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カレヴィ・アホ(Kalevi Aho) の「Wind Quintets 1 & 2」を聴く


カレヴィ・アホ
(Kalevi Aho, 1949/3/9 - )
現代北欧を代表するフィンランドの現代音楽家ですね。楽風は欧前衛ではなく調性を基本にした新古典主義から多様性方向にスタンスを置いた現代音楽になりますね。調性感は薄いですが動機(旋律)は存在して混沌ポリフォニーにはなりません。
気がつけばK.アホのアルバムのインプレも10CDを越しました。

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Wind Quintets 1 & 2
K.アホは交響曲でも管楽器のソロを取り入れてコンチェルト風にする事が多いですね。管楽器を使った曲に楽しさがあるのですが、今回の"管楽五重奏曲"はどうでしょうか。
演奏はBerlin Philharmonic Wind Quintetになります。






Wind Quintet No. 1 (2006年)
 I. Agitato – Cantando, II. Vivace, leggiero – Allegro marcato, III. Marziale, pesante – Furioso – Tempo I, IV. Andante, con tristezza
陰鬱的な音色の第一楽章、ヴィヴァーチェらしい細かいメロディーの第二楽章、不協和音的な主題が民族音楽的な第三楽章、ゆったりとした鳴りの第四楽章、いずれも不協和音を挟んだ動機の変装と反復、ホモフォニーの協調が印象的です。
強弱のコントラストは低めでフラットですが、中では第三楽章の倍音の様な響が面白いですね。


Wind Quintet No. 2 (2014年)
 I. Ruhig beginnend – Bewegter – Meno mosso…, II. Schnell, wild, III. Ruhig fließend, IV. Lebhaft
ここでも第一楽章は陰鬱さですが動機が明瞭化しています。第二楽章でも動機の調性感とホモフォニー感が強く回帰的な印象ですね。第三楽章は緩徐的美しさで、第四楽章は繊細な調べです。
8年後の作品としては変化が薄い気がしますが動機(旋律)の存在感は強く、陰的な美しさはこちらの方が感じられます。



耳馴染みの良い旋律が無い不協和音構成というだけで、現代のクラシック音楽です。毎回同じ事を書いていますかねw
例によってホモフォニー的協調の下、動機の変奏・反復が主体をなしていますが、後年作の方が機能和声回帰が強く感じられました。陰鬱な空気感は同じです。

ただ全体的にも楽章内的にもフラットさが気になり、何か+αが欲しい気がします。K.アホは大編成楽曲の方が面白いと思いますが、この辺りから現代音楽に入っていくには良いかもしれませんね。




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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

NEOSレーベル『 MUSICA VIVA 15 』で聴く、P.エトヴェシュ / B.A.ツィンマーマン / M.スモルカ


MUSICA VIVA 15
以前紹介したMUSICA VIVAシリーズについてですが再度記しておきますね。
『ムジカ・ヴィヴァ・ミュンヘン (Musica Viva München)』シリーズはCol Legnoレーベルのヴルフ・ヴァインマン(Wulf Weinmann, owner and label manager)が、バイエルン放送局主宰の同音楽祭(設立は1945年Karl Amadeus Hartmann)の音源をリリースしたものです。

基本的には欧州エクスペリメンタリズムで、ダルムシュタットやドナウエッシンゲンと同列の音楽祭でお馴染みの顔ぶれとなります。現代音楽ファンには知られたシリーズでが、その後ヴァインマンが新たに設立したNEOSレーベルに引き継がれて、この"15"がその第一弾だったと思います。

協奏曲的な二曲(+コーラス曲)で、ペーテル・エトヴェシュ指揮 バイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)の演奏になります。







ペーテル・エトヴェシュ
(Peter Eötvös, 1944年1月2日 - )
指揮者としてもお馴染みのエトヴェシュは今の時代の好きな現代音楽家の一人です。静と烈のコントラスト、特殊奏法とエレクトロニクス、調性も包括する多様性、と今の時代流れの現代音楽でしょう。
このアルバムの指揮も担当していますね。

Cap-ko (2005年)
  Concerto for Acoustic Piano, Keyboard, and Orchestra
二人のpfはPierre-Laurent Aimard (piano), Paul Jeukendrup (electric piano)になります。新古典主義からの流れを感じる様なエトヴェシュらしいメリハリ、ポリフォニーは時にホモフォニーの様に絡みます。pfも強鍵点描的に打たれてクラスターのオケと対峙します。強烈な音の出し入れがエトヴェシュの世界ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




ベルント・アロイス・ツィンマーマン
(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10)
少々古い現代音楽家として個人的に大好きな一人で、年代別の楽風変化等は既にインプレ済みですね。→ こちら

Konzert Für Violine Und Grosses Orchester (1950年)
 ヴァイオリンはマルティン・ムメルター(Martin Mumelter)で、頭から陰鬱で繊細でキレのある音色を響かせます。音量的にオケにやや被りぎみなのはmixingの問題でしょう。曲は民族音楽的旋律を織り交ぜながら派手なオケで飾り立てられています。調性的な旋律は時に対位的でまさにB.A.ツィンマーマンの初期終盤、新古典主義からセリエルへ足を踏み出す時期の作品ならではですね。

過去の同曲インプレ(vn:ハンス・マイレ、アレクサンダー・サンダーcond. ベルリン放送交響楽団のCD)と比べると、陰影は強くvnの音色も研ぎ澄まされていているのでより好みですね。




マルティン・スモルカ
(Martin Smolka, 1959/8/11 - )
プラハ生まれチェコの現代音楽家で、本国ではオペラ"Nagano"が有名です。ヴェーベルンやミニマル、米実験音楽の影響を受け、micro-intervals が特徴と言われていますね。楽風は調性回帰的です。

Walden, the Distiller of Celestial Dews (2000年)
  Five Pieces for Mixed Chorus and Percussion
2000年のドナウエッシンゲン音楽祭で初演されている、アカペラのコーラス宗教曲的楽曲です。 米の思想家・作家のヘンリー・デイヴィッド・ソロー(Henry David Thoreau)の書"Walden"を元に作られていて、自然を対象としているそうです。歌詞はライナーノートに載っていません。
曲は美しいコーラス作品です。殆ど出番が不明なパーカッションはWolfram Winkelです。



