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アンドレア・バッティストーニ指揮 / 東京フィルハーモニー交響楽団の「マーラー 交響曲 第5番」


Mahler Symphony No. 5
(Tokyo Philharmonic Orchestra, Andrea Battistoni: cond.)
イタリア人指揮者バッティストーニ(b. 1987)が2016年から主席指揮者を務める東京フィルを振ったマーラー5です。
昨年(2022-9/19 オーチャードホール)のLIVEですね。






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1. 第一部
抜けの良いファンファーレから葬送行進曲はややスローに鎮め、第一トリオでは鳴りを広げテンポアップ、第二トリオはアゴーギクを効かせた哀愁と王道に表情を付けた流れです。
第二楽章第一主題は速く激しく、第二主題は落ち着いた哀愁で第一楽章トリオのパロディを避けています。展開部の"烈-暗-明"のコントラストも正攻法でと見晴らしとコントラストの良い第一部になりました。


2. 第二部
スケルツォ主題は優雅な舞踏曲、レントラー主題ではスローに微妙なアゴーギクで優美さを。第三主題のオブリガートHrは朗々と鳴らし、変奏パートも得意のアゴーギクで変化を付けました。展開部はテンポを上げ大きめに鳴らして再現部へ、コーダは約束通りの激しさでまとめます。
変化球なしの王道スケルツォ楽章です。


3. 第三部
第四楽章主部は夏の夕暮れの様な優しさで中間部は繊細に。穏やかさで包み込む様なアダージェットです。
第五楽章は第二主題をテンポアップで第一主題に絡ませる面白い組合せ、コデッタ主題は優美です。展開部は全体的に力感、再現部後半山場は派手に大きく、コーダは強烈なアッチェレランドで駆け抜けます。



正攻法にアゴーギクの色彩を入れたマーラー5です。鳴らすパートはガッツリと鳴らして安定感があります。東京フィルの演奏も良く、バッティストーニの意図を表現していますね。

録音の上手さが一役買っているのも間違いないでしょう。完成度は高くこれと言った欠点は皆無、ただ聴き終えた後に残る印象がなぜか薄めなのはどうしてでしょう?!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"』«web配信» ネーメ・ヤルヴィ指揮/エストニア国立交響楽団 2023年9月9日


ネーメ・ヤルヴィ | エストニア国立交響楽団
(Neeme Järvi, cond. | Estonian National Symphony Orchestra)
父ヤルヴィことネーメが名誉芸術監督を務めるエストニア国立響を振ったマーラー8、先週の土曜日のLIVEです。
ネーメのマーラーと言えば6番が個性溢れる演奏でしたが86歳(b. 1937)となった今、劇的なこの曲をどの様なアプローチでこなしたのか興味深いですね。エストニアの放送局klassikaraadioからの配信です。

ソリスト8人は以下になります。
Laura Aikin (sop), Forooz Razavi (sop), Elina Nechayeva (sop), Marie Seidler (mez), Kai Rüütel-Pajula (mez), Alec Carlson (ten), Mathias Hausmann (bari), Ain Anger (bas)


▶️ klassikaraadio (配信期間は短いと思われます)





«web配信»
Mahler Symphony No. 8
"Symphony of a Thousand"


ENSO2023-NJmahler8.jpg
[Live at Estonia Concert Hall, 9 Sep 2023]


第一部 『来たれ、創造主たる精霊よ』
提示部:第一部タイトルの第一主題は微妙なアゴーギクで重厚さを、第二主題のソプラノは落ち着きを取り戻して、各独唱の多重唱を絡ませます。
展開部:入りの管弦楽奏を懐疑的にテンポ変化を強調、再びの多重唱は重厚にとコントラストを効かせます。複雑な対位法の第一主題変奏は混沌的に激しく、出し入れとメリハリで怒涛の第一部のメインです。
コーダは少年合唱団で始まる"Gloria…"がソリストや合唱と絡みながら激しさを増し、ラストは渦巻く様に激しくまとめます。これぞパーヴォ!!ですね。


第二部 『"ファウスト"から最終場』
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
ピチカートが印象的な主題を約束通りに神秘的に作りますが、このパートとしてはかなり速めに感じます。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
全体に速いです。それでも「法悦の神父」のバリトンは愛の核心を力感を上手くまとめ、「瞑想の神父」のバスもオケと共に力強さを増して山峡の姿を歌ってコントラスト付けです。ただ、二人の声質が似通っているのが気になりました。

