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アルベルト・ポサダス(Alberto Posadas)の「Glossopoeia・他」を聴く


アルベルト・ポサダス
(Alberto Posadas, 1967 - )
マドリッドの音楽院で習ったスペインの現代音楽家です。二つの方向性があり、一つは数学をベースとしてフラクタル理論やトポロジー変換の様な変移性の技法を用いている事。もう一つはエレクトロアコースティックや空間音響系音楽で、IRCAMでも電子音楽を学んでいます。
この経歴だけで欧州エクスペリメンタリズムと見事にわかりますね。


Oscuro abismo de llanto y de ternura, Nebmaat, Cripsis, Glossopoeia
室内楽集になります。いずれもIRCAM絡みで、演奏もアンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble intercontemporain)とういうのが特徴的でしょうね。一番の問題は実は4曲目です。構成から見て"インスタレーション系"である事に違いありません。さてCDでどこまで味わえるのか…
それ以外は指揮者が存在して、フランソワ=グザヴィエ・ロト(François-Xavier Roth)ですね。興味深いでしょ!!






Oscuro abismo de llanto y de ternura (2005) for ensemble
29人という大編成の室内楽曲で、ポサダスとアンテルコンタンポランの初共演作だそうです。空の中に現れるノイズ、時に静的であり時にクラスター的、で無調の混沌です。明らかな特殊奏法は感じられませんが、ストレッチされたロングトーンにトリル・トレモロ、グリッサンドが絡み、打楽器がポリリズムを刻みます。楽器編成が多彩なので表情も多彩なカオスですね。無調混沌の緊張感が空間に蠢く空間音響系のサウンドです。


Nebmaat (2008) for quintet
バスクラ、チェロ、ヴァイオリン、ソプラノサックス、ヴィオラという五重奏曲です。少しテンポ設定が速めで楽器編成が少なくなったのでコンパクトな感じになっています。ロングトーンの共鳴を感じさせる静的パートが印象的で、そこにトリル等の速い流れが時折挟まれています。
エジプトにインスパイアされたそうですが、さて??


Cripsis (2007) for ensemble
15人編成の室内楽で、緊張感が漲ります。それは明確なポリフォニー感が設定されているからでしょう。もちろんロングトーンの静音パートではいつもの空間系ですが、特徴的なのは音の展開を持った楽器同士の無調ポリフォニーですね。これが一番面白いかもしれません。


Glossopoeia (2009) for 3 dancers, 4 musicians, video and electronics
バスクラ、パーカッション、ヴィオラ、チェロの四重奏曲+エレクトロニクスですが、大事な"ダンサー"と"ビデオ"がCDでは味わえません。例によってロングトーンとトリル・トレモロの組合せですが、刺激性が強く感じられます。パルス的な音使いがされているからでしょうか。トリル・トレモロは"ダンス"をイマジネートさせるものもありますが、なにぶん視覚反映はありませんから…
この曲が表情変化は一番大きい事ですが、確実に言えるのは 本来ダンサーとビデオ映像が使われるインスタレーション現代音楽ですからCDでは本当の姿がわからない事でしょう。

 ★試しに動画で観てみますか?
  エレクトロニクスの印象がやや異なり、一部カットがあります。
  振付はRichard Siegalになりますね。




ロングトーンとトリル・トレモロを基調とした無調混沌の空間音響系音楽ですね。今の時代の欧前衛の一つの主流でしょう。

なおかつ約10年前にインスタレーションとしてCD化されていた事実も素晴らしいですね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2019年1月10日 コパチンスカヤ/大野和士/都響 の『シェーンベルク : ヴァイオリン協奏曲』at サントリーホール

本年の初コンサートは待望のパトリツィア・コパチンスカヤの現代コンチェルトを楽しみに六本木まで行ってきました。

20190110SuntoryHall.jpg


この曲がコパチンスカヤにぴったりな事はわかっていましたから、名盤を含む事前の4CD聴き比べもして準備OKですね。もちろんチケットは完売だったそうです。





ヴァイオリン協奏曲 Op. 36
アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874-1951)