まず三曲目は美しい機能和声の合唱曲なのでインプレには含みません。

時代背景的には離れる二つの作品ですが、単なる無調混沌よりも多様性や新古典派風な流れに共通性を感じる事になりますね。やっぱりB.A.ツィンマーマンが50年ほど生まれるのが早かったと感じてしまいますね。
演奏は総じてエトヴェシュ色が出たでしょうか。本人作品も含めて明確な音の出し入れとコントラスト、特に強音の色付けですね。




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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

来日中のアリス=紗良・オット(Alice Sara Ott) の新譜『ナイトフォール (Nightfall) 』:ドビュッシー, サティ, ラヴェル を聴く


アリス=紗良・オット
(Alice-Sara Ott, 1988/8 - )
人気若手、どこまでを若手というかはありますが、のドイツ人ピアニストですがコンサートで観る限りは華奢な見た目と違ってソフトなソロよりも強鍵なコンチェルト向きの印象ですね。

現在来日中で、本アルバム曲をメインにツアーを組んでいますね。


Nightfall
夕暮れ、夜の帳が降りる頃、と言ったタイトルですが、今更のドビュッシーとサティとラヴェルです。それも満を持してか超有名曲ばかりで、なぜ今更?といった疑念が頭を過ぎったりします。"夜のガスパール"以外はソフトタッチな曲ですし…
これだけの曲ですから誰でもイメージを持っていらっしゃると思いますが、私の頭にはドビュッシーはバヴゼ、サティは高橋悠治さん、ラヴェル*(夜のガスパールに関して)はアルゲリッチがいますね。

*ピアノ・ソロ曲に関して言えば何と言ってもアリス・アデールですね。




ドビュッシー : 1) 夢想, 2) ベルガマスク組曲全曲
流れる柔らかいパート、"夢想"や"月の光"はクールな優しさです。ベルガマスクの前奏曲・メヌエット・パスピエの様なメリハリがある方がオットらしい表情が生きていますね。スロー緩徐なパートより少しでも鍵盤を走らせる曲の方が彼女らしい気がしますがエモーショナルを排したそれがドビュッシーかと言われると…

サティ : 3) グノシエンヌ第1番, 4) ジムノペディ第1番, 5) グノシエンヌ第3番
サティの好みは無機質・無表情です。緩やかなディナーミク、ややスローのオットは良い気配を感じます。ジムノペディはもちろん、情感を抑えたグノシエンヌはなかなかですね。

ラヴェル: 6) 夜のガスパール全曲, 7) 亡き王女のためのパヴァーヌ
"夜ガス"はエモーショナルを殺した硬質な音色です。絞首台はクール、技巧性が売りの"スカルボ"も揺さぶりはありますがまとわりつく情感はありません。"パヴァーヌ"も表情を見せないクールさが悪くありませんね。


オットの主の流れはエモーショナルよりキッチリ・クールな表現になっています。ただ硬さを感じてそれがフランス印象派のピアノかと言われると個人的には少し好みとは違う気がします。

クールな美しさ新しいフランス印象派誕生? それなら淡々としたサティかラヴェルの"絞首台"や"パヴァーヌ"がいい感じですね。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ウストヴォーリスカヤ(Galina Ustvolskaya) の「Concerto・Octet・Sonata No. 3・Grand Duet」を聴く


ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ
(Galina Ustvolskaya, 1919/6/17 - 2006/12/22)
1980年代頃でしょうか、人気を博した事を記憶している旧ソ連・ロシアの女性現代音楽家です。今までに楽風やショスタコーヴィッチとの関係等は紹介済みですね。何と言っても後期の超個性的な等拍モノ(ホモ)フォニーの強烈な音使いです。今の時代の現代音楽、多様性の時代でも十分に通用する感じです。

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Concerto・Octet・Sonata No. 3・Grand Duet
"ピアノ曲集"で、協奏曲、八重奏曲、デュオ、ソロ、ですね。ただ本アルバムは初中期作品なので上記個性的演奏ではなく、セリエル的点描と反復になると思いきや…




Concerto, (1946年) for Piano, String Orchestra and Timpani
  [Orchestra]Chamber Orchestra Of The Leningrad State Philharmonic Society, [Piano]Pavel Serebryakov
乱暴なリズム、強鍵なピアノ、クラスター、一つの動機の変奏と反復の様な流れです。もう一つの緩徐は後期ロマン派の様な美しい流れで、この対比が面白いですね。初期作品ですから点描的ですが機能和声寄りのマッチが面白いです。ラストでショスタコの色合いを少し感じますかね。

Octet, (1949-50年) for 2 Oboes, 4 Violins, Timpani and Piano
  [Oboe]Kh. Chinakov, A. Kosoyan, [Piano]M. Karandashova, [Timpani (Kettle-Drums)]V. Znamensky, [Violin]A. Dukor, F. Soakov, A. Stang, A. Liskovich
モノ的ホモフォニー、等拍のリズム、不気味な音の流れ、時に執拗な反復、ウストヴォーリスカヤの個性は存在していますね。凡百に埋もれない個性を放っていますね。

Sonata No. 3, (1952年) for piano
  [Piano]Oleg Malov
この時代のセリエルらしい不協和音+点描のピアノ・ソロの音楽ですが、途中からクラスターと等拍と反復が支配し始めます。そうなると一気に彼女の世界です。

Grand Duet, (1959年) for Violoncello and Piano
  [Cello]Oleg Stolpner, [Piano]Oleg Malov
中期作品になり個性は全開でスタートです。厳しい反復にクラスター、執拗な等拍、モノ的なホモフォニーの織りなす混沌はまさにウストヴォーリスカヤそのものです。そして不可思議に美しい緩徐パート。これが一番"らしい"でしょう、強烈ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  vcはロストロポーヴィチ!!です。



等拍に刻まれるリズム、モノ的ホモフォニーとクラスター的強音、不気味な和声の反復、それがどの様な編成であっても個性は普遍。それがウストヴォーリスカヤですね。
このアルバムでも個性全開で楽しめます






