殊奏法の打音が強くなったり多少の変化は見せますが、基本単純パターンが延々と続きます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  part I. です




方向性は別としても、カイホスルー・ソラブジ的なピアノ長尺現代音楽の流れを感じますね。

異なるのはピアニストに強烈な技巧性を求めてはいない事でしょう。代わりにエレクトロニクスを使って三台のピアノを重ねます。インスタレーション方向で見せていたら一層の面白さがありますね。



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『マーラー 交響曲 第9番』 «ネット配信» ユッカ=ペッカ・サラステ指揮 / ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団 2020年1月31日

サラステはドイツのオケと素晴らしいマーラーを残していますね。今回はノルウェーのオケを振ったマーラー9です。
映像付き配信なのでサラステの生真面目なタクト・スタイルが見られますね。


Conductor | Orchestra
ユッカ=ペッカ・サラステ, Jukka-Pekka Saraste
(Bergen Philharmonic Orchestra)
フィンランド人指揮者のサラステが、今年一月ノルウェーのベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団に客演した北欧セットのマーラー9ですね。

ところでサラステは昨シーズンでケルンWDR交響楽団の首席指揮者を退任していますが、その後はどうしているのでしょう。ご本人のサイトでも特に書かれていませんね。(3-4月は米国・カナダで客演することになっていますが、コロナは大丈夫??)

➡︎ Bergen Phil. (Official) (賞味期限は短いと思われますので、お早めに)





マーラー 交響曲 第9番 «ネット配信»
(Live at Grieghallen, 31 Jan. 2020)

JukkaPekkaSaraste-mahler9.jpg


第一楽章
短い序奏のバランスが気になりましたが、落ち着いた第一主題の静けさから第二主題以降高めて反復へ、第三主題を高らかに歌います。展開部もクセのない安定した流れで、緩-急(劇)-緩の構成を構成していますね。サラステらしいクセのない落ち着いた流れです。

第二楽章
レントラー主題は悠々と、第一トリオでもチェンジペースは緩やかでバランスが保たれます。第二トリオはややスローに適度な優美さを添えます。全体とすると少しフラットに感じるかもしれません。

第三楽章
主要主題は刺激を抑え柔らかめに、続く副主題も同じ流れに乗ってマイルドな軽快さです。中間部をシンプルに奏でるとターン音型を出し、最終楽章第二エピソードを思わせます。

第四楽章
序奏は色濃く、主要主題も濃厚です。今回初めてサラステの感情移入を感じました。第一エピソードも情感の深さを見せる大きな流れを作ります。第二エピソードの導入部は速めに入ってターン音型の鎮まりを避ける構成を感じますね。そこから山場は気持ちがこもる様に盛り上げます。後半ターン音型は導入部とは打って変わって緩やかに鎮めて、コーダの浮遊の沈黙へと導きます。
それまでの三楽章とは全く異なる素晴らしさです。


最終楽章一本に的を絞ったマーラー9です。危険な香りは微塵もなく、全体としてマイルドな味付けの三つの楽章。それに対して溢れる情感の最終楽章。あまりの違いですね。

最終楽章を際立たせるためなのか、はたまた最終楽章しか練習時間がなかったのか… 全楽章が揃えば、きっと聴き応えあるマーラー9になったでしょう。



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セナテット(SCENATET)で聴く, イェペ・ユスト・クリステンセン(Jeppe Just Christensen)の『Songs & Movements』:デンマーク前衛実験音楽

音楽家(作曲家)だけでなく、DACAPOレーベルとセナテット共に気になるオール・デンマークの前衛ですね。


Composer
イェペ・ユスト・クリステンセン
(Jeppe Just Christensen, b.1978)
デンマークの現代音楽家でデンマーク王立音楽アカデミーで習い、今は同学院で教鞭をとっていますね。ベント・ソアンセン(Bent Sørensen)に、またドイツでヴォルフガング・リームにも師事しています。特徴的なのは日常の中からツールを楽器として用いる事で、ジャケットにある様なものですね。そしてエレクトロニクスを導入しています。
楽曲は、Recherche, Klangforum Wien、と言った著名な前衛アンサンブルにも採用されていますね。