第一楽章
第一パートまずは主要主題を幽玄美で入ると主音列を切れ味で繋げました。そこからが十二音技法の展開なのですがわかりませんね。流れに切れ味と幽玄さはあるのですが、コパチンスカヤらしい大胆さが感じられません。小刻みなテンポで変奏を繰り広げる第二パートでも変化は少なめ、技巧的で神経質な音色が響きます。第三パートのカデンツァは静的スローをベースですが、期待した激しい切れ味が今ひとつ出て来ません。
第二楽章
第一楽章の残映の様な楽章になりました。入りのソロの第一楽章の主音列回帰は神経質で鬱な音色、トリオでは流麗に表情変化はあるものの音が前に出て来ません。都響にパワーがあったにしても、です。
第三楽章
流れが変わったのは、ここからでした。旋律感のあるvnの主要主題は明らかに元気が出てキレキレで再現するたびに表情を変化させましたね。音圧も上がり、コパチンスカヤらしさが動きにも現れました。
カデンツァは繊細さも合わせて奏でてくれましたが、遠慮せずに全面キレキレの力感でも良かったかと思いました。ラストはオケもパワープレイで応えてくれましたね。
期待したのは、大胆で奔放な炸裂するvn。そうではありませんでたね。繊細・幽玄に軸足、と言えばいいのでしょうか。第三楽章の元気さが始めから欲しかった、というのが正直な処です。
都響が元気だったので、余計にそう感じたのかもしれませんね。(パワープレイがあれば良いのか?というのも今の大野/都響には感じる事もあるわけですが…)



白のドレスに裸足のコパチンスカヤ、練習不足という事ではないでしょうがコンチェルトなのにスコアを準備していましたね。(事前に置かれたスコアと登場時自ら持ち込んだスコア)
個人的コパチンスカヤの期待値が高過ぎたのでしょう、彼女らしい大胆さが今ひとつ薄味に感じてしまいました。

予習で聴き込んだお気に入りのエディンガー(vn)/マデルナ盤が一番の原因かも⁈w


体調不良をおして行ったため、後半(ブルックナー/交響曲第6番)はエネルギーが持ちませんでした。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

米現代音楽 Bang On A Can の『The Carbon Copy Building』を聴く


Michael Gordon, David Lang, Julia Wolfe
(マイケル・ゴードン、デイヴィッド・ラング、ジュリア・ウルフ)
CDのクレジットは"Bang On A Can"(以下BOAC)ではなく創設メンバー三人になっています。でも、BOACのHPにも載っていますし、レーベルも"Cantaloupe"ですから事実上BOACのアルバムでしょう。
ただ演奏がBOAC All-Starsではないからなのでしょう。演奏はクァルテットで、John Benthal(E-Guitar), David Cossin(perc.), Martin Goldray(Keyboards), Bohdan Hilash(cl)になります。(D.Cossinは唯一BOAC All-Starsメンバーですが)

このブログ一押しの米現代音楽[組織]BOACについては数々インプレしているので、過去記事を参照下さいね ▶️ 例えば 'こちら'

♬ 現代音楽CD(作曲家別)一覧 にも入っています



The Carbon Copy Building (2006年)
米N.Y.のcomic-strip(新聞等掲載の漫画)作家ベン・カッチャー(Ben Katchor)脚本と絵による"コミック・ブック・オペラ (Comic Book Opera)"です。

『1929年に表通りに出来たビル"The Palatine"、それを元に20ブロック離れた路地に建てられたカーボン・コピーのビル"The Palaver"、そこに関わる人達(経営者、ビル管理人、従事する人々、他)の不満や葛藤の話です。69年後、両方のビルは依然として存在していましたが、華やかな"The Palatine"と寂れた"The Palaver"の差は歴然。後者では建物や管理者、テナントの軋轢が増しています。
そんな中、リニュアルを企てるEmetine(The Ichor Foundation社長)は思わぬ訪問客を迎え高級レストランで誕生日の満ち足りた時を過ごしました。デザートのチェリー・チーズケーキは配慮で届けられる事に。その届け先と添えられた言葉は…』

構成は全16シーン15曲になりますね。







①Opening Slide Lecture ②*The Palatine Building ③Early Birds ④Chewing Gum ⑤At Dusk ⑥Where Is That Boy ⑦City Walk ⑧Panel Review ⑨I Blame The Tenants ⑩Emetine And The Palaver Manager ⑪Delivery Boy Biography ⑫August 13th ⑬Cherry Cheesecake ⑭Funeral March Of The Unfinished Desserts ⑮Closing Slide Lecture

音楽
elec-ギター, パーカッション、キーボード、クラリネット、という楽器構成を生かした"いかにもBOAC"らしい米現代音楽ですね。というわけで、基本はミニマルになります。不安定な不協和音を交えたり、ジャズの風合いにしたり、バラード風と曲ごとの表情変化は豊かです。でも個々の曲は良い意味でフラット、全体としての完成度を高めていますね。
個性を見せるのは②*のポップベース曲のロック、そして特徴的無調のポリフォニーで歌も一連となった⑤、無調歌曲⑩でしょうね。
* ②だけがM. Gordon作との情報もありますが…



まず個性的に聴こえるのは、歌詞の一つ一つの英単語を明瞭に発音している事でしょう。それによって感情表現は完全に抑えられて演奏同様にvoice楽器の様です。一般的なオペラの様に歌手が際立つ主役という感じではありません。
楽曲としては⑤の無調ポリフォニーの歌は斬新さと難しさを感じさせますね。