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 80CDの聴き比べです [#6 / CD71-80]

マーラー第9番も今回(#6)の10枚で80CDまで来ました。全て聴いてインプレするにはまだ時間がかかりそうですが、一枚一枚違って楽しいですね。


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現在#6回 80CD
 #1:10CD
バーンスタイン[x5 ★☆], アバド[x2 ★☆], ラトル[x2 ★], ゲルギエフ
 #2:20CD
カラヤン[x4 ★☆], テンシュテット[x3 ☆], クレンペラー[x3], ノイマン[x3], ベルティーニ[x3 ☆], クーベリック[x2], 井上道義[☆], 小林研一郎
 #3:10CD
インバル[x3], ドゥダメル, サラステ[☆], バルビローリ[☆], ジュリー二, ドラティ[㊟], ムント, 朝比奈隆
 #4:10CD
ラザレフ, ヤンソンス[x2], シャイー[★☆], ジンマン, バルシャイ, W.モリス, シェルヘン[㊟], マデルナ[x2 ☆]
 #5:20CD
ノット[★☆], ハーディング[☆], ギーレン[x2 ㊟], 小澤征爾[x2], シノーポリ[x2 ㊟], ザンデルリング[x4], コンドラシン[x2], ミトロプーロス[x2], サロネン, アルブレヒト[x2 ☆], マズア
 #6:10CD 本投稿です
ショルティ[x2], ロペス=コボス, 金聖響, スラドコフスキー, セーゲルスタム[☆], ゴレンシュタイン, 高関健, 山田一雄, ミュンフン



ゲオルク・ショルティ, Georg Solti
鳴りの良さとパワーのイメージが強いショルティ(w/シカゴ響)のマーラーですが、9番(正規盤)はロンドン響とシカゴ響の録音を残しています。アクの強さがマーラーに合うかは好みの問題もあるでしょうね。

(#1)
London SO
[DECCA] 1967-4/28-5/11
帯同して来日したこともあるロンドン響とのマーラー9ですね。1967年録音で、当時はこんなにマーラーに人気がなかったと思います。(少なくともSP→LP時代の父は長い交響曲は嫌いでしたね)
第一楽章
第一主題は息遣いのごとく表情を見せ、第二主題は葛藤を演ずる様です。その後も表情豊かな展開部で楽しませてくれます。暗雲と嵐、常に"風雲急を告げる"的パワー表現メインですけどw
第二楽章
主要主題はもったいぶった調子でややスロー、第一トリオはテンポを上げて切れ味、第二トリオでも図太さを感じます。とにかく強側のメリハリ、疲れますね。
第三楽章
主要主題はオケの鳴りが全開、副主題(第一トリオ)では多少肩の力を抜きますが気合がすごいです。中間部(第二トリオ)は落としますが背後に力がこもっているのがわかります。ラストは爆走!!
第四楽章
主要主題は太くて濃く、暑いお風呂みたいです。第一・第二エピソードも朗々とした鳴りでスローや閑を排して力感いっぱい。聴き終わったら疲れてぐったり。
・・・・・
太く力漲るマッチョなマーラー9です。個性的ですが狂気というわけではなく暑苦しいだけ?、この曲の哀愁や情感には接点がないので残念です。
スキヤキを濃い割下で肉だけガッツリ早食い口いっぱい、みたいなw 好きな方にはオススメです。(爆) えっ、㊟印付けろ?? ですかねぇ。




(#2)
Chicago SO
[DECCA] 1982-5
ショルティと言えば音楽監督(1969-1991)だったシカゴ響。そのマーラー9ですね。上記15年後の演奏ですが、こちらはどうでしょう。
第一楽章
第一主題・第二楽章ともに抑えが増して静的に澄んだ音色に変化しています。反復から第三主題も適度な激しさを見せてバランスがいいですね。展開部も落ち着いてクセがなくなりお手本的、見晴らしよくなりました。後半スローが気になるのは演奏時間も3'以上長くなったからでしょうか。
第二楽章
全体の流れは似ていますが、少し肩の力が抜けて聴き疲れは弱まりました。第一トリオ以降もスロー気味です。
第三楽章
LSOと同傾向、全開運転です。中間部は少し速くなっている感じです。
第四楽章
通して同じ様な流れですが、少しスロー化して楽になった感じです。それにしても何かが伸し掛る様に強く重いです。ラストの静音はオマケみたい。
・・・・・
力強いマーラー9です。一部は一般化しましたが、いずれにしろ力感。ならばいっその事ロンドン響に一票でしょうか。




ヘスス・ロペス=コボス, Jesús López-Cobos
Cincinnati Symphony Orchestra
[TELARC] 1996-5/5,6
本年(2018年)3月2日に亡くなったスペイン人指揮者ロペス=コボスが首席指揮者(1986-2001)を努めていたシンシナティー響を振ったマーラー9、他には2,3,10番を残していてファンがいますね。
第一楽章
第一主題から第二主題への変化の流れは適度、そこからの反復と第三主題(コデッタ?)も安心して聴けますね。展開部も奇を衒ったパートはなく、標準王道的な落ち着きです。どちらかと言うと穏やかさの印象でしょうか。
第二楽章
主要主題から優美さ、第一トリオも刺激的変化を避けてマイルドに、第二トリオはよりマイルドで少し長く感じます。
第三楽章
主要主題は切れ味よく、副主題も同じ流れ。中間部は色合いは変えますがテンポ変化は少なめです。ラストもパワーはふるいますが刺激は薄いですね。
第四楽章
主要主題の穏やかな広がりの良さは得意とする処でしょう。流れの延長で第一エピソード、第二エピソード共には情感は適度ですが、後半からコーダのターン音型では静的に落としてこの曲らしさを聴かせます。
・・・・・
まとまりの良いマイルドなマーラー9です。抑え気味のアゴーギク・ディナーミクで個性・刺激には欠けるかもしれません。刺激物の苦手な貴方におすすめですw