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
「天使の合唱」はリズミカルにファウストの魂を歌い、「祝福された少年たち」「若い天使たち」もそれに続きます。
「成熟した天使たち」のvnソロとアルトはスローに叙情を強め、「未熟な天使たち」「祝福された少年たち」でリズムを取り戻して流れに変化を付けていました。
基本はここでもテンポ速めの設定です。

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールはかなり力んだ印象で登場、本来はもっとキラキラとしたトーンでマリアを讃えて欲しいですね。
「かつてのグレートヒェンの告白」は伸びやか繊細なsop、「サマリアの女」は落ち着いたaltで、「エジプトのマリア」は鋭いalt、そして"贖罪の女三人の合唱"は対位的な重なりを生かします。

「懺悔する女 (グレートヒェン)」は繊細なsopでマリアにファウストの新しい生命を伝えます。オケもキラキラ感を作っていますね。
短いながらのこの曲の中心パート「栄光の聖母」は優しさのsopを聴かせてくれますが、やや細すぎかも。
「マリア崇拝の博士」は落ち着いたテノールでそれを受けます。もっと感激的に!! っていう感じでしょうかw

【5. コーダ:神秘の合唱】
「神秘の合唱」は静に緩やかに、ソリストが入るとゆっくりとテンションを上げて"母性"なるものへの賛歌を歌い、ラストのみ大きく広げて怒涛のオケで締め括ります。かなりタメを作っているのがネーメらしさでしょう。
演奏後は静寂、そして拍手大喝采です。


劇的ですがやや俗っぽいマーラー8でしょうか。元々が盛り上がる構成のところ、アゴーギクとディナーミクを上書きする様に奮いますから。

逆にラストは抑えに抑えての一発勝負で面白かったです。ソリスト陣がもう少し聴かせてくれたらまた違ったかもしれません。
とは言え賛否の分かれそうなこれがネーメ・ヤルヴィのスタイルで、それが顕在なのが嬉しいですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





バイロイト音楽祭2023 ワーグナーも驚くAR採用の「パルジファル」をNHKプレミアムシアターで観る


Bayreuther Festspiele 2023 "Parsifal"

バイロイトの演出と言えば前衛的で何かしら一悶着起こす訳ですが、今回は一部のオーディエンスしか使えなかったARグラスの導入(準備したのは2,000人中330個) が物議を醸しました。もちろん放送ではそれを見られる由もありませんが。

話題はもう一つ、ガランチャのバイロイト・デビューです。グバノヴァ(Ekaterina Gubanova)の代役で、今回はタイトルロールも代役でした。珍しい事ではありませんが、個人的にはガランチャのファンなので嬉しいですね。



155717.jpg
(写真はwebからお借りしました。左2枚目がARシーン?!)



演出
ストーリーの置き換えと、ストーリーそのものに手を付けた前衛演出です。

聖杯の守護ではなく、デジタル世界でコバルトやチタンと言ったレアメタルの守護者としているそうです。(その解説が無ければ、ただの抽象表現にしか感じませんが…)
聖杯はそれらの結晶になって、最後はパルジファルによって粉砕されてしまいますし、クンドリも死にません。
前奏曲でのグルネマンツとクンドリ似のキャストとのいきなりのセクシャルシーンは奇妙で、ラストでもこの二人が抱き合う姿があります。(クリングゾルの罠にかかったアンフォルタスのイメージ?)

ただ不思議な事に各シーン置き換え感は低く展開もストーリーに忠実になっているので違和感は少ないでしょう。


舞台・衣装
衣装はとても簡易で、舞台もシンプルな大物配置で背後に大きなプロジェクションマッピングが使われます。暗く抑揚の低いシーンは多分ARで様々なシーンが追加されているのでしょう


配役
【女性陣】まずは紅一点クンドリのガランチャ。ワーグナーの楽劇の中で唯一 敵味方が不明瞭な女性役を上手く演じたのではないでしょうか。(第一幕の髪の白黒染め分けはそれを意図?!)
特にシャープで硬質なmezは役柄にとてもフィット、第二幕でパルジファルと対峙するシーンは観応えがありました。