ステージ
 ★まずはYouTubeで観てみる?
  "シーン9 楽曲⑧"になります ("Scene8"は記述ミスですね)


ステージにはカッチャーの画像がプロジェクション・マッピングされて、動きは最小限、歌い方も抑揚を抑えている事がわかりますね。



抑えた演技に曲も特にオペラらしさはなくBOACサウンド、舞台にはPMでカッチャーの漫画が写さ出されます。オペラですがインスタレーション現代音楽という見方も出来るでしょう。

TheCarbonCopyBuilding.jpg

ジャケットは変則サイズ書籍風で画像にText入り、CD面は漫画だけで何の表記もないとう面白さです。思い出してはページをめくりながら絵と会話を楽しめる おすすめの一枚です。


ストーリーと歌詞がわからないと楽しさは半減以下になってしまいます。中には歌詞などわからなくても音楽だけで十分楽しめるという方もいらっしゃる様ですが、不器用な自分には難しいです。^^;





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

アンナ・ソルヴァルドスドッティル(Anna Thorvaldsdottir) の室内楽「AEQUA」を聴く


アンナ・ソルヴァルドスドッティル
(Anna Thorvaldsdottir, 1977/7/11 - )
このブログではおなじみでおすすめのアイスランド人女性現代音楽家のA.ソルヴァルドスドッティル(Anna Sigríður Þorvaldsdóttir)です。若手と思っていましたが、今や中堅になりましたねぇ。
UCLAサンディエゴ(UCSD)で習い博士号(Ph.D)を取得し、米国(Lincoln Center's Mostly Mozart Festival 等)・欧州(ISCM World Music Days 他)を活躍の場としています。2015年にはNew York Philharmonic's Kravis Emerging Composerにも選ばれていますね。

作風は暗く陰湿なドローンも含む空間音響系で、特殊奏法もその方向で使われています。


AEQUA
室内楽集になりますね。本人曰く、楽曲は自然からのインスパイアであり、構築物全体とその構成パートの対比があるそうです。というわけで?ソロ曲から編成の大きなチャンバー・ミュージックのコントラストが付けられていますね。

演奏は米現代音楽アンサンブルの"インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル(International Contemporary Ensemble)"+α になります。






Scape (2011), for piano
ピアノ・ソロ曲です。特殊奏法も含めて静的空間に音が分散します。低音の単音は残響音を生かしているのも特徴的ですね。暗い海に彷徨う深海魚の様です。ラストは電子ノイズが残ります。


Spectra (2017), for violin, viola & cello
弦楽三重奏曲です。民族和声を微かに感じる調性感の薄い陰湿スローの緩徐曲です。旋律があるので余計に鬱な雰囲気が伝わりますね。中盤ではテンポを上げて特殊奏法も交え無調の音世界に入ります。全体構成はソナタ的で美しさも感じますね。ここでも最後にノイズを残します。


Aequilibria (2014), for large chamber ensemble
上記"Spectra"の気配を残しながら、年代は逆ですが、アンサンブル曲にした様な気配です。スローに渦巻く暗がりの様な空間音響系になり、時折その中に光が差し込みます。宇宙空間の様な曲調で、ドローンになるでしょうか。


Sequences (2016), for bass flute, bass clarinet, baritone saxophone & contrabassoon
管楽アンサンブル作品ですね。特殊奏法を用いた幽玄な楽曲です。基本は暗さですが、低音反復が入って陶酔的な流れを感じますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Illumine (2016), for 3 violins, 2 violas, 2 cellos & 1 double bass
弦楽アンサンブルです。前の"Sequences"に比べると出し入れの表情変化があります。とは言え刺激的な流れではなく、あくまでスローの中に色を添える感じですね。


Reflections (2016), for violin, viola & cello
いかにも的なグリッサンドが使われ、静的空間にチョロチョロと小生物が出現するかの様です。少々古臭さを感じるでしょうか。


Fields (2016), for bass clarinet, percussion, piano, electric guitar, cello & double bass
楽器構成が興味深いアンサンブル曲で、旋律が存在して暗く美しい感情が現れています。それまでの曲にも美しさは顔を覗かせていましたが、ここでは大きくフィーチャーされていますね。調性との多様性は今の現代音楽の主流をなしていますから、一番今の時代らしいと言って良いかもしれませんね。楽器構成も生きています。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



もちろん無調前衛で、全体を通して暗くスロー、刺激を回避した流れです。以前よりも曲調の固定化が強まっている感じがしますね。ラストに特徴付けを残すのも目立ちます。

聴きやすい傾向にあると思いますが、この先A. ソルヴァルドスドッティルがどの様な方向へ向かうのか興味は尽きませんね。



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ジョエル・グラール(Joël Grare) のパーカッションアルバム『雪に隠れた足跡』を聴く


