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2019年9月6日 クリスティアン・バスケス指揮 トゥルク・フィルハーモニー の『マーラー 交響曲 第5番』 «ネット配信»


クリスティアン・バスケス 指揮
トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
ベネズエラの"エル・システマ"出身、注目の若手指揮者バスケス(Christian Vasquez, 35歳)が フィンランドのトゥルク・フィル(Turku Philharmonic Orchestra)を振ったマーラー5です。ちなみにトゥルク・フィルの現首席指揮者は北欧の怪人レイフ・セイゲルスタムですね。
同オケのオフィシャル・ウェブサイト"TFO Live"からの映像付き配信です。

▶️ こちら (賞味期限は短いでしょうから、お早めに)




マーラー 交響曲 第5番
(6.sep.2019 at Turku Concert Hall)

20190906ChristianVasquez_tpo-mahler5.jpg


第一部
葬送行進曲は落ち着いていますね。殊更な重厚はなく悠々としています。第一トリオでも適度な緊張に刺激のスパイスを入れてきますね。第二トリオは静的で哀愁の良い流れで、構成上も上手い感じです。第二楽章第一主題も切れ味良くシャープで、第二主題(一楽章二トリオ)もコントラストの良い哀愁感です。展開部は両主題、vcのスローパート、共にバランス良く表情作りされていますね再現部もクセのない堂々とした流れで続きます。落ち着きがあって姿勢の良い第一部です。

第二部
この楽章を代表するスケルツォ主題は優雅に、レントラー主題は緩やかに美しく、両者王道です。第三主題はオブリガートホルンも活躍して流れに締まりを付けています。vaのピチカート第一音が外しますがw 展開部から再現部で少々演奏が落ち着かなくなるのが残念です。

第三部
スロー静美なアダージェットで、最近はこの傾向が多いでしょうね。第五楽章提示部の第一・第二主題の絡みは締まりがありますね。コデッタでもその流れを継続します。展開部はややバランスを崩す事もありますが、山場は大きく作ります。再現部も似た流れですが、山場からラストは抑えたテンポ、そこからアッチェレランドです。この楽章後半に締まりが薄いのは残念です。
オーディエンスの反応はボチボチ、ブラボーは飛びませんね。


クセはないのですが、やや締まりに欠けるマーラー5です。トゥルク・フィルも頑張っていますが、第三楽章の間延び感や第五楽章のバランス崩れは残念です。興奮も避けていて、無個性的な印象に埋没しそうです。

隙のないくらい徹底的に仕上げるか、個性のスパイスを振るか、どちらかが欲しかった気がします。



CDではないので「マーラー第5番聴き比べ:175CD」にはアップしません。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





イアン・ボストリッジ 二回目の録音 シューベルト「冬の旅」ピアノは現代音楽家の トーマス・アデス


イアン・ボストリッジ Ian Bostridge
"冬の旅"に関する書籍も出していたり、同曲ツアーをしたり、ハンス・ツェンダー編曲オケ版も演じたりと、現代の名リートでスペシャリストの一人でしょうか。2枚目のリリースですね。

来日コンサートは過去二回、ブリテンの「戦争レクイエム」と「イリュミナシオン」に行きましたが、後者は良かった記憶があります。本年の「冬の旅」来日には行っていませんw

ピアノのトーマス・アデスも現代音楽をメインとするこのブログでは注目です。イギリス人現代音楽家で、過去インプレもしてあります。楽風も前衛ではなくブリテンの再来と言われていて、ピアニストとしても活躍しているので今回の起用も自然なのかもしれません。



冬の旅 Winterreise, Op.89 D911
今更の今更ですが、ストーリーは以下ですねw
シューベルト『冬の旅』は、川が凍る冬の寒さの中、①裕福な女性に振られた男性が、失恋で惨めな旅に向かう ②前半は元の恋人への未練 ③後半は死への旅路 ④最後は唐突なライアー弾きとの出会い

もう何十年も聴いていないと思います。印象に残るのは、クールな表現と寄り添うpfの「ディスカウ/ムーア(1971:DG)盤」、表情のあるメゾソプラノに色付けpfの「ファスベンダー /ライマン(1988:EMI)盤」ですね。