【男性陣】タイトルロールのシャーガーも第二幕の覚醒シーンからは良かったです。それまでは'愚かな'と言うよりも存在不明の印象でしたから。クリングゾルから聖なる槍を取り上げるシーンはゾクっとします。
グルネマンツツェッペンフェルトは抑えた(脇)役を演じるなら今最高のバス・バリトンでしょう。ここでも控えめながら落ち着き払ったツェッペンフェルトらしい演技と歌唱でした。名前を見た瞬間から安心感が生まれる一人ですね。
アンフォルタスのウェルトンも苦痛に支配される王を上手く演じていました。役柄通りではありますが熱演も光ました。
クリングゾルのシャハナンも良い(悪い?w)気配を漂わせて演技力を魅せてくれました。こちらはリアルな憎々しさよりもピンクの衣装とツノでファンタジーっぽさでしょうか。


音楽
有名な前奏曲はややスローに入って静美な流れから少し劇場性を効かせるタクトでした。もっと澄みきった"トリスタンとイゾルデ 愛の死"の様な演奏が好みですが、楽曲全体の動機は含まれるのでこれが良いのかもしれません。全体的にも局所的な強いメリハリを感じる演奏になっていました。


前衛演出は中途半端でした。ストーリーの置き換えや変更は見た目だけで、キャストの動きは本筋通りの王道的。これではギャップも違和感も薄く前衛とは言えないでしょう。

また各シーンは時にあまりにシンプルで 'ARだとどう見えたのか?' が拭えませんでした。

キャストはそれぞれ楽しませてくれました。ツェッペンフェルトとガランチャが良かったですね。独サイトを見ても概ねこの二人の評価が高かったです。
カーテンコールも歌手陣は喝采で演出陣にはブーイングでしたが、個人的には楽しめました。



<出演>
 ・パルジファル:アンドレアス・シャーガー [Andreas Schager]
 ・クンドリ:エリーナ・ガランチャ [Elīna Garanča]
 ・クリングゾル:ジョーダン・シャハナン [Jordan Shanahan]
 ・グルネマンツ:ゲオルク・ツェッペンフェルト [Georg Zeppenfeld]
 ・アンフォルタス王:デレク・ウェルトン [Derek Welton]
 ・ティトゥレル先王:トビアス・ケーラー [Tobias Kehrer]

<合唱> バイロイト祝祭合唱団  
<管弦楽> バイロイト祝祭管弦楽団 [Orchester der Bayreuther Festspiele]
<指揮> パブロ・エラス・カサド [Pablo Heras-Casado]
<演出> ジェイ・シャイブ [Jay Scheib]


収録:2023年7月25日 バイロイト祝祭劇場(ドイツ)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





エヴァン・ジポリン(Evan Ziporyn)の「Frog's Eye」米NY現代音楽


Frog's Eye
(Evan Ziporyn, b.1959)
本ブログではお馴染みの米現代音楽家でバスクラ奏者のE.ジポリン。米現代音楽組織 "Bang On a Can" (以下BOAC)創立時から長く活動(1987-2012)を共にし、Bang On a Can All-Starsの共同創設者でもありました。

今回は2006リリースの古いアルバムですがジポリン初の管弦楽作品集で、当時はガムランとミニマルがバックグラウンドです。
1.はスティーヴ・ライヒの反復と、3.はジェルジ・リゲティのロングトーンとの関連を示唆していて、四曲トータルでは "an inadvertent symphony"(うっかりした偶然の交響曲) を構成するのだそうです。

演奏はボストン・モダン・オーケストラ・プロジェクト(Boston Modern Orchestra Project)、指揮は創設者のギル・ローズ(Gil Rose)です。
2, はアン・ハーレー(Anne Harley, sop)、4.はジポリンが得意のバスクラで参加しています。







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1. Frog's Eye, for orchestra (2002)
心地良い短旋律の反復変奏でリズミカル、どこかモードの気配を漂わせてカノンや輪唱でもあります。その流れが続くあたりは確かにライヒかもしれませんが所謂(いわゆる)ミニマル感とは少々異なります。
それは複雑に旋律が絡みあって混沌へと変化する事にありそうです。(ラストはライヒっぽいですがw)


2. Ornate Zither and the Nomad Flute, for soprano & wind ensemble (2005)
緩徐曲で、交響曲とするならアレグロ楽章です。やや跳躍音階の美しく神秘的な流れにsopが浮かびます。管楽器の厚い音色とシンプルな旋律がフィットして、弦楽奏が無い事を逆手に取っていますね。