Album Title | Player
Songs & Movements
SCENATET w/Jeppe Just Instituttet
"recycling, nostalgia, instruments, and toys" がポイントとなる奇妙な?音楽です。具体的には"エッグスライサー、コーヒーグラインダー、おもちゃのピアノ、メロディカ他自家製のおもちゃ楽器"での演奏という事になりますね。(もちろん通常の楽器も入ります)

演奏は注目のデンマーク前衛アンサンブルの"SCENATET"です。以前も紹介済みのセナテットですが、前衛アンサンブルであると同時にインスタレーション・パフォーマーでもある事が素晴らしく、CDだけではその先進性を感じるのが難しいかもしれません。①のみJ.J.クリステンセン自らのパフォーマンス・ユニット"Jeppe Just Instituttet"がパーカッションで入ります。






Three Songs in 9 Movements (2015)
9の楽章を3-3-3にグループ分けして、メロディーとコードを3グループの各楽章で合わせてあるそうです。使われているのは通常の楽器と家で作った楽器?で、子供時代のノスタルジーだそうです。
一つ目の楽章はvoice入りのバロック風の様な流れ、処々で調性は崩れますが。次は奇妙な楽器の織り成すオモチャのサウンド。三つ目の楽章はそのポリフォニー。それがx3のグループ(サイクル)になっています。楽章とサイクルが進むにつれて破滅的な流れが入り込んだり、入り乱れたりします。特に3つ目の楽章の音と前衛性が楽しいですね。
オモチャのサウンドから前衛混沌へのメタモルフォーゼで、最後は回帰かもしれません。


Movin' (2005)
反復中心のノイズ&リズムで、"ギロ"が中心にいますね。音楽というよりも、何かガタガタ・ゴトゴトと音を立てていると言った感じです。まさに前衛です。オマケの様な短い第二楽章もテンポアップするだけで同じですね。本人によると"反復は全く同じ繰り返しで演奏は出来ない"との事で、信念がありそうですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2012年のダルムシュタット夏季現代音楽講習会、Curious Chamber Players
  の演奏です。(SCENATETの方が面白いかな…)


Douglas (2009)
飛行機の中で聴いた奇妙な音を再現しているそうです。楽器はスプリングとパテナイフで作られたハシゴも使われて、犬の吠えるのも真似ているとか…
フリージャズと言えばピッタリの感じです。ライナーノートの"Giant Step"の旋律のモディファイも感じます。ここでも何かを叩く様なオモチャ・パーカッションが印象的ですね。ガタガタ・ボコボコ・ピーィ!!!です。この音を航空機で聞いたとしたら驚きとしか言えませんw



とにかく奇妙な楽器音での構成が顕著で、特殊奏法に対比する様な面白さを感じます。そしてパーカッション、と言うか何かを叩く音、でリズムの色付けですね。

反復とリズムが支配する混沌の世界。そこから①の構成感の強い流れに楽風も変化を見せていて期待値の高いデンマーク前衛実験音楽ですね。



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オルガ・ノイヴィルト(Olga Neuwirth) の「Orchestral Works」は豪華メンバーで楽しめますね

このアルバムのポイントの一つはその魅力的な顔ぶれ、ハーデンベルガー(tp), タメスティ(va), メッツマッハー(cond.), マルッキ(cond.), ハーディング(cond.), ですね。


Composer
オルガ・ノイヴィルト
(Olga Neuwirth, 1968/8/4 - )
今や中堅の安定した女性現代音楽家の一人ですね。オーストリア・グラーツ生まれで若くしてトランペットと作曲を学び、米に渡り作曲理論や映像を習っています。作曲では3人に影響を受けているそうで、A.ヘルツキー、IRCAMでのミュライユ、そして後期のノーノとの出会いでその共産主義的方向性に同調していますね。
楽風はノイズと出し入れの現代音楽ですが、方向性が調性回帰的になって来ています。