序曲となる"1. おやすみ"での印象は、ボストリッジのテノールに艶と抑揚表現がある事でしょうか。アデスのpfも淡々とした繊細さの中に緩やかなアゴーギクを感じますね。"2. 風見の旗"ではpfが対位的な立場を奏でる感じになりますね。歌詞に合った流れを作っている感じです。

"4. 氷結"では速めの流れに乗ってpfと気持ちの高ぶりを込めていますね。そして"5. 菩提樹"ではまずpfに気持ちが入って出て来ます。そこに思い出を語る様にテノールが続きます。甘美な優しさではありません。続く"6. 溢れる涙"も同じ流れを引き継いでいます。ここで歌詞に同期した感情表現を明確にしている事がはっきりします。

"8. 回想"は揺さぶりがとても強いです。"11. 春の夢"では美しい夢をメヌエットの様に表現し、現実をpf共に強烈に演じ、アゴーギクを交えたコントラストを付けています。"13. 郵便馬車"は軽妙にテンポを上げ、"14. 霜おく頭"ではスローに落として死を望むコントラスト付けが明確ですね。

"21. 宿屋"の墓場のシーンはスローで静、抑揚を緩やかに付けて鎮む気持ちをはっきりとさせています。ラストのpfは一般とは逆のクレシェンドですね。"22. 空元気"は予想通り、明るく明瞭感強い流れを作っています。ここまでで唯一明るさが歌われますね。
ラストの"24. 辻音楽師"では老人の回すライアーの音色を細い音色をpfが象徴的に奏で、テノールは状況を語る様に歌います。



淡々とした流れに秘める気持ちではなく、歌詞の内容に沿って気持ちを込めて抑揚強く歌う方向ですね。pfも単に寄り添うだけではなく、意図的な揺さぶりがありますね。
かなり色濃い「冬の旅」です。(最近はみんなこういう傾向ですか?!)

個人的には前者の表現の方が好みではありますが、基本的にはボストリッジの様な色付けをどこまでやるかでキャラクターが別れる曲ですから後は好みという事になるでしょうね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





シューベルト『冬の旅』:現代音楽に造詣が深い指揮者 ハンス・ツェンダー編 という変化球


ハンス・ツェンダー
(Hans Zender, 1936/11/22 -)
ドイツ人の指揮者で現代音楽家のツェンダー、やっぱり現代音楽の指揮に力量があり著名でしょう。このブログでも指揮者としてB.A.ツィンマーマンの曲を中心に数回インプレしていますが作編曲としては初めてです。

  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


冬の旅 Winterreise
誰でも知っている「菩提樹」が入るシューベルトの有名な独リートを、ツェンダーが管弦楽+テノールに編曲したヴァージョンです。数学的比率ノイズを使っていたり現代音楽にしていますが、そこはツェンダーなので驚く様な前衛ではありませんが。

[テノール] ユリアン・プレガルディエン (Julian Prégardien)
[演奏] ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団 (Deutsche Radio Philharmonie)
[指揮] ロベルト・ライマー (Robert Reimer)



シューベルト『冬の旅』は、川が凍る冬の寒さの中、①裕福な娘に振られた男が、失恋で惨めな旅に向かう ②前半は元の恋人への未練 ③後半は死への旅路 ④最後は唐突なライアー弾きとの出会い
という流れですが、詩の裏に潜む心理・真実は無粋なのでコメント出来ません。昔からお馴染みの曲で、頭で鳴っているのはフィッシャー・ディスカウとジェラルド・ムーア(pf)の1971年DG盤です。






"1. おやすみ"の入りはいきなりの執拗なノイズ系と反復で、原曲にありませんね。4分くらいで本来のpfの旋律から歌に入ります。そこは調性を大きく崩す事はありません。ただ強音側ディナーミクが大きく情感は激しいです。オケ・歌い、共に強烈にffとなり驚きます。一部シュプレッヒゲザング的にもなりますね。前衛的な入れ込みは少ないです。

強烈な表現のままあっと言う間に"5. 菩提樹"ですが、優しさはあってもバックのオケが煩わしく感じてしまいますね。この曲の持つ優しさは続かず、強烈な表情をここでも見せます。続く"6. 溢れる涙"でもシュプレッヒゲザング的な表現が現れます。