ジョエル・グラール
(Joël Grare, 1961 - )
フランス人のパーカッショニストで現代音楽家のグラール、期待値の高いアルファ・レーベルからソロ第三弾になりますね。
1900年代初頭のフランス音楽や、シルクロード、ロシア民族音楽、そしてハープシコードの古楽といった方向性を持っています。その後世界を眺望する様になり、各民族打楽器を基調とするパーカッション曲を展開する様になりましたね。


Des Pas Sous La Neige
雪に隠れた足跡
今回はその打楽器群を生かすアルバムにになっていて、タイトル曲を含めた本人の15楽曲以外にバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」より第1.2.3番も使われた小曲集になります。

使われている打楽器は以下ですね。
クラヴィクロシュ(鍵盤状の鐘), サンツァ(アフリカの音階を持つ打楽器), カウベル, トゥパン(ブルガリアの太鼓), トロンピキ, チェンバロ, 和太鼓, ポジティヴ・オルガン(小型パイプオルガン)






まずは一曲目のタイトル曲、美しい鐘の音色とその響き・共鳴の音楽です。曲調は静的で反復のミニマル系ですね。そう言われると皆さん頭に浮かぶ音楽があるのではないでしょうか。そうA.ペルトに似ているというのが第一印象です。
とは言え すぐに違いを感じられて、パーカッショニスト作品らしい陶酔的なリズムも太鼓系打楽器で現れたり、フュージョン風サウンドやドローン系も展開されます。
ベースはアンビエント系ミニマルで括れるのではないでしょうか。その中で色々な表情を見せてくれますが、和声は調性から逃れる事が無いのが残念ですね。唯一調性感の薄さを見せたのは11曲目「Cloches Vespérales (À Emmanuel Guibert)」ですね。
 バルトークの三曲もクラヴィクロシュ(第1番), ポジティヴ・オルガン(第2番), チェンバロ(第3番)を使っていますが、バルトークらしい神秘的民族和声がアンビエント色に薄まっている感じです。第3番に良さが残されているでしょうか。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  アルファ・レーベルのオフィシャルPVです




基本はポスト・ミニマルのアンビエント色合いでしょう。表情(曲調)は豊かですが、心地よい打楽器BGMと言った風合いですね。

斬新さは感じられませんが…



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ユジャ・ワン のピアノ・ソロ Live『ベルリン・リサイタル』を聴く


Yuja Wang
The Berlin Recital
ユジャ・ワンというと技巧的で派手さのステージ向きという印象です。コンサートで観たのは既に6年前のM.T.トーマス/S.F.響と、少々古い印象になってしまっていますね。
その後もドゥダメル/シモン・ボリバルとの共演盤のラフマニノフとプロコフィエフのコンチェルトしか記憶にありません。というわけで評判の良かった北米・欧州ツアーのLiveが出たので久しぶりに聴いてみました。
国内ではゲルギエフ/ミュンヘン管との来日にぶつけたCD発売でもあったわけですが…







セルゲイ・ラフマニノフ
(Sergei Rachmaninov, 1873-1943)
絵画的練習曲《音の絵》は作品番号33と39、それぞれ9曲構成の中から選曲されています。(33/4は欠番)

前奏曲 Op.23/5
 ロシア民族和声の強烈な技巧系有名曲ですが、どちらかというと表情付けを強くした演奏になりますね。これ見よがしに強音のテクをひけらかす事を避けている感じです。余裕を感じる演奏ですね。


絵画的練習曲《音の絵》 Op.39/1, Op.33/3
 "Op.39/1"は超絶技巧曲です。速いアルペジオでディナーミクとアゴーギクを使っていますが、ここでも落ち着きがあって曲に表情を付けている感じです。押し出しの強い前半と後半も抑え気味です。
一方"Op.33/3"は叙情的な緩徐曲で、ここではエモーショナルなスロー側アゴーギクが映える演奏になります。以前のユジャ・ワンとは印象が異なり、この情感が伝わる演奏は悪くありません


前奏曲 Op.32/10
 ここでも澄んだ透明感ある音色を弾きますね。緩徐曲の表現力、バランスの良いアゴーギクとディナーミク、が見事に発揮されているのを感じます。美しい演奏になっています。




アレクサンドル・スクリャービン
(Alexander Scriabin, 1872-1915)
スクリャービンといえばピアノ曲で、このブログでも多くインプレしています。第5番以降の過渡期から無調への時代が好みですが、このピアノ・ソナタ 第10番は「トリルソナタ」と呼ばれてその名の通りの特徴ですね。単一楽章でソナタ形式になっています。

ピアノ・ソナタ 第10番 Op.70
 幽玄さはスクリャービンで、ここでも出し入れをうまく使っています。淡々とではなく、静的透明感ながら表現力は強めでしょう。テンポの揺らぎがうまいですね。トリルが少し硬く感じるパートもありますが…