Album Title | Player
Orchestral Works
まず三曲の演奏メンバーを紹介しましょう。
 ①:Håkan Hardenberger(tp), Ingo Metzmacher(cond.), Gustav Mahler Jugendorchester
 ②:Antoine Tamestit(va), Susanna Mälkki(cond.), ORF Radio-Symphonieorchester Wien
 ③:Daniel Harding(cond.), Wiener Philharmoniker
人気のソリストと指揮者が並びましたね。曲ごとに異なるのも凄いです。

元はトランペッターのノイヴィルトですから①への思い入れは強そうで、トランペットはマイルス・デイヴィスがお手本だったと語っているのがイイですね。
ライナーノートには各曲楽章の詳細な解説が載っていますが、影響されない様に自分の聴いたインプレにしたいと思います。






...miramondo multiplo..., for trumpet and orchestra (2006)
ハーデンベルガーに献呈された5パートのトランペット協奏曲です。
いきなりのトゥッティ、そしてtpとオケの鳴りの良い協奏になります。多少の調性の薄さはあるのかもしれませんが、機能和声の音楽に聴こえます。各パート、基本的には派手な音を主体としていますね。緩徐のパートII. のtpはマイルスのミュートを感じますね。
明瞭な主題・旋律が存在しない今の時代の新古典主義的音楽ですね。ハーデンベルガーのtpは朗々とした通りの良さを感じます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  コンサートで抜粋ですが、tpはハーデンベルガーです



Remnants of Songs ... An Amphigony, for viola and orchestra (2009)
5パート構成でタメスティのために書かれています。ノイズ系に復帰?!しています。vaのノイズを含めたソロから入り、派手なトゥッティでオケが入って来ます。そこからもタメスティの技巧的な切れ味鋭い弦音がリードしながら、調性感も漂わせる出し入れの強い無調の混沌が心地良いですね。パートIV. の様な強い調性回帰は残念に感じますが、このノイズと出し入れがノイヴィルトですね!! タメスティのvaもキレキレです。


Masaot / Clocks without Hands (2013)
演奏オケのウィーン・フィルに献呈された作品です。スタートはノイズからトゥッティのお約束。タイトルのClocksの時計ノイズを入れてポリフォニー混沌、緊迫感、pとfのコントラストといったノイヴィルトらしい構成を見せてくれます。反復とモードも取り入れて、明確な調性のパートは'引用'と思われます。後半になると処々で調性色が強くなるのはガッカリですが、最近の傾向かもしれませんね。



楽風の変化が21世紀になってノイズ系から①の様な調性軸足の新古典主義的になっています。元々の派手でドン・シャン的な響きは聴きやすくなりますが、スリルは無くなり残念な舵の切り方になってしまいますね。

②③の様に本来?のノイヴィルトらしいパートがある楽曲もあるので、今回はそちらを楽しみましょう。何れにしても商業受け的な調性回帰方向は残念です。



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バーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan)の注目作『La Passione』は、指揮も充実の素晴らしさですね

アルファ ・レーベルはインパクトのある作品を出してくれますが、これはハンニガンのソプラノだけでなく指揮者としての活躍も楽しめるアルバムですね。


Soprano & Conductor
バーバラ・ハンニガン (Barbara Hannigan, 1971/5/8 - )
このblogではご贔屓の現代音楽を得意とするカナダ人女性声楽家で指揮者のハンニガンですが、指揮者として2019-20シーズンよりエーテボリ交響楽団(Gothenburg Symphony Orchestra)の首席客演指揮者を務めていますね。

近々の彼女の予定も興味深く、4月にはデンマークの"レオニー・ソニング音楽賞"を受賞します。この賞はストラヴィンスキーやバーンスタインの他にマイルス・デイヴィスも受賞しているのが良いですね。そして5月27,28日にはミュンヘン・フィルに客演してマーラー交響曲第4番の指揮とソプラノです。これは大注目ですね(前半2曲は本アルバムのノーノとハイドンです!! ハンニガンとアルバムの注目度の高さがわかりますね)