美しい"11. 春の夢"は原曲の印象を弦楽器で作ります。途中でシュプレッヒゲザングや炸裂のコントラストを作り面白い流れになっていますね。"13. 郵便馬車"はラッパの音を忠実に鳴らすのが可笑しいですね。旅人はパワフルです。

"18. 嵐の朝"は1'21"もあって、頗る元気です。墓場である"21. 宿屋"では落ち着いた流れから、ラストをもっと大きくクレシェンドにして"22. 空元気"の激しさに繋げると思いましたが。22.では僅かですが調性を崩していますね。ここだけです。
ラストの"24. 辻音楽師"はライアーの音色が物悲しく響きます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  テノールはお父さんのクリストフ・プレガルディエン(Christoph Prégardien)です。
  こちらの方が演奏(WDR交響楽団)も含めてCDより落ち着いた印象ですね。




オリジナルとはかけ離れた感情爆発的なオケ版の「冬の旅」です。ただ基本の調性は残されていて前衛性は低いですね。表現過多、全部が "22. 空元気" の様な「冬の旅」と言ったらわかっていただけるでしょうか。

どうせやるなら全編ノイズ系とシュプレッヒゲザングの独り舞台とか、原型を留めない程の前衛でやって欲しかったですね。

シューベルト「冬の旅」ファンの方に聴いていただきたいです。怒る? 呆れる? 笑っちゃう? 反応を教えてくださいねw



次回インプレはオリジナルのシューベルト「冬の旅」I.ボストリッジの新録音です。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





大野和士 / バルセロナ交響楽団 の「マーラー 交響曲 第5番」は…… 都響で聴きたいかも、ですね


大野和士 Kazushi Ono
Barcelona Symphony and Catalonia National Orchestra
2018-sept. rec.
大野さんが得意としそうなイメージですが、何故かあまりピンときませんね。録音は1996年に常任指揮者時代のザグレブ・フィルと残している様ですが。今回のリリースは2015年から音楽監督を務めるカタルーニャ国立バルセロナ響を振ったマーラー5です。(都響の音楽監督も同年からですね)
同楽団は二代前に大植英次さんが音楽監督(2006-2010)を務めていました。

マーラー 第5番 名盤珍盤 175CD 聴き比べ」にも追記予定です。






第一部
葬送行進曲は抑えを効かせて進み緩いアゴーギクで揺さぶりファンファーレを鳴らします。第一トリオの入りは不思議なリズム感を感じます。第二トリオでは繊細な哀愁からピークを奏でます。でも何かスッキリしません。
第二楽章第一主題は激しさそこそこ、第二主題で哀愁に落とします。展開部の第一主題や第二主題vcもどこか抜けの悪さがあります。再現部もテンポ設定にもっさり感がありますね。今ひとつスカッとしない第一部です。


第二部
スケルツォ主題はhrをメインに演奏の揃いが今ひとつに感じます。レントラー主題は弦楽器主体パートは普通ですが。続く主題変奏から第三主題も流れにまとまりが感じられません。展開部・再現部も同じですね。コーダも〆のhrが…


第三部
緩やかな暖色系の流れから山場も適度に、中間部は透明感ある流れを作ります。やや間延び感はありますが、クールで澄んだアダージェットですね。最終楽章、絡む第一・第二の二つの流れが落ち着きません。展開部から再現部も同様ですが山場は高らかに鳴らし挽回、コーダも大野さん好みに炸裂してアッチェレランドで駆け抜けました。最後の帳尻合わせは見事でした!



ラストは見事、でも演奏の見晴らしの良くないマーラー5です。流れにスカッとした抜けの良さがありません。指揮者のタクトにオケはいっぱいいっぱいの感じでした。ラストを上手く締めて印象挽回ですが。

こうなると、マーラーを得意とする都響との5番を大野さんに期待せずに要られませんね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





素晴らしきアレクサンドル・タローの世界、シャンソン歌手『バルバラ』へのトリビュート・アルバム


アレクサンドル・タロー
(Alexandre Tharaud, 1968/12/9 -)
日本でもお馴染みのフランス人ピアニストですね。個人的にはラヴェルのピアノ曲全集、まだインプレしていません、がお気に入りです。フランス印象派的な音は、まさにフランス音楽にピッタリです。
何故かフランス音楽はフランス人の演奏家・指揮者が、合う気がします。