ジェルジュ・リゲティ
(György Ligeti, 1923-2006)
ハンガリーの現代音楽家G.リゲティの後期を代表するピアノ・エチュードですね。1985-2001年にかけて作られた全18曲から3曲をピックアップしています。リゲティが亡くなって12年とは早いものです。

ピアノのための練習曲集 第3番, 第9番, 第1番
 「妨げられた打鍵:第3番」「眩暈:第9番」「無秩序:第1番」共にもトリル系のミニマル風な速弾きで、ともするとフラットになりがちですが、曲により打鍵の変化を付けています。第3番はエモーショナルに最後の第1番は速く強健的にといった色付けですね。うまい構成感で聴かせてくれます




セルゲイ・プロコフィエフ
(Sergei Prokofiev, 1891-1953)
熟年期に書かれた 通称「戦争ソナタ」の三作目ですね。ユジャ・ワンですと、一つ前の派手な第7番を選ぶかと思いました。

ピアノ・ソナタ 第8番 Op.84
 調性の妖しさを生かす様な幽玄でミステリアスなパートの中に得意の強鍵が交錯する第一楽章、浮遊感のある微妙な調性感の主題をソフトな優しさで奏でる第二楽章、速い流れをユジャ・ワンらしいシャープで歯切れの良さで突き進む第三楽章です。
最後に現れたこの最終楽章の弾きが本来のユジャ・ワンでしょうね、やっぱり。




緩徐曲の美しさや幽玄さを中心に持ってきたピアノ曲集で、ユジャ・ワンの印象とは一味違ったエモーショナルな表現を魅せてくれるアルバムですね。
とは言え、ベスト・トラックは最後のプロコフィエフの第三楽章の元気さになってしまいます。

そうなると気になるのはスクリャービンとプロコフィエフ(第一楽章)で、幽玄さの中に処々ユジャ・ワン本来の硬く強鍵的な表現に没入するパートがミスマッチ風に感じられる気もします。

ジャケット写真を見ると、ステージ衣装は相変わらず派手ですねw





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg)『ヴァイオリン協奏曲 Op.36』4CD聴き比べ:名盤がありますね


アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schoenberg, 1874-1951)
言わずと知れたシェーンベルク、初期前衛時代と合わせてちょっとだけおさらいです。
後期ロマン派の最終期とも言える時期の傑作から始まり、1910年くらいに前衛の原点"無調"作品を世に送りました。そして"無調"に新しい音楽理論を当てはめた"十二音技法"を確立したのが1920年くらいなわけですね。
ただシェーンベルクは無調ですが調性に近い楽風を保持する様になり、1934年の渡米で更に調性回帰的になっています。
音楽理論的な前衛を推し進めたのは弟子で新ウィーン楽派の一人アントン・ヴェーベルンのトータル・セリエリズムであり、その流れを主流とした「ダルムシュタット夏季現代音楽講習会」をベースにシュトックハウゼン/ノーノ/ブーレーズが時代を支配して1970年代の"前衛の衰退"へまっしぐらに突進した訳ですね。


ヴァイオリン協奏曲 Op.36 (1934-1936年)
ヴェーベルンに献呈された渡米後の作品で、十二音技法で書かれていそうですが聴いただけではわかりませんねw
好きなヴァイオリン協奏曲の一つで、バリバリの超絶技巧曲。かつ30分以上殆ど弾きっぱなしの様なヴァイオリニストにはタフな楽曲です。曲調は年代からいっても新古典主義的な印象になり、聴きごたえがあって素晴らしいですね。
同じ新ウィーン楽派ベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に (1935年)」とほぼ同年代の作品で、初演もルイス・クラスナーですがシェーンベルクの方が超絶技巧曲のため初演が遅れています。

今回は期待度の高い2019年1月10日のコパチンスカヤ(vn)/大野和士/都響のコンサートを前に予習の聴き比べで、楽章内の構成は少し端折って印象重視のインプレです。




ヒラリー・ハーン (Hilary Hahn : vn)
エサ=ペッカ・サロネン(Esa-Pekka Salonen, スウェーデン放送響)




H.ハーンのvnは朗々と鳴って歯切れも良くバランスの良さを感じます。バリバリの技巧感には少々欠けるきらいはあるかもしれませんが、安定性重視の様な流れです。第三楽章は素晴らしく、リズムに乗った流れは聴かせてくれます。
サロネンのオケも同様に響の良さがあって出し入れもあり、重量感や幽玄さではなく交響曲的な印象をうけました。全体の印象は明瞭さ、陰のない明るさのサウンドを響かせてくれましたね。この曲としては何か一つ尖ったものが欲しかった気もします。




ピエール・アモイヤル (Pierre Amoyal : vn)
ピエール・ブーレーズ(Pierre Boulez, ロンドン交響楽団)