金 聖響, Seikyo Kim
Kanagawa Philharmonic Orchestra
[Octavia] 2011-5/28
在日韓国人指揮者の金(キム)さんは2009年から2014年まで神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を務めました。その時代の録音になります。その後いろいろ問題があったのは残念な事です。
第一楽章
序奏・第一主題は緩やかに、第二主題からは重厚さを見せる教科書的な流れです。反復最後の第三主題にかけてもきっちりと盛り上げています。展開部も陰鬱さとアレグロ・リゾルートからの激しさと良いコントラストで堂々本流ですね。ただキッチリとしている気配が強すぎて機械的な流れです。
第二楽章
主要主題はゆったりレントラー、第一トリオでキリッと表情を上げてリズムよく、第二トリオは穏やかに、と正攻法です。山場も約束通りに盛り上げますが、教科書通り的で表情が感じられません。
第三楽章
ここでも主要主題から副主題を全く違和感なくリズミカルに、中間部でターン音型を美しく奏でます。規格品ですが何かが足りません。
第四楽章
vnのターン音型は美しく、第一エピソードは陰鬱さを軸とする流れをきれいにつけています。第二エピソードも後半からはコーダに向けた流れが作られています。何かが欠けている様な、個性に欠けるのが個性?!
・・・・・
不要な揺さぶりを殺して教科書の様なマーラー9です。レシピ通りの料理が好きな貴方向き?
ただこの曲に欲しい情熱や思い入れが、ライヴにもかかわらず伝わらないのが唯一最大の問題かもしれません。




アレクサンドル・スラドコフスキー, Alexander Sladkovsky
Tatarstan National Symphony Orchestra
[Μелодия] 2016

(コンドラシンとスラドコフスキーが1,5,9番を振った面白いset物ですね)

スラドコフスキーが首席指揮者で音楽監督を務めるタタルスタン国立交響楽団を振ったマーラー9ですが、両者ともよく知りません…
第一楽章
スローの序奏・第一主題から第二主題は激しさに表情を変え二面性を見せてきます。第三主題ももちろん激しさです。展開部も静のスローと烈のファストの明確な表情付けが、陰鬱さ・美しさ・激しさを生かす展開です。明瞭な第一楽章ですね。
第二楽章
歯切れの良いレントラーの主要主題から第一トリオをいきなりテンポアップ、第二トリオでスローダウンします。微妙ではなく明瞭なアゴーギクです。
第三楽章
主要主題は少々慌ただしい感じで副主題で少し取り戻し、絡んだ後に中間部で澄んだ音色からラストは精一杯盛り上げます。わかりやすいですね。
第四楽章
第一主題は予想通り一楽章回帰的にスローです。第一エピソードの鬱さは情感に欠けますし、第二エピソード後半からのターン音型のエモーショナルさは弱いです。山場は盛上げますが…
・・・・・
すっきり明快なマーラー9です。主題・動機ごとに明瞭にアゴーギクを振り替えています。個性も含めて微妙な"わび・さび"のアンジュレーションは弱いです。(この曲に一番欲しい物かもしれません)




レイフ・セーゲルスタム, Leif Segerstam

Danish National Radio Symphony Orchestra
[CNANDOS] 1991-9/23-25

(第7番とのカップリング3CDです)

北欧の怪人、フィンランドの指揮者セーゲルスタムです。個人的には多作の現代音楽家のイメージが勝ちますが、来日した指揮でも楽しませてもらいましたね。DR放送交響楽団(デンマーク放送交響楽団)首席指揮者時代(1988–1995)の演奏です。
第一楽章
とてもスローで大きな第一主題です。第二主題もその流れでスロー、そこから大きく山場を築いて反復、第三主題は落ち着きを払った雄大さです。展開部もスローを基本として奥行きのある流れを作っています。
第二楽章
主要主題スローで落ち着いたレントラーですが切れ味があります。第一トリオは威風堂々と、第二トリオは落ち着かせる様な優しさですね。山場は抑え気味で、この楽章のスローだけ今ひとつ感があるかもしれません。
第三楽章
主要主題と副主題は標準的なテンポで歯切れがいいですね。中間部のターン音型は最終楽章を印象付ける美しさです。ラストの緊迫は見事!決まりました。
第四楽章
主要主題は緩やか優美です。第一エピソードでは入りのcbからコーダ終焉に向けた気配を漂わせる構成です。第二エピソードも山場を含めて感情が溢れ出て、後半からコーダにかけての静音ターン音型パートの素晴らしさは格別かもしれません。
・・・・・
セーゲルスタムらしいスロー、雄大さと情感のマーラー9です。単純な静スロー・激ファーストの様なアゴーギクではないのがセーゲルスタムらしさでしょう。思い入れを感じられてとても好きな一枚です
CHANDOSの音の良さも一役買っているでしょう。




マルク・ゴレンシテイン, Mark Gorenstein
State Symphony Orchestra of Russia (Svetlanov SO)
[MDG] 2010-2/20
釜山フィルの首席指揮者も務めたゴレンシュタイン、ロシア国立交響楽団の音楽監督(2002-2011)時代の録音です。
第一楽章
緩やかスローの第一主題は美しく第二主題は変化は少なめに入って大きく広げます、反復後の第三主題も含めて王道ですね。展開部もスロー基本で大きくバランスの良さがありますが、やや刺激に欠けて時折スローの間延びも感じます。
第二楽章
レントラー主題もスロー強調ですが、第一トリオではしっかりと締めて、第二トリオは緩やか。山場もスローなので強調感に欠けますね。
第三楽章
主要主題はリズミカルで重さを付けて良い流れを作ります。第一トリオも流れに乗って緊張感を保ち、第二トリオで緩やかにターン音型では美しさを強調しますがその後が弱いです。でもラスト山場は暴れて面白く、この楽章が一番でしょう。
第四楽章
主題は得意の雄大さが光ります。第一エピソードは暗く鬱に入りスローを生かして大きく広げて良い流れを作り、第二エピソードは一転速めで入ります。山場(mixingバランスが?)から徐々にスローに戻し、ターン音型を緩やかに納めます。
・・・・・
緩やか広々スローなマーラー9ですね。スロー主体でアゴーギクが薄く、強音パートに締まりに欠けるのが残念ですね。
良い処もあり、ジャケットも好きなのですが。