Barbara
ピアニストであるA.タローがプロデュースした、伝説のフランスのシャンソン歌手・作詞家・作曲家バルバラ(Barbara, 1930/6/9 - 1997/11/25) 没後20年記念のトリビュート・アルバムですね。
多彩なゲスト(歌手・俳優・演奏)、そしてタローの編曲による情感豊かなアルバムです。タローのピアノやアコーディオン以外にも様々なパターンで聴かせてくれます。ルノー・カピュソン(vn)他の顔ぶれですが、個別表記はここでは割愛です。






CD 1 [ver. 唄と伴奏]
ドミニクAがピアノと弦楽四重奏をバックに歌う "2.Cet Enfant-la" のしっとりとした哀愁、"3.美しい9月" の ジョルダナの可愛い歌声と繊細なpfタッチ、ベースとアコーディオンをバックにジュリエットが歌う "4.私の恋人たち" の洒脱さ、表情豊かなバリエーションは歌手の個性と演奏のバリエーションを変化させてこその楽しさでしょう。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  "3.美しい9月"のレコーディングシーン(多分)でしょう。グッときます


ティム・ダップが歌う "8.ピエール" などは1970年代のフランス映画の様ですね。この洒脱さがクラシックも含めてフランス音楽の元にある様な気がします。


CD 2 [ver. インストルメント]
ジュリエット・ビノシュのしっとりとした唯一の語り "1.私の劇場" はフランス語がわからないのが残念です。タローのpfソロが楽しめる三曲 "2.Valse de Frantz", "6.もう何もない", "8.私は恋を殺した" はやっぱり素晴らしいですね。そしてタローのアコーディオンとクラリネットの合奏曲。いずれもシックな音色の構成でCD1とはまた違った味わいが楽しめます。タロー色が濃厚ですね。



これがシャンソンかどうか、これならバルバラ本人で聴いた方が、と言った事が脳裏に浮かぶ人がいるかもしれません。
しかし、シャンソンをベースにアルバム全体を通して伝わるフランス音楽の洒脱さが嬉しいですね。常に優しく寄り添う様なタローのpf。そのpfやアコーディオンと唄のセットがもっと多くても良かった気がします。

上質なBGMとしても、部屋でゆっくりと聴くにも、素晴らしい一枚でオススメです!!

フランス音楽、というよりもアレクサンドル・タローの世界かもしれませんね。



テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽





ロマン派の香り付けした古典、シャルル・グノー(Charles Gounod)の『交響曲集:第一番・第二番』


シャルル・グノー
(Charles Gounod, 1818/6/17 - 1893/10/18)
ロマン派時代のフランス人作曲家で、このブログで聴くギリギリの年代です。年代的にはメンデルスゾーンやシューマンの約10年後、ワーグナーとブルックナーの間くらいで、仏音楽ですとフランクが年代がかぶります。古典派からロマン派に軸足がシフトする時代ですね。
仏現代音楽の源流ですと、この先約半世紀後のドビュッシーやサティを待つわけです。


SYMPHONIES
交響曲は二曲だけ完成させていますね。いずれも四楽章の古典をベースにしているので個人的なハードルはかなり高いです。とは言え、美しい流れはもしかしたら仏印象派に繋がるものがあるかもしれない、などと考えながら聴いてみたいと思います。

指揮は仏近代を得意とするヤン・パスカル・トルトゥリエ(Yan Pascal Tortelier)、そしてトルトゥリエが本年6月まで主席指揮を務めたアイスランド交響楽団ですね。(録音時は主席指揮者です)






交響曲第1番 ニ長調 (1855年)
I.Allegro moltoは軽妙軽快なテンポで処々に いかにもバロックから古典ならではの旋律も。II.Allegretto moderatoは文字通りアレグレットで、前楽章をモチーフに少し緩やかにした感じですね。III.Scherzo. Non troppo prestoはメヌエットで舞踏曲、スケルツォではありませんね。IV.Finale. Adagioも緩急を付けていますが基本は変化の少ない類型主題・動機と反復旋律基本ですから9'が長く感じますw
ロマン派ではなくバロックか古典ですね。時代が半世紀逆行しているみたいです。