Album Title
ラ・パッショーネ, La Passione
今回のアルバムは受難をテーマとして、ハイドンと現代音楽家(と言っても少々古いですが)二人を並べています。もちろんソプラノと指揮で、演奏は"Crazy Girl Crazy"以来繋がりの強いルートヴィヒ管弦楽団(LUDWIG Orchestra)です。

本作は前作"ウィーン世紀末"でピアノを担当し先月2/14に亡くなったレインベルト・デ・レーウ(Reinbert de Leeuw)に捧げられています。







ルイジ・ノーノ
(Luigi Nono, 1924-1990)
政治色の濃かったノーノの中期作品で、アルジェリアの独立運動家"ジャミラ・ブーパシャ (1938-)"を元にしています。フランス当局からの虐待・拷問を訴えた女性活動家です。

ジャミラ・ブーパシャ Djamila Boupacha (1962)
 約5'のソプラノ独唱曲です。ハンニガンが得意とする現代音楽の声楽で、伸びやかなハイトーンで抑揚が強く表情豊かな表現主義的です。抑圧された陰鬱さよりも、"勇気へのオマージュ"と言ったハンニガンの表現がピッタリですね。



ハイドン
(Franz Joseph Haydn, 1732-1809)
残念ながらこのブログの守備範囲外なので、作曲家と作品に関するコメントはありません。

交響曲 第49番「受難」ヘ短調
I. Adagio - II. Allegro di molto - III. Minuet/Trio
各楽章ごとにインプレは出来ませんが、アゴーギクとディナーミクを同期させる強い揺らぎを感じますね。長い緩徐楽章の I. は特に印象的です。II. でもアレグロらしいテンポに強いディナーミクのコントラストを付けていますね。情感深く まるでロマン派の作品を聴いている様なタクト・演奏で、古典曲が得意でない私も楽しめました。



ジェラール・グリゼー
(Gérard Grisey, 1946-1998)
グリゼーの代表作の一つで、四つの死(天使・文明・声・人類)を世界の文明のTextを元にしていて、死の瞑想になっています。ハンニガンはこの曲を得意としてアンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain)とも共演していますね。

全5パートがノイズで繋がれています。楽曲内容についてはカンブルラン盤でインプレ済みです。

限界を超えるための4つの歌 Quatre chants pour franchir le seuil
I. La mort del'ange - II. La mort de la civilisation - III. La mort de la voix - IV. La mort de l'humanité - Berceuse
[part I] は風の様なノイズから煌めく様な旋律が現れて幽玄な流れを作ると、いきなり緊迫したsopが割り込みます。アサンブルの揺らぎとsopの息がピッタリです。
[part II] では神秘的で緩やかな弦の音色に、緩やかに寄り添うsopの流れ。緩徐楽章の位置付けです。
[part III] はいきなりのオケとsopの叫び。澱んだ流れがアンダンテ風に流れながら、叫びが繰り返されます。
[part IV] は全パート共通のノイズから入りますが、そのまま打楽器の混沌へと雪崩れ込みます。それまでのオケの暗い澱みは緊迫の打音空間へと変化して、管楽器群が割り込んで激しい混沌を作るとsopが乱入 主導権を握ります。sopは狂気を見せてオケを連れ回し、力比べです。見事な聴かせ処を作りましたね。
[part V] は静めて納めます。

微妙に調性感を残した幽玄さと空間音響、ハンニガンはオケを暗く混沌として澱んだ流れを主体に、そこにsopで緊張感を張り渡らせます。自らが歌いアンサンブルをコントロールするメリットが生かされて、そのコントラストと一体感が素晴らしいです。グリゼーの意図よりもsopが表に出ているかもしれませんが。
(ちなみにカンブルラン盤は煌めくオケの流れが主役でsopは抑え目です)



何と言ってもソプラノ・指揮共にグリゼーの曲の素晴らしさですね。この一体感と完成度はハンニガンの表現力・力量を示したと言って良いのではないでしょうか。

ハンニガンの音楽監督的方向性は強い出し入れによる表現主義風ですね。古典のハイドンでも見せた指揮力と、現代音楽表現の才を楽しめるオススメの一枚です。



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