高関健, Ken Takaseki
群馬交響楽団
[ALM] 1999-3/21
高関さんが群馬交響楽団の音楽監督時代(1993 - 2008年)の録音ですね。
第一楽章
第一主題から第三主題までメリハリが不足している感じです。展開部もスローパートのモヤッとした感じが拭えないのはアゴーギクやディナーミクの弱さだけでなく、管楽器の音色もあるかもしれません。強音パートは適度に暴れて面白いですが、前途多難を感じました。
第二楽章
主要主題は速めですが何かスカッとしません。第一トリオは流れに乗ってシャープさが感じられます。速い展開はいける様ですね。第一楽章よりまとまってきました。
第三楽章
主要主題はマーラー指示の様に荒々しさがありなかなかです。第一トリオもその流れに乗り、第二トリオの静展開ではやはり何かこもった気配になります。ラスト山場は見事です。
第四楽章
不安を感じたスローの主要主題は落ち着いた演奏になります。第一エピソードは繊細なのですが、寂寞感や情感に繋がりません。第二エピソードは山場があるので、そこはこなしています。
・・・・・
今ひとつ見晴らしの良くないマーラー9です。全体的には荒れたパワーパートは面白さがありますがスローのモヤモヤが拭えず、この曲の持つ哀しみや美しさと言った情感が、テクニカル的にも、弱く感じました。




山田一雄, Kazuo Yamada
新日本フィルハーモニー交響楽団
[fontec] 1986-6/7
ヤマカズさんが新日本フィルを振ったマーラー9ですね。本当は第5番同様映像付きで見たいところです。
第一楽章
緩やかで緊張感を漂わせる第一主題と第二主題、そして反復からの第三主題は雄大です。展開部は陰鬱な流れからJ.シュトラウスの引用で明るさを見せ、流れよく山場へと進みます。鬱パートと山場の組合せは明確にコントラストを付けてきますがしっかりとアゴーギクがコントロールされて心地よいですね。再現部の間延び感が少し残念ですが。
第二楽章
レントラー主題は速く軽快な勇み足風に、第一トリオで一般的なテンポ設定に戻し明快な三拍子を付け、第二トリオでスローダウン。三つの顔を明確にしていますね。
第三楽章
主要主題は速めに少し乱暴で切れ味よく、第一トリオでは流れに乗った落ち着きを見せて、第二トリオはまさに中間部らしい美しい流れを作り出します。ラストも暴れて見事な構成感ですが、真面目過ぎかもw
第四楽章
主要主題は第一楽章で感じた様な緩やかな緊張感が少し弱いですね。第一エピソードを支配する静は全体スローでコーダをイメージさせ、第二エピソードはテンポアップして山場を迎えた後スローに落としコーダへ繋げます。
・・・・・
構成感もあり、きっちり真面目なマーラー9です。スローの優しさとコントロールされた強音パートをどう見るかで評価は分かれるかもしれません。
個人的にはコンサートならではの一体感や興奮が欲しいところです。少し羽目を外してもいいかも。指揮台のヤマカズさんの音が聞こえますねw




チョン・ミュンフン, Myung-Whun Chung
Seoul Philharmonic Orchestra
[DG] 2013-8/29,30
韓国生まれの米国人指揮者チョン・ミュンフン、ソウル・フィル(ソウル市立交響楽団)音楽監督時代のマーラー9番です。
第一楽章
第一主題はスローに続く第二主題も柔らかさ重視で、反復から第三主題で山場を作ります。展開部もスロー穏やかメインに山場を築くコントラストが明確ですね。好きな流れですが無表情的で、再現部はもやっとしてしまいます。
第二楽章
主部主題はややテンポを上げてリズムよく、第一トリオも大きくは変えずスケルツォらしいです。第二主題は静でスローに落とします。
第三楽章
主部主題・副主題はいきなりのアップテンポ、中間部で静で薄く展開します。ラストも盛り上げますが、なぜか訴えて来ません。
第四楽章
主要主題は弦楽器で大きく奏でます。第一エピソードは薄く良い流れですが無表情、ラストがコーダの様なのはやり過ぎでは。第二エピソードも早々と前半からエンディングに意識を持って行っている感じです。
・・・・・
第一・第四楽章の静を強調したマーラー9です。ただ、この曲に欲しい情熱や思い入れとは無縁ですね。






聴いた印象を素直に少しづつアップしていきたいと思っています。数々のヴァリエーションからこの曲の全体像が感じられると嬉しいと思います。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

バーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan) の『VIENNA FIN DE SIÈCLE, ウィーン世紀末』を聴く


VIENNA FIN DE SIÈCLE
バーバラ・ハンニガン (Barbara Hannigan)
前作「CRAZY GIRL CRAZY」ではベリオ/ベルク/ガーシュインを取り上げて、かつ指揮もこなしたハンニガン。前衛を得意とするソプラノ歌手であり指揮者であり、注目の一人ですね。

今回は19世紀末の音楽を『ウィーン世紀末』と題したタイトルで、シェーンベルク/ヴェーベルン/ベルク/ツェムリンスキー/アルマ・マーラー/ヴォルフ の歌曲(抜粋含む)をピアノ伴奏でまとめています。始めの三人は言わずと知れた新ウィーン楽派、ツェムリンスキーとアルマ・シントラーは元恋人?で師弟関係、ヴォルフは後期ロマン派の歌曲家です。どの様な流れになるのか楽しみですね。
ピアノは現代音楽を得意とするラインベルト・デ・レーウ(Reinbert de Leeuw)になります。

国内発売元は『ウィーン世紀末、6人の作曲家~アルマ・マーラーのまわりで』とアルマ・マーラーで売ろうとしていますがw







アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schönberg, 1874/9/13 - 1951/7/13)
今更のシェーンベルクですから紹介は割愛ですが、ツェムリンスキーに師事していて共にマーラー家で音楽論を戦わせていたそうです。このアルバムの人間模様絡みかもしれませんね。今回は無調になる前、後期ロマン派時代の「四つの歌曲」になります。

Vier Lieder Op. 2 (1899年)
 作品番号は#2ですが早くも調性の薄さを覗かせた後期ロマン派作品で独特の美しさが感じられますね。ハンニガンの声も伸びよく響き、特に情感が響きますね。一曲目「Erwartung」の和声が素晴らしいです。