交響曲第2番 変ホ長調 (1856年)
第一番と構成する主題や動機が多少異なるだけで、古典的な流れは変わりません。ただ、その中に明確なテンポの変化と主題の旋律に違いが感じられて、ロマン派的な印象が見出せますね。古典ながら第1番にあったバロック風味がロマン派風味に入替わった印象でしょうか。



バロック風古典の第1番、ロマン派風古典の第2番です。いずれものんびりと退屈優雅で、ベルリオーズより15年も後の音楽家の作とはとても思えませんね。
このブログの守備範囲ではありませんでした。

逆に言えば、古典好きな方がロマン派の香り付けをした曲を楽しむには第2番は良い選択かもしれません。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ウィルヘルミナ・スミスのチェロで聴く、E.P.サロネンとK.サーリアホの『無伴奏チェロのための作品集』


Works for Solo Cello (Wilhelmina Smith, vc)
フィンランドの音楽家二人、指揮者の方が著名なサロネンと女性現代音楽家サーリアホのチェロ独奏曲集ですね。いつも書いていますが、二人はシベリウス音楽院時代にM.リンドベルイと三人でエクスペリメンタリズムの音楽集団"トイミー, Toimii"で活動を共にしていましたね。そんな二人の1980年代から2010年の作品四曲づつが並びます。

あまり関係ありませんが、実際に見た目ですと小柄なサロネンと大柄なサーリアホの印象ですねw

▶️ 北欧現代音楽CD(作曲家別)一覧

チェロのウィルヘルミナ・スミス(Wilhelmina Smith)は知見がありません。サロネンの招聘でロサンジェルス・フィルの首席客演奏者を受けているそうです。







エサ=ペッカ・サロネン (Esa-Pekka Salonen, 1958-)
指揮者としては日本でもお馴染みのサロネンですね。個人的には好きな指揮者です。作曲はF.ドナトーニ・他に師事して、今は指揮活動の中で作曲も進めているようですね。チェロ曲も得意としていますね。

YTA III (1986年)
 暴力的なボウイングに、特殊奏法ではありませんがノイズ的なサウンドでもあります。もちろん無調で前衛的ですが、よく聴くと反復・変奏を基本としているのがわかりますね。チェリストのコンサートにも向いていそうな感じです。

knock, breathe, shine (2010年)
 "knock"はピチカート主体で面白い流れを作っています。ここでも旋律は存在して、より調性を強く感じるようになります。
"breathe"は陰性な流れと民族音楽和声の融合の様な流れが面白いスローな楽曲です。
"shine"は和声は"breathe"の延長線上にあって、少しグリッサンドで抑揚を付けた感じです。
時代の繁栄でしょうか、無調ベース調性回帰的な多様性のチェロ三部作ですね。面白いです。

Sarabande per un coyote (2010年)
 "knock"の様なピチカートを用いた楽曲で、ここでも基本は旋律の反復と変奏です。不協和音ベースの調性的な和声と言ったらわかっていただけるでしょうか。

Chiacona GIUSEPPE COLOMBI (1635-1694年)
 バロック時代のイタリア人音楽家ジュゼッペ・コロンビの"シャコンヌ"を基にした楽曲です。2'46"のそんな楽曲ですw




カイヤ・サーリアホ (Kaija Saariaho, 1952-)
北欧系の現代音楽家としては珍しく、欧エクスペリメンタリズムの楽風を持っていますね。IRCAMでも習いエレクトロニクスにも精通しています。何回も紹介済みなのでこのくらいで。2014年には来日もしています。

Dreaming Chaconne (2010年)
 緊張感のある静音と挟まれる無音、神経質なvcの音色。シャコンヌを基本とした和声を緩やかに感じさせるのも流石です。3'強ですが、もっと長くても良いのでは。

Petals (1988年)
 細かいトリル・トレモロの繊細さは前曲に似ていますが、特殊奏法を入れてノイズ的展開なのが1980年代を感じさせるかもしれませんね。ポストセリエルからの特殊奏法全盛期の印象でしょうか。この二曲でサーリアホの変化(時代の変化)が感じられますね。

Sept papillons (2000年)
 ノイズ系で澄んだ音色、トリル・トレモロの反復、グリッサンドとノイズ、そんな組合せの7パートの楽曲です。いずれも静的繊細な流れのサーリアホらしい楽曲ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Oliver Herbertによるcelloですが、処々かなり濃厚な演奏になっています。