アモイヤルのvnは繊細で細い切れ味を感じ、鋭利な刃物の様ですね。細く冷たい音色は好きなvnの音色で、引いた感じの時も鋭いキレを感じます。グリグリとヴィルトゥオーゾを魅せるのではなく、やや引き気味で神経質・繊細・切れ味のvnです。第二楽章の神秘さは光りますね。最後のカデンツァはキレキレです。
全体的には"静"の緊迫感のオケは流石はブーレーズといった感じです。その中にディナーミクの振りで陰影付けがされて幽玄さを感じますね。手を触れたら切れそうな鋭いコンチェルトで好きな一枚です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




ズヴィ・ザイトリン (Zvi Zeitlin : vn)
ラファエル・クーベリック(Rafael Kubelík, バイエルン放送響)




ザイトリンのvnは細からず太からず、キレ過ぎず伸び過ぎず、な印象です。常に落ち着いてクールですね。この演奏だけを聴けばすごくキレキレに感じるでしょうが、それはこの曲の本質ですね。印象的なのは第一・第三楽章終盤のカデンツァと多少緩徐的な第二楽章の落ち着きでしょうか。それがザイトリンらしい美しさを奏でている感じですね。
クーベリックとオケの方が引いては押しといった多少表情のある演奏を繰り広げて、揺さぶりもかけている様な感じです。ただこの曲としては行儀が良く、vnが少しスマート過ぎに感じますね。




クリスティアーネ・エディンガー(Christiane Edinger:vn)
ブルーノ・マデルナ(Bruno Maderna, Saarländischen放送響)



BrunoMaderna-Schoenberg-arkadia.jpg
(ジャケット写真です)

上記3CDとは一線を画す強烈な演奏です。エディンガーのvnは表情濃く、彫りの深い演奏です。オケとの録音レベルでもvn主導的になっているのもあるかもしれませんが、第一楽章の導入部からキレキレです。いかにもヴィルトゥオーゾ的で、これ見よがしなスタンスが心地よいですね。カデンツァは揺さぶりが強くキレキレ。このパターンに遠慮は無用でしょう!!
マデルナのオケもまさに協奏的にvnに絡みます。振りの大きなディナーミクとアゴーギクのマッチはまるでDialogue、両者のせめぎ合いの様なやりとりが強烈。素晴らしいですね。

「ペレアスとメリザンド」や「浄夜」を含むマデルナの尖がったシェーンベルク集(2CD)で、所有している全CD中でも個人的名盤。指折りのお気に入り盤で超おすすめ盤になります。現代音楽家としても素晴らしいですが、シェルヘンに師事した指揮者のマデルナは最高です。唯一の問題は入手困難な事ですが…




クールな演奏が好きな方はザイトリン(vn)/クーベリック、バランスの良さならハーン(vn)/サロネンですね。

おすすめは、研ぎ澄まされた先鋭さのアモイヤル(vn)/ブーレーズ と 豪快キレキレのエディンガー(vn)/マデルナ。でも、何をおいても圧倒的に素晴らしいのがエディンガー(vn)/マデルナ盤です。

年明けのコパチンスカヤはこれ以上の出来も期待できそうで、楽しみですね。
[後日記] その結果は? ▶️ こちら




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テーマ : クラシック
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コリン・カリーとホーカン・ハーデンベルガー の『The Scene of the Crime』を聴く


Colin Currie (perc.)
Håkan Hardenberger (tp)
コリン・カリーと言えば浮かぶのはスティーヴ・ライヒとのパーカッション・マッチアップでしょう。2017年3月の「Steve Reich 80歳記念公演」での好演が浮かびますね。
このアルバムは本人のパーカッションを主体としたレーベル"Colin Currie Records"第二弾です。

ホーカン・ハーデンベルガーはマルメ出身のスウェーデン人トランペット・ヴィルトゥオーゾですね。バロック・古典から現代音楽初演まで数々のバリエーションを残しています。行っていませんがソリスト来日もありますね。

二人のヴィルトゥオーゾによる現代音楽ですが、中堅・ベテラン勢による作品を並べた感じです。







アンドレ・ジョリヴェ (André Jolivet, 1905-1974)
本CDで唯一20世紀に生きたフランス人現代音楽家で、個人的な印象は「赤道コンチェルト」に代表される劇的な展開ですね。

Heptade
 ジョリヴェらしい曲調の、実際には曲調の幅は広いのですが個人的に、明瞭なサウンドです。調性の音楽ですが、インパクトがあってtp/perc.のコントラストが良く、独特の和声と鳴りの良い響が特徴的ですね。とても聴きやすいと思います。




ジョー・ダデル (Joe Duddell, 1972- )
マンチェスター生まれの英人音楽家で指揮者、ロックにも精通していますね。歳は上ですが、コリン・カリーの生徒だった様です。