3. War Chant, for orchestra (2004)
旋律感は極低く雲の様な音塊が蠢く空間音響系です。ジポリンのイメージからは遠い音楽で、確かに欧エクスペリメンタリズムの様相ですね。
途中でミュージカル風やジャズ風のアレンジも挟んでNYカルチャーらしい表情変化もしっかり付けていますし、後半多用される下降音階のグリッサンドも面白いです。


4. Drill, for bass clarinet & wind ensemble (2002)
バスクラ協奏曲風です。動機の反復変奏と言うジポリン得意の楽風でこなれた様相、類型動機を奏でる楽器間での絡みが複雑化して行きます。パターンとしては1.で使われている技法と言う事になるでしょう。交響曲なら1.と4.でアレグロ楽章?!


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  全曲試聴可能です



BOAC絡みのポストミニマル米NYポップ系現代音楽です。約20年前にもなりますが、今聴いても十分に楽しめると思います。

楽曲間で方向性をかなり変化させているのも"試み"の意図を感じますし、確かに交響曲構成にも思えます。(3.はスケルツォの代わりに空間音響系?)
米現代音楽の一端を明確に味わえるアルバムで、"オススメ"です!!



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方
   ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジェーン・アントニア・コーニッシュ(Jane Antonia Cornish)の多重ピアノ曲「SIERRA」


SIERRA
(Jane Antonia Cornish, b.1975)
米NYを拠点に活動するコーニッシュは英生まれの女性現代音楽家、学んだのは主として英国内(王立ノーザン音楽大学, 王立音楽大学)です。一部の資料ではLAを拠点ともありますが、本CDがNYのBang On a Canのレーベル "Cantaloupe" からリリースされているので少なくともこの時点(2020 rec. 2022 released)ではNYでしょう。

得意とするのは映画やバレエ音楽とあります。でも今回は興味深い複数台(4台, 6台)のピアノ曲集をチョイス、Bang On a Can All-Starsのピアニストによる多重録音です。(4.はソロ曲?)







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1. Sky
高音キーの単音連打で響きが重なり、ペダルよりもリバーブかディレイが掛かっているかの様。そこに短旋律が生じて、高音域の雲に流れが生まれます。
美しく透明感の強い反復による調性の音色です。

2. Ocean
細かいアルペジオの美しい旋律はターン音型を組んだ上昇下降旋律で、癒し効果の様に空間に錯綜します。ペダルなのか残響音はここでも強く、残響音空間を構成しています。ゆっくりと音程の異なる旋律の数が増えて音厚が増しますが、基本的に旋律は反復もしくは変奏です。

3. Sunglitter
1.と2.を混ぜた様な、単音反復と旋律の絡み合いです。キーは1.と同じく高音域で澄んだ音色が広がります。微かな不協和音を交えながら対位法からポリフォニーの気配が上手く使われ、美しさに彩りを与えています。

4. Last Light
美しい上昇音階の楽曲です。キーは高音域から始まり、中音域へと移ります。この曲はpf一台でしょう。
澄んだ音色を越えた残響がやや鬱陶しく感じてしまうかもw

5. Sierra
まず単音連打、そして極短旋律、それがpf台数が増して音数が増えて雲の様に広がります。もちろん上昇下降旋律の反復変奏が全てのベースです。



ヒーリングかアンビエント、エレクトロニカの気配です。基本的に残響音と高音キー主体の流れで、上昇下降動機の反復(変奏)で構成されます。

コンサート以外なら聴くと言うよりもかけておくクールなBGM系でしょう。聴こうと思うとどれも似た曲に感じてしまうかもしれません。




2.5'のオフィシャルexcerptです



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ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第9番』«ネット配信» サイモン・ラトル指揮 ロンドン交響楽団 2023年8月27日 プロムス56


London Symphony Orchestra
Simon Rattle
(cond.)
BBCプロムス2023から五日前(日曜)のS.ラトル/LSOのマーラー9 です。ラトルはLSO音楽監督最後のシーズンですね。もちろんBBCの配信になります。


▶️ BBC RADIO 3 (配信期間は一ヶ月です)





«ネット配信»
Mahler Symphony No. 9


Proms2023-RattleLSO-Mahler9.jpg
[Live at Royal Albert Hall, 27 Aug 2023]