Spins and Spells (1997年)
 ノイズ色と強弱コントラストが強い流れになっています。基本的にはサーリアホらしい構成だと思いますが、後年はより抑揚を抑えた方向に指向しているのがわかって面白いですね。




反復・変奏を基本としたサロネン、繊細な音色で前衛の時代の流れを感じさせるサーリアホ、と言った二人の個性。いずれも1980年代の前衛色、2010年の多様性色が感じられる興味深いカップリングですね。

同じフィンランドのサロネンとサーリアホ、そして時代の流れ。二つのコントラストをチェロで楽しめるアルバムになっていますね。


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個性を感じた二つの演奏:2019年9月4日 大野和士/都響『ベルク:ある天使の思い出に | ブルックナー:交響曲第9番』at サントリーホール


"若杉弘没後10年記念"として行われる都響定期885回。もう10年になるんですねぇ…
なんと約1ヶ月ぶりのコンサート、サントリーホールへ行ってきました。何故か足が徐々に遠のきます…

20190904suntoryhall.jpg


今回はコンサート定番二曲。外れの少ないセットだと思いますが、皆さん好みを持っていらっしゃる両曲でしょう。

ちなみに "ベルク:ある天使の思い出に" はクレーメルとツェトマイアーの聴き比べファウスト他5CD聴き比べも過去にインプレしています。(今回はツェトマイアーを聴いて来ました)





ヴァイオリン協奏曲《ある天使の思い出に》
アルバン・ベルク (Alban Berg, 1885-1935)

大野/都響は第一楽章を調性感のある明瞭な流れにして来ました。本当は深淵であって欲しかったですが。第二楽章I.Allegroでガツっとメリハリを付けるかと思いきや、そこそこに納めた感じでしたね。

問題はヴェロニカ・エーベルレ(Veronika Eberle)のvnが好みでない事でしたねェ。暖色系で明瞭な鳴りの第一楽章、この時点で好みとは違うのはわかりました。第二楽章I.Allegroはグリグリのテク見せつけて "大向こうを唸らせ" ました。この曲で?!

個人的には無調ベースの幽玄さ優しさが "ある天使=マノン" ですが、逆の暑苦しい感じで残念でした。




交響曲 第九番 ニ短調 WAB109(ノヴァーク版)
アントン・ブルックナー (Anton Bruckner, 1824-1896)

■ 第一楽章
第一主題の動機群は速めの緊迫感を作って第七動機の山場を迎えます。第二主題は優しく美しく心穏やか、とは行かず続く第三主題にかけて予想以上に濃厚な流れを作りましたね。落ち着きはありませんが個性的です。
展開部の第一主題変奏は第七動機が一層激しさを増していました。
再現部の第二・三主題も速く濃い流れを維持して、コーダはラスト炸裂でした。
■ 第二楽章
ここでも主要主題は速め、そこから強烈なトゥッティの動機で爆裂です。続くobからの動機も濃く、トリオも一般的な軽快とは言い難い濃厚さでしたね。"全体が速め音圧高め" の一二楽章は個性的でした。
■ 第三楽章
残念だったのはこの楽章でした。テンポも普通になってメリハリに欠けた感じです。特に第一主題入りのトリスタン和声はやや暑苦しく残念でした。「生への決別」は激しさ炸裂で良かったのですが、それでなくても構成の分かりづらい楽章がフラットに長く感じましたね。コーダは落ち着かせたのですが、ラストはやや尻切れトンボ風に感じました。

第三楽章は別として、第一第二楽章は速くて炸裂感の高い、一癖ある面白い流れでしたね。




前半は好みではなかったと言う事で...