Catch
 マリンバとフリューゲルホーンのミニマルで、アンビエントな楽風になっていますね。反復・変奏の基本となる動機自体がアンビエントになっているので、強音・弱音共に流れを損なう事はありません。美しい楽曲です。




トビアス・ブロシュトレム (Tobias Broström, 1978- )
ヘルシンボリ生まれのスウェーデン現代音楽家で、マルメ音楽院でパーカッションを、作曲をR.マッティンソンとL.フランチェスコーニに師事しています。この曲は二人の奏者に献呈されていますね。

Dream variations
 The Dream - Mirror - Déjà vu の3パート曲です。パーカッションはカウベルやヴィブラフォン等を使っていますが、曲の流れはタイトル通りに幻想的・瞑想的でスロー基本になりますね。




ダニエル・ベルツ (Daniel Börtz, 1943- )
スウェーデンを代表する現代音楽家の一人で、作曲はH.ルーゼンベリ、K-B.ブロムダール、I.リドホルムといった大物に師事しています。

Dialogo 4 - Ricordo
 30"に渡るほぼ無音から細い超静音の音色がクレシェンドしてきます。ミュートtpとヴィブラフォンの音色が絡みながらパーカッションが打音を挟み、曲調は激しさを増してtpとパーカッションDuoになります。無調で先鋭な楽風が楽しめます。強烈なヴィルトゥオーゾ性があればもっと良かった様な。




ブレット・ディーン (Brett Dean, 1961- )
オーストラリア人現代音楽家で、ヴィオラ奏者としてBPOにも在籍していましたね。活動の拠点はオーストラリアです。2017年のマルメ室内音楽祭の委嘱作品で二人に献呈、初演されていますね。

… the scene of the crime …
 無調でスローですが陰湿な暗い流れから入るのがここまでの楽曲との大きな違いです。そこからリズム変化を加えてテンポアップで表情を変化させてきます。静かな中に暗い緊張感が漂う面白い流れで、一番面白いですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?




二人のヴィルトゥオーゾ披露というよりも、作曲家の曲調を生かしたアルバムという感じですね。概ね穏やかで洗練されたBGMとしてもいいかもしれません。

個人的には二人のヴィルトゥオーゾの丁々発止的な競演を味わいたかったのですが、そこが残念な気がしてしまいます。




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2018年12月15日 ジョナサン・ノット/東響 の『アメリカ(ヴァレーズ) | 英雄の生涯(シュトラウス)』at サントリーホール

今年最後のコンサート、晴れて寒い日が続く様になった東京・六本木まで行ってきました。


20181215_SuntoryHall.jpg


ヴァレーズとR.シュトラウスという楽しみな組合せで、J.ノットとなれば聴きに行かない理由がありませんね。前半も一工夫入れて、Wメインの様相です。
事前予習は同二曲構成のCD、メッツマッハーです ➡️ こちら



密度21.5 (無伴奏フルートのための)
アメリカ (1927年改訂版)
・エドガー・ヴァレーズ (Edgard Varèse, 1883-1965)

ノットは異なる印象の曲を序奏の様に置くのが好きですが、今回もシンプルなflソロ小曲を大編成オケ"アメリカ"に繋げました。
まず入りから明白な強音の切れ味に重心を置いた音色が炸裂です。特徴的なハープの等拍リズムとサイレンは間合い良く挟まれて響きましたね。打楽器は繊細さと大胆さを打ち分け、強音の空間の響きはホールを揺るがせました。中盤以降での独特のリズム感も生きていましたね。全体を緊張感で漲らせ、圧倒するパワーゲームはお見事‼︎
強烈な響きと緊張感は静音パートを凌駕して、ヴァレーズらしい鳴りと響きを轟かせてくれました。最高の"アメリカ"の一つだったでしょう‼




交響詩「英雄の生涯」Op.40
・リヒャルト・シュトラウス (Richard Strauss, 1864-1949)

[1. 英雄] 主テーマは精悍さをかなり速いテンポで表しました。
[2. 英雄の敵] は敵の揶揄する様な音色が強め。
[3. 英雄の伴侶] 伴侶vnの優しさと励ましが厚めのボウイングで、オケの英雄との会話が図太い伴侶に感じましたね。出来れば薄いボウイングの繊細さで寄り添う伴侶が好みでした。
[4. 英雄の戦場] 敵の管群と英雄のHr+弦が豪快に奏でられ、ノットらしさが見事に生きましたね。
[5. 英雄の業績] 前半は力感を引継ぎましたが、後半の静寂が厚めでコントラストの弱さが気になりました。
[6. 英雄の隠遁と完成] 心の平穏を静かに奏でて欲しい処でしたが、やっぱり音色が厚かった気がします。
概ね厚めにバランスした感じで、英雄と伴侶を中心とする濃淡・強弱のコントラストが弱かった気がしました。
ソロvnと緩徐パートに澄んだ静音があったら素晴らしかったと思います。