第一楽章
序奏から第一主題は緩徐を生かした穏やかさ、第二主題でも変化は控え目に、反復も広がり重視で抑えて第三主題も派手ですがコントロールされます。展開部前半の"暗-明-烈"の流れも抑えの効かせたメリハリです。もちろん鳴らしては来るのですが。
厳しさを見せつつもコントロールされた第一楽章です。

第二楽章
主部主題は音の刻みを強く ちょっと角張ってややスローに、逆に第一トリオはジェントルな響きでいかにもレントラー風です。第二トリオは緩やかにこの曲のベースと言えるターン音型を奏でます。緩いアゴーギクも効果的です。微妙な一手間が造るラトルらしさでしょう。

第三楽章
主部主題はクリーンな厳しさ、第一トリオは軽妙さで繋ぎます。中間部(第二トリオ)はターン音型をやや速めに静に鳴らし、緩やかなアゴーギクで気持ちを添えて来ます。ラストはpiù strettoですがしっかりコントロール。

第四楽章
主部主題は美しい弦楽奏に広げ、fg動機後もあまり音厚を上げず感情を抑え気味。第一エピソードは緩やかに上げますがやや淡白に感じます。ここではもう少しスローのアゴーギクが欲しかったかも。コーダのラストは微妙なアゴーギクを入れています。
最終楽章としてはやや速めのテンポになっているのが残念かもしれません。


ラトルの手の内にあるマーラー9です。王道を基本に巧妙なアゴーギクとリズムでの色合い付けされています。気になるのは感情移入の薄さでしょうか。
激しさや哀愁も全てしっかりコントロールされてこの曲らしい感情の揺さぶりはやや弱いかもしれません。全体(特に最終楽章)が速めと言う事もあるでしょう。

第一楽章の後の全体チューニングはやめて欲しいですねェ。せっかく鎮めて終わった一楽章が台無しです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第5番』«ネット配信» ハンヌ・リントゥ指揮 フィンランド国立歌劇場管 2023年8月22日


Orchestra of the Finnish National Opera
Hannu Lintu
(cond.)
フィンランド国立歌劇場管弦楽団60周年記念コンサートで、日本でもお馴染みのフィンランド人指揮者ハンヌ・リントゥが振ったマーラー5です。個人的にはリントゥのマーラーは印象がありませんが。

昨日インプレのマルッキ/FRSOに続いてフィンランドの指揮者/オケ、そして先週のLIVEです。配信も同じフィンランド国営放送(yle)からになります。


▶️ Yle Areena (配信は2023-11/26までの様です)





«ネット配信»
Mahler Symphony No. 5

OrchestraOfTheFinnishNationalOpera60years-mahler5.jpg
[Live at Helsinki Music Centre, 22 Aug 2023]


第一部
葬送行進曲は重厚さは避けたスロー鬱、第一トリオでは約束通りのテンポアップ、第二トリオも教科書的な穏やかな鬱です。
第二楽章第一主題と第二主題は一楽章のパロディパターンで予想通り。展開部の"烈-暗-明"のコントラストも'ありきたり'な感じです。行進曲は不自然さも。
やや平凡に感じる第一部かも。

第二部
スケルツォ主題は何やらhrが怪しくまとまりの弱さ、レントラー主題もスローの優美さが生かせません。第三主題主部のオブリガート・ホルンは艶やかさに欠け、変奏パートは変化が弱く弦もフラットです。短い展開部は何とか明るく、再現部も各主題を力感で乗り切り、コーダはパワーで押し切ります。
一体感に欠けるスケルツォ楽章になってしまいました。

第三部
弦楽奏でまとまりやすい第四楽章ですが主部はモヤモヤと、中間部の静美さもただ細い音色にした様な、何処か落ち着かないアダージェットです。
第五楽章第一・二主題は何となくギクシャク、コデッタは優美さを何とか。展開部は始めから荒れた力感で流れに任せて、再現部後半からコーダもグワッと一気に走ります。よくわからないまま大喝采で終演です!!


残念ながら締まりに欠けるマーラー5になってしまいました。指揮者やオケの個性を聴かせる以前、曲をまとめるのが手一杯といった印象です。最後も暴れて終われば良いと言う事もない様な…

フラットで切れ味や一体感が弱いのはオケの技量に一因がありそうで、リントゥの指揮台を踏む靴音が虚しさを響かせます。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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