アントン・ヴェーベルン
(Anton Webern, 1883/12/3 - 1945/9/15)
もちろん紹介は割愛ですねw ブーレーズによる「Complete Webern」で全曲インプレ済みです。

Fünf Lieder nach Gedichten von Richard Dehmel Op.5 (1908年)
 ヴェーベルン初期作品ですが、この曲から無調を使い始めていますね。無調なのですが、前出のシェーンベルクの調性感を一歩進めた美しさです。無調なのにこの美しい旋律は今更ながらにヴェーベルンの音楽の先進性に驚いてしまいますね。例によって点描的なpfと音の跳躍、それに寄り添って流れるソプラノ、ヴェーベルンらしさ全開ですね。
pfのレーウが光ります。




アルバン・ベルク
(Alban Berg, 1885/2/9 - 1935/12/24)
これまた紹介は割愛です。超代表曲「ヴァイオリン協奏曲」には副題?として『ある天使の思い出に, Dem Andenken eines Engels』とあり、ご存知の通りアルマの(マーラーの死後)2番目の夫ヴァルター・グロピウスとの娘で、亡くなったマノン・グロピウスの為に書かれています。(ハンニガンは前作でもベルクの未完成のオペラ「ルル」を取り上げていますが、未完成に終わったのは途中でヴァイオリン協奏曲に取り掛かったからですね)

Sieben Frühe Lieder (1907年)
 「七つの初期歌曲」からですが、ここでも既にベルクらしい無調ながら旋律感のある流れが味わえます。新ウィーン楽派三人の初期の歌曲がいずれも美しい事が明確にわかりますね。調性感はシェーンベルクとベルクの中間くらいの印象ですが、朗々と歌い上げるのはこの後オペラを得意としたベルクならではでしょうか。




アレクサンダー・ツェムリンスキー
(Alexander Zemlinsky, 1871/10/14 - 1942/3/15)
晩年には調性感の薄い作品もある様ですが、基本的にはマーラーやR.シュトラウス達と同じ立ち位置の後期ロマン派ですね。今まで代表作の「フィレンツェの悲劇」「人魚姫」をインプレしていますが、現代音楽家一覧には入れていません。アルマ・シントラーがマーラーと結婚する前に師弟関係にありました。

Liederen Op.2, 5, 7 (1896, 1897, 1899年)
 多少の不協和音は一部感じらるもののパート構成もしっかりとしてバリバリ濃厚な後期ロマン派の歌曲ですね。処々で古典的な印象さえ感じます。面白みには欠けるかもしれません。




アルマ・マーラー
(Alma Mahler, 1879/8/31 – 1964/12/11)
アルマ・シンドラーとしてツェムリンスキーに師事して小曲16歌曲(インプレ済みです)を残しています。アルマは作曲技法にも明るく、読譜も見事だったそうですが残っているのが歌曲の小曲だけなのが残念ですね。

Die Stille Stadt, Laue Sommernacht, Ich Wandle Unter Blumen, Licht In Der Nacht* (1910, 1915年*)
 不協和音を交えた美しい楽曲で、師のツェムリンスキーより面白いですね。適度な興奮と抑揚のアゴーギクがあり、表現主義らしき印象も感じられますね。伴奏pfのコントラストも、ホモフォニーを超える事はありませんが良い流れです。
(作品年はいずれもスコアの出版年ですね、多分)




フーゴ・ヴォルフ
(Hugo Wolf, 1860/3/13 - 1903/2/22)
オーストリアの後期ロマン派、歌曲を得意としていて、43歳で狂気に襲われて死亡しています。著名詩人の作品を元に歌曲を作っていて「ゲーテの詩による歌曲集」は代表作の一つですね。

Mignon Lieder Nach Gedichte von Goethe (1888年)
 情感の高い機能和声の歌曲です。デクラマチオーン(劇的朗読法)と言われるヴォルフの歌曲はまさに劇場的で、感情移入の波が特徴的です。ただ和声は旧態然でキッチリしているので息苦しい感じがするかもしれません。




後期ロマン派終焉から現代音楽黎明期に入る時代の作品ですね。そんな時代変化を感じられる楽曲が並びました。殆どが3'台以下の小曲なのでキャラクターがわかりやすいです。前衛性が強い順に以下ですね。

ヴェーベルン - ベルク - シェーンベルク - アルマ - ツェムリンスキー = ヴォルフ

ハンニガンのソプラノは特筆するレベルではないとは思うのですが、硬派の声と感情表現の良さが好きです。全曲英訳付きですから歌詞を見ながら聴けるのが嬉しいですね。

この一枚で前衛に向かう時代変化が歌曲で楽しめます。なぜか新ウィーン楽派三人の楽曲が澄んだ美しさを感じます。個人的にはヴェーベルンがオススメですね。




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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

英国ロイヤル・オペラ ジョルダーノの歌劇「アンドレア・シェニエ」をNHKプレミアムシアターで観る


ウンベルト・ジョルダーノ(Umberto Giordano, 1867-1948)のオペラ『アンドレア・シェニエ』、フランス革命を基にした悲劇ですね。
HNKプレミアムシアターでは今年1月にミラノ・スカラ座の開幕公演を放映しました。その時のメインキャストはマッダーレナ役のアンナ・ネトレプコでしたが、今回の2015年英国ロイヤル・オペラはタイトルロールのヨナス・カウフマンですね。


2015AndreaChénier-RoyalOperaHouse
(画像はオフィシャル・サイトより)



演出

数多くのオペラの演出を手掛けるデイヴィッド・マクヴィカーですが、王道的で安心して見られる一方で時代の流れには少々欠ける気がします。昔からの舞台仕立てが好きな方には人気でしょうね。


舞台・衣装

豪華絢爛的な貴族屋敷、市民の暮らしもそれらしい舞台設定ですね。衣装も同様に時代背景を読んだ様に貴族は貴族らしく、市民は市民らしく、と今や懐かしささえ感じる設定です。