ブルックナーは、ヴァントのスロー低重心と全く方向性の異なる、速めで腰の高い荒波の様で面白かったですね。全体完成度を上げて第三楽章もその流れに合っていたら興味深いブルックナー9だったのではないでしょうか。

大野さんの完成形を聴いてみたいですね。


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アンネ=ゾフィー・ムターのヴァイオリンで聴く ジョン・ウィリアムズの映画音楽 傑作選『アクロス・ザ・スターズ』


ジョン・ウィリアムズ
(John Williams, 1932/2/8 - )
言わずと知れた米映画音楽界のスーパー・ビッグネームですね。その馴染みの良い旋律と、オケに映える編曲はまさに最高のメロディーメイカーですね。このブログでは初めてのインプレです。


アクロス・ザ・スターズ
ジョン・ウィリアムズの著名映画作品の主題、というよりも主旋律、をムターのヴァイオリンで聴かせる訳ですね。カデンツァやオケが聴かせるパートは無く、一曲あたり3〜6分ですから まさにポピュラー音楽のアルバムです。

近年のグラモフォンの"売れるCD"に乗ってしまいましたが、ムターは現代音楽も含めて全方位演奏なので聴いてみたくなりました。






どの曲もムターは弾きっぱなしです。昔に比べたら抑揚は薄らいだとはいえ、そこはムターですから十二分に表現は強くvnの音色は艶やかです。

「2.ヨーダのテーマ(スター・ウォーズ)」や「8. サブリナのテーマ(サブリナ)」、「10.ルークとレイア(スター・ウォーズ)」といったバラード仕立てが繊細な演奏で聴きやすい気がしますね。「5.ドニーブルック・フェア(遥かなる大地へ)」の表情豊かな編曲もオケとのマッチが生きています。飽きの来ない様「6.さゆりのテーマ(SAYURI)」の様な奇妙な東洋和声も入ってバランスも取っていますね。
当然ながら「3.ヘドウィグのテーマ(ハリー・ポッター)」の様に技巧を魅せる編曲もあります。この曲がベストだと思います。次はエモーショナルさが光る「11.すてきな貴方(シンデレラ・リバティー)」でしょうか。

とは言え、どの曲の何処を切ってもvn金太郎飴。ムターです (笑)

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ムターのLive映像です。(M.ホーネック指揮、シュターツカペレ・ベルリン)




ムターのヴァイオリンに対してオケはバックと言う編曲になっていますね。協奏曲ではありません。やっぱり何を弾いてもムターはムターと言う印象でしょうか。

ムターファンなら聴いて惜しくない一枚ですね。このアルバムでコンサートをやってもきっと受けるでしょう。


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アイスランドの現代音楽家 ヒルドゥール・グドナドッティル(Hildur Gudnadottir)の『チェルノブイリ』を聴く


ヒルドゥール・グドナドッティル
(Hildur Guðnadóttir, 1982/9/4 - )
名前から分かる様にアイスランドの若手女性現代音楽家ですね。(ドッティルはアイスランド独特の女性の名前) レイキャビク音楽アカデミーからドイツでも学んでいます。

チェロ奏者としても活動していて、"Pan Sonic"というグループで録音も残しています。また、前衛ポップミュージックでの音楽家でもありますね。作曲は合唱曲やフィルム・ミュージックで、アイスランド響や同国立劇場から委嘱されています。ヨハン・ヨハンソンや坂本龍一さんとのコラボもある様で、そこで楽風が想像出来たりする感じですね。

  ▶️ 北欧現代音楽CD(作曲家別)一覧


CHERNOBYL
米テレビ局HBOの全5話のドラマ「チェルノブイリ」のサウンドトラックですね。もちろん旧ソ連の原発事故をテーマにしています。▶️ こちら

今回は音楽を聴くのでストーリーは別ですね。グドナドッティルの'標題音楽'として楽しむつもりです。構成は13曲ですが、個別のインプレではなく全体像で聴いてみようと思います。






旋律感の薄いノイズ系の音楽ですね。エレクトロニクス、単音反復、ヴォーカリーズ、空間音響、ドローン、時に宗教音楽風と言ったテクニカルですね。
一部で少し荒れた音も出しますが、テンポは通してスロー一辺倒、色の暗い、鎮んだ、哀しみ、と言った雰囲気で表情変化は薄いです。気分が沈んでいる時にBGMでかけておくと、馴染む様な…

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  何と全曲聴けちゃいます。




アイスランドの現代音楽らしい暗い空間を印象付けるフィルム・ミュージックです。ノイズ系の暗いアンビエントでしょう。言わずとチェルノブイリの様な話にはピッタリかと思います。

すでにTouchレーベルから数枚のCDがリリースされている様なので、他の作品も聴いてみたいですね。


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kokoton

by kokoton
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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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