なんと言ってもアメリカでしょう。ヴァレーズらしいクラスターの響きが最高レベルで楽しめました。今年最後のコンサートが当たりで良かったです

録音されていたのでCD化されるでしょうね。楽しみが一つ増えました。


ヴァレーズ "アメリカ"は2015-4/18のメッツマッハー/新日フィル以来でした、今回の方が好みですね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

インゴ・メッツマッハーで聴く『英雄の生涯:R.シュトラウス | アメリカ:E.ヴァレーズ』& 『アメリカ』はミヒャエル・ギーレンと聴き比べ


インゴ・メッツマッハー (Ingo Metzmacher)
ベルリン・ドイツ交響楽団 (Deutsches Symphonie-Orchester Berlin)
新日フィルの"Conductor in Residence"(2013-2015)も務めて日本でも人気のドイツ人指揮者メッツマッハーですね。その最後のコンサートも行ってきましたが、演目はR.シュトラウスとE.ヴァレーズでした。メッツマッハーが得意としていたのは間違いなく、これは首席指揮者を務めた(2007-2012年)ベルリン・ドイツ交響楽団との録音です。

実は今週末(2018-12/15)のジョナサン・ノット/東響のコンサートがこの組合せなので、予習も兼ねてのインプレですね。







リヒャルト・シュトラウス
(Richard Strauss, 1864-1949)
言わずと知れたR.シュトラウス最後の交響詩ですね。個人的にも好きな後期ロマン派の一曲で、全6パートがアタッカで繋がっています。メッツマッハーは極少数派の第1稿を使っていますのでフィニッシュの盛り上げは無く、その前の静かな終焉になりますね。そこがポイントだったのですが。
「カラヤンのCDx3録音とシュトラウス本人のCDで聴き比べ」をインプレ済みです ➡️ こちら

英雄の生涯, Ein Heldenleben (1898年)
 緩やか優美なテーマ[1.英雄]から入り、嘲笑する敵と沈む心をコントラストを付けた[2. 英雄の敵]、vnの伴侶とオケの英雄が優美に語る緩徐の[3. 英雄の伴侶]はとても表情が豊かで素晴らしいですね。
敵や戦闘シーンを抑え気味にして落ち着きのある[4. 英雄の戦場]、[5. 英雄の業績]も後半の静的な美しさから最後の最終パートへ繋げています。この流れがメッツマッハーの意図した構成なのでしょう。最後[6. 英雄の隠遁と完成]も同じ構成で緩やかで心穏やかな流れを作って死を迎えます。看取るvn音色に心が動かされました。
"英雄"の勇ましさや勇敢さよりも心の表現を重視した流れで、人間としての英雄を描いた新しい"英雄の生涯"像です。




エドガー・ヴァレーズ
(Edgard Varèse, 1883-1965)
1915年にフランスから米国に渡ったヴァレーズはその初期作品を一曲のみ残して廃棄していますね。その後の第一作目がストラヴィンスキーの影響を感じるこの"アメリカ"になります。その後はクラスターを中心に空間音響や電子音楽を作り出して現代音楽の流れの一つを築き上げている現代音楽家ですね。
「ブーレーズCDx2録音とシャイーで"ヴァレーズ作品集"の聴き比べ」をしています ➡️ こちら

アメリカ, Amériques (1920年)
 静的パートに重心を置いている様に感じます。強音はもちろん炸裂的で華やかですが、静音の煌めきと落ち着いたスローな流れはストラヴィンスキー感は薄めです。新世界の派手な喧騒クラスターやサイレンは強調された感が薄く、蠢く陰の側にスポットを当てた様に感じますね。




新日フィル最後のコンサートでもそうでしたが、際立たせる迫力よりも感情表現を感じますね。"英雄の生涯"では、自己を見つめる様な流れに新しさを感じて共感できました。この流れですと第1稿がとても合っていますね。
"アメリカ"でも新世界大都市的な派手さよりも、そこに潜むものを表現しているかの様です。ただ、こちらはヴァレーズらしさが薄まっている感は否めません。

今更ですが、メッツマッハー/新日フィル 最後のコンサートは、これを聴いてから行くべきだった気がします。







ギーレン:アメリカ

ミヒャエル・ギーレンと首席指揮者(1986-1999年)を務めたバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団のアメリカを聴き比べてみましょう。



初めの静音パートからテンポがあって明瞭さが強いです。挟まれる等拍パルスも印象的で、現れるクラスターはパルス的で力強さ漲ります。攻撃的で静音パートも彫りが深く先鋭、全体に厚めで緊迫感ある構成、ラストの躍動・混沌も見事です。これぞヴァレーズの響!!
(強音軸足のこの盤か、静的パートに透明感をみせるSony盤ブーレーズがおすすめですね)




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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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