配役

まずはタイトルロールのカウフマンですが、堂々たる流石の声の通りでした。涎を垂らしてのアリア熱唱はひけますがw ジェラールのジェリコ・ルチッチは声ぼちぼち演技表情良好といった感じでしょうか。
女性陣ではマッダレーナのウェストブレーク一、声もさることながら演技が良かったですね。端役ですが癖あるベルシ役デニス・グレイブスも楽しませてくれました。
タイトルロールを引立てる二人の演技が素晴らしかったですね。


音楽

このところ少し気になっているパッパーノですが、ここでも鳴りの良さを感じました。CDで聴いてもいい様な情感のある演奏でしたね。



王道古典的な演出で一昔前のDVDでも観ているかのようです。悪いわけではありませんが、フランス革命の展開が箱庭的なので個人的には現代の味付けで見たかった気がしますね。

声はカウフマンが抜きんでていましたが、演奏が良くパッパーノの見事さを感じました。



<出 演>
 ・アンドレア・シェニエ:ヨナス・カウフマン [Jonas Kaufmann]
 ・カルロ・ジェラール:ジェリコ・ルチッチ [Zeljko Lucic]
 ・マッダレーナ:エヴァ・マリア・ウェストブレーク [Eva-Maria Westbroek]
  ・ベルシ:デニス・グレイブス [Denyce Graves]
  ・コワニー伯爵夫人:ロザリンド・プロウライト [Rosalind Plowright]
  ・ルーシェ:ローランド・ウッド [Roland Wood]

<合 唱> 英国ロイヤル・オペラ合唱団
<管弦楽> 英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
<指 揮> アントニオ・パッパーノ [Antonio Pappano]
<演 出> デイヴィッド・マクヴィカー [David McVicar]


収録:2015年1月29日 英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

「 Suidobashi Chamber Ensemble 」で ヴァンデルヴァイザー(Wandelweiser)楽派 を聴く / Jürg Frey, Michael Pisaro and Antoine Beuger


Suidobashi Chamber Ensemble
昨日に続き実験音楽Ftarriさん(東京-水道橋)のmeennaレーベルのインプレです。今回はヴァンデルヴァイザー(Wandelweiser)楽派の音楽家三人を取り上げたアンサンブル作品集になりますね。
演奏はタイトル名のアンサンブル(SCE)で、Ftarriさんでのライブとセッションです。SCEは池田若菜さん(リーダー)が杉本さんの協力の元に編成された現代音楽/実験音楽の室内楽でメンバーは以下になりますね。

 ・池田若菜 (フルート)
 ・池田陽子 (ヴィオラ)
 ・内藤彩 (ファゴット)
 ・大蔵 雅彦 (クラリネット、バス・クラリネット)
 ・杉本拓 (ギター)


本アルバムは作曲者三人に連絡をとりアドヴァイスをもらって演奏しているとの事です。







ユルク・フレイ
(Jürg Frey, 1953/5/15 - )
ヴァンデルヴァイザー(Wandelweiser)楽派のスイス人現代音楽家にしてクラリネット奏者、スイス在住でクラリネットの指導もしています。Wandelweiser Komponisten Ensemble(ヴァンデルヴァイザー楽派のトップメンバーで構成されています)のメンバーとしても活躍していました。

Exact Dimension without Insistence, for flute, clarinet
ほぼ無音の世界にほんの時折フルートとクラリネットの音が鳴ります。それも緩い単音一回、鳴るのは1回/1分程度です。耳を攲てると何かゴソゴソと音も聴こえますが、スコアがないので環境音かもわかりません。それも含めて"音(楽)"なのかもわからないのですがw
部屋の中にも色々な微音が存在しているのも意識されます。それがヴァンデルヴァイザー(Wandelweiser)楽派の典型でしょうね。この曲が一番極端な静音です。




マイケル・ピサロ
(Michael Pisaro, 1961 - )
米現代音楽家でギタリスト、J.フレイと同じくWandelweiser Composers Ensembleのメンバーですね。詩をテーマにした音楽やフィールドレコーディングも精通して、楽曲は欧米やアジアの音楽祭でも取上げられています。ノースウェスタン大学で作曲と音楽理論の教職にもついていました。

Flux [Harmony Series No. 8A], for viola, guitar
ハムノイズの様な音、弦を擦る音、そんなノイズ"音"が静かに単音域で発生します。フレイに比べると無音空間は少なめですが、気配は同じです。

Pas [Harmony Series No. 8C], viola, bassoon
[8A]に比べると音は明瞭な音色になります。そこが大きく変わりますね。単音(多分一つの音でしょう)が楽器を入れ替えて出てくる感じです。もう一つ違うのは二つの楽器が同時に音を出すという事があります。

Festhalten / Loslassen, flute, bass clarinet, bassoon, guitar, viola
ノイズ系ですね。静音の特殊奏法の音色がひっそりと互いに強調しながら発音しています。明瞭な音階はありません。(後半に一部音階変化があります) また静音の中にディナーミクと合奏音の音色で表情が作られています。という意味で"音楽"になっているかもしれません。




アントワン・ボイガー
(Antoine Beuger, 1955/7/3 - )
オランダのヴァンデルヴァイザー楽派の現代音楽家でフルート奏者ですね。本格的に作曲活動に入ったのは1990年代からで遅咲きかもしれませんね。もう少し知りたいのですが情報が不足です。

Vegetable Rustling, flute, bassoon, guitar, viola
無音の中に各楽器が発する単音(同一音ではない)でハーモナイズされています。そこが一番の違いでしょう。一楽器単音の方が少ないくらいです。各楽器の音は機能和声で倍音的な色合いを感じます。この曲も表情があると言って良いと思いますね。




無音の中に静かな単音が発せられるだけで旋律はありません。時に単一楽器、時に複数、そして音はp,pp,ppp、そんな感じがヴァンデルヴァイザーです。

曲によってはCDでは無音でも耳を攲てていないと何か"音"が出ているかもしれません。FtarriさんのLiveでもそうですが、空調音に負けてしまう様な細い音も存在しているので、静かな部屋で張り詰めて"音"を探るのも楽しみです。(ステージがあると何らか音を出しているかも…なんてわかりますがw)

杉本拓さんの「いつも聴く音楽ではなくディズニーランドの様に楽しみたい時に聴く」(意訳)、というのがピッタリきますね。




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Live at Ftarri『 Duo and Trio 』S.Murayama, T.Koike, M.Taxt を聴く


Duo and Trio
実験音楽Ftarriさん(東京-水道橋)のmeennaレーベルから出た「Ftarri 6th Anniversary Vol. 1」即興音楽のアルバムですね。先日伺った際に入手したもので、限定200のシリアル001番でした。



S.Murayama, T.Koike, M.Taxt
村山政二朗】(perc. voice)
欧米での活躍もありフランス・パリに長く拠点を置いていたそうです。打楽器の特殊奏法やvoiceでの特殊唱法?をベースにしていて個性的です。
古池寿浩】(tb)
名古屋在住のトロンボーン奏者で特殊奏法も奏でます。村上氏との共演も多いですね。先日のライヴでも一緒でした。
マッティン・タクスト, Martin Taxt 】(tub)
ノルウェーのチューバ奏者で、Ftarriと同じ即興と実験音楽のレーベル「Sofa」主宰者。四分音や微分音を出す特別なマイクロトーナル・チューバ(微分音チューバ)を使っていますね。いかにも前衛です。今回は二曲目で参加しています。







DuoandTrio-ftarri-meenna878.jpg

Duo Improvisation
入りはヴァンデルヴァイザー(Wandelweiser)風の展開になります。従って始めは無音・静の世界で、そこに時折音が出現すると言った展開になりますね。風の音の様なTbの特殊奏法やperc.の音のDialogueです。そこからTbの音色が息の長いロングトーンやタンギングになり、perc.が様々な色付けをする様に絡んで行きます。終始緊張感が漂います。

Trio Improvisation
TbとTubの倍音構成の様なロングトーンにvoiceの"音"が絡み、perc.が入ってきます。共鳴する二つの管楽器は特殊奏法に、村山さんは独自の特殊voiceとなり、ノイズ・ユニットへと変化し、後半はperc.の色合いも濃くなります。8月のFtarri-Liveに近い演奏ですね。


強音クラスター混沌の即興とは対極にある即興音楽です。特殊奏法ベースにロングトーン、音数は少ないですが音密度の濃い演奏ですね。

本当はLiveで観るともっと面白いのですが、"音"を聴くというスタンスから行くと部屋でも十分に味わえますね。村山さんは演奏時間を20'を一つの区切りとしているのかもしれません。




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2018年9月6日 ヴィト/都響 の「ルトスワフスキ 交響曲 第3番」at サントリーホール

9月になって少し気温も落ち着いた東京。ポーランド・シリーズを楽しみに六本木まで行ってきました。

20180906SuntoryHall.jpg


ポーランド人指揮者アントニ・ヴィト(Antoni Wit)がポーランド絡みの曲を振りますね。一曲目のワーグナーは何かと思いきやポーランドの革命に触発された曲との事でした。ショパンを弾くシャルル・リシャール=アムラン(pf)は、今や"アムラン"で検索するとマルク=アンドレ・アムランよりもヒットする人気ピアニストなんですが聴くのは今回が初めてです。

もちろん第860回都響定期のメインは『ルトスワフスキ 交響曲 第3番』ですね。二楽章で前奏・エピローグ・コーダ構成。三つのエピソードからなる第一楽章や、チェーン形式のアレアトリーと言ったこの曲をヴィトがどう振るのかが楽しみでした。事前に楽曲構成を含めてルトスワフスキ本人とサロネンのCDで聴き比べをしてきました。→ こちら





序曲《ポローニア》
リヒャルト・ワーグナー (Richard Wagner, 1813 - 1883)

とにかく派手な式典楽曲風でした。ワーグナーらしい音色もありましたが、古典の色合いを強く感じましたね。ヴィトは都響をよく鳴らしていたと思いました。まぁ曲調ほどに興奮があれば素晴らしかったでしょう。



ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 op.21
フレデリック・ショパン (Frédéric Chopin, 1810 - 1849)

事前にアルゲリッチ/デュトワ盤を聴いてきました。(良く歌うオケとpfで、ロマンチックなのに刺激的技巧ですね)
第一楽章オケの第一主題と第二主題はかなり抑えた印象、アムランのピアノはとても指の転がりの良さを感じましたね。
第二楽章の繊細な緩徐は表情は薄く、トリオでも殊更にpfの鳴りを高めては来ませんでした。
第三楽章のショパンらしいマズルカ風技巧的なpfパートは聴かせ処ですが、それらしかったのはトリオだけでした。
お行儀の良い演奏は三者のキャラでしょうね。
アムランはアンコールのソロ(ショパンの夜想曲#20)の方がエモーショナルで良かったです。




交響曲 第3番
ヴィトルト・ルトスワフスキ (Witold Lutosławski, 1913 - 1994)

第一楽章 #1エピソードは明瞭な鳴りで煌めきがあり、#2エピソードは蠢く魍魎の世界に足を踏み入れた様、#3エピソードはその延長に感じました。
第二楽章は白眉でしたね。前半は緊張感溢れるアレアトリーに魅了され、中盤の静音パートは混沌に、後半は回帰して山場は緊張感とパワーでした。
エピローグで美しく大きく広がりを作るとコーダはシャキッと締めました。
全体印象は煌びやか。この曲の持つ刺激と緊張感と混沌を楽しませてもらいました。特に第2楽章は素晴らしかったですね。

ヴィトの指揮(振らない様子)でアレアトリーパートが良くわかったのも嬉しかったです。

と同時にチェーン形式(アレアトリーと通常パートの組合せ)でアレアトリーを終了させるのに強音他何らかの指示が必要であり自然に終了させるのが難しい、という説もわかります。




なんと言ってもシマノフスキの第3番ですね。20世紀を代表する刺激的な交響曲が楽しめました。流石はお国モノでしたね。

アプローズでは都響メンバーの足踏と、ヴィトに拍手を譲るシーンが充実感を表していました。

アレアトリーは弦楽器の方がボウイングがメチャクチャになって面白いと言う事がわかりましたねw




テーマ : クラシック
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プロフィール

